説明

作業機械の油圧駆動装置

【課題】旋回用操作装置が中立位置に戻されたときから所定の遅延時間の経過後に旋回体を停止させるという考え方を維持しながら、旋回モータ駆動回路に含まれる油圧機器の異常によるリリーフ圧の低下の場合も含めて旋回体を速やかに停止させることができる。
【解決手段】旋回用操作装置15とパイロットポンプ12とが連通している状態にあって、旋回用操作装置15が中立位置に戻されたときから所定の遅延時間の経過後に、旋回モータ16に制動力を与えるようにパーキングブレーキ29を制御する第1絞り34と、旋回用操作装置15が中立位置に戻され、しかも旋回用操作装置15とパイロットポンプ12との間が遮断されたときに、所定の遅延時間よりも短い遅延時間の経過後に、旋回モータ16に制動力を与えるようにパーキングブレーキ29を制御する開閉弁36及び第2絞り37とを備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回体を有する油圧ショベル等の作業機械に備えられ、旋回体を駆動する旋回モータと、この旋回モータに制動力を与えるパーキングブレーキとを備えた作業機械の油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として特許文献1に示される従来技術がある。この従来技術は、旋回体を有する油圧ショベルに備えられ、油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油によって作動し、旋回体を駆動する旋回モータと、この旋回モータに制動力を与えるパーキングブレーキと、油圧ポンプから旋回モータに供給される圧油の流れを制御する旋回用方向制御弁と、この旋回用方向制御弁を切り換え操作する旋回用操作装置とを備えている。また、この従来技術は、旋回用操作装置が操作位置から中立位置に戻されたときから所定の遅延時間の経過後に、制動力を旋回モータに与えるようにパーキングブレーキを制御する制御部及び切換弁を含むパーキングブレーキ制御手段を備えている。
【0003】
また、特許文献2も、上述した特許文献1と同様の技術が示されている。この特許文献2には、油圧モータに制動力を与えるブレーキ解除シリンダと、油圧ポンプから油圧モータに供給される圧油の流れを制御する油圧操作弁と、この油圧操作弁を切り換え操作するパイロット切換弁とを備え、パイロット切換弁が操作位置から中立位置に戻されたときから所定の遅延時間の経過後に、制動力を油圧モータに与えるようにブレーキ解除シリンダを制御する絞りを含む圧力補償付流量制御弁を備えている。
【0004】
これらの特許文献1,2に示される従来技術は、旋回用方向制御弁あるいはパイロット切換弁が操作位置から中立位置に戻されたときから所定の遅延時間の経過後に、パーキングブレーキあいはブレーキ解除シリンダによって、旋回モータあるいは油圧モータに制動力が与えられるので、パーキングブレーキあるいはブレーキ解除シリンダの損耗を抑えながら旋回体等を制動し、停止させることができる。
【0005】
なお、上述した特許文献1,2に示される従来技術とは基本的に技術思想が異なるが、特許文献3に、走行体及び旋回体を有する油圧ショベルにあって、旋回用操作装置とパイロットポンプとの間を連通・遮断するゲートレバー、ゲートレバースイッチ、及び油圧ロック弁を含む連通・遮断手段を備え、この連通・遮断手段によって旋回用方向制御弁とパイロットポンプとの間が遮断されたときに、電気的に連動して直ちにブレーキシリンダによって旋回モータに制動力を与え、この旋回モータを停止させることに伴って旋回体を駆動する旋回駆動装置を停止させる構成が開示されている。この特許文献3に示される従来技術は、旋回体が旋回している状態から連通・遮断手段が操作されると遅延時間を要することなく直ちに旋回体を停止させることから、旋回体の慣性により旋回体の下方に設けられる走行体が動いてしまう可能性があるなどの好ましくない動作を起こしやすい。また、上述したように旋回体の停止動作に伴って旋回モータに制動力を与えるパーキングブレーキに摩耗を生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−312432号公報
【特許文献2】実公平5−15601号公報
