説明

位相同期回路および情報再生装置

【課題】周波数比較精度の向上を図れ、安定かつ高速な周波数引き込みを実現することが可能なPLL回路および情報再生装置を提供する。
【解決手段】VCO23による3相クロックCLKA,CLKB,CLKCに同期してヒステリシスコンパレータ24によるヒステリシス信号HYCを取り込み、以降、たとえば第1相クロックCLKAに同期して、入力データ信号のヒステリシスのエッジがどの位相からどの位相に変化したか観察することにより周波数が高いか低いかを周波数誤差として検出する際に、ヒステリシスコンパレータ24にて取り除くことができなかった2Tパターンを、VCO23による3相クロックCLKA,CLKB,CLKCに同期してパルスの周期計測を行うことにより除去し、これにより検出結果に基づいたアップ信号UPまたはダウン信号DOWNをチャージポンプ回路26に出力する周波数比較器25を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば光ディスク装置等のRF信号処理系に適用される位相同期回路(PLL:Phase Locked Loop)およびそれを備えた情報再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、光ディスク等のデジタル記録再生装置のRF信号処理系では、データを記録再生するために位相、周波数を比較して適切なクロックを得るPLL回路が用いられている。
【0003】
光ディスクのPLL回路における周波数比較の方法として、たとえばディスク上のウォブル信号を抜き出し、この周波数にロックすることによりディスクの回転速度に同期する方法が使われている。
しかしこの方法は、たとえばウォブル信号が存在しないディスクの場合(1例としてブルレイディスクのROM、以下BDROM)には使用することができない。
【0004】
ウォブル信号を使用しないで、記録フレーム毎に周期的に記録されているフレーム同期信号を抜き出し、この信号にロックする方法も使用されている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
また、ランダムなデータパターンから、周波数誤差を抽出する方法としては、電圧制御発振器(VCO)基準の多相クロックあるいは、リングVCOの多相クロックを基準にしたデータエッジの位相遷移をモニタする方法が知られている(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−232795号公報
【特許文献2】特開平11−308097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された方式の場合には、位相周波数比較周期がフレーム周期に依存して長くなってしまうため(BDROMの場合には1932T周期)、フレームシンク検出確立までの時間も含めると引き込みに時間がかかってしまい、高速での周波数引き込みには向かないという不利益がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された方式では、高密度光ディスクに応用した場合には、アナログ信号の等化誤差やディスクの摂動、ノイズの影響等により入力データエッジの品質が悪いため、周波数検出器の誤検出が多発し、安定した周波数引き込みを行うことができないという不利益がある。
またこの方式では、周波数検出ゲインが周波数誤差に対して比例せず、ある程度誤差が大きくなるとゲインが低下してくるため、初期周波数誤差が大きい状態でのこのような誤検出は引き込み時間を増大させ、あるいは引き込みレンジ外へ周波数が発散してしまう可能性もある。
さらに、位相モードへの切り替え時に周波数誤差は位相引き込みレンジ内にある必要があるが、周波数ループの誤検出により収束値が安定しない場合には、位相引き込みができず、データが読めなくなってしまう可能性がある。
周波数ループの安定性を確保するためにはループゲインを下げれば良いが、その場合には引き込みにかかる時間が増大してしまう。
【0008】
また、光ディスクのRF信号のデータシンクロナイザPLLにおいて周波数比較を行う方法として、ユーザデータをすべて利用する方式を採用している。
とことが、ユーザデータをすべて利用すると、ユーザデータの最短パターンでは記録再生系の周波数特性により振幅が小さいために、他のパターンに比較して波形間干渉の影響が大きく、その周期が干渉によって変化してしまう。
そのため、2T〜8Tのデータパターンのうち、2Tの周期計測を行った結果は、データの再生速度に対して正しくない値となってしまう場合がある。
最短パターンの出現頻度は他のパターンに比較して高いため、周期変化による周波数比較器出力への影響も大きい。
このため、PLL回路前段での等化器のパラメータ設定や、そのバラツキ、あるいはディスクの記録密度等によって干渉の程度が変化すると、2Tの周期が変化して周波数比較器が影響を受け、結果としてキャプチャレンジが大きく影響を受け、場合によっては所望のキャプチャレンジを確保することができなくなるおそれがある。
また、波形間干渉は2Tパターンの前後のパターンによって干渉度合いが異なるため、記録パターンにより周波数比較器結が影響をうけ、特定の記録パターン部分にてPLLの引き込み動作が不安定になることがある。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、周波数比較精度の向上を図れ、安定かつ高速な周波数引き込みを実現することが可能なPLL回路および情報再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点の位相同期回路は、制御信号に応じた周波数をもって発振して所定周波数のクロックを出力する発振回路と、上記発振回路によるクロックと入力信号の位相差を検出し、位相差データを出力する位相比較回路と、上記位相比較回路の位相差データおよび帰還信号に基づいて上記制御信号を生成し、上記発振回路に供給する帰還回路と、複数のパターンを含む入力信号から最短パターンのみを除去した信号と上記発振回路のクロックの周波数を比較し、周波数誤差に応じた信号を上記帰還回路に出力する周波数比較部とを有する。
【0011】
好適には、上記周波数比較部は、ヒステリシスコンパレータを含み、上記入力信号を当該ヒステリシスコンパレータを通して振幅の小さい最短パターンを除去し、除去後の出力パルスと上記発振回路のクロックの周波数を比較する。
【0012】
好適には、上記周波数比較部は、コンパレータを含み、上記入力信号を当該コンパレータを通して得られた出力パルスのエッジ周期を計測し、最短パターンの場合には、周波数比較または比較結果の出力を停止する。
【0013】
好適には、上記コンパレータは、上記入力信号の振幅の小さい最短パターンを除去するヒステリシスコンパレータである。
【0014】
