説明

位置検出装置

【課題】電源電圧が低下した場合の挙動仕様を共通にすることの可能な位置検出装置を提供する。
【解決手段】ホール素子の電圧信号を処理する信号処理回路から出力された電圧信号がバッファアンプ65によって緩衝増幅され、出力端子41を通じてECUに伝送される。電流検出回路67は出力端子41を流れる電流の向きを検出する。電源電圧検出回路68はホールICに供給される電源電圧の低下を検出する。電源電圧が低下したことを示す信号が電源電圧検出回路68から出力されると、電圧切替回路69は、出力端子41からECUに出力される電圧信号を電流検出回路67の検出した電流の向きに応じて高電圧側又は低電圧側にする。これにより、ECUの受け回路に設けられたプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗に対応する電圧信号がECUに出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出体の回転角度又はストローク量を検出する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に用いられる電子制御スロットルの備えるスロットルバルブの回転角度、アクセルペダルモジュールの備えるアクセルペダルの回転角度、タンブルコントロールバルブの回転角度、又はクラッチアクチュエータのストローク量などを検出する位置検出装置が知られている。
例えば電子制御スロットルに用いられる位置検出装置は、スロットルバルブの開度を示す電圧信号を電子制御装置(ECU)に出力する。その電圧信号に応じてECUは、スロットルバルブが内燃機関の運転状態に適切な開度になるよう、スロットルバルブを駆動するモータに駆動信号を出力する。これにより、モータが目標とする開度にスロットルバルブを駆動することで、内燃機関に供給する吸気量が調節される。
【0003】
この電子制御スロットルでは、位置検出装置の故障時にスロットルバルブを安全に制御するフェイルセーフ設計が求められる。
特許文献1に記載の位置検出装置は、スロットルバルブの回転角度を2個のホールICによって検出している。2個のホールICは、スロットルバルブの開度が大きくなるに従い出力電圧が高くなる同一の出力特性を有している。いずれか一方のホールICに故障が生じた場合、他方のホールICによりスロットルバルブの開度を制御することが可能である。
特許文献2に記載の位置検出装置は、スロットルバルブの回転角度を出力特性の異なる2個のポテンショメータにより検出している。一方のポテンショメータの出力電圧は、スロットルバルブの開度が大きくなるに従い高くなる。他方のポテンショメータの出力電圧は、スロットルバルブの開度が大きくなるに従い低くなる。また、特許文献2では、一方のポテンショメータの回路にプルダウン抵抗を接続し、他方のポテンショメータの回路にプルアップ抵抗を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3491587号公報
【特許文献2】特許第3588127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、位置検出装置に供給される電源電圧が低下した場合、ホールICからECUに出力する電圧信号を高圧側にすることが考えられる。その電圧信号に応じてECUは、スロットルバルブが目標とする開度となるようにスロットルバルブを閉弁方向に動かす駆動信号をモータに出力する。これにより、車両を安全側に制御することが可能になる。
特許文献2では、位置検出装置に供給される電源電圧が低下した場合、一方のポテンショメータからECUに出力する電圧信号を低圧側とし、他方のポテンショメータからECUに出力する電圧信号を高圧側とすることが考えられる。このように、2個のポテンショメータがそれぞれ異なる電源電圧が低下した場合の挙動仕様を備えることで、ECUからスロットルバルブを閉弁方向に動かす駆動信号がモータに出力される。
しかしながら、電源電圧が低下した場合の挙動仕様の異なる2個のポテンショメータ又は2個のホールIC等を電子制御スロットルに用いると、部品点数の増加により、製造上のコストが増加することが懸念される。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電源電圧が低下した場合の挙動仕様を共通にすることの可能な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明によると、位置検出装置は、被検出体の変位に応じた電圧信号を被検出体の変位を制御する電子制御装置に配線部を通じて出力する。位置検出装置は、変位検出部、バッファ手段、電源電圧検出部および電圧切替部を備える。
