説明

使用時に目視されない面に入力部を配置した情報機器、入力方法及びプログラム

【課題】画面表示部及び入力部の両方が互いに利用者側の前面の表面積を取り合うことなく、指圧の押下による人間の自然物理的な操作感覚を得られる情報機器を提供する。
【解決手段】情報機器は、押下型入力部と表示制御部とを有する。押下型入力部は、指が接触する押下面と、押下面の物理的押下を検出する押下検出部と、押下面の表面における指の位置の近接状態を検知するセンサとを有する。押下型入力部は、画面表示部が目視されている際にその視界の中で目視されない面に配置される。表示制御部は、画面表示部に、押下面の各位置の機能イメージを表示すると共に、各機能イメージが対応付けられた機能ポジションに指が近接しているかを特定表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザインタフェースとしての画面表示部及び入力部を備えた情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、電子辞書機器、電子書籍、スマートブック、ネットブックのように様々な機種の携帯型情報機器が普及している。このような携帯型情報機器は、ユーザインタフェースとして、ディスプレイのような画面表示部と、キーボードやタッチパッドのような入力部とを備え、様々なアプリケーションソフトウェアを実行させることができる。例えば携帯電話機の場合、液晶ディスプレイ及びテンキーボードを備え、OS(Operating System)によってパーソナルコンピュータと同様に汎用的に機能する。
【0003】
携帯型情報機器は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような設置型情報機器と比較して、構造的な制約を余儀なくされる。携帯型情報機器は、携帯性を高めるべく、機器全体の容積の小型化を必要とする。その結果、機器の表面積が小さくなるために、画面表示部としてのディスプレイのサイズも小さくしなければならず、利用者から見た視認性が乏しくなる。同様に、入力部としてのキーボードやタッチパッドのサイズも小さくしなければならないために、操作性も劣ってしまう。例えば携帯電話機に搭載されるテンキーボードは、キートップのサイズをできる限り小さくし、且つ、キーの間隔もできる限り狭くすることを要する。
【0004】
これに対し、近年、画面表示部及び入力部を一体化したタッチパネルディスプレイも普及してきている(例えば特許文献1参照)。タッチパネルディスプレイは、利用者がディスプレイに指(又はスタイラスペン)で触れることによって、様々な情報を入力し且つ機器を操作することができる。この場合、携帯型情報機器における利用者側前面に、タッチパネルディスプレイを配置することができ、利用者から見た視認性も優れる。また、アプリケーションによって様々な機能の仮想ボタンを、ディスプレイ上に仮想的に構成することができる。そのために、物理的なキーボードの設置を省略できると共に、その分だけディスプレイの面積を広げることができる。
【0005】
利用者側前面に、ディスプレイと、タッチパネルディスプレイの2つを備えた小型電子機器もある(例えば特許文献2参照)。また、利用者側前面にディスプレイを備え、背面にタッチパネルを備えることによって、片手で操作可能とする小型電子機器もある(例えば特許文献3参照)。
【0006】
更に、タッチパネルディスプレイについて、操作面を内部方向へ所定ストロークだけ沈ませることによって、利用者に押下操作感覚を与える技術もある(例えば特許文献4参照)。この技術によれば、ディスプレイを利用者側前面に配置し、そのディスプレイの背後に利用者側の向きにタッチパネルを配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−266968号公報
【特許文献2】WO2005/091117
【特許文献3】特開2002−318640号公報
【特許文献4】特開2008−171440号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】京セラ、「快適操作スムースタッチ」、[online]、[平成21年4月20日検索]、インターネット<URL:http://www.sanyo-keitai.com/au/w54sa/feature/smooth.shtml>
