説明

乗員保護装置

【課題】側突〜インフレータ作動間のセンシング時間を短縮した乗員保護装置の提供。
【解決手段】本発明の乗員保護装置10は、サイドドア11の内部に設けられたインパクトビーム20と、ピラー60の内部でインパクトビーム20の車幅方向内側に設けられ、車両側突時にインパクトビーム20によって押されてガスを噴出するインフレータ30と、ピラーガーニッシュ63内に設けられ、インフレータ30からガスを供給されて車両前後方向に展開するサイドエアバッグ50と、を有する。インフレータ30がインパクトビーム20によって押されて機械的に作動するので、側突センサやECUを介さずにインフレータ30が作動し、側突におけるセンシング時間が短縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のピラー内に設けた、機械的に作動する、サイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ドアインパクトビームの内部にインフレータを配設し、インフレータを、ダクトによってドアトリム内に設けた腰バッグまたは腰バッグ及び胸バッグと接続したサイドエアバッグ装置を開示している。
特許文献1のサイドエアバッグ装置では、車両の側突時にインフレータが剛性の高いインパクトビームによって保護されるので、その作動が確実になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−356245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のサイドエアバッグ装置では、通常、側突センサにより検出した加速度の時間積分値が閾値を越えた時に、電気信号によりインフレータの点火装置を作動させているため、側突からインフレータ作動開始までの時間、すなわち側突のセンシング時間を早める点で、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、センサで衝撃を検知する従来の電気作動の乗員保護装置に比べて、側突からインフレータ作動開始までの時間を短縮できる乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する、または上記目的を達成する本発明の乗員保護装置はつぎのとおりである。
【0007】
(1)本発明の乗員保護装置は、サイドドアの内部に設けられたインパクトビームと、ピラーの内部でインパクトビームの車幅方向内側に設けられ、車両側突時にインパクトビームによって押されてガスを噴出するインフレータと、ピラーガーニッシュ内に設けられ、インフレータからガスを供給されて車両前後方向に、展開する、サイドエアバッグと、を有する。
【0008】
(2)上記(1)の乗員保護装置において、インフレータが、車両衝突時、インパクトビームから押されて機械的に破断されるストアードガスタイプのインフレータ、または、インパクトビームから押されて衝撃で発火する点火装置を備えたパイロインフレータからなる。
【0009】
(3)上記(1)または(2)の乗員保護装置において、サイドエアバッグが、車両側突時に、乗員腰部側方に展開する腰バッグ、乗員胸部〜肩部側方に展開する胸・肩部バッグ、乗員胸部〜頭部側方に展開する胸・頭部バッグ、インフレータを覆う強靱袋、の少なくとも1つを備えている。
【0010】
(4)上記(3)の乗員保護装置において、乗員保護装置が、車両側突時に乗員胸部〜頭部側方に展開する胸・頭部バッグを備えており、胸・頭部バッグは、車両前後方向に前方だけでなく後方にも展開する。
【0011】
(5)上記(3)または(4)の乗員保護装置において、サイドエアバッグが、側突時に、乗員胸部〜頭部側方に展開する胸・頭部バッグを備えており、乗員保護装置が、ルーフサイドレールに取付けられた、該ルーフサイドレールに沿って延びるガイドワイヤを有しており、胸・頭部バッグは該胸・頭部バッグの上端部をガイドワイヤにガイドされて展開する。
【発明の効果】
【0012】
上記(1)の乗員保護装置によれば、車両側突時にインパクトビームによって押されてインフレータが作動するので、側突センサやECUを介さずにインフレータが作動し、側突からインフレータ作動開始までの時間を短縮できる。
