説明

二層フレキシブルプリント基板の製造方法

【課題】力学的特性及び耐熱性に優れ、しかも高い剥離強度を有する二層フレキシブルプリント基板を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】特定ジアミンと、このジアミン1モルに対して0.95〜1.05モルのテトラカルボン酸誘導体とからなる塩であって、ジアミン(a)と(b)とのモル比(a)/(b)が50/50から90/10の範囲である塩を溶質として含有し、溶質濃度が20重量%以上でかつ粘度が50ポイズ以下のポリイミド前駆体溶液を、銅箔上に塗布し、上記ポリイミド前駆体をイミド転化させることを特徴とする二層フレキシブルプリント基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドと銅の二層のみからなるフレキシブルプリント基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドはエレクトロニクス分野への応用に有用なものであり、半導体デバイス上への絶縁フィルムや保護コーティングとして用いられている。特に全芳香族ポリイミドは、その優れた耐熱性、機械的特性、電気的特性から、フレキシブルプリント基板や集積回路等に多用されている。フレキシブルプリント基板の製造方法としては、銅箔とポリイミドフィルムを接着層を介して接着して製造する方法、銅箔にポリイミド前駆体を塗布しこれをイミド転化する方法、ポリイミドフィルム上にメッキ又はスパッタなどの方法で銅の層を形成する方法などがある。現在では集積回路の高密度化に伴い、フレキシブルプリント基板に関してもより低容量化することが必要となり、フレキシブルプリント基板は二層のみから形成されることが主流となっている。
【0003】
フレキシブルプリント基板の製造に用いられているポリアミド酸溶液は、溶媒中で芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させることにより製造されるものであり、例えば特公昭36−10999号公報、特開昭62−275165号公報、特開昭64−5057号公報、特公平2−38149号公報、特公平2−38150号公報、特開平1−299871号公報、特開昭58−122920号公報、特公平1−34454号公報、特開昭58−185624号公報、Journal of Polymer Science, Macromolecular Reviews Vol.11 P.199(1976)、米国特許第4238528号明細書、特公平3−45
88号公報、特公平7−30247号公報、特開平7−41556号公報、特開平7−62095号公報、特開平7−133349号公報、特開平7−149896号公報、特開平6−207014号公報、特公平7−17870号公報、特公平7−17871号公報、IBM Technical Disclosure Bulletin Vol.20 No.6 P.2041 (1977)等に記載されているような非プロトン性極性溶媒を用いるものや、特開平6−1915号公報に記載されているような水溶性エーテル系化合物、水溶性アルコール系化合物、水溶性ケトン系化合物及び水から選ばれる混合溶媒を用いるものなど、種々の溶液が提案されている。
【0004】
また、ポリイミド前駆体溶液における溶質としてのポリイミド前駆体はポリアミド酸以外にも種々のポリマーが知られている。例えば、Macromolecules Vol.22 P.4477 (1989) やPolyimides and Other High Temperature Polymers.P.45 (1991)には、下記一般式からなるポリアミド酸エステルが開示されている。
【0005】
【化1】

【0006】
また、Macromolecules Vol.24 P.3475 (1991) には、下記一般式からなるポリアミド酸トリメチルシリルエステルが開示されている。
【0007】
【化2】

【0008】
さらに、Journal of Polymer Science Part B Vol.8 P.29(1970)、Journalof Polymer Science Part B Vol.8 P.559 (1970)、日本化学会誌 Vol.1972 P.1992、Journal of Polymer Science Polymer Chemistry Edition Vol.13 P.365 (1975) には、下記式からなるポリアミド酸ビス(ジエチルアミド)が記載されている。
【0009】
【化3】

