説明

位相同期ループ回路及びこの位相同期ループ回路の制御方法

【課題】電圧制御水晶発振器の経年変化による異常が発生しても、この異常を確実に検出できるようにした位相同期ループ回路を提供する。
【解決手段】カウンタ111にて外部クロック信号から内部クロック信号に同期した矩形波信号を生成するとともに、カウンタ112−2にて内部クロック信号から外部クロック信号の異常を検出するために必要なウインドウ信号W1を生成し、カウンタ115にて内部クロック信号から電圧制御水晶発振器12の異常を検出するために必要なウインドウ信号W2を生成し、異常判定制御部114−2にて矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1,W2のハイレベル期間内に入っているか否かを判定し、ウインドウ信号W1のハイレベル期間に入っていて、ウインドウ信号W2のハイレベル期間内に入っていない場合に、電圧制御水晶発振器12の異常と判定するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばデジタル放送の放送局に用いられ、外部クロック信号と内部クロック信号とを位相同期させる位相同期ループ回路及びこの位相同期ループ回路で使用される制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地上波放送システムにおいて、デジタル放送が開始されている。このようなデジタル放送システムでは、例えば演奏所(スタジオ)及び送信所をマイクロ波により結ぶSTL(Studio to Transmitter Link)放送ネットワークの構築が一つの課題となっている。また、送信所及び中継局をマイクロ波により結ぶTTL(Transmitter to Transmitter Link)放送ネットワークの構築も一つの課題となっている。
【0003】
ところで、上記送信所または中継局では、高安定な基準周波数を得て、この基準周波数をリファレンスとして電圧制御水晶発振器(VCXO)の制御入力にPLL(Phase Locked Loop)をかけることで、高精度の信号処理用周波数信号を生成するPLL回路を利用することが考えられている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−274678号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記PLL回路では、VCXOの経年変化等による異常状態に陥ったとしても、このVCXOの異常をユーザ等は認識することができない。従って、PLL回路はVCXOに異常が発生したまま長時間にわたって放置されることになり、これによりPLL回路の運用に支障を来すことがあった。これを解決するためには、VCXOの制御電圧を監視するアナログ回路が必要であるが、PLL回路の大型化及び高価格化を招いてしまうことになる。
【0005】
そこで、この発明の目的は、電圧制御水晶発振器の経年変化による異常が発生しても、この異常を確実に検出できるようにした位相同期ループ回路及びこの位相同期ループ回路の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記目的を達成するために、以下のように構成される。
(1)入力される外部クロック信号から生成され第1信号レベル及び第2信号レベルを有する基準クロック信号と発振器から生成され第1信号レベル及び第2信号レベルを有する内部クロック信号とを位相比較器にて位相比較し、この位相比較結果に基づいて当該発振器の発振周波数を制御して基準クロック信号と内部クロック信号とを位相同期させる位相同期ループ回路において、基準クロック信号を1/m(mは自然数)に分周し第1の分周信号を生成して位相比較器に供給する第1の分周手段と、内部クロック信号を1/n(nは自然数)に分周し第2の分周信号を生成して位相比較器に供給する第2の分周手段と、発振器に対し入力する制御信号を一時保持する保持手段と、第1及び第2の分周手段の出力を比較し、この比較結果に基づいて保持手段から制御信号を発振器に入力し、発振器の制御後に第1の分周信号と第2の分周信号との位相差が所定値以上の場合に、発振器の異常を決定する制御手段とを備えるようにしたものである。
【0007】
