説明

位相差フィルム、およびその製造方法

【課題】 本発明は、温度変化等の耐久性に優れた位相差フィルム、特に逆波長分散性と耐久性とを両立させた位相差フィムルを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、下記(A)成分と下記(B)成分とを含有する位相差フィルムを提供した。
(A):下記(1)式を満足するセルロースアシレート
2.20≦DSac(A)+DSay(A)≦2.90 (1)
(DSac(A)は(A)成分のアセチル置換度、DSay(A)は(A)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
(B):(A)成分とは異なる粘度平均重合度を有する水酸基残度0.30以上のセルロースアシレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は任意のリターデーションの波長分散を有するセルロース系位相差フィルムに関する。さらには、逆波長分散性を示すセルロース系位相差フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置、特に液晶表示装置用光学フィルムは、用途の広がりに伴い、より高度な機能が要求されてきている。それら要求のうち特に重要なものとして、可視光領域において、長波長ほど高いリターデーションを有するものが要求されている。こういった光学フィルムは、ポリカーボネート等の通常の樹脂を用いた一枚からなる光学フィルムの波長分散と逆の傾向を示すことから、通称として逆波長分散フィルムと呼ばれる。逆波長分散フィルムは、反射型液晶表示装置等において、直線偏光を円偏光に、円偏光を直線偏光に変換するための位相差フィルムとして使用することができる。また最近では、偏光板の視野角による色シフトを低減する目的、すなわち偏光板補償フィルムとして期待されており、さらには位相差付きの偏光子保護フィルムとしても期待されている。単一の逆波長分散フィルムとして、セルロースアセテートを含有するフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)しかし、セルロースアセテートは溶媒への溶解性が低いためソルベントキャスト法を用いる場合は選択できる溶媒が限られる。また、セルロースアセテートはソルベントキャスト法において一般に用いられる塩化メチレンには溶解しづらい傾向があり、また通常セルロースアセテートフィルムは、加工性やハンドリング性に劣るため過剰の可塑剤を用いる場合が多いが、過剰の可塑剤を用いると、逆波長分散性が小さくなるという問題がある。
【0003】
セルロースアセテートの問題を解決する方法として、セルロースアセテートプロピオネートの逆波長分散フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、逆波長分散フィルムは、屋外での利用が多い反射型液晶表示装置用の位相差フィルムや、大画面液晶表示装置の偏光板補償フィルムとしての用途が期待されている。また液晶表示装置の汎用化に伴い、様々な環境下で使用されるようになった。逆波長分散フィルムは、環境変動、特に温度変化によるクラックの発生が起こり難い事が好ましい。しかしながら、特許文献2が開示する位相差フィルムは、温度変化に対する機械的強度の耐久性の点で問題となる場合があった。
【特許文献1】特開2000−137116号
【特許文献2】特開2003−315538号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、温度変化等の耐久性に優れた位相差フィルムを提供するものであり、特に逆波長分散性と耐久性とを両立させた位相差フィムルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究の結果、本発明にいたった。
【0007】
すなわち、本発明は、下記(A)成分と下記(B)成分とを含有する位相差フィルムに関する。
(A):下記(1)式を満足するセルロースアシレート
2.20≦DSac(A)+DSay(A)≦2.90 (1)
(DSac(A)は(A)成分のアセチル置換度、DSay(A)は(A)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
(B):(A)成分とは異なる粘度平均重合度を有する水酸基残度0.30以上のセルロースアシレート。
【0008】
好ましい実施態様としては、前記(A)成分が、下記(2)式を満足することを特徴とする、請求項1に記載の位相差フィルムに関する。
DSay(A)/DSac(A)≧2 (2)
好ましい実施態様としては、前記(B)成分が下記(3)式および(4)式を満たすセルロースアシレートであり、かつ、(A)成分と(B)成分が下記(5)式とを満足することを特徴とする、位相差フィルムに関する。
2.00≦DSac(B)+DSay(B)≦2.70 (3)
DSay(B)/DSac(B)≧2 (4)
(DSac(A)+DSay(A))−0.05≧(DSac(B)+DSay(B)) (5)
(DSac(B)は(B)成分のアセチル置換度、DSay(B)は(B)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
好ましい実施態様としては、(A)成分のセルロースアシレートが、下記(6)式と(7)式とを満足するセルロースアセテートプロピオネートであり、
2.20≦DSac(A)+DSpr(A)≦2.90 (6)
DSpr(A)/DSac(A)≧2 (7)
