説明

作動ピンを有したアクチュエータ

【課題】作動前のピストンの前進移動を的確に防止することができて、作動時に、作動ピンを迅速に後退移動可能な作動ピンを有したアクチュエータの提供。
【解決手段】本発明のアクチュエータA1は、作動ピン54を有したピストン45と、スクイブ37と、ピストン45を保持するシリンダケース32と、を備えて、スクイブ37から発生する駆動用ガスGを、シリンダケース32内に噴出させて、ピストン45を、作動ピン54とともに後退移動させる。スクイブ37のガス吐出口側を覆うキャップ部46が、筒状部47と先端壁部52とから構成され、作動ピン54を先端壁部52の中央から突出させている。キャップ部46に、駆動用ガスを噴出させる噴出孔52aが配設される。ピストン45が、先端壁部52をシリンダケース32の天井壁部34に当接させて、作動前における前方移動を規制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動時に、作動ピンを軸方向に沿って引き込むように移動可能なアクチュエータに関し、作動時に瞬時に作動ピンを作動させる必要のある、例えば、車両に搭載されるエアバッグ装置のエアバッグ内の内圧制御やエアバッグの形状制御等に利用できるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータとしては、作動ピンを突出させるようにしてシリンダケース内に保持させたピストンを、ピストンに設けられているスクイブを作動させた際に発生する駆動用ガスを利用して、作動ピンとともにシリンダケース内を後退移動させる構成のものがあった。この従来のアクチュエータでは、シリンダケースは、ピストンの周囲を覆う周壁部と、周壁部の先端側を閉塞するとともに作動ピンを突出させている天井壁部と、を備えており、スクイブは、作動時に、スクイブを覆うように配置されるピストンのキャップ部に形成される噴出孔から、シリンダケースの内部に、駆動用ガスを噴出させることにより、天井壁部から突出している作動ピンを、ピストンとともに後退移動させる構成であった。また、従来のアクチュエータでは、ピストンは、位置決め部材によって、作動前の後退移動を規制された状態で、シリンダケース内に収納されていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許公開2002/0135166号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のアクチュエータでは、ピストンは、作動ピンの先端側となるシリンダケースから露出した位置に配設される位置決め部材によって、作動前の後退移動のみを規制されていることから、作動前に移動しやすく、作動時までピストンの前進移動を確実に規制できるものではなかった。また、従来のアクチュエータでは、ピストンのキャップ部に設けられる噴出孔は、作動ピンの軸直交方向に沿って駆動用ガスを噴出させるように構成されているとともに、作動前の状態において、シリンダケースの天井壁部近傍に位置していることから、作動前にピストンが前進移動した場合、噴出孔が天井壁部側に移動して、天井壁部により塞がれる虞れがあり、作動時に、噴出孔から迅速に駆動用ガスを噴出させて、作動ピンを迅速に後退移動させる点に改善の余地があった。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、作動前のピストンの前進移動を的確に防止することができて、作動時に、作動ピンを迅速に後退移動可能な作動ピンを有したアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る作動ピンを有したアクチュエータは、作動ピンを有したピストンと、作動時に点火されて駆動用ガスを発生可能とされるスクイブと、ピストンを保持するシリンダケースと、を備える構成とされて、
ピストンが、スクイブに連結されるとともに、先端から作動ピンを突出させた構成とされ、
シリンダケースが、ピストンの周囲を覆う略筒状の周壁部と、周壁部の先端側を閉塞するとともに作動ピンを突出可能に構成される天井壁部と、を備えて、
作動時に、スクイブから発生する駆動用ガスを、シリンダケース内に噴出させることにより、ピストンを、作動ピンとともに後退移動させるように構成される作動ピンを有したアクチュエータにおいて、
ピストンが、スクイブのガス吐出口側を覆い可能なキャップ部を備える構成とされ、
キャップ部が、スクイブの軸回り方向側を覆い可能な筒状部と、筒状部の先端側を閉塞するように形成される先端壁部と、から構成されるとともに、先端壁部の外径寸法より小径とした作動ピンを、先端壁部の中央から突出させた構成とされ、
キャップ部における作動ピンの周囲に、ガス吐出口から吐出される駆動用ガスを、シリンダケース内における先端壁部と天井壁部との間に噴出可能な複数の噴出孔が、配設され、
ピストンが、先端壁部をシリンダケースの天井壁部に当接させることにより、作動前における前方側への移動を規制されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の作動ピンを有したアクチュエータでは、ピストンが、先端壁部をシリンダケースの天井壁部に当接させるようにして、シリンダケース内に収納されていることから、作動前におけるピストン及び作動ピンの前進移動を確実に防止することができる。また、本発明の作動ピンを有したアクチュエータでは、作動時に、スクイブのガス吐出口から吐出された駆動用ガスは、キャップ部における作動ピンの周囲に形成された噴出孔から、シリンダケース内における先端壁部と天井壁部との間に、噴出されることとなる。そのため、ピストンの先端壁部が、天井壁部と当接するように配置されていても、噴出孔から、この先端壁部と天井壁部との間に駆動用ガスを噴出させることができて、シリンダケースとピストンとの間に充満された駆動用ガスの圧力を利用して、ピストンを迅速に後退移動させることができる。
