位相同期ループ回路および位相同期ループ回路の制御方法
【課題】チップサイズの増大を抑え、広帯域の発振周波数帯域を有することが可能なPLL回路等を提供すること。
【解決手段】VCO34は、制御電圧VTに応じた発振周波数fVCOを有する出力クロック信号CLKOを生成する。PLLブロック2は、制御電圧VTを生成する。ロック検出器24は、発振周波数fVCOが設定周波数fSにロックされているか否かを検出する。VT電圧検出部31は、バラクタVA1ないしVA3のうちの何れを選択するかを決定する。セレクタ部32は、出力クロック信号CLKOの粗調整段階においてはバラクタVA0を選択する。また、粗調整段階においてロック検出された旨をロック検出器24から受信することに応じて、微調整段階へ移行する。微調整段階においては、移行時点におけるVT電圧検出部31によって選択されていたバラクタの選択を維持する。
【解決手段】VCO34は、制御電圧VTに応じた発振周波数fVCOを有する出力クロック信号CLKOを生成する。PLLブロック2は、制御電圧VTを生成する。ロック検出器24は、発振周波数fVCOが設定周波数fSにロックされているか否かを検出する。VT電圧検出部31は、バラクタVA1ないしVA3のうちの何れを選択するかを決定する。セレクタ部32は、出力クロック信号CLKOの粗調整段階においてはバラクタVA0を選択する。また、粗調整段階においてロック検出された旨をロック検出器24から受信することに応じて、微調整段階へ移行する。微調整段階においては、移行時点におけるVT電圧検出部31によって選択されていたバラクタの選択を維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域の発振周波数帯域を有するPLL回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
VCO回路は、発振周波数帯域が広帯域であることが望まれる。一方、位相雑音および直線性の劣化を防ぐためには、発振周波数帯域を狭くすることが望ましい。そこで、従来では、複数のVCO回路や複数の可変容量素子を備え、設定発振周波数に対応するVCO回路や可変容量素子に切り替える技術が知られている。
【0003】
また、低位相雑音特性を実現するには、変換感度を低くすることが有効である。しかしながら変換感度を低くすると、製造ばらつきによる素子特性変動による発振周波数帯域変動度合いによってロックレンジはずれ動作不具合となる可能性がある。そこで、VCO回路を製造ばらつき検波結果より切り替える技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−10599号公報
【特許文献2】特開2003−110424号公報
【特許文献3】米国特許第7,268,630号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、VCO回路や可変容量素子などを切り替える場合には、切り替えのための複雑な制御が必要となる場合がある。すると、切り替え制御回路の回路規模が大きくなり、半導体装置のチップサイズが増大するおそれがあるため問題である。
【0006】
本発明は前記背景技術の課題の少なくとも1つを解消するためになされたものであり、広帯域の発振周波数帯域を有するPLL回路およびPLL回路の制御方法を提供することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の位相同期ループ回路は、第1の可変容量と、第1の可変容量の容量値の可変範囲よりも小さい可変範囲を有する複数の第2の可変容量とを備え、複数の第2の可変容量の可変範囲は第1の可変容量の可変範囲をカバーするように互いに異なる範囲に設定され、第1の可変容量と複数の第2の可変容量との何れを使用するかが選択可能とされ、入力される制御電圧に応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器を備える。また、入力される出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて制御電圧を生成する位相比較部を備える。また、位相比較結果に基づいて、出力信号の発振周波数が予め定められる設定発振周波数にロックされているか否かを検出するロック検出部を備える。また、入力される制御電圧に応じて、複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを決定する選択部を備える。また、ロック検出部の出力と選択部の出力とが入力され、出力信号の粗調整段階においては第1の可変容量を選択させ、粗調整段階において出力信号のロックが検出された場合に出力信号の微調整段階へ移行し、微調整段階においては微調整段階に移行する場合において選択部によって選択されていた第2の可変容量を選択させるセレクタ部を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本開示の位相同期ループ回路は、第1の可変容量と、前記第1の可変容量の可変範囲に包含され動作使用上必要とされる容量可変幅を有する複数の第2の可変容量とを備え、入力される制御電圧と前記第1の可変容量を有する出力信号を生成する電圧制御型発信器と、前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成する位相比較部と、初期化時の前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうち何れか1つを選択する選択部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示のPLL回路によれば、チップサイズの増大を抑え、広帯域の発振周波数帯域を有することが可能なPLL回路及び製造ばらつきがあっても安定した低位層雑音特性を確保できるPLL回路を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】PLL回路1における一実施例の回路図である。
【図2】VCOブロック3における一実施例の回路図である。
【図3】セレクタSL1における一実施例の回路図である。
【図4】バラクタにおける一実施例の特性図(その1)である。
【図5】バラクタにおける一実施例の特性図(その2)である。
【図6】デコーダ部41における一実施例のデコード例である。
【図7】PLL回路1における一実施例のフロー図(その1)である。
【図8】PLL回路1における一実施例のフロー図(その2)である。
【図9】PLL回路1における一実施例のタイミングチャートである。
【図10】フリップフロップFF1a、ラッチFF1bにおける一実施例の真理値表である。
【図11】PLL回路1Bにおける一実施例の回路図である。
【図12】VCOブロック3Bにおける一実施例の回路図である。
【図13】セレクタSL1Bにおける一実施例の回路図である。
【図14】セレクタSL0Bにおける一実施例の回路図である。
【図15】フリップフロップFF1aBにおける一実施例の真理値表である。
【図16】ラッチFF1bBにおける一実施例の真理値表である。
【図17】バラクタにおける一実施例の特性図(その1)である。
【図18】バラクタにおける一実施例の特性図(その2)である。
【図19】PLL回路1Bにおける一実施例のフロー図である。
【図20】PLL回路1Bにおける一実施例のタイミングチャートである。
【図21】リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bにおける一実施例の一部分である。
【図22】リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bにおける一実施例の一部分の回路図(その1)である。
【図23】リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bにおける一実施例の一部分の回路図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1実施形態のPLL回路1に係る実施形態を図1ないし図9を用いて説明する。図1に、第1実施形態に係るPLL回路1の回路図を示す。PLL回路1は、PLLブロック2およびVCOブロック3を備える。PLLブロック2は、リファレンスカウンタ21、メインカウンタ22、位相比較器23、ロック検出器24、チャージポンプ25、ローパスフィルタ26を備える。PLL回路1には、クロック信号CKS、データ信号DATA、リセット信号LEが入力される。PLL回路1は3wire−PLLであり、クロック信号CKS、データ信号DATA、リセット信号LEの3つの信号により設定周波数fSの設定などの各種設定が行われる。リファレンスカウンタ21には、入力クロック信号CLKRが入力され、分周入力クロック信号CLKNが出力される。メインカウンタ22には、出力クロック信号CLKOが入力され、分周内部クロック信号CLKMが出力される。位相比較器23には分周入力クロック信号CLKNおよび分周内部クロック信号CLKMが入力される。位相比較器23から出力される位相差信号UPおよびDNはチャージポンプ25に入力され、チャージポンプ25からは位相差電流IPが出力される。位相差電流IPはローパスフィルタ26に入力され、ローパスフィルタ26からは制御電圧VTが出力され、VCOブロック3に入力される。また、位相比較器23から出力される一致信号SDは、ロック検出器24に入力される。ロック検出器24からはロック検出信号LDが出力され、VCOブロック3に入力される。
【0012】
VCOブロック3は、VT電圧検出部31、セレクタ部32、スイッチ部33、VCO(電圧制御型発振器)34を備える。VT電圧検出部31には制御電圧VTが入力され、選択信号V1ないしV3が出力される。セレクタ部32には、選択信号V1ないしV3、ロック検出信号LD、リセット信号LEが入力され、バラクタ切替信号VC0ないしVC3が出力される。スイッチ部33には、バラクタ切替信号VC0ないしVC3、制御電圧VTが入力される。スイッチ部33から出力された制御電圧VTはVCO34に入力され、VCO34からは出力クロック信号CLKOが出力される。
【0013】
図2に、VCOブロック3の詳細な回路図を示す。VT電圧検出部31は、インバータINV1およびINV2と、デコーダ部41を備える。インバータINV1には制御電圧VTが入力され、信号OUT1が出力される。インバータINV2には制御電圧VTが入力され、信号OUT2が出力される。インバータINV1の論理閾値電圧は、後述する閾電圧Vth1に合わせた値(1(V))に調整される。インバータINV1の信号OUT1は、制御電圧VTが1(V)よりも小さい時にはハイレベル、制御電圧VTが1(V)よりも大きい時にはローレベルとなる。また、インバータINV2の論理閾値電圧は、後述する閾電圧Vth2に合わせた値(2(V))に調整される。インバータINV2の信号OUT2は、制御電圧VTが2(V)よりも小さい時にはハイレベル、制御電圧VTが2(V)よりも大きい時にはローレベルとなる。
【0014】
デコーダ部41は、インバータINV3ないしINV5、ナンドゲートND1ないしND3を備える。ナンドゲートND1には、信号OUT1がインバータINV4を介して入力されると共に、信号OUT2がインバータINV5を介して入力され、選択信号V1が出力される。ナンドゲートND2には、信号OUT1がインバータINV3を介して入力されると共に、信号OUT2が入力され、選択信号V2が出力される。ナンドゲートND3には、信号OUT1およびOUT2が入力され、選択信号V3が出力される。デコーダ部41によって、信号OUT1およびOUT2がデコードされ、選択信号V1ないしV3が生成される。
【0015】
図6に、デコーダ部41によるデコード例を示す。制御電圧VTが0(V)から1(V)の範囲では、選択信号V1およびV2がハイレベル、選択信号V3がローレベルとされる。また、制御電圧VTが1(V)から2(V)の範囲では、選択信号V1およびV3がハイレベル、選択信号V2がローレベルとされる。また、制御電圧VTが2(V)から3(V)の範囲では、選択信号V2およびV3がハイレベル、選択信号V1がローレベルとされる。
【0016】
セレクタ部32は、セレクタSL0ないしSL3を備える。セレクタSL0ないしSL3の各々には、ロック検出信号LDおよびリセット信号LEが入力される。また、セレクタSL0には接地電圧VSSが入力され、セレクタSL1には選択信号V1が入力され、セレクタSL2には選択信号V2が入力され、セレクタSL3には選択信号V3が入力される。セレクタSL0から出力されるバラクタ切替信号VC0Bは、インバータINV6で反転され、バラクタ切替信号VC0として出力される。インバータINV6から出力されるバラクタ切替信号VC0は、スイッチSW0の制御端子に入力される。また、セレクタSL1ないしSL3の各々からは、バラクタ切替信号VC1ないしVC3が出力され、スイッチSW1ないしSW3の各々の制御端子に入力される。
【0017】
スイッチ部33は、スイッチSW0ないしSW3を備える。スイッチSW0ないしSW3の入力端子の各々には、制御電圧VTが共通して入力される。また、スイッチSW0ないしSW3の出力端子の各々は、VCO34のバラクタVA0ないしVA3の入力端子の各々に接続される。スイッチSW0ないしSW3は、バラクタ切替信号VC0ないしVC3がローレベルとされる期間においては導通状態とされ、ハイレベルとされる期間においては非導通状態とされるスイッチである。
【0018】
VCO34は、インダクタL1およびL2、バラクタVA0ないしVA3、トランジスタTr1およびTr2、定電流源CG1を備える。インダクタL1およびL2の一端は、電源電圧VCCに共通に接続される。インダクタL1およびL2の他端には、バラクタVA0ないしVA3がそれぞれ接続されている。インダクタL1およびL2と、バラクタVA0ないしVA3によって、共振回路35が構成される。
【0019】
トランジスタTr1およびTr2のコレクタ端子は、共振回路35に接続される。トランジスタTr1のベース端子はトランジスタTr2のコレクタ端子に接続され、トランジスタTr2のベース端子はトランジスタTr1のコレクタ端子に接続される。トランジスタTr1およびTr2のエミッタ端子は、定電流源CG1を介して接地電圧VSSに接続される。トランジスタTr1およびTr2によって、共振回路によって生成された発振信号が増幅される。トランジスタTr2のコレクタ端子からは、増幅された発振信号が、出力クロック信号CLKOとして出力される。
【0020】
図3を用いて、セレクタ部32に備えられるセレクタSL1の回路構成について説明する。セレクタSL1は、リセット機能付きフリップフロップ(以下フリップフロップ)FF1a、リセット機能付きラッチ(以下ラッチ)FF1b、インバータINV11およびINV12、ナンドゲートND11、遅延部DPを備える。インバータINV11にはロック検出信号LDが入力され、反転ロック検出信号LDXが出力される。フリップフロップFF1aのリセット端子Lにはリセット信号LEが入力され、入力端子CKにはロック検出信号LDが入力され、反転入力端子XCKには反転ロック検出信号LDXが入力される。フリップフロップFF1aの出力端子Qからは信号LOが出力され、反転出力端子QXからは信号LOの反転信号である反転信号LOXが出力される。また、フリップフロップFF1aの真理値表を図10(A)に示す。
【0021】
遅延部DPは、偶数段のインバータを備えており、入力信号に遅延時間を付与して出力する回路である。遅延部DPにはロック検出信号LDが入力され、遅延時間が付与された遅延ロック検出信号LDDが出力される。遅延部DPは、ヒゲ状のスパイクノイズの発生を防止するための回路である。ナンドゲートND11には、遅延ロック検出信号LDDおよび信号LOXが入力され、信号OUTが出力される。信号OUTは、インバータINV12で反転され、反転信号OUTXとして出力される。
【0022】
ラッチFF1bのリセット端子Lにはリセット信号LEが入力され、入力端子Dには選択信号V1が入力され、クロック端子Gには反転信号OUTXが入力される。ラッチFF1bの出力端子Qからは、バラクタ切替信号VC1が出力される。ラッチFF1bは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて選択信号V1をラッチし、バラクタ切替信号VC1として出力する動作を行う。また、ラッチFF1bの真理値表を図10(B)に示す。なお、セレクタSL2およびSL3の構成も、セレクタSL1の構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0023】
また、セレクタSL0の回路構成について説明する。セレクタSL0は、図3のセレクタSL1におけるラッチFF1bに代えて、リセット機能付きラッチ(以下ラッチ)FF0bを備える。ラッチFF0bのリセット端子Lにはリセット信号LEが入力され、入力端子Dには接地電圧VSSが入力され、クロック端子Gには反転信号OUTXが入力される。ラッチFF0bの出力端子Qからは、バラクタ切替信号VC0Bが出力される。ラッチFF0bは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて接地電圧VSSをラッチし、ローレベルのバラクタ切替信号VC0Bを出力する動作を行う。なお、セレクタSL0のその他の構成は、セレクタSL1の構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0024】
図4を用いて、バラクタVA0ないしVA3について説明する。バラクタVA0ないしVA3は、制御電圧VTの変化に応じて容量値が変化する可変容量素子である。バラクタVA0は粗調整用バラクタであり、バラクタVA1ないしVA3は微調整用バラクタである。図4(A)に、バラクタVA0における、制御電圧VTと容量値との関係を示す。バラクタVA0は、容量可変範囲CV0を有する。バラクタVA0の容量可変範囲CV0は、制御電圧VTの電圧範囲(0〜3(V))と1対1に対応する。バラクタVA0の容量可変範囲CV0は、複数の分割容量可変範囲CV0aないしCV0cに分割される。ここで、分割容量可変範囲CV0cとCV0bとの境界を定める制御電圧VTの値を、閾電圧Vth1と定義する。また、分割容量可変範囲CV0aとCV0bとの境界を定める制御電圧VTの値を、閾電圧Vth2と定義する。第1実施形態の図4の例では、閾電圧Vth1=1(V)、閾電圧Vth2=2(V)とされる場合を説明する。
【0025】
また、図4(B)に、バラクタVA1ないしVA3における、制御電圧VTと容量値との関係を示す。バラクタVA1ないしVA3の各々は、容量可変範囲CV1ないしCV3を有する。容量可変範囲CV1ないしCV3の可変範囲は、バラクタVA0の容量値の容量可変範囲CV0よりも小さい範囲とされる。また、容量可変範囲CV1ないしCV3の範囲は、バラクタVA0の容量可変範囲CV0をカバーするように、互いに異なる範囲に設定される。そして、バラクタVA0の分割容量可変範囲CV0aないしCV0cの各々に対応するように、バラクタVA1ないしVA3の容量可変範囲CV1ないしCV3が設定される。
【0026】
図5を用いて、バラクタVA0ないしVA3における、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を説明する。図5(A)に、バラクタVA0における、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を示す。バラクタVA0は、周波数可変範囲fV0を有する。周波数可変範囲fV0は、複数の分割周波数可変範囲fV0aないしfV0cに分割される。また図5(B)に、バラクタVA1ないしVA3における、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を示す。バラクタVA1ないしVA3の各々は、周波数可変範囲fV1ないしfV3を有する。そして、バラクタVA0の分割周波数可変範囲fV0aないしfV0cの各々に対応するように、バラクタVA1ないしVA3の周波数可変範囲fV1ないしfV3が設定される。
【0027】
VCO34の動作を説明する。共振回路35の発振周波数fVCOは、インダクタL1およびL2のインダクタンスLと、バラクタVA0ないしVA3の何れかが有する容量Cとにより、次式で与えられる。
fVCO=1/(2π×(L×C)1/2)・・・(1)式
そして制御電圧VTにより、バラクタVA0ないしVA3の容量を変化させることができ、出力クロック信号CLKOの発振周波数fVCOを制御することができる。
【0028】
本発明に係るPLL回路1の動作を、図7および図8のフローと、図9のタイミングチャートを用いて説明する。
【0029】
S1において、PLL回路1の回路動作が開始される。S3において、設定周波数fSの設定が行われる。設定周波数fSの値は、ユーザ等によって、任意の値に設定可能とされる。設定周波数fSの設定が完了することに応じて、ハイレベルのリセット信号LEがPLL回路1に入力される(図9、時刻t1)。
【0030】
S5において、セレクタ部32のセレクタSL1ないしSL3は、リセット信号LEの立ち上がりエッジの入力によって、ハイレベルへリセットされる。よって、バラクタ切替信号VC1ないしVC3はハイレベルとされ(矢印Y1)、スイッチSW1ないしSW3は非導通状態とされる。また、セレクタSL0から出力されるバラクタ切替信号VC0Bがハイレベルとされるため、インバータINV6を介して出力されるバラクタ切替信号VC0がローレベルとされ(矢印Y1)、スイッチSW0は導通状態とされる。よって、リセット信号LEの立ち上がりエッジに応じて、バラクタVA1ないしVA3の何れかを選択する設定から、バラクタVA0を選択する設定に変更が行われる。そして、出力クロック信号CLKOの粗調整段階(S5〜S13)とされる。
【0031】
S7において、PLLチューニングが行われる。PLLチューニングの動作について説明する。リファレンスカウンタ21は、入力クロック信号CLKRをN分周して、分周入力クロック信号CLKNを出力する。またメインカウンタ22は、出力クロック信号CLKOをM分周して、分周内部クロック信号CLKMを出力する。位相比較器23は、分周入力クロック信号CLKN及び分周内部クロック信号CLKMの位相比較を行い、位相比較結果に応じたパルス幅の位相差信号UP、DNを出力する。
