説明

代謝不均衡に関連付けられる慢性腎疾患を治療するための治療組成物及び方法

本明細書で開示されるのは、慢性腎疾患、及び/又は、代謝不均衡を治療するための組成物及び方法である。具体的には、本明細書で例示されるのは、内皮の一酸化窒素(NO)、又は、内皮の機能を改善する併用薬剤と、RAS阻害薬との共投与を含む方法である。また、メタボリック症候群の1又は複数の診断基準のような、慢性腎疾患の1つの段階の症状、及び、代謝不均衡の症状の少なくとも1つを示す患者を治療する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年10月19日出願の米国仮特許出願第61/106,602号に対する優先権を主張するものであり、これは、全体として本明細書に盛り込まれる。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、現在、米国人口の8%に影響を与え、その有病率は増加している。糖尿病の最も重篤な合併症のうちの1つは腎症の進行である。これは、透析又は移植を必要とする末期腎疾患に進行する場合がある。現在、糖尿病性腎症のための治療法として、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)、及び、アンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)が好まれる。利点は、血圧降下作用と一部分独立していると考えられる(非特許文献1〜4)。しかしながら、最近の研究は、ACE阻害薬及びARBが網膜症を妨げる利点を有するにもかかわらず、1型糖尿病性腎症の進行を遅らせるには有効ではないことを示唆している(非特許文献5)。また、他のグループは、ACE阻害薬が、顕性腎症を有する2型糖尿病で本来想定されるほど有効ではないことを報告している(非特許文献6〜8)。これらの所見は、糖尿病のラットでの腎症予防におけるACE阻害薬及びARBの周知の予防効果とは対照的である(非特許文献9,10)。
【0003】
糖尿病性腎症におけるACE阻害薬の効果の欠如を説明する機序は知られていない。しかしながら、ACE阻害薬又はARBを投与されている糖尿病性腎症の患者の何人かは、アルドステロンレベルにおいて逆説上昇に発展する(「アルドステロンブレイクスルー」と呼ばれる)(非特許文献11,12,13)。ACE阻害薬の使用の際、アルドステロン阻害薬の添加が提案されているが(非特許文献14)、これらの治療は、しばしばカリウム過剰血症によって制限されている。これは、両者の治療が組み合わせられる場合に一般的である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、内皮の一酸化窒素の不足が、糖尿病腎症におけるACE阻害薬及び/又はARBの不応答を引き起こす基礎的要素であるという本発明者ら発見に基づく。本発明は、糖尿病性腎症の予防及び治療におけるACE阻害薬及びARBの有効性を高めるための新しい方法を提供する。具体的には、これは、糖尿病の状態においてACE阻害薬及びARBの不応答についての機序を明らかにしている一連の発見に基づく。
【0005】
任意の新しい治療薬の開発は、大抵の場合、最初は、標的となる疾患の動物モデルにおけるこれらの薬剤の有効性に基づく。この点では、糖尿病性腎症の多数のモデルが、ラット及びマウスにおいて報告されている。しかしながら、最近まで、これらのモデルでヒト糖尿病性腎症に似たものはなかった。1型糖尿病のモデル(ストレプトゾトシンに誘導された糖尿病のラット等)、及び、2型糖尿病のモデル(db dbマウス)が周知であるが、これらのモデルは、単なる軽症のタンパク尿、並びに、糸球体間質の膨張及び基底膜肥厚のような糖尿病性腎症の初期の変化に関連付けられる。重要なことに、これらのモデルは、ヒト糖尿病性腎症で観察される臨床症状(ネフローゼ蛋白尿、糸球体濾過率(GFR)の進行性減少)、あるいは、顕微鏡的病変(メサンギウム融解、メサンギウムの結節、血管病変、又は、尿細管間質疾患)を進行しない。ヒト糖尿病性腎症の良好なモデルの不足は、この疾患の病因についての我々の理解を妨げ、また、新しい治療を試験することを困難にしている。実際、糖尿病性腎症の良好なモデルの不足の懸念により、NIHが、このような動物モデルを開発する具体的な目標を有するコンソーシアムを作る結果となった(非特許文献15)。
【0006】
本発明者ら(非特許文献16〜19(さらに20を参照))は、内皮の一酸化窒素合成酵素が欠損して、従って内皮の一酸化窒素を生成することができないマウスを用いることにより、ヒト糖尿病性腎症に非常によく似た動物モデルを最近開発した。糖尿病がストレプトゾトシンを有するこれらのマウスにおいて誘導される場合、これらは、臨床症状(ネフローゼ蛋白尿、進行性腎不全、及び、早期死亡)、組織の症状(メサンギウムの膨張、結節、及び、メサンギウム融解、足細胞異常、血管病変、尿細管間質疾患を含む)、及び、分子の変化(TGF−β及びVEGF発現における増加)を含む、ヒト糖尿病性腎症の面をすべて進行させることを示している。本発明者らの知っている限りでは、これはまた、網膜症及び腎症の両方を自発的に発病させる最初の糖尿病のモデルである。重要なことに、これらのマウスにおける腎疾患は、ヒトにおいて報告されたのと同様に、インシュリン(非特許文献21)、及び、有効な血圧低下(非特許文献18)を妨げることができる。
【0007】
他のモデルにおいて示されているように、ACE阻害薬及びARBが、糖尿病性腎症のこのモデルで有効だろうと初めは期待された(非特許文献9)。実際、ACE阻害薬及びARBは、ストレプトゾトシンを注射された野生型マウスにおける糖尿病性腎症の進行をブロックできることが再び裏付けられた。しかしながら、本発明者らが驚いたことに、この同じ治療は、糖尿病のeNOSKOマウスにおいては有効ではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、ACE阻害薬が、野生型糖尿病(DM)マウスにおける血圧低下に有効であることを示すグラフを表す。図1において示されるのは、治療なし(TXなし)、ACE阻害薬であるエナラプリル(DMエナラプリル)、及び、ARBであるテルミサルタン(DMテルミサルタン)の効果である。ACE阻害薬及びARBの両方は、野生型糖尿病マウスにおいて血圧(BP)を大幅に低下させることができる。
【0009】
【図2】ACE阻害薬(エナラプリル)、及び、ARB(テルミサルタン)は、また、野生型糖尿病(DM)マウスにおける、メサンギウムの膨張(A)、及び、糸球体のIV型コラーゲン沈着(B)を改善する。これらは糖尿病性腎症の初期の変化と考えられる。
【0010】
【図3】図3は、ACE阻害薬及びARBが、内皮のNO欠損糖尿病マウスの血圧低下にそれほど有効でないことを示すグラフを表す。3(A)は、NonDM eNOSKOマウスでのACE阻害薬及びARBの血圧への効果を示す。また、3(B)は、DM eNOSKOマウスでのACE阻害薬及びARBの血圧への効果を示す。
【0011】
【図4】ACE阻害薬及びARBは、eNOSKOマウスにおける糖尿病性腎症を妨げるのには有効ではない。DMは、DM eNOSKOマウスにおけるメサンギウムの膨張を引き起こした(B)。これは、エナラプリル(C)、又は、テルミサルタン(D)によって妨げられなかった。DM eNOSKOマウスは、また、糸球体毛細血管微小動脈瘤(E)を有し、かつ、細胞外マトリックスの沈着の増加(F)を有するメサンギウム融解を示した。エナラプリル(G)、及び、テルミサルタン(H)のいずれの治療も、これらの進行した病変を妨げなかった。バー:20μm。メサンギウムの膨張の定量分析(M)は、糖尿病のeNOSKOマウスではなく野生型糖尿病マウスにおいて、ACE阻害薬(黒いバー)、及び、ARB(灰色のバー)の有益な効果を確認した。バー:20μm。白いバー=治療なし、黒いバー=エナラプリル、灰色のバー=テルミサルタン。データは、平均として示される。
