説明

位置決め装置

【課題】フットスペースの小型化が図られるとともに、対象物を確実に位置決めすることができる位置決め装置を提供する。
【解決手段】位置決め装置は、位置決め対象物を支持する支持部と、位置決めすべき方向と略平行な方向に沿って延びる軸線を回転中心Oとして回動可能に構成されたアーム部12と、アーム部12を回動駆動するモータとを備える。モータは、アーム部12が対象物から退避した退避位置と、アーム部12が当該対象物の外周縁に接触することで当該対象物を位置決め方向に沿って押し出して位置決めを完了させる位置決め完了位置との間を行き来するように、アーム部12を回動駆動する。アーム部12は、アーム部12が退避位置から位置決め完了位置へ回動する際に、接触した対象物の外周縁がその表面に沿って摺動することで対象物を位置決め方向に沿って押し出すための傾斜面14bを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定方向に沿って対象物を位置決めするための位置決め装置に関し、特に、支持部に載置された対象物の外周縁にアーム部を接触させることにより、当該対象物を支持部上において所定方向に沿って移動させることで対象物の当該所定方向に沿った位置決めが行なわれるように構成された接触式の位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池や液晶パネル、半導体装置等の製造工程においては、ワーク(ガラス基板、半導体基板等)そのものや、あるいはこれらワークが載置されたトレイ等の対象物が所定の位置に配置されることとなるように、当該対象物を位置決めするための位置決め装置が利用されている。当該位置決め装置は、製造ラインのいたるところに設置され、必要に応じて対象物の位置決めを行なうことにより、ワークに対する各種加工や対象物の搬送等を可能にしている。また、当該位置決め装置は、対象物が位置ずれを起こすことで生じ得る製造ラインの突発的な停止や対象物の破損等の不具合の発生をも未然に防止している。
【0003】
この種の位置決め装置には、種々の構成のものが存在するが、その一つに、支持部に載置された対象物の外周縁にアーム部を接触させることにより、当該対象物を支持部上において所定方向に沿って移動させることで対象物の当該所定方向に沿った位置決めを行なう接触式の位置決め装置が知られている。たとえば、特開2011−73875号公報(特許文献1)には、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置のロードロック室に収容された、基板が載置されたトレイを、ロボットハンドを用いて基板カセットに移載する移載装置が開示されているが、当該移載装置にも上述した接触式の位置決め装置が併設されることにより、ロボットハンドとトレイとの位置決めが行なわれてトレイの移載が行なわれることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−73875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した製造ラインには、その周辺に各種の装置が多数付設されている場合が多く、そのため、位置決め装置を設置することができるスペースは、往々にして大きな制約を受けてしまう。そのため、位置決め装置としては、製造ラインに容易に付設することが可能となるように小型に構成されることが好ましく、この点において上述した接触式の位置決め装置は、対象物の外周縁に接触させるアーム部と、当該アーム部を駆動する駆動手段とのみによって基本的に構成されるため、非常に小型に構成できる点において優れている。
【0006】
しかしながら、接触式の位置決め装置を利用することとした場合にも、アーム部を駆動する方向を対象物の位置決めを行なうべき所定方向と平行な方向に構成した場合には、アーム部が往復動できるだけの比較的大きなフットスペースが支持部近傍に必要となり、その設置が困難になる問題が生じてしまう。
【0007】
当該問題が生じないようにするためには、対象物の位置決めを行なうべき上記所定方向に沿って延びる軸線周りにアーム部が回動駆動されるように構成することが想定され、このように構成することにより、位置決め装置のフットスペースを可能な限り低減することができる。したがって、当該構成を採用することとすれば、位置決め装置を比較的容易に製造ラインに付設することが可能になる。
【0008】