【0032】
チャージポンプ25は、位相差信号UP、DNに応じ、ローパスフィルタ26に対して正または負の位相差電流IPを供給する。すなわち、位相差信号UPが入力される場合には、正電流を供給し、位相差信号DNが入力される場合には、負電流を供給する。ローパスフィルタ26は、チャージポンプ25が出力する位相差電流IPを積分して制御電圧VTを出力する。
【0033】
VCO34は、ローパスフィルタ26から出力される制御電圧VTに応じた周波数の出力クロック信号CLKOを生成する。そして、分周入力クロック信号CLKN及び分周内部クロック信号CLKMの位相差が一定となるようにフィードバック制御される。これにより、出力クロック信号CLKOの発振周波数fVCOが設定周波数fSに一致するように、PLLチューニングが行われる。
【0034】
S9において、バラクタVA0を用いた粗調整段階において、発振周波数fVCOが設定周波数fSにロックする(図9,時刻t2)。この時の制御電圧VTの値を、ロック制御電圧VTL1と定義する。第1実施形態の説明例では、ロック制御電圧VTL1が0.5(V)となる場合を説明する。
【0035】
S11において、VT電圧検出部31で、選択信号V1ないしV3が設定される。VT電圧検出部31は、入力される制御電圧VTの値に応じて、バラクタVA1ないしVA3のうちの何れを選択するかを決定する回路である。具体的には、インバータINV1およびINV2を用いることにより、制御電圧VTの値に対応する分割可変範囲を、分割容量可変範囲CV0aないしCV0cのうちから選択する。そして、デコーダ部41を用いることにより、選択された分割可変範囲に対応するバラクタを選択するための選択信号V1ないしV3を生成する。
【0036】
第1実施形態の例では、ロック制御電圧VTL1が0.5(V)の場合を説明しているため、インバータINV1から出力される信号OUT1はハイレベル、インバータINV2から出力される信号OUT2はハイレベル、とされる。よって、図6のデコード例に示すように、選択信号V1およびV2はハイレベルとされ、選択信号V3はローレベルとされる。これにより、図4(A)に示すように、ロック制御電圧VTL1に対応する分割可変範囲として、分割容量可変範囲CV0cが選択される。そして、分割可変範囲CV0cに対応するバラクタとして、バラクタVA3が選択される。
【0037】
S13において、ロック状態が所定時間LTの間継続されることに応じて、ロック検出器24からハイレベルのロック検出信号LDが出力される。第1実施形態の例では、図9の時刻t3においてロック検出が行われ、ロック検出信号LDがハイレベルに遷移する。そして、粗調整段階から微調整段階(S15〜S29)へ移行する。
【0038】
S15において、セレクタ部32で、バラクタ切替信号VC0ないしVC3が生成される。バラクタ切替信号VC1ないしVC3は、ロック検出信号LDを用いて選択信号V1ないしV3をラッチすることによって生成される。また、バラクタ切替信号VC0は、ロック検出信号LDを用いて接地電圧VSSをラッチすることによって生成される。
【0039】
バラクタ切替信号VC1ないしVC3の生成動作を説明する。図9の時刻t3において、ロック検出信号LDがハイレベルに遷移することに応じて、フリップフロップFF1a(図3)から出力される反転信号LOXがハイレベルへ遷移する(矢印Y3)。ナンドゲートND11にはハイレベルの反転信号LOXおよびハイレベルの遅延ロック検出信号LDDが入力されるため、信号OUTはローレベルへ遷移し、反転信号OUTXはハイレベルへ遷移する(矢印Y5)。セレクタSL1のラッチFF1bでは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて、ハイレベルの選択信号V1がラッチされ、バラクタ切替信号VC1がハイレベルに維持される(矢印Y7)。同様に、セレクタSL2では選択信号V2がラッチされ、バラクタ切替信号VC2がハイレベルに維持される(矢印Y8)。同様に、セレクタSL3では選択信号V3がラッチされ、バラクタ切替信号VC3がローレベルにされる(矢印Y9)。これにより、微調整段階への移行時点(時刻t3)での選択信号V1ないしV3の各々が、バラクタ切替信号VC1ないしVC3としてラッチされる。
【0040】
また、セレクタSL0のラッチFF0bでは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて接地電圧VSSがラッチされることで、バラクタ切替信号VC0Bがローレベルへ遷移し、バラクタ切替信号VC0がハイレベルへ遷移する(矢印Y10)。これにより、微調整段階への移行時点(時刻t3)において、VT電圧検出部31によって選択されていたバラクタVA3へ切り替える動作が行われる。
【0041】
S17(図8)において、スイッチSW0ないしSW3の切り替えにより、使用されるバラクタが切り替えられる。第1実施形態の説明例では、時刻t4(図9)において、スイッチSW3が導通状態とされ、スイッチSW0は非導通状態とされることで、使用されるバラクタがバラクタVA0からVA3へ切り替えられる。このとき、制御電圧VTがロック制御電圧VTL1の状態で、バラクタVA0からVA3へ切り替わる。すると、切り替わり後におけるロック制御電圧VTL1での発振周波数fVCOは、設定周波数fSからずれた異なる値となるため、ロックが外れる(図5,矢印Y20)。よって、時刻t4(図9)において、ロック検出信号LDはローレベルに遷移する。
【0042】
S19において、ロックが外れることに応じて、PLLの再チューニングが開始される。再チューニングでは、切り替え後のバラクタVA3が用いられる。そして再チューニング中に、VT電圧検出部31において、選択信号V1ないしV3が再設定される(S20)。第1実施形態の例では、図5(B)に示すように、再チューニングにより、ロック制御電圧VTL1からVTL2へ変化する(図5(B)、矢印Y21)。すると、制御電圧VTの値が、閾電圧Vth1をまたぐように変化する。よって、図6のデコード例に示すように、選択信号V1およびV3はハイレベルとされ、選択信号V2はローレベルとされるように、選択信号V1ないしV3の値が変化する(図9、領域R0)。このように、再チューニング時において、制御電圧VTの値が変化して閾電圧をまたぐ場合には、再チューニングの前後で選択信号V1ないしV3の値が変化してしまう。
【0043】
S21において、切り替え後のバラクタVA3を使用して、発振周波数fVCOが設定周波数fSに再ロックする。このときの制御電圧VTの値を、ロック制御電圧VTL2と定義する(図5(B))。
【0044】
S25において、ロック検出器24からロック検出信号LDが再出力される。第1実施形態の例では、時刻t5(図9)において、ロック検出信号LDは再度ハイレベルへ遷移する。
【0045】
再チューニング動作時での、セレクタ部32でのラッチ動作について説明する。セレクタ部32でのラッチのトリガ信号として、ロック検出信号LDを用いる場合には、初回ロック時(時刻t3)のみならず、再ロック時(時刻t5)においてもラッチ動作が行われてしまう。すると、初回ロック時と再ロック時とで、選択信号V1ないしV3の値が異なっている場合には、微調整段階で用いられたバラクタと異なるバラクタに切り替えられてしまい、誤動作が発生してしまう。
【0046】
しかし、第1実施形態では、セレクタ部32でのラッチのトリガ信号として、反転信号OUTXを使用している。反転信号OUTXでは、再ロック時(時刻t5)には、反転信号OUTXに立ち上がりエッジが現れない(図9,領域R1)。これは、反転信号OUTXが、ロック検出信号LDの分周信号である反転信号LOXを用いて生成されているため、再ロック時のロック検出信号LDの立ち上がりエッジが伝達されないためである。これにより、初回ロック時のバラクタの選択動作を、その後の再チューニング時においても維持することができる。
【0047】
S27において、再ロック時以降においても、再チューニング時に使用されたバラクタVA3の選択が保持される。S29において、そして、再チューニング時に使用されたバラクタVA3で、発振周波数fVCOの設定周波数fSに対するロックが継続される(S29)。
【0048】
S31において、新規なPLL周波数設定がPLL回路1で行われたか否かが判断される。新規なPLL周波数設定が行われていないと判断される場合(S31:NO)には、S27へ戻り、ロック状態が維持される。一方、新規なPLL周波数設定が入力されていると判断される場合(S31:YES)には、S5へ戻り、新たなPLLチューニング動作が開始される。S5に戻ると、セレクタ部32は、設定周波数fSの値の設定が完了してリセット信号LEがハイレベルとされることに応じて、使用されるバラクタをバラクタVA3からVA0に切り替える。よって、微調整段階から粗調整段階へ再移行する。その後のフローについては、前述したフローと同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0049】
第2実施形態に係るPLL回路1Bについて図11ないし図23を用いて説明する。図11に、第2実施形態に係るPLL回路1Bの回路図を示す。PLL回路1Bは、PLLブロック2BおよびVCOブロック3Bを備える。PLLブロック2Bは、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22B、位相比較器23、ロック検出器24、チャージポンプ25、ローパスフィルタ26を備える。
【0050】
PLL回路1Bには、クロック信号CK、データ信号DATA、リセット信号LEが入力される。
PLL回路1Bは3wire−PLL回路であり、クロック信号CK、データ信号DATA、リセット信号LEの3つの信号により設定周波数fSの設定などの各種設定が行われる。リファレンスカウンタ21Bには、入力クロック信号CLKRが入力され、分周入力クロック信号CLKNが出力される。メインカウンタ22Bには、出力クロック信号CLKOが入力され、分周内部クロック信号CLKMが出力される。初期状態時、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bは初期設定分周値で動作する。位相比較器23には分周入力クロック信号CLKNおよび分周内部クロック信号CLKMが入力される。位相比較器23から出力される位相差信号UPおよびDNはチャージポンプ25に入力され、チャージポンプ25からは位相差電流IPが出力される。位相差電流IPはローパスフィルタ26に入力され、ローパスフィルタ26からは制御電圧VTが出力され、VCOブロック3Bに入力される。また、位相比較器23から出力される一致信号SDは、ロック検出器24に入力される。ロック検出器24からはロック検出信号LDが出力され、VCOブロック3Bに入力される。
【0051】
VCOブロック3Bは、VT電圧検出部31、セレクタ部32B、スイッチ部33、VCO(電圧制御型発振器)34を備える。VT電圧検出部31には制御電圧VTが入力され、選択信号V1ないしV3が出力される。セレクタ部32Bには、選択信号V1ないしV3、ロック検出信号LDが入力され、バラクタ切替信号VC0ないしVC3、PLLカウンタ制御信号PCCが出力される。スイッチ部33には、バラクタ切替信号VC0ないしVC3、制御電圧VTが入力される。スイッチ部33から出力された制御電圧VTはVCO34に入力され、VCO34からは出力クロック信号CLKOが出力される。
【0052】
図12に、VCOブロック3Bの詳細な回路図を示す。VT電圧検出部31は、インバータINV1およびINV2と、デコーダ部41を備える。インバータINV1には制御電圧VTが入力され、信号OUT1が出力される。インバータINV2には制御電圧VTが入力され、信号OUT2が出力される。インバータINV1の論理閾値電圧は、後述する閾電圧Vth1に合わせた値に調整される。インバータINV1の信号OUT1は、制御電圧VTがVth1よりも小さい時にはハイレベル、制御電圧VTがVth1よりも大きい時にはローレベルとなる。また、インバータINV2の論理閾値電圧は、後述する閾電圧Vth2に合わせた値に調整される。インバータINV2の信号OUT2は、制御電圧VTがVth2よりも小さい時にはハイレベル、制御電圧VTがVth2よりも大きい時にはローレベルとなる。第2実施形態の説明例では、閾値電圧Vth1を1(V)、閾値電圧Vth2を2(V)とする。
【0053】
デコーダ部41は、インバータINV3ないしINV5、ナンドゲートND1ないしND3を備える。ナンドゲートND1には、信号OUT1がインバータINV4を介して入力されると共に、信号OUT2がインバータINV5を介して入力され、選択信号V1が出力される。ナンドゲートND2には、信号OUT1がインバータINV3を介して入力されると共に、信号OUT2が入力され、選択信号V2が出力される。ナンドゲートND3には、信号OUT1およびOUT2が入力され、選択信号V3が出力される。デコーダ部41によって、信号OUT1およびOUT2がデコードされ、選択信号V1ないしV3が生成される。
【0054】
図6に、デコーダ部41によるデコード例を示す。第2実施形態の説明例では、制御電圧VTの変動範囲は0(V)から3(V)とする。制御電圧VTが0(V)から1(V)の範囲では、選択信号V1およびV2がハイレベル、選択信号V3がローレベルとされる。また、制御電圧VTが1(V)から2(V)の範囲では、選択信号V1およびV3がハイレベル、選択信号V2がローレベルとされる。また、制御電圧VTが2(V)から3(V)の範囲では、選択信号V2およびV3がハイレベル、選択信号V1がローレベルとされる。
【0055】
セレクタ部32Bは、セレクタSL0BないしSL3Bを備える。セレクタSL0BないしSL3Bの各々には、ロック検出信号LDが入力される。
また、セレクタSL0Bには接地電圧VSSが入力され、セレクタSL1Bには選択信号V1が入力され、セレクタSL2Bには選択信号V2が入力され、セレクタSL3Bには選択信号V3が入力される。セレクタSL0Bから出力されるバラクタ切替信号VC0Bは、インバータINV6で反転され、バラクタ切替信号VC0として出力される。インバータINV6から出力されるバラクタ切替信号VC0は、スイッチSW0の制御端子に入力され、かつPLLカウンタ制御信号PCCとしてリファレンスカウンタ21Bおよびメインカウンタ22Bに入力される。
また、セレクタSL1BないしSL3Bの各々からは、バラクタ切替信号VC1ないしVC3が出力され、スイッチSW1ないしSW3の各々の制御端子に入力される。
【0056】
スイッチ部33は、スイッチSW0ないしSW3を備える。スイッチSW0ないしSW3の入力端子の各々には、制御電圧VTが共通して入力される。また、スイッチSW0ないしSW3の出力端子の各々は、VCO34のバラクタVA0ないしVA3の入力端子の各々に接続される。スイッチSW0ないしSW3は、バラクタ切替信号VC0ないしVC3がローレベルとされる期間においては導通状態とされ、ハイレベルとされる期間においては非導通状態とされるスイッチである。
【0057】
VCO34は、インダクタL1およびL2、バラクタVA0ないしVA3、トランジスタTr1およびTr2、定電流源CG1を備える。インダクタL1およびL2の一端は、電源電圧VCCに共通に接続される。インダクタL1およびL2の他端には、バラクタVA0ないしVA3がそれぞれ接続されている。インダクタL1およびL2と、バラクタVA0ないしVA3とを備えて、共振回路35の一例を提供する。
【0058】
トランジスタTr1およびTr2のコレクタ端子は、共振回路35に接続される。トランジスタTr1のベース端子はトランジスタTr2のコレクタ端子に接続され、トランジスタTr2のベース端子はトランジスタTr1のコレクタ端子に接続される。トランジスタTr1およびTr2のエミッタ端子は、定電流源CG1を介して接地電圧VSSに接続される。トランジスタTr1およびTr2によって、共振回路によって生成された発振信号が増幅される。トランジスタTr2のコレクタ端子からは、増幅された発振信号が、出力クロック信号CLKOとして出力される。
【0059】
図13を用いて、セレクタ部32Bに備えられるセレクタSL1Bの回路構成について説明する。セレクタSL1Bは、フリップフロップFF1aB、ラッチFF1bB、インバータINV11およびINV12、ナンドゲートND11、遅延部DPを備える。インバータINV11にはロック検出信号LDが入力され、反転ロック検出信号LDXが出力される。フリップフロップFF1aBの入力端子CKにはロック検出信号LDが入力され、反転入力端子XCKには反転ロック検出信号LDXが入力される。フリップフロップFF1aBの反転出力端子QXからは反転信号LOXが出力される。また、フリップフロップFF1aBの真理値表を図15に示す。反転信号LOXの初期値はローレベルであり、ロック検出信号LDにハイレベル、反転ロック検出信号LDXにローレベル信号が入力される度に反転信号LOXの出力はローレベルからハイレベルあるいはハイレベルからローレベルへと反転する。
【0060】
遅延部DPは、偶数段のインバータを備えており、入力信号に遅延時間を付与して出力する回路である。遅延部DPにはロック検出信号LDが入力され、遅延時間が付与された遅延ロック検出信号LDDが出力される。遅延部DPは、ヒゲ状のスパイクノイズの発生を防止するための回路である。ナンドゲートND11には、遅延ロック検出信号LDDおよび信号LOXが入力され、信号OUTが出力される。信号OUTは、インバータINV12で反転され、反転信号OUTXとして出力される。
【0061】
ラッチFF1bBの入力端子Dには選択信号V1が入力され、クロック端子Gには反転信号OUTXが入力される。ラッチFF1bBの出力端子Qからは、バラクタ切替信号VC1が出力される。ラッチFF1bBは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて選択信号V1をラッチし、バラクタ切替信号VC1として出力する動作を行う。また、ラッチFF1bBの真理値表を図16に示す。初期状態におけるバラクタ切替信号VC1はハイレベルである。クロック端子Gに信号が入力されない限り、バラクタ切替信号VC1は信号レベルを保持する。クロック端子Gに反転信号OUTXが入力されるとともに、入力端子Dに選択信号V1が入力されると、出力端子Qから出力されるバラクタ切替信号VC1は入力値に応じて変化する。なお、セレクタSL2BおよびSL3Bの構成も、セレクタSL1Bの構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0062】
また、図14を用いて、セレクタSL0Bの回路構成について説明する。セレクタSL0Bは、図13のセレクタSL1BにおけるラッチFF1bBに代えて、ラッチFF0bを備える。ラッチFF0bの入力端子Dには接地電圧VSSが入力され、クロック端子Gには反転信号OUTXが入力される。ラッチFF0bの出力端子Qからは、バラクタ切替信号VC0Bが出力される。ラッチFF0bは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて接地電圧VSSをラッチし、ローレベルのバラクタ切替信号VC0Bを出力する動作を行う。なお、セレクタSL0Bのその他の構成は、セレクタSL1Bの構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0063】
図17および図18を用いて、バラクタVA0ないしVA3について説明する。バラクタVA0ないしVA3は、制御電圧VTの変化に応じて容量値が変化する可変容量素子である。バラクタVA0は初期動作時使用バラクタであり、バラクタVA1ないしVA3は実動作時使用バラクタである。
【0064】
図17(A)に、バラクタVA1ないしVA3における、制御電圧VTと容量値との関係を示す。バラクタVA1ないしVA3の各々は、可変容量C1ないしC3を有する。可変容量C1ないしC3の容量可変範囲は、バラクタVA0の容量値の容量可変範囲CV0に包含される。
バラクタVA2の可変容量C2の可変領域の特性は(1)式に基づいて、制御電圧VTの動作電圧の範囲内において、実現したい発振周波数帯域f0において出力信号CLKOをロックできるように設定される。実施形態の図17(A)の例では、制御電圧VTの動作電圧の範囲が0Vから3Vの場合を説明する。
また、バラクタVA1の可変容量C1はバラクタVA2の可変容量C2から製造ばらつきの度合いだけ容量値を低く設定され、バラクタVA3の可変容量C3はバラクタVA2の可変容量C2から製造ばらつきの度合いだけ容量値を高く設定される。実施形態の図17の例では、製造ばらつきの度合いが±20%とされる場合を説明する。
【0065】
図17(B)に、バラクタVA0における、制御電圧VTと容量値との関係を示す。
C0bはバラクタVA0について製造ばらつきがなかった場合の制御電圧VTと容量C0の関係、C0aはバラクタVA0について製造ばらつきによりバラクタVA0の容量C0が増加した場合の制御電圧VTと容量C0の関係、C0cはバラクタVA0について製造ばらつきによりバラクタVA0の容量C0が減少した場合の制御電圧VTと容量C0の関係である。制御電圧VTと容量C0の関係はバラクタVA0の製造ばらつきによりC0aからC0cの範囲内で変動する。
【0066】
VCO回路に入力される制御電圧VTの変動範囲を0Vから3Vとした時、バラクタVA0は、容量可変範囲CV0を有する。バラクタVA0の容量可変範囲CV0は、制御電圧VTの電圧範囲(0〜3(V))と1対1に対応する。VTの電圧変動範囲を3領域に分割する。0Vから閾電圧Vth1を領域VTaと定義し、閾電圧Vth1から閾電圧Vth2までを領域VTbと定義し、閾電圧Vth2から3Vまでを領域VTcと定義する。第2実施形態の図17の例では、閾電圧Vth1=1(V)、閾電圧Vth2=2(V)とされる場合を説明する。
【0067】
