伝送線路型共振器を用いた高周波発振器
【目的】本発明は基本波に対して4倍以上の発振周波数を得て、小型化を促進する高周波発振器を提供する。
【構成】伝送線路型共振器の互いに逆相関係にある両側の2つの共振波動点に発振用能動素子を接続して逆相発振させ、前記共振器に出力線を接続して偶数倍となる倍調波の定在波に対応する出力を得た高周波出力を得た高周波発振器であって、前記定在波は前記基本波の偶数倍となる倍調波のうちの前記基本波f0の2n(但し、nは2以上の整数)倍となる定在波を対象とし、前記出力線は前記伝送線路型共振器の中点を基準として両側の対称点に接続し、前記対称点は前記倍調波2nf0における前記中点での最大変位分布点とは逆相の最大変位分布点であるとともに、前記出力線は共通接続された構成とする。
【構成】伝送線路型共振器の互いに逆相関係にある両側の2つの共振波動点に発振用能動素子を接続して逆相発振させ、前記共振器に出力線を接続して偶数倍となる倍調波の定在波に対応する出力を得た高周波出力を得た高周波発振器であって、前記定在波は前記基本波の偶数倍となる倍調波のうちの前記基本波f0の2n(但し、nは2以上の整数)倍となる定在波を対象とし、前記出力線は前記伝送線路型共振器の中点を基準として両側の対称点に接続し、前記対称点は前記倍調波2nf0における前記中点での最大変位分布点とは逆相の最大変位分布点であるとともに、前記出力線は共通接続された構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)本発明は、マイクロ波やミリ波帯の高周波発振器を産業上の技術分野とし、特に発振周波数を基本波の4倍以上に合成してなる伝送線路型共振器を用いた高周波発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)高周波発振器は例えば光通信システムやその周辺機器に採用され、高性能化と経済化が求められている。このようなものの一つに、特許文献1で示されるように伝送路型共振器を用いた本出願人のPush-Push発振器がある。これによれば、構成を簡易にして基本波に対して2倍及び4倍以上の高周波を得ることができる。
【0003】
(従来技術の一例)第16図は一従来例を説明する高周波発振器の平面図である。
高周波発振器は伝送線路型共振器1と発振用能動素子2と出力線3とを備えてなる。伝送線路型共振器1は例えばマイクロストリップライン1(MSL共振器1Aとする)からなり、誘電体基板4の他主面に接地導体、一主面に信号線を有する。そして、MSL共振器1Aの長さを発振周波数(基本波f0)の波長λに対して例えばλ/2の長さとする。
【0004】
発振用能動素子2は例えばFET2Aからなり、MSL共振器1Aの両端側に例えば疎結合とする容量5を経てゲートが接続する。これにより、MSL共振器1Aの両端側は共振波動点となる。ゲートには図示しないMSLを経てバイアス電圧が印加される。そして、ドレインにはMSL6aを接続して図示しない電源を供給して、ソースが接地される。
【0005】
出力線3はMSL共振器1Aの中点に疎結合とする容量5を経て接続する。なお、疎結合とすることによってMSL共振器1Aの独立性を高め、FET2Aや出力線3からの影響を防止する。また、MSLの中点には基本波f0の波長λに対してλ/4の長さとして他端を開放し、接続点から見て電気的短絡点とするMSL6bを接続する。
【0006】
このようなものでは、MSL共振器1Aの両端には負性抵抗能動素子2(FET2A)を接続して電界結合とする。したがって、例えば第17図に示したように、MSL共振器1Aの中点を0電位点として、共振波動点の両端側を互いに逆相関係となる最大変位分布点とした基本波f0の定在波を生じる。また、基本波f0の高調波であるn倍(但し、nは整数)の倍調波nf0に対応した定在波が生じる。図では基本波f0(実線)、2倍波2f0(点線)及び3倍波3f0(一点鎖線)のみの定在波を示している。これらの定在波は基本波f0のレベルが最も高く、次数が高くなるほど小さくなる。
【0007】
ここでは、MSL共振器1Aの両端側(共振波動点)に負性抵抗素子(FET2A)を設けるので、基本波f0及び倍調波nf0に対してMSLを共用したそれぞれ2つの発振系を得る。基本波f0の発振系では、MSL共振器1Aの両端側が互いに逆レベルの電位点なので、2つの発振系は互いに逆相発振となる。そして、出力線3は、MSL共振器1Aの電気的短絡点(0電位点)である中点に接続するので、基本波f0は出力しない。なお、基本波f0の奇数次となる3倍波以上の倍調波(2n−1)f0も中点に0電位点を有し、基本波f0と同様に出力しない。
【0008】
一方、基本波f0に対する2倍波2f0の定在波は中点及び両端で互いに逆相の最大変位分布点となる。そして、ここでは、出力線3は中点に接続するので、出力端foutには2倍波2f0が得られる。これらにより、基本波f0に対して2倍となる発振周波数を得る(以下、2倍波発振器とする。)
【0009】
なお、4倍以上となる偶数時の倍調波2nf0も少なくとも中点に最大変位分布点を有し、両端側は中点とは逆相又は同相とした最大変位分布点の定在波となる。そして、4倍波以上となる偶数次倍調波も同様にして出力されるが2倍波に対して相対的にレベルが小さくなる。
【0010】
また、第18図に示したように、前述した2倍波発振器を並行に設けて各MS共振器1Aの中点同士を基本波f0に対してλ/4(2倍波2f0に対してλ/2)としたMSL(第1出力線3A)によって接続する。そして、第1出力線3Aの中点に第2出力線3Bを接続する。なお、符号5は前述したように疎結合とする容量であり、同6bは2倍波2f0に対してλ/4となるMSLである。
【0011】
このようにすれば、第1出力線3Aには各2倍波発振器から基本波は抑圧されて2倍波2f0が出力する。そして、第2出力線3BはMSL共振器1Cとして機能し、2倍波2f0に対してλ/2となる。したがって、第19図に示したように、前述同様、第1出力線3Aの中点は2倍波2f0の0電位点となる。
【0012】
一方、4倍波4f0に対しては最大変位分布点となり、前述同様にして4倍波4f0のみが第2出力線3Bに得られる。したがって、基本波f0に対しての4倍波発振器となる。そして、これらを繰り返し構成することによって、2nf0(但し、nは2以上)とした倍調波の高周波発振器を基本的に得ることができる。なお、MSL共振器1Aは直線状として説明したが、環状(リング状)としても同様である。
【特許文献1】特開2003−152455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
(従来技術の問題点)しかしながら、上記構成の高周波発振器では次の問題があった。すなわち、2倍波発振器では、出力線3を除いて、基本的に、λ/2としたMSL共振器1A及び両端側の2個の負性抵抗素子で構成できる。しかし、4倍波発振器では対を成す2個の2倍波発振器を要するので、大型になって小型化を阻害する問題があった。また、8倍波以上の2n(但し、nは3以上)倍波発振器を得ようとすれば対をなす2個の2(n−1)倍発振器を要してさらに小型化を阻害する問題があった。
【0014】
(発明の目的)本発明は基本波に対して4倍以上の発振周波数を得て、小型化を促進する高周波発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の請求項1に係る発明では、伝送線路型共振器の中点を0電位点として互いに逆相関係にある両側の2つの共振波動点に発振用能動素子を接続して、前記伝送型共振器の長さに依存した発振周波数(基本波)f0で2つの発振系を逆相発振させ、前記伝送線路型共振器に生ずる定在波のうち、前記基本波f0の奇数倍となる倍調波の定在波は少なくとも前記中点に0電位点を有して前記中点を基準として逆対称の変位分布とし、前記基本波の偶数倍となる倍調波の定在波は少なくとも前記中点に最大変位分点を有して前記中点を基準とし対称の変位分布とし、前記基本波の偶数倍となる倍調波の定在波における最大変位分布点に出力線を接続して、前記基本波の偶数倍となる倍調波の出力を得た高周波出力を得た高周波発振器であって、前記定在波は前記基本波の偶数倍となる倍調波のうちの前記基本波f0の2n(但し、nは2以上の整数)倍となる定在波を対象とし、前記出力線は前記伝送線路型共振器の中点を基準として両側の対称点に接続し、前記対称点は前記倍調波2nf0における前記中点での最大変位分布点とは逆相の最大変位分布点であるとともに、前記出力線は共通接続された構成とする。
【0016】
同請求項2では、請求項1において前記出力線は基本波f0の波長λに対してλ/4の長さとする。
【0017】
同請求項3では、請求項1において前記伝送線路型共振器は直線状である高周波発振器。
【0018】
同請求項4では、請求項3において前記伝送線路型共振器はMSL共振器とする。
【0019】
同請求項5では、請求項4において前記MSL共振器の長さを基本波f0の波長λに対してλ/2の長さとする。
【0020】
同請求項6では、請求項1において前記伝送線路型共振器は環状とする。
【0021】
同請求項7では、請求項6において前記伝送線路型共振器の長さは基本波f0の波長λとする。
【0022】
同請求項8では、請求項6において前記伝送線路型共振器はMSL共振器又はスロットライン共振器(以下、SL共振器とする)とする。