【0012】
【図5】は、eNOSKOマウスの糖尿病性腎症での、血圧及び腎機能へのACE阻害薬及びARBの効果の欠如を示す表である。ACE阻害薬及びARBは、野生型糖尿病マウスにおいて血圧及びタンパク尿を低下させるのに有効で、また、糖尿病でないeNOSKOマウスの血圧低下に有効である。しかしながら、10週の糖尿病のeNOSKOマウスにおいては、ACE阻害薬は有効ではなく、また、ARABは、最小限に血圧を低下させるだけしか有効ではなく、タンパク尿を顕著には減少させない。
【0013】
【図6】図6は、ACE阻害薬又はARBでの治療によって、血清アルドステロンは、糖尿病の野生型マウス(A)では抑制されるが、糖尿病のeNOSKOマウス(B)では抑制されないことを示すグラフを表す。
【0014】
【図7】図7は、糖尿病のeNOSKOマウスの腎臓の免疫組織グラフであり、この糸球体におけるアルドステロンの増加を示す。糖尿病は、eNOSKOマウスにおいてストレプトゾトシンを用いて誘導された。これは、エナラプリル(10mg/kg BW/日、黒いバー)、又は、テルミサルタン(2mg/kg BW/日、灰色のバー)を用いて、4週間(6週〜10週)治療された。
【0015】
【図8】図8は、一酸化窒素ミメティック(亜硝酸塩)の供給により、eNOSKOマウスの血圧異常を調整することができることを示すグラフである。
【0016】
【図9】図9は、尿酸がヒト大動脈の内皮細胞において酸化ストレスを引き起こすことを示す免疫組織グラフ、及び、グラフである。緑色の蛍光は、酸化ストレスのためのマーカーの指標であり、過酸化物反応性プローブである、2’7’−ジクロロフルオレセイン二酢酸塩(DCF−DA)染料を用いている(図9のA)。右側が、酸化ストレスの定量化である。オープンバーが対照、黒いバーが尿酸(12mg/dl)、及び、右側のバーがアポシニン(NADPHオキシダーゼに誘導されたオキシダントの阻害薬)を加えた尿酸である(図9のB)。
【0017】
【図10】図10は、尿酸が内皮のNOレベルの低下を引き起こすことを示すグラフを表す。内皮のNO(ブタの大動脈の内皮細胞においてDAFの蛍光によって測定)への尿酸の様々な投与量の効果を示す。コースラ(Khoslaら)より(非特許文献30)。
【0018】
【図11】図11は、尿酸が、ヒト大動脈の内皮細胞において、ATPレベルを下げることを示す棒グラフである。尿酸(3.5mg/dl、7mg/dl、及び、12mg/dl)は、培地に48時間含まれていた。細胞の生存率(トリパンブルー排除)において変化は認められなかった。
【0019】
【図12】図12は、尿酸が、ヒト大動脈の内皮細胞において、ミトコンドリア数を減少させることを示す画像及びグラフである。ミトコンドリア数は、対照細胞(図12のA)及びUAで処理された細胞(図12のB)において、Mitotrackerオレンジを用いて測定した。図12のCで示されるのは、尿酸12mg/dlの場合の、48時間でのミトコンドリア密度への定量化された効果である。細胞の生存率への効果はないことが認められた。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らによって行なわれた最近の研究は、内皮細胞機能不全、及び、内皮のNOを改善する薬剤が、特に糖尿病性腎症において、代謝不均衡のための治療上、有益であることを明らかにする。これらの薬剤は、ミトコンドリアの機能の改善によって一部作用する。本発明に従って使用のために検討された薬剤は、尿酸を低下させる薬剤(UALA)(例えば、キサンチン酸化酵素阻害薬(フェブキソスタット、アロプリノール)、尿酸排泄薬(ベンズヨーダロン、ベンズブロマロン、プロベネシド)、ウリカーゼ誘導体(ラスブリカーゼ、PEG化ウリカーゼ)、及び、URAT−1の、遺伝子ベースの治療(ウリカーゼ過剰発現)又は遮断(我々が血管内皮細胞で確認した輸送体))、長期作用型硝酸塩、L−アルギニン、及び、ニコランジルのようなNOミメティック、並びに、アスコルビン酸塩、Nアセチルシステイン、エピガロカテキンガレート、及び、エピカテキンのような酸化防止剤を含むが、これらに制限されない。
【0021】
また、NOを刺激する薬剤が、糖尿病性腎症の治療の際に、ACE阻害薬、又は、レニン−アンギオテンシン経路を標的とする他の薬剤を用いることで、直接の相乗作用を有するであろうことも主張される。この組合わせは、血圧、腎の構造、及び、腎機能へのACE阻害薬の効果を強化するだろう。
【0022】
別の実施形態によれば、対象発明は、代謝不均衡を治療し、並びに/又は、糖尿病性腎症を治療し、かつ/又は、妨げるための併用療法であって、治療上有効な量の「RAS阻害薬」、すなわち、レニン−アンギオテンシン経路を標的とする薬剤(ACE阻害薬、レニン阻害薬、又は、アンギオテンシン受容体遮断薬を含むが、これらに限定されない)を投与することを備え、かつ、治療上有効な量の「併用薬剤」(尿酸を低下させる薬剤(UALA)(例えば、キサンチン酸化酵素阻害薬(フェブキソスタット、アロプリノール)、尿酸排泄薬(ベンズヨーダロン、ベンズブロマロン、プロベネシド)、ウリカーゼ誘導体(ラスブリカーゼ、PEG化ウリカーゼ)、及び、URAT−1の、遺伝子ベースの治療(ウリカーゼ過剰発現)又は遮断(我々が血管内皮細胞で確認した輸送体))、長期作用型硝酸塩、L−アルギニン、及び、ニコランジルのようなNOミメティック、並びに、アスコルビン酸塩、Nアセチルシステイン、リポ酸、ビタミンe、及び、エピガロカテキンガレートのような酸化防止剤を含むが、これらに制限されない)を共投与することを備える併用療法に関する。本明細書で記述したRAS阻害薬又は併用薬剤に関して、このような薬剤の薬学的に許容される塩が用いられてもよいことが注記されるべきである。請求項におけるRAS阻害薬又は併用薬剤へのいかなる言及も、このような薬剤の対応する薬学的に許容される塩を、任意にあるいは追加で、含むよう解釈される。
【0023】
個別の実施形態では、併用療法は、主要な活性成分として、RAS阻害薬及び併用薬剤、あるいは、これらの薬学的に許容される塩を含む組成物を投与することにより、糖尿病性腎症を治療する、又は、妨げることを備える。より具体的な実施形態では、糖尿病性腎症を治療する、又は、妨げる方法は、ACE阻害薬及びNOミメティックを投与することを備える。さらにより具体的な実施形態では、NOミメティックはニコランジルである。
【0024】
必要としている患者は、国立腎臓財団(National Kidney Foundation)によって定義されるような慢性腎疾患(CKD)の古典的段階のうちの1つの症状を示しており、かつ/又は、代謝不均衡の症状を示している者である。より具体的な実施形態では、必要としている患者は、CKDの古典的段階の1つを経験し、かつ、メタボリック症候群の少なくとも2つの特徴を示している者である。
【0025】
本発明の一定の態様では、代謝不均衡は、真性糖尿病、妊娠性糖尿病、β−細胞機能の遺伝子欠損、インシュリン作用における遺伝子欠損、外分泌膵の疾患、内分泌障害、薬物又は化学物質による誘発感染症、糖尿病に関連する他の遺伝的症候群、前糖尿病性の状態、及び、メタボリック症候群よりなる群から選ばれる。1つの態様では、代謝不均衡は、I型及び/又はII型を含む真性糖尿病である。
【0026】
別の態様によれば、代謝不均衡はメタボリック症候群である。1つの態様では、メタボリック症候群の治療することは、1又は複数の診断基準を扱うことを備える。メタボリック症候群の症状を示す患者は、以下の診断基準の2つ以上を示す患者を含む。

− ウエスト周囲の増加:
男性―40インチ(102cm)以上
女性―35インチ(88cm)以上

