説明

低温液化ガス貯槽

【課題】外槽を軽量で搬送状態でコンパクトに構成できるようにして低温液化ガス貯槽を安価に組み立てる。
【解決手段】低温液化ガス貯槽を、低温液化ガスを貯留する円筒状の内槽1と、断熱層2を備えた外槽3とから構成する。内槽1の下部鏡板に一体的に取り付けた支柱に外槽側鏡板を一体的に取り付ける。内槽1の下部鏡板から下方に突出して外槽側鏡板を貫通する状態で、低温液化ガスの給排管を設ける。内槽1を搬送して設置した後に外槽側鏡板に外槽取付部材13を取り付ける。工場で製作した外槽3および断熱材保持部材20を折り畳んだ縮小状態で設置箇所に搬送し、クレーン25により吊り下げ、内槽1の全体を覆うように下降させ、外槽取付部材13に固定保持させる。断熱材保持部材20の内周面と内槽1の外周面とで形成される空間内に断熱材を圧入するとともに、窒素ガスを供給して断熱層2を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場やガス事業者などで使用する液化酸素、液化窒素、液化天然ガスなどの低温液化ガスを貯留するために、工場敷地内やガス事業者の用地などに設置される低温液化ガス貯槽であって、低温液化ガスを貯留する内槽と、断熱層を備えて内槽を覆うように設けた外槽とから構成してある低温液化ガス貯槽に関する。
【背景技術】
【0002】
低温液化ガス貯槽の内槽としては、10kl(キロリットル)程度の小容量のものから1500kl程度あるいはそれ以上の大容量のものがある。
内槽の容量が大きくなると、それ以上に、内槽を覆う外槽の容量も大きくなり、従来では内槽および外槽が鋼製であり、一定容量(例えば、約100kl)を超えるものでは、公道での重量制限や荷幅制限などに起因して搬送できない問題があった。
【0003】
そこで、従来、内槽と外槽上部部材とを分割できるように構成し、内槽と外槽上部部材とを別々に設置箇所に搬送することで重量制限範囲内のものとし、設置箇所において、内槽と外槽上部部材とを接合し、両者間に、断熱材を充填するとともに真空引きした真空断熱層を形成するように構成したものがある。
この従来例によれば、内槽および外槽上部部材それぞれを工場で製作し、それらを設置箇所に搬送して組み立てることができ、現地での組み立て日数を短縮できる利点を有している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3981141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来例の場合、次のような問題があった。
(a)内槽と外槽の重量を合計すると重量制限範囲を超えているが、内槽および外槽の重量が重量制限範囲内の場合
内槽と外槽とを別々に搬送するために搬送コストが高価になる不都合があった。
(b)内槽自体で重量制限範囲や荷幅制限範囲を超えている場合
内槽および外槽が鋼製であるため、内槽の容量が大きくなると外槽の容量も大きくなり、外槽自体でも重量制限範囲や荷幅制限範囲を超え、内槽および外槽のいずれをも現地で組み立てざるを得ない不都合があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、請求項1に係る発明は、外槽を軽量で搬送状態でコンパクトに構成できるようにして低温液化ガス貯槽を安価に組み立てることができるようにすることを目的とし、請求項2に係る発明は、外槽と内槽間での結露を良好に防止できるようにすることを目的とし、請求項3に係る発明は、外槽と内槽との接合を容易にできるようにすることを目的とし、請求項4に係る発明は、断熱材の沈降による断熱性の低下を防止できるようにすることを目的とし、請求項5に係る発明は、長期間でのメンテナンスを安価にできるようにすることを目的とし、請求項6に係る発明は、長期間でのメンテナンスを容易にかつ安価に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、上述のような目的を達成するために、
低温液化ガスを貯留する内槽と、断熱層を備えて前記内槽を覆うように設けた外槽とから成る低温液化ガス貯槽であって、
前記外槽が搬送用の縮小状態と組み立て状態での拡張状態とに変形可能な膜材で構成したものであり、前記膜材と前記内槽の外周面との間の空間内に断熱材を充填して断熱層を形成するとともに前記断熱層内に不活性乾燥ガスを充填してあることを特徴としている。