【非特許文献2】Microsoft Research、「機器の背面に置いた指で画面操作が可能な新UIを披露」、[online]、[平成21年4月20日検索]、インターネット<URL:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080305/148529/>
【非特許文献3】スムースタッチ、「手書きで操作はこう変わる──開発陣に聞くW42SA」、[online]、[平成21年4月20日検索]、インターネット<URL:http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0609/05/news010.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
携帯型情報機器における画面表示部と入力部とのサイズの問題は、2つのユーザインタフェースが共に、利用者の前面に搭載する必要があることに基づく。画面表示部及び入力部の両方が、利用者側前面の表面積を取り合うためである。
【0010】
また、タッチパネルディスプレイの場合、ディスプレイ自体に指やペンで触れるために、指による指紋跡や、ペンによる傷も、利用者の視認性に不快感を与える。また、タッチパネルディスプレイでは、画面上に表示された仮想ボタンを操作するために、指の押下による機械的な反応も返らない。そのために、人間の自然物理的な操作感覚も得られない。尚、仮想ボタンの押下時に、例えばバイブレータのような二次的な反応を作り出す装置もある。しかし、機械的専用部品を搭載するために、機器の容積を増加させると共に、コスト及び消費電力も増加させてしまう。
【0011】
そこで、本発明は、画面表示部及び入力部の両方が互いに利用者側の前面の表面積を取り合うことなく、指圧の押下による人間の自然物理的な操作感覚を得られる情報機器、入力方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
画面表示部と、
指が接触する押下面と、該押下面の物理的押下を検出する押下検出部と、押下面の表面における指の位置の近接状態を検知するセンサとを有し、画面表示部が目視されている際にその視界の中で目視されない面に配置された押下型入力部と、
画面表示部に、押下面の各位置の機能イメージを表示すると共に、各機能イメージが対応付けられた機能ポジションに指が近接しているかを特定表示する表示制御部と
を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の情報機器における他の実施形態によれば、押下型入力部は、キーボードであり、表示制御部が画面表示部に表示する機能イメージは、キーの機能イメージであることも好ましい。
【0014】
本発明の情報機器における他の実施形態によれば、押下型入力部は、弾性部を介して面全体の押下が可能なタッチパッドであり、表示制御部が画面表示部に表示する機能イメージは、押下面の各位置の機能イメージであることも好ましい。
【0015】
本発明の情報機器における他の実施形態によれば、押下型入力部は、画面表示部の背面、側面及び/又は角部分に配置されていることも好ましい。
【0016】
本発明の情報機器における他の実施形態によれば、押下型入力部が、画面表示部に対する背面に配置されている場合、表示制御部は、機能ポジションと同じ配置構成の機能イメージを、画面表示部に表示すると共に、押下面に割り当てられた機能ポジションと、画面表示部に表示される機能イメージとは、鏡面関係にあることも好ましい。
【0017】
本発明の情報機器における他の実施形態によれば、押下型入力部が、画面表示部に対する側面又は角部分に配置されている場合、表示制御部は、画面表示部の範囲の中で機能ポジションに近い位置に機能イメージが表示されるように画面表示部を制御することも好ましい。
【0018】
本発明の情報機器における他の実施形態によれば、表示制御部は、機能ポジションを縮小して表した機能イメージが表示されるように画面表示部を制御することも好ましい。
【0019】
本発明の情報機器における他の実施形態によれば、機能ポジション及び機能イメージは、キーボードのQWERTY配列であり、表示制御部は、QWERTY配列のキーボードイメージを画面表示部に表示し、指が近接しているキーを視覚的に特定表示することも好ましい。
【0020】
