説明

作業車のブーム駆動制御装置

【課題】ブームの駆動に電動2連ポンプを使用する場合に、バッテリの消費効率を上げつつ、ブームを用いた作業の作業効率を上げることができる作業車のブーム駆動制御装置を提供する。
【解決手段】作業車に設けられたブームを電動2連ポンプ102で駆動するときに、ブーム駆動制御装置104は、電動2連ポンプ102の2つの油圧ポンプ122、123の両方を使用する電動2連ポンプ駆動と、2つの油圧ポンプ122、123の一方を使用する電動1連ポンプ駆動とに切り替えてブームの駆動を制御している。このときに、ブームの駆動速度を速くすると判断した場合は電動2連ポンプ駆動に切り替え、ブームの駆動速度を遅くすると判断した場合は電動1連ポンプ駆動に切り替えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車等のブームを備えた作業車のブーム駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塵芥収集車、コンクリートポンプ車、高所作業車等の特装車の中には、作動装置の駆動に電動2連ポンプが使用されているものがある(特許文献1参照)。この電動2連ポンプは、1つの電動モータに2つの油圧ポンプが接続されたものである。
【0003】
特許文献1の塵芥収集車では、塵芥を塵芥収集箱に押込む装置の駆動に電動2連ポンプが使用されている。この装置では、起動時および停止時以外は2つの油圧ポンプを使用した電動2連ポンプ駆動を行い、起動時および停止時には1つの油圧ポンプを使用した電動1連ポンプ駆動に切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2597050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブームを備えた作業車においてブームの駆動に電動ポンプを使用する場合には、電動ポンプがPTO駆動に比べて出力が小さいことから電動2連ポンプを使用する。その場合に、ブームの駆動を制御するブーム駆動制御装置は、どのような条件で電動2連ポンプ駆動と電動1連ポンプ駆動との切り替えを行えば、電動モータを駆動するバッテリの消費効率を上げつつ、ブームを用いた作業の作業効率を上げることができるかが要求されている。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、ブームの駆動に電動2連ポンプを使用する場合に、バッテリの消費効率を上げつつ、ブームを用いた作業の作業効率を上げることができる作業車のブーム駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のような作業車のブーム駆動制御装置を採用した。
【0008】
本発明の作業車のブーム駆動制御装置は、
作業車に設けられたブームを、バッテリで駆動する1つの電動モータに2つの油圧ポンプが接続して構成される電動2連ポンプで駆動するときに、前記2つの油圧ポンプの両方を使用する電動2連ポンプ駆動と、前記2つの油圧ポンプの一方を使用する電動1連ポンプ駆動とを切り替えて前記ブームの駆動を制御する作業車のブーム駆動制御装置において、
前記ブームの駆動速度を速くすると判断した場合に前記電動2連ポンプ駆動に切り替え、前記ブームの駆動速度を遅くすると判断した場合に前記電動1連ポンプ駆動に切り替えることを特徴としている。
【0009】
具体的には、例えば、ブームにかかる負荷が閾値よりも大きい場合にブームの駆動速度を遅くすると判断して1連ポンプ駆動に切り替えるようにしても良い。
【0010】
また、バッテリの残量が閾値よりも小さい場合にブームの駆動速度を遅くすると判断して1連ポンプ駆動に切り替えるようにしても良い。
【0011】
また、ブームの姿勢が危険な状況にある場合にブームの駆動速度を遅くすると判断して1連ポンプ駆動に切り替えるようにしても良い。
【0012】
