説明

両面間欠塗布装置

【課題】両面間欠塗布において、塗工区間と無塗工区間との、ウェブの両面における位置合わせの精度や、塗工区間の膜厚の精度を向上させることが可能であり、さらに、工程ロスが少ない両面間欠塗布装置を提供する。
【解決手段】ウェブ2の片面に薬液を塗布する薬液塗布装置10の上流側に配置されたパターン位置検出機構14が検出した、ウェブ2の一方の面に形成した塗工区間4と無塗工区間6との位置に応じて、ウェブ2の他方の面に形成される塗工区間4と無塗工区間6が、ウェブ2の一方の面に形成した塗工区間4と無塗工区間6と、ウェブ2の搬送方向から見て同じ位置に形成されるように、薬液塗布装置10をウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に移動可能な薬液塗布装置可動機構12を介して薬液塗布装置10の位置と塗布のタイミングを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、金属箔等のウェブに対し、その両面に薬液の塗工部と未塗工部とを交互に塗布する間欠塗布が可能な、両面間欠塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末から電気自動車にまで至る範囲など、電池の需要は大きく、特に、リチウムイオン電池や燃料電池の量産が盛んになってきている。
リチウムイオン電池や燃料電池に用いる部材の製造過程では、金属箔、プラスチックフィルム、固体高分子電解質膜等、長尺のウェブに対し、例えば、図3中に示すような、間欠塗布が必要となる。なお、図3は、間欠塗布の模式図である。
【0003】
ここで、間欠塗布とは、図3中に示すように、ウェブ2の片面に対し、ウェブ2の搬送方向に沿って、電極となる薬液を塗布した矩形形状の塗工区間4と、薬液を塗布しない無塗工区間6とを、交互に形成する塗布である。
なお、図3中には、ウェブ2の片方の面に薬液を塗布する薬液塗布装置を、符号10を付して示し、ウェブ2の搬送速度に同調して回転するウェブ搬送ロールを、符号8を付して示している。同様に、図3中には、薬液を貯留した薬液タンクを、符号36を付して示し、薬液タンク36から薬液塗布装置10へ薬液を吐出する薬液吐出機構を、符号22を付して示している。さらに、図3中には、薬液タンク36から薬液塗布装置10への薬液の流路を開放または閉鎖する薬液流路選択機構を、符号16を付して示し、薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りする薬液液切機構を、符号18を付して示している。
【0004】
また、リチウムイオン電池や燃料電池に用いる部材の製造過程では、塗工区間と無塗工区間とを、ウェブの表面と裏面、すなわち、ウェブの両面において同じ位置に形成する、両面間欠塗布が必要となる。
ここで、両面間欠塗布とは、図4中に示すように、ウェブ2の両面(表面及び裏面)において、塗工区間4及び無塗工区間6の位置を合わせる塗布である。なお、図4は、間欠両面塗布における、位置ズレの説明図であり、図4(a)は、ウェブ2を幅方向から見た図、図4(b)は、図4(a)のB線矢視図である。
【0005】
なお、図中及び以下の説明では、ウェブ2の搬送方向に沿った塗工区間4のズレを、搬送方向ズレS1と規定し、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に沿った塗工区間4のズレを、垂直方向ズレS2と規定する。さらに、図中及び以下の説明では、両面間欠塗布に特有の、ウェブ2の搬送方向に形成される、塗工区間4の位置が不均一な領域を、不安定領域44と記載する。
【0006】
上述したような、長尺のウェブに両面間欠塗布を行うための装置としては、例えば、図5中に示すような装置や、特許文献1に記載されているような装置が挙げられる。なお、図5は、従来例の間欠塗布装置の構成を示す図である。
図5中に示す構成の両面間欠塗布装置1では、一般的に、まず、図6中に示すように、ウェブ2の表面に対して片面だけの間欠塗布を行ない、乾燥炉26で乾燥させた後、図5中に示すように、ウェブ2の裏面に対して間欠塗布を行なう。なお、図6は、片面だけの間欠塗布の模式図である。
【0007】
このとき、裏面に対する塗工区間4の位置合わせは、ウェブ2の表面に対して片面だけの間欠塗布を行なった後に、光電センサ46を用いて搬送方向ズレS1を検出し、この検出した搬送方向ズレS1に応じて、薬液流路選択機構16及び薬液液切機構18を動作させるタイミングを補正して行なう。なお、図5中には、光電センサ46が検出した搬送方向ズレS1に応じて、薬液流路選択機構16及び薬液液切機構18を動作させるタイミングを補正する制御を行なうタイミング制御手段を、符号48を付して示している。
【0008】
また、特許文献1に記載されているような装置は、例えば、図7中に示すような装置である。なお、図7は、従来例の間欠塗布装置の構成を示す図である。
図7中に示すように、特許文献1に記載されているような装置は、ウェブ2が、ウェブ2の左側に配置した左側薬液塗布装置10Lと、ウェブ2の右側に配置した右側薬液塗布装置10Rとの中心において、ウェブ2のテンションのみで配置されて搬送される状態で、両面間欠塗布を行なうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−216603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、図5中に示すような装置を用いた両面間欠塗布では、搬送方向ズレのみしか補正できないため、垂直方向ズレは、ウェブの初期位置や走行精度に大きく依存してしまうこととなる。
また、図5中に示すような装置を用いた両面間欠塗布では、不安定領域の影響により、搬送方向ズレの検知精度も低下するため、結果的に、垂直方向ズレ及び搬送方向ズレにより、塗工区間と無塗工区間との、ウェブの両面における位置合わせの精度が低下することとなる。
【0011】
さらに、図5中に示すような装置を用いた両面間欠塗布では、ウェブの両面における搬送方向ズレを検知してから補正を行なうため、ウェブの両面に塗工区間を形成した状態でないと補正を行なうことが不可能である。このため、塗布条件が安定するまで、ウェブの両面における位置合わせを行なうことができないため、結果的に、装置の運転初期における工程ロスが増加することとなる。