【0010】
上述したこれらポリイミド前駆体はいずれも高重合度のポリマーの溶液である。これらポリマー溶液からポリイミド塗膜を得る際は、一般的にはこのポリマー溶液を銅、ガラス等の基材上にコーティングし、加熱することにより溶媒の除去及びイミド化を行いポリイミド塗膜を得る。しかしながら、この高重合度のポリマー溶液をコーティングする場合には、その重合度故に塗工可能な溶液の粘度とするためには、溶質濃度を低くしなければならないという問題があった。また、生産性を高めるために、溶質濃度を高めると溶液の粘度が高くなり、塗工できなくなくなるという問題点もある。また、たとえ塗工できたとしても粘度が高いために、二層フレキシブルプリント基板を製造する際には粗面化処理を施した銅箔の粗面化面に塗工しても、その奥部まで十分にポリイミド前駆体が侵入せず、剥離強度が十分ではないという問題点があった。
【0011】
また、特開平5−259595号公報等に示されるように粗面化処理を施したポリイミドフィルム上に金属層を蒸着して二層フレキシブルプリント基板を形成する方法では、金属層の厚みの制御が困難であって、電気回路としての信頼性に問題が出るおそれがある上、製造には多くの工程と大規模な設備を要する。これらを克服するためにに、特開平4−274382号公報に示されるようにポリイミド中に官能基を導入して接着性を改善するなどの試みがなされているが、これは接着性を増す反面、ポリイミド層の耐熱性及び力学特性を損なうという問題点がある。さらには、ポリマー溶液を用いて二層フレキシブルプリント基板を製造する場合、ポリマー溶液は長期間の保存に耐え難く、その重合度を維持しつつ長期間保存することは極めて困難であった。
【0012】
【非特許文献1】Macromolecules Vol.22 P.4477 (1989)
【非特許文献2】Polyimides and Other High Temperature Polymers.P.45 (1991)
【非特許文献3】Macromolecules Vol.24 P.3475 (1991)
【非特許文献4】Journal of Polymer Science Part B Vol.8 P.29(1970)
【非特許文献5】Journalof Polymer Science Part B Vol.8 P.559 (1970)
【非特許文献6】日本化学会誌 Vol.1972 P.1992
【非特許文献7】Journal of Polymer Science Polymer Chemistry Edition Vol.13 P.365 (1975)
【特許文献1】特開平5−259595号公報
【特許文献2】特開平4−274382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記状況に鑑み、本発明の課題は、力学的特性及び耐熱性に優れ、しかも高い剥離強度を有する二層フレキシブルプリント基板を効率よく製造する方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の構造を有するポリイミドの層を有する二層フレキシブルプリント基板は高い剥離強度を有し、ポリイミド層の耐熱性及び力学的特性にも優れていることを見出し、また、そのような二層フレキシブルプリント基板は特定の構造を有するジアミンと特定の構造を有するテトラカルボン酸誘導体とから得られる塩を溶質として含有する高濃度、低粘度のポリイミド前駆体を銅箔上に塗布し、これをイミド転化させることによって得られることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
