説明

位相比較器

とりわけ、PLLモジュールに対する位相比較器は、入力信号の位相角をそれら入力信号のエッジを評価することで比較し、調節信号を生成する。この調節信号を入力信号についての崩壊或いは干渉に対して強くするために、これら入力信号(SIG、COMP)の更なる異なるエッジを評価し、これらから調節信号(UP、DOWN)に対する追加のリセット信号を生成するための追加の回路(4、5)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1のプリアンブルにおいて与えられている特徴を有する位相比較器に関する。
【背景技術】
【0002】
PLLモジュール、例えば、74HCT9046においては、内蔵された位相比較器が存在する。これは、2つの入力信号の零通過が同期的に起こらないときに調節信号を生成する。例えば、共振状態にて動作するデバイスの場合、この機能は、周囲の要因、例えば、温度或いは電気的及び/或いは機械的負荷が原因で共振周波数が変化した場合でも、デバイスが常に共振状態にて動作するように、動作周波数を変化させるために用いられる。共振状態にて動作する典型的なデバイスには、例えば、ビデオカメラ内の加速度センサとして働くジャイロスコープ、自動車分野における圧力、力、及び温度用の周波数・アナログセンサ、半導体産業或いはプリンタにけるミニチュアドライブ、例えば、ピエゾモータ(piezomotors)がある。
【0003】
公知の位相比較器がPLLモジュール内で用いられる場合、現実には、もしスプリアスパルスが発生すると、調節が歩調を乱し、この結果としてデバイスが故障するといった状況が繰返して発生する。
【0004】
同期化のためにリセットパルスを用いるPLL回路については米国国特許第6,066,988号明細書、米国特許第6,154,508号明細書、及び米国特許第6,252,444号明細書において記述されている。米国特許第6,222,420号明細書から、リセット段によって同期回復時間が最小化されるPLL回路が公知である。
【発明の開示】
【0005】
本発明の一つの目的は、上述の第一の段落において記述されたタイプであって、その調節信号(アップ/ダウン信号)が、入力信号に対する干渉或いは崩壊(disruption)があった場合でも、永久的に歩調を乱すことがない位相比較器を提供することにある。
【0006】
本発明によると、上述の目的がクレーム1の特徴記載部(characterizing clause)に与えられている特徴によって達成される。リセット信号を得るために入力信号の立上りエッジのみでなく、それらの立下がりエッジ(decaying edges)も評価されるために、これら一方或いは両方の入力信号に対する干渉或いは崩壊があったとき調節信号が不正確となるという上述の事実は回避される。
【0007】
以下では幾つかの実施例について説明するが、これから、本発明のこれら及びその他の態様が明らかになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1に示されるような、例えば、PLLモジュール内、例えば、74HCT9046内で用いられるタイプの位相比較器は、2つのD型フリップフロップ1、2と、これらフリップフロップ1、2のリセット入力の所のNANDゲート3とで動作する。第一の入力信号SIGと第二の入力信号COMPの時間における相互位置に従って、この位相比較器は調節信号としてのUP信号とDOWN信号を生成する。これら入力信号の立上りエッジはUP信号及びDOWN信号をセット及びリセットするために用いられるが、第一の立上りエッジはある種のセットパルスを生成し、どちらが他方の信号のエッジであっても、第二の立上りエッジは関連するリセットパルスを生成する。
【0009】
図2a,2b,3a,3b,3c,3dは、図4に示される回路内に、もし追加の回路がなければ、存在するであろう、図1に示される回路と比較して反転されている論理に対する信号波形を示す。
【0010】
図2a及び2bは、SIG信号とCOMP信号が規則的に発生する、崩壊のない動作を示す。図2aに示される例においては、SIG信号の立上りエッジaは、毎回、COMP信号の立上りエッジbの前に位置する。立上りエッジaはUP信号をセットし、立上りエッジbはこれをリセットする。パルス形状P1が生成される。立上りエッジbによってDOWN信号がセットされるが、SIG信号がHにあるため、これは直ちに再びリセットされる。このことがパルス形状P2によって示されている。
【0011】
図2bにおいてはこの状況は逆転される。SIG信号はCOMP信号の後に現れる。COMP信号の立上りエッジbはDOWN信号をセットし、これに続くSIG信号のエッジaはこれをリセットする。これはパルス形状P1を生成する。
【0012】
SIG信号の立上りエッジaによってUP信号はセットされるが、ただし、COMP信号がHにあるために直ちに再びリセットされる。
【0013】
