説明

位置測位を行う無線制御局及び移動通信システム

【課題】無線基地局から移動局に下り信号を送信し移動局から上り信号を受信するまでの時間である基地局RTTと、移動局が基地局から下り信号を受信し基地局へ上り信号を送信するまでの移動局送受信時間差を移動局にて測定した値である移動局RTTとを用いて、より正確に移動局の測位を行う無線制御局を提供する。
【解決手段】無線基地局は、無線制御局から基地局RTT測定結果報告の指示を報告の回数及び報告周期と共に受けると、基地局RTTを測定し、測定した基地局RTTを無線制御局に報告する。無線制御局は、報告された基地局RTT測定結果を、該基地局RTT測定結果報告の報告周期の回数を示す番号と対応付けて格納し、報告周期の回数を示す番号に対応する基地局RTT測定結果及び移動局RTT測定結果を組み合わせて、組み合わせの差分を用いることにより無線基地局と移動局の間の電波伝播時間を算出し、算出した電波伝播時間から無線基地局と移動局との間の距離を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムおよび無線制御局に関し、より詳細には、移動通信システムにおける、移動通信装置の位置測位を行う無線制御局及び移動通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、移動無線通信システムは、加入者が所有する移動通信装置と、移動通信装置が接続を確立する複数の無線基地局と、無線基地局の移動通信を制御する無線制御局とを有する。各無線基地局は所定の領域内の移動通信端末と接続を確立し得、この所定の領域はセルと呼ばれる。
【0003】
加入者が移動通信装置を持って移動し、一つのセルから別のセルへと移動する場合、該移動通信装置は一つの無線基地局から別の無線基地局へと接続先を移す必要がある。このような接続の変換(ハンドオーバー)は、無線制御局によって自動的に行われる。従って無線制御局は、移動通信装置のシステム内における位置を把握している必要がある。
【0004】
移動通信装置の位置を測定する方法として、移動通信端末(移動局)及び基地局と無線制御局の間で電波を伝播させるのにかかる時間を基に基地局からの距離を算定し、これによって移動通信端末を測位する方法が知られている。図1、2に模式的に示す、往復遅延時間(RTT: Round Trip Time)を用いた測位方法である。より具体的には、無線基地局から移動局に下り信号を送信し移動局から上り信号を受信するまでの時間差を基地局で測定した基地局送受信時間差(基地局RTT)と、移動局が基地局から下り信号を受信し基地局へ上り信号を送信するまでの時間差を移動局で測定した移動局受送信時間差(移動局RTT)との差を算定して測位を行う。
【0005】
特許文献1は、RTTを利用した移動通信端末の位置測定方法について開示している。
【0006】
図1では、無線制御局501が移動通信端末(移動局)502と無線基地局503との間でそれぞれ信号を送受信してRTTを測定している。無線制御局501は、移動局502のRTT(移動局RTT)及び無線基地局503のRTT(基地局RTT)測定指示を、RTTの報告回数及びRTTの報告周期と共に送信し、報告されたそれぞれのRTT測定結果から電波伝播時間を算出する。より具体的には、電波伝播時間を算出するためには、基地局RTTの測定結果と移動局RTTの測定結果との差分を求める必要があるが、その際、複数ある基地局RTT測定結果と移動局RTT測定結果とを、どのように対応付けて上記差分を求めるかという問題が発生する。
【0007】
この解決策として一般的には、図2及び図3のように各無線基地局の基地局RTTの測定結果に受信の順番で1から番号を付与し、移動局RTTについても同様に、各移動局からの移動局RTT測定結果に受信の順番に1から番号を付与する。そして、図3の基地局Aの基地局RTT及び移動局Aの移動局RTTのうち、付与された番号が一致するRTT測定結果同士が組み合わさるように、無線基地局及び移動局RTT測定結果の1番目から5番目を組み合わせ、それぞれRTT測定結果報告の差分を求め電波伝播時間を算出することが考えられる。
【0008】
例えば図3のRTT測定結果の1回目を例にとると、無線基地局Aの基地局RTT測定結果と、移動局の移動局RTT測定結果との差分を求めることにより、電波伝搬時間を算出することになる。しかし、図2のRTT測定中に移動局502が移動しハンドオーバにより新規の無線基地局B(図2)配下の無線リンクが追加され、無線制御局501が新規無線基地局Bの基地局RTTの測定を指示した場合、無線基地局Bの基地局RTT測定結果と移動局の移動局RTT測定結果との差分を求める必要が生じる。
【0009】
