説明

作業機の無線式操作装置

【課題】無線式指令手段の誤操作による被操作部の誤操作を防止できるものでありながら、被操作部を操作する場合の操作性の向上を図ることができる作業機の無線式操作装置を提供すること。
【解決手段】被操作部の作動についての複数種の操作指令を機体側制御手段に無線信号にて指令する手動操作式の無線式指令手段42が設けられ、無線式指令手段が、操作指令を指令する指令操作手段43〜50と、無線信号を出力する稼動状態と出力しない休止状態とに切換自在な出力制御手段53と、出力制御手段を稼動状態と休止状態とに切り換える動作状態切換手段56とを備え、動作状態切換手段が、出力制御手段が休止状態である場合に指令操作手段にて特定操作指令が指令されると、出力制御手段を稼動状態に切り換えるように構成されている作業機の無線式操作装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機本体に、被操作部と、その被操作部の作動を制御する機体側制御手段とが備えられ、前記被操作部の作動についての複数種の操作指令を前記機体側制御手段に無線信号にて指令する手動操作式の無線式指令手段が設けられ、前記無線式指令手段が、前記複数種の操作指令を指令する指令操作手段と、前記指令操作手段により前記複数種の操作指令が指令されると対応する無線信号を出力する稼動状態と、前記指令操作手段により前記複数種の操作指令が指令されても対応する無線信号を出力しない休止状態とに切り換え自在に構成されている出力制御手段と、前記出力制御手段を前記稼動状態と前記休止状態とに切り換える動作状態切換手段とを備えて構成されている作業機の無線式操作装置
に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の作業機の無線式操作装置は、作業機本体から離れた位置に居ながら、例えば、作業機の作動部を作動させる場合や作動部の作動を停止させる場合等、作業機の被操作部の作動を操作する場合に使用されるものである。無線式指令手段は無線信号により、被操作部の作動についての操作指令を指令するものであるため、作業者が携帯して、作業状況をより確認し易い位置まで移動し、作業状況を十分に把握しながら作業機の被操作部の作動を適確に操作することができるようになっている。
【0003】
例えば、被操作部として可動式の作動部が備えられている場合に、作業状況に応じてその可動部を動作させて作業機を使った作業を適切に行ったり、被操作部として運転操縦部に報知手段が備えられている場合に、作業状況に応じてその報知手段を報知作動させて、作業機本体に搭乗している運転者を呼出すことで、共同作業を円滑に行ったりすることができるのである。
【0004】
また、作業者が、無線式指令手段をしばらく使用しないと判断してポケットに入れた状態で携帯する場合等に、何らかの弾みで無線式指令手段の指令操作手段が誤操作されて作業機本体の被操作部の作動が不意に操作されることを防止するため、動作状態切換手段にて出力制御手段を稼動状態から休止状態に切り換えることで、無線式指令手段の指令操作手段が誤操作されても、出力制御手段が無線信号を出力しないようにしておくことができるようになっている。
【0005】
かかる作業機の無線式操作装置の従来例としては、動作状態切換手段が、無線式指令手段の出力制御手段に電力を供給する状態と供給しない状態とに切り換える電源スイッチにて構成されものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
特許文献1のものについて説明を加えると、電源スイッチをオフ操作すると、出力制御手段が電力の供給を受けない状態となるので、出力制御手段は、無線式指令手段の指令操作手段により操作指令が指令されても対応する無線信号を出力しない状態、つまり、休止状態になる。したがって、無線式指令手段をしばらくの間使用しないと作業者が判断した場合に、無線式指令手段の電源スイッチをオフ操作することで、その後は、無線式指令手段の指令操作手段が誤操作されても、不意に作業機本体の被操作部が作動することのないようにすることができるものである。
【0007】
【特許文献1】特開2003−325032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の構成であると、出力制御手段が一旦休止状態となると、電源スイッチをオン操作しない限り、無線式指令手段の指令操作手段を操作して操作指令を指令しても、対応する無線信号は出力されない。このため、出力制御手段が休止状態に切り換えられてから、被操作部の作動を緊急的に操作する必要が発生したときに、休止状態に切り換えられていることに気付かないまま、操作指令を指令すべく慌てて指令操作手段を操作したところで、被操作部の作動を操作することができない、といった問題が生じうるものであった。
【0009】
例えば、被操作部としての可動式の作動部が動作中に、作動部の動作を停止させる必要が発生したときに、無線式指令手段を携帯している作業者が、出力制御手段が休止状態に切り換えられていることに気付かないまま、停止指令を指令すべく慌てて指令操作手段を操作したところで、出力制御手段が休止状態であるため、停止指令に対応する無線信号は出力されず、作動部の動作を停止させることができない。
【0010】
また、冷静な対応をするとしても、電源スイッチをオン操作してから、指令操作手段により停止指令を指令するといった二段階の操作が必要であり、作動部を速やかに停止させることができない。このため、作動部の作動が、例えば、作業機としてのコンバインが備える作動部としてのオーガを自動的に格納位置に移動させるものであると、オーガの移動中に障害物との接触を予見して緊急に停止させるといったように緊急に作動部の作動を停止させる操作を行う場合には、停止指令を指令するまでに手間取ってしまい、作動部の停止操作が間に合わないといった問題が生じうる虞があるものであった。
【0011】
さらに、例えば、作業機本体を運転する作業者を呼び出す必要が緊急に発生したときに、無線式指令手段を携帯している作業者が、報知手段の報知作動を開始させる報知開始指令を指令すべく指令操作手段を操作したところで、既に電源スイッチがオフ操作されて出力制御手段が休止状態に切換えられていると、報知開始指令に対応する無線信号は出力されず、報知手段を報知作動させることができない。したがって、作業機本体を運転する作業者を呼び出すためには、無線式指令手段の電源スイッチをオン操作して出力制御手段を稼動状態に切換えてから、指令操作手段により報知開始指令を指令するといった二段階の操作が必要であり、作業機本体側の作業者を速やかに呼び出すことができないといった不都合があった。
【0012】
このように、従来の作業機の無線式操作装置は、被操作部の操作指令を指令する場合に不都合があるものであった。つまり、従来の作業機の無線式操作装置では、無線式指令手段の誤操作による被操作部の不意の作動を防止できるものではあるものの、被操作部を緊急に操作する場合の操作性を考慮すると無線式指令手段の操作性については改善の余地があった。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、無線式指令手段の誤操作による被操作部の誤操作を防止できるものでありながら、被操作部を操作する場合の操作性の向上を図ることができる作業機の無線式操作装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる作業機の無線式操作装置は、作業機本体に、被操作部と、その被操作部の作動を制御する機体側制御手段とが備えられ、前記被操作部の作動についての複数種の操作指令を前記機体側制御手段に無線信号にて指令する手動操作式の無線式指令手段が設けられ、前記無線式指令手段が、前記複数種の操作指令を指令する指令操作手段と、前記指令操作手段により前記複数種の操作指令が指令されると対応する無線信号を出力する稼動状態と、前記指令操作手段により前記複数種の操作指令が指令されても対応する無線信号を出力しない休止状態とに切り換え自在に構成されている出力制御手段と、前記出力制御手段を前記稼動状態と前記休止状態とに切り換える動作状態切換手段とを備えて構成されている作業機の無線式操作装置であって、その第1特徴構成は、前記動作状態切換手段が、前記出力制御手段が前記休止状態である場合に前記指令操作手段にて前記複数種の操作指令のうちの特定の特定操作指令が指令されると、前記出力制御手段を前記稼動状態に切り換えるように構成されている点にある。
【0015】
本発明の第1特徴構成によると、出力制御手段が休止状態である場合に指令操作手段にて特定操作指令が指令されると、動作状態切換手段が出力制御手段を稼動状態に切り換えるので、出力制御手段が休止状態であっても、指令操作手段にて特定操作指令を指令すると、特定操作指令に対応する無線信号が出力されることになる。
【0016】
したがって、出力制御手段が休止状態であって、稼動状態に切り換えなければ指令操作手段にて操作指令を指令しても対応する無線信号が出力されない状態において、特定操作指令にて作動が指令される被操作部を緊急に操作する必要が生じた場合には、出力制御手段を稼動状態に切り換える別途の操作をすることなく、特定操作指令を指令する操作だけで、被操作部の作動を操作することができる。