【0023】
同請求項9では、請求項1において前記nを2又は3として基本波f0に対して4倍波又は8倍波の出力を得る。
【0024】
同請求項10では、請求項1において前記発振用能動素子は出力波形を歪ませて倍調波のレベルを高める。
【0025】
同請求項11では、請求項1において前記伝送線路型共振器の両端側に設けた前記発振用能動素子を有する前記発振系には外部信号源からの同期信号を注入する。
【0026】
同請求項12では、請求項11において前記同期信号は前記伝送線路型共振器の中点に注入する。
【0027】
同請求項13では、請求項11において前記発振用能動素子間に基本波f0で逆相となる遅延線を設け、いずれか一方の前記発振用能動素子と前記遅延線との間に前記同期信号を注入する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の請求項1に係る発明では、伝送線型共振器を中点を0電位点として基本波f0を逆相発振させるので、奇数次の各倍調波は中点で0電位点となり、中点を基準として両側で逆対称(点対称)になる。そして、出力線は中点を基準として両側の対称点に接続して共通接続されるので、対称点における奇数次倍調波は互いに逆電位点(逆相)になる。したがって、共通接続されて0電位(電気的短絡)になるので出力されない。
【0029】
また、偶数次倍調波は中点で最大変位分布点となり、中点を基準として対称になる。そして、対称とする定在波は前記基本波の偶数倍となる倍調波のうちの前記基本波f0の2n(但し、nは2以上の整数)倍となる定在波とする。したがって、中点での最大変位分布点とは逆相となる最大変位分布に接続する出力線の対称点では、2n倍未満の偶数次倍調波は0電位点となる。あるいは、中点を基準とした両側間で逆電位点となって共通接続されて結果的に0電位になるので、出力されない。
【0030】
一方、2n倍の偶数次倍調波における定在波に対する出力線は最大変位分布で同電位点となるので、共通接続されてそのまま出力される。したがって、2n倍未満の奇数時及び偶数次の各倍調波は抑圧されて、2n倍の倍調波2nのみが出力される。
【0031】
これらのことから、例えば4倍及び8倍波の発振周波数を得るのに、基本波と同様に2個の負性抵抗能動素子を伝送線路型共振器の共振波動点に接続するのみでよいので、小型化を促進できる。
【0032】
本発明の請求項2に係る発明では、出力線は発振周波数f0の波長λに対してλ/4の長さとするので、出力線の共通接続点は基本波f0逆相電圧が加算されて0電位点となる。したがって、出力線の接続点から見て出力側は無限大(高インピーダンス)となり、レベルが最も大きい基本波f0はさらに抑圧されて相対的にそのレベルを小さくできる。
【0033】
本発明の請求項3では前記伝送線路型共振器は直線状とし、同請求項4ではMSLとし、同請求項5では基本波f0の波長λに対してλ/2の長さとするので、請求項1の発明をさらに具現化できる。
【0034】
同請求項6では前記伝送線路型共振器は環状とし、同請求項7では発振周波数の波長λの長さとし、同請求項8ではMSL共振器1Cとするので、請求項1の発明をさらに具現化できる。
【0035】
同請求項9では請求項1の前記nを2又は3として発振周波数f0に対して4倍波又は8倍波の出力を得るので、16倍以上倍調波よりも現実的な出力となる。
【0036】
同請求項10では前記発振用能動素子は出力波形を歪ませて倍調波のレベルを高めるので、倍調波の出力を取り出し易くする。
【0037】
請求項11では、発振系には外部信号源からの同期信号を注入するので、周波数安定度を高める。請求項12では同期信号を伝送線路型共振器の中点に注入し、請求項13では発振用能動素子間に両端間で逆相となる遅延線を設けて同期信号を注入するので、請求項11の発明をさらに具現化する。
【0038】
特に、請求項13では両端側で逆相となる遅延線を設けて同期信号を注入するので、互いに逆相の2つの発振系のいずれにもに対して同期信号が注入され、周波数安定度をさらに高める。
【実施例1】
【0039】
第1実施例は伝送線路型共振器を直線状としたMSL共振器1Cからなる高周波発振器の例で、第1図は4倍波発振器の平面図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0040】
4倍波発振器は前述したように図示しない誘電体基板4上に形成した発振周波数(基本波)f0に対して長さがλ/2のMSL共振器1A、両端側に接続した負性抵抗能動素子(FET2A)及び第1と第2出力線3(AB)からなる。ここでの負性抵抗素子とのFET2Aは例えばゲートでのバイアス電圧値を変えて、発振波形を歪ませる。そして、基本波成分に対する高周波成分のレベルを相対的に高める(第2図)。
【0041】
MSL共振器1Aには、前述したように中点を0電位点として両端側を逆相の最大変位分布点とした基本波f0を生じる。また、中点を基準として逆対称となる基本波f0の奇数次倍調波となる定在波、及び少なくとも中点に最大変位分布点を有する偶数次の2nf0となる倍調波の定在波を生ずる「第3図(abc)及び第4図参照」。
【0042】
そして、ここでは、MSL共振器1Aの中点を基準点として対称となる4倍波4f0の定在波における最大変位分布点であって、中点での最大変位分布点とは逆相の最大変位分布点に第1出力線3Aを接続する(前第4図参照)。但し、逆相の最大変位分布点は同相で同電位点となる。
【0043】
具体的に、MSL共振器1Aの中点及び両端側から基本波f0に対してλ/8となる2点に接続する。第1出力線3Aは基本波に対してλ/4の長さとする。そして、第1出力線3Aの接続点に第2出力線3Bを共通接続して出力foutを得る。
【0044】
このような構成であれば、第1出力線3Aの接続される中点を基準とした両側の対称点は、基本波f0、3倍波3f0等における奇数次倍調波の定在波に対して、図中の×印で示すように逆電位点になる「前第3図(ac)」。そして、第2出力線3Bに共通接続されるので、互いに逆相の電位は相殺されて結果的に0電位になる。したがって、出力端foutには出力されない。
【0045】
また、2倍波2f0の定在波に対しては、第1出力線3Aの接続点は4倍波4f0の1/2となるので、0電位点となる「前第3図(b)」。なお、たがって、第1出力線3Aには2倍波2f0は出力されないので、第2出力線3Bのfoutにも勿論出力しない。
【0046】
一方、4倍波4f0の定在波に対しては、中点から基本波f0に対してλ/8即ち4倍波4f0に対してはλ/2分離れて、中点とは逆相の最大変位分布点に接続する(前第4図)。但し、逆相の最大変位分布間では図中の○印で示すように同電位点(同相)となる。そして、同相のまま共通接続されるので、第2出力線3Bの出力端foutには4倍波4f0が出力される。
【0047】
このようなことから、この実施例では基本波f0、2倍波2f0及び3倍波3f0は抑圧されて、4倍波4f0のみが出力される。なお、5倍波以上の奇数倍調波も共通接続されて0電位になるので出力されない。さらに、6倍波以上の偶数倍調波は4倍波4f0に対して相対的にレベルが小さくなって、4倍波4f0の出力を阻害しない。この場合、影響を及ぼす場合には簡易なフィルタで6倍波以上を抑制することもできる。
【0048】
また、ここでは、第1出力線3Aはそれぞれ基本波f0に対してλ/4とするので、共通接続点は逆相電圧が加算されて0電位点となる。したがって、基本波f0及びその奇数次倍調波においては、第1出力線3Aの接続点から見て出力側は無限大となって高インピーダンスとなる。
【0049】
これにより、レベルが最も大きい基本波f0はさらに抑圧されて相対的にそのレベルを小さくできる。そして、負性抵抗素子の出力波形を歪ませるので、基本波f0に対する4倍波4f0のレベルを相対的に高める。したがって、4倍波4f0を取り出しやすくする。なお、MSL共振器1Aは直線状としたが、例えば蛇行した曲線状であってもよい。
【実施例2】
【0050】
第2実施例は第1実施例と同様に直線状としたMSL共振器1Cを用いた高周波発振器の例で、第5図は8倍波発振器の平面図である。なお、これ以降の各実施例では前実施例と同一部分の説明は省略又は簡略する。
【0051】
8倍波発振器は前述同様に発振周波数(基本波)f0に対して長さがλ/2のMSL共振器1A、両端側に接続して発振波形を歪ませた負性抵抗能動素子(FET2A)及び第1、第2出力線3(ab)からなる。この場合でも、前述同様にMSL共振器1Aには、中点を0電位点として逆対称となる基本波f0及び奇数次倍調波の定在波と、中点に最大変位分布点を有して対称となる偶数次高周波の定在波を生じる「第6図(abc)、第7図(abc)、第8図(ab)参照」。
【0052】
ここでは、第1出力線3Aは、MSL共振器1Aの中点を基準点として8倍波における定在波の対称となる最大変位分布点であって、中点での最大変位分布点とは逆相の最大変位分布点に接続する「前第8図(b)参照」。
【0053】
具体的には、MSL共振器1Aの中点及び両端側から基本波f0に対してλ/16となる計4点に接続して共通接続する。第1出力線3Aは第1実施例同様に基本波f0に対してλ/4の長さとする。そして、第1接続線の接続点に第2出力線3Bが接続し、出力foutを得る。
【0054】