− トリグリセリド上昇:
150mg/dL以上

− HDL(「良好」)コレステロールの減少:
男性―40mg/dL未満
女性―50mg/dL未満

− 高血圧:
130/85mmHg以上

− 空腹時血中ブドウ糖の増加:
100mg/dL以上
【0027】
さらに別の実施形態では、代謝不均衡は、空腹時血中ブドウ糖不良レベル(100mg/dL以上)、又は、ブドウ糖不耐性(事前に測定したグルコースの摂取後2時間で、140mg/dL以上)に関係する前糖尿病性の状態である。
【0028】
慢性腎疾患段階は下記に関する。
【0029】
CKDの第1段階:糸球体濾過率(GFR)が正常、又は、増加。ミクロアルブミン尿、/タンパク尿、血尿、あるいは、組織学的な変化によって反映された腎障害のある証拠。
【0030】
CKDの第2段階:MDRD GFRによって定義されるようなGFRの穏やかな減少(89〜60ml/min/1.73mとして定義)
【0031】
CKDの第3段階:MDRD GFRによって定義されるようなGFRの中程度の減少(59〜30ml/min/1.73m
【0032】
CKDの第4段階:GFR(29〜15ml/min/1.73m)の重篤な減少。
【0033】
先の記述は、臨床医に容易に認識可能で、かつ、国立腎臓財団で詳述された、慢性腎疾患の臨床的に有用な段階を表わす:K/DOQI(kidney disease outcome quality initiative) Am J Kidney Dis 2002;39(Suppl)1):S1−S266。
【0034】
別の実施形態において、慢性腎疾患の症状、及び、メタボリック症候群の診断基準の1つを示す患者を治療する。
【0035】
ACE阻害薬は、糖尿病腎症の最良の治療としてもてはやされている――しかしながら、最近の研究は、これらが糖尿病腎症では特異的に悪いかもしれないことを示唆する。本発明者らは、この理由、及び、この解決策を恐らく発見した。言いかえれば、内皮細胞機能不全を改善できれば、その際は、ACE阻害薬がよりよく作用するだろう。
【0036】
さらなる実施形態では、治療組成物の実施形態は、通常の手法に従って配合することができる。このような配合物は、活性成分であるRAS阻害薬及び併用薬剤を、賦形剤、希釈剤、及び、担体のような非活性な添加物とコポリマー混合/練合することによって通常生成することができる。本明細書では、非経口投与は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、又は、点滴、及び、同種のものを含むことを意味する。注射用の無菌の水性懸濁液か油性懸濁液のような注射用の配合物は、当業者に公知の方法によって、適切な分散剤又は湿潤剤、及び、懸濁化剤を用いて生成することができる。このような注射用の無菌の配合物は、水溶液を含む、無毒で、非経口的に投与することができる希釈剤又は溶剤の無菌の注射液又は懸濁液でもよい。使用され得る許容できる媒体又は溶剤は、例えば、水、リンゲル液、等張生理食塩水、及び、同種のものでもよい。また、無菌の不揮発性の油は、通常、溶剤又は懸濁媒として用いられ得る。このような目的のために、天然に存在する、もしくは、合成の又は半合成のモノグリセリド、ジグリセリド、又は、トリグリセリドだけでなく、天然に存在する、もしくは、合成の又は半合成の脂肪油又は脂肪酸を含む、いかなる不揮発性の油あるいは脂肪酸も使用することができる。
【0037】
適切な基剤(例えば、酪酸のポリマー、グリコール酸のポリマー、酪酸及びグリコール酸のコポリマー、酪酸のポリマー及びグリコール酸のポリマーの混合物、ポリグリセロール脂肪酸エステル、並びに、同種のもの)を、徐放性配合物を形成するために組み合わせてもよい。
【0038】
別の実施形態では、経口投与のために固体の剤形は、例えば、上述のように、粉末、顆粒、タブレット、丸剤、カプセル、及び、同種のものでもよい。このような剤形の配合物は、活性化合物であるRAS阻害薬又は併用薬剤を、スクロース、乳糖(ラクトース)、セルロース酸サッカリド、マンニトール(D−マンニトール)、マルチトール、デキストラン、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン)、微結晶セルロース、寒天、アルギン酸塩、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントゴム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成又は半合成高分子、あるいは、グリセリドのような非活性な添加物の少なくとも1つと混合及び/又は練合ことにより、生成することができる。このような剤形は、不活性の賦形剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、パラベン及びソルビン酸のような保存剤、アスコルビン酸、α−トコフェロール、及び、システインのような酸化防止剤、崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、増粘剤、緩衝剤、甘味料、矯味矯臭剤、香料、及び、同種のものを通常含む添加物を、さらに含有する。タブレット及び丸剤は、さらに腸コーティングされてもよい。経口の液体配合物は、例えば、薬学的に許容できる乳濁液、シロップ、エリキシル、懸濁液、溶液、及び、同種のものでもよい。これらは、水のような薬学的に通例の不活性の希釈剤、及び、所望の場合は添加物を含んでもよい。このような経口の液体配合物は、通例の方法に従い、必要ならば、活性成分、不活性の希釈剤、及び、他の添加物を混合することにより生成することができる。経口の配合物は、その量は剤形に応じて変化してもよいが、本発明の活性化合物の、約0.01〜99重量%、好ましくは、約0.1〜90重量%、通常は、約0.5〜50重量%を通常含む。
【0039】
他の実施例では、直腸投与のための坐薬は、活性成分を、カカオ脂とポリエチレングリコールのように、周囲温度で固体であるが、胃管での温度で液体になり、直腸において溶けることで、活性成分を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することにより生成することができる。
【0040】
ある患者における投与量は、年齢、体重、一般状態、性別、食事、投与時間、投与方法、排出率、薬の組合わせ、現在治療したその疾患の程度、及び、他の因子を考慮して決定される。
【0041】
本発明の糖尿病性腎症の治療組成物は、低毒性であり、安全に用いることができる。また、その日用量は、患者の状態及び体重、化合物のタイプ、並びに、投与ルートに応じて変化する。そして、例えば、糖尿病性腎症に対して予防的に、かつ、治療上として用いられる際、これは、成人(60kg)で、経口の配合物の場合、活性成分[l]として約1〜500mg、典型的には、約10〜200mgでよく、非経口の配合物の場合、活性成分[l]として約0.1〜100mg、典型的には、約1〜50mg、通常は、約1〜20mgでよい。これらの範囲内の投与量では毒性を示さなかった。
【0042】
治療組成物で用いる適切なキサンチン酸化酵素阻害薬の例は、アロプリノール、ヒドロキシアカロン、TEl−6720、カルプロフェン、フェブキソスタット、及び、y−700を含むが、これらに制限されない。米国特許第5,614,520号、及び、米国特許公報第2005/0090472号は、他の例の非限定的なリストのために引用される。代表的なRAS阻害薬は、以下のものを含む:カプトプリル、シラザプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、ゾフェノプリル、カンデサルタンシレキセチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、及び、バルサルタン、あるいは、その薬学的に許容される塩。
