乗員保護システムの通信装置
【課題】どのセンサ部間でオープン故障が生じたのか、どのセンサ部がセンサ故障となったのかを特定すること。
【解決手段】ECU18Eが、ECU18Eに接続された複数のセンサ部15a1〜15d4の負荷電流を検出するセンサ電流検出部21と、センサ電流検出部21での検出電流値が予め設定された全センサ接続数の負荷電流値以上の場合に、ECU18Eとセンサ部15a1〜15d4間並びに各センサ部15a1〜15d4間の接続線の断線を表すオープン故障が無しと判定し、負荷電流値未満の場合に、検出電流値に対応するセンサ接続数の負荷電流値に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定部22とを備える。そして、故障判定部22が、センサ電流検出部21での検出電流値に応じてオープン故障の位置を特定する。
【解決手段】ECU18Eが、ECU18Eに接続された複数のセンサ部15a1〜15d4の負荷電流を検出するセンサ電流検出部21と、センサ電流検出部21での検出電流値が予め設定された全センサ接続数の負荷電流値以上の場合に、ECU18Eとセンサ部15a1〜15d4間並びに各センサ部15a1〜15d4間の接続線の断線を表すオープン故障が無しと判定し、負荷電流値未満の場合に、検出電流値に対応するセンサ接続数の負荷電流値に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定部22とを備える。そして、故障判定部22が、センサ電流検出部21での検出電流値に応じてオープン故障の位置を特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時に乗員を保護するエアバッグ等の乗員保護装置に用いられるECU(電子制御ユニット)と、このECUにデイジーチェーン接続され、車両の加速度等を検出する複数のセンサ部とを有する乗員保護システムの通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エアバッグやシートベルトプリテンショナ等の乗員保護装置が多くの車両に装着されており、この乗員保護装置を備える乗員保護システムは、図1に示すように、車両10の前方両サイドに搭載されたフロントセンサ部11a,11bと、助手席や後部座席に搭載されたセーフィングセンサ部13a,13bと、車両10の両サイドに搭載された複数のセンサ部15a,15b,15c、15d及び16a,16b,16c,16dとを有し、これらセンサ部がエアバッグ用のECU18に接続されて成る通信装置を備えている。この通信装置の各センサ部11a,11b,13a,13b,15a〜15d及び16a〜16dで加速度等を検出し、この検出に応じてECU18で図示せぬエアバッグを作動させる。但し、各センサ部11a,11b,13a,13b,15a〜15d及び16a〜16dは、IC(Integrated Circuit)チップで構成されている。
【0003】
この通信装置において、両サイドのセンサ部15a〜15d及び16a〜16dは、図2に各センサ部15a〜15dを代表して表すように、各々が内部にバススイッチ26a〜26dを有してECU18にバス接続されており、車両10の電源投入時にECU18に近いセンサ部から順にアドレスを設定する初期化を行ってバススイッチ26a〜26dを閉じるようになっている。
【0004】
つまり、ECU18に最も近い第1のセンサ部15aにアドレス設定したらバススイッチ26aを閉じて第2のセンサ部15bにECU18を接続する。次に、ECU18から第2のセンサ部15bにアドレス設定したらバススイッチ26bを閉じて第3のセンサ部15cにECU18を接続し、次に、第3のセンサ部15cにアドレス設定したらバススイッチ26cを閉じて第4のセンサ部15dにECU18を接続するといった順に初期化が行われる。また、各センサ部15a〜15dは、アドレス設定後にECU18に応答を返すようになっている。
【0005】
このようにECU18に両サイドの各センサ部15a〜15d及び16a〜16dをバス接続する場合、ICチップにより構成されるセンサ部の内部にバススイッチを搭載する必要があるため、チップサイズが大きくなってしまう。また、バススイッチ自体がインピーダンスを持つので、複数個がバス接続されると各センサ部15a〜15d及び16a〜16dによるインピーダンスの電圧降下で末端センサ部の15d,16dの電圧降下が大きくなってしまう。更に、バススイッチの電源側とグランド側とのインピーダンスマッチングが崩れノイズ源となりノイズが発生してしまう。
【0006】
これらの欠点を解消するために特許文献1に記載の通信装置のように、バススイッチを用いたバス接続を行わない構成がある。この構成は、図3に示すように、ECU18−1にバススイッチを用いずセンサ部15a−1〜15d−1がデイジーチェーン接続されている。この構成によって、最後段のセンサ部15d−1から時刻t1に示すようにアドレス設定「0001」を行った後スリープモードに移行する。これによりスリープモードとなった第4センサ部15d−1には電流が流れなくなるので、第3センサ部15c−1が最後段となりアドレス設定が可能な状態となる。そこで上記同様に第3センサ部15c−1において時刻t2に示すようにアドレス設定「0010」を行った後スリープモードに移行し、以降同様にECU18−1側に近づく順に、時刻t3,t4で示すように順次アドレス設定「0100」、「1000」を行ってスリープモードに移行し、初期化を完了させる。この完了後にECU18−1がスリープモード解除コマンドを送信して各センサ部15a−1〜15d−1が動作モードに復帰するようになっている。これによって、バススイッチを不要とし、上記欠点を解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−137840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の特許文献1の乗員保護システムの通信装置においては、例えば図4に×印で示すように、第1センサ部15a−1と第2センサ部15b−1との接続線が断線(オープン故障)した場合、又は図5に×印で示すように、ECU18−1から最後段のセンサ部15d−1までの電流経路は正常だが第3センサ部15c−1が故障(センサ故障)した場合、後述でその理由を説明するようにオープン故障かセンサ故障かを判断することができず、更に、どのセンサ部間でオープン故障が生じたのか、どのセンサ部がセンサ故障となったのかを特定することができないという問題がある。
【0009】
即ち、ECU18−1でオープン故障又はセンサ故障を判断する場合、初期設定時のアドレス設定が正常に行えたか否かを判断することで行うようになっている。図4の場合、第1センサ部15a−1が最後段となっているため、まず第1センサ部15a−1にアドレス設定「0001」が行われるが、その後、第1センサ部15a−1をスリープモードとした場合、ECU18−1に接続されているセンサ部は無いので、アドレス設定が1回しか行われなくなる。そこでECU18−1では適正にアドレス設定が行われないことからオープン故障又はセンサ故障と判断することができる。
【0010】
図5の場合、最後段のセンサ部15d−1にアドレス設定「0001」を行った後スリープモードに移行すると、第3センサ部15c−1がセンサ故障なので、次のアドレス設定が第2センサ部15b−1に対して「0010」と行われ、この後、第1センサ部15a−1に「0100」と行われる。しかし、この場合、4つアドレス設定が行われなければならない所を、3つしか行われていないのでECU18−1では適正にアドレス設定が行われないことからオープン故障又はセンサ故障と判断することができる。
【0011】
つまり、何れの場合も、オープン故障かセンサ故障かを判断することができず、更に、どのセンサ部間でオープン故障が生じたのか、どのセンサ部がセンサ故障となったのかを特定することができない。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、どのセンサ部間でオープン故障が生じたのか、どのセンサ部がセンサ故障となったのかを特定することができる乗員保護システムの通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、車両衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の制御を行う電子制御ユニットであるECUと、このECUと通信するようにバススイッチ無しにデイジーチェーン接続され、車両の加速度を検出してECUへ送信する複数のセンサ部とを有し、ECUと各センサ部との通信時の初期化を行う際にセンサ部の出力電流値が予め定められた第1所定値以下の際にそのセンサ部が固有アドレスの設定を行うと共にその設定を行ったセンサ部の負荷電流を第1所定値以下とし、更にその設定完了の応答をECUに行う乗員保護システムの通信装置において、前記ECUは、当該ECUに接続された全センサ部への負荷電流を検出する電流検出手段と、当該電流検出手段での検出電流値が予め設定された全センサ接続数の負荷電流値以上の場合に、当該ECUとセンサ部間並びに各センサ部間の接続線の断線を表すオープン故障が無いと判定し、前記負荷電流値未満の場合に、当該検出電流値に対応するセンサ接続数の負荷電流値に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ECUの故障判定手段は、電流検出手段での検出電流値が、当該ECUにデイジーチェーン接続された全センサ接続数の負荷電流値未満の場合に、その検出電流値がN個(但し、1≦N<全センサ接続数)のセンサ接続に対応する負荷電流値である場合、ECUにはN個のセンサ部が接続されていると判定できる。この判定からN番目のセンサ部とN+1番目のセンサ部との間のオープン故障であると特定することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、車両衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の制御を行う電子制御ユニットであるECUと、このECUと通信するようにバススイッチ無しにデイジーチェーン接続され、車両の加速度を検出してECUへ送信する複数のセンサ部とを有し、ECUと各センサ部との通信時の初期化を行う際にセンサ部の出力電流値が予め定められた第1所定値以下の際にそのセンサ部が固有アドレスの設定を行うと共にその設定を行ったセンサ部の負荷電流を第1所定値以下とし、更にその設定完了の応答をECUに行う乗員保護システムの通信装置において、前記ECUは、当該ECUに接続された前記複数のセンサ部への印加電圧を下げる電圧降下手段と、当該ECUに接続された全センサ部への負荷電流を検出する電流検出手段と、前記電圧降下手段による印加電圧の降下中において、前記電流検出手段での検出電流値が、1つのセンサ部がオフ状態となった際に下がる一定電流値分下がった際にカウント動作を行い、このカウント数が当該ECUに予め定められて接続された全センサ数である場合に、当該ECUとセンサ部間並びに各センサ部間の接続線の断線を表すオープン故障が無いと判定し、当該カウント数が全センサ数未満の場合に、この全センサ数未満のカウント数に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ECUの電圧降下手段で、センサ部の個数分順次一定電圧レベルで電圧降下を行った際に、故障判定手段は、電流検出手段での検出電流値が一定電流値分下がる毎にカウント動作を行う。このカウント数がECUに予め定められて接続された全センサ数である場合はオープン故障無しと判定する。一方、カウント数が全センサ数未満の場合に、この全センサ数未満のカウント数に対応するセンサ数がNであったとすると、このN個のセンサ部における最後段のセンサ部、即ちN番目のセンサ部と、このN番目のセンサ部の後段センサ部、即ちN+1番目のセンサ部との間がオープン故障であると判定することができる。同様にして、カウント数に対応するセンサ数から、他のセンサ部間並びにECUとセンサ部間のオープン故障を特定することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記電圧降下手段は、前記ECUに接続されている動作中の最後段のセンサ部がオフ状態となる前記一定電流値に相当する電圧分ずつ断続的に降下させる動作をセンサ部の個数分順次行うことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、電圧降下手段が、各センサ部に印加する電圧を1つのセンサ部がオフ状態となる電圧分ΔVずつ下げる。つまり、印加電圧がΔVずつ下がる毎に、センサ電流検出手段での検出電流値が一定値ΔAずつ下がるので、故障判定手段がその都度カウント動作を行ってオープン故障の判定を行うことができる。この場合、印加電圧がΔVずつ下がるので、徐々に印加電圧を下げる場合よりもオープン故障の判定動作を速く行うことができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、前記電圧降下手段は、前記印加電圧を連続的に降下させることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、印加電圧を連続的に下げるので、電圧降下動作を容易とすることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記ECUは、前記故障判定命令を行う命令手段を更に備え、前記複数のセンサ部は、前記デイジーチェーン接続のための電源側と接地側との線の間に接続され、前記ECU側からの供給電流を一定量引き込んで当該ECU側へ流す定電流手段と、前記故障判定命令時に、各センサ部の個々で当該定電流手段のみを動作させる制御手段とを備え、前記故障判定手段は、前記命令手段による故障判定命令時に前記制御手段により前記定電流手段のみが動作された状態にあって、前記オープン故障の位置を特定することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、ECUの命令手段による故障判定命令時に、各センサ部の制御手段が定電流手段のみを動作させ、この状態でECUの故障判定手段が、電流検出手段での検出電流値に応じてオープン故障の位置を特定する。又は、ECUの故障判定手段が、電流検出手段での検出電流値が一定値下がる毎にカウントしたカウント数に応じてオープン故障の位置を特定する。この場合、各センサ部には定電流手段での一定電流のみしか流れず、他の負荷電流は流れないので、ECUの出力側並びに各センサ部におけるセンサ電流値にバラツキが無くなる。従って、ECUの電流検出手段でセンサ接続個数に応じた電流値を正確に検出することができるので、その検出電流値に応じたオープン故障の位置を適正に特定することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、前記複数のセンサ部は、当該複数のセンサ部の起動時に自センサ部に流れる電流値を検出し、この検出電流値が予め定められた第2所定値未満であれば故障有りと判定し、当該第2所定値以上であれば故障無しと判定する故障検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記故障検出手段により故障有りと判定された際に前記定電流手段の動作を継続し、前記故障無しと判定された際に当該定電流手段をオフとする制御を行い、前記故障判定手段は、前記固有アドレスの設定完了の応答が無い最後段のセンサ部を少なくともセンサ故障と特定することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、ECUにデイジーチェーン接続されたN+1個のセンサ部にオープン故障は無く、例えばN番目のセンサ部において故障検出手段で故障有りと判定して制御部手段により定電流手段の動作状態を継続しているとする。この場合、N+1番目のセンサ部では制御手段により固有アドレスの設定が正常に行われてその負荷電流が第1所定値以下とされる。しかし、N番目のセンサ部では故障有りなので固有アドレスの設定は行われず、また、N番目のセンサ部で定電流手段が動作状態となって一定電流が流れているので、N番目のセンサ部の前段側以前のN−1番目、N−2番目の各センサ部では出力電流値は第1所定値以下とならず、このため固有アドレスの設定を行うことができない。従って、ECUへ固有アドレスの設定完了の応答を返すことが出来ないので、ECUの故障判定手段は、N番目のセンサ部以前のものから固有アドレスの設定完了の応答が無いことを検出し、少なくともN番目のセンサ部がセンサ故障であると特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】車両における乗員保護システムの通信装置のECUと各センサ部を示す図である。