このような構成であれば、第1出力線3Aの接続される中点を基準とした両側各2点の対称点は、基本波f0、3倍波3f0、5倍波5f0、7倍波7f0等における奇数次倍調波(2n−1)f0の定在波に対して、図中の×及び□印で示すようにそれぞれ逆電位点になる「前第6図(ac)、第7図(b)及び第8図(a)」。そして、第2出力線3Bに共通接続されるので、互いに逆相の電位は結果的に0電位になる。したがって、基本波f0及び奇数次倍調波は出力端foutには出力されない。
【0055】
また、偶数次倍調波のうち、2倍波2f0、6倍波6f0の定在波に対して、第1出力線3Aの接続する各2点の対称点(接続点)は、中点を基準とした×及び□で示す各2点間で逆電位となる「第6図(b)、第7図(c)」。この場合、中点を基準とした各側での×□間でも逆電位となる。したがって、共通接続されて第2出力線3Bには出力しない。
【0056】
また、偶数次倍調波のうち、4倍波4f0の定在波に対して、第1出力線3Aの接続する対称点は、それぞれ0電位点となる「第7図(a)」。したがって、第1出力線3Aには電位は発生せず、第2出力線3Bの出力端foutにも出力しない。
【0057】
一方、偶数次倍調波のうち、8倍波8f0の定在波に対して、第1出力線3Aの接続する対称点は、中点から基本波f0に対してλ/16即ち8倍波8f0に対してはλ/2分離れて、中点とは逆相でそれぞれが同相の最大変位分布点に接続する「第8図(b)」。そして、第2出力線3Bによって同相のまま合成されるので、出力端foutには8倍波8f0が出力される。
【0058】
このようなことから、この実施例では基本波f0乃至7倍波4f0は抑圧されて、8倍波8f0のみが出力される。なお、9倍波以上の倍調波のうち奇数倍調波は前述同様に共通接続されて結果的に0電位になって出力されない。また、10倍波以上の偶数次倍調波10f0も8倍波8f0に対して相対的にレベルが小さくなって、8倍波8f0の出力を阻害しない。ここでも、10倍波10f0以上の偶数次倍調波は簡易なフィルタで除去できる。
【0059】
そして、各第1出力線3Aはそれぞれ基本波f0に対してλ/4とすると、基本波f0及びその奇数次倍調波にとって接続点から見て高インピーダンスとする。したがって、最も高レベルの基本波f0はさらに抑圧されて相対的にそのレベルを小さくできる。そして、負性抵抗素子の出力波形を歪ませるので、基本波f0に対する8倍波4f0のレベルを相対的に高めて、8倍波8f0を取り出しやすくする。
【実施例3】
【0060】
第3実施例は伝送線路型共振器を環状とした場合の高周波発振器の例で、第9図は伝送線路型共振器をMSL共振器1Cとした4倍波発振器の平面図である。
【0061】
ここでの、4倍波発振器のMSL共振器1Bは円環状とし、全長を基本波f0に対して1波長分であるλとする。負性抵抗能動素子(FET2A)は、MSL共振器1Bの半周であるλ/2分離れた両端側(図の左右端)に容量5を経て接続する。また、左右端の中間点である上下端にはλ/4として電気的短絡点(0電位点)とするMSL6bを接続する。
【0062】
そして、左右端と上下端との各中間点を結ぶ線上に第1出力線3Aを接続し、中心点で共通接続する。中心点にはビアホール7が設けられ図示しない第2出力線3Bが接続する。なお、左右端と上下端との各中間点は各端から基本波f0に対してλ/8分離れた点になる。
【0063】
このような構成であれば、MSL共振器1Bの左右端は基本波f0に対してλ/2分離れ、電気的に逆相点になる。そして、両端側にFET2Aを接続するので、直線状のMSL共振器1Aとした場合(前第1及び第2実施例)と同様に、基本波f0で互いに逆相関係とした2つの発振系を得る。
【0064】
この場合、MSL共振器1Bの両端側を互いに逆相の最大変位分布点として、上下端を0電位点とした基本波f0での周回する定在波となる。そして、MSL共振器1Bの左端又は右端から上半周又は下半周での基本波f0での各定在波を見ると、前第1及び第2実施例のλ/2とした直線状のMSL共振器1Aに生ずる定在波と実質的に同じになる「前第3図(a)参照」。
【0065】
これらの上下半周での基本波f0での定在波は、MSL共振器1Bの左端又は右端から見て互いに同相(同電位点)であり、前第3図(a)のMSL共振器1Aの長さを2倍として定在波を連続的に延長した変位分布図になる。これらは、基本波f0に対する奇数次及び偶数次倍調波の定在波も同様となる。
【0066】
そして、ここでは、MSL共振器1Bの左右端と上下端との各中間点に第1出力線3Aを接続して共通接続する。すなわち、各出力線3Aは上下半周の各中点である上下端を基準として、基本波f0に対してλ/8分離れた対称点に接続する。
【0067】
したがって、第1出力線3Aの接続点(対称点)は、基本波f0及びその奇数次倍調波に対しては、前実施例と同様に、各上下端(中点)を基準(0電位点)とした逆電位点になる「前第3図(a)(c)参照」。したがって、互いに逆相の電位は共通接続されて結果的に0電位になるので、基本波f0及び奇数次倍調波は出力されない。
【0068】
また、基本波f0に対する2倍波2f0対しては、各上下端(中点)を基準として0電位点になるので「前第3図(b)参照」、共通接続しても出力されない。一方、4倍波4f0に対しては、中点から基本波f0に対してλ/8即ち4倍波4f0に対してはλ/2分離れて、中点とは逆相の最大変位分布点となるので、共通接続されてそのまま出力される。
【0069】
この例でも、前述同様にして、5倍波以上の奇数倍調波は出力されず、6倍波以上の偶数倍調波は相対的にレベルが小さくあるいは簡易なフィルタで抑制できるので、4倍波4f0のみの出力を得ることができる。
【0070】
なお、この例では第1出力線3Aは、MSL共振器1Bの左右端と上下端の各中間点(4点)に接続して中心にて共通接続したが、例えば第10図に示したようにしてもよい。
【0071】
すなわち、MSL共振器1Bの例えば下半周における左右端と下端との中間点のみに第1出力線3Aを接続して外方に延出し、これらを共通接続して第2出力線3Bを設けてもよい。この場合でも、4倍波4f0以外の基本波及び倍調波は抑圧されるので、4倍波4f0のみの出力を得られる。また、第2出力線3Bを上半周からも導出して上下半周から第1出力線3Bを導出し、対称性を維持してもよい(不図示)。この場合2出力とすることができる。
【0072】
さらに、4倍波発振器を例として説明したが、MSL共振器1Aを直線状とした場合と同様に、8倍波発振器及びそれ以上の2n倍(但し、nは2以上の整数)とした倍調波発振器にも適用できる。
【0073】
例えば8倍波発振器の場合は、第11図(ab)に示したように、上下端からλ/16分離れて互いにλ/8間隔として8等分する第1出力線3AをMSL共振器1Bに接続して中心にて共通接続し、ビアホール7によって裏面から第2出力線3Bを導出する「同図(a)」。又は、これと同様の第1出力線3Aを下半周(あるいは上下半周、不図示)に接続して外方に延出し、これらを共通接続して第2出力線3Bを設ける「同図(b)」。
【0074】
このようにすれば、第1出力線3Aは上下端「同図(a)」又は下端「同図(b)」から対称点に接続される。そして、各対称点は基本波f0及び奇数次倍長波の定在波に対しては逆電位点になる。また、基本波f0に対する偶数次倍調波のうち、2倍、6倍波は逆電位点、4倍波波0電位点になり、10倍波以上は相対的レベルが小さくさらには簡易フィルタでの除去も容易になる。これに対して、8倍波8f0に対しては中点とは逆相の最大変位分布点となるので、共通接続されてそのまま出力される。したがって、8倍波のみの出力を得られる。
【実施例4】
【0075】
第4実施例は環状とした伝送線路型共振器をSL共振器とした場合の高周波発振器の例で、第12図は4倍波発振器を例とした平面図である。
【0076】
ここでの高周波発振器(4倍波発振器)は、誘電体基板4の他主面に円環状としたSL共振器1Cを有する。SL共振器1Cは内外を導体として開口線路からなり、両端(左右端)には中心方向への導出路8を有する。SL共振器1Cの全長は、先の円環状としたMSL共振器1Bと同様に基本波f0の1波長分λとする。
【0077】
誘電体基板4の一主面には、両端で導出路8と重畳した電磁結合用のMSL(結合用MSL)6dがSL共振器1Cを横断して形成される。結合用MSL6dと導出路8の重畳部分の長さによって結合度を可変できる。各結合用MSLには負性抵抗能動素子としてのFET2Aが接続する。そして、左右端と上下端とから基本波f0に対してλ/8分離れた各中間点を結ぶ線上にはMSLとした第1出力線3Aを接続する「第12図(a)」。第1出力線3AはSL共振器1Cと交差し、電磁結合する。そして、ビアホール7とした中心点で共通接続されて第2出力線3B(不図示)が接続する。
【0078】
このような構成であれば、結合用MSL6dによってSL共振器1Cの両端側でFET2Aとが電気的に結合する。したがって、円環状としたMSL共振器1B場合と同様に基本波f0で互いに逆相関係とした2つの発振系を得る。この場合でも、SL共振器1Cの両端側を互いに逆相の最大変位分布点として、上下端を0電位点とした基本波f0での周回する定在波となる。
【0079】
そして、SL共振器1Cの左右端と上下端とからλ/8分離れて、上下端を基準として対称点である中間点に第1出力線3Aを接続して共通接続する。したがって、第1出力線3Aの接続点(対称点)は基本波f0及びその奇数次倍調波に対して各上下端(中点)を基準(0電位点)とした逆電位点になり、これらは共通接続されて0電位となり出力されない。