また、サイドエアバッグ装置がピラー内に設けたサイドエアエアバッグのみで済み、最も一般的な、シートに内蔵のサイドエアバッグと、ルーフサイドに内蔵のカーテンエアバッグとの2つのエアバッグを設ける必要がなく、装置の単純化とコストダウンをはかることができる。
また、側突センサ、ECUの側突制御部分、ワイヤハーネスなどが不要となり、部品点数の削減が可能であり、かつ、作動の信頼性を向上する。
【0013】
上記(2)の乗員保護装置によれば、インフレータが、車両側突時にインパクトビームから押されて機械的に破断されるストアードガスタイプのインフレータ、または、インパクトビームから押されて衝撃で発火する点火装置を備えたパイロインフレータ、の何れかからなるので、インフレータが機械的作動となる。その結果、側突センサ、ECUの側突制御部分が不要となり、部品点数が削減され、作動の信頼性を向上する。
【0014】
上記(3)の乗員保護装置によれば、腰部バッグ、胸・肩部バッグ、胸・頭部バッグ、強靱袋、の少なくとも1つを備えているので、備えるバッグに応じて、適切に側突に対応できる。強靱な袋を備えた場合は、車両側突時にインパクトビームによって叩かれても、サイドエアバッグが破れることはない。
【0015】
上記(4)の乗員保護装置によれば、胸・頭部バッグが車両前後方向に前方だけでなく後方にも展開するので、シートの位置調整によってシートが前後しても、胸・頭部バッグは乗員頭部を拘束することができる。また、後席乗員の頭部がピラーに直接衝突することを防止して頭部を保護することができる。
【0016】
上記(5)の乗員保護装置によれば、側突時、胸・頭部バッグが展開した時に、胸・頭部バッグはピラー部とガイドワイヤとによって支持され、頭部をドア側側方から拘束することができ、頭部の車幅方向外側への移動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例の乗員保護装置の、エアバッグ展開状態での、側面図である。
【図2】図1の乗員保護装置の、乗員を除去して見た、側面図である。
【図3】図1の乗員保護装置の、側突直前の、断面図である。
【図4】図1の乗員保護装置の、側突時の、断面図である。
【図5】図1の乗員保護装置の、強靱袋とその近傍の正面図である。
【図6】図2の、ピラー部位において水平面で切断して見た、断面図である。
【図7】図6の、ピラー部位において鉛直面で切断して見た、断面図である。
【図8】図1の乗員保護装置の変形例の、ストアードガスインフレータの破断部を含む、概略断面図である。
【図9】図8の一部の拡大断面図である。
【図10】図9の破断部の破断後の断面図である。
【図11】図1の乗員保護装置のさらに別の変形例の、衝撃作動型の点火装置を含むストアードガスインフレータの、概略断面図である。
【図12】図11の装置の、点火装置の点火後の、断面図である。
【図13】図1の乗員保護装置のさらに別の変形例の、衝撃作動型の点火装置を含むパイロインフレータの、概略断面図である。
【図14】図13の装置の、点火装置の点火後の、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の乗員保護装置10を、図1〜図14を参照して説明する。図中、FRは車両前後方向前方を示し、INは車両左右方向内側を示す。
【0019】
本発明の一実施例の乗員保護装置10は、図1〜図14に示すように、サイドドア11の内部に設けられたインパクトビーム20と、ピラー(たとえば、Bピラー)60の内部でインパクトビーム20の車幅方向内側に設けられ、車両側突時にインパクトビーム20によって押されてガスを噴出するインフレータ30と、ピラーガーニッシュ63内(ピラーガーニッシュ63とピラーアウター61との間)に設けられ、インフレータ30からガスを供給されて車両前後方向に、展開して乗員Pを側面から拘束する、サイドエアバッグ50と、を有する。インフレータ30とサイドエアバッグ50はサイドエアバッグ装置を構成し、該サイドエアバッグ装置はピラー付けとされる。
【0020】