好適には、上記複数のパターンは2T〜8Tのデータパターンを含み、上記周波数比較部は、上記2T〜8Tのデータパターンのうち最短パターンである2Tパターンのみを除去する。
【0015】
本発明の第2の観点の位相同期回路は、制御信号に応じた周波数をもって発振し、それぞれ位相の異なる多相クロックを出力する発振回路と、上記発振回路による多相クロックのうちの一のクロックと入力信号の位相差を検出し、位相差データを出力する位相比較回路と、上記位相比較回路の位相差データおよび帰還信号に基づいて上記制御信号を生成し、上記発振回路に供給する帰還回路と、複数のパターンを含む入力信号から入力信号の振幅の小さい最短パターンを除去するヒステリシスコンパレータと、上記ヒステリシスコンパレータの出力パルスおよび上記発振回路の多相クロックに基づいて、当該出力パルスとクロックとの周波数誤差を検出し、周波数誤差に応じた信号を出力し、出力パルスのエッジ周期を計測し、最短パターンの場合には、周波数比較または比較結果の出力を停止する周波数比較器とを有する。
【0016】
本発明の第3の観点は、記録媒体から読み出した信号をクロックに基づいてサンプリングしてデジタル信号に変換し再生する情報再生回路であって、上記クロックによるサンプリング位相を正しい状態に一致させるための位相同期回路を有し、上記位相同期回路は、制御信号に応じた周波数をもって発振して所定周波数のクロックを出力する発振回路と、上記発振回路によるクロックと入力信号の位相差を検出し、位相差データを出力する位相比較回路と、上記位相比較回路の位相差データおよび帰還信号に基づいて上記制御信号を生成し、上記発振回路に供給する帰還回路と、複数のパターンを含む入力信号から最短パターンのみを除去した信号と上記発振回路のクロックの周波数を比較し、周波数誤差に応じた信号を上記帰還回路に出力する周波数比較部と、を有する。
【0017】
本発明の第4の観点は、記録媒体から読み出した正弦波状の信号をクロックに基づいてサンプリングしてデジタル信号に変換し再生する情報再生回路であって、上記クロックによるサンプリング位相を正しい状態に一致させるための位相同期回路を有し、上記位相同期回路は、制御信号に応じた周波数をもって発振し、それぞれ位相の異なる多相クロックを出力する発振回路と、上記発振回路による多相クロックのうちの一のクロックと入力信号の位相差を検出し、位相差データを出力する位相比較回路と、上記位相比較回路の位相差データおよび帰還信号に基づいて上記制御信号を生成し、上記発振回路に供給する帰還回路と、複数のパターンを含む入力信号から入力信号の振幅の小さい最短パターンを除去するヒステリシスコンパレータと、上記ヒステリシスコンパレータの出力パルスおよび上記発振回路の多相クロックに基づいて、当該出力パルスとクロックとの周波数誤差を検出し、周波数誤差に応じた信号を出力し、出力パルスのエッジ周期を計測し、最短パターンの場合には、周波数比較または比較結果の出力を停止する周波数比較器と、を有する。
【0018】
好適には、上記ヒステリシスコンパレータの入力信号は、イコライザ出力の再生RF信号であり、当該再生RF信号はパーシャルレスポンス等化されている。
【0019】
本発明によれば、発振回路のクロックが位相比較回路および周波数比較部に供給される。
周波数比較部において、たとえば2T〜8T等の複数のパターンを含む入力信号から最短パターンのみが除去される。そして、最短パターンが除去された信号と発振回路のクロックの周波数が比較され、周波数誤差に応じた信号が帰還回路に出力される。
また、位相比較回路において、発振回路によるクロックと入力信号の位相差が検出されて、位相差データが帰還回路に出力される。
そして、位相比較回路の位相差データおよび帰還信号に基づいて制御信号が生成されて、発振回路の発振周波数が制御される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ノイズや符号間干渉による劣化の大きい最短パターンを除去して周波数比較することにより、イコライザの等化誤差や記録パターン、光ピックアップの収差、あるいはディスクのスキューや記録密度によらず、正確な周波数比較が可能となる。
その結果、PLL回路の周波数引き込み動作は安定し、所望のキャプチャレンジを確保することができる。
結果として、高密度光ディスク装置のプレイアビリティを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付図面に関連付けて説明する。
【0022】
図1は、本発明に係るPLL回路(位相同期回路)を採用した光ディスク装置のRF信号処理系の一実施形態を示すシステム構成図である。
【0023】
本光ディスク装置10は、図1に示すように、記録媒体としての光ディスク11、光学ヘッド12、プリアンプ13、AGC(Auto Gain Control)回路14、アナログイコライザ15、アナログデジタルコンバータ(ADC)16、FIRフィルタ17、ビタビ復号器18、デコーダ(ECC、インタフェース(I/F)19、エンコーダ20、レーザドライバ21、位相比較器22、VCO23、ヒステリシスコンパレータ24、周波数比較器25、チャージポンプ回路26、およびループフィルタ27を有している。
【0024】
これらの構成要素のうち、位相比較器22、VCO23、ヒステリシスコンパレータ24、周波数比較器25、チャージポンプ回路26、およびループフィルタ27により本発明のPLL回路30が構成されている。そして、チャージポンプ回路26、およびループフィルタ27により本発明の帰還回路が構成される。また、ヒステリシスコンパレータ24および周波数比較器25により周波数比較部が構成される。
以下、このPLL回路の構成要素の具体的な機能を中心に説明する。
【0025】
光ディスク装置10において、光学ヘッド12から出力されプリアンプ13で増幅された再生信号は、AGC回路14で振幅調整され、アナログイコライザ回路15に入力される。
アナログイコライザ15により等化され、高域ノイズを除去された再生信号は、ADC16およびヒステリシスコンパレータ24に入力される。
ADC16の出力は、PLL回路の位相比較器22に入力され、後述するようにPLL回路40においてVCO23をコントロールしてADC15のサンプリング位相を一致させるように制御される。
また、ADC15の出力はFIRフィルタ17に入力され、さらに高精度に等化された後、ビタビ復号器18に入力され、デコード、エラー訂正されたのち、NRZデータとして出力される。
また、NRZデータはエンコーダ20でエンコードされ、この結果に基づいて、レーザドライバ21により光学ヘッド12のレーザが駆動制御される。
【0026】
以下、PLL回路について具体的に説明する。
【0027】
位相比較器22は、ADC15によるデジタル信号の位相とVCO23の出力クロック(A)の位相を比較し、位相誤差データS22をループフィルタ27に出力する。
