説明

中空成形品の製造方法及び装置

【課題】内圧成形法で複雑な形状を有する中空成形品を成形するのに好適な方法及び装置を提供する。
【解決手段】中空成形基材1の中空部2bに袋状体22を挿入し、次いで中空部2bに充填材14を充填する。そして、成形型11のキャビティ空間部内で袋状体22に加圧流体を供給して袋状体22を膨張させる。これにより、充填材14を介して袋状体22の押圧力を中空成形基材1に伝達し、中空成形基材1を成形型11のキャビティ面12a、13aに押圧して中空成形品を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形品の製造方法及び装置に関し、特に中空成形基材に内圧をかけて成形する内圧成形法を用いて中空成形品を製造する製造方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂(FRP)は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂のマトリックス材と強化繊維とを一体化したものであり、軽量でかつ強度特性に優れていることから多くの分野で使用されている。熱硬化性樹脂の例としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができ、熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等を挙げることができる。強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等を挙げることができる。
【0003】
繊維強化樹脂を用いて中空状の成形品を作ることも行われており、その成形法の一つに内圧成形法がある。内圧成形法は、中空成形基材の中空部に袋状体を挿入したものを、成形型のキャビティ空間部内に配置し、袋状体に圧縮空気のような加圧流体を送り込んで、袋状体を膨張させ、中空成形基材を成形型のキャビティ面に押し付けて成形する方法である。
【0004】
内圧成形法を用いて中空状の成形品を製造する一例が特許文献1に記載されている。特許文献1によれば、成形基材を袋状体であるチューブの周りに被覆するように巻き付けて中空状とし、成形型の上型と下型との間に配置して型締めによりキャビティ空間部内に配置する。
【0005】
そして、真空ポンプによりキャビティ空間部内を減圧すると共にチューブ内に加圧ガスを注入してチューブを膨張させ、中空状の成形基材をキャビティ面に押し付けて所望の形状に成形する。そして、成形基材に含まれている樹脂を硬化又は固化させた後に成形品を型から取り出してチューブを除去し、中空状の成形品を得ている。
【0006】
特許文献1では予め樹脂が含まれた成形基材を成形しているが、他の内圧成形法として、例えば液状の熱硬化樹脂を成形型のキャビティ空間部内に注入して成形基材の繊維織物層に含浸させると共に内圧成形するRTM成形法も従来から行われている。
【0007】
【特許文献1】特開平5-329856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の各内圧成形法では、中空成形基材を複雑な形状に成形することは困難であった。例えば、袋状体がナイロン或いはウレタンの薄いシート部材によって構成されている場合には、袋状体の形状追従性が悪く、袋状体から中空成形基材が受ける内圧が中空成形基材の各部において不均一となり、中空成形基材の複雑な形状となる部分を押圧することができず、キャビティ面に沿った形状に成形することが困難であった。
【0009】
また、例えば袋状体がナイロンやウレタンよりも形状追従性がよいシリコーンゴム等の耐熱性のゴム材で構成されている場合には、複雑な形状に応じて袋状体が局所的に過度に膨張して破裂するおそれがある。
【0010】
また、袋状体が複雑な形状部分に入り込み、成形後に中空成形品の内部から袋状体を取り出すことができない、或いは、取り出し作業中に袋状体が破損するおそれがあり、袋状体を繰り返し使用できず、コスト高であった。