説明

作業支援装置

【課題】作業機と作業対象との間の詳細な位置関係を、容易且つ明瞭に把握できるようにする。
【解決手段】把持装置11から作業対象80までの距離を検知する距離センサ21と、運転者の触覚に作用して、運転者に距離の情報を伝える距離伝達手段3と、距離伝達手段3を制御する第1制御部41と、を備える。距離伝達手段3は、把持装置11を動作させるための操作レバー12に設けられており、且つ、運転者に接触して、当該運転者の触覚に作用するように動作する円板(接触部)31を有する。第1制御部41は、円板31による触覚への作用を、距離センサ21で検知された距離の長さに関連させて変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の運転者の作業を支援する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械を用いた作業においては、死角となる領域が存在する場合があり、この領域での作業は、運転者にとって困難なものとなる。そこで、死角領域の視覚的情報を運転者に提供して作業を支援する技術が、特許文献1及び2に記載されている。
【0003】
特許文献1には、作業用ツールを有する作業機械に取り付けられる視覚補助装置が開示されており、この装置には、作業用ツール付近の視界情報を操作者へ提供する視界情報提供手段(凸面鏡又はカメラ)と、視認可能範囲を変更する追従手段とが備えられている。
【0004】
特許文献2には、複数台のカメラにより得られた複数の画像を合成して、運転者の視界を遮る障害物が除去された画像を、モニターに表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−103594号公報
【特許文献2】特開2006−53922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の作業支援技術は、死角領域の視覚的情報を運転者に提供して作業を支援するものである。しかし、作業対象と作業機(バケットなどの作業ツール)との間の詳細な位置関係を、死角領域の一部分だけの視覚的情報を用いて把握することは困難である。
【0007】
また、視覚的情報を用いて作業を支援する場合には、作業場所が暗く、明瞭な情報が得られない場合がある。
また、視覚的情報を用いて作業を支援する場合には、土砂、水、油、埃などにより、レンズ面や鏡面が汚れてしまうことが考えられる。このような場合にも、明瞭な情報が得られない。
【0008】
(課題)
本発明が解決しようとする課題は、作業機と作業対象との間の詳細な位置関係を、容易且つ明瞭に把握できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の課題を解決するために、本発明に係る作業支援装置は、建設機械の作業機に取り付けられ、当該作業機から作業対象までの距離を検知する距離センサと、前記建設機械の運転者の触覚に作用して、前記運転者に前記距離の情報を伝える距離伝達手段と、前記距離伝達手段を制御する第1制御手段と、を備える。
前記距離伝達手段は、前記運転者によって操作される、前記作業機を動作させるための被操作手段に設けられており、且つ、前記運転者に接触して、当該運転者の触覚に作用するように動作する接触部を有する。
前記第1制御手段は、前記接触部による前記触覚への作用を、前記距離センサで検知された前記距離の長さに関連させて変化させる。
【0010】
この構成では、距離伝達手段の触覚への作用が、作業機から作業対象までの距離に応じて変化する。そのため、運転者は、視覚的情報を用いることなく、作業機と作業対象との間の詳細な位置関係を確認しながら、被操作手段を操作して作業機を制御できる。
また、運転者は、作業対象までの距離を、触覚を通して、容易且つ明瞭に確認することができる。
【0011】
なお、「建設機械」には、油圧ショベル(バックホー、パワーショベルなど)、ブルドーザ、スクレイパー、クレーン、フォークリフトなどが含まれる。
また、「作業機」には、例えば、バケット、把持装置(圧砕機、カッタ、グラップルなど)が含まれる。
【0012】
「作業対象」には、作業機がバケットの場合には収容対象が該当し、作業機が把持装置の場合には把持対象が該当する。具体的には、建築資材、車体、家電製品などが、「作業対象」に含まれる。作業対象は、リサイクル対象廃棄物であってもよいし、それ以外であってもよい。
【0013】
「距離センサ」としては、超音波センサ、光センサ(フォトインタラプタ、赤外線センサ、PSD距離センサなど)などを利用できる。
【0014】
「被操作手段」には、レバー、ホイールハンドル、スライダー、押しボタン、フットペダルなどが含まれる。被操作手段は、手で操作されるものであってもよいし、足で操作されるものであってもよい。
また、「作業機を動作させる」被操作手段は、作業機を、直接動作させるものであってもよいし、間接に動作させるものであってもよい。例えば、作業機が把持装置である場合に、上記の「被操作手段」は、把持装置の開閉レバー(作業機を直接動作させるもの)であってもよいし、アーム又はブームの操作レバー(アーム又はブームを動作させることにより、作業機を間接に動作させるもの)であってもよい。
【0015】
「距離伝達手段」は、被操作手段に取り付けられており、且つ、被操作手段の操作時に、運転者の手(又は足)に接触可能なものである。
「接触部」は、例えば、外周に突出部が形成された円板であってもよいし、距離に応じて移動するものであってもよい。接触部の形状は限定されず、例えば、円柱状であってもよい。
【0016】
接触部は、例えばモーターの回転力によって動作してもよい。また、接触部の動作については、回転移動、及び、直線移動(前後移動)のどちらであってもよい。
接触部の回転移動については、接触部が、被操作手段における、一定の位置で回転してもよいし、ある位置を基準として、その周囲を回って移動するように回転(回転移動)してもよい。また、接触部の直線移動については、被操作手段の壁面に対して垂直な方向に関する前後移動であってもよいし、被操作手段の壁面に平行な方向に関する直線移動であってもよい。
【0017】
「距離伝達手段」は、例えば以下のような構成及び動作により、運転者の触覚に作用する。
(i)接触部は固形物であり、この接触部の移動(前進又は回転)に伴い、接触部の一部が手(又は足)に接触する。
(ii)接触部が針のようなものであり、この先端部が手(又は足)に接触する。