【0028】
VCO23は、インバータ231〜233の3段リング構成になっており、ループフィルタ27で位相誤差データS22を積分して得られた制御信号S27により発振周波数が制御される。
VCO23は、3段リング構成の各段からの出力は、図2(C),(D),(E)に示すようなCLKの一周期を3分割する3相クロックA,B,Cとなっており、これら3相クロックCLKA,CLKB,CLKCは周波数比較器25に供給される。
VCO23の第1相クロック(インバータ233の出力クロック)は、ADC16、FIRフィルタ17、ビタビ復号器18、および位相比較器22に供給される。
【0029】
ヒステリシスコンパレータ24は、アナログイコライザ15による、たとえば図2(A)に示すような正弦波状のRF再生信号を受けて、ヒステリシス点に対応してレベルが変化する図2(B)に示すようなヒステリシス信号HYSを周波数比較器25に出力する。
【0030】
PLL回路により、ADC16のサンプリング位相を正しい状態に一致させる必要があるが、入力信号周波数とクロック周波数のずれが大きい場合(3%前後を超える場合)には位相検出器による位相引き込みは困難であるため、まず周波数ループにより周波数ずれを引き込む必要がある。
周波数比較器25は、この周波数ループの初段部に配置されている。
【0031】
周波数比較器25は、VCO23による3相クロックCLKA,CLKB,CLKCに同期してヒステリシスコンパレータ24によるヒステリシス信号HYCを取り込み、以降、たとえば第1相クロックAに同期して、入力データ信号のヒステリシスのエッジがどの位相からどの位相に変化したか観察することにより周波数が高いか低いかを周波数誤差として検出して、アップ信号UPまたはダウン信号DOWNをチャージポンプ回路27に出力する。
また、周波数比較器25は、ヒステリシスコンパレータ24の出力パルスHYCを入力して、周波数誤差(UPまたはDOWN)の検出に用いるが、以下に説明するように、ヒステリシスコンパレータ24にて取り除くことができなかった2Tパターンを、VCO23による3相クロックCLKA,CLKB,CLKCに同期してパルスの周期計測を行うことにより除去する。
【0032】
このように、周波数比較器25は、入力アナログ信号のエッジ周期をVCOクロックにより計測する。本実施形態では、この入力信号としては、アナログ信号のゼロクロスコンパレータ出力を使用するのではなく、ヒステリシスコンパレータ24の出力パルス(ヒステリシス信号HYS)を使用する。
【0033】
Blu−rayディスクの場合、ユーザーデータパターンとして2T〜8Tが存在しているが、最短パターンの2Tでは記録再生系の周波数特性により振幅が小さいために、他のパターンに比較して波形間干渉の影響が大きく、その周期が干渉によって変化してしまう。そのため、周波数比較器25に入力する前に、周期の信頼性が低い2Tパターンを振幅の差を利用して取り除く。
Blu−rayディスク等の高密度記録装置においては、劣化した識別S/Nを補うために、記録再生系の周波数特性と近似した特性に等化する、パーシャルレスポンス等化器と最尤復号装置(ビタビ復号器)を組み合わせた、PRML信号処理が採用される。
【0034】
図3は、最短パターンが2Tである1-7PP変調が採用されたBlu−rayディスクにおいて、PR(1,2,1)に等化された再生RF信号の理想アイパターンを示す図である。また、図4は、最短パターンが2Tである1-7PP変調が採用されたBlu−rayディスクにおいて、PR(1,2,1)に等化された再生RF信号の実機アイパターンを示す図である。
【0035】
図3に示すように、パーシャルレスポンス等化された再生RF信号は、最短パターンである2RTの振幅が、3T以上のパターンの振幅より、有意差を持って小さいため、コンパレータのヒステリシスレベルを適切な値に設定することにより、取り除くことができる。
ここで、パーシャルレスポンスのクラスはPR(1,2,1)には限定されない。また、最短パターンも2Tには限定されず、DVDのEFMpulsに代表される3T系の変調でもかまわない。
しかし、実機の波形においては、図4のアイパターンが示すように、ノイズや等化誤差による符号間干渉が存在するため、コンパレータのヒステリシスだけでは、2Tを完全に取り除くことはできない。
【0036】
ヒステリシスコンパレータ24の出力パルスHYSは、PLL30の周波数比較器25に入力され、周波数誤差の方向(UPまたはDOWN)の検出に用いられる。
このとき、ヒステリシスコンパレータ24にて取り除くことができなかった2Tパターンを、VCOクロックによってパルスの周期計測を行うことにより除去する。
【0037】
周期計測で2Tパターンを取り除く場合には、3Tパターンの分布と2Tパターンの分布が重なっているため、2Tだけを取り除くことが難しい。
このため、周期計測単独で2Tを取り除こうとした場合には、特に2T周期の変化により2Tの分布が3T側に移動している場合には、2Tの取れ残り成分により3Tパターンの分布が非対称になり、周波数比較の対称性が劣化してしまうおそれがある。
これに対してヒステリシスコンパレータ24による2T除去においては、2T、3Tの分布対称性を確保することができ、2Tの分布をある程度取り除くことができる。
したがって、これら二つの方法を併用することにより、精度良く2Tを取り除くことができる。
【0038】
図5は、本実施形態に係る周波数比較器の基本的な動作イメージを示す図である。また、図6は、本実施形態に係る周波数比較器の比較論理を示す図である。
【0039】
図5に示すように、3相クロックである第1相クロックCLKA、第2相クロックCLKB、第3相クロックCLKCにより、1クロックCLK区間を3分割し、各位相区間をA、B、Cとする。
このとき、入力データ信号のヒステリシスの現在のエッジYnと次のエッジYn+1 の位相の遷移から周波数誤差(の方向)を次のようにして検出する。
【0040】
クロックCLK1周期内の各位相A、B、Cに対して、エッジの遷移が順方向(A→B→C)であれば、入力信号周波数はVCO周波数よりも低いと考えられるため、ダウン信号DOWNを出力する。
エッジの遷移が逆方向(C→B→A)であれば、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも高いと考えられるため、アップ信号UPを出力する。
エッジの位相遷移がない場合には、誤差検出はできないため、何も出力されない。
【0041】
具体的には、図6に示すように、周波数比較器25は、エッジYnが位相Aで次のエッジYn+1 が位相Aの場合には、エッジの位相遷移がなく誤差検出はできないため、アップ信号UPもダウン信号DOWNも出力しない。
エッジYnが位相Aで次のエッジYn+1 が位相Bの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも低いと考えられるため、ダウン信号DOWNを出力する。