【0012】
また、特許文献1に記載されているような装置では、ウェブが、ウェブの両側に配置した二つの薬液塗布装置の中心において、ウェブのテンションのみで配置されて搬送される状態で、両面間欠塗布を行なう。このため、薬液塗布装置とウェブとの間において、圧力バランスの制御が困難であり、塗工区間の膜厚の管理が非常に困難である。
さらに、塗工区間と無塗工区間との、ウェブの両面における位置合わせの精度に関しては、二つの薬液塗布装置に対し、初期位置の調整を行えば、塗布タイミングを同時にするだけで、位置合わせの精度を向上させることが可能である。
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載されているような装置では、上述した理由により、塗工区間の膜厚を合わせながら間欠塗布をすることは非常に困難であり、塗り初めと塗り終わりが重要となる矩形形状の塗工区間を、安定して形成することが困難である。このため、結果的に、塗工区間と無塗工区間との、ウェブの両面における位置合わせの精度も悪化することとなる。
【0014】
したがって、従来の両面間欠塗布装置では、塗工区間と無塗工区間との、ウェブの両面における位置合わせの精度と、膜厚の精度が良好な状態で、工程ロスが少ない両面間欠塗布を行うことが困難であった。
【0015】
本発明は、両面間欠塗布において、塗工区間と無塗工区間との、ウェブの両面における位置合わせの精度や、塗工区間の膜厚の精度を向上させることが可能であり、さらに、工程ロスが少ない両面間欠塗布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、搬送されてくるウェブの一方の面に薬液を矩形形状に塗布した塗工区間と前記薬液を塗布していない無塗工区間とを交互に形成した後、前記ウェブの他方の面に前記塗工区間と前記無塗工区間とを交互に形成する両面間欠塗布装置であって、
前記ウェブの片面に前記薬液を塗布する薬液塗布装置と、
前記薬液塗布装置を前記ウェブの搬送方向に対して垂直な幅方向に移動可能な薬液塗布装置可動機構と、
前記薬液塗布装置の上流側に配置され且つ前記ウェブの一方の面の画像を用いてウェブの一方の面に形成した前記塗工区間と前記無塗工区間との位置を検出するパターン位置検出機構と、
前記パターン位置検出機構が検出した前記塗工区間及び前記無塗工区間の位置に応じて、前記ウェブの他方の面に形成される前記塗工区間と前記無塗工区間が、前記ウェブの一方の面に形成した前記塗工区間と前記無塗工区間と、前記ウェブの搬送方向から見て同じ位置に形成されるように、前記薬液塗布装置可動機構を介して前記薬液塗布装置の位置を制御する薬液塗布位置制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0017】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記薬液を貯留した薬液タンクから前記薬液塗布装置への薬液の流路を開放または閉鎖する薬液流路選択機構と、
前記ウェブに前記薬液が塗布されないように前記薬液流路選択機構と前記薬液塗布装置との間で前記薬液を液切りする薬液液切機構と、
前記ウェブの搬送速度に同調して回転するウェブ搬送ロールの回転角度及び回転速度のうち少なくとも一方からなるロール回転情報を検出可能なロール回転情報検出機構と、
前記パターン位置検出機構が検出した前記位置及び前記ロール回転情報検出機構が検出した前記ロール回転情報に応じて、前記ウェブの他方の面に形成される前記塗工区間と前記無塗工区間が、前記ウェブの一方の面に形成した前記塗工区間と前記無塗工区間と、前記ウェブの搬送方向と直交する方向から見て同じ位置に形成されるように、前記薬液流路選択機構を介して前記薬液の流路を開放または閉鎖するタイミング、及び前記薬液液切機構を介して前記薬液流路選択機構と前記薬液塗布装置との間で前記薬液を液切りするタイミングを制御する薬液供給状態制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0018】
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した発明であって、前記薬液塗布位置制御手段は、前記ウェブの搬送速度が、前記パターン位置検出機構が前記塗工区間及び前記無塗工区間の位置を検出可能な速度を超えている場合に、前記薬液塗布装置可動機構を介した制御を断続的に行なうことを特徴とするものである。
【0019】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、請求項1から3のうちいずれか1項に記載した発明であって、前記薬液を貯留した薬液タンクから前記薬液塗布装置へ薬液を吐出する薬液吐出機構と、
前記薬液塗布装置の下流側に配置され且つ前記ウェブの両面に形成された塗工区間の膜厚を検出する塗布膜厚検出機構と、
前記塗布膜厚検出機構が検出した膜厚に応じて、前記塗工区間の膜厚が目標の厚さとなるように前記薬液吐出機構を介して前記薬液の吐出量を制御する薬液吐出機構制御手段と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載した発明によれば、ウェブの一方の面(例えば、表面)に形成した塗工区間と無塗工区間との位置を検出した後、この検出した位置に応じて、ウェブの他方の面(例えば、裏面)に、塗工区間と無塗工区間とを形成することが可能となる。
このため、ウェブの両面において、塗工区間と無塗工区間との、ウェブの搬送方向に対して垂直な幅方向に沿った位置合わせが可能となり、塗工区間と無塗工区間との、ウェブの両面における位置合わせの精度を向上させることが可能となる。
【0021】
さらに、請求項1に記載した発明によれば、パターン位置検出機構が、薬液塗布装置の上流側に配置されているため、ウェブの一方の面に塗工区間と無塗工区間を形成した状態で、塗工区間と無塗工区間との、ウェブの両面における位置合わせを行なうことが可能となる。
このため、両面間欠塗布装置の運転初期における工程ロスを減少させることが可能となる。
【0022】