(iii)接触部は電極であり、この接触部から、微電流が手(又は足)に流される。
【0018】
「触覚への作用の変化」とは、作用の質的な変化(すなわち触感の変化)、及び、作用の量的な変化(例えば、手に押し付けられる強さの変化、突出量の変化、又は突出位置の変化)のいずれかであってもよいし、この両方であってもよい。
【0019】
(2)また、本発明に係る上記(1)の作業支援装置において、前記距離伝達手段に設けられた前記接触部は、円板であり、当該円板の外周には、径方向に沿って延びる突出部が形成されており、前記第1制御手段は、前記円板を、前記距離センサで検知された前記距離の長さに関連させて、前記円板の中心を回転中心として回転させてもよい。
【0020】
この構成では、作業機から作業対象までの距離に応じて、円板が回転する。そして、円板の回転に伴い、突出部が、運転者の手(又は足)に接触し、運転者の触覚に作用する。このため、運転者は、突出部の位置(回転方向に関する位置)を目安として、作業機と作業対象との間の詳細な位置関係を確認できる。
【0021】
(3)また、本発明に係る上記(1)の作業支援装置において、前記距離伝達手段に設けられた前記接触部は、前記被操作手段に収容されており、前記第1制御手段は、前記接触部を、前記距離センサで検知された前記距離の長さに関連させて移動させ、且つ、前記距離が所定距離に達したときに、前記被操作手段に形成された穴から、前記接触部を突出させてもよい。
【0022】
この構成では、作業機から作業対象までの距離に応じて、接触部が移動する。そして、接触部が被操作手段から突出したときに、接触部は、運転者の手(又は足)に接触して、運転者の触覚に作用する。このため、運転者は、接触部の被操作手段からの突出を目安として、作業機と作業対象との間の詳細な位置関係を確認できる。
【0023】
なお、距離センサで検知された距離が、所定距離に達したときに、接触部の突出量(被操作手段の表面からの突出高さ)が最大になってもよい。
【0024】
(4)また、本発明に係る上記(1)乃至(3)のいずれかの作業支援装置は、前記作業機に取り付けられ、当該作業機及び前記作業対象の近接を検知する近接センサと、前記運転者の触覚に作用して、前記運転者に、前記作業機及び前記作業対象の近接の情報を伝える近接情報伝達手段と、前記近接情報伝達手段を制御する第2制御手段と、をさらに備えていてもよい。
また、前記近接情報伝達手段は、前記運転者によって操作される、前記作業機を動作させるための被操作手段に設けられており、且つ、前記運転者に接触して、当該運転者の触覚に作用するように動作する接触部を有し、前記第2制御手段は、前記接触部による前記触覚への作用を、前記近接センサで検知された近接の情報に関連させて変化させてもよい。
【0025】
この構成では、作業機と作業対象とが近接すると、近接情報伝達手段の触覚への作用が、非近接の状態に対して変化する。そのため、運転者は、視覚的情報を用いることなく、作業機と作業対象との間の詳細な位置関係、及び、作業機及び作業対象の近接状態を確認しながら、被操作手段を操作して作業機を制御できる。
また、運転者は、作業機と作業対象とが近接したことを、触覚を通して、容易且つ明瞭に確認することができる。
【0026】
なお、距離伝達手段、及び、近接情報伝達手段は、同一の「被操作手段」に設けられていてもよいし、異なる「被操作手段」に設けられていてもよい。
【0027】
「近接センサ」としては、リミットスイッチ、マイクロスイッチ、ロードセル、半導体圧力センサなどを使用できる。ここでの「近接」には、「(直接の)接触」に加え、「作業対象が、作業機の近傍にあること」も含まれるものとする。
近接センサは、押しボタン式センサのような、直接接触式のセンサであってもよい。また、近接センサは、近接センサ(例えば、渦電流を利用して金属の存在を検出する誘導形近接センサ、静電容量形近接センサ、磁気による直流磁界を利用したスイッチ)などの、非接触式センサであってもよい。
【0028】
「近接情報伝達手段」は、被操作手段に取り付けられており、且つ、被操作手段の操作時に、運転者の手(又は足)に接触可能なものである。
【0029】
「被操作手段」、「接触部」、及び「触覚への作用の変化」については、上記(1)と同様に説明されるので、その説明を省略する。
【0030】
(5)また、本発明に係る上記(4)の作業支援装置において、前記近接情報伝達手段に設けられた前記接触部は、円板であり、当該円板の外周には、径方向に沿って延びる突出部が形成されており、前記第2制御手段は、前記近接センサで前記近接が検知されたときに、前記円板の中心を回転中心として、前記円板を回転させてもよい。
【0031】
この構成では、作業機が作業対象に近接したときに、円板が回転する。そして、円板の回転に伴い、突出部が、運転者の手(又は足)に接触し、運転者の触覚に作用する。このため、運転者は、突出部の位置(回転方向に関する位置)を目安として、作業機と作業対象とが近接したことを確認できる。
【0032】
(6)また、本発明に係る上記(4)の作業支援装置において、前記近接情報伝達手段に設けられた前記接触部は、前記被操作手段に収容されており、前記第2制御手段は、前記近接センサで前記近接が検知されたときに、前記被操作手段に形成された穴から、前記接触部を突出させてもよい。
【0033】
この構成では、作業機が作業対象に近接したときに、接触部が移動する。そして、接触部が被操作手段から突出したときに、接触部は、運転者の手(又は足)に接触して、運転者の触覚に作用する。このため、運転者は、接触部の被操作手段からの突出を目安として、作業機と作業対象とが近接したことを確認できる。
【0034】
(7)また、本発明に係る上記(1)乃至(6)のいずれかの作業支援装置において、前記作業機は、開閉動作する把持装置であってもよい。これにより、運転者は、把持装置と作業対象との詳細な位置関係を確認でき、また、作業対象までの距離を、触覚的に、容易且つ明瞭に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建設機械を示す側面図である。
【図2】第1実施形態に係る作業支援装置を示す概略図である。
【図3】第1実施形態に係る操作レバーの概略図であり、(a)は右側面図、(b)は正面図、(c)は、グリップ部の正面図、(d)グリップ部の平面図(上面図)である。
【図4】距離伝達手段を示す斜視図である。
【図5】距離伝達手段を示す断面図(図2のA−A’矢視図)である。
【図6】近接情報伝達手段を示す斜視図である。