本発明の情報機器における他の実施形態によれば、表示制御部は、動作しているアプリケーションに応じて、機能ポジションと機能イメージとの割り当てを変更することができることも好ましい。
【0021】
本発明の情報機器における他の実施形態によれば、表示制御部は、動作しているアプリケーションに応じて、利用されない機能ポジションを画面表示部に表示しないように制御することも好ましい。
【0022】
本発明の情報機器における他の実施形態によれば、縦型に把持されているか又は横型に把持されているかを検知する姿勢センサを更に有し、表示制御部は、姿勢センサによって検知された保持の向きに応じて、機能ポジションと機能イメージとの割り当てを変更する
ことも好ましい。
【0023】
本発明の情報機器における他の実施形態によれば、
情報機器は、折り畳み式であって、
画面表示部は、折り畳んだ際の内側又は外側に配置され、
押下型入力部は、折り畳んだ際の外側又は内側に配置されることも好ましい。
【0024】
本発明によれば、画面表示部と、画面表示部が目視されている際にその視界の中で目視されない面に配置された押下型入力部とを有する情報機器の入力方法であって、
画面表示部に、押下型入力部における押下面の各位置の機能イメージを表示する第1のステップと、
押下面の表面におけるセンサによって、指の位置の近接状態を検知する第2のステップと、
画面表示部に、機能イメージが対応付けられた機能ポジションに指が近接しているかを特定表示する第3のステップと、
押下面に対する指圧によって、該押下面の物理的押下を検出する第4のステップと、
指が近接している機能ポジションに対応付けられた機能イメージに基づく機能を実行する第5のステップと
を有することを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、画面表示部と、画面表示部が目視されている際にその視界の中で目視されない面に配置された押下型入力部とを有する情報機器に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
画面表示部に、押下型入力部における押下面の各位置の機能イメージを表示する第1のステップと、
押下面の表面におけるセンサによって、指の位置の近接状態を検知する第2のステップと、
画面表示部に、機能イメージが対応付けられた機能ポジションに指が近接しているかを特定表示する第3のステップと、
押下面に対する指圧によって、該押下面の物理的押下を検出する第4のステップと、
指が近接している機能ポジションに対応付けられた機能イメージに基づく機能を実行する第5のステップと
してコンピュータを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の情報機器、入力方法及びプログラムによれば、利用者によって目視されない面に、利用者の指で操作可能な押下型入力部を備えることによって、画面表示部及び入力部の両方が互いに利用者側の前面の表面積を取り合うことなく、指圧の押下による人間の自然物理的な操作感覚を得られる。利用者は、両手でキーボード又はタッチパッドを操作することができ、QWERTY配列のキーボードやポインティングデバイスに近い入力操作感覚を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】キーボードを備えた携帯型情報機器の前面図、背面図及び断面図である。
【図2】キーボードを備えた携帯型情報機器における入力操作の外観図である。
【図3】タッチパッドを備えた携帯型情報機器の前面図、背面図及び断面図である。
【図4】タッチパッドを備えた携帯型情報機器における入力操作の外観図である。
【図5】押下型入力部を側面又は角部分に備えた携帯型情報機器の斜視図及び入力操作の外観図である。
【図6】トラックポイントを用いた入力操作の外観図である。
【図7】異なるキーボードイメージを表示した入力操作の外観図である。
【図8】折り畳み式の携帯型情報機器における入力操作の外観図である。
【図9】携帯電話機における入力操作の外観図である。
【図10】本発明におけるウェアラブル機器の外観図である。
【図11】情報機器に対する入力方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0029】