【0043】
別の実施形態において、対象発明は、治療上有効な量のRAS阻害薬、又は、この薬学的に許容される塩の投与すること、かつ、治療上有効な量の併用薬剤、又は、この薬学的に許容される塩を共投与すること、を備える、糖尿病又はインシュリン無反応の対象においてCKDの段階の1つを治療する方法であって、前記治療上有効な量の前記併用薬剤、又は、この薬学的に許容される塩は、内皮細胞機能不全、及び/又は、内皮のNOレベルを改善するのに十分な量を備えることを特徴とする、CKDの段階の1つを治療する方法に関する。
【0044】
「共投与すること」あるいは「同時投与」という用語は、例えば、RAS阻害薬の投与と共に併用薬剤を投与することに関して用いられた場合、両方が同時に生理的効果を達成することができるように、RAS阻害薬及び併用薬剤を投与することを指す。しかしながら、2つの薬剤は一緒に投与される必要はない。ある実施形態では、1つの薬剤の投与は、他方の投与に先行することができる。しかしながら、このような共投与することは、通常は、両方の薬剤が、任意の投与量に対するこれらの最大血清中濃度のかなりの割合(例えば、20%以上、好ましくは、30%又は40%以上、より好ましくは、50%又は60%以上、最も好ましくは、70%又は80%又は90%以上)で体内に(例えば、血漿中に)同時に存在する結果となる。
【0045】
本発明の化合物及び併用薬物を投与の際に組み合わせる場合、本発明の併用配合物の投与方法は、特に制限されない。このような投与方法は、例えば、(1)RAS阻害薬及び併用薬剤を同時に配合することにより得られる単一の配合物の投与、(2)RAS阻害薬及び併用薬剤を別々に配合することにより得られる2つの配合物の同一のルートを経由しての同時投与、(3)RAS阻害薬及び併用薬剤を別々に配合すること得られる2つの配合物の同一のルートを経由しての連続投与、及び、間欠投与(4)RAS阻害薬及び併用薬剤を別々に配合することにより得られる2つの配合物の異なるルートを経由しての同時投与、(5)RAS阻害薬及び併用薬剤を別々に(例えば、RAS阻害薬又はこの薬剤組成物、その後、併用薬剤又はこの薬剤組成物、あるいは、逆の順序)を配合することにより得られる2つの配合物の異なるルートを経由しての連続投与及び間欠投与、並びに、同種のものである。
【0046】
本発明の糖尿病性腎症の治療組成物は低毒性であり、それ故、RAS阻害薬及び併用薬剤は、それ自体が知られている方法に従って、薬理学的に許容できる担体と混合され、薬剤組成物(例えば、タブレット(糖質コーティング錠、及び、フィルムコーティング錠を含む)、粉末、顆粒、カプセル(軟カプセル剤を含む)、溶液、注射配合物、坐薬、徐放性配合物、及び、同種のもの)を形成する。これらは、経口的に又は非経口的に(例えば、局所的に、直腸に、静脈内に)安全に投与することができる。注射配合物は、静脈内に、筋肉内に、皮下に、器官へ、あるいは、直接的に病変部位へ投与されてもよい。
【0047】
本発明の併用配合物を生成するのに使用されてもよい、薬理学的に許容できる担体は、例えば、固形配合物では、添加剤、潤滑剤、結合剤、及び、崩壊剤、液体配合物では、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張性付与剤、緩衝剤、及び、鎮痛剤、のような製薬材料として慣習的に使用された様々な有機担体材料、及び、無機担体材料でもよい。さらに、通常の保存剤、酸化防止剤、着色剤、甘味料、吸着剤、湿潤剤のような他の添加物も、適切な量で添加されてもよい。
【0048】
賦形剤は、例えば、ラクトース、糖質、D−マンニトール、デンプン、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、光ケイ酸塩無水物、及び、同種のものでもよい。潤滑剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイダルシリカ、及び、同種のものでもよい。
【0049】
結合剤は、例えば、結晶セルロース、糖質、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、スクロース、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、及び、同種のものでもよい。
【0050】
崩壊剤は、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、L−ヒドロキシプロピルセルロース、及び、同種のものでもよい。
【0051】
溶剤は、例えば、注射用蒸留水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油、及び、同種のものでもよい。
【0052】
溶解補助剤は、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、及び、同種のものでもよい。
【0053】
懸濁化剤は、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グリセリンモノステアリン酸塩、及び、同種のもののような界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及び、同種のもののような親水性ポリマーでもよい。
【0054】
等張性付与剤は、例えば、グルコース、D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール、及び、同種のものでもよい。
【0055】
緩衝剤は、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、及び、同種のものの緩衝液でもよい。
【0056】
鎮痛剤は、例えば、ベンジルアルコールでもよい。
【0057】
防腐剤は、例えば、p−オキシ安息香酸塩、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸、及び、同種のものでもよい。
【0058】
酸化防止剤は、亜硫酸塩、アスコルビン酸、リポ酸、α−トコフェロール、EGCG、及び、同種のものでもよい。
【0059】
本発明の併用配合物中のRAS阻害薬と併用薬剤との割合は、標的及びルートに基づいて適切に選択され得る。例えば、ACE阻害薬の量は、剤形に応じて変化してもよいが、全配合物に基づいて、通常は、約0.01〜100重量%、典型的には、約0.1〜50重量%、より具体的には、約0.5〜20の重量%である。ニコランジルの量は、剤形に応じて変化してもよいが、全配合物に基づいて、通常は、約0.01〜100の重量%、典型的には、約0.1〜50重量%、より具体的には、約0.5〜20重量%である。
【0060】
本発明の併用配合物中に含まれる担体のような添加物の量は、剤形に応じて変化してもよいが、全配合物に基づいて、通常は、約1〜99.99重量%、好ましくは、約10〜90重量%である。
【0061】
また、本発明の化合物、及び、併用薬物が別々に配合される場合、同様の量を使用してもよい。
【0062】
このような配合物は、製薬のプロセスで通常使用されるような、それ自体が知られている方法によって生成することができる。
【0063】