【図2】従来の乗員保護システムの通信装置におけるECUとこれにバス接続された各センサ部との構成を示す図である。
【図3】特許文献1の乗員保護システムの通信装置におけるECUとこれにバス接続された各センサ部との構成を示す図である。
【図4】特許文献1の乗員保護システムの通信装置におけるオープン故障を示す図である。
【図5】特許文献1の乗員保護システムの通信装置におけるセンサ故障を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る乗員保護システムの通信装置の構成を示し、(a)はECUとこれにバススイッチを用いずデイジーチェーン接続された各センサ部のブロック図、(b)は各センサ部のブロック図である。
【図7】第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するための第1のフローチャートである。
【図8】第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するための第2フローチャートである。
【図9】第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するための第3のフローチャートである。
【図10】第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するための第4のフローチャートである。
【図11】第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するための第5のフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る乗員保護システムの通信装置の構成を示すブロック図である。
【図13】(a)第2の実施形態の乗員保護システムの通信装置における全センサへの印加電流値、(b)ECUに接続された全センサ部への供給電流値を示す図である。
【図14】第2の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】(a)他の実施形態の乗員保護システムの通信装置における全センサへの印加電流値、(b)ECUに接続された全センサ部への供給電流値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
【0027】
(第1の実施形態)
図6は、本発明の第1の実施形態に係る乗員保護システムの通信装置の構成を示し、(a)はECUとこれにバススイッチを用いずデイジーチェーン接続された各センサ部のブロック図、(b)は各センサ部のブロック図である。但し、図6(a)に示す通信装置は、図1に示した車両10の乗員保護システムの通信装置に対応しており、従来要素と区別するために、ECU18の符号を18Eとし、各センサ部15a〜15dの符号を15a1〜15d4として表している。
【0028】
本実施形態の乗員保護システムの通信装置の特徴は、ECU18Eにセンサ電流検出部(電流検出手段)21と、故障判定部(故障判定手段)22とを備え、また、図6(b)に示すように、各センサ部15a1〜15d4に、ECU18Eにデイジーチェーン接続するための電源側とアース側の双方の線の間に接続された定電流部(定電流手段)31と、固有アドレスを記憶するRAM(Random Access Memory)等のメモリ部32aを有する制御部(制御手段)32と、電流検出部33と、加速度センサ34と、故障検出部(故障検出手段)35とを備えて構成したことにある。
【0029】
定電流部31は、ECU18Eから供給される入力電流のうち一定の電流値10mAをECU18E側に引き込んで流す動作を行う。
【0030】
電流検出部33は、自センサ部における出力側に流れる電流の値を検出し、この検出された電流値を制御部32へ出力する。
【0031】
故障検出部35は、電流検出部33の出力側の電源側とアース側の双方の線の間に直列に接続されたスイッチ35aと抵抗器35bとを備え、ECU18Eで電源起動又は再起動が行われて自センサ部が起動した場合、つまり自センサ部の定電流部31を含めた全ての負荷回路が作動状態となった場合、又は後述のオープン故障判定モード時に定電流部31のみが作動状態となった場合に、スイッチ35aが一定時間オンとなり、これにより電流検出部33に流れる電流を検出し、この検出電流値が所定値(第2所定値)未満であれば故障有りと判定し、第2所定値以上であれば故障無しと判定し、この結果を制御部32へ出力する。
【0032】
制御部32は、故障検出部35で故障有りと判定された際に定電流部31のオン状態を継続し、故障無しと判定された際に定電流部31をオフ状態とする制御を行う。この制御をセンサ故障検出制御(又はセンサ故障検出処理)と言う。また、定電流部31がオフとされて他の負荷回路が作動状態にある場合を動作モードと言う。
【0033】
また、制御部32は、ECU18Eからのオープン故障判定命令時に、各センサ部15a1〜15d4を定電流部31のみを動作させるオープン故障判定モードとする。この際に、あるセンサ部にセンサ故障があったとしても、上記のように故障検出部35で定電流部31をオン状態に継続するので、故障状態のセンサ部でも定電流部31のみが動作状態となる。
【0034】
更に、制御部32は、加速度センサ34で検出された車両10の加速度をECU18Eへ送信すると共にECU18Eから上述のオープン故障判定命令を含む各種命令を受信するなどECU18Eとの通信を制御し、また、センサ故障検出処理後のECU18Eからのアドレス設定命令時に、電流検出部33で検出された電流値が略0mA(第1所定値)以下の場合に、所定の固有アドレスをメモリ部32aに記憶して設定する。このアドレス設定が正常に完了した際に、設定アドレスの保持のみを行い自センサ部の電流値が略零に近い待機電力となるスリープモードに移行させる制御を行う。このスリープモードではセンサ部の負荷電流は、正確には略零(第1所定値)であるが、ここでは説明を簡単にするために0mAとする。また、アドレス設定後にECU18Eからアドレス設定確認命令が行われた際に、アドレス設定が正常に完了していればアドレス設定完了の応答をECU18Eへ返信する。但し、ECU18Eからの各種命令は、当該ECU18Eに設けられた図示せぬ命令手段が行うものとする。
【0035】
更には、制御部32は、ECU18Eからのスリープモード解除のコマンドを受信した場合に動作モードとする制御を行う。また、ECU18Eで電源起動又は再起動が行われた場合に、自センサ部の定電流部31を含めた全ての負荷回路を作動状態とする制御を行う。この制御後に、上記の故障検出部35による故障検出制御が行われる。
【0036】
センサ電流検出部21は、ECU18Eから全センサ部15a1〜15d4に流れる電流の値を検出する。全センサ部15a1〜15d4が動作モードにある場合、各センサ部15a1〜15d4には定電流部31以外の負荷回路に電流が流れている状態にあるので、図6(a)の時刻t1の行に示すように、4つのセンサ部15a1〜15d4の負荷電流10mAの合計値、即ち10mA×4=40mAの電流値を検出する。
【0037】
また、時刻t2に示すように、第4センサ部15d4にアドレス設定「0001」が行われてスリープモードとなった際には、第4センサ部15d4の電流値が0mAとなるので、第3センサ部15c3の出力側の電流値は0mAとなり、第2センサ部15b2の出力側は10mA、第1センサ部15a1の出力側は20mA、ECU18Eの出力側は30mAとなり、この30mAの電流値がセンサ電流検出部21で検出される。以降、時刻t3,t4に示すように、20mA、10mAの電流値がセンサ電流検出部21で検出され、全てのセンサ部15a1〜15d4がスリープモードになると時刻t5に示すようにセンサ電流検出部21での検出電流は0mAとなる。
【0038】
故障判定部22は、各センサ部15a1〜15d4のオープン故障を判定するためのオープン故障判定命令を出力し、この命令により各センサ部15a1〜15d4がオープン故障判定モードとなった後に、オープン故障の判定を行う。この判定は、オープン故障判定モード時にセンサ電流検出部21での検出電流値が、予め設定されたセンサ接続数の負荷電流値以上の場合はオープン故障無しと判定し、負荷電流値未満の場合は、その検出電流値をもとに、ECU18Eに接続されたセンサ部個数を検出してどの位置のオープン故障かを特定する判定を行う。例えば全センサ部個数が4の場合に、検出電流値からセンサ部個数が3であると検出された場合、ECU18Eには3つのセンサ部が接続され、4個目のセンサ部が切断状態となっていることになるので、3個目と4個目との間がオープン故障であると判定される。このオープン故障の有無の判定後、ECU18Eの命令で後段のセンサ部から順次行われる初期化処理時のアドレス設定において、アドレス設定完了の応答がECU18Eに返信されて来ない最後段のセンサ部を、少なくともセンサ故障と特定する判定を行う。
【0039】
次に、このような構成の乗員保護システムの通信装置の動作を、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
ステップS1において、ECU18Eから全センサ部15a1〜15d4に電源が供給された後、ステップS2において、全センサ部15a1〜15d4がオープン故障判定モードに移行したとする。このオープン故障判定モード時、各センサ部15a1〜15d4には定電流部31での一定電流10mAのみが流れるので、正常であればECU18Eの出力側の全センサ部15a1〜15d4の負荷電流値が40mAとなる。
【0041】
ステップS3において、ECU電流検出部21により全センサ部15a1〜15d4の負荷電流が検出され、ステップS4において、その検出電流値が40mA以上か否かが判定される。この結果が40mA以上であれば、ステップS5において、故障判定部22では、その検出電流値40mA以上が、予め設定されたセンサ接続数=4の負荷電流値以上なので、全センサ部15a1〜15d4の電流経路にオープン故障はないと判定される。
【0042】
このオープン故障無しの判定後、図8に示すステップS6において、ECU18Eにより各センサ部15a1〜15d4に対して再起動が行われる。これによって各センサ部15a1〜15d4が起動され、各々が定電流部31を含めた全ての負荷回路が作動状態となるので、ステップS7において、故障検出部35によりセンサ故障検出処理が行われる。即ち、定電流部31以外の負荷回路に流れる電流値が第2所定値(例えば10mA)未満であれば故障有りと判定されて制御部32により定電流部31のオン状態が継続され、第2所定値10mA以上であれば故障無しと判定されて定電流部31がオフ状態とされる。
【0043】
次に、ステップS8において、アドレス設定処理が行われる。これは各センサ部15a1〜15d4において、ECU18Eからアドレス設定命令が行われると、最後段のセンサ部15d4から前段に向かって順次アドレス設定が行われる。即ち、図6の時刻t1において、第4センサ部15d4において電流検出部33で検出された電流値が0mAの場合に、制御部32により所定の固有アドレス「0001」がメモリ部32aに設定される。このアドレス設定が正常に完了するとスリープモードに移行される。以降同様に、時刻t2,t3,t4,t5において、第3センサ部15c3、第2センサ部15b2、第1センサ部15a1の順にアドレス設定が行われる。
【0044】
一方、アドレス設定が完了せずにスリープモードに移行されない場合、第4センサ部15d4の前段の第3センサ部15c3では出力側の検出電流値が0mAとならないのでアドレス設定が行われず、この場合、第3センサ部15c3以前のセンサ部15b2,15a1で同様にアドレス設定が行われなくなる。
【0045】
また、上記ステップS7において、故障検出部35で故障が検出されて定電流部31のオン状態が継続されているセンサ部は、センサ故障なのでアドレス設定が行われず、このセンサ部の前段以前のセンサ部では電流検出部33での検出電流値が0mAとならないのでアドレス設定が行われない。つまり、センサ故障が発生したセンサ部以前のセンサ部ではアドレス設定が行われない。
【0046】
次に、ステップS9において、ECU18Eから最後段の第4センサ部15d4にアドレス設定確認命令が行われ、これによってアドレス設定が正常に完了していればアドレス設定完了の応答がECU18Eへ返信される。この返信をECU18Eの故障判定部22で確認し、アドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS11において、第4センサ部15d4以前のセンサ故障と特定される。この場合、オープン故障は無しで少なくとも第4センサ部15d4のセンサ故障と判定される。
【0047】
一方、第4センサ部15d4からアドレス設定完了の応答が返信されて来れば故障は無いので、ステップS12において、ECU18Eから第3センサ部15c3にアドレス設定確認命令が行われる。これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS14において、第3センサ部15c3以前のセンサ故障と特定される。この場合、オープン故障は無しで少なくとも第3センサ部15c3のセンサ故障と判定される。