(1)の構成によれば、外部クロック信号を1/mに分周して第1の分周信号を生成すると共に、内部クロック信号を1/nに分周して第1の分周信号とは異なる第2の分周信号を生成し、これら第1の分周信号と第2の分周信号との位相比較結果に対応する制御信号を発振器に供給する前に、当該制御信号を保持部に保持しておくようにし、再度位相比較結果から第1の分周信号と第2の分周信号との位相ずれが許容範囲に入っている場合のみ、保持部から制御信号を読み出して発振器に供給し、発振器の制御後に第1の分周信号と第2の分周信号との位相差が所定値以上の場合に、発振器の異常を決定するようにしている。
【0008】
従って、簡単な手順により外部クロック信号の異常と発振器の異常とを区別して検出することができ、これにより発振器に異常が発生したまま長時間にわたって放置される不具合はなくなり、位相同期ループ回路を常に安定に運用することが可能となる。
【0009】
(2)さらに、第2の分周信号から、第2信号レベルの期間が略2nクロック長以上及びn/2以下に相当する期間となる第1のウインドウ信号を生成して位相比較器に供給する第1のウインドウ生成手段と、第1のウインドウ信号に比して第2信号レベル期間が短い第2のウインドウ信号を生成する第2のウインドウ生成手段とを備え、制御手段は、第1の分周信号の第1信号レベルから第2信号レベルへの変化点または第2信号レベルから第1信号レベルへの変化点が第1のウインドウ信号の第2信号レベル期間内に入っているか否かを判定し、所定回数以上入らないと判定された場合に、第1の分周手段をリセットして変化点が第1のウインドウ信号の第2信号レベル期間内に入るように制御し、第1の分周信号の変化点が第1のウインドウ信号の第2信号レベル期間内に入りかつ第2のウインドウ信号の第2信号レベル期間に入らないと判定された場合に、発振器の異常を決定することを特徴とする。
【0010】
(2)の構成によれば、第2の分周信号から外部クロック信号の異常を検出するために必要な第1のウインドウ信号を生成し、さらに第2の分周信号から発振器の異常を検出するために必要な第2のウインドウ信号を生成し、これら第1及び第2のウインドウ信号をそれぞれ第1の分周信号と比較することで、第1の分周信号の変化点が第1及び第2のウインドウ信号の第2信号レベル期間内に入っているか否かが判定される。そして、第1及び第2のウインドウ信号の第2信号レベル期間に入っていない場合に、第1の分周信号の変化点が第1及び第2のウインドウ信号の第2信号レベル期間内に入るように保持手段が制御され、第2のウインドウ信号の第2信号レベル期間に入っていない場合に、発振器の異常と判定するようにしている。
【0011】
従って、外部クロック信号の異常と発振器の異常とを区別して検出することができ、これにより発振器に異常が発生したまま長時間にわたって放置される不具合はなくなり、位相同期ループ回路を常に安定に運用することが可能となる。また、発振器モニタ用のアナログ回路を利用する場合に比べ、位相同期ループ回路の消費電力のさらなる低減と、回路構成の簡単小型化を図ることができる。
【0012】
(3)基準クロック信号と当該基準クロック信号に対する予備用基準クロック信号とを選択的に第1の分周手段に入力する入力切替手段をさらに備え、制御手段は、第1の分周信号の変化点が第1のウインドウ信号の第2信号レベル期間に入らないと判定された場合に、所定の条件に応じて、予備用基準クロック信号を第1の分周手段に入力するように入力切替手段を切替制御することを特徴とする。なお、所定の条件には、第1の分周信号の変化点が第1のウインドウ信号の第2信号レベル期間内に入った回数を用いる。
(3)の構成によれば、発振器に対する制御信号の供給停止が解除された後、基準クロック信号に異常が発生した場合に、予備用基準クロック信号に切り替えることで、基準クロック信号の異常に対応することができる。
【0013】
(4)制御手段は、第1の分周信号の変化点が第1のウインドウ信号の第2信号レベル期間内に入り、第2のウインドウ信号の第2信号レベル期間内に入らない回数を検出し、この検出結果に基づいて、発振器の異常を判定することを特徴とする。
(4)の構成によれば、一時的な動作異常以外の発振器の異常を高確率で検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上詳述したようにこの発明によれば、電圧制御水晶発振器の経年変化による異常が発生しても、この異常を確実に検出できるようにした位相同期ループ回路及びこの位相同期ループ回路の制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、この発明の第1の実施形態としての位相同期ループ回路の構成を示すブロック図である。この位相同期ループ回路は、例えばデジタル放送の番組情報信号を処理する放送機器等に使用されるものとする。
【0016】