【0017】
つまり、指令操作手段の誤操作により被操作部が不意に操作されないようにするために出力制御手段が休止状態に切り換えられていたとしても、作業者は、稼動状態において操作指令を指令する場合と同様の操作により特定操作指令にて操作される被操作部の作動を操作することができるので、当該被操作部を操作する場合に、出力制御手段の動作状態に応じて異なった操作をする必要はなく、出力制御手段の動作状態を意識せずに特定操作指令を指令するだけの操作を行えばよい。
【0018】
このように、本発明の第1特徴構成によると、無線式指令手段の誤操作による被操作部の誤操作を防止できるものでありながら、被操作部を操作する場合の操作性の向上を図ることができる作業機の無線式操作装置を得るに至った。
【0019】
本発明の第2特徴構成は、本発明の第1特徴構成において、前記動作状態切換手段が、前記出力制御手段に対する電力の供給の断続により前記稼動状態と前記休止状態とに切り換えるように構成されている点にある。
【0020】
本発明の第2特徴構成によると、前記動作状態切換手段により出力制御手段が休止状態に切り換えられると、出力制御手段に電力が供給されなくなるので、出力制御手段が休止状態である場合には、無線式指令手段の消費電力が低下する。したがって、無線式指令手段を使用しないときは出力制御手段を休止状態に切り換えておくことにより、無駄な消費電力量を減らすことができ、無線式指令手段の動作用の電源(例えば、乾電池や充電池等)を長持ちさせることができる。
【0021】
このように、本発明の第2特徴構成によると、無線式指令手段の誤操作による被操作部の誤操作を防止できるものでありながら、被操作部を操作する場合の操作性の向上を図ることができ、しかも、電池の交換や充電池の充電といった作業をできる限りしなくて済む点でメンテナンス性が良い作業機の無線式操作装置を得るに至った。
【0022】
本発明の第3特徴構成は、本発明の第2特徴構成において、前記無線式指令手段が、前記出力制御手段を前記稼動状態にする稼動指令及び前記休止状態にする休止指令を指令する手動操作式の入切指令手段を備えるように構成され、前記動作状態切換手段が、前記入切指令手段にて指令される前記稼動指令及び前記休止指令に基づいて前記出力制御手段を前記稼動状態及び前記休止状態に切り換え、且つ、前記出力制御手段の稼動状態において、前記指令操作手段による前記制御指令及び前記停止指令の指令が設定時間継続して指令されないときには自動的に前記出力制御手段を前記休止状態に切り換えるように構成されている点にある。
【0023】
本発明の第3特徴構成によると、作業者は、入切指令手段を操作して休止指令を指令することにより、出力制御手段を休止状態とすることができる。また、作業者が指令操作手段による制御指令及び停止指令の指令を設定時間継続して指令しないときには、動作状態切換手段により前記出力制御手段が自動的に休止状態に切り換えられる。したがって、作業者が意識して入切指令手段を操作する場合のみならず、作業者が入切指令手段を操作しない場合にも、指令操作手段の誤操作による被操作部の誤操作の防止や無駄な消費電力量の削減をすることができる。
【0024】
そして、出力制御手段が休止状態であるときに、作業者が特定操作指令を指令すると、前記出力制御手段が稼動状態に復帰して、特定操作指令に対応した無線信号が無線式指令手段から出力されるので、動作状態切換手段により前記出力制御手段が自動的に休止状態に切り換えられて、前記出力制御手段が休止状態であることを作業者が認識していない場合でも、被操作部の作動を操作する必要が発生したときには、指令操作手段を操作して特定操作指令を指令することで、被操作部の作動を操作することができる。
【0025】
このように、本発明の第3特徴構成によると、無線式指令手段の誤操作による被操作部の誤操作を防止できるものでありながら、被操作部を操作する場合の操作性の向上を図ることができ、しかも、無線式指令手段の誤操作防止や省電力化のために出力制御手段が自動的に休止状態に切り換わる構成の場合においても、出力制御手段の動作状態を意識することなく特定操作指令を的確迅速に指令できる作業機の無線式操作装置を得るに至った。
【0026】
本発明の第4特徴構成は、本発明の第1〜第3特徴構成のいずれかにおいて、前記被操作部として、可動式の作動部が備えられ、前記無線式指令手段の前記指令操作手段が、前記作動部の作動についての制御指令及び前記作動部の作動を停止させる停止指令を指令するように構成され、前記無線式指令手段の前記動作状態切換手段が、前記出力制御手段が前記休止状態である場合に前記指令操作手段にて前記特定操作指令としての前記停止指令が指令されると、前記出力制御手段を前記稼動状態に切り換えるように構成されている点にある。
【0027】
本発明の第4特徴構成によると、出力制御手段が休止状態である場合に指令操作手段にて停止指令が指令されると、動作状態切換手段が出力制御手段を稼動状態に切り換えるので、出力制御手段が休止状態であっても、指令操作手段にて停止指令を指令すると、停止指令に対応する無線信号が出力されることになる。
【0028】
したがって、出力制御手段が休止状態であって、稼動状態に切り換えなければ指令操作手段にて制御指令を指令しても対応する無線信号が出力されない状態において、作動部の作動を緊急に停止させる必要が生じた場合には、出力制御手段を稼動状態に切り換える別途の操作をすることなく、停止指令を指令する操作だけで、作動部の作動を停止させることができる。
【0029】
つまり、指令操作手段の誤操作により作動部が不意に動作しないようにするために出力制御手段が休止状態に切り換えられていたとしても、作業者は、稼動状態において停止指令を指令する場合と同様の操作により作動部の作動を停止させることができるので、作動部の作動を停止させる場合に、出力制御手段の動作状態に応じて異なった操作をする必要はなく、出力制御手段の動作状態を意識せずに停止指令を指令するだけの操作を行えばよい。
【0030】
このように、本発明の第4特徴構成によると、無線式指令手段の誤操作による作動部の誤動作を防止できるものでありながら、作動部の作動を停止させる場合の操作性の向上を図ることができる作業機の無線式操作装置を得るに至った。
【0031】
本発明の第5特徴構成は、本発明の第1〜第3特徴構成のいずれかにおいて、前記被操作部として、前記作業機本体の運転操縦部に装備された呼出し用の報知手段が備えられ、前記無線式指令手段の前記指令操作手段が、前記報知手段の報知作動を開始させる報知開始指令及び前記報知手段の報知作動を停止させる報知停止指令を指令するように構成され、前記無線式指令手段の前記動作状態切換手段が、前記出力制御手段が前記休止状態である場合に前記指令操作手段にて前記特定操作指令としての前記報知開始指令が指令されると、前記出力制御手段を前記稼動状態に切り換えるように構成されている点にある。
【0032】
本発明の第5特徴構成によると、出力制御手段が休止状態である場合に指令操作手段にて報知開始指令が指令されると、動作状態切換手段が出力制御手段を稼動状態に切り換えるので、出力制御手段が休止状態であっても、指令操作手段にて報知開始指令を指令すると、報知開始指令に対応する無線信号が出力されることになる。
【0033】
したがって、出力制御手段が休止状態であって、稼動状態に切り換えなければ指令操作手段にて操作指令を指令しても対応する無線信号が出力されない状態において、報知手段の報知作動を緊急に開始させる必要が生じた場合には、出力制御手段を稼動状態に切り換える別途の操作をすることなく、報知開始指令を指令する操作だけで、報知手段の報知作動を開始させることができる。
【0034】
つまり、指令操作手段の誤操作により報知手段が不意に報知作動しないようにするために出力制御手段が休止状態に切り換えられていたとしても、作業者は、稼動状態において報知開始指令を指令する場合と同様の操作により報知手段の報知作動を開始させることができるので、報知手段の報知作動を開始させる場合に、出力制御手段の動作状態に応じて異なった操作をする必要はなく、出力制御手段の動作状態を意識せずに報知開始指令を指令するだけの操作を行えばよい。
【0035】
このように、本発明の第5特徴構成によると、無線式指令手段の誤操作による報知手段の誤作動を防止できるものでありながら、報知手段の報知作動を開始させる場合の操作性の向上を図ることができる作業機の無線式操作装置を得るに至った。
【0036】
本発明の第6特徴構成は、本発明の第1〜第3特徴構成のいずれかにおいて、前記被操作部として、可動式の作動部、及び、前記作業機本体の運転操縦部に装備された呼出し用の報知手段が備えられ、前記無線式指令手段の前記指令操作手段が、前記作動部の作動についての制御指令及び前記作動部の作動を停止させる停止指令、並びに、前記報知手段の報知作動を開始させる報知開始指令及び前記報知手段の報知作動を停止させる報知停止指令を指令するように構成され、前記無線式指令手段の前記動作状態切換手段が、前記出力制御手段が前記休止状態である場合に前記指令操作手段にて前記特定操作指令としての前記停止指令又は前記報知開始指令が指令されると、前記出力制御手段を前記稼動状態に切り換えるように構成されている点にある。