しかしながら、上記のように位置決め装置を構成した場合には、回動駆動されるアーム部の上昇の際に当該アーム部の先端によって対象物の周縁が上方に向けて押し上げられてしまい、対象物に浮き上がりが生じて位置決めが正確に行なえないといった不具合や、対象物に反り等が発生している場合に対象物の外周縁にアーム部がうまく接触せず、やはり位置決めが正確に行なえないといった不具合が生じてしまうおそれがある。
【0009】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、フットスペースの小型化が図られるとともに、対象物を確実に位置決めすることができる位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に基づく位置決め装置は、所定方向に沿って対象物の位置決めを行なうものであって、上記対象物を支持する支持部と、上記所定方向と略平行な方向に沿って延びる軸線を回転中心として回動可能に構成されたアーム部と、上記アーム部を回動駆動する駆動手段とを備えている。上記駆動手段は、上記アーム部が上記対象物から退避した退避位置と、上記アーム部が上記対象物の上記所定方向に位置する一方の外周縁に接触することで上記対象物を上記所定方向に沿って押し出して上記対象物の位置決めを完了させる位置決め完了位置との間を行き来するように、上記アーム部を回動駆動する。上記アーム部には、上記アーム部が上記退避位置から上記位置決め完了位置へ回動する際に、接触した上記対象物の上記一方の外周縁がその表面に沿って摺動することで上記対象物を上記所定方向に沿って押し出すための傾斜面が設けられている。
【0011】
上記本発明に基づく位置決め装置にあっては、上記アーム部が、回転中心としての上記軸線を含む部分から直線状に延びる根元部と、上記退避位置から上記位置決め完了位置へ回動する際の当該アーム部の回動方向に向けて上記根元部の先端から屈曲して延びる屈曲部とを含んでいてもよく、その場合には、上記傾斜面が、上記屈曲部の先端に設けられていることが好ましい。
【0012】
上記本発明に基づく位置決め装置にあっては、上記アーム部が、上記対象物の上記一方の外周縁に沿って一対設けられていることが好ましく、その場合には、上記一対のアーム部の上記退避位置から上記位置決め完了位置へ回動する際の回動方向が、互いに逆向きであることが好ましい。
【0013】
上記本発明に基づく位置決め装置は、さらに、上記対象物の上記一方の外周縁とは反対側に位置する他方の外周縁が当接することにより、上記対象物の上記所定方向に沿った移動を規制する規制部をさらに備えていることが好ましい。
【0014】
上記本発明に基づく位置決め装置にあっては、上記対象物に当接する部分の上記規制部に、緩衝材が設けられていることが好ましい。
【0015】
上記本発明に基づく位置決め装置にあっては、上記支持部が、上記対象物の下面を支持するフリーローラを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フットスペースの小型化が図られるとともに、対象物を確実に位置決めすることができる位置決め装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1における位置決め装置の平面図および正面図である。
【図2】図1に示す位置決め装置の押し出し機構の概略斜視図である。
【図3】図2に示す位置決め部材の平面図および正面図ならびに先端部分の断面図である。
【図4】図1に示す位置決め装置の位置決め動作時における平面図および正面図である。
【図5】図1に示す位置決め装置のアーム部の詳細な動作およびトレイの移動の様子を示す模式背面図および模式平面図である。
【図6】図1に示す位置決め装置のアーム部の詳細な動作およびトレイの移動の様子を示す模式背面図および模式平面図である。
【図7】図1に示す位置決め装置のアーム部の詳細な動作およびトレイに反りがある場合におけるトレイの移動の様子を示す模式背面図および模式平面図である。
【図8】図1に示す位置決め装置のアーム部の詳細な動作およびトレイに反りがある場合におけるトレイの移動の様子を示す模式背面図および模式平面図である。
【図9】図1に示す位置決め装置による位置決めが完了した後において移載装置によってトレイが移載される様子を説明するための平面図である。
【図10】図1に示す位置決め装置による位置決めが完了した後において移載装置によってトレイが移載される様子を説明するための正面図である。
【図11】図1に示す位置決め装置による位置決めが完了した後において移載装置によってトレイが移載される様子を説明するための平面図である。
