説明

両頭研削盤

【課題】加工室カバーを小型化できると共に、加工室カバーの外部でキャリアプレートに対するワークの着脱を行うことができる両頭研削盤を提供する。
【解決手段】両頭研削盤1において、キャリアプレート30は、キャリア軸23を中心とする90度未満の中心角αを持つ扇形の外形形状を呈すると共にワークポケット33が複数形成された一対のキャリア部31,32を有し、キャリア軸23は、当該キャリア軸23の中心線CLの延長方向から見て、加工室カバー40の内外の境界部に設置され、キャリア軸23の回転に従って、キャリア部31,32が加工室カバー40の内部に対して出入りする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両頭研削盤に関し、特に、キャリアプレートを用いて複数のワークを連続研削する通し研削方式の両頭研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリアプレートを用いて複数のワークを連続研削する通し研削方式の両頭研削盤が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の両頭研削盤は、ワークを保持するためのワークポケットが複数形成されたキャリアプレートを回転させ、ワークポケットに保持されたワークを、回転する一対の砥石の間に搬入することにより、複数のワークの両面を順次研削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−8161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、両頭研削盤は、一般に、ワークを研削する際に供給されるクーラントが飛散したりキャリアプレートを伝って漏洩したりすることを防止するために、加工領域を含むキャリアプレート全体を覆う加工室カバーを備えている。
【0005】
このため、加工室カバーが大型化してしまうという課題があった。また、キャリアプレートに対するワークの着脱を、使用済みクーラントが付着し易く、しかも制限された空間である加工室カバーの内部で行わなければならないという課題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、加工室カバーを小型化できると共に、加工室カバーの外部でキャリアプレートに対するワークの着脱を行うことができる両頭研削盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、互いに対向して配置された回転可能な一対の砥石と、回転可能なキャリア軸と、前記キャリア軸に連結され、ワークを保持するためのワークポケットが複数形成されたキャリアプレートと、前記キャリア軸を回転させて、前記ワークポケットに保持されたワークを、回転する前記一対の砥石の間に搬入するためのキャリア駆動部と、研削時に使用されるクーラントの飛散又は漏洩を抑制するための加工室カバーと、を備え、前記キャリアプレートは、前記キャリア軸を中心とする90度未満の中心角を持つ扇形の範囲内の外形形状を呈すると共に前記ワークポケットが複数形成された少なくとも一つのキャリア部を有し、前記キャリア軸は、当該キャリア軸の中心線の延長方向から見て、前記加工室カバーの内外の境界部に設置され、前記キャリア軸の回転に従って、前記キャリア部が前記加工室カバーの内部に対して出入りすることを特徴とする両頭研削盤である。
【0008】
この発明によれば、コンパクトな構成の加工室カバーにより、クーラントの飛散や漏洩を抑制することができる。また、キャリア部が加工室カバーの内部に対して出入りするので、キャリアプレートに対するワークの着脱を、クーラントが付着せずレイアウト制限を受けにくい加工室カバーの外部で行うことができる。
すなわち、加工室カバーを小型化できると共に、加工室カバーの外部でキャリアプレートに対するワークの着脱を行うことができる両頭研削盤を提供できる。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の両頭研削盤であって、前記キャリア部は、前記キャリア軸を間に挟んで相対する位置に一対配置されていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、一方のキャリア部に保持されたワークの研削を加工室カバーの内部で行っている間に、他方のキャリア部に対するワークの着脱を加工室カバーの外部で行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の両頭研削盤であって、前記キャリア部の外形形状に外接する扇形の前記キャリア軸を中心とする中心角は、前記キャリア軸の中心線の延長方向から見て、前記砥石と前記加工室カバーの内面との間の空間に前記ワークポケットが収まる角度に設定されることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、キャリア部が加工室カバーの内部に完全に入った状態でクーラントの供給を開始又は停止できるため、クーラントの飛散や漏洩を抑制しつつ、キャリア部に保持されるワークの数を最大限に設定することができる。