本発明が対照とする情報機器は、利用者の手の指圧によって情報が入力される。従って、携帯型であるのが好ましいが、設置型情報機器に対するユーザインタフェース装置であってもよい。尚、以下では、スマートフォンや携帯電話機のような携帯型情報機器として説明する。
【0030】
本発明の携帯型情報機器は、ディスプレイのような画面表示部と、キーボード又はタッチパッドのような押下型入力部とを有する。画面表示部は、利用者によって目視されている際にその視界の中で目視される面、例えば前面に配置される。一方で、押下型入力部は、画面表示部が利用者によって目視されている際にその視界の中で目視されない面、例えば背面、側面又は角部分に配置される。本発明の特徴は、このような押下型入力部の配置位置にある。
【0031】
以下では、押下型入力部が、「キーボード」である実施形態と、「タッチパッド」である実施形態とに大きく分けて説明する。図1及び図2は、「キーボード」の実施形態について説明し、図3及び図4は、「タッチパッド」の実施形態について説明する。また、図5〜図10は、押下型入力部はいずれであってもよいが、説明を容易にするために「キーボード」のみについて説明する。
【0032】
図1は、キーボードを備えた携帯型情報機器の前面図、背面図及び断面図である。
【0033】
図1(a)は、本発明におけるキーボードを備えた携帯型情報機器の前面図である。この前面図によれば、携帯型情報機器1は、一般的なスマートフォン又はPDA(いわゆるパームトップ型)の形状をしている。携帯型情報機器1の本体は、金属又は合成樹脂からなり、利用者が両手(勿論、片手であってもよい)で把持できる程度のサイズとなっている。また、携帯型情報機器1は、利用者側前面の表面積の大部分がディスプレイ(画面表示部)10で占有されている。ディスプレイ10には、機能イメージ100が表示されている。機能イメージとしては、例えばキーボードイメージや、アプリケーションのボタンイメージがある。パーソナルコンピュータ用のOSにおけるユーザインタフェースのアイコンのようなものである。利用者は、機能イメージを押下するように操作する。
【0034】
キーボードイメージ100として、QWERTY配列のキーが表示されている。QWERTY配列は、ラテン文字が刻印されたキーボードにおける事実上の標準としてのキー配列である。キーボードとしては、現在のところ、パーソナルコンピュータのQWERTY配列として両手で操作するフルキーボードが最も普及した結果、この入力操作が最も広く一般に入力しやすいキーボードとなっている。これに対し、例えば携帯電話機の場合、利用者は、片手で把持し且つその手の親指でキーを押下する。本発明は、キーボードの入力操作のしやすさを求めるべく、利用者は、両手(又は片手)で把持してQWERTY配列のキーを押下する。
【0035】
図1(b)は、本発明におけるキーボードを備えた携帯型情報機器の背面図である。この背面図によれば、携帯型情報機器1の背面に、ディスプレイ10に表示されたキーボードイメージ100とほぼ同じ配置のキーボード(押下型入力部)11が備えられている。本発明によれば、キーボード11は、ディスプレイ10が利用者によって目視されている際にその視界の中で目視されない面に配置される。
【0036】
図1(b)によれば、ディスプレイ10に表示されたキーボードイメージ100のQWERTY配列のキーに対応して、キーボード11は、QWERTY配列のキーを配置している。各キーは、機能イメージに対応しており、「機能イメージに対応する機能ポジション」とする。注目すべきは、背面に配置されたキーボード11のキー配列と、ディスプレイ10に表示されたキーボードイメージ100のキー配列とが、鏡面関係にあることである。尚、図1(b)によれば、トラックポイント12も配置されている。これによって、アプリケーションイメージ101に対するポインティング操作も、背面から操作可能となる。
【0037】
図1(c)は、本発明におけるキーボードを備えた携帯型情報機器の断面図である。この断面図によれば、携帯型情報機器1は、キートップ111と、押下検出部112と、タッチセンサ113と、保護膜114と、表示制御部115と、姿勢(加速度)センサ116とを有する。ここで、表示制御部115は、携帯型情報機器に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0038】
キートップ111は、キー毎に配列された凸状の物理的形状を持ったボタン(押下面)である。利用者の指は、キートップに対して指圧を加える。
