説明

作業機械

【課題】寒冷時における燃料利用効率を向上できる作業機械を提供すること。
【解決手段】ディーゼルエンジン1と、可変容量型油圧ポンプ11と、排気処理装置8と、ヒータユニット5を備える作業機械において、エンジン冷却水温センサ7と、排気温センサ9と、エンジン始動後に作業機械を静止させた状態でエンジン負荷を制御する負荷制御部53、及びフィルタ35の強制再生を制御する再生制御部55を有する制御装置25とを備え、負荷制御部は、エンジンの始動時における冷却水温度がエンジン負荷上昇の開始タイミングを示すT1未満のときに負荷上昇を開始し、その後、冷却水温度が強制再生が可能な温度を示すT2以上に保持されつつ、排気温度がフィルタの強制再生が可能なT3以上に保持されるように負荷制御し、再生制御部は、冷却水温度がT2以上に保持されつつ排気温度がT3以上に保持されたらフィルタの再生を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン、可変容量型油圧ポンプ及び排気処理装置を備える作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベル等の油圧作業機械に用いられるディーゼルエンジンでは、省エネルギー化の観点からの小排気量化とともに、低騒音化の観点からのローアイドル回転数の低減化が重視される傾向にある。しかしながら、このような技術トレンドの中にあっては、寒冷時のエンジン始動時にエンジン冷却水温度が上昇し難く、暖機時間の長時間化や暖房の利き具合悪化等の弊害も発生する。例えば、油圧ショベル等は作業終了後も屋外に駐機される場合が殆どであるが、寒冷時には運転席の窓ガラスに霜が付着する即座に作業に取り掛かれず作業効率が低下することがある。
【0003】
このような課題に対応するための技術として、エンジン冷却水温度が閾値より低いときには運転者の操作と無関係に油圧ポンプの傾転角及びエンジン回転数を上昇させることで寒冷時における冷却水温度の早期向上を図ったものがある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−299825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の排出ガス規制の段階的強化に対応するために、ディーゼル微粒子除去フィルタ(Diesel Particulate Filter(DPF)以下、フィルタと称する)を有する排気処理装置をエンジンの排気管路に装着することでエンジン排気中の粒子状物質(Particulate Matter(以下、PMとする))の低減を図ることが行われている。
【0006】
この種の排気処理装置では、フィルタの目詰まりを防止するために、捕集されたPMを燃焼して定期的にフィルタを再生する必要がある。フィルタの再生には大別して、(1)作業等に伴うエンジン負荷の上昇によってPMが燃焼する温度(以下、再生温度と称することがある(約350℃))まで排気温度が到達したときに自発的に発生する自己再生と、(2)排気に含ませた未燃燃料を燃焼して排気温度を強制的に再生温度まで上昇させる強制再生がある。油圧ショベル等の油圧作業機械では、エンジン作動時間が長い自動車等の一般車両と異なり、一般的に、エンジンが停止される頻度が高く、また、作業内容や作業負荷に応じてエンジン回転数の変動が大きい。そのため、通常の運転だけでは排気温度を再生温度以上に保持することが難しく、自己再生よりも強制再生が果たす役割が重要となっている。
【0007】
しかしながら、強制再生を行うには、上記のように、排気に含ませた燃料(未燃燃料)を燃焼可能な温度(燃焼可能排気温度)まで排気温度を上昇させる必要がある。そのため、強制再生は、作業に付随的に行われる自己再生と比較して少なくとも未燃燃料分は燃料消費量が多くなるため、燃料利用効率が低下する傾向がある。特に、上記の技術トレンドの中にあっては、排気温度を上昇させるために必要な燃料消費量はそれ以前よりも増加する傾向がある。
【0008】
本発明の目的は、寒冷時における燃料利用効率を向上できる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、ディーゼルエンジンと、このエンジンによって駆動される可変容量型油圧ポンプと、前記エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する排気処理装置と、前記エンジンの冷却水によって加熱され、暖房や霜取り等の熱源として利用されるヒータユニットとを備える作業機械において、前記エンジンの冷却水温度を検出する冷却水温センサ又は前記油圧ポンプの作動油温度を検出する作動油温センサと、前記フィルタに導入される排気温度を検出する排気温センサと、前記エンジンの始動後に前記作業機械を静止させた状態で、前記エンジンの回転数並びに前記油圧ポンプの傾転角度及び吐出圧のうち少なくとも1つをローアイドル時の状態から大きくすることでエンジン負荷を上昇させる負荷制御部と、前記フィルタの強制再生を制御する再生制御部とを有する制御装置とを備え、前記負荷制御部は、前記エンジンの始動時における前記冷却水温センサ又は前記作動油温センサの検出値がエンジン負荷上昇の開始タイミングを示す第1閾値未満のときにエンジン負荷の上昇を開始し、その後、前記冷却水温センサ又は前記作動油温センサの検出値が強制再生が可能な温度を示す第2閾値以上に保持されつつ、前記排気温センサの検出値が前記フィルタの強制再生が可能な目標温度以上に保持されるようにエンジン負荷を制御し、前記再生制御部は、前記負荷制御部によって前記冷却水温度が前記第2閾値以上に保持されつつ前記排気温度が前記目標温度以上に保持されたら、前記フィルタの再生を開始するものとする。