【図7】近接情報伝達手段を示す断面図(図2のB−B’矢視図)である。
【図8】作業機及び作業対象の位置関係について説明するための概略図である。
【図9】制御装置での制御例を示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態に係る距離伝達手段を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明における「上下」は、図中における上下であるものとする。また、図において、破線は隠れ線であり、二点差線は想像線である。
【0037】
(全体構成)
図1に示すように、本実施形態に係る建設機械10は、バックホーであり、本体部、走行装置16t、ブーム15、アーム14、把持装置(作業機)11、及び制御装置4を有する。本体部は旋回体であり、キャビン16c及びカウンターウェイト16wを含む。ブーム15は本体部に装着され、アーム14はブーム15の先端に装着され、把持装置11はアーム14の先端に装着されている。
【0038】
また、キャビン16cには、ブーム15及びアーム14の操作に用いる、操作レバー(被操作手段)12が設けられている。運転者は、操作レバー12を用いて、把持装置11を動作させる。
【0039】
操作レバー(被操作手段)12は、グリップ部12g、レバー軸12k、及びレバーブーツ12cを有する(図2、及び図3参照)。グリップ部12g及びレバーブーツ12cは、合成樹脂から成る。なお、図3(c)及び図3(d)は、グリップ部のみを示している。
【0040】
グリップ部12gは、手で握られる部分であり、中空構造になっている。また、グリップ部12gには、第1貫通孔12h及び第2貫通孔(穴)12jが形成されている(図3(c)参照)。第1貫通孔12h及び第2貫通孔12jは、それぞれ、距離伝達手段3及び近接情報伝達手段5の突出口となっている。
【0041】
操作レバー12は、操作されていない状態では、図の矢印C方向に沿って延びている。以下、矢印C方向を、軸方向Cとする。なお、本実施形態において、軸方向Cは鉛直方向に等しいが、軸方向Cは、鉛直方向に対して傾いていてもよいし、水平方向であってもよい。
【0042】
また、本体部には、制御装置4が設置されている。図2に示すように、制御装置4は、油圧シリンダ11d、距離センサ21及び近接センサ22に対して、電気的に接続されている。また、操作レバー12は、制御装置4に対して、電気的に接続されている。
【0043】
そして、操作レバー12からの入力情報(レバーの操作情報)は、制御装置4に伝えられる。
また、距離センサ21及び二つの近接センサ22からの検知情報は、制御装置4へと送られる。さらに、制御装置4に送られた検知情報は、操作レバー12に対して送られる。
また、制御装置4と油圧シリンダ11dとの間では、運転に関する情報の往復が可能となっている。
【0044】
(作業支援装置)
本実施形態に係る作業支援装置は、把持装置11によって作業対象(図2の作業対象80参照)を把持する作業を支援するためのものであり、距離センサ21、近接センサ22、距離伝達手段3、近接情報伝達手段5、及び制御装置4から成る。本実施形態における作業対象80は、リサイクル対象廃棄物(車両、家電製品など)である。
【0045】
距離伝達手段3及び近接情報伝達手段5は、操作レバー12に収容されている。また、距離伝達手段3及び近接情報伝達手段5は、操作レバー12において、上下に並べて配置されている。なお、これらの配置はこのような配置には限られない。
以下、各部の詳細について説明する。
【0046】
(作業機)
把持装置(作業機)11は、開閉動作するものであり、二つの把持部(把持部11b及び把持部11c)、油圧シリンダ11d、及び、支持部11gを含む(図2、図8参照)。支持部11gは、二枚の板部材と、これらの板部を連結する連結板(図示せず)とからなる。連結板は、二枚の板部材に対して垂直に形成されている。
【0047】
二つの把持部のそれぞれは、支持部11gの二枚の板部に挟まれている。また、二つの把持部のそれぞれは、これら二枚の板部に対して、支持軸11jを用いて、回転可能な状態(すなわち、支持軸11jを回転軸として回転可能な状態)で取り付けられている。それぞれの支持軸11jは、二枚の板部、及び、把持部を貫通している。
【0048】
支持部11gの下端であって、二つの把持部に挟まれた中央部には、距離センサ21が設置されている。距離センサ21は、把持装置11から作業対象までの距離を検知する。
【0049】
それぞれの把持部の先端には、近接センサ22が取り付けられている。近接センサ22は、把持装置11及び作業対象80の接触を検知する、押しボタン式のセンサである。ここで、近接センサ22によって検知される「接触」状態とは、作業対象80に二つの近接センサ22の両方が接触した状態のことを意味する。
【0050】
油圧シリンダ11dは、二つの把持部の間に取り付けられており、この油圧シリンダ11dの伸縮動作に従って、二つの把持部が開閉する。油圧シリンダ11dは、二つの把持部における、上端(二つの近接センサ22が取り付けられた側に対して反対側の先端)に取り付けられている。油圧シリンダ11dは、把持操作レバー(図示せず)の操作により伸縮する。
【0051】
支持部11gは、アーム14の先端に取り付けられている。従って、把持装置11は、支持部11gを介して、アーム14に取り付けられている。
【0052】
(距離伝達手段)
次に、距離伝達手段3について説明する。距離伝達手段3は、建設機械10の運転者の触覚に作用して、運転者に距離の情報を伝えるものであり、距離伝達手段3は、操作レバー12に設けられている(図3参照)。距離伝達手段3は、円板(接触部)31と、減速機32と、モーター33と、回転軸34とを有する(図3乃至図5参照)。モーター33は、制御装置4に対して電気的に接続されている。
【0053】
円板31は、運転者に接触して、当該運転者の触覚に作用するように動作(回転)するものである。また、円板31は、距離センサ21で検出された距離Dの長さに応じて回転する。
【0054】
円板31の外周には、突出部31tが形成されており、この突出部31tは、円板31の径方向に沿って延びている。また、突出部31tは、平面視において、四角形状となっている(図5参照)。なお、円板31の材質は、金属であってもよいし、合金、プラスチックなどであってもよい。
【0055】