【0039】
押下検出部12は、キートップ(押下面)111に連結し且つ各キーへの物理的押下を検出する。物理的な押下検出部112は、基板と一体に構成されていてもよい。
【0040】
タッチセンサ113は、キートップ111の表面に備えられ、各キー(押下面)への指の近接状態を検知する(例えば非特許文献1及び3参照)。近接状態とは、指がキーに触れているか、又は、指とキーとが静電気を受ける程度に離れた状態をいう。尚、以下では、「指の触れ」とは、近接状態であるとして説明する。
【0041】
タッチセンサ113は、例えば静電型センサ、抵抗膜型センサ、又は、光学型若しくは熱型センサがある。タッチセンサ113によって検出された指の触れの信号は、表示制御部115へ出力される。
【0042】
保護膜114は、タッチセンサ113を、指から保護すると共に、例えば指によって生じる静電気をタッチセンサ113へ、そのまま通電する。
【0043】
表示制御部115は、キーボードの各キーの機能イメージをディスプレイに表示する。このとき、背面に配置されたキーボードの配置とほぼ同じ配置のキーボードイメージを、ディスプレイに表示する。また、位置もほぼ同じであることが好ましい。利用者は、ディスプレイに表示されたキーの直ぐ真裏の背面に、そのキーが存在すると認識することができる。尚、表示制御部115は、背面に配置されたキーボードを縮小したキーボードイメージを、ディスプレイに表示することも好ましい。これにより、ディスプレイ10に占有するアプリケーションイメージ101の範囲をできる限り広くすることができる。
【0044】
また、表示制御部115は、タッチセンサ113から受信した信号に基づいて、指が触れたキー(機能ポジション)を、ディスプレイに特定表示する。ディスプレイに表示されたキーに、視覚的な接触ポイントを表示することによって、利用者は、指が触れたキーを認識することができる。
【0045】
更に、表示制御部115は、動作しているアプリケーションに応じて、キーボードのキーの機能割り当てを変更することができる。利用者は、ディスプレイに表示されたキーの機能のみに注目しており、背面のキーを意識していないからである。従って、背面の物理的なキーのキートップには、キーの割り当てが印刷される必要が無い。
【0046】
ここで、表示制御部115は、動作しているアプリケーションに応じて、利用されない無効キー部分をディスプレイに表示しないように制御することも好ましい。これにより、ディスプレイ10に占有するアプリケーションイメージ101の範囲をできる限り広くすることができる。
【0047】
更に、表示制御部115は、姿勢センサ116によって検知された保持の向きに応じて、キーボードのキーの機能割り当てを変更することも好ましい。利用者に対する携帯型情報機器1の向きによっては、キーボードに触れる指の位置も異なるからである。例えば、把持の姿勢を横にすれば両手を使って操作ができ、縦にすれば片手を使って操作ができるように、キーボードのキーの機能割り当てを変更することができる。
【0048】
姿勢センサ116は、例えば加速度センサ(例えば半導体式)であって、携帯型情報機器の上下方向を検出することができる。3軸の検出値から、地球の重力加速度を計測することができ、携帯型情報機器の傾きを検出することができる。
【0049】
図2は、キーボードを備えた携帯型情報機器における入力操作の外観図である。押下型入力部としてのキーボードは、ディスプレイの背面、側面又は角部分に配置される。
【0050】
図2(a)は、入力操作時における携帯型情報機器の前面図である。この前面図によれば、携帯型情報機器1は、利用者の手の平及び親指によって把持される。また、ディスプレイ10には、QWERTY配列のキーボードイメージが表示されている。
【0051】
利用者が、背面のキーボードのいずれかのキーに指を触れると、ディスプレイ10に表示されたそのキーが視覚的に特定表示される。例えば、赤丸で、接触ポイント102が表される。これによって、利用者は、指がどのキーに触れているかを視覚的に知ることができる。
【0052】
指が触れている時点では、キーは押下されていない。そのために、キーに割り当てられた情報も入力されていない。次に、利用者は、ディスプレイ10に表示された接触ポイント102を見ながら、所望キーを物理的に押下することによって、そのキーの割り当て情報を入力することができる。