【0037】
本発明の第6特徴構成によると、出力制御手段が休止状態である場合に指令操作手段にて停止指令又は報知開始指令が指令されると、動作状態切換手段が出力制御手段を稼動状態に切り換えるので、出力制御手段が休止状態であっても、指令操作手段にて停止指令又は報知開始指令を指令すると、停止指令又は報知開始指令に対応する無線信号が出力されることになる。
【0038】
したがって、出力制御手段が休止状態であって、稼動状態に切り換えなければ指令操作手段にて制御指令を指令しても対応する無線信号が出力されない状態において、作動部の作動を緊急に停止させる必要が生じた場合や、報知手段の報知作動を緊急に開始させる必要が生じた場合には、出力制御手段を稼動状態に切り換える別途の操作をすることなく、停止指令又は報知開始指令を指令する操作だけで、作動部の作動を停止させ、又は、報知手段の報知作動を開始させることができる。
【0039】
つまり、指令操作手段の誤操作により作動部や報知手段が不意に作動しないようにするために出力制御手段が休止状態に切り換えられていたとしても、作業者は、稼動状態において停止指令や報知開始指令を指令する場合と同様の操作により作動部の作動を停止させたり、報知手段の報知作動を開始させたりすることができるので、作動部の作動を停止させる場合や、報知手段の報知作動を開始させる場合に、出力制御手段の動作状態に応じて異なった操作をする必要はなく、出力制御手段の動作状態を意識せずに停止指令や報知開始指令を指令するだけの操作を行えばよい。
【0040】
このように、本発明の第6特徴構成によると、無線式指令手段の誤操作による作動部や報知手段の誤作動を防止できるものでありながら、作動部の作動を停止させる場合の操作性及び報知手段の報知作動を開始させる場合の操作性の向上を図ることができる作業機の無線式操作装置を得るに至った。
【0041】
本発明の第7特徴構成は、本発明の第4〜第6特徴構成のうちのいずれか一つにおいて、前記作業機本体に、前記作動部の作動についての前記制御指令及び前記作動部の作動を停止させる前記停止指令を指令する機体側の指令手段が設けられ、前記機体側制御手段が、前記無線式指令手段及び前記機体側の指令手段の一方にて前記停止指令が指令され且つ他方にて前記制御指令が指令されたときには、前記停止指令を優先して前記作動部を停止させるように構成されている点にある。
【0042】
本発明の第7特徴構成によると、無線式指令手段及び機体側の指令手段の一方にて停止指令が指令され且つ他方にて制御指令が指令されたときには、停止指令を優先して作動部の作動を停止させるので、無線式指令手段を操作する作業者と、機体側の指令手段を操作する作業者とが共同して作業機を扱う場合に、機体側の指令手段を操作する作業者の不注意により、作動部の不適切な操作が行われたときには、それに気付いた無線式指令手段を携帯している作業者が、無線式指令手段の指令操作手段を操作して停止指令を指令することにより、作動部の不適切な操作を中止させることができる。
【0043】
無線式指令手段の出力制御部が休止状態であっても稼動状態であっても、指令操作手段を操作して停止指令を指令するだけで停止指令を指令することができるので、無線式指令手段をしばらく使用しない作業状況であったために、作業者が事前に入切指令手段にて指令した休止指令に基づいて、或いは、自動的に、出力制御手段が休止状態に切り換えられていても、迅速的確に停止指令を指令して、作動部の不適切な操作を中止させることができる。
【0044】
また、逆に、無線式指令手段を操作する作業者の不注意により、作動部の不適切な操作が行われたときには、機体側の指令手段を操作する作業者が機体側の指令手段を操作して停止指令を指令することにより、作動部の不適切な操作を中止させることができる。
【0045】
このように、本発明の第7特徴構成によると、無線式指令手段の誤操作による作動部の誤動作を防止できるものでありながら、いつでも簡単な操作により作動部の作動を停止させることができ、しかも、作業機本体に、前記作動部の作動についての前記制御指令及び前記作動部の作動を停止させる前記停止指令を指令する機体側の指令手段が設けられた構成の場合に、機体側の指令手段を操作する作業者又は無線式指令手段を操作する作業者の何れかの不注意により作動部の不適切な操作が行われたときには、他方の作業者が停止指令を指令して作動部の作動を停止させることにより、作動部の操作ミスによる不測の事態の発生を防止し得る作業機の無線式操作装置を得るに至った。
【0046】
本発明の第8特徴構成は、本発明の第7特徴構成において、前記機体側制御手段が、前記無線式指令手段及び前記機体側の指令手段の両者から前記制御指令が指令されたときには、前記無線式指令手段の前記制御指令を優先して前記作動部の作動を制御するように構成されている点にある。
【0047】
本発明の第8特徴構成によると、無線式指令手段及び前記機体側の指令手段の両者から前記制御指令が指令されたときには、無線式指令手段から指令された制御指令に基づいて作動部の作動が制御される。ここで、機体側の指令手段にて制御指令を指令する場合には、作業者は、機体側の指令手段が設置された位置から大きく離れることができないため、作業状況を十分に確認できない位置で制御指令を指令する虞れがあるのに対して、無線式指令手段にて制御指令を指令する場合には、作業者は、無線式指令手段を携帯して移動することにより、制御指令を指令操作する位置を変更できるため、作業状況をより把握し易い位置に移動することで、作業状況に応じた制御指令としてより適切な制御指令を指令することが可能である。したがって、無線式指令手段の前記制御指令を優先して前記作動部の作動を制御することにより、作業状況に応じた制御指令としてより適切な制御指令に基づいて作動部を作動させることができ、作業効率や作業品質を向上させることができる。
【0048】
このように、本発明の第8特徴構成によると、無線式指令手段の誤操作による作動部の誤動作を防止できるものでありながら、作動部の作動を停止させる場合の操作性の向上を図ることができ、しかも、作業効率や作業品質を向上させることができる作業機の無線式操作装置を得るに至った。
【0049】
本発明の第9特徴構成は、本発明の第7又は第8特徴構成において、前記作業機本体としてのコンバイン本体に、前記作動部としての穀粒排出オーガが旋回及び昇降自在に並びに穀粒排出状態と排出停止状態とに切換自在に設けられ、前記機体側制御手段が、前記穀粒排出オーガを旋回及び昇降作動させる旋回昇降駆動手段並びに前記穀粒排出状態と排出停止状態とに切り換える排出駆動手段の作動を制御するように構成され、前記無線式指令手段及び前記機体側の指令手段が、前記制御指令として、前記穀粒排出オーガを旋回及び昇降させる指令並びに少なくとも前記排出停止状態から前記穀粒排出状態に切り換える指令を指令するように構成されている点にある。
【0050】
本発明の第9特徴構成によると、無線式指令手段にて制御指令として、穀粒排出オーガを旋回及び昇降させる指令並びに排出停止状態から穀粒排出状態に切り換える指令を、無線信号にて指令すると、機体側制御手段が受信した制御指令に基づいて、旋回昇降駆動手段並びに排出駆動手段の作動を制御する。したがって、無線式指令手段にて制御指令を指令することにより穀粒排出オーガを旋回及び昇降させることができる。
【0051】
そして、無線式指令手段の出力制御手段が休止状態である場合に指令操作手段にて穀粒排出オーガの作動を停止させる停止指令が指令されると、動作状態切換手段が出力制御手段を稼動状態に切り換えるので、指令操作手段にて停止指令が指令される前に出力制御手段が休止状態であっても、停止指令が指令されると、出力制御手段が稼動状態に切り換えられて、停止指令が無線信号にて指令される。そして、機体側制御手段が受信した停止指令に基づいて、穀粒排出オーガの旋回作動及び昇降作動を停止させるべく旋回昇降駆動手段の作動を停止し並びに穀粒排出オーガを排出停止状態に切り換えるべく排出駆動手段の作動を制御する。したがって、指令操作手段にて停止指令が指令される前における出力制御手段の動作状態が休止状態であっても、稼動状態であっても、無線式指令手段の指令操作手段にて停止指令を指令することにより、穀粒排出オーガの旋回昇降作動や穀粒排出作動を停止させることができる。
【0052】
これにより、例えば、制御指令として、穀粒排出オーガを旋回及び昇降させて格納位置に自動的に移動させる移動指令が指令されて、穀粒排出オーガが格納位置に移動すべく旋回昇降作動しているときに、無線式指令手段を携帯する作業者が穀粒排出オーガの移動先に障害物等を発見して、これとの接触を避けるため穀粒排出オーガの作動を直ちに停止させる場合に、無線式指令手段の出力制御手段が休止状態であっても稼動状態であっても、停止指令を指令する一つの操作だけで穀粒排出オーガの旋回作動及び昇降作動を迅速に停止させることができる。
【0053】