そして、袋状体の全部又は一部が中空成形品の内部に残在すると、その残在分だけ中空成形品の重量が重くなり、中空成形品の軽量化が図れないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、複雑な形状を有するものであっても不都合なく成形することができ、成形後には中空成形品の中空部から袋状体を簡単に取り出すことができる中空成形品の製造方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための中空成形品の製造方法の発明は、中空部に袋状体が挿入された中空成形基材を成形型のキャビティ空間部内に配置した状態で、袋状体に内圧を加えて膨張させ、中空成形基材を成形型のキャビティ面に押圧して成形する内圧成形法を用いて中空成形品を製造する方法において、袋状体を膨張させる前に中空成形基材の中空部に充填材を充填し、充填材を袋状体と中空成形基材との間に介在させた状態で袋状体を膨張させることを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、中空成形基材の中空部に充填材を充填して、袋状体と中空成形基材との間に粒状体を介在させた状態で袋状体を膨張させるので、袋状体のみでは押圧することが困難な複雑な形状部分にも、その形状部分と袋状体との間に入り込んだ充填材を介して、袋状体の内圧を伝達することができる。
【0014】
従って、袋状体から中空成形基材が受ける内圧を中空成形基材の各部において全て均等とし、中空成形基材の各部を全て均等な押圧力でキャビティ面に押圧でき、中空成形基材をキャビティ面に沿った形状に成形することができる。従って、複雑な形状を有するものであっても不都合なく成形することができ、外形寸法精度の良好な中空成形品を得ることができる。
【0015】
また、袋状体を膨張させた際に、袋状体が中空成形基材の複雑な形状部分に入り込むのを防ぐことができ、成形後に中空成形品の中空部から袋状体を簡単に取り出すことができる。従って、袋状体及び充填材を繰り返し使用することができる。また、中空成形品の形状に対応した袋状体を個々に用意する必要がなく、袋状体に汎用性を持たせることができる。
【0016】
本発明による中空成形品の製造方法は、中空部を有するコアとそのコアの外周に形成された繊維織物層とを有する中空成形基材を、中空部に袋状体が挿入された状態で成形型のキャビティ空間部内に配置し、成形型のキャビティ空間部内を減圧しかつキャビティ空間部内に液状のマトリックス樹脂を注入して繊維織物層にマトリックス樹脂を含浸させるとともに、袋状体に内圧を加えて膨張させ、中空成形基材を成形型のキャビティ面に押圧して成形し、繊維織物層に含浸させたマトリックス樹脂を硬化又は固化させて前記コアの外周に繊維強化樹脂層が形成された中空成形品を製造する製造方法において、袋状体を膨張させる前にコアの中空部に充填材を充填し、充填材を袋状体とコアとの間に介在させた状態で袋状体を膨張させることを特徴としている。
【0017】
上記する本発明の中空成形品の製造方法によれば、コアの中空部に充填材を充填して、袋状体とコアとの間に充填材を介在させた状態で袋状体を膨張させるので、袋状体のみでは押圧することが困難な複雑な形状部分にも、その形状部分と袋状体との間に入り込んだ充填材を介して、袋状体の内圧を伝達することができる。
【0018】
従って、袋状体からコアが受ける内圧をコアの各部において全て均等とし、繊維織物層の各部を全て均等な押圧力でキャビティ面に押圧でき、中空成形基材をキャビティ面に沿った形状に成形することができる。従って、複雑な形状を有するものであっても不都合なく成形することができ、繊維強化樹脂層のマトリックス樹脂の厚みが均一で且つ外形寸法精度の良好な中空成形品を得ることができる。
【0019】
また、袋状体を膨張させた際に、袋状体が中空成形基材の複雑な形状部分に入り込むのを防ぐことができ、成形後に中空成形品の中空部から袋状体を簡単に取り出すことができる。従って、袋状体及び充填材を繰り返し使用することができる。また、中空成形品の形状に対応した袋状体を個々に用意する必要がなく、袋状体に汎用性を持たせることができる。
【0020】
上記した本発明による中空成形品の製造方法において、袋状体の内圧をマトリックス樹脂の注入圧よりも高圧としてもよい。これにより、袋状体の内圧によってキャビティ面に押圧した中空成形基材が、マトリックス樹脂の注入圧によって押し戻されてキャビティ面から離れるのを防ぐことができる。
【0021】
また、袋状体に内圧を加えて膨張させた状態で、マトリックス樹脂を硬化又は固化させてもよい。これにより、マトリックス樹脂が硬化又は固化する際の収縮圧によって収縮して中空成形品に樹脂ヒケや変形を生ずるのを防ぐことができる。
【0022】