また、ブームにかかる負荷が閾値よりも大きい場合、バッテリの残量が閾値よりも小さい場合、ブームの姿勢が危険な状況にある場合のうち、少なくとも2つの場合に該当したときにブームの駆動速度を遅くすると判断して1連ポンプ駆動に切り替えるようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の作業車のブーム駆動制御装置では、ブームの駆動速度に基づいて電動2連ポンプ駆動と電動1連ポンプ駆動とを切り替えるようにした。つまり、ブームの駆動速度を速くする場合には、大きな油圧を必要とする電動2連ポンプ駆動に切り替えるので、電動1連ポンプ駆動に切り替える場合に比べてブームの駆動速度が確実に速くなり、ブームを用いた作業の作業効率を上げることができる。また、ブームの駆動速度を遅くする場合には、大きな油圧を必要としない電動1連ポンプ駆動に切り替えるので、電力の無駄な消費が抑えられ、バッテリの消費効率を上げることができる。その結果、作業車全体の消費エネルギーを少なくできる。また、本発明の作業車のブーム駆動制御装置は電動駆動であるため、静音化を図ることができる。したがって、全体として環境にやさしいものとなる。また、電動2連ポンプを使用することでPTOでの駆動作業と同様の作業に耐えうる仕様を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態の作業車の側面図である。(b)は同実施の形態の作業車の上面図である。
【図2】同実施の形態において電動2連ポンプ駆動時のブームの駆動システムのブロック図である。
【図3】同実施の形態において電動1連ポンプ駆動時のブームの駆動システムのブロック図である。
【図4】同実施の形態のブーム駆動制御装置の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0016】
図1の(a)は本発明の一実施の形態の作業車1の側面図であり、図1の(b)は作業車1の上面図である。この作業車1は、高所で作業を行うために使用される高所作業車である。
【0017】
最初に作業車1の全体的な構成を簡単に説明する。作業車1は、走行機能を有する車両の本体部分である車体2と、車体2の前方に取付けられた走行用キャビン3と、車体2の上側に旋回自在に取り付けられた旋回台4とを備えている。
【0018】
車体2の四隅には、転倒防止用のアウトリガ5が取り付けられている。旋回台4の上部にはポスト6が立設されている。ポスト6にはブーム7が取り付けられており、ブーム7の先端にはバケット8が取り付けられている。
【0019】
ブーム7は、基端ブーム7aと中間ブーム(図示せず)と先端ブーム7bとが入れ子式に接続されて構成されている。各ブームは、内部で伸縮シリンダ10(図2参照)により連結されており、伸縮シリンダが伸縮することで伸縮する。
【0020】
基端ブーム7aは、図示しないが、ポスト6に水平に設置された支持軸に基端部が上下に回動自在に取り付けられている。ポスト6と基端ブーム7aとには起伏シリンダ9が架け渡されて結合している。この起伏シリンダ9は伸縮可能に形成されており、起伏シリンダ9が伸びることによりブーム7全体が起仰する。
【0021】
バケット8は、作業者が高所作業を行うために搭乗する作業台として使用されるものである。このバケット8は、先端ブーム7bの先端に水平を維持した状態で左右に回動自在に取り付けられている。
【0022】
バケット8の上端側面には、上部操作盤20aが設けられている。この上部操作盤20aは、作業者がバケット8に搭乗した状態でブーム7の旋回・起伏・伸縮操作、バケット8のスイング操作、アクセルスイッチの操作等を操作レバーまたは、操作スイッチで行うものである。
【0023】
車体2の後部には、下部操作盤20bが設けられている。この下部操作盤20bは、ブーム7の旋回・起伏・伸縮・格納操作、アウトリガ5の張出・格納操作、エンジン始動・停止等を操作レバーまたは、操作スイッチで行うものである。
【0024】
また、本実施の形態の作業車1では、電動モータを使用して油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプから発生される油圧を利用してブーム7を駆動する。以下に具体的に説明する。
【0025】
図2は、ブーム7の駆動システム100を示すブロック図である。この駆動システム100は、ブーム駆動機構101、電動2連ポンプ102、オイルタンク103、ブーム駆動制御装置104(制御装置本体141および切替弁142)、バッテリ105を備えている。
【0026】
ブーム駆動機構101は、ブーム7を実際に駆動する部分である。具体的に説明すると、ブーム駆動機構101は、ブーム7の起伏を行う起伏シリンダ9、ブーム7の伸縮を行う伸縮シリンダ10、ブーム7の旋回を行う旋回モータ11を備えている。
【0027】