【特許文献3】特開2010−156395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に示される従来技術は、旋回用操作装置が操作位置から中立位置に操作されたときから所定の遅延時間の経過後に、パーキングブレーキによって油圧モータに制動力を与えるようになっていることから、引用文献3に示されるようなパーキングブレーキの損耗を抑えることができるものの、旋回モータに制動力を与える旋回モータ駆動回路の油圧機器に異常を生じているときには、旋回モータを制動するリリーフ圧が低下することがあり、このようにリリーフ圧が低下している場合には、パーキングブレーキによって旋回モータに制動力を与えても旋回速度が十分に下がらず、旋回体の停止に時間がかかってしまうことが起こり得る。特許文献2に示される従来技術にあっても同様の問題が起こり得る。
【0008】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、旋回用操作装置が操作位置から中立位置に戻されたときから所定の遅延時間の経過後に旋回体を停止させるという考え方を維持しながら、旋回モータ駆動回路に含まれる油圧機器の異常によるリリーフ圧の低下を生じている場合も含めて旋回体を速やかに停止させることができる作業機械の油圧駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明は、旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置とを有する作業機械に備えられ、油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油によって作動し、上記旋回体を駆動する旋回モータと、この旋回モータに制動力を与えるパーキングブレーキと、上記油圧ポンプから上記旋回モータに供給される圧油の流れを制御する旋回用方向制御弁と、この旋回用方向制御弁を切り換え操作する旋回用操作装置と、この旋回用操作装置へパイロット圧を供給するパイロットポンプと、上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとの間を連通、遮断する連通・遮断手段とを備えるとともに、上記旋回用操作装置が操作位置から中立位置に戻されたときから所定の遅延時間の経過後に、上記制動力を上記旋回モータに与えるように上記パーキングブレーキを制御するパーキングブレーキ制御手段を備えた作業機械の油圧駆動装置において、上記パーキングブレーキ制御手段は、上記連通・遮断手段によって上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとの間が連通されている状態にあって、上記旋回用操作装置が操作位置から中立位置に戻されたときから上記所定の遅延時間の経過後に、上記旋回モータに上記制動力を与えるように上記パーキングブレーキを制御する第1パーキングブレーキ制御手段と、上記連通・遮断手段が上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとの間を遮断するように動作したときに、上記連通・遮断手段と連動して、上記所定の遅延時間よりも短い遅延時間の経過後に、上記旋回モータに上記制動力を与えるように上記パーキングブレーキを制御する第2パーキングブレーキ制御手段とを含むことを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、連通・遮断手段によって旋回用操作装置とパイロットポンプとが連通されている状態にあって、旋回用操作装置が操作位置から中立位置に戻されたときには、第1パーキングブレーキ制御手段の制御によって、所定の遅延時間の経過後に旋回モータにパーキングブレーキの制動力が与えられて旋回モータが停止し、これに伴って旋回体を停止させることができる。この機能については、本発明が連通・遮断手段の操作に関連させたものである点を除けば、上述した特許文献1,2に示される従来技術におけるものと同等である。
【0011】
また本発明は、緊急時等にあって連通・遮断手段を動作させ、旋回用操作装置とパイロットポンプとの間を遮断したときには、第2パーキングブレーキ制御手段によって、第1パーキングブレーキ制御手段で実施されるときの所定の遅延時間よりも短い遅延時間の経過後に、旋回モータにパーキングブレーキの制動力が与えられて旋回モータが停止し、これによって旋回体を停止させることができる。
【0012】
すなわち本発明は、旋回用操作装置が操作位置から中立位置に戻されたときから所定の遅延時間の経過後に旋回体を停止させるという考え方を維持しながら、旋回モータ駆動回路に含まれる油圧機器の異常によるリリーフ圧の低下を生じている場合も含めて、第2パーキングブレーキ制御手段によって旋回体を速やかに停止させることができる。
