説明

伝送システムの信号伝送方式

【課題】 必要に応じて端末の情報を受信盤が取得できる。
【解決手段】 送信元の受信盤としての中継器2が受信先の特定の端末としての火災感知器1から情報を取得する信号伝送方式において、火災感知器1は、所定周期で間欠動作する受信回路15bを具備し、中継器2は、所定周期以上の期間にわたり連続して信号を送信する送信回路22aを具備し、火災感知器1の受信回路15bは、間欠動作するときに、中継器2の送信回路22aから送信される信号の2個分以上を含む期間で動作するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、伝送システムの信号伝送方式に関し、とくに、無線によって端末から情報を取得する伝送方式に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、防災システムの分野では、近年、建物の間仕切り変更への対応の容易さ、施工工事の簡便さ、配線の省略による美観の確保等の優位性から、従来の有線方式によらず、受信盤と端末との間の信号伝送に無線信号を用いた無線式防災システムの要望が高まっている。そして、住宅用システムや施工中の仮設システムとして、すでに実用化されている。
【0003】
防災システムの端末には、例えば、火災センサや防犯センサ等があり、端末自身が内蔵する電池を電源とし、火災信号や侵入者の検知信号を無線で受信盤へ送信し、これを受信した受信盤が警報等の必要な動作を行う。このため、防災システムにおける受信盤と端末との間の信号の送受信は、適正な警報動作を行うために、有線および無線を問わず重要である。
【0004】
一般的に無線方式では、端末から一定時間毎に無線信号を送信させる、いわゆる定期送信を行い、この無線信号が受信盤で受信されいる状態を正常とし、受信されない場合に、信号路異常として、受信盤により注意警報を行うようになっている。
【特許文献1】特開2003−16555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のシステムにおいて、端末からの定期送信を頻繁に行うと、内蔵する電池の消耗を早めてしまい、電池交換のコストや取替えの手間を発生し、使用者の負担を増大させてしまう。そして、端末からの定期送信を。受信盤がいつでも受信できるためには受信盤側が常時受信手段を稼動している必要がある。
【0006】
このように、通常の無線システムにおいては、端末側あるいは受信盤側のいずれかが電源供給を受け、電池式で駆動する他方の電流消費を軽減させながら、信号送受信のタイミングを合わせるようにしている。
【0007】
この発明では、伝送システムの送信元および受信先が信号の送受信を行うときに、タイミングを合わさずとも確実に信号を受信する伝送システムとすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の請求項1に係る信号伝送方式では、送信元から情報を送信し、受信先が該信号を受信するときの信号伝送方式において、前記受信先は、所定周期で間欠動作する受信手段を具備し、前記送信元は、該所定周期以上の期間にわたり連続して一つの伝送信号を送信する送信手段を具備し、前記受信先の受信手段は、間欠動作するときに、前記送信元の送信手段から送信される伝送信号の複数個分を含む時間で動作することを特徴とするものである。
【0009】
また、この発明の請求項2に係る信号伝送方式では、伝送信号は、各種情報の内容に関らず固定長で送信されるものである。
【0010】
また、この発明の請求項3に係る信号伝送方式では、伝送信号は、送信元または受信先を特定するアドレスと、各種情報の内容とを含む所定のフォーマットに構成されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る信号伝送方式は、受信先が受信手段を所定周期で間欠動作させることで、電源消費を軽減させると同時に、信号伝送が必要な場合に、送信元がその所定周期以上の期間にわたり連続して一つの伝送信号を送信するので、受信先が確実に伝送信号を検知することができ、また、受信先が受信手段を間欠動作させるときに、伝送信号の複数個分を含む時間で動作するので、その期間内に伝送信号1個分は必ず含まれる。
【0012】
また、請求項2に係る信号伝送方式は、伝送信号が各種情報の内容に関らず固定長であり、受信先の伝送信号検出が確実に行われる。