【特許文献1】特開2006-71389号公報(要約書、段落[0012])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ハンドオーバにより移動局502が新規の基地局と無線リンクを確立した場合、新規無線基地局の基地局RTT測定結果報告にも、受信順に番号が付与される。つまり、無線基地局Bの基地局RTT測定結果の1回目は、無線基地局Aの基地局RTT測定及び移動局の移動局RTT測定の3回目の結果報告と同じ周期に報告されるが、基地局RTTを測定する基地局Bとしてはこれが第1回目のRTT測定であるので、第1回目の基地局RTT測定結果として認識する。一方、移動局502は、基地局Bとの信号受送信時間差のRTTを1回目に測定する際、すでに基地局Aとの信号受送信時間差のRTTを2回測定していることから、基地局Bとの1回目のRTT測定結果が基地局Aとの3回目のRTT測定結果に相当することを認識している。
【0011】
この結果、図3における新規無線基地局Bが測定した基地局RTTの1回目と2回目の測定結果は、使用されることがない。基地局Bの基地局RTTの1回目の測定が報告された時には、基地局Aや移動局の1回目の測定はすでに済んでしまっているためである。また一般に、移動局RTT測定のx回目以降に新規に無線基地局が追加された場合、x回目以前の該新規無線基地局の基地局RTT測定結果は使用不可能である。
【0012】
またもう1つの問題として、図3における差分の計算において、移動局の移動局RTT測定結果の3回目と、無線基地局Bの基地局RTT測定結果の3回目の差分を求めて電波伝播時間を算出する場合、3回目の基地局RTT測定を行った時刻と、3回目の移動局RTT測定を行った時刻とが、時間的に2RTT測定報告周期分離れている。そのため、無線基地局Bの3回目の基地局RTT測定を行った時刻における無線環境が、3回目の移動局RTT測定を行った時刻から変化している可能性がある。したがって、そこから求められるRTT測定結果の差分を用いた場合、精度の高い電波伝播時間の算出を行うことができず位置推定の精度が劣化する可能性がある。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、精度の高く電波伝搬時間を算出する無線制御局およびそれを備えた移動通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも1つの移動局と、少なくとも1つの無線基地局とを備えた移動通信システムに含まれ、前記移動局と前記無線基地局との間の通信を制御し、無線基地局から移動局に下り信号を送信し移動局から上り信号を受信するまでの時間である基地局送受信時間差を基地局にて測定した値である基地局RTT(Round Trip Time)と、移動局が基地局から下り信号を受信し基地局へ上り信号を送信するまでの移動局送受信時間差を移動局にて測定した値である移動局RTTとを組み合わせ、組み合わせの差分を用いることにより無線基地局と移動局の間の電波伝播時間を算出し、算出した電波伝播時間から無線基地局と移動局との間の距離を算出する無線制御局であって、移動局は、無線制御局から移動局RTT測定結果報告の指示を、報告の回数及び報告周期と共に受けると、移動局RTTを測定し、測定した移動局RTTを移動局RTT測定結果報告指示に従って無線制御局に報告し、無線基地局は、無線制御局から基地局RTT測定結果報告の指示を、報告の回数及び報告周期と共に受けると、基地局RTTを測定し、測定した基地局RTTを基地局RTT測定結果報告指示に従って無線制御局に報告し、無線制御局は、無線基地局から報告された基地局RTT測定結果を、該基地局RTT測定結果報告の報告周期の回数を示す番号と対応付けて格納し、移動局から報告された移動局RTT測定結果を、番号と対応付けて格納し、基地局RTT測定結果と移動局RTT測定結果とを組み合わせる際に、報告周期の回数を示す番号に対応する基地局RTT測定結果及び移動局RTT測定結果を組み合わせることを特徴とする。
【0015】
これにより、差分計算の際に組み合わせられるRTT測定結果の測定時間を近しくすることができ、より正確な測位計算結果が得られる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無線制御局であって、無線基地局に基地局RTT測定結果報告の指示を、移動局に移動局RTT測定結果報告の指示をほぼ同時に送信し、基地局RTT測定結果報告の指示及び移動局RTT測定結果報告の指示は、同一の報告回数と同一の報告周期とを有することを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の無線制御局であって、報告周期よりも短い予備周期を計る予備タイマを起動し、予備タイマが満了後に報告タイマを起動し、報告タイマ起動を、基地局RTT測定結果報告指示の報告回数だけ繰り返し、報告タイマの起動の順に番号を付与し、報告周期の回数を示す番号とは、報告タイマの起動の順に付与された番号であることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の無線制御局であって、無線制御局が前記移動局から報告された移動局RTT測定結果に対応付ける番号は、前記移動局RTT測定結果報告の受信の順に付与されることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の移動システムであって、無線制御局は、無線制御局が移動局RTT測定結果報告の指示を送信した後に移動局から受信した移動局RTT測定結果報告に、受信の順に番号を付与し、基地局RTT測定結果に対応付けられた報告周期の回数を示す番号と移動局RTT測定結果に付与された受信の順の番号とが対応するように、基地局RTT測定結果及び移動局RTT測定結果を格納することを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、少なくとも1つの移動局と、少なくとも1つの無線基地局と、前記移動局と前記無線基地局との間の通信を制御する無線制御局とを備えた移動通信システムであって、無線制御局は、無線基地局から移動局に下り信号を送信し移動局から上り信号を受信するまでの時間である基地局送受信時間差を基地局にて測定した値である基地局RTT(Round Trip Time)と、移動局が基地局から下り信号を受信し基地局へ上り信号を送信するまでの移動局送受信時間差を移動局にて測定した値である移動局RTTとを組み合わせ、組み合わせの差分を用いることにより無線基地局と移動局の間の電波伝播時間を算出し、算出した電波伝播時間から無線基地局と移動局との間の距離を算出し、移動局は、無線制御局から移動局RTT測定結果報告の指示を、報告の回数及び報告周期と共に受けると、移動局RTTを測定し、測定した移動局RTTを移動局RTT測定結果報告指示に従って無線制御局に報告し、無線基地局は、無線制御局から基地局RTT測定結果報告の指示を、報告の回数及び報告周期と共に受けると、基地局RTTを測定し、測定した基地局RTTを基地局RTT測定結果報告指示に従って無線制御局に報告し、無線制御局は、無線基地局から報告された基地局RTT測定結果を、該基地局RTT測定結果報告の報告周期の回数を示す番号と対応付けて格納し、移動局から報告された移動局RTT測定結果を、番号と対応付けて格納し、基地局RTT測定結果と移動局RTT測定結果とを組み合わせる際に、報告周期の回数を示す番号に対応する基地局RTT測定結果及び移動局RTT測定結果を組み合わせることを特徴とする。
【0021】
これにより、差分計算の際に組み合わせられるRTT測定結果の測定時間を近しくすることができ、より正確な測位計算結果が得られる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の移動システムであって、無線制御局は、無線基地局に基地局RTT測定結果報告の指示を、移動局に移動局RTT測定結果報告の指示をほぼ同時に送信し、基地局RTT測定結果報告の指示及び移動局RTT測定結果報告の指示は、同一の報告回数と同一の報告周期とを有することを特徴とする。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の移動システムであって、無線制御局は、報告周期を計る報告タイマを起動する前に、前記報告周期よりも短い予備周期を計る予備タイマを起動し、予備タイマが満了後に報告タイマを起動し、報告タイマ起動を、基地局RTT測定結果報告指示の報告回数だけ繰り返し、報告タイマの起動の順に番号を付与し、報告周期の回数を示す番号とは、報告タイマの起動の順に付与された番号であることを特徴とする。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項6乃至8のいずれかに記載の移動システムであって、前記無線制御局が前記移動局から報告された移動局RTT測定結果に対応付ける番号は、前記移動局RTT測定結果報告の受信の順に付与されることを特徴とする。
【0025】
請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の移動システムであって、無線制御局は、無線制御局が移動局RTT測定結果報告の指示を送信した後に移動局から受信した移動局RTT測定結果報告に、受信の順に番号を付与し、基地局RTT測定結果に対応付けられた報告周期の回数を示す番号と、移動局RTT測定結果に付与された受信の順の番号とが、同一となるように基地局RTT測定結果及び移動局RTT測定結果を格納することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、移動局のより正確な位置推定、位置測位が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