【0080】
また、基本波f0に対する2倍波2f0対しては各上下端(中点)を基準として0電位点になり、6倍波以上の偶数倍調波は相対的にレベルが小さくあるいは簡易なフィルタで抑制できる。一方、4倍波4f0に対しては、中点から基本波f0に対してλ/8即ち4倍波4f0に対してはλ/2分離れて、中点とは逆相の最大変位分布点となるので、共通接続されてそのまま出力される。
【0081】
なお、第4実施例においても、SL共振器1Cの例えば下半周における左右端と下端との中間点のみに第1出力線3Aを接続して外方に延出し、これらを共通接続して第2出力線3Bを設けてもよい「第13図(b)」。また、4倍波発振器に限らず、8倍波発振器及びそれ以上の2n倍(但し、nは2以上の整数)とした倍調波発振器にも適用できる。
【0082】
第13図(ab)は8倍波発振器の例である。これらの場合でも、上下端からλ/16分離れて互いにλ/8間隔として8等分する第1出力線3AをSL共振器1Cに接続して中心にて共通接続する「同図(a)」。又は、第1出力線3Aを下半周(あるいは上下半周、不図示)に接続して外方に延出し、これらを共通接続して「同図(b)」第2出力線3Bを設けてもよい。
【0083】
(他の事項)上記各実施例では、4倍及び8倍波発振器の原理を説明したが、MSL共振器1Cは共振度合いを示すQが低いので、外部信号源(同期信号源)からの注入同期によって周波数安定度を高めてもよい。例えばMSL共振器1Aを用いた場合は、第14図及び第15図(ab)に示したようにすればよい。
【0084】
すなわち、第14図ではMSL共振器1Aの中点に容量5を経て注入同期用の例えばMSL6cを接続する。MSL6cには水晶発振器等の外部信号源からの周波数安定度の高いf0/n(但し、nは1以上)同期信号が印加される。これにより、基本波f0はn/f0毎に位相が揃えられるので、基本波f0さらには出力とする4倍波4f0の周波数安定度度も高まる。
【0085】
また、第15図(ab)ではMSL共振器1Aの両端に接続したFET2Aに例えば基本波f0においてλ/2としたMSL6dからなる遅延線を接続する。そして、遅延線としてのMSL6dに前述同様に外部信号源からのf0/nとした同期信号を印加する。
【0086】
このようにすれば、MSL6d(遅延線)は両端側で互いに逆相となる同期信号が両端のFET2A印加される。したがって、2つの発振系はそれぞれが注入同期されるので、結果として基本波f0はn/f0毎に位相が揃えられる。したがって、出力としての4倍波4f0はさらに周波数安定度が高まる。また、FET2Aに注入されるMSL共振器1Aの独立性を高められる(負荷Qを劣化させない)。
【0087】
なお、各注入同期は4倍波発振器に適用したが、8倍以上の倍調波2nf0の高周波発振器にも適用できることは勿論である。また、第15図(a)はソース接地、同図(b)はゲート接地の例であり、その単方向性(ユニラテラル性)によって注入同期系を簡易な構成にできる。さらに、SL共振器1Cを用いた場合でも同様な構成で注入同期によって周波数安定度を高められる。
【0088】
また、上記各実施例では、MSL共振器1Aには容量5を接続して負性抵抗能動素子及び第1出力線3A(MSL)を接続して疎結合としたが、これらを除去して直接的に接続してもよい。但し、疎結合とした方が前述したようにMSL共振器1Aの負荷Qを劣化させない点で有利ある。また、負性抵抗能動素子はFET2Aとしたが、例えばバイポーラ型でもよく要は高周波用の負性抵抗回路であればよい。
【0089】
また、MSL型共振器1Aの中点には0電位点とするλ/4のMSL6bを接続して強制的に0電位点としたが、これがなかったとしてもMSL共振器1Aの両端は基本的に開放端なので、基本的に中点が幾何学的な0電位点となるので、同様に機能する。また、基本波f0に対して4倍及び8倍の倍調波4f0及び8f0を説明したが、基本的に倍調波2nf0(但し、nは2以上の整数)に適用できる。
【0090】
また、MSL共振器1Aは基本波f0のλ/2として説明したが、nλ/2(nは1以上の奇数)としてもよく要は逆相となる最大振幅変位点に負性抵抗能動素子を接続して互いに逆相発振とすればよい。また、環状とした伝送線路型共振器1は円としたが、例えば楕円や角状であってもよく基本波f0に対して1波長分の長さであれば基本的に構成できる。
【0091】
また、環状とした伝送線路型共振器の場合、高出力の4倍波発振器を実現する目的でλ/4のMSL6Bをしないで、その位置に負性抵抗素子を接続することができ、合計4個の負性抵抗素子としてもよい(不図示)。また、高出力の8倍波発振器を実現する目的で、各出力線3B間の対称的な配置で4個、8個の負性抵抗素子としてもよい。そして、これらの高周波発振器はミリ波等の高周波帯においてはMMIC化も容易であり、小型化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施例を説明する4倍波発振器の平面図である。
【図2】本発明の第1実施例のFETによる出力波形の周波数スペクトラム図である。
【図3】本発明の第1実施例の作用を説明する定在波の変位分布図である。
【図4】本発明の第1実施例の作用を説明する定在波の変位分布図である。
【図5】本発明の第2実施例を説明する8倍波発振器の誘電体基板を除く平面図である。
【図6】本発明の第2実施例の作用を説明する定在波の変位分布図である。
【図7】本発明の第2実施例の作用を説明する定在波の変位分布図である。
【図8】本発明の第2実施例の作用を説明する定在波の変位分布図である。
【図9】本発明の第3実施例を説明する4倍波発振器の平面図である。
【図10】本発明の第3実施例の他の例を説明する4倍波発振器の平面図である。
【図11】本発明の第3実施例のさらに他の例を説明する8倍波発振器の平面図である。
【図12】本発明の第4実施例を説明する4倍波発振器の平面図である。
【図13】本発明の第4実施例を他の例を説明する8倍波発振器の平面図である。
【図14】本発明の他の実施例を説明する注入同期を適用した4倍波発振器の平面図である。
【図15】本発明の他の実施例を説明する注入同期を適用した4倍波発振器の概略的な平面図である。
【図16】従来例を説明する2倍波発振器の平面図である。
【図17】従来例説明する定在波の変位分布図である。
【図18】従来例を説明する4倍波発振器の平面図である。
【図19】従来例を説明する定在波の変位分布図である。
【符号の説明】
【0093】
1 伝送線路型共振器、1A MSL型共振器、2 負性抵抗能動素子、2A FET、3 出力線、4 誘電体基板、5 容量、6 MSL、7 ビアホール、8 導出路。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)本発明は、マイクロ波やミリ波帯の高周波発振器を産業上の技術分野とし、特に発振周波数を基本波の4倍以上に合成してなる伝送線路型共振器を用いた高周波発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)高周波発振器は例えば光通信システムやその周辺機器に採用され、高性能化と経済化が求められている。このようなものの一つに、特許文献1で示されるように伝送路型共振器を用いた本出願人のPush-Push発振器がある。これによれば、構成を簡易にして基本波に対して2倍及び4倍以上の高周波を得ることができる。
【0003】
(従来技術の一例)第16図は一従来例を説明する高周波発振器の平面図である。
高周波発振器は伝送線路型共振器1と発振用能動素子2と出力線3とを備えてなる。伝送線路型共振器1は例えばマイクロストリップライン1(MSL共振器1Aとする)からなり、誘電体基板4の他主面に接地導体、一主面に信号線を有する。そして、MSL共振器1Aの長さを発振周波数(基本波f0)の波長λに対して例えばλ/2の長さとする。
【0004】
発振用能動素子2は例えばFET2Aからなり、MSL共振器1Aの両端側に例えば疎結合とする容量5を経てゲートが接続する。これにより、MSL共振器1Aの両端側は共振波動点となる。ゲートには図示しないMSLを経てバイアス電圧が印加される。そして、ドレインにはMSL6aを接続して図示しない電源を供給して、ソースが接地される。
【0005】
出力線3はMSL共振器1Aの中点に疎結合とする容量5を経て接続する。なお、疎結合とすることによってMSL共振器1Aの独立性を高め、FET2Aや出力線3からの影響を防止する。また、MSLの中点には基本波f0の波長λに対してλ/4の長さとして他端を開放し、接続点から見て電気的短絡点とするMSL6bを接続する。
【0006】
このようなものでは、MSL共振器1Aの両端には負性抵抗能動素子2(FET2A)を接続して電界結合とする。したがって、例えば第17図に示したように、MSL共振器1Aの中点を0電位点として、共振波動点の両端側を互いに逆相関係となる最大変位分布点とした基本波f0の定在波を生じる。また、基本波f0の高調波であるn倍(但し、nは整数)の倍調波nf0に対応した定在波が生じる。図では基本波f0(実線)、2倍波2f0(点線)及び3倍波3f0(一点鎖線)のみの定在波を示している。これらの定在波は基本波f0のレベルが最も高く、次数が高くなるほど小さくなる。