また、制御指令として、穀粒排出オーガを排出停止状態から穀粒排出状態に切り換える指令が指令されて、穀粒排出オーガにより穀粒運搬車両の荷台等に穀粒が排出されているときに、無線式指令手段を携帯する作業者が、許容できる排出量を超えて排出が継続していることを発見して、穀粒の排出を直ちに中止させる場合に、無線式指令手段の出力制御手段が休止状態であっても稼動状態であっても、停止指令を指令する一つの操作だけで穀粒排出オーガを排出停止状態に切り換えて、穀粒の排出作動を迅速に停止させることができる。
【0054】
このように、本発明の第9特徴構成によると、無線式指令手段の誤操作による穀粒排出オーガの誤動作を防止できるものでありながら、穀粒排出オーガの作動を停止させる場合の操作性の向上を図ることができるコンバインの無線式操作装置を得るに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明の作業機の無線式操作装置の実施形態について、作業機としてのコンバインに適用したものを例に、図面に基づいて説明する。
【0056】
図1及び図2に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1の上部に設けた機体Vの前部に、刈取部3が横軸芯周りに揺動操作自在な状態で付設され、機体Vには、操縦部2、刈取穀稈を脱穀・選別する脱穀部4、脱穀部4にて選別回収された穀粒を貯留する穀粒タンク5、及び穀粒タンク5に貯留された穀粒を機外に排出するための穀粒排出用オーガ9等が装備されている。
【0057】
穀粒タンク5の底部に前後方向に沿う状態で底部スクリューコンベア7が設けられ、その底部スクリューコンベア7の搬送終端部から上方に向けてベベルギア連動される状態で縦送りスクリューコンベア8が延設され、この縦送りスクリューコンベア8の上部には、ベベルギア連動される状態で前記穀粒排出用オーガ9が、横軸芯P1周りに揺動操作自在で、且つ、縦軸芯P2周りに旋回操作自在に装備されている。尚、図2には、穀粒排出用オーガ9が格納用の旋回位置HPに旋回した状態を示し、この格納用の旋回位置HPに旋回した状態で穀粒排出用オーガ9を下降させて格納用保持具としての受止具30に受け止めさせて、穀粒排出用オーガ9を格納することになる。
【0058】
底部スクリューコンベア7の搬送始端部には、機体右前部に設けたエンジンEから底部スクリューコンベア7への動力伝達を断続するベルトテンション式の排出クラッチ13の出力プーリ13Aが装着されている。さらに、縦送りスクリューコンベア8は、底部スクリューコンベア7にベベルギアを介して連動連結された縦コンベアスクリュー8Aと、それを覆うとともに穀粒タンク5に連通接続された円筒ケース8Bとからなる。
【0059】
穀粒排出用オーガ9(以下、単にオーガという)は、オーガスクリュー9Aとこれを覆う外装ケース9Bとからなる。外装ケース9Bは、縦コンベアスクリュー8Aの円筒ケース8Bに回動ケース6を介して連通接続されており、回動ケース6が、縦送りスクリューコンベア8の円筒ケース8Bに縦軸芯P2周りに相対回動可能に接続されるとともに、穀粒排出用オーガ9の外装ケース9Bに横軸芯P1周りに相対回動可能に接続されている。
【0060】
前記排出クラッチ13を入り状態と切り状態とに切り換え操作するためのクラッチ操作用の電動モータM1(図5参照)が備えられ、このクラッチ操作用の電動モータM1(以下、クラッチモータと略称する)を正転方向に駆動することで排出クラッチ13が入り状態に切り換えられ、クラッチモータM1を逆転方向に駆動することで排出クラッチ13が切り状態に切り換えられる構成となっている。
【0061】
この排出クラッチ13を入り状態に切り換えると、底部スクリューコンベア7、縦スクリューコンベア8及びオーガ9が、排出クラッチ13を介して伝達されるエンジンEの動力で駆動されて、穀粒タンク5に貯留された穀粒がオーガ9の先端部の穀粒排出口10から排出される穀粒排出状態となり、排出クラッチ13を切り状態に切り換えると、底部スクリューコンベア7、縦スクリューコンベア8及びオーガ9の駆動が停止されて、穀粒がオーガ9の先端部の穀粒排出口10から排出されない排出停止状態となる構成となっている。
【0062】
オーガ9の旋回操作の駆動構成について説明すると、図3に示すように、回動ケース6の外側面に、旋回駆動用の大径ギア11が固着され、その大径ギア11に咬合するピニオンギア12を回転駆動する旋回用電動モータM2が縦送りスクリューコンベヤ8に固定され、この旋回用電動モータM2(以下、旋回モータと略称する)を正逆転駆動するに伴って、オーガ9が縦軸芯P2周りに旋回操作され、かつ、旋回モータM2を作動停止させるに伴って旋回停止するように構成されている。図中、Ryはオーガ9の旋回位置を検出する多回転型のポテンショメータを利用した旋回位置検出センサであって、旋回モータM2で駆動されるギア12によって旋回駆動用の大径ギア11と同時に回動操作されるようになっている。
【0063】
尚、図2に示すように、予め旋回可能範囲が設定され、上記旋回位置検出センサRyの検出情報に基づいて、オーガ9がその旋回可能範囲の左限界位置LE及び右限界位置REに達したときには、自動的にオーガ9の旋回を停止するように、旋回モータM2が制御される構成となっている。
【0064】
次に、オーガ9の昇降操作の駆動構成について説明すると、図3に示すように、オーガ9の基端部と、回動ケース6との間に、昇降用油圧シリンダ15が設けられ、この昇降用油圧シリンダ15を伸長させるに伴ってオーガ9が横軸芯P1周りで上昇操作され、かつ、昇降用油圧シリンダ15を短縮させるに伴ってオーガ9が横軸芯P1周りで下降操作されるように構成されている。尚、オーガ9が昇降操作範囲の上限位置にあるときにオン作動する上限スイッチ14が設けられている。
【0065】
このように、このコンバインは、作動部としてのオーガ9が旋回及び昇降自在に並びに穀粒排出状態と排出停止状態とに切換自在に設けられており、オーガ9を旋回及び昇降作動させる旋回昇降駆動手段としての旋回モータM2及び昇降用油圧シリンダ15、並びに、穀粒排出状態と排出停止状態とに切り換える排出駆動手段としてのクラッチモータM1が設けられている。
【0066】
操縦部2には、オーガ9を旋回及び昇降するための操作指令を指示するレバー式の操作部20が設けられている。このコンバイン本体側の操作部20について説明を加えれば、図4に示すように、中央位置に復帰するように付勢されて前後方向並びに左右方向夫々に十字揺動操作自在な操作レバー20Aが備えられ、操作レバー20Aを前方側に倒した状態では上昇指令スイッチS1がオン作動して上昇指令が指令され、操作レバー20Aを手前側に倒した状態では下降指令スイッチS2がオン作動して下降指令が指令され、操作レバー20Aを左側に倒した状態では右旋回指令スイッチS3がオン作動して右旋回指令が指令され、操作レバー20Aを右側に倒した状態では左旋回指令スイッチS4がオン作動して左旋回指令が指令される(図5参照)。また、上記操作レバー20Aを中央位置に復帰させた状態では、オーガ9の旋回操作及び昇降操作についての指令は指令されないので、操作レバー20Aを手指にて左右前後の何れかの方向に倒した状態から手指を離すことにより中央位置に復帰させて、上昇指令、下降指令、左旋回指令、右旋回指令を中止させることができる。
【0067】
また、図2及び図5に示すように、前記操作部20の近くには、オーガ9を自動的に格納位置又は目標排出位置に移動させるため移動指令を指令するための自動スイッチ21と、移動中においてオーガ9を停止させる移動停止指令を指令するための停止スイッチ22と、上記目標排出位置を設定するための排出位置設定ボリューム23と、オーガ9の穀粒排出作動の開始を指令する穀粒排出指令又はオーガ9の穀粒排出作動の停止を指令する排出停止指令を指令するための2位置切換式のトグルスイッチで構成されたクラッチ入切スイッチ24とが設けられている。
【0068】
クラッチ入切スイッチ24は、オフ位置に位置していると排出クラッチ13を切り状態にし、オン位置に位置していると排出クラッチ13を入り状態にできるようになっている。したがって、クラッチ入切スイッチ24をオフ位置からオン位置に切り換えることで、穀粒排出指令が指令され、クラッチ入切スイッチ24をオン位置からオフ位置に切り換えることで、排出停止指令が指令される。
【0069】
コンバイン本体には、機体側制御手段としてのマイクロコンピュータ利用の制御装置Hが設けられ、その制御装置Hに、前記旋回位置検出センサRy、前記上限スイッチ14、操作部20の各指令スイッチS1、S2、S3、S4、前記自動スイッチ21、前記停止スイッチ22、前記排出位置設定ボリューム23、及び前記クラッチ入切スイッチ24の各信号が電線を通して入力され、前記各指令スイッチの操作に対応する制御を実行するように構成されている。
【0070】