【0007】
(作用・効果)
請求項1に係る発明の低温液化ガス貯槽の構成によれば、膜材で構成した外槽を縮小状態にして設置箇所に搬送し、設置箇所で拡張状態にして内槽を覆うように配置し、断熱材を充填するとともに不活性乾燥ガスを充填して低温液化ガス貯槽を設置できる。
したがって、外槽を膜材によって軽量でしかも搬送状態でコンパクトにできるから、低温液化ガス貯槽を安価に組み立てることができる。
すなわち、外槽と内槽との合計重量が重量制限範囲内である場合に、外槽の重量が減少した分だけ内槽の搬送可能な重量が増加し、従来よりも大容量の内槽であっても外槽と一緒に搬送することができ、内槽および外槽を工場で製作でき、製作コストおよび搬送コストを安価にでき、更に、現地での組み立て日数を短くでき、全体として、低温液化ガス貯槽の設置コストを安価にできる。
また、内槽の重量が重量制限範囲内の上限に近い重量で、従来の鋼製のものであれば外槽自体の重量が重量制限範囲を超える場合とか、内槽の幅が荷幅制限範囲内の上限(例えば、約3.5m)に近い場合で、外槽自体の幅が荷幅制限範囲を超える場合、従来では、外槽を工場で製作できないために現地で製作せざるを得ず、現地での組み立て日数が長くなっていたのに比べ、請求項1に係る発明の低温液化ガス貯槽によれば、現地での組み立て日数を短くでき、全体として、低温液化ガス貯槽の設置コストを安価にできる。
更には、内槽および外槽それぞれ自体で重量制限範囲を超えたり、荷幅制限範囲を超えたりする場合、従来であれば、内槽および外槽のいずれをも現地で製作して組み立てることになり、現地での組み立て日数が長くなっていた。これに比べ、請求項1に係る発明の低温液化ガス貯槽によれば、外槽を軽量でしかも搬送状態でコンパクトにできるから、大容量の内槽に対する外槽であっても、外槽を工場で製作して設置箇所に搬送することができ、外槽を現地で製作する場合に比べて現地での組み立て日数を短くでき、全体として、大容量の低温液化ガス貯槽の場合でも設置コストを安価にできる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1に記載の低温液化ガス貯槽において、
断熱層内の圧力が大気圧よりも高くなるように不活性乾燥ガスを充填して構成する。
【0009】
(作用・効果)
請求項2に係る発明の低温液化ガス貯槽の構成によれば、断熱層内に外気が侵入することを良好に防止できる。
したがって、外槽と内槽間に侵入した空気に起因して結露が生じることを良好に防止できる。
【0010】
請求項3に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1または請求項2に記載の低温液化ガス貯槽において、
内槽の底部の下方に平板または鏡板を設け、前記平板または鏡板に、前記内槽に連通接続した低温液化ガスの給排管を取り付けるとともに膜材の下端部を取り付けて構成する。
【0011】
(作用・効果)
請求項3に係る発明の低温液化ガス貯槽の構成によれば、外槽を構成する膜材の下端部を内槽の底部の下方に設けた平板または鏡板に取り付けるだけで、外槽を内槽に接合することができる。
したがって、外槽を貫通させて給排管を設けるといったことをせずに済み、外槽と内槽との接合を容易にできる。
【0012】
請求項4に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の低温液化ガス貯槽において、
断熱層を少なくとも鉛直方向に複数の空間に分割し、前記分割空間内それぞれに断熱材を充填する充填部を付設して構成する。
【0013】
(作用・効果)
請求項4に係る発明の低温液化ガス貯槽の構成によれば、複数の分割空間内に断熱材を充填するから、充填された断熱材が自重によって沈降しても、各分割空間の上部で発生する隙間容積が小さく、全体を一連の空間で断熱層を形成した場合に比べ、断熱材の沈降による断熱性の低下を防止できる。
【0014】
請求項5に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4のいずれかに記載の低温液化ガス貯槽において、
外槽を形成する膜材を、耐候性を有する外膜と、前記外膜とは別体で前記外膜の内側に配置された気密性を有する内膜とから構成する。
【0015】
(作用・効果)