【0007】
ここでは、MSL共振器1Aの両端側(共振波動点)に負性抵抗素子(FET2A)を設けるので、基本波f0及び倍調波nf0に対してMSLを共用したそれぞれ2つの発振系を得る。基本波f0の発振系では、MSL共振器1Aの両端側が互いに逆レベルの電位点なので、2つの発振系は互いに逆相発振となる。そして、出力線3は、MSL共振器1Aの電気的短絡点(0電位点)である中点に接続するので、基本波f0は出力しない。なお、基本波f0の奇数次となる3倍波以上の倍調波(2n−1)f0も中点に0電位点を有し、基本波f0と同様に出力しない。
【0008】
一方、基本波f0に対する2倍波2f0の定在波は中点及び両端で互いに逆相の最大変位分布点となる。そして、ここでは、出力線3は中点に接続するので、出力端foutには2倍波2f0が得られる。これらにより、基本波f0に対して2倍となる発振周波数を得る(以下、2倍波発振器とする。)
【0009】
なお、4倍以上となる偶数時の倍調波2nf0も少なくとも中点に最大変位分布点を有し、両端側は中点とは逆相又は同相とした最大変位分布点の定在波となる。そして、4倍波以上となる偶数次倍調波も同様にして出力されるが2倍波に対して相対的にレベルが小さくなる。
【0010】
また、第18図に示したように、前述した2倍波発振器を並行に設けて各MS共振器1Aの中点同士を基本波f0に対してλ/4(2倍波2f0に対してλ/2)としたMSL(第1出力線3A)によって接続する。そして、第1出力線3Aの中点に第2出力線3Bを接続する。なお、符号5は前述したように疎結合とする容量であり、同6bは2倍波2f0に対してλ/4となるMSLである。
【0011】
このようにすれば、第1出力線3Aには各2倍波発振器から基本波は抑圧されて2倍波2f0が出力する。そして、第2出力線3BはMSL共振器1Cとして機能し、2倍波2f0に対してλ/2となる。したがって、第19図に示したように、前述同様、第1出力線3Aの中点は2倍波2f0の0電位点となる。
【0012】
一方、4倍波4f0に対しては最大変位分布点となり、前述同様にして4倍波4f0のみが第2出力線3Bに得られる。したがって、基本波f0に対しての4倍波発振器となる。そして、これらを繰り返し構成することによって、2nf0(但し、nは2以上)とした倍調波の高周波発振器を基本的に得ることができる。なお、MSL共振器1Aは直線状として説明したが、環状(リング状)としても同様である。
【特許文献1】特開2003−152455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
(従来技術の問題点)しかしながら、上記構成の高周波発振器では次の問題があった。すなわち、2倍波発振器では、出力線3を除いて、基本的に、λ/2としたMSL共振器1A及び両端側の2個の負性抵抗素子で構成できる。しかし、4倍波発振器では対を成す2個の2倍波発振器を要するので、大型になって小型化を阻害する問題があった。また、8倍波以上の2n(但し、nは3以上)倍波発振器を得ようとすれば対をなす2個の2(n−1)倍発振器を要してさらに小型化を阻害する問題があった。
【0014】
(発明の目的)本発明は基本波に対して4倍以上の発振周波数を得て、小型化を促進する高周波発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の請求項1に係る発明では、伝送線路型共振器の中点を0電位点として互いに逆相関係にある両側の2つの共振波動点に発振用能動素子を接続して、前記伝送型共振器の長さに依存した発振周波数(基本波)f0で2つの発振系を逆相発振させ、前記伝送線路型共振器に生ずる定在波のうち、前記基本波f0の奇数倍となる倍調波の定在波は少なくとも前記中点に0電位点を有して前記中点を基準として逆対称の変位分布とし、前記基本波の偶数倍となる倍調波の定在波は少なくとも前記中点に最大変位分点を有して前記中点を基準とし対称の変位分布とし、前記基本波の偶数倍となる倍調波の定在波における最大変位分布点に出力線を接続して、前記基本波の偶数倍となる倍調波の出力を得た高周波出力を得た高周波発振器であって、前記定在波は前記基本波の偶数倍となる倍調波のうちの前記基本波f0の2n(但し、nは2以上の整数)倍となる定在波を対象とし、前記出力線は前記伝送線路型共振器の中点を基準として両側の対称点に接続し、前記対称点は前記倍調波2nf0における前記中点での最大変位分布点とは逆相の最大変位分布点であるとともに、前記出力線は共通接続された構成とする。
【0016】
同請求項2では、請求項1において前記出力線は基本波f0の波長λに対してλ/4の長さとする。
【0017】
同請求項3では、請求項1において前記伝送線路型共振器は直線状である高周波発振器。
【0018】
同請求項4では、請求項3において前記伝送線路型共振器はMSL共振器とする。
【0019】
同請求項5では、請求項4において前記MSL共振器の長さを基本波f0の波長λに対してλ/2の長さとする。
【0020】
同請求項6では、請求項1において前記伝送線路型共振器は環状とする。
【0021】
同請求項7では、請求項6において前記伝送線路型共振器の長さは基本波f0の波長λとする。
【0022】
同請求項8では、請求項6において前記伝送線路型共振器はMSL共振器又はスロットライン共振器(以下、SL共振器とする)とする。
【0023】
同請求項9では、請求項1において前記nを2又は3として基本波f0に対して4倍波又は8倍波の出力を得る。
【0024】
同請求項10では、請求項1において前記発振用能動素子は出力波形を歪ませて倍調波のレベルを高める。
【0025】
同請求項11では、請求項1において前記伝送線路型共振器の両端側に設けた前記発振用能動素子を有する前記発振系には外部信号源からの同期信号を注入する。
【0026】
同請求項12では、請求項11において前記同期信号は前記伝送線路型共振器の中点に注入する。
【0027】
同請求項13では、請求項11において前記発振用能動素子間に基本波f0で逆相となる遅延線を設け、いずれか一方の前記発振用能動素子と前記遅延線との間に前記同期信号を注入する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の請求項1に係る発明では、伝送線型共振器を中点を0電位点として基本波f0を逆相発振させるので、奇数次の各倍調波は中点で0電位点となり、中点を基準として両側で逆対称(点対称)になる。そして、出力線は中点を基準として両側の対称点に接続して共通接続されるので、対称点における奇数次倍調波は互いに逆電位点(逆相)になる。したがって、共通接続されて0電位(電気的短絡)になるので出力されない。
【0029】
また、偶数次倍調波は中点で最大変位分布点となり、中点を基準として対称になる。そして、対称とする定在波は前記基本波の偶数倍となる倍調波のうちの前記基本波f0の2n(但し、nは2以上の整数)倍となる定在波とする。したがって、中点での最大変位分布点とは逆相となる最大変位分布に接続する出力線の対称点では、2n倍未満の偶数次倍調波は0電位点となる。あるいは、中点を基準とした両側間で逆電位点となって共通接続されて結果的に0電位になるので、出力されない。
【0030】
一方、2n倍の偶数次倍調波における定在波に対する出力線は最大変位分布で同電位点となるので、共通接続されてそのまま出力される。したがって、2n倍未満の奇数時及び偶数次の各倍調波は抑圧されて、2n倍の倍調波2nのみが出力される。
【0031】
これらのことから、例えば4倍及び8倍波の発振周波数を得るのに、基本波と同様に2個の負性抵抗能動素子を伝送線路型共振器の共振波動点に接続するのみでよいので、小型化を促進できる。
【0032】
本発明の請求項2に係る発明では、出力線は発振周波数f0の波長λに対してλ/4の長さとするので、出力線の共通接続点は基本波f0逆相電圧が加算されて0電位点となる。したがって、出力線の接続点から見て出力側は無限大(高インピーダンス)となり、レベルが最も大きい基本波f0はさらに抑圧されて相対的にそのレベルを小さくできる。
【0033】
本発明の請求項3では前記伝送線路型共振器は直線状とし、同請求項4ではMSLとし、同請求項5では基本波f0の波長λに対してλ/2の長さとするので、請求項1の発明をさらに具現化できる。
【0034】
同請求項6では前記伝送線路型共振器は環状とし、同請求項7では発振周波数の波長λの長さとし、同請求項8ではMSL共振器1Cとするので、請求項1の発明をさらに具現化できる。
【0035】
同請求項9では請求項1の前記nを2又は3として発振周波数f0に対して4倍波又は8倍波の出力を得るので、16倍以上倍調波よりも現実的な出力となる。
【0036】
同請求項10では前記発振用能動素子は出力波形を歪ませて倍調波のレベルを高めるので、倍調波の出力を取り出し易くする。
【0037】
請求項11では、発振系には外部信号源からの同期信号を注入するので、周波数安定度を高める。請求項12では同期信号を伝送線路型共振器の中点に注入し、請求項13では発振用能動素子間に両端間で逆相となる遅延線を設けて同期信号を注入するので、請求項11の発明をさらに具現化する。
【0038】
特に、請求項13では両端側で逆相となる遅延線を設けて同期信号を注入するので、互いに逆相の2つの発振系のいずれにもに対して同期信号が注入され、周波数安定度をさらに高める。