請求項2に記載した発明によれば、ウェブの他方の面に対する、ウェブの搬送方向に沿った薬液の塗布に関して、ウェブの一方の面に形成した塗工区間と無塗工区間との位置と、ウェブ搬送ロールのロール回転情報を検出して、薬液流路選択機構と薬液液切機構を介して、薬液の塗布開始と塗布終了のタイミングを制御することが可能となる。
このため、塗工区間と無塗工区間との、ウェブの搬送方向に沿った位置合わせが可能となるため、塗工区間と無塗工区間との、ウェブの両面における位置合わせの精度を向上させることが可能となる。
【0023】
請求項3に記載した発明によれば、ウェブの搬送速度が速く、パターン位置検出機構が塗工区間及び無塗工区間の位置を検出可能な速度が、ウェブの搬送速度に追いつかない場合に、薬液塗布装置可動機構を介した制御を断続的に行なう。
これにより、高スペックのパターン位置検出機構を導入せずとも、パターン位置決めが可能となる。
【0024】
請求項4に記載した発明によれば、薬液塗布装置の下流側に配置された塗布膜厚検出機構が検出した膜厚に応じて、塗工区間の膜厚が目標の厚さとなるように、薬液の吐出量をフィードバック制御することが可能となる。
このため、安定した膜厚の塗工区間を形成することが可能となり、塗工区間の膜厚の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第一実施形態における両面間欠塗布装置の概略構成を示す図である。
【図2】パターン位置検出機構が検出した画像の模式図である。
【図3】間欠塗布の模式図である。
【図4】間欠両面塗布における、位置ズレの説明図であり、図4(a)は、ウェブを幅方向から見た図、図4(b)は、図4(a)のB線矢視図である。
【図5】従来例の間欠塗布装置の構成を示す図である。
【図6】片面だけの間欠塗布の模式図である。
【図7】従来例の間欠塗布装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態の両面間欠塗布装置1の構成を説明する。なお、以下の説明では、図3から図7を参照する場合がある。
【0027】
図1は、本実施形態における両面間欠塗布装置1の概略構成を示す図である。
両面間欠塗布装置1は、搬送されてくるウェブ2の一方の面に、塗工区間4と無塗工区間6とを交互に形成した後、このウェブ2の他方の面に、塗工区間4と無塗工区間6とを交互に形成する装置である。なお、図1中には、まず、ウェブ2の一方の面に塗工区間4と無塗工区間6を形成した後、このウェブ2の他方の面に塗工区間4と無塗工区間6を形成する状態を示している。
【0028】
ここで、塗工区間4とは、薬液を矩形形状に塗布した区間であり、無塗工区間6とは、薬液を塗布していない区間である。また、ウェブ2の一方の面とは、例えば、表面であり、ウェブ2の他方の面とは、ウェブ2の一方の面を表面とした場合、裏面である。なお、本実施形態では、ウェブ2の一方の面を表面とし、ウェブ2の他方の面を裏面とした場合について説明する。
【0029】
また、両面間欠塗布装置1は、図1中に示すように、ウェブ搬送ロール8と、薬液塗布装置10と、薬液塗布装置可動機構12と、パターン位置検出機構14と、薬液流路選択機構16と、薬液液切機構18と、ロール回転情報検出機構20を備えている。
これに加え、両面間欠塗布装置1は、図1中に示すように、薬液吐出機構22と、塗布膜厚検出機構24と、乾燥炉26と、両面間欠塗布制御手段28と、薬液吐出機構制御手段30を備えている。
【0030】
ウェブ搬送ロール8は、ウェブ2の搬送速度に同調して回転し、搬送されてくるウェブ2を支持するロールであり、ロールモータ32により回転駆動されている。なお、ロールモータ32は、例えば、回転速度を調整可能なモータを用いて形成されている。
薬液塗布装置10は、例えば、スリットダイを用いて形成されており、ウェブ搬送ロール8に支持されているウェブ2の片面に、塗工区間4の材料となる薬液を塗布することが可能である。なお、以下の説明では、薬液塗布装置10が薬液を塗布するウェブ2の片面が、ウェブ2の裏面である場合について記載する。
【0031】
薬液塗布装置可動機構12は、例えば、モータ等の駆動機構やボールねじ等の案内部品を用いて形成されており、薬液塗布装置10を、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に移動させることが可能である。なお、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向とは、ウェブ2の幅方向と同方向である。
【0032】
ここで、薬液塗布装置可動機構12による、薬液塗布装置10の、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向への移動は、後述する薬液塗布位置制御手段34が出力した制御信号に応じて制御する。なお、薬液塗布位置制御手段34が出力した制御信号に関する説明は、後述する。
【0033】
パターン位置検出機構14は、薬液塗布装置10の上流側に配置されている。なお、薬液塗布装置10の上流側とは、ウェブ2の搬送方向に沿った、薬液塗布装置10よりも上流側の位置である。
また、パターン位置検出機構14は、一方の面(表面)に塗工区間4と無塗工区間6が形成されているウェブ2の画像を取得可能な、画像センサ(カメラ等)を用いて形成されており、ウェブ2の一方の面の画像を用いて、ウェブ2の一方の面に形成した塗工区間4と無塗工区間6との位置を検出する。そして、検出した塗工区間4と無塗工区間6との位置を含む情報信号を、両面間欠塗布制御手段28へ出力する。
【0034】
薬液流路選択機構16は、例えば、三方弁を用いて形成されており、薬液を貯留した薬液タンク36から薬液塗布装置10への薬液の流路と、薬液タンク36から薬液流路選択機構16を経由して薬液タンク36へ戻る薬液の循環路とを、開放または閉鎖することが可能である。なお、薬液タンク36は、塗工区間4の材料となる任意の薬液を内部に貯留したタンクである。
【0035】
ここで、薬液流路選択機構16による、薬液を貯留した薬液タンク36から薬液塗布装置10への薬液の流路と、薬液タンク36から薬液流路選択機構16を経由して薬液タンク36へ戻る薬液の循環路とを、開放または閉鎖するタイミングは、後述する薬液供給状態制御手段38が出力した制御信号に応じて制御する。なお、薬液供給状態制御手段38が出力した制御信号に関する説明は、後述する。