つまり、制御装置Hは、操作レバー20Aが前方側に倒し操作されて上昇指令スイッチS1がオン作動して上昇指令が指令されると、オーガ9を上昇作動させるべく、昇降用油圧シリンダ15を上昇側に作動させ、操作レバー20Aが後方側に倒し操作されて下降指令スイッチS2がオン作動して下降指令が指令されると、オーガ9を下降作動させるべく、昇降用油圧シリンダ15を下降側に作動させ、操作レバー20Aが左側に倒し操作されて右旋回指令スイッチS3がオン作動して右旋回指令が指令されると、オーガ9を右旋回作動させるべく、旋回モータM2を右旋回側に作動させ、操作レバー20Aが右側に倒し操作されて左旋回指令スイッチS4がオン作動して左旋回指令が指令されると、オーガ9を左旋回作動させるべく、旋回モータM2を左旋回側に作動させる。
【0071】
また、制御装置Hは、移動指令が指令されると、旋回位置検出センサRy等の検出情報に基づいて、オーガ9が格納位置に位置するかどうかを判別した上で、オーガ9の位置に応じて自動的にオーガ9を格納位置又は目標排出位置に移動させるべく、昇降用油圧シリンダ15及び旋回モータM2の作動を制御されるように構成されている。
【0072】
つまり、制御装置Hは、自動スイッチ21が押し操作されて移動指令が指令されると、オーガ9が格納位置に位置する場合には、オーガ9を目標排出位置に移動させるべく、昇降用油圧シリンダ15及び旋回モータM2を作動させ、オーガ9が排出位置に位置する場合には、オーガ9を格納位置に移動させるべく、昇降用油圧シリンダ15及び旋回モータM2を作動させる。
【0073】
さらに、制御装置Hは、穀粒排出指令が指令されると、オーガ9を穀粒排出状態とするべく、かつ、排出停止指令が指令されると、オーガ9を排出停止状態とするべく、クラッチモータM1の作動を制御するように構成されている。
【0074】
つまり、制御装置Hは、クラッチ入切スイッチ24がオフ位置からオン位置に切り換え操作されて穀粒排出指令が指令されると、オーガ9を穀粒排出状態とするべく、クラッチモータM1を正転方向に駆動させ、クラッチ入切スイッチ24がオン位置からオフ位置に切り換え操作されて排出停止指令が指令されると、オーガ9を排出停止状態とするべく、クラッチモータM1を逆転方向に駆動させる。
【0075】
このように、このコンバインの本体は、オーガ9の上昇指令、下降指令、左旋回指令、右旋回指令、移動指令及び穀粒排出指令といった制御指令、並びに、移動停止指令及び排出停止指令といった停止指令を指令する機体側の指令手段として、操作レバー20A、自動スイッチ21、停止スイッチ22、クラッチ入切スイッチ24を備えて、制御指令として、オーガ9を旋回及び昇降させる指令並びに少なくとも排出停止状態から穀粒排出状態に切り換える指令を指令するように構成されている。
【0076】
そして、このコンバインでは、オーガ9の旋回昇降作動及び穀粒排出作動についての制御指令並びにオーガ9の旋回昇降作動及び穀粒排出作動を停止させる停止指令を無線信号にて指令する手動操作式の無線式指令手段として、無線リモコン42が備えられている。この無線リモコン42は、穀粒運搬車両Nへの穀粒排出作業を行っているときに、穀粒運搬車両Nの近くにいる作業者が操作する場合に主に利用するものである。
【0077】
詳述すると、図6及び図7に示すように、無線リモコン42は、作業者が容易に持ち運び可能なように小型軽量の装置として構成され、また、互いに異なる周波数の電波を、下記の各指令スイッチにて指令される複数の操作指令としての制御指令及び停止指令の夫々に対応する無線信号として送信するように構成されている。
【0078】
そして、この無線リモコン42には、オーガ9を上昇作動させる上昇指令を指令する上昇指令スイッチ43、オーガ9を下降作動させる下降指令を指令する下降指令スイッチ44、オーガ9を左旋回作動させる左旋回指令を指令する左旋回指令スイッチ45、オーガ9を右旋回作動させる右旋回指令を指令する右旋回指令スイッチ46、オーガ9を自動的に格納位置又は目標排出位置に移動させる移動指令を指令する自動スイッチ47、コンバイン本体の操縦部2に設けられた呼出アラーム16を鳴動させる呼出指令を指令する呼出スイッチ48、オーガ9の穀粒排出作動を開始させる穀粒排出指令を指令する排出スイッチ49、オーガ9の旋回昇降作動を停止させ、かつ、オーガ9の穀粒排出作動を停止させる遠隔停止指令を指令する停止スイッチ50、電源の入切を切り換えるための電源スイッチ51が夫々設けられている。
【0079】
これらの各スイッチは、指で押し操作するとオンして指を離すとオフするようにオフ状態に復帰付勢される構成となっている。また、電源スイッチ51には、電源が入っていれば点灯するパイロットランプ52が設けられている。
【0080】
また、前記無線リモコン42には、指令用の上記各スイッチの操作に対応させて、スイッチがオンすると、各スイッチ毎に異ならせて対応して設定された特定の周波数の信号を発振してその信号を一定出力の電波として送信アンテナ54を介して送信する出力制御手段としての信号送信器53、及び、それらに電力を供給するバッテリー55とが備えられている。
【0081】
つまり、上昇指令スイッチ43を指で押し操作してオンすると、上昇指令に対応した周波数の無線信号が送信されることで上昇指令が指令され、上昇指令スイッチ43から指を離してオフすると、上昇指令に対応した周波数の無線信号の送信が終了して上昇指令が停止することになる。
【0082】
下降指令スイッチ44を指で押し操作してオンすると、下降指令に対応した周波数の無線信号が送信されることで下降指令が指令され、下降指令スイッチ44から指を離してオフすると、下降指令に対応した周波数の無線信号の送信が終了して下降指令が停止することになる。
【0083】
左旋回指令スイッチ45を指で押し操作してオンすると、左旋回指令に対応した周波数の無線信号が送信されることで左旋回指令が指令され、左旋回指令スイッチ45から指を離してオフすると、左旋回指令に対応した周波数の無線信号の送信が終了して左旋回指令が停止することになる。
【0084】
右旋回指令スイッチ46を指で押し操作してオンすると、右旋回指令に対応した周波数の無線信号が送信されることで右旋回指令が指令され、右旋回指令スイッチ45から指を離してオフすると、右旋回指令に対応した周波数の無線信号の送信が終了して右旋回指令が停止することになる。
【0085】
なお、左旋回指令スイッチ45は無線リモコン42の正面において向って右側に設けられ、右旋回指令スイッチ46は無線リモコン42の正面において向って左側に設けられており、両指令スイッチ上に表示された夫々の内容が各指令スイッチの設置位置と反対となっている。これは、右旋回操作及び左旋回操作における旋回方向をコンバインの前進方向を12時の方向とする基準により定義し、各指令スイッチにより旋回操作される旋回方向をその旋回方向の定義に基づいて表示する一方、無線リモコン42を使用する作業者が、コンバイン本体から離れた位置でオーガ9の先端側からオーガ9の旋回操作を指令するときに、直感的に把握し易い位置に配置されたスイッチを操作することで旋回操作を指令できるように各指令スイッチを配置したことによる。
【0086】
自動スイッチ47を指で押し操作してオンすると、移動指令に対応した周波数の無線信号が送信されることで移動指令が指令され、自動スイッチ47から指を離してオフすると、移動指令に対応した周波数の無線信号の送信が終了して移動指令が停止することになる。
【0087】
呼出スイッチ48を指で押し操作してオンすると、呼出指令に対応した周波数の無線信号が送信されることで呼出指令が指令され、呼出スイッチ48から指を離してオフすると、呼出指令に対応した周波数の無線信号の送信が終了して呼出指令が停止することになる。
【0088】
排出スイッチ49を指で押し操作してオンすると、穀粒排出指令に対応した周波数の無線信号が送信されることで穀粒排出指令が指令され、排出スイッチ49から指を離してオフすると、穀粒排出指令に対応した周波数の無線信号の送信が終了して穀粒排出指令が停止することになる。
【0089】
停止スイッチ50を指で押し操作してオンすると、遠隔停止指令に対応した周波数の無線信号が送信されることで遠隔停止指令が指令され、停止スイッチ50から指を離してオフすると、遠隔停止指令に対応した周波数の無線信号の送信が終了して遠隔停止指令が停止することになる。
【0090】
このように、この無線リモコン42は、制御指令としての上昇指令、下降指令、左旋回指令、右旋回指令、移動指令及び穀粒排出指令、並びに、停止指令としての遠隔停止指令を指令する指令操作手段としての、上昇指令スイッチ43、下降指令スイッチ44、左旋回指令スイッチ45、右旋回指令スイッチ46、自動スイッチ47、排出スイッチ49、及び、停止スイッチ50を備えて、制御指令として、オーガ9を旋回及び昇降させる指令並びに少なくとも排出停止状態から穀粒排出状態に切り換える指令を指令するように構成されている。
【0091】
そして、制御指令及び停止指令としての上記各指令が、本発明の複数の操作指令に相当する。また、詳しくは後述するが、本実施形態では、これらの複数の操作指令のうち、遠隔停止指令が本発明の特定操作指令に相当する。
【0092】
バッテリー55と信号送信器53とは、電源制御回路56を介して接続されており、電源制御回路56が電力供給状態であると、バッテリー55から信号送信器53へ電力が供給され、信号送信器53は稼動状態となって、無線信号を出力できる状態となるが、電源制御回路56が電力遮断状態であると、バッテリー55から信号送信器53へ電力が供給されず、信号送信器53は休止状態となって、無線信号を出力できない状態となる。つまり、電源制御回路56は、信号送信器53に対する電力の供給の断続により稼動状態と休止状態とに切り換える動作状態切換手段として機能する。
