説明

乳化性組成物

【課題】
本発明は、食品をはじめ化粧品、医薬品、飼料、農薬更には化成品等、産業上の汎用性のある乳化性及び乳化安定性が非常に優れており、散布した後も安定で、効力の持続性に寄与する乳化性組成物を提供するものである。
【解決手段】
米糠は利用方法が少ない。しかし、本発明者等は、米糠から、亜臨界水を用いて抽出した成分に優れた高い乳化力及び乳化安定性があることを見出し、従来には無い全く新規な乳化性組成物を得るに至ったものである。このとき、乳化性組成物以外の乳化剤を併用することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米糠から、亜臨界水を用いて抽出した成分を有することを特徴とする乳化性及び乳化安定性が優れた乳化性組成物に関するものである。本発明は、食品、化粧品、医薬品、飼料、農薬、化成品等に用いられる。
【背景技術】
【0002】
米の年間生産量は日本で約900〜950万tあり、その1割の90〜95万tが副産物の米糠であるが、一部利用されずに廃棄されているものもあり、米糠を有効利用することは、我が国において重要な課題である。
【0003】
従来、米糠は、米油の原料として利用されており、米油の製造過程では、副産物として脱脂米糠が大量に排出される。しかし、家畜の飼料や肥料として利用されているだけである。
【0004】
水を密閉容器に入れて加熱していくと、気体の密度は増加し、ついには気体と液体の密度が等しくなり、その境界が消失する。この境界が消失する点(温度374℃、圧力22、1MPa)を臨界点という。臨界点に近い領域、たとえば200℃、1.5MPaの状態では水は液体の状態であり、この状態の水を亜臨界水という。亜臨界水中では、物質の分解(加水分解・熱分解)、酸化(酸化剤共存下)、再結合、重合等多様な反応が起こるが、温度・圧力・共存物質等の操作により特定の反応を優先させることができる。
【0005】
この亜臨界水の性質を利用し、動植物素材に作用させる試みは従来から広く行われており、フレーバーの抽出や有機廃棄物の処理等に利用されている(たとえば、特許文献1,2参照)。しかしながら、これらの試みとは廃棄物の削減や処理を目的としたものや、食物繊維やミネラルといった既存の機能性物質を摂取しやすくするといった目的での加工にかぎられている。
【0006】
【特許文献1】特願2005−081332号広報
【特許文献2】特願2005−161159号広報 特許文献3に天然素材としての脱脂米糠から亜臨界水処理により、水溶性の亜臨界抽出物(抗酸化組成物)が得られることは知られている。しかし、米糠を亜臨界水処理することも、その亜臨界抽出物を利用した乳化物についての発明はされていない。
【0007】
【特許文献3】特願2004−351147号広報 これに対し、本発明者等は米糠を亜臨界水処理することにより得られる亜臨界水抽出物が乳化力に優れた性質を有することを見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の課題に鑑み、本発明は、食品をはじめ化粧品、医薬品、飼料、農薬更には化成品等、産業上の汎用性のある乳化性に優れた乳化性組成物を従来にはない米糠から得ることを目的とする。本発明品を最終製品で使用した場合も、最終製品に与える影響を与えることなく、長期に渡って乳化が安定しており、散布した後も安定で、効力の持続性に寄与する。さらに、食品に利用した場合は風味を満足させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意に研究した結果、米糠から、亜臨界水を用いて抽出した成分に優れた乳化作用を有することを見出し、従来には無い全く新規な乳化性組成物を得るに至ったものである。このとき、乳化性組成物以外の乳化剤を併用することが出来る。
【0010】
このように、本発明において、利用が難しいとされていた米糠を高付加価値化を有する乳化性組成物として販売することが可能となり、これによって新たな産業分野を創出する可能性を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、機能性成分を豊富に含有する米糠から、従来にはない乳化作用に優れた米由来の乳化性組成物を提供することが可能となった。さらに、需要の少ない米糠の非常に有効な利用法であり、省資源になるという大きな利点がある。特に本発明は、食品をはじめ、化粧品、医薬品、飼料、農薬、化成品等の産業分野における高い乳化性及び乳化安定性に優れ、且つ収率的にも優れた乳化性組成物であり、幅広く応用できる有用なものが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、抽出原料となる米糠は粉砕機等を用いて粉砕したものを用いても良い。また、米糠とは玄米を精白して得られる通常の米糠に加え、有機溶媒あるいは圧搾等によって脱脂された脱脂糠や、ビタミンB群やタンパク質等の成分を抽出した後の残渣を指すが、米の品種や生育時期、地域等は特に限定されるものではない。
【0013】
抽出に用いる亜臨界水については、一般に使用されている亜臨界水製造装置や亜臨界分解装置を用いるほか、オートクレーブ装置等、亜臨界水状態を発生させることが出来るものであれば特に限定されるものではない。
【0014】
抽出原料に水を加えて亜臨界状態下まで加熱・加圧した状態で一定時間抽出した後、冷却する。
【0015】
このようにして調整される抽出液はそのまま水溶液の状態で乳化剤として使用しても良いが、更に精製、濃縮、乾燥等して、これを粉末或いは濃縮する処理を施すことが好ましい。
【0016】
濃縮、精製処理としては濾過、膜濃縮、カラム精製等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、乾燥法についても一般的に用いられる噴霧乾燥、凍結乾燥等の乾燥法であれば良い。乾燥したものは乳化性組成物として、後述のように、食品、化粧品等乳化を必要とする製品に応用することが出来る。
【0017】
本発明によって得られる乳化性組成物の使用量は、特に限定されるものではないが、通常10ppm〜15%である。
【0018】
本発明で得られた乳化性組成物には、使用用途により他の添加剤、例えば、デキストリン、抗酸化剤等を適宜配合しても良い。
【0019】
このようにして得られた乳化性組成物は、食品・医薬品・化粧品・飼料・農薬・化成品等に添加することで、長期間安定な乳化状態が得られると共に、散布した後も安定で、効力の持続性に寄与する。例えば、マーガリン、乳製品、乳飲料、菓子類、清涼飲料水、酒類、ホイップクリーム、ケーキ、カレールー、アイスクリーム、調整粉乳、コーヒーホワイトナー、シャンプー、ハンドクリーム、洗顔クリーム、ヘアリンス、脱毛クリーム、ミルキーローション、頬紅、ベビーローション、デオドラント制汗剤、ファンデーション、ヘアスプレー、口紅、マスカラ、マニキュアリムーバー、アイライナー、アイシャドウ、ヘアクリーム、歯磨き粉、塗り薬、医薬品用クリーム等に利用できる。
【0020】
さらに、本発明で得られた乳化性組成物は、単独で乳化剤として使用することが出来るが、必要に応じて食品、化粧品、医薬品、飼料、農薬、化学工業等の分野で利用される既存の乳化剤、例えば、脂肪酸石鹸、4級アンモニウム塩、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等との併用により、既存の乳化剤の欠点を補うことやさらに乳化作用を増強させる相乗効果を期待することもできる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって技術範囲が制限されるものではない。
【実施例1】
【0022】
脱脂米糠14gに水700mLを加え、オートクレーブ装置(日東高圧株式会社製)の反応容器に入れ、密閉後、攪拌しながら加熱を開始する。80℃に達温後、5分間その温度を保持してから冷却し、抽出液と残渣を反応溶液から取り出す。遠心分離(3,000rpm、5min)で残渣を除去後、No.5のろ紙でろ過し、得られたろ液を凍結乾燥させ、淡褐色の亜臨界水抽出物6gを得た。
【0023】
上記調整法により、脱脂米糠の亜臨界水抽出物を高収率で得られる。以下これらの乳化性組成物に関する実施例を説明する。
【実施例2】
【0024】
実施例1で調整した抽出物を用い、以下の乳化テストを行った。その結果を表1に示す。表より、本抽出物が乳化作用を有していることが確認された。具体的乳化方法は以下に示す。
【0025】
大豆油1gに5%亜臨界水抽出物水溶液20mLを加えて、ローター・ステーター式の乳化機(日温医理科ヒスコトロンNS−50)を用いて約10,000rpm,2分の条件で乳化を行った。乳化された乳化物の概観について観察した。
【0026】
【表1】

