説明

作業車両

【課題】
本発明は、電動モータで走行し、エンジンで作業機を駆動する作業車両において、エンジンの始動・停止を適正に行うことを課題とする。
【解決手段】
走行輪(1,2)を走行用駆動モータ(14)で駆動すると共に、作業機(8)をエンジン(3)で駆動する構成とし、PTO操作手段(19)でPTOクラッチ(27)を入りにしたときにエンジン(3)を始動する制御を行なうと共に、PTO操作手段(19)でPTOクラッチ(27)を切りにするとエンジン(3)を停止する制御を行なう制御手段(29)を設け、制御手段は走行用バッテリ(13)の状態から充電の要・不要を判定し、走行用バッテリ(13)の充電の不要を判定するとエンジン(3)の駆動中も充電を行なわないように制御する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芝刈機等のPTOで作業機を駆動する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にはエンジンでPTO及び後輪を駆動し、走行用のバッテリで駆動する電動モータで前輪を駆動し、エンジン3の回転動力で走行用のバッテリを充電する作業車両(芝刈機)について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−350475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業車両では基本的にエンジンで走行・作業するものであり、走行用駆動モータは補助的なものである。本発明は、電動モータで走行し、エンジンで作業機を駆動する作業車両において、エンジンの始動・停止を適正に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、かかる技術的課題を解決するために次のような技術的手段を講ずる。すなわち、請求項1記載の発明は、走行輪(1,2)と作業機(8)とを備えた作業車両において、走行輪(1,2)を走行用駆動モータ(14)で駆動すると共に、作業機(8)をエンジン(3)で駆動する構成とし、PTO操作手段(19)でPTOクラッチ(27)を入りにしたときにエンジン(3)を始動する制御を行なうと共に、PTO操作手段(19)でPTOクラッチ(27)を切りにするとエンジン(3)を停止する制御を行なう制御手段(29)を設けたことを特徴とする作業車両とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、走行用駆動モータ(14)は走行用バッテリ(13)の電力で駆動する構成とし、走行用バッテリ(13)はエンジン(3)の動力にて充電可能に構成し、制御手段は走行用バッテリ(13)の状態から充電の要・不要を判定し、走行用バッテリ(13)の充電の不要を判定するとエンジン(3)の駆動中も充電を行なわないように制御することを特徴とする請求項1記載の作業車両とする。
【0007】
請求項3記載の発明においては、作業機は草を刈るモーア(8)であり、制御手段(29)はPTOクラッチ(27)が入り状態を検出しているときに、走行輪(1,2)の停止状態が設定時間継続することを検出すると、エンジン(3)を停止する制御を行なうことを特徴とする請求項1または請求項2記載の作業車両とする。
【0008】
請求項4記載の発明においては、作業機は草を刈るモーア(8)であり、モーア(8)で刈った草を集草容器(11)に収容する構成とし、制御手段はPTOクラッチ(27)が入り状態を検出しているときに、集草容器(11)の満量センサ(24)が満量を検出したときにエンジン(3)を停止する制御を行なうことを特徴とする請求項1から請求項3いずれか記載の作業車両とする。
【0009】
請求項5記載の発明においては、走行輪(1,2)の停止状態が設定時間継続することを検出することによるエンジン(3)の停止後、走行輪の走行を検出しても、PTO操作手段(19)によるPTOクラッチ(27)入りを検出するまでは、エンジン(3)の駆動の再開を規制することを特徴とする請求項3記載の作業車両とする。
【0010】
請求項6記載の発明においては、満量センサ(24)の満量検出によるエンジン(3)停止後、集草容器(11)の草を排出して満量センサ(24)による満量を非検出の状態になっても、PTO操作手段(19)によるPTOクラッチ(27)入りを検出まではエンジン(3)の駆動の再開を規制することを特徴とする請求項4記載の作業車両とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明においては、走行時の騒音を低減すると共に、作業時にエンジンによる駆動を行なうため円滑な作業を行なえる。
請求項2記載の発明においては、必要なときだけ走行用バッテリへの充電を行なえるため、効率的な充電を行なえる。
【0012】
請求項3記載の発明においては、走行車体が設定時間以上停止しているときにはモーアを駆動させる意味がないため、エンジンを停止させるものである。無用にエンジンを駆動させずに済む。
【0013】
請求項4記載の発明においては、集草容器が満量のときにさらなる刈草が供給されるのを防止し、かつ、運転者に満杯であることを気づかせ易くすることが出来る。
請求項5記載の発明においては、走行車体の走行を再開しても、運転者が意図しない状態でのエンジンの駆動の再開を防止できるため、安全である。
【0014】
請求項6記載の発明においては、集草容器内の草を排出しても、運転者が意図しない状態でのエンジンの駆動の再開を防止できるため、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】作業車両の側面図