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記フィルタの前後差圧が前記フィルタの再生完了タイミングを示す再生完了圧力に達したとき、または前記フィルタの再生開始時刻から予め設定した時間が経過したときに、前記再生制御部は前記フィルタの再生を停止し、前記負荷制御部はエンジン負荷の制御を停止するものとする。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記作業機械の運転者が前記再生制御部に前記フィルタの強制再生の開始を指示するための再生開始入力手段をさらに備え、前記再生開始入力手段によって前記フィルタの強制再生の開始がされた場合に、前記負荷制御部は、前記冷却水温センサ又は前記作動油温センサの検出値が前記第2閾値以上に保持されつつ、前記排気温センサの検出値が前記目標温度以上に保持されるようにエンジン負荷を制御し、前記再生制御部は、前記負荷制御部によって前記冷却水温度が前記第2閾値以上に保持されつつ前記排気温度が前記目標温度以上に保持されたら、前記フィルタの再生を開始するものとする。
【0012】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、好ましくは、前記負荷制御部がエンジン負荷を制御している間はその旨が表示される表示装置をさらに備えるものとする。
【0013】
(5)上記(4)は、好ましくは、前記制御装置は、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量を推定する堆積量推定部をさらに有し、前記表示装置には、前記堆積量推定部で推定された前記堆積量が表示されるものとする。
【0014】
(6)本発明は、上記目的を達成するために、ディーゼルエンジンと、このエンジンによって駆動される可変容量型油圧ポンプと、前記エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する排気処理装置と、前記エンジンの冷却水によって加熱され、暖房や霜取り等の熱源として利用されるヒータユニットとを備える作業機械において、前記エンジンの冷却水温度を検出する冷却水温センサ又は前記油圧ポンプの作動油温度を検出する作動油温センサと、前記フィルタに導入される排気温度を検出する排気温センサと、前記エンジンの始動後に前記作業機械を静止させた状態で、前記エンジンの回転数並びに前記油圧ポンプの傾転角度及び吐出圧のうち少なくとも1つをローアイドル時の状態から大きくすることでエンジン負荷を上昇させる負荷制御部と、前記フィルタの強制再生を制御する再生制御部とを有する制御装置と、前記作業機械の運転者が前記負荷制御部にエンジン負荷制御の開始を指示するための負荷制御開始入力手段とを備え、前記負荷制御部は、前記エンジンの始動後に前記作業機械を静止させた状態で前記負荷制御開始入力手段からの指示があったときにエンジン負荷の上昇を開始し、その後、前記冷却水温センサ又は前記作動油温センサの検出値が強制再生が可能な温度を示す閾値以上に保持されつつ、前記排気温センサの検出値が前記フィルタの強制再生が可能な目標温度以上に保持されるようにエンジン負荷を制御し、前記再生制御部は、前記負荷制御部によって前記冷却水温度が前記閾値以上に保持されつつ前記排気温度が前記目標温度以上に保持されたら、前記フィルタの再生を開始するものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、寒冷時のエンジン始動時において、ヒータユニットの加熱速度の向上とともに排気処理装置のフィルタ再生が可能なので、寒冷時における燃料利用効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態である作業機械の概略図。
【図2】本発明の実施の形態である作業機械におけるコントローラ25の概略図。
【図3】本実施の形態に係る作業機械における第1の負荷制御フローチャート。
【図4】本実施の形態に係る作業機械における第2の負荷制御フローチャート。
【図5】本実施の形態に係る作業機械における第3の負荷制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態である作業機械の概略図である。
【0019】
この図に示す作業機械は、エンジン1と、ラジエータ2と、ヒータユニット5と、排気処理装置8と、油圧ポンプ11と、パイロットポンプ12と、油圧アクチュエータ17と、ゲートロックレバー(ロック装置)21と、表示装置24と、再生スイッチ(再生開始入力手段)22と、負荷制御スイッチ23と、コントローラ(制御装置)25を備えている。
【0020】
エンジン1は水冷式のディーゼルエンジンである。エンジン1は、冷却ファン3と、冷却水ポンプ4と、サーモスタット6と、冷却水温センサ7と、エンジン回転数センサ26を備えている。
【0021】