(B)成分のセルロースアシレートが、下記(8)式と(9)式とを満足するセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする、位相差フィルムに関する。
2.00≦DSac(B)+DSpr(B)≦2.70 (8)
DSpr(B)/DSac(B)≧2 (9)
(DSpr(A)は(A)成分のプロピオニル置換度、DSpr(B)は(B)成分のプロピオニル置換度を示す)。
【0009】
好ましい実施態様としては、(A)成分と(B)成分が下記(10)式を満足することを特徴とする、位相差フィルムに関する。
50≦DP(A)−DP(B)≦100 (10)
(DP(A)、DP(B)はそれぞれ(A)成分、(B)成分の粘度平均重合度を表す)
好ましい実施態様としては、前記DP(A)およびDP(B)がそれぞれ下記の(11)式および(12)式を満たすことを特徴とする、位相差フィルムに関する。
DP(A)=150〜230 (11)
DP(B)=60〜140 (12)
好ましい実施態様としては、
(A)成分の含有量が20〜50重量%、
(B)成分の含有量が80〜50重量%、
であるセルロースアシレートを含有することを特徴とする、位相差フィルムに関する。
【0010】
好ましい実施態様としては、下記(13)式と(14)式を満足することを特徴とする、位相差フィルムに関する。
Re(450)/Re(550)=0.80〜0.95 (13)
Re(550)<Re(650) (14)
(Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmにおけるリターデーション値を示す)。
【0011】
さらに本発明は、上記記載の位相差フィルムを含有する光学補償偏光板に関する。
【0012】
好ましい実施態様としては、前記位相差フィルムを、偏光子と直接貼り合わせることを特徴とする光学補償偏光板に関する。
【0013】
さらに本発明は、上記の位相差フィルムの製造方法であって、(A)成分および(B)成分を含有する溶液を支持体上に流延する溶液キャスト法により製造することを特徴とする、位相差フィルムの製造方法に関する。
【0014】
好ましい実施態様としては、前記溶液が塩化メチレンを含有することを特徴とする、位相差フィルムの製造方法に関する。
【0015】
好ましい実施態様としては、前記溶液中の溶剤が、塩化メチレンを70〜99重量%、炭素数3以下のアルコールを1〜30重量%含むことを特徴とする位相差フィルムの製造方法に関する。
【0016】
好ましい実施態様としては、少なくとも一軸方向に延伸することを特徴とする、位相差フィルムの製造方法に関する。
【0017】
好ましい実施態様としては、上記記載の位相差フィルムの製造方法によって得られた位相差フィルムを、偏光子保護フィルムおよび/または他の光学部材を介して、偏光子と貼り合わすことを特徴とする、光学補償偏光板の製造方法に関する。
【0018】
好ましい実施態様としては、上記記載の位相差フィルムの製造方法によって得られた位相差フィルムを、偏光子と直接貼り合わすことを特徴とする、光学補償偏光板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、温度変化等の耐久性に優れた位相差フィルムが得られる。特に逆波長分散性と耐久性とを両立させた位相差フィムルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の位相差フィルムは、下記(A)成分と下記(B)成分とを含有する位相差フィルムである。
(A):下記(1)式を満足するセルロースアシレート
2.20≦DSac(A)+DSay(A)≦2.90 (1)
(DSac(A)は(A)成分のアセチル置換度、DSay(A)は(A)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
(B):(A)成分とは異なる重合度を有する水酸基残度0.30以上のセルロースアシレート。
【0021】
DSac(A)+DSay(A)はセルロース分子中の2,3,6位に存在する3個の水酸基が平均してどれだけアシル化されているかを表し、それぞれの位置の置換度は均等でもよいし、いずれかの位置に偏っていてもよい。また、アシル基の置換度はASTM−D817−96に記載の方法にて定量することができる。
【0022】
(1)式が意味するところは、次の通りである。全ての水酸基がアシル化された、DSac(A)+DSay(A)が3のセルロースアシレートからなるフィルムを一軸延伸すると、延伸方向と直交する方向が遅相軸の方向である負の複屈折の位相差フィルムとなる。この位相差フィルムの位相差(リターデーション)の波長分散性は、短波長ほど位相差(絶対値)が大きい傾向を示す。DSac(A)+DSay(A)を3より小さくしていくと、延伸による位相差の発現のしやすさは低下し、約2.8〜2.9で延伸しても位相差が殆ど出ないフィルムとなり、さらにDSac(A)+DSay(A)を小さくすると、延伸方向が遅相軸の方向となり、正の複屈折の位相差フィルムとなる。これに伴い、位相差フィルムの位相差の波長分散性は、長波長ほど位相差(絶対値)が大きい傾向を示し、DSac(A)+DSay(A)をさらに小さくすると、この傾向は失われていき、波長に依らずに一定の位相差を示すようになる。このような波長に依らずに一定の位相差を示すDSac(A)+DSay(A)は、DSac(A)とDSay(A)の比によって異なるが、概ね2.0〜2.3の範囲にある。そして、更にDSac(A)+DSay(A)を小さくすると、ポリカーボネート製の位相差フィルムと同様の、短波長ほど位相差(絶対値)の大さい位相差フィルムとなる。