被検出体の変位に応じた電圧信号を出力する変位検出部の電圧信号をバッファ手段が緩衝増幅する。配線部の断線時に電子制御装置が被検出体の変位を安全側に制御することの可能な電圧信号が入力されるようにプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗が配線部に電気的に接続されている。電流検出部は、プルアップ抵抗又はプルダウン抵抗とバッファ手段との間の配線部を流れる電流の向きを検出する。電源電圧検出部は、変位検出部に供給される電源電圧の低下を検出する。電圧切替部は、電源電圧検出部により電源電圧の低下が検出されたとき、配線部から電子制御装置に出力される電圧信号を電流検出部の検出した電流の向きに応じて高電圧側又は低電圧側にする。
電流検出部の検出した電流の向きにより、配線部にプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗のどちらが接続されているかが検出される。電圧切替部は、電源電圧が低下したとき、配線部に接続されたプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗に対応した電圧信号を電子制御装置に出力する。これにより、電子制御装置は被検出体の変位を安全側に制御することが可能になる。したがって、変位検出部から出力される信号の出力特性に応じてプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗のどちらの抵抗が配線部に接続されている場合においても、変位検出部の電源電圧が低下した場合の位置検出装置の挙動仕様を共通にすることができる。
【0007】
請求項2に係る発明によると、電圧切替部は、電流検出部の検出した電流の向きがバッファ手段側に流れ込んでいる場合、電源電圧検出部により電源電圧の低下が検出されると、配線部から電子制御装置に出力される電圧信号を高電圧側にする。また、電圧切替部は、電流検出部の検出した電流の向きがバッファ手段側から吐き出されている場合、電源電圧検出部により電源電圧の低下が検出されると、配線部から電子制御装置に出力される電圧信号を低電圧側にする。
配線部にプルアップ抵抗が接続されている場合、プルアップ抵抗からバッファ手段側へ電流が流れ込む。この場合、プルアップ抵抗の作用と同様に、配線部から電子制御装置に出力される電圧信号を高電圧側にすることで、電子制御装置が被検出体の変位を安全側に制御することができる。一方、配線部にプルダウン抵抗が接続されている場合、バッファ手段からプルダウン抵抗へ電流が吐き出される。この場合、プルダウン抵抗の作用と同様に、配線部から電子制御装置に出力される電圧信号を低電圧側にすることで、電子制御装置が被検出体の変位を安全側に制御することができる。
【0008】
請求項3に係る発明によると、電源電圧の低下を電子制御装置が許容可能とする電圧よりも電源電圧が低下したとき、電源電圧検出部は、電源電圧が低下したことを示す信号を電圧切替部に出力する。
これにより、電源電圧の低下を電子制御装置が許容可能な範囲を超えて電源電圧が低下したとき、位置検出装置は電子制御装置が被検出体の変位を安全側に制御することを可能にする電圧信号を出力することができる。
なお、電源電圧の低下を電子制御装置が許容可能な電圧は、被検出体の機能及び電子制御装置の設定などに基づき設定される。
【0009】
請求項4に係る発明によると、電圧切替部は、電流検出部の検出した電流の向きがバッファ手段側に流れ込んでいる場合、電源電圧検出部により電源電圧の低下が検出されると、配線部と電源配線とを導通する第1スイッチング素子を有する。また、電圧切替部は、電流検出部の検出した電流の向きがバッファ手段側から吐き出されている場合、電源電圧検出部により電源電圧の低下が検出されると、配線部とグランドの配線とを導通する第2スイッチング素子を有する。
これにより、変位検出部の電源電圧が低下した場合の位置検出装置の挙動仕様を簡素な構成で共通のものとすることができる。
【0010】
請求項5に係る発明によると、変位検出部は、被検出体の変位が大きくなるに従い出力電圧が高くなる第1変位検出部と、被検出体の変位が大きくなるに従い出力電圧が低くなる第2変位検出部とを有する。
これにより、第1変位検出部の出力特性と第2変位検出部の出力特性とに応じ、第1変位検出部に接続される配線部及び第2変位検出部に接続される配線部のいずれか一方にプルアップ抵抗が接続され、他方にプルダウン抵抗が接続される。この場合、位置検出装置は、出力特性の異なる複数の変位検出部を有するとき、変位検出部に供給される電源電圧が低下した場合の挙動仕様を共通にすることができる。なお、位置検出装置は、変位検出部を2個以上有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による位置検出装置を用いた電子制御スロットルの断面図である。