【0053】
このように、タッチセンサから得られた情報は、キーボードへの指の接触位置を利用者に提示する目的だけのために専ら利用される。従って、実際のキー入力には、物理的キーボードが用いられる。これにより、利用者に対して自然物理的な操作感覚(入力における機械的反応)を与えることが可能となり、入力の操作性を向上させることができる。
【0054】
例えば非特許文献2及び特許文献3のように、機器の背面にタッチパネルを備える既存の技術がある。この技術によれば、視認性への不快感は解消できるが、結局、自然物理的な操作感覚までは得られない。タッチパネルは、キー入力操作機能と表示機能との両方を備えた技術である。これに対し、本発明は、タッチセンサとキーボードとを組み合わせることによって、指の触れをタッチセンサで検出し、実際のキー入力は物理的なキーボードで操作する。
【0055】
図2(b)は、入力操作時における携帯型情報機器の背面図である。この背面図によれば、キーボード11は、利用者の親指以外の指(人差し指、中指、薬指及び/又は小指)によって触れ且つ押下される。勿論、親指によって操作されるものであってもよい(図5によって後述する)。ここで、背面に備えられるキーボード11のキートップに、その割り当て機能の表示が印刷されている必要はない。利用者は、ディスプレイ10に表示されたキーボードイメージ100のみを見ており、背面に配置されたキーボード自体を見ていないからである。即ち、押下型入力部は、ディスプレイ10が利用者によって目視されている際にその視界の中で目視されない面に配置されているからである。
【0056】
図3は、タッチパッドを備えた携帯型情報機器の前面図、背面図及び断面図である。押下型入力部としてのタッチパッドは、ディスプレイの背面、側面又は角部分に配置される。
【0057】
図3は、図1と比較して、押下型入力部がタッチパッドである点のみが相違する。図3(b)には、携帯型情報機器の背面にタッチパネル11が備えられている。タッチパネル11には、各位置に機能ポジションが割り当てられており、その機能ポジションは、ディスプレイ10に表示された機能イメージに対応付けられている。尚、図1と同様に、タッチパネルの機能ポジションの位置と、ディスプレイの機能イメージの位置とは、鏡面関係にある。
【0058】
図3(c)は、図3(b)における携帯型情報機器の断面図である。この断面図によれば、携帯型情報機器1は、図1(c)と比較して、弾性部117を備えている点のみが相違する。
【0059】
弾性部117は、タッチパッド113と押下検出部112との間に配置されている。弾性部117は、タッチパッドへの指圧により、圧力変動を生じる。弾性部117の圧力変動は、押下検出部112全体にかかる。
【0060】
押下検出部12は、弾性部117に連結し、タッチパッド113の物理的押下を検出する。図1(c)と同様に、物理的な押下検出部112は、基板と一体に構成されていてもよい。
【0061】
タッチパッド113は、表面にセンサを備えており、タッチパッドへの指の近接状態を検知する。タッチパッド113のセンサは、図1(c)のタッチセンサ113と同様に機能する。タッチパッド113によって検出された指の触れの信号は、表示制御部115へ出力される。
【0062】
その他の構成要素については、図1(c)と同様に機能する。
【0063】
図4は、タッチパッドを備えた携帯型情報機器における入力操作の外観図である。押下型入力部としてのタッチパッドは、ディスプレイの背面、側面及び/又は角部分に配置される。
【0064】
図5は、押下型入力部を側面及び角部分に備えた携帯型情報機器の斜視図及び入力操作の外観図である。
【0065】
図5(a)の斜視図によれば、携帯型情報機器の側面及び角部分に、押下型入力部としてのキーが配置されている。ここで、表示制御部115は、機能ポジション(キー)が側面又は角部分に配置されている場合、ディスプレイ10の範囲の中で機能ポジションに近い位置に機能イメージが表示される。図5(a)によれば、機能イメージは、ディスプレイ10の側部に表示される。また、図5(b)によれば、携帯型情報機器の側面又は角部分に配置されたキーが、親指で操作されている。更に、図5(c)によれば、携帯型情報機器の側面又は角部分に配置されたキーが、人差し指で操作されている。このように、側面又は角部分に配置されたキーは、いずれの指であっても操作可能となる。