図4に示すように本発明に係る無線制御システム上の無線制御局501は、図6のフローチャートに従ってRTT測定結果を取得する。無線制御局501はまず、ステップ110のRTT測定開始指示直前に、予備周期として第1周期のタイマ半周期分を設定する(ステップ100)。そして無線制御局501は、移動局502及び無線基地局503AにRTT測定結果を報告する周期を第1周期、RTT測定結果報告回数を5回としてRTT測定開始を指示する(ステップ110)。
【0029】
そして、予備周期である半周期のタイマが満了した後(ステップ120)、無線制御局501はさらに、以降のステップ130から150において、第1周期のタイマをRTT測定結果報告設定回数である5回設定し、基地局、移動局それぞれからRTT測定結果を受信する。RTT測定結果報告を5回受けとると、無線制御装置501は処理を終了する(ステップ160)。
【0030】
図6のフローチャートに従って第1周期のタイマ稼働中に受信した無線基地局からの基地局RTT測定結果は、図7のフローチャートに従って無線制御局501に記憶される。また、図6のフローチャートに従って第1周期のタイマ稼働中に受信した移動局からの基地局RTT測定結果は、図8のフローチャートに従って無線制御局501に記憶される。
【0031】
図7は、図6のステップ130と140との間に、無線制御局501が無線基地局から基地局RTT測定結果を受信したときの処理を示す。ステップ200で、無線制御局501は第1周期で5回の報告をするよう指示を送る。その後無線制御局501は、第1周期が始まった後に無線基地局から基地局RTT測定結果を受信する(ステップ210)。無線制御局501は、第1周期タイマが稼働中であるか(ステップ220)、測定回数Nが設定された測定回数を超えていないか(ステップ230)を確認し、共にYesであれば、ステップ240において基地局RTTを基地局RTT記憶部に記憶する。
【0032】
ステップ240において基地局RTTを記憶する際、無線制御局501は、第1周期タイマ起動回数N回目の基地局A乃至Bの基地局RTTとして、基地局RTTを起動回数と対応付けて格納する。従って、図4において、第1周期タイマ起動回数Nが3のときに初めて受信される無線基地局Bの基地局RTTは、「起動回数N=3」の情報と対応付けて格納される。
【0033】
ちなみに、基地局RTT記憶部に、以前の測位処理の際に格納されたデータが残っている場合は、新しいデータで上書き格納する。
【0034】
一方、移動局RTTに関しては、図8のフローチャートに示す通り、移動局503の送受信先の無線基地局毎に、移動局RTTが受信した回数と対応付けて、無線制御局の移動局RTT記憶部に格納する。つまり、ハンドオーバにより新規に接続を確立した基地局(図4の基地局B)の移動RTTの場合は、基地局Aとの送受信における移動局RTTとは区別され、かつ同じ受信番号を付与されて(図5の基地局Aとの送受信による移動局RTT3回目と基地局Bとの送受信による移動局RTT3回目とが同時に付与される)、同時に無線制御局へと報告される。
【0035】
ちなみに、移動局RTT記憶部に、以前の測位処理の際に格納されたデータが残っている場合は、新しいデータで上書き格納する。
【0036】
図4を参照しつつ無線制御局501、無線基地局502、移動局503それぞれの上記ステップについて述べる。無線制御局501は、無線基地局及び移動局にRTT測定開始を指示(ステップ200、ステップ300)する時刻の直前に、無線基地局及び移動局に指示したRTT報告の周期(第1周期)よりも短い予備周期のタイマを設定(ステップ100)する。予備周期のタイマが満了(ステップ120)後、無線制御局501は無線基地局及び移動局に指示したRTT報告周期時間である第1周期のタイマを起動し(ステップ130)、第1周期タイマ起動の回数に対して1番から順番に番号を付与し、タイマ起動N回目の周期内において受信した無線基地局の基地局RTT測定結果報告(ステップ210)を図7のフローチャートに従って番号に対応づけて記憶する。また移動局の移動局RTT測定結果報告(ステップ310)については、報告回数に応じて1番から順に番号を付け、報告回数Mが設定された測定回数を超えない限り、図8のフローチャートに従って記憶する。
【0037】
基地局RTTと移動局RTTとをそれぞれの設定回数分取得すると、無線制御局501は、格納されたRTT測定結果を組み合わせて差分を算出する。より具体的には、基地局及び移動局のRTT測定結果には、図5のようにタイマの起動回数もしくは報告受信順の番号が対応されているので、それぞれの番号に対応する基地局、移動局RTT測定結果の差分を算出することにより、電波伝播遅延時間を導出することができる。
【0038】