【図2】図1のII方向の矢視図であり、ギヤカバーを取り外した状態の図である。
【図3】(A)は本発明の一実施形態による位置検出装置とECUとが接続された回路図である。(B)は本発明の一実施形態による位置検出装置とECUとの配線が断線した状態を示す回路図である。
【図4】本発明の一実施形態による位置検出装置の出力特性を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態による位置検出装置の電源電圧が低下したときの動作を説明したグラフである。
【図6】本発明の一実施形態による位置検出装置の回路図である。
【図7】図6のVII部分を拡大した回路図である。
【図8】本発明の一実施形態による位置検出装置の電源電圧が低下したときの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の一実施形態による位置検出装置を図1〜図8に示す。本実施形態の位置検出装置は、車両に搭載される電子制御スロットル1に用いられる回転角センサである。
電子制御スロットル1は、図示しない内燃機関の吸気管に取り付けられ、気筒内に吸い込まれる空気量を制御する。電子制御スロットル1は、図1及び図2に示すように、スロットルボディ2、スロットルシャフト3、スロットルバルブ4、電動モータ5、回転角センサ6などを備える。
スロットルボディ2は、吸気管の通路に連通する略円筒状の空気通路を有している。スロットルボディ2の外壁には、ギヤカバー11がねじ等により取り付けられている。スロットルボディ2とギヤカバー11との間の空間に歯車減速装置20、スプリング装置26、回転角センサ6が収容されている。
【0013】
スロットルシャフト3は、円柱状に形成され、スロットルボディ2に設けられたドライベアリング12及び転がりベアリング13により、スロットルボディ2に対し回転可能に支持されている。
スロットルバルブ4は、略円板状に形成され、スロットルボディ2に形成された空気通路の開度を調整するバタフライ形の回転弁である。スロットルバルブ4は、ねじ又はカシメなどの結合手段14によってスロットルシャフト3に固定されている。これにより、スロットルバルブ4は、スロットルシャフト3と一体に回転し、空気通路の開度を可変することで、内燃機関の気筒内に吸い込まれる空気量を調整する。
本実施形態のスロットルバルブ4が特許請求の範囲に記載の「被検出体」に相当する。
【0014】
電動モータ5は、通電方向が切り替わることで回転方向が切り替わると共に、電流量に応じた回転トルクを発生する直流モータである。電動モータ5は、スロットルボディ2内の収容空間に収容され、ねじ等の締結手段15によりスロットルボディ2に固定されている。電動モータ5は、電子制御装置(ECU)からの指令により駆動制御される。
【0015】
歯車減速装置20は、電動モータ5の発生する回転トルクを減速し、スロットルバルブ4に伝達する。歯車減速装置20は、ピニオンギヤ21、中間ギヤ22及びギヤロータ23などから構成される。
ピニオンギヤ21は、電動モータ5の出力軸24に固定され、電動モータ5と一体に回転する。
中間ギヤ22は、大径ギヤ221と小径ギヤ222を同軸に備える2重歯車である。中間ギヤ22は、スロットルボディ2とギヤカバー11により支持される支持軸25によって回転可能に支持されている。大径ギヤ221はピニオンギヤ21と噛合し、小径ギヤ222はギヤロータ23と噛合している。
ギヤロータ23は、スロットルシャフト3の端部に固定され、スロットルシャフト3と一体に回転する。ギヤロータ23の噛合歯はスロットルバルブ4の回動に伴う範囲のみに設けられている。
【0016】
スプリング装置26は、電動モータ5への通電が遮断された際、スロットルバルブ4の開度を全閉位置と全開位置との中間位置に保持し、車両の退避走行を可能とするものである。スプリング装置26は、スロットルバルブ4を閉弁方向へ付勢力を印加するリターンスプリング27と、スロットルバルブ4を開弁方向へ付勢力を印加するデフォルトスプリング28と、結合部29とを備える。リターンスプリング27とデフォルトスプリング28とは、結合部29を挟んで逆方向に巻かれ、一体に形成されている。
【0017】
回転角センサ6は、スロットルバルブ4の回転角度を検出し、スロットルバルブ4の開度に応じた電圧信号をECUに出力する。回転角センサ6は、スロットルバルブ4と一体に回転する筒状の磁路形成部31と、この磁路形成部31の内側に非接触で設けられる磁気検出部32とを備えている。