【図12】本発明の実施の形態2における位置決め装置の平面図および正面図である。
【図13】本発明の実施の形態3における位置決め装置の平面図および正面図である。
【図14】本発明の実施の形態4における位置決め装置の平面図および正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態1ないし4は、CVD装置のロードロック室に収容された、ワークである基板が載置されたトレイを、ロボットハンドを用いて基板カセットに移載する移載装置に、本発明に基づく位置決め装置を併設した場合を例示するものである。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における位置決め装置の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態における位置決め装置1Aの構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、位置決め装置1Aは、基板200が載置されたトレイ100を支持する支持部2と、トレイ100を押し出すための押し出し機構10と、トレイ100の移動を規制するための規制部3とを主として備えている。ここで、本実施の形態においては、基板200が載置された上記トレイ100が、位置決めすべき対象物に相当し、位置決め装置1Aは、おおよその位置に配置されることで支持部2によって支持された上記トレイ100を、所定方向に沿って移動させて精緻に位置決めするものである。
【0021】
本実施の形態において、トレイ100を位置決めすべき方向は、図中に示すY軸方向である。そのため、支持部2上に載置されたトレイ100は、押し出し機構10によって当該Y軸方向に沿って押し出され、支持部2上において当該Y軸方向に沿って僅かに移動することとなり、その後当該トレイ100が規制部3に当て留めされることにより、その位置決めが行なわれる。
【0022】
支持部2は、その表面に複数のフリーローラ2aを具備しており、当該複数のフリーローラ2aによってトレイ100の下面が支持される。これにより、トレイ100は、支持部2によって移動可能に支持される。なお、個々のフリーローラ2aは、載置されたトレイ100がY軸方向に沿って移動可能となるように、その回転軸がY軸方向と直交するX軸方向に沿って延びるように設けられている。
【0023】
また、支持部2は、トレイ100を支持した状態において、後述する移載装置としてのロボットハンド20(図9等参照)を抜き差しするための空間S(図1(B)参照)がトレイ100の下方に大きく確保されることとなるように、上述したY軸方向と直交するX軸方向の両端近傍の位置にY軸方向に沿って延びるように一対配置されている。
【0024】
押し出し機構10は、トレイ100のY軸方向に位置する一対の外周縁のうち、一方の外周縁(図1(A)において、下側に位置する方の外周縁)に対応する位置に設けられている。押し出し機構10は、当該外周縁に沿って左右対称に一対設けられており、特に本実施の形態においては、一対の押し出し機構10が、当該一方の外周縁の両端部近傍に配置されるように構成されている。このような位置に押し出し機構10が配置されることにより、上述したロボットハンド20を抜き差しするための空間Sがトレイ100の下方に大きく確保されることになる。なお、トレイ100の上記一方の外周縁の中央部には、台形状に切り欠かれた切り欠き部101が設けられており、一対の押し出し機構10は、この切り欠き部101の両外側に位置する両端部近傍に配置される。
【0025】
一対の押し出し機構10のそれぞれは、棒状の部材からなるアーム部12と、当該アーム部12を回動駆動するための駆動手段としての図示しないモータと、当該モータを収容するモータハウジング11とを含んでいる。アーム部12は、その一端がモータハウジング11から露出するように設けられた上記モータの回転軸に固定されており、当該モータの回転軸が回転することにより、当該回転軸を回転中心Oとしてアーム部12が回動駆動される。
【0026】
ここで、上記モータは、その回転軸がY軸方向に沿って延びるように、支持部2に載置されたトレイ100の下方に配置されており、これによりアーム部12は、トレイ100を位置決めすべき方向であるY軸方向に沿って延びる軸線(すなわちモータの回転軸の軸心)を回転中心Oとして回動可能に駆動されることになる。このように構成することにより、押し出し機構10を設置するために必要となるフットスペースが非常に小さくて済むことになり、容易に位置決め装置1Aを設置することが可能になる。