【0013】
また、請求項3に係る信号伝送方式は、アドレスと信号内容とを含む所定のフォーマットに構成し、1回の信号受信によって、送信元または受信先を特定できるとともに、その信号内容が1回の受信で把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、この発明を利用する伝送システムの実施の形態として、火災報知システムに用いる場合のシステム構成図である。
【0016】
図1において、伝送システムの端末としての火災感知器1が複数配置され、伝送システムの受信盤としての中継器2が設けられている。これらの火災感知器1と中継器2とは、赤外線や電波等を用いて無線式に情報を送受信し、具体的な例として、火災感知器1が火災を検出したときに、情報としての火災信号を中継器2に送信する。
【0017】
この中継器2は信号線Lを介して火災受信機3と接続され、上記火災信号は中継器2を介して火災受信機3に送信される。火災報知システムとしては、システム全体がこの火災受信機3に集中監視されていて、詳細に説明しないが、火災信号の受信によって必要な箇所に火災警報を鳴動させる。そのため、火災感知器1は火災報知システムが設けられる建物の必要各部に配置されるとともに、中継器2も必要に応じて、各フロア毎のように複数配置され、エリア分けされた該当範囲の火災感知器1から火災信号を受信して、信号線Lを介して火災受信機3に送信する。
【0018】
図2は、図1の火災感知器1を示すブロック構成図である。
【0019】
火災感知器1は、監視領域の状態として煙や熱等を検出する火災検出部11と、電池12を電源として各部に所定の電圧を供給する電源回路13と、アンテナ14を介して無線信号により情報を送受信するための送受信回路15と、電源回路13の電源電圧を監視して電源電圧の低下時に電圧低下信号を出力する電圧監視回路16と、送受信回路15による無線信号の送受信や火災検出部11による火災判別動作等の火災感知器1内の全体を制御するCPU等による制御部17と、プログラムやデータを格納する記憶部18とによって構成されている。
【0020】
図3は、図1の中継器2を示すブロック構成図である。
【0021】
中継器2は、アンテナ21を介して火災感知器1から送信される情報を無線信号により受信するとともに必要な信号を無線信号により送信する送受信回路22と、無線信号の送受信等の情報処理および中継器2全体の制御処理を行うCPU等で構成された制御部23と、プログラムやデータを格納する記憶部24と、信号線Lを介して火災受信機3から供給される電源を所定の電圧に変換して供給する電源回路25と、電源回路25の電源電圧を監視して電源電圧の低下時に電圧低下信号を出力する電圧監視回路27と、信号線Lを介して火災受信機3から送信される伝送信号を受信するとともに必要な情報を伝送信号により送信する伝送回路28とによって構成されている。
【0022】
なお、この中継器2から、伝送回路を外して表示操作部およびスピーカを設けることにより火災受信機3の警報機能を中継器2に持たせることもでき、また、公衆回線や携帯電話網に接続可能な通信部をさらに設けることにより、消防や通報センタ、あるいは特定の個人の携帯電話等に通報する外部通報機能を持たせることも可能となる。
【0023】
つぎに、このように構成された火災報知システムにおいて、火災感知器1および中継器2間で無線信号により情報を送受信する際の動作について説明する。
【0024】
図4および図5は、信号を受信するタイミングについて示す説明図である。
【0025】
まず、火災感知器1の制御部17は、図4(a)に示すように、CPUの起動タイミングの動作等に合わせて所定の間隔Tcで起動し、火災検出部11の検出値から火災判別を行う等の所定の必要な動作を行い、ストップ状態となる。このラン状態およびストップ状態を繰り返す間欠動作によって、平均的な消費電流の低減をはかっている。この間隔Tcは、例えば10秒である。同時に、制御部17は、図4(b)に示すように、起動とともに送受信回路15の受信回路15bを所定の時間To稼動して、アンテナ14を介して無線信号を受信できる状態としている。この所定の時間Toは、例えば5ミリ秒である。
【0026】