【0093】
このように、無線リモコン42は、出力制御手段としての信号送信器53と動作状態切換手段としての電源制御回路56とを備えて構成されている。
【0094】
そして、電源制御回路56の電力供給状態と電力遮断状態との切換は、電源スイッチ51を入操作及び切操作して、稼動指令及び休止指令を指令することにより行われる。具体的には、電源制御回路56が電力遮断状態であるとき、電源スイッチ51を0.5[秒]間以上押し続ける長押し操作すると、電源制御回路56が電力供給状態に切り換わり、電源制御回路56が電力供給状態であるとき、電源スイッチ51を0.5[秒]間以上押し続ける長押し操作すると、電源制御回路56が電力遮断状態に切り換わる。なお、電源スイッチ51備えられたパイロットランプ52は、電力供給状態である場合に点灯するように、電源制御回路56により点灯と消灯が制御される。
【0095】
このように、電源スイッチ51の入切操作により、稼動指令及び休止指令が指令され、これらの指令に基づいて、電源制御回路56が、信号送信器53を稼動状態及び休止状態に切り換えるように構成されている。したがって、電源スイッチ51は、入切指令手段として機能する。
【0096】
また、電源制御回路56は、信号送信器53の稼動状態において上昇指令スイッチ43、下降指令スイッチ44、左旋回指令スイッチ45、右旋回指令スイッチ46、自動スイッチ47、呼出スイッチ48、排出スイッチ49、及び、停止スイッチ50の何れもが操作されない無操作状態となることにより、上昇指令、下降指令、左旋回指令、右旋回指令、移動指令、穀粒排出指令、及び、遠隔停止指令のいずれもが指令されない状態が設定時間継続したときには自動的に信号送信器53を休止状態に切り換えるように構成されている。
【0097】
説明を加えると、信号送信器53は、稼動状態において、無操作時間監視処理を実行して、上述の制御指令及び停止指令、すなわち、操作指令の有無に基づいて、上記の無操作状態が継続する時間を監視しており、無操作状態が設定時間(本実施形態では、3分としている。)だけ継続すると、無線リモコン42の使用場面ではないと判断して、電源制御回路56を電力遮断状態に切り換える指令を電源制御回路56に対して指令することにより、自らが指令する指令に基づいて電源制御回路56により休止状態に切り換えられるようになっている。
【0098】
上記のような構成によると、作業者が意識的に電源スイッチ51を切操作する場合の他、何れの操作スイッチも操作されない無操作状態が3分間継続した場合にも、自動的に信号送信器53を休止状態に切り換えることができ、無線リモコン42を操作しないときは、誤操作によって不意にオーガ9が作動することがないようにすることができるとともに、無線リモコン42の省電力化を図ることができる。
【0099】
また、無線リモコン42は、停止スイッチ50が押し操作されると、信号送信器53に対する制御信号に加えて電源制御回路56に対して電力供給状態に切り換える制御信号が出力されるように構成されている。これにより、電源制御回路56は、電力遮断状態において、電源スイッチ51が入操作されることなく停止スイッチ50が押し操作されると電力供給状態に切り換わる。
【0100】
つまり、電源制御回路56が電力遮断状態であることにより信号送信器53が休止状態である場合に、停止スイッチ50にて遠隔停止指令が指令されると、電源制御回路56が電力供給状態に切り換わって信号送信器53が稼動状態に切り換わる。このように、本無線リモコン42の電源制御回路56は、信号送信器53が休止状態である場合に停止スイッチ50にて遠隔停止指令が指令されると、信号送信器53を稼動状態に切り換えるように構成されている。したがって、遠隔停止指令は、本発明の特定操作指令に相当する。
【0101】
このように構成することにより、電源スイッチ51の切操作又は3分間の無操作時間があって、電源制御回路56が電力遮断状態となった後に、オーガ9の作動を緊急に停止させる必要が生じた場合には、電源スイッチ51を入操作してから停止スイッチ50にて遠隔停止指令を指令するといった煩わしい操作をすることなく、停止スイッチ50をいきなり操作して、遠隔停止指令に対応する無線信号を出力させることができる。
【0102】
図1、図2に示すように、コンバイン本体の操作部20の周辺箇所には、前記無線リモコン42から送信される電波による無線信号を受信する受信アンテナ57及び受信器58が備えられるとともに、受信した信号をその受信周波数に応じていずれの指令情報であるかを判別して、その指令情報に対応する制御用信号に変換する信号処理装置59(図5参照)が備えられている。
【0103】
そして、コンバイン本体の前記制御装置Hに、無線リモコン42から送信される指令情報が信号処理装置59を介して入力される構成となっており、制御装置Hは、コンバイン本体の操作部20からの指令に加えて、無線リモコン42からの指令に基づいて、昇降用油圧シリンダ15、旋回モータM2、クラッチモータM1、及び、呼出アラーム16の動作を制御する。
【0104】
つまり、制御装置Hは、上昇指令スイッチ43にて上昇指令が指令されると、オーガ9を上昇作動させるべく、昇降用油圧シリンダ15を上昇側に作動させ、下降指令スイッチ44にて下降指令が指令されると、オーガ9を下降作動させるべく、昇降用油圧シリンダ15を下降側に作動させ、左旋回指令スイッチ45にて左旋回指令が指令されると、オーガ9を左旋回作動させるべく、旋回モータM2を左旋回側に作動させ、右旋回指令スイッチ46にて右旋回指令が指令されると、オーガ9を右旋回作動させるべく、旋回モータM2を右旋回側に作動させる。
【0105】
また、制御装置Hは、自動スイッチ47にて移動指令が指令されると、旋回位置検出センサRy等の検出情報に基づいて、オーガ9が格納位置に位置するかどうかを判別した上で、オーガ9の位置に応じて自動的にオーガ9を格納位置又は目標排出位置に移動させるべく、かつ、停止スイッチ50にて遠隔停止指令が指令されると、オーガ9の旋回作動及び諸侯作動を停止すべく、昇降用油圧シリンダ15及び旋回モータM2の作動を制御するように構成されている。
【0106】
つまり、制御装置Hは、自動スイッチ47が押し操作されて移動指令が指令されると、オーガ9が格納位置に位置する場合には、オーガ9を目標排出位置に移動させるべく、昇降用油圧シリンダ15及び旋回モータM2を作動させ、オーガ9が排出位置に位置する場合には、オーガ9を格納位置に移動させるべく、昇降用油圧シリンダ15及び旋回モータM2を作動させ、停止スイッチ50が押し操作されて遠隔停止指令が指令されると、オーガ9の旋回作動及び昇降作動を停止させるべく、昇降用油圧シリンダ15及び旋回モータM2を停止させる。
【0107】
さらに、制御装置Hは、穀粒排出指令が指令されると、オーガ9を穀粒排出状態とするべく、かつ、遠隔停止指令が指令されると、オーガ9を排出停止状態とするべく、クラッチモータM1の作動を制御するように構成されている。
【0108】
つまり、制御装置Hは、排出スイッチ49が押し操作されて穀粒排出指令が指令されると、オーガ9を穀粒排出状態とするべく、クラッチモータM1を正転方向に駆動させ、停止スイッチ50が押し操作されて排出停止指令が指令されると、オーガ9を排出停止状態とするべく、クラッチモータM1を逆転方向に駆動させる。
【0109】
さらに、また、制御装置Hは、呼出指令が指令されると、呼出アラーム16を鳴動させるべく、呼出アラーム16の作動を制御するように構成されている。つまり、制御装置Hは、呼出スイッチ48にて呼出指令が指令されると、呼出アラーム16を鳴動させる。
【0110】
本無線式操作装置は、上述のように、無線リモコン42と、操作レバー20A、自動スイッチ21、停止スイッチ22、クラッチ入切スイッチ24からなるコンバイン本体側の指令手段とを備え、無線リモコン42からもコンバイン本体側の指令手段からも制御指令及び停止指令を指令できることから、コンバインを使用した作業を二人以上の作業者が共同して行う場合には、無線リモコン42からの指令とコンバイン本体側の指令手段からの指令が同時に制御装置Hに指令される場合がある。このような場合には、以下に説明するように、制御装置Hは、基本的には無線リモコン42からの指令を優先して処理し、コンバイン本体側の指令手段から移動停止指令及び排出停止指令が指令された場合には機体側の指令手段からの指令を優先して処理するようになっている。
【0111】
つまり、制御装置Hは、無線リモコン42及びコンバイン本体側の指令手段の一方にて停止指令が指令され且つ他方にて制御指令が指令されたときには、停止指令を優先してオーガ9の旋回昇降作動及び穀粒排出作動を停止させるように構成され、また、無線リモコン42及びコンバイン本体側の指令手段の両者から制御指令が指令されたときには、無線リモコン42の制御指令を優先してオーガ9の作動を制御するように構成されている。