【実施例1】
【0039】
第1実施例は伝送線路型共振器を直線状としたMSL共振器1Cからなる高周波発振器の例で、第1図は4倍波発振器の平面図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0040】
4倍波発振器は前述したように図示しない誘電体基板4上に形成した発振周波数(基本波)f0に対して長さがλ/2のMSL共振器1A、両端側に接続した負性抵抗能動素子(FET2A)及び第1と第2出力線3(AB)からなる。ここでの負性抵抗素子とのFET2Aは例えばゲートでのバイアス電圧値を変えて、発振波形を歪ませる。そして、基本波成分に対する高周波成分のレベルを相対的に高める(第2図)。
【0041】
MSL共振器1Aには、前述したように中点を0電位点として両端側を逆相の最大変位分布点とした基本波f0を生じる。また、中点を基準として逆対称となる基本波f0の奇数次倍調波となる定在波、及び少なくとも中点に最大変位分布点を有する偶数次の2nf0となる倍調波の定在波を生ずる「第3図(abc)及び第4図参照」。
【0042】
そして、ここでは、MSL共振器1Aの中点を基準点として対称となる4倍波4f0の定在波における最大変位分布点であって、中点での最大変位分布点とは逆相の最大変位分布点に第1出力線3Aを接続する(前第4図参照)。但し、逆相の最大変位分布点は同相で同電位点となる。
【0043】
具体的に、MSL共振器1Aの中点及び両端側から基本波f0に対してλ/8となる2点に接続する。第1出力線3Aは基本波に対してλ/4の長さとする。そして、第1出力線3Aの接続点に第2出力線3Bを共通接続して出力foutを得る。
【0044】
このような構成であれば、第1出力線3Aの接続される中点を基準とした両側の対称点は、基本波f0、3倍波3f0等における奇数次倍調波の定在波に対して、図中の×印で示すように逆電位点になる「前第3図(ac)」。そして、第2出力線3Bに共通接続されるので、互いに逆相の電位は相殺されて結果的に0電位になる。したがって、出力端foutには出力されない。
【0045】
また、2倍波2f0の定在波に対しては、第1出力線3Aの接続点は4倍波4f0の1/2となるので、0電位点となる「前第3図(b)」。なお、たがって、第1出力線3Aには2倍波2f0は出力されないので、第2出力線3Bのfoutにも勿論出力しない。
【0046】
一方、4倍波4f0の定在波に対しては、中点から基本波f0に対してλ/8即ち4倍波4f0に対してはλ/2分離れて、中点とは逆相の最大変位分布点に接続する(前第4図)。但し、逆相の最大変位分布間では図中の○印で示すように同電位点(同相)となる。そして、同相のまま共通接続されるので、第2出力線3Bの出力端foutには4倍波4f0が出力される。
【0047】
このようなことから、この実施例では基本波f0、2倍波2f0及び3倍波3f0は抑圧されて、4倍波4f0のみが出力される。なお、5倍波以上の奇数倍調波も共通接続されて0電位になるので出力されない。さらに、6倍波以上の偶数倍調波は4倍波4f0に対して相対的にレベルが小さくなって、4倍波4f0の出力を阻害しない。この場合、影響を及ぼす場合には簡易なフィルタで6倍波以上を抑制することもできる。
【0048】
また、ここでは、第1出力線3Aはそれぞれ基本波f0に対してλ/4とするので、共通接続点は逆相電圧が加算されて0電位点となる。したがって、基本波f0及びその奇数次倍調波においては、第1出力線3Aの接続点から見て出力側は無限大となって高インピーダンスとなる。
【0049】
これにより、レベルが最も大きい基本波f0はさらに抑圧されて相対的にそのレベルを小さくできる。そして、負性抵抗素子の出力波形を歪ませるので、基本波f0に対する4倍波4f0のレベルを相対的に高める。したがって、4倍波4f0を取り出しやすくする。なお、MSL共振器1Aは直線状としたが、例えば蛇行した曲線状であってもよい。
【実施例2】
【0050】
第2実施例は第1実施例と同様に直線状としたMSL共振器1Cを用いた高周波発振器の例で、第5図は8倍波発振器の平面図である。なお、これ以降の各実施例では前実施例と同一部分の説明は省略又は簡略する。
【0051】
8倍波発振器は前述同様に発振周波数(基本波)f0に対して長さがλ/2のMSL共振器1A、両端側に接続して発振波形を歪ませた負性抵抗能動素子(FET2A)及び第1、第2出力線3(ab)からなる。この場合でも、前述同様にMSL共振器1Aには、中点を0電位点として逆対称となる基本波f0及び奇数次倍調波の定在波と、中点に最大変位分布点を有して対称となる偶数次高周波の定在波を生じる「第6図(abc)、第7図(abc)、第8図(ab)参照」。
【0052】
ここでは、第1出力線3Aは、MSL共振器1Aの中点を基準点として8倍波における定在波の対称となる最大変位分布点であって、中点での最大変位分布点とは逆相の最大変位分布点に接続する「前第8図(b)参照」。
【0053】
具体的には、MSL共振器1Aの中点及び両端側から基本波f0に対してλ/16となる計4点に接続して共通接続する。第1出力線3Aは第1実施例同様に基本波f0に対してλ/4の長さとする。そして、第1接続線の接続点に第2出力線3Bが接続し、出力foutを得る。
【0054】
このような構成であれば、第1出力線3Aの接続される中点を基準とした両側各2点の対称点は、基本波f0、3倍波3f0、5倍波5f0、7倍波7f0等における奇数次倍調波(2n−1)f0の定在波に対して、図中の×及び□印で示すようにそれぞれ逆電位点になる「前第6図(ac)、第7図(b)及び第8図(a)」。そして、第2出力線3Bに共通接続されるので、互いに逆相の電位は結果的に0電位になる。したがって、基本波f0及び奇数次倍調波は出力端foutには出力されない。
【0055】
また、偶数次倍調波のうち、2倍波2f0、6倍波6f0の定在波に対して、第1出力線3Aの接続する各2点の対称点(接続点)は、中点を基準とした×及び□で示す各2点間で逆電位となる「第6図(b)、第7図(c)」。この場合、中点を基準とした各側での×□間でも逆電位となる。したがって、共通接続されて第2出力線3Bには出力しない。
【0056】
また、偶数次倍調波のうち、4倍波4f0の定在波に対して、第1出力線3Aの接続する対称点は、それぞれ0電位点となる「第7図(a)」。したがって、第1出力線3Aには電位は発生せず、第2出力線3Bの出力端foutにも出力しない。
【0057】
一方、偶数次倍調波のうち、8倍波8f0の定在波に対して、第1出力線3Aの接続する対称点は、中点から基本波f0に対してλ/16即ち8倍波8f0に対してはλ/2分離れて、中点とは逆相でそれぞれが同相の最大変位分布点に接続する「第8図(b)」。そして、第2出力線3Bによって同相のまま合成されるので、出力端foutには8倍波8f0が出力される。
【0058】
このようなことから、この実施例では基本波f0乃至7倍波4f0は抑圧されて、8倍波8f0のみが出力される。なお、9倍波以上の倍調波のうち奇数倍調波は前述同様に共通接続されて結果的に0電位になって出力されない。また、10倍波以上の偶数次倍調波10f0も8倍波8f0に対して相対的にレベルが小さくなって、8倍波8f0の出力を阻害しない。ここでも、10倍波10f0以上の偶数次倍調波は簡易なフィルタで除去できる。
【0059】
そして、各第1出力線3Aはそれぞれ基本波f0に対してλ/4とすると、基本波f0及びその奇数次倍調波にとって接続点から見て高インピーダンスとする。したがって、最も高レベルの基本波f0はさらに抑圧されて相対的にそのレベルを小さくできる。そして、負性抵抗素子の出力波形を歪ませるので、基本波f0に対する8倍波4f0のレベルを相対的に高めて、8倍波8f0を取り出しやすくする。
【実施例3】
【0060】
第3実施例は伝送線路型共振器を環状とした場合の高周波発振器の例で、第9図は伝送線路型共振器をMSL共振器1Cとした4倍波発振器の平面図である。
【0061】
ここでの、4倍波発振器のMSL共振器1Bは円環状とし、全長を基本波f0に対して1波長分であるλとする。負性抵抗能動素子(FET2A)は、MSL共振器1Bの半周であるλ/2分離れた両端側(図の左右端)に容量5を経て接続する。また、左右端の中間点である上下端にはλ/4として電気的短絡点(0電位点)とするMSL6bを接続する。
【0062】
そして、左右端と上下端との各中間点を結ぶ線上に第1出力線3Aを接続し、中心点で共通接続する。中心点にはビアホール7が設けられ図示しない第2出力線3Bが接続する。なお、左右端と上下端との各中間点は各端から基本波f0に対してλ/8分離れた点になる。
【0063】
このような構成であれば、MSL共振器1Bの左右端は基本波f0に対してλ/2分離れ、電気的に逆相点になる。そして、両端側にFET2Aを接続するので、直線状のMSL共振器1Aとした場合(前第1及び第2実施例)と同様に、基本波f0で互いに逆相関係とした2つの発振系を得る。
【0064】
この場合、MSL共振器1Bの両端側を互いに逆相の最大変位分布点として、上下端を0電位点とした基本波f0での周回する定在波となる。そして、MSL共振器1Bの左端又は右端から上半周又は下半周での基本波f0での各定在波を見ると、前第1及び第2実施例のλ/2とした直線状のMSL共振器1Aに生ずる定在波と実質的に同じになる「前第3図(a)参照」。