エンジン1において、冷却水ポンプ4によって送り出された冷却水(エンジン冷却水)はエンジン1内を巡り冷却水温センサ7を介してサーモスタット6に導入されている。冷却水温センサ7は、冷却水温度を検出するもので、検出した冷却水温度をコントローラ25に送信している。冷却水流路は、サーモスタット6において、ラジエータ2を介して冷却水ポンプ4の下流に導入される第1バイパス流路31と、冷却水ポンプ4に直接導入される循環流路32とに分岐している。サーモスタット6は、冷却水温度が開弁温度Ts(例えば85℃)以上に達している場合に開弁し、ラジエータ2を通過する第1バイパス流路31に冷却水を導入する。一方、冷却水温度が開弁温度未満であれば、冷却水は循環流路32に導入されエンジン1内のみを循環する。
【0022】
サーモスタット6の上流側には、ラジエータ2の下流側で第1バイパス流路31に接続する第2バイパス流路33が接続されている。この第2バイパス流路33にはヒータユニット5が設けられている。ヒータユニット5は冷却水によって加熱され暖房や霜取り等の熱源として利用される。なお、この構成から明らかであるが、ラジエータ2と異なり、ヒータユニット5にはサーモスタット6の開弁状態に関係なく冷却水が循環供給されている。これによりサーモスタット6の開弁温度未満であってもヒータユニット5は冷却水に加熱される。
【0023】
ところで、エンジン始動後の走行操作や作業操作を行わないローアイドル時(エンジン始動後の作業機械を静止させた状態)において、エンジン1の回転数をローアイドル時の状態から上昇させると、エンジン負荷が上昇して冷却水温度及び排気温度を上昇させることができる。なお、本実施の形態では、エンジン1の駆動軸周辺に設けられたエンジン回転数センサ26でエンジン1の回転数を検出している。エンジン回転数センサ26によって検出されたエンジン回転数はコントローラ25に送信されている。
【0024】
エンジン1の排気が通過する排気管路34には排気処理装置8が設置されている。排気処理装置8には、エンジン1の排気中のPMを捕集するフィルタ(DPF)35と、フィルタ35の前後差圧を検出するフィルタ差圧センサ10と、フィルタ35に導入される排気温度を検出する排気温センサ9が設置されている。フィルタ差圧センサ10によって検出された圧力は、コントローラ25に送信されており、フィルタ35のPM堆積量(フィルタ35の目詰まり具合)を推定するため等に利用される。また、排気温センサ9によって検出された排気温度は、コントローラ25に送信されており、排気温度が燃焼可能排気温度(フィルタ35上流に設置された酸化触媒が活性化する温度であって、排気中の未燃燃料を当該酸化触媒と酸化反応(燃焼)させることができる温度(約250℃))に到達しているか等の把握に利用される。
【0025】
油圧ポンプ11はエンジン1によって駆動されている。油圧ポンプ11の傾転角度は、コントローラ25の制御信号(電気信号)によって作動するレギュレータ13によって制御されている。すなわち、油圧ポンプ11は可変容量型油圧ポンプである。エンジン始動後のローアイドル時において、油圧ポンプ11の傾転角度をローアイドル時の状態から大きくして吐出流量を大きくすると、エンジン負荷が上昇して冷却水温度及び排気温度を上昇させることができる。
【0026】
油圧ポンプ11によってタンク14から汲み上げられ吐出された圧油は、可変絞り弁15及び切換弁16を介して油圧アクチュエータ(本実施の形態では油圧モータ)17に導入され、油圧アクチュエータ17を駆動する。可変絞り弁15は、コントローラ25と接続されており、コントローラ25によって絞り量が制御されている。エンジン始動後のローアイドル時において、コントローラ25によって可変絞り弁15を絞って吐出圧を大きくすると、エンジン負荷が上昇して冷却水温度及び排気温度を上昇させることができる。また、切換弁16は、切換位置によって油圧アクチュエータ17の駆動を制御するもので、パイロットポンプ12から供給される圧油によって作動する。
【0027】
パイロットポンプ12は、油圧ポンプ11と同様にエンジン1によって駆動されており、油圧アクチュエータ17を操作する切換弁16等の操作系に圧油を供給している。パイロットポンプ12から吐出された圧油はパイロットカット弁19及び操作バルブ20を介して切換弁16に導入されている。パイロットカット弁19は、操作バルブ20への圧油を遮断するものであり、ゲートロックレバー(ロック装置)21がロック位置にあるときに圧油を遮断する。これにより、ゲートロックレバー21がロック位置にあるときには、運転者による操作を不可能にすることができる。なお、パイロットポンプ12から吐出される圧油の圧力は、パイロットカット弁19よりタンク14側に設置されたパイロットリリーフ弁18によって一定に調整されている。操作バルブ20は、切換弁16の位置を制御するもので、運転者の操作レバー36の操作に応じて切換弁16を動作させる。
【0028】
表示装置24は、作業機械の運転席内において運転者が見易い位置に設置されており、コントローラ25と接続されている。表示装置24には、コントローラ25から送信されるデータが表示される(詳細は後述)。なお、見やすさを向上する場合には、表示装置24はカラー液晶画面とすることが好ましい。
【0029】
再生スイッチ(再生開始入力手段)22は、作業機械の運転者がコントローラ25(再生制御部55(後述))にフィルタ35の強制再生の開始を指示するためのものであり、作業機械の運転席内に設置されている。再生スイッチ22はコントローラ25と接続されている。
【0030】