図3および図4、および図6および図7に示すように、サイドドア11は、金属製のアウターパネル12と、アウターパネル12より車幅方向内側に設けられた金属製のインナーパネル(センターパネルともいう)13と、インナーパネル13の車幅方向内側に設けられた樹脂製のドアトリム14とを有する。
インナーパネル13のピラー60側の端部には、車両幅方向外側に後退した第1の段差部15と、その後方に第2の段差部16がある。第1の段差部15および第2の段差部16と、アウターパネル12の該段差部15、16の外側に位置する部分17は、ピラー60の中空矩形状断面の車両前後方向のほぼ前半分を、サイドドア11が閉まっているときに、車幅方向外側から覆う。ドアトリム14は、インナーパネル13のうち、第1の段差部15よりも前の部分の車幅方向内側に設けられある。第2の段差部16のピラー60側には、ウエザーストリップ(図示せず)が設けられ、該ウエザーストリップはサイドドア11またはピラー60に支持される。また、第1の段差部15より車幅方向内側でピラー60より前の空間には、ウエザーストリップ(図示せず)が設けられ、該ウエザーストリップはピラー60またはサイドドア11に支持される。
【0021】
図3および図4、および図6および図7に示すように、ピラー60は、金属製のピラーアウター61と、ピラーアウター61より車幅方向内側に設けられた金属製のピラーインナー62と、ピラーインナー62の車幅方向内側に設けられた樹脂製のピラーガーニッシュ63とを有する。ピラーアウター61とピラーインナー62との間に、ピラーリーンフォース(図示せず)が設けられてもよい。ピラーインナー62には、また、ピラーリーンフォースが設けられる場合はピラーインナー62とピラーリーンフォースに、サイドエアバッグ50の一部(たとえば、後述する強靱袋54)が通過する穴62aが設けられている。
【0022】
インパクトビーム20は、たとえば中空円形断面の金属バー、たとえば金属パイプからなる。インパクトビーム20は、サイドドア11の内部で、アウターパネル12とインナーパネル13との間に、配置される。インパクトビーム20は、シート着座乗員のほぼ腰部高さ位置で、車両前後方向に、ほぼ水平に(傾斜を含む)、延びる。インパクトビーム20は、インパクトビーム20の両端部またはその近傍で、ブラケット21を介してサイドドア11に支持され、固定される。インパクトビーム20の後端部またはその近傍部は、図6および図7に示すように、インナーパネル13の第1の段差部15にブラケット21を介して支持される。
【0023】
インパクトビーム20は、車両側突時に加害車両Cによりサイドドア11が変形した時にその荷重を受け、サイドドア11の車両幅方向内側への変形および変位を抑える。ただし、車両側突時に、インパクトビーム20は、加害車両Cによって押されて車両幅方向内側に、たとえば50mm程度、変形および/または変位する。このインパクトビーム20の車両幅方向内側への変形および/または変位を利用して、インフレータ30を機械的に(電気的にではなく)作動させ、インフレータ30からサイドエアバッグ50内に膨張用ガスを噴出(流出)させ、サイドエアバッグ50を膨張させる。
【0024】
インフレータ30は、ピラー60の、ピラーアウター61とピラーインナー62との間のほぼ矩形状空間の車両前後方向前半分の部位で、かつ、サイドドア11内のインパクトビーム20の車幅方向内側(車室側)に設けられる。インフレータ30は、ピラー60の長手方向に(インフレータ30の下端から斜め上方かつ後方に)延び、車両側面視でインパクトビーム20と交差する。インパクトビーム20には、車両側面視でインフレータ30と交差する部位に、インフレータ30側に向かって突出する打撃部22が設けられる。車両側突時にサイドドア11が加害車両Cによって押され、サイドドア11およびインパクトビーム20が車両幅方向内側に変形および/または変位する時に、インフレータ30は、インパクトビーム20によって打撃部22を介して押されて機械的に作動し、サイドエアバッグ膨張用ガスを噴出する。
【0025】