これにより、作業効率がより向上する。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の両頭研削盤であって、前記加工室カバーは、前記キャリア部が通過する開口部と、前記開口部を閉止可能な閉止部材とを有することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、開口部からのクーラントの飛散や漏洩を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加工室カバーを小型化できると共に、加工室カバーの外部でキャリアプレートに対するワークの着脱を行うことができる両頭研削盤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る両頭研削盤の全体構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】図1に示される両頭研削盤の正面図である。
【図3】ワークが研削される様子を示す部分拡大縦断面図である。
【図4】加工室カバーの外観図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図5】シャッタが開状態にあるときの加工室カバーの正面図である。
【図6】シャッタのガイド構造を説明するための図であり、(a)は図4(b)のA方向から見た拡大図、(b)は図4(b)のシャッタ周辺の拡大図である。
【図7】ワークが順次研削される様子を模式的に示す平面図であり、(a)はワークが研削空間に搬入される前の状態を示す図、(b)はワークの研削時の状態を示す図、(c)はワークが研削空間から搬出された後の状態を示す図である。
【図8】変形例に係るキャリアプレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る両頭研削盤の全体構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図2は、図1に示される両頭研削盤の正面図である。図3は、ワークが研削される様子を示す部分拡大縦断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、両頭研削盤1は、キャリアプレート30を用いて複数のワークW(図3参照)を連続研削する通し研削方式の両頭研削盤である。なお、図1では、説明の便宜上、ワークを図示省略している。また、説明を明確にするため、図1及び図2に示すように前後左右上下の方向を設定する。
【0019】
両頭研削盤1は、基台となるベッド2と、ベッド2の後側において立設された本体フレーム3と、本体フレーム3の前面にリニアガイド機構11,13を介して上下方向に移動可能にそれぞれ配置された一対の主軸ユニット4,5とを備えている。
【0020】
一対の主軸ユニット4,5は、同一の鉛直軸V上に並ぶ一対の回転軸(図示せず)にそれぞれ固定された一対のフランジ6,7と、一対のフランジ6,7にねじ部材等によりそれぞれ固定された一対の砥石8,9と、前記一対の回転軸をそれぞれ回転駆動するための一対の砥石駆動用モータ(図示せず)とを有している。一対の砥石8,9は、研削側の面が上下方向で互いに対向して配置されている。なお、前記砥石駆動用モータは、ここでは前記回転軸の外周側に配置されるビルトインモータであるが、これに限定されるものではなく、ベルトやギア等の駆動力伝達部材を介して前記回転軸を回転駆動させる構成であってもよい。また、砥石8,9の各々の回転速度及び方向はそれぞれ変更可能である。
【0021】
また、一対の主軸ユニット4,5は、それぞれ本体フレーム3に設置された主軸ユニット駆動用モータ12,14の回転駆動力を例えば送りねじ機構(図示せず)により直線方向駆動力に変換することにより、上下方向に移動可能に構成されている。
【0022】
本体フレーム3の前面側の左右には、一対の支持アーム21,21が固定されており、一対の支持アーム21,21の間に、接続部材26,26を介してキャリア装置22が取り付けられている。