さらにブーム駆動機構101は、電磁比例バルブ12を備えている。この電磁比例バルブ12は、起伏シリンダ9、伸縮シリンダ10、旋回モータ11に接続している。また、この電磁比例バルブ12は、油圧により、起伏シリンダ9の伸縮量(ブーム7の起伏量)、伸縮シリンダ10の伸縮量(ブーム7の伸縮量)、旋回モータ11の回転角度(ブーム7の旋回角度)を変えるものである。
【0028】
電動2連ポンプ102は電磁比例バルブ12に接続しており、油圧により電磁比例バルブ12を介してブーム駆動機構101を駆動してブーム7を駆動するものである。この電動2連ポンプ102は、1つの電動モータ121に2つの油圧ポンプ122、123が接続して構成されており、図1に示すように車体2の下部に設置されている。
【0029】
2つの油圧ポンプ122、123の各入力側には、給油管124、125を介して前記オイルタンク103が接続している。このオイルタンク103には、ブーム7を駆動するための駆動油が貯留されている。
【0030】
2つの油圧ポンプ122、123の各出力側には、吐出管126、127が接続している。各吐出管126、127の途中には、油圧ポンプ122、123に駆動油が流れるのを防止する逆止弁128、129が設けられている。
【0031】
左の吐出管126は、供給管B0を介して電磁比例バルブ12に接続している。左右の吐出管126、127は接続管B1を介して切替弁142に接続されている。この接続管B1において左右の吐出管126、127の間には、左の吐出管126から切替弁142に駆動油が流れるのを防止する逆止弁130が設けられている。
【0032】
ブーム駆動制御装置104は、電動2連ポンプ102から発生する油圧を制御してブーム7の駆動を制御するものである。このブーム駆動制御装置104は、制御装置本体141と切替弁142とを備えている。
【0033】
制御装置本体141は、演算処理を行うコントローラ141a(AMC)を中心にして構成されている。コントローラ141aの入力側には、操作量検出手段141bとアクセル検出手段141cが接続しており、双方には操作盤20(上部操作盤20a、下部操作盤20b)が接続している。
【0034】
操作量検出手段141bは、操作盤20に設けられている操作レバーの操作量(起伏操作量、伸縮操作量、旋回操作量)を検出するものである。アクセル検出手段141cは、操作盤20で操作されたブーム7のアクセルスイッチの操作(HIまたはLOW)を検出するものである。
【0035】
また、コントローラ141aの入力側にはバッテリ残量検出手段141dが接続しており、バッテリ残量検出手段141dにはバッテリ105が接続している。バッテリ105はブーム7の駆動源であり、図1に示すように車体2の上部に設置されている。バッテリ残量検出手段141dはバッテリ105の残量を検出するものである。バッテリ105の残量の検出方法としては、例えばバッテリ105の電圧値を検出する方法が挙げられる。
【0036】
さらに、コントローラ141aの入力側には、歪検出器141eと起伏角度検出器141fが接続している。歪検出器141eは起伏シリンダ9に取り付けられており、起伏角度検出器141fはブーム7に取り付けられている。起伏角度検出器141fは、ブーム7の起伏角度を検出するものである。歪検出器141eは、ブーム7にかかる負荷モーメント量を検出するものである。
【0037】
さらに、コントローラ141aの入力側にはブーム長さ検出器141gが接続している。このブーム長さ検出器141gはブーム7に取り付けられており、ブーム7の伸縮長さを検出するものである。
【0038】
さらに、コントローラ141aの入力側には旋回角度検出器141hが接続している。この旋回角度検出器141hは旋回台4の旋回中心位置に取り付けられており、旋回台4の旋回角度を検出するものである。
【0039】
また、コントローラ141aの出力側には、電磁比例バルブ12、電動2連ポンプ102の電動モータ121、切替弁142が接続している。コントローラ141aは、これらの機器の駆動と停止を行う。
【0040】
切替弁142は、電磁比例バルブ12を駆動する電動2連ポンプ102の油圧量を切り替えるものである。この切替弁142は、図2と図3に示すように、切替弁本体142a内の右側に第1通路C1と第2通路C2が形成され、左側に第3通路C3と第4通路C4が形成されている。この切替弁142は、ソレノイドにより第1通路C1および第2通路C2と、第3通路C3および第4通路C4とを切り替えるものである。ソレノイドはコントローラ141aに接続している。