【図2】作業車両の平面図
【図3】伝動及び制御システム図
【図4】制御フローチャート
【図5】制御フローチャート
【図6】制御フローチャート
【図7】制御フローチャート
【図8】制御フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を乗用型の芝刈機に基づいて説明する。
車体には前輪1と後輪2と、前側にエンジン3等を内装するボンネット4と、ボンネット4の後方でかつステップ7の上方にはステアリングハンドル5を備え、その後方には運転席6を設けている。
【0017】
前輪1と後輪2の間でステップ7の下方には草を刈るモーア8を設ける。モーア8はモーアリンク機構9により上下方向に昇降可能とし、刈った芝を後部に排出するものである。モーア8で刈った芝は後輪2の間を貫通する案内シュート10を通過し、車体後部に備える集草容器11に収容する構成である。
【0018】
次に芝刈機の制御システムについて説明する。
本実施の形態の芝刈機はエンジン3でモーア8を駆動すると共に、バッテリを充電する構成で、該バッテリの電力により駆動モータで走行輪(後輪)を駆動するものである。
【0019】
さらに、詳細を説明すると、エンジン3の動力でオルタネータ12を駆動して走行用バッテリ13を充電する。そして走行用バッテリ13の電力により走行用駆動モータ14を駆動するが、インバータ15で後輪駆動モータの回転数を適宜調節して車速を調節する。詳述はしないが走行用駆動モータ14は後輪それぞれに設けるタイプでも良いし、1個のモータで行なうようにしても良い。
【0020】
走行用バッテリ13の電力はDCコンバータ25を介してコントローラ用バッテリ26にも供給される。
コントローラ29は電源スイッチ18やPTOスイッチ19の操作情報や、車速を変更する増速ペダル22の操作情報や、走行用バッテリ13の電圧値や残量の情報に基づき、オルタネータ12の始動・停止を切替える充電用クラッチ(電磁クラッチ)16の入り切り、インバータ15の回転数、モーアの駆動・停止を切替えるPTOクラッチ27の入り切り等を制御する。なお、走行用駆動モータ14の回生による充電機能を備えても良い。他にも運転操作に基づく走行用駆動モータ14の回転方向の切り替え(前進・後進の切替え)等を制御する。
【0021】
ステアリングハンドル5の周辺には操作パネル17を設け、電源スイッチ18とPTOスイッチ19と表示パネル20とエンジン自動始動スイッチ21を備えている。
次に、本実施の形態の各種制御について以下説明する。
【0022】
まず、電源をONにしたときについて説明する。
電源スイッチ18をONにすると走行用バッテリ13の残量を測定又は算出し、走行可能距離を演算して表示する。走行用バッテリ13の残量は例えば直近の満充電時からの積算使用電力量から演算される。このとき、走行可能距離が設定距離以下(例えば2km以下)の場合には走行不能を表示し、走行可能距離が設定距離以上(例えば2km以上)の場合には走行可能を表示しても良い(図4参照)。
【0023】
電源スイッチ18のON時に走行用バッテリ13の残量が設定量以下の場合には、エンジン3が自動的に駆動を開始して走行用バッテリ13を充電することができる。一方、前記走行用バッテリ13残量が設定量以上の場合にはエンジン3の駆動を開始しない。なお、このとき、後述のPTOクラッチ27は切り状態のままとしている。
【0024】
走行用バッテリ13の残量が設定量以下の場合にエンジン3を自動的に駆動を開始する制御は、エンジン自動始動スイッチ21の入り操作で予め設定することができる。すなわち、エンジン始動スイッチ21を切にしているときには、電源スイッチ18ON時に走行用バッテリ13残量が設定量以下の場合でも、自動的にエンジン3の駆動を開始しないことで、運転者が意図しない場合のエンジン3の始動を防止するものである。
【0025】
次に走行開始時について図5に基づいて説明する。
運転者が運転席6に着座して増速ペダル22を踏むとアクセル情報がコントローラ29に入力され、走行用駆動モータ14が駆動を開始し、車体は走行を開始する。走行開始時に走行用バッテリ13の電圧値を検出し、該電圧値が設定値以上の場合にはそのまま走行し、該電圧値が設定値以下の場合にはエンジン3を自動的に駆動を開始し充電を行なう。このとき、後述のPTOクラッチ27は切り状態である。
【0026】
走行開始時は、走行用駆動モータ14の起動時に大きな電流が流れる。そのため、走行用バッテリ13が過放電となっていると判定した場合には、エンジン3の駆動による充電を行なうことで走行用バッテリ13の負荷を軽減し、円滑な走行を行なえるようにする。
【0027】
エンジン3の駆動を行い、充電された結果、走行用バッテリ13の電圧値が設定値以上にまで到達するとエンジン3は自動的に停止する。以降、走行時は走行用バッテリ13の電圧値を検出しながら、電圧値によりエンジン3が自動的に駆動を開始したり停止したりする。
【0028】
該走行開始時に走行用バッテリ13の電圧値の検出値によるエンジン3を自動的に駆動開始する制御は、エンジン自動始動スイッチ21の入り切りに関わらず行なう構成にしても良い。すなわち、運転者が増速ペダル22を踏むという意思に基づくため、エンジン3を自動的に駆動を開始しても差し支えないためである。
【0029】
次に、作業機による作業時について図6から図8に基づいて説明する。