【0007】
したがって、本発明の作動ピンを有したアクチュエータでは、作動前のピストンの前進移動を的確に防止することができて、作動時に、作動ピンを迅速に後退移動させることができる。
【0008】
また、本発明の作動ピンを有したアクチュエータにおいて、噴出孔を、先端壁部に形成すれば、スクイブのガス吐出口から吐出された駆動用ガスを、天井壁部側に向かうように、噴出孔から、シリンダケース内に噴出させることができることから、シリンダケースとピストンとの間に充満される駆動用ガスの圧力に加えて、駆動用ガスの噴出時の反力を利用することができ、筒状部に噴出孔を形成する場合と比較して、作動ピンを迅速に後退移動させることができて、好ましい。
【0009】
さらに、上記構成の作動ピンを有したアクチュエータにおいて、噴出孔を、駆動用ガスを作動ピンの軸方向に沿って噴出可能なように構成すれば、スクイブから吐出される駆動用ガスが、作動ピンの軸方向に沿うように、すなわち、天井壁部を作動ピンの軸方向に沿って押圧するように、噴出孔からシリンダケース内に噴出されることから、この駆動用ガスの反力を受けて、ピストンを、天井壁部から離れるように迅速に後退移動させることができ、一層迅速に、作動ピンを後退移動させることができて、好ましい。
【0010】
さらにまた、上記構成の作動ピンを有したアクチュエータにおいて、作動ピンとキャップ部とを、金属材をプレス加工して形成された一体品として、構成すれば、ピストンにおけるキャップ部のシール性を良好にすることができ、また、作動ピンとキャップ部とを別体として構成する場合と比較して、部品点数も低減させることができて、好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成の作動ピンを有したアクチュエータにおいて、キャップ部を、スクイブに対してかしめられることにより、スクイブに連結させる構成とすれば、ピストンを、簡便な構成でスクイブに連結させることができて、好ましい。
【0012】
さらにまた、上記構成の作動ピンを有したアクチュエータにおいて、作動ピンを、キャップ部から連なって、先端面まで中空に形成すれば、キャップ部と作動ピンとを、肉厚を略均一として構成できることから、板厚を一定とした板金素材をプレス加工することにより製造することができ、作動ピンを全長にわたって中実としてプレス加工により製造する場合と比較して、容易に製造することができ、製造コストを低減することができて、好ましい。
【0013】
さらにまた、上記構成の作動ピンを有したアクチュエータにおいて、キャップ部における筒状部を、スクイブ側となる後端側に配置される大径部と、前端側において大径部より外径寸法を小さく設定される小径部と、を有して、
小径部を、シリンダケースの周壁部との間に隙間を設け可能に、外径寸法を周壁部の外径寸法より小さく設定させた構成として、
小径部と周壁部との間に、シールリングを介在させる構成とすることが好ましい。
【0014】
作動ピンを有したアクチュエータを上記構成とすれば、ピストンとシリンダケースの周壁部との間の気密性を確保できて、スクイブの作動時に、駆動用ガスが、シリンダケースの周壁部とピストンの筒状部との間から、漏れることを防止できる。そして、上記構成の作動ピンを有したアクチュエータでは、単に、シールリングをピストンにおける小径部の周囲に嵌めて大径部に当接させれば、シールリングを配設させることができることから、スクイブ若しくはピストンに、シールリング収納用の凹部を、切削加工等によって形成して、シールリングを、一旦拡径させつつ、このような凹部に収納しなくてもよく、スクイブ若しくはピストンに、シールリング収納用の凹部を形成する場合と比較して、製造工数及び製造コストを低減することができる。
【0015】
さらにまた、上記構成の作動ピンを有したアクチュエータにおいて、天井壁部の内面側に、作動ピンと、作動ピンを挿通させる挿通部位と、の間の隙間をシールするシールリングを、配設させ、
ピストンの先端壁部を、シールリングを介在させて、天井壁部に当接させる構成とすることが好ましい。
【0016】
上記構成の作動ピンを有したアクチュエータでは、作動ピンと、天井壁部における作動ピンを挿通させる挿通部位と、の間の隙間が、車両搭載時において、シールリングによって常時シールされていることから、湿気等に対する耐久性が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のアクチュエータA1は(図2〜4参照)は、図1に示すように、ステアリングホイールWに搭載されるエアバッグ装置Mに配設されている。アクチュエータA1は、エアバッグ装置Mのインフレーター8とともに、図1に示す制御装置59によって、作動を制御されるように構成されている。
【0018】
なお、実施形態における上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両に搭載されたステアリングホイールWの直進操舵時を基準とするものであり、実施形態の場合、ステアリングホイールWを組み付けるステアリングシャフトSS(図2の二点鎖線参照)の軸方向と一致する方向を上下方向とし、ステアリングシャフトSSの軸方向と左右で直交する方向を左右方向として、上下・左右の方向を示す。また、実施形態における前後の方向は、説明上、実際の車両の前後と逆方向として、ステアリングシャフトSSの軸方向と前後で直交する方向に軸方向を沿わせるように配設されるアクチュエータA1におけるピストンの移動方向側を後方としている。
【0019】