【0041】
図2に示すように第1通路C1の流入口には第1接続管B1が接続し、流出口には第4接続管B4が接続する。この第4接続管B4は第1接続管B1に接続している。第2通路C2の流入口には第2接続管B2が接続し、流出口には第3接続管B3が接続する。第2接続管B2はオイルタンク103に接続しており、第3接続管B3は第2接続管B2に接続している。
【0042】
図3に示すように第3通路C3の流入口には第1接続管B1が接続し、流出口には第2接続管B2が接続する。第4通路C4の流入口には第4接続管B4が接続し、流出口には第3接続管B3が接続する。
【0043】
次に、切替弁142を用いた電動2連ポンプ102によるブーム7の駆動方法を説明する。この駆動方法には、電動2連ポンプ102の2つの油圧ポンプ122、123の両方を使用してブーム7を駆動する電動2連ポンプ駆動と、2つの油圧ポンプ122、123の一方を使用してブーム7を駆動する電動1連ポンプ駆動とがあり、切り替えることが可能である。以下に具体的に説明する。
【0044】
(電動2連ポンプ駆動)
図2は電動2連ポンプ駆動の場合を示している。ここでは、コントローラ141aによりソレノイドへの通電がONにされ、切替弁本体142a内には第1通路C1と第2通路C2とが形成される。
【0045】
このときに左の油圧ポンプ122の吐出管126から吐出された駆動油は逆止弁130により切替弁142の方に流れていかず、右の油圧ポンプ123から吐出された駆動油が第1接続管B1、第1通路C1、第4接続管B4の順に流れて循環する。
【0046】
このように駆動油が循環すると切替弁142内の圧力が上昇するため、右の油圧ポンプ123から新たに吐出される駆動油は切替弁142の方に流れていかず、左の油圧ポンプ122から吐出された駆動油とともに供給管B0を流れて電磁比例バルブ12に駆動油を供給する。
【0047】
電磁比例バルブ12は、2つの油圧ポンプ122、123からの油圧を利用し、操作盤20の操作レバーの操作に基づくコントローラ141aからの制御信号に基づき、起伏シリンダ9、伸縮シリンダ10、旋回モータ11を所定量駆動してブーム7の駆動を行う。このときのブーム7の駆動速度は、2つの油圧ポンプ122、123を使用しているので速くなる。
【0048】
(電動1連ポンプ駆動)
図3は電動1連ポンプ駆動の場合を示している。ここでは、コントローラ141aによりソレノイドへの通電がOFFにされ、切替弁本体142a内には第3通路C3と第4通路C4とが形成される。
【0049】
このときに右の油圧ポンプ123の吐出管127から吐出された駆動油は、第1接続管B1、第3通路C3、第2接続管B2、オイルタンク103、油圧ポンプ123の順に流れて循環する。これにより、左の油圧ポンプ122から吐出された駆動油が供給管B0を流れて電磁比例バルブ12に駆動油を供給する。
【0050】
電磁比例バルブ12は、左の油圧ポンプ122からの油圧を利用し、操作盤20の操作レバーの操作に基づくコントローラ141aからの制御信号に基づき、起伏シリンダ9、伸縮シリンダ10、旋回モータ11を所定量駆動してブーム7の駆動を行う。このときのブーム7の駆動速度は、1つの油圧ポンプ122を使用しているので遅くなる。
【0051】
また、図3の状態からコントローラ141aによりソレノイドへの通電がONにされれば図2の状態になり、ブーム7の駆動が電動1連ポンプ駆動から電動2連ポンプ駆動に切り替わる。
【0052】
また、コントローラ141aには、電動1連ポンプ駆動と電動2連ポンプ駆動との切り替えの指標になるバッテリ残量の閾値、ブーム7にかかる負荷モーメントの閾値、操作レバーの操作量の閾値が予め設定されている。
【0053】
次に、図4を用いてブーム駆動制御装置104(コントローラ141a)の制御処理を説明する。この制御処理は、制御装置本体141の電源がONにされると開始する。
【0054】
(ステップS1)
まず最初にコントローラ141aは、バッテリ残量検出手段141dによりバッテリ105の残量が閾値以上であるか否かを判断する。
【0055】
(ステップS2)
コントローラ141aは、バッテリ105の残量が閾値以上であると判断した場合は(ステップS1でYES)、歪検出器141eによりブーム7にかかる負荷モーメントが閾値以下であるか否かを判断する。