外部クロック信号は、PLD回路11Aに入力され、電圧制御水晶発振器12から出力される内部クロック信号と位相比較される。この位相比較結果に対応する制御信号は、ループフィルタ14に供給される。そして、ループフィルタ14にて電圧制御水晶発振器12の制御電圧に変換されて、サンプルホールド回路15に一時的に保持される。そしてサンプルホールド回路15から読み出された制御電圧は、電圧制御水晶発振器12に供給される。
【0017】
また、PLD回路11Aは、カウンタ111,112と、位相比較部113と、制御部114と、入力切替器117とを備えている。
【0018】
すなわち、外部クロック信号は、カウンタ111に入力されて1/m(mは自然数)カウントされることで、信号レベルがハイレベルとローレベルの第1の矩形波信号に生成される。また、内部クロック信号は、カウンタ112に入力されて1/n(nは自然数)カウントされることで、上記第1の矩形波信号とは異なる第2の矩形波信号に生成される。これら第1及び第2の矩形波信号は、位相比較部113及び制御部114に供給される。
【0019】
制御部114は、上記第1及び第2の矩形波信号を比較して、図2に示す如く第1の矩形波信号(1/mカウンタの値)の1/mから(1/m)+1になる変化点が、第2の矩形波信号(1/nカウンタの値)の1/nと(1/n)+1との間であることを確認することで、1つのクロックがロックしているか否かを判定する。ここで、上記変化点が第2の矩形波信号の1/nと(1/n)+1との間に入っていれば、サンプルホールド回路15に保持されている制御電圧を読み出して電圧制御水晶発振器12に入力し、入っていなければ入るまでサンプルホールド回路15に保持されている制御電圧をそのまま保持した状態となるようにサンプルホールド回路15を制御し、また、カウンタ111,112を制御する。
【0020】
さらに、制御部114は、第1の矩形波信号(1/mカウンタの値)の1/mから(1/m)+1になる変化点が、第2の矩形波信号(1/nカウンタの値)の1/nと(1/n)+1との間より短い異常判定基準期間内であることを確認することで、電圧制御水晶発振器12が正常であるか否かを判定する。ここで、上記変化点が第2の矩形波信号の異常判定基準期間内に入っていない場合に、電圧制御水晶発振器12の異常を決定する。
【0021】
カウンタ111の入力端子には入力切替器117が接続されている。入力切替器117は、n個の外部クロック信号S1〜Snのうち1つをカウンタ111へ導出する。なお、入力切替器117は、制御部114により切替制御される。
【0022】
以上のように上記第1の実施形態では、外部クロック信号をカウンタ111にて1/mカウントして第1の矩形波信号に生成すると共に、内部クロック信号をカウンタ112にて1/nカウントして第2の矩形波信号に生成し、これら第1及び第2の矩形波信号との位相比較結果に対応する制御信号を電圧制御水晶発振器12に供給する前に、当該制御信号をサンプルホールド回路15に保持しておくようにしている。そして、制御部114にて第1の矩形波信号と第2の矩形波信号との位相ずれが許容範囲に入っている場合のみ、サンプルホールド回路15から制御電圧を電圧制御水晶発振器12に供給するようにし、上記位相ずれが許容範囲内であっても、異常判定基準期間内に入っていない場合には、電圧制御水晶発振器12の異常と判定するようにしている。
【0023】
従って、簡単な手順により外部クロック信号の異常と電圧制御水晶発振器12の異常とを区別して検出することができ、これにより電圧制御水晶発振器12に異常が発生したまま長時間にわたって放置される不具合はなくなり、位相同期ループ回路を常に安定に運用することが可能となる。
【0024】
(第2の実施形態)
図3は、この発明の第2の実施形態としての位相同期ループ回路の構成を示すブロック図である。
【0025】
外部クロック信号は、PLD回路11Bに入力され、電圧制御水晶発振器12から出力される内部クロック信号と位相比較される。この位相比較結果に対応する制御信号は、スイッチ13を介してサンプルホールド回路15に供給される。そして、サンプルホールド回路15に保持された電圧制御水晶発振器12の制御電圧は、電圧制御水晶発振器12に供給される。また、スイッチ13は、PLD回路11Bによりオン・オフ制御される。これにより、電圧制御水晶発振器12に供給される制御電圧は、内部クロック信号から生成したウインドウで切り出した外部クロック信号のローレベルとハイレベルの積分により得られることになる。なお、積分処理は、チャージポンプにより行われることになる。
【0026】
図4は、上記PLD回路11Bの具体的構成を示すブロック図である。