本実施の形態の作業機は草刈するモーア8で、PTO入切操作手段であるPTOスイッチ19あるいは図示しないが手動のPTO操作レバーの操作によりエンジン3の駆動が開始すると共に、PTOクラッチ27が入りとなり、エンジン3の動力がモーア8へ伝達され、モーア8は駆動する。そして、モーア8で刈り取った草は案内シュート10を経て集草容器11に収容される。
【0030】
PTOスイッチ19の入り操作時には、エンジン3が自動的に駆動を開始すると共にPTOクラッチ27を入りとし、PTOスイッチ19を切り操作するとPTOクラッチ27が切となりエンジン3が自動的に停止する。
【0031】
但し、PTOスイッチ19を入にしてエンジン3を駆動している時でも以下の場合にはPTOクラッチ27を切にすると共にエンジン3を自動的に停止する。
第一はPTOスイッチ19を入りにしたが、走行を停止してから設定時間以上経過すると、自動的にPTOクラッチ27の切が行なわれると共にエンジン3が停止する。すなわち、車体が設定時間以上停止しているときにはモーア8を駆動させる意味がないため、エンジン3を停止させるものである。このとき、車体が走行を開始しても自動的にエンジン3が駆動を再開することを規制し、運転者がPTOスイッチ19を入り操作するとPTOクラッチ19が入りとなると共にエンジン3の駆動が再開し、芝刈り作業がなされる。それにより、自動的に草刈作業が発生するのを防止し、安全性が向上する(図7参照)。
【0032】
なお、案内シュート10内に刈り草が詰まったときに排出するために、車体を停止した状態でPTOクラッチ29を入りにしてエンジン3の駆動を継続するメンテナンススイッチ(図示せず)を設け手も良い。
【0033】
第二は集草容器11の満量センサ24が満量を検出した場合である。すなわち、これ以上草刈作業を行なうことは出来ないのでPTOクラッチ27を切とすると共にエンジン3を停止する。この場合、走行を停止して集草容器11をダンプさせて収容した草を排出する。このとき、満量センサ24は満量を非検知状態となるが、エンジン3の駆動は自動的には再開せず、運転者がPTOスイッチ19を入り操作するとPTOクラッチ27が入りとなると共にエンジン3の駆動が再開する。それにより、自動的に草刈作業が発生するのを防止し、安全性が向上する(図8参照)。
【0034】
PTOスイッチ19を入り操作すると走行用バッテリ13の状態(電圧値・容量等)を検出してバッテリ充電の要・不要を行なう。すなわち、PTOスイッチを入り操作するとPTOクラッチ27が入りとし、エンジン3が駆動するが、走行用バッテリ13の状態が十分と判定した場合には充電を行なわない。すなわち、充電用クラッチ16を入りにしないでオルタネータ12が駆動をしない。そして、走行用バッテリ13の状態が不十分と判定した場合に充電用クラッチ16を入りにしてオルタネータ12を駆動させて充電を行なう。このような構成にすることで、効率的な充電を行なうことができる(図6参照)。
【符号の説明】
【0035】
1 前輪
2 後輪
3 エンジン
8 作業機(モーア)
13 走行用バッテリ
14 走行用駆動モータ
19 PTOスイッチ
24 満量センサ
27 PTOクラッチ
29 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行輪と作業機とを備えた作業車両において、
走行輪を走行用駆動モータで駆動すると共に、作業機をエンジンで駆動する構成とし、
PTO操作手段でPTOクラッチを入りにしたときにエンジンの駆動を開始する制御を行なうと共に、PTO操作手段でPTOクラッチを切りにするとエンジンを停止する制御を行なう制御手段を設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
走行用駆動モータは走行用バッテリの電力で駆動する構成とし、走行用バッテリはエンジンの動力にて充電可能に構成し、制御手段は走行用バッテリの状態から充電の要・不要を判定し、走行用バッテリの充電の不要を判定するとエンジン駆動中も充電を行なわないように制御することを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
作業機は草を刈るモーアであり、制御手段はPTOクラッチが入り状態を検出しているときに、走行輪の停止状態が設定時間継続することを検出すると、エンジンを停止する制御を行なうことを特徴とする請求項1または請求項2記載の作業車両。
【請求項4】
作業機は草を刈るモーアであり、モーアで刈った草を集草容器に収容する構成とし、制御手段はPTOクラッチが入り状態を検出しているときに、集草容器の満量センサが満量を検出したときにエンジンを停止する制御を行なうことを特徴とする請求項1から請求項3いずれか記載の作業車両。
【請求項5】
走行輪の停止状態が設定時間継続することを検出することによるエンジンの停止後、走行輪の走行を検出しても、PTO操作手段によるPTOクラッチ入りを検出するまでは、エンジンの駆動の再開を規制することを特徴とする請求項3記載の作業車両。
【請求項6】
満量センサの満量検出によるエンジン停止後、集草容器の草を排出して満量センサによる満量を非検出の状態になっても、PTO操作手段によるPTOクラッチ入りを検出まではエンジンの駆動の再開を規制することを特徴とする請求項4記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−175945(P2012−175945A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41465(P2011−41465)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】