そして、中継器2が火災感知器1に対して何らかの制御信号を送信する必要がある場合、所定の時間Tt継続するように連続して信号を、送受信回路22の送信回路22aを介して送信する。この時間Ttは上記の間隔Tcと同じ時間あるいは若干長い程度であり、このことによって、受信回路15bが稼動している時間Toと、連続する信号の送信されている時間Ttとが必ず重なることとなる。
【0027】
つぎに、送信される信号は、図5(a)に示すように、先頭であることを示すスタートビットSTと、複数の火災感知器1のいずれか一つを特定するためのアドレスADと、情報としての各種信号の内容を示すコマンドCMとの組合せで一つのフレームTfを構成している。中継器2は、送信回路22aを介してこのフレームTfを繰り返して、所定の時間Ttにわたり連続して送信する。
【0028】
この連続する信号に対して、図5(b)に示すように、火災感知器1の受信回路15bが起動する時間Toが重なり、その間連続する信号を、火災感知器1が受信することとなる。この時間Toは、信号の1フレームTfの複数倍としての2倍あるいはそれより若干長い程度であり、このことから、受信回路15bを介して受信した信号のうち、最低1フレームTf分の信号を完全に受信することができる。すなわち、時間Ttにわたり連続する信号と、火災感知器1の受信回路15bの起動している時間Toとは同期していないので、ほとんどの場合、信号の1フレームの途中から検出し始める。そのため、時間To内の起動当初の信号は完全に受信できない。これに連続するトリガー信号のスタートビットST、アドレスADおよびコマンドCMは、時間Toが1フレームTfの2倍以上あることによって、確実に時間To内に収まり、火災感知器1の受信回路15bに完全に受信される。また、この受信された信号に続く信号は、その1フレームTfにおける途中で時間Toが終了するので、完全に受信できない。このように、ほとんどの場合、時間Toに3つの信号が重なることになり、そのうちの真ん中の信号を火災感知器1の受信回路15bに受信させることができる。
【0029】
ここで、信号の1フレームTfに対して、火災感知器1の受信回路15bの稼動する時間Toは、1フレームTfの2倍以上で2倍あればよく、また、信号を継続する時間Ttは、起動タイミングの間隔Tc以上であればよい。なお、信号を火災感知器1に確実に検出させることを目的として、信号を2フレーム分受信させる場合には、時間Toを1フレームTfの3倍としてもよい。このとき2フレーム分のデータを比較することができ、同じであることを確認して、データに誤りがないことを確認できる。
【0030】
このようにして、信号を検出した火災感知器1は、スタートビットSTを始点として信号内容を認識し、アドレスADによって自己に対する信号かどうか判断し、自己に対する信号であれば、コマンドCMの内容にしたがった処理を行う。コマンドCMの内容にしたがって、例えば、定期呼出信号であれば応答信号を返送し、感度返送信号であれば自己の感度情報を示す感度信号を返送し、機能試験信号であれば自己の火災検出機能の試験を行った結果によって正常信号または異常信号を返送し、火災復旧信号であれば火災の保持を解除して通常監視状態に戻る。このようなコマンドCMとともに、複数の火災感知器1を個々に区別するための固有のアドレスを用いることで、中継器2が特定の火災感知器1のみを制御させることができる。
【0031】
同様に、火災感知器1は中継器2に信号を受信させることができる。すなわち、火災感知器1が火災を検出したとき、火災感知器1は、詳細に示さないが、所定の時間Tt2継続するように連続して火災信号を、送受信回路14の送信回路14aを介して送信する。この時間Tt2は中継器2の間隔Tc2と同じ時間あるいは若干長い程度であり、このことによって、受信回路22bが稼動している時間Toと、連続する火災信号の送信されている時間Tt2とが必ず重なることとなる。ここで、間隔Tc2は例えば3秒である。
【0032】
つぎに、送信される火災信号は、図5(a)に示すように、先頭であることを示すスタートビットSTと、火災信号を送出しようとする火災感知器1の自己のアドレスADと、各種信号として火災を示すためのコマンドCMとの組合せで一つのフレームTfを構成している。火災感知器1は、送信回路14aを介してこのフレームTfを繰り返して、所定の時間Tt2にわたり連続して送信する。
【0033】