【0065】
これらの上下半周での基本波f0での定在波は、MSL共振器1Bの左端又は右端から見て互いに同相(同電位点)であり、前第3図(a)のMSL共振器1Aの長さを2倍として定在波を連続的に延長した変位分布図になる。これらは、基本波f0に対する奇数次及び偶数次倍調波の定在波も同様となる。
【0066】
そして、ここでは、MSL共振器1Bの左右端と上下端との各中間点に第1出力線3Aを接続して共通接続する。すなわち、各出力線3Aは上下半周の各中点である上下端を基準として、基本波f0に対してλ/8分離れた対称点に接続する。
【0067】
したがって、第1出力線3Aの接続点(対称点)は、基本波f0及びその奇数次倍調波に対しては、前実施例と同様に、各上下端(中点)を基準(0電位点)とした逆電位点になる「前第3図(a)(c)参照」。したがって、互いに逆相の電位は共通接続されて結果的に0電位になるので、基本波f0及び奇数次倍調波は出力されない。
【0068】
また、基本波f0に対する2倍波2f0対しては、各上下端(中点)を基準として0電位点になるので「前第3図(b)参照」、共通接続しても出力されない。一方、4倍波4f0に対しては、中点から基本波f0に対してλ/8即ち4倍波4f0に対してはλ/2分離れて、中点とは逆相の最大変位分布点となるので、共通接続されてそのまま出力される。
【0069】
この例でも、前述同様にして、5倍波以上の奇数倍調波は出力されず、6倍波以上の偶数倍調波は相対的にレベルが小さくあるいは簡易なフィルタで抑制できるので、4倍波4f0のみの出力を得ることができる。
【0070】
なお、この例では第1出力線3Aは、MSL共振器1Bの左右端と上下端の各中間点(4点)に接続して中心にて共通接続したが、例えば第10図に示したようにしてもよい。
【0071】
すなわち、MSL共振器1Bの例えば下半周における左右端と下端との中間点のみに第1出力線3Aを接続して外方に延出し、これらを共通接続して第2出力線3Bを設けてもよい。この場合でも、4倍波4f0以外の基本波及び倍調波は抑圧されるので、4倍波4f0のみの出力を得られる。また、第2出力線3Bを上半周からも導出して上下半周から第1出力線3Bを導出し、対称性を維持してもよい(不図示)。この場合2出力とすることができる。
【0072】
さらに、4倍波発振器を例として説明したが、MSL共振器1Aを直線状とした場合と同様に、8倍波発振器及びそれ以上の2n倍(但し、nは2以上の整数)とした倍調波発振器にも適用できる。
【0073】
例えば8倍波発振器の場合は、第11図(ab)に示したように、上下端からλ/16分離れて互いにλ/8間隔として8等分する第1出力線3AをMSL共振器1Bに接続して中心にて共通接続し、ビアホール7によって裏面から第2出力線3Bを導出する「同図(a)」。又は、これと同様の第1出力線3Aを下半周(あるいは上下半周、不図示)に接続して外方に延出し、これらを共通接続して第2出力線3Bを設ける「同図(b)」。
【0074】
このようにすれば、第1出力線3Aは上下端「同図(a)」又は下端「同図(b)」から対称点に接続される。そして、各対称点は基本波f0及び奇数次倍長波の定在波に対しては逆電位点になる。また、基本波f0に対する偶数次倍調波のうち、2倍、6倍波は逆電位点、4倍波波0電位点になり、10倍波以上は相対的レベルが小さくさらには簡易フィルタでの除去も容易になる。これに対して、8倍波8f0に対しては中点とは逆相の最大変位分布点となるので、共通接続されてそのまま出力される。したがって、8倍波のみの出力を得られる。
【実施例4】
【0075】
第4実施例は環状とした伝送線路型共振器をSL共振器とした場合の高周波発振器の例で、第12図は4倍波発振器を例とした平面図である。
【0076】
ここでの高周波発振器(4倍波発振器)は、誘電体基板4の他主面に円環状としたSL共振器1Cを有する。SL共振器1Cは内外を導体として開口線路からなり、両端(左右端)には中心方向への導出路8を有する。SL共振器1Cの全長は、先の円環状としたMSL共振器1Bと同様に基本波f0の1波長分λとする。
【0077】
誘電体基板4の一主面には、両端で導出路8と重畳した電磁結合用のMSL(結合用MSL)6dがSL共振器1Cを横断して形成される。結合用MSL6dと導出路8の重畳部分の長さによって結合度を可変できる。各結合用MSLには負性抵抗能動素子としてのFET2Aが接続する。そして、左右端と上下端とから基本波f0に対してλ/8分離れた各中間点を結ぶ線上にはMSLとした第1出力線3Aを接続する「第12図(a)」。第1出力線3AはSL共振器1Cと交差し、電磁結合する。そして、ビアホール7とした中心点で共通接続されて第2出力線3B(不図示)が接続する。
【0078】
このような構成であれば、結合用MSL6dによってSL共振器1Cの両端側でFET2Aとが電気的に結合する。したがって、円環状としたMSL共振器1B場合と同様に基本波f0で互いに逆相関係とした2つの発振系を得る。この場合でも、SL共振器1Cの両端側を互いに逆相の最大変位分布点として、上下端を0電位点とした基本波f0での周回する定在波となる。
【0079】
そして、SL共振器1Cの左右端と上下端とからλ/8分離れて、上下端を基準として対称点である中間点に第1出力線3Aを接続して共通接続する。したがって、第1出力線3Aの接続点(対称点)は基本波f0及びその奇数次倍調波に対して各上下端(中点)を基準(0電位点)とした逆電位点になり、これらは共通接続されて0電位となり出力されない。
【0080】
また、基本波f0に対する2倍波2f0対しては各上下端(中点)を基準として0電位点になり、6倍波以上の偶数倍調波は相対的にレベルが小さくあるいは簡易なフィルタで抑制できる。一方、4倍波4f0に対しては、中点から基本波f0に対してλ/8即ち4倍波4f0に対してはλ/2分離れて、中点とは逆相の最大変位分布点となるので、共通接続されてそのまま出力される。
【0081】
なお、第4実施例においても、SL共振器1Cの例えば下半周における左右端と下端との中間点のみに第1出力線3Aを接続して外方に延出し、これらを共通接続して第2出力線3Bを設けてもよい「第13図(b)」。また、4倍波発振器に限らず、8倍波発振器及びそれ以上の2n倍(但し、nは2以上の整数)とした倍調波発振器にも適用できる。
【0082】
第13図(ab)は8倍波発振器の例である。これらの場合でも、上下端からλ/16分離れて互いにλ/8間隔として8等分する第1出力線3AをSL共振器1Cに接続して中心にて共通接続する「同図(a)」。又は、第1出力線3Aを下半周(あるいは上下半周、不図示)に接続して外方に延出し、これらを共通接続して「同図(b)」第2出力線3Bを設けてもよい。
【0083】
(他の事項)上記各実施例では、4倍及び8倍波発振器の原理を説明したが、MSL共振器1Cは共振度合いを示すQが低いので、外部信号源(同期信号源)からの注入同期によって周波数安定度を高めてもよい。例えばMSL共振器1Aを用いた場合は、第14図及び第15図(ab)に示したようにすればよい。
【0084】
すなわち、第14図ではMSL共振器1Aの中点に容量5を経て注入同期用の例えばMSL6cを接続する。MSL6cには水晶発振器等の外部信号源からの周波数安定度の高いf0/n(但し、nは1以上)同期信号が印加される。これにより、基本波f0はn/f0毎に位相が揃えられるので、基本波f0さらには出力とする4倍波4f0の周波数安定度度も高まる。
【0085】
また、第15図(ab)ではMSL共振器1Aの両端に接続したFET2Aに例えば基本波f0においてλ/2としたMSL6dからなる遅延線を接続する。そして、遅延線としてのMSL6dに前述同様に外部信号源からのf0/nとした同期信号を印加する。
【0086】
このようにすれば、MSL6d(遅延線)は両端側で互いに逆相となる同期信号が両端のFET2A印加される。したがって、2つの発振系はそれぞれが注入同期されるので、結果として基本波f0はn/f0毎に位相が揃えられる。したがって、出力としての4倍波4f0はさらに周波数安定度が高まる。また、FET2Aに注入されるMSL共振器1Aの独立性を高められる(負荷Qを劣化させない)。
【0087】
なお、各注入同期は4倍波発振器に適用したが、8倍以上の倍調波2nf0の高周波発振器にも適用できることは勿論である。また、第15図(a)はソース接地、同図(b)はゲート接地の例であり、その単方向性(ユニラテラル性)によって注入同期系を簡易な構成にできる。さらに、SL共振器1Cを用いた場合でも同様な構成で注入同期によって周波数安定度を高められる。
【0088】
また、上記各実施例では、MSL共振器1Aには容量5を接続して負性抵抗能動素子及び第1出力線3A(MSL)を接続して疎結合としたが、これらを除去して直接的に接続してもよい。但し、疎結合とした方が前述したようにMSL共振器1Aの負荷Qを劣化させない点で有利ある。また、負性抵抗能動素子はFET2Aとしたが、例えばバイポーラ型でもよく要は高周波用の負性抵抗回路であればよい。
【0089】
また、MSL型共振器1Aの中点には0電位点とするλ/4のMSL6bを接続して強制的に0電位点としたが、これがなかったとしてもMSL共振器1Aの両端は基本的に開放端なので、基本的に中点が幾何学的な0電位点となるので、同様に機能する。また、基本波f0に対して4倍及び8倍の倍調波4f0及び8f0を説明したが、基本的に倍調波2nf0(但し、nは2以上の整数)に適用できる。