回転軸34は、軸方向Cに対して直交する方向に沿って、直線的に延びている。なお、回転軸34が延びる方向は、軸方向Cに直交する方向に対して、傾いていてもよい。
回転軸34の一部は、モーター33の回転軸となっており、回転軸34は、モーター33によって回転力を与えられる。
【0056】
また、円板31は、回転軸34の先端に固定されており、円板31は、回転軸34の回転に伴って回転する。具体的に説明すると、円板31は、中心31oを回転中心として、図の矢印方向Gに沿って回転する。以下、この方向を回転方向Gとする。図のG1は、図5における時計回りの回転方向であり、G2は、反時計回りの回転方向である。
また、円板31は、操作レバー12の内部の一定位置で回転し、操作レバー12における円板31の位置は変化しない。
【0057】
距離伝達手段3は、操作レバー12に収容されている。そして、減速機32、モーター33、及び回転軸34は、操作レバー12の内部に配置されている。また、円板31は、その半分(半円領域)がグリップ部12gの内部に位置しており、他の半分は、グリップ部12gの外側に突出している(図5参照)。
【0058】
図5の第1角度θ1は、円板31の中心31o及び突出部31tを結ぶ線分と、中心31oからの鉛直線(下向きの線)と、の間の角度である。突出部31tが最下部に位置している状態においては、第1角度θ1は0度となる。また、突出部31tが最上部に位置している状態においては、θ1は180度となる。
【0059】
Lは、距離Dの目標距離であり(図8参照)、予め記憶部43に記録されている。作業対象80が、二つの近接センサ22に挟まれる位置において、距離Dが目標距離Lに等しくなる。
【0060】
また、Xは、近接センサ22の近傍を表わす基準とするための距離値である(図8参照)。Xの値は予め定められ、記憶部43に記録されている。なお、このXの値は、作業対象80の大きさや、運転者の運転熟練度などに関連させて設定すればよい。
【0061】
(i)距離D(把持装置11から作業対象80までの距離;図8参照)が、L−Xより小さい場合、又は、L+Xより大きい場合(D<L−X、又は、L+X<D)には、第1角度θ1が180度又は0度に固定される。具体的には、距離センサ21で検知された距離DがL−Xより小さければ、第1角度θ1は180度となり、距離DがL+Xより大きければ、第1角度θ1は0度となる。すなわち、この場合には、円板31は回転せず、突出部31tは移動しない。
【0062】
(ii)一方、距離DがL−X以上であり、且つ、L+X以下である場合(L−X≦D≦L+X)には、距離Dの長さに対応して、円板31が回転する。そして、突出部31tは、グリップ部12gの外部に突出した状態になり、距離Dの長さに応じて、回転方向Gに関する突出部31tの位置が変化する。そして、運転者は、グリップ部12gを握っているときに、突出部31tの位置を触覚的に認識できる。この場合に、第1角度θ1は、0度乃至180度の範囲内に収まる(図5に破線で示した半円矢印の範囲参照)。
【0063】
上記(ii)の場合において、距離Dが目標距離Lに等しくなると、第1角度θ1は90度となり、突出部31tが、操作レバー12において正面に位置することになる(図5の「正面位置」参照)。すなわち、第1角度θ1が90度のときに、突出部31tがグリップ部12gの表面から最も離れた状態になる。このように、距離Dが目標距離Lに等しくなると、突出部31tが正面に位置し、操作レバー12の表面から最も突出した状態になるため、運転者がグリップ部12gを握っているときに、突出部31tが、比較的強く、運転者の触覚に作用する。また、運転者は、この手の感触に基づいて、距離Dが目標距離Lに達したことを知ることができる。
【0064】
また、上記(ii)の場合(距離Dが目標距離Lの近傍に収まっているとき;L−X≦D≦L+X)は、突出部31tが、正面位置の近傍に位置し、距離Dと目標距離Lとの差は、「正面位置に対する、突出部31tの現在位置のずれの大きさ」に相当する。
そのため、運転者は、突出部31tの位置の、正面位置からのずれの大きさから、現在の距離Dを、触覚的に(手の感覚で)知ることができる。そして、運転者は、突出部31tの円周上の位置を触覚的に確認しながら(突出部31tが正面位置にある状態を目標にして)、操作レバー12の操作を行なって、把持装置11を移動させることが可能となる。
【0065】
また、上記(ii)の場合に、突出部31tは、Dが大きくなるほど、回転方向Gに沿ってG2側へ移動し、Dが小さくなるほどG1側へ移動する。
【0066】
このように、円板31は、距離Dの長さに応じて回転する。そして、円板31の回転に伴い、突出部31tが、運転者の手に接触し、運転者の触覚に作用する。このため、運転者は、突出部31tの位置(回転方向に関する位置)を目安として、建設機械10と作業対象80との間の詳細な位置関係を確認できる。
【0067】
なお、本実施形態では、距離Dがどのような値であっても、第1角度θ1の値は、0度乃至180度の範囲内に収まるが、第1角度θ1の範囲に制限がなくてもよく、突出部31tが、グリップ部12gの内側を向くことがあってもよい。
【0068】
(近接情報伝達手段)
次に、近接情報伝達手段5について説明する。近接情報伝達手段5は、建設機械10の運転者の触覚に作用して、運転者に把持装置11及び作業対象80の接触の情報を伝えるものであり、近接情報伝達手段5は、操作レバー12に設けられている。近接情報伝達手段5は、円柱部(接触部)51、減速機52、モーター53、及び回転軸54を有している。モーター53は、制御装置4に対して電気的に接続されている。
【0069】
円柱部51は、運転者に接触して、当該運転者の触覚に作用するように動作(回転移動)する固形物である。
【0070】
回転軸54は、モーター53の回転軸に取り付けられており、モーター53によって回転力を与えられる。また、円柱部51は、回転軸54の先端に固定されており、円柱部51は、回転軸54の回転に伴って回転する。また、回転軸54は、クランク状シャフト(曲軸)であり、二箇所で直角に折れ曲がっている。具体的には、回転軸54は、第1軸54a、第2軸54b、及び第3軸54cの三本の軸から成る。第1軸54a及び第3軸54cは、軸方向Cに沿っており、第2軸54bは、第1軸54a及び第3軸54cに対して垂直に延びている。第1軸54a及び第3軸54cは、第2軸54bの両端から延びており、また、第1軸54a及び第3軸54cは、第2軸54bに対して互いに反対方向に向かって延びている。
【0071】