もしSIG信号とCOMP信号が同時に発生すると、UP信号とDOWN信号は同一の長さ、つまり、0秒となる。パルス形状P1は、立上りエッジaとbの間の時間における距離に従って変化する。
【0014】
図3a乃至図3dには、崩壊の場合に、すなわち、入力信号、つまり、SIG信号或いはCOMP信号のいずれかが短期間、例えば、3.0μsと4.0μsとの間である時間期間Tだけ失われた際に発生する信号が示される。
【0015】
図3a及び3cおいては上述の期間の間にSIG信号が失われることが想定され、図3b及び3dにおいては上述の期間Tの間にCOMP信号が失われるものと想定されている。
【0016】
図3aにおいては、図2aと同様に、SIG信号はCOMP信号の前に発生する。SIG信号の立上りエッジが上述の期間Tの間には失われているために、UP信号はこの期間の際にセットされず、しかし、COMP信号の立上りエッジによってリセットだけされ、このため、極性の変化が起こり、その後、UP信号内には、パルス形状P1ではなく、パルス形状P2が発生することとなる。DOWN信号にも対応する位相の変化が起こる。また、SIG信号の立上りエッジが上述の期間Tの間に失われているために、DOWN信号はCOMP信号の立上りエッジbによってセットされ、SIG信号の次の立上りエッジaによってリセットだけされ、これはパルス波形P3を生成する。この不適当なパルス形状がその後も維持される。この結果、DOWN信号の極性がまた変化する。図3aを図2aと比較することで、上述の期間Tの間にSIG信号が失われた後は、UP信号及びDOWN信号は、もはや正常な形状ではなくなることがわかる。
【0017】
図3aにおいては、示される時間のシーケンス内で当初UP信号に対するSET(セット)パルスとして作用していたSIGパルスが一度失われると、COMP信号の作用がUP信号及びDOWN信号の両方に対するリセットパルスとしての作用からDOWN信号に対するセットパルスへと変化する。この結果として、SIG信号の正に向かうエッジが再び現れたとき、これは、今度は、UP信号とDOWN信号の両方に対するリセットパルスとして作用することとなる。これは、UP信号及びDOWN信号に対して交替波形を生成する。
【0018】
図3bに示される例においては、SIG信号はCOMP信号の前に発生し、期間Tの際にCOMP信号が失われる。UP信号及びDOWN信号は期間Tの間には崩壊するが、この後はこれらは再び正常な形状(図2a参照)に復帰する。つまり、UP信号はパルス形状P1を有し、DOWN信号はパルス形状P2を有する。
【0019】
図3cにおいては、SIG信号はCOMP信号の後に発生し、期間Tの間にSIG信号が失われる。UP信号及びDOWN信号は期間Tの間には崩壊するが、この後はこれらは再び正常な形状に復帰する。つまり、UP信号はパルス形状P2を有し、DOWN信号はパルス形状P1を有する。
【0020】
図3dに示される例においては、SIG信号はCOMP信号の後に発生し、COMPが失われるものと想定される。図3aに示される例と同様に、このケースにおいても、たとえ引き続きSIG信号がCOMP信号の後に発生したとしても、極性の永久的な変化が起こり、UP信号はパルス形状P2からパルス形状P3に変化し、DOWN信号はパルス形状P1からパルス形状P2に変化する。
【0021】
SIG信号或いはCOMP信号上に追加のエッジを生成するようなスプリアスパルスによっても極性の類似する変化が起こる。UP信号及びDOWN信号の極性が永久的に変化するということは(図3a及び図3d参照)、UP信号及びDOWN信号の少なくとも一方が誤った方向に調節を行い、結局は、この位相比較器を含むパルス調節器(PLLモジュール)はもはや機能しなくなることを意味する。
【0022】
SIG信号或いはDOWN信号に対する干渉或いはこれらの崩壊があったとき、UP信号及びDOWN信号に望ましくない変化が起こるという問題を解決するために、換言すれば入力信号内の失われた或いは追加のエッジによってパルス列の形状が永久的に損なわれることを防止するために、立下がりエッジが、好適には、全ての立下がりエッジが、追加のリセットパルスとして用いられる。
【0023】
この実施例においては、評価されるのは基本的には入力信号の立上りエッジとされ、従って、追加のリセットパルスはそれらの立下がりエッジから得られるものと想定される。さらなる実施例として、類似するが、逆のやり方として、評価されるのは基本的には入力信号の立下がりエッジとし、従って、追加のリセットパルスは立上りエッジから得ることもできる。
【0024】