そして、本発明による中空成形品の製造方法の好ましい実施の形態として、中空成形基材を成形して中空成形品を製造した後に、中空成形品の中空部から充填材を排出して袋状体を取り出すことを特徴としている。これによれば、充填材の排出により、中空成形品の中空部内で袋状体との間に空隙を形成することができ、中空成形品の中空部から袋状体を取り出す際に、引っ掛かることなく簡単に取り出すことができる。
【0023】
また、本発明による中空成形品の製造方法の好ましい実施の形態として、充填材は、粒状体であることを特徴としている。これによれば、中空成形品の中空部から排出する際に、迅速且つ簡単に排出することができる。また、液体等と比較して取り扱いが容易である。
【0024】
本発明による中空成形品の製造装置は、中空部を有するコアとコアの外周に形成された繊維織物層とを有する中空成形基材を成形し、繊維織物層に含浸されたマトリックス樹脂を硬化又は固化させて、コアの外周に繊維強化樹脂層が形成された中空成形品を製造する製造装置において、中空成形品の外形状に対応したキャビティ面を有し、型締め時に中空成形基材を収容可能なキャビティ空間部を形成するように構成された成形型と、成形型のキャビティ空間部内を減圧する減圧手段と、減圧手段によって減圧されたキャビティ空間部内にマトリックス樹脂を注入する樹脂注入手段と、中空部に挿入されて加圧流体の供給により膨張する袋状体と、中空部に充填されて袋状体と前記コアとの間に介在される充填材とを有し、中空成形基材が成形型のキャビティ空間部内に配置され、袋状体が中空部に挿入され且つ充填材が袋状体とコアとの間に充填された状態で、袋状体に加圧流体を供給して膨張させ、充填材を介して中空成形基材をキャビティ面に押圧して成形することを特徴とするものである。
【0025】
本発明の中空成形品の製造装置は、従来と異なり、充填材がコアの中空部に充填されて加圧手段の袋状体とコアとの間に介在される。従って、袋状体を膨張させた場合に、袋状体のみでは押圧することが困難な複雑な形状部分にも、その形状部分と袋状体との間に入り込んだ充填材を介して、袋状体の内圧を伝達することができる。
【0026】
従って、袋状体からコアが受ける内圧を中空成形基材の各部において全て均等とし、中空成形基材の各部を全て均等な押圧力でキャビティ面に押圧でき、中空成形基材をキャビティ面に沿った形状に成形することができる。従って、複雑な形状を有するものであっても不都合なく成形することができ、繊維強化樹脂層のマトリックス樹脂の厚みが均一で且つ外形寸法精度の良好な中空成形品を得ることができる。
【0027】
また、袋状体を膨張させた際に、袋状体が中空成形基材の複雑な形状部分に入り込むのを防ぐことができ、成形後に中空成形品の中空部から袋状体を簡単に取り出すことができる。従って、袋状体及び充填材を繰り返し使用することができる。また、中空成形品の形状に対応した袋状体を個々に用意する必要がなく、袋状体に汎用性を持たせることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の中空成形品の製造方法及び装置によれば、袋状体のみでは押圧することが困難な複雑な形状部分にも、その形状部分と袋状体との間に入り込んだ充填材を介して、袋状体の内圧を伝達することができる。
【0029】
従って、袋状体から中空成形基材が受ける内圧を中空成形基材の各部において全て均等とし、中空成形基材の各部を全て均等な押圧力でキャビティ面に押圧でき、中空成形基材をキャビティ面に沿った形状に成形することができる。従って、複雑な形状を有するものであっても不都合なく成形することができ、外形寸法精度の良好な中空成形品を得ることができる。また、袋状体が複雑な形状部分に入り込むのを防ぐことができ、成形後に中空成形品の中空部から充填材と共に簡単に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態について図を用いて以下に説明する。
【0031】
本実施の形態における中空成形品の製造装置10は、コア2と繊維織物層3とからなる中空成形基材1をRTM成形法を用いて成形して、コア2の外周に繊維強化樹脂層が形成された中空成形品を製造するものである。本実施の形態におけるRTM成形法とは、内圧成形法の一種であり、コア2の中空部2bに内圧ホース22が挿入された中空成形基材1を成形型11のキャビティ空間部内に配置した状態で、キャビティ空間部内を減圧し、成形型11のキャビティ空間部内に液状のマトリックス樹脂を注入して中空成形基材1の繊維織物層3に含浸させると共に、内圧ホース22に加圧流体を供給して膨張させ、中空成形基材1を成形型11のキャビティ面12a、13aに押圧して成形する成形法と定義する。