PLD回路11Bは、カウンタ111,112−2と、位相比較部113と、異常判定制御部114−2と、カウンタ115とを備えている。
【0027】
すなわち、外部クロック信号は、カウンタ111に入力されてカウントされることで、信号レベルがハイレベルとローレベルの矩形波信号に生成される。また、内部クロック信号は、カウンタ112−2に入力されてカウントされることで、矩形波信号の立ち上がりの1クロック前後(カウンタ値0〜2)でハイレベルを示すウインドウ信号W1に生成される。これら矩形波信号及びウインドウ信号W1は、位相比較部113及び異常判定制御部114−2に供給される。また、ウインドウ信号W1は、カウンタ115に入力されてウインドウ信号W1に比してハイレベル期間(カウンタ値0.5〜1.5)が短いウインドウ信号W2に生成され、異常判定制御部114−2に供給される。
【0028】
位相比較部113は、両入力信号の位相比較を行って位相差を検出し、この位相差を制御信号として出力する。異常判定制御部114−2は、矩形波信号とウインドウ信号W1,W2とを比較することで、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1,W2のハイレベル期間内に入っているか否かを判定する。そして、ウインドウ信号W1,W2のハイレベル期間に入らないと判定された場合に、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1,W2のハイレベル期間内に入るようにカウンタ111を制御するとともに、スイッチ13のオン・オフを制御する。
【0029】
また、異常判定制御部114−2は、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1のハイレベル期間に入って、ウインドウ信号W2のハイレベル期間に入らない場合に、電圧制御水晶発振器12の異常と判断して、この異常情報をモニタ部116に供給する。すると、モニタ部116では、異常情報を含む所定の監視情報が表示される。また、モニタ部116では、異常情報を含む所定の監視情報をプリンタにより帳表出力したり、音声等により外部に知らせるようにしてもよい。
【0030】
次に、上記構成における動作について説明する。
以前の位相同期ループ回路では、電圧制御水晶発振器12の経年変化などによる異常動作を監視するために、その制御電圧をモニタする専用のアナログ回路が別途必要である。また、アナログ回路自体の経年変化による誤検知を防止するため、図5に示す如く、異常検知と判断するしきい値にマージンを設けており、このことは、電圧制御水晶発振器12が性能を維持する限界に到達する以前に交換が必要である。
【0031】
そこで、本実施形態では、10MHzの外部クロック信号から図6(c)に示す如く(512/63)MHzの内部クロック信号を生成する。この場合、10MHzを315分周、(512/63)MHzを256分周とし、同一周期となるカウンタ111を用意する。そして、図6(a)に示すように、内部クロック信号のカウンタ値が0〜2の期間だけ開くウインドウ信号W1を生成するカウンタ112−2を用意する。
【0032】
また、図6(c)に示すように、カウンタ111により外部クロック信号のカウンタ値が1の時に立ち上がる矩形波信号を生成する。このウインドウ信号W1のハイレベル期間だけ、矩形波信号の立ち上がりの位相を比較することでPLLを実現する。
【0033】
さらに、カウンタ115により内部クロック信号のカウンタ値が0.5〜1.5(小数点は反転クロックで生成する)の期間だけ開くウインドウ信号W2を生成する。
【0034】
電圧制御水晶発振器12が経年変化等で制御不能になると、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1,W2のハイレベル期間のほぼ中心であったものが、その中心から少しずつずれていくことになる。この中心からずれていくことを監視することで、電圧制御水晶発振器12が制御不能になったことを検出する。具体的には、矩形波信号の立ち上がりが、ウインドウ信号W2の外かつウインドウ信号W1の内である場合が連続して発生した場合に、電圧制御水晶発振器12が制御不能と判断する。
【0035】
また、外部クロック信号に異常が発生すると、ウインドウ信号W1のハイレベル期間に矩形波信号の立ち上がりが検出できなくなる。このとき、ウインドウ信号W1のハイレベル期間を基準として、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1のハイレベル期間の中心になるように外部クロック信号のカウンタ111を補正し、さらにカウンタ111の補正期間ではスイッチ13をオフにし、補正終了時にスイッチ13をオンにする。