【0013】
また本発明は、上記発明において、上記第2パーキングブレーキ制御手段は、上記旋回用操作装置が操作位置から中立位置に戻され、しかも上記連通・遮断手段が上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとの間を遮断するように動作したときに、上記連通・遮断手段と連動し、上記第1パーキングブレーキ制御手段と協働して上記所定の遅延時間よりも短い遅延時間の経過後に、上記旋回モータに上記制動力を与えるように構成されることを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、第1パーキングブレーキ制御手段の制御によるパーキングブレーキの制動力を旋回モータに与えた際に、旋回モータ駆動回路に含まれる油圧機器に異常が生じていて旋回体の旋回速度が十分に下がらないような場合には、連通・遮断手段を直ちに動作させて旋回用操作装置とパイロットポンプとの間を遮断する操作が行われる。このとき、連通・遮断手段と連動して作動する第2パーキングブレーキ制御手段と、上述した第1パーキングブレーキ制御手段との協働によって、第1パーキング制御手段だけで実施されるときの所定の遅延時間よりも短い遅延時間の経過後に、旋回モータにパーキングブレーキの制動力が与えられて旋回モータが停止し、これにより旋回体を停止させることができる。
【0015】
また本発明は、上記発明において、上記第1パーキングブレーキ制御手段は、上記パーキングブレーキと作動油タンクとを連絡する管路と、この管路に設けた第1絞りとを含み、上記第2パーキングブレーキ制御手段は、上記パーキングブレーキと作動油タンクとを連絡する管路から分岐し、上記パーキングブレーキからの戻り油を上記作動油タンクに戻すことが可能な分岐管路と、この分岐管路に設けられ、上記連通・遮断手段が上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとを連通させるように動作したときに、上記パイロットポンプのパイロット圧によって切り換えられ上記分岐管路を閉じる閉位置と、上記連通・遮断手段が上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとの間を遮断するように動作したときに、ばね力によって切り換えられ上記分岐管路を開く開位置とを有する開閉弁と、この開閉弁が上記開位置に保持されたときに、上記分岐管路を経て上記作動油タンクに戻される油を絞る第2絞りとを含むことを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記発明において、上記開閉弁と上記第2絞りとを互いに別体に形成して、それぞれ上記分岐管路に設けたことを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記発明において、上記開閉弁内に上記第2絞りを設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、旋回用操作装置が操作位置から中立位置に戻されたときから所定の遅延時間の経過後に旋回体を停止させるという考え方を維持しながら、旋回モータ駆動回路に含まれる油圧機器の異常によるリリーフ圧の低下を生じている場合も含めて、第2パーキングブレーキ制御手段によって旋回体を速やかに停止させることができ、従来よりも旋回体の制動機能に優れた安全性の高い作業機械を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る油圧駆動装置の一実施形態が備えられる作業機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る油圧駆動装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る作業機械の油圧駆動装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0021】
本実施形態に係る油圧駆動装置が備えられる作業機械は例えば油圧ショベルであり、この油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に設けられる旋回体2と、この旋回体2に取り付けられる作業装置3とを備えている。作業装置3は、旋回体2に上下方向の回動可能に接続されるブーム4と、このブーム4の先端に上下方向の回動可能に接続されるアーム5と、このアーム5の先端に上下方向の回動可能に接続されるバケット6と、ブーム4を駆動するブームシリンダ4aと、アーム5を駆動するアームシリンダ5aと、バケット6を駆動するバケットシリンダ6aとを含んでいる。旋回体2上には運転室7を配置してある。