制御装置59は、座席SEに着座した運転者(乗員)MDの体格や着座位置等を検知可能な乗員検知センサ、例えば、ステアリングホイールWと運転者MDとの距離を検知可能な位置検知センサ60や、運転者MDの重量を検知可能な重量検知センサ61と、電気的に接続されるとともに、車両の加速度や加速の方向等を検知可能な衝突検知センサ62と電気的に接続され、これらの位置検知センサ60や重量検知センサ61、あるいは、衝突検知センサ62からの電気信号を入力させて、インフレーター8を作動させるとともに、アクチュエータA1を作動させる。そして、実施形態の場合、アクチュエータA1は、エアバッグ装置Mの作動時におけるエアバッグ21の膨張時、エアバッグ21の内圧上昇を抑制可能に、エアバッグ21内に流入した膨張用ガスをエアバッグ21外へ排気させて、好適な膨張モードでエアバッグ21を膨張させるように、制御装置59に制御されて、作動する。
【0020】
また、エアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、ステアリングホイールWの中央のボス部Bにおける上部に配置されている。ステアリングホイールWは、操舵時に把持するリング部Rと、中央に配置されてステアリングシャフトSS(図2の二点鎖線参照)に連結されるボス部Bと、ボス部Bとリング部Rとを連結する図示しない所定数のスポーク部と、を備えて構成されている。また、ステアリングホイールWは、構成部品上では、エアバッグ装置Mとステアリングホイール本体1とから構成されている。
【0021】
ステアリングホイール本体1は、リング部Rやボス部B等の各部を連結するように配置されるアルミニウム合金等からなる芯金2と、リング部Rや図示しないスポーク部の部位の芯金2を被覆する合成樹脂製の被覆層3と、ボス部Bの下部に配置される合成樹脂製のロアカバー4と、を備えて構成されている。
【0022】
エアバッグ装置Mは、図2に示すように、折り畳まれて収納されるエアバッグ21と、エアバッグ21に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ21とインフレーター8とを収納して保持するケースとしてのバッグホルダ10と、バッグホルダ10の側壁部15に保持されて折り畳まれたエアバッグ21の上方を覆うエアバッグカバーとしてのパッド17と、を備えて構成されている。
【0023】
インフレーター8は、上部に膨張用ガスを吐出する複数のガス吐出口8bを備えた略円柱状の本体部8aと、本体部8aの外周面から突出して配置される略四角板状のフランジ部8cと、を備えて構成されている。フランジ部8cには、後述するリテーナ6から突出するボルト6a(図3参照)を挿通させるための図示しない挿通孔が、形成されている。
【0024】
リテーナ6は、略四角環状体の板金製として、四隅に、下方へ突出するボルト6aを備えて構成されている。このリテーナ6の各ボルト6aは、エアバッグ21の内周面側における流入用開口22の周縁やバッグホルダ10を経て、インフレーター8のフランジ部8cから突出している。そして、各ボルト6aにナット7を締結することにより、エアバッグ21とインフレーター8とが、リテーナ6を利用して、バッグホルダ10に取り付けられている。
【0025】
バッグホルダ10は、略四角板状の底壁部11と、底壁部11の周縁から上下に伸びる側壁部15と、を備えて構成されている。底壁部11における中央付近には、円形に開口してインフレーター8の本体部8aを下方から上方へ挿通可能な挿通孔11aが、形成されている。挿通孔11aの周縁には、リテーナ6の各ボルト6aを挿通させる4つの図示しない挿通孔が、形成されている。また、底壁部11における挿通孔11aの後方側には、アクチュエータA1の作動ピンに係止されるループ部28bを挿通させるための挿通孔11bが、形成されている。
【0026】
また、底壁部11の下面側には、図2〜4に示すように、アクチュエータA1を保持する取付ブラケット12と、アクチュエータA1の作動ピン54の先端面54a側に配設される支持片部13と、が、配設されている。支持片部13は、ループ部28b係止時における作動ピン54の先端面54a側を支持する部材である。
【0027】
バッグホルダ10の側壁部15には、パッド17の側壁部19がリベット16止めされるとともに、ステアリングホイール本体1の芯金2側に取付固定される図示しないブラケットが、形成されている。
【0028】
パッド17は、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の合成樹脂から形成されて、図2に示すように、ボス部Bの上部側を覆う天井壁部18と、天井壁部18の外周縁から下方に延びる略四角筒形状の側壁部19と、を備えて構成されている。天井壁部18における側壁部19の内側部位は、折り畳まれたエアバッグ21を覆う部位として構成され、その部位には、エアバッグ21の膨張時に押されて前後両側に開く二枚の扉部18aが、配設されている。側壁部19は、既述したように、リベット16を利用して、バッグホルダ10の側壁部15に取り付けられている。
【0029】
エアバッグ21は、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から構成されるもので、図1の二点鎖線に示すように、膨張用ガスを流入させて袋状に膨張する形状として、図2及び図5に示すように、膨張用ガスを流入させる流入用開口22を備えている。流入用開口22は、インフレーター8の本体部8aを下方から挿入させて、インフレーター8のガス吐出口8bから吐出される膨張用ガスを、エアバッグ21内に流入させるための部位となる。また、流入用開口22の周縁には、リテーナ6に形成されたボルト6aを挿通させる取付孔23が、4個形成されている(図5参照)。また、図5に示すように、流入用開口22の後方となる部位には、円形に開口した排気孔25が、形成されている。排気孔25と流入用開口22との間には、排気孔25の前縁近傍と、流入用開口22の後縁近傍と、の2箇所に、ベルト28を挿通可能に左右方向に沿って形成されるスリット状の挿通孔24A,24Bが、形成されている。
【0030】