製造ばらつきによる特性の変動がなかった場合のバラクタVA0の特性C0bは、製造ばらつきにより特性がC0a、C0cへと変動した場合にも、制御電圧VTの電圧変動範囲で、実現したい発振周波数帯域f0において出力信号CLKOをロックできるように設定される。また、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bの初期カウント値は、バラクタVA0の特性がC0bであった場合に、容量可変範囲CV0において出力信号CLKOの発振周波数fVCOがロックされるように、あらかじめ設定される。この初期カウント値において出力信号CLKOがロックされる周波数fVCOを初期設定周波数fS0と定義する。
【0068】
図18を用いて、バラクタVA0ないしVA3における、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を説明する。図18(A)に、バラクタVA0における、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を示す。バラクタVA0の容量C0が設計値通りであった場合の制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係をVA0b、バラクタVA0の製造ばらつきにより可変容量C0が設計値+20%となり発振周波数fVCOが最小となった場合の制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係をVA0a、バラクタVA0の製造ばらつきにより可変容量C0が設計値−20%となり発振周波数fVCOが最大となった場合の制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係をVA0cとして示す。実施形態の図18(A)の例では、バラクタVA0の特性がVA0bであった場合において、出力信号CLKOが初期設定周波数fS0でロックされる時の制御電圧VTの電圧値VTL0がVth1とVth2の平均値である1.5Vとされる場合を説明する。
【0069】
制御電圧VTと発振周波数fVCOの関係はバラクタVA0の製造ばらつきによりVA0aからVA0cの範囲内で変動する。前記特性の変動により、出力信号CLKOの周波数がfS0の時にロックされる制御電圧VTも変動する。出力信号CLKOの周波数がfS0の時にロックされた制御電圧VTの電圧値をVT電圧検出部31で検波することで、製造ばらつき量が検出される。その製造ばらつき量によってセレクタ部32Bから信号VC1ないしVC3のうち適切な信号が出力され、実動作時にバラクタVA1ないしVA3のうち適切なバラクタがVCO34の一要素として選択される。
【0070】
また図18(B)に、前記選択方式により、バラクタVA1ないしVA3が選択された場合の、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を示す。実施形態の図18(B)の例では、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係がVA0bであった場合、すなわち、バラクタVA0ないしVA3の容量に製造ばらつきによる変動がなかった場合、発振周波数fCVO=fS0時のロック制御電圧VTL0は1.5Vであり、バラクタVA2が選択される。この時VCO34を構成する可変容量の容量値Cは、バラクタVA2の容量値C2である。この時の容量値Cと制御電圧VTの関係をfVA2として図18(B)に図示する。
【0071】
制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係がVA0aであった場合、すなわち、バラクタVA0ないしVA3の容量が製造ばらつきにより+20%変動していた場合、発振周波数fCVO=fS0時のロック制御電圧VTL0は2.5Vであり、バラクタVA1が選択される。この時可変容量の容量値Cは、バラクタVA1の設計時の容量C1(=0.8×C2)に製造ばらつきによる変動率120%を乗算することで得られ、C=C1×1.2=0.8×C2×1.2=0.96×C2である。この時の容量値Cと制御電圧VTの関係をfVA1として図18(B)に図示する。
【0072】
制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係がVA0cであった場合、すなわち、バラクタVA0ないしVA3の容量が製造ばらつきにより−20%変動していた場合、発振周波数fCVO=fS0時のロック制御電圧VTL0は0.5Vであり、バラクタVA3が選択される。可変容量の容量値Cは、バラクタVA3の設計時の容量C3(=1.2×C2)に製造ばらつきによる変動率80%を乗算することで得られ、C=C3×0.8=1.2×C2×0.8=0.96×C2である。この時の容量値Cと制御電圧VTの関係をfVA3として図18(B)に図示する。
【0073】
図18(B)に示すように、製造ばらつきによりバラクタVA0ないしVA3の容量が変動した場合であっても、前記バラクタの選択方式による補正により、所望の発振周波数帯域f0におけるロックを実現できる。
【0074】
本発明に係るPLL回路1Bの動作を、図19のフローと、図20のタイミングチャートを用いて説明する。
【0075】
S1において、PLL回路1Bの回路動作が開始される。S3において、PLL回路1Bの出力信号CLKOの周波数fVCOが実動作設定周波数fS1となるようにデータ信号DATAが入力される。実動作設定周波数fS1の値は、発振周波数帯域f0の範囲において、ユーザ等によって、任意の値に設定可能とされる。データ信号の入力が完了することに応じて、ハイレベルのリセット信号LEがPLL回路1Bに入力される(図20、時刻t1)。
【0076】
S5において、出力信号CLKOの周波数が初期設定周波数fS0となるように、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bのカウンタ値が設定される。
【0077】
セレクタ部32BのセレクタSL0BないしSL3Bは、回路動作開始時(図20、時刻t1)、あらかじめハイレベルへセットされている。よって、バラクタ切替信号VC1ないしVC3はハイレベルとされ、スイッチSW1ないしSW3は非導通状態とされる。また、セレクタSL0Bから出力されるバラクタ切替信号VC0Bがハイレベルとされるため、インバータINV6を介して出力されるバラクタ切替信号VC0がローレベルとされスイッチSW0は導通状態とされる。
【0078】
S7において、PLLチューニングが行われる。PLLチューニングの動作について説明する。リファレンスカウンタ21Bは、入力クロック信号CLKRをN分周して、分周入力クロック信号CLKNを出力する。またメインカウンタ22Bは、出力クロック信号CLKOをM分周して、分周内部クロック信号CLKMを出力する。位相比較器23は、分周入力クロック信号CLKN及び分周内部クロック信号CLKMの位相比較を行い、位相比較結果に応じたパルス幅の位相差信号UP、DNを出力する。
【0079】
チャージポンプ25は、位相差信号UP、DNに応じ、ローパスフィルタ26に対して正または負の位相差電流IPを供給する。すなわち、位相差信号UPが入力される場合には、正電流を供給し、位相差信号DNが入力される場合には、負電流を供給する。ローパスフィルタ26は、チャージポンプ25が出力する位相差電流IPを積分して制御電圧VTを出力する。
【0080】
VCO34は、ローパスフィルタ26から出力される制御電圧VTに応じた周波数の出力クロック信号CLKOを生成する。そして、分周入力クロック信号CLKN及び分周内部クロック信号CLKMの位相差が一定となるようにフィードバック制御される。これにより、出力クロック信号CLKOの発振周波数fVCOが設定周波数fSに一致するように、PLLチューニングが行われる。
【0081】
S9において、バラクタVA0を用いた初期動作段階において、発振周波数fVCOが初期設定周波数fS0にロックする(図20,時刻t2)。この時の制御電圧VTの値を、ロック制御電圧VTL0と定義する。第2実施形態の説明例では、バラクタVA0ないしVA3の容量が製造ばらつきにより−20%変動しており、ロック制御電圧VTL0が0.5(V)となる場合を説明する。
【0082】
S11において、VT電圧検出部31で、選択信号V1ないしV3が設定される。VT電圧検出部31は、入力される制御電圧VTの値に応じて、バラクタVA1ないしVA3のうちの何れを選択するかを決定する回路である。具体的には、インバータINV1およびINV2を用いることにより、制御電圧VTの電圧変動領域をVTaないしVTcのうちから選択する。そして、デコーダ部41を用いることにより、選択された分割可変範囲に対応するバラクタを選択するための選択信号V1ないしV3を生成する。
【0083】
第2実施形態の例では、製造ばらつきによりバラクタVA0ないしVA3の容量が設計値より20%低くロック制御電圧VTL0が0.5(V)の場合を説明しているため、インバータINV1から出力される信号OUT1はハイレベル、インバータINV2から出力される信号OUT2はハイレベル、とされる。よって、図15のデコード例に示すように、選択信号V1およびV2はハイレベルとされ、選択信号V3はローレベルとされる。これにより、図18(A)に示すように、製造ばらつき検波領域として0VとVth1との間の領域VTaが検波される。そして、製造ばらつきを補正するバラクタとして、バラクタVA3が選択される。
【0084】
S13において、ロック状態が所定時間LTの間継続されることに応じて、ロック検出器24からハイレベルのロック検出信号LDが出力される。第2実施形態の例では、図20の時刻t3においてロック検出が行われ、ロック検出信号LDがハイレベルに遷移する。そして、初期動作段階から実動作段階(S15〜S31)へ移行する。
【0085】
S15において、セレクタ部32Bで、バラクタ切替信号VC0ないしVC3およびPLLカウンタ制御信号が生成される。バラクタ切替信号VC1ないしVC3は、ロック検出信号LDを用いて選択信号V1ないしV3をラッチすることによって生成される。また、バラクタ切替信号VC0は、ロック検出信号LDを用いて接地電圧VSSをラッチすることによって生成される。
【0086】
バラクタ切替信号VC1ないしVC3の生成動作を説明する。図20の時刻t3において、ロック検出信号LDがハイレベルに遷移することに応じて、フリップフロップFF1aB(図13)から出力される反転信号LOXがハイレベルへ遷移する(矢印Y3)。ナンドゲートND11にはハイレベルの反転信号LOXおよびハイレベルの遅延ロック検出信号LDDが入力されるため、信号OUTはローレベルへ遷移し、反転信号OUTXはハイレベルへ遷移する(矢印Y5)。セレクタSL1BのラッチFF1bBでは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて、ハイレベルの選択信号V1がラッチされ、バラクタ切替信号VC1がハイレベルに維持される(矢印Y7)。同様に、セレクタSL2Bでは選択信号V2がラッチされ、バラクタ切替信号VC2がハイレベルに維持される(矢印Y8)。同様に、セレクタSL3Bでは選択信号V3がラッチされ、バラクタ切替信号VC3がローレベルにされる(矢印Y9)。これにより、実動作段階への移行時点(時刻t3)での選択信号V1ないしV3の各々が、バラクタ切替信号VC1ないしVC3としてラッチされる。
【0087】
また、セレクタSL0BのラッチFF0bでは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて接地電圧VSSがラッチされることで、バラクタ切替信号VC0Bがローレベルへ遷移し、バラクタ切替信号VC0がハイレベルへ遷移する(矢印Y10)。これにより、実動作段階への移行時点(時刻t3)において、VT電圧検出部31によって選択されていたバラクタVA3へ切り替える動作が行われる。
【0088】
S17(図19)において、スイッチSW0ないしSW3の切り替えにより、使用されるバラクタが切り替えられる。第2実施形態の説明例では、時刻t4(図20)において、スイッチSW3が導通状態とされ、スイッチSW0は非導通状態とされることで、使用されるバラクタがバラクタVA0からVA3へ切り替えられる。このとき、制御電圧VTがロック制御電圧VTL0の状態で、バラクタVA0からVA3へ切り替わる。すると、切り替わり後におけるロック制御電圧VTL0での発振周波数fVCOは、初期設定周波数fS0からずれた異なる値となるため、ロックが外れる。よって、時刻t4(図20)において、ロック検出信号LDはローレベルに遷移する。
【0089】
初期状態時、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bは初期設定周波数fS0に基づく初期カウント値で動作する(S5)。S19において、ロック時に発生するLD信号に応じてセレクタ部32Bから出力されるハイレベルのPLLカウンタ制御信号PCCが入力されると、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bは、外部からロードイネーブル信号LEとともに入力されるデータ信号DATAに基づいて設定された分周値で動作を開始する。
【0090】
図21に第2実施形態の例における、リファレンスカウンタ21Bおよびメインカウンタ22Bの一部を示す。外部から入力されたシリアルデータ信号DATAはPLL内部のシフトレジスタによりパラレルデータに変換され、前記カウンタのラッチ1(41)のデータ端子に入力される。そして、書き込み完了のロードイネーブル信号LEが入力されるとラッチ1はデータを取り込み、次段のラッチ2(42)にデータを出力する。ラッチ2は、初期状態時に初期設定周波数fS0に基づく初期カウント値を出力する。その初期カウント値でフリップフロップ(43)が動作し、最初のロック動作を行う。ラッチ2は、ハイレベルのPLLカウンタ制御信号PCCが入力されるまで、ラッチ1にデータが保持されているかに関わらず、初期値を維持する。VCO0にて製造ばらつきを検波しロックすると、PLLカウンタ制御信号PCCがラッチ2に入力され(S17)、ラッチ2はラッチ1から入力されたデータを取り込み、ラッチ2はフリップフロップにデータを出力し、フリップフロップは入力されたデータでの動作を開始する。
【0091】
図21および図22にラッチ2の例を示す。図21に初期状態時、ハイレベルのPLLカウンタ制御信号PCCが入力されるまで、ローレベルを出力する初期値ロータイプのラッチ2(50a)を示す。ラッチ2(50a)は、トランスミッションゲート51、52、インバータ53、54、NANDゲート55を備える。ラッチ2(50a)には、データ信号DATAとPLLカウンタ制御信号PCCが入力され、トランスミッションゲート51、52はPLLカウンタ制御信号PCCにより制御される。初期状態時、PLLカウンタ制御信号PCCはローレベルとされ、データ信号DATAに関わらずラッチ2はローレベル信号を出力する。ハイレベルのPLLカウンタ制御信号PCCが入力された後(図18,S15)、ラッチ2は入力データを出力する。図22に初期状態時、PLLカウンタ制御信号PCCが入力されるまで、ハイレベルを出力する初期値ハイタイプのラッチ2(50B)を示す。初期値ハイタイプのラッチ2(50b)は、初期値ロータイプのラッチ2(50a)中のNANDゲート55に代え、NORゲート56を備える。PLLカウンタ制御信号PCCが、ローレベルの期間にラッチ2から出力される信号にかかわらず、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bは、初期カウント値に設定される。
【0092】
S21において、ロックが外れることに応じて、PLLの再チューニングが開始される。再チューニングでは、切り替え後のバラクタVA3が用いられる。
【0093】
S23において、切り替え後のバラクタVA3を使用して、発振周波数fVCOが実動作設定周波数fS1に再ロックする。
【0094】
S25において、ロック検出器24からロック検出信号LDが再出力される。第2実施形態の例では、時刻t5(図20)において、ロック検出信号LDは再度ハイレベルへ遷移する。
【0095】
再チューニング動作時での、セレクタ部32Bでのラッチ動作について説明する。セレクタ部32Bでのラッチのトリガ信号として、ロック検出信号LDを用いる場合には、初回ロック時(時刻t3)のみならず、再ロック時(時刻t5)においてもラッチ動作が行われてしまう。すると、初回ロック時と再ロック時とで、選択信号V1ないしV3の値が異なっている場合には、実動作段階で用いられたバラクタと異なるバラクタに切り替えられてしまい、誤動作が発生してしまう。
【0096】
しかし、第2実施形態では、セレクタ部32Bでのラッチのトリガ信号として、反転信号OUTXを使用している。反転信号OUTXでは、再ロック時(時刻t5)には、反転信号OUTXに立ち上がりエッジが現れない(図20,領域R1)。これは、反転信号OUTXが、ロック検出信号LDの分周信号である反転信号LOXを用いて生成されているため、再ロック時のロック検出信号LDの立ち上がりエッジが伝達されないためである。これにより、初回ロック時のバラクタの選択動作を、その後の再チューニング時においても維持することができる。
【0097】
S27において、再ロック時以降においても、再チューニング時に使用されたバラクタVA3が選択され、セレクタ部32Bでの選択は、S15での選択が維持される。これにより、バラクタVA3で、発振周波数fVCOの実動作設定周波数fS1に対するロックが継続される(S29)。
【0098】
第1実施形態に係るPLL回路1の効果を説明する。PLL回路1では、VCO34に、粗調整用のバラクタVA0と、複数の微調整用のバラクタVA1ないしVA3が備えられる。そして、PLLチューニングが開始されると、バラクタVA0が選択され、粗調整段階とされる。粗調整段階では、発振周波数帯域は広くされるが、変換感度(Kv)が高くなり位相雑音特性が悪化すると共に、制御電圧VTに対する発振周波数fVCOの変化の直線性が劣化する。そして、初回のロック検出が行われることに応じて、バラクタVA1ないしVA3の何れかが選択され、微調整段階へ移行する。微調整段階では、発振周波数帯域は狭くなるが、位相雑音特性および発振周波数fVCOの変化の直線性が向上する。これにより、広周波数帯域で発振し、かつ低位相雑音特性および高直線性を有するPLL回路1を提供することができる。よって、PLL回路1でのロックレンジが狭くなることや、製造ばらつきに対する発振周波数範囲のマージンが不足するなどの問題を防止することが可能となる。
【0099】
また、第1実施形態に係るPLL回路1のセレクタSL1では、フリップフロップFF1aは、入力されるロック検出信号を分周して反転信号LOXを出力する。また、ナンドゲートND11およびインバータINV12により、反転信号LOXから反転信号OUTXを生成する。そして、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて、ラッチFF1bにおいて、選択信号V1をラッチする。また、セレクタSL2およびSL3においても同様して、選択信号V2およびV3がラッチされる。これにより、ロック検出信号LDを分周した信号を用いて選択信号V1ないしV3のラッチを制御することで、初回ロック検出時に選択されたバラクタの選択動作を、再ロック検出以降も保持することができる。よって、再ロック検出後にバラクタの切り替えが行われないように、バラクタの切り替え制御を行うことができる。また、バラクタの切り替え制御にロック検出信号LDを分周した信号を用いるため、信号の生成に必要なロジック回路の規模を小さくすることができ、チップ面積増加を抑えることが可能となる。
【0100】
また、第1実施形態に係るPLL回路1では、バラクタの切り替え制御に、ロック検出信号LDを使用している。そして、PLLブロック2およびVCOブロック3は、PLLループを構成する上でセットで用いられる回路であることから、ロック検出信号LDは必須の信号である。すると、必須の信号であるロック検出信号LDを、バラクタの切り替え制御に流用することで、新規信号を不必要とすることができる。よって、バラクタの切り替え制御に用いる信号の生成に必要なロジック回路の規模を小さくすることができる。
【0101】
また、従来、複数のバラクタを切り替える制御を行う際に、バラクタを順次切り替えて行く制御を行う場合がある。この場合、切り替え実行回数は、最大でバラクタの数と一致することになる。しかし、第1実施形態に係るPLL回路1では、粗調整段階と微調整段階の2段階で切り替え制御を行うことができるため、切り替え動作を簡略化することが可能となる。
【0102】
また、第1実施形態に係るPLL回路1では、共振回路35内において、スイッチSW0ないしSW3が、インダクタL1およびL2やバラクタVA0ないしVA3などと直列に接続されない構成とされる。よって、スイッチSW0ないしSW3のオン抵抗に起因して、位相雑音劣化が発生する事態を防止することができる。
【0103】
またロック検出器24では、再ロック時の判定条件に比して、初回ロック時の判定条件を甘くするとしてもよい。初回ロックは、使用するバラクタを決定するためのロックであるため、正確にロックする必要がないためである。また、判定条件の甘い初回ロック検出用のロック検出器と、判定条件の厳しい再ロック検出用のロック検出器とを備え、使用するロック検出器を切り替えるとしてもよい。これにより、粗調整に必要な時間を短縮することが可能となる。
【0104】
第2実施形態に係るPLL回路1Bの効果を説明する。PLL回路1Bでは、VCO34に、初期動作用のバラクタVA0と、複数の実動作用のバラクタVA1ないしVA3が備えられる。そして、PLLチューニングが開始されると、バラクタVA0が選択され、初期動作段階とされる。初期動作段階では、発振周波数帯域を広く設定し、許容される製造ばらつきの範囲内で初期動作時に確実にロックが行われるようにする。そして、初回のロック検出時のVT電圧を検出することで、製造ばらつき量を検出する。製造ばらつき量に応じて、バラクタVA1ないしVA3のうち適切なバラクタが選択され、実動作段階へ移行する。実動作段階では、位相雑音特性および発振周波数fVCOの変化の直線性が向上する。これにより、製造ばらつきを補正し、かつ低位相雑音特性および高直線性を有するPLL回路1Bを提供することができる。よって、PLL回路1Bでの製造ばらつきに対する発振周波数範囲のマージンが不足するなどの問題を防止することが可能となる。