負荷制御スイッチ(負荷制御開始入力手段)23は、作業機械の運転者がコントローラ25(負荷制御部53(後述))にエンジン1の負荷制御の開始を指示するためのものであり、作業機械の運転席内に設置されている。負荷制御スイッチ23はコントローラ25と接続されている。
【0031】
図2は本発明の実施の形態である作業機械におけるコントローラ25の概略図である。
【0032】
コントローラ25は、ロック判定部51と、冷却水温度判定部52と、負荷制御部53と、排気温度判定部54と、再生制御部55と、再生完了判定部56と、表示制御部57と、PM堆積量推定部58と、再生開始判定部59を備えており、これら各部は互いに通信可能に接続されている。
【0033】
ロック判定部51は、ゲートロックレバー21がロック位置にあるときに送信されるロック信号を受信しており、ロック装置であるゲートロックレバー21がロック位置にあるか否かを判定する。
【0034】
冷却水温度判定部52は、後述の負荷制御に用いられる各設定温度(T1,T2,Ts)とエンジン1の冷却水温度の大小関係を比較する部分であり、冷却水温センサ7の検出値(冷却水温度)を受信している。ここで用いられる設定温度としては、(1)エンジン負荷上昇の必要の有無の判定に用いられる温度であって、エンジン負荷上昇の開始タイミングを示す負荷上昇開始温度T1(第1閾値)と、(2)T1以上に設定された温度であって、強制再生が可能な冷却水温を示す燃焼可能水温T2(第2閾値)と、(3)エンジン1におけるサーモスタット6の開弁温度Tsがある(T1≦T2≦Ts)。
【0035】
負荷制御部53は、エンジン1の始動後に作業機械を静止させた状態でエンジン負荷を制御する部分である。エンジン負荷を上昇させる方法としては、エンジン1の回転数並びに油圧ポンプ11の傾転角度及び吐出圧のうち少なくとも1つをローアイドル時の状態から大きくする方法がある。本実施の形態における負荷制御部53は、負荷制御スイッチ23から負荷制御を開始する旨の信号を、レギュレータ13からその位置情報を、エンジン回転数センサ26及び圧力センサ37からそれらの検出値(エンジン回転数及び吐出圧)を受信しており、その一方で、エンジン1、レギュレータ13及び可変絞り弁15に制御信号を送信している。このような構成により、負荷制御部53は、(1)エンジン回転数センサ26から送信される回転数を監視しながらエンジン1の回転数を目標回転数まで上昇させたり、(2)レギュレータ13の位置から求められる傾転角度を目標角度まで上昇させたり、(3)圧力センサ37から送信される圧力が目標圧力まで上昇するように可変絞り弁15を絞ったりしてエンジン負荷を上昇している。
【0036】
排気温度判定部54は、強制再生が可能な排気温度である燃焼可能排気温度T3(目標温度)とエンジン1の排気温度との大小関係を比較する部分であり、排気温センサ9の検出値(排気温度)を受信している。
【0037】
再生制御部55は、エンジン1の始動後に作業機械を静止させた状態でフィルタ35の強制再生(手動再生及び自動再生)を制御する部分であり、エンジン1に制御信号を送信する。再生制御部55は、負荷制御部53によって冷却水温度がT2以上に保持されつつ排気温度がT3以上に保持さている場合に、フィルタ35の強制再生を開始する。
【0038】
再生完了判定部56は、フィルタ35の再生が完了したか否かを判定する部分であり、フィルタ差圧センサ10の検出値(フィルタ35の前後差圧)を受信している。再生完了判定部56は、フィルタ差圧センサ10から送信される差圧がフィルタ35の再生完了タイミングを示す再生完了圧力P1に達したときにフィルタ35の再生が完了したと判定する。フィルタ35の再生が完了したと判定された時刻は、PM堆積量推定部58で再生完了時刻として利用されることがある。なお、上記と代替する方法として、強制再生の開始時刻から再生完了までに必要な時間(再生必要時間)を予め調べておき、フィルタ35の再生開始時刻からの経過時間が当該再生必要時間に達したことが再生完了判定部56で確認できたら、フィルタ35の再生が完了したと判定しても良い。
【0039】
表示制御部57は、運転者に負荷制御状況を報知するための表示やフィルタ35のPM堆積量等を表示装置24に表示するための部分であり、表示装置24にこれら表示に関するデータを送信する。
【0040】
PM堆積量推定部58は、フィルタ35におけるPMの堆積量を推定する部分であり、フィルタ差圧センサ10の検出値を受信している。具体的には、PM堆積量推定部58は、(1)フィルタ35の前後差圧、又は(2)直近の再生完了時刻からのエンジン1の累積稼働時間に基づいてフィルタ35のPMの堆積量を推定する。
【0041】
再生開始判定部59は、再生開始の要求があったか否かを判定する部分である。本実施の形態における再生開始判定部59は、再生スイッチ22がONになっているときに送信されるON信号を再生スイッチ22から受信しており、そのON信号で再生スイッチ22がONになっているか否かで再生開始要求の有無を判定している。再生開始判定部59がON信号を受信した時刻は再生開始時刻として再生完了判定部56で利用されることがある。
【0042】
次に上記のように構成される作業機械における第1の負荷制御フローを説明する。
【0043】
図3は本実施の形態に係る作業機械における第1の負荷制御フローチャートである。
【0044】