エアバッグ21の外周面側には、排気孔25を塞ぐように、フラップ27が、配設されている(図5参照)。実施形態の場合、フラップ27は、排気孔25における流入用開口22から離れる側の縁部(後縁側)に、結合されている。具体的には、フラップ27は、エアバッグ21と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から構成されるもので、略長方形状とされて、流入用開口22から離れて配置される一辺(実施形態の場合、後側の辺)をエアバッグ21に結合され、このエアバッグ21への結合部位をヒンジ部27aとして、排気孔25から流出しようとする膨張用ガスに押された際に、ヒンジ部27aと対向する先端27b(流入用開口22側の一辺)側から開き可能に、構成されている。
【0031】
フラップ27には、ベルト28の先端28aが連結されている。ベルト28は、可撓性を有したポリエステル糸等からなる布材から形成され、フラップ27のヒンジ部27aから、ヒンジ部27aと対向して配置されて開きの先端側となる先端27bへ、向かう方向で延長されるように配設されている。すなわち、実施形態の場合、ベルト28は、長手方向を前後方向に沿わせるようにして、配設されている。ベルト28の流入用開口22側となる端部(元部側端)には、略円環状のループ部28bが、配設されている。ループ部28bには、図2〜4に示すように、アクチュエータA1の作動前の状態で、作動ピンが挿入されている。実施形態の場合、ループ部28bは、可撓性を有した材料から構成されて、ループ部28bから作動ピン54が抜けた状態でエアバッグ21が膨張する際に、エアバッグ21に設けられた挿通孔24Bを挿通可能に、構成されている。そして、ループ部28bに作動ピン54が係止された状態で、エアバッグ21が膨張する場合には、フラップ27の先端27b側が、挿通孔24Aに挿通されるベルト28により押えられて、図5のAに示すように、フラップ27が排気孔25を塞いだ状態で、エアバッグ21が膨張することとなる。一方、アクチュエータA1が作動して、ループ部28bから作動ピン54が抜けた状態で、エアバッグ21が膨張する場合には、排気孔25から流出しようとする膨張用ガスにフラップ27が押され、ベルト28を挿通孔24A,24Bにおいて抜き移動させつつ、図5のBに示すように、フラップ27が開いて排気孔25を開口させることから、排気孔25からエアバッグ21外へ膨張用ガスが流出し、エアバッグ21の内圧の上昇を抑制することができる。
【0032】
なお、ベルト28におけるループ部28bの係止を解除するようなアクチュエータA1の作動は、制御装置59が、位置検知センサ60からの信号により、運転者MDがステアリングホイールWに接近しすぎていることを検知したり、あるいは、重量検知センサ61からの信号により、運転者MDが小柄であることを検知している場合において、エアバッグ装置Mの作動と同時、若しくは、若干遅らせて、膨張時のエアバッグ21の内圧を低減させるように、制御装置59がアクチュエータA1を作動させることとなる。
【0033】
アクチュエータA1は、図4に示すように、作動ピン54を有したピストン45と、作動時に点火されて駆動用ガスGを発生可能とされるスクイブ37と、ピストン45を保持するシリンダケース32と、から、構成されている。実施形態の場合、スクイブ37は、ピストン45と一体的に配設されている。また、実施形態の場合、作動ピン54は、アクチュエータA1の作動時に、シリンダケース32の軸方向(前後方向)に沿って、シリンダケース32の内部に引き込まれるように、後退移動することとなる。また、アクチュエータA1は、シリンダケース32における周壁部33の周囲を覆うように配設される取付ブラケット12を利用して、バッグホルダ10の底壁部11における挿通孔11aの後方となる位置に、取付固定されている。
【0034】
シリンダケース32は、実施形態の場合、板金製とされて、ピストン45の周囲を覆う円筒状の周壁部33と、周壁部33の先端側(前端側)を閉塞する略円形の天井壁部34と、を備えている。周壁部33は、ピストン45における後述するキャップ部46の大径部48を内周面33aで摺動可能とされるもので、軸方向を前後方向に沿わせるように、配設されている。天井壁部34の中央には、作動ピン54を突出可能とされる略円形の開口34aが、形成されている。また、シリンダケース32における周壁部33の元部側(後端側)は、ピストン45の後端側に連結されるスクイブ37のターミナル37b側を露出可能に、開口している。また、周壁部33における元部端(後端側)には、ピストン45移動時におけるシリンダケース32からの抜けを防止するストッパ33cが、元部端33b側(後端側)を縮径させるような断面略テーパ状として、形成されている。このストッパ33cは、ピストン45が作動ピン54を引き込むように後退移動した際に、キャップ部46の後述する大径部48を当接させて、ピストン45がシリンダケース31から抜けることを防止している(図6のB参照)。実施形態の場合、このストッパ33cは、アクチュエータA1の製造時に、スクイブ37と一体化させたピストン45をシリンダケース31の内部に収納させた後に、周壁部33の元部端33bをかしめて、形成されている。
【0035】
スクイブ37は、イニシエータと、イニシエータを保持するホルダと、から構成されるもので、外形形状を略円柱状とされている。具体的には、スクイブ37は、円柱状の本体部38の先端側(前端側)に、本体部38より小径とされる頭部39を配置させ、この頭部39と本体部38との間に、本体部38の軸回り方向に沿った全域にわたって突出するように構成されて本体部38より大径とされるフランジ部40を、配設させた構成とされている。そして、スクイブ37は、頭部39の先端面(前端面39a)にガス吐出口37aを配置させ、本体部38の元部端側(後端38a側)にターミナル37bを配置させた構成とされている。このスクイブ37は、実施形態の場合、ピストン45と一体的に配設されて、ピストン45の後退移動時にピストン45とともに後退移動するもので、ガス吐出口37a側をピストン45のキャップ部46に覆われ、ターミナル37bをピストン45から露出させるようにして、ピストン45に保持されている。詳細には、スクイブ37は、ピストン45のキャップ部46における大径部48の元部端48aを、縮径させつつフランジ部40の後面側に配置させるように、曲げ塑性変形させるようにかしめて、フランジ部40を挟持させることにより、ピストン45と一体化されるとともに、頭部39全体をキャップ部46に覆われ、本体部38をピストン45から露出させている。そして、スクイブ37は、ターミナル37bに、制御装置59から延びるリード線42aを連結させたコネクタ42(図4の二点鎖線参照)を、連結させることにより、制御装置59と電気的に接続されるもので、アクチュエータA1の作動時に、制御装置59からの作動信号を入力して、点火され、内蔵されている図示しない火薬を燃焼させて、ガス吐出口37aから駆動用ガスGを吐出させることとなる。