【0090】
また、MSL共振器1Aは基本波f0のλ/2として説明したが、nλ/2(nは1以上の奇数)としてもよく要は逆相となる最大振幅変位点に負性抵抗能動素子を接続して互いに逆相発振とすればよい。また、環状とした伝送線路型共振器1は円としたが、例えば楕円や角状であってもよく基本波f0に対して1波長分の長さであれば基本的に構成できる。
【0091】
また、環状とした伝送線路型共振器の場合、高出力の4倍波発振器を実現する目的でλ/4のMSL6Bをしないで、その位置に負性抵抗素子を接続することができ、合計4個の負性抵抗素子としてもよい(不図示)。また、高出力の8倍波発振器を実現する目的で、各出力線3B間の対称的な配置で4個、8個の負性抵抗素子としてもよい。そして、これらの高周波発振器はミリ波等の高周波帯においてはMMIC化も容易であり、小型化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施例を説明する4倍波発振器の平面図である。
【図2】本発明の第1実施例のFETによる出力波形の周波数スペクトラム図である。
【図3】本発明の第1実施例の作用を説明する定在波の変位分布図である。
【図4】本発明の第1実施例の作用を説明する定在波の変位分布図である。
【図5】本発明の第2実施例を説明する8倍波発振器の誘電体基板を除く平面図である。
【図6】本発明の第2実施例の作用を説明する定在波の変位分布図である。
【図7】本発明の第2実施例の作用を説明する定在波の変位分布図である。
【図8】本発明の第2実施例の作用を説明する定在波の変位分布図である。
【図9】本発明の第3実施例を説明する4倍波発振器の平面図である。
【図10】本発明の第3実施例の他の例を説明する4倍波発振器の平面図である。
【図11】本発明の第3実施例のさらに他の例を説明する8倍波発振器の平面図である。
【図12】本発明の第4実施例を説明する4倍波発振器の平面図である。
【図13】本発明の第4実施例を他の例を説明する8倍波発振器の平面図である。
【図14】本発明の他の実施例を説明する注入同期を適用した4倍波発振器の平面図である。
【図15】本発明の他の実施例を説明する注入同期を適用した4倍波発振器の概略的な平面図である。
【図16】従来例を説明する2倍波発振器の平面図である。
【図17】従来例説明する定在波の変位分布図である。
【図18】従来例を説明する4倍波発振器の平面図である。
【図19】従来例を説明する定在波の変位分布図である。
【符号の説明】
【0093】
1 伝送線路型共振器、1A MSL型共振器、2 負性抵抗能動素子、2A FET、3 出力線、4 誘電体基板、5 容量、6 MSL、7 ビアホール、8 導出路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送線路型共振器の中点を0電位点として互いに逆相関係にある両側の2つの共振波動点に発振用能動素子を接続して、前記伝送型共振器の長さに依存した発振周波数(基本波)f0で2つの発振系を互いに逆相発振させ、
前記伝送線路型共振器に生ずる定在波のうち、前記基本波f0の奇数倍となる倍調波の定在波は少なくとも前記中点に0電位点を有して前記中点を基準として逆対称の変位分布とし、
前記基本波の偶数倍となる倍調波の定在波は少なくとも前記中点に最大変位分点を有して前記中点を基準とし対称の変位分布とし、前記基本波の偶数倍となる倍調波の定在波における最大変位分布点に出力線を接続して、前記基本波の偶数倍となる倍調波の出力を得た高周波出力を得た伝送線路型共振器を用いた高周波発振器であって、
前記定在波は前記基本波の偶数倍となる倍調波のうちの前記基本波f0の2n(但し、nは2以上の整数)倍となる定在波を対象とし、前記出力線は前記伝送線路型共振器の中点を基準として両側の対称点に接続し、
前記対称点は前記倍調波2nf0における前記中点での最大変位分布点とは逆相の最大変位分布点であるとともに、前記出力線は共通接続されたことを特徴とする高周波発振器。
【請求項2】
請求項1において、前記出力線は基本波f0の波長λに対してλ/4の長さである高周波発振器。
【請求項3】
請求項1において、前記伝送線路型共振器は直線状である高周波発振器。
【請求項4】
請求項3において、前記伝送線路型共振器はマイクロストリップライン共振器である高周波発振器。
【請求項5】
請求項4において、前記マイクロストリップライン共振器の長さを基本波f0の波長λに対してλ/2の長さとした高周波発振器。
【請求項6】
請求項1において、前記伝送線路型共振器は環状である高周波発振器。
【請求項7】
請求項6において、前記伝送線路型共振器の長さは基本波f0の波長λである高周波発振器。
【請求項8】
請求項6において、前記伝送線路型共振器はマイクロストリップライン共振器又はスロットライン共振器である高周波発振器。
【請求項9】
請求項1において前記nを2又は3として基本波f0に対して4倍波又は8倍波の出力を得た高周波発振器。
【請求項10】
請求項1において、前記発振用能動素子は出力波形を歪ませて倍調波のレベルを高めた高周波発振器。
【請求項11】
請求項1において、前記伝送線路型共振器の両端側に設けた前記発振用能動素子を有する前記発振系には外部信号源からの同期信号を注入した高周波発振器。
【請求項12】
請求項11において、前記同期信号は前記伝送線路型共振器の中点に注入された高周波発振器。
【請求項13】
請求項11において、前記発振用能動素子間に基本波f0で逆相となる遅延線を設け、いずれか一方の前記発振用能動素子と前記遅延線との間に前記同期信号を注入した高周波発振器。
【請求項1】
伝送線路型共振器の中点を0電位点として互いに逆相関係にある両側の2つの共振波動点に発振用能動素子を接続して、前記伝送型共振器の長さに依存した発振周波数(基本波)f0で2つの発振系を互いに逆相発振させ、
前記伝送線路型共振器に生ずる定在波のうち、前記基本波f0の奇数倍となる倍調波の定在波は少なくとも前記中点に0電位点を有して前記中点を基準として逆対称の変位分布とし、
前記基本波の偶数倍となる倍調波の定在波は少なくとも前記中点に最大変位分点を有して前記中点を基準とし対称の変位分布とし、前記基本波の偶数倍となる倍調波の定在波における最大変位分布点に出力線を接続して、前記基本波の偶数倍となる倍調波の出力を得た高周波出力を得た伝送線路型共振器を用いた高周波発振器であって、
前記定在波は前記基本波の偶数倍となる倍調波のうちの前記基本波f0の2n(但し、nは2以上の整数)倍となる定在波を対象とし、前記出力線は前記伝送線路型共振器の中点を基準として両側の対称点に接続し、
前記対称点は前記倍調波2nf0における前記中点での最大変位分布点とは逆相の最大変位分布点であるとともに、前記出力線は共通接続されたことを特徴とする高周波発振器。
【請求項2】
請求項1において、前記出力線は基本波f0の波長λに対してλ/4の長さである高周波発振器。
【請求項3】
請求項1において、前記伝送線路型共振器は直線状である高周波発振器。
【請求項4】
請求項3において、前記伝送線路型共振器はマイクロストリップライン共振器である高周波発振器。
【請求項5】
請求項4において、前記マイクロストリップライン共振器の長さを基本波f0の波長λに対してλ/2の長さとした高周波発振器。
【請求項6】
請求項1において、前記伝送線路型共振器は環状である高周波発振器。
【請求項7】
請求項6において、前記伝送線路型共振器の長さは基本波f0の波長λである高周波発振器。
【請求項8】
請求項6において、前記伝送線路型共振器はマイクロストリップライン共振器又はスロットライン共振器である高周波発振器。
【請求項9】
請求項1において前記nを2又は3として基本波f0に対して4倍波又は8倍波の出力を得た高周波発振器。
【請求項10】
請求項1において、前記発振用能動素子は出力波形を歪ませて倍調波のレベルを高めた高周波発振器。
【請求項11】
請求項1において、前記伝送線路型共振器の両端側に設けた前記発振用能動素子を有する前記発振系には外部信号源からの同期信号を注入した高周波発振器。
【請求項12】
請求項11において、前記同期信号は前記伝送線路型共振器の中点に注入された高周波発振器。
【請求項13】
請求項11において、前記発振用能動素子間に基本波f0で逆相となる遅延線を設け、いずれか一方の前記発振用能動素子と前記遅延線との間に前記同期信号を注入した高周波発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2005−217752(P2005−217752A)
【公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−21405(P2004−21405)
【出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【出願人】(391012512)佐賀大学長 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【出願人】(391012512)佐賀大学長 (1)
【Fターム(参考)】
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