説明

低カロリーの脂肪代替物

本発明は概して、食品及び飲料の分野に関する。本発明は特に、脂肪風味を模倣しつつカロリーがより低い調製物に関する。本発明の一実施形態は、食品に脂肪風味を付与するための、少なくとも1種の非脂肪GPR40アゴニストの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は概して、食品及び飲料の分野に関する。本発明は特に、脂肪風味を模倣しつつカロリーがより低い調製物に関する。本発明の一実施形態は、食品に脂肪風味を付与するための、少なくとも1種の非脂肪GPR40アゴニストの使用に関する。
【0002】
脂肪化合物の大量摂取は、代謝障害、肥満、さらには癌の発症リスク増大をもたらす可能性がある。
【0003】
飽和脂肪の摂取は、例えば冠動脈性心疾患を起こし得る血中コレステロール値上昇をもたらす可能性がある。
【0004】
このため、1995年の食生活指針(米農務省及び米厚生省、1995年)では、総脂肪摂取量を、1日当たりのエネルギー摂取量の30%以下に抑えることを推奨している。飽和脂肪は、1日当たりのエネルギー摂取量の10%を超えるべきでないとしている。
【0005】
適当な量で摂取すれば、脂肪は有益な生理的特性を有する。さらに、脂肪は、香味、口当たり及び芳香などの、食品に不可欠な官能的効果に寄与し、食品摂取時に得られる満腹感を増進する。
【0006】
消費者世論調査は、アメリカ人成人のうち56%が脂肪摂取量を減らそうと試みていることを示しているが、この願望は、人の食事中の脂肪の低減が食品摂取時の楽しみの低減につながらないのであれば、首尾よく達成される可能性が高い。
【0007】
脂肪代替物を配合した食品は、脂肪分を単に空気又は水で代替させて製造した食品組成物よりも楽しめる代替品である。
【0008】
こうした脂肪代替物は、従来の油脂に化学的に類似していることがあり、類似の口当たりや食感をもたらすことにより、食品中の脂肪に代替できる高分子であることが多い。
【0009】
今日知られている典型的な脂肪代替物を下記表1に示す。
【表1】

【0010】
脂肪化合物に化学的に類似した化合物は通常、代替される脂肪の量に相当する量(重量比約1:1)で使用しなければならないという欠点がある。
【0011】
脂肪の粘性と食感を模倣している非脂肪化合物(例えばシンプレッセ(Simplesse))は脂肪風味を欠いていることが多い。
【0012】
より強力な化合物を得ることが望ましいであろう。
【0013】
また、従来の脂肪代替物よりもカロリー値の低い脂肪代替物を利用できるようにすることが望ましいであろう。
【0014】
さらに、脂肪に化学的に類似していない脂肪代替物を利用できるようにすることが望ましいであろう。脂肪に化学的に類似した化合物は脂肪と同様にしか扱えないことが多い。脂肪と化学的性質が異なる脂肪代替物は、脂肪風味を有する組成物の製造及び取扱いにおいて新たな可能性をもたらすかもしれない。
【0015】
さらに、脂肪とは化学的に異なるが脂肪風味を模倣した脂肪代替物を利用できるようにすることが望ましいであろう。
【0016】
このように、本発明は、別の脂肪代替物を提供することを目的としていた。好都合なことに、そのような別の脂肪代替物は、現在の脂肪代替物の欠点を克服すること及び/又は上記目的の少なくとも1つを達成することによって現在の技術水準を改善する。
【0017】
本発明者らは、独立請求項の発明によりこの目的を達成している。従属請求項は、本発明をさらに展開している。
【0018】
本発明は、改善された脂肪代替物を提供する。
【0019】
脂肪の感覚を模倣し、カロリーを低減した調製品は、体重管理を助けるのに非常に有用である。従来、口腔による脂肪の知覚は主に食感及び匂いに依存するものと考えられていたが、最近の知見では、味も長鎖脂肪酸の感知において役割を果たしている可能性があることが示唆されている。
【0020】
膵臓で発現することがまず判明したGタンパク質共役受容体GPR40は、中鎖及び長鎖脂肪酸によって活性化される。
【0021】
本発明者らは、GRP40がヒト及び齧歯動物の味蕾でも発現することを発見した。
【0022】
膵臓における中鎖及び長鎖脂肪酸によるGPR40の活性化が味覚を生じさせ得ないのは確実であるが、味蕾におけるGPR40の活性化は味覚に効果を及ぼす可能性がある。