【0036】
ピストン45は、スクイブ37におけるガス吐出口37a側を覆うキャップ部46と、キャップ部46から前方に突出するように構成される作動ピン54と、を備えている。
【0037】
キャップ部46は、スクイブ37のガス吐出口37a側を覆い可能に、スクイブ37の頭部39の周囲となるフランジ部40の部位から延びて、軸方向をシリンダケース32の軸方向(前後方向)に沿わせて構成される略円筒形とされている。実施形態の場合、キャップ部46は、スクイブ37の軸回り方向側を覆い可能な筒状部47と、筒状部47の先端側(前端側)を閉塞するように形成される先端壁部52と、から構成されており、さらに、筒状部47は、スクイブ37側となる後端側に配置される大径部48と、前端側において大径部48より外径寸法を小さく設定される小径部49と、を備えている。実施形態の場合、筒状部47における大径部48は、スクイブ37におけるフランジ部40の外周側を覆うように構成され、小径部49は、スクイブ37における頭部39の外周側を覆って頭部39から前方に延びるように、構成されている。そして、ピストン45は、大径部48の元部端48aを、スクイブ37におけるフランジ部40の後面側において縮径させるようにかしめて、スクイブ37と一体化されている。大径部48は、ピストン45の後退移動時に、周壁部33の内周面33aに対して摺動可能に、外径寸法D1を、周壁部33の内径寸法D2より若干小さくして、構成されている(図4参照)。そして、小径部49は、シリンダケース32における周壁部33との間に、軸回り方向に沿った全域にわたって隙間Pを設けるように、外径寸法D3を、周壁部33の内径寸法D2より小さくして、構成されている。また、先端壁部52は、シリンダケース32の軸直交方向に沿うような略円板状として、シリンダケース32の天井壁部34に対向して、小径部49の前端側を閉塞するように、配設されている。
【0038】
作動ピン54は、先端壁部52の中央から、シリンダケース32の軸方向(前後方向)に沿って前方に突出するように、形成されている。すなわち、作動ピン54は、キャップ部46に対して、中心軸を一致させるように、直列的に構成されるもので、実施形態の場合、外径寸法D4を、先端壁部52の外径寸法(小径部49の外径寸法D3と一致)より小さく設定されている(図4参照)。実施形態の場合、キャップ部46と作動ピン54とは、板金素材をプレス加工して、一体的に、形成されるもので、作動ピン54は、先端壁部52から連なって、先端面54aまで中空に形成されている。
【0039】
キャップ部46における作動ピン54の周囲となる先端壁部52の部位には、スクイブ37のガス吐出口37aから吐出された駆動用ガスGをシリンダケース32内に噴出させる噴出孔52aが、形成されている。実施形態の場合、噴出孔52aは、作動ピン54を中心として点対称となるように、作動ピン54の上下の2箇所に、形成されている。この噴出孔52aは、スクイブ37のガス吐出口37aから吐出されてキャップ部46とスクイブ37とに囲まれた空間S内に充満された駆動用ガスGを、シリンダケース32内における先端壁部52と天井壁部34との間に、作動ピン54の軸方向(前後方向)に沿って、噴出させることとなる。
【0040】
作動ピン54の元部側(後端側)における周囲には、シリンダケース32内の気密性を確保するためのゴム状弾性体からなるシールリング(Oリング)56が、外嵌されている。このシールリング56は、図4に示すように、アクチュエータA1の非作動時に、天井壁部34の内面側において、作動ピン54と、作動ピン54を挿通させている天井壁部34の開口34aと、の間の隙間を塞ぎ、かつ、天井壁部34と先端壁部52との間の隙間を埋めるように、配設されており、スクイブ37の作動時におけるピストン45の移動前に、噴出孔52aからシリンダケース32内に噴出される駆動用ガスGが、作動ピン54と開口34aとの間から漏れることを防止している。すなわち、実施形態のアクチュエータA1では、作動前の状態において、ピストン45の先端壁部52は、シールリング56を介して、シリンダケース32の天井壁部34と当接されることとなり、この天井壁部34との当接によって、作動前におけるピストン45の前方側への移動が、規制されることとなる。なお、実施形態の場合、シールリング56は、ピストン45の後退移動時には、作動ピン54の移動に伴って、後退移動することとなる。
【0041】
また、実施形態のアクチュエータA1では、ピストン45における小径部49の外周側にも、シリンダケース32内の気密性を確保するためのゴム状弾性体からなるシールリング(Oリング)57が、配設されている。このシールリング57は、小径部49の後端側に位置する大径部48の前面側において、小径部49とシリンダケース32の周壁部33との間の隙間を塞ぎ、小径部49の後方に配置される大径部48により後面側を当接支持されるようにして、ピストン45と周壁部33との間の気密性を確保可能に、配設されている。
【0042】