図4には、これら立下がりエッジの追加のリセットパルスとしての評価と関連するブロック回路図が示される。SIG信号は第一の追加の回路4に加えられ、COMP信号は第二の追加の回路5に加えられる。これら追加の回路4と5はPLLモジュール内に簡単に一体化することができ、構造は同一である。各追加の回路4、5(図4参照)は、2つの結合されたRSフリップフロップ6,7とゲートとで動作する。追加の回路4の場合は、SIG信号はANDゲート8を介してフリップフロップ6のS入力に加えられる。フリップフロップ6のNQ出力はANDゲート8に接続される。SIG信号は、NOTゲート9とANDゲート10を介して、フリップフロップ7のS入力にも加えられる。フリップフロップ7のNQ出力は入力側のANDゲート10に接続される。
【0025】
2つのフリップフロップ6、7の出力QはANDゲート11に接続され、このANDゲート11は出力側の2つのフリップフロップ6、7のR入力と、更なるANDゲート12とに接続される。ANDゲート12には、SIG信号も、NOTゲート13を介して加えられる。ANDゲート11の出力の所には、SIG信号の正及び負に向かうエッジにおいてパルスが発生する。ANDゲート12の出力Bの所には信号Bが存在する。信号Bは、リセットパルスを形成するが、これはSIG信号の負に向かうエッジ毎に生成される。ただし、このリセットパルスはCOMP信号が失われているときにのみ作動する。COMP信号が存在するときは、作動するのは、SIG信号及びCOMP信号の2つの正に向かう立上りエッジによって生成されるリセットパルスのみである。SIG信号の負に向かうエッジによって生成されるその後のリセットパルスは、既にリセットされている状態を再びリセットすることを試みる。ANDゲート12の下流にはNOTゲート14も接続される。
【0026】
構造は同一である追加の回路5の対応する要素は、上付きの’にて識別される。ANDゲート11’の出力の所には、COMP信号の正及びに負に向かうエッジにおいてパルスが存在する。ANDゲート12’の出力の所には信号Aが存在するが、これはCOMP信号の負に向かうエッジ毎に生成されるリセットパルスを表し、この信号は、SIG信号が失われているときにのみ作動する。
【0027】
NOTゲート14、14’及びNANDゲート3がANDゲート15に接続され、このANDゲート15は出力側においてはフリップフロップ1,2のリセット入力CLRNに接続される。
【0028】
図5a及び5bは図4に示される回路の動作を一例として示す。図2a、図2b及び図3a乃至図3dとは対照的に、図5a及び5bにおいては、リセット入力CLRNに加えられるリセット信号も、SIG信号、COMP信号、UP信号及びDOWN信号に加えて示されている。
【0029】
図5aにおいては、図3cと同様に、SIG信号はCOMPの後に発生し、上述の期間Tの間にSIG信号が失われるものと想定される。見ればわかるように、SIG信号及びCOMP信号の全ての立下がりエッジc、dに対して発生するリセットパルスも存在する。図3cに示されるケースのように問題ない場合には、図5aに示される実施例のようなリセットパルスを有することでとくになにも達成されることはない。
【0030】
図5bに示される一例としてのケースにおいては、SIG信号はCOMP信号の前に発生し、これはSIG信号が失われるが、これは図3aに示される異常なケースに対応する。図5bにおいては、リセットパルスがSIG信号及びCOMP信号の立下がりエッジにおいて発生する。これらリセットパルスは、上述の異常な期間中においてさえも発生するが、これらリセットパルスのために、図3aとは対照的に、上述の期間Tの後に、UP信号は、上述の期間における崩壊の後に、その元のパルス形状P1を回復する。同様にして、上述の期間Tの後、そして、ここではパルスP4に起因する無視し得る崩壊の後、DOWN信号もまたその元のパルス形状P2に戻る。
【0031】
図5bに示される例においては、ここでもリセットパルスが約5.0μsの所で存在しない。約4.0μsの所でCOMP信号の負に向かう立下がりエッジによって生成されるリセットパルスは、上述の論理を元の状態にセットし戻す。この回路はCOMP信号の正に向かうエッジがあったことを忘れる。
【0032】
図4に示される回路においては、図3b及び3dに示されるようなCOMP信号が失われるという障害が発生した場合、追加の回路4内でSIG信号の立下がりエッジによって同一の作用を有するリセットパルスが生成される。
【0033】
図4に示される回路においてもし図3dに示されるような重大な影響を有する崩壊或いは干渉が発生した場合、このケースにおいても、結果として、崩壊或いは干渉が発生した期間の後に、パルスP1及びP2は再びそれらの元の形状を回復する。このため、入力信号に対する過渡的な崩壊或いは干渉があった場合でも、崩壊或いは干渉の後にUP信号及びDOWN信号に永久的な変化が生じることはない。
【0034】
もし両方の入力信号が失われると、その場合は、UP信号及びDOWN信号の両方が論理0にとどまり、こうして、下流回路に対していかなる影響も与えることはない。
【0035】