すなわち、本発明の要旨は、下記構造式(2)で示されるジアミンと、このジアミン1モルに対して0.95〜1.05モルの下記構造式(3)で示されるテトラカルボン酸誘導体とからなる塩であって、下記構造式(2)で示されるジアミンの下記(a)と(b)とのモル比(a)/(b)が50/50から90/10の範囲である塩を溶質として含有し、溶質濃度が20重量%以上でかつ粘度が50ポイズ以下のポリイミド前駆体溶液を、銅箔上に塗布し、上記ポリイミド前駆体をイミド転化させることを特徴とする二層フレキシブルプリント基板の製造方法であり、好ましくは、構造式(2)で示されるジアミンが、下記構造式(5)に示すジアミン1モルに対し下記構造式(4)で示されるテトラカルボン酸二無水物0.60〜0.95モルを反応させて得られるものである二層フレキシブルプリント基板の製造方法である。
【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法によれば、高濃度かつ低粘度のポリイミド前駆体の溶液を用いるので、力学的特性及び耐熱性に優れ、剥離強度の大きい二層フレキシブルプリント基板を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
まず、本発明で用いる用語について説明する。
(1)ポリイミド
ポリマー鎖の繰り返し単位の80モル%以上がイミド構造を有する有機ポリマーをいう。そして、この有機ポリマーは耐熱性を示す。
(2)ポリイミド前駆体
加熱又は化学的作用により閉環すなわちイミド転化してポリイミドとなる有機化合物をいう。ここで閉環とはイミド環構造が形成されることをいう。
(3)ポリイミド溶液
ポリイミド前駆体が溶媒に溶解しているものである。ここで溶媒とは25℃で液状の化合物をいう。
(4)粘度
(株)トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、20℃における回転粘度を測定したものである。
(5)溶質濃度
溶液中に占めるポリイミド前駆体の重量割合を百分率で表した数値である。
(6)ポリイミド塗膜
例えば銅、アルミニウム、ガラス等の基材上に形成されたポリイミドの膜をいう。これらポリイミド塗膜のなかで基材と密着したまま使用されるものをポリイミド被覆物といい、基材から剥離して使用されるものをポリイミドフィルムという。
(7)剥離強度
JIS C6481(180度ピール)に準じて測定したものである。
(8)引張り弾性率、破断強度、破断伸度
インテスコ社製インテスコ精密万能材料試験機にて、引っ張り速度10mm/min.、室温で測定された値である。
(9)耐熱性
耐熱性を示すとは、高温での高度の寸法安定性を示し、具体的には250℃までの線熱膨張係数が50ppm 以下であり、高温での化学的安定性、具体的には400℃
までの加熱により一切の化学的変性を示さないことを言う。
【0023】
次に、本発明の製造方法により得られる二層フレキシブルプリント基板について説明する。
【0024】
本発明の製造方法により得られる二層フレキシブルプリント基板は、下記構造式(1)で示される構造を有する芳香属ポリイミドの層と銅の層の二層のみからなり、銅の層は芳香属ポリイミドの層と直接接している。
【0025】
構造式(1)で示される芳香族ポリイミドの構造単位AとBとのモル比X/Yは50/50から90/10の範囲である。このモル比X/Yがこの範囲内にあるときは、剥離強度やポリイミドの層の破断強度、破断伸度ともに良好な値を示すが、50/50よりも小さいと基板としての強度に不足し、一方、90/10よりも大きいと100/0のものと比べて剥離強度、破断伸度があまり変わらなくなる。
【0026】
上記銅の層は芳香属ポリイミドの層と接している面が粗面であることが好ましく、特に銅の層として粗面化処理を施した電解銅箔を用いると、粗面化面の奥部まで芳香属ポリイミドが十分に浸透し、より高い剥離強度を有する。銅の層の層厚は1ミクロン以上が好ましく、2から100ミクロンの範囲がより好ましい。層厚が1ミクロン未満では、配線を形成した場合の各種性能が低下することがある。
【0027】
ポリイミドの層の層厚は1ミクロン以上が好ましく、5ミクロン以上がより好ましい。層厚が1ミクロン未満では基板としての強度に不足することがある。
【0028】
【化8】