外膜は外気に曝されるために、内膜に比べて寿命が短い。一方、内膜は気密性を備えさせるために、内面側にアルミ蒸着を施した膜を使用するなど、外膜に比べて高価である。このように材料的に異なる外膜と内膜とを一体的にしている場合、外膜の劣化に伴って高価な内膜も交換することになってしまう。
請求項5に係る発明の低温液化ガス貯槽の構成によれば、耐候性を有する外膜と気密性を有する内膜とを別体で構成するから、外膜と内膜それぞれを個別に交換することができ、外膜と内膜それぞれを個別の寿命に合わせて交換でき、長期間でのメンテナンスを安価にできる。
【0016】
請求項6に係る発明は、前述のような目的を達成するために、
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5のいずれかに記載の低温液化ガス貯槽において、
外槽の内側に、前記外槽とは別体で、内槽の外周面とで形成される空間に断熱材を保持する断熱材保持部材を設けて構成する。
【0017】
(作用・効果)
請求項6に係る発明の低温液化ガス貯槽の構成によれば、断熱材保持部材により断熱材を保持させた状態で外槽を交換することができる。
したがって、外槽の交換に際して、断熱材を除去したり、また、外槽の交換後に断熱材を充填するといった作業が不要になり、長期間でのメンテナンスを容易にかつ安価に行える。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、請求項1に係る発明の低温液化ガス貯槽の構成によれば、膜材で構成した外槽を縮小状態にして設置箇所に搬送し、設置箇所で拡張状態にして内槽を覆うように配置し、断熱材を充填するとともに不活性乾燥ガスを充填して低温液化ガス貯槽を設置できる。
したがって、外槽を膜材によって軽量でしかも搬送状態でコンパクトにできるから、低温液化ガス貯槽を安価に組み立てることができる。
すなわち、外槽と内槽との合計重量が重量制限範囲内である場合に、外槽の重量が減少した分だけ内槽の搬送可能な重量が増加し、従来よりも大容量の内槽であっても外槽と一緒に搬送することができ、内槽および外槽を工場で製作でき、製作コストおよび搬送コストを安価にでき、更に、現地での組み立て日数を短くでき、全体として、低温液化ガス貯槽の設置コストを安価にできる。
また、内槽の重量が重量制限範囲内の上限に近い重量で、従来の鋼製のものであれば外槽自体の重量が重量制限範囲を超える場合とか、内槽の幅が荷幅制限範囲内の上限(例えば、約3.5m)に近い場合で、外槽自体の幅が荷幅制限範囲を超える場合、従来では、外槽を工場で製作できないために現地で製作せざるを得ず、現地での組み立て日数が長くなっていたのに比べ、請求項1に係る発明の低温液化ガス貯槽によれば、現地での組み立て日数を短くでき、全体として、低温液化ガス貯槽の設置コストを安価にできる。
更には、内槽および外槽それぞれ自体で重量制限範囲を超えたり、荷幅制限範囲を超えたりする場合、従来であれば、内槽および外槽のいずれをも現地で製作して組み立てることになり、現地での組み立て日数が長くなっていた。これに比べ、請求項1に係る発明の低温液化ガス貯槽によれば、外槽を軽量でしかも搬送状態でコンパクトにできるから、大容量の内槽に対する外槽であっても、外槽を工場で製作して設置箇所に搬送することができ、外槽を現地で製作する場合に比べて現地での組み立て日数を短くでき、全体として、大容量の低温液化ガス貯槽の場合でも設置コストを安価にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明に係る低温液化ガス貯槽の実施例1を示す全体概略縦断面図であり、低温液化ガス貯槽が、低温液化ガスを貯留する円筒状の内槽1と、断熱層2を備えて内槽1を覆うように設けた外槽3とから構成されている。
内槽1の上端側に上部鏡板4が設けられ、一方、下端側に下部鏡板5が設けられている。上部鏡板4には外槽支持部材6が一体的に取り付けられている。下部鏡板5には支柱7が一体的に取り付けられるとともに、下部鏡板5の下方で、支柱7に外槽側鏡板8が一体的に取り付けられている。
【0021】
また、内槽1内に、その内周面に沿って、上端側から下端部にわたるとともに下部鏡板5から下方に突出して外槽側鏡板8を貫通する状態でボイルオフガスを排出するガス排出管9が設けられている。更に、タンクローリーからの低温液化ガスを充填供給する際に、内槽1内を早期に冷却するために、内槽1の上部から低温液化ガスを散布供給する第1の液供給管10が設けられている。