インフレータ30は、車両衝突時、インパクトビーム20から押されて機械的に破断されるストアードガスインフレータ30A(図5、または図8〜図10)、または、インパクトビーム20から押されてその機械的衝撃で発火する点火装置41を備えたパイロインフレータ30B(図11および図12、または、図13および図14)からなる。インフレータ30は、ストアードガスインフレータ30Aとパイロインフレータ30Bの何れであってもよい。
【0026】
インフレータ30の作動には、車両衝突を検知するセンサ、および衝突検知時にインフレータ30を作動させるECUとその回路、および電熱ヒータを必要としない。ただし、ロールオーバ時にはインパクトビーム20の変形および/または変位を期待できないので、インフレータ30をロールオーバ時にも作動させるために、ロールオーバを検知して電気的にインフレータを作動させる装置を、上記の車両衝突時に機械的に作動するパイロインフレータ30Bに付加して設けてもよい。
【0027】
サイドエアバッグ50は、車両側突時に、ピラー60から車両前後方向に展開、膨張して、乗員Pを拘束する。サイドエアバッグ50は、車両側突時に、乗員腰部Pw側方に展開して乗員腰部Pwを側方から拘束する腰部バッグ51と、乗員胸部Pb〜肩部側方に展開する乗員胸部Pb〜肩部を側方から拘束する胸・肩部バッグ52と、乗員胸部〜頭部Ph側方に展開して乗員胸部〜頭部Phを側方から拘束する胸・頭部バッグ53と、インフレータ30を覆いインフレータ30を内蔵し、ピラー60内で膨張する強靱袋54と、これらを連通する連通路55と、を備える。
【0028】
腰部バッグ51は、ピラー60の前方に、サイドドア11のアームレスト14cとドアポケット14dとの間の空間に展開、膨張する。展開する腰部バッグ51の前方にドアポケット14dが位置する場合は、ドアポケット14dが、展開する腰部バッグ51と干渉しないように、ドアポケット14dの、腰部バッグ51展開領域にある部分は、車幅方向外側に(インナーパネル13側に)後退させておく。
【0029】
胸・肩部バッグ52と、胸・頭部バッグ53とは互いに一体である。胸・肩部バッグ52と腰部バッグ51とは互いに別体である。
図6および図7に示すように、強靱袋54と、腰部バッグ51、胸・肩部バッグ52とは、連通路55で連通している。
連通路55は、分配ジョイント55aとチューブ55bを有する。分配ジョイント55aは、車両側突時にインフレータ30から供給されるガスを、腰部バッグ51と、胸・肩部バッグ52および胸・頭部バッグ53とに、分配する。強靱袋54の一部、または連通路55は、ピラーインナー62の穴62aを通過してピラーガーニッシュ63とピラーインナー62との間の空間に延び、分配ジョイント55aに接続している。
【0030】
強靱袋54は、ピラーアウター61とピラーインナー62との間の空間に配置される。強靱袋54は、ピラーアウター61とピラーインナー62との間の空間で膨張し、ピラー60の外には展開しない。強靱袋54のうちインフレータ30とインパクトビーム20の打撃部22との間に位置する部分は、車両側突時に、変位および/または変形するインパクトビーム20の打撃部22によって叩かれる。
【0031】
強靱袋54は、鉄板または繊維で補強した、ゴムコーティング布からなり、布またはゴムコーティング布からなるエアバッグに比べて、熱的、強度的に強靱である。強靱袋54は、強靱とすることにより、インパクトビーム20の打撃部22からの衝撃を受けても、車両側突時にインパクトビーム20からの衝撃を受けても破損しないようにしてある。
【0032】
強靱袋54はインフレータ30を内蔵している。図5に示すように、強靱袋54は、インフレータ30側に表裏が折り返されて縁部で重ね合わされ、この重ね合わ部で表裏が溶着されて溶着部54aを構成している。強靱袋54はインパクトビーム対向側と反対側で、連通路55の分配ジョイント55aまたはチューブ55bと嵌合され接続している。図5において、56は強靱袋54のボデー固定部(ピラー60への固定部)であり、57は強靱袋54の分配ジョイント55aまたはチューブ55bとの締結部である。強靱袋54にチューブ55bが接続される場合、チューブ55bを布製とすると、チューブ55bはガスの逆流を阻止する逆止弁としても機能する。すなわち、図5で、強靱袋54から出る方向のガス流Fは流れるが、逆方向にガスが流れようとするとチューブの表裏が密着して逆方向のガス流Rを阻止する。