【0023】
本発明者らはこのことをさらに研究し、GRP40をノックアウトしたマウスが、中鎖及び長鎖脂肪酸への選好の低下及びいくつかの脂肪酸に対する味覚神経反応の低下を示すことを見出した。
【0024】
こうした結果は、味蕾で発現するGPR40が脂肪風味の受容体であることを示す。
【0025】
天然のGRP40アゴニストは中鎖及び長鎖脂肪酸である。
【0026】
本発明者らは、非脂肪酸GPR40アゴニスト(例えば、ロシグリタゾン、メジカ16)の使用によって脂肪風味が非脂肪化合物から生成できることを示した。
【0027】
したがって、本発明の脂肪代替物は、特に脂肪(例えば飽和脂肪)の風味を模倣することを可能にする。
【0028】
こうした脂肪代替物は、脂肪化合物の食感及び匂いを主として模倣する公知の脂肪代替物又はそれらの組合せ(例えば表1に挙げたもの)と組み合わせることにより、食品に脂肪風味を付与し、その結果、脂肪の感覚をより正確に模倣することができる。
【0029】
脂肪風味を有する本発明の脂肪代替物を食品に使用することは、消費者が好む低脂肪又は無脂肪の製品をもたらすことになろう。
【0030】
本発明は、GPR40を活性化する分子(アゴニスト)であって、ヒトが脂肪風味を感じる分子について記載する。本発明はすなわち、食品に脂肪風味を付与するための、少なくとも1種の非脂肪酸GPR40アゴニストの使用に関する。
【0031】
本発明の使用は、非医薬用途への使用であってもよい。
【0032】
非脂肪酸GPR40アゴニストは、全ての食品において脂肪風味を支えるために使用してもよいが、脂肪代替物として使用するのが好ましい。
【0033】
脂肪の食感と匂いを模倣し、通常は脂肪と同様の量で使用しなければならず、脂肪化合物と同様に取り扱わなければならない従来の脂肪代替物とは異なり、本発明の脂肪代替物は脂肪風味を生成し、代替される脂肪に対して異なる重量で使用することができる。本発明の脂肪代替物は、代替される脂肪とは化学的に非常に異なる化合物であることから、通常の脂肪とは異なる取扱いをすることができる。食品の製造工程では、これが有利になる場合がある。例えば、より高い温度が適用可能な場合がある。
【0034】
脂肪代替物は、消費者向け商品において脂肪を代替するのに単独で使用してもよいし、他の脂肪代替物と組み合わせて使用してもよい。
【0035】
脂肪代替物は、完全又は部分的に脂肪を代替するのに使用できる。
【0036】
したがって、非脂肪酸GPR40アゴニストは、食品の天然脂質分に対して、重量比100:1〜1:1000000、好ましくは50:1〜1:5000、例えば10:1〜1:100で使用できる。
【0037】
GPR40受容体が本発明の脂肪代替物により完全に飽和されていない限り、任意の量の非脂肪酸GPR40アゴニストが用量依存的に脂肪風味を生成することになる。
【0038】
本発明において、約1mmolの非脂肪酸GPR40アゴニストは1mmolの脂肪酸とほぼ同じだけの脂肪風味を生成するものであってもよい。
【0039】
すなわち、非脂肪酸GPR40アゴニストは、代替される脂質の量(単位はmol)にほぼ相当する量(単位はmol)で使用できる。
【0040】
非脂肪酸GPR40アゴニストの効力に応じて、約1mmolの非脂肪酸GPR40アゴニストは1mmolの脂肪酸よりはるかに多くの脂肪風味を生成するものであってもよく、例えば、少なくとも5mmolの脂肪酸、例えば少なくとも10mmolの脂肪酸の脂肪風味を生成するために1mmolの非脂肪酸GPR40アゴニストを使用できる。
【0041】
したがって、非脂肪酸GPR40アゴニストは、代替される脂質に対して、モル比で約10:1〜1:10、好ましくは約5:1〜1:5、例えば約2:1〜1:2で使用できる。
【0042】
非脂肪酸GPR40アゴニストは当業者には周知である。典型的なGPR40アゴニストは、例えば2008年5月13日に印刷版に先立ち電子版で刊行されたTan et al.,Selective Small−Molecule Agonists of G protein−coupled Receptor 40 Promote Glucose−Dependent Insulin Secretion and Reduce Blood Glucose in Mice,Diabetes,2008に記載されている。さらなる周知の非脂肪酸GPR40アゴニストを、対応する参考文献と共に図1(図1−1、図1−2、図1−3)に提示する。