【0027】
一方、規制部3は、トレイ100のY軸方向に位置する一対の外周縁のうち、他方の外周縁(図1(A)において、上側に位置する方向の外周縁)に対応する位置に設けられている。当該規制部3のトレイ100に対向する部分には、クッション性を有する緩衝材3aが設けられている。当該緩衝材3aを設けることにより、規制部3にトレイ100が接触する際にその衝撃が吸収され、反動によってトレイ100が規制部3から遠ざかる方向に移動することが防止される。
【0028】
図2は、図1に示す位置決め装置の押し出し機構の概略斜視図である。また、図3は、図2に示す位置決め部材の形状を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は先端部分の断面図である。なお、(C)に示す断面は、(A)において示すIIIC−IIIC線に沿った断面である。次に、これら図2および図3を参照して、本実施の形態における位置決め装置1Aの押し出し機構10の詳細な構造について説明する。
【0029】
図2に示すように、押し出し機構10は、モータハウジング11に取付けられたブラケット17を介して設置板16上に設置される。アーム部12は、回転中心Oである上記軸線を含む部分から直線状に延びる回転アーム13と、当該回転アーム13に組付けられた位置決め部材14とを含んでいる。この位置決め部材14は、たとえばボルト15等によって回転アーム13に固定される。
【0030】
図3に示すように、位置決め部材14は、その先端が屈曲した平面視略V字状の形状を有する板状の部材にて構成されている。位置決め部材14の根元側の部分には、当該位置決め部材14を回転アーム13に固定するボルト孔14cが2箇所設けられており、当該位置決め部材14の根元側の部分が回転アーム13に重なるように配置されるとともに当該ボルト孔14cにボルト15が捩じ込まれて締結されることにより、位置決め部材14が回転アーム13に固定される(図2参照)。これら回転アーム13および当該回転アーム13に重なるように配置された位置決め部材の根元側の部分とが、回転中心Oから直線状に延びる根元部に相当する。
【0031】
ここで、位置決め部材14の先端側の部分である屈曲部14aは、上述した根元部に対して、後述する退避位置から位置決め完了位置へアーム部12が回動する際の当該アーム部12の回動方向に向けて屈曲している。なお、その根元部に対する屈曲角は、特に限定されるものではないが、本実施の形態においては、45°に設定されている。
【0032】
また、位置決め部材14の先端側の部分である屈曲部14aには、傾斜面14bが設けられている。当該傾斜面14bは、屈曲部14aの先端側に向かうにつれてその厚みが減じることとなるように屈曲部14aの先端に設けられている。図2に示すように、当該傾斜面14bは、位置決め部材14が回転アーム13に固定された状態において、モータハウジング11側を向くように形成されている。
【0033】
図2に示すように、回転アーム13は、上述した回転中心Oを中心として図中に示す矢印A方向に図示しないモータによって回動駆動され、これにより位置決め部材14も回動駆動されることになる。すなわち、回転アーム13およびこれに固定された位置決め部材14からなるアーム部12は、トレイ100を位置決めすべき方向であるY軸方向と直交するXZ平面内において回動することになる。
【0034】
ここで、アーム部12は、アーム部12がトレイ100から退避した退避位置(図1に示す位置、すなわち図2において鎖線で示す位置)と、アーム部12がトレイ100に接触してこれを押し出すことで当該トレイ100の位置決めを完了させる位置決め完了位置(後述する図4に示す位置、すなわち図2において実線で示す位置)との間を行き来するように回動駆動される。なお、アーム部12が上記行き来のために回動駆動される角度範囲としては、これが特に限定されるものではないが、製造ラインに設置された他の装置に物理的に干渉することがないように可能限り小さい角度範囲とされることが好ましく、本実施の形態においては、これが90°に設定されている。
【0035】
図4は、図1に示す位置決め装置の位置決め動作時における状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。次に、この図4を参照して、本実施の形態における位置決め装置1Aの位置決め動作時の状態について説明する。
【0036】