実施形態のアクチュエータA1は、取付ブラケット12を利用して、バッグホルダ10に取り付けられることとなる。そして、アクチュエータA1とエアバッグ装置Mとの車両への搭載は、以下のようにして行なわれる。まず、アクチュエータA1を取り付けたバッグホルダ10に対し、リテーナ6を入れて折り畳まれたエアバッグ21とインフレーター8とをナット7止めして、組み付ける。このとき、フラップ27から延びるベルト28に設けられたループ部28bを、バッグホルダ10の底壁部11に形成される挿通孔11bから突出させて、アクチュエータA1の作動ピン54に挿通させ、作動ピン54によるループ部28bの係止を維持させた状態で、作動ピン54の先端面54a側を、バッグホルダ10の支持片部13に当接させておく。その後、パッド17をリベット16止めして、エアバッグ装置Mを組み立てて、車両に取り付け済みのステアリングホイール本体1にエアバッグ装置Mを取り付ける。なお、エアバッグ装置Mの車両への取付時には、アクチュエータA1のスクイブ37のターミナル37bに、制御装置59から延びるリード線42aを結線させたコネクタ42が接続され、インフレーター8にも、制御装置59と電気的に接続される所定のリード線が結線されることとなる。
【0043】
実施形態のアクチュエータA1では、制御装置59からの作動信号を受けてスクイブ37が点火されると、内部の火薬を燃焼させて駆動用ガスGが発生し、ピストン45におけるキャップ部46とスクイブ37とに囲まれた空間Sに充満した駆動用ガスGが、キャップ部46における先端壁部52に設けられた噴出孔52aから、シリンダケース32内に噴出されることとなる。そして、シリンダケース32内に充満された駆動用ガスGが、ピストン45におけるキャップ部46の先端壁部52を後方に向かって押圧することとなり、ピストン45全体が、駆動用ガスGの押圧力を受けて、シリンダケース32の軸方向に沿って後退移動することとなる。このピストン45の後退移動に伴って、作動ピン54が、シリンダケース32の内部に引き込まれることとなる。そして、作動ピン54が、図6のBに示すように、ベルト28に設けられたループ部28bから抜けて、作動ピン54が、ベルト28の係止を解除することから、図5のBに示すように、ベルト28に連結されていたフラップ27が、エアバッグ21の排気孔25を開口させ、排気孔25から膨張用ガスが排気されることとなる。
【0044】
そして、実施形態のアクチュエータA1では、ピストン45が、先端壁部52を、シールリング56を介して、シリンダケース32の天井壁部34に当接させるようにして、シリンダケース32内に収納されていることから、作動前におけるピストン45及び作動ピン54の前進移動を確実に防止することができる。また、実施形態のアクチュエータA1では、作動時に、スクイブ37のガス吐出口37aから吐出された駆動用ガスGは、キャップ部46における作動ピン54の周囲に形成された噴出孔52aから、シリンダケース32内における先端壁部52と天井壁部34との間に、噴出されることとなる。そのため、ピストン45の先端壁部52が、天井壁部34と当接するように配置されていても、噴出孔52aから、この先端壁部52と天井壁部34との間に駆動用ガスGを噴出させることができて、シリンダケース32とピストン45との間に充満された駆動用ガスGの圧力を利用して、ピストン45を迅速に後退移動させることができる。
【0045】
したがって、実施形態のアクチュエータA1では、作動前のピストン45の前進移動を的確に防止することができて、作動時に、作動ピン54を迅速に後退移動させることができる。
【0046】
また、実施形態のアクチュエータA1では、噴出孔52aを、先端壁部52に形成していることから、スクイブ37のガス吐出口37aから吐出された駆動用ガスGを、天井壁部34側に向かうように、噴出孔52aから、シリンダケース32内に噴出させることができる。特に、実施形態のアクチュエータA1では、スクイブ37のガス吐出口37aから吐出された駆動用ガスGは、ピストン45におけるキャップ部46とスクイブ37とに囲まれた空間Sに、一旦、充満された後、噴出孔52aからシリンダケース32内に噴出されることから、噴出孔52aからの噴出時の駆動用ガスGの流れの向きを安定させることができ、駆動用ガスGは、確実に、天井壁部34側に向かうように、噴出孔52aから噴出されることとなる。そのため、実施形態のアクチュエータA1では、シリンダケース32とピストン45との間に充満される駆動用ガスGの圧力に加えて、駆動用ガスGの噴出時の反力を利用することができることから、キャップ部の筒状部に噴出孔を形成する場合と比較して、作動ピン54を迅速に後退移動させることができる。
【0047】
勿論、このような点を考慮しなければ、図7に示すアクチュエータA2のごとく、ピストン45Aとして、キャップ部46Aの筒状部47Aにおける小径部49Aの部位に、噴出孔49aを配設させた構成のものを使用してもよい。このような構成のアクチュエータA2では、スクイブ37の作動時に、ピストン45Aにおけるキャップ部46Aとスクイブ37とに囲まれた空間Sに充満された駆動用ガスGは、噴出孔49aから、周壁部33側に向かうように、シリンダケース32の軸直交方向に沿うようにして、シリンダケース32内に噴出されることとなる。しかしながら、このような構成のアクチュエータA2であっても、噴出孔49aからシリンダケース32内に噴出された駆動用ガスGは、先端壁部52Aと天井壁部34との間に向かうように、シリンダケース32内を流れることとなり、先端壁部52Aと天井壁部34との間に充満されて先端壁部52Aを後方に向かって押圧し、図7のBに示すごとく、ピストン45A全体が、駆動用ガスGの押圧力を受けて、シリンダケース32の軸方向に沿って後退移動することとなる。そのため、上記構成のアクチュエータA2においても、作動ピン54Aを迅速に後退移動させることができる。
【0048】