【0023】
以上の理由により、DSac(A)+DSay(A)は3を越えることはなく、また、短波長ほど位相差が大きい傾向を示すと液晶表示装置の表示品位が低下するので2.00以上が適当であり、負の複屈折を得たくない場合は2.90以下が必要となる。
【0024】
上述した、波長分散性の観点から言えば、特許文献1に開示されているように、セルロースの水酸基は、アセチル基で置換してもプロピオニル基で置換しても目的を達成できる。しかしながら、特許文献2において示されているとおり、ソルベントキャスト法で厚み精度の良いフィルムを製膜するためには、高濃度溶液の調製が可能であることが好まれる。このような観点から、アセチル置換度(DSac(A))の高いセルロースアシレートよりも、炭素数3または炭素数4のアシル基の置換度(DSay(A))の高いセルロースアシレートの方が有機溶剤に対する溶解性が高く、特に塩化メチレンを用いる場合においては顕著な差が認められる。従って、DSay(A)は高い方が好ましく、すなわち、前記(A)成分が、下記(2)式を満足することが好ましい。
DSay(A)/DSac(A)≧2 (2)
しかしながら、(A)成分のみでは、温度変化に対する機械的強度の耐久性(以下、耐久性と略す)の点で問題となる場合がある。そこで(A)成分とは異なる粘度平均重合度を有する水酸基残度0.30以上のセルロースアシレートを(B)成分として含有させることにより、温度変化に対する耐久性を向上させることができる。
【0025】
(B)成分中の水酸基残度0.30以上のセルロースアシレートまたはセルロースエーテルとしては、(A)成分と相溶すれば特に限定はない。ここで相溶するとは、厚さ100μmのフィルムを作製した場合に、少なくとも(B)成分中の樹脂が1重量%以上含まれる場合においてヘイズが5%以下となる状態を指す。前述したとおり、DSac(A)+DSay(A)の大きさにより光学特性を調整できるが、この光学特性はアシル基にのみ依るものではなく、水酸基以外の置換基でも同様の効果が得られる事が多い。言い換えれば水酸基残度の大きさが光学特性の指標となると言える。ここで言う水酸基残度とは、3から水酸基以外の置換基の総置換度を引いた値である。
【0026】
(B)成分の水酸基残度は0.30以上であれば特に問題はないが、溶解性を考慮すると0.30〜1.00であることが好ましい。1.00を超えると溶解性が低下し、また逆波長分散フィルムが得られ難くなるため好ましくない。
【0027】
さらに、溶解性や(A)成分との相溶性に優れた(3)式と、(4)式を満足するセルロースアシレートであることがより好ましい。さらに、(A)成分と(B)成分が(5)式を満足する関係にある場合、リターデーションの発現性が大きくなるという点で好ましい。
2.00≦DSac(B)+DSay(B)≦2.70 (3)
DSay(B)/DSac(B)≧2 (4)
(DSac(B)は(B)成分のアセチル置換度、DSay(B)は(B)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
(DSac(A)+DSay(A))−0.05≧(DSac(B)+DSay(B)) (5)
アセチル基以外のアシル基としては、炭素数3または炭素数4のプロピオニル基、またはブチリル基が工業的に容易に得られるため好ましい。特にプロピオニル基を用いた場合は、臭気の点で好ましい。すなわち、(A)成分および(B)成分に特に好適に用いることができるセルロースアシレートは、(6)〜(9)式をそれぞれ満足するセルロースアセテートプロピオネートである。
2.20≦DSac(A)+DSpr(A)≦2.90 (6)
DSpr(A)/DSac(A)≧2 (7)
2.00≦DSac(B)+DSpr(B)≦2.70 (8)
DSpr(B)/DSac(B)≧2 (9)
(DSpr(A)は(A)成分のプロピオニル置換度、DSpr(B)は(B)成分のプロピオニル置換度を示す)
(A)成分と(B)成分の重合度に関しては、特に制限はなく、同じ重合度でなければいずれの重合度のものも使用することができる。さらに耐久性の観点から、(B)成分の重合度が(10)式の関係を満たすことが好ましい。
50≦DP(A)−DP(B)≦100 (10)
ここで、DP(A)、DP(B)はそれぞれ(A)成分、(B)成分の粘度平均重合度を表す。
【0028】
さらに(A)成分と(B)成分が、(11)式、(12)式を満たすことが好ましい。重合度が、(11)式と(12)式を超えると、溶剤に対する溶解度を低下する場合がある。また得られた溶液の粘度が大きすぎソルベントキャスト法に適さない他、熱成型を困難にするなどの問題を生じる場合がある。一方、重合度が、(11)式と(12)式より小さいと、得られたフィルムの機械的強度を低下させる場合がある。
DP(A)=150〜230 (11)
DP(B)=60〜140 (12)
(11)式右辺のさらに好ましい範囲は205〜225であり、(12)式右辺のさらに好ましい範囲は90〜110である。
【0029】
また、本発明における重合度とは、粘度平均重合度である。セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、例えば以下のようにして求めることができる。
【0030】
絶乾したセルロースアシレート0.2gを精秤し、塩化メチレン:エタノール=9:1(重量比)の混合溶媒100mlに溶解した。これをオストワルド型粘度計にて25℃で落下時間を測定し、重合度を以下の(15)〜(17)式より求めた。