【0036】
薬液液切機構18は、薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間に配置されている。
また、薬液液切機構18は、例えば、流路内の液体を吸引可能なサックバックバルブを用いて形成されており、ウェブ2に薬液が塗布されないように、薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りすることが可能である。なお、液切りとは、薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間に存在する薬液を吸引して、この吸引した薬液が薬液塗布装置10内から出ないようにする動作である。
【0037】
ここで、薬液液切機構18による、薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りするタイミングは、薬液供給状態制御手段38が出力した制御信号に応じて制御する。
ロール回転情報検出機構20は、例えば、ロータリーエンコーダを用いて形成されており、ロールモータ32に接続されている。
【0038】
また、ロール回転情報検出機構20は、ロールモータ32の駆動状態に基づいて、ウェブ搬送ロール8の回転情報を検出する。そして、検出したウェブ搬送ロール8の回転情報を含む情報信号を、両面間欠塗布制御手段28へ出力する。
ここで、ウェブ搬送ロール8の回転情報とは、ウェブ搬送ロール8の回転角度及び回転速度のうち、少なくとも一方である。
【0039】
薬液吐出機構22は、例えば、モータにより動作するポンプを用いて形成されており、薬液タンク36に貯留されている薬液を薬液塗布装置10へ吐出することが可能である。
ここで、薬液吐出機構22による、薬液タンク36に貯留されている薬液の、薬液塗布装置10への吐出量は、薬液吐出機構制御手段30が出力した制御信号に応じて制御する。なお、薬液吐出機構制御手段30が出力した制御信号に関する説明は、後述する。
【0040】
塗布膜厚検出機構24は、薬液塗布装置10の下流側に配置されている。なお、薬液塗布装置10の下流側とは、ウェブ2の搬送方向に沿った、薬液塗布装置10よりも下流側の位置である。
また、塗布膜厚検出機構24は、ウェブ2の両面(表面及び裏面)に形成した塗工区間4の膜厚を検出する。そして、検出した塗工区間4の膜厚を含む情報信号を、薬液吐出機構制御手段30へ出力する。
【0041】
乾燥炉26は、塗布膜厚検出機構24よりも薬液塗布装置10の下流側に配置されており、ウェブ2に薬液された塗布を乾燥可能に形成されている。
両面間欠塗布制御手段28は、例えば、CPU(CENTRAL PROCESSING UNIT)等の演算処理装置を備えて形成されており、薬液塗布位置制御手段34と、薬液供給状態制御手段38を備えている。
【0042】
薬液塗布位置制御手段34は、パターン位置検出機構14が検出した、ウェブ2の一方の面に形成した塗工区間4及び無塗工区間6の位置に応じて、ウェブ2の他方の面に形成される塗工区間4と無塗工区間6が、ウェブ2の一方の面に形成した塗工区間4と無塗工区間6と、ウェブ2の搬送方向から見て同じ位置に形成されるように、薬液塗布装置可動機構12を介して薬液塗布装置10の位置を制御する。
【0043】
具体的には、薬液塗布位置制御手段34は、パターン位置検出機構14が出力した情報信号の入力を受けると、入力された情報信号に基づき、例えば、図2中に示すような、パターン位置検出機構14が取得したウェブ2の一方の面の画像を参照する。なお、図2は、パターン位置検出機構14が検出した画像の模式図である。
パターン位置検出機構14が取得したウェブ2の一方の面の画像を参照した後、薬液塗布位置制御手段34は、参照した画像に基づいて、塗工区間4の、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に沿った平均位置40aを算出する。
【0044】
塗工区間4の平均位置40aを算出した後、薬液塗布位置制御手段34は、算出した平均位置40aに基づいて、塗工区間4の、ウェブ2の搬送方向に沿った基準位置42を設定する。そして、この設定した基準位置42に基づき、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に沿ったズレを算出する。
【0045】
基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に沿ったズレが生じている場合、薬液塗布位置制御手段34は、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に生じているズレが減少するように、薬液塗布装置10の位置を制御する制御信号を生成する。なお、薬液塗布装置10の位置を制御する制御信号は、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に生じているズレが減少するように、薬液塗布装置10をウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に移動させる移動量を含む信号である。
【0046】
基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に生じているズレが減少するように、薬液塗布装置10の位置を制御する制御信号を生成すると、薬液塗布位置制御手段34は、生成した制御信号を、薬液塗布装置可動機構12へ出力する。
薬液供給状態制御手段38は、パターン位置検出機構14が検出した、ウェブ2の一方の面に形成した塗工区間4及び無塗工区間6の位置と、ロール回転情報検出機構20が検出したロール回転情報に応じて、ウェブ2の他方の面に形成される塗工区間4と無塗工区間6が、ウェブ2の一方の面に形成した塗工区間4と無塗工区間6と、ウェブ2の搬送方向と直交する方向から見て同じ位置に形成されるように、薬液流路選択機構16を介して薬液の流路を開放または閉鎖するタイミング、及び薬液液切機構18を介して薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りするタイミングを制御する。
【0047】