【0032】
成形型11は、図1に示すように、互いに相対的に接離する上型12と下型13を備えており、上型12と下型13には中空成形品の外形に対応するキャビティ面12a、13aが対向して形成され、成形型11の型締めにより所定のキャビティ空間部を形成するように構成されている。
【0033】
成形型11には、図示していないバキュームポンプに接続されて成形型11のキャビティ空間部内を減圧するための真空引き通路15と、図示していない樹脂タンクから成形型11のキャビティ空間部内に熱硬化性のマトリックス樹脂を注入するための注入通路16と、図示していない加圧ポンプから後述する加圧手段21に加圧流体である加圧エアを供給するための加圧エア供給通路17が設けられている。この加圧エア供給通路17は、成形型11の型締めにより上型12と下型13との間に形成される加圧室18に連通している。また、真空引き通路15は、キャビティ空間部内にマトリックス樹脂を注入した際にキャビティ空間部内の余分なマトリックス樹脂を排出するための樹脂排出通路も兼ねている。
【0034】
下型13のキャビティ面13a上には中空成形基材1が載置されており、型締めによって成形型11のキャビティ空間部内に収容されるようになっている(図2を参照)。中空成形基材1は、コア2と、コア2の外周に巻装して形成された繊維織物層3とからなる。コア2は、ABS樹脂等の樹脂材料によって構成されており、加圧手段21の内圧ホース22を膨張させて内圧を加えた場合に弾性変形して膨張させることが可能な薄肉の中空形状を有している。
【0035】
コア2は、製造しようとする中空成形品に近似した形状を有しており、断面形状の差が大きな複雑な形状部分を備えている。コア2は、本実施の形態では、図1及び図2で左右方向に示される長手方向に延在し、その一方端部にコア2の中空部2bと外部との間を連通する開口部2aが形成されている。
【0036】
繊維織物層3は、カーボン繊維やガラス繊維などの強化繊維を織って組織されたものであり、図示していないブレーダ機によってコア2に巻装されて、コア2の外周全面を被覆している。
【0037】
コア2の中空部2bには、粒状体であるペレット14が充填材として充填されている。ペレット14は、コア2の中空部2b内でコア2と加圧手段21の内圧ホース22との間に隙間なく介在されており、内圧ホース22を膨張させた場合にペレット14を介して内圧ホース22の内圧をコア2に伝達し、コア2を膨張させて繊維織物層3をキャビティ面12a、13aに押圧できる。
【0038】
ペレット14は、軽量な粒状体によって構成されており、本実施の形態では、粒径が約1ミリメートルのナイロン樹脂により形成されたものが用いられている。コア2の中空部2bには、内圧ホース22との間の空隙を満たす量のペレット14が充填されている。なお、本実施の形態では、充填材として粒状体であるペレットを例に説明したが、充填材は粒状体等の固体に限定されるものではなく、オイルや水等の液体や、ゲル状体でもよい。
【0039】
中空成形基材1には、加圧手段21が装着されている。加圧手段21は、図3に示すように、加圧エアの供給により膨張する袋状体である内圧ホース22と、内圧ホース22に加圧エアを供給するエアチューブ23と、エアチューブ23が挿通されてコア2の開口部2aを閉塞する閉塞栓24を有する。
【0040】
内圧ホース22は、シリコーンゴムなどの伸縮性が高い合成樹脂によって形成されており、軟質なシート状の膜からなる薄肉の筒形状をなし、先端部が紐状体で束縛されて封止され、基端部がホース固定具25に固定されて密封された袋状体とされ、内圧ホース22の内部と外部とが気密的に隔離されている。
【0041】
エアチューブ23は、ナイロンなどの合成樹脂によって形成されており、内圧ホース22内に挿通可能な外径の円筒形状を有し、コア2の開口部2aから中空部2b内に挿入した際に軸方向に押し移動させることができ、且つコア2の形状に沿って変形可能な程度の可撓性を有する。
【0042】
エアチューブ23は、ホース固定具25の貫通孔25aを通過して内圧ホース22の内部に挿通されて、先端部が内圧ホース22の先端部近傍まで延在する。エアチューブ23には、内圧ホース22の内部で長手方向に所定間隔をおいて位置するように複数の穿孔23aが設けられており、エアチューブ23内に供給された加圧エアを、各穿孔23aから内圧ホース22の内部に供給できるようになっている。内圧ホース22は、エアチューブ23が挿通された状態でコア2の中空部2bに挿入されて、中空部2b内で長手方向に亘って延在するように配置される。