エッジYnが位相Aで次のエッジYn+1 が位相Cの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも高いと考えられるため、アップ信号UPを出力する。
エッジYnが位相Bで次のエッジYn+1 が位相Aの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも高いと考えられるため、アップ信号UPを出力する。
エッジYnが位相Bで次のエッジYn+1 が位相Bの場合には、エッジの位相遷移がなく誤差検出はできないため、アップ信号UPもダウン信号DOWNも出力しない。
エッジYnが位相Bで次のエッジYn+1 が位相Cの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも低いと考えられるため、ダウン信号DOWNを出力する。
エッジYnが位相Cで次のエッジYn+1 が位相Aの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも低いと考えられるため、ダウン信号DOWNを出力する。
エッジYnが位相Cで次のエッジYn+1 が位相Bの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも高いと考えられるため、アップ信号UPを出力する。
エッジYnが位相Cで次のエッジYn+1 が位相Cの場合には、エッジの位相遷移がなく誤差検出はできないため、アップ信号UPもダウン信号DOWNも出力しない。
【0042】
図7は、図5の検出動作を可能にする周波数比較器のロジック回路の一例を示す回路図である。
【0043】
図7の周波数比較器25は、D型フリップフロップ201〜218、排他的論理和(EXOR)ゲート219〜221、負入力を含む2入力ANDゲート222、負入力を含む3入力ANDゲート223、3入力ORゲート224〜226、2入力NORゲート227、スイッチ回路228〜230、負入力を含む3入力ANDゲート231、3入力ANDゲート232〜235、負入力を含む4入力ANDゲート236、および第1相クロックCLKAを遅延等させるためのバッファ237,238を有している。
【0044】
フリップフロップ201〜203はヒステリシス信号HYCの入力HYCINに対して並列に配置されている。フリップフロップ201は第1相クロックCLKAに同期してヒステリシス信号HYCをラッチし、フリップフロップ202は第2相クロックCLKBに同期してヒステリシス信号HYCをラッチし、フリップフロップ203は第3相クロックCLKCに同期してヒステリシス信号HYCをラッチする。
すなわち、フリップフロップ201〜203は周波数比較器25の入力段に配置されて、VCO23の3相クロックCLKA,CLKB,CLKCに同期して、ヒステリシスコンパレータ24によるヒステリシス信号HYCをラッチする。
図2(F)〜(H)にフリップフロップ201〜203のQ出力をそれそれA0,B0,C0として示している。
なお、初段以降の各フリップフロップ204〜218は、第1相クロックCLKAに同期してデータの入出力を行う。
【0045】
フリップフロップ204のD入力は初段のフリップフロップ201のQ出力に接続され、フリップフロップ205のD入力は初段のフリップフロップ202のQ出力に接続され、フリップフロップ206のD入力は初段のフリップフロップ203のQ出力に接続されている。
フリップフロップ204〜206は、バッファ237を介した第1相クロックCLKAに同期してそれぞれフリップフロップ201〜203の出力をラッチする。
図2(I)〜(K)にフリップフロップ204〜206のQ出力をそれそれA1,B1,C1として示している。
【0046】
EXOR219は、フリップフロップ204の出力A1とフリップフロップ205の出力B1との排他的論理和をとり、その結果をスイッチ228のH入力、ANDゲート222の負入力、ANDゲート223の第1負入力、およびORゲート224の第1入力に供給する。
EXOR220は、フリップフロップ205の出力B1とフリップフロップ206の出力C1との排他的論理和をとり、その結果をアンドゲート222の正入力、アンドゲート223の第2負入力、およびORゲート224の第2入力に供給する。
EXOR221は、フリップフロップ206の出力B1と初段のフリップフロップ201の出力A0との排他的論理和をとり、その結果をアンドゲート223の正入力、およびORゲート224の第3入力に供給する。
これら3つのEXOR219〜221は今のクロックを得るために設けられており、クロックCLKA,CLKB,CLKCのいずれか一つを取り出す。
図2(L)〜(N)にEXOR218〜220の出力をそれそれA2,B2,C2として示している。
EXOR219〜222の出力A2,B2,C2はヒステリシスがあるときにいずれかがハイレベルとなる。この例では、EXOR221の出力C2がハイレベルとなっている。
【0047】
ANDゲート222の出力はスイッチ回路229のH入力に供給され、ANDゲート23の出力はスイッチ回路230のH入力に供給される。
ORゲート224は、EXOR219〜221の出力A2,B2,C2の論理和をとり、スイッチ信号SWとしてスイッチ回路228〜230、およびフリップフロップ213のD入力に出力する。
【0048】
スイッチ回路228〜230は、スイッチ信号SWがハイレベルの場合にはヒステリシス点が検出されたものとしてH入力を選択して次段の対応するフリップフロップ207〜209のD入力に出力する。
スイッチ回路228〜230は、スイッチ信号SWがローレベルの場合にはヒステリシス点が検出されていないものとしてL入力を選択して次段の対応するフリップフロップ207〜209のQ出力をD入力に入力させるループを形成する。
図2(O)にORゲート224の出力であるスイッチ信号SWを示している。
【0049】
フリップフロップ207〜209は、上述したように対応するスイッチ回路228〜230の出力を、バッファ237,238を介した第1相クロックCLKAに同期して取り込む。
フリップフロップ207〜209は、ヒステリシスが検出されていない間は、スイッチ回路228〜230で形成されるループによる前回ラッチしたデータを、第1相クロックCLKAに同期してラッチし続け、ヒステリシスが検出された場合に、スイッチ回路229〜230を通して検出時点のデータを第1相クロックCLKAに同期してラッチする。
フリップフロップ207のQ出力は、スイッチ回路228のL入力、次段のフリップフロップ210のD入力、ANDゲート233の第1入力に、およびANDゲート236の第3入力に供給される。
フリップフロップ208のQ出力は、スイッチ回路229のL入力、次段のフリップフロップ211のD入力、ANDゲート232の第3入力、およびANDゲート235の第2入力に供給される。