【0033】
腰部バッグ51、胸・肩部バッグ52、胸・頭部バッグ53は、ピラーガーニッシュ63とピラーインナー62との間に折り畳まれて、たとえば、蛇腹折り、あるいは、ロール折りされて、配置される。腰部バッグ51、胸・肩部バッグ52、胸・頭部バッグ53は、車両側突時に、展開膨張してピラーガーニッシュ63に圧力をかけ、図6で2点鎖線で示すように、ピラーガーニッシュ63を押し広げるか、またはピラーインナー62から押し外し、ピラーガーニッシュ63とピラーインナー62との隙間から車両前後方向に展開、膨張する。
【0034】
乗員腰部Pwはラップベルトで拘束されて車両側突時の前後方向の移動量が頭部の移動量に比べて小さいため、図1に示すように、腰部バッグ51の車両前後方向長さは、胸・肩部バッグ52および胸・頭部バッグ53の車両前後方向長さに比べて短い。胸・肩部バッグ52および胸・頭部バッグ53の上下方向長さは腰部バッグ51の上下方向長さに比べて長く、乗員の体格差および車両側突時の急停止における頭部Phの斜め前方下方への移動をカバーできるようにしてある。胸・肩部バッグ52および胸・頭部バッグ53は乗員の通常位置より後方にも展開可能としてあり、シートが後方に位置調整された時でも乗員Pを側方から拘束できるようにしてある。
【0035】
乗員保護装置10は、ルーフサイドレール71に取付けられたガイドワイヤ70を有している。ガイドワイヤ70は、ルーフサイドレール71に沿って延びる。
胸・頭部バッグ53は、胸・頭部バッグ53の上端部をガイドワイヤ70にガイドされて展開する。
ガイドワイヤ70は、ピラー60の上端に対して前方と後方に延びている。胸・頭部バッグ53は、車両側突時に、車両前後方向に前方だけでなく後方にも展開する。
【0036】
インパクトビーム20の、インフレータ30に対向する部位にインフレータ30に向かって突出するように設けられた打撃部22は、車両側突時にインパクトビーム20とともに変位して、インフレータ30を叩く。サイドドア11のインナーパネル13の第1の段差部15と、ピラー60のピラーアウター61の、打撃部22対向部には、車両側突時に打撃部22を通過させるように、穴18、64(穴18は第1の段差部15に設けられた穴、穴64はピラーアウター61に設けられた穴)が設けられている。穴18、64には、それぞれ、雨水が侵入しないように、それぞれ、テープ19、65が貼付されている。テープ19、65の強度は、車両側突時に打撃部22がインフレータ30に向かって移動する時に、打撃部22によって破られる得る強度とする。
【0037】
つぎに、インフレータ30の種々の形態を説明する。
図5は、ストアードガスインフレータ30Aの一例を示す。図5のインフレータ30Aは、サイドエアバッグ50の強靱袋54内に設けられている。図5のインフレータ30Aは、内部に高圧ガスを封入したケーシング31の、インパクトビーム20対向部に、弱体部(たとえば、ノッチ)32を有し、インパクトビーム20によって押された(叩かれた)時に、弱体部32にて破断し、破断部から高圧ガスをサイドエアバッグ50の強靱袋54内に流出する。
【0038】
図8〜図10は、ストアードガスインフレータ30Aの他の例(図5とは別の例)を示す。図8のインフレータ30Aは、サイドエアバッグ50の強靱袋54内に設けられている。インフレータ30Aは高圧ガス封入部33と、高圧ガス封入部33に連通し、高圧ガス封入部33からインパクトビーム20対向部に延びるバーストバルブ34を有する。バーストバルブ34はディフューザーカバー37内に位置する。バーストバルブ34は、インパクトビーム20対向部に、弱体部35(たとえば、ノッチ)を有する。バーストバルブ34は、インパクトビーム20の打撃部22によって叩かれた時に、弱体部35にて破断する。インパクトビーム20の打撃部22の対向部には、強靱袋54に一体に圧子36が設けられており、インフレータ30Aのディフューザーカバー37にプッシュロッド38が溶着などにより固定されている。ただし、圧子36を設けずに、打撃部22によって、直接、プッシュロッド38を押してもよい。
【0039】