この図に示すように、コントローラ25は、まずエンジン1の始動と同時に負荷制御フローを開始し、ロック判定部51においてゲートロックレバー(ロック装置)21がロック位置にあるかを判定する(S101)。S101においてゲートロックレバー21がロック位置にあると判定されたら、冷却水温度判定部52は、冷却水温センサ7から送信される冷却水温度が負荷上昇開始温度T1未満であるかを判定する(S102)。なお、上記において、S101でゲートロックレバー21がロック位置にないとき及びS102で冷却水温度がT1以上であるときは負荷制御フローを終了する。
【0045】
S102において冷却水温度がT1未満であれば、負荷制御部53はエンジン負荷の上昇を開始する(S103)。S103において負荷上昇を開始したら、負荷制御部53は冷却水温度がT1以上に到達するまで負荷を制御し続ける(S104)。このようにエンジン始動後に作業機械を静止させたまま負荷を上昇させると、ローアイドル時の状態で放置するよりも速く冷却水温度を上昇させることができる。これによりヒータユニット5を速く加熱することができるので、暖房の利き具合や窓ガラス等に付着した霜取りの速度を向上させることができる。
【0046】
S104において冷却水温度がT1以上に到達したら、負荷制御部53は冷却水温度が燃焼可能水温T2以上に到達し、かつ、排気温度が燃焼可能排気温度T3以上に到達するまでさらに負荷を制御する(S105)。そして、冷却水温度判定部52で冷却水温度がT2以上に到達したことが確認でき、かつ排気温度判定部54で排気温度がT3以上に到達したことが確認できたら、負荷制御部53はその状態が保持されるように負荷を制御する(S106)。その際、負荷制御部53は、冷却水温センサ7から冷却水温度判定部52に入力される冷却水温度と、排気温センサ9から排気温度判定部54に入力される排気温度とを参照しながら負荷の制御を行う。このように負荷制御を行うと、排気中の未燃燃料を燃焼させるために用いる触媒が活性化する状況を、作業機械を静止させながらにして作り出すことができる。
【0047】
S106において強制再生が可能な環境を整えることができたら、再生制御部55は排気中に未燃燃料を残存させることで強制再生を開始する(S107)。未燃燃料を残存させる方法としては、例えば、エンジン1における燃料噴射装置(インジェクタ(図示せず))の燃料噴射タイミングを上死点後に変更するポスト噴射がある。すなわち、再生制御部55は燃料噴射タイミングを制御することで強制再生を行う。このように排気中に未燃燃料を残存させると、その未燃燃料がフィルタ35上流側に設置された酸化触媒で酸化され、その反応熱でもってフィルタ35に導入される排気を再生温度以上の温度(例えば600℃程度)まで上昇させることができる。これにより捕集されたPMを燃焼できるので、フィルタ35へのPM堆積量を減少させることができる。
【0048】
強制再生を開始したら、負荷制御部53でS106における負荷制御をしながら、フィルタ35の差圧が再生完了圧力P1以下に達するまで強制再生を継続する(S106〜S108)。このときのフィルタ35の差圧の監視は、フィルタ差圧センサ10から圧力が送信される再生完了判定部56で行う。再生完了判定部56でフィルタ35の差圧がP1以下に到達したことが確認できたら、再生制御部55はフィルタ35の再生が完了したと判断して強制再生を停止し(S109)、表示制御部57は再生が完了した旨を表示装置24に表示する(S110)。これにより作業機械の運転者はフィルタ35の再生が完了したことを認知することができる。再生完了の旨を表示したら、コントローラ25は負荷制御部55において負荷制御を停止し(S111)て負荷制御フローを終了する。
【0049】
なお、上記の負荷制御フローでは、エンジン始動直後のみにゲートロックレバー21の位置判定をしたが(S101)、制御の全過程でゲートロックレバー12の位置を常に監視しロック位置にない場合には即座に負荷制御を停止してフローを終了するようにしても良い。
【0050】
上記の第1の負荷制御フローから明らかなように、本実施の形態に係る作業機械は、エンジン1の始動後に作業機械を静止させた状態で、エンジン1の回転数並びに油圧ポンプ11の傾転角度及び吐出圧のうち少なくとも1つをローアイドル時の状態から大きくすることでエンジン負荷を上昇させる負荷制御部53と、フィルタ35の強制再生を制御する再生制御部55とを備えている。そして、負荷制御部53は、エンジン1の始動時における冷却水温センサ7の検出値が負荷上昇開始温度T1未満のときにエンジン負荷の上昇を開始し、その後、燃焼可能水温T2以上に保持されつつ、排気温センサ9の検出値が燃焼可能排気温度T3以上に保持されるようにエンジン負荷を制御し、再生制御部55は、負荷制御部53によって冷却水温度がT2以上に保持されつつ排気温度がT3以上に保持されたら、フィルタ35の再生を開始する。
【0051】
このようにエンジン始動後に作業機械を静止させたまま負荷を上昇させると、まず、寒冷時にローアイドル時の状態で作業機械を放置した場合よりもヒータユニット5を速く加熱することができるので、暖房の利き具合や窓ガラス等に付着した霜取りの速度を向上させることができる。そして、これに続けて冷却水及び排気がT2又はT3以上に保持されるように負荷制御すると、当初は他の用途(ヒータユニット5の加熱)で加熱された冷却水及び排気を利用して強制再生が可能な環境を整えることができるので、燃料消費の観点から効率良くフィルタ35の再生を実施することができる。すなわち、これを逆から換言すれば、強制再生が可能な環境を整えるまでに発生する熱をヒータユニット5の加熱にも利用することができるので、寒冷時のフィルタ再生における燃料利用効率を向上することができる。したがって、上記のように負荷制御すれば、寒冷時のエンジン始動時において、ヒータユニット5の加熱速度の向上と排気処理装置のフィルタ再生が可能なので、寒冷時における燃料利用効率を向上することができる。