磁路形成部31は、磁性材料から略円弧状に形成され、対向配置される一対のヨーク33と、この一対のヨーク33の両端部の間に設けられ、一方のヨーク33にN極の磁束を与え、他方のヨーク33にS極の磁束を与える一対の磁石34とから構成されている。一対のヨーク33と一対の磁石34とが組み合わされて略筒状に配置され、ギヤロータ23の内部にインサート成形されている。
【0018】
磁気検出部32は、ギヤカバー11に固定されている。磁気検出部32は、ステータコア35及び2個のホールIC7から構成されている。
ステータコア35は、略円柱状の磁性体からなり、直径方向に磁気検出ギャップを有する。この磁気検出ギャップに2個のホールIC7が設けられている。ホールIC7は、ホール素子と信号増幅回路とを一体化したIC(集積回路)であり、ホールIC7を通過する磁束密度に応じた電圧信号をECUに出力する。
ECUは、ホールIC7から出力される電圧信号により検出されたスロットル開度が、内燃機関の運転状態に応じて設定された目標開度となるように電動モータ5をフィードバック制御する。
【0019】
回転角センサ6と、ECUとを接続する回路を図3(A)に示す。
回転角センサ6の有する2個のホールIC7には、ECU8から電源用端子40を通じて例えば5Vの電源電圧が供給されている。2個のホールIC7は、接地用端子43がECU8に接続されている。
回転角センサ6の有する一方のホールIC7から第1出力端子41を通じてECU8に電圧信号が出力される。回転角センサ6の有する他方のホールIC7から第2出力端子42を通じてECU8に電圧信号が出力される。
図3及び図4において、一方のホールIC7から出力される電圧信号を「出力1」と示し、他方のホールIC7から出力される電圧信号を「出力2」と示している。
図4に示すように、一方のホールIC7は、スロットルバルブ4の開度が大きくなるに従い出力電圧が高くなる出力特性を有している。他方のホールIC7は、スロットルバルブ4の開度が大きくなるに従い出力電圧が低くなる出力特性を有している。つまり、回転角センサ6の有する2個のホールIC7からECU8に出力される電圧信号は、いわゆるクロス特性を有する。
【0020】
ホールIC7の出力特性に応じ、ECU8の受け回路50には、図3(A)に示すように、プルアップ抵抗51、プルダウン抵抗52及びフィルタ回路が設けられている。
プルアップ抵抗51は、一端が電源用端子40とECU内部回路9とを接続する配線に接続され、他端が第1出力端子41とECU内部回路9とを接続する配線に接続されている。プルダウン抵抗52は、一端が接地用端子43とECU内部回路9とを接続する配線に接続され、他端が第2出力端子42とECU内部回路9とを接続する配線に接続されている。
第1出力端子41とECU内部回路9とを接続する配線には、抵抗53と2個のコンデンサ54、55によって構成されたフィルタ回路が設けられている。第2出力端子42とECU内部回路9とを接続する配線には、抵抗56と2個のコンデンサ57、58によって構成されたフィルタ回路が設けられている。フィルタ回路は、回転角センサ6及びECU内部回路9のノイズの耐性を向上する。
【0021】
次に、第1出力端子41と第2出力端子42とが断線した状態を図3(B)に示す。この場合、第1出力端子41からECU内部回路9に延びる配線とプルアップ抵抗51との接続点は5Vになる。このため、ECU内部回路9に入力される電圧信号が高電圧側になる。
一方、第2出力端子42からECU内部回路9に延びる配線とプルダウン抵抗52との接続点はGNDと同電位になる。このため、ECU内部回路9に入力される電圧信号が低電圧側になる。
【0022】
図5(A)に示すように、スロットルバルブ4の開度が大きくなるに従い出力電圧が高くなる右肩上がりの出力特性の場合、第1出力端子41側からECU内部回路9へ高圧側の電圧が入力されると、出力電圧は、正常時の電圧Aから異常時の電圧Bとなる。すると、ECU8は、スロットルバルブ4が目標とする開度より開いているものと判断する。このため、ECU8は、スロットルバルブ4が目標とする開度となるようスロットルバルブ4を閉弁方向に動かす駆動信号を電動モータ5に出力する。
一方、図5(B)に示すように、スロットルバルブ4の開度が大きくなるに従い出力電圧が低くなる右肩下がりの出力特性の場合、第2出力端子42側からECU内部回路9へ低圧側の電圧が入力されると、出力電圧は、正常時の電圧Cから異常時の電圧Dとなる。すると、ECU8は、スロットルバルブ4が目標とする開度より開いているものと判断する。このため、ECU8は、スロットルバルブ4が目標とする開度となるようスロットルバルブ4を閉弁方向に動かす駆動信号を電動モータ5に出力する。これにより、ECU8は、車両を安全側に制御することが可能になる。