フリップフロップ209のQ出力は、スイッチ回路230のL入力、次段のフリップフロップ212のD入力、ANDゲート231の第3入力、およびANDゲート234の第3入力に供給される。
図2(U)〜(W)にフリップフロップ207〜209のQ出力をそれそれA3,B3,C3として示している。
【0050】
フリップフロップ210〜212は、バッファ237,238を介した第1相クロックCLKAに同期してそれぞれフリップフロップ207〜209の出力をラッチする。
フリップフロップ210の出力は、ANDゲート231の第1入力、およびANDゲート232の第1入力に供給される。
フリップフロップ211の出力は、ANDゲート233の第2入力、およびANDゲート234の第1入力に供給される。
フリップフロップ212の出力は、ANDゲート235の第1入力、およびANDゲート236の第2入力に供給される。
図2(X)〜(Z)にフリップフロップ210〜212のQ出力をそれそれA4,B4,C4として示している。
【0051】
フリップフロップ213は、バッファ237,238を介した第1相クロックCLKAに同期してORゲート224の出力信号SWをラッチする。
フリップフロップ213のQ出力は、次段のフリップフロップ214のD入力に供給される。
フリップフロップ214は、バッファ237,238を介した第1相クロックCLKAに同期してフリップフロップ213の出力をラッチする。
フリップフロップ214のQ出力は、次段のフリップフロップ215のD入力、NORゲート227の第1入力、およびANDゲートの第2入力(負入力)に供給される。
フリップフロップ215は、バッファ237,238を介した第1相クロックCLKAに同期してフリップフロップ214の出力をラッチする。
フリップフロップ215のQ出力は、次段のフリップフロップ216のD入力、およびNORゲート227の第2入力に供給される。
フリップフロップ216は、バッファ237,238を介した第1相クロックCLKAに同期してフリップフロップ215の出力をラッチする。
フリップフロップ216のQ出力は、ANDゲート236の第4入力(負入力)に供給される。
フリップフロップ214〜216は、イネーブル信号ENBによりイネーブルとなる。 図2(Q)〜(S)にフリップフロップ213〜216のQ出力をそれそれP0,P1,P2,P3として示している。
【0052】
NORゲート227の出力は、ANDゲート232の第3入力、ANDゲート233の第3入力、ANDゲート234の第2入力、ANDゲート235の第3入力、およびANDゲート236の第1入力に供給される。
図2(T)にNORゲート227の出力をP4として示している。
【0053】
フリップフロップ213〜216、およびNORゲート227は、ロジック動作としては、基本的には2Tパターン(およびノイズその他の要因により発生した1T)による周波数比較結果をマスクするため、現在のデータエッジの1クロックまたは2クロック前にデータエッジが存在した場合には、2T以下と判断して出力をマスクする。
【0054】
ANDゲート231は、図6の論理に基づいて、エッジYnが位相Aで次のエッジYn+1 が位相Cの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも高いものとして、アップ信号UPを出力させるためにハイレベルの信号をORゲート225の第1入力に供給する。
ANDゲート232は、図6の論理に基づいて、前回のエッジYnが位相Aで次のエッジYn+1 が位相Bの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも低いものとして、ダウン信号DOWNを出力させるためにハイレベルの信号をORゲート226の第1入力に供給する。
ANDゲート231および232は、エッジYnが位相Aで次のエッジYn+1 が位相Aの場合には、エッジの位相遷移がなく誤差検出はできないため、アップ信号UPもダウン信号DOWNも出力しないようにローレベルの信号をそれぞれゲート225,226に出力する。
【0055】
ANDゲート233は、図6の論理に基づいて、前回のエッジYnが位相Bで次のエッジYn+1 が位相Aの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも高いものとして、アップ信号UPを出力させるためにハイレベルの信号をORゲート225の第2入力に供給する。
ANDゲート234は、図6の論理に基づいて、前回のエッジYnが位相Bで次のエッジYn+1 が位相Cの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも低いものとして、ダウン信号DOWNを出力させるために、ハイレベルの信号をORゲート226の第2入力に供給する。
ANDゲート233および234は、エッジYnが位相Bで次のエッジYn+1 が位相Bの場合には、エッジの位相遷移がなく誤差検出はできないため、アップ信号UPもダウン信号DOWNも出力しないようにローレベルの信号をそれぞれゲート225,226に出力する。
【0056】
ANDゲート235は、図6の論理に基づいて、前回のエッジYnが位相Cで次のエッジYn+1 が位相Bの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも高いものとして、アップ信号UPを出力させるためにハイレベルの信号をORゲート225の第3入力に供給する。
ANDゲート236は、図6の論理に基づいて、前回のエッジYnが位相Cで次のエッジYn+1 が位相Aの場合には、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも低いものとして、ダウン信号DOWNを出力させるために、ハイレベルの信号をORゲート226の第3入力に供給する。
ANDゲート235および236は、エッジYnが位相Cで次のエッジYn+1 が位相Cの場合には、エッジの位相遷移がなく誤差検出はできないため、アップ信号UPもダウン信号DOWNも出力しないようにローレベルの信号をそれぞれゲート225,226に出力する。
【0057】
ORゲート225は、ANDゲート231、233、235の出力信号の論理和をとり、アップ信号UPの出力段のフリップフロップ217のD入力に供給する。
ORゲート226は、ANDゲート232、234、236の出力信号の論理和をとり、ダウン信号DWMの出力段のフリップフロップ218のD入力に供給する。
図2(Γ),(Δ)にORゲート225,226の出力をそれそれU0,D0として示している。
【0058】
フリップフロップ217は、バッファ237,238を介した第1相クロックCLKAに同期してORゲート225のハイレベルまたはローレベルをとる出力U0をラッチして、Q出力からアップ信号UPをチャージポンプ回路26に出力する。