ηrel=T/T0 (15) T:測定試料の落下時間、T0:溶剤単独の落下時間
[η]=(lnηrel)/C (16) C:濃度(g/l)
DP=[η]/Km (17) Km:6×10-4
(A)成分と(B)成分の含有量に関しては、特に制限はないが、(A)成分の含有量が20〜50重量%、(B)成分の含有量が80〜50重量%であることが好ましい。(A)成分と(B)成分の含有量がこの範囲にあると、耐久性が向上する場合が多いため好ましい。通常、重合度が小さい化合物の含有量が50重量%以上となると、機械的強度が低下する傾向があるため、これは驚くべき知見である。さらに、(A)成分の含有量が30〜40重量%、(B)成分の含有量が70〜60重量%であることが特に好ましい。
【0031】
本発明の位相差フィルムは、温度変化に対する耐久性に優れる。これは、(B)成分を(A)成分に加えることによる効果である。さらには、(A)成分と(B)成分の重合度の差が、上記(10)式を満たす場合に、この効果は顕著である。加えて、上記(11)式と(12)式を満たす場合に特に顕著である。温度変化に対する耐久性を評価する方法として例えば、熱分析装置(TMA装置)を用いた以下の評価法が挙げられる。作成直後から、室温25℃、湿度50%で24時間放置後の位相差フィルムを、−60℃から110℃まで10℃/分で昇温し、次いで110℃から−60℃まで10℃/分で降温し、この昇降温サイクルを2回繰り返すとする。この時、位相差フィルムの延伸方向または長手方向に直交する方向への−40℃での2回目(昇温時)の寸法変化率が0.5%以上であり、または85℃(昇温時)での(1回目の寸法変化率)/(2回目の寸法変化率)が0.90以下であると、温度変化に対する耐久性の点で問題となる(寸法変化率は、作成直後から、室温25℃、湿度50%で24時間放置後の状態を100%とした値である)。例えば、偏光子と張り合わせて光学補償偏光板を作成した場合、長期の使用によりクラック等が発生する。(B)成分を、(A)成分に混合することにより、上記評価にて、−40℃での2回目の寸法変化率が0.5%未満となり、85℃での(1回目の寸法変化率)/(2回目の寸法変化率))が0.90を越えることができる。
【0032】
光学フィルムの代表的な成形方法として、樹脂を溶融してTダイなどから押し出してフィルム化する溶融押出法と、有機溶剤に樹脂を溶解して支持体上にキャストし加熱により溶剤を乾燥しフィルム化するソルベントキャスト法が挙げられるが、厚み精度の良い光学フィルムが比較的容易に製造できるとの理由からソルベントキャスト法を用いることが好ましい。厚み精度が悪いと、厚み変動に由来する凹凸がレンズのように働き、液晶表示装置に組み込んだ際の画像の歪み(所謂レンズ効果)の発生が懸念され、また、リターデーション(位相差)は複屈折と厚みの積で表されるため、リターデーション値の面内バラツキが発生する場合がある。
【0033】
ソルベントキャスト法を採用する場合の溶剤には特に制限はないが、乾燥効率の観点からは沸点が低い溶剤ほど好ましく、具体的には100℃以下の低沸点溶剤が好ましい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチルやプロピオン酸エチルなどのエステル系溶剤が使用可能である。また、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤は、樹脂材料を溶解しやすく、沸点も低いため、好適な溶剤の一つである。また、塩化メチレンは乾燥中の火災等に対する安全性も高いので、本発明の位相差フィルムを製造する際に用いる主な溶剤として特に好ましい。さらに、塩化メチレン70〜99重量%と、炭素数3以下のアルコールを1〜30重量%を含む混合溶剤を用いることは、火災に対する安全性と、溶解性、生産性のバランスが良く、より好ましい。前記炭素数3以下のアルコールとしてはエチルアルコールが安全で、沸点も低く好ましい。さらに、コストを抑制するため、炭素数3以下のアルコール100重量部のうち、エチルアルコール以外の炭素数3以下のアルコールを1〜10重量部含むことが好ましい。前記エチルアルコール以外の炭素数3以下のアルコールとしては、安全性や沸点の観点から、イソプロピルアルコールを用いることが特に好ましい。また、ここで言う溶剤とは乾燥工程や延伸工程においてフィルムにかかる最大温度よりも沸点が低い溶剤の事を指し、乾燥工程や延伸工程における最大温度より沸点が高い液体は可塑剤と言う。
【0034】
本発明に用いられるセルロースアシレートは、それ自体既知の方法で製造することができる。例えばセルロースアセテートプロピオネートの場合は、セルロースを強苛性ソーダ溶液で処理してアルカリセルロースとし、これを無水酢酸とプロピオン酸無水物との混合物によりアシル化する。得られたセルロースエステルは置換度DSac+DSprがほぼ3であるが、アシル基を部分的に加水分解することにより、目的の置換度を有するセルロースアセテートプロピオネートを製造することができる。また、アシル化の際に無水酢酸とプロピオン酸無水物の比率を変えることにより、目的のプロピオニル置換度を得ることができる。
【0035】
また、分子中のエステル基の存在は、高分子の親水性を増大させるため、フィルム化時に水分が存在したままだと、得られるフィルム強度に好ましくない影響を及ぼすおそれがあるため、フィルム化に用いる樹脂やペレット、溶剤などを事前に乾燥しておくことが好ましい。
【0036】