図8〜図10において、車両側突時に加害車両によって押されてインパクトビーム20が変形および/または変位すると、インパクトビーム20の打撃部22が圧子36を介してプッシュロッド38を押し、プッシュロッド38がディフューザーカバー37から外れてバーストバルブ34を押す。バーストバルブ34が弱体部35で破断し、この破断部から高圧ガスがディフューザーカバー37内に流出し、ついでディフューザーカバー37のガス噴出口39から強靱袋54内に噴出する。
【0040】
図11および図12は、パイロインフレータ30Bの一例を示す。図11のインフレータ30Bは、サイドエアバッグ50の強靱袋54内に設けられている。図11のインフレータ30Bは、高圧ガス封入部33と、火薬40を詰めた点火装置(スクイブ)41と、高圧ガス封入部33と点火装置41内部とを仕切る壁の穴44を塞ぐ仕切板42と、点火装置41の壁の穴に嵌入した撃針43とを有する。点火装置41の壁には、ガス噴出口39が設けられている。
【0041】
図11および図12において、車両側突時に加害車両によって押されてインパクトビーム20が変形および/または変位すると、インパクトビーム20の打撃部22が圧子36を介して撃針43を叩く。ただし、圧子36を設けずに、打撃部22によって、直接、撃針43を押してもよい。撃針43からの機械的衝撃で火薬40が発火して高圧高温ガスを発生し、仕切板42が高圧ガス封入部33内に飛ばされる。高圧ガス封入部33内の高圧ガスが、仕切板42で覆われていた開口44を通って点火装置41内に流出し、ついでガス噴出口39を通って強靱袋54内に噴出する。
【0042】
図13および図14は、パイロインフレータ30Bの他の例を示す。図13のインフレータ30Bは、ガス発生剤45を詰めたガス発生部46と、火薬40を詰めた点火装置41と、点火装置41の壁の穴に嵌入した撃針43とを有する。ガス発生部46はフィルタ47を介してインフレータケーシング48で覆われ、インフレータケーシング48には多数の穴49が設けられている。
【0043】
図13および図14において、車両側突時に加害車両によって押されてインパクトビーム20が変形および/または変位すると、インパクトビーム20の打撃部22が圧子36を介して撃針43を叩く。撃針43からの機械的衝撃で火薬40が発火して高圧高温ガスを発生し、ガス発生部46に流れ、ガス発生剤45を燃焼させて、ガスを発生する。ガス発生剤45から発生したガスは、フィルタ47で燃焼滓を濾過されて、インフレータケーシング48の穴49を通って、強靱袋54内に噴出する。
【0044】
つぎに、乗員保護装置10の作用、効果を説明する。
まず、車両側突時に、加害車両Cによって、サイドドア11が変形し、インパクトビーム20が車幅方向内側に変位および/または変形する。インパクトビーム20の打撃部22がインフレータ30の作動部(弱体部等)を押す(打撃を含む)。インパクトビーム20で押されてインフレータ30が作動し、膨張用ガスを噴出し、膨張用ガスは強靱袋54を膨張させ、ついで腰部バッグ51、胸・肩部バッグ52、胸・頭部バッグ53を展開、膨張させる。強靱袋54はピラー60内で膨張し、胸・肩部バッグ52、胸・頭部バッグ53はピラー60外に展開して、乗員Pの側方に展開、膨張し、乗員Pを側方から拘束する。胸・肩部バッグ52、胸・頭部バッグ53は、ピラー60から前方のみならず、後方にも展開する。胸・頭部バッグ53の上部は、ガイドワイヤ70に沿って展開するので、展開後において、胸・頭部バッグ53は、上部を窓枠上部で支持されるとともに、後部をピラー60によって支持される。
【0045】
インパクトビーム20の打撃部22で叩かれて作動するので、インフレータ30は、側突センサやECU(電子制御装置)を介さずに、機械的に作動する。その結果、従来の電気作動型の装置に比べて、側突センサによる側突検知、ECUによる側突か否かの演算、側突であると判定した場合にインフレータのスクイブに通電して電熱ヒータを作動させるなどの時間が除去され、側突からインフレータ30の作動開始(膨張用ガスの噴出開始)までの時間が短縮される。この場合、インフレータ30が、ストアードガスインフレータ30A、パイロインフレータ30Bの何れであっても、機械的に作動され、側突からインフレータ30の作動開始までの時間が短縮される。また、車両側突時において、インフレータ30が機械的に作動するので、作動は確実、かつ、短時間である。また、従来必要であった側突センサ、ECUの側突演算回路、ワイヤハーネスなどの部品が不要となるか、または部品点数が低減する。