【0043】
閉塞栓24は、図1に示すように、内圧ホース22がコア2の中空部2bに挿入され且つペレット14がコア2の中空部2bに充填された状態でコア2の開口部2aを閉塞する。閉塞栓24は、図4及び図5に示すように、コア2の開口部2aに嵌入される栓体31と、栓体31を下型13に固定する固定プレート32と、閉塞栓24に挿通されたエアチューブ23を固定するチューブ固定具33を有する。
【0044】
栓体31は、コア2の開口部2aに嵌入した場合に開口部2aを閉塞する大きさのブロック形状を有しており、本実施の形態では、開口部2aの形状に合わせて矩形状をなし、嵌入作業を容易ならしめるべく、先端側に移行するに従って漸次狭窄するテーパ状に形成されている。
【0045】
栓体31の基端部には、固定プレート32を着脱可能に取り付けるための取付ねじ34が突設されている。栓体31は、固定プレート32との間にガスケットGを介在させて、取付ねじ34を固定プレート32の挿入孔32aに挿入し、取付ナット35を締め付けることによって固定プレート32に取り付けられる。
【0046】
栓体31には、エアチューブ23を挿通するための貫通孔31a(図3を参照)が穿設されている。貫通孔31aは、栓体31の中心を貫通して、一端が栓体31の先端部に開口し、他端が取付ねじ34の頭頂部に開口する(図5を参照)。そして、エアチューブ23を栓体31の先端部側から貫通孔31a内に挿入して、取付ねじ34の頭頂部から突出させることができるようになっている。
【0047】
チューブ固定具33は、取付ねじ34の頭頂部から突出したエアチューブ23に環状のシール部材33aを外嵌させて、締結ナット33bを締め付けることによって、エアチューブ23を取付ねじ34に固定し、エアチューブ23と貫通孔31aとの間をシールするようになっている。エアチューブ23は、チューブ固定具33から所定長さ突出した状態で固定され、成形型11の型締め時にエアチューブ23の開口端部23bが加圧室18内に配置される。
【0048】
閉塞栓24は、コア2の中空部2b内に内圧ホース22が挿入され且つ中空部2b内にペレット14が充填された状態で栓体31がコア2の開口部2aに嵌入されて、エアチューブ23が取付ねじ34から突出した状態とされる。そして、固定プレート32を被せて、固定プレート32の挿入穴32aに取付ねじ34を挿通し、取付ナット35を締め付けて栓体31に固定プレート32を取り付ける。それから、固定ボルト36を固定プレート32の固定孔32bに挿通して下型13に螺設されたねじ孔(図示せず)に螺入することによって固定プレート32を下型13に固定する。また、チューブ固定具33によってエアチューブ23が固定される。
【0049】
閉塞栓24は、コア2の開口部2aを閉塞して中空部2b内のペレット14が外部に漏れ出るのを防ぐことができる。また、コア2の中空部2bと成形型11のキャビティ空間部との間をシールし、キャビティ空間部内に注入されたマトリックス樹脂がコア2の中空部2b内に浸入するのを防ぐことができる。
【0050】
次に、上記構成を有する中空成形品製造装置10を用いた中空成形品の製造方法について説明する。
【0051】
まず、下型13のキャビティ面13a上に中空成形基材1が載置され、コア2の中空部2bにペレット14が充填され且つ加圧手段21が装着された状態で(図1を参照)、成形型11を型締めし、成形型11のキャビティ空間部内に中空成形基材1を配置する(図2を参照)。それから、成形型11を予め設定された熱硬化温度に調整し、次いで、真空ポンプにより真空引き通路15を通じてキャビティ空間部の真空引きを行い、所定の真空度まで減圧させる。
【0052】
そして、樹脂タンクから樹脂注入通路16を通して成形型11のキャビティ空間部内にマトリックス樹脂の注入を開始すると共に、加圧ポンプにより加圧エア供給通路17を通じて加圧室18に加圧エアの供給を開始する。
【0053】
マトリックス樹脂の注入圧と加圧エアの圧力は、略同一の速さで上昇され、それぞれ予め設定された圧力で一定時間保持される。また、マトリックス樹脂の注入圧と加圧エアの圧力は、マトリックス樹脂の方が加圧エアよりも低い圧力に設定されている。
【0054】
成形型11のキャビティ空間部内に注入されたマトリックス樹脂は、中空成形基材1の繊維織物層3に含浸される。そして、加圧室18に供給された加圧エアは、加圧室18内で開口する加圧手段21のエアチューブ23の開口端部23bからエアチューブ23内に入り込み、エアチューブ23内を通過して、穿孔23aから内圧ホース22内に流入し、内圧ホース22を膨張させる。