また、フィルム化の際に、必要に応じて少量の可塑剤や熱安定剤、紫外線安定剤等の添加剤を加えてもよい。得られたフィルムが脆い場合、延伸などの加工特性を改善する目的で可塑剤を加えることは有効である。特に特開2001−75098に記載の熱収縮性フィルムを熱可塑性フィルムの片面又は両面に接着し、加熱によるその熱収縮性フィルムの収縮力の作用下に熱可塑性フィルムを延伸し、位相差フィルムを得る方法においては、ガラス転移点の制御が重要となるため、ガラス転移点を調整する等の目的で、可塑剤を添加することも好ましい。可塑剤は、乾燥工程、延伸工程においてフィルムにかかる最大温度より沸点が高いもので、(A)成分に相溶すれば特に限定はない。例えば、ヒマシ油およびその誘導体、樟脳等、従来より周知のセルロース系樹脂用可塑剤を好適に用いることができる。ただし、可塑剤を多く含有すると、延伸による位相差の発現が小さくなり、またブリードの原因となるため、添加量は全固形分の5重量%以内であることが好ましい。また芳香環が多い可塑剤はリターデーション上昇剤として作用してしまい、所望の光学特性が得難くなる場合がある。このような観点から、本発明における可塑剤は、フタル酸エステル、特にジエチルフタレートが好ましい。
【0037】
ソルベントキャスト法によりフィルム化する際、本発明の(A)成分と(B)成分を前記溶剤に溶解したのち、支持体にキャストし、乾燥してフィルムとする。溶液の好ましい粘度は1.0Pa・s以上5.0Pa・s以下、さらに好ましくは1.5Pa・s以上4.0Pa・s以下である。好ましい支持体としてはステンレス鋼のエンドレスベルトや、ポリイミドフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等のようなフィルムを用いることができる。
【0038】
キャスト後の乾燥は、支持体に担持されたまま行うことも可能であるが、必要に応じて、自己支持性を有するまで予備乾燥したフィルムを支持体から剥離し、さらに乾燥することもできる。フィルムの乾燥は、一般にはフロート法や、テンターあるいはロール搬送法が利用できる。フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学的特性の不均一が生じやすい。また、テンター法の場合、フィルム両端を支えているピンあるいはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴うフィルムの幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があり、複雑な幅の拡縮制御を行う必要がある。一方、ロール搬送法の場合、安定なフィルム搬送のためのテンションは原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすい特徴を有する。従って、フィルムの乾燥は、ロール搬送法によることが最も好ましい。また、溶剤の乾燥時にフィルムが水分を吸収しないよう、湿度を低く保った雰囲気中で乾燥することは、機械的強度と透明度の高い本発明フィルムを得るには有効な方法である。
【0039】
本発明の位相差フィルムの厚みは、10μmから500μmが好ましく、より好ましくは30μmから300μmである。フィルムの光線透過率は85%以上が好ましく、より好ましくは、90%以上である。また、フィルムのヘーズは5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下である。
【0040】
位相差フィルムを得るために、上記で得られたフィルムを公知の延伸方法により配向処理を行い、均一な位相差を付与することができる。
【0041】
位相差フィルムのリターデーションは5nmを超え1000nmまでの間で、目的に応じて選択することができる。特に本発明フィルムを、反射型液晶表示装置用位相差フィルムまたは液晶表示装置の視野角による色シフトを低減する目的、すなわち光学補償偏光板の一部材として使用する場合、波長550nmにおけるリターデーションは好ましくは70〜155nm、さらに好ましくは80〜150nm、さらに好ましくは85〜145nmである。位相差がこの範囲にあれば、光学補償偏光板の一部材として好適に用いることができる。反射型液晶表示装置用位相差フィルムや光学補償偏光板の一部材として用いる場合は、波長分散性が重要となり、長波長ほど高いリターデーションを有する逆波長分散であることが求められる。言い換えると、波長λnmにおける正面リターデーションRe(λ)はRe(450)<Re(550)<Re(650)であることが好ましい。リターデーションの波長分散がこの範囲から外れた場合は、可視光領域の直線偏光をこのフィルムに入射した際、得られる楕円偏光の状態が波長により大きく異なるため、充分な光学補償能を得られない場合がある。特に、下記(13)式、(14)式を満足する場合は、高品位な液晶表示装置が得られるため好ましい。位相差の波長分散性がこの範囲から外れた場合は、視野角による色シフトが大きくなる場合がある。
Re(450)/Re(550)=0.80〜0.95 (13)
Re(550)<Re(650) (14)
(Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmにおけるリターデーション値を示す)