例えば、本発明の化合物、及び、併用薬物は、分散剤(例えば、Tween 80(ATLAS POWDER,USA)、HCO60(NIKKO CHEMICALS)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン)、安定剤(例えば、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム)、界面活性剤(例えば、polysorbate 80,macrogol)、可溶化剤(例えば、グリセリン、エタノール)、緩衝剤(リン酸及びこのアルカリ金属塩、クエン酸及びこのアルカリ金属塩、並びに、同種のもの)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、グルコース)、pH調製剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウム)、防腐剤(例えば、p−オキシ安息香酸エチル、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール)、可溶化剤(例えば、濃グリセリン、メグルミン)、可溶化補助剤(例えば、プロピレングリコール、糖質)、鎮痛剤(例えば、グルコース、ベンジルアルコール)と共に、注射用水性配合物へと配合される、あるいは、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、及び、トウモロコシ油のような植物油中、並びに、プロピレングリコールのような可溶化補助剤中に、溶解、懸濁、もしくは、乳化して油性配合物を形成することにより、注射配合物を生成する。
【0064】
経口剤形を得るためには、それ自体が知られている方法が使用して、本発明の化合物又は併用薬物を、例えば、賦形剤(例えば、ラクトース、糖質、デンプン)、崩壊剤(例えば、デンプン、炭酸カルシウム)、結合剤(例えば、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース)、又は、流動促進剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000)と共に、所望の形状へ成形する。その後、必要であれば、矯味、腸の性質、又は、徐放性機能の目的で、それ自体が知られている方法でコーティングして、これにより経口剤形を得る。このようなコーティングは、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、Tween 80、Pluronic F68、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシメチルセルロース、Eudragit(Rohm,ドイツ,メタクリル酸/アクリル酸コポリマー)、及び、着色剤(例えば酸化鉄レッド、二酸化チタン)でもよい。経口剤形は、瞬時解除性配合物、又は、徐放性配合物でもよい。
【0065】
本発明の併用配合物の投与量は、投与方法及び持続期間と同様に、本発明の化合物のタイプ、対象の年齢、体重、状態、及び、剤形に応じて変化してもよいが、例えば、糖尿病及び/又はインシュリン抵抗性の症状、並びに/又は、ckd(成人、体重:約60kg)の段階の1つを経験している患者における日用量は、本発明の化合物として約0.01〜約1000mg/kg、好ましくは、約0.01〜約100mg/kg、より好ましくは、約0.1〜約100mg/kg、具体的には、約0.1〜約50mg/kg、特に、約1.5〜約30mg/kgである。これは、一度に、もしくは、複数回量で静脈内に投与される。投与量が上述したような様々な因子に応じて変化し得るのは当然のことである。また、より少ない量で十分な場合もあり、また、過度の量が必要であるべき場合もある。
【0066】
併用薬物(例えば、ニコランジル)は、問題となる副作用を引き起こさない範囲内であれば任意の量で使用してもよい。併用薬物の日用量は、特に制限されず、投与の時間及び間隔、この薬剤配合物の特徴、調合、タイプ、及び、活性成分と同様に、疾患の重症度、対象の年齢、性別、体重、及び、感受性に応じて変化してもよい。また、哺乳動物における単位kg体重当たりの経口の日用量は、薬剤として、約0.001〜2000mg、好ましくは、約0.01〜500mg、より好ましくは、約0.1〜約100mgである。これは、通常、1〜4回量で投与される。
【0067】
本発明の併用配合物を投与する場合、同時に投与してもよいが、併用薬物を最初に投与し、その後、本発明の化合物を投与することも可能である。あるいは、本発明の化合物を最初に投与し、その後、併用薬物を投与することも可能である。このような間欠投与を使用する場合、時間間隔は、投与された活性成分、剤形、及び、投与方法に応じて、変化してもよい。また、例えば、併用薬物を最初に投与する場合、本発明の化合物は、併用薬物の投与の後、1分〜3日以内、好ましくは、10分〜1日以内、より好ましくは、15分〜1時間以内に投与されてもよい。例えば、本発明の化合物を最初に投与する場合、その場合は、併用薬物は、本発明の化合物の投与の後、1分〜1日以内、好ましくは、10分〜6時間以内、より好ましくは、15分〜1時間以内に投与されてもよい。
【0068】
好ましい投与方法において、例えば、経口の配合物として配合された約0.001〜200mg/kgの併用薬物を日用量として経口的に与え、約15分の後に、経口の配合物として配合された約0.005〜100mg/kgの本発明の化合物を日用量として経口的に与える。
【0069】
さらなる薬理学的に活性な薬剤が、主要な活性薬剤である、RAS阻害薬及び併用薬剤と共に供給されてもよい。1つの実施形態では、このような薬剤は、ベータ遮断薬、スタチン、及び、アスピリンを含むが、これらに制限されない。適切なスタチンは当業者に周知である。このようなスタチンは、アトルバスタチン(商標名リピトール,Pfizer)、シンバスタチン(商標名ゾコール,Merck)、プラバスタチン(商標名プラバコール, Bristol−Myers Squibb)、フルバスタチン(商標名レスコール,Novartis)、ロバスタチン(商標名メバコール,Merck)、ロスバスタチン(商標名クレストール,Astra Zeneca)、及び、ピタバスタチン(三共)、並びに、同種のものを含むが、これらに制限されない。適切なベータ遮断薬は、心選択性(選択的ベータ1遮断薬)、例えば、アセブトロール、アテノロル、ベタキソロール、ビソプロロール、メトプロロール、及び、同種のものを含むが、これらに制限されない。適切な非選択的遮断薬(ベータ1及びベータ2を一様に遮断する)は、カルテオロール、ナドロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、チモロール、ラベタロール、及び、同種のものを含むが、これらに制限されない。
【0070】
本発明は、以下の実施例にさらにサポートされるが、本発明を制限するようには意図されない。
【0071】
混合溶剤のために示された値は、別段の定めがない限り、各々の溶剤の体積比である。%は、別段の定めがない限り、重量%である。シリカゲルを用いたクロマトグラフィーにおける溶出溶媒の比は、別段の定めがない限り、体積比である。ここで使用された室温(周囲温度)は、通常、約20〜約30℃の温度を意味する。
【0072】
糖尿病腎症及び/又はメタボリック症候群に関連する結果に対する併用療法の治療価値を証拠づける実施例
図1は、ACE阻害薬が、野生型糖尿病(DM)マウスにおける血圧低下に有効であることを示すグラフである。図1において示されるのは、治療なし(TXなし)、ACE阻害薬であるエナラプリル(DMエナラプリル)、及び、ARBであるテルミサルタン(DMテルミサルタン)の効果である。ACE阻害薬及びARBの両方は、野生型糖尿病マウスにおいて血圧(BP)を大幅に低下させることができる。図2は、ACE阻害薬(エナラプリル)、及び、ARB(テルミサルタン)の投与が、また、野生型糖尿病(DM)マウスにおける、メサンギウムの膨張(A)、及び、糸球体のIV型コラーゲン沈着(B)を改善することを実証する。これらは糖尿病性腎症の初期の変化と考えられる。
【0073】