【0023】
キャリア装置22は、ワークW(図3参照)を保持するためのワークポケット33が複数形成されたキャリアプレート30と、キャリアプレート30に連結された回転可能なキャリア軸23と、キャリア軸23を回転させるためのキャリア駆動用モータ(キャリア駆動部)25と、を備えている。キャリア駆動用モータ25は、ギア減速機構等の駆動力伝達機構24を介してキャリア軸23を回転させることにより、図3に示すように、ワークポケット33に保持されたワークWを、回転する一対の砥石8,9の間の研削空間G(図3参照)に搬入することができる。
【0024】
また、両頭研削盤1は、研削時に使用されるクーラントの飛散又は漏洩を抑制するための加工室カバー40を備えている。加工室カバー40は、一対の砥石8,9を含む加工領域を覆うように構成されている。
【0025】
主軸ユニット4の下部には、フランジ6の上方を覆う筒形状の上カバー51が取り付けられており、主軸ユニット5の上部には、フランジ7の下方を覆う筒形状の下カバー52が取り付けられている。上カバー51は、上下方向に伸縮自在な中空の蛇腹部材53を介して加工室カバー40の上開口部41c(図4(a)参照)の周縁に接続されており、下カバー52は、上下方向に伸縮自在な中空の蛇腹部材54を介して加工室カバー40の下開口部41d(図4(a)参照)の周縁に接続されている。これにより、主軸ユニット4,5の上下移動を許容(吸収)しつつ、加工室カバー40と主軸ユニット4,5との間のシール性能を確保している。
【0026】
キャリアプレート30は、キャリア軸23を中心とする90度未満の中心角α(図1(a)参照)を持つ扇形の外形形状を呈する一対のキャリア部31,32を有している。これら一対のキャリア部31,32は、キャリア軸23を間に挟んで相対する位置に配置されている。
【0027】
一対のキャリア部31,32には、それぞれワークポケット33が複数形成されている。ワークポケット33は、キャリア部31,32の外周縁部に円周方向に沿って等角度間隔に形成された鉛直方向に沿う貫通孔である。ワークポケット33の内径は、ワークW(図3参照)の外径よりも僅かに大きく設定されており、ワークポケット33内にワークWを嵌合させて保持できるようになっている。
【0028】
キャリアプレート30の直下には、ワーク投入装置55(図7参照)に対向する位置から砥石8,9の直上流側までワークW(図3参照)の下面を支持して研削空間G(図3参照)に案内するための支持板(図示せず)が設置されている。同様に、砥石8,9の直下流側からワーク取出し装置56(図7参照)に対向する位置の直前まで研削されたワークW(図3参照)を案内するための支持板(図示せず)が設置されている。
【0029】
キャリア軸23は、当該キャリア軸23の中心線CLの延長方向から見て、加工室カバー40の内外の境界部に設置される(図1(a)参照)。そして、両頭研削盤1は、キャリア軸23の回転に従って、キャリア部31,32が加工室カバー40の内部に対して出入りするように構成されている。これにより、一方のキャリア部31(32)が加工室カバー40の内部に存在するときは、当該一方のキャリア部31(32)のワークポケット33に保持されたワークW(図3参照)に対してクーラントを十分に供給しながら研削することができると共に、後記するようにキャリア軸23の表面部分でクーラントをせき止めてクーラントが加工室カバー40の外部に漏洩しないようにすることができる。
【0030】
また、前記したように扇形の外形形状を呈するキャリア部31(32)の中心角αを90度未満にしたので、砥石8,9の外径、キャリアプレート30の外径、及び両者の軸間距離によって中心角αはさらに制限を受けるものの、キャリア部31(32)の複数のワークポケット33にそれぞれ保持されている複数のワークW(図3参照)の全てが研削終了するまで、キャリア部31(32)の回転方向側先端が加工室カバー40の外部に出ることを回避できる(図7(c)参照)。同様に、キャリア部31(32)の複数のワークポケット33にそれぞれ保持されている複数のワークW(図3参照)の先頭が研削開始されるまでに、キャリア部31(32)の回転方向側後端が加工室カバー40の内部に完全に入ることを実現できる(図7(a)参照)。このため、研削中に使用されるクーラントがキャリア部31(32)を伝って加工室カバー40の外部に漏洩することを防止することができる。
【0031】