第3軸54cの一部は、モーター53の回転軸となっており、回転軸54の全体は、モーター53によって回転力を与えられる。また、円柱部51は、第1軸54aの先端に固定されており、円柱部51は、回転軸54の回転に伴って回転移動する。具体的には、円柱部51は、モーター53の中心(第3軸54c)を回転中心とし、また、第2軸54bの長さを回転半径として、図の矢印方向Eに沿って回転移動する(図6及び図7参照)。以下、この方向を回転方向Eとする。また、図のE1は、図7における時計回りの回転方向であり、図のE2は、反時計回りの回転方向である。
【0072】
円柱部51は、操作レバー12に収容されている。そして、減速機52、モーター53、及び回転軸54は、操作レバー12の内部に配置されている。また、円柱部51は、通常時(非接触時)には操作レバー12の内側に位置している。近接センサ22で接触が検知されたときには、第2貫通孔12jから、円柱部51が突出する。なお、図7は、近接センサ22で接触が検知されたときに、円柱部51が正面位置へ移動している途中の状態を示している。
【0073】
円柱部51が、グリップ部12gにおいて最も内側に位置しているときに、円柱部51の中心51oと、減速機52の中心52oとを結ぶ線分に沿った方向を、方向Jとする。図7の第2角度θ2は、方向Jに沿って延びる線と、中心51o及び中心52oを結ぶ線分とがなす角度である。円柱部51がグリップ部12gにおいて最も内側に位置しているとき(非接触時)に、第2角度θ2は0度となる。
【0074】
(i)通常時(非接触時)には、円柱部51はグリップ部12gの内部に収容された状態となっており、運転者がグリップ部12gを握っても、手が円柱部51に触れることはない。非接触時(一方の近接センサ22のみで接触が検知された場合、又は、二つの近接センサ22の両方とも非接触の場合)には、第2角度θ2は0度となる。
【0075】
(ii)一方、二つの近接センサ22で接触が検知されると、第2角度θ2が180度となるように、円板31が回転する。すなわち、「接触時」(二つの近接センサ22で接触が検知されたとき)には、円柱部51が、操作レバー12において正面に位置するようになる(図8の「正面位置」参照)。そして、接触時には、円柱部51が、第2貫通孔12jから、グリップ部12gの外側へ突出した状態になる。そして、この状態では、運転者がグリップ部12gを握っているときに、運転者の手が円柱部51に触れる。そのため、運転者は、二つの把持部が作業対象80に接触していることを、触覚的に知ることができる。そして、運転者は、円柱部51の位置を触覚的に確認しながら(円柱部51が突出した状態を目標にして)、操作レバー12の操作を行なって、把持装置11を移動させることが可能となる。
【0076】
また、第2角度θ2が0度であるときに、二つの近接センサ22で接触が検知されると、円柱部51は、回転方向Eに沿ってE1側へ移動する。また、第2角度θ2が180度であるときに、非接触状態になると、円柱部51は、回転方向Eに沿ってE2側へ移動する。
【0077】
なお、本実施形態では、円柱部51が第1軸54aに対して固定されており、円柱部51は、第1軸54aに対して回転できない。しかし、このような形態には限られず、円柱部51は、第1軸54aを回転軸として回転できるようになっていてもよい。この場合に、第1軸54aと、円柱部51の貫通孔内面との間に、ベアリングなどが設けられていることが望ましい。
【0078】
(制御装置)
制御装置4には、第1制御部(第1制御手段)41、第2制御部(第2制御手段)42、及び記憶部43が含まれる。制御装置4は、コンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)を含む。
【0079】
(記憶部)
記憶部43は、(i)RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの一次記憶装置、及び、(ii)ハードディスクドライブなどの二次記憶装置、から構成される。記憶部43には、制御装置4の内部のCPUを、第1制御部41、第2制御部42として機能させる制御プログラムが保存されている。また、記憶部43には、L、Xなどの値が記録されている。
【0080】
(第1制御部)
第1制御部41は、距離伝達手段3を制御する部分である。第1制御部41は、円板31による触覚への作用を、距離センサ21で検知された距離の長さに関連させて変化させる。具体的には、第1制御部41は、距離センサ21で検知された距離Dの長さに関連させて、モーター33を回転させる。すなわち、第1制御部41は、距離Dの長さに関連させて、円板31の中心31oを回転中心として、円板31を回転させる。
【0081】
(第2制御部)
第2制御部42は、近接情報伝達手段5を制御する部分である。第2制御部42は、円柱部51による触覚への作用を、二つの近接センサ22で検知された接触の情報に関連させて変化させる。具体的には、第2制御部42は、二つの近接センサ22で接触が検知されたときに、モーター53を回転させ、操作レバー12に形成された第1貫通孔12hから、円柱部51を突出させる。
【0082】
(制御例)
次に、制御装置4による制御例について説明する。図9のフローチャートに示す制御(STARTからENDまでの制御)は、周期的に(例えば10 μs毎に)繰り返される。最初の状態では、第2角度θ2は0度であり、円柱部51は、グリップ部12gの内部に位置しているものとする。
【0083】
まず、第2制御部42は、二つの近接センサ22で、「把持装置11及び作業対象80の接触が検知されたかどうか」を判断する(図のステップS101参照)。このステップでは、「二つの把持部が、作業対象80に接触しているかどうか」が判断される。
【0084】
第2制御部42において、二つの把持部が作業対象80に接触していると判断された場合には(S101:YES)、第2制御部42は、目標角度θ2nextを180度に設定する。そして、記憶部43に、θ2next = 180[°]という情報を記録する。
【0085】
その後、第2制御部42は、現在の第2角度θ2が、目標角度θ2nextに達するまで、モーター53を回転させる(S104)。すなわち、第2角度θ2が180度になるまでモーター53を回転させる。
【0086】
一方、S101において、作業対象80が、二つの把持部に接触していない(すなわち、(i)作業対象80が、二つの把持部の一方のみに接触している、又は、(ii)二つの把持部のいずれにも接触していない)場合には(S101:NO)、第2制御部42は、目標角度θ2nextを0度に設定する。そして、記憶部43に、θ2next = 0[°]という情報を記録する。