その一方、ACE阻害薬又はARBを内皮の一酸化窒素を生成する能力を欠く糖尿病マウスに投与した場合、これらの薬剤の有効性が最小限であったということは、驚くべきで斬新な発見であった(図3〜5)。図3は、ACE阻害薬及びARBの投与が、内皮のNOを欠く糖尿病マウスの血圧低下にそれほど有効でないことを示すグラフである。ACE阻害薬及びARBは、内皮の一酸化窒素合成(eNOSKO)を欠く糖尿病でないマウスのBP低下に対して有効である(図3のA)。その一方、血圧における最初の減少は、糖尿病のeNOSKOマウスにおいて8週で認められたが、これは持続されなかった(図3のC)。これは、非常に有効であるヒドララジンのような他の血圧降下薬と対照的である。また、エナラプリル50mg/kgの投与量でさえ、内皮の一酸化窒素合成を欠く糖尿病マウスのBPを低下させないことを我々が発見したことから、効果の欠如は投与量によらない。(図3のC)。
【0074】
図4は、ACE阻害薬及びARBは、eNOSKOマウスにおける糖尿病腎症を妨げるのには有効でないことを明らかにする組織学的スライド示す。DMは、DM eNOSKOマウス(b)においてメサンギウムの膨張を引き起こした。これは、エナラプリル(c)、又は、テルミサルタン(d)によって妨げられなかった。DM eNOSKOマウスは、また、糸球体毛細血管微小動脈瘤(e)を有し、かつ、細胞外マトリックスの沈着の増加(f)を有するメサンギウム融解を示した。エナラプリル(g)、及び、テルミサルタン(h)のいずれの治療も、これらの進行した病変を妨げなかった。バー:20μm。メサンギウムの膨張の定量分析(M)は、糖尿病のeNOSKOマウスではなく野生型糖尿病マウスにおいて、ACE阻害薬(黒いバー)、及び、ARB(灰色のバー)の有益な効果を確認した。バー:20μm。白いバー=治療なし、黒いバー=エナラプリル、灰色のバー=テルミサルタン。図5は、eNOSKOマウスにおける糖尿病腎症での、血圧及び腎機能へのACE阻害薬及びARBの効果の結果を提供する表に関する。ACE阻害薬とARBは、野生型糖尿病マウスにおいて、血圧及びタンパク尿を低下させるのに有効で、また、糖尿病でないeNOSKOマウスの血圧低下に有効である。しかしながら、10週の糖尿病のeNOSKOマウスにおいては、ACE阻害薬は有効ではなく、また、ARABは、最小限に血圧を低下させるだけしか有効でなく、タンパク尿を顕著には減少させない。
【0075】
これらのデータは、ACE及びARBの有効性に関して、内皮のNOの欠如と糖尿病との間に特定の相互作用があるという証拠を提供する――これは、これらの最近の薬剤が有効である、糖尿病又はeNOS欠損症に関する単独の研究に基づいては予想されないだろう。
【0076】
ACE阻害薬及びARBが、内皮細胞機能不全(内皮のNOの欠如)の存在下で、糖尿病性腎症を防げることができないことは、内因性のレニン−アンギオテンシン系の抑制を有するアルドステロンブレイクスルーの存在によって説明され得る。この所見と一致して、本発明者らは、ACE阻害薬、及び、ARB治療が、糖尿病のeNOSKOマウスではなく、野生型糖尿病マウスにおいて、血清アルドステロンを抑制することを発見した(図6)。さらに、ACE阻害薬で治療された糖尿病のeNOSKOマウスでは、糸球体においてアルドステロンを同定した(図7)。
【0077】
図6は、ACE阻害薬又はARB治療が、糖尿病のeNOSKOマウスにおいて血清アルドステロンを抑制しないが、糖尿病の野生型マウスにおいて抑制することを示すグラフを表す。図7は、糖尿病のeNOSKOマウスでは、糸球体におけるアルドステロンが増加することを示す免疫組織グラフである。糖尿病は、eNOSKOマウスにおいてストレプトゾトシンで誘導された。これは、エナラプリル(10mg/kg BW/日、黒いバー)、又は、テルミサルタン(2mg/kg BW/日、灰色のバー)を用いて、4週間(6週〜10週)治療された(非特許文献22)。エナラプリルで治療された糖尿病のeNOSKOの腎臓におけるアルドステロンのための免疫組織化学は、ウサギの多クローンのanti−アルドステロンのポリクローナル抗体(Thermo Fisher Scientific,ロックフォード,イリノイ州)を用いて検討された。この図において示されるように、このモデルにおいて、アルドステロンは糸球体に存在した。このデータは、アルドステロンが糸球体において合成されることを必ずしも意味しない一方、アルドステロンは、血管、特に、内皮の細胞中において生成し得る(非特許文献23,24)。陽性の緑の染色は、アルドステロンの存在を表す。
【0078】
これらの研究は、内皮のNOの欠如(すなわち、重篤な減少)が、糖尿病性腎症の治療の際に、ACE阻害薬及びARBを効果がない状態にするという証拠を提供する。また、その機序は、アルドステロンブレイクスルーを介している可能性がある。また、これらは、ACE阻害薬及びARBの応答性の欠如が、糖尿病単独、あるいは、内皮細胞機能不全(内皮のNOの欠如)単独の存在に基づいては期待されないこが、これらの相互作用では特異的であることを実証する。ACE阻害薬の使用にもかかわらず、内皮細胞機能不全は、糖尿病において一般的であるが(非特許文献25〜27)、ACE阻害薬の応答性をもたらす、内皮細胞機能不全と糖尿病との特異的な相互作用があることは誰も示唆していない。eNOSKOマウス(野生型との比較)における唯一の異常は、内皮のNOの欠如であるため、これらのデータは、一酸化窒素の置換によって、このマウスの欠損が回復に向かうことを示唆する。
【0079】
この点では、eNOSKOマウスは、野生型対応物より高い基準血圧を有する。図8で示されるように、亜硝酸塩(NOドナー)をeNOSKOマウスに与える場合、我々は野生型マウスと同じレベルに血圧を下げることができる。図8は、一酸化窒素ミメティック(亜硝酸塩)の供給により、eNOSKOマウスの血圧異常を調整することができることを示すグラフを表す。亜硝酸塩は、NOの代謝産物で、体内でNOに変換することができるので(非特許文献28で検討)、亜硝酸ナトリウムがeNOSKOマウスの高血圧症を妨げ得るかどうか確かめるためにこれを試験した。4週間(50mg/lの飲料水)の亜硝酸塩での治療により、eNOSKOマウスの血圧は、野生型マウスにおいて見られるのと同様に低下した。
【0080】
ACE阻害薬及びARBに対して糖尿病腎症が不応答を引き起こす際に、内皮細胞機能不全が重要な役割を果たすとすると仮定すると、内皮のNOレベルを増加させる治療は、糖尿病性腎症においてACE阻害薬と組み合わせる場合に有益となるだろう。糖尿病性腎症における内皮のNO減少の主な原因は、酸化ストレスである(非特許文献29)。従って、糖尿病性腎症においてACE阻害薬又はARBと組み合わせた場合、酸化防止剤は類がない利点があるはずである。酸化ストレスの別の原因は尿酸である。これのために、両者は、内皮細胞において、酸化ストレスを刺激することができ(図9)、また、内皮の一酸化窒素の減少を引き起こすことを我々は示した(非特許文献30,31)(図10)。従って、キサンチン酸化酵素阻害薬(フェブキソスタット、及び、アロプリノール)、並びに、尿酸排泄薬(プロベネシド、ベンズヨーダロン、及び、ベンズブロマロン等)のような尿酸を低下させる薬剤は、特に、内皮の機能が一般的に損なわれると知られている尿酸レベル>6mg/dlの対象において、ACE阻害薬又はARBと組み合わせた場合も、糖尿病性腎症に有益であるはずである(非特許文献32)。実際、尿酸が、1型糖尿病の対象において、顕性糖尿病性腎症の強力な予測因子であることが最近分かっている(非特許文献33)。
【0081】
内皮細胞機能不全を引き起こすために尿酸が作用する重要な機序のうちの1つは、ミトコンドリア及びミトコンドリアDNAの減少を引き起こし、その結果、内皮の機能に必要なATP貯蔵量の消耗をもたらすことである(図11及び図12)。図11は、尿酸がヒト大動脈の内皮細胞においてATPレベルを下げることを示す。さらに、図12は、尿酸がヒト大動脈の内皮細胞におけるミトコンドリア数を減少させることを示す。