【0022】
この油圧ショベルに備えられる本実施形態に係る油圧駆動装置は、図2に示すように、油圧ポンプ11及びパイロットポンプ12と、作動油タンク13とを備えている。また本実施形態は、旋回体2を駆動する旋回駆動装置27と、この旋回駆動装置27を駆動する旋回モータ16と、油圧ポンプ11から第1主管路17あるいは第2主管路18を介して旋回モータ16に供給される圧油の流れを制御する旋回用方向制御弁14と、この旋回用方向制御弁14を切り換え操作する旋回用操作装置15とを備えている。また本実施形態は、旋回モータ16のリリーフ圧を規定するリリーフ弁19,20と、第1主管路17,第2主管路18における負圧の発生を防ぐ油を供給可能な逆止弁21,22とを備えている。
【0023】
上述した油圧ポンプ11、旋回モータ16、第1主管路17、第2主管路18、旋回用方向制御弁14、旋回用操作装置15、リリーフ弁19,20、逆止弁21,22、及び作動油タンク13によって、旋回モータ駆動回路が構成されている。
【0024】
また本実施形態は、旋回モータ16の出力軸に設けたブレーキ体28と、このブレーキ体28を介して旋回モータ16に制動力を与えるパーキングブレーキ29と、このパーキングブレーキ29に管路31を介して接続され、旋回用操作装置15と、旋回用方向制御弁14の両制御部とをそれぞれ接続するパイロット管路38,39に供給されるパイロット圧のうちの大きい方のパイロット圧を取り出すシャトル弁30とを備えている。管路31には、シャトル弁30からパーキングブレーキ29へのパイロット圧の供給を許容し、逆方向へのパイロット圧の流れを阻止する逆止弁32を設けてある。シャトル弁30から取り出されたパイロット圧がパーキングブレーキ29に供給されると、パーキングブレーキ29の作動部がブレーキ体28から離れて、旋回モータ16に制動力を与えない状態すなわちブレーキ解除状態となる。また逆に、パーキングブレーキ29に対するパロット圧の供給が停止されると、パーキングブレーキ29の作動部がブレーキ体28に当接して、旋回モータ16に制動力を与える状態すなわちブレーキ状態となる。
【0025】
また本実施形態は、旋回用操作装置15とパイロットポンプとの間を連通、遮断する連通・遮断手段を備えている。
【0026】
また本実施形態は、旋回用操作装置15が操作位置から中立位置に戻されたときから所定の遅延時間の経過後に、制動力を旋回モータ16に与えるようにパーキングブレーキ29を制御するパーキングブレーキ制御手段を備えている。このパーキングブレーキ制御手段は、第1パーキングブレーキ制御手段と第2パーキングブレーキ制御手段とによって構成されている。
【0027】
第1パーキングブレーキ制御手段は、上述した連通・遮断手段によって旋回用操作装置15とパイロットポンプ12との間が連通されている状態にあって、旋回用操作装置15が操作位置から中立位置に戻されたときから所定の遅延時間Tの経過後に、旋回モータ16に制動力を与えるようにパーキングブレーキ29を制御する。
【0028】
第2パーキングブレーキ制御手段は、旋回用操作装置15が操作位置から中立位置に戻され、しかも上述した連通・遮断手段が旋回用操作装置15とパイロットポンプ12との間を遮断するように動作したときに、連通・遮断手段と連動し、第1パーキングブレーキ制御手段と協働して上述の所定の遅延時間Tよりも短い遅延時間tの経過後に、旋回モータ16に制動力を与えるようにパーキングブレーキ29を制御する。
【0029】
上述した連通・遮断手段は例えば、運転室7内に設置される運転席の横に設けられ、旋回体2及び作業装置3の駆動を可能に保つ運転位置と、旋回体2及び作業装置3の駆動を不能に保つロック位置のいずれかに操作される図示しないゲートロックレバーを含んでいる。また、この連通・遮断手段は、電源25に接続され、ゲートロックレバーの操作に応じて切り換えられるスイッチ26を含んでいる。さらにこの連通・遮断手段は、パイロットポンプ12と旋回用操作装置15とを接続する管路23に設けた電磁弁24を含んでいる。
【0030】
電磁弁24は、ゲートロックレバーが運転位置に操作され、スイッチ26が接点26a側に切り換えられたときに、スイッチ26を介して出力される信号に応じて切り換えられ、旋回用操作装置15とパイロットポンプ12とを連通させる開位置24aを有している。また、この電磁弁24は、ゲートロックレバーがロック位置に操作され、スイッチ26が接点26b側に切り換えられたときに、ばね24cの力によって切り換えられ、旋回用操作装置15とパイロットポンプ12との間を遮断する閉位置24bを有している。