ガス供給管9および第1の供給管10それぞれは、内槽1の下部鏡板5から下方に突出して外槽側鏡板8を貫通する状態で設けられている。
【0022】
内槽1の下部鏡板5から下方に突出して外槽側鏡板8を貫通する状態で、タンクローリーから内槽1の下部に低温液化ガスを充填供給する第2の液供給管11と、内槽1から消費設備に払い出す第3の液供給管12とが設けられている。上述のガス排出管9、第1、第2および第3の液供給管10,11,12をして低温液化ガスの給排管と称する。なお、第1、第2および第3の液供給管10,11,12には、適宜所定の配管が接続される。
【0023】
図2の要部の一部省略拡大断面図に示すように、外槽側鏡板8の外周縁に、シールリング(図示せず)を介装する状態でボルトとナットとにより、外槽取付部材13が一体的に取り付けられている。この外槽取付部材13は、図3の図2の一部省略平面図に示すように、半円状部材13a,13bどうしをボルトとナットとにより一体的に接合して構成されている。外槽取付部材13をも含めて外槽側鏡板8と称する。本発明としては、外槽側鏡板8に代えて平板を設けるものでも良い。
【0024】
外槽取付部材13の所定箇所に、供給管14が貫通して取り付けられている。この供給管14は、パーライトなどの粉状または顆粒状の断熱材を充填供給するために使用できるようになっている。また、断熱材の充填後には、図1に示すように、不活性乾燥ガスとしての窒素ガスを液化した液体窒素を充填した液体窒素ガスボンベ15がガス供給管16を介して供給管14に接続され、断熱層2内に窒素ガスを充填供給するとともに、その断熱層2内の圧力が大気圧よりも高くなる状態に維持できるようになっている。
【0025】
図4の(a)の要部(低温液化ガス貯槽の上部)の拡大断面図、および、図4の(b)の要部の平面図〔図4の(a)のA−A線矢視断面図〕に示すように、外槽3が、搬送用の縮小状態と組み立て状態での拡張状態とに変形可能で軽量の膜材で構成され、その膜材が、外膜17と、内膜18とから構成され、更に、内膜18の内方に、断熱材19を保持する断熱材保持部材20が設けられている。
【0026】
外膜17は、耐候性および強度を有するように、ポリエステル繊維製の膜材などで製作されている。内膜18は、気密性を有するように、エチレンビニルアルコール共重合樹脂製フィルムの内周面にアルミ膜を蒸着した膜材などで製作されている。断熱材保持部材20は、内槽1の温度変化による膨張収縮率以上の弾性を有するとともに、断熱材19の粒径よりも小さい通気孔を有する材料で製作されている。組み立て状態で、内膜18と断熱材保持部材20との間に、断熱材保持部材20の膨張収縮を許容する隙間が形成されるように構成され、内槽1の膨張収縮に対応して断熱材保持部材20が膨張収縮し、内槽1の外周面と断熱材保持部材20とで形成される空間容積が変化することを抑制し、内槽1の膨張収縮に起因する断熱材19の沈降を防止するとともに、内膜18に断熱材保持部材20から大きな圧力がかからないように配慮されている。
【0027】
外膜17の上部中央箇所に開口が形成され、その開口周縁部が一対の第1の環状保持部材21に挟持されるとともに、周方向複数箇所でビスB止めにより保持されている。また、内膜18の上部中央箇所に開口が形成され、その開口周縁部が一対の第2の環状保持部材22に挟持されるとともに、外膜17の場合と同様に周方向複数箇所でビス止めにより保持されている。また、断熱材保持部材20の上部中央箇所に開口が形成され、その開口周縁部が一対の第3の環状保持部材23に挟持されるとともに、外膜17の場合と同様に周方向複数箇所でビス止めにより保持されている。
【0028】
第3の環状保持部材23の上面の周方向に、所定間隔を隔てて上方に突出する状態でスタッドボルト24が溶接されている。第1および第2の環状保持部材21,22それぞれに、スタッドボルト24を挿通するボルト挿通孔が形成され、第1および第2の環状保持部材21,22それぞれが第3の環状保持部材23にスタッドボルト24により連結分離可能に一体連結されている。第1、第2および第3の環状保持部材21,22,23それぞれの外面側の複数箇所にクレーン25(図6参照)の玉掛けワイヤー26(図6参照)を引っ掛ける係止部材27が設けられている。
【0029】
スタッドボルト24に第1および第2の環状保持部材21,22それぞれを挿通した状態で、環状のシール部材28を介装した状態で蓋体29が挿通され、その状態でスタッドボルト24にナット30が螺合されている。