また、リターデーションの発現性の観点においては、波長550nmにおけるフィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、進相軸方向の屈折率をnyとした時(nx−ny)は0.0010以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.0012以上である。(nx−ny)がこの範囲を下回ると、フィルムの厚みが増大し、モバイル等の用途に適さないだけでなく、フィルムの生産性やハンドリング性に劣る傾向がある。本発明フィルムではこれら用件を満たすことができるため、可視光領域において、逆波長分散を示し、且つ十分な位相差発現性を有する位相差フィルムをとして使用できる。
【0042】
さらに、位相差フィルムの特性として、三次元方向の屈折率を制御できることが好ましい。三次元屈折率の制御に関しては、フィルム面内の屈折率をnx、進相軸方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとした際、NZ=(nx−nz)/(nx−ny)で表すことができる。位相差フィルムに一軸性が求められる場合にはNZの範囲は好ましくは1.00以上、1.20以下、さらに好ましくは1.00以上、1.10以下である。
【0043】
リターデーションや三次元屈折率は、延伸方法や延伸温度、延伸倍率等により所望の値に調整することができる。
【0044】
延伸方法としては一軸や二軸の熱延伸法を採用することができる。さらに、特開2001−75098号公報に示されるような特殊な二軸延伸を施し、フィルム厚み方向の屈折率を大きくすることも可能である。
【0045】
一般には延伸倍率は1.01倍から4倍であり、延伸温度はガラス転移温度Tgに対して、(Tg−30)℃以上、(Tg+30)℃以下が好ましい範囲である。特に好ましい延伸温度は(Tg−20)℃以上、(Tg+20)℃以下までの範囲であり、さらに好ましくはTg−10)℃以上、(Tg+15℃)以下である。ただし、ここでいう延伸温度とは、延伸を実施する炉内の温度がすべてこの温度で均一なければならないということを意味するのではなく、延伸を実施する炉内の最高温度を表しており、炉内の他の点が前記温度範囲から外れていてもよい。また、ガラス転移温度は示差熱分析法(DSC)を用い、JIS K−7121に記載の方法にて測定することができる。
【0046】
延伸温度が前記範囲より小さいと、延伸時にフィルムが破断したり、ヘイズが上昇する傾向がある。また、前記範囲より大きいと、十分な位相差を得ることができない傾向にある。この温度範囲よりとすることにより、延伸時のフィルム白化を防止でき、また、得られた位相差フィルムの位相差のバラツキを小さくすることができる。
【0047】
特に、位相差フィルムに一軸性が求められる場合には、(Tg+5)℃以上、(Tg+30)℃以下の温度で自由端一軸延伸する方法を好適に用いることができる。特開2000−137116号公報の実施例に開示されているように、一般にセルロース誘導体からなるフィルムを自由端一軸延伸してた場合、得られるNZの値は1.20を超えている。NZをさらに小さくするためには、特開2001−75098号公報に示されるような特殊な二軸延伸が必要となるが、熱収縮フィルムの貼合等が必要であり、工程が増加するため、歩留りが悪化したり、コストが増大する傾向にある。本発明では延伸温度を制御することで自由端一軸延伸により、NZの範囲を1.00以上、1.20以下、さらには1.00以上、1.10以下に制御することができるため、工程数減少による歩留り向上やコスト削減の点で好ましい方法である。
【0048】
また、光弾性係数すなわち、応力負荷を受けたときの複屈折の変化率は、好ましくは20×10-122/N以下である。光弾性係数が大きいと、液晶層や偏光板とともに貼り合わせた時の貼りムラ、バックライトや外部環境からの熱を受けることによる構成材料間の熱膨張差、偏光フィルムの収縮等によって生じる応力の影響に起因する位相差変化が大きくなり、表示装置の色ムラを悪化させたり、コントラストを低下させる傾向にある。公知のポリカーボネートの光弾性係数は70×10-122/Nであるのに対し、本発明の位相差フィルムの光弾性係数は前期範囲を満たしており、位相差変化が小さいため、特に大画面液晶表示装置用にも好適に用いることができる。
【0049】
本発明の位相差フィルムを偏光子と貼り合わせて光学補償偏光板とする際、偏光子と本位相差フィルムの間に偏光子保護フィルムや、その他の光学部材を有していても良いが、偏光子と本位相差フィルムとを直接貼り合わせても良い。本位相差フィルムはセルロースアシレートまたはセルロースエーテルを含有するため、偏光子との接着性が良いため、位相差付きの偏光子保護フィルムとして、偏光子と直接貼り合せることが好ましい。光学補償偏光板の製造方法における、貼り合せ方法や、貼り合わせに用いる粘着剤は、従来公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
(測定方法)
本明細書中に記載の材料特性値等は、以下の評価法によって得られたものである。
【0052】
(1)リターデーション
フィルムの幅方向中央より50mm角のサンプルを切り出し、王子計測機器製自動複屈
折計KOBRA−WRにより、位相差の波長分散性を測定し、その測定値を元に装置付属
のプログラムによりRe(450)、Re(550)、Re(650)を算出した。
【0053】
(2)厚み
アンリツ製電子マイクロメーターにより測定した。
【0054】
(3)セルロースアシレートの置換度の算出
ASTM−D817−96記載の方法にて各アシル基含量を測定し、アシル基の置換度をそれぞれ算出した。
【0055】
水酸基残度は、3−(総アシル置換度)を計算して求めた。
【0056】
(4)重合度