【0055】
内圧ホース22の膨張によって、ペレット14がコア2を膨張させる方向に押し移動され、内圧ホース22の内圧がペレット14を介してコア2に伝達される。従って、コア2が膨張され、コア2に巻装されている繊維織物層3がキャビティ面12a、13aに押圧される。
【0056】
ペレット14は、内圧ホース22のみでは押圧することが困難なコア2の複雑な形状部分と内圧ホース22との間にも入り込んで介在されているので、内圧ホース22を膨張させた場合に、かかる複雑な形状部分にも内圧ホース22の内圧を伝達して膨張させることができる。
【0057】
従って、内圧ホース22からコア2が受ける内圧をコア2の各部において全て均等とし、繊維織物層3の各部を全て均等な押圧力でキャビティ面12a、13aに押圧でき、中空成形基材1をキャビティ面12a、13aに沿った形状に成形することができる。
【0058】
また、内圧ホース22の内圧がマトリックス樹脂の注入圧よりも高圧に設定されているので、キャビティ空間部内に充填されたマトリックス樹脂のうち、繊維織物層3に含浸されなかった余分なマトリックス樹脂をキャビティ空間部内から押し出して成形型11の真空引き通路15から外部に排出することができる。従って、マトリックス樹脂の注入圧によるコア2のつぶれが防止され、マトリックス樹脂の厚みを均一且つ適切な厚さにすることができる。
【0059】
繊維織物層3に含浸されたマトリックス樹脂は、成形型11から熱を受けて硬化を開始する。中空成形基材1は、内圧ホース22が膨張されて所望の形状に成形された状態でマトリックス樹脂が完全硬化される。従って、マトリックス樹脂の硬化収縮圧によるコア2のつぶれが防止され、樹脂ヒケや変形がない外形寸法精度が良好な中空成形品を得ることができる。
【0060】
中空成形品は、成形型11を型開きして取り出される。そして、コア2の中空部2bに残るペレット14が開口部2bから外部に排出されて、内圧ホース22とコア2との間に空隙が形成される。従って、コア2の複雑な形状部分に引っ掛かることなく、内圧ホース22をコア2の中空部2bから簡単かつ迅速に取り出すことができる。
【0061】
以上の方法により、コア2の外周に繊維強化樹脂層が形成された中空成形品を製造することができる。なお、上記の製造方法は、図示していない制御手段によってすべてを自動的に行ってもよく、また、例えば中空成形基材1の装着作業等、一部の作業を作業者が行ってもよい。
【0062】
上記の中空成形品製造装置10によれば、内圧ホース22のみでは押圧することが困難なコア2の複雑な形状部分にもペレット14を介して内圧ホース22の内圧を伝達できる。従って、内圧ホース22からコア2が受ける内圧をコア2の各部において全て均等とし、繊維織物層3の各部を全て均等な押圧力でキャビティ面12a、13aに押圧できる。
【0063】
従って、中空成形基材1をキャビティ面12a、13aに沿った複雑な形状に成形することができ、外形寸法精度の良好な中空成形品を得ることができる。また、内圧ホース22を膨張させた際に、内圧ホース22がコア2の複雑な形状部分に入り込むのを防ぐことができ、成形後に内圧ホース22を簡単且つ迅速に取り出すことができる。そして、内圧ホース22およびペレット14を繰り返し使用することができ、コストを低減できる。また、中空成形品の形状に対応した形状を有する内圧ホース22を個々に用意する必要がなく、内圧ホース22に汎用性を持たせることができる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、成形型11内で繊維織物層3にマトリックス樹脂を含浸させるRTM成形法を用いた中空成形品製造装置10の場合を例に説明したが、他の内圧成形法にも十分に適用できるものである。
【0065】
本発明は、中空成形基材1の中空部2aに袋状体22を挿入すると共に粒状体14を充填し、内圧ホース22の膨張により粒状体14を介して中空成形基材1を膨張させ、中空成形基材1を成形型11のキャビティ面12a、13aに押圧して成形するものであればよく、例えば、上記実施の形態における中空成形基材1の繊維織物層3に代えて、強化繊維に予めマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグ等を用いてもよい。
【0066】