【0087】
その後、第2制御部42は、現在の第2角度θ2が、目標角度θ2nextに達するまで、モーター53を回転させる(S104)。すなわち、第2角度θ2が0度になるまでモーター53を回転させる。なお、当初の状態から、未接触の状態が続いている場合には、第2角度θ2は0度のままなので、モーター53は回転しない。一方、二つの近接センサ22で接触が検知され、第2角度θ2が180度の状態である場合には、モーター53が回転して、第2角度θ2は0度に戻される。
【0088】
次に、第1制御部41は、距離センサ21で検知された距離Dが、「L−X以上、且つ、L+X以下」であるかどうかを判断する(S105)。
【0089】
第1制御部41において、距離センサ21から作業対象80までの距離Dが、L±Xの範囲内にあると判断された場合には(S105:YES)、第1制御部41は、目標角度θ1nextを、次の式を用いて計算する(S106)、
目標角度θ1next = cos−1((D−L)/X)
そして、記憶部43に、θ1next =cos−1((D−L)/X)の計算結果の情報を記録する。
なお、「(D−L)/X」は、領域[L−X,L+X]の範囲内のDの位置を、領域[−1,1]内の位置として規格化(正規化)したものに相当する。
【0090】
その後、第1制御部41は、現在の第1角度θ1が、計算された目標角度θ1nextに達するまで、モーター33を回転させる(S110)。
【0091】
一方、S105において、距離センサ21から作業対象80までの距離Dが、L±Xの範囲内にないと判断された場合には(S105:NO)、第1制御部41は、距離Dが、L−Xよりも小さいかどうかを判断する(S107)。
【0092】
距離DがL−Xよりも小さかった場合には(S107:YES)、第1制御部41は、目標角度θ1nextを180度に設定する(S108)。そして、記憶部43に、θ1next = 180[°]という情報を記録する。
【0093】
その後、第1制御部41は、現在の第1角度θ1が目標角度θ1nextに達するまで、モーター33を回転させる(S110)。すなわち、第1角度θ1が180度になるまでモーター33を回転させる。
【0094】
一方、S107において、距離DがL−X以上である場合(すなわち、距離DがL+Xよりも大きい場合)には、第1制御部41は、目標角度θ1nextを0度に設定する(S109)。そして、記憶部43に、θ1next = 0[°]という情報を記録する。
【0095】
その後、第1制御部41は、現在の第1角度θ1が目標角度θ1nextに達するまで、モーター33を回転させる(S110)。すなわち、第1角度θ1が0度になるまでモーター33を回転させる。本実施形態では、制御装置4において以上のような制御が行なわれる。
【0096】
(効果)
次に、本実施形態に係る作業支援装置により得られる効果について説明する。
本実施形態に係る作業支援装置は、建設機械10の把持装置(作業機)11に取り付けられ、当該把持装置11から作業対象80までの距離Dを検知する距離センサ21と、建設機械10の運転者の触覚に作用して、運転者に距離の情報を伝える距離伝達手段3と、距離伝達手段3を制御する第1制御部(第1制御手段)41と、を備える。
距離伝達手段3は、運転者によって操作される、把持装置11を動作させるための操作レバー(被操作手段)12に設けられており、且つ、運転者に接触して、当該運転者の触覚に作用するように動作する円板(接触部)31を有する。
第1制御部41は、円板31による触覚への作用を、距離センサ21で検知された距離Dの長さに関連させて変化させる。
【0097】
この構成では、距離伝達手段3の触覚への作用が、把持装置11から作業対象80までの距離Dに応じて変化する。そのため、運転者は、視覚的情報を用いることなく、把持装置11と作業対象80との間の詳細な位置関係を確認しながら、操作レバー12を操作して把持装置11を制御できる。
また、運転者は、作業対象80までの距離を、触覚を通して、容易且つ明瞭に確認することができる。
【0098】
また、本実施形態に係る作業支援装置において、距離伝達手段3に設けられた接触部は、円板31であり、当該円板31の外周には、径方向に沿って延びる突出部31tが形成されており、第1制御部41は、円板31を、距離センサ21で検知された距離Dの長さに関連させて、円板31の中心31oを回転中心として回転させる。
【0099】
この構成では、把持装置11から作業対象80までの距離Dに応じて、円板31が回転する。そして、円板31の回転に伴い、突出部31tが、運転者の手に接触し、運転者の触覚に作用する。このため、運転者は、突出部31tの位置(回転方向Gに関する位置)を目安として、把持装置11と作業対象80との間の詳細な位置関係を確認できる。
【0100】
また、本実施形態に係る作業支援装置は、把持装置11に取り付けられ、当該把持装置11及び作業対象80の接触(近接)を検知する二つの近接センサ22と、運転者の触覚に作用して、運転者に、把持装置11及び作業対象80の接触(近接)の情報を伝える近接情報伝達手段5と、近接情報伝達手段5を制御する第2制御部(第2制御手段)42と、さらに備える。
また、近接情報伝達手段5は、運転者によって操作される、把持装置11を動作させるための操作レバー(被操作手段)12に設けられており、且つ、運転者に接触して、当該運転者の触覚に作用するように動作する円柱部(接触部)51を有し、第2制御部42は、円柱部51による触覚への作用を、二つの近接センサ22で検知された接触の情報に関連させて変化させる。
【0101】
この構成では、把持装置11と作業対象80とが接触すると、円柱部51が操作レバー12から突出し、近接情報伝達手段5の触覚への作用が、非接触の状態に対して変化する。そのため、運転者は、視覚的情報を用いることなく、把持装置11と作業対象との間の詳細な位置関係、及び、把持装置11及び作業対象80の接触状態を確認しながら、操作レバー12を操作して把持装置11を制御できる。
また、運転者は、把持装置11と作業対象80とが接触したことを、触覚を通して、容易且つ明瞭に確認することができる。
【0102】
また、実施形態に係る作業支援装置において、近接情報伝達手段5に設けられた円柱部51は、操作レバー12に収容されており、第2制御部42は、二つの近接センサ22で接触が検知されたときに、操作レバー12に形成された第2貫通孔(穴)12jから、円柱部51を突出させる。