【0043】
これらの参考文献の内容は本願の一部とみなす。
【0044】
したがって、本発明において、非脂肪酸GPR40アゴニストは、例えば、ロシグリタゾン、メジカ16、立体配座が制限された3−(4−ヒドロキシフェニル)置換プロパン酸、アミノフェニルシクロプロピルカルボン酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)プロパン酸誘導体、カルボキシル基又は複素環に縮合したフェニル環を含有する二環式化合物、チアゾリジンジオン(TZD)、フェナム酸、アリールプロピオン酸誘導体、GW9508、GW1100、3−(4−{[N−アルキル]アミノ}フェニル)プロパン酸誘導体、3−アリール−3−(4−フェノキシ)プロピオン酸誘導体、ジアシルフロログルシノール誘導体、本明細書に開示の化合物5、本明細書に開示の化合物20、12−メチルトリデカナール又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0045】
非脂肪酸GPR40アゴニストは、食品又は飲料に脂肪風味を添加するために任意の形態で使用できる。
【0046】
非脂肪酸GPR40アゴニストは例えば栄養補助食品として提供できる。
【0047】
本発明はまた、食品を提供する。
【0048】
本発明において「食品」は飲料を含む。
【0049】
少なくとも1種の非脂肪酸GPR40アゴニストで強化された食品は、脂肪分を減らした食品であってもよいが、そうである必要はない。
【0050】
食品は、天然に含有している量よりも多量の非脂肪酸GPR40アゴニストを含有していれば、少なくとも1種の非脂肪酸GPR40アゴニストで強化されている。
【0051】
脂肪風味は通常は心地よいと感知されることから、非脂肪酸GPR40アゴニストは、脂肪風味を強化する目的で通常の食品に添加してもよい。楽しみが加わることでカロリーも加わるという代償を払わずにすむのであれば、消費者にはより魅力的であろう。
【0052】
食品が、脂肪分を減らした食品である場合、天然脂肪分の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%が非脂肪酸GPR40アゴニストで代替される。
【0053】
食品は脂質源を含まなくてもよい。そのような場合、全ての脂質が脂肪代替物により代替されていてもよく、例えば、本発明の非脂肪酸GPR40アゴニストにより完全又は部分的に代替されていてもよい。
【0054】
食品に脂肪風味を添加するという本発明の思想は任意の食品に適用できる。
【0055】
そのような食品は、例えば、栄養調製乳、アイスクリーム、乳製品、クリーマー、ペットフード製品、飲料、機能性食品、食品添加物、菓子類、チョコレート製品、調味料製品、マヨネーズ、スープ、冷凍食品、ケーキ、デザートからなる群から選択される。
【0056】
非脂肪酸GPR40アゴニストを含み、カロリー分を減らした食品は、食品中に脂肪風味がなお存在するため、他の低脂肪食品よりも楽しめる。
【0057】
それゆえ、こうした食品はより定期的に摂取されることになり、消費者に健康上のプラス効果をもたらす。
【0058】
それゆえ、非脂肪酸GPR40アゴニストを含有及び/又はそれで強化した本発明の食品は体重管理のために使用できる。
【0059】
本発明の食品は、過体重及び/又は肥満の治療又は予防のためにも使用できる。
【0060】
「過体重」は、成人については、25〜30のBMIを有することと定義する。
【0061】
「ボディーマスインデックス」又は「BMI」は、体重(kg)を身長(m)の2乗で除して得られる比を意味する。
【0062】
「肥満」とは、動物(特に、ヒトやその他の哺乳動物)の脂肪組織に貯蔵されるエネルギーの量が、ある種の健康状態又は死亡率上昇がもたらされる程度にまで増加した状態である。「肥満」は、成人については、30より大きいBMIを有することと定義する。
【0063】