【0105】
また、第2実施形態に係るPLL回路1BのセレクタSL1Bでは、フリップフロップFF1aBは、入力されるロック検出信号LDを分周して反転信号LOXを出力する。また、ナンドゲートND11およびインバータINV12により、反転信号LOXから反転信号OUTXを生成する。そして、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて、ラッチFF1bBにおいて、選択信号V1をラッチする。また、セレクタSL2BおよびSL3Bにおいても同様に、選択信号V2およびV3がラッチされる。これにより、ロック検出信号LDを分周した信号を用いて選択信号V1ないしV3のラッチを制御することで、初回ロック検出時に選択されたバラクタの選択動作を、再ロック検出以降も保持することができる。よって、再ロック検出後にバラクタの切り替えが行われないように、バラクタの切り替え制御を行うことができる。また、バラクタの切り替え制御にロック検出信号LDを分周した信号を用いるため、信号の生成に必要なロジック回路の規模を小さくすることができ、チップ面積増加を抑えることが可能となる。
【0106】
また、第2実施形態に係るPLL回路1Bでは、バラクタの切り替え制御に、ロック検出信号LDを使用している。そして、PLLブロック2BおよびVCOブロック3Bは、PLLループを構成する上でセットで用いられる回路であることから、ロック検出信号LDは必須の信号である。すると、必須の信号であるロック検出信号LDを、バラクタの切り替え制御に流用することで、新規信号を不必要とすることができる。よって、バラクタの切り替え制御に用いる信号の生成に必要なロジック回路の規模を小さくすることができる。
【0107】
また、従来、複数のバラクタを切り替える制御を行う際に、バラクタを順次切り替えて行く制御を行う場合がある。この場合、切り替え実行回数は、最大でバラクタの数と一致することになる。しかし、第2実施形態に係るPLL回路1Bでは、初期動作段階と実動作段階の2段階で切り替え制御を行うことができるため、切り替え動作を簡略化することが可能となる。
【0108】
また、第2実施形態に係るPLL回路1Bでは、共振回路35内において、スイッチSW0ないしSW3が、インダクタL1およびL2やバラクタVA0ないしVA3などと直列に接続されない構成とされる。よって、スイッチSW0ないしSW3のオン抵抗に起因して、位相雑音劣化が発生する事態を防止することができる。
【0109】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。
【0110】
例えば、ロック検出器24では、再ロック時の判定条件に比して、初回ロック時の判定条件を甘くするとしてもよい。初回ロックは、使用するバラクタを決定するためのロックであるため、正確にロックする必要がないためである。また、判定条件の甘い初回ロック検出用のロック検出器と、判定条件の厳しい再ロック検出用のロック検出器とを備え、使用するロック検出器を切り替えるとしてもよい。これにより、初期動作段階に必要な時間を短縮することが可能となる。
【0111】
また、実使用時において、データ信号DATAの更新による発振周波数fVCOの切り替わりの際に一時的にロック状態が解除されることも考えられる。この場合、ロック検出信号LDは、一時的にローレベルとなった後ハイレベルに戻ることとなる。この場合にも、フリップフロップFF1aB(図13)から出力される反転信号LOXの反転によるセレクタ部32Bでのセレクタの誤った切換を防止することが有効である。初期化時におけるバラクタの選択の後は、セレクタ部32Bへロック検出信号LDの入力をマスクすること、セレクタ部32Bから出力されるバラクタ切替信号の切り替えを抑止すること、初期化時に出力されたバラクタ切替信号を保持することなどにより、実動作時において、データ信号DATAの更新に伴い一時的にロック状態が解除された場合にも、バラクタの選択が誤って切り替えられてしまうことを防止することができる。
【0112】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。例えば第1実施形態と第2実施形態を同時に一つのPLL回路に適用することで、広帯域な周波数特性を有し、かつ、製造ばらつきがあっても安定した低位相雑音特性を確保したPLL回路が実現できる。
【0113】
また、インバータINV1およびINV2に代えて、コンパレータを用いてもよい。この場合、コンパレータの基準電圧に、閾電圧Vth1およびVth2を用いればよい。
【0114】
なお、バラクタVA0は第1の可変容量の一例、バラクタVA1ないしVA3は第2の可変容量の一例、VT電圧検出部31は選択部の一例、選択信号V1ないしV3は第1選択信号の一例、フリップフロップFF1aは報知回路の一例、フリップフロップFF1aBはロック報知回路の一例、ラッチFF1bおよびFF1bBはラッチ回路の一例である。
【0115】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の容量値の可変範囲よりも小さい可変範囲を有する複数の第2の可変容量とを備え、前記複数の第2の可変容量の可変範囲は前記第1の可変容量の可変範囲をカバーするように互いに異なる範囲に設定され、前記第1の可変容量と前記複数の第2の可変容量との何れを使用するかが選択可能とされ、入力される制御電圧に応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器と、
入力される前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成する位相比較部と、
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が予め定められる設定発振周波数にロックされているか否かを検出するロック検出部と、
入力される前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを決定する選択部と、
前記ロック検出部の出力と前記選択部の出力とが入力され、前記出力信号の粗調整段階においては前記第1の可変容量を選択させ、前記粗調整段階において前記出力信号のロックが検出された場合に前記出力信号の微調整段階へ移行し、前記微調整段階においては前記微調整段階に移行する場合において前記選択部によって選択されていた前記第2の可変容量を選択させるセレクタ部と
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路。
(付記2)
前記選択部は、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを報知する第1選択信号を出力し、
前記セレクタ部は、
前記ロック検出が前記粗調整段階において検出されたことを報知する報知回路と、
前記第1選択信号と前記報知回路の出力とが入力され、前記報知回路から報知を受け取ることに応じて前記第1選択信号をラッチし、ラッチした前記第1選択信号を前記電圧制御型発振器へ出力するラッチ回路と
を備えることを特徴とする付記1に記載の位相同期ループ回路。
(付記3)
前記ロック検出部は、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされていない期間においては第1レベルのロック検出信号を出力し、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされている期間においては第2レベルのロック検出信号を出力し、
前記報知回路は、入力される前記ロック検出信号を分周して分周信号を出力し、
前記ラッチ回路は、前記分周信号の前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に応じて前記第1選択信号をラッチする
ことを特徴とする付記2に記載の位相同期ループ回路。
(付記4)
前記第1の可変容量の可変範囲は前記制御電圧の電圧範囲と1対1に対応し、
前記第1の可変容量の可変範囲は複数の分割可変範囲に分割され、
前記分割可変範囲の各々に対応するように前記複数の第2の可変容量の可変範囲が設定され、
前記選択部は、入力される前記制御電圧に対応する前記分割可変範囲を検出し、検出した前記分割可変範囲に対応する前記第2の可変容量を選択する
ことを特徴とする付記1ないし付記3の何れかに記載の位相同期ループ回路。
(付記5)
前記セレクタ部は、前記設定発振周波数の値を変更することに応じて、前記微調整段階から前記粗調整段階へ再移行する
ことを特徴とする付記1に記載の位相同期ループ回路。
(付記6)
前記ロック検出部は、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数に所定期間一致することを検出することで前記ロック検出を行い、
前記粗調整段階での前記所定期間は、前記微調整段階での前記所定期間よりも短くされる
ことを特徴とする付記1ないし付記5の何れかに記載の位相同期ループ回路。
(付記7)
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の容量値の可変範囲よりも小さい可変範囲を有する複数の第2の可変容量とを備え、前記複数の第2の可変容量の可変範囲は前記第1の可変容量の可変範囲をカバーするように互いに異なる範囲に設定され、入力される制御電圧に応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器の制御方法であって、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成するステップと、
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が予め定められる設定発振周波数にロックされているか否かを検出するステップと、
前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを決定するステップと、
前記ロック検出部の出力と前記選択部の出力とが入力され、前記出力信号の粗調整段階においては前記第1の可変容量を選択させ、前記粗調整段階において前記出力信号のロックが検出された場合に前記出力信号の微調整段階へ移行し、前記微調整段階においては前記微調整段階に移行する場合において前記選択部によって選択されていた前記第2の可変容量を選択させるステップと
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路の制御方法。
(付記8)
初期化時に選択される第1の可変容量と、前記第1の可変容量の可変範囲に包含され動作仕様上必要とされる容量可変幅を有する複数の第2の可変容量とを備え、入力される制御電圧と前記第1の可変容量または前記複数の第2の可変容量のうち選択される可変容量とに応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器と、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成する位相比較部と、
初期化時の前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうち何れか1つを選択する選択部と
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路。
(付記9)
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が前記基準周波数信号に応じた発振周波数にロックされているか否かを検出するロック検出部を備え、
前記選択部は、
初期化時の前記制御電圧の電圧レンジを検出して、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを報知する第1選択信号を出力する検出部と、
前記ロック検出部によるロック検出がされたことを報知するロック報知回路と、
前記第1選択信号と前記ロック報知回路の出力とが入力され、前記報知回路から報知を受け取ることに応じて前記第1選択信号をラッチし、ラッチした前記第1選択信号を前記電圧制御型発振器へ出力するラッチ回路とを備えることを特徴とする付記8に記載の位相同期ループ回路。
(付記10)
前記ロック検出部は、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされていない期間においては第1レベルのロック検出信号を出力し、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされている期間においては第2レベルのロック検出信号を出力し、
前記ロック報知回路は、入力される前記ロック検出信号を分周して分周信号を出力し、
前記ラッチ回路は、前記分周信号の前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に応じて前記第1選択信号をラッチする
ことを特徴とする付記9に記載の位相同期ループ回路。
(付記11)
前記第1の可変容量の可変範囲は、前記制御電圧の電圧範囲と1対1に対応し、前記動作仕様上必要とされる容量可変幅と製造ばらつきによる容量値のばらつきとを包含した範囲であり、
前記第1の可変容量の可変範囲は複数の分割可変範囲に分割され、
前記分割可変範囲の各々に対応するように前記複数の第2の可変容量の可変範囲が設定され、
前記選択部は、前記電圧制御型発振器の特性の製造によるばらつきに対応する前記第2の可変容量を選択する
ことを特徴とする付記8ないし付記10の何れかに記載の位相同期ループ回路。
(付記12)
前記基準周波数が入力され、前記初期化時には予め定められる設定周波数が出力される分周値に設定され、前記実動作時には分周値の変更が可能な第1分周器と、
前記出力信号が入力される第2分周器とを備え、
前記第1および第2分周から出力される信号は前記位相比較部に入力されることを特徴とする付記8ないし付記11の少なくとも何れか1項に記載の位相同期ループ回路。
(付記13)
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の可変範囲に包含される複数の第2の可変容量とを備え、入力される制御電圧と前記第1の可変容量または前記複数の第2の可変容量のうち選択される可変容量とに応じた発振周波数を有する出力信号を生成して位相同期を行う位相同期ループの制御方法であって、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成するステップと、
初期化時に前記第1の可変容量を選択して位相同期を行うステップと、
初期化時の位相同期のステップに応じて生成される前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうち何れか1つを選択するステップとを備えることを特徴とする位相同期ループ回路の制御方法。
【符号の説明】
【0116】
1、1B PLL回路
21 リファレンスカウンタ
22 メインカウンタ
24 ロック検出器
31 VT電圧検出部
VA0ないしVA3 バラクタ
V1ないしV3 選択信号
SL0ないしSL3、SL0BないしSL3B セレクタ
FF1a、FF1aB フリップフロップ
FF1b、FF1bB ラッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域の発振周波数帯域を有するPLL回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
VCO回路は、発振周波数帯域が広帯域であることが望まれる。一方、位相雑音および直線性の劣化を防ぐためには、発振周波数帯域を狭くすることが望ましい。そこで、従来では、複数のVCO回路や複数の可変容量素子を備え、設定発振周波数に対応するVCO回路や可変容量素子に切り替える技術が知られている。
【0003】
また、低位相雑音特性を実現するには、変換感度を低くすることが有効である。しかしながら変換感度を低くすると、製造ばらつきによる素子特性変動による発振周波数帯域変動度合いによってロックレンジはずれ動作不具合となる可能性がある。そこで、VCO回路を製造ばらつき検波結果より切り替える技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−10599号公報
【特許文献2】特開2003−110424号公報
【特許文献3】米国特許第7,268,630号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、VCO回路や可変容量素子などを切り替える場合には、切り替えのための複雑な制御が必要となる場合がある。すると、切り替え制御回路の回路規模が大きくなり、半導体装置のチップサイズが増大するおそれがあるため問題である。
【0006】
本発明は前記背景技術の課題の少なくとも1つを解消するためになされたものであり、広帯域の発振周波数帯域を有するPLL回路およびPLL回路の制御方法を提供することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の位相同期ループ回路は、第1の可変容量と、第1の可変容量の容量値の可変範囲よりも小さい可変範囲を有する複数の第2の可変容量とを備え、複数の第2の可変容量の可変範囲は第1の可変容量の可変範囲をカバーするように互いに異なる範囲に設定され、第1の可変容量と複数の第2の可変容量との何れを使用するかが選択可能とされ、入力される制御電圧に応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器を備える。また、入力される出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて制御電圧を生成する位相比較部を備える。また、位相比較結果に基づいて、出力信号の発振周波数が予め定められる設定発振周波数にロックされているか否かを検出するロック検出部を備える。また、入力される制御電圧に応じて、複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを決定する選択部を備える。また、ロック検出部の出力と選択部の出力とが入力され、出力信号の粗調整段階においては第1の可変容量を選択させ、粗調整段階において出力信号のロックが検出された場合に出力信号の微調整段階へ移行し、微調整段階においては微調整段階に移行する場合において選択部によって選択されていた第2の可変容量を選択させるセレクタ部を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本開示の位相同期ループ回路は、第1の可変容量と、前記第1の可変容量の可変範囲に包含され動作使用上必要とされる容量可変幅を有する複数の第2の可変容量とを備え、入力される制御電圧と前記第1の可変容量を有する出力信号を生成する電圧制御型発信器と、前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成する位相比較部と、初期化時の前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうち何れか1つを選択する選択部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示のPLL回路によれば、チップサイズの増大を抑え、広帯域の発振周波数帯域を有することが可能なPLL回路及び製造ばらつきがあっても安定した低位層雑音特性を確保できるPLL回路を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】PLL回路1における一実施例の回路図である。
【図2】VCOブロック3における一実施例の回路図である。
【図3】セレクタSL1における一実施例の回路図である。
【図4】バラクタにおける一実施例の特性図(その1)である。
【図5】バラクタにおける一実施例の特性図(その2)である。
【図6】デコーダ部41における一実施例のデコード例である。
【図7】PLL回路1における一実施例のフロー図(その1)である。
【図8】PLL回路1における一実施例のフロー図(その2)である。
【図9】PLL回路1における一実施例のタイミングチャートである。
【図10】フリップフロップFF1a、ラッチFF1bにおける一実施例の真理値表である。
【図11】PLL回路1Bにおける一実施例の回路図である。
【図12】VCOブロック3Bにおける一実施例の回路図である。
【図13】セレクタSL1Bにおける一実施例の回路図である。
【図14】セレクタSL0Bにおける一実施例の回路図である。
【図15】フリップフロップFF1aBにおける一実施例の真理値表である。
【図16】ラッチFF1bBにおける一実施例の真理値表である。
【図17】バラクタにおける一実施例の特性図(その1)である。
【図18】バラクタにおける一実施例の特性図(その2)である。
【図19】PLL回路1Bにおける一実施例のフロー図である。
【図20】PLL回路1Bにおける一実施例のタイミングチャートである。
【図21】リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bにおける一実施例の一部分である。
【図22】リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bにおける一実施例の一部分の回路図(その1)である。