【0082】
ニコランジルのようなNOドナーが酸化ストレスに応答してミトコンドリアの損失を妨げることができるという所見は、NOが、糖尿病の対象において、内皮の機能を改善し、かつ、ACEの応答性を高めることができるという機序を与える。従って、尿酸の増加のような、NO欠損症及び糖尿病性腎疾患に関係する状態は、ミトコンドリアの損失に関係することを示していることが分かっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0083】
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【非特許文献22】22.コスギ T(Kosugi T),ハイニッヒ M(Heinig M),ナカヤマ T(Nakayama T),マツノ S(Matsuo S),ナカガワ T(Nakagawa T):「eNOSノックアウトマウスでの進行した糖尿病性腎症におけるレニン−アンギオテンシン遮断のより少ない利点:アルドステロン受容体拮抗薬の優れた保護」(Less benefit of Renin−Angiotensin Blockade in Advanced Diabetic Nephropathy in eNOS Knockout Mice:Superior Protection of Aldosterone Receptor Antagonist),Am J Pathol In press,
【非特許文献23】23.オブラインターナー H(Oberleithner H),ルートヴィヒ T(Ludwig T),リートミュラー C(Riethmuller C),ヒレブラント U(Hillebrand U),アルバーマン L(Albermann L),シェーファー C(Schafer C),シャヒーン V(Shahin V),シラーズ H(Schillers) H:「ヒト内皮:アルドステロンのための標的」(Human endothelium:target for aldosterone),Hypertension 2004,43:952−956
【非特許文献24】24.タケダ Y(Takeda Y),ミヤモリ I(Miyamori I),ヨネダ T(Yoneda T),イキ K(Iki K),ハタケヤマ H(Hatakeyama H),ブレア IA(Blair IA),シェイ FY(Hsieh F),タケダ R(Takeda R):「隔離されたラット血管におけるアルドステロンの生成」(Production of aldosterone in isolated rat blood vessels),Hypertension 1995,25:170−173
【非特許文献25】25.ジャワ A(Jawa A),ナチムス S(Nachimuthu S),ペンダグラス M(Pendergrass M),アスナニ S(Asnani S),フォンセカ V(Fonseca V):「アンギオテンシン変換酵素阻害薬療法にもかかわらず、2型真性糖尿病、及び、ミクロアルブミン尿、又は、タンパク尿を有するアフリカ系アメリカ人の患者において阻害された血管反応性」(Impaired vascular reactivity in African−American patients with type 2 diabetes mellitus and microalbuminuria or proteinuria despite angiotensin−converting enzyme inhibitor therapy),J Clin Endocrinol Metab 2006,91:31−35
【非特許文献26】26.パパイオアヌー GI(Papaioannou GI),サイプ RL(Seip RL),グレー NJ(Grey NJ),カッテン D(Katten D),テイラー A(Taylor A),インズッチ SE(Inzucchi SE),ヤング LH(Young LH),チョン DA(Chyun DA),デービー JA(Davey JA),ワカース FJ(Wackers FJ),アイスカンダリアン AE(Iskandrian AE),ラトナー RE(Ratner RE),ロビンソン EC(Robinson EC),キャロラン S(Carolan S),エンゲル S(Engel S),ヘラー GV(Heller GV):「2型真性糖尿病、及び、ミクロアルブミン尿を有する無症候性の患者における上腕動脈反応性(無症候性の糖尿病患者における虚血の検出―上腕動脈反応性研究から)」(Brachial artery reactivity in asymptomatic patients with type 2 diabetes mellitus and microalbuminuria (from the Detection of Ischemia in Asymptomatic Diabetics−brachial artery reactivity study)),Am J Cardiol 2004,94:294−299
【非特許文献27】27.チャン WB(Chan WB),チャン NN(Chan NN),ライ CW(Lai CW),ソー WY(So WY),ルオ MK(Lo MK),リー KF(Lee KF),チョウ CC(Chow CC),メトヴェリー C(Metreweli C),チャン JC(Chan JC):「顕性腎症及び中等度の腎不全を有するII型糖尿病患者における内皮をしのぐ血管の欠損」(Vascular defect beyond the endothelium in type II diabetic patients with overt nephropathy and moderate renal insufficiency),Kidney Int 2006,70:711−716
【非特許文献28】28.ブライアン NS(Bryan NS):「一酸化窒素の生物学における亜硝酸塩:原因、又は、結果?システムベースの検討」(Nitrite in nitric oxide biology:cause or consequence? A systems−based review),Free Radic Biol Med 2006,41:691−701
【非特許文献29】29.ムンツェル T(Munzel T),シニング C(Sinning C),ポスト F(Post F),ワルンホルツ A(Warnholtz A),シュルツ E(Schulz E):「内皮細胞機能不全の病態生理学、診断、及び、予後との関連」(Pathophysiology,diagnosis and prognostic implications of endothelial dysfunction),Ann Med 2008,40:180−196
【非特許文献30】30.コースラ UM(Khosla UM),ジャリコフ S(Zharikov S),フィンチ JL(Finch JL),ナカガワ T(Nakagawa T),ロンカル C(Roncal C),ムー W(Mu W),クロトヴァ K(Krotova K),ブロック ER(Block ER),パラバカール S(Prabhakar S),ジョンソン RJ(Johnson RJ):「高尿酸血症は内皮細胞機能不全を誘導する」(Hyperuricemia induces endothelial dysfunction),Kidney Int 2005,67:1739−1742