この回路は、正に向かう立上りエッジが位相比較器の通常の動作のために用いられ、負に向かう立下がりエッジが追加のリセット機能のために用いられるために、安価に製造することができる。この回路は、もし、位置を逆転し、通常の動作のために負に向かうエッジを用い、追加のリセット機能のために正に向かうエッジを用いるようにした場合でも、等しく安価に製造することができる。
【0036】
図4に示される回路は、SIG信号とCOMP信号とを一緒にORゲートにてゲーティングし、この動作の結果として得られる信号を追加の回路4に供給するようにすることで、簡素化することもできる。その場合は、追加の回路5は、追加のリセット機能を失うことなく、省くことができるが、このことは、もし論理を逆転した場合についてもいえる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来技術の位相比較器を示す図である。
【図2a】SIG信号はCOMP信号より前に発生し、どの信号も崩壊していないところの時間プロットを示す図である。
【図2b】SIG信号はCOMP信号より後に発生し、どの信号も崩壊していないところの時間プロットを示す図である。
【図3a】SIG信号はCOMP信号より前に発生し、例えば、SIG信号から一つのパルスが失われているところの時間プロットを示す図である。
【図3b】SIG信号はCOMP信号より前に発生し、COMP信号から一つのパルスが失われているところの時間プロットを示す図である。
【図3c】SIG信号はCOMP信号より後に発生し、SIG信号から1つのパルスが失われているところの時間プロットを示す図である。
【図3d】SIG信号はCOMP信号より後に発生し、COMP信号から1つのパルスが失われているところの時間プロットを示す図である。
【図4】改善された位相比較器のブロック回路図である。
【図5a】SIG信号はCOMP信号より後に発生し、SIG信号から1つのパルスが失われているとき、図4との関連で得られるタイムプロットを示す図である。
【図5b】SIG信号はCOMP信号より前に発生し、SIG信号から1つのパルスが失われているとき、図4との関連で得られるタイムプロットを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一及び第二の入力信号のエッジを評価することによって前記第一の入力信号の位相角を第二の入力信号の位相角と比較し、そこからリセット信号を生成する、特にPLLモジュールのための位相比較器であって、
前記入力信号の一方または両方の異なるエッジを評価し、これらから一方または両方の調節信号に対する追加のリセット信号を生成するための少なくとも一つの追加の回路を備えたことを特徴とする位相比較器。
【請求項2】
前記位相比較器は、前記調節信号を前記入力信号の立上り/立下がりエッジから得、前記追加の回路は前記追加のリセット信号を前記入力信号の立下がり/立上りエッジから導出することを特徴とする請求項1記載の位相比較器。
【請求項3】
専用の追加の回路が前記2つの入力信号の各々に対して提供され、一方の追加の回路は前記第一の入力信号のエッジを評価し、第二の追加の回路は前記第二の入力信号のエッジを評価することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の位相比較器。
【請求項4】
一方の追加の回路は一方の入力信号の立上り及び立下がりエッジを評価し、他方の追加の回路は他方の入力信号の立上り及び立下がりエッジを評価することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の位相比較器。
【請求項5】
前記追加の回路からの出力信号は前記位相比較器に属するフリップフロップのリセット入力にゲートを介して加えられ、このゲートには、前記調節信号が加えられるゲートも接続されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の位相比較器。
【請求項6】
前記追加の回路は、各々2つのRSフリップフロップとゲートとを有し、これらは前記PLL回路内に一体化されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の位相比較器。
【請求項7】
前記2つの入力信号は前記追加の回路にORゲートを介して加えられることを特徴とする請求項1または2記載の位相比較器。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2006−506838(P2006−506838A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550888(P2004−550888)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004880
【国際公開番号】WO2004/045076
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】