この構成により、外膜17、内膜18および断熱材保持部材20のすべてをクレーンにより持ち上げることができるようになっている。また、外膜17、内膜18および断熱材保持部材20それぞれを分離できることで、外膜17および内膜18それぞれを個別に交換できるようになっている。
図示しないが、蓋体29に開閉カバーが付設され、この開閉カバーにバネが設けられ、自然状態ではバネの付勢力により閉じ状態に維持されながら、断熱材19を充填供給する際にはバネの付勢力に抗して開閉カバーを開き、断熱材供給管を挿入可能に構成されている。これにより、断熱材19が自重などによって沈降したときに上部から補充供給できるようになっている。
【0030】
外膜17、内膜18および断熱材保持部材20の下端側は、図5の(a)の要部の拡大断面図に示すように、環状のロープ31を介して折り返され、その折返した二重部分が、図5の(b)の要部の概略平面図(ここでは部材の厚みを誇張して示している)に示すように、二つ割りの押圧リング32をボルト止めで締め付けることにより、外槽支持部材13に圧接してシールする状態で固定保持されている。
【0031】
次に、上記構成による低温液化ガス貯槽の組み立てにつき、図6の組み立て手順の説明に供する図を用いて説明する。
先ず、内槽1を現地で立設する。容量が150klまでの内槽1であれば、その直径が3m50cm以内で公道での運搬が可能であり、内槽1を工場で製作し、設置箇所まで搬送して設置し、内槽1の上部鏡板4に近い位置に、ステー33を介して環状ガイド34を取り付けるとともに、外槽側鏡板8に外槽支持部材13を取り付ける。公道での運搬が不可能な容量の内槽1は、現地で製作して組み立てることになる。
【0032】
また、外槽3(外膜17および内膜18)および断熱材保持部材20それぞれを工場で製作するとともに、それらを一体連結して折り畳んだ縮小状態(公道での運搬が可能な荷幅内の状態)で設置箇所に搬送し、クレーン25のフック35に玉掛けワイヤー26を介して吊り下げる[図6の(a)]。
【0033】
次いで、外槽3および断熱材保持部材20の下端側を拡げるように吊り上げ、設置された内槽1の上方に移送し、断熱材保持部材20の内周面を環状ガイド34に接触させながら下降する[図6の(b)](この図6の(b)では、説明上外槽3および断熱材保持部材20の鉛直方向長さが短い状態で示されている)。
外槽3および断熱材保持部材20を、内槽1の全体を覆うように下降させた後、外槽3(外膜17および内膜18)および断熱材保持部材20それぞれの下端縁を、前述したようにシール状態で外槽支持部材13に固定保持する[図6の(c)]。
【0034】
しかる後、供給管14に断熱材充填用ホース(図示せず)を接続し、断熱材保持部材20の内周面と内槽1の外周面とで形成される空間内に断熱材19を圧入により充填供給する。その後、供給管14に、液体窒素ガスボンベ16に接続されたガス供給管15を接続し、不活性乾燥ガスとしての窒素ガスを、内膜18の内周面と内槽1の外周面とで形成される空間内に供給し、断熱層2を形成する[図6の(d)]。
断熱材19の圧入および窒素ガスの供給に際しては、蓋体29に付設された開閉カバーを強制的に開き、断熱層2内の空気を排出するように構成されている。
【実施例2】
【0035】
図7は、実施例2を示す全体概略縦断面図であり、実施例1と異なるところは次の通りである。
すなわち、断熱材保持部材20の内周面に、設置状態での鉛直方向に所定間隔を隔てて環状の布材51が付設され、内槽1に外嵌した状態で、布材51の内終端縁が内槽1に接し、断熱層2を鉛直方向に複数の空間Sに分割できるように構成されている。実施例1におけるステー33および環状ガイド34は設けない。
【0036】
最上部に近い箇所と、布材51の下面に近接した箇所それぞれに、外膜17、内膜18および断熱材保持部材20を貫通して充填部としての断熱材供給管52が設けられ、分割空間S内それぞれに断熱材を充填供給できるように構成されている。他の構成は実施例1と同じであり、同一図番を伏すことにより、その説明は省略する。
【0037】
この実施例2によれば、断熱材の自重による沈降を抑えるとともに、沈降によって断熱材が存在しない大きな空間が生ずることを抑制し、断熱性能が低下することを防止できる利点を有している。