試料を乾燥機で乾燥処理(40℃15時間、真空引き)し、絶乾とした。絶乾した試料0.2gを精秤し、塩化メチレン:エタノール=9:1(重量比)の混合溶媒100mlに溶解した。これをオストワルド型粘度計にて25℃で落下時間を測定し、重合度を以下の(15)〜(17)式より求めた。塩化メチレン:エタノール=9:1(重量比)の混合溶媒の落下時間も同様に求めた。
ηrel=T/T0 (15) T:測定試料の落下時間、T0:溶剤単独の落下時間
[η]=(lnηrel)/C (16) C:濃度(g/l)
DP=[η]/Km (17) Km:6×10-4
(5)樹脂の選定
(A)成分として、DSac+DSpr=2.68、DSpr=2.50、粘度平均重合度が52200、重量平均重合度が235000であるセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカルCAP482−20)を用いた。
【0057】
(B)成分として、DSac+DSpr=2.58、DSpr=2.40(カタログ値より算出)、粘度平均重合度が25000、重量平均重合度が62000であるセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカルCAP482−0.5)、または平均エトキシル置換度が2.3、粘度平均重合度が61000、重量平均重合度が183000であるエチルセルロース(ダウケミカルMED70)を選択した。
【0058】
(6)位相差フィルム作製
作成例(イ);実施例1、実施例2、比較例1、比較例2に関する。
【0059】
溶剤として83重量部の塩化メチレンに、17重量部の樹脂混合物を溶解し、塗工用の溶液を調整した。この溶液を室温23℃、湿度15%の環境下で、長辺方向に1.0×106N/m2の応力を付与した状態の、厚さ125μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ポリエステル系易接着層付き)上に、PETフィルムの長辺方向が流延方向となるように、コンマコーターを用いて流延した。なお、2次乾燥後のフィルムの厚さが100μmとなるように、コンマコーターのクリアランスを調整した。流延後、室温で4分間、60℃で4分間、80℃で4分間乾燥を行った。得られたフィルムをPETフィルムから剥離した後、さらに2次乾燥として流延方向に2.0×105N/m2の応力を付与した状態で110℃にて30分乾燥し、透明フィルムを得た。得られたフィルムを延伸温度155℃で自由端一軸延伸にて延伸し、位相差フィルムを得た。延伸倍率はリターデーションが550nmの波長の光に対して概ね1/4波長板となるよう設定した。
【0060】
作成例(ロ);実施例3、実施例4、比較例3、比較例4に関する。
可塑剤として0.5重量部のジエチルフタレートを用い、樹脂混合物を16.5重量部とし、2次乾燥後のフィルムの厚さが80μmとなるようにコンマコーターのクリアランスを調整し、延伸を136℃に恒温された加熱炉と次いで146℃に恒温された加熱炉を連続的に通過させながら行い、リターデーションが550nmの波長の光に対して概ね90nmとした以外は、作成例(イ)と同様に位相差フィルムを作製した。
【0061】
作成例(ハ);実施例5、実施例6、比較例5、比較例6に関する。
塩化メチレン95.0重量%、エチルアルコール4.79重量%、およびイソプロピルアルコール0.21重量%に調整した混合溶剤78重量部に、可塑剤として0.66重量部のジエチルフタレート、および21.3重量部の樹脂混合物を溶解し、塗工用の溶液とし、流延後、乾燥時間を室温で3分間、60℃で2分間、80℃で2分間と短縮した以外は、作製例(ロ)と同様に位相差フィルムを作製した。
【0062】
(7)耐久性
装置:セイコー電子工業製TMA装置(SSC5200H)
チャック間距離:10mm
荷重:3g
試料:位相差フィルムの延伸方向または長手方向に直交する方向を測定方向とし、幅は3mmとした。
【0063】
測定:試料を−60℃から110℃まで10℃/分で昇温し、次いで110℃から−60℃まで10℃/分で降温し、この昇降温サイクルを2回繰り返し、−40℃(昇温時)と85℃(昇温時)での寸法変化率を求めた。
耐久性評価の基準を下記にしめす。
不可:2回目の−40℃(昇温時)での寸法変化率が、0.5以上、または85℃(昇温時)での(1回目の寸法変化率)/(2回目の寸法変化率)が0.90以下。
可:2回目の−40℃(昇温時)での寸法変化率が、0.5未満、0.4以上で、85℃(昇温時)での(1回目の寸法変化率)/(2回目の寸法変化率)が0.95未満、0.90以上。
良:2回目の−40℃(昇温時)での寸法変化率が、0.4未満、0.2以上で、85℃(昇温時)での(1回目の寸法変化率)/(2回目の寸法変化率)が0.98未満、0.95以上。
優:2回目の−40℃(昇温時)での寸法変化率が、0.2未満で、85℃(昇温時)での(1回目の寸法変化率)/(2回目の寸法変化率)が0.98以上。
【0064】
(実施例1〜6、比較例1〜6)
フィルム中の材料組成および結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の位相差フィルムは、表示装置、特に液晶表示装置用光学フィルムに好適に利用できる。特に逆波長分散フィルムの用途としては、反射型液晶表示装置等の位相差フィルムとして使用することができる。また偏光板補償フィルム、さらには位相差付きの偏光子保護フィルムとしても使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と下記(B)成分とを含有する位相差フィルム。