【0036】
これにより、外部クロック信号のカウンタ位相差を、外部基準クロックの1クロック以内に調整することができる。
【0037】
以上のように上記第2の実施形態では、カウンタ111にて外部クロック信号から内部クロック信号に同期した矩形波信号を生成するとともに、カウンタ112−2にて内部クロック信号から外部クロック信号の異常を検出するために必要なウインドウ信号W1を生成し、カウンタ115にて内部クロック信号から電圧制御水晶発振器12の異常を検出するために必要なウインドウ信号W2を生成し、異常判定制御部114−2にて矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1,W2のハイレベル期間内に入っているか否かを判定し、ウインドウ信号W1のハイレベル期間に入っていない場合に、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1,W2のハイレベル期間内に入るようにカウンタ111を制御すると共に、スイッチ13のオン/オフを制御するようにしている。
【0038】
一方、ウインドウ信号W1のハイレベル期間に入っていて、ウインドウ信号W2のハイレベル期間内に入っていない場合に、電圧制御水晶発振器12の異常と判定するようにしている。
【0039】
従って、外部クロック信号の異常と電圧制御水晶発振器12の異常とを区別して検出することができ、これにより電圧制御水晶発振器12に異常が発生したまま長時間にわたって放置される不具合はなくなり、位相同期ループ回路を常に安定に運用することができる。また、別途モニタ用のアナログ回路を利用する場合に比べ、位相同期ループ回路の消費電力のさらなる低減と、回路構成の簡単小型化を図ることができる。
【0040】
(第3の実施形態)
図7は、この発明の第3の実施形態としての位相同期ループ回路の構成を示すブロック図である。
すなわち、PLD回路11Cには、2つの外部クロック信号S1,S2が入力されることになる。
【0041】
図8は、上記PLD回路11Cの具体的構成を示すブロック図である。なお、図8において、上記図4と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
カウンタ111の入力端子には入力切替器117が接続されている。入力切替器117は、2つの外部クロック信号S1,S2のうち1つをカウンタ111へ導出する。
カウンタ111,112−2の各出力は、位相比較部113に供給されるとともに、異常判定部118に供給される。また、カウンタ115の出力も、異常判定部118に供給される。
【0043】
異常判定部118は、矩形波信号とウインドウ信号W1,W2とを比較することで、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1,W2のハイレベル期間内に入っているか否かを判定する。この判定結果は、スイッチ制御部119,切替制御部120及びモニタ部121に供給される。
【0044】
スイッチ制御部119は、上記判定結果から矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1のハイレベル期間内に入った回数がT秒間にN(Nは自然数)回以上になったか否かを判定し、N回以上になった場合のみスイッチ13をオン状態に切替制御する。
【0045】
切替制御部120は、上記判定結果から入らないと判定された場合に、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号のハイレベル期間内に入るようにカウンタ111を制御するとともに、スイッチ13をオン制御した後、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号のハイレベル期間内に入らない場合に、例えば外部クロック信号S1をカウンタ111に入力している状態から外部クロック信号S2をカウンタ111に入力する状態へ入力切替器117を切替制御する。
【0046】
モニタ部121は、異常情報を含む所定の監視情報を表示する。また、モニタ部121では、異常情報を含む所定の監視情報をプリンタにより帳表出力したり、音声等により外部に知らせるようにしてもよい。
【0047】
次に、上記構成において、以下にその処理動作を説明する。