過去数十年の間に、肥満の罹患率は世界中で流行病の割合にまで増加した。世界で約10億人が過体重又は肥満の状態にあり、死亡率、罹病率及び経済的コストを増加させている。肥満は、エネルギー摂取量がエネルギー消費量よりも高く、余剰エネルギーが主に脂肪として脂肪組織に貯蔵されると起こる。エネルギー摂取量又はバイオアベイラビリティを減少させること、エネルギー消費量を増やすこと、及び/又は脂肪としての貯蔵を減少させることにより、体重の減少及び体重増加の予防を実現することができる。肥満は、糖尿病、アテローム性動脈硬化、変性疾患、気道疾患及びいくつかの癌を含む多くの慢性疾患を伴うので、健康への深刻な脅威となる。
【0064】
適正な体重及び特に許容可能な重量体脂肪率を確立・維持することは、代謝障害を治療又は予防するための重要なステップであることから、本発明の食品は代謝障害の治療又は予防のために使用できる。
【0065】
典型的な代謝障害としては、糖尿病、高血圧、肝硬変、メタボリックシンドローム及び/又は心臓血管疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本発明の食品はそれゆえ、特に先進国において、今日の人々の健康に大きく貢献し得る。
【0067】
本発明者らは、GPR40受容体のアゴニストによる調節が脂肪風味の感知をもたらすことを示している。
【0068】
したがって、GPR40受容体のアゴニストによる調節は、脂肪風味を有するさらなる化合物を同定するために使用できる。
【0069】
これは例えばバイオアッセイにより行うことができる。このために使用できる典型的なバイオアッセイは当業者には周知であり、例えば、細胞ベースのカルシウム又は蛍光イメージングが挙げられる。
【0070】
本発明はそれゆえ、脂肪風味の化合物を同定するためのGPR40受容体の使用へと広がる。
【0071】
例えば、本発明は、脂肪風味のある非脂肪酸化合物を同定するためのGPR40系バイオアッセイの使用に関する。
【0072】
当業者であれば、開示した本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載した本発明のあらゆる特徴を自由に組み合わせ得ることが理解されよう。特に、本発明の使用のために記載した特徴は本発明の食品に適用することができ、逆もまた然りである。
【0073】
本発明のさらなる有利性及び特徴は以下の実施例及び図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1−1】当分野で公知の典型的なGPR40アゴニストを示す。
【図1−2】当分野で公知の典型的なGPR40アゴニストを示す。
【図1−3】当分野で公知の典型的なGPR40アゴニストを示す。
【図2】40人の被験者で実施した二者択一強制選択試験で得られた正しい選択の割合を示す。正しい選択は、試験成分を含むサンプルのほうを脂肪風味が強いものとして選択することと定義する。メジカ16及びロシグリタゾンを各々、3種の濃度(10μM、50μM、100μM)で評価した。いずれの化合物も、高い方から2種の濃度で、対照溶液より脂肪風味が強いものとして有意に選択された。
【図3】GPR40アゴニストについての三点比較試験の結果を示す。GPR40アゴニスト(化合物5又は化合物20)を0.5%エタノール水溶液に溶解した。対照サンプルは0.5%エタノール水溶液であった。化合物5については3種の濃度、化合物20については4種の濃度を試験した。21人の被験者にノーズクリップを付けさせ、濃度ごとに、試験化合物を含む1個のカップ及び対照の2個のカップを順不同に与えた。被験者は、変わった風味のサンプルを特定するよう求められた。いずれの化合物においても、試験した最も高い濃度で、有意な数の被験者が、試験化合物を含むサンプルを変わった風味のサンプルとして同定できた。有意水準を点線で示す。p<0.01;**p<0.0001。
【図4】12−メチルトリデカナールがGPR40アゴニストであることが示されている。12−メチルトリデカナールの濃度上昇に対するChem−1細胞(GPR40を安定的に発現)のカルシウム反応が示されている。GPR40発現細胞は明らかな用量反応を示し、一方で野生型細胞は反応していない。