【図23】リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bにおける一実施例の一部分の回路図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1実施形態のPLL回路1に係る実施形態を図1ないし図9を用いて説明する。図1に、第1実施形態に係るPLL回路1の回路図を示す。PLL回路1は、PLLブロック2およびVCOブロック3を備える。PLLブロック2は、リファレンスカウンタ21、メインカウンタ22、位相比較器23、ロック検出器24、チャージポンプ25、ローパスフィルタ26を備える。PLL回路1には、クロック信号CKS、データ信号DATA、リセット信号LEが入力される。PLL回路1は3wire−PLLであり、クロック信号CKS、データ信号DATA、リセット信号LEの3つの信号により設定周波数fSの設定などの各種設定が行われる。リファレンスカウンタ21には、入力クロック信号CLKRが入力され、分周入力クロック信号CLKNが出力される。メインカウンタ22には、出力クロック信号CLKOが入力され、分周内部クロック信号CLKMが出力される。位相比較器23には分周入力クロック信号CLKNおよび分周内部クロック信号CLKMが入力される。位相比較器23から出力される位相差信号UPおよびDNはチャージポンプ25に入力され、チャージポンプ25からは位相差電流IPが出力される。位相差電流IPはローパスフィルタ26に入力され、ローパスフィルタ26からは制御電圧VTが出力され、VCOブロック3に入力される。また、位相比較器23から出力される一致信号SDは、ロック検出器24に入力される。ロック検出器24からはロック検出信号LDが出力され、VCOブロック3に入力される。
【0012】
VCOブロック3は、VT電圧検出部31、セレクタ部32、スイッチ部33、VCO(電圧制御型発振器)34を備える。VT電圧検出部31には制御電圧VTが入力され、選択信号V1ないしV3が出力される。セレクタ部32には、選択信号V1ないしV3、ロック検出信号LD、リセット信号LEが入力され、バラクタ切替信号VC0ないしVC3が出力される。スイッチ部33には、バラクタ切替信号VC0ないしVC3、制御電圧VTが入力される。スイッチ部33から出力された制御電圧VTはVCO34に入力され、VCO34からは出力クロック信号CLKOが出力される。
【0013】
図2に、VCOブロック3の詳細な回路図を示す。VT電圧検出部31は、インバータINV1およびINV2と、デコーダ部41を備える。インバータINV1には制御電圧VTが入力され、信号OUT1が出力される。インバータINV2には制御電圧VTが入力され、信号OUT2が出力される。インバータINV1の論理閾値電圧は、後述する閾電圧Vth1に合わせた値(1(V))に調整される。インバータINV1の信号OUT1は、制御電圧VTが1(V)よりも小さい時にはハイレベル、制御電圧VTが1(V)よりも大きい時にはローレベルとなる。また、インバータINV2の論理閾値電圧は、後述する閾電圧Vth2に合わせた値(2(V))に調整される。インバータINV2の信号OUT2は、制御電圧VTが2(V)よりも小さい時にはハイレベル、制御電圧VTが2(V)よりも大きい時にはローレベルとなる。
【0014】
デコーダ部41は、インバータINV3ないしINV5、ナンドゲートND1ないしND3を備える。ナンドゲートND1には、信号OUT1がインバータINV4を介して入力されると共に、信号OUT2がインバータINV5を介して入力され、選択信号V1が出力される。ナンドゲートND2には、信号OUT1がインバータINV3を介して入力されると共に、信号OUT2が入力され、選択信号V2が出力される。ナンドゲートND3には、信号OUT1およびOUT2が入力され、選択信号V3が出力される。デコーダ部41によって、信号OUT1およびOUT2がデコードされ、選択信号V1ないしV3が生成される。
【0015】
図6に、デコーダ部41によるデコード例を示す。制御電圧VTが0(V)から1(V)の範囲では、選択信号V1およびV2がハイレベル、選択信号V3がローレベルとされる。また、制御電圧VTが1(V)から2(V)の範囲では、選択信号V1およびV3がハイレベル、選択信号V2がローレベルとされる。また、制御電圧VTが2(V)から3(V)の範囲では、選択信号V2およびV3がハイレベル、選択信号V1がローレベルとされる。
【0016】
セレクタ部32は、セレクタSL0ないしSL3を備える。セレクタSL0ないしSL3の各々には、ロック検出信号LDおよびリセット信号LEが入力される。また、セレクタSL0には接地電圧VSSが入力され、セレクタSL1には選択信号V1が入力され、セレクタSL2には選択信号V2が入力され、セレクタSL3には選択信号V3が入力される。セレクタSL0から出力されるバラクタ切替信号VC0Bは、インバータINV6で反転され、バラクタ切替信号VC0として出力される。インバータINV6から出力されるバラクタ切替信号VC0は、スイッチSW0の制御端子に入力される。また、セレクタSL1ないしSL3の各々からは、バラクタ切替信号VC1ないしVC3が出力され、スイッチSW1ないしSW3の各々の制御端子に入力される。
【0017】
スイッチ部33は、スイッチSW0ないしSW3を備える。スイッチSW0ないしSW3の入力端子の各々には、制御電圧VTが共通して入力される。また、スイッチSW0ないしSW3の出力端子の各々は、VCO34のバラクタVA0ないしVA3の入力端子の各々に接続される。スイッチSW0ないしSW3は、バラクタ切替信号VC0ないしVC3がローレベルとされる期間においては導通状態とされ、ハイレベルとされる期間においては非導通状態とされるスイッチである。
【0018】
VCO34は、インダクタL1およびL2、バラクタVA0ないしVA3、トランジスタTr1およびTr2、定電流源CG1を備える。インダクタL1およびL2の一端は、電源電圧VCCに共通に接続される。インダクタL1およびL2の他端には、バラクタVA0ないしVA3がそれぞれ接続されている。インダクタL1およびL2と、バラクタVA0ないしVA3によって、共振回路35が構成される。
【0019】
トランジスタTr1およびTr2のコレクタ端子は、共振回路35に接続される。トランジスタTr1のベース端子はトランジスタTr2のコレクタ端子に接続され、トランジスタTr2のベース端子はトランジスタTr1のコレクタ端子に接続される。トランジスタTr1およびTr2のエミッタ端子は、定電流源CG1を介して接地電圧VSSに接続される。トランジスタTr1およびTr2によって、共振回路によって生成された発振信号が増幅される。トランジスタTr2のコレクタ端子からは、増幅された発振信号が、出力クロック信号CLKOとして出力される。
【0020】
図3を用いて、セレクタ部32に備えられるセレクタSL1の回路構成について説明する。セレクタSL1は、リセット機能付きフリップフロップ(以下フリップフロップ)FF1a、リセット機能付きラッチ(以下ラッチ)FF1b、インバータINV11およびINV12、ナンドゲートND11、遅延部DPを備える。インバータINV11にはロック検出信号LDが入力され、反転ロック検出信号LDXが出力される。フリップフロップFF1aのリセット端子Lにはリセット信号LEが入力され、入力端子CKにはロック検出信号LDが入力され、反転入力端子XCKには反転ロック検出信号LDXが入力される。フリップフロップFF1aの出力端子Qからは信号LOが出力され、反転出力端子QXからは信号LOの反転信号である反転信号LOXが出力される。また、フリップフロップFF1aの真理値表を図10(A)に示す。
【0021】
遅延部DPは、偶数段のインバータを備えており、入力信号に遅延時間を付与して出力する回路である。遅延部DPにはロック検出信号LDが入力され、遅延時間が付与された遅延ロック検出信号LDDが出力される。遅延部DPは、ヒゲ状のスパイクノイズの発生を防止するための回路である。ナンドゲートND11には、遅延ロック検出信号LDDおよび信号LOXが入力され、信号OUTが出力される。信号OUTは、インバータINV12で反転され、反転信号OUTXとして出力される。
【0022】
ラッチFF1bのリセット端子Lにはリセット信号LEが入力され、入力端子Dには選択信号V1が入力され、クロック端子Gには反転信号OUTXが入力される。ラッチFF1bの出力端子Qからは、バラクタ切替信号VC1が出力される。ラッチFF1bは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて選択信号V1をラッチし、バラクタ切替信号VC1として出力する動作を行う。また、ラッチFF1bの真理値表を図10(B)に示す。なお、セレクタSL2およびSL3の構成も、セレクタSL1の構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0023】
また、セレクタSL0の回路構成について説明する。セレクタSL0は、図3のセレクタSL1におけるラッチFF1bに代えて、リセット機能付きラッチ(以下ラッチ)FF0bを備える。ラッチFF0bのリセット端子Lにはリセット信号LEが入力され、入力端子Dには接地電圧VSSが入力され、クロック端子Gには反転信号OUTXが入力される。ラッチFF0bの出力端子Qからは、バラクタ切替信号VC0Bが出力される。ラッチFF0bは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて接地電圧VSSをラッチし、ローレベルのバラクタ切替信号VC0Bを出力する動作を行う。なお、セレクタSL0のその他の構成は、セレクタSL1の構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0024】
図4を用いて、バラクタVA0ないしVA3について説明する。バラクタVA0ないしVA3は、制御電圧VTの変化に応じて容量値が変化する可変容量素子である。バラクタVA0は粗調整用バラクタであり、バラクタVA1ないしVA3は微調整用バラクタである。図4(A)に、バラクタVA0における、制御電圧VTと容量値との関係を示す。バラクタVA0は、容量可変範囲CV0を有する。バラクタVA0の容量可変範囲CV0は、制御電圧VTの電圧範囲(0〜3(V))と1対1に対応する。バラクタVA0の容量可変範囲CV0は、複数の分割容量可変範囲CV0aないしCV0cに分割される。ここで、分割容量可変範囲CV0cとCV0bとの境界を定める制御電圧VTの値を、閾電圧Vth1と定義する。また、分割容量可変範囲CV0aとCV0bとの境界を定める制御電圧VTの値を、閾電圧Vth2と定義する。第1実施形態の図4の例では、閾電圧Vth1=1(V)、閾電圧Vth2=2(V)とされる場合を説明する。
【0025】
また、図4(B)に、バラクタVA1ないしVA3における、制御電圧VTと容量値との関係を示す。バラクタVA1ないしVA3の各々は、容量可変範囲CV1ないしCV3を有する。容量可変範囲CV1ないしCV3の可変範囲は、バラクタVA0の容量値の容量可変範囲CV0よりも小さい範囲とされる。また、容量可変範囲CV1ないしCV3の範囲は、バラクタVA0の容量可変範囲CV0をカバーするように、互いに異なる範囲に設定される。そして、バラクタVA0の分割容量可変範囲CV0aないしCV0cの各々に対応するように、バラクタVA1ないしVA3の容量可変範囲CV1ないしCV3が設定される。
【0026】
図5を用いて、バラクタVA0ないしVA3における、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を説明する。図5(A)に、バラクタVA0における、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を示す。バラクタVA0は、周波数可変範囲fV0を有する。周波数可変範囲fV0は、複数の分割周波数可変範囲fV0aないしfV0cに分割される。また図5(B)に、バラクタVA1ないしVA3における、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を示す。バラクタVA1ないしVA3の各々は、周波数可変範囲fV1ないしfV3を有する。そして、バラクタVA0の分割周波数可変範囲fV0aないしfV0cの各々に対応するように、バラクタVA1ないしVA3の周波数可変範囲fV1ないしfV3が設定される。
【0027】
VCO34の動作を説明する。共振回路35の発振周波数fVCOは、インダクタL1およびL2のインダクタンスLと、バラクタVA0ないしVA3の何れかが有する容量Cとにより、次式で与えられる。
fVCO=1/(2π×(L×C)1/2)・・・(1)式
そして制御電圧VTにより、バラクタVA0ないしVA3の容量を変化させることができ、出力クロック信号CLKOの発振周波数fVCOを制御することができる。
【0028】
本発明に係るPLL回路1の動作を、図7および図8のフローと、図9のタイミングチャートを用いて説明する。
【0029】
S1において、PLL回路1の回路動作が開始される。S3において、設定周波数fSの設定が行われる。設定周波数fSの値は、ユーザ等によって、任意の値に設定可能とされる。設定周波数fSの設定が完了することに応じて、ハイレベルのリセット信号LEがPLL回路1に入力される(図9、時刻t1)。
【0030】
S5において、セレクタ部32のセレクタSL1ないしSL3は、リセット信号LEの立ち上がりエッジの入力によって、ハイレベルへリセットされる。よって、バラクタ切替信号VC1ないしVC3はハイレベルとされ(矢印Y1)、スイッチSW1ないしSW3は非導通状態とされる。また、セレクタSL0から出力されるバラクタ切替信号VC0Bがハイレベルとされるため、インバータINV6を介して出力されるバラクタ切替信号VC0がローレベルとされ(矢印Y1)、スイッチSW0は導通状態とされる。よって、リセット信号LEの立ち上がりエッジに応じて、バラクタVA1ないしVA3の何れかを選択する設定から、バラクタVA0を選択する設定に変更が行われる。そして、出力クロック信号CLKOの粗調整段階(S5〜S13)とされる。
【0031】
S7において、PLLチューニングが行われる。PLLチューニングの動作について説明する。リファレンスカウンタ21は、入力クロック信号CLKRをN分周して、分周入力クロック信号CLKNを出力する。またメインカウンタ22は、出力クロック信号CLKOをM分周して、分周内部クロック信号CLKMを出力する。位相比較器23は、分周入力クロック信号CLKN及び分周内部クロック信号CLKMの位相比較を行い、位相比較結果に応じたパルス幅の位相差信号UP、DNを出力する。
【0032】
チャージポンプ25は、位相差信号UP、DNに応じ、ローパスフィルタ26に対して正または負の位相差電流IPを供給する。すなわち、位相差信号UPが入力される場合には、正電流を供給し、位相差信号DNが入力される場合には、負電流を供給する。ローパスフィルタ26は、チャージポンプ25が出力する位相差電流IPを積分して制御電圧VTを出力する。
【0033】
VCO34は、ローパスフィルタ26から出力される制御電圧VTに応じた周波数の出力クロック信号CLKOを生成する。そして、分周入力クロック信号CLKN及び分周内部クロック信号CLKMの位相差が一定となるようにフィードバック制御される。これにより、出力クロック信号CLKOの発振周波数fVCOが設定周波数fSに一致するように、PLLチューニングが行われる。
【0034】
S9において、バラクタVA0を用いた粗調整段階において、発振周波数fVCOが設定周波数fSにロックする(図9,時刻t2)。この時の制御電圧VTの値を、ロック制御電圧VTL1と定義する。第1実施形態の説明例では、ロック制御電圧VTL1が0.5(V)となる場合を説明する。
【0035】
S11において、VT電圧検出部31で、選択信号V1ないしV3が設定される。VT電圧検出部31は、入力される制御電圧VTの値に応じて、バラクタVA1ないしVA3のうちの何れを選択するかを決定する回路である。具体的には、インバータINV1およびINV2を用いることにより、制御電圧VTの値に対応する分割可変範囲を、分割容量可変範囲CV0aないしCV0cのうちから選択する。そして、デコーダ部41を用いることにより、選択された分割可変範囲に対応するバラクタを選択するための選択信号V1ないしV3を生成する。
【0036】
第1実施形態の例では、ロック制御電圧VTL1が0.5(V)の場合を説明しているため、インバータINV1から出力される信号OUT1はハイレベル、インバータINV2から出力される信号OUT2はハイレベル、とされる。よって、図6のデコード例に示すように、選択信号V1およびV2はハイレベルとされ、選択信号V3はローレベルとされる。これにより、図4(A)に示すように、ロック制御電圧VTL1に対応する分割可変範囲として、分割容量可変範囲CV0cが選択される。そして、分割可変範囲CV0cに対応するバラクタとして、バラクタVA3が選択される。
【0037】
S13において、ロック状態が所定時間LTの間継続されることに応じて、ロック検出器24からハイレベルのロック検出信号LDが出力される。第1実施形態の例では、図9の時刻t3においてロック検出が行われ、ロック検出信号LDがハイレベルに遷移する。そして、粗調整段階から微調整段階(S15〜S29)へ移行する。
【0038】
S15において、セレクタ部32で、バラクタ切替信号VC0ないしVC3が生成される。バラクタ切替信号VC1ないしVC3は、ロック検出信号LDを用いて選択信号V1ないしV3をラッチすることによって生成される。また、バラクタ切替信号VC0は、ロック検出信号LDを用いて接地電圧VSSをラッチすることによって生成される。
【0039】
バラクタ切替信号VC1ないしVC3の生成動作を説明する。図9の時刻t3において、ロック検出信号LDがハイレベルに遷移することに応じて、フリップフロップFF1a(図3)から出力される反転信号LOXがハイレベルへ遷移する(矢印Y3)。ナンドゲートND11にはハイレベルの反転信号LOXおよびハイレベルの遅延ロック検出信号LDDが入力されるため、信号OUTはローレベルへ遷移し、反転信号OUTXはハイレベルへ遷移する(矢印Y5)。セレクタSL1のラッチFF1bでは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて、ハイレベルの選択信号V1がラッチされ、バラクタ切替信号VC1がハイレベルに維持される(矢印Y7)。同様に、セレクタSL2では選択信号V2がラッチされ、バラクタ切替信号VC2がハイレベルに維持される(矢印Y8)。同様に、セレクタSL3では選択信号V3がラッチされ、バラクタ切替信号VC3がローレベルにされる(矢印Y9)。これにより、微調整段階への移行時点(時刻t3)での選択信号V1ないしV3の各々が、バラクタ切替信号VC1ないしVC3としてラッチされる。
【0040】
また、セレクタSL0のラッチFF0bでは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて接地電圧VSSがラッチされることで、バラクタ切替信号VC0Bがローレベルへ遷移し、バラクタ切替信号VC0がハイレベルへ遷移する(矢印Y10)。これにより、微調整段階への移行時点(時刻t3)において、VT電圧検出部31によって選択されていたバラクタVA3へ切り替える動作が行われる。
【0041】
S17(図8)において、スイッチSW0ないしSW3の切り替えにより、使用されるバラクタが切り替えられる。第1実施形態の説明例では、時刻t4(図9)において、スイッチSW3が導通状態とされ、スイッチSW0は非導通状態とされることで、使用されるバラクタがバラクタVA0からVA3へ切り替えられる。このとき、制御電圧VTがロック制御電圧VTL1の状態で、バラクタVA0からVA3へ切り替わる。すると、切り替わり後におけるロック制御電圧VTL1での発振周波数fVCOは、設定周波数fSからずれた異なる値となるため、ロックが外れる(図5,矢印Y20)。よって、時刻t4(図9)において、ロック検出信号LDはローレベルに遷移する。
【0042】
S19において、ロックが外れることに応じて、PLLの再チューニングが開始される。再チューニングでは、切り替え後のバラクタVA3が用いられる。そして再チューニング中に、VT電圧検出部31において、選択信号V1ないしV3が再設定される(S20)。第1実施形態の例では、図5(B)に示すように、再チューニングにより、ロック制御電圧VTL1からVTL2へ変化する(図5(B)、矢印Y21)。すると、制御電圧VTの値が、閾電圧Vth1をまたぐように変化する。よって、図6のデコード例に示すように、選択信号V1およびV3はハイレベルとされ、選択信号V2はローレベルとされるように、選択信号V1ないしV3の値が変化する(図9、領域R0)。このように、再チューニング時において、制御電圧VTの値が変化して閾電圧をまたぐ場合には、再チューニングの前後で選択信号V1ないしV3の値が変化してしまう。
【0043】
S21において、切り替え後のバラクタVA3を使用して、発振周波数fVCOが設定周波数fSに再ロックする。このときの制御電圧VTの値を、ロック制御電圧VTL2と定義する(図5(B))。
【0044】
S25において、ロック検出器24からロック検出信号LDが再出力される。第1実施形態の例では、時刻t5(図9)において、ロック検出信号LDは再度ハイレベルへ遷移する。
【0045】
再チューニング動作時での、セレクタ部32でのラッチ動作について説明する。セレクタ部32でのラッチのトリガ信号として、ロック検出信号LDを用いる場合には、初回ロック時(時刻t3)のみならず、再ロック時(時刻t5)においてもラッチ動作が行われてしまう。すると、初回ロック時と再ロック時とで、選択信号V1ないしV3の値が異なっている場合には、微調整段階で用いられたバラクタと異なるバラクタに切り替えられてしまい、誤動作が発生してしまう。
【0046】
しかし、第1実施形態では、セレクタ部32でのラッチのトリガ信号として、反転信号OUTXを使用している。反転信号OUTXでは、再ロック時(時刻t5)には、反転信号OUTXに立ち上がりエッジが現れない(図9,領域R1)。これは、反転信号OUTXが、ロック検出信号LDの分周信号である反転信号LOXを用いて生成されているため、再ロック時のロック検出信号LDの立ち上がりエッジが伝達されないためである。これにより、初回ロック時のバラクタの選択動作を、その後の再チューニング時においても維持することができる。
【0047】
S27において、再ロック時以降においても、再チューニング時に使用されたバラクタVA3の選択が保持される。S29において、そして、再チューニング時に使用されたバラクタVA3で、発振周波数fVCOの設定周波数fSに対するロックが継続される(S29)。
【0048】