具体的には、薬液供給状態制御手段38は、パターン位置検出機構14が出力した情報信号と、ロール回転情報検出機構20が出力した情報信号の入力を受けると、まず、パターン位置検出機構14から入力された情報信号に基づき、例えば、図2中に示すような、パターン位置検出機構14が取得したウェブ2の一方の面の画像を参照する。
パターン位置検出機構14が取得したウェブ2の一方の面の画像を参照した後、薬液供給状態制御手段38は、参照した画像に基づいて、塗工区間4の、ウェブ2の搬送方向に沿った平均位置40bを算出する。このとき、参照した画像に基づいて、不安定領域44の、ウェブ2の搬送方向に沿った平均位置を算出してもよい。
【0048】
塗工区間4の平均位置40bを算出した後、薬液供給状態制御手段38は、算出した平均位置40bに基づいて、塗工区間4の、ウェブ2の搬送方向に沿った基準位置42を設定する。なお、塗工区間4の、ウェブ2の搬送方向に沿った基準位置42とは、上述した、塗工区間4の、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に沿った基準位置42と同じ位置となる。
【0049】
塗工区間4の、ウェブ2の搬送方向に沿った基準位置42を設定すると、薬液供給状態制御手段38は、設定した基準位置42に基づき、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置とのズレを算出する。
【0050】
基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に、ウェブ2の搬送方向に沿ったズレが生じている場合、薬液供給状態制御手段38は、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に生じているズレが減少するように、薬液流路選択機構16及び薬液液切機構18の動作状態を制御する制御信号を生成する。
【0051】
なお、薬液流路選択機構16及び薬液液切機構18の動作状態を制御する制御信号は、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に生じているズレが減少するように、薬液流路選択機構16を介して薬液の流路を開放または閉鎖するタイミングと、薬液液切機構18を介して薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りするタイミングを含む信号である。ここで、薬液流路選択機構16を介して薬液の流路を開放または閉鎖するタイミングと、薬液液切機構18を介して薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りするタイミングは、機械的なタイムラグを考慮して算出してもよい。
【0052】
ここで、薬液流路選択機構16及び薬液液切機構18の動作状態を制御する制御信号を生成する際には、薬液供給状態制御手段38は、ロール回転情報検出機構20から入力された情報信号と、設定した基準位置42に基づき、基準位置42から薬液塗布装置10までの、ウェブ2の搬送方向に沿った実距離を算出する。
基準位置42から薬液塗布装置10までの、ウェブ2の搬送方向に沿った実距離を算出すると、薬液供給状態制御手段38は、薬液塗布装置10が、基準位置42に対して薬液を塗布するように、薬液流路選択機構16を介して薬液の流路を開放または閉鎖するタイミングと、薬液液切機構18を介して薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りするタイミングを算出し、この算出したタイミングに基づいて、薬液流路選択機構16及び薬液液切機構18の動作状態を制御する制御信号を生成する。
【0053】
基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に生じているズレが減少するように、薬液流路選択機構16及び薬液液切機構18の動作状態を制御する制御信号を生成すると、薬液供給状態制御手段38は、生成した制御信号を、薬液流路選択機構16及び薬液液切機構18へ出力する。
【0054】
薬液吐出機構制御手段30は、両面間欠塗布制御手段28と同様、例えば、CPU等の演算処理装置を備えて形成されており、塗布膜厚検出機構24が検出した膜厚に応じて、塗工区間4の膜厚が目標の厚さとなるように、薬液吐出機構22を介して薬液の吐出量を制御する。
【0055】
具体的には、予め、薬液吐出機構制御手段30に、目標となる塗工区間4の膜厚を記憶しておく。
そして、薬液吐出機構制御手段30は、両面間欠塗布装置1の動作時において、塗布膜厚検出機構24が出力した情報信号の入力を受けると、入力された情報信号に基づき、ウェブ2の他方の面に形成された塗工区間4の膜厚を取得する。
【0056】
ウェブ2の他方の面に形成された塗工区間4の膜厚を取得すると、薬液吐出機構制御手段30は、取得した塗工区間4の膜厚と、予め記憶した、目標となる塗工区間4の膜厚とを比較する。
そして、取得した塗工区間4の膜厚が、目標となる塗工区間4の膜厚と異なる厚さである場合、薬液吐出機構制御手段30は、ウェブ2の他方の面に形成される塗工区間4の膜厚が、目標となる塗工区間4の膜厚となるように、薬液吐出機構22を介して薬液の吐出量を制御する制御信号を生成する。
【0057】
これは、取得した塗工区間4の膜厚が、目標となる塗工区間4の膜厚よりも薄い場合、薬液吐出機構22を介して薬液の吐出量を増加させる制御信号を生成する。なお、吐出量の増加度合いは、取得した塗工区間4の膜厚と、目標となる塗工区間4の膜厚との差に比例させる。
【0058】
一方、取得した塗工区間4の膜厚が、目標となる塗工区間4の膜厚よりも厚い場合、薬液吐出機構22を介して薬液の吐出量を減少させる制御信号を生成する。なお、吐出量の減少度合いは、取得した塗工区間4の膜厚と、目標となる塗工区間4の膜厚との差に比例させる。
【0059】
ウェブ2の他方の面に形成される塗工区間4の膜厚が、目標となる塗工区間4の膜厚となるように、薬液吐出機構22を介して薬液の吐出量を制御する制御信号を生成すると、薬液吐出機構制御手段30は、生成した制御信号を、薬液吐出機構22へ出力する。
また、両面間欠塗布制御手段28は、ウェブ2の搬送速度が、パターン位置検出機構14が塗工区間4及び無塗工区間6の位置を検出可能な速度を超えている場合には、制御を断続的に行なう。