【0112】
上述のように構成された制御装置Hによるオーガ9の旋回昇降作動の制御について具体例を挙げて説明する。
【0113】
コンバイン本体側の操作レバー20Aの傾倒操作にて指令される各種の旋回昇降指令によりオーガ9が旋回昇降作動しているときに、無線リモコン42の上昇指令スイッチ43、下降指令スイッチ44、左旋回指令スイッチ45、右旋回指令スイッチ46にてコンバイン本体側から指令されているものとは異なる旋回昇降指令が指令されると、当該旋回昇降指令が無線リモコン42から指令されている間は、オーガ9が、無線リモコン42による旋回昇降指令にしたがって旋回昇降作動し、その旋回昇降指令が途絶えると、コンバイン本体側からの旋回昇降指令にしたがって旋回昇降作動する。なお、無線リモコン42からの旋回昇降指令が途絶えるまでに、コンバイン本体側からの旋回昇降指令が指令されなくなっていると、無線リモコン42からの旋回昇降指令が途絶えた時点でオーガ9の旋回昇降作動が停止する。
【0114】
そして、コンバイン本体側の操作レバー20Aの傾倒操作にて指令される各種の旋回昇降指令によりオーガ9が旋回昇降作動しているときに、無線リモコン42の停止スイッチ50にて遠隔停止指令が指令されると、遠隔停止指令が指令されている間はオーガ9の旋回昇降作動が停止し、遠隔停止指令が途絶えると、オーガ9の旋回昇降作動が再開する。同様に、無線リモコン42の上昇指令スイッチ43、下降指令スイッチ44、左旋回指令スイッチ45、右旋回指令スイッチ46にて指令される各種の旋回昇降指令によりオーガ9が旋回昇降作動しているときに、コンバイン本体側の停止スイッチ22にて移動停止指令が指令されると、移動停止指令が指令されている間はオーガ9の旋回昇降作動が停止し、移動停止指令が途絶えると、オーガ9の作旋回昇降動が再開する。なお、前者の場合において、無線リモコン42からの遠隔停止指令が途絶えるまでに、既にコンバイン本体側からの旋回昇降指令が指令されなくなっていると、無線リモコン42からの遠隔停止指令が途絶えてもオーガ9は当然ながら停止したままである。後者においても同様である。
【0115】
また、無線リモコン42の上昇指令スイッチ43、下降指令スイッチ44、左旋回指令スイッチ45、右旋回指令スイッチ46にて指令される各種の旋回昇降指令によりオーガ9が旋回昇降作動しているときに、コンバイン本体側の操作レバー20Aの傾倒操作にて無線リモコン42から指令されているものとは異なる旋回昇降指令が指令されても、オーガ9は無線リモコン42からの旋回昇降指令にしたがって旋回昇降作動を継続する。
【0116】
また、コンバイン本体側のクラッチ入切スイッチ24がオフ位置からオン位置に切り換えられたことにより、穀粒排出指令が指令されて、オーガ9が穀粒排出状態となった後に、無線リモコン42の停止スイッチ50にて遠隔停止指令が指令されると、オーガ9が排出停止状態に切り換えられ、コンバイン本体側のクラッチ入切スイッチ24がオン位置にあっても、オーガ9は排出停止状態となる。そして、コンバイン本体側のクラッチ入切スイッチ24を一旦オフ位置へ戻してから再びオン位置に切り換えることにより、又は、無線リモコン42の排出スイッチ49を押し操作することにより新たな穀粒排出指令が指令されない限り、オーガ9は排出停止状態で維持される。
【0117】
なお、コンバイン本体側の自動スイッチ21にて移動指令が指令されて、オーガ9が格納位置又は目標排出位置に自動的に移動しているときに、無線リモコン42の停止スイッチ50にて遠隔停止指令が指令されると、格納位置又は目標排出位置へのオーガ9の移動が中止され、コンバイン本体側又は無線リモコン42から新たな制御指令が指令されない限りオーガ9の旋回昇降作動が停止する。同様に、無線リモコン42の自動スイッチ47にて移動指令が指令されて、オーガ9が格納位置又は目標排出位置に自動的に移動しているときに、コンバイン本体側の停止スイッチ22にて移動停止指令が指令されると、格納位置又は目標排出位置へのオーガ9の移動が中止され、コンバイン本体側又は無線リモコン42から新たな制御指令が指令されるまでオーガ9の旋回昇降作動は停止する。
【0118】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0119】
(1)上記実施形態では、無線リモコン42にて指令される停止指令を指令する指令操作手段を停止スイッチ50にて構成したものを例示したが、これに代えて、無線リモコン42に、オーガ9の穀粒排出作動を停止させる停止指令としての排出停止指令を指令する排出停止指令用の押ボタンスイッチと、オーガ9の旋回昇降作動を停止される停止指令としての旋回昇降停止指令を指令する旋回昇降停止指令用の押ボタンスイッチとを各別に設けて、信号送信器53が、稼動状態において排出停止指令用の押ボタンスイッチにて排出停止指令が指令されると、排出停止指令を制御装置Hに無線信号にて指令し、且つ、稼動状態において旋回昇降停止指令用の押ボタンスイッチにて旋回昇降停止指令が指令されると、旋回昇降停止指令を制御装置Hに無線信号にて指令するように構成され、電源制御回路56が、電力遮断状態であって信号送信器53が休止状態である場合に排出停止指令用の押ボタンスイッチにて排出停止指令が指令されると、電力供給状態となって信号送信器53を稼動状態に切り換え、且つ、電力遮断状態であって信号送信器53が休止状態である場合に旋回昇降停止指令用の押ボタンスイッチにて旋回昇降停止指令が指令されると、電力供給状態となって信号送信器53を稼動状態に切り換えるように構成されたものでもよい。
【0120】
この場合には、停止指令を指令する指令操作手段として、オーガ9の旋回、昇降、及び、穀粒排出の全ての作動を停止させる全停止指令を指令するための全停止指令用の押ボタンスイッチを無線リモコン42に設けて、信号送信器53が、稼動状態において全停止指令用の押ボタンスイッチにて全停止指令が指令されると、オーガ9の全ての作動を停止させる全停止指令を制御装置Hに無線信号にて指令するように構成され、電源制御回路56が、電力遮断状態であって信号送信器53が休止状態である場合に全停止指令用の押ボタンスイッチにて全停止指令が指令されると、電力供給状態となって信号送信器53を稼動状態に切り換えるように構成されたものでもよい。
【0121】
(2)上記実施形態では、動作状態切換手段としての電源制御回路の詳細は省略しているが、一例としては、信号送信器53とバッテリー55との電気的接続を断続するようにラッチリレーを設け、電源スイッチ51による稼動指令及び停止スイッチ50による遠隔停止指令をラッチリレーのセット入力とし、電源スイッチ51による休止指令及び3分間の無操作状態がある信号送信器53が出力する制御信号をラッチリレーのリセット入力となるように構成された電気回路が考えられるが、これに限らず、トランジスタやマイコン等を用いて構成してもよく、動作状態切換手段の具体的構成は種々変更可能である。
【0122】
(3)上記実施形態では、旋回昇降駆動手段を電動モータ及び油圧シリンダにて構成し、排出駆動手段を電動モータにて構成したものを例示したが、これに限るものではなく、例えば、電動モータに代えて油圧モータを用いたり、油圧シリンダに代えて電動モータや電動シリンダ等を用いる構成としてもよい。
【0123】
(4)上記実施形態では、制御装置Hが、コンバイン本体側の操作レバー20Aの傾倒操作にて指令される各種の旋回昇降指令によりオーガ9が旋回昇降作動しているときに、無線リモコン42の停止スイッチ50にて遠隔停止指令が指令されると、遠隔停止指令が指令されている間はオーガ9の旋回昇降作動が停止し、遠隔停止指令が途絶えると、オーガ9の旋回昇降作動が再開するように、旋回モータM2及び昇降用油圧シリンダ15の作動を制御するように構成されたものを例示したが、これに代えて、制御装置Hが、コンバイン本体側の操作レバー20Aの傾倒操作にて指令される各種の旋回昇降指令によりオーガ9が旋回昇降作動しているときに、無線リモコン42の停止スイッチ50にて遠隔停止指令が指令されると、コンバイン本体側又は無線リモコン42から新たな旋回昇降指令が指令されるまでオーガ9の旋回昇降作動が停止するように旋回モータM2及び昇降用油圧シリンダ15の作動を制御するように構成されたものであってもよい。
【0124】
(5)上記実施形態では、作業機を農作業機の一例であるコンバインで構成したものを例示したが、これに限らず、作業機としては、建設機械や、工作機械等でもよい。
【0125】
(6)上記実施形態では、被操作部として可動式の作動部の一例であるオーガ9が備えられ、無線式指令手段の指令操作手段が、オーガ9についての上昇指令等の制御指令及び遠隔停止指令を指令するように構成され、無線式指令手段の動作状態切換手段が、出力制御手段が休止状態である場合に指令操作手段にて特定操作指令としての遠隔停止指令が指令されると、出力制御手段を可動状態に切り換えるように構成されているものを例示したが、これに代えて、図8に示すように、無線リモコン42の停止スイッチ50を押し操作した場合に加えて、呼出スイッチ48を押し操作した場合も、信号送信機53に対する制御信号に加えて電源制御回路56に対して電力供給状態に切り換える制御信号が出力されるように構成し、無線リモコン42の電源制御手段56を、信号送信機53が休止状態である場合に停止スイッチ50又は呼出スイッチ48にて特定操作指令としての遠隔停止指令又は報知開始指令が指令されると、信号送信機53を稼動状態に切り換えるように構成してもよい。