ここでは、扇形の外形形状を呈するキャリア部31,32のキャリア軸23を中心とする中心角αは、キャリア軸23の中心線CLの延長方向から見て、砥石8,9と加工室カバー40の内面との間の空間にワークポケット33が丁度収まる角度に設定されている(図7(a)(c)参照)。このような構成によれば、キャリア部31(32)が加工室カバー40の内部に完全に入った状態において、先頭のワークW(図3参照)の研削前にクーラントの供給を開始、あるいは最後尾のワークW(図3参照)の研削後にクーラントの供給を停止できるため、加工室カバー40の外部へのクーラントの飛散や漏洩を抑制しつつ、キャリア部31,32に保持されるワークW(図3参照)の数を最大限に設定することができる。これにより、作業効率がより向上する。但し、キャリア部31,32の中心角αは、砥石8,9と加工室カバー40の内面との間の空間にワークポケット33が十分余裕を持って収まるように図7(a)(c)に示す角度よりも小さい角度に設定されてもよいことは言うまでもない。
【0032】
図4は、加工室カバーの外観図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。図5は、シャッタが開状態にあるときの加工室カバーの正面図である。図6は、シャッタのガイド構造を説明するための図であり、(a)は図4(b)のA方向から見た拡大図、(b)は図4(b)のシャッタ周辺の拡大図である。
【0033】
図4に示すように、加工室カバー40は、複数の板状体を組み合わせた略直方体の箱形状を呈するカバー本体41を備えており、カバー本体41は、一対の砥石8,9を覆う第1カバー部41aと、第1カバー部41aに連設されキャリア軸23の中心線CLまで前方に延長された第2カバー部41bとを有している。加工室カバー40は、例えば接続部材26,26(図1(a)参照)にねじ部材(図示せず)等により固定されており、例えば点検用の開閉扉(図示せず)等が設けられている。
【0034】
第1カバー部41aの上面には、蛇腹部材53の下端が周縁に接続される上開口部41cが形成されており、第1カバー部41aの下面には、蛇腹部材54の下端が周縁に接続される下開口部41dが形成されている。
【0035】
図5に示すように、第2カバー部41bの前方下側には、キャリア軸23の後側半分が嵌合する切欠き部48が形成されており、切欠き部48は、キャリア軸23の上端面に対向する上端部48aと、キャリア軸23の側面における根元側の半円周部分と対向する半円開口部48bと、キャリア軸23の側面の上下方向の母線部分と対向する側端部48cとを有している。半円開口部48bの内側には、例えばゴム製のシール部材(図示せず)が設置されており、これにより、加工室カバー40の半円開口部48bとキャリア軸23の側面における根元側の半円周部分とのシール性能が確保されている。
【0036】
また、図4及び図5に示すように、切欠き部48の左右方向の両側に、キャリア部31,32が通過する開口部42,43が切欠き部48に連通して形成されている。そして、加工室カバー40は、開口部42,43を閉止可能なシャッタ(閉止部材)44を有している。このようにすれば、開口部42,43からのクーラントの飛散や漏洩を抑制することができる。
【0037】
シャッタ44は、開口部42を閉止可能な右シャッタ部44a、開口部43を閉止可能な左シャッタ部44b、及び右シャッタ部44aと左シャッタ部44bとを繋ぐ接続部44cが一体に形成されて、めがね形状を呈している。但し、右シャッタ部44aと左シャッタ部44bとが分離された構成を採用することも可能である。
【0038】
シャッタ44は、第2カバー部41bの前面側の左右に固定された断面L字形状の一対の側方ガイド部材47,47の間で、上下方向摺動移動可能に保持されている。また、第2カバー部41bの前面側の下方左右には、シャッタ44が閉じられた際にシャッタ44の下端を保持する断面L字形状の一対の下方ガイド部材45,45が固定されている。シャッタ44は、シャッタ駆動装置(図示せず)により、上下方向に移動して開口部42,43を開放または閉止できるようになっている。シャッタ駆動装置としては、例えばシャッタ44に設けられた上下方向に延在するラックに噛合されたピニオンギアをモータで駆動する構成(いずれも図示せず)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0039】