【0060】
(動作)
以下、図1及び図2を参照して、本実施形態における両面間欠塗布装置1の動作を説明する。なお、以下の説明では、図3から図7を参照する場合がある。
【0061】
(ウェブ2の一方の面に対する間欠塗布)
両面間欠塗布装置1を用いて、ウェブ2に対する両面間欠塗布を行なう際には、まず、ウェブ2の一方の面に対し、間欠塗布を行なう(図3参照)。
ウェブ2の一方の面に対する間欠塗布を行なう際には、搬送されてくるウェブ2に対し、塗工区間4と無塗工区間6とを、交互に形成する。なお、ウェブ2の搬送速度は、一定の速度に保持する。
ここで、塗工区間4の形成を開始する際には、薬液流路選択機構16により、薬液タンク36から薬液塗布装置10への薬液の流路を開放するとともに、薬液タンク36から薬液流路選択機構16を経由して薬液タンク36へ戻る、薬液の循環路を閉鎖する。
【0062】
これに加え、薬液吐出機構22により、薬液タンク36に貯留されている薬液を薬液塗布装置10へ吐出する。このとき、薬液塗布装置10への薬液の吐出量は、予め設定した、塗工区間4の膜厚に応じた吐出量とする。
薬液流路選択機構16により、薬液タンク36から薬液塗布装置10への薬液の流路が開放され、薬液吐出機構22により、薬液タンク36に貯留されている薬液が薬液塗布装置10へ吐出されると、この薬液は、薬液液切機構18を経由して、薬液塗布装置10へ供給され、ウェブ2の一方の面に塗布される。これにより、ウェブ2の一方の面に、塗工区間4が形成される。
【0063】
ウェブ2の一方の面に塗工区間4を形成した後、薬液流路選択機構16により、薬液タンク36から薬液塗布装置10への薬液の流路を閉鎖するとともに、薬液タンク36から薬液流路選択機構16を経由して薬液タンク36へ戻る、薬液の循環路を開放する。なお、これらの流路を切り換えるタイミングは、ウェブ2の搬送方向に沿った、塗工区間4の長さに応じたタイミングに制御する。
【0064】
薬液タンク36から薬液塗布装置10への薬液の流路を閉鎖するとともに、薬液タンク36から薬液流路選択機構16を経由して薬液タンク36へ戻る、薬液の循環路を開放した状態では、薬液タンク36に貯留されている薬液は、薬液タンク36から、薬液吐出機構22及び薬液流路選択機構16を経由して薬液タンク36へ戻る循環を繰り返す。
【0065】
また、ウェブ2の一方の面に塗工区間4を形成した後、薬液流路選択機構16により流路を切換えるとともに、薬液液切機構18により、薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りする。なお、薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りするタイミングは、ウェブ2の搬送方向に沿った、塗工区間4または無塗工区間6の長さに応じたタイミングに制御する。
【0066】
薬液流路選択機構16により、薬液タンク36から薬液塗布装置10への薬液の流路が閉鎖され、薬液液切機構18により、薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りされると、薬液の薬液塗布装置10への供給が停止される。これにより、ウェブ2の一方の面に、無塗工区間6が形成される。
【0067】
ウェブ2を一定の搬送速度で搬送するとともに、上述した手順による塗工区間4及び無塗工区間6の形成を交互に行なうことにより、ウェブ2の一方の面に対する間欠塗布が行われる。
一方の面に対する間欠塗布が行なわれたウェブ2は、乾燥炉26により薬液を乾燥した後、図外のロールに巻き取られる。
【0068】
(ウェブ2の他方の面に対する間欠塗布)
ウェブ2の一方の面に対する間欠塗布を行なった後、このウェブ2の他方の面に対する間欠塗布を行い、ウェブ2に対する両面間欠塗布を行なう。
ウェブ2の他方の面に対する間欠塗布を行なう際には、搬送されてくる、一方の面に対する間欠塗布を行なったウェブ2に対し、塗工区間4と無塗工区間6とを、交互に形成する。
【0069】
ここで、ウェブ2の他方の面に対し、塗工区間4の形成を開始する際には、薬液塗布位置制御手段34が、パターン位置検出機構14が取得したウェブ2の一方の面の画像に基づいて、塗工区間4の、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に沿った平均位置40aを算出する。そして、塗工区間4の、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に沿った基準位置42を設定し、この設定した基準位置42に基づき、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に沿ったズレを算出する。
【0070】
基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に沿ったズレが生じている場合、薬液塗布位置制御手段34は、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に生じているズレが減少するように、薬液塗布装置10の位置を制御する制御信号を生成し、この生成した制御信号を、薬液塗布装置可動機構12へ出力する。
【0071】
薬液塗布位置制御手段34が出力した制御信号の入力を受けた薬液塗布装置可動機構12は、この制御信号に基づき、薬液塗布装置10を、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に移動させる。
薬液塗布装置10がウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に移動すると、ウェブ2の他方の面において、塗工区間4が形成される位置が、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に移動する。
【0072】
このため、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に沿ったズレが減少して、ウェブ2の一方の面に形成された塗工区間4と、ウェブ2の他方の面に形成された塗工区間4との、ウェブ2の搬送方向に対して垂直な幅方向に沿った位置とのズレが減少する。