【0066】
図6は、トラックポイントを用いた入力操作の外観図である。
【0067】
図6(a)は、トラックポイント操作時における携帯型情報機器の前面図である。この前面図によれば、携帯型情報機器のトラックポイントの操作に基づくポインタが、ディスプレイ10のアプリケーションイメージ101に、ポインタイメージ103として表される。
【0068】
図6(b)は、トラックポイント操作時における携帯型情報機器の背面図である。この背面図によれば、トラックポイントは、利用者の人差し指によって操作されている。
【0069】
図7は、異なるキーボードイメージを表示した入力操作の外観図である。
【0070】
図7によれば、ディスプレイ10に表示されるべきキーボードイメージ100を縮小して表示している。ディスプレイ10に占有するキーボードイメージ100の範囲をできる限り小さくすることによって、ディスプレイ10のアプリケーションイメージ101の範囲を広くする。背面に配置されたキーボードの位置と、ディスプレイ10に表示されたキーボードイメージ100の位置とは、必ずしも一致していなくても、利用者からの操作性は維持される。
【0071】
図8は、折り畳み式の携帯型情報機器における入力操作の外観図である。
【0072】
図8によれば、携帯型情報機器1は、ヒンジ13を有する折り畳み式であって、例えば本のような形状である。このような携帯型情報機器1は、ディスプレイを、折り畳んだ際の内側に配置し、キーボードを、折り畳んだ際の外側に配置する。折り畳みされる端部はそれぞれ、利用者の手で把持される。利用者から見るディスプレイ10は、内側にして折り畳んで収納されるために、画面の傷つきや汚れを防止することができる。尚、携帯型情報機器1が折り畳まれた場合、キーボード11からの入力機能が停止されるようにする。
【0073】
図8によれば、タッチセンサ14が、キーボード11だけでなく、携帯型情報機器1の背面の全体に配置されている。これにより、キーボードだけでなく、ディスプレイ10の全領域に相当する指の触れ位置を検知し、ディスプレイ10のアプリケーションイメージ101上のポインタイメージ103を操作する。
【0074】
図9は、携帯電話機における入力操作の外観図である。
【0075】
図9によれば、携帯型情報機器が携帯電話機である場合を表す。図9(a)は、携帯電話機の前面図を表す。この前面図によれば、ヒンジ13を介して折り畳み式であって、両面にディスプレイ10を配置する。ディスプレイ10には、キーボードイメージが縮小して表示されている。また、図9(b)によれば、携帯電話機の背面図を表す。この背面図によれば、携帯電話機の背面の表面にキーボードが配置されている。
【0076】
従来の一般的な携帯電話機は、折り畳み式が多く、利用者の前面に対して、一方の面にディスプレイを配置し、他方の面にテンキーボードを配置する。通常、利用者は、右手の平と親指以外の指とで本体を把持し、右手の親指でテンキーボードを操作する。親指は、横方向へずらす関節の自由度が最も小さいにも拘わらず、キーボードの入力操作には親指が用いられる。しかも、片手で入力される。これに対し、本発明によれば、開いた状態の携帯電話機は、利用者の手の平及び親指によって把持され、背面に配置されたキーボードは、利用者の親指以外の指によって触れ且つ押下される。従って、ディスプレイの表示領域を広く確保することができると共に、背面のキーボードに対して複数の指で押下することができる。
【0077】
図10は、本発明におけるウェアラブル機器の外観図である。
【0078】
図10によれば、眼鏡型(ヘッドセット型)ウェアラブル機器が表されている。本発明が対象とする情報機器は、前述した実施形態のように、必ずしも、利用者の手によって把持される機器に限らない。
【0079】
図10のウェアラブル機器によれば、利用者に対するディスプレイは、ウェアラブル機器の内側(利用者の視界に対向する側)に配置されている。また、押下型入力部は、利用者からは目視できない側部に配置されている。押下型入力部は、図1のキー又は図3のタッチパッドと同様の機能構成を有する。このウェアラブル機器のディスプレイに、側部に配置された押下面の各位置の機能イメージが表示される。また、各機能イメージが対応付けられた機能ポジションに、利用者の指が近接しているかが特定表示される。
【0080】