【0048】
次に、第3センサ部15c3からアドレス設定完了の応答が返信されて来れば故障は無いので、ステップS15において、ECU18Eから第2センサ部15b2にアドレス設定確認命令が行われる。これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS17において、第2センサ部15b2以前のセンサ故障と特定される。この場合、オープン故障は無しで少なくとも第2センサ部15b2のセンサ故障と判定される。
【0049】
次に、第2センサ部15b2からアドレス設定完了の応答が返信されて来れば故障は無いので、ステップS18において、ECU18Eから第1センサ部15a1にアドレス設定確認命令が行われる。これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS19において、第1センサ部15a1のセンサ故障と特定される。この場合、オープン故障は無しで第1センサ部15a1のセンサ故障と判定される。
【0050】
また、第1センサ部15a1からアドレス設定完了の応答が返信されて来れば故障は無いので、ステップS21でセンサ故障無しと判定される。この場合、故障判定部22によりオープン故障及びセンサ故障が無く正常状態と判定され、故障判定処理が終了する。
【0051】
次に、図7の上記ステップS4において、検出電流値が40mA以上でなければ、ステップS22において、検出電流値が30mA以上40mA未満か否かを判定する。この結果が30mA以上40mA未満であれば、ステップS23において、故障判定部22で、その検出電流値30mA以上40mA未満が、センサ接続数=3の場合の負荷電流値なので、ECU18Eには3つのセンサ部15a1〜15c3が接続され、第4センサ部15d4は切離された状態となっており、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障と判定される。
【0052】
このオープン故障有りの判定後、図9に示すステップS6〜S8において、上述したと同様にECU18Eにより各センサ部15a1〜15d4に対して再起動が行われ、故障検出部35によりセンサ故障検出処理が行われ、更に、アドレス設定処理が行われる。ここでは、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障なので、ステップS12において、ECU18Eから第3センサ部15c3にアドレス設定確認命令が行われ、これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS13でセンサ故障と判定され、ステップS14において第3センサ部15c3以前のセンサ故障と特定される。この場合、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障で尚且つ少なくとも第3センサ部15c3のセンサ故障と判定される。
【0053】
以降上述と同様に、ステップS12〜S20において、第2センサ部15b2〜第1センサ部15a1のセンサ故障が判定される。ステップS21で第1センサ部15a1のセンサ故障無しと判定された場合、センサ故障は無く、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障と判定され、故障判定処理が終了する。
【0054】
次に、図7の上記ステップS22において、検出電流値が30mA以上40mA未満でなければ、ステップS23において、検出電流値が20mA以上30mA未満か否かを判定する。この結果が20mA以上30mA未満であれば、ステップS25において、故障判定部22で、その検出電流値20mA以上30mA未満が、センサ接続数=2の場合の負荷電流値なので、ECU18Eには2つのセンサ部15a1〜15b2が接続され、第3センサ部15c3以降は切離された状態となっており、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間のオープン故障と判定される。
【0055】
このオープン故障有りの判定後、図10に示すステップS6〜S8において、上述したと同様に各センサ部15a1〜15d4の再起動が行われ、この後、センサ故障検出処理が行われ、更に、アドレス設定処理が行われる。ここでは、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間のオープン故障なので、ステップS15において、ECU18Eから第2センサ部15b2にアドレス設定確認命令が行われ、これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS16でセンサ故障と判定され、ステップS17において第2センサ部15b2以前のセンサ故障と特定される。この場合、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間のオープン故障で尚且つ少なくとも第2センサ部15b2のセンサ故障と判定される。
【0056】
以降上述と同様に、ステップS18〜S20において、第1センサ部15a1のセンサ故障が判定され、ステップS21で第1センサ部15a1のセンサ故障無しと判定された場合、センサ故障は無く、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間のオープン故障と判定され、故障判定処理が終了する。
【0057】
次に、図7の上記ステップS24において、検出電流値が20mA以上30mA未満でなければ、ステップS26において、検出電流値が10mA以上20mA未満か否かを判定する。この結果が10mA以上20mA未満であれば、ステップS27において、故障判定部22で、その検出電流値10mA以上20mA未満が、センサ接続数=1の場合の負荷電流値なので、ECU18Eには1つのセンサ部15a1が接続され、第2センサ部15b2以降は切離された状態となっており、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間のオープン故障と判定される。
【0058】
このオープン故障有りの判定後、図11に示すステップS6〜S8において、上述したと同様に各センサ部15a1〜15d4の再起動、センサ故障検出処理、アドレス設定処理が行われる。ここでは、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間のオープン故障なので、ステップS18において、ECU18Eから第1センサ部15a1にアドレス設定確認命令が行われ、これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS19でセンサ故障と判定され、ステップS20において第1センサ部15a1のセンサ故障と特定される。この場合、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間のオープン故障で尚且つ第1センサ部15a1のセンサ故障と判定される。ステップS19からステップS21で第1センサ部15a1のセンサ故障無しと判定された場合、センサ故障は無く、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間のオープン故障と判定され、故障判定処理が終了する。
【0059】
次に、図7の上記ステップS26において、検出電流値が10mA以上20mA未満でなければ、ステップS28において、故障判定部22で、センサ接続数=0の場合の負荷電流値なので、ECU18Eには何も接続されておらず、ECU18Eと第1センサ部15a1との間のオープン故障と判定され、故障判定処理が終了する。
【0060】
この他、故障判定部22が各センサ部15a1〜15d4のオープン故障を判定する場合に、各センサ部15a1〜15d4の定電流部31及びその他の負荷回路を作動状態として行ってもよい。この場合、各センサ部15a1〜15d4には各々20mAの電流が流れるので、ECU18Eへのセンサ接続数が4の場合は80mA、3の場合は60mA、2の場合は40mA、1の場合は20mAとなるので、これらをセンサ電流検出部21で検出して故障判定部22でオープン故障の特定を行なえばよい。また、動作モード時にセンサ電流検出部21で出力電流値を検出して故障判定部22でオープン故障の特定を行なってもよい。
【0061】
このように第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置は、車両衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の制御を行う電子制御ユニットであるECU18Eと、このECU18Eと通信するようにバススイッチ無しにデイジーチェーン接続され、車両の加速度を検出してECU18Eへ送信する複数のセンサ部15a1〜15d4とを有し、ECU18Eと各センサ部15a1〜15d4との通信時の初期化を行う際にセンサ部の出力電流値が予め定められた第1所定値以下の際にそのセンサ部が固有アドレスの設定を行い、この設定完了の応答をECU18Eに行う。
【0062】
本実施形態の特徴は、ECU18Eが、ECU18Eに接続された複数のセンサ部15a1〜15d4の負荷電流を検出するセンサ電流検出部21と、センサ電流検出部21での検出電流値が予め設定された全センサ接続数の負荷電流値以上の場合に、ECU18Eとセンサ部15a1〜15d4間並びに各センサ部15a1〜15d4間の接続線の断線を表すオープン故障が無しと判定し、負荷電流値未満の場合に、検出電流値に対応するセンサ接続数の負荷電流値に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定部22とを備える構成としたことにある。
【0063】
この構成によって、ECU18Eの故障判定部22は、センサ電流検出部21での検出電流値が、ECU18Eにデイジーチェーン接続された全センサ接続数(例えば4個)の負荷電流値未満の場合に、その検出電流値がセンサ接続数(例えば3個)の負荷電流値である場合、ECU18Eには3個のセンサ部15a1〜15c3が接続されていると判定できる。この判定から第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障であると特定することができる。同様にして、他のセンサ部15a1〜15c3間並びにECU18Eと第1センサ部15a1間のオープン故障を特定することができる。
【0064】
また、ECU18Eは、故障判定命令を行う命令手段を更に備え、複数のセンサ部15a1〜15d4は、デイジーチェーン接続のための電源側と接地側との線の間に接続され、ECU18E側からの供給電流を一定量引き込んでECU18E側へ流す定電流部31と、ECU18Eからの故障判定命令時に、各センサ部15a1〜15d4の個々で定電流部31のみを動作させる制御部32とを備える。そして、故障判定部22が、命令手段による故障判定命令時に、制御部32により定電流部31のみが動作された状態にあって、センサ電流検出部21での検出電流値に応じてオープン故障の位置を特定するように構成しても良い。
【0065】
この構成によって、ECU18Eの命令手段による故障判定命令時に、各センサ部15a1〜15d4の制御部32が定電流部31のみを動作させ、この状態でECU18Eの故障判定部22が、センサ電流検出部21での検出電流値に応じてオープン故障の位置を特定する。この場合、各センサ部15a1〜15d4には定電流部31での一定電流のみしか流れず、他の負荷電流は流れないので、ECU18Eの出力側並びに各センサ部15a1〜15d4におけるセンサ電流値にバラツキが無くなる。従って、ECU18Eのセンサ電流検出部21でセンサ接続個数に応じた電流値を正確に検出することができるので、その検出電流値に応じたオープン故障の位置を適正に特定することができる。
【0066】
更に、複数のセンサ部15a1〜15d4は、当該センサ部15a11〜15d14の起動時にスイッチ35aを一定時間オンとして自センサ部の電流検出部33に流れる電流値を検出し、この検出電流値が予め定められた第2所定値未満であれば故障有りと判定し、第2所定値以上であれば故障無しと判定する故障検出部35を更に備え、制御部32は、故障検出部35により故障有りと判定された際に定電流部31のオン動作を継続し、故障無しと判定された際に定電流部31をオフとする制御を行う。故障判定部22は、固有アドレスの設定完了の応答が無い最後段のセンサ部を少なくともセンサ故障と特定するように構成した。
【0067】
この構成において、ECU18Eにデイジーチェーン接続された第1〜第4センサ部15a1〜15d4にオープン故障は無く、例えば第3センサ部15c3において故障検出部35で故障有りと判定して制御部32により定電流部31の動作状態を継続しているとする。この場合、第4センサ部15d4では制御部32により固有アドレスの設定が正常に行われてその負荷電流が第1所定値以下とされる。しかし、第3センサ部15c3では故障有りなので固有アドレスの設定は行われず、また、第3センサ部15c3で定電流部31が動作状態となって一定電流が流れているので、第3センサ部15c3の前段以前の第2、第1の各センサ部15b2,15a1では出力電流値は第1所定値以下とならず、このため固有アドレスの設定を行うことができない。従って、ECU18Eへ固有アドレスの設定完了の応答を返すことが出来ないので、ECU18Eの故障判定部22は、第3センサ部15c3以前のものから固有アドレスの設定完了の応答が無いことを検出し、少なくとも第3センサ部15c3がセンサ故障であると特定する。
【0068】
(第2の実施形態)
図12は、本発明の第2の実施形態に係る乗員保護システムの通信装置の構成を示し、(a)はECUとこれにバススイッチを用いずデイジーチェーン接続された各センサ部のブロック図、(b)は各センサ部のブロック図である。
【0069】
第2の実施形態の乗員保護システムの通信装置が第1実施形態のものと異なる点は、ECU18E−1に、電圧降下部(電圧降下手段)41と、センサ電流検出部(電流検出手段)21と、故障判定部(故障判定手段)43とを備えた点にある。
【0070】
電圧降下部41は、各センサ部15a1〜15d4に印加する電圧を徐々に降下する。ここで、各センサ部15a1〜15d4は、電流検出部33に電流検出用の抵抗器を備えているため、後段のセンサ部になるほどその抵抗器による電圧降下のためにセンサ部への入力電圧が低くなっている。このため、電圧降下部41で徐々に電圧を降下した場合、この降下電圧値が図13(a)の時刻t12に示すように一定レベルΔV下がった際に、まず最後段の第4センサ部15d4がオフ状態となる。
【0071】