【図5】二者択一強制選択試験の結果を示す。12−メチルトリデカナールが脂肪風味を有することが示されている。12−メチルトリデカナールを0.5%エタノール水溶液に溶解した。対照サンプルは0.5%エタノール水溶液であった。3種の濃度を試験した。39人の被験者にノーズクリップを付けさせ、濃度ごとに、試験化合物を含む1個のカップ及び対照の1個のカップを順不同に与えた。被験者は、いずれのサンプルのほうが脂肪風味が強いかを特定するよう求められた。有意水準を実線で示す。28人の被験者が、100μMの12−メチルトリデカナールを含むサンプルを対照サンプルよりも脂肪風味が強いものとして選択していることから、この香味料はその濃度では有意に脂肪風味を引き起こしている(p<0.0087、多重検定を考慮に入れる)。50μMの12−メチルトリデカナールについてはある傾向が見られる(26人が正しく選択、p<0.05、点線、多重検定を考慮に入れると有意でない)が、使用した最も低い濃度(10μM)では有意な効果は見られない。
【実施例】
【0075】
実施例1:
40人の被験者に2種の溶液(1種はアゴニストを含み、他の1種は水)を与え、いずれのほうが脂肪風味が強いかを尋ねた。ロシグリタゾン及びメジカ16の双方において、50μM又は100μMで、より多数の被験者が、アゴニストを含む溶液のほうが脂肪風味が強いと判定した(図2、p<0.05)。
【0076】
実施例2:
さらなるGRP40アゴニストを試験した。
【0077】
化合物5は、国際公開第2005/086661号に記載のハイスループットスクリーニングにより同定された公知のGPR40アゴニストである。GPR40アゴニストの活性は、上記特許文献に記載されているように、GRP40を異種発現する細胞のこの分子による活性化によって示された。化合物5の化学式は下記の通りである。
【0078】
【化1】

【0079】
化合物20は、Christiansen et al, Journal of Medicinal Chemistry,2008, 51, 7061−7064に記載のハイスループットスクリーニングにより同定された公知のGPR40アゴニストである。GRP40アゴニストの活性は、上記文献に記載されているように、GRP40を異種発現する細胞のこの分子による活性化によって示された。化合物20の化学式は下記の通りである。
【0080】
【化2】

【0081】
12−メチルトリデカナールは、肉の香りとおそらく脂肪風味を有する芳香成分であり、牛肉抽出物中で同定されたものである。
【0082】
結果:
21人の被験者の三点比較試験を用いて、化合物5又は化合物20を含む溶液が、同じ溶媒だがそれらの化合物を含まない溶液と風味が異なるかどうかを判定した。被験者にノーズクリップを付けさせ、順不同に3種のサンプル(1種はアゴニストを含み、2種は対照溶液)を与え、変わった風味のサンプルを特定するよう求めた。最も高い濃度では、参加者21人中18人が化合物5を正しく同定し(p<0.0001)、21人中13人が化合物20を正しく同定した(p<0.01)(図3)。
【0083】
別の実験において、未訓練の被験者にアゴニストの官能的特性を言い表すよう求めた。参加者の大多数が、この分子を、クリーミー、油っぽい、又は口及び唇への被膜感があると言い表した(表2、表3)。
【0084】
【表2】

【0085】
8人の被験者にノーズクリップを付けさせ、GPR40アゴニストを含む0.5%エタノール水溶液を与え、それらについて言い表すよう求めた。化合物5及び化合物20のクリーミーさ、口及び唇への被膜感について、参加者の大半で一致を得た。
【0086】
【表3】

【0087】
6人の被験者にノーズクリップを付けさせ、0.5%エタノール水溶液(ウォームアップサンプル)又は51.2μMの化合物20を含む0.5%エタノール溶液(参照サンプル)を与えた。参加者は、快不快の言葉は使わずに、参照サンプルの風味、食感及び後味を言い表すよう求められた。被験者の6人中5人が、食感特性は脂肪の食感と相性がよいと判定した。
【0088】
12−メチルトリデカナールがGPR40アゴニストであるかどうかを判定するために、GPR40を安定的に発現しているChem1細胞にカルシウム感受性の染料を加え、複数種の濃度の12−メチルトリデカナールで刺激し、そのカルシウム反応をフレックスステーション(FlexStation)を用いて測定した。GPR40発現細胞は明らかな用量依存反応を示し、一方で野生型Chem1細胞は反応しなかった(図4)。これらのデータは、12−メチルトリデカナールがGPR40アゴニストであることを示している。
【0089】