図4に示すように、トレイ100のY軸方向に沿った位置決めを行なう際には、アーム部12が図中に示す矢印A1方向に回動駆動され、上述した退避位置から位置決め完了位置へと移行する。その際、アーム部12は、その一部がトレイ100の上記一方の外周縁に接触することになり、これによりトレイ100がY軸方向に沿って規制部3側に向けて押し出される。なお、その際の一対のアーム部12の回動方向は、図示するように互いに逆向きである。
【0037】
押し出されたトレイ100は、フリーローラ2aが回転することで支持部2上において移動することになり、その他方の外周縁が規制部3に接触することでその移動が規制される。その際、規制部3に設けられた緩衝材3aの作用によってトレイ100は、規制部3に当て留めされることになり、これによりトレイ100のY軸方向に沿った精緻な位置決めが行なわれることになる。
【0038】
なお、その後、アーム部12は、上述したA1方向とは逆方向に回動駆動され、これにより上述した位置決め完了位置から退避位置へと移行し、以上によりトレイ100の位置決め動作が完了する。
【0039】
上述したように、本実施の形態における位置決め装置1Aにあっては、アーム部12に屈曲部14aが設けられ、当該屈曲部14aの先端に傾斜面14bが設けられている。このように構成することにより、回動駆動されるアーム部12の先端部分が上昇する際に当該アーム部12の先端部分によってトレイ100の上記一方の外周縁が上方に向けて押し上げられてしまい、トレイ100に浮き上がりが生じて位置決めが正確に行なえないといった不具合や、トレイ100に反り等が発生している場合にトレイ100の上記一方の外周縁にアーム部12がうまく接触せず、位置決めが正確に行なえないといった不具合の発生が効果的に防止できるようになる。以下、その仕組みについて詳細に説明する。
【0040】
図5および図6は、図1に示す位置決め装置のアーム部の詳細な動作およびトレイの移動の様子を示す一連の模式背面図および模式平面図であり、図7および図8は、図1に示す位置決め装置のアーム部の詳細な動作およびトレイに反りがある場合におけるトレイの移動の様子を示す一連の模式背面図および模式平面図である。
【0041】
図5および図7に示すように、アーム部12が図中矢印A1方向に回動移動するに際し、アーム部12が上述した退避位置と位置決め完了位置との間であって、かつ屈曲部14aの先端部分がトレイ100が載置される基準面Pよりも上方に所定量だけ迫り出した途中位置に達した時点において、屈曲部14aの先端に設けられた傾斜面14bが、トレイ100の上述した一方の外周縁の所定位置に接触することになる。
【0042】
その際、トレイ100に反り等が生じていない場合には、図5に示すように、傾斜面14bが上記基準面Pに達した時点で当該傾斜面14bとトレイ100の外周縁の所定位置とが接触することになり、トレイ100に反り等が生じている場合には、図7に示すように、傾斜面14bが上記基準面Pよりも高い位置にまで達した時点で当該傾斜面14bとトレイ100の外周縁の所定位置とが接触することになる。
【0043】
次いで、図6および図8に示すように、アーム部12が図中矢印A1方向にさらに回動駆動されることにより、接触したトレイ100の外周縁が傾斜面14bの表面に沿って摺動し、これに伴ってトレイ100がアーム部12によってY軸方向に沿って押し出されることで図中矢印B方向に移動する。そして、アーム部12が位置決め完了位置に達するまでの間には、傾斜面14bが上記基準面Pよりも十分に高い位置にまで達することになるため、傾斜面14bの表面上を摺動したトレイ100の外周縁が傾斜面14bから外れ、これらの接触が解除されることになる。
【0044】
なお、本実施の形態においては、アーム部12が位置決め完了位置に達した時点でアーム部12の屈曲部14aの延在方向が鉛直方向に合致するように設定されることにより、傾斜面14bが上記基準面Pよりも十分に高い位置にまで確実に達するように構成されている。
【0045】
以上により、トレイ100は、上述したアーム部12の回動の際に確実にアーム部12よりも規制部3側に移動されることになるため、そのY軸方向に沿った位置決めが確実に行なわれるようになる。
【0046】
ここで、上記構成を採用することにより、アーム部12の回動の際に傾斜面14bのトレイ100に対する傾きが常に変化することになるため、傾斜面14bとトレイ100の外周縁とが接触を開始した時点からこれが解除されるまでの間、傾斜面14bとトレイ100の外周縁との接触位置が常に変化することになる。そのため、上記摺動の際に、これ部材間に生じる摩擦力によってその摺動が阻害されることが抑制されることになり、スムーズに上記摺動が生じることになる。したがって、トレイ100の浮き上がりが好適に防止できることになり、トレイ100を確実に移動させることが可能となって位置決めが正確に行なえることになる。