フリップフロップ218は、バッファ237,238を介した第1相クロックCLKAに同期してORゲート226のハイレベルまたはローレベルをとる出力D0をラッチして、Q出力からダウン信号DOWNをチャージポンプ回路26に出力する。
図2(Π),(Σ)にフリップフロップ217,218の出力であるアップ信号UPおよびダウン信号DOWNをそれそれ示している。
【0059】
なお、フリップフロップ217,218に供給される第1相クロックCLKAは、たとえば図示しない分周器(たとえば2分周)により分周した後の第1相クロックCLK2として、アップ信号UPおよびダウン信号DOWNをラッチし、出力するように構成することも可能である。
図2(Υ)にこのクロックCLK2を示している。
【0060】
なお、図7の周波数比較器25では、フリップフロップ210〜212には前回のヒステリシスがいずれの相で検出されたかを示すデータがセットされ、フリップフロップ207〜209には今回(次の)のヒステリシスがいずれの相で検出されたかを示すデータがセットされることから、前回のエッジYnの検出位相の情報と次のエッジYn+1 の検出位相の情報が得られている。
【0061】
そして、本実施形態において設けられたフリップフロップ213〜216は、周波数比較器25における2T除去ロジック系として機能する。
【0062】
図8は、3相クロックを使用したパルスエッジ周期計測による2T判定方法を説明するための図である。
【0063】
3相クロックであるCLKA、CLKB、CLKC、により、1CLK区間を3分割し、各位相区間をA、B、Cとする。
このとき入力データパルスの現在のエッジと次のエッジが各位相のどこにあるか、および2つのエッジ間にVCOクロックが何発存在したかによって、VCO23のクロックの3倍の精度で周期計測を行う。
なお、計測用のクロックは3相である必要性はなく、より分解能を高くするために、4相以上に多相化してもよい。
また、ヒステリシスコンパレータ24のヒステリシスレベルは調整可能であり、最適な値に設定できる。
【0064】
ロジック動作としては、基本的には2Tパターン(およびノイズその他の要因により発生した1T)による周波数比較結果をマスクするため、現在のデータエッジの1クロックまたは2クロック前にデータエッジが存在した場合には、2T以下と判断して出力をマスクする構成となっているが、このとき、例外として以下のパターンが存在する。
(1)Aを起点として2クロック後のCを終点とする3Tパターン、
(2)Cを起点として、3クロック後のAを終点とする2Tパターン、である。
【0065】
(1)については、このままでは3Tパターンも除去してしまうため、A→Cの遷移に対しては、1クロック前にデータエッジが存在した時のみマスクする。
(2)については、2Tパターンの取り残りが発生するため、C→Aの遷移については、3クロック前までのデータエッジの存在によりマスクする。
【0066】
以上のように、ヒステリシスコンパレータ24とパターン周期計測を併用することにより、2Tパターンを精度良く取り除くことができ、この結果として周波数比較器25の誤動作を防止することができる。
【0067】
本実施形態における周波数比較器25は、第1相クロックCLKAの1周期以内にヒステリシスが2度検出されることは、データの特性上ありえないことから、もし、1T内に検出位相に変化があると、ノイズ等に基づくデータを取り込んだものとして、アップ信号UPおよびダウン信号DOWNを出力させず、無視させる。
【0068】
たとえば、正常動作の場合には、前回のエッジYnが位相Aで次のエッジYn+1 が位相Bの場合には、フリップフロップ210の出力A4、フリップフロップ208の出力B3がハイレベルで、かつ、NORゲート227の出力もハイレベルであるはずであることから、ANDゲート232においては、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも低いものとして、ダウン信号DOWNを出力させるためにハイレベルの信号をORゲート226に供給する。
しかし、ノイズ等のために、NORゲート227の出力がローレベルである場合には、ANDゲート232の出力はマスクされてローレベルに保持され、ダウン信号DOWNの出力が抑止される。
【0069】
同様に、正常動作の場合には、前回のエッジYnが位相Bで次のエッジYn+1 が位相Aの場合には、フリップフロップ207の出力A3、フリップフロップ211の出力B4がハイレベルで、かつ、NORゲート227の出力もハイレベルであるはずであることから、ANDゲート233においては、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも高いものとして、アップ信号UPを出力させるためにハイレベルの信号をORゲート225の供給する。
しかし、ノイズ等のために、NORゲート227の出力がローレベルである場合には、ANDゲート233の出力はマスクされてローレベルに保持され、アップ信号UPの出力が抑止される。
【0070】
同様に、正常動作の場合には、前回のエッジYnが位相Bで次のエッジYn+1 が位相Cの場合には、フリップフロップ209の出力C3、フリップフロップ211の出力B4がハイレベルで、かつ、NORゲート227の出力もハイレベルであるはずであることから、ANDゲート234においては、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも低いものとして、ダウン信号DOWNを出力させるためにハイレベルの信号をORゲート226に供給する。
しかし、ノイズ等のために、NORゲート227の出力がローレベルである場合には、ANDゲート234の出力はマスクされてローレベルに保持され、ダウン信号DOWNの出力が抑止される。
【0071】
同様に、正常動作の場合には、前回のエッジYnが位相Cで次のエッジYn+1 が位相Bの場合には、フリップフロップ208の出力B3、フリップフロップ212の出力C4がハイレベルで、かつ、1のゲート227の出力もハイレベルであるはずであることから、ANDゲート235においては、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも高いものとして、アップ信号UPを出力させるためにハイレベルの信号をORゲート225に供給する。
しかし、ノイズ等のために、NORゲート227の出力がローレベルである場合には、ANDゲート235の出力はマスクされてローレベルに保持され、アップ信号UPの出力が抑止される。
【0072】
同様に、正常動作の場合には、前回のエッジYnが位相Cで次のエッジYn+1 が位相Aの場合には、フリップフロップ207の出力A3、フリップフロップ212の出力C4がハイレベルで、かつ、NORゲート227の出力もハイレベルであるはずであることから、ANDゲート236においては、入力データ信号の周波数はVCO周波数よりも低いものとして、ダウン信号DOWNを出力させるためにハイレベルの信号をORゲート226に供給する。