図9及び図10は、異常判定部118、スイッチ制御部119及び切替制御部120の一連の処理動作を示すフローチャートである。
【0048】
まず、起動時にスイッチ制御部119のタイマ(図示せず)を起動し、外部クロック信号S1をカウンタ111に入力しているものとする。
【0049】
スイッチ制御部119は、異常判定部118からの判定結果に基づいて、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1のハイレベル期間内であるか否かを判定し(ステップST8a)、ウインドウ信号W1のハイレベル期間内に入っている場合(Yes)、+1をカウントしそのカウンタ値がN回であるか否かの判断を行い(ステップST8b)、N回になるまでステップST8a及びステップST8bの処理を繰り返し実行する。
【0050】
ここで、N回になった場合(Yes)、スイッチ制御部119はタイマがT秒になったか否かの判断を行い(ステップST8c)、T秒以内である場合に(No)、スイッチ13をオン状態に切替制御して異常検知マスクの解除を行う(ステップST8d)。
【0051】
なお、上記ステップST8cにおいて、T秒を超えてしまったならば(Yes)、スイッチ制御部119は異常検知マスクが解除済みであるか否かの判断を行い(ステップST8e)、異常検知マスクが解除済みであるならば(Yes)、起動正常動作継続処理に移行し(ステップST8f)、異常検知マスクが解除済みでない場合(No)、周知の起動異常切替処理に移行する(ステップST8g)。
【0052】
続いて、異常判定部118は、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W2のハイレベル期間内に入っているか否かの判断を行い(ステップST9a)、入っている場合に(Yes)、図示しないVCXO制御監視カウンタをリセットする(ステップST9b)。
【0053】
一方、ウインドウ信号W2のハイレベル期間内に入っていない場合(No)、異常判定部118は、VCXO制御監視カウンタのカウンタ値を+1にセットし(ステップST9d)、そのカウンタ値がM(Mは自然数)になるか否かの判断を行い(ステップST9e)、カウンタ値がMになるまで、上記ステップST9a乃至ステップST9eの処理を繰り返し実行する。
【0054】
そして、カウンタ値がMになったならば(Yes)、異常判定部118は、異常情報をモニタ部121に供給して、モニタ部121にて異常メッセージを表示させる(ステップST9f)。
【0055】
また、上記ステップST9cにおいて、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1のハイレベル期間内に入っていない場合(No)、異常判定部118は判定結果を切替制御部120に供給する。すると、切替制御部120は、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1,W2のハイレベル期間に入るようにカウンタ111の補正を行い(ステップST9g)、再度矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1のハイレベル期間内であるか否かの判定を行う(ステップST9h)。
【0056】
ここで、ウインドウ信号W1のハイレベル期間内に入っていない場合(No)、切替制御部120はカウンタ111に外部クロック信号S2を入力するように入力切替器117を切替制御し、カウンタ111の補正を行い(ステップST9i)、以後ステップST9aの処理に移行する。
【0057】
また、上記ステップST9hにおいて、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1のハイレベル期間内に入っている場合(Yes)、切替制御部120は上記ステップST9aの処理に移行する。
【0058】
以上のように上記第3の実施形態では、異常判定部118の判定結果に基づいて矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W2のハイレベル期間内に入らない回数を検出し、こ回数がM値になった場合に、電圧制御水晶発振器12の異常を判定するようにしている。
従って、電圧制御水晶発振器12の異常を確実に検出することができる。また、電圧制御水晶発振器12がその性能を維持する限界まで使用することができる。
【0059】
また、上記第3の実施形態では、スイッチ制御部119において、T秒内に矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1のハイレベル期間内に入った回数がN回以上、つまり外部クロック信号S1が正常であると確認されるまで、スイッチ13をオフ状態に維持するようにしている。