【0103】
この構成では、把持装置11が作業対象80に接触したときに、円柱部51が移動する。そして、円柱部51が操作レバー12から突出したときに、円柱部51は、運転者の手に接触して、運転者の触覚に作用する。このため、運転者は、円柱部51の操作レバー12からの突出を目安として、把持装置11と作業対象80とが接触したことを確認できる。
【0104】
また、本実施形態に係る作業支援装置において、作業機は、開閉動作する把持装置11である。これにより、運転者は、把持装置11と作業対象80との詳細な位置関係を確認でき、また、作業対象80までの距離を、触覚的に、容易且つ明瞭に確認できる。
【0105】
(その他の効果)
(i)この構成では、距離Dが目標距離Lの近傍にくると、円板31が回転を開始する。そのため、運転者は、把持装置11が作業対象80に近い位置にあることを、「円板31が回転を開始したこと」により触覚的に知ることができる。
(ii)また、距離Dが目標距離Lに等しいときに、突出部31tが正面に位置し、且つ、距離Dの長さに応じて、突出部31tの位置が変化するので、運転者は、突出部31tの位置(正面位置からのずれ)を触覚的に確認しながら、把持装置11を作業対象80に近づけることができる。
【0106】
(I)この構成によると、作業対象80と二つの近接センサ22とが接触したタイミングを、運転者は、「円柱部51の回転動作」により触覚的に知ることができる。
(II)作業対象80と二つの近接センサ22との接触状態、または非接触状態を、運転者は、「円柱部51の位置」により触覚的に確認できる。
【0107】
また、例えば、リサイクル可能な車体、家電製品などを、把持装置を用いて把持する必要がある場合には、把持対象をできるだけ損傷しないようにするため、繊細な作業が求められる。本実施形態によると、運転者が、作業対象までの距離や、接触状態を詳細に把握できるので、把持対象を、その損傷を抑制しつつ、確実に把持することができる。
【0108】
また、建設機械による作業において、作業領域の確認のために、カメラ及びモニターを用いる場合には、作業領域を直接見ていた運転者は、モニターへわざわざ視線を移す必要が生じる。そのため、運転者の作業効率が低下し、また、作業負担が増大する。
また、作業領域の確認のため、鏡を用いる場合であっても、鏡が運転者から遠い位置にあれば、鏡から情報を読み取ることが難しくなり、運転者の作業負担が増大する可能性がある。
本発明の作業支援装置によると、運転者が、視覚的情報を用いることなく、作業領域の情報を触覚的に確認できるので、作業効率の低下や、作業負担の増大を抑制できる。
【0109】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図10を用いて説明する。なお、上記の実施形態と同様の部分については、図に同一の符号を付してその説明を省略する。図10は、第2実施形態に係る距離伝達手段を示す断面図である。以下、上記の実施形態とは異なる部分を中心に説明し、上記の実施形態と同様の事項については、その説明を省略する。
【0110】
図10に示すように、本実施形態に係る距離伝達手段103においては、円板31が、上記の距離伝達手段3の円板31に比べて、グリップ部12gの、より内側に収容されている。具体的には、円板31のうち、突出部31tを除く本体部分は、全てグリップ部12gの表面より内側に位置しており、また、第1角度θ1が90度のときには、突出部31tのみが、グリップ部12gの外側へ突出する。距離伝達手段はこのように配置されていてもよい。
【0111】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下、上記の実施形態とは異なる部分を中心に説明し、上記の実施形態と同様の事項については、その説明を省略する。
【0112】
本実施形態においては、距離伝達手段、及び、近接情報伝達手段の機械的構成が、上記の第1実施形態とは異なる。具体的には、本実施形態の距離伝達手段が、上記の近接情報伝達手段5の構成に相当し、また、本実施形態の近接情報伝達手段が、上記の距離伝達手段3の構成に相当する。
また、本実施形態においては、第1制御部(第1制御手段)、第2制御部(第1制御手段)による制御内容、及び、記憶部の記録内容が、上記の第1実施形態とは異なる。
【0113】
本実施形態においては、距離伝達手段に設けられた円柱部(接触部)51が、操作レバー12に収容されている。そして、第1制御部(第1制御手段)は、距離Dの長さに関連させてモーター53を回転させる。そして、第1制御部は、円柱部51を、距離センサ21で検知された距離Dの長さに関連させて移動させ、且つ、距離Dが目標距離(所定距離)Lに達したときに、操作レバー12に形成された第2貫通孔(穴)12jから、円柱部を突出させる。
【0114】
また、近接情報伝達手段には、接触部として円板31が設けられている。そして、第2制御部(第2制御手段)は、近接センサ22で接触が検知されたときに、モーター33を回転させる。すなわち、第2制御部は、円板31の中心を回転中心として、円板31を回転させる。作業支援装置は、このように構成されていてもよい。
【0115】
(効果)
本構成による効果について説明する。本実施形態に係る作業支援装置においては、距離伝達手段に設けられた円柱部(接触部)51は、操作レバー12に収容されており、第1制御部(第1制御手段)は、円柱部51を、距離センサ21で検知された距離Dの長さに関連させて移動させ、且つ、距離Dが目標距離(所定距離)Lに達したときに、操作レバー12に形成された第2貫通孔(穴)12jから、円柱部51を突出させる。
【0116】
この構成では、把持装置11から作業対象80までの距離に応じて、円柱部51が移動する。そして、円柱部51が操作レバー12から突出したときに、円柱部51は、運転者の手に接触して、運転者の触覚に作用する。このため、運転者は、円柱部51の操作レバー12からの突出を目安として、把持装置11と作業対象80との間の詳細な位置関係を確認できる。
【0117】
また、本実施形態に係る作業支援装置においては、近接情報伝達手段に設けられた接触部は、円板31であり、当該円板31の外周には、径方向に沿って延びる突出部31tが形成されており、第2制御部(第2制御手段)は、二つの近接センサ22で接触が検知されたときに、円板31の中心31oを回転中心として、円板31を回転させる。