S31において、新規なPLL周波数設定がPLL回路1で行われたか否かが判断される。新規なPLL周波数設定が行われていないと判断される場合(S31:NO)には、S27へ戻り、ロック状態が維持される。一方、新規なPLL周波数設定が入力されていると判断される場合(S31:YES)には、S5へ戻り、新たなPLLチューニング動作が開始される。S5に戻ると、セレクタ部32は、設定周波数fSの値の設定が完了してリセット信号LEがハイレベルとされることに応じて、使用されるバラクタをバラクタVA3からVA0に切り替える。よって、微調整段階から粗調整段階へ再移行する。その後のフローについては、前述したフローと同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0049】
第2実施形態に係るPLL回路1Bについて図11ないし図23を用いて説明する。図11に、第2実施形態に係るPLL回路1Bの回路図を示す。PLL回路1Bは、PLLブロック2BおよびVCOブロック3Bを備える。PLLブロック2Bは、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22B、位相比較器23、ロック検出器24、チャージポンプ25、ローパスフィルタ26を備える。
【0050】
PLL回路1Bには、クロック信号CK、データ信号DATA、リセット信号LEが入力される。
PLL回路1Bは3wire−PLL回路であり、クロック信号CK、データ信号DATA、リセット信号LEの3つの信号により設定周波数fSの設定などの各種設定が行われる。リファレンスカウンタ21Bには、入力クロック信号CLKRが入力され、分周入力クロック信号CLKNが出力される。メインカウンタ22Bには、出力クロック信号CLKOが入力され、分周内部クロック信号CLKMが出力される。初期状態時、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bは初期設定分周値で動作する。位相比較器23には分周入力クロック信号CLKNおよび分周内部クロック信号CLKMが入力される。位相比較器23から出力される位相差信号UPおよびDNはチャージポンプ25に入力され、チャージポンプ25からは位相差電流IPが出力される。位相差電流IPはローパスフィルタ26に入力され、ローパスフィルタ26からは制御電圧VTが出力され、VCOブロック3Bに入力される。また、位相比較器23から出力される一致信号SDは、ロック検出器24に入力される。ロック検出器24からはロック検出信号LDが出力され、VCOブロック3Bに入力される。
【0051】
VCOブロック3Bは、VT電圧検出部31、セレクタ部32B、スイッチ部33、VCO(電圧制御型発振器)34を備える。VT電圧検出部31には制御電圧VTが入力され、選択信号V1ないしV3が出力される。セレクタ部32Bには、選択信号V1ないしV3、ロック検出信号LDが入力され、バラクタ切替信号VC0ないしVC3、PLLカウンタ制御信号PCCが出力される。スイッチ部33には、バラクタ切替信号VC0ないしVC3、制御電圧VTが入力される。スイッチ部33から出力された制御電圧VTはVCO34に入力され、VCO34からは出力クロック信号CLKOが出力される。
【0052】
図12に、VCOブロック3Bの詳細な回路図を示す。VT電圧検出部31は、インバータINV1およびINV2と、デコーダ部41を備える。インバータINV1には制御電圧VTが入力され、信号OUT1が出力される。インバータINV2には制御電圧VTが入力され、信号OUT2が出力される。インバータINV1の論理閾値電圧は、後述する閾電圧Vth1に合わせた値に調整される。インバータINV1の信号OUT1は、制御電圧VTがVth1よりも小さい時にはハイレベル、制御電圧VTがVth1よりも大きい時にはローレベルとなる。また、インバータINV2の論理閾値電圧は、後述する閾電圧Vth2に合わせた値に調整される。インバータINV2の信号OUT2は、制御電圧VTがVth2よりも小さい時にはハイレベル、制御電圧VTがVth2よりも大きい時にはローレベルとなる。第2実施形態の説明例では、閾値電圧Vth1を1(V)、閾値電圧Vth2を2(V)とする。
【0053】
デコーダ部41は、インバータINV3ないしINV5、ナンドゲートND1ないしND3を備える。ナンドゲートND1には、信号OUT1がインバータINV4を介して入力されると共に、信号OUT2がインバータINV5を介して入力され、選択信号V1が出力される。ナンドゲートND2には、信号OUT1がインバータINV3を介して入力されると共に、信号OUT2が入力され、選択信号V2が出力される。ナンドゲートND3には、信号OUT1およびOUT2が入力され、選択信号V3が出力される。デコーダ部41によって、信号OUT1およびOUT2がデコードされ、選択信号V1ないしV3が生成される。
【0054】
図6に、デコーダ部41によるデコード例を示す。第2実施形態の説明例では、制御電圧VTの変動範囲は0(V)から3(V)とする。制御電圧VTが0(V)から1(V)の範囲では、選択信号V1およびV2がハイレベル、選択信号V3がローレベルとされる。また、制御電圧VTが1(V)から2(V)の範囲では、選択信号V1およびV3がハイレベル、選択信号V2がローレベルとされる。また、制御電圧VTが2(V)から3(V)の範囲では、選択信号V2およびV3がハイレベル、選択信号V1がローレベルとされる。
【0055】
セレクタ部32Bは、セレクタSL0BないしSL3Bを備える。セレクタSL0BないしSL3Bの各々には、ロック検出信号LDが入力される。
また、セレクタSL0Bには接地電圧VSSが入力され、セレクタSL1Bには選択信号V1が入力され、セレクタSL2Bには選択信号V2が入力され、セレクタSL3Bには選択信号V3が入力される。セレクタSL0Bから出力されるバラクタ切替信号VC0Bは、インバータINV6で反転され、バラクタ切替信号VC0として出力される。インバータINV6から出力されるバラクタ切替信号VC0は、スイッチSW0の制御端子に入力され、かつPLLカウンタ制御信号PCCとしてリファレンスカウンタ21Bおよびメインカウンタ22Bに入力される。
また、セレクタSL1BないしSL3Bの各々からは、バラクタ切替信号VC1ないしVC3が出力され、スイッチSW1ないしSW3の各々の制御端子に入力される。
【0056】
スイッチ部33は、スイッチSW0ないしSW3を備える。スイッチSW0ないしSW3の入力端子の各々には、制御電圧VTが共通して入力される。また、スイッチSW0ないしSW3の出力端子の各々は、VCO34のバラクタVA0ないしVA3の入力端子の各々に接続される。スイッチSW0ないしSW3は、バラクタ切替信号VC0ないしVC3がローレベルとされる期間においては導通状態とされ、ハイレベルとされる期間においては非導通状態とされるスイッチである。
【0057】
VCO34は、インダクタL1およびL2、バラクタVA0ないしVA3、トランジスタTr1およびTr2、定電流源CG1を備える。インダクタL1およびL2の一端は、電源電圧VCCに共通に接続される。インダクタL1およびL2の他端には、バラクタVA0ないしVA3がそれぞれ接続されている。インダクタL1およびL2と、バラクタVA0ないしVA3とを備えて、共振回路35の一例を提供する。
【0058】
トランジスタTr1およびTr2のコレクタ端子は、共振回路35に接続される。トランジスタTr1のベース端子はトランジスタTr2のコレクタ端子に接続され、トランジスタTr2のベース端子はトランジスタTr1のコレクタ端子に接続される。トランジスタTr1およびTr2のエミッタ端子は、定電流源CG1を介して接地電圧VSSに接続される。トランジスタTr1およびTr2によって、共振回路によって生成された発振信号が増幅される。トランジスタTr2のコレクタ端子からは、増幅された発振信号が、出力クロック信号CLKOとして出力される。
【0059】
図13を用いて、セレクタ部32Bに備えられるセレクタSL1Bの回路構成について説明する。セレクタSL1Bは、フリップフロップFF1aB、ラッチFF1bB、インバータINV11およびINV12、ナンドゲートND11、遅延部DPを備える。インバータINV11にはロック検出信号LDが入力され、反転ロック検出信号LDXが出力される。フリップフロップFF1aBの入力端子CKにはロック検出信号LDが入力され、反転入力端子XCKには反転ロック検出信号LDXが入力される。フリップフロップFF1aBの反転出力端子QXからは反転信号LOXが出力される。また、フリップフロップFF1aBの真理値表を図15に示す。反転信号LOXの初期値はローレベルであり、ロック検出信号LDにハイレベル、反転ロック検出信号LDXにローレベル信号が入力される度に反転信号LOXの出力はローレベルからハイレベルあるいはハイレベルからローレベルへと反転する。
【0060】
遅延部DPは、偶数段のインバータを備えており、入力信号に遅延時間を付与して出力する回路である。遅延部DPにはロック検出信号LDが入力され、遅延時間が付与された遅延ロック検出信号LDDが出力される。遅延部DPは、ヒゲ状のスパイクノイズの発生を防止するための回路である。ナンドゲートND11には、遅延ロック検出信号LDDおよび信号LOXが入力され、信号OUTが出力される。信号OUTは、インバータINV12で反転され、反転信号OUTXとして出力される。
【0061】
ラッチFF1bBの入力端子Dには選択信号V1が入力され、クロック端子Gには反転信号OUTXが入力される。ラッチFF1bBの出力端子Qからは、バラクタ切替信号VC1が出力される。ラッチFF1bBは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて選択信号V1をラッチし、バラクタ切替信号VC1として出力する動作を行う。また、ラッチFF1bBの真理値表を図16に示す。初期状態におけるバラクタ切替信号VC1はハイレベルである。クロック端子Gに信号が入力されない限り、バラクタ切替信号VC1は信号レベルを保持する。クロック端子Gに反転信号OUTXが入力されるとともに、入力端子Dに選択信号V1が入力されると、出力端子Qから出力されるバラクタ切替信号VC1は入力値に応じて変化する。なお、セレクタSL2BおよびSL3Bの構成も、セレクタSL1Bの構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0062】
また、図14を用いて、セレクタSL0Bの回路構成について説明する。セレクタSL0Bは、図13のセレクタSL1BにおけるラッチFF1bBに代えて、ラッチFF0bを備える。ラッチFF0bの入力端子Dには接地電圧VSSが入力され、クロック端子Gには反転信号OUTXが入力される。ラッチFF0bの出力端子Qからは、バラクタ切替信号VC0Bが出力される。ラッチFF0bは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて接地電圧VSSをラッチし、ローレベルのバラクタ切替信号VC0Bを出力する動作を行う。なお、セレクタSL0Bのその他の構成は、セレクタSL1Bの構成と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0063】
図17および図18を用いて、バラクタVA0ないしVA3について説明する。バラクタVA0ないしVA3は、制御電圧VTの変化に応じて容量値が変化する可変容量素子である。バラクタVA0は初期動作時使用バラクタであり、バラクタVA1ないしVA3は実動作時使用バラクタである。
【0064】
図17(A)に、バラクタVA1ないしVA3における、制御電圧VTと容量値との関係を示す。バラクタVA1ないしVA3の各々は、可変容量C1ないしC3を有する。可変容量C1ないしC3の容量可変範囲は、バラクタVA0の容量値の容量可変範囲CV0に包含される。
バラクタVA2の可変容量C2の可変領域の特性は(1)式に基づいて、制御電圧VTの動作電圧の範囲内において、実現したい発振周波数帯域f0において出力信号CLKOをロックできるように設定される。実施形態の図17(A)の例では、制御電圧VTの動作電圧の範囲が0Vから3Vの場合を説明する。
また、バラクタVA1の可変容量C1はバラクタVA2の可変容量C2から製造ばらつきの度合いだけ容量値を低く設定され、バラクタVA3の可変容量C3はバラクタVA2の可変容量C2から製造ばらつきの度合いだけ容量値を高く設定される。実施形態の図17の例では、製造ばらつきの度合いが±20%とされる場合を説明する。
【0065】
図17(B)に、バラクタVA0における、制御電圧VTと容量値との関係を示す。
C0bはバラクタVA0について製造ばらつきがなかった場合の制御電圧VTと容量C0の関係、C0aはバラクタVA0について製造ばらつきによりバラクタVA0の容量C0が増加した場合の制御電圧VTと容量C0の関係、C0cはバラクタVA0について製造ばらつきによりバラクタVA0の容量C0が減少した場合の制御電圧VTと容量C0の関係である。制御電圧VTと容量C0の関係はバラクタVA0の製造ばらつきによりC0aからC0cの範囲内で変動する。
【0066】
VCO回路に入力される制御電圧VTの変動範囲を0Vから3Vとした時、バラクタVA0は、容量可変範囲CV0を有する。バラクタVA0の容量可変範囲CV0は、制御電圧VTの電圧範囲(0〜3(V))と1対1に対応する。VTの電圧変動範囲を3領域に分割する。0Vから閾電圧Vth1を領域VTaと定義し、閾電圧Vth1から閾電圧Vth2までを領域VTbと定義し、閾電圧Vth2から3Vまでを領域VTcと定義する。第2実施形態の図17の例では、閾電圧Vth1=1(V)、閾電圧Vth2=2(V)とされる場合を説明する。
【0067】
製造ばらつきによる特性の変動がなかった場合のバラクタVA0の特性C0bは、製造ばらつきにより特性がC0a、C0cへと変動した場合にも、制御電圧VTの電圧変動範囲で、実現したい発振周波数帯域f0において出力信号CLKOをロックできるように設定される。また、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bの初期カウント値は、バラクタVA0の特性がC0bであった場合に、容量可変範囲CV0において出力信号CLKOの発振周波数fVCOがロックされるように、あらかじめ設定される。この初期カウント値において出力信号CLKOがロックされる周波数fVCOを初期設定周波数fS0と定義する。
【0068】
図18を用いて、バラクタVA0ないしVA3における、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を説明する。図18(A)に、バラクタVA0における、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を示す。バラクタVA0の容量C0が設計値通りであった場合の制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係をVA0b、バラクタVA0の製造ばらつきにより可変容量C0が設計値+20%となり発振周波数fVCOが最小となった場合の制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係をVA0a、バラクタVA0の製造ばらつきにより可変容量C0が設計値−20%となり発振周波数fVCOが最大となった場合の制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係をVA0cとして示す。実施形態の図18(A)の例では、バラクタVA0の特性がVA0bであった場合において、出力信号CLKOが初期設定周波数fS0でロックされる時の制御電圧VTの電圧値VTL0がVth1とVth2の平均値である1.5Vとされる場合を説明する。
【0069】
制御電圧VTと発振周波数fVCOの関係はバラクタVA0の製造ばらつきによりVA0aからVA0cの範囲内で変動する。前記特性の変動により、出力信号CLKOの周波数がfS0の時にロックされる制御電圧VTも変動する。出力信号CLKOの周波数がfS0の時にロックされた制御電圧VTの電圧値をVT電圧検出部31で検波することで、製造ばらつき量が検出される。その製造ばらつき量によってセレクタ部32Bから信号VC1ないしVC3のうち適切な信号が出力され、実動作時にバラクタVA1ないしVA3のうち適切なバラクタがVCO34の一要素として選択される。
【0070】
また図18(B)に、前記選択方式により、バラクタVA1ないしVA3が選択された場合の、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係を示す。実施形態の図18(B)の例では、制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係がVA0bであった場合、すなわち、バラクタVA0ないしVA3の容量に製造ばらつきによる変動がなかった場合、発振周波数fCVO=fS0時のロック制御電圧VTL0は1.5Vであり、バラクタVA2が選択される。この時VCO34を構成する可変容量の容量値Cは、バラクタVA2の容量値C2である。この時の容量値Cと制御電圧VTの関係をfVA2として図18(B)に図示する。
【0071】
制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係がVA0aであった場合、すなわち、バラクタVA0ないしVA3の容量が製造ばらつきにより+20%変動していた場合、発振周波数fCVO=fS0時のロック制御電圧VTL0は2.5Vであり、バラクタVA1が選択される。この時可変容量の容量値Cは、バラクタVA1の設計時の容量C1(=0.8×C2)に製造ばらつきによる変動率120%を乗算することで得られ、C=C1×1.2=0.8×C2×1.2=0.96×C2である。この時の容量値Cと制御電圧VTの関係をfVA1として図18(B)に図示する。
【0072】
制御電圧VTと発振周波数fVCOとの関係がVA0cであった場合、すなわち、バラクタVA0ないしVA3の容量が製造ばらつきにより−20%変動していた場合、発振周波数fCVO=fS0時のロック制御電圧VTL0は0.5Vであり、バラクタVA3が選択される。可変容量の容量値Cは、バラクタVA3の設計時の容量C3(=1.2×C2)に製造ばらつきによる変動率80%を乗算することで得られ、C=C3×0.8=1.2×C2×0.8=0.96×C2である。この時の容量値Cと制御電圧VTの関係をfVA3として図18(B)に図示する。
【0073】
図18(B)に示すように、製造ばらつきによりバラクタVA0ないしVA3の容量が変動した場合であっても、前記バラクタの選択方式による補正により、所望の発振周波数帯域f0におけるロックを実現できる。
【0074】
本発明に係るPLL回路1Bの動作を、図19のフローと、図20のタイミングチャートを用いて説明する。
【0075】
S1において、PLL回路1Bの回路動作が開始される。S3において、PLL回路1Bの出力信号CLKOの周波数fVCOが実動作設定周波数fS1となるようにデータ信号DATAが入力される。実動作設定周波数fS1の値は、発振周波数帯域f0の範囲において、ユーザ等によって、任意の値に設定可能とされる。データ信号の入力が完了することに応じて、ハイレベルのリセット信号LEがPLL回路1Bに入力される(図20、時刻t1)。
【0076】
S5において、出力信号CLKOの周波数が初期設定周波数fS0となるように、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bのカウンタ値が設定される。
【0077】
セレクタ部32BのセレクタSL0BないしSL3Bは、回路動作開始時(図20、時刻t1)、あらかじめハイレベルへセットされている。よって、バラクタ切替信号VC1ないしVC3はハイレベルとされ、スイッチSW1ないしSW3は非導通状態とされる。また、セレクタSL0Bから出力されるバラクタ切替信号VC0Bがハイレベルとされるため、インバータINV6を介して出力されるバラクタ切替信号VC0がローレベルとされスイッチSW0は導通状態とされる。
【0078】
S7において、PLLチューニングが行われる。PLLチューニングの動作について説明する。リファレンスカウンタ21Bは、入力クロック信号CLKRをN分周して、分周入力クロック信号CLKNを出力する。またメインカウンタ22Bは、出力クロック信号CLKOをM分周して、分周内部クロック信号CLKMを出力する。位相比較器23は、分周入力クロック信号CLKN及び分周内部クロック信号CLKMの位相比較を行い、位相比較結果に応じたパルス幅の位相差信号UP、DNを出力する。
【0079】
チャージポンプ25は、位相差信号UP、DNに応じ、ローパスフィルタ26に対して正または負の位相差電流IPを供給する。すなわち、位相差信号UPが入力される場合には、正電流を供給し、位相差信号DNが入力される場合には、負電流を供給する。ローパスフィルタ26は、チャージポンプ25が出力する位相差電流IPを積分して制御電圧VTを出力する。
【0080】
VCO34は、ローパスフィルタ26から出力される制御電圧VTに応じた周波数の出力クロック信号CLKOを生成する。そして、分周入力クロック信号CLKN及び分周内部クロック信号CLKMの位相差が一定となるようにフィードバック制御される。これにより、出力クロック信号CLKOの発振周波数fVCOが設定周波数fSに一致するように、PLLチューニングが行われる。
【0081】
S9において、バラクタVA0を用いた初期動作段階において、発振周波数fVCOが初期設定周波数fS0にロックする(図20,時刻t2)。この時の制御電圧VTの値を、ロック制御電圧VTL0と定義する。第2実施形態の説明例では、バラクタVA0ないしVA3の容量が製造ばらつきにより−20%変動しており、ロック制御電圧VTL0が0.5(V)となる場合を説明する。
【0082】
S11において、VT電圧検出部31で、選択信号V1ないしV3が設定される。VT電圧検出部31は、入力される制御電圧VTの値に応じて、バラクタVA1ないしVA3のうちの何れを選択するかを決定する回路である。具体的には、インバータINV1およびINV2を用いることにより、制御電圧VTの電圧変動領域をVTaないしVTcのうちから選択する。そして、デコーダ部41を用いることにより、選択された分割可変範囲に対応するバラクタを選択するための選択信号V1ないしV3を生成する。
【0083】