【0031】
なお、説明を簡単にするために図2では省略したが、本実施形態に備えられる油圧駆動装置には、旋回用操作装置15の他に、ブーム用操作装置、アーム用操作装置等の各種の操作装置が備えられている。これらの旋回用操作装置15を含む各種操作装置は、同じ管路23を介してパイロットポンプ12に接続されている。したがって、電磁弁24が開位置24aに切り換えられると、旋回用操作装置15を含む各種操作装置とパイロットポンプ12とが連通して該当する操作が可能となり、電磁弁24が閉位置24bに切り換えられると、旋回用操作装置15を含む各種操作装置とパイロットポンプ12との間が遮断されて各種操作装置による操作が不能となる。
【0032】
上述した第1パーキングブレーキ制御手段は、一端を逆止弁32とパーキングブレーキ29との間に位置する管路31部分に接続され、パーキングブレーキ29と作動油タンク13とを連絡する管路33と、この管路33に設けた第1絞り34とを含んでいる。
【0033】
上述した第2パーキングブレーキ制御手段は、一端を管路31と管路33との接続点と、パーキングブレーキ29との間に位置する管路31部分に接続され、パーキングブレーキ29と作動油タンク13とを連絡する逆止弁32よりもパーキングブレーキ29側に位置する管路31部分から分岐し、パーキングブレーキ29からの戻り油を作動油タンク13に戻すことが可能な分岐管路35を含んでいる。また、この第2パーキングブレーキ制御手段は、旋回用操作装置15とパイロットポンプ12とを連通させる分岐管路35に設けられ電磁弁24が開位置24aに切り換えられたときに、パイロットポンプ12のパイロット圧によって切り換えられて分岐管路35を閉じる閉位置36aと、電磁弁24が旋回用操作装置15とパイロットポンプ12との間を遮断する閉位置24bに切り換えられたときに、ばね36cの力によって切り換えられ分岐管路35を開く開位置36bとを有する開閉弁36を含んでいる。さらに、この第2パーキング制御手段は、例えば開閉弁36とは別体に形成され、開閉弁36と作動油タンク13との間に位置する分岐管路35部分に設けた第2絞り37を含んでいる。
【0034】
なお、本実施形態では開閉弁36と第2絞り37とを互いに別体に形成して、それぞれ分岐管路35に設けてあるが、開閉弁36の開位置36b内に第2絞り37を設けた構成にしてもよい。
【0035】
このように構成した本実施形態は、図示しないゲートロックレバーを運転状態に操作すると、上述のように、スイッチ26が接点26a側に切り換えられ、電磁弁24が開位置24aとなり、この電磁弁24の開位置24aを介して旋回用操作装置15とパイロットポンプ12とが連通する。これにより旋回操作が可能な状態となる。また、パイロットポンプ12のパイロット圧が管路40を介して開閉弁36の制御部に与えられ、ばね36cの力に抗して開閉弁36は閉位置36aに切り換えられる。これにより分岐管路35は閉じられる。
【0036】
この状態で旋回用操作装置15を操作すると、操作に伴って発生したパイロット圧がシャトル弁30、管路31、逆止弁32を介してパーキングブレーキ29に与えられ、ブレーキ解除状態となる。また、旋回用操作装置15から供給されるパイロット圧により旋回用方向制御弁14が切り換えられ、第1主管路17あるいは第2主管路18を介して油圧ポンプ11から吐出される圧油が旋回モータ16に供給され、旋回モータ16が作動する。これにより旋回駆動装置27が駆動し、旋回体2が旋回する。例えば、この旋回体2の旋回とともに作業装置3を駆動することにより、掘削した土砂の旋回・放土等の作業を実施することができる。
【0037】
また、上述のように旋回体2を旋回させている状態から旋回体2を停止させるために、旋回用操作装置15を中立位置に戻すと、旋回用方向制御弁14が中立に復帰するとともに、シャトル弁30からパーキングブレーキ29へのパイロット圧の供給が停止する。このとき、旋回用方向制御弁14の中立位置への復帰により旋回モータ16への圧油の供給は停止し、旋回モータ16はやがて停止する。また、管路31のこもり圧がパーキングブレーキ29に接続されている管路33に設けた第1絞り34を介して徐々に作動油タンク13に逃がされる。すなわち第1絞り34によって、旋回用操作装置15が中立位置に戻されたときから所定の遅延時間Tの経過後に、パーキングブレーキ29によってブレーキ体28を介して旋回モータ16に制動力が与えられ、旋回体2の停止状態が安定して保たれるブレーキ状態となる。