【0118】
この構成では、把持装置11が作業対象80に接触したときに、円板31が回転する。そして、円板31の回転に伴い、突出部31tが、運転者の手に接触し、運転者の触覚に作用する。このため、運転者は、突出部31tの位置(回転方向Gに関する位置)を目安として、把持装置11と作業対象80とが接触したことを確認できる。
【0119】
(他の実施形態について)
本発明の実施の形態は、上記の実施形態には限られない。例えば、上記の実施形態において、近接センサ22によって検知されるのは、「二つの把持部が作業対象80に近接した状態」であるが、近接センサによって検知されるのが、「一方の把持部と作業対象80とが近接した状態」あってもよい。
【0120】
また、距離伝達手段3及び近接情報伝達手段5は、把持装置11の開閉動作を行なうための把持操作レバーに設けられていてもよい。
【0121】
また、上記の実施形態において、円柱部51は、モーターを中心として回転するが、円柱部(近接情報伝達手段の接触部)51は、方向Jに沿って直線往復移動(前後移動)するものであってもよい。この場合には、近接時に、円柱部51が最も突出した状態(前進状態)になり、非近接時には、円柱部51が最も後退した状態になる。
また、この直線移動する接触部が、距離伝達手段の接触部であって、且つ、距離Dに応じて、その突出量(操作レバー12の表面からの突出高さ)が変化するものであってもよい。この場合には、距離Dが目標距離(所定距離)Lに達したときに、接触部が操作レバー12から突出し、且つ、接触部の突出量が最大となる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、建設機械における作業支援装置として利用できる。
【符号の説明】
【0123】
10 建設機械
11 把持装置(作業機)
11b、11c 把持部
11d 油圧シリンダ
11g 支持部
11j 支持軸
12 操作レバー(被操作手段)
12c レバーブーツ
12g グリップ部
12h 第1貫通孔
12j 第2貫通孔(穴)
12k レバー軸
14 アーム
15 ブーム
16c キャビン
16t 走行装置
16w カウンターウェイト
21 距離センサ
22 近接センサ
3 距離伝達手段
31 円板(接触部)
31o 中心
31t 突出部
32 減速機
33 モーター
34 回転軸
4 制御装置
41 第1制御部(第1制御手段)
42 第2制御部(第2制御手段)
43 記憶部
5 近接情報伝達手段
51 円柱部(接触部)
52 減速機
53 モーター
54 回転軸(クランク状シャフト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械(10)の作業機(11)に取り付けられ、当該作業機から作業対象までの距離を検知する距離センサ(21)と、
前記建設機械の運転者の触覚に作用して、前記運転者に前記距離の情報を伝える距離伝達手段(3)と、
前記距離伝達手段を制御する第1制御手段(41)と、を備え、
前記距離伝達手段は、前記運転者によって操作される、前記作業機を動作させるための被操作手段(12)に設けられており、且つ、前記運転者に接触して、当該運転者の触覚に作用するように動作する接触部(31)を有し、
前記第1制御手段は、前記接触部による前記触覚への作用を、前記距離センサで検知された前記距離の長さに関連させて変化させることを特徴とする作業支援装置。
【請求項2】
前記距離伝達手段に設けられた前記接触部は、円板であり、
当該円板の外周には、径方向に沿って延びる突出部(31t)が形成されており、
前記第1制御手段は、前記円板を、前記距離センサで検知された前記距離の長さに関連させて、前記円板の中心を回転中心として回転させることを特徴とする請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記距離伝達手段に設けられた前記接触部は、前記被操作手段に収容されており、
前記第1制御手段は、前記接触部を、前記距離センサで検知された前記距離の長さに関連させて移動させ、且つ、前記距離が所定距離に達したときに、前記被操作手段に形成された穴から、前記接触部を突出させることを特徴とする、請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記作業機に取り付けられ、当該作業機及び前記作業対象の近接を検知する近接センサ(22)と、
前記運転者の触覚に作用して、前記運転者に、前記作業機及び前記作業対象の近接の情報を伝える近接情報伝達手段(5)と、
前記近接情報伝達手段を制御する第2制御手段(42)と、をさらに備え、
前記近接情報伝達手段は、前記運転者によって操作される、前記作業機を動作させるための被操作手段に設けられており、且つ、前記運転者に接触して、当該運転者の触覚に作用するように動作する接触部(51)を有し、
前記第2制御手段は、前記接触部による前記触覚への作用を、前記近接センサで検知された近接の情報に関連させて変化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の作業支援装置。
【請求項5】
前記近接情報伝達手段に設けられた前記接触部は、円板であり、
当該円板の外周には、径方向に沿って延びる突出部が形成されており、
前記第2制御手段は、前記近接センサで前記近接が検知されたときに、前記円板の中心を回転中心として、前記円板を回転させることを特徴とする、請求項4に記載の作業支援装置。
【請求項6】
前記近接情報伝達手段に設けられた前記接触部は、前記被操作手段に収容されており、
前記第2制御手段は、前記近接センサで前記近接が検知されたときに、前記被操作手段に形成された穴(12j)から、前記接触部を突出させることを特徴とする、請求項4に記載の作業支援装置。
【請求項7】
前記作業機は、開閉動作する把持装置であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の作業支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−277153(P2010−277153A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126499(P2009−126499)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】