しかし、ノイズ等のために、NORゲート227の出力がローレベルである場合には、ANDゲート236の出力はマスクされてローレベルに保持され、ダウン信号DOWNの出力が抑止される。
【0073】
次に、図1の回路の動作を説明する。
【0074】
光学ヘッド12から出力されプリアンプ13で増幅された再生信号は、AGC回路14で振幅調整され、アナログイコライザ回路15に入力される。
アナログイコライザ15により等化され、高域ノイズを除去された再生信号は、ADC16およびヒステリシスコンパレータ24に入力される。
【0075】
このとき、PLL回路30によりADC16のサンプリング位相を正しい状態に一致させる必要があるが、入力信号周波数とクロック周波数のずれが大きい場合(3%前後を超える場合)には位相検出器による位相引き込みは困難であるため、まず周波数ループにより周波数ずれを引き込む。
【0076】
ヒステリシスコンパレータ24の出力は、PLL回路30の周波数比較器25に入力され、周波数誤差の方向(UPまたはDOWN)の検出に用いられる。
【0077】
周波数比較器25においてはは、VCO23による3相クロックCLKA,CLKB,CLKCに同期してヒステリシスコンパレータ24によるヒステリシス信号HYCを取り込み、以降、たとえば第1相クロックAに同期して、入力データ信号のヒステリシスのエッジがどの位相からどの位相に変化したか観察することにより周波数が高いか低いかを周波数誤差として検出され、アップ信号UPまたはダウン信号DOWNがチャージポンプ回路27に出力される。
このとき、周波数比較器25においては、ヒステリシスコンパレータ24の出力パルスHYCを入力して、周波数誤差(UPまたはDOWN)の検出に用いるが、ヒステリシスコンパレータ24にて取り除くことができなかった2Tパターンを、VCO23による3相クロックCLKA,CLKB,CLKCに同期してパルスの周期計測を行うことにより除去される。
【0078】
周波数比較器25から出力されたアップ信号UPまたはダウン信号DOWNは周波数ループ用のチャージポンプ回路26にて電流に変換され、ループフィルタ27に積分される。
ループフィルタ27の出力制御信号S27によりVCO23の発振周波数がコントロールされ、入力データ信号の周波数に一致させるように動作する。
VCO23は、3段リング構成になっており、各段からの出力はCLKの一周期を3分割する3相クロックCLKA,CLKB,CLKCとなっている。この3相クロックCLKA,CLKB,CLKCが周波数比較器25に入力され、ヒステリシスコンパレータ24から出力されたヒステリシス信号HYCと比較することにより周波数検出が行われる。
【0079】
以上が周波数モードの動作であり、周波数ループの動作により入力データ信号とVCO23の発振周波数がほぼ一致すると、PLL回路30は、位相ロックモードに切り替わる。
【0080】
ADC16の出力は、PLL回路30の位相比較回路22に入力され、その位相誤差データS22はループフィルタ27で積分され、VCO23をコントロールしてADC16のサンプリング位相を一致させる。
また、ADC16の出力はFIRフィルタ17に入力され、さらに高精度に等化された後、ビタビ復号器18に入力され、デコード、エラー訂正されたのち、NRZデータとして出力される。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、VCO23による3相クロックCLKA,CLKB,CLKCに同期してヒステリシスコンパレータ24によるヒステリシス信号HYCを取り込み、以降、たとえば第1相クロックCLKAに同期して、入力データ信号のヒステリシスのエッジがどの位相からどの位相に変化したか観察することにより周波数が高いか低いかを周波数誤差として検出する際に、ヒステリシスコンパレータ24にて取り除くことができなかった2Tパターンを、VCO23による3相クロックCLKA,CLKB,CLKCに同期してパルスの周期計測を行うことにより除去し、これにより検出結果に基づいたアップ信号UPまたはダウン信号DOWNをチャージポンプ回路26に出力する周波数比較器25を有することから、以下の効果を得ることができる。
【0082】
すなわち、本発明によれば、ノイズや符号間干渉による劣化の大きい最短パターンを除去して周波数比較することにより、イコライザの等化誤差や記録パターン、光ピックアップの収差、あるいはディスクのスキューや記録密度によらず、正確な周波数比較が可能となる。
その結果、PLL回路の周波数引き込み動作は安定し、所望のキャプチャレンジを確保することができる。
結果として、高密度光ディスク装置のプレイアビリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係るPLL回路を採用した光ディスク装置のRF信号処理系の一実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】本実施形態に係るPLL回路における入力データ信号、ヒステリシス信号、3相クロック、および周波数比較器の各部の波形を示すタイミングチャートである。
【図3】最短パターンが2Tである1-7PP変調が採用されたBlu-ray ディスクにおいて、PR(1,2,1)に等化された再生RF信号の理想アイパターンを示す図である。
【図4】最短パターンが2Tである1-7PP変調が採用されたBlu-ray ディスクにおいて、PR(1,2,1)に等化された再生RF信号の実機アイパターンを示す図である。
【図5】本実施形態に係る周波数比較器の動作イメージを示す図である。
【図6】本実施形態に係る周波数比較器の比較論理を示す図である。
【図7】図3の検出動作を可能にする周波数比較器のロジック回路の一例を示す回路図である。
【図8】パルスエッジ周期計測による2T判定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0084】
10…光ディスク、11…光ディスク、12…光学ヘッド、13…プリアンプ、14…AGC回路、15…アナログイコライザ、16、アナログデジタルコンバータ(ADC)、17…FIRフィルタ、18…ビタビ復号器、19…デコーダ(ECC、インタフェース(I/F)、20…エンコーダ、21…レーザドライバ、22…位相比較器、23…VCO、24…ヒステリシスコンパレータ、25…周波数比較器、26…チャージポンプ回路、27…ループフィルタ、30…PLL回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号に応じた周波数をもって発振して所定周波数のクロックを出力する発振回路と、