【0023】
次に、回転角センサ6の回路を図6を参照して説明する。
回転角センサ6は、2個のホールIC7を有している。
ホール素子60を通過する磁束密度に応じてホール素子60から出力された電圧は、A/Dコンバータ61によりデジタル変換され、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)62に入力される。DSP62では、EEPROM63に予め記憶された設定値に基づき、オフセット調整、ゲイン調整及びクランプ調整が行われる。
オフセット調整により、スロットルバルブ4の開度に対する出力電圧のオフセットが設定される。ゲイン調整により、スロットルバルブ4の開度に対する出力電圧の傾きが設定される。クランプ調整にて最大出力電圧及び最小出力電圧が設定される。
この信号処理により、2個のホールIC7は、それぞれ異なる出力特性を有することが可能になる。
【0024】
DSP62で調整された値はD/Aコンバータ64によりアナログ変換され、バッファアンプ65に入力される。バッファアンプ65には、バッファ回路が設けられ、バッファアンプ65に入力された信号を緩衝増幅することで、ECU8の回路との相互影響を除いている。また、バッファアンプ65と出力端子41、42との間には、保護抵抗66が設けられている。
なお、ホール素子60と、A/Dコンバータ61、DSP62、EEPROM63及びD/Aコンバータ64などによって形成される信号処理回路とが、特許請求の範囲に記載の「変位検出部」に相当する。バッファアンプ65が特許請求の範囲に記載の「バッファ手段」に相当する。バッファアンプ65とECU内部回路9とを接続する配線が、特許請求の範囲に記載の「配線部」に相当する。
【0025】
バッファアンプ65と第1出力端子41との間に設けられる回路を図7に示す。図7では、一方のホールIC7に設けられる回路を示している。他方のホールIC7に設けられる回路もこれと同じ仕様である。
バッファアンプ65と出力端子41との間には、電流検出回路67、電源電圧検出回路68および電圧切替回路69などが形成される。電流検出回路67が特許請求の範囲に記載の「電流検出部」に相当し、電源電圧検出回路68が特許請求の範囲に記載の「電源電圧検出部」に相当し、電圧切替回路69が特許請求の範囲に記載の「電圧切替部」に相当する。
【0026】
電流検出回路67は、保護抵抗66、第1コンパレータ71及び第2コンパレータ72などから形成されている。第1コンパレータ71と第2コンパレータ72は、保護抵抗66の両端の電位差を検出する。第1コンパレータ71は、保護抵抗66よりバッファアンプ65側の接続点の電位V1が保護抵抗66より出力端子41側の接続点の電位V2より大きいとき、信号「1」を出力する。第2コンパレータ72は、保護抵抗66よりバッファアンプ65側の接続点の電位V1が保護抵抗66より出力端子41側の接続点の電位V2より小さいとき、信号「1」を出力する。
一方のホールIC7において、出力端子41に接続されるECU8の受け回路50にプルアップ抵抗51が設けられている場合、プルアップ抵抗51とバッファアンプ65とを接続する配線を流れる電流の向きは、バッファアンプ65側に引き込まれる。この場合、第1コンパレータ71が信号「1」を出力し、第2コンパレータ72が信号「0」を出力する。
これに対し、他方のホールIC7において、出力端子42に接続されるECU8の受け回路50にプルダウン抵抗52が設けられている場合、プルアップ抵抗51とバッファアンプ65とを接続する配線を流れる電流の向きは、バッファアンプ65側から吐き出される。この場合、第1コンパレータ71が信号「0」を出力し、第2コンパレータ72が信号「1」を出力する。
【0027】
電源電圧検出回路68は、第3コンパレータ73から形成され、電源電圧が所定の電圧より低下したか否かを検出する。ここで、所定の電圧は任意に設定可能である。一般に、電源電圧が低下すると、ホールIC7から出力される電圧信号が低下する。電子制御スロットル1において、この電圧信号の低下をECU8が許容可能な範囲として、本実施形態では、第3コンパレータ73に設定される所定の電圧を例えば3.5Vにしている。
第3コンパレータ73は、ホール素子60に供給される電源電圧が3.5Vより高いと、信号「0」を出力する。一方、第3コンパレータ73は、ホール素子60に供給される電源電圧が3.5Vより低下すると、信号「1」を出力する。
【0028】