さらに、実施形態のアクチュエータA1では、噴出孔52aを、駆動用ガスGを作動ピン54の軸方向に沿って噴出可能なように構成していることから、スクイブ37から吐出される駆動用ガスGが、作動ピン54の軸方向に沿うように、すなわち、天井壁部34を作動ピン54の軸方向に沿って前方側に向かって押圧するように、噴出孔52aからシリンダケース32内に噴出されることとなる。そのため、この駆動用ガスGの反力を受けて、ピストン45を、天井壁部34から離れるように迅速に後退移動させることができ、一層迅速に、作動ピン54を後退移動させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、図8に示すアクチュエータA3のごとく、ピストン45Bとして、キャップ部46Bにおける先端壁部52Bを先細り状に傾斜させた構成とし、この先細り状に傾斜している先端壁部52Bに、噴出孔52bを配設させた構成のものを試用してもよい。このような構成のアクチュエータA3では、スクイブ37の作動時に、スクイブ37の作動時に、ピストン45Bにおけるキャップ部46Bとスクイブ37とに囲まれた空間Sに充満された駆動用ガスGは、噴出孔52bから、噴出孔52aの開口面(先端壁部52B)と略直交する方向に沿って、すなわち、シリンダケース32の軸方向に対して傾斜するような方向に沿って、シリンダケース32内に噴出されることとなる。
【0049】
さらにまた、実施形態のアクチュエータA1では、作動ピン54とキャップ部46とを、金属材をプレス加工して形成された一体品として、構成していることから、ピストン45におけるキャップ部46のシール性を良好にすることができ、また、作動ピン54とキャップ部46とを別体として構成する場合と比較して、部品点数も低減させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、作動ピンとキャップ部とが別体から構成されるピストンを使用してもよい。
【0050】
さらにまた、実施形態のアクチュエータA1では、キャップ部46を、スクイブ37に対してかしめられることにより、スクイブ37に連結させていることから、ピストン45を、簡便な構成でスクイブ37に連結させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、キャップ部を、ねじ等の締結手段を別途利用して、スクイブに連結させる構成としてもよい。
【0051】
さらにまた、実施形態のアクチュエータA1では、作動ピン54を、キャップ部46から連なって、先端面54aまで中空に形成している。換言すれば、実施形態のアクチュエータA1では、キャップ部46と作動ピン54とを、肉厚を略均一として構成できることから、板厚を一定とした板金素材をプレス加工することにより製造することができ、作動ピン54を全長にわたって中実としてプレス加工により製造する場合と比較して、容易に製造することができ、製造コストを低減することができて、好ましい。勿論、このような点を考慮しなければ、作動ピンを中実として、構成してもよい。
【0052】
さらにまた、実施形態のアクチュエータA1では、キャップ部46における筒状部47が、大径部48と小径部49とを備える構成とされて、小径部49とシリンダケース32の周壁部33との間に、シールリング56を介在させている構成である。そのため、ピストン45とシリンダケース32の周壁部33との間の気密性を確保できて、スクイブ37の作動時に、駆動用ガスGが、シリンダケース32の周壁部33とピストン45の筒状部47との間から、漏れることを防止でき、シール性を良好にすることができる。なお、実施形態のアクチュエータA1では、キャップ部46における小径部49が、シリンダケース32の周壁部33と、の間に、軸回り方向に沿った全域にわたって隙間Pを設けるように構成されていることから、噴出孔52aから噴出された駆動用ガスGは、この周壁部33と小径部49との間の隙間Pを後方に流れて、シールリング56を後方に向かって押圧して、ピストン45を後退移動させることとなるが、シールリング56は、後方側を、キャップ部46の大径部48により支持されていることから、駆動用ガスGの押圧力を受けて、周壁部33と小径部49とに圧接されるように変形することとなり、ピストン45の後退移動時にも、シールリング56により、ピストン45と周壁部33との間のシール性を良好に保持することができる。
【0053】
また、実施形態のアクチュエータA1では、単に、シールリング56をピストン45における小径部49の周囲に嵌めて大径部48に当接させればシールリング56をピストン45の周囲に配設させることができることから、スクイブ若しくはピストンに、シールリング56収納用の凹部を、切削加工等によって形成し、シールリング56を、一旦拡径させつつ、このような凹部に収納しなくてもよく、スクイブ若しくはピストンに、シールリング収納用の凹部を形成する場合と比較して、製造工数及び製造コストを低減することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、図8に示すアクチュエータA3のごとく、シールリングを備えない構成としてもよく、また、シールリングを配設させる場合にも、キャップ部における筒状部を軸方向の全長にわたって同一外径寸法として、スクイブ若しくはピストンにシールリング収納用の凹部を、別途切削加工等により形成し、この凹部にシールリングを収納させる構成としてもよい。
【0054】
さらにまた、実施形態のアクチュエータA1では、天井壁部34の内面側に、作動ピン54と、作動ピン54を挿通させる開口34aと、の間の隙間をシールするシールリング56を、配設させていることから、作動ピン54と、天井壁部34における作動ピン54を挿通させる開口34aと、の間の隙間が、車両搭載時において、シールリング56によって常時シールされていることとなって、湿気等に対する耐久性が良好となる。また、実施形態のアクチュエータA1では、このシールリング56は、ピストン45の後退移動時に、ピストン45とともに後退移動することとなるが、ピストン45の後退移動前には、作動ピン54と開口34aとの間の隙間を塞いでいることから、ピストン45の後退移動前に、噴出孔52aからシリンダケース32内に噴出される駆動用ガスGが、作動ピン54と開口34aとの間から漏れることを防止でき、シール性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態であるアクチュエータが使用されるステアリングホイール用エアバッグ装置を説明する図である。