ここで、無線基地局Bの最初の基地局RTT測定結果も、受信時のタイマの起動回数である「N=3」に対応付けられているため、移動局測位のための差分計算に有効に利用され得る。またこの際、ハンドオーバ後の新規接続の無線基地局Bの基地局RTTが、無線制御局501で管理している第1周期タイマの周期と対応付けられて格納されているため、同じ回数に対応する基地局、移動局RTT測定結果の測定に差が少なく、これにより移動局の位置推定の精度を高めることができる。
【0039】
すなわち本発明では、移動局501の位置を測位するために無線制御局にて受信する無線基地局からの基地局RTT測定結果報告と、移動局からの移動局RTT測定結果報告との差分を求める際に、可能な限り無線基地局と移動局にてRTT測定を実施した時刻を近づけるようにすることにより、電波伝播時間をより正確に求めることができる。これにより、移動局の測位精度を向上することができる。
【0040】
本願発明は、IMT2000移動無線体通信システム等における位置測位において有効に用いられるが、他の移動無線体通信システムにおいても利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本願発明を具備した無線制御装置を用いることにより、より正確な電波伝播遅延時間の導出が可能になるため、移動局のより正確な位置推定、位置測位が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】基地局RTT及び移動局RTTを説明する模式図である。
【図2】RTT測定結果の報告プロセスを示す状態図である。
【図3】従来技術にかかる無線制御局に格納された基地局RTT,移動局RTTの概念図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるRTT測定結果の報告プロセスを示す状態図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる無線制御局に格納された基地局RTT,移動局RTTの概念図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる、無線制御局におけるタイマの制御フローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態にかかる、無線制御局における基地局RTT測定結果受信の制御フローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態にかかる、無線制御局における移動局RTT測定結果受信の制御フローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの移動局と、少なくとも1つの無線基地局とを備えた移動通信システムに含まれ、前記移動局と前記無線基地局との間の通信を制御し、
前記無線基地局から前記移動局に下り信号を送信し前記移動局から上り信号を受信するまでの時間である基地局送受信時間差を前記基地局にて測定した値である基地局RTT(Round Trip Time)と、前記移動局が前記基地局から下り信号を受信し前記基地局へ上り信号を送信するまでの移動局送受信時間差を前記移動局にて測定した値である移動局RTTとを組み合わせ、
前記組み合わせの差分を用いることにより前記無線基地局と前記移動局の間の電波伝播時間を算出し、
前記算出した電波伝播時間から前記無線基地局と前記移動局との間の距離を算出する無線制御局であって、
前記移動局は、
前記無線制御局から移動局RTT測定結果報告の指示を、報告の回数及び報告周期と共に受けると、移動局RTTを測定し、測定した移動局RTTを前記移動局RTT測定結果報告指示に従って前記無線制御局に報告し、
前記無線基地局は、
前記無線制御局から基地局RTT測定結果報告の指示を、報告の回数及び報告周期と共に受けると、基地局RTTを測定し、測定した基地局RTTを前記基地局RTT測定結果報告指示に従って前記無線制御局に報告し、
前記無線制御局は、
前記無線基地局から報告された基地局RTT測定結果を、該基地局RTT測定結果報告の報告周期の回数を示す番号と対応付けて格納し、
前記移動局から報告された移動局RTT測定結果を、番号と対応付けて格納し、
基地局RTT測定結果と移動局RTT測定結果とを組み合わせる際に、前記報告周期の回数を示す番号に対応する基地局RTT測定結果及び移動局RTT測定結果を組み合わせる
ことを特徴とする、移動通信システムの無線制御局。
【請求項2】
前記無線基地局に基地局RTT測定結果報告の指示を、前記移動局に移動局RTT測定結果報告の指示を、ほぼ同時に送信し、
前記基地局RTT測定結果報告の指示及び前記移動局RTT測定結果報告の指示は、同じ報告回数と同じ報告周期とを有することを特徴とする請求項1記載の無線制御局。
【請求項3】
前記報告周期を計る報告タイマを起動する前に、前記報告周期よりも短い予備周期を計る予備タイマを起動し、前記予備タイマが満了後に前記報告タイマを起動し、前記報告タイマ起動を、前記基地局RTT測定結果報告指示の前記報告回数だけ繰り返し、前記報告タイマの起動の順に番号を付与し、