上記発振回路によるクロックと入力信号の位相差を検出し、位相差データを出力する位相比較回路と、
上記位相比較回路の位相差データおよび帰還信号に基づいて上記制御信号を生成し、上記発振回路に供給する帰還回路と、
複数のパターンを含む入力信号から最短パターンのみを除去した信号と上記発振回路のクロックの周波数を比較し、周波数誤差に応じた信号を上記帰還回路に出力する周波数比較部と
を有する位相同期回路。
【請求項2】
上記周波数比較部は、ヒステリシスコンパレータを含み、上記入力信号を当該ヒステリシスコンパレータを通して振幅の小さい最短パターンを除去し、除去後の出力パルスと上記発振回路のクロックの周波数を比較する
請求項1記載の位相同期回路。
【請求項3】
上記周波数比較部は、コンパレータを含み、上記入力信号を当該コンパレータを通して得られた出力パルスのエッジ周期を計測し、最短パターンの場合には、周波数比較または比較結果の出力を停止する
請求項1記載の位相同期回路。
【請求項4】
上記コンパレータは、上記入力信号の振幅の小さい最短パターンを除去するヒステリシスコンパレータである
請求項3記載の位相同期回路。
【請求項5】
上記複数のパターンは2T〜8Tのデータパターンを含み、
上記周波数比較部は、上記2T〜8Tのデータパターンのうち最短パターンである2Tパターンのみを除去する
請求項1記載の位相同期回路。
【請求項6】
上記複数のパターンは2T〜8Tのデータパターンを含み、
上記周波数比較部は、上記2T〜8Tのデータパターンのうち最短パターンである2Tパターンのみを除去する
請求項2記載の位相同期回路。
【請求項7】
制御信号に応じた周波数をもって発振し、それぞれ位相の異なる多相クロックを出力する発振回路と、
上記発振回路による多相クロックのうちの一のクロックと入力信号の位相差を検出し、位相差データを出力する位相比較回路と、
上記位相比較回路の位相差データおよび帰還信号に基づいて上記制御信号を生成し、上記発振回路に供給する帰還回路と、
複数のパターンを含む入力信号から入力信号の振幅の小さい最短パターンを除去するヒステリシスコンパレータと、
上記ヒステリシスコンパレータの出力パルスおよび上記発振回路の多相クロックに基づいて、当該出力パルスとクロックとの周波数誤差を検出し、周波数誤差に応じた信号を出力し、出力パルスのエッジ周期を計測し、最短パターンの場合には、周波数比較または比較結果の出力を停止する周波数比較器と
を有する位相同期回路。
【請求項8】
上記複数のパターンは2T〜8Tのデータパターンを含み、
上記周波数比較部は、上記2T〜8Tのデータパターンのうち最短パターンである2Tパターンのみを除去する
請求項7記載の位相同期回路。
【請求項9】
記録媒体から読み出した信号をクロックに基づいてサンプリングしてデジタル信号に変換し再生する情報再生回路であって、
上記クロックによるサンプリング位相を正しい状態に一致させるための位相同期回路を有し、
上記位相同期回路は、
制御信号に応じた周波数をもって発振して所定周波数のクロックを出力する発振回路と、
上記発振回路によるクロックと入力信号の位相差を検出し、位相差データを出力する位相比較回路と、
上記位相比較回路の位相差データおよび帰還信号に基づいて上記制御信号を生成し、上記発振回路に供給する帰還回路と、
複数のパターンを含む入力信号から最短パターンのみを除去した信号と上記発振回路のクロックの周波数を比較し、周波数誤差に応じた信号を上記帰還回路に出力する周波数比較部と、を有する
情報再生装置。
【請求項10】
上記周波数比較部は、ヒステリシスコンパレータを含み、上記入力信号を当該ヒステリシスコンパレータを通して振幅の小さい最短パターンを除去し、除去後の出力パルスと上記発振回路のクロックの周波数を比較する
請求項9記載の情報再生装置。
【請求項11】
上記周波数比較部は、コンパレータを含み、上記入力信号を当該コンパレータを通して得られた出力パルスのエッジ周期を計測し、最短パターンの場合には、周波数比較または比較結果の出力を停止する
請求項9記載の情報再生装置。
【請求項12】
上記コンパレータは、上記入力信号の振幅の小さい最短パターンを除去するヒステリシスコンパレータである
請求項11記載の情報再生装置。
【請求項13】
上記複数のパターンは2T〜8Tのデータパターンを含み、
上記周波数比較部は、上記2T〜8Tのデータパターンのうち最短パターンである2Tパターンのみを除去する
請求項9記載の情報再生装置。
【請求項14】
上記複数のパターンは2T〜8Tのデータパターンを含み、
上記周波数比較部は、上記2T〜8Tのデータパターンのうち最短パターンである2Tパターンのみを除去する
請求項10記載の情報再生装置。
【請求項15】
上記ヒステリシスコンパレータの入力信号は、イコライザ出力の再生RF信号であり、当該再生RF信号はパーシャルレスポンス等化されている
請求項9記載の情報再生装置。
【請求項16】
記録媒体から読み出した正弦波状の信号をクロックに基づいてサンプリングしてデジタル信号に変換し再生する情報再生回路であって、
上記クロックによるサンプリング位相を正しい状態に一致させるための位相同期回路を有し、
上記位相同期回路は、
制御信号に応じた周波数をもって発振し、それぞれ位相の異なる多相クロックを出力する発振回路と、
上記発振回路による多相クロックのうちの一のクロックと入力信号の位相差を検出し、位相差データを出力する位相比較回路と、
上記位相比較回路の位相差データおよび帰還信号に基づいて上記制御信号を生成し、上記発振回路に供給する帰還回路と、
複数のパターンを含む入力信号から入力信号の振幅の小さい最短パターンを除去するヒステリシスコンパレータと、
上記ヒステリシスコンパレータの出力パルスおよび上記発振回路の多相クロックに基づいて、当該出力パルスとクロックとの周波数誤差を検出し、周波数誤差に応じた信号を出力し、出力パルスのエッジ周期を計測し、最短パターンの場合には、周波数比較または比較結果の出力を停止する周波数比較器と、を有する
情報再生装置。
【請求項17】
上記複数のパターンは2T〜8Tのデータパターンを含み、
上記周波数比較部は、上記2T〜8Tのデータパターンのうち最短パターンである2Tパターンのみを除去する
請求項16記載の情報再生装置。
【請求項18】
上記ヒステリシスコンパレータの入力信号は、イコライザ出力の再生RF信号であり、当該再生RF信号はパーシャルレスポンス等化されている
請求項16記載の情報再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−60381(P2006−60381A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238350(P2004−238350)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】