このオフ状態は、その電圧降下によってセンサ入力電圧V1が一定レベルΔV下がってV2となり、電流検出部33での検出電流値が一定値下がると制御部32が自センサ部をオフ状態とする。このオフ状態によって当該センサ部がデイジーチェーン接続から切離されたと同様の状態となるので、ECU18E−1には4個から3個のセンサ部15a1〜15c3が接続された状態となる。以降同様に、センサ入力電圧が一定レベルΔV降下する毎に第3センサ部15c3、第2センサ部15b2、第1センサ部15a1と順番にオフ状態となる。
【0072】
センサ電流検出部21は、ECU18E−1から全センサ部15a1〜15d4に流れる電流の値を検出する。
【0073】
故障判定部43は、センサ電流検出部21での検出電流値が図13(b)の時刻t12〜t15に示すように一定値ΔA下がる毎に1ずつカウント動作を行い、このカウント数に応じたセンサ個数を検出してどの位置のオープン故障かを特定する判定を行う。つまり、各センサ部15a1〜15d4が4個接続されている場合に、電圧降下部41で印加電圧がΔVづつ下がって後段センサ部から順次停止状態となり、全てのセンサ部15a11〜15d14が停止状態となった場合、オープン故障がなければカウント数は「4」となる。ここで、カウント数が「3」であればECU18E−1には3個のセンサ部が接続されていることになるので、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間がオープン故障であると判定できる。
【0074】
同様に、カウント数が「2」であればECU18E−1には2個のセンサ部が接続されていることになるので、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間がオープン故障、カウント数が「1」であればECU18E−1には1個のセンサ部が接続されていることになるので、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間がオープン故障、カウント数が「0」であればECU18E−1にはセンサ部が接続されていないことになるので、ECU18E−1と第1センサ部15a1との間がオープン故障であると判定できる。
【0075】
更に、故障判定部43は、そのオープン故障の有無の判定後、上記第1実施形態と同様にECU18E−1の命令で後段センサ部から順次行われる初期化処理時のアドレス設定において、アドレス設定完了の応答がECU18E−1に返信されて来ない最後段のセンサ部を、少なくともセンサ故障と特定する判定を行う。
【0076】
次に、このような構成の乗員保護システムの通信装置の動作を、図14のフローチャートを参照して説明する。
【0077】
ステップS1において、ECU18E−1から全センサ部15a1〜15d4に電源が供給された後、ステップS2において、全センサ部15a1〜15d4がオープン故障判定モードに移行する。このオープン故障判定モード時、図13(a)に時刻t11−t12間に示すように、ECU18E−1から全センサ部15a11〜15d14に印加される電圧V1は、正常であれば4.2Vであるとする。また、図13(b)に時刻t11−t12間に示すように、ECU18E−1の出力側の全センサ部15a1〜15d4の負荷電流値は、正常であれば40mAであるとする。
【0078】
次に、ステップS31において、ECU18E−1の電圧降下部41により図13(a)の時刻t12に示すように全センサ部15a11〜15d14への印加電圧V1が一定レベルΔV=50mV下げられ、電圧V2=4.15Vとなったとする。これによって最後段の第4センサ部15d4がオフ状態となり、ECU18E−1のセンサ電流検出部21での検出電流A1=40mAが、図13(b)に時刻t13で示すように一定値ΔA=10mA下がり、A2=30mAとなったとする。故障判定部43は、ステップS32において、センサ電流検出部21での検出電流値が一定値ΔA下がったことを検出し、1回カウント動作を行う。これによってカウント数が「1」となる。
【0079】
このステップS31とS32との動作が、全センサ数繰り返される。つまり、電圧降下部41により時刻t13,t14,t15で示すように順次ΔVずつ下げられ、これによってECU18E−1からセンサ部への印加電圧値がV3,V4,V5と順次下がる。この印加電圧の低下に応じて後段センサ部から順次オフ状態となると、図13(b)に時刻t13,t14,t15で示すように、センサ電流検出部21での検出電流値が順次ΔAずつ下がり、A3,A4,A5と順次下がる。
【0080】
このステップS31とS32との動作が全センサ数繰り返された後、ステップS33〜S36において、故障判定部43でカウント数が判定される。まず、ステップS33において、カウント数が全センサ数に対応した4回か否かが判定される。4回であれば、ステップS5において、センサ数が予め設定されたセンサ接続数=4なので、全センサ部15a1〜15d4の電流経路にオープン故障はないと判定される。このオープン故障無しの判定後は、故障判定部43により、第1実施形態で説明したと同様に図8に示すフローチャートに従い各センサ部15a1〜15d4のセンサ故障の判定処理が行われる。
【0081】
次に、上記ステップS33においてカウント数が4回でなければ、ステップS34において、カウント数が3回か否かが判定される。この結果、3回であれば、ステップS23において、センサ接続数が3であり、ECU18E−1には3つのセンサ部15a1〜15c3が接続され、第4センサ部15d4は切離された状態となっており、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障と判定される。このオープン故障有りの判定後は、故障判定部43により、上述したと同様に図9に示すフローチャートに従い3つのセンサ部15a1〜15c3のセンサ故障の判定処理が行われる。
【0082】
次に、上記ステップS34においてカウント数が3回でなければ、ステップS35において、カウント数が2回か否かが判定される。この結果、2回であれば、ステップS25において、センサ接続数が2であり、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間のオープン故障と判定される。このオープン故障有りの判定後は、故障判定部43により、上述したと同様に図10に示すフローチャートに従い2つのセンサ部15a1〜15b2のセンサ故障の判定処理が行われる。
【0083】
次に、上記ステップS35においてカウント数が2回でなければ、ステップS36において、カウント数が1回か否かが判定される。この結果、1回であれば、ステップS27において、センサ接続数が1であり、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間のオープン故障と判定される。このオープン故障有りの判定後は、故障判定部43により、上述したと同様に図11に示すフローチャートに従い1つのセンサ部15a1のセンサ故障の判定処理が行われる。
【0084】
次に、上記ステップS36においてカウント数が1回でなければ、ステップS28において、センサ接続数が0であり、ECU18E−1と第1センサ部15a1との間のオープン故障と判定され、故障判定処理が終了する。
【0085】
この他、故障判定部22が各センサ部15a1〜15d4のオープン故障を判定する場合に、各センサ部15a1〜15d4の定電流部31及びその他の負荷回路を作動状態として行ってもよい。この場合、各センサ部15a1〜15d4には各々20mAの電流が流れるので、ECU18E−1へのセンサ接続数が4の場合は80mA、3の場合は60mA、2の場合は40mA、1の場合は20mAとなるので、これらの電流値を電圧降下部41での電圧降下時にセンサ電流検出部21で検出し、故障判定部43でオープン故障の特定を行えばよい。また、動作モード時にセンサ電流検出部21で出力電流値を検出して故障判定部43でオープン故障の特定を行ってもよい。
【0086】
このように第2の実施形態の乗員保護システムの通信装置は、ECU18E−1に、ECU18E−1に接続された複数のセンサ部15a11〜15d14への印加電圧を下げる電圧降下部41と、ECU18E−1に接続された全センサ部15a11〜15d14への負荷電流を検出するセンサ電流検出部21と、センサ電流検出部21での検出電流値が、1つのセンサ部がオフ状態となった際に下がる一定電流値ΔA分下がった際にカウント動作を行い、このカウント数がECU18E−1に予め定められて接続された全センサ数(=4)である場合に、ECU18E−1とセンサ部間並びに各センサ部間の接続線の断線を表すオープン故障が無しと判定し、カウント数が全センサ数未満(4未満)の場合に、この全センサ数未満のカウント数に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定部43とを備えた。
【0087】
この構成によって、ECU18E−1の電圧降下部41で、センサ部の個数分順次一定電圧レベルΔVで電圧降下を行った際に、故障判定部43は、センサ電流検出部21での検出電流値が一定電流値ΔA分下がる毎にカウント動作を行う。このカウント数がECU18E−1に予め定められて接続された全センサ数である場合はオープン故障無しと判定する。一方、カウント数が全センサ数未満の場合に、この全センサ数未満のカウント数に対応するセンサ数が3であったとすると、この3個のセンサ部における最後段のセンサ部、即ち第3センサ部15c3と、この第3センサ部15c3の後段センサ部、即ち第4センサ部15d4との間がオープン故障であると判定することができる。同様にして、カウント数に対応するセンサ数から、他のセンサ部間並びにECU18E−1とセンサ部間のオープン故障を特定することができる。
【0088】
この他、電圧降下部41が、各センサ部15a1〜15d4に印加する電圧をΔVずつ下げるようにしても良い。この場合も、印加電圧がΔVずつ下がる毎に、センサ電流検出部21での検出電流値が一定値ΔAずつ下がるので、故障判定部43がその都度カウント動作を行ってオープン故障の判定を行うことができる。この場合、印加電圧がΔVずつ下がるので、徐々に印加電圧を下げる場合よりもオープン故障の判定動作を速く行うことができる。
【0089】
また、図15(a)に示すように、電圧降下部41は、複数のセンサ部15a11〜15d14への印加電圧を直線状に一定レベル連続的に下降するようにしても良い。この場合も、電圧が下降する過程でセンサ入力電圧がV1,V2,V3,V4,V5と下がり、その都度、センサ電流検出部21での検出電流値が一定電流値ΔA分下がるので、故障判定部43は、そのΔA分下がる都度カウント動作を行ってオープン故障の判定を行うことができる。この場合、印加電圧を連続的に直線状に下げるので、電圧降下動作を容易とすることができる。
【符号の説明】
【0090】
15a11〜15d14 センサ部
18E,18E−1 ECU
21 センサ電流検出部
22,43 故障判定部
31 定電流部
32 制御部
32a メモリ部
34 加速度センサ
35 故障検出部
35a スイッチ
35b 抵抗器
41 電圧降下部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時に乗員を保護するエアバッグ等の乗員保護装置に用いられるECU(電子制御ユニット)と、このECUにデイジーチェーン接続され、車両の加速度等を検出する複数のセンサ部とを有する乗員保護システムの通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エアバッグやシートベルトプリテンショナ等の乗員保護装置が多くの車両に装着されており、この乗員保護装置を備える乗員保護システムは、図1に示すように、車両10の前方両サイドに搭載されたフロントセンサ部11a,11bと、助手席や後部座席に搭載されたセーフィングセンサ部13a,13bと、車両10の両サイドに搭載された複数のセンサ部15a,15b,15c、15d及び16a,16b,16c,16dとを有し、これらセンサ部がエアバッグ用のECU18に接続されて成る通信装置を備えている。この通信装置の各センサ部11a,11b,13a,13b,15a〜15d及び16a〜16dで加速度等を検出し、この検出に応じてECU18で図示せぬエアバッグを作動させる。但し、各センサ部11a,11b,13a,13b,15a〜15d及び16a〜16dは、IC(Integrated Circuit)チップで構成されている。
【0003】
この通信装置において、両サイドのセンサ部15a〜15d及び16a〜16dは、図2に各センサ部15a〜15dを代表して表すように、各々が内部にバススイッチ26a〜26dを有してECU18にバス接続されており、車両10の電源投入時にECU18に近いセンサ部から順にアドレスを設定する初期化を行ってバススイッチ26a〜26dを閉じるようになっている。
【0004】
つまり、ECU18に最も近い第1のセンサ部15aにアドレス設定したらバススイッチ26aを閉じて第2のセンサ部15bにECU18を接続する。次に、ECU18から第2のセンサ部15bにアドレス設定したらバススイッチ26bを閉じて第3のセンサ部15cにECU18を接続し、次に、第3のセンサ部15cにアドレス設定したらバススイッチ26cを閉じて第4のセンサ部15dにECU18を接続するといった順に初期化が行われる。また、各センサ部15a〜15dは、アドレス設定後にECU18に応答を返すようになっている。
【0005】
このようにECU18に両サイドの各センサ部15a〜15d及び16a〜16dをバス接続する場合、ICチップにより構成されるセンサ部の内部にバススイッチを搭載する必要があるため、チップサイズが大きくなってしまう。また、バススイッチ自体がインピーダンスを持つので、複数個がバス接続されると各センサ部15a〜15d及び16a〜16dによるインピーダンスの電圧降下で末端センサ部の15d,16dの電圧降下が大きくなってしまう。更に、バススイッチの電源側とグランド側とのインピーダンスマッチングが崩れノイズ源となりノイズが発生してしまう。
【0006】