第2実施形態の例では、製造ばらつきによりバラクタVA0ないしVA3の容量が設計値より20%低くロック制御電圧VTL0が0.5(V)の場合を説明しているため、インバータINV1から出力される信号OUT1はハイレベル、インバータINV2から出力される信号OUT2はハイレベル、とされる。よって、図15のデコード例に示すように、選択信号V1およびV2はハイレベルとされ、選択信号V3はローレベルとされる。これにより、図18(A)に示すように、製造ばらつき検波領域として0VとVth1との間の領域VTaが検波される。そして、製造ばらつきを補正するバラクタとして、バラクタVA3が選択される。
【0084】
S13において、ロック状態が所定時間LTの間継続されることに応じて、ロック検出器24からハイレベルのロック検出信号LDが出力される。第2実施形態の例では、図20の時刻t3においてロック検出が行われ、ロック検出信号LDがハイレベルに遷移する。そして、初期動作段階から実動作段階(S15〜S31)へ移行する。
【0085】
S15において、セレクタ部32Bで、バラクタ切替信号VC0ないしVC3およびPLLカウンタ制御信号が生成される。バラクタ切替信号VC1ないしVC3は、ロック検出信号LDを用いて選択信号V1ないしV3をラッチすることによって生成される。また、バラクタ切替信号VC0は、ロック検出信号LDを用いて接地電圧VSSをラッチすることによって生成される。
【0086】
バラクタ切替信号VC1ないしVC3の生成動作を説明する。図20の時刻t3において、ロック検出信号LDがハイレベルに遷移することに応じて、フリップフロップFF1aB(図13)から出力される反転信号LOXがハイレベルへ遷移する(矢印Y3)。ナンドゲートND11にはハイレベルの反転信号LOXおよびハイレベルの遅延ロック検出信号LDDが入力されるため、信号OUTはローレベルへ遷移し、反転信号OUTXはハイレベルへ遷移する(矢印Y5)。セレクタSL1BのラッチFF1bBでは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて、ハイレベルの選択信号V1がラッチされ、バラクタ切替信号VC1がハイレベルに維持される(矢印Y7)。同様に、セレクタSL2Bでは選択信号V2がラッチされ、バラクタ切替信号VC2がハイレベルに維持される(矢印Y8)。同様に、セレクタSL3Bでは選択信号V3がラッチされ、バラクタ切替信号VC3がローレベルにされる(矢印Y9)。これにより、実動作段階への移行時点(時刻t3)での選択信号V1ないしV3の各々が、バラクタ切替信号VC1ないしVC3としてラッチされる。
【0087】
また、セレクタSL0BのラッチFF0bでは、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて接地電圧VSSがラッチされることで、バラクタ切替信号VC0Bがローレベルへ遷移し、バラクタ切替信号VC0がハイレベルへ遷移する(矢印Y10)。これにより、実動作段階への移行時点(時刻t3)において、VT電圧検出部31によって選択されていたバラクタVA3へ切り替える動作が行われる。
【0088】
S17(図19)において、スイッチSW0ないしSW3の切り替えにより、使用されるバラクタが切り替えられる。第2実施形態の説明例では、時刻t4(図20)において、スイッチSW3が導通状態とされ、スイッチSW0は非導通状態とされることで、使用されるバラクタがバラクタVA0からVA3へ切り替えられる。このとき、制御電圧VTがロック制御電圧VTL0の状態で、バラクタVA0からVA3へ切り替わる。すると、切り替わり後におけるロック制御電圧VTL0での発振周波数fVCOは、初期設定周波数fS0からずれた異なる値となるため、ロックが外れる。よって、時刻t4(図20)において、ロック検出信号LDはローレベルに遷移する。
【0089】
初期状態時、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bは初期設定周波数fS0に基づく初期カウント値で動作する(S5)。S19において、ロック時に発生するLD信号に応じてセレクタ部32Bから出力されるハイレベルのPLLカウンタ制御信号PCCが入力されると、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bは、外部からロードイネーブル信号LEとともに入力されるデータ信号DATAに基づいて設定された分周値で動作を開始する。
【0090】
図21に第2実施形態の例における、リファレンスカウンタ21Bおよびメインカウンタ22Bの一部を示す。外部から入力されたシリアルデータ信号DATAはPLL内部のシフトレジスタによりパラレルデータに変換され、前記カウンタのラッチ1(41)のデータ端子に入力される。そして、書き込み完了のロードイネーブル信号LEが入力されるとラッチ1はデータを取り込み、次段のラッチ2(42)にデータを出力する。ラッチ2は、初期状態時に初期設定周波数fS0に基づく初期カウント値を出力する。その初期カウント値でフリップフロップ(43)が動作し、最初のロック動作を行う。ラッチ2は、ハイレベルのPLLカウンタ制御信号PCCが入力されるまで、ラッチ1にデータが保持されているかに関わらず、初期値を維持する。VCO0にて製造ばらつきを検波しロックすると、PLLカウンタ制御信号PCCがラッチ2に入力され(S17)、ラッチ2はラッチ1から入力されたデータを取り込み、ラッチ2はフリップフロップにデータを出力し、フリップフロップは入力されたデータでの動作を開始する。
【0091】
図21および図22にラッチ2の例を示す。図21に初期状態時、ハイレベルのPLLカウンタ制御信号PCCが入力されるまで、ローレベルを出力する初期値ロータイプのラッチ2(50a)を示す。ラッチ2(50a)は、トランスミッションゲート51、52、インバータ53、54、NANDゲート55を備える。ラッチ2(50a)には、データ信号DATAとPLLカウンタ制御信号PCCが入力され、トランスミッションゲート51、52はPLLカウンタ制御信号PCCにより制御される。初期状態時、PLLカウンタ制御信号PCCはローレベルとされ、データ信号DATAに関わらずラッチ2はローレベル信号を出力する。ハイレベルのPLLカウンタ制御信号PCCが入力された後(図18,S15)、ラッチ2は入力データを出力する。図22に初期状態時、PLLカウンタ制御信号PCCが入力されるまで、ハイレベルを出力する初期値ハイタイプのラッチ2(50B)を示す。初期値ハイタイプのラッチ2(50b)は、初期値ロータイプのラッチ2(50a)中のNANDゲート55に代え、NORゲート56を備える。PLLカウンタ制御信号PCCが、ローレベルの期間にラッチ2から出力される信号にかかわらず、リファレンスカウンタ21B、メインカウンタ22Bは、初期カウント値に設定される。
【0092】
S21において、ロックが外れることに応じて、PLLの再チューニングが開始される。再チューニングでは、切り替え後のバラクタVA3が用いられる。
【0093】
S23において、切り替え後のバラクタVA3を使用して、発振周波数fVCOが実動作設定周波数fS1に再ロックする。
【0094】
S25において、ロック検出器24からロック検出信号LDが再出力される。第2実施形態の例では、時刻t5(図20)において、ロック検出信号LDは再度ハイレベルへ遷移する。
【0095】
再チューニング動作時での、セレクタ部32Bでのラッチ動作について説明する。セレクタ部32Bでのラッチのトリガ信号として、ロック検出信号LDを用いる場合には、初回ロック時(時刻t3)のみならず、再ロック時(時刻t5)においてもラッチ動作が行われてしまう。すると、初回ロック時と再ロック時とで、選択信号V1ないしV3の値が異なっている場合には、実動作段階で用いられたバラクタと異なるバラクタに切り替えられてしまい、誤動作が発生してしまう。
【0096】
しかし、第2実施形態では、セレクタ部32Bでのラッチのトリガ信号として、反転信号OUTXを使用している。反転信号OUTXでは、再ロック時(時刻t5)には、反転信号OUTXに立ち上がりエッジが現れない(図20,領域R1)。これは、反転信号OUTXが、ロック検出信号LDの分周信号である反転信号LOXを用いて生成されているため、再ロック時のロック検出信号LDの立ち上がりエッジが伝達されないためである。これにより、初回ロック時のバラクタの選択動作を、その後の再チューニング時においても維持することができる。
【0097】
S27において、再ロック時以降においても、再チューニング時に使用されたバラクタVA3が選択され、セレクタ部32Bでの選択は、S15での選択が維持される。これにより、バラクタVA3で、発振周波数fVCOの実動作設定周波数fS1に対するロックが継続される(S29)。
【0098】
第1実施形態に係るPLL回路1の効果を説明する。PLL回路1では、VCO34に、粗調整用のバラクタVA0と、複数の微調整用のバラクタVA1ないしVA3が備えられる。そして、PLLチューニングが開始されると、バラクタVA0が選択され、粗調整段階とされる。粗調整段階では、発振周波数帯域は広くされるが、変換感度(Kv)が高くなり位相雑音特性が悪化すると共に、制御電圧VTに対する発振周波数fVCOの変化の直線性が劣化する。そして、初回のロック検出が行われることに応じて、バラクタVA1ないしVA3の何れかが選択され、微調整段階へ移行する。微調整段階では、発振周波数帯域は狭くなるが、位相雑音特性および発振周波数fVCOの変化の直線性が向上する。これにより、広周波数帯域で発振し、かつ低位相雑音特性および高直線性を有するPLL回路1を提供することができる。よって、PLL回路1でのロックレンジが狭くなることや、製造ばらつきに対する発振周波数範囲のマージンが不足するなどの問題を防止することが可能となる。
【0099】
また、第1実施形態に係るPLL回路1のセレクタSL1では、フリップフロップFF1aは、入力されるロック検出信号を分周して反転信号LOXを出力する。また、ナンドゲートND11およびインバータINV12により、反転信号LOXから反転信号OUTXを生成する。そして、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて、ラッチFF1bにおいて、選択信号V1をラッチする。また、セレクタSL2およびSL3においても同様して、選択信号V2およびV3がラッチされる。これにより、ロック検出信号LDを分周した信号を用いて選択信号V1ないしV3のラッチを制御することで、初回ロック検出時に選択されたバラクタの選択動作を、再ロック検出以降も保持することができる。よって、再ロック検出後にバラクタの切り替えが行われないように、バラクタの切り替え制御を行うことができる。また、バラクタの切り替え制御にロック検出信号LDを分周した信号を用いるため、信号の生成に必要なロジック回路の規模を小さくすることができ、チップ面積増加を抑えることが可能となる。
【0100】
また、第1実施形態に係るPLL回路1では、バラクタの切り替え制御に、ロック検出信号LDを使用している。そして、PLLブロック2およびVCOブロック3は、PLLループを構成する上でセットで用いられる回路であることから、ロック検出信号LDは必須の信号である。すると、必須の信号であるロック検出信号LDを、バラクタの切り替え制御に流用することで、新規信号を不必要とすることができる。よって、バラクタの切り替え制御に用いる信号の生成に必要なロジック回路の規模を小さくすることができる。
【0101】
また、従来、複数のバラクタを切り替える制御を行う際に、バラクタを順次切り替えて行く制御を行う場合がある。この場合、切り替え実行回数は、最大でバラクタの数と一致することになる。しかし、第1実施形態に係るPLL回路1では、粗調整段階と微調整段階の2段階で切り替え制御を行うことができるため、切り替え動作を簡略化することが可能となる。
【0102】
また、第1実施形態に係るPLL回路1では、共振回路35内において、スイッチSW0ないしSW3が、インダクタL1およびL2やバラクタVA0ないしVA3などと直列に接続されない構成とされる。よって、スイッチSW0ないしSW3のオン抵抗に起因して、位相雑音劣化が発生する事態を防止することができる。
【0103】
またロック検出器24では、再ロック時の判定条件に比して、初回ロック時の判定条件を甘くするとしてもよい。初回ロックは、使用するバラクタを決定するためのロックであるため、正確にロックする必要がないためである。また、判定条件の甘い初回ロック検出用のロック検出器と、判定条件の厳しい再ロック検出用のロック検出器とを備え、使用するロック検出器を切り替えるとしてもよい。これにより、粗調整に必要な時間を短縮することが可能となる。
【0104】
第2実施形態に係るPLL回路1Bの効果を説明する。PLL回路1Bでは、VCO34に、初期動作用のバラクタVA0と、複数の実動作用のバラクタVA1ないしVA3が備えられる。そして、PLLチューニングが開始されると、バラクタVA0が選択され、初期動作段階とされる。初期動作段階では、発振周波数帯域を広く設定し、許容される製造ばらつきの範囲内で初期動作時に確実にロックが行われるようにする。そして、初回のロック検出時のVT電圧を検出することで、製造ばらつき量を検出する。製造ばらつき量に応じて、バラクタVA1ないしVA3のうち適切なバラクタが選択され、実動作段階へ移行する。実動作段階では、位相雑音特性および発振周波数fVCOの変化の直線性が向上する。これにより、製造ばらつきを補正し、かつ低位相雑音特性および高直線性を有するPLL回路1Bを提供することができる。よって、PLL回路1Bでの製造ばらつきに対する発振周波数範囲のマージンが不足するなどの問題を防止することが可能となる。
【0105】
また、第2実施形態に係るPLL回路1BのセレクタSL1Bでは、フリップフロップFF1aBは、入力されるロック検出信号LDを分周して反転信号LOXを出力する。また、ナンドゲートND11およびインバータINV12により、反転信号LOXから反転信号OUTXを生成する。そして、反転信号OUTXの立ち上がりエッジに応じて、ラッチFF1bBにおいて、選択信号V1をラッチする。また、セレクタSL2BおよびSL3Bにおいても同様に、選択信号V2およびV3がラッチされる。これにより、ロック検出信号LDを分周した信号を用いて選択信号V1ないしV3のラッチを制御することで、初回ロック検出時に選択されたバラクタの選択動作を、再ロック検出以降も保持することができる。よって、再ロック検出後にバラクタの切り替えが行われないように、バラクタの切り替え制御を行うことができる。また、バラクタの切り替え制御にロック検出信号LDを分周した信号を用いるため、信号の生成に必要なロジック回路の規模を小さくすることができ、チップ面積増加を抑えることが可能となる。
【0106】
また、第2実施形態に係るPLL回路1Bでは、バラクタの切り替え制御に、ロック検出信号LDを使用している。そして、PLLブロック2BおよびVCOブロック3Bは、PLLループを構成する上でセットで用いられる回路であることから、ロック検出信号LDは必須の信号である。すると、必須の信号であるロック検出信号LDを、バラクタの切り替え制御に流用することで、新規信号を不必要とすることができる。よって、バラクタの切り替え制御に用いる信号の生成に必要なロジック回路の規模を小さくすることができる。
【0107】
また、従来、複数のバラクタを切り替える制御を行う際に、バラクタを順次切り替えて行く制御を行う場合がある。この場合、切り替え実行回数は、最大でバラクタの数と一致することになる。しかし、第2実施形態に係るPLL回路1Bでは、初期動作段階と実動作段階の2段階で切り替え制御を行うことができるため、切り替え動作を簡略化することが可能となる。
【0108】
また、第2実施形態に係るPLL回路1Bでは、共振回路35内において、スイッチSW0ないしSW3が、インダクタL1およびL2やバラクタVA0ないしVA3などと直列に接続されない構成とされる。よって、スイッチSW0ないしSW3のオン抵抗に起因して、位相雑音劣化が発生する事態を防止することができる。
【0109】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。
【0110】
例えば、ロック検出器24では、再ロック時の判定条件に比して、初回ロック時の判定条件を甘くするとしてもよい。初回ロックは、使用するバラクタを決定するためのロックであるため、正確にロックする必要がないためである。また、判定条件の甘い初回ロック検出用のロック検出器と、判定条件の厳しい再ロック検出用のロック検出器とを備え、使用するロック検出器を切り替えるとしてもよい。これにより、初期動作段階に必要な時間を短縮することが可能となる。
【0111】
また、実使用時において、データ信号DATAの更新による発振周波数fVCOの切り替わりの際に一時的にロック状態が解除されることも考えられる。この場合、ロック検出信号LDは、一時的にローレベルとなった後ハイレベルに戻ることとなる。この場合にも、フリップフロップFF1aB(図13)から出力される反転信号LOXの反転によるセレクタ部32Bでのセレクタの誤った切換を防止することが有効である。初期化時におけるバラクタの選択の後は、セレクタ部32Bへロック検出信号LDの入力をマスクすること、セレクタ部32Bから出力されるバラクタ切替信号の切り替えを抑止すること、初期化時に出力されたバラクタ切替信号を保持することなどにより、実動作時において、データ信号DATAの更新に伴い一時的にロック状態が解除された場合にも、バラクタの選択が誤って切り替えられてしまうことを防止することができる。
【0112】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。例えば第1実施形態と第2実施形態を同時に一つのPLL回路に適用することで、広帯域な周波数特性を有し、かつ、製造ばらつきがあっても安定した低位相雑音特性を確保したPLL回路が実現できる。
【0113】
また、インバータINV1およびINV2に代えて、コンパレータを用いてもよい。この場合、コンパレータの基準電圧に、閾電圧Vth1およびVth2を用いればよい。
【0114】
なお、バラクタVA0は第1の可変容量の一例、バラクタVA1ないしVA3は第2の可変容量の一例、VT電圧検出部31は選択部の一例、選択信号V1ないしV3は第1選択信号の一例、フリップフロップFF1aは報知回路の一例、フリップフロップFF1aBはロック報知回路の一例、ラッチFF1bおよびFF1bBはラッチ回路の一例である。
【0115】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の容量値の可変範囲よりも小さい可変範囲を有する複数の第2の可変容量とを備え、前記複数の第2の可変容量の可変範囲は前記第1の可変容量の可変範囲をカバーするように互いに異なる範囲に設定され、前記第1の可変容量と前記複数の第2の可変容量との何れを使用するかが選択可能とされ、入力される制御電圧に応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器と、
入力される前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成する位相比較部と、
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が予め定められる設定発振周波数にロックされているか否かを検出するロック検出部と、
入力される前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを決定する選択部と、
前記ロック検出部の出力と前記選択部の出力とが入力され、前記出力信号の粗調整段階においては前記第1の可変容量を選択させ、前記粗調整段階において前記出力信号のロックが検出された場合に前記出力信号の微調整段階へ移行し、前記微調整段階においては前記微調整段階に移行する場合において前記選択部によって選択されていた前記第2の可変容量を選択させるセレクタ部と
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路。
(付記2)
前記選択部は、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを報知する第1選択信号を出力し、
前記セレクタ部は、
前記ロック検出が前記粗調整段階において検出されたことを報知する報知回路と、
前記第1選択信号と前記報知回路の出力とが入力され、前記報知回路から報知を受け取ることに応じて前記第1選択信号をラッチし、ラッチした前記第1選択信号を前記電圧制御型発振器へ出力するラッチ回路と
を備えることを特徴とする付記1に記載の位相同期ループ回路。
(付記3)
前記ロック検出部は、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされていない期間においては第1レベルのロック検出信号を出力し、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされている期間においては第2レベルのロック検出信号を出力し、
前記報知回路は、入力される前記ロック検出信号を分周して分周信号を出力し、
前記ラッチ回路は、前記分周信号の前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に応じて前記第1選択信号をラッチする
ことを特徴とする付記2に記載の位相同期ループ回路。
(付記4)
前記第1の可変容量の可変範囲は前記制御電圧の電圧範囲と1対1に対応し、
前記第1の可変容量の可変範囲は複数の分割可変範囲に分割され、
前記分割可変範囲の各々に対応するように前記複数の第2の可変容量の可変範囲が設定され、
前記選択部は、入力される前記制御電圧に対応する前記分割可変範囲を検出し、検出した前記分割可変範囲に対応する前記第2の可変容量を選択する
ことを特徴とする付記1ないし付記3の何れかに記載の位相同期ループ回路。
(付記5)
前記セレクタ部は、前記設定発振周波数の値を変更することに応じて、前記微調整段階から前記粗調整段階へ再移行する
ことを特徴とする付記1に記載の位相同期ループ回路。
(付記6)
前記ロック検出部は、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数に所定期間一致することを検出することで前記ロック検出を行い、