この実施例2による場合、断熱材供給管52を取り付けるために、外膜17および内膜18それぞれを個別に交換できないが、例えば、外膜17と内膜18とにわたって、断熱材供給管52を挿入離脱可能なガイド筒を、外膜17の外方からのねじ込みや回転操作などによって連結分離可能に設けるとともに、断熱材保持部材20に、断熱材供給管52を抜き差し可能な口部を形成し、外膜17および内膜18それぞれを個別に交換できるように構成しても良い。
【0038】
上記実施例では、断熱材保持部材20を設けることにより、内膜18の交換時に断熱材19が飛散することを防止して交換を容易に行えるように構成しているが、本発明としては、断熱材保持部材20を設けないものでも良い。また、外膜17と内膜18とが一体形成されたものでも良い。
また、外槽3の変形を防止するために、外槽3の鉛直方向に所定間隔を隔ててベルトを巻くようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る低温液化ガス貯槽の実施例1を示す全体概略縦断面図である。
【図2】実施例1の要部の一部省略拡大断面図である。
【図3】図2の一部省略平面図である。
【図4】(a)は要部(低温液化ガス貯槽の上部)の拡大断面図、(b)は図4の(a)のA−A線矢視断面図である。
【図5】(a)は要部の拡大断面図、(b)は要部の概略平面図である。
【図6】組み立て手順の説明に供する図である。
【図7】実施例2を示す全体概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1…内槽
2…断熱層
3…外槽
8…外槽側鏡板
9…ガス排出管(低温液化ガスの給排管)
10…第1の液供給管(低温液化ガスの給排管)
11…第2の液供給管(低温液化ガスの給排管)
12…第3の液供給管(低温液化ガスの給排管)
17…外膜
18…内膜
19…断熱材
20…断熱材保持部材
52…断熱材供給管(充填部)
S…分割空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを貯留する内槽と、断熱層を備えて前記内槽を覆うように設けた外槽とから成る低温液化ガス貯槽であって、
前記外槽が搬送用の縮小状態と組み立て状態での拡張状態とに変形可能な膜材で構成したものであり、前記膜材と前記内槽の外周面との間の空間内に断熱材を充填して断熱層を形成するとともに前記断熱層内に不活性乾燥ガスを充填してあることを特徴とする低温液化ガス貯槽。
【請求項2】
請求項1に記載の低温液化ガス貯槽において、
断熱層内の圧力が大気圧よりも高くなるように不活性乾燥ガスを充填してある低温液化ガス貯槽。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の低温液化ガス貯槽において、
内槽の底部の下方に平板または鏡板を設け、前記平板または鏡板に、前記内槽に連通接続した低温液化ガスの給排管を取り付けるとともに膜材の下端部を取り付けてある低温液化ガス貯槽。
【請求項4】
請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の低温液化ガス貯槽において、
断熱層を少なくとも鉛直方向に複数の空間に分割し、前記分割空間内それぞれに断熱材を充填する充填部を付設してある低温液化ガス貯槽。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4のいずれかに記載の低温液化ガス貯槽において、
外槽を形成する膜材を、耐候性を有する外膜と、前記外膜とは別体で前記外膜の内側に配置された気密性を有する内膜とから構成してある低温液化ガス貯槽。
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5のいずれかに記載の低温液化ガス貯槽において、
外槽の内側に、前記外槽とは別体で、内槽の外周面とで形成される空間に断熱材を保持する断熱材保持部材を設けてある低温液化ガス貯槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−107002(P2010−107002A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281722(P2008−281722)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】