前記報告周期の回数を示す番号とは、前記報告タイマの起動の順に付与された番号であることを特徴とした請求項1または2に記載の無線制御局。
【請求項4】
前記無線制御局が前記移動局から報告された移動局RTT測定結果に対応付ける番号は、前記移動局RTT測定結果報告の受信の順に付与されることを特徴とした請求項1乃至3のいずれかに記載の無線制御局。
【請求項5】
前記無線制御局が前記移動局RTT測定結果報告の指示を送信した後に前記移動局から受信した移動局RTT測定結果報告に、受信の順に番号を付与し、
前記基地局RTT測定結果に対応付けられた前記報告周期の回数を示す番号と、前記移動局RTT測定結果に付与された前記受信の順の番号とが対応するように、前記基地局RTT測定結果及び前記移動局RTT測定結果を格納することを特徴とする請求項3に記載の無線制御局。
【請求項6】
少なくとも1つの移動局と、少なくとも1つの無線基地局と、前記移動局と前記無線基地局との間の通信を制御する無線制御局とを備えた移動通信システムであって、
前記無線制御局は、
前記無線基地局から前記移動局に下り信号を送信し前記移動局から上り信号を受信するまでの時間である基地局送受信時間差を前記基地局にて測定した値である基地局RTT(Round Trip Time)と、前記移動局が前記基地局から下り信号を受信し前記基地局へ上り信号を送信するまでの移動局送受信時間差を前記移動局にて測定した値である移動局RTTとを組み合わせ、
前記組み合わせの差分を用いることにより前記無線基地局と前記移動局の間の電波伝播時間を算出し、
前記算出した電波伝播時間から前記無線基地局と前記移動局との間の距離を算出し、
前記移動局は、
前記無線制御局から移動局RTT測定結果報告の指示を、報告の回数及び報告周期と共に受けると、移動局RTTを測定し、測定した移動局RTTを前記移動局RTT測定結果報告指示に従って前記無線制御局に報告し、
前記無線基地局は、
前記無線制御局から基地局RTT測定結果報告の指示を、報告の回数及び報告周期と共に受けると、基地局RTTを測定し、測定した基地局RTTを前記基地局RTT測定結果報告指示に従って前記無線制御局に報告し、
前記無線制御局は、
前記無線基地局から報告された基地局RTT測定結果を、該基地局RTT測定結果報告の報告周期の回数を示す番号と対応付けて格納し、
前記移動局から報告された移動局RTT測定結果を、番号と対応付けて格納し、
基地局RTT測定結果と移動局RTT測定結果とを組み合わせる際に、前記報告周期の回数を示す番号に対応する基地局RTT測定結果及び移動局RTT測定結果を組み合わせる
ことを特徴とする、移動通信システム。
【請求項7】
前記無線制御局は、前記無線基地局に基地局RTT測定結果報告の指示を、前記移動局に移動局RTT測定結果報告の指示を、ほぼ同時に送信し、
前記基地局RTT測定結果報告の指示及び前記移動局RTT測定結果報告の指示は、同一の報告回数と同一の報告周期とを有することを特徴とする請求項6記載の移動通信システム。
【請求項8】
前記無線制御局は、
前記報告周期を計る報告タイマを起動する前に、前記報告周期よりも短い予備周期を計る予備タイマを起動し、
前記予備タイマが満了後に前記報告タイマを起動し、
前記報告タイマ起動を、前記基地局RTT測定結果報告指示の前記報告回数だけ繰り返し、前記報告タイマの起動の順に番号を付与し、
前記報告周期の回数を示す番号とは、前記報告タイマの起動の順に付与された番号であることを特徴とする請求項6または7に記載の移動通信システム。
【請求項9】
前記無線制御局が前記移動局から報告された移動局RTT測定結果に対応付ける番号は、前記移動局RTT測定結果報告の受信の順に付与されることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の移動通信システム。
【請求項10】
前記無線制御局は、
前記無線制御局が前記移動局RTT測定結果報告の指示を送信した後に前記移動局から受信した移動局RTT測定結果報告に、受信の順に番号を付与し、
前記基地局RTT測定結果に対応付けられた前記報告周期の回数を示す番号と、前記移動局RTT測定結果に付与された前記受信の順の番号とが対応するように、前記基地局RTT測定結果及び前記移動局RTT測定結果を格納することを特徴とする請求項8に記載の移動通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−177539(P2009−177539A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14291(P2008−14291)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】