これらの欠点を解消するために特許文献1に記載の通信装置のように、バススイッチを用いたバス接続を行わない構成がある。この構成は、図3に示すように、ECU18−1にバススイッチを用いずセンサ部15a−1〜15d−1がデイジーチェーン接続されている。この構成によって、最後段のセンサ部15d−1から時刻t1に示すようにアドレス設定「0001」を行った後スリープモードに移行する。これによりスリープモードとなった第4センサ部15d−1には電流が流れなくなるので、第3センサ部15c−1が最後段となりアドレス設定が可能な状態となる。そこで上記同様に第3センサ部15c−1において時刻t2に示すようにアドレス設定「0010」を行った後スリープモードに移行し、以降同様にECU18−1側に近づく順に、時刻t3,t4で示すように順次アドレス設定「0100」、「1000」を行ってスリープモードに移行し、初期化を完了させる。この完了後にECU18−1がスリープモード解除コマンドを送信して各センサ部15a−1〜15d−1が動作モードに復帰するようになっている。これによって、バススイッチを不要とし、上記欠点を解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−137840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の特許文献1の乗員保護システムの通信装置においては、例えば図4に×印で示すように、第1センサ部15a−1と第2センサ部15b−1との接続線が断線(オープン故障)した場合、又は図5に×印で示すように、ECU18−1から最後段のセンサ部15d−1までの電流経路は正常だが第3センサ部15c−1が故障(センサ故障)した場合、後述でその理由を説明するようにオープン故障かセンサ故障かを判断することができず、更に、どのセンサ部間でオープン故障が生じたのか、どのセンサ部がセンサ故障となったのかを特定することができないという問題がある。
【0009】
即ち、ECU18−1でオープン故障又はセンサ故障を判断する場合、初期設定時のアドレス設定が正常に行えたか否かを判断することで行うようになっている。図4の場合、第1センサ部15a−1が最後段となっているため、まず第1センサ部15a−1にアドレス設定「0001」が行われるが、その後、第1センサ部15a−1をスリープモードとした場合、ECU18−1に接続されているセンサ部は無いので、アドレス設定が1回しか行われなくなる。そこでECU18−1では適正にアドレス設定が行われないことからオープン故障又はセンサ故障と判断することができる。
【0010】
図5の場合、最後段のセンサ部15d−1にアドレス設定「0001」を行った後スリープモードに移行すると、第3センサ部15c−1がセンサ故障なので、次のアドレス設定が第2センサ部15b−1に対して「0010」と行われ、この後、第1センサ部15a−1に「0100」と行われる。しかし、この場合、4つアドレス設定が行われなければならない所を、3つしか行われていないのでECU18−1では適正にアドレス設定が行われないことからオープン故障又はセンサ故障と判断することができる。
【0011】
つまり、何れの場合も、オープン故障かセンサ故障かを判断することができず、更に、どのセンサ部間でオープン故障が生じたのか、どのセンサ部がセンサ故障となったのかを特定することができない。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、どのセンサ部間でオープン故障が生じたのか、どのセンサ部がセンサ故障となったのかを特定することができる乗員保護システムの通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、車両衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の制御を行う電子制御ユニットであるECUと、このECUと通信するようにバススイッチ無しにデイジーチェーン接続され、車両の加速度を検出してECUへ送信する複数のセンサ部とを有し、ECUと各センサ部との通信時の初期化を行う際にセンサ部の出力電流値が予め定められた第1所定値以下の際にそのセンサ部が固有アドレスの設定を行うと共にその設定を行ったセンサ部の負荷電流を第1所定値以下とし、更にその設定完了の応答をECUに行う乗員保護システムの通信装置において、前記ECUは、当該ECUに接続された全センサ部への負荷電流を検出する電流検出手段と、当該電流検出手段での検出電流値が予め設定された全センサ接続数の負荷電流値以上の場合に、当該ECUとセンサ部間並びに各センサ部間の接続線の断線を表すオープン故障が無いと判定し、前記負荷電流値未満の場合に、当該検出電流値に対応するセンサ接続数の負荷電流値に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ECUの故障判定手段は、電流検出手段での検出電流値が、当該ECUにデイジーチェーン接続された全センサ接続数の負荷電流値未満の場合に、その検出電流値がN個(但し、1≦N<全センサ接続数)のセンサ接続に対応する負荷電流値である場合、ECUにはN個のセンサ部が接続されていると判定できる。この判定からN番目のセンサ部とN+1番目のセンサ部との間のオープン故障であると特定することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、車両衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の制御を行う電子制御ユニットであるECUと、このECUと通信するようにバススイッチ無しにデイジーチェーン接続され、車両の加速度を検出してECUへ送信する複数のセンサ部とを有し、ECUと各センサ部との通信時の初期化を行う際にセンサ部の出力電流値が予め定められた第1所定値以下の際にそのセンサ部が固有アドレスの設定を行うと共にその設定を行ったセンサ部の負荷電流を第1所定値以下とし、更にその設定完了の応答をECUに行う乗員保護システムの通信装置において、前記ECUは、当該ECUに接続された前記複数のセンサ部への印加電圧を下げる電圧降下手段と、当該ECUに接続された全センサ部への負荷電流を検出する電流検出手段と、前記電圧降下手段による印加電圧の降下中において、前記電流検出手段での検出電流値が、1つのセンサ部がオフ状態となった際に下がる一定電流値分下がった際にカウント動作を行い、このカウント数が当該ECUに予め定められて接続された全センサ数である場合に、当該ECUとセンサ部間並びに各センサ部間の接続線の断線を表すオープン故障が無いと判定し、当該カウント数が全センサ数未満の場合に、この全センサ数未満のカウント数に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ECUの電圧降下手段で、センサ部の個数分順次一定電圧レベルで電圧降下を行った際に、故障判定手段は、電流検出手段での検出電流値が一定電流値分下がる毎にカウント動作を行う。このカウント数がECUに予め定められて接続された全センサ数である場合はオープン故障無しと判定する。一方、カウント数が全センサ数未満の場合に、この全センサ数未満のカウント数に対応するセンサ数がNであったとすると、このN個のセンサ部における最後段のセンサ部、即ちN番目のセンサ部と、このN番目のセンサ部の後段センサ部、即ちN+1番目のセンサ部との間がオープン故障であると判定することができる。同様にして、カウント数に対応するセンサ数から、他のセンサ部間並びにECUとセンサ部間のオープン故障を特定することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記電圧降下手段は、前記ECUに接続されている動作中の最後段のセンサ部がオフ状態となる前記一定電流値に相当する電圧分ずつ断続的に降下させる動作をセンサ部の個数分順次行うことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、電圧降下手段が、各センサ部に印加する電圧を1つのセンサ部がオフ状態となる電圧分ΔVずつ下げる。つまり、印加電圧がΔVずつ下がる毎に、センサ電流検出手段での検出電流値が一定値ΔAずつ下がるので、故障判定手段がその都度カウント動作を行ってオープン故障の判定を行うことができる。この場合、印加電圧がΔVずつ下がるので、徐々に印加電圧を下げる場合よりもオープン故障の判定動作を速く行うことができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、前記電圧降下手段は、前記印加電圧を連続的に降下させることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、印加電圧を連続的に下げるので、電圧降下動作を容易とすることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記ECUは、前記故障判定命令を行う命令手段を更に備え、前記複数のセンサ部は、前記デイジーチェーン接続のための電源側と接地側との線の間に接続され、前記ECU側からの供給電流を一定量引き込んで当該ECU側へ流す定電流手段と、前記故障判定命令時に、各センサ部の個々で当該定電流手段のみを動作させる制御手段とを備え、前記故障判定手段は、前記命令手段による故障判定命令時に前記制御手段により前記定電流手段のみが動作された状態にあって、前記オープン故障の位置を特定することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、ECUの命令手段による故障判定命令時に、各センサ部の制御手段が定電流手段のみを動作させ、この状態でECUの故障判定手段が、電流検出手段での検出電流値に応じてオープン故障の位置を特定する。又は、ECUの故障判定手段が、電流検出手段での検出電流値が一定値下がる毎にカウントしたカウント数に応じてオープン故障の位置を特定する。この場合、各センサ部には定電流手段での一定電流のみしか流れず、他の負荷電流は流れないので、ECUの出力側並びに各センサ部におけるセンサ電流値にバラツキが無くなる。従って、ECUの電流検出手段でセンサ接続個数に応じた電流値を正確に検出することができるので、その検出電流値に応じたオープン故障の位置を適正に特定することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、前記複数のセンサ部は、当該複数のセンサ部の起動時に自センサ部に流れる電流値を検出し、この検出電流値が予め定められた第2所定値未満であれば故障有りと判定し、当該第2所定値以上であれば故障無しと判定する故障検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記故障検出手段により故障有りと判定された際に前記定電流手段の動作を継続し、前記故障無しと判定された際に当該定電流手段をオフとする制御を行い、前記故障判定手段は、前記固有アドレスの設定完了の応答が無い最後段のセンサ部を少なくともセンサ故障と特定することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、ECUにデイジーチェーン接続されたN+1個のセンサ部にオープン故障は無く、例えばN番目のセンサ部において故障検出手段で故障有りと判定して制御部手段により定電流手段の動作状態を継続しているとする。この場合、N+1番目のセンサ部では制御手段により固有アドレスの設定が正常に行われてその負荷電流が第1所定値以下とされる。しかし、N番目のセンサ部では故障有りなので固有アドレスの設定は行われず、また、N番目のセンサ部で定電流手段が動作状態となって一定電流が流れているので、N番目のセンサ部の前段側以前のN−1番目、N−2番目の各センサ部では出力電流値は第1所定値以下とならず、このため固有アドレスの設定を行うことができない。従って、ECUへ固有アドレスの設定完了の応答を返すことが出来ないので、ECUの故障判定手段は、N番目のセンサ部以前のものから固有アドレスの設定完了の応答が無いことを検出し、少なくともN番目のセンサ部がセンサ故障であると特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】車両における乗員保護システムの通信装置のECUと各センサ部を示す図である。
【図2】従来の乗員保護システムの通信装置におけるECUとこれにバス接続された各センサ部との構成を示す図である。
【図3】特許文献1の乗員保護システムの通信装置におけるECUとこれにバス接続された各センサ部との構成を示す図である。
【図4】特許文献1の乗員保護システムの通信装置におけるオープン故障を示す図である。
【図5】特許文献1の乗員保護システムの通信装置におけるセンサ故障を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る乗員保護システムの通信装置の構成を示し、(a)はECUとこれにバススイッチを用いずデイジーチェーン接続された各センサ部のブロック図、(b)は各センサ部のブロック図である。
【図7】第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するための第1のフローチャートである。
【図8】第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するための第2フローチャートである。
【図9】第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するための第3のフローチャートである。
【図10】第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するための第4のフローチャートである。
【図11】第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するための第5のフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る乗員保護システムの通信装置の構成を示すブロック図である。
【図13】(a)第2の実施形態の乗員保護システムの通信装置における全センサへの印加電流値、(b)ECUに接続された全センサ部への供給電流値を示す図である。
【図14】第2の実施形態の乗員保護システムの通信装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】(a)他の実施形態の乗員保護システムの通信装置における全センサへの印加電流値、(b)ECUに接続された全センサ部への供給電流値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
【0027】
(第1の実施形態)
図6は、本発明の第1の実施形態に係る乗員保護システムの通信装置の構成を示し、(a)はECUとこれにバススイッチを用いずデイジーチェーン接続された各センサ部のブロック図、(b)は各センサ部のブロック図である。但し、図6(a)に示す通信装置は、図1に示した車両10の乗員保護システムの通信装置に対応しており、従来要素と区別するために、ECU18の符号を18Eとし、各センサ部15a〜15dの符号を15a1〜15d4として表している。
【0028】
本実施形態の乗員保護システムの通信装置の特徴は、ECU18Eにセンサ電流検出部(電流検出手段)21と、故障判定部(故障判定手段)22とを備え、また、図6(b)に示すように、各センサ部15a1〜15d4に、ECU18Eにデイジーチェーン接続するための電源側とアース側の双方の線の間に接続された定電流部(定電流手段)31と、固有アドレスを記憶するRAM(Random Access Memory)等のメモリ部32aを有する制御部(制御手段)32と、電流検出部33と、加速度センサ34と、故障検出部(故障検出手段)35とを備えて構成したことにある。
【0029】