【0038】
また、このように旋回体2を停止させパーキングブレーキ29によって旋回モータ16に制動力を与えているブレーキ状態にあって、運転席に座っているオペレータが車外に降りるために図示しないゲートロックレバーを操作すると、スイッチ26が接点26b側に切り換えられる。これにより電磁弁24への電力の供給が停止し、ばね24cの力により電磁弁24は閉位置24bに切り換えられる。したがって上述したように、旋回用操作装置15とパイロットポンプ12との間が遮断され、旋回モータ16、及び作業装置3に含まれるブームシリンダ4a等の油圧シリンダの操作が不能となる。すなわち、例えば誤って旋回用操作装置15を含む各種操作装置が操作された場合でも、旋回体2及び作業装置3の駆動を生じることがなく、安全に保たれる。またこのとき、開閉弁36は、電磁弁24の閉位置24bへの切り換えに伴って開位置36bに切り換えられる。したがって、パーキングブレーキ29は、開閉弁36及び第2絞り37を介しても、作動油タンク13に連通した状態となる。
【0039】
そして本実施形態は、例えば旋回モータ駆動回路に含まれる油圧機器の異常によってリリーフ圧が低下し、旋回体2の旋回速度が十分下がらないような事態を生じ、旋回体2を旋回させている状態から速く旋回体2を停止させたいような場合には、旋回用操作装置15を操作位置から中立位置に戻し、直ちにゲートロックレバーをロック位置に操作すればよい。これにより上述したように、電磁弁24は閉位置24bに切り換えられ、これに伴って開閉弁36は開位置36bに切り換えられる。したがって、パーキングブレーキ29は、第1絞り34を介して作動油タンク13に連通するとともに、開閉弁36の開位置36b及び第2絞り37を介して作動油タンク13に連通する。これらの協働により、上述した所定の遅延時間Tよりも短い遅延時間tの経過後に、パーキングブレーキ29の制動力がブレーキ体28を介して旋回モータ16に与えられる。このようにして必要に応じて旋回体2を速やかに停止させることができる。
【0040】
このように構成した本実施形態によれば、旋回用操作装置15が操作位置から中立位置に戻されたときから所定の遅延時間Tの経過後に旋回体2を停止させるものにあって、旋回モータ駆動回路に異常を生じていてリリーフ圧が低下している場合なども含めて、図示しないゲートロックレバーをロック位置に操作して電磁弁24を閉位置24bに切り換えて旋回用方向制御弁15とパイロットポンプ12との間を遮断することにより、第1絞り34と、開閉弁36及び第2絞り37との協働によって速やかに旋回体2を停止させることができ、旋回体2の制動機能に優れた安全性の高い油圧ショベルを実現させることができる。
【0041】
なお、上記実施形態において、第1絞り34と第2絞り37の開口面積の関係を、第1絞り34の開口面積に比べて第2絞り37の開口面積を大きくするように予め設定する構成にすれば、旋回用操作装置15が操作状態であっても電磁弁24が閉位置24bに切り換えられたときには、第1絞り34を使ったパーキングブレーキ29の作動遅延時間に比べて短い遅延時間でパーキングブレーキ29を作動させることができる。つまり、緊急時には、旋回用操作装置15が操作状態であってもパーキングブレーキ29を通常の遅延時間よりも短い遅延時間で作動させるようにすることができる。また、第2絞り27の開口面積を調整することにより、旋回用操作装置15によるパーキングブレーキ29の作動遅延時間は変更せずに、ゲートロックレバーの操作時におけるパーキングブレーキ29の作動遅延時間を短縮する方向で容易に調整することができる。
【符号の説明】
【0042】
2 旋回体
3 作業装置
11 油圧ポンプ
12 パイロットポンプ
13 作動油タンク
14 旋回用方向制御弁
15 旋回用操作装置
16 旋回モータ
23 管路
24 電磁弁
24a 開位置
24b 閉位置
24c ばね
26 スイッチ
26a 接点
26b 接点
27 旋回駆動装置
28 ブレーキ体
29 パーキングブレーキ
30 シャトル弁
31 管路
33 管路
34 第1絞り(第1パーキングブレーキ制御手段)
35 分岐管路
36 開閉弁(第2パーキングブレーキ制御手段)
36a 閉位置
36b 開位置
36c ばね
37 第2絞り(第2パーキングブレーキ制御手段)
38 パイロット管路
39 パイロット管路
40 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置とを有する作業機械に備えられ、