【0046】
また、サイドエアバッグ50をピラー付けとしたため、従来のように、シートバック内蔵のサイドエアバッグと、ルーフサイドに内蔵したカーテンエアバッグとの、2種類のエアバッグを設ける必要がない。このエアバッグ種類の削減により、エアバッグ装置が単純化され、かつコストダウンがはかられる。
【0047】
サイドエアバッグ50が強靱袋54を備えるので、車両側突時に強靱袋54がインパクトビーム20の打撃部22によって叩かれてもサイドエアバッグ50が破れることはなく、サイドエアバッグ50は確実に展開、膨張する。
また、胸・頭部バッグ53が車両前後方向に前方だけでなく後方にも展開するので、シートの位置調整によってシートが前後に移動しても、胸・頭部バッグは乗員頭部を拘束することができる。
【0048】
車両側突時、胸・頭部バッグ53が展開した時に、上部をルーフサイドレール71とによって、後部をピラー60によって支持され、乗員頭部Phをドア側の側方から拘束することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 乗員保護装置
11 サイドドア
20 インパクトビーム
22 打撃部
30 インフレータ
30A ストアードガスインフレータ
30B パイロインフレータ
50 サイドエアバッグ
51 腰部バッグ
52 胸・肩部バッグ
53 胸・頭部バッグ
54 強靱袋
55 連通路
60 ピラー
63 ピラーガーニッシュ
70 ガイドワイヤ
71 ルーフサイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドドアの内部に設けられたインパクトビームと、
ピラーの内部で前記インパクトビームの車幅方向内側に設けられ、車両側突時にインパクトビームによって押されてガスを噴出するインフレータと、
ピラーガーニッシュ内に設けられ、前記インフレータからガスを供給されて車両前後方向に、展開する、サイドエアバッグと、
を有する乗員保護装置。
【請求項2】
前記インフレータが、車両衝突時、インパクトビームから押されて機械的に破断されるストアードガスタイプのインフレータ、または、インパクトビームから押されて衝撃で発火する点火装置を備えたパイロインフレータからなる請求項1記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記サイドエアバッグが、車両側突時に、乗員腰部側方に展開する腰バッグ、乗員胸部〜肩部側方に展開する胸・肩部バッグ、乗員胸部〜頭部側方に展開する胸・頭部バッグ、前記インフレータを覆う強靱な袋および/またはチューブ、の少なくとも1つを備えている請求項1または請求項2記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記乗員保護装置が、車両側突時に乗員胸部〜頭部側方に展開する胸・頭部バッグを備えており、
前記胸・頭部バッグは、車両前後方向に前方だけでなく後方にも展開する、請求項3記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記サイドエアバッグが、側突時に、乗員胸部〜頭部側方に展開する胸・頭部バッグを備えており、
前記乗員保護装置が、ルーフサイドレールに取付けられた、該ルーフサイドレールに沿って延びるガイドワイヤを有しており、
前記胸・頭部バッグは該胸・頭部バッグの上端部を前記ガイドワイヤにガイドされて展開する、請求項3または請求項4記載の乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−251665(P2011−251665A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128637(P2010−128637)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】