【0029】
次に、本発明の二層フレキシブルプリント基板の製造方法を説明する。
【0030】
本発明におけるポリイミド前駆体の溶液は、構造式(2)で示されるジアミンと構造式(3)で示されるテトラカルボン酸誘導体とからなる塩が溶質として溶媒中に溶解しているものである。本発明のポリイミド前駆体の溶液において、溶媒としては構造式(2)で示されるジアミンと構造式(3)で示されるテトラカルボン酸誘導体からなる塩を溶かす溶媒であればいかなる溶媒でもよい。
【0031】
溶媒としては、例えば、非プロトン性極性溶媒である、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスフォラアミド等が挙げられ、エーテル系化合物である、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、水溶性アルコール系化合物である、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらの二種以上を混合して用いることができる。
【0032】
これらの溶媒のうち、特に好ましい例としては、単独溶媒としてはN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、混合溶媒としては、N,NジメチルアセトアミドとN−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンとメタノール、N−メチル−2−ピロリドンと2―メトキシエタノール等の組み合わせが挙げられる。
【0033】
本発明におけるポリイミド前駆体の溶液のポリイミド前駆体の濃度は、20重量%以上が好ましい。25重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。また、ポリイミド前駆体溶液の粘度は、50ポイズ以下が好ましく、35ポイズ以下がより好ましく、20ポイズ以下がさらに好ましい。
【0034】
本発明におけるポリイミド前駆体の溶液は、構造式(2)で示されるジアミンの溶液に、構造式(3)で示されるテトラカルボン酸誘導体を添加することにより製造することができる。
【0035】
ここでは、好ましい例として、非プロトン性極性化合物中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより、構造式(2)で示されるジアミンの溶液を製造した後、構造式(3)で示されるテトラカルボン酸誘導体を添加してポリイミド前駆体の溶液を製造する方法について説明する。
【0036】
まず、構造式(4)で示される芳香族テトラカルボン酸二無水物と構造式(5)で示される芳香族ジアミンとを、非プロトン性極性化合物中で反応させ、構造式(2)で示されるジアミンの溶液を製造する。
【0037】
【化9】