シャッタ44の後面(背面)の周縁には、例えばゴム製のシール部材46が固着されている。シール部材46の外形は、ここではシャッタ44の外形とほぼ合致するようになっているが、右シャッタ部44aの接続部44c側の側端部、左シャッタ部44bの接続部44c側の側端部、及び接続部44cの下端部に位置する逆U字形状部分46aの外形は、シャッタ44の外形よりも外方、すなわち切欠き部48内にはみ出ている。このように構成すれば、シャッタ44による開口部42,43の閉止時に、逆U字形状部分46aを、キャリア軸23の上端面とキャリア軸23の側面の上下方向の母線部分とに押圧することができる。これにより、加工室カバー40の切欠き部48の上端部48aとキャリア軸23の上端面との間、及び加工室カバー40の切欠き部48の側端部48cとキャリア軸23の側面の上下方向の母線部分との間でシール性能が確保される。
【0040】
シャッタ44の前面の上方左右の隅部には、シャッタ44の前面から前方に突出する凸部49aが設けられており、シャッタ44の前面の下方左右の隅部には、シャッタ44の前面から前方に突出する凸部49bが設けられている。このように構成すれば、シャッタ44による開口部42,43の閉止時に、凸部49aが側方ガイド部材47の内面47aに当接すると共に凸部49bが下方ガイド部材45の内面45aに当接して、シャッタ44を第2カバー部41b側に移動させることにより、シール部材46を第2カバー部41bの前面に押圧することができる。これにより、加工室カバー40の開口部42,43と外部との間でシール性能が確保される。
【0041】
なお、シャッタ44、シール部材46、開口部42,43、及び切欠き部48は、図4〜図6に示す形態に限定されるものではなく、その形状や大きさは適宜変更可能である。
【0042】
次に、図1及び図7を参照して、前記のように構成された両頭研削盤1の作用について説明する。図7は、ワークが順次研削される様子を模式的に示す平面図であり、(a)はワークが研削空間に搬入される前の状態を示す図、(b)はワークの研削時の状態を示す図、(c)はワークが研削空間から搬出された後の状態を示す図である。なお、図7では、説明の便宜上、ワークを図示省略している。
【0043】
両頭研削盤1は、ワークW(図3参照、以下同様)の研削を行う場合、主軸ユニット駆動用モータ12,14により主軸ユニット4,5を上下方向に移動調整することによって、一対の砥石8,9間の距離を所定値に設定する。そして、両頭研削盤1は、砥石駆動用モータ(図示せず)により一対の砥石8,9を回転させると共に、キャリア駆動用モータ25によりキャリア軸23に取り付けられたキャリアプレート30を図7中矢印方向に回転させる。
【0044】
図7(a)は、キャリア部31のワークポケット33に保持された先頭のワークWが研削空間G(図3参照、以下同様)に搬入される直前の状態を示しているが、ワークWがキャリア部31のワークポケット33に装着される段階から順に、キャリア部31に保持されたワークWの研削について主に説明する。
【0045】
まず、キャリア部31の各ワークポケット33が加工室カバー40の開口部42(図4(c)参照、以下同様)の上流側にあるときに、ワーク投入装置55からそのワークポケット33内に上方からワークWが投入されて装着される。これにより、ワークWがワークポケット33に保持される。なお、ワークWの下面は支持板(図示せず)により支持される。
【0046】
続いて、キャリア部31が図7(c)におけるキャリア部32の位置、すなわち、キャリア部31の回転方向側先端が加工室カバー40の開口部42の直上流側に来たとき、シャッタ44(図4(c)参照、以下同様)を上方に移動させて加工室カバー40の開口部42及び開口部43(図4(c)参照、以下同様)を開放する。このとき、他方のキャリア部32の回転方向側先端は、加工室カバー40の開口部43の直上流側に位置している。
【0047】
キャリアプレート30の回転は継続しており、ワークポケット33にワークWを保持したキャリア部31は、開口部42を通って加工室カバー40の内部に入る。一方、キャリア部32は、開口部43を通って加工室カバー40の外部に出る。
【0048】
図7(a)に示すように、キャリア部31の回転方向側後端が加工室カバー40の開口部42の直下流側に来たとき、先頭のワークWは研削開始直前の位置にあり、シャッタ44を下方に移動させて加工室カバー40の開口部42及び開口部43を閉止する。このとき、他方のキャリア部32の回転方向側後端は、加工室カバー40の開口部43の直下流側に位置している。
【0049】
シャッタ44により加工室カバー40の開口部42及び開口部43が閉止されると、クーラントの供給が開始される。このとき、加工室カバー40の内部は外部に対してシールされているため、クーラントの飛散や漏洩が抑制される。
【0050】
続いて、図7(b)に示すように、ワークポケット33にワークWを保持したキャリア部31は、回転する一対の砥石8,9の間の研削空間Gに搬入されて、ワークWの上下端面の研削が行われる。