【0052】
また、油圧ショベル等の作業機械では、前述したように自己再生よりも強制再生が果たす役割が重要となっており、一般車両と比較して強制再生に伴う燃料消費が多い。そのため、上記のような負荷制御による燃料利用効率の向上は、一般車両と比較して顕著な効果として表れる。さらに、上記のように作業機械を停止したまま負荷制御すると、作業開始前の強制再生によってフィルタ35におけるPM堆積量を低減できるので、強制再生を作業中に実施する頻度を減らすことができ、作業効率を向上させることができる。
【0053】
なお、図3に示した負荷制御フローでは、フィルタ35の差圧が再生完了圧力P1に達したときに、再生制御部55はフィルタ35の再生を停止し(S109)、負荷制御部53はエンジン負荷の制御を停止している(S111)。このようにフローを構成すると、フィルタ35の再生は必ず完了する(すなわち、再生途中で中断することがない)ので、作業中に強制再生を行う必要性がさらに低減される。したがって、さらに作業効率を向上することができる。
【0054】
ところで、上記のS102,104,105等では冷却水温度に基づいて制御を行ったが、冷却水温度の代わりに油圧ポンプ11の作動油温度に基づいて負荷制御しても良い。作動油温度に基づいて制御する場合には、作動油温センサ38をタンク14の出口等に設け(図1参照)、その作動油温センサ38からコントローラ25に作動油温度を送信して監視すれば良い。
【0055】
なお、上記のS108ではフィルタ35の差圧に基づいて再生完了の判断を行ったが、再生完了判定部56において、強制再生の開始時刻から再生必要時間(前述)が経過したことが確認できたら、次の処理に進むように構成しても良い。このように制御すれば、フィルタ35の差圧に基づいて制御する必要がなくなるので構成を単純化できる。
【0056】
次に上記のように構成される作業機械における第2の負荷制御フローを説明する。
【0057】
図4は本実施の形態に係る作業機械における第2の負荷制御フローチャートである。この負荷制御フローは、(1)負荷制御中のときはその旨が表示装置24に表示される点(S121)、(2)エンジン始動時のPM堆積量が表示装置24に表示される点(S122,123)、(3)運転者の指示があるときのみ強制再生が行われる点(S124,125)で先の第1のフローと主に異なる。下記では、先のフローと同じ処理には同じ符号を付して説明は省略し、先のフローとの相違点及びそれによる効果を説明する。
【0058】
この図に示す負荷制御フローにおいて負荷上昇が開始されたら(S103)、表示制御部57は負荷制御が行われている旨の負荷制御表示(例えば、「負荷制御実施中です。」)を表示装置24に表示する(S121)。この表示された負荷制御表示は、負荷制御が停止されるとき(S111)に消去される。このように負荷制御部53がエンジン負荷を制御している間に負荷制御表示を表示すると、運転者に対してその制御が終了するまでゲートロックレバー21をロック位置に保持するように促すことができる。
【0059】
次に、PM堆積量推定部58はエンジン始動時におけるフィルタ35の差圧に基づいてフィルタ35におけるPMの堆積量を推定し(S122)、表示制御部57はPM堆積量推定部58で算出されたPM堆積量を表示装置24に表示する(S123)。このようにPM堆積量を表示装置24に表示すると、運転者に対してエンジン始動時におけるPM堆積量を報知することができる。
【0060】
その後、負荷制御部53で冷却水温度がT1以上に到達するまで負荷を制御したら(S104)、表示制御部57は運転者に強制再生の意思があるか否か確認する旨の表示(再生確認表示(例えば、「強制再生を実行する場合には再生スイッチをONにしてください。」))を表示装置24に表示する(S124)。再生確認表示が表示されたら、再生開始判定部59は再生スイッチ22がONになっているか否かを判定する(S125)。再生スイッチ22がONになっていれば、コントローラ25は第1のフローのS105以降と同じ処理を実行する。一方、再生スイッチ22がOFFのままであれば制御を終了する。なお、本実施の形態では強制再生を開始する旨を再生スイッチ22を介して入力したが、表示装置24をタッチパネルとし、先の再生確認表示時(S124)に強制再生を実行するか否かを表示装置24上で選択可能にしても良い。
【0061】
このようにPM堆積量を表示して強制再生の意思確認をすると、再生の必要の有無に関わらず冷却水温度及び排気温度をT2又はT3まで上昇していた第1のフローと比較して、PM堆積量が少ないにも関わらず強制再生が行われて燃料利用効率が低下したり、待機時間が長期化して作業効率が低下したりすることを回避できる。
【0062】
なお、S123で表示したPM堆積量は、再生開始(S105)とともに表示装置24から消去しても良いが、再生スイッチ22がONにされた後も表示しておいても良い。さらに、後者の場合には、再生中のフィルタ35の差圧に基づいてPM堆積量をリアルタイムに算出し、その算出結果を表示装置24に表示しても良い。このようにPM堆積量をリアルタイムに表示すれば、運転者が再生完了までに要する時間を把握する目安にできる。