【0038】
【化10】

【0039】
この反応温度は、−30〜60℃が好ましく、−20〜40℃がより好ましい。構造式(2)で示されるジアミンを得るためのテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、ジアミン1モルに対しテトラカルボン酸二無水物0.60〜0.95モルが好ましく、より好ましくはジアミン1モルに対しテトラカルボン酸二無水物が0.75〜0.90モルである。ジアミン1モルに対しテトラカルボン酸二無水物が0.60未満では基板としての強度に不足することがある。
【0040】
次いで、構造式(2)で示されるジアミンの溶液に構造式(3)で示される芳香族テトラカルボン酸誘導体を添加する。構造式(3)で示される芳香族テトラカルボン酸誘導体の添加割合は構造式(2)で示されるジアミン1モルに対し0.95〜1.05モルが好ましく、より好ましくは0.97〜1.03モルである。構造式(3)の芳香族テトラカルボン酸誘導体の添加割合が、0.95〜1.05モルの範囲外では目的とする塩が得られにくくなる傾向にある。
【0041】
構造式(2)で示されるジアミンの溶液を製造する際には、モノマー及び溶媒の混合順
序は特に制限はなくいかなる順序でもよい。溶媒として混合溶媒を用いる場合は、個々の溶媒に別々のモノマーを溶解又は懸濁させておき、それらを混合し、撹拌下、所定の温度と時間で反応させることによっても、構造式(2)からなるジアミン溶液が得られる。また、構造式(3)で示されるテトラカルボン酸誘導体を添加する方法は、前記ジアミンの溶液に撹拌下、固体のままか、もしくは溶液にして添加する。または、構造式(2)で示されるジアミンを製造する際に、テトラカルボン酸二無水物と同時に加えてもよい。
【0042】
以上の方法により得られたポリイミド前駆体の溶液を、バーコーター等により銅箔の粗面に塗布し、乾燥して溶媒を除去した後、不活性ガス雰囲気下において焼成してポリイミド前駆体をイミド転化させることによって二層フレキシブル基板を得る。
【0043】
ポリイミド前駆体溶液の塗布厚は、溶液の濃度及び粘度によって好適値が異なる。また、塗布後の乾燥温度は溶媒や溶質濃度によって好適値が異なる。焼成温度は250℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましく、350℃以上がさらに好ましい。250℃未満ではイミド転化が不十分になり、各種特性が低下することがある。
【0044】
塗布、乾燥、イミド転化の操作は2回以上くり返し行ってもよく、その際、別組成のポリイミド前駆体の溶液を用いてもよい。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0046】
〔実施例1〕
4,4' −オキシジアニリン4.65g、パラフェニレンジアミン7.53g、ジメチルアセトアミド84g及びN−メチル−2−ピロリドン36gを三つ口フラスコにとり、これを氷水中で30分間攪拌した後、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物23.22gを加え40℃の湯浴中で1時間攪拌を行った。次いでビフェニルテトラカルボン酸4.60gを加えて40℃の湯浴中で2時間攪拌し、次いで60℃湯浴中で3時間攪拌を行い、均一なポリイミド前駆体の溶液を得た。得られたポリイミド前駆体の溶液の濃度は25重量%であった。
【0047】
上記のポリイミド前駆体の溶液を福田金属箔粉工業(株)製電解銅箔CF−T9の粗面側に塗布し、これを窒素雰囲気下で80℃で60分間熱処理し、次いで380℃で120分間熱処理を行い、ポリイミド前駆体をイミド転化し、二層フレキシブルプリント基板を得た。
【0048】
得られた二層フレキシブルプリント基板を塩化鉄の水溶液を用いてエッチング処理することによって銅層を除き、ポリイミドフィルムを得た。
【0049】
得られたポリイミドの構造単位AとBとのモル比X/Y、ポリイミド前駆体の溶液の粘度、得られた二層フレキシブルプリント基板の銅箔とポリイミドフィルムとの剥離強度、ポリイミドフィルムの破断強度及び破断伸度を表1に示す。
【0050】
〔比較例1〕
4,4' −オキシジアニリンを10.38g、パラフェニレンジアミンを3.74g、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を21.60g、ビフェニルテトラカルボン酸を4.28gとする以外は実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体の溶液、二層フレキシブルプリント基板及びポリイミドフィルムを得た。上記ポリイミド前駆体の溶液の濃度は25重量%であった。
【0051】
得られたポリイミドの構造単位AとBとのモル比X/Y、ポリイミド前駆体の溶液の粘度、得られた二層フレキシブルプリント基板の銅箔とポリイミドフィルムとの剥離強度、ポリイミドフィルムの破断強度及び破断伸度を表1に示す。
【0052】
〔比較例2〕
4,4' −オキシジアニリンを用いることなく、パラフェニレンジアミンを10.61g、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を24.53g、ビフェニルテトラカルボン酸を4.86gとする以外は実施例と同様にして、ポリイミド前駆体の溶液、二層フレキシブルプリント基板及びポリイミドフィルムを得た。上記ポリイミド前駆体の溶液の濃度は25重量%であった。
【0053】
得られたポリイミドの構造単位AとBとのモル比X/Y、ポリイミド前駆体の溶液の粘度、得られた二層フレキシブルプリント基板の銅箔とポリイミドフィルムとの剥離強度、ポリイミドフィルムの破断強度及び破断伸度を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から明らかなように、本発明の製造方法による二層フレキシブルプリント基板は特に剥離強度に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(2)で示されるジアミンと、このジアミン1モルに対して0.95〜1.05モルの下記構造式(3)で示されるテトラカルボン酸誘導体とからなる塩であって、下記構造式(2)で示されるジアミンの下記(a)と(b)とのモル比(a)/(b)が50/50から90/10の範囲である塩を溶質として含有し、溶質濃度が20重量%以上でかつ粘度が50ポイズ以下のポリイミド前駆体溶液を、銅箔上に塗布し、上記ポリイミド前駆体をイミド転化させることを特徴とする二層フレキシブルプリント基板の製造方法。
【化1】

【化2】

【請求項2】
構造式(2)で示されるジアミンが、下記構造式(5)に示すジアミン1モルに対し下記構造式(4)で示されるテトラカルボン酸二無水物0.60〜0.95モルを反応させて得られるものである請求項1記載の二層フレキシブルプリント基板の製造方法。
【化3】


【化4】

【請求項3】
ポリイミド前駆体溶液の溶媒がN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン又は両者の混合溶媒であることを特徴とする請求項1または2記載の二層フレキシブルプリント基板の製造方法。

【公開番号】特開2006−191120(P2006−191120A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2507(P2006−2507)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【分割の表示】特願平10−98849の分割
【原出願日】平成10年4月10日(1998.4.10)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】