【0056】
(ステップS3)
コントローラ141aは、ブーム7にかかる負荷モーメントが閾値以下であると判断した場合は(ステップS2でYES)、起伏角度検出器141f、ブーム長さ検出器141g、旋回角度検出器141hから、ブーム7が干渉防止領域以外に位置しているか否か、つまりブーム7の姿勢が危険な状況でないか否かを判断する。なお、干渉防止領域とは干渉物の近傍の領域である。
【0057】
(ステップS4)
コントローラ141aは、ブーム7の位置が干渉防止領域以外にあると判断した場合、つまりブーム7の姿勢が危険な状況でないと判断した場合は(ステップS3でYES)、起伏角度検出器141fやブーム長さ検出器141g、及び旋回角度検出器141hからブーム7の位置が格納減速位置以外であるか否かを判断する。格納減速位置とは、ブーム7が縮むときまたは、伏せるとき及び、旋回台4が旋回するとき(格納されるとき)に減速する範囲の位置である。
【0058】
(ステップS5)
コントローラ141aは、ブーム7の位置が格納減速位置以外であると判断した場合は(ステップS4でYES)、アクセル検出手段141cからアクセルスイッチの操作がHIか否かを判断する。
【0059】
(ステップS6)
コントローラ141aは、アクセルスイッチの操作がHIであると判断した場合は(ステップS5でYES)、操作量検出手段141bから操作レバーの操作量が閾値以上であるか否かを判断する。
【0060】
(ステップS7)
コントローラ141aは、操作レバーの操作量が閾値以上であると判断した場合は(ステップS6でYES)、ブーム7の駆動速度を速くすると判断して電動2連ポンプ駆動を行う。
【0061】
(ステップS8)
また、コントローラ141aは、以下のいずれかの場合に該当したときにブーム7の駆動速度を遅くすると判断して電動1連ポンプ駆動を行う。
(1)バッテリ105の残量が閾値よりも小さい場合(ステップS1でNO)。
(2)ブーム7にかかる負荷モーメントが閾値よりも大きい場合(ステップS2でNO)。
(3)ブーム7の位置が干渉防止領域である場合(ステップS3でNO)。
(4)ブーム7の位置が格納減速位置である場合(ステップS4でNO)。
(5)アクセルスイッチの操作がLOWである場合(ステップS5でNO)。
(6)操作レバーの操作量が閾値よりも小さい場合(ステップS6でNO)。
【0062】
以上説明したように本実施の形態のブーム駆動制御装置104では、ブーム7の駆動速度に基づいて電動2連ポンプ駆動と電動1連ポンプ駆動との切り替えを行うようにした。
【0063】
ここで、ブーム7の駆動速度を速くする場合には、大きな油圧を必要とする電動2連ポンプ駆動に切り替えるようにした。したがって、電動1連ポンプ駆動に切り替える場合に比べて油圧ポンプの使用数が多いのでブーム7の駆動速度が確実に速くなり、ブーム7を用いた作業の作業効率を上げることができる。
【0064】
また、ブーム7の駆動速度を遅くする場合には、大きな油圧を必要としない電動1連ポンプ駆動に切り替えるようにした。したがって、電力の無駄な消費を抑えることができ、バッテリの消費効率を上げることができる。その結果、電動駆動によるブーム7の作業時間を長く確保することもできる。
【0065】
また、本実施の形態のブーム駆動制御装置104では、上記の(1)〜(6)の各場合に該当したときにブーム7の駆動速度を遅くするように判断した。したがって、ブーム7の駆動速度を確実に遅くしたい場合に電動1連ポンプ駆動を行えるので、電力の無駄な消費を確実に抑えることができ、バッテリ105の消費効率を確実に上げることができる。その結果、作業車1全体の消費エネルギーを少なくできる。また、本実施の形態のブーム駆動制御装置104では電動でブーム7を駆動するため静音化を図ることができる。したがって、全体として環境にやさしいものとなる。また、電動2連ポンプ102を使用することによりPTOでの駆動作業と同様の作業に耐えうる仕様を備えることができる。
【0066】
以上、本発明に係る実施の形態を例示したが、この実施の形態は本発明の内容を限定するものではない。また、本発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0067】