【0063】
また、S122において、エンジン始動時におけるPM堆積量が再生が必要なタイミングを示す閾値を超えていると判断された場合には、S124において運転者に強制再生を促す再生推奨表示(例えば、「フィルタにPMが堆積しています。再生スイッチをONにしてください」)を表示しても良い。さらに、PM堆積量が当該閾値を超えている場合には、S123において再生確認表示や再生推奨表示を表示することなく再生開始表示(例えば、「フィルタにPMが堆積しています。強制再生を実行します」)を表示し、S124,125を省略して自動的に強制再生を実行しても良い。
【0064】
次に上記のように構成される作業機械における第3の負荷制御フローを説明する。
【0065】
図5は本実施の形態に係る作業機械における第3の負荷制御フローチャートである。この負荷制御フローは、(1)エンジン始動時の冷却水温度に関わらず運転者の指示があるときにのみ負荷上昇が開始される点(S131,132)、(2)再生完了後においても運転者の指示があるときは負荷制御を継続する点(S133〜135)で先の各フローと主に異なる。下記では、先の各フローと同じ処理には同じ符号を付して説明は省略し、先の各フローとの相違点及びそれによる効果を説明する。
【0066】
この図に示す負荷制御フローにおいてゲートロックレバー21をロック位置にあることが確認できたら(S101)、表示制御部57は運転者に負荷上昇の意思があるか否か確認する負荷上昇確認表示(例えば、「短時間で霜取りする場合には負荷制御スイッチをONにしてください。」)を表示装置24に表示する(S131)。負荷上昇確認表示が表示されたら、負荷上昇部53は負荷制御スイッチ23がONになっているか否かを判定する(S132)。負荷制御スイッチ23がONになっていれば、コントローラ25は、負荷制御部53において負荷上昇を開始し(S103)、それ以降の処理を実行する。
【0067】
このようなフローに基づけば、例えば、寒冷時の朝一番にエンジン1を始動させる場合であって運転席の窓に霜が付着しているときに、負荷制御スイッチ23を押してヒータユニット5の加熱速度を向上させることで霜取りを確実に実行できる。また、ヒータユニット5の加熱が不要な場合(急がないとき等)には、自動的に負荷制御が実行されることを回避することができる。
【0068】
なお、上記では、負荷制御スイッチ23のON/OFFと、窓ガラスに付着した霜をとるためのデフロスタースイッチ(図示せず)のON/OFFとを連動させても良いし、両者を1つのスイッチとしても良い。また、上記では負荷制御を開始する旨を負荷制御スイッチ23を介して入力したが、表示装置24をタッチパネルとし、負荷上昇確認表示時(S131)に負荷上昇を実行するか否かを表示装置24上で選択可能にしても良い。
【0069】
ところで、図5の負荷制御フローにおいてフィルタ35の再生が完了して再生完了表示を表示したら(S110)、表示制御部57は負荷制御確認表示(例えば、「霜取りを終了する場合には負荷制御スイッチをOFFにしてください。」)を表示装置24に表示する(S133)。そして、負荷制御部53は負荷制御スイッチ23がOFFになっているか否かを判定する(S134)。ここで負荷制御スイッチ23がOFFになっていることが確認できたら、負荷制御部53は負荷制御を停止し(S111)、負荷制御フローを終了する。一方、S134において負荷制御スイッチ23がONのままであれば、負荷制御部53は、冷却水温度がサーモスタット6の開弁温度Ts未満に保持されるように負荷制御を継続する(S135)。例えば、強制再生中に冷却水温度がTs以上に保持されている場合には、エンジン回転数並びに油圧ポンプ11の傾転角度及び吐出圧のうち少なくともいずれか1つを小さくすることで冷却水温度を低下させる。
【0070】
このように再生完了後も負荷制御を継続すれば、サーモスタット6が開いてラジエータ2によって冷却水温度が低下することが防止されるので、安定して高い温度を維持することができる。これにより、例えば、外気温等が原因で再生完了後も霜が残存している場合に短時間で霜取りを実行できる。
【0071】
なお、上記では寒冷時のヒータユニット5の加熱の目的として霜取り時間の短縮を例に挙げて説明したが、この他にも、暖房の利き具合の向上やこれらの両立を目的とする表示を表示装置24に適宜表示して運転者を誘導しても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 エンジン
5 ヒータユニット
6 サーモスタット
7 冷却水温センサ
8 排ガス処理装置
9 排気温センサ
10 フィルタ差圧センサ
11 油圧ポンプ
13 レギュレータ
14 作動油タンク
15 可変絞り弁
16 切り替え弁
17 油圧アクチュエータ(油圧モータ)
21 ゲートロックレバー
22 再生スイッチ
23 負荷制御スイッチ
24 表示装置
25 コントローラ
26 エンジン回転数センサ
35 フィルタ(DPF)
51 ロック判定部
52 冷却水温度判定部
53 負荷制御部
54 排気温度判定部
55 再生制御部
56 再生完了判定部
57 表示制御部
58 PM堆積量推定部
59 再生開始判定部
T1 負荷上昇開始温度
T2 燃焼可能水温
T3 燃焼可能排気温度
Ts 開弁温度
P1 再生完了圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンと、