この連続する火災信号に対して、図5(b)に示すように、中継器2の受信回路22bが起動する時間Toが重なり、その間連続する信号を、中継器2が受信することとなる。受信回路22bを介して受信した火災信号のうち、最低1フレームTf分の火災信号を、中継器2は完全に受信することができる。
【0034】
ただし、中継器2は、信号線lを介して火災受信機3から常時電源供給を受けることができ、受信回路22bについては、常時稼動させておくこともでき、この場合には、火災感知器1が火災を検出するときに、即座に中継器2に火災信号を送信することができ、早期の火災警報のためには有利である。
【0035】
この実施の形態では、受信盤としての中継器2が特定の端末としての火災感知器1から情報を取得する信号伝送方式において、火災感知器1は、所定周期で間欠動作する受信手段としての受信回路15bを具備し、中継器2は、所定周期以上の期間にわたり連続して呼出し信号としてのトリガー信号を送信する送信手段としての送信回路22aを具備し、火災感知器1の受信回路15bは、間欠動作するときに、中継器2の送信回路22aから送信されるトリガー信号の2個分を含む期間で動作するものであり、中継器2が火災感知器1を呼出す場合にも、常時火災感知器1の受信回路15bを稼動させておく必要がなく、消費電流を低減させることができ、そのため、電源としての電池12の寿命を長くすることができる。
【0036】
また、この実施の形態では、受信先として、火災感知器1または中継器2が受信手段15b、22bを所定周期Tc、Tc2で間欠動作させることで、電源消費を軽減させると同時に、信号伝送が必要な場合に、送信元としての中継器2または火災感知器1がその所定周期以上の期間Tt、Tt2にわたり連続して一つの伝送信号を送信するので、火災感知器1または中継器2が確実に伝送信号を検知することができ、また、火災感知器1または中継器2が受信手段15b、22bを間欠動作させるときに、伝送信号の複数個分を含む時間で動作するので、その期間内に伝送信号1個分は必ず含まれる。
【0037】
また、伝送信号が各種情報の内容に関らず固定長であり、伝送信号1個分は必ず含まれ、火災感知器1または中継器2の伝送信号検出が確実に行われる。
【0038】
また、伝送信号をアドレスADとコマンドCMとを含む所定のフォーマットに構成し、1回の信号受信によって、火災感知器1を特定できるとともに、その信号内容が1回の受信で把握することができる。
【0039】
なお、上記実施の形態における信号伝送の説明において、送信元を火災受信機3に、受信先を複数の中継器2に該当させ、信号線L上の信号伝送において同様の動作を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明を用いる火災報知システムのシステム構成図。
【図2】図1の火災感知器を示すブロック構成図。
【図3】図1の中継器を示すブロック構成図。
【図4】信号のタイミングについて示す説明図。
【図5】図4とは別の説明図。
【符号の説明】
【0041】
1 火災感知器
15b 受信回路
2 中継器
22a 送信回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信元から情報を送信し、受信先が該信号を受信するときの信号伝送方式において、
前記受信先は、所定周期で間欠動作する受信手段を具備し、
前記送信元は、該所定周期以上の期間にわたり連続して一つの伝送信号を送信する送信手段を具備し、
前記受信先の受信手段は、間欠動作するときに、前記送信元の送信手段から送信される伝送信号の複数個分を含む時間で動作することを特徴とする伝送システムの信号伝送方式。
【請求項2】
伝送信号は、各種情報の内容に関らず固定長で送信される請求項1の伝送システムの信号伝送方式。
【請求項3】
伝送信号は、送信元あるいは受信先を特定するアドレスと各種情報の内容とを含む所定のフォーマットに構成されている請求項1または2の伝送システムの信号伝送方式。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−270505(P2006−270505A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85590(P2005−85590)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】