【図2】実施形態のアクチュエータが使用されるステアリングホイール用エアバッグ装置の縦断面図である。
【図3】実施形態のアクチュエータが使用されるステアリングホイール用エアバッグ装置の部分底面図である。
【図4】実施形態のアクチュエータの縦断面図であり、図3のIV−IV部位に対応する。
【図5】実施形態のアクチュエータにより作動を制御されるエアバッグの排気孔の周囲を示す図である。
【図6】実施形態のアクチュエータの作動前と作動後とを示す縦断面図である。
【図7】実施形態のアクチュエータにおける変形例を示す縦断面図である。
【図8】実施形態のアクチュエータにおける他の変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0056】
21…エアバッグ、
25…排気孔、
27…フラップ、
28…ベルト、
28b…ループ部、
32…シリンダケース、
33…周壁部、
34…天井壁部、
37…スクイブ、
37a…ガス吐出口、
45,45A,45B…ピストン、
46,46A,46B…キャップ部、
47,47A,47B…筒状部、
48,48A,48B…大径部、
49,49A,49B…小径部、
49a…噴出孔、
52,52A,52B…先端壁部、
52a,52b…噴出孔、
54,54A,54B…作動ピン、
56,57…シールリング、
59…制御装置、
G…駆動用ガス、
M…エアバッグ装置、
A1,A2,A3…アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動ピンを有したピストンと、作動時に点火されて駆動用ガスを発生可能とされるスクイブと、前記ピストンを保持するシリンダケースと、を備える構成とされて、
前記ピストンが、前記スクイブに連結されるとともに、先端から前記作動ピンを突出させた構成とされ、
前記シリンダケースが、前記ピストンの周囲を覆う略筒状の周壁部と、該周壁部の先端側を閉塞するとともに前記作動ピンを突出可能に構成される天井壁部と、を備えて、
作動時に、前記スクイブから発生する前記駆動用ガスを、前記シリンダケース内に噴出させることにより、前記ピストンを、前記作動ピンとともに後退移動させるように構成される作動ピンを有したアクチュエータにおいて、
前記ピストンが、前記スクイブのガス吐出口側を覆い可能なキャップ部を備える構成とされ、
前記キャップ部が、前記スクイブの軸回り方向側を覆い可能な筒状部と、該筒状部の先端側を閉塞するように形成される先端壁部と、から構成されるとともに、前記先端壁部の外径寸法より小径とした前記作動ピンを、前記先端壁部の中央から突出させた構成とされ、
前記キャップ部における前記作動ピンの周囲に、前記ガス吐出口から吐出される駆動用ガスを、前記シリンダケース内における前記先端壁部と前記天井壁部との間に噴出可能な複数の噴出孔が、配設され、
前記ピストンが、前記先端壁部を前記シリンダケースの前記天井壁部に当接させることにより、作動前における前方側への移動を規制されていることを特徴とする作動ピンを有したアクチュエータ。
【請求項2】
前記噴出孔が、前記先端壁部に、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の作動ピンを有したアクチュエータ。
【請求項3】
前記噴出孔が、前記駆動用ガスを、前記作動ピンの軸方向に沿って噴出可能に、構成されていることを特徴とする請求項2に記載の作動ピンを有したアクチュエータ。
【請求項4】
前記作動ピンと前記キャップ部とが、金属材をプレス加工して形成された一体品として、構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作動ピンを有したアクチュエータ。
【請求項5】
前記キャップ部が、前記スクイブに対してかしめられて、前記スクイブに連結されていることを特徴とする請求項4に記載の作動ピンを有したアクチュエータ。
【請求項6】
前記作動ピンが、前記キャップ部から連なって、先端面まで中空に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の作動ピンを有したアクチュエータ。
【請求項7】
前記キャップ部における筒状部が、前記スクイブ側となる後端側に配置される大径部と、前端側において前記大径部より外径寸法を小さく設定される小径部と、を有して、
該小径部が、前記シリンダケースの周壁部との間に隙間を設け可能に、外径寸法を前記周壁部の外径寸法より小さく設定された構成とされ、
前記小径部と前記周壁部との間に、シールリングが介在されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の作動ピンを有したアクチュエータ。
【請求項8】
前記天井壁部の内面側に、前記作動ピンと、前記作動ピンを挿通させる挿通部位と、の間の隙間をシールするシールリングが、配設され、
前記ピストンが、前記先端壁部を、前記シールリングを介在させて、前記天井壁部に当接させていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の作動ピンを有したアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−90965(P2009−90965A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164787(P2008−164787)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】