定電流部31は、ECU18Eから供給される入力電流のうち一定の電流値10mAをECU18E側に引き込んで流す動作を行う。
【0030】
電流検出部33は、自センサ部における出力側に流れる電流の値を検出し、この検出された電流値を制御部32へ出力する。
【0031】
故障検出部35は、電流検出部33の出力側の電源側とアース側の双方の線の間に直列に接続されたスイッチ35aと抵抗器35bとを備え、ECU18Eで電源起動又は再起動が行われて自センサ部が起動した場合、つまり自センサ部の定電流部31を含めた全ての負荷回路が作動状態となった場合、又は後述のオープン故障判定モード時に定電流部31のみが作動状態となった場合に、スイッチ35aが一定時間オンとなり、これにより電流検出部33に流れる電流を検出し、この検出電流値が所定値(第2所定値)未満であれば故障有りと判定し、第2所定値以上であれば故障無しと判定し、この結果を制御部32へ出力する。
【0032】
制御部32は、故障検出部35で故障有りと判定された際に定電流部31のオン状態を継続し、故障無しと判定された際に定電流部31をオフ状態とする制御を行う。この制御をセンサ故障検出制御(又はセンサ故障検出処理)と言う。また、定電流部31がオフとされて他の負荷回路が作動状態にある場合を動作モードと言う。
【0033】
また、制御部32は、ECU18Eからのオープン故障判定命令時に、各センサ部15a1〜15d4を定電流部31のみを動作させるオープン故障判定モードとする。この際に、あるセンサ部にセンサ故障があったとしても、上記のように故障検出部35で定電流部31をオン状態に継続するので、故障状態のセンサ部でも定電流部31のみが動作状態となる。
【0034】
更に、制御部32は、加速度センサ34で検出された車両10の加速度をECU18Eへ送信すると共にECU18Eから上述のオープン故障判定命令を含む各種命令を受信するなどECU18Eとの通信を制御し、また、センサ故障検出処理後のECU18Eからのアドレス設定命令時に、電流検出部33で検出された電流値が略0mA(第1所定値)以下の場合に、所定の固有アドレスをメモリ部32aに記憶して設定する。このアドレス設定が正常に完了した際に、設定アドレスの保持のみを行い自センサ部の電流値が略零に近い待機電力となるスリープモードに移行させる制御を行う。このスリープモードではセンサ部の負荷電流は、正確には略零(第1所定値)であるが、ここでは説明を簡単にするために0mAとする。また、アドレス設定後にECU18Eからアドレス設定確認命令が行われた際に、アドレス設定が正常に完了していればアドレス設定完了の応答をECU18Eへ返信する。但し、ECU18Eからの各種命令は、当該ECU18Eに設けられた図示せぬ命令手段が行うものとする。
【0035】
更には、制御部32は、ECU18Eからのスリープモード解除のコマンドを受信した場合に動作モードとする制御を行う。また、ECU18Eで電源起動又は再起動が行われた場合に、自センサ部の定電流部31を含めた全ての負荷回路を作動状態とする制御を行う。この制御後に、上記の故障検出部35による故障検出制御が行われる。
【0036】
センサ電流検出部21は、ECU18Eから全センサ部15a1〜15d4に流れる電流の値を検出する。全センサ部15a1〜15d4が動作モードにある場合、各センサ部15a1〜15d4には定電流部31以外の負荷回路に電流が流れている状態にあるので、図6(a)の時刻t1の行に示すように、4つのセンサ部15a1〜15d4の負荷電流10mAの合計値、即ち10mA×4=40mAの電流値を検出する。
【0037】
また、時刻t2に示すように、第4センサ部15d4にアドレス設定「0001」が行われてスリープモードとなった際には、第4センサ部15d4の電流値が0mAとなるので、第3センサ部15c3の出力側の電流値は0mAとなり、第2センサ部15b2の出力側は10mA、第1センサ部15a1の出力側は20mA、ECU18Eの出力側は30mAとなり、この30mAの電流値がセンサ電流検出部21で検出される。以降、時刻t3,t4に示すように、20mA、10mAの電流値がセンサ電流検出部21で検出され、全てのセンサ部15a1〜15d4がスリープモードになると時刻t5に示すようにセンサ電流検出部21での検出電流は0mAとなる。
【0038】
故障判定部22は、各センサ部15a1〜15d4のオープン故障を判定するためのオープン故障判定命令を出力し、この命令により各センサ部15a1〜15d4がオープン故障判定モードとなった後に、オープン故障の判定を行う。この判定は、オープン故障判定モード時にセンサ電流検出部21での検出電流値が、予め設定されたセンサ接続数の負荷電流値以上の場合はオープン故障無しと判定し、負荷電流値未満の場合は、その検出電流値をもとに、ECU18Eに接続されたセンサ部個数を検出してどの位置のオープン故障かを特定する判定を行う。例えば全センサ部個数が4の場合に、検出電流値からセンサ部個数が3であると検出された場合、ECU18Eには3つのセンサ部が接続され、4個目のセンサ部が切断状態となっていることになるので、3個目と4個目との間がオープン故障であると判定される。このオープン故障の有無の判定後、ECU18Eの命令で後段のセンサ部から順次行われる初期化処理時のアドレス設定において、アドレス設定完了の応答がECU18Eに返信されて来ない最後段のセンサ部を、少なくともセンサ故障と特定する判定を行う。
【0039】
次に、このような構成の乗員保護システムの通信装置の動作を、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
ステップS1において、ECU18Eから全センサ部15a1〜15d4に電源が供給された後、ステップS2において、全センサ部15a1〜15d4がオープン故障判定モードに移行したとする。このオープン故障判定モード時、各センサ部15a1〜15d4には定電流部31での一定電流10mAのみが流れるので、正常であればECU18Eの出力側の全センサ部15a1〜15d4の負荷電流値が40mAとなる。
【0041】
ステップS3において、ECU電流検出部21により全センサ部15a1〜15d4の負荷電流が検出され、ステップS4において、その検出電流値が40mA以上か否かが判定される。この結果が40mA以上であれば、ステップS5において、故障判定部22では、その検出電流値40mA以上が、予め設定されたセンサ接続数=4の負荷電流値以上なので、全センサ部15a1〜15d4の電流経路にオープン故障はないと判定される。
【0042】
このオープン故障無しの判定後、図8に示すステップS6において、ECU18Eにより各センサ部15a1〜15d4に対して再起動が行われる。これによって各センサ部15a1〜15d4が起動され、各々が定電流部31を含めた全ての負荷回路が作動状態となるので、ステップS7において、故障検出部35によりセンサ故障検出処理が行われる。即ち、定電流部31以外の負荷回路に流れる電流値が第2所定値(例えば10mA)未満であれば故障有りと判定されて制御部32により定電流部31のオン状態が継続され、第2所定値10mA以上であれば故障無しと判定されて定電流部31がオフ状態とされる。
【0043】
次に、ステップS8において、アドレス設定処理が行われる。これは各センサ部15a1〜15d4において、ECU18Eからアドレス設定命令が行われると、最後段のセンサ部15d4から前段に向かって順次アドレス設定が行われる。即ち、図6の時刻t1において、第4センサ部15d4において電流検出部33で検出された電流値が0mAの場合に、制御部32により所定の固有アドレス「0001」がメモリ部32aに設定される。このアドレス設定が正常に完了するとスリープモードに移行される。以降同様に、時刻t2,t3,t4,t5において、第3センサ部15c3、第2センサ部15b2、第1センサ部15a1の順にアドレス設定が行われる。
【0044】
一方、アドレス設定が完了せずにスリープモードに移行されない場合、第4センサ部15d4の前段の第3センサ部15c3では出力側の検出電流値が0mAとならないのでアドレス設定が行われず、この場合、第3センサ部15c3以前のセンサ部15b2,15a1で同様にアドレス設定が行われなくなる。
【0045】
また、上記ステップS7において、故障検出部35で故障が検出されて定電流部31のオン状態が継続されているセンサ部は、センサ故障なのでアドレス設定が行われず、このセンサ部の前段以前のセンサ部では電流検出部33での検出電流値が0mAとならないのでアドレス設定が行われない。つまり、センサ故障が発生したセンサ部以前のセンサ部ではアドレス設定が行われない。
【0046】
次に、ステップS9において、ECU18Eから最後段の第4センサ部15d4にアドレス設定確認命令が行われ、これによってアドレス設定が正常に完了していればアドレス設定完了の応答がECU18Eへ返信される。この返信をECU18Eの故障判定部22で確認し、アドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS11において、第4センサ部15d4以前のセンサ故障と特定される。この場合、オープン故障は無しで少なくとも第4センサ部15d4のセンサ故障と判定される。
【0047】
一方、第4センサ部15d4からアドレス設定完了の応答が返信されて来れば故障は無いので、ステップS12において、ECU18Eから第3センサ部15c3にアドレス設定確認命令が行われる。これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS14において、第3センサ部15c3以前のセンサ故障と特定される。この場合、オープン故障は無しで少なくとも第3センサ部15c3のセンサ故障と判定される。
【0048】
次に、第3センサ部15c3からアドレス設定完了の応答が返信されて来れば故障は無いので、ステップS15において、ECU18Eから第2センサ部15b2にアドレス設定確認命令が行われる。これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS17において、第2センサ部15b2以前のセンサ故障と特定される。この場合、オープン故障は無しで少なくとも第2センサ部15b2のセンサ故障と判定される。
【0049】
次に、第2センサ部15b2からアドレス設定完了の応答が返信されて来れば故障は無いので、ステップS18において、ECU18Eから第1センサ部15a1にアドレス設定確認命令が行われる。これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS19において、第1センサ部15a1のセンサ故障と特定される。この場合、オープン故障は無しで第1センサ部15a1のセンサ故障と判定される。
【0050】
また、第1センサ部15a1からアドレス設定完了の応答が返信されて来れば故障は無いので、ステップS21でセンサ故障無しと判定される。この場合、故障判定部22によりオープン故障及びセンサ故障が無く正常状態と判定され、故障判定処理が終了する。
【0051】
次に、図7の上記ステップS4において、検出電流値が40mA以上でなければ、ステップS22において、検出電流値が30mA以上40mA未満か否かを判定する。この結果が30mA以上40mA未満であれば、ステップS23において、故障判定部22で、その検出電流値30mA以上40mA未満が、センサ接続数=3の場合の負荷電流値なので、ECU18Eには3つのセンサ部15a1〜15c3が接続され、第4センサ部15d4は切離された状態となっており、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障と判定される。
【0052】
このオープン故障有りの判定後、図9に示すステップS6〜S8において、上述したと同様にECU18Eにより各センサ部15a1〜15d4に対して再起動が行われ、故障検出部35によりセンサ故障検出処理が行われ、更に、アドレス設定処理が行われる。ここでは、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障なので、ステップS12において、ECU18Eから第3センサ部15c3にアドレス設定確認命令が行われ、これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS13でセンサ故障と判定され、ステップS14において第3センサ部15c3以前のセンサ故障と特定される。この場合、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障で尚且つ少なくとも第3センサ部15c3のセンサ故障と判定される。
【0053】
以降上述と同様に、ステップS12〜S20において、第2センサ部15b2〜第1センサ部15a1のセンサ故障が判定される。ステップS21で第1センサ部15a1のセンサ故障無しと判定された場合、センサ故障は無く、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障と判定され、故障判定処理が終了する。
【0054】
次に、図7の上記ステップS22において、検出電流値が30mA以上40mA未満でなければ、ステップS23において、検出電流値が20mA以上30mA未満か否かを判定する。この結果が20mA以上30mA未満であれば、ステップS25において、故障判定部22で、その検出電流値20mA以上30mA未満が、センサ接続数=2の場合の負荷電流値なので、ECU18Eには2つのセンサ部15a1〜15b2が接続され、第3センサ部15c3以降は切離された状態となっており、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間のオープン故障と判定される。
【0055】
このオープン故障有りの判定後、図10に示すステップS6〜S8において、上述したと同様に各センサ部15a1〜15d4の再起動が行われ、この後、センサ故障検出処理が行われ、更に、アドレス設定処理が行われる。ここでは、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間のオープン故障なので、ステップS15において、ECU18Eから第2センサ部15b2にアドレス設定確認命令が行われ、これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS16でセンサ故障と判定され、ステップS17において第2センサ部15b2以前のセンサ故障と特定される。この場合、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間のオープン故障で尚且つ少なくとも第2センサ部15b2のセンサ故障と判定される。
【0056】
以降上述と同様に、ステップS18〜S20において、第1センサ部15a1のセンサ故障が判定され、ステップS21で第1センサ部15a1のセンサ故障無しと判定された場合、センサ故障は無く、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間のオープン故障と判定され、故障判定処理が終了する。