【0047】
また、上記構成を採用することにより、アーム部12の回動の際に傾斜面14bがトレイ100の外周縁の延びる方向に沿ってより広い範囲をカバーしつつ通過することになるため、トレイ100に反り等がある場合にも、確実にトレイ100の外周縁に傾斜面14bが接触することになり(すなわち、トレイ100の位置決めが可能な許容範囲が十分に広く確保できることになり)、トレイ100を確実に移動させることが可能となって位置決めが正確に行なえることになる。
【0048】
図9ないし図11は、図1に示す位置決め装置による位置決めが完了した後において移載装置によってトレイが移載される様子を説明するための平面図および正面図である。次に、これら図9ないし図11を参照して、位置決め完了後に行なわれるトレイ100の移載について説明する。
【0049】
図9に示すように、トレイ100の位置決めが完了した後には、支持部2によって支持されたトレイ100の下方の空間(図1(B)に示す空間S)に移載装置としてのロボットハンド20が図中矢印Y1方向に沿って挿入される。その際、本実施の形態においては、上述したように、支持部2および押し出し機構10がいずれもトレイ100のX軸方向に沿った両端部近傍に配置されているため、ロボットハンド20の挿入の際にこれらが邪魔になることはない。
【0050】
図10に示すように、ロボットハンド20がトレイ100の下方の空間に挿入された後には、ロボットハンド20が図中矢印Z1方向に沿って上向きに移動される。ここで、ロボットハンド20の上面には、吸着パッド21が複数設けられており、当該ロボットハンド20の上昇の際に、当該吸着パッド21の吸着面がトレイ100の下面に接触してこれを吸着することになり、トレイ100がロボットハンド20によって保持される。そして、さらにロボットハンド20が上向きに移動されることにより、トレイ100が支持部2から持ち上げられる。
【0051】
図11に示すように、ロボットハンド20によってトレイ100が支持部2から持ち上げられた後には、ロボットハンド20が図中矢印Y2方向に抜き出される。これにより、トレイ100は、基板200を支持した状態のまま、CVD装置のロードロック室から搬出される。搬出されたトレイ100上に載置された基板200は、その後、基板カセットに収容される。
【0052】
以上において説明したように、本実施の形態の如くの構成を採用することにより、フットスペースの小型化が図られるとともに、トレイ100を確実に位置決めすることができる位置決め装置1Aとすることができる。
【0053】
(実施の形態2)
図12は、本発明の実施の形態2における位置決め装置の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。以下においては、この図12を参照して、本実施の形態における位置決め装置1Bの構成について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1における位置決め装置1Aと共通する部分については、図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0054】
図12に示すように、位置決め装置1Bは、上述した本発明の実施の形態1における位置決め装置1Aと同様に、フリーローラ2aが設けられた支持部2と、緩衝材3aが設けられた規制部3と、押し出し機構10とを備えている。ここで、本実施の形態における位置決め装置1Bにあっては、一対の押し出し機構10のそれぞれに設けられたアーム部12が、上述した本発明の実施の形態1におけるそれとは異なる方向にそれぞれ回動するように構成されている。
【0055】
すなわち、図12に示すように、一対のアーム部12のそれぞれは、図中に示す矢印A2方向に回動駆動されることにより、退避位置から位置決め完了位置へと移行する。なお、その際の一対のアーム部12の回動方向は、図示するように互いに逆向きである。
【0056】
このように構成した場合にも、アーム部12が回転駆動されることにより、アーム部12の屈曲部の先端に設けられた傾斜面がトレイ100の外周縁に接触することになり、接触したトレイ100の外周縁が当該傾斜面の表面に沿って摺動するようになり、これによりトレイ100が確実に位置決めされることになる。したがって、本実施の形態における位置決め装置1Bとした場合にも、上述した本発明の実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになる。