【非特許文献31】31.ジャリコフ SI(Zharikov SI),クロトヴァ K(Krotova K),フー H(Hu H),ベイリス C(Baylis C),ジョンソン RJ(Johnson RJ),ブロック ER(Block ER),パテール JM(Patel JM):「尿酸は、培養された肺動脈内皮細胞において、NOを生成し、かつ、アルギナーゼ活動を増加させる」(Uric Acid Decreases No Production and Increases Arginase Activity in Cultured Pulmonary Artery Endothelial Cells),Am J Physiol Cell Physiol 2008,
【非特許文献32】32.ゾッカリ C(Zoccali C),マイオ R(Maio R),マルマッチー F(Mallamaci F),セスティ G(Sesti G),ペルティコーネ F(Perticone F):「本態性高血圧における、尿酸、及び、内皮細胞機能不全(Uric acid and endothelial dysfunction in essential hypertension),J Am Soc Nephrol 2006,17:1466−1471
【非特許文献33】33.ホービンド P(Hovind P),ロッシング P(Rossing P),タルヌフ L(Tarnow L),ジョンソン RJ(Johnson RJ),パービング HH(Parving HH):「1型糖尿病における糖尿病性腎症の進行のための予測因子としての血清尿酸:発端コホート研究(Serum uric acid as a predictor for development of diabetic nephropathy in type 1 diabetes:an inception cohort study),Diabetes 2009,58:1668−1671

【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝不均衡の少なくとも1つの症状を示す患者の慢性腎疾患を治療するのに有用な治療組成物であって、前記組成物は、RAS阻害薬、及び、NOミメティックを備えることを特徴とする慢性腎疾患を治療するのに有用な治療組成物。
【請求項2】
前記NOミメティックは、ニコランジルであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記代謝不均衡の少なくとも1つの症状は、ウエスト周囲の増加、トリグリセリド上昇、HDLコレステロールの減少、高血圧、又は、空腹時血中ブドウ糖の増加を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記代謝不均衡の少なくとも1つの症状は、高血圧、及び、空腹時血中ブドウ糖の増加であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
粉末、顆粒、タブレット、丸剤、又は、カプセルを含む固体の剤形で配合された請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
液体の懸濁剤、又は、溶液で配合された請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記慢性腎疾患は、第1段階、第2段階、又は、第3段階のCKDであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
代謝不均衡の少なくとも1つの症状を示す患者の慢性腎疾患を治療する方法であって、該方法は、治療上有効な量のRAS阻害薬、及び、併用薬剤を共投与することを備える慢性腎疾患を治療する方法。
【請求項9】
前記RAS阻害薬は、ACE阻害薬、又は、アンギオテンシン受容体遮断薬であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記併用薬剤は、尿酸低下薬剤であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記尿酸低下薬剤は、キサンチン酸化酵素阻害薬であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記キサンチン酸化酵素阻害薬は、アロプリノール、又は、フェブキソスタットであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記併用薬剤は、NOミメティックであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記NOミメティックは、L−アルギニン、又は、ニコランジルであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記RAS阻害薬、及び、前記併用薬剤は、経口で投与されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記RAS阻害薬、及び、前記併用薬剤は、非経口的に投与されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記RAS阻害薬、及び、前記併用薬剤は、粉末、顆粒、タブレット、丸剤、又は、カプセルを含む固体の剤形で共に投与されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記RAS阻害薬は、第1の投与方法に従って投与され、かつ、前記併用薬剤は、前記第1の方法と異なる第2の投与方法に従って投与されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項19】
前記代謝不均衡の少なくとも1つの症状は、ウエスト周囲の増加、トリグリセリド上昇、HDLコレステロールの減少、高血圧、又は、空腹時血中ブドウ糖の増加を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項20】
前記代謝不均衡の少なくとも1つの症状は、空腹時血中ブドウ糖の増加であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項21】
前記慢性腎疾患は、第1段階、第2段階、第3段階、第4段階、第5段階、又は、第6段階のCKDであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項22】
前記慢性腎疾患は、第1段階、第2段階、第3段階、又は、第4段階のCKDであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項23】
代謝不均衡の少なくとも1つの症状を示す患者の慢性腎疾患を治療する方法であって、前記方法は、治療上有効な量のニコランジルを投与することを備えることを特徴とする慢性腎疾患を治療する方法。
【請求項24】
ACE阻害薬、及び/又は、アンギオテンシン受容体遮断薬とニコランジルを共投与することをさらに備えることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
治療上有効な量のRAS阻害薬、及び、尿酸低下薬剤又は酸化防止剤、あるいは、尿酸低下薬剤及び酸化防止剤の組合わせを含む糖尿病性腎症を治療するのに有用な組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−505925(P2012−505925A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532310(P2011−532310)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/061157
【国際公開番号】WO2010/045636
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(511098471)
【出願人】(511098507)
【Fターム(参考)】