このエンジンによって駆動される可変容量型油圧ポンプと、
前記エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する排気処理装置と、
前記エンジンの冷却水によって加熱され、暖房や霜取り等の熱源として利用されるヒータユニットとを備える作業機械において、
前記エンジンの冷却水温度を検出する冷却水温センサ又は前記油圧ポンプの作動油温度を検出する作動油温センサと、
前記フィルタに導入される排気温度を検出する排気温センサと、
前記エンジンの始動後に前記作業機械を静止させた状態で、前記エンジンの回転数並びに前記油圧ポンプの傾転角度及び吐出圧のうち少なくとも1つをローアイドル時の状態から大きくすることでエンジン負荷を上昇させる負荷制御部と、前記フィルタの強制再生を制御する再生制御部とを有する制御装置とを備え、
前記負荷制御部は、
前記エンジンの始動時における前記冷却水温センサ又は前記作動油温センサの検出値がエンジン負荷上昇の開始タイミングを示す第1閾値未満のときにエンジン負荷の上昇を開始し、
その後、前記冷却水温センサ又は前記作動油温センサの検出値が強制再生が可能な温度を示す第2閾値以上に保持されつつ、前記排気温センサの検出値が前記フィルタの強制再生が可能な目標温度以上に保持されるようにエンジン負荷を制御し、
前記再生制御部は、前記負荷制御部によって前記冷却水温度が前記第2閾値以上に保持されつつ前記排気温度が前記目標温度以上に保持されたら、前記フィルタの再生を開始することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械において、
前記フィルタの前後差圧が前記フィルタの再生完了タイミングを示す再生完了圧力に達したとき、または前記フィルタの再生開始時刻から予め設定した時間が経過したときに、
前記再生制御部は前記フィルタの再生を停止し、
前記負荷制御部はエンジン負荷の制御を停止することを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1又は2記載の作業機械において、
前記作業機械の運転者が前記再生制御部に前記フィルタの強制再生の開始を指示するための再生開始入力手段をさらに備え、
前記再生開始入力手段によって前記フィルタの強制再生の開始がされた場合に、
前記負荷制御部は、前記冷却水温センサ又は前記作動油温センサの検出値が前記第2閾値以上に保持されつつ、前記排気温センサの検出値が前記目標温度以上に保持されるようにエンジン負荷を制御し、
前記再生制御部は、前記負荷制御部によって前記冷却水温度が前記第2閾値以上に保持されつつ前記排気温度が前記目標温度以上に保持されたら、前記フィルタの再生を開始することを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1から3いずれか記載の作業機械において、
前記負荷制御部がエンジン負荷を制御している間はその旨が表示される表示装置をさらに備えることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4記載の作業機械において、
前記制御装置は、前記フィルタにおける粒子状物質の堆積量を推定する堆積量推定部をさらに有し、
前記表示装置には、前記堆積量推定部で推定された前記堆積量が表示されることを特徴とする作業機械。
【請求項6】
ディーゼルエンジンと、
このエンジンによって駆動される可変容量型油圧ポンプと、
前記エンジンの排気中の粒子状物質を捕集するフィルタを有する排気処理装置と、
前記エンジンの冷却水によって加熱され、暖房や霜取り等の熱源として利用されるヒータユニットとを備える作業機械において、
前記エンジンの冷却水温度を検出する冷却水温センサ又は前記油圧ポンプの作動油温度を検出する作動油温センサと、
前記フィルタに導入される排気温度を検出する排気温センサと、
前記エンジンの始動後に前記作業機械を静止させた状態で、前記エンジンの回転数並びに前記油圧ポンプの傾転角度及び吐出圧のうち少なくとも1つをローアイドル時の状態から大きくすることでエンジン負荷を上昇させる負荷制御部と、前記フィルタの強制再生を制御する再生制御部とを有する制御装置と、
前記作業機械の運転者が前記負荷制御部にエンジン負荷制御の開始を指示するための負荷制御開始入力手段とを備え、
前記負荷制御部は、
前記エンジンの始動後に前記作業機械を静止させた状態で前記負荷制御開始入力手段からの指示があったときにエンジン負荷の上昇を開始し、
その後、前記冷却水温センサ又は前記作動油温センサの検出値が強制再生が可能な温度を示す閾値以上に保持されつつ、前記排気温センサの検出値が前記フィルタの強制再生が可能な目標温度以上に保持されるようにエンジン負荷を制御し、
前記再生制御部は、前記負荷制御部によって前記冷却水温度が前記閾値以上に保持されつつ前記排気温度が前記目標温度以上に保持されたら、前記フィルタの再生を開始することを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−270622(P2010−270622A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121201(P2009−121201)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】