油圧ポンプと、この油圧ポンプから吐出される圧油によって作動し、上記旋回体を駆動する旋回モータと、この旋回モータに制動力を与えるパーキングブレーキと、上記油圧ポンプから上記旋回モータに供給される圧油の流れを制御する旋回用方向制御弁と、この旋回用方向制御弁を切り換え操作する旋回用操作装置と、この旋回用操作装置へパイロット圧を供給するパイロットポンプと、上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとの間を連通、遮断する連通・遮断手段とを備えるとともに、
上記旋回用操作装置が操作位置から中立位置に戻されたときから所定の遅延時間の経過後に、上記制動力を上記旋回モータに与えるように上記パーキングブレーキを制御するパーキングブレーキ制御手段を備えた作業機械の油圧駆動装置において、
上記パーキングブレーキ制御手段は、
上記連通・遮断手段によって上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとの間が連通されている状態にあって、上記旋回用操作装置が操作位置から中立位置に戻されたときから上記所定の遅延時間の経過後に、上記旋回モータに上記制動力を与えるように上記パーキングブレーキを制御する第1パーキングブレーキ制御手段と、
上記連通・遮断手段が上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとの間を遮断するように動作したときに、上記連通・遮断手段と連動して、上記所定の遅延時間よりも短い遅延時間の経過後に、上記旋回モータに上記制動力を与えるように上記パーキングブレーキを制御する第2パーキングブレーキ制御手段とを含むことを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の油圧駆動装置において、
上記第2パーキングブレーキ制御手段は、上記旋回用操作装置が操作位置から中立位置に戻され、しかも上記連通・遮断手段が上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとの間を遮断するように動作したときに、上記連通・遮断手段と連動し、上記第1パーキングブレーキ制御手段と協働して上記所定の遅延時間よりも短い遅延時間の経過後に、上記旋回モータに上記制動力を与えるように構成されることを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業機械の油圧駆動装置において、
上記第1パーキングブレーキ制御手段は、上記パーキングブレーキと作動油タンクとを連絡する管路と、この管路に設けた第1絞りとを含み、
上記第2パーキングブレーキ制御手段は、
上記パーキングブレーキと作動油タンクとを連絡する管路から分岐し、上記パーキングブレーキからの戻り油を上記作動油タンクに戻すことが可能な分岐管路と、
この分岐管路に設けられ、上記連通・遮断手段が上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとを連通させるように動作したときに、上記パイロットポンプのパイロット圧によって切り換えられ上記分岐管路を閉じる閉位置と、上記連通・遮断手段が上記旋回用操作装置と上記パイロットポンプとの間を遮断するように動作したときに、ばね力によって切り換えられ上記分岐管路を開く開位置とを有する開閉弁と、
この開閉弁が上記開位置に保持されたときに、上記分岐管路を経て上記作動油タンクに戻される油を絞る第2絞りとを含むことを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械の油圧駆動装置において、
上記開閉弁と上記第2絞りとを互いに別体に形成して、それぞれ上記分岐管路に設けたことを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。
【請求項5】
請求項3に記載の作業機械の油圧駆動装置において、
上記開閉弁内に上記第2絞りを設けたことを特徴とする作業機械の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−215261(P2012−215261A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81734(P2011−81734)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】