(A):下記(1)式を満足するセルロースアシレート
2.20≦DSac(A)+DSay(A)≦2.90 (1)
(DSac(A)は(A)成分のアセチル置換度、DSay(A)は(A)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
(B):(A)成分とは異なる粘度平均重合度を有する水酸基残度0.30以上のセルロースアシレート。
【請求項2】
前記(A)成分が、下記(2)式を満足することを特徴とする、請求項1に記載の位相差フィルム。
DSay(A)/DSac(A)≧2 (2)
【請求項3】
前記(B)成分が下記(3)式および(4)式を満たすセルロースアシレートであり、かつ、(A)成分と(B)成分が下記(5)式とを満足することを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
2.00≦DSac(B)+DSay(B)≦2.70 (3)
DSay(B)/DSac(B)≧2 (4)
(DSac(A)+DSay(A))−0.05≧(DSac(B)+DSay(B)) (5)
(DSac(B)は(B)成分のアセチル置換度、DSay(B)は(B)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
【請求項4】
(A)成分のセルロースアシレートが、下記(6)式と(7)式とを満足するセルロースアセテートプロピオネートであり、
2.20≦DSac(A)+DSpr(A)≦2.90 (6)
DSpr(A)/DSac(A)≧2 (7)
(B)成分のセルロースアシレートが、下記(8)式と(9)式とを満足するセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
2.00≦DSac(B)+DSpr(B)≦2.70 (8)
DSpr(B)/DSac(B)≧2 (9)
(DSpr(A)は(A)成分のプロピオニル置換度、DSpr(B)は(B)成分のプロピオニル置換度を示す)
【請求項5】
(A)成分と(B)成分が下記(10)式を満足することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
50≦DP(A)−DP(B)≦100 (10)
(DP(A)、DP(B)はそれぞれ(A)成分、(B)成分の粘度平均重合度を表す)
【請求項6】
前記DP(A)およびDP(B)がそれぞれ下記の(11)式および(12)式を満たすことを特徴とする、請求項5に記載の位相差フィルム。
DP(A)=150〜230 (11)
DP(B)=60〜140 (12)
【請求項7】
(A)成分の含有量が20〜50重量%、(B)成分の含有量が80〜50重量%、
であるセルロースアシレートを含有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
【請求項8】
下記(13)式と(14)式を満足することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
Re(450)/Re(550)=0.80〜0.95 (13)
Re(550)<Re(650) (14)
(Re(450)、Re(550)、Re(650)は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmにおけるリターデーション値を示す)
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の位相差フィルムを含有する光学補償偏光板。
【請求項10】
前記位相差フィルムを、偏光子と直接貼り合わせることを特徴とする請求項9に記載の光学補償偏光板。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法であって、(A)成分および(B)成分を含有する溶液を支持体上に流延する溶液キャスト法により製造することを特徴とする、位相差フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記溶液が塩化メチレンを含有することを特徴とする、請求項11記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記溶液中の溶剤が、塩化メチレンを70〜99重量%、炭素数3以下のアルコールを1〜30重量%含むことを特徴とする請求項11または12に記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項14】
少なくとも一軸方向に延伸することを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法によって得られた位相差フィルムを、偏光子保護フィルムおよび/または他の光学部材を介して、偏光子と貼り合わすことを特徴とする、光学補償偏光板の製造方法。
【請求項16】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法によって得られた位相差フィルムを、偏光子と直接貼り合わすことを特徴とする、光学補償偏光板の製造方法。

【公開番号】特開2007−298889(P2007−298889A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128705(P2006−128705)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】