【0057】
(実施の形態3)
図13は、本発明の実施の形態3における位置決め装置の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。以下においては、この図13を参照して、本実施の形態における位置決め装置1Cの構成について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態1における位置決め装置1Aと共通する部分については、図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0058】
図13に示すように、位置決め装置1Cは、上述した本発明の実施の形態1における位置決め装置1Aと同様に、支持部2と、緩衝材3aが設けられた規制部3と、押し出し機構10とを備えている。ここで、本実施の形態における位置決め装置1Cにあっては、支持部2にフリーローラ2aは設けられておらず、支持部2によって直接トレイ100の下面が支持されている。
【0059】
上述した本発明の実施の形態1における位置決め装置1Aにあっては、フリーローラ2aが支持部2の上面に設けられることにより、押し出し機構10によって押し出されたトレイ100がスムーズに移動して規制部3に当接するように構成されていたが、これはトレイ100のY軸方向に沿った長さにある程度のばらつきが生じてしまうことを前提としたためである。すなわち、トレイ100に上述したばらつきがある場合には、当該ばらつきの分だけ規制部3とアーム部12との間の距離にマージンを設けることが必要になり、当該マージンを設けた場合には、トレイ100が移動することで確実に規制部3に当接するように構成することが必要となり、そのためトレイ100のスムーズな移動を実現するためにフリーローラ2aが支持部2の上面に設けられていた。
【0060】
しかしながら、当該ばらつきが生じない場合やこれが無視できる場合には、当該フリーローラ2aがなくともトレイ100の位置決めが行なえることになる。すなわち、規制部3とアーム部12との間の距離に上述したマージンを設ける必要がなくなるため、トレイ100を移動させるためのフリーローラ2aが不要になる。したがって、本実施の形態における位置決め装置1Cの如くの構成とした場合にも、上記のような使用条件下においては、上述した本発明の実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになる。
【0061】
(実施の形態4)
図14は、本発明の実施の形態4における位置決め装置の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。以下においては、この図14を参照して、本実施の形態における位置決め装置1Dの構成について説明する。なお、上述した本発明の実施の形態3における位置決め装置1Cと共通する部分については、図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0062】
図14に示すように、位置決め装置1Dは、上述した本発明の実施の形態3における位置決め装置1Cと同様に、支持部2と、押し出し機構10とを備えている。ここで、本実施の形態における位置決め装置1Dにあっては、支持部2にフリーローラ2aは設けられておらず、また規制部3がそもそも設けられていない。
【0063】
上述した本発明の実施の形態3における位置決め装置1Cにあっては、トレイ100のY軸方向に沿った長さにばらつきがない場合やこれが無視できる場合を想定したものであるが、仮に無視できないばらつきが生じる場合であっても、トレイ100の位置決めをするための基準位置をトレイ100の押し出し機構10が設けられた側の外周縁とした場合には、規制部3を設けないことにより、トレイ100の位置決めが可能になる。すなわち、トレイ100のY軸方向に沿った位置決めのための基準位置をアーム部12のモータハウジング11側の壁面とすれば、規制部3を設けないことでその精緻な位置決めが可能になる。
【0064】
より詳細には、上述した如くの位置決め装置1Dにおいても、アーム部12が回転駆動されることにより、アーム部12の屈曲部の先端に設けられた傾斜面がトレイ100の外周縁に接触することになり、接触したトレイ100の外周縁が当該傾斜面の表面に沿って摺動することになる。これにより、トレイ100がY軸方向に沿って押し出されることになり、その後、傾斜面とトレイ100との接触が解除された時点においてトレイ100の移動が停止されることになる。