【0073】
また、ウェブ2の他方の面に対し、塗工区間4の形成を開始する際には、薬液供給状態制御手段38が、パターン位置検出機構14が取得したウェブ2の一方の面の画像に基づいて、塗工区間4の、ウェブ2の搬送方向に沿った平均位置40bを算出する。そして、塗工区間4の、ウェブ2の搬送方向に沿った基準位置42を設定し、この設定した基準位置42に基づき、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との、ウェブ2の搬送方向に沿ったズレを算出する。
【0074】
基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に、ウェブ2の搬送方向に沿ったズレが生じている場合、薬液供給状態制御手段38は、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に生じているズレが減少するように、薬液流路選択機構16及び薬液液切機構18の動作状態を制御する制御信号を生成する。
【0075】
そして、薬液供給状態制御手段38は、生成した制御信号を、薬液流路選択機構16を介して薬液の流路を開放または閉鎖するタイミングと、薬液液切機構18を介して薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りするタイミングに基づいて、薬液流路選択機構16及び薬液液切機構18へ出力する。
【0076】
薬液供給状態制御手段38が出力した制御信号の入力を受けた薬液流路選択機構16は、この制御信号に基づき、薬液タンク36から薬液塗布装置10への薬液の流路を閉鎖するとともに、薬液タンク36から薬液流路選択機構16を経由して薬液タンク36へ戻る、薬液の循環路を開放する。
一方、薬液供給状態制御手段38が出力した制御信号の入力を受けた薬液液切機構18は、この制御信号に基づき、薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りする。
【0077】
薬液タンク36から薬液塗布装置10への薬液の流路が閉鎖されるとともに、薬液流路選択機構16と薬液塗布装置10との間で薬液を液切りされると、薬液の薬液塗布装置10への供給が停止される。これにより、薬液供給状態制御手段38が算出したタイミングに応じて、ウェブ2の一方の面に、無塗工区間6が形成される。
【0078】
したがって、基準位置42と薬液塗布装置10の現在位置との間に、ウェブ2の搬送方向に沿ったズレが減少して、ウェブ2の一方の面に形成された塗工区間4と、ウェブ2の他方の面に形成された塗工区間4との、ウェブ2の搬送方向に沿った位置とのズレが減少する。
【0079】
上述した手順による塗工区間4及び無塗工区間6の形成を交互に行ない、搬送されたウェブ2の他方の面に形成された塗工区間4の膜厚が、塗布膜厚検出機構24により検出されると、薬液吐出機構制御手段30は、塗布膜厚検出機構24が出力した情報信号の入力を受け、ウェブ2の他方の面に形成された塗工区間4の膜厚を取得する。
そして、取得した塗工区間4の膜厚が、目標となる塗工区間4の膜厚と異なる厚さである場合、薬液吐出機構制御手段30は、ウェブ2の他方の面に形成される塗工区間4の膜厚が、目標となる塗工区間4の膜厚となるように、薬液吐出機構22を介して薬液の吐出量を制御する制御信号を生成して、薬液吐出機構22へ出力する。
【0080】
薬液吐出機構制御手段30が出力した制御信号の入力を受けた薬液吐出機構22は、この制御信号に基づき、薬液の吐出量を増加または減少させる。
薬液吐出機構22が薬液の吐出量を増加または減少させると、ウェブ2の他方の面において形成される塗工区間4の膜厚と、目標となる塗工区間4の膜厚との差が減少する。
【0081】
(第一実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)本実施形態の両面間欠塗布装置1では、パターン位置検出機構14が検出した塗工区間4及び無塗工区間6の位置に応じて、ウェブ2の他方の面に形成される塗工区間4と無塗工区間6が、ウェブ2の一方の面に形成した塗工区間4と無塗工区間6と、ウェブ2の搬送方向から見て同じ位置に形成されるように、薬液塗布装置可動機構12を介して薬液塗布装置10の位置を制御する。
【0082】
このため、ウェブ2の両面において、塗工区間4と無塗工区間6との、ウェブ2の搬送方向と直交する方向に沿った位置合わせが可能となり、塗工区間4と無塗工区間6との、ウェブ2の両面における位置合わせの精度を向上させることが可能となる。
その結果、両面間欠塗布において、塗工区間4と無塗工区間6との、ウェブ2の両面における位置合わせの精度を向上させることが可能となり、リチウムイオン電池や燃料電池等、両面間欠塗布を用いて製造される製品の品質を向上させることが可能となる。
【0083】
(2)本実施形態の両面間欠塗布装置1では、パターン位置検出機構14が、ウェブ2の一方の面の画像を用いて、ウェブ2の一方の面に形成した塗工区間4及び無塗工区間6の位置を検出している。
その結果、不安定領域44を平均化して、基準位置42を設定することが可能となるため、従来のセンサ(光電センサ等)を用いた場合と比較して、塗工区間4及び無塗工区間6の位置を、正確に特定することが可能となる。
【0084】
(3)本実施形態の両面間欠塗布装置1では、パターン位置検出機構14が、薬液塗布装置10の上流側に配置されているため、ウェブ2の一方の面に塗工区間4と無塗工区間6を形成した状態で、塗工区間4と無塗工区間6との、ウェブ2の両面における位置合わせを行なうことが可能となる。
このため、両面間欠塗布装置1の運転初期における、工程ロスを減少させることが可能となる。
その結果、両面間欠塗布装置1の作動コストや、リチウムイオン電池や燃料電池等、両面間欠塗布装置を用いて製造される製品の製造コストを減少させることが可能となる。
【0085】
(4)本実施形態の両面間欠塗布装置1では、ウェブ2の他方の面に対する、ウェブ2の搬送方向に沿った薬液の塗布に関して、ウェブ2の一方の面に形成した塗工区間4と無塗工区間6との位置と、ウェブ搬送ロール8のロール回転情報を検出して、薬液流路選択機構16と薬液液切機構18を介して、薬液の塗布開始と塗布終了のタイミングを制御することが可能となる。