【0057】
次に、図7の上記ステップS24において、検出電流値が20mA以上30mA未満でなければ、ステップS26において、検出電流値が10mA以上20mA未満か否かを判定する。この結果が10mA以上20mA未満であれば、ステップS27において、故障判定部22で、その検出電流値10mA以上20mA未満が、センサ接続数=1の場合の負荷電流値なので、ECU18Eには1つのセンサ部15a1が接続され、第2センサ部15b2以降は切離された状態となっており、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間のオープン故障と判定される。
【0058】
このオープン故障有りの判定後、図11に示すステップS6〜S8において、上述したと同様に各センサ部15a1〜15d4の再起動、センサ故障検出処理、アドレス設定処理が行われる。ここでは、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間のオープン故障なので、ステップS18において、ECU18Eから第1センサ部15a1にアドレス設定確認命令が行われ、これによってアドレス設定完了の応答が返信されて来なければ、ステップS19でセンサ故障と判定され、ステップS20において第1センサ部15a1のセンサ故障と特定される。この場合、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間のオープン故障で尚且つ第1センサ部15a1のセンサ故障と判定される。ステップS19からステップS21で第1センサ部15a1のセンサ故障無しと判定された場合、センサ故障は無く、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間のオープン故障と判定され、故障判定処理が終了する。
【0059】
次に、図7の上記ステップS26において、検出電流値が10mA以上20mA未満でなければ、ステップS28において、故障判定部22で、センサ接続数=0の場合の負荷電流値なので、ECU18Eには何も接続されておらず、ECU18Eと第1センサ部15a1との間のオープン故障と判定され、故障判定処理が終了する。
【0060】
この他、故障判定部22が各センサ部15a1〜15d4のオープン故障を判定する場合に、各センサ部15a1〜15d4の定電流部31及びその他の負荷回路を作動状態として行ってもよい。この場合、各センサ部15a1〜15d4には各々20mAの電流が流れるので、ECU18Eへのセンサ接続数が4の場合は80mA、3の場合は60mA、2の場合は40mA、1の場合は20mAとなるので、これらをセンサ電流検出部21で検出して故障判定部22でオープン故障の特定を行なえばよい。また、動作モード時にセンサ電流検出部21で出力電流値を検出して故障判定部22でオープン故障の特定を行なってもよい。
【0061】
このように第1の実施形態の乗員保護システムの通信装置は、車両衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の制御を行う電子制御ユニットであるECU18Eと、このECU18Eと通信するようにバススイッチ無しにデイジーチェーン接続され、車両の加速度を検出してECU18Eへ送信する複数のセンサ部15a1〜15d4とを有し、ECU18Eと各センサ部15a1〜15d4との通信時の初期化を行う際にセンサ部の出力電流値が予め定められた第1所定値以下の際にそのセンサ部が固有アドレスの設定を行い、この設定完了の応答をECU18Eに行う。
【0062】
本実施形態の特徴は、ECU18Eが、ECU18Eに接続された複数のセンサ部15a1〜15d4の負荷電流を検出するセンサ電流検出部21と、センサ電流検出部21での検出電流値が予め設定された全センサ接続数の負荷電流値以上の場合に、ECU18Eとセンサ部15a1〜15d4間並びに各センサ部15a1〜15d4間の接続線の断線を表すオープン故障が無しと判定し、負荷電流値未満の場合に、検出電流値に対応するセンサ接続数の負荷電流値に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定部22とを備える構成としたことにある。
【0063】
この構成によって、ECU18Eの故障判定部22は、センサ電流検出部21での検出電流値が、ECU18Eにデイジーチェーン接続された全センサ接続数(例えば4個)の負荷電流値未満の場合に、その検出電流値がセンサ接続数(例えば3個)の負荷電流値である場合、ECU18Eには3個のセンサ部15a1〜15c3が接続されていると判定できる。この判定から第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障であると特定することができる。同様にして、他のセンサ部15a1〜15c3間並びにECU18Eと第1センサ部15a1間のオープン故障を特定することができる。
【0064】
また、ECU18Eは、故障判定命令を行う命令手段を更に備え、複数のセンサ部15a1〜15d4は、デイジーチェーン接続のための電源側と接地側との線の間に接続され、ECU18E側からの供給電流を一定量引き込んでECU18E側へ流す定電流部31と、ECU18Eからの故障判定命令時に、各センサ部15a1〜15d4の個々で定電流部31のみを動作させる制御部32とを備える。そして、故障判定部22が、命令手段による故障判定命令時に、制御部32により定電流部31のみが動作された状態にあって、センサ電流検出部21での検出電流値に応じてオープン故障の位置を特定するように構成しても良い。
【0065】
この構成によって、ECU18Eの命令手段による故障判定命令時に、各センサ部15a1〜15d4の制御部32が定電流部31のみを動作させ、この状態でECU18Eの故障判定部22が、センサ電流検出部21での検出電流値に応じてオープン故障の位置を特定する。この場合、各センサ部15a1〜15d4には定電流部31での一定電流のみしか流れず、他の負荷電流は流れないので、ECU18Eの出力側並びに各センサ部15a1〜15d4におけるセンサ電流値にバラツキが無くなる。従って、ECU18Eのセンサ電流検出部21でセンサ接続個数に応じた電流値を正確に検出することができるので、その検出電流値に応じたオープン故障の位置を適正に特定することができる。
【0066】
更に、複数のセンサ部15a1〜15d4は、当該センサ部15a11〜15d14の起動時にスイッチ35aを一定時間オンとして自センサ部の電流検出部33に流れる電流値を検出し、この検出電流値が予め定められた第2所定値未満であれば故障有りと判定し、第2所定値以上であれば故障無しと判定する故障検出部35を更に備え、制御部32は、故障検出部35により故障有りと判定された際に定電流部31のオン動作を継続し、故障無しと判定された際に定電流部31をオフとする制御を行う。故障判定部22は、固有アドレスの設定完了の応答が無い最後段のセンサ部を少なくともセンサ故障と特定するように構成した。
【0067】
この構成において、ECU18Eにデイジーチェーン接続された第1〜第4センサ部15a1〜15d4にオープン故障は無く、例えば第3センサ部15c3において故障検出部35で故障有りと判定して制御部32により定電流部31の動作状態を継続しているとする。この場合、第4センサ部15d4では制御部32により固有アドレスの設定が正常に行われてその負荷電流が第1所定値以下とされる。しかし、第3センサ部15c3では故障有りなので固有アドレスの設定は行われず、また、第3センサ部15c3で定電流部31が動作状態となって一定電流が流れているので、第3センサ部15c3の前段以前の第2、第1の各センサ部15b2,15a1では出力電流値は第1所定値以下とならず、このため固有アドレスの設定を行うことができない。従って、ECU18Eへ固有アドレスの設定完了の応答を返すことが出来ないので、ECU18Eの故障判定部22は、第3センサ部15c3以前のものから固有アドレスの設定完了の応答が無いことを検出し、少なくとも第3センサ部15c3がセンサ故障であると特定する。
【0068】
(第2の実施形態)
図12は、本発明の第2の実施形態に係る乗員保護システムの通信装置の構成を示し、(a)はECUとこれにバススイッチを用いずデイジーチェーン接続された各センサ部のブロック図、(b)は各センサ部のブロック図である。
【0069】
第2の実施形態の乗員保護システムの通信装置が第1実施形態のものと異なる点は、ECU18E−1に、電圧降下部(電圧降下手段)41と、センサ電流検出部(電流検出手段)21と、故障判定部(故障判定手段)43とを備えた点にある。
【0070】
電圧降下部41は、各センサ部15a1〜15d4に印加する電圧を徐々に降下する。ここで、各センサ部15a1〜15d4は、電流検出部33に電流検出用の抵抗器を備えているため、後段のセンサ部になるほどその抵抗器による電圧降下のためにセンサ部への入力電圧が低くなっている。このため、電圧降下部41で徐々に電圧を降下した場合、この降下電圧値が図13(a)の時刻t12に示すように一定レベルΔV下がった際に、まず最後段の第4センサ部15d4がオフ状態となる。
【0071】
このオフ状態は、その電圧降下によってセンサ入力電圧V1が一定レベルΔV下がってV2となり、電流検出部33での検出電流値が一定値下がると制御部32が自センサ部をオフ状態とする。このオフ状態によって当該センサ部がデイジーチェーン接続から切離されたと同様の状態となるので、ECU18E−1には4個から3個のセンサ部15a1〜15c3が接続された状態となる。以降同様に、センサ入力電圧が一定レベルΔV降下する毎に第3センサ部15c3、第2センサ部15b2、第1センサ部15a1と順番にオフ状態となる。
【0072】
センサ電流検出部21は、ECU18E−1から全センサ部15a1〜15d4に流れる電流の値を検出する。
【0073】
故障判定部43は、センサ電流検出部21での検出電流値が図13(b)の時刻t12〜t15に示すように一定値ΔA下がる毎に1ずつカウント動作を行い、このカウント数に応じたセンサ個数を検出してどの位置のオープン故障かを特定する判定を行う。つまり、各センサ部15a1〜15d4が4個接続されている場合に、電圧降下部41で印加電圧がΔVづつ下がって後段センサ部から順次停止状態となり、全てのセンサ部15a11〜15d14が停止状態となった場合、オープン故障がなければカウント数は「4」となる。ここで、カウント数が「3」であればECU18E−1には3個のセンサ部が接続されていることになるので、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間がオープン故障であると判定できる。
【0074】
同様に、カウント数が「2」であればECU18E−1には2個のセンサ部が接続されていることになるので、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間がオープン故障、カウント数が「1」であればECU18E−1には1個のセンサ部が接続されていることになるので、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間がオープン故障、カウント数が「0」であればECU18E−1にはセンサ部が接続されていないことになるので、ECU18E−1と第1センサ部15a1との間がオープン故障であると判定できる。
【0075】
更に、故障判定部43は、そのオープン故障の有無の判定後、上記第1実施形態と同様にECU18E−1の命令で後段センサ部から順次行われる初期化処理時のアドレス設定において、アドレス設定完了の応答がECU18E−1に返信されて来ない最後段のセンサ部を、少なくともセンサ故障と特定する判定を行う。
【0076】
次に、このような構成の乗員保護システムの通信装置の動作を、図14のフローチャートを参照して説明する。
【0077】
ステップS1において、ECU18E−1から全センサ部15a1〜15d4に電源が供給された後、ステップS2において、全センサ部15a1〜15d4がオープン故障判定モードに移行する。このオープン故障判定モード時、図13(a)に時刻t11−t12間に示すように、ECU18E−1から全センサ部15a11〜15d14に印加される電圧V1は、正常であれば4.2Vであるとする。また、図13(b)に時刻t11−t12間に示すように、ECU18E−1の出力側の全センサ部15a1〜15d4の負荷電流値は、正常であれば40mAであるとする。
【0078】
次に、ステップS31において、ECU18E−1の電圧降下部41により図13(a)の時刻t12に示すように全センサ部15a11〜15d14への印加電圧V1が一定レベルΔV=50mV下げられ、電圧V2=4.15Vとなったとする。これによって最後段の第4センサ部15d4がオフ状態となり、ECU18E−1のセンサ電流検出部21での検出電流A1=40mAが、図13(b)に時刻t13で示すように一定値ΔA=10mA下がり、A2=30mAとなったとする。故障判定部43は、ステップS32において、センサ電流検出部21での検出電流値が一定値ΔA下がったことを検出し、1回カウント動作を行う。これによってカウント数が「1」となる。
【0079】
このステップS31とS32との動作が、全センサ数繰り返される。つまり、電圧降下部41により時刻t13,t14,t15で示すように順次ΔVずつ下げられ、これによってECU18E−1からセンサ部への印加電圧値がV3,V4,V5と順次下がる。この印加電圧の低下に応じて後段センサ部から順次オフ状態となると、図13(b)に時刻t13,t14,t15で示すように、センサ電流検出部21での検出電流値が順次ΔAずつ下がり、A3,A4,A5と順次下がる。
【0080】
このステップS31とS32との動作が全センサ数繰り返された後、ステップS33〜S36において、故障判定部43でカウント数が判定される。まず、ステップS33において、カウント数が全センサ数に対応した4回か否かが判定される。4回であれば、ステップS5において、センサ数が予め設定されたセンサ接続数=4なので、全センサ部15a1〜15d4の電流経路にオープン故障はないと判定される。このオープン故障無しの判定後は、故障判定部43により、第1実施形態で説明したと同様に図8に示すフローチャートに従い各センサ部15a1〜15d4のセンサ故障の判定処理が行われる。
【0081】
次に、上記ステップS33においてカウント数が4回でなければ、ステップS34において、カウント数が3回か否かが判定される。この結果、3回であれば、ステップS23において、センサ接続数が3であり、ECU18E−1には3つのセンサ部15a1〜15c3が接続され、第4センサ部15d4は切離された状態となっており、第3センサ部15c3と第4センサ部15d4との間のオープン故障と判定される。このオープン故障有りの判定後は、故障判定部43により、上述したと同様に図9に示すフローチャートに従い3つのセンサ部15a1〜15c3のセンサ故障の判定処理が行われる。