【0060】
従って、外部クロック信号S1と内部クロック信号との位相比較処理に先立ち、外部クロック信号S1が異常であるか否かを確認でき、これにより外部クロック信号S1の異常が回路全体に波及する恐れを未然に防ぐことができる。
【0061】
また、上記第3の実施形態では、スイッチ制御部119によりスイッチ13がオン状態に切替制御された後、外部クロック信号S1に異常が発生した場合に、切替制御部120にて外部クロック信号S2をカウンタ111に入力するように入力切替器117を切替制御しているので、外部クロック信号S1の異常に対応することができる。
【0062】
(その他の実施形態)
なお、この発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第2の実施形態において、スイッチ13をオン状態にした状態で、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号のハイレベル期間に入らない回数がN回以上である場合に、スイッチ13をオフ状態に設定するようにしてもよい。
【0063】
また、上記第3の実施形態では、矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1のハイレベル期間に入った回数がN回以上である場合に、スイッチ13をオン状態に設定して、しかる後に、外部クロック信号S1,S2の切り替えを行うようにしているが、起動時に矩形波信号の立ち上がりがウインドウ信号W1のハイレベル期間に入らない回数が複数回である場合に、外部クロック信号の異常と判断して、外部クロック信号の切り替えを行うようにしてもよい。
【0064】
また、上記第2の実施形態では、異常判定部118、スイッチ制御部119及び切替制御部120をハードウェア構成として説明したが、異常判定部118、スイッチ制御部119及び切替制御部120を1つのマイクロコンピュータで実現するようにしてもよい。
【0065】
さらに、上記各実施形態は放送機器に適用した場合であるが、これに限定されるものではなく、他のデジタル通信系の電子回路における位相同期の補正についても適用可能であることは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の第1の実施形態としての位相同期ループ回路の構成を示すブロック図。
【図2】同第1の実施形態におけるPLD回路の各カウンタで生成される第1及び第2の矩形波信号のタイミング波形図。
【図3】この発明の第2の実施形態としての位相同期ループ回路の構成を示すブロック図。
【図4】図3に示したPLD回路の具体的構成を示すブロック図。
【図5】以前に、電圧制御水晶発振器の制御電圧にマージンを持たせた場合の例を説明するために示す図。
【図6】同第2の実施形態において、PLD回路の各カウンタで生成される矩形波信号及びウインドウ信号のタイミング波形図。
【図7】この発明の第3の実施形態としての位相同期ループ回路の構成を示すブロック図。
【図8】図7に示したPLD回路の具体的構成を示すブロック図。
【図9】同第3の実施形態における位相同期ループ回路の制御手順及び制御内容を示すフローチャート。
【図10】同じく第3の実施形態における位相同期ループ回路の制御手順及び制御内容を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0067】
11A,11B,11C…PLD回路、12…電圧制御水晶発振器、13…スイッチ、14…フィルタ、15…サンプルホールド回路、111,112,112−2…カウンタ、113…位相比較部、114…制御部、114−2…異常判定制御部、115…カウンタ、116,121…モニタ部、117…入力切替器、118…異常判定部、119…スイッチ制御部、120…切替制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される外部クロック信号から生成され第1信号レベル及び第2信号レベルを有する基準クロック信号と発振器から生成され第1信号レベル及び第2信号レベルを有する内部クロック信号とを位相比較器にて位相比較し、この位相比較結果に基づいて当該発振器の発振周波数を制御して前記基準クロック信号と前記内部クロック信号とを位相同期させる位相同期ループ回路において、
前記基準クロック信号を1/m(mは自然数)に分周し第1の分周信号を生成して前記位相比較器に供給する第1の分周手段と、