前記粗調整段階での前記所定期間は、前記微調整段階での前記所定期間よりも短くされる
ことを特徴とする付記1ないし付記5の何れかに記載の位相同期ループ回路。
(付記7)
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の容量値の可変範囲よりも小さい可変範囲を有する複数の第2の可変容量とを備え、前記複数の第2の可変容量の可変範囲は前記第1の可変容量の可変範囲をカバーするように互いに異なる範囲に設定され、入力される制御電圧に応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器の制御方法であって、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成するステップと、
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が予め定められる設定発振周波数にロックされているか否かを検出するステップと、
前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを決定するステップと、
前記ロック検出部の出力と前記選択部の出力とが入力され、前記出力信号の粗調整段階においては前記第1の可変容量を選択させ、前記粗調整段階において前記出力信号のロックが検出された場合に前記出力信号の微調整段階へ移行し、前記微調整段階においては前記微調整段階に移行する場合において前記選択部によって選択されていた前記第2の可変容量を選択させるステップと
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路の制御方法。
(付記8)
初期化時に選択される第1の可変容量と、前記第1の可変容量の可変範囲に包含され動作仕様上必要とされる容量可変幅を有する複数の第2の可変容量とを備え、入力される制御電圧と前記第1の可変容量または前記複数の第2の可変容量のうち選択される可変容量とに応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器と、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成する位相比較部と、
初期化時の前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうち何れか1つを選択する選択部と
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路。
(付記9)
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が前記基準周波数信号に応じた発振周波数にロックされているか否かを検出するロック検出部を備え、
前記選択部は、
初期化時の前記制御電圧の電圧レンジを検出して、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを報知する第1選択信号を出力する検出部と、
前記ロック検出部によるロック検出がされたことを報知するロック報知回路と、
前記第1選択信号と前記ロック報知回路の出力とが入力され、前記報知回路から報知を受け取ることに応じて前記第1選択信号をラッチし、ラッチした前記第1選択信号を前記電圧制御型発振器へ出力するラッチ回路とを備えることを特徴とする付記8に記載の位相同期ループ回路。
(付記10)
前記ロック検出部は、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされていない期間においては第1レベルのロック検出信号を出力し、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされている期間においては第2レベルのロック検出信号を出力し、
前記ロック報知回路は、入力される前記ロック検出信号を分周して分周信号を出力し、
前記ラッチ回路は、前記分周信号の前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に応じて前記第1選択信号をラッチする
ことを特徴とする付記9に記載の位相同期ループ回路。
(付記11)
前記第1の可変容量の可変範囲は、前記制御電圧の電圧範囲と1対1に対応し、前記動作仕様上必要とされる容量可変幅と製造ばらつきによる容量値のばらつきとを包含した範囲であり、
前記第1の可変容量の可変範囲は複数の分割可変範囲に分割され、
前記分割可変範囲の各々に対応するように前記複数の第2の可変容量の可変範囲が設定され、
前記選択部は、前記電圧制御型発振器の特性の製造によるばらつきに対応する前記第2の可変容量を選択する
ことを特徴とする付記8ないし付記10の何れかに記載の位相同期ループ回路。
(付記12)
前記基準周波数が入力され、前記初期化時には予め定められる設定周波数が出力される分周値に設定され、前記実動作時には分周値の変更が可能な第1分周器と、
前記出力信号が入力される第2分周器とを備え、
前記第1および第2分周から出力される信号は前記位相比較部に入力されることを特徴とする付記8ないし付記11の少なくとも何れか1項に記載の位相同期ループ回路。
(付記13)
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の可変範囲に包含される複数の第2の可変容量とを備え、入力される制御電圧と前記第1の可変容量または前記複数の第2の可変容量のうち選択される可変容量とに応じた発振周波数を有する出力信号を生成して位相同期を行う位相同期ループの制御方法であって、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成するステップと、
初期化時に前記第1の可変容量を選択して位相同期を行うステップと、
初期化時の位相同期のステップに応じて生成される前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうち何れか1つを選択するステップとを備えることを特徴とする位相同期ループ回路の制御方法。
【符号の説明】
【0116】
1、1B PLL回路
21 リファレンスカウンタ
22 メインカウンタ
24 ロック検出器
31 VT電圧検出部
VA0ないしVA3 バラクタ
V1ないしV3 選択信号
SL0ないしSL3、SL0BないしSL3B セレクタ
FF1a、FF1aB フリップフロップ
FF1b、FF1bB ラッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の容量値の可変範囲よりも小さい可変範囲を有する複数の第2の可変容量とを備え、前記複数の第2の可変容量の可変範囲は前記第1の可変容量の可変範囲をカバーするように互いに異なる範囲に設定され、入力される制御電圧に応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器と、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成する位相比較部と、
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が予め定められる設定発振周波数にロックされているか否かを検出するロック検出部と、
前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを決定する選択部と、
前記ロック検出部の出力と前記選択部の出力とが入力され、前記出力信号の粗調整段階においては前記第1の可変容量を選択させ、前記粗調整段階において前記出力信号のロックが検出された場合に前記出力信号の微調整段階へ移行し、前記微調整段階においては前記微調整段階に移行する場合において前記選択部によって選択されていた前記第2の可変容量を選択させるセレクタ部と
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路。
【請求項2】
前記選択部は、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを報知する第1選択信号を出力し、
前記セレクタ部は、
前記ロック検出が前記粗調整段階において検出されたことを報知する報知回路と、
前記第1選択信号と前記報知回路の出力とが入力され、前記報知回路から報知を受け取ることに応じて前記第1選択信号をラッチし、ラッチした前記第1選択信号を前記電圧制御型発振器へ出力するラッチ回路と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の位相同期ループ回路。
【請求項3】
前記ロック検出部は、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされていない期間においては第1レベルのロック検出信号を出力し、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされている期間においては第2レベルのロック検出信号を出力し、
前記報知回路は、入力される前記ロック検出信号を分周して分周信号を出力し、
前記ラッチ回路は、前記分周信号の前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に応じて前記第1選択信号をラッチする
ことを特徴とする請求項2に記載の位相同期ループ回路。
【請求項4】
初期化時に選択される第1の可変容量と、前記第1の可変容量の可変範囲に包含され動作仕様上必要とされる容量可変幅を有する複数の第2の可変容量とを備え、入力される制御電圧と前記第1の可変容量または前記複数の第2の可変容量のうち選択される可変容量とに応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器と、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成する位相比較部と、
初期化時の前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうち何れか1つを選択する選択部と
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路。
【請求項5】
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が前記基準周波数信号に応じた発振周波数にロックされているか否かを検出するロック検出部を備え、
前記選択部は、
初期化時の前記制御電圧の電圧レンジを検出して、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを報知する第1選択信号を出力する検出部と、
前記ロック検出部によるロック検出がされたことを報知するロック報知回路と、
前記第1選択信号と前記ロック報知回路の出力とが入力され、前記ロック報知回路から報知を受け取ることに応じて前記第1選択信号をラッチし、ラッチした前記第1選択信号を前記電圧制御型発振器へ出力するラッチ回路とを備えることを特徴とする請求項4に記載の位相同期ループ回路。
【請求項6】
前記ロック検出部は、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされていない期間においては第1レベルのロック検出信号を出力し、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされている期間においては第2レベルのロック検出信号を出力し、
前記ロック報知回路は、入力される前記ロック検出信号を分周して分周信号を出力し、
前記ラッチ回路は、前記分周信号の前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に応じて前記第1選択信号をラッチする
ことを特徴とする請求項5に記載の位相同期ループ回路。
【請求項7】
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の容量値の可変範囲よりも小さい可変範囲を有する複数の第2の可変容量とを備え、前記複数の第2の可変容量の可変範囲は前記第1の可変容量の可変範囲をカバーするように互いに異なる範囲に設定され、入力される制御電圧に応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器の制御方法であって、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成するステップと、
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が予め定められる設定発振周波数にロックされているか否かを検出するステップと、
前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを決定するステップと、
前記ロック検出部の出力と前記選択部の出力とが入力され、前記出力信号の粗調整段階においては前記第1の可変容量を選択させ、前記粗調整段階において前記出力信号のロックが検出された場合に前記出力信号の微調整段階へ移行し、前記微調整段階においては前記微調整段階に移行する場合において前記選択部によって選択されていた前記第2の可変容量を選択させるステップと
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路の制御方法。
【請求項8】
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の可変範囲に包含される複数の第2の可変容量とを備え、入力される制御電圧と前記第1の可変容量または前記複数の第2の可変容量のうち選択される可変容量とに応じた発振周波数を有する出力信号を生成して位相同期を行う位相同期ループの制御方法であって、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成するステップと、
初期化時に前記第1の可変容量を選択して位相同期を行うステップと、
初期化時の位相同期のステップに応じて生成される前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうち何れか1つを選択するステップとを備えることを特徴とする位相同期ループ回路の制御方法。
【請求項1】
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の容量値の可変範囲よりも小さい可変範囲を有する複数の第2の可変容量とを備え、前記複数の第2の可変容量の可変範囲は前記第1の可変容量の可変範囲をカバーするように互いに異なる範囲に設定され、入力される制御電圧に応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器と、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成する位相比較部と、
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が予め定められる設定発振周波数にロックされているか否かを検出するロック検出部と、
前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを決定する選択部と、
前記ロック検出部の出力と前記選択部の出力とが入力され、前記出力信号の粗調整段階においては前記第1の可変容量を選択させ、前記粗調整段階において前記出力信号のロックが検出された場合に前記出力信号の微調整段階へ移行し、前記微調整段階においては前記微調整段階に移行する場合において前記選択部によって選択されていた前記第2の可変容量を選択させるセレクタ部と
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路。
【請求項2】
前記選択部は、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを報知する第1選択信号を出力し、
前記セレクタ部は、
前記ロック検出が前記粗調整段階において検出されたことを報知する報知回路と、
前記第1選択信号と前記報知回路の出力とが入力され、前記報知回路から報知を受け取ることに応じて前記第1選択信号をラッチし、ラッチした前記第1選択信号を前記電圧制御型発振器へ出力するラッチ回路と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の位相同期ループ回路。
【請求項3】
前記ロック検出部は、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされていない期間においては第1レベルのロック検出信号を出力し、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされている期間においては第2レベルのロック検出信号を出力し、
前記報知回路は、入力される前記ロック検出信号を分周して分周信号を出力し、
前記ラッチ回路は、前記分周信号の前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に応じて前記第1選択信号をラッチする
ことを特徴とする請求項2に記載の位相同期ループ回路。
【請求項4】
初期化時に選択される第1の可変容量と、前記第1の可変容量の可変範囲に包含され動作仕様上必要とされる容量可変幅を有する複数の第2の可変容量とを備え、入力される制御電圧と前記第1の可変容量または前記複数の第2の可変容量のうち選択される可変容量とに応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器と、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成する位相比較部と、
初期化時の前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうち何れか1つを選択する選択部と
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路。
【請求項5】
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が前記基準周波数信号に応じた発振周波数にロックされているか否かを検出するロック検出部を備え、
前記選択部は、
初期化時の前記制御電圧の電圧レンジを検出して、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを報知する第1選択信号を出力する検出部と、
前記ロック検出部によるロック検出がされたことを報知するロック報知回路と、
前記第1選択信号と前記ロック報知回路の出力とが入力され、前記ロック報知回路から報知を受け取ることに応じて前記第1選択信号をラッチし、ラッチした前記第1選択信号を前記電圧制御型発振器へ出力するラッチ回路とを備えることを特徴とする請求項4に記載の位相同期ループ回路。
【請求項6】
前記ロック検出部は、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされていない期間においては第1レベルのロック検出信号を出力し、前記出力信号の前記発振周波数が前記設定発振周波数にロックされている期間においては第2レベルのロック検出信号を出力し、
前記ロック報知回路は、入力される前記ロック検出信号を分周して分周信号を出力し、
前記ラッチ回路は、前記分周信号の前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に応じて前記第1選択信号をラッチする
ことを特徴とする請求項5に記載の位相同期ループ回路。
【請求項7】
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の容量値の可変範囲よりも小さい可変範囲を有する複数の第2の可変容量とを備え、前記複数の第2の可変容量の可変範囲は前記第1の可変容量の可変範囲をカバーするように互いに異なる範囲に設定され、入力される制御電圧に応じた発振周波数を有する出力信号を生成する電圧制御型発振器の制御方法であって、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成するステップと、
前記位相比較結果に基づいて、前記出力信号の前記発振周波数が予め定められる設定発振周波数にロックされているか否かを検出するステップと、
前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうちの何れを選択するかを決定するステップと、
前記ロック検出部の出力と前記選択部の出力とが入力され、前記出力信号の粗調整段階においては前記第1の可変容量を選択させ、前記粗調整段階において前記出力信号のロックが検出された場合に前記出力信号の微調整段階へ移行し、前記微調整段階においては前記微調整段階に移行する場合において前記選択部によって選択されていた前記第2の可変容量を選択させるステップと
を備えることを特徴とする位相同期ループ回路の制御方法。
【請求項8】
第1の可変容量と、前記第1の可変容量の可変範囲に包含される複数の第2の可変容量とを備え、入力される制御電圧と前記第1の可変容量または前記複数の第2の可変容量のうち選択される可変容量とに応じた発振周波数を有する出力信号を生成して位相同期を行う位相同期ループの制御方法であって、
前記出力信号と基準周波数信号との位相比較結果に基づいて前記制御電圧を生成するステップと、
初期化時に前記第1の可変容量を選択して位相同期を行うステップと、
初期化時の位相同期のステップに応じて生成される前記制御電圧に応じて、前記複数の第2の可変容量のうち何れか1つを選択するステップとを備えることを特徴とする位相同期ループ回路の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−78075(P2011−78075A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15628(P2010−15628)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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