【0051】
図7(c)に示すように、キャリア部31の回転方向側先端が加工室カバー40の開口部43の直上流側に来たとき、最後尾のワークWは研削終了直後の位置にあり、クーラントの供給が停止される。このとき、他方のキャリア部32の回転方向側先端は、加工室カバー40の開口部42の直上流側に位置している。
【0052】
クーラントの供給が停止されると、シャッタ44が上方に移動させられて加工室カバー40の開口部42及び開口部43が開放される。このとき、クーラントは供給されていないため、クーラントの飛散や漏洩は無い。なお、開口部42及び開口部43が開放される前に、ワークWが保持されたキャリア部31がエアブローされることが好ましい。
【0053】
キャリアプレート30の回転は継続しており、ワークポケット33にワークWを保持したキャリア部31は、開口部43を通って加工室カバー40から外部に出る。一方、キャリア部32は、開口部42を通って加工室カバー40の内部に入る。
【0054】
そして、キャリア部31の各ワークポケット33が加工室カバー40の開口部43の下流側にあるときに、ワークWが自重で下方に移動してそのワークポケット33内から離脱し、ワーク取出し装置56により外部に取り出される。なお、ワーク取出し装置56に対向する位置の直前までは、ワークWの下面は支持板(図示せず)により支持される。
【0055】
続いて、キャリア部31が図7(a)におけるキャリア部32の位置、すなわち、キャリア部31の回転方向側後端が加工室カバー40の開口部43の直下流側に来たとき、シャッタ44を下方に移動させて加工室カバー40の開口部42及び開口部43を閉止する。このとき、他方のキャリア部32の回転方向側後端は、加工室カバー40の開口部42の直下流側に位置している。
【0056】
研削加工中、キャリアプレート30の回転は継続され、キャリア部31に保持されたワークWの研削が繰り返し行われる。ここで、シャッタ44による開口部42,43の開閉動作は、キャリアプレート30の回転角度位置を計測して当該計測値に基づいて制御される。なお、キャリア部32に保持されたワークWの研削は、キャリア部31に保持されたワークWの研削に対してキャリアプレート30の半回転分だけ位相がずれて行われるが、処理の内容は同様であるため詳しい説明を省略する。
【0057】
前記したように、本実施形態の両頭研削盤1では、キャリアプレート30は、キャリア軸23を中心とする90度未満の中心角αを持つ扇形の外形形状を呈すると共にワークポケット33が複数形成された一対のキャリア部31,32を有し、キャリア軸23は、当該キャリア軸23の中心線CLの延長方向から見て、加工室カバー40の内外の境界部に設置され、キャリア軸23の回転に従って、キャリア部31,32が加工室カバー40の内部に対して出入りする。
【0058】
したがって、本実施形態によれば、コンパクトな構成の加工室カバー40により、クーラントの飛散や漏洩を抑制することができる。また、キャリア部31,32が加工室カバー40の内部に対して出入りするので、キャリアプレート30に対するワークWの着脱を、クーラントが付着せずレイアウト制限を受けにくい加工室カバー40の外部で行うことができる。
すなわち、加工室カバーを小型化できると共に、加工室カバーの外部でキャリアプレートに対するワークの着脱を行うことができる両頭研削盤を提供できる。
【0059】
また、本実施形態では、キャリア部31,32は、キャリア軸23を間に挟んで相対する位置に一対配置されている。このような構成によれば、一方のキャリア部31(32)に保持されたワークWの研削を加工室カバー40の内部で行っている間に、他方のキャリア部32(31)に対するワークWの着脱を加工室カバー40の外部で行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【0060】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、前記実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0061】
例えば、前記実施形態では、キャリアプレート30のキャリア部31,32は扇形の外形形状を呈しているが、本発明はこれに限定されるものではない。図8に示すように、キャリアプレート30aのキャリア部31a,32aは、キャリア軸23を中心とする90度未満の中心角αを持つ扇形の範囲内の外形形状を呈していればよい。例えば図8に示す変形例では、キャリア部31a,32aは、ワークポケット33が形成された円弧状板部31b,32bと、円弧状板部31b,32bの内周中央部に連設され半径方向内方に延伸するアーム部31c,32cとをそれぞれを有している。
