説明

体温測定装置

【課題】特に夜間の就寝時や起床前に負担感なく体温測定・体温管理を行なうことができる耳挿入式の体温測定用装置の提供。
【解決手段】本発明の、耳挿入式の体温測定用装置は、温度測定部を有するICタグを含む外耳道への挿入部材と、測定部により測定された体温情報を読取る読み取り部と、を備えたことを特徴とする。また、所定時間の前記体温データと、予め得られている平常時の体温データとを比較して被検者の状態を判断する判断手段をさらに備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健常人、婦人、高齢者、加療中の患者などの体温データを測定する体温測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザなどで急熱を発した場合、腋下体温計または鼓膜体温計で30〜60分毎に体温を測定し、38℃を超えると解熱剤や座薬などを処方し、解熱するようにしている。しかしながら、夜間において、30〜60分毎に体温を計測することは大きな負担となる。一過性の発熱か継続性がある発熱かを判断するため、熱の上がり始めは乳幼児・小児の場合は、5〜10分毎に測定するのが望ましいが、実際に測定すること自体非常に困難なものである。
【0003】
また、婦人体温の管理(基礎体温の管理)においては、起床前の最も安定(低活性の状態)した時の体温を測定しなければならず、測温部を5分以上も口中の舌下でプローブ部を咥えて測定する必要があり、大きな負担感があった。
【0004】
耳内で、血圧,体温などの生体情報を取得するシステムが提案されているが、信号線、エア配管などを備える必要がある(特許文献1)。このため、夜間、起床前の温度測定が煩わしいという問題があった。また、温度センサと一体化されたICタグにより、軸受の異常検査システムが提案されている(特許文献2)ものの、ペットの体温データを監視するシステムは未だ提案されていない。
【特許文献1】WO2005/034742号パンフレット
【特許文献2】特開2005−32256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特に夜間の就寝時や起床前に負担感なく体温測定・体温管理を行なうことができ、婦人体温計として用いる場合、測温部を5分以上も口中咥えて測定する必要がない、負担感の少ない耳挿入式の体温測定用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の耳挿入式の体温測定用装置は、温度測定部を有するICタグを含む外耳道への挿入部材と、測定部により測定された体温情報を読取る読み取り部からなる。また、所定時間の体温データと、予め得られている平常時の体温データとを比較して被検者の状態を判断する判断手段をさらに備えることを特徴とする。また、判断手段により判断された情報を音声,アラームまたは表示することを特徴とする。また、判断手段により判断された情報を情報通信ネットワークを介して、医療サイトに送信可能とすることを特徴とする。また、本発明のコンピュータで読取り可能な記憶媒体は、被検者の外耳道に挿入された体温測定手段から被検者の体温情報を取得する工程のプログラムを記憶したコンピュータで読取り可能な記憶媒体であって、被検者の外耳道に挿入され、温度測定部を有するICタグの温度情報を読取る工程のプログラムと、ICタグから読取られた体温情報と予め得られている閾値と比較する工程のプログラムと、異常と判断した場合にアラームを発生する工程のプログラムを記憶したものである。また、本発明の被検者の体表面の適所に貼りつけて体温測定する体温測定用装置は、被検者の体表面の適所に貼りつけて体温測定する体温測定用装置であって、温度測定部を有するICタグと、ICタグの該表面を断熱して囲包する囲包部材と、体表面への貼付けるための貼付部材と、測定部により測定された体温情報を読取る読み取り部と、を備えたことを特徴とする。また、所定時間の体温データと、予め得られている平常時の体温データとを比較して被検者の状態を判断する判断手段をさらに備えることを特徴とする。また、判断手段により判断された情報を音声,アラームまたは表示することを特徴とする。また、判断手段により判断された情報を情報通信ネットワークを介して、医療サイトに送信可能とすることを特徴とする。また、本発明のコンピュータで読取り可能な記憶媒体は、被検者の体表面の適所に貼付けられた体温測定手段から前記被検者の体温情報を取得する工程のプログラムを記憶したコンピュータで読取り可能な記憶媒体であって、被検者の体表面の適所に貼付けられた温度測定部を有するICタグの温度情報を読取る工程のプログラムと、ICタグから読取られた体温情報と予め得られている閾値と比較する工程のプログラムと、異常と判断した場合にアラームを発生する工程のプログラムを記憶したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の体温測定装置によれば、特に夜間の就寝時や起床前に負担感なく体温測定・体温管理を行なうことができ、婦人体温計として用いる場合、測温部を5分以上も口中咥えて測定する必要がない、耳挿入式の体温測定用装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の体温測定用装置を実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例を示すプロック図と装着状態を示す図である。なお、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0009】