【0082】
次に、上記ステップS34においてカウント数が3回でなければ、ステップS35において、カウント数が2回か否かが判定される。この結果、2回であれば、ステップS25において、センサ接続数が2であり、第2センサ部15b2と第3センサ部15c3との間のオープン故障と判定される。このオープン故障有りの判定後は、故障判定部43により、上述したと同様に図10に示すフローチャートに従い2つのセンサ部15a1〜15b2のセンサ故障の判定処理が行われる。
【0083】
次に、上記ステップS35においてカウント数が2回でなければ、ステップS36において、カウント数が1回か否かが判定される。この結果、1回であれば、ステップS27において、センサ接続数が1であり、第1センサ部15a1と第2センサ部15b2との間のオープン故障と判定される。このオープン故障有りの判定後は、故障判定部43により、上述したと同様に図11に示すフローチャートに従い1つのセンサ部15a1のセンサ故障の判定処理が行われる。
【0084】
次に、上記ステップS36においてカウント数が1回でなければ、ステップS28において、センサ接続数が0であり、ECU18E−1と第1センサ部15a1との間のオープン故障と判定され、故障判定処理が終了する。
【0085】
この他、故障判定部22が各センサ部15a1〜15d4のオープン故障を判定する場合に、各センサ部15a1〜15d4の定電流部31及びその他の負荷回路を作動状態として行ってもよい。この場合、各センサ部15a1〜15d4には各々20mAの電流が流れるので、ECU18E−1へのセンサ接続数が4の場合は80mA、3の場合は60mA、2の場合は40mA、1の場合は20mAとなるので、これらの電流値を電圧降下部41での電圧降下時にセンサ電流検出部21で検出し、故障判定部43でオープン故障の特定を行えばよい。また、動作モード時にセンサ電流検出部21で出力電流値を検出して故障判定部43でオープン故障の特定を行ってもよい。
【0086】
このように第2の実施形態の乗員保護システムの通信装置は、ECU18E−1に、ECU18E−1に接続された複数のセンサ部15a11〜15d14への印加電圧を下げる電圧降下部41と、ECU18E−1に接続された全センサ部15a11〜15d14への負荷電流を検出するセンサ電流検出部21と、センサ電流検出部21での検出電流値が、1つのセンサ部がオフ状態となった際に下がる一定電流値ΔA分下がった際にカウント動作を行い、このカウント数がECU18E−1に予め定められて接続された全センサ数(=4)である場合に、ECU18E−1とセンサ部間並びに各センサ部間の接続線の断線を表すオープン故障が無しと判定し、カウント数が全センサ数未満(4未満)の場合に、この全センサ数未満のカウント数に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定部43とを備えた。
【0087】
この構成によって、ECU18E−1の電圧降下部41で、センサ部の個数分順次一定電圧レベルΔVで電圧降下を行った際に、故障判定部43は、センサ電流検出部21での検出電流値が一定電流値ΔA分下がる毎にカウント動作を行う。このカウント数がECU18E−1に予め定められて接続された全センサ数である場合はオープン故障無しと判定する。一方、カウント数が全センサ数未満の場合に、この全センサ数未満のカウント数に対応するセンサ数が3であったとすると、この3個のセンサ部における最後段のセンサ部、即ち第3センサ部15c3と、この第3センサ部15c3の後段センサ部、即ち第4センサ部15d4との間がオープン故障であると判定することができる。同様にして、カウント数に対応するセンサ数から、他のセンサ部間並びにECU18E−1とセンサ部間のオープン故障を特定することができる。
【0088】
この他、電圧降下部41が、各センサ部15a1〜15d4に印加する電圧をΔVずつ下げるようにしても良い。この場合も、印加電圧がΔVずつ下がる毎に、センサ電流検出部21での検出電流値が一定値ΔAずつ下がるので、故障判定部43がその都度カウント動作を行ってオープン故障の判定を行うことができる。この場合、印加電圧がΔVずつ下がるので、徐々に印加電圧を下げる場合よりもオープン故障の判定動作を速く行うことができる。
【0089】
また、図15(a)に示すように、電圧降下部41は、複数のセンサ部15a11〜15d14への印加電圧を直線状に一定レベル連続的に下降するようにしても良い。この場合も、電圧が下降する過程でセンサ入力電圧がV1,V2,V3,V4,V5と下がり、その都度、センサ電流検出部21での検出電流値が一定電流値ΔA分下がるので、故障判定部43は、そのΔA分下がる都度カウント動作を行ってオープン故障の判定を行うことができる。この場合、印加電圧を連続的に直線状に下げるので、電圧降下動作を容易とすることができる。
【符号の説明】
【0090】
15a11〜15d14 センサ部
18E,18E−1 ECU
21 センサ電流検出部
22,43 故障判定部
31 定電流部
32 制御部
32a メモリ部
34 加速度センサ
35 故障検出部
35a スイッチ
35b 抵抗器
41 電圧降下部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の制御を行う電子制御ユニットであるECUと、このECUと通信するようにバススイッチ無しにデイジーチェーン接続され、車両の加速度を検出してECUへ送信する複数のセンサ部とを有し、ECUと各センサ部との通信時の初期化を行う際にセンサ部の出力電流値が予め定められた第1所定値以下の際にそのセンサ部が固有アドレスの設定を行うと共にその設定を行ったセンサ部の負荷電流を第1所定値以下とし、更にその設定完了の応答をECUに行う乗員保護システムの通信装置において、
前記ECUは、
当該ECUに接続された全センサ部への負荷電流を検出する電流検出手段と、
当該電流検出手段での検出電流値が予め設定された全センサ接続数の負荷電流値以上の場合に、当該ECUとセンサ部間並びに各センサ部間の接続線の断線を表すオープン故障が無いと判定し、前記負荷電流値未満の場合に、当該検出電流値に対応するセンサ接続数の負荷電流値に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定手段と
を備えたことを特徴とする乗員保護システムの通信装置。
【請求項2】
車両衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の制御を行う電子制御ユニットであるECUと、このECUと通信するようにバススイッチ無しにデイジーチェーン接続され、車両の加速度を検出してECUへ送信する複数のセンサ部とを有し、ECUと各センサ部との通信時の初期化を行う際にセンサ部の出力電流値が予め定められた第1所定値以下の際にそのセンサ部が固有アドレスの設定を行うと共にその設定を行ったセンサ部の負荷電流を第1所定値以下とし、更にその設定完了の応答をECUに行う乗員保護システムの通信装置において、
前記ECUは、
当該ECUに接続された前記複数のセンサ部への印加電圧を下げる電圧降下手段と、
当該ECUに接続された全センサ部への負荷電流を検出する電流検出手段と、
前記電圧降下手段による印加電圧の降下中において、前記電流検出手段での検出電流値が、1つのセンサ部がオフ状態となった際に下がる一定電流値分下がった際にカウント動作を行い、このカウント数が当該ECUに予め定められて接続された全センサ数である場合に、当該ECUとセンサ部間並びに各センサ部間の接続線の断線を表すオープン故障が無いと判定し、当該カウント数が全センサ数未満の場合に、この全センサ数未満のカウント数に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定手段と
を備えたことを特徴とする乗員保護システムの通信装置。
【請求項3】
前記電圧降下手段は、前記ECUに接続されている動作中の最後段のセンサ部がオフ状態となる前記一定電流値に相当する電圧分ずつ断続的に降下させる動作をセンサ部の個数分順次行うことを特徴とする請求項2に記載の乗員保護システムの通信装置。
【請求項4】
前記電圧降下手段は、前記印加電圧を連続的に降下させることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護システムの通信装置。
【請求項5】
前記ECUは、前記故障判定命令を行う命令手段を更に備え、
前記複数のセンサ部は、前記デイジーチェーン接続のための電源側と接地側との線の間に接続され、前記ECU側からの供給電流を一定量引き込んで当該ECU側へ流す定電流手段と、前記故障判定命令時に、各センサ部の個々で当該定電流手段のみを動作させる制御手段とを備え、
前記故障判定手段は、前記命令手段による故障判定命令時に前記制御手段により前記定電流手段のみが動作された状態にあって、前記オープン故障の位置を特定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の乗員保護システムの通信装置。
【請求項6】
前記複数のセンサ部は、当該複数のセンサ部の起動時に自センサ部に流れる電流値を検出し、この検出電流値が予め定められた第2所定値未満であれば故障有りと判定し、当該第2所定値以上であれば故障無しと判定する故障検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記故障検出手段により故障有りと判定された際に前記定電流手段の動作を継続し、前記故障無しと判定された際に当該定電流手段をオフとする制御を行い、
前記故障判定手段は、前記固有アドレスの設定完了の応答が無い最後段のセンサ部を少なくともセンサ故障と特定することを特徴とする請求項5に記載の乗員保護システムの通信装置。
【請求項1】
車両衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の制御を行う電子制御ユニットであるECUと、このECUと通信するようにバススイッチ無しにデイジーチェーン接続され、車両の加速度を検出してECUへ送信する複数のセンサ部とを有し、ECUと各センサ部との通信時の初期化を行う際にセンサ部の出力電流値が予め定められた第1所定値以下の際にそのセンサ部が固有アドレスの設定を行うと共にその設定を行ったセンサ部の負荷電流を第1所定値以下とし、更にその設定完了の応答をECUに行う乗員保護システムの通信装置において、
前記ECUは、
当該ECUに接続された全センサ部への負荷電流を検出する電流検出手段と、
当該電流検出手段での検出電流値が予め設定された全センサ接続数の負荷電流値以上の場合に、当該ECUとセンサ部間並びに各センサ部間の接続線の断線を表すオープン故障が無いと判定し、前記負荷電流値未満の場合に、当該検出電流値に対応するセンサ接続数の負荷電流値に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定手段と
を備えたことを特徴とする乗員保護システムの通信装置。
【請求項2】
車両衝突時に乗員を保護する乗員保護装置の制御を行う電子制御ユニットであるECUと、このECUと通信するようにバススイッチ無しにデイジーチェーン接続され、車両の加速度を検出してECUへ送信する複数のセンサ部とを有し、ECUと各センサ部との通信時の初期化を行う際にセンサ部の出力電流値が予め定められた第1所定値以下の際にそのセンサ部が固有アドレスの設定を行うと共にその設定を行ったセンサ部の負荷電流を第1所定値以下とし、更にその設定完了の応答をECUに行う乗員保護システムの通信装置において、
前記ECUは、
当該ECUに接続された前記複数のセンサ部への印加電圧を下げる電圧降下手段と、
当該ECUに接続された全センサ部への負荷電流を検出する電流検出手段と、
前記電圧降下手段による印加電圧の降下中において、前記電流検出手段での検出電流値が、1つのセンサ部がオフ状態となった際に下がる一定電流値分下がった際にカウント動作を行い、このカウント数が当該ECUに予め定められて接続された全センサ数である場合に、当該ECUとセンサ部間並びに各センサ部間の接続線の断線を表すオープン故障が無いと判定し、当該カウント数が全センサ数未満の場合に、この全センサ数未満のカウント数に対応する個数のセンサ部のうち最後段のセンサ部と、このセンサ部の後段センサ部との間がオープン故障であると特定する故障判定手段と
を備えたことを特徴とする乗員保護システムの通信装置。
【請求項3】
前記電圧降下手段は、前記ECUに接続されている動作中の最後段のセンサ部がオフ状態となる前記一定電流値に相当する電圧分ずつ断続的に降下させる動作をセンサ部の個数分順次行うことを特徴とする請求項2に記載の乗員保護システムの通信装置。
【請求項4】
前記電圧降下手段は、前記印加電圧を連続的に降下させることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護システムの通信装置。
【請求項5】
前記ECUは、前記故障判定命令を行う命令手段を更に備え、
前記複数のセンサ部は、前記デイジーチェーン接続のための電源側と接地側との線の間に接続され、前記ECU側からの供給電流を一定量引き込んで当該ECU側へ流す定電流手段と、前記故障判定命令時に、各センサ部の個々で当該定電流手段のみを動作させる制御手段とを備え、
前記故障判定手段は、前記命令手段による故障判定命令時に前記制御手段により前記定電流手段のみが動作された状態にあって、前記オープン故障の位置を特定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の乗員保護システムの通信装置。
【請求項6】
前記複数のセンサ部は、当該複数のセンサ部の起動時に自センサ部に流れる電流値を検出し、この検出電流値が予め定められた第2所定値未満であれば故障有りと判定し、当該第2所定値以上であれば故障無しと判定する故障検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記故障検出手段により故障有りと判定された際に前記定電流手段の動作を継続し、前記故障無しと判定された際に当該定電流手段をオフとする制御を行い、
前記故障判定手段は、前記固有アドレスの設定完了の応答が無い最後段のセンサ部を少なくともセンサ故障と特定することを特徴とする請求項5に記載の乗員保護システムの通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−111370(P2012−111370A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262409(P2010−262409)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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