【0065】
そのため、当該接触が解除された時点において、トレイ100の上記外周縁がアーム部12のモータハウジング11側の壁面に沿って配置された状態となるため、これによりトレイ100の位置決めが可能になる。したがって、本実施の形態における位置決め装置1Dとした場合にも、上述した本発明の実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られることになる。
【0066】
なお、上述した本発明の実施の形態1ないし4においては、本発明に基づく位置決め装置を、ロボットハンドを用いてトレイを移載する移載装置に併設した場合を例示して説明を行なったが、本発明に基づく位置決め装置は、製造ラインに含まれるあらゆる装置への付設が可能である。また、押し出し機構の具体的な設置位置や設置数、アーム部の形状や回動の角度範囲等は、当該付設される装置に応じて適宜調整すればよく、上述した本発明の実施の形態1ないし4の如くに限定されるものではない。
【0067】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0068】
1A〜1D 位置決め装置、2 支持部、2a フリーローラ、3 規制部、3a 緩衝材、10 押し出し機構、11 モータハウジング、12 アーム部、13 回転アーム、14 位置決め部材、14a 屈曲部、14b 傾斜面、14c ボルト孔、15 ボルト、16 設置板、17 ブラケット、20 ロボットハンド、21 吸着パッド、100 トレイ、101 切り欠き部、200 基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って対象物の位置決めを行なう位置決め装置であって、
前記対象物を支持する支持部と、
前記所定方向と略平行な方向に沿って延びる軸線を回転中心として回動可能に構成されたアーム部と、
前記アーム部を回動駆動する駆動手段とを備え、
前記駆動手段は、前記アーム部が前記対象物から退避した退避位置と、前記アーム部が前記対象物の前記所定方向に位置する一方の外周縁に接触することで前記対象物を前記所定方向に沿って押し出して前記対象物の位置決めを完了させる位置決め完了位置との間を行き来するように、前記アーム部を回動駆動し、
前記アーム部には、前記アーム部が前記退避位置から前記位置決め完了位置へ回動する際に、接触した前記対象物の前記一方の外周縁がその表面に沿って摺動することで前記対象物を前記所定方向に沿って押し出すための傾斜面が設けられている、位置決め装置。
【請求項2】
前記アーム部は、回転中心としての前記軸線を含む部分から直線状に延びる根元部と、前記退避位置から前記位置決め完了位置へ回動する際の当該アーム部の回動方向に向けて前記根元部の先端から屈曲して延びる屈曲部とを含み、
前記傾斜面が、前記屈曲部の先端に設けられている、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記アーム部が、前記対象物の前記一方の外周縁に沿って一対設けられ、
前記一対のアーム部の前記退避位置から前記位置決め完了位置へ回動する際の回動方向が、互いに逆向きである、請求項1または2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記対象物の前記一方の外周縁とは反対側に位置する他方の外周縁が当接することにより、前記対象物の前記所定方向に沿った移動を規制する規制部をさらに備えた、請求項1から3のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記対象物に当接する部分の前記規制部に、緩衝材が設けられている、請求項4に記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記支持部が、前記対象物の下面を支持するフリーローラを含んでいる、請求項4または5に記載の位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−30668(P2013−30668A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166702(P2011−166702)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】