図1において、1は温度測定部(温度センサ)106を有するICタグ100を備えた耳栓状の外耳道への挿入部材、2はラテックス,合成ゴム,弾性を有する合成樹脂などからなる保持部、3は被検者Pの外耳道、4は被検者Pの外耳、5は被検者Pの耳介である。耳栓状の挿入部材1は、保護カバー(不図示)で液密に形成され、高圧蒸気滅菌やアルコール等の薬剤による滅菌も可能となっている。また、300は、被検者Pの体表面の適所に貼付けるタイプの温度測定部300の断面の概略図である。300aは発泡性断熱部材などで形成され、ICタグ100を囲包部材、300bは貼付け部材である。
【0010】
体温度測定部を有するICタグ1の温度測定部は、保護カバー(不図示)を介して、被検者Pの外耳道と接触している。なお、保持部2は、種々の大きさの中から最適なものを選択できるようにしてもよい。10は、ROM16,RAM17などに記憶されたコンピュータ読み取り可能なプログラム、所定の条件などに基づいて所定の処理フローを実行する制御部(CPU)である。11は表示部、12は外部通信部、13はICタグ(IFID)読取り部、14は入力部、15は記憶部である。外部通信部12は、インターネート,専用LANなどの外部通信ネットワーク(不図示)などを介して体温情報等を送信受信できるようになっている。
【0011】
被験者P(健常人、婦人、老人、乳幼児等)Pは、図1に示すように耳栓状の挿入部材100を外耳道3に挿入して測定する。測定は、就寝中、起床前等いつでも測定可能(間歇測定)である。端末装置50は、制御部(CPU)10、表示部11、外部通信部12、ICタグ読取り部、14は入力部、15は記憶部である。端末装置50は、据置き型に限らず、携帯電話のようなもの、携帯型パーソナルコンピュータ等のようなものであってもよい。端末装置50と管理サイト/医療サイトや会員制のサービスサイト(不図示)とは、外部通信部12、情報通信ネットワーク(不図示)を介して、相互に情報が伝送できるようになっている。
【0012】
また、入力部14は、投薬(処方)情報、婦人が使用する場合にあっては月経などの生理情報も入力可能なっている。ICタグ読み取り部13は、5〜60分毎に間歇的に13.56MHzの電磁波を発生させて、体温情報を読取る。制御部10は取得した体温データの演算処理を行い、被験者Pの状態を監視・判断する。体温データの演算処理には、被験者Pの平常時の生体データとのパターン比較などが含まれる。
【0013】
解析時間(所定時間)は10分間でなく、任意の時間に設定できる。解析時間は1就寝分のデータ解析に都合のよい時間でよく、また、1就寝分でなく、所定の就寝時間内を設定することもできる。システムの規模、解析速度等により最適な条件とする。
【0014】
判断手段は、例えば、被験者Pの健康状態を次のような判断基準に基づき判定する。体温が予め設定していた健康とされる数値範囲内であれば、健康(異常なし)である。但し、婦人の体温の判断は、高温相、低温相の2相があるので別の判断を行う。所定の数値範囲以外にある時は、音声,アラーム,表示などで報知する。
【0015】
<ICタグの構成>
図2において、101は、ICタグ読み取り部13からの信号を受け、ロジック部110を所定のフローで動作させるプログラムが記憶され、コンピュータで読取り可能な記憶媒体であるRAMである。102はEEPROMで、温度センサ106のそれぞれに対応するオフセット値,温度補正値などが記憶されている。また、測定された体温情報、被検者Pの情報等も記憶可能である。なお、ロジック部110は、より複雑な処理フローの制御が可能なCPUとしてもよい。
【0016】
温度センサ106としては、温度変化に対してほぼリニアにアナログ出力し、小型化・ICタグとの一体化が可能で、32〜42℃の間で温度分解能が0.1〜0.05℃である、半導体型の温度センサ、例えばC−MOS温度センサが好ましく用いられるが、サーミスタ型、サーモパイル(熱電対)型でも可能である。なお、婦人用体温計として用いる場合、35〜38℃の間で温度分解能が0.05℃である、半導体型の温度センサ、例えばC−MOS温度センサが好ましく用いられるが、サーミスタ型、サーモパイル(熱電対)型でも可能である。103は、被検者Pに設けられた温度測定部を有するICタグ(RFID)100の体温情報を取得するための送受信回路、103aはアンテナ、104は電源部である。この電源部104は、コイルを有するアンテナ部103aを介して、体温情報を読取られる時に温度測定部を有するICタグ100の各部に電源を供給する。107はA/D変換部であり、温度センサ106と発振回路(不図示)で発生した体温信号をA/D変換するものである。
【0017】
ICタグ100は、アンテナ103aを含めて5mm×5mm、厚さ1.5mm程度の大きさである。なお、ICタグ100は、生体を通過可能な周波数の電磁波での通信(送受信)可能なものであれば、どのような周波数でもよいが、好ましくは13.56MHzの電磁波で送信可能になっている。また、間違った被検者Pの情報を取得しないようにしたり、アンテナ103aから出力される信号を暗号化処理可能にしてセキュリティ機能を持たせることができる。
【0018】
<体温情報取得の処理フロー>