【0126】
なお、呼出スイッチ48を指で押し操作してオンすると、呼出指令に対応した周波数の無線信号が送信されるが、この呼出指令用の無線信号の立ち上がりにより、本発明の特定操作指令としての報知開始指令が指令されることになる。また、同様に、呼出スイッチ48から指を離してオフすると、呼出指令に対応した周波数の無線信号の送信が終了し、この呼出指令用の無線信号の立ち下がりにより、本発明の操作指令としての報知停止指令が指令されることになる。
【0127】
(7)上記実施形態では、被操作部として可動式の作動部の一例であるオーガ9が備えられ、無線式指令手段の指令操作手段が、オーガ9についての上昇指令等の制御指令及び遠隔停止指令を指令するように構成され、無線式指令手段の動作状態切換手段が、出力制御手段が休止状態である場合に指令操作手段にて特定操作指令としての遠隔停止指令が指令されると、出力制御手段を可動状態に切り換えるように構成されているものを例示したが、これに代えて、図9に示すように、無線リモコン42の呼出スイッチ48を押し操作した場合に、信号送信機53に対する制御信号に加えて電源制御回路56に対して電力供給状態に切り換える制御信号が出力されるように構成し、無線リモコン42の電源制御手段56を、信号送信機53が休止状態である場合に呼出スイッチ48にて特定操作指令としての報知開始指令が指令されると、信号送信機53を稼動状態に切り換えるように構成してもよい。
【0128】
なお、呼出スイッチ48を指で押し操作してオンすると、呼出指令に対応した周波数の無線信号が送信されるが、この呼出指令用の無線信号の立ち上がりにより、本発明の特定操作指令としての報知開始指令が指令されることになる。また、同様に、呼出スイッチ48から指を離してオフすると、呼出指令に対応した周波数の無線信号の送信が終了し、この呼出指令用の無線信号の立ち下がりにより、本発明の操作指令としての報知停止指令が指令されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】オーガの旋回及び昇降の操作構成を示す要部拡大側面図
【図4】コンバイン本体側の操作部の平面図
【図5】コンバイン本体側の制御装置の制御ブロック図
【図6】無線リモコンの斜視図
【図7】無線リモコンの制御ブロック図
【図8】別実施形態(6)における無線リモコンの制御ブロック図
【図9】別実施形態(7)における無線リモコンの制御ブロック図
【符号の説明】
【0130】
M1 排出制御手段
M2、15 旋回昇降駆動手段
H 機体側制御手段
9 作動部(被操作部)
16 報知手段(被操作部)
20A、21、22、24 機体側の指令手段
42 無線式指令手段
43、44、45、46、47、48、49、50 指令操作手段
51 入切指令手段
53 出力制御手段
56 動作状態切換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機本体に、被操作部と、その被操作部の作動を制御する機体側制御手段とが備えられ、
前記被操作部の作動についての複数種の操作指令を前記機体側制御手段に無線信号にて指令する手動操作式の無線式指令手段が設けられ、
前記無線式指令手段が、
前記複数種の操作指令を指令する指令操作手段と、前記指令操作手段により前記複数種の操作指令が指令されると対応する無線信号を出力する稼動状態と、前記指令操作手段により前記複数種の操作指令が指令されても対応する無線信号を出力しない休止状態とに切り換え自在に構成されている出力制御手段と、前記出力制御手段を前記稼動状態と前記休止状態とに切り換える動作状態切換手段とを備えて構成されている作業機の無線式操作装置であって、
前記動作状態切換手段が、
前記出力制御手段が前記休止状態である場合に前記指令操作手段にて前記複数種の操作指令のうちの特定の特定操作指令が指令されると、前記出力制御手段を前記稼動状態に切り換えるように構成されている作業機の無線式操作装置。
【請求項2】
前記動作状態切換手段が、前記出力制御手段に対する電力の供給の断続により前記稼動状態と前記休止状態とに切り換えるように構成されている請求項1記載の作業機の無線式操作装置。
【請求項3】
前記無線式指令手段が、前記出力制御手段を前記稼動状態にする稼動指令及び前記休止状態にする休止指令を指令する手動操作式の入切指令手段を備えるように構成され、
前記動作状態切換手段が、前記入切指令手段にて指令される前記稼動指令及び前記休止指令に基づいて前記出力制御手段を前記稼動状態及び前記休止状態に切り換え、且つ、前記出力制御手段の稼動状態において、前記指令操作手段による前記制御指令及び前記特定制御指令が設定時間継続して指令されないときには自動的に前記出力制御手段を前記休止状態に切り換えるように構成されている請求項2記載の作業機の無線式操作装置。
【請求項4】
前記被操作部として、可動式の作動部が備えられ、
前記無線式指令手段の前記指令操作手段が、
前記作動部の作動についての制御指令及び前記作動部の作動を停止させる停止指令を指令するように構成され、
前記無線式指令手段の前記動作状態切換手段が、
前記出力制御手段が前記休止状態である場合に前記指令操作手段にて前記特定操作指令としての前記停止指令が指令されると、前記出力制御手段を前記稼動状態に切り換えるように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機の無線式操作装置。
【請求項5】
前記被操作部として、前記作業機本体の運転操縦部に装備された呼出し用の報知手段が備えられ、
前記無線式指令手段の前記指令操作手段が、
前記報知手段の報知作動を開始させる報知開始指令及び前記報知手段の報知作動を停止させる報知停止指令を指令するように構成され、
前記無線式指令手段の前記動作状態切換手段が、
前記出力制御手段が前記休止状態である場合に前記指令操作手段にて前記特定操作指令としての前記報知開始指令が指令されると、前記出力制御手段を前記稼動状態に切り換えるように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機の無線式操作装置。
【請求項6】
前記被操作部として、可動式の作動部、及び、前記作業機本体の運転操縦部に装備された呼出し用の報知手段が備えられ、
前記無線式指令手段の前記指令操作手段が、
前記作動部の作動についての制御指令及び前記作動部の作動を停止させる停止指令、並びに、前記報知手段の報知作動を開始させる報知開始指令及び前記報知手段の報知作動を停止させる報知停止指令を指令するように構成され、
前記無線式指令手段の前記動作状態切換手段が、
前記出力制御手段が前記休止状態である場合に前記指令操作手段にて前記特定操作指令としての前記停止指令又は前記報知開始指令が指令されると、前記出力制御手段を前記稼動状態に切り換えるように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機の無線式操作装置。
【請求項7】
前記作業機本体に、前記作動部の作動についての前記制御指令及び前記作動部の作動を停止させる前記停止指令を指令する機体側の指令手段が設けられ、
前記機体側制御手段が、
前記無線式指令手段及び前記機体側の指令手段の一方にて前記停止指令が指令され且つ他方にて前記制御指令が指令されたときには、前記停止指令を優先して前記作動部を停止させるように構成されている請求項4又は6記載の作業機の無線式操作装置。
【請求項8】
前記機体側制御手段が、前記無線式指令手段及び前記機体側の指令手段の両者から前記制御指令が指令されたときには、前記無線式指令手段の前記制御指令を優先して前記作動部の作動を制御するように構成されている請求項7記載の作業機の無線式操作装置。
【請求項9】
前記作業機本体としてのコンバイン本体に、前記作動部としての穀粒排出オーガが旋回及び昇降自在に並びに穀粒排出状態と排出停止状態とに切換自在に設けられ、
前記機体側制御手段が、前記穀粒排出オーガを旋回及び昇降作動させる旋回昇降駆動手段並びに前記穀粒排出状態と排出停止状態とに切り換える排出駆動手段の作動を制御するように構成され、
前記無線式指令手段及び前記機体側の指令手段が、前記制御指令として、前記穀粒排出オーガを旋回及び昇降させる指令並びに少なくとも前記排出停止状態から前記穀粒排出状態に切り換える指令を指令するように構成されている請求項7又は8記載の作業機の無線式操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−282627(P2007−282627A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258732(P2006−258732)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】