二者択一強制選択試験を用いて12−メチルトリデカナールの脂肪風味を試験した。39人の被験者に2個のカップ(1個は12−メチルトリデカナールを含む溶液が入ったもの、他の1個はそれを含まない溶液が入ったもの)を与えた。被験者にノーズクリップを付けさせ、いずれのサンプルのほうが脂肪風味が強いかを尋ねた。最も高い濃度では、有意な数の参加者が、12−メチルトリデカナールを含むサンプルのほうが脂肪風味が強いと判定した(39人中28人の被験者、p<0.01)(図5)。
【0090】
結果:
化合物5、化合物20及び12−メチルトリデカナールの3種のGRP40アゴニストは脂肪の口当たりを付与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品に脂肪風味を付与するための、少なくとも1種の非脂肪酸GPR40アゴニストの使用。
【請求項2】
非脂肪酸GPR40アゴニストは脂肪代替物として使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
非脂肪酸GPR40アゴニストは、食品の天然脂質分に対して、重量比100:1〜1:1000000、好ましくは50:1〜1:5000、例えば10:1〜1:100で使用される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
約1mmolの非脂肪酸GPR40アゴニストが、1mmolの脂肪と同じ脂肪風味をもたらす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
非脂肪酸GPR40アゴニストは、ロシグリタゾン、メジカ16、立体配座が制限された3−(4−ヒドロキシフェニル)置換プロパン酸、アミノフェニルシクロプロピルカルボン酸、3−(4−ベンジルオキシフェニル)プロパン酸誘導体、カルボキシル基又は複素環に縮合したフェニル環を含有する二環式化合物、チアゾリジンジオン(TZD)、フェナム酸、アリールプロピオン酸誘導体、GW9508、GW1100、3−(4−{[N−アルキル]アミノ}フェニル)プロパン酸誘導体、3−アリール−3−(4−フェノキシ)プロピオン酸誘導体、ジアシルフロログルシノール誘導体又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
少なくとも1種の非脂肪酸GPR40アゴニストで強化された食品。
【請求項7】
脂肪分を減少させた、請求項6に記載の食品。
【請求項8】
天然脂肪分の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%が、非脂肪酸GPR40アゴニストにより代替されている、請求項6又は7に記載の食品。
【請求項9】
脂質源を含まない、請求項6〜8のいずれか一項に記載の食品。
【請求項10】
栄養調製乳、アイスクリーム、乳製品、クリーマー、ペットフード製品、飲料、機能性食品、食品添加物、菓子類、チョコレート製品、調味料製品、マヨネーズ、スープ、冷凍食品、ケーキ、デザートからなる群から選択される、請求項6〜9のいずれか一項に記載の食品。
【請求項11】
体重管理のために使用される、請求項6〜10のいずれか一項に記載の食品。
【請求項12】
過体重及び/又は肥満の治療又は予防のために使用される、請求項6〜10のいずれか一項に記載の食品。
【請求項13】
代謝障害の治療又は予防のために使用される、請求項6〜10のいずれか一項に記載の食品。
【請求項14】
脂肪風味のある非脂肪酸化合物を同定するための、GPR40系バイオアッセイの使用。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図1−3】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−512682(P2013−512682A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542489(P2012−542489)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068960
【国際公開番号】WO2011/069958
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】