【0062】
また、前記実施形態では、キャリアプレート30は、一対のキャリア部31,32を有しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、キャリア軸23を中心とする90度未満の中心角αを持つ扇形の範囲内の外形形状を呈する一つのキャリア部を有するキャリアプレートであってもよい。
【0063】
また、前記実施形態では、加工室カバー40の開口部42,43を閉止可能な閉止部材として、上下移動可能なシャッタ44を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。閉止部材は、例えば、矩形形状のゴム製板(図示せず)の上部を開口部42,43の上縁部に固着させた構成であってもよい。この場合、キャリア部31,32の加工室カバー40への出入り時に、ゴム製板がキャリア部31,32により押圧されて変形することによって開口部42,43を開放し、キャリア部31,32がゴム製板から離間するとゴム製板が復元して開口部42,43を閉止することができる。
【0064】
また、前記実施形態では、ワークWの形状が円柱形状である場合を例示したが、ワークWの形状は、両頭研削盤1で研削可能な形状であれば任意であり、例えばピン形状、コイン形状、円形以外の異形形状であってもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、砥石の回転軸が鉛直方向に沿う立形の両頭研削盤1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、砥石の回転軸が水平方向に沿う横形の両頭研削盤にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 両頭研削盤
2 ベッド
3 本体フレーム
8,9 砥石
23 キャリア軸
25 キャリア駆動用モータ(キャリア駆動部)
30,30a キャリアプレート
31,32,31a,32a キャリア部
33 ワークポケット
40 加工室カバー
42,43 開口部
44 シャッタ(閉止部材)
CL 中心線
W ワーク
α 中心角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された回転可能な一対の砥石と、
回転可能なキャリア軸と、
前記キャリア軸に連結され、ワークを保持するためのワークポケットが複数形成されたキャリアプレートと、
前記キャリア軸を回転させて、前記ワークポケットに保持されたワークを、回転する前記一対の砥石の間に搬入するためのキャリア駆動部と、
研削時に使用されるクーラントの飛散又は漏洩を抑制するための加工室カバーと、を備え、
前記キャリアプレートは、前記キャリア軸を中心とする90度未満の中心角を持つ扇形の範囲内の外形形状を呈すると共に前記ワークポケットが複数形成された少なくとも一つのキャリア部を有し、
前記キャリア軸は、当該キャリア軸の中心線の延長方向から見て、前記加工室カバーの内外の境界部に設置され、
前記キャリア軸の回転に従って、前記キャリア部が前記加工室カバーの内部に対して出入りすることを特徴とする両頭研削盤。
【請求項2】
前記キャリア部は、前記キャリア軸を間に挟んで相対する位置に一対配置されていることを特徴とする請求項1に記載の両頭研削盤。
【請求項3】
前記キャリア部の外形形状に外接する扇形の前記キャリア軸を中心とする中心角は、前記キャリア軸の中心線の延長方向から見て、前記砥石と前記加工室カバーの内面との間の空間に前記ワークポケットが収まる角度に設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の両頭研削盤。
【請求項4】
前記加工室カバーは、前記キャリア部が通過する開口部と、前記開口部を閉止可能な閉止部材とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の両頭研削盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107173(P2013−107173A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254766(P2011−254766)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000152675)コマツNTC株式会社 (218)
【Fターム(参考)】