【0027】
以上の結果から、本発明における米糠から得られた乳化性組成物は、高い乳化能及び乳化安定化能のあることがわかった。
【実施例3】
【0028】
(コーヒーホワイトナー)
以下の配合でコーヒーホワイトナーを調整した。
【0029】
【表2】

【0030】
脱脂粉乳、デキストリン、カゼインナトリウム、リン酸塩、乳化性組成物を水に溶解する。そこに、米サラダ油を70℃で加え、ホモミキサーにて予備乳化を行った。次いで、高圧ホモジナイザーにて乳化(500kgf/cm)して、コーヒーホワイトナーを得た。また、砂糖7.5%を含む市販インスタントコーヒー(90℃、pH4.9)にコーヒーホワイトナーを添加、攪拌した後、全くフェザーリング(クリームの不安定化により、羽毛状または、細かい凝固物が生じる現象)やオイルオフ(脂肪の遊離)を起こさず、まろやかな風味のコーヒーが得られた。
【実施例4】
【0031】
(マーガリン)
以下の配合でマーガリンを調整した。
【0032】
【表3】

【0033】
上記の米サラダ油を除く原料を混合し溶解させた後、米サラダ油に50〜60℃で添加しながら、ホモジナイザーを用いて十分に乳化(60分間、12,000rpm)させる。これを15〜20℃の温度まで急冷しながら、練り合わせる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠より、亜臨界水を用いて抽出することで得られる成分を含有することを特徴とする乳化性組成物。
【請求項2】
請求項1記載の乳化性組成物と、従来の乳化性組成物を配合することで乳化性を増強させる組成物。
【請求項3】
請求項1記載の乳化性組成物を配合されたことを特徴とする医薬品・化粧品・食品・飼料・農薬。
【請求項4】
請求項1記載の乳化性組成物を配合されたことを特徴とする化成品。

【公開番号】特開2007−222844(P2007−222844A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49875(P2006−49875)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(591066362)築野食品工業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】