電圧切替回路69は、NAND回路74、AND回路75、第1スイッチング素子としてのPチャネル型MOSトランジスタ(p−MOS)76及び第2スイッチング素子としてのNチャネル型MOSトランジスタ(n−MOS)77などから形成されている。
NAND回路74には、第1コンパレータ71の出力信号と第3コンパレータ73の出力信号とが入力される。NAND回路74は、第1コンパレータ71から信号「1」が入力され、かつ、第3コンパレータ73から信号「1」が入力されるとき、信号「0」を出力する。NAND回路74の信号は、p−MOS76に入力される。p−MOS76は、ソースが電源配線に接続され、ドレインがバッファアンプ65と出力端子41とを接続する配線に接続されている。NAND回路74からp−MOS76のゲートに信号「0」が入力されると、p−MOS76は、出力端子41と電源配線とを導通する。これにより、出力端子41の出力が高電圧側になる。
【0029】
AND回路75には、第2コンパレータ72の出力信号と第3コンパレータ73の出力信号とが入力される。AND回路75は、第2コンパレータ72の出力信号が「1」、かつ、第3コンパレータ73の出力信号が「1」のとき信号「1」を出力する。AND回路75の信号は、n−MOS77に入力される。n−MOS77は、ドレインがバッファアンプ65と出力端子41とを接続する配線に接続され、ソースがGNDの配線に接続されている。NAND回路74からn−MOS77のゲートに信号「1」が入力されると、n−MOS77は出力端子41とGNDとを導通する。これにより、出力端子41の出力が低電圧側になる。
【0030】
バッファアンプ65と出力端子との間に設けられる回路の処理を図8のフローチャートに基づいて説明する。
ステップ1において、出力端子41、42に電流が流れ込んでいるか否かを検出する(S1)。出力端子41、42に電流が流れ込んでいるとき、出力端子41、42にプルアップ抵抗51が接続されている。この場合、処理をステップ2に移行する。
ステップ2では、5Vの電源電圧が3.5V以下か否かを検出する(S2)。電源電圧が3.5V以下になると、処理をステップ3に移行し、回転角センサ6からECU8へ出力する電圧を高電圧側にする(S3)。
一方、ステップ1において、出力端子41、42から電流が吐き出されているとき、出力端子41、42にプルダウン抵抗52が接続されている。この場合、処理をステップ4に移行する。
ステップ4では、5Vの電源電圧が3.5V以下か否かを検出する(S4)。電源電圧が3.5V以下になると、処理をステップ5に移行し、回転角センサ6からECU8へ出力する電圧を低電圧側にする(S5)。
【0031】
本実施形態では、出力端子41、42に電流が流れ込んでいるか、吐き出されているかを検出することで、その出力端子41、42の接続されるECU8の受け回路50にプルアップ抵抗51又はプルダウン抵抗52のどちらが接続されているかを判別する。これにより、回転角センサ6に供給される電源電圧が低下したとき、ECU8の受け回路50にプルアップ抵抗51が接続されている場合、出力端子41、42から出力される電圧信号を高電圧側にする。一方、ECU8の受け回路50にプルダウン抵抗52が接続されている場合、出力端子41、42から出力される電圧信号を低電圧側にする。この電圧信号により、ECU8は、スロットルバルブ4の開度を閉弁方向に制御することが可能になる。したがって、複数のホールIC7を有する回転角センサ6において、ECU8の受け回路50にプルアップ抵抗51又はプルダウン抵抗52が接続されている場合、電源電圧が低下した場合における回転角センサ6の挙動仕様を共通のものとすることができる。
【0032】
本実施形態では、電源電圧が低下したとき、ECU8の受け回路50にプルアップ抵抗51が設けられている場合、電圧切替回路69は、出力端子41と電源配線とを導通する。一方、ECU受け回路50にプルダウン抵抗52が設けられている場合、電圧切替回路69が出力端子とグランドの配線とを導通する。これにより、電源電圧が低下した場合における回転角センサ6の挙動仕様を簡素な構成で共通のものとすることができる。
【0033】
(他の実施形態)
上述した一実施形態では、車両に搭載される電子制御スロットル1に用いられる回転角センサ6に位置検出装置を適用したものについて説明した。これに対し、本発明の位置検出装置は、アクセルペダルモジュールの備えるアクセルペダルの回転角度、タンブルコントロールバルブの回転角度、又はクラッチアクチュエータのストローク量を検出するものに適用することが可能である。