前記内部クロック信号を1/n(nは自然数)に分周し第2の分周信号を生成して前記位相比較器に供給する第2の分周手段と、
前記発振器に対し入力する制御信号を一時保持する保持手段と、
前記第1及び第2の分周手段の出力を比較し、この比較結果に基づいて前記保持手段から制御信号を前記発振器に入力し、前記発振器の制御後に前記第1の分周信号と前記第2の分周信号との位相差が所定値以上の場合に、前記発振器の異常を決定する制御手段とを具備したことを特徴とする位相同期ループ回路。
【請求項2】
さらに、前記第2の分周信号から、前記第2信号レベルの期間が略2nクロック長以上及びn/2以下のいずれか1つに相当する期間となる第1のウインドウ信号を生成して前記位相比較器に供給する第1のウインドウ生成手段と、前記第1のウインドウ信号に比して第2信号レベル期間が短い第2のウインドウ信号を生成する第2のウインドウ生成手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1の分周信号の第1信号レベルから第2信号レベルへの変化点または第2信号レベルから第1信号レベルへの変化点が前記第1のウインドウ信号の前記第2信号レベル期間内に入っているか否かを判定し、所定回数以上入らないと判定された場合に、前記第1の分周手段をリセットして変化点が前記第1のウインドウ信号の前記第2信号レベル期間内に入るように制御し、前記第1の分周信号の変化点が前記第1のウインドウ信号の前記第2信号レベル期間内に入りかつ前記第2のウインドウ信号の第2信号レベル期間に入らないと判定された場合に、前記発振器の異常を決定することを特徴とする請求項1記載の位相同期ループ回路。
【請求項3】
前記基準クロック信号と当該基準クロック信号に対する予備用基準クロック信号とを選択的に前記第1の分周手段に入力する入力切替手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記第1の分周信号の変化点が前記第1のウインドウ信号の第2信号レベル期間に入らないと判定された場合に、所定の条件に応じて、前記予備用基準クロック信号を前記第1の分周手段に入力するように前記入力切替手段を切替制御することを特徴とする請求項1記載の位相同期ループ回路。
【請求項4】
前記制御手段は、所定の条件の判断に、前記第1の分周信号の変化点が前記第1のウインドウ信号の前記第2信号レベル期間内に連続して入らなかった回数を用いることを特徴とする請求項3記載の位相同期ループ回路。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の分周信号の変化点が前記第1のウインドウ信号の前記第2信号レベル期間内に入り、前記第2のウインドウ信号の前記第2信号レベル期間内に入らない回数を検出し、この検出結果に基づいて、前記発振器の異常を判定することを特徴とする請求項1記載の位相同期ループ回路。
【請求項6】
デジタル放送の番組情報信号を処理するデジタル放送番組処理装置に用いられ、このデジタル放送番組処理装置の処理に供されることを特徴とする請求項1記載の位相同期ループ回路。
【請求項7】
入力される外部クロック信号から生成され第1信号レベル及び第2信号レベルを有する基準クロック信号と発振器から生成され第1信号レベル及び第2信号レベルを有する内部クロック信号とを位相比較器にて位相比較し、この位相比較結果に基づいて当該発振器の発振周波数を制御して前記基準クロック信号と前記内部クロック信号とを位相同期させる位相同期ループ回路で使用される制御方法において、
前記基準クロック信号を1/m(mは自然数)に分周し第1の分周信号を生成して前記位相比較器に供給し、
前記内部クロック信号を1/n(nは自然数)に分周し第2の分周信号を生成して前記位相比較器に供給し、
前記発振器に対し入力する制御信号を保持部に一時保持し、
前記第1及び第2の分周信号を比較し、この比較結果に基づいて前記保持部から制御信号を前記発振器に入力し、前記発振器の制御後に前記第1の分周信号と前記第2の分周信号との位相差が所定値以上の場合に、前記発振器の異常を決定することを特徴とする位相同期ループ回路の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−235577(P2007−235577A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55020(P2006−55020)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】