例えば、本実施の形態のブーム駆動制御装置104では、上記の(1)〜(6)の各場合にブーム7の駆動速度を遅くするように判断したが、ブーム7にかかる負荷モーメントが閾値よりも大きい場合、バッテリ105の残量が閾値よりも小さい場合、ブーム7の姿勢が危険な状況にある場合のうち、少なくとも2つの場合に該当したときにブーム7の駆動速度を遅くするように判断しても良い。これにより、ブーム7の駆動速度を確実に遅くしたい状況でブーム7の駆動速度を実際に遅くすることが可能になるので、ブーム7を用いた作業の作業効率をさらに上げることができる。
【0068】
また、本実施の形態のブーム駆動制御装置104では、ブーム7の姿勢が危険な状況でないか否かを判断する例として、ブーム7が干渉防止領域以外に位置しているか否かを判断するようにしたが、その他には、ブーム長さ検出器141gからブーム7の長さが閾値以下であるか否かを判断しても良い。この場合に、ブーム7の長さが閾値以下の場合はブーム7の姿勢が危険な状況でないと判断して電動2連ポンプ駆動に切り替え、閾値よりも大きい場合はブーム7の姿勢が危険な状況であると判断して電動1連ポンプ駆動に切り替えることになる。
【0069】
また、本実施の形態では2つの油圧ポンプ122、123を使用した場合を説明したが、油圧ポンプの数を増やしても良い。その場合には、図4のフローチャートに示した判断処理に優先順位をつけてブーム7の駆動速度を細かく設定すれば、バッテリ105の消費効率をさらに上げつつ、ブーム7を用いた作業の作業効率をさらに上げることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 作業車
7 ブーム
20 操作盤
101 ブーム駆動機構
102 電動2連ポンプ
104 ブーム駆動制御装置
105 バッテリ
121 電動モータ
122 油圧ポンプ
123 油圧ポンプ
141 制御装置本体
142 切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車に設けられたブームを、バッテリで駆動する1つの電動モータに2つの油圧ポンプが接続して構成される電動2連ポンプで駆動するときに、前記2つの油圧ポンプの両方を使用する電動2連ポンプ駆動と、前記2つの油圧ポンプの一方を使用する電動1連ポンプ駆動とを切り替えて前記ブームの駆動を制御する作業車のブーム駆動制御装置において、
前記ブームの駆動速度を速くすると判断した場合に前記電動2連ポンプ駆動に切り替え、前記ブームの駆動速度を遅くすると判断した場合に前記電動1連ポンプ駆動に切り替えることを特徴とする作業車のブーム駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車のブーム駆動制御装置において、
前記ブームにかかる負荷が閾値よりも大きい場合に前記ブームの駆動速度を遅くすると判断して前記1連ポンプ駆動に切り替えることを特徴とする作業車のブーム駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の作業車のブーム駆動制御装置において、
前記バッテリの残量が閾値よりも小さい場合に前記ブームの駆動速度を遅くすると判断して前記1連ポンプ駆動に切り替えることを特徴とする作業車のブーム駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の作業車のブーム駆動制御装置において、
前記ブームの姿勢が危険な状況にある場合に前記ブームの駆動速度を遅くすると判断して前記1連ポンプ駆動に切り替えることを特徴とする作業車のブーム駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の作業車のブーム駆動制御装置において、
前記ブームにかかる負荷が閾値よりも大きい場合、前記バッテリの残量が閾値よりも小さい場合、前記ブームの姿勢が危険な状況にある場合のうち、少なくとも2つの場合に該当したときに前記ブームの駆動速度を遅くすると判断して前記1連ポンプ駆動に切り替えることを特徴とする作業車のブーム駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−19474(P2013−19474A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153389(P2011−153389)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】