また、上述の実施の形態では、マトリックス樹脂が熱硬化性の場合を例に説明したが、熱可塑性であってもよい。マトリックス樹脂が熱可塑性の場合には、加熱状態で中空成形基材を成形し、成形後に冷却して固化させる処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態に係わる中空成形品の製造装置の構成を概略的に示す断面図。
【図2】図1の装置を型締めした状態を示す断面図。
【図3】加圧手段の構成を概略的に示す断面図。
【図4】加圧手段の要部を拡大して示す斜視図。
【図5】加圧手段の分解斜視図。
【符号の説明】
【0068】
1 中空成形基材
2 コア
2b 中空部
3 繊維織物層
11 成形型
12a、13a キャビティ面
14 ペレット(粒状体)
22 内圧ホース(袋状体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部に袋状体が挿入された中空成形基材を成形型のキャビティ空間部内に配置した状態で、前記袋状体に内圧を加えて膨張させ、前記中空成形基材を前記成形型のキャビティ面に押圧して成形する内圧成形法を用いて中空成形品を製造する方法において、
前記袋状体を膨張させる前に前記中空成形基材の中空部に充填材を充填し、
該充填材を前記袋状体と前記中空成形基材との間に介在させた状態で前記袋状体を膨張させることを特徴とする中空成形品の製造方法。
【請求項2】
中空部を有するコアと該コアの外周に形成された繊維織物層とを有する中空成形基材を、該中空部に袋状体が挿入された状態で成形型のキャビティ空間部内に配置し、前記成形型のキャビティ空間部内を減圧しかつ該キャビティ空間部内に液状のマトリックス樹脂を注入して前記繊維織物層に前記マトリックス樹脂を含浸させるとともに、前記袋状体に内圧を加えて膨張させ、前記中空成形基材を前記成形型のキャビティ面に押圧して成形し、前記繊維織物層に含浸させた前記マトリックス樹脂を硬化又は固化させて前記コアの外周に繊維強化樹脂層が形成された中空成形品を製造する製造方法において、
前記袋状体を膨張させる前に前記コアの前記中空部に充填材を充填し、
該充填材を前記袋状体と前記コアとの間に介在させた状態で前記袋状体を膨張させることを特徴とする中空成形品の製造方法。
【請求項3】
前記袋状体の内圧を、前記マトリックス樹脂の注入圧よりも高圧としたことを特徴とする請求項2に記載の中空成形品の製造方法。
【請求項4】
前記袋状体に内圧を加えて膨張させた状態で、前記マトリックス樹脂を硬化又は固化させることを特徴とする請求項2又は3に記載の中空成形品の製造方法。
【請求項5】
前記中空成形品を製造した後に、該中空成形品の中空部から前記充填材を排出して前記袋状体を取り出すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の中空成形品の製造方法。
【請求項6】
前記充填材は、粒状体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の中空成形品の製造方法。
【請求項7】
中空部を有するコアと該コアの外周に形成された繊維織物層とを有する中空成形基材を成形し、前記繊維織物層に含浸されたマトリックス樹脂を硬化又は固化させて、前記コアの外周に繊維強化樹脂層が形成された中空成形品を製造する製造装置において、
前記中空成形品の外形状に対応したキャビティ面を有し、型締め時に前記中空成形基材を収容可能なキャビティ空間部を形成するように構成された成形型と、
該成形型のキャビティ空間部内を減圧する減圧手段と、
該減圧手段によって減圧されたキャビティ空間部内にマトリックス樹脂を注入する樹脂注入手段と、
前記中空部に挿入されて加圧流体の供給により膨張する袋状体と、
前記中空部に充填されて前記袋状体と前記コアとの間に介在される充填材と、を有し、
前記中空成形基材が前記成形型のキャビティ空間部内に配置され、前記袋状体が前記中空部に挿入され且つ前記充填材が前記袋状体と前記コアとの間に充填された状態で、前記袋状体に前記加圧流体を供給して膨張させ、前記充填材を介して前記中空成形基材を前記キャビティ面に押圧して成形することを特徴とする中空成形品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−23317(P2010−23317A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186159(P2008−186159)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】