【0086】
このため、塗工区間4と無塗工区間6との、ウェブ2の搬送方向に沿った位置合わせが可能となり、塗工区間4と無塗工区間6との、ウェブ2の両面における位置合わせの精度を向上させることが可能となる。
その結果、請求項1に記載した発明と比較して、両面間欠塗布において、塗工区間4と無塗工区間6との、ウェブ2の両面における位置合わせの精度を、さらに向上させることが可能となる。
【0087】
(5)本実施形態の両面間欠塗布装置1では、ウェブ2の搬送速度が速く、パターン位置検出機構14が塗工区間4及び無塗工区間6の位置を検出可能な速度が、ウェブ2の搬送速度に追いつかない場合に、薬液塗布装置可動機構12を介した制御を断続的に行なう。
その結果、両面間欠塗布において、高度な画像処理装置を採用しなくとも、装置を構成することが可能となる。
【0088】
(6)本実施形態の両面間欠塗布装置1では、薬液塗布装置10の下流側に配置された塗布膜厚検出機構24が検出した膜厚に応じて、塗工区間4の膜厚が目標の厚さとなるように、薬液の吐出量をフィードバック制御することが可能となる。
【0089】
このため、安定した膜厚の塗工区間4を形成することが可能となり、塗工区間4の膜厚の精度を向上させることが可能となる。
その結果、両面間欠塗布において、塗工区間4の品質を向上させることが可能となり、リチウムイオン電池や燃料電池等、両面間欠塗布を用いて製造される製品の品質を向上させることが可能となる。
【0090】
(応用例)
さらに、本実施形態の応用例として、以下のようなものがある。
本実施形態の両面間欠塗布装置1では、塗布膜厚検出機構24及び薬液吐出機構制御手段30を備える構成としたが、これに限定するものではなく、塗布膜厚検出機構24及び薬液吐出機構制御手段30を備えていない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 両面間欠塗布装置
2 ウェブ
4 塗工区間
6 無塗工区間
8 ウェブ搬送ロール
10 薬液塗布装置
12 薬液塗布装置可動機構
14 パターン位置検出機構
16 薬液流路選択機構
18 薬液液切機構
20 ロール回転情報検出機構
22 薬液吐出機構
24 塗布膜厚検出機構
26 乾燥炉
28 両面間欠塗布制御手段
30 薬液吐出機構制御手段
32 ロールモータ
34 薬液塗布位置制御手段
36 薬液タンク
38 薬液供給状態制御手段
40 平均位置
42 基準位置
44 不安定領域
46 光電センサ
48 タイミング制御手段
S1 搬送方向ズレ
S2 垂直方向ズレ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてくるウェブの一方の面に薬液を矩形形状に塗布した塗工区間と前記薬液を塗布していない無塗工区間とを交互に形成した後、前記ウェブの他方の面に前記塗工区間と前記無塗工区間とを交互に形成する両面間欠塗布装置であって、
前記ウェブの片面に前記薬液を塗布する薬液塗布装置と、
前記薬液塗布装置を前記ウェブの搬送方向に対して垂直な幅方向に移動可能な薬液塗布装置可動機構と、
前記薬液塗布装置の上流側に配置され且つ前記ウェブの一方の面の画像を用いてウェブの一方の面に形成した前記塗工区間と前記無塗工区間との位置を検出するパターン位置検出機構と、
前記パターン位置検出機構が検出した前記塗工区間及び前記無塗工区間の位置に応じて、前記ウェブの他方の面に形成される前記塗工区間と前記無塗工区間が、前記ウェブの一方の面に形成した前記塗工区間と前記無塗工区間と、前記ウェブの搬送方向から見て同じ位置に形成されるように、前記薬液塗布装置可動機構を介して前記薬液塗布装置の位置を制御する薬液塗布位置制御手段と、を備えることを特徴とする両面間欠塗布装置。
【請求項2】
前記薬液を貯留した薬液タンクから前記薬液塗布装置への薬液の流路を開放または閉鎖する薬液流路選択機構と、
前記ウェブに前記薬液が塗布されないように前記薬液流路選択機構と前記薬液塗布装置との間で前記薬液を液切りする薬液液切機構と、
前記ウェブの搬送速度に同調して回転するウェブ搬送ロールの回転角度及び回転速度のうち少なくとも一方からなるロール回転情報を検出可能なロール回転情報検出機構と、
前記パターン位置検出機構が検出した前記位置及び前記ロール回転情報検出機構が検出した前記ロール回転情報に応じて、前記ウェブの他方の面に形成される前記塗工区間と前記無塗工区間が、前記ウェブの一方の面に形成した前記塗工区間と前記無塗工区間と、前記ウェブの搬送方向と直交する方向から見て同じ位置に形成されるように、前記薬液流路選択機構を介して前記薬液の流路を開放または閉鎖するタイミング、及び前記薬液液切機構を介して前記薬液流路選択機構と前記薬液塗布装置との間で前記薬液を液切りするタイミングを制御する薬液供給状態制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載した両面間欠塗布装置。
【請求項3】
前記薬液塗布位置制御手段は、前記ウェブの搬送速度が、前記パターン位置検出機構が前記塗工区間及び前記無塗工区間の位置を検出可能な速度を超えている場合に、前記薬液塗布装置可動機構を介した制御を断続的に行なうことを特徴とする請求項1または2に記載した両面間欠塗布装置。
【請求項4】
前記薬液を貯留した薬液タンクから前記薬液塗布装置へ薬液を吐出する薬液吐出機構と、
前記薬液塗布装置の下流側に配置され且つ前記ウェブの両面に形成された塗工区間の膜厚を検出する塗布膜厚検出機構と、
前記塗布膜厚検出機構が検出した膜厚に応じて、前記塗工区間の膜厚が目標の厚さとなるように前記薬液吐出機構を介して前記薬液の吐出量を制御する薬液吐出機構制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した両面間欠塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−206641(P2011−206641A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74899(P2010−74899)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】