上述した一実施形態では、被検出体の変位を磁気により検出する磁気検出センサとして位置検出装置を説明した。これに対し、本発明の位置検出装置は、インダクティブ式センサ、コンデンサ容量式センサ、光センサなど、被検出体の変位を種々の方式で検出するものとすることが可能である。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
4 ・・・スロットルバルブ(被検出体)
6 ・・・回転角センサ(位置検出装置)
8 ・・・電子制御装置(ECU)
41・・・第1出力端子(配線部)
42・・・第2出力端子(配線部)
51・・・プルアップ抵抗
52・・・プルダウン抵抗
60・・・ホール素子(変位検出部)
61・・・A/Dコンバータ(変位検出部)
62・・・デジタルシグナルプロセッサ(変位検出部)
63・・・EEPROM(変位検出部)
64・・・D/Aコンバータ(変位検出部)
65・・・バッファアンプ(バッファ手段)
66・・・保護抵抗(電流検出部)
67・・・電流検出回路(電流検出部)
68・・・電源電圧検出回路(電源電圧検出部)
69・・・電圧切替回路(電圧切替部)
71・・・第1コンパレータ(電流検出部)
72・・・第2コンパレータ(電流検出部)
73・・・第3コンパレータ(電源電圧検出部)
74・・・NAND回路(電圧切替部)
76・・・Pチャネル型MOSトランジスタ(第1スイッチング素子)
75・・・AND回路(電圧切替部)
77・・・Nチャネル型MOSトランジスタ(第2スイッチング素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体の変位を駆動制御する電子制御装置に、前記被検出体の変位に応じた電圧信号を出力する位置検出装置であって、
前記被検出体の変位に応じた電圧信号を出力する変位検出部と、
前記変位検出部の電圧信号を緩衝増幅するバッファ手段と、
前記配線部の断線時に前記電子制御装置が前記被検出体の変位を安全側に制御することの可能な電圧信号が入力されるように前記配線部に電気的に接続されるプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗と前記バッファ手段との間の配線部を流れる電流の向きを検出する電流検出部と、
前記変位検出部に供給される電源電圧の低下を検出する電源電圧検出部と、
前記電源電圧検出部により電源電圧の低下が検出されたとき、前記配線部から前記電子制御装置に出力される電圧信号を前記電流検出部の検出した電流の向きに応じて高電圧側又は低電圧側にする電圧切替部と、を備えることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記電圧切替部は、前記電流検出部の検出した電流の向きが前記バッファ手段側に流れ込んでいる場合、前記電源電圧検出部により電源電圧の低下が検出されると、前記配線部から電子制御装置に出力される電圧信号を高電圧側にし、
前記電流検出部の検出した電流の向きが前記バッファ手段側から吐き出されている場合、前記電源電圧検出部により電源電圧の低下が検出されると、前記配線部から前記電子制御装置に出力される電圧信号を低電圧側にすることを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記電源電圧検出部は、電源電圧の低下を前記電子制御装置が許容可能とする電圧よりも電源電圧が低下したとき、電源電圧が低下したことを示す信号を前記電圧切替部に出力することを特徴とする請求項1または2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記電圧切替部は、前記電流検出部の検出した電流の向きが前記バッファ手段側に流れ込んでいる場合、前記電源電圧検出部により電源電圧の低下が検出されると、前記配線部と前記電源配線とを導通する第1スイッチング素子と、
前記電流検出部の検出した電流の向きが前記バッファ手段側から吐き出されている場合、前記電源電圧検出部により電源電圧の低下が検出されると、前記配線部とグランドの配線とを導通する第2スイッチング素子とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記変位検出部は、前記被検出体の変位が大きくなるに従い出力電圧が高くなる第1変位検出部と、前記被検出体の変位が大きくなるに従い出力電圧が低くなる第2変位検出部とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−122949(P2012−122949A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275796(P2010−275796)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】