被検者Pの外耳道に挿入部材1が挿入されている状態で、端末装置50の入力部14などで測定開始指示入力を行なうことにより、測定を開始する。体温情報は、入力部14で予めで設定入力された測定間隔の条件、例えば10〜60分毎に、ICタグ100にICタグ読取り部13から13.56MHzの電磁波を送信(送受信距離は、10cm〜1m程度)し、その信号と同期して得られる温度センサ106の体温情報を読取る(ステップS1)。これらの体温情報は、記憶部15に記憶される(ステップS2)。この体温情報は閾値と比較される(ステップS3)。例えば、体温の場合、ディフォルト値として上限値が37.0℃、下限値が35.5℃としている。この上限値、下限値は被検者Pに応じて、設定変更可能としてもよい。体温情報が異常(測定中の異常も含む)と判断されると、アラームを発生させる(ステップS4)。測定終了するとブザー,バイブレータ,光などで報知する(ステップS5)。異常がある場合、リセットする(ステップS6)。測定終了する旨の指示入力を入力部14で行なうと測定終了するが、測定終了の指示入力しない場合は、ステップS1に戻る。異常が無い場合は、ステップS1に戻り、測定終了の指示入力があるまで体温情報の測定を繰り返す。体被検者Pの表面に貼付けるタイプの場合や婦人体温測定のような起床前の単一測定の場合でも、基本的な処理フロー葉上記と同様である。
なお、ステップS3での判断の条件として、所定時間(分)に所定以上の体温上昇率(℃/分)が認められる場合、測定間隔(分)を5〜10分程度に短くして判断するようにしてもよい。
【0019】
記憶部15に記憶された、体温,メモ入力等の情報は、図4に示すように表示部11にトレンド表示される。表示部11では、体温を同時に1時間(60分)毎にトレンド表示しているが、婦人体温の場合は、1日ごとの体温データをメモ入力データと併せて表示するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例に係る温度測定部を有するICタグのブロック図である。本発明の実施例に係るブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係る生体情報の取得処理フローを示す図である。
【図4】本発明の実施例に係る表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・挿入部材、2・・・保持部、3・・・外耳道、4・・・外耳、50・・・端末装置、P・・・被験者、10・・・CPU、11・・・表示部、50・・・端末装置、100・・・ICタグ、101・・・RAM、102・・・EEPROM、103・・・送信受信回路、103a・・・アンテナ、106・・・温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳挿入式の体温測定用装置であって、
温度測定部を有するICタグを含む外耳道への挿入部材と、
前記測定部により測定された体温情報を読取る読み取り部と、を備えたことを特徴とする体温測定装置。
【請求項2】
所定時間の前記体温データと、予め得られている平常時の体温データとを比較して被検者の状態を判断する判断手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の体温測定装置。
【請求項3】
判断手段により判断された情報を音声,アラームまたは表示することを特徴とする請求項1記載の体温測定装置。
【請求項4】
判断手段により判断された情報を情報通信ネットワークを介して、医療サイトに送信可能とすることを特徴とする請求項1記載の体温測定装置。
【請求項5】
被検者の外耳道に挿入された体温測定手段から前記被検者の体温情報を取得する工程のプログラムを記憶したコンピュータで読取り可能な記憶媒体であって、
前記被検者の外耳道に挿入され、温度測定部を有するICタグの温度情報を読取る工程のプログラムと、前記ICタグから読取られた体温情報と予め得られている閾値と比較する工程のプログラムと、異常と判断した場合にアラームを発生する工程のプログラムを記憶したコンピュータで読取り可能な記憶媒体。
【請求項6】
被検者の体表面の適所に貼りつけて体温測定する体温測定用装置であって、
温度測定部を有するICタグと、該ICタグの該表面を断熱して囲包する囲包部材と、該体表面への貼付けるための貼付部材と、
前記測定部により測定された体温情報を読取る読み取り部と、を備えたことを特徴とする体温測定装置。
【請求項7】
所定時間の前記体温データと、予め得られている平常時の体温データとを比較して被検者の状態を判断する判断手段をさらに備えることを特徴とする請求項6記載の体温測定装置。
【請求項8】
判断手段により判断された情報を音声,アラームまたは表示することを特徴とする請求項6記載の体温測定装置。
【請求項9】
判断手段により判断された情報を情報通信ネットワークを介して、医療サイトに送信可能とすることを特徴とする請求項6記載の体温測定装置。
【請求項10】
被検者の体表面の適所に貼付けられた体温測定手段から前記被検者の体温情報を取得する工程のプログラムを記憶したコンピュータで読取り可能な記憶媒体であって、
前記被検者の体表面の適所に貼付けられた温度測定部を有するICタグの温度情報を読取る工程のプログラムと、前記ICタグから読取られた体温情報と予め得られている閾値と比較する工程のプログラムと、異常と判断した場合にアラームを発生する工程のプログラムを記憶したコンピュータで読取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−135866(P2007−135866A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333595(P2005−333595)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】