図11は、情報機器に対する入力方法のフローチャートである。このフローチャートの処理手順は、情報機器に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現されるものであってもよい。
【0081】
図11によれば、情報機器は、利用者に対向する画面表示部と、その画面表示部が利用者によって目視されている際にその視界の中で目視されない面に配置された押下型入力部とを有する。
(S1)画面表示部に、押下型入力部における押下面の各位置の機能イメージを表示する。
(S2)押下面の表面におけるセンサによって、利用者の指の位置の近接状態を検知する。
(S3)画面表示部に、機能イメージが対応付けられた機能ポジションに利用者の指が近接しているかを特定表示する。
(S4)押下面に対する指圧によって、該押下面の物理的押下を検出する。
(S5)利用者の指が近接している機能ポジションに対応付けられた機能イメージに基づく機能を実行する。
【0082】
以上、詳細に説明したように、本本発明の携帯型情報機器によれば、ディスプレイの背面、側面及び/又は角部分に、利用者の指で操作可能な押下型入力部を備えることによって、ディスプレイと入力部とが利用者側前面の表面積を取り合うことなく、機器の表面積を最大限利用した表示機能及び入力機能を可能とし、入力部の押下による人間の自然物理的な操作感覚を得られる。利用者は、両手でキーボードを操作することができ、QWERTY配列のキーボードに近い入力操作感覚を得ることができる。
【0083】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0084】
1 携帯型情報機器
10 ディスプレイ
100 機能イメージ
102 接触ポイント
103 ポインタイメージ
11 押下型入力部、キーボード、タッチパッド
111 押下面
112 押下検出部
113 タッチセンサ
114 保護膜
115 表示制御部
116 姿勢センサ
117 弾性部
12 トラックポイント
13 折り畳み用ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面表示部と、
指が接触する押下面と、該押下面の物理的押下を検出する押下検出部と、前記押下面の表面における指の位置の近接状態を検知するセンサとを有し、前記画面表示部が目視されている際にその視界の中で目視されない面に配置された押下型入力部と、
前記画面表示部に、前記押下面の各位置の機能イメージを表示すると共に、各機能イメージが対応付けられた機能ポジションに前記指が近接しているかを特定表示する表示制御部と
を有することを特徴とする情報機器。
【請求項2】
前記押下型入力部は、キーボードであり、
前記表示制御部が前記画面表示部に表示する前記機能イメージは、キーの機能イメージであることを特徴とする請求項1に記載の情報機器。
【請求項3】
前記押下型入力部は、弾性部を介して面全体の押下が可能なタッチパッドであり、
前記表示制御部が前記画面表示部に表示する前記機能イメージは、前記押下面の各位置の機能イメージであることを特徴とする請求項1に記載の情報機器。
【請求項4】
前記押下型入力部は、前記画面表示部の背面、側面及び/又は角部分に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報機器。
【請求項5】
前記押下型入力部が、前記画面表示部に対する背面に配置されている場合、
前記表示制御部は、機能ポジションと同じ配置構成の機能イメージを、前記画面表示部に表示すると共に、
前記押下面に割り当てられた機能ポジションと、前記画面表示部に表示される機能イメージとは、鏡面関係にあることを特徴とする請求項4に記載の情報機器。
【請求項6】
前記押下型入力部が、前記画面表示部に対する側面又は角部分に配置されている場合、
前記表示制御部は、前記画面表示部の範囲の中で前記機能ポジションに近い位置に機能イメージが表示されるように前記画面表示部を制御することを特徴とする請求項4に記載の情報機器。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記機能ポジションを縮小して表した機能イメージが表示されるように前記画面表示部を制御することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の情報機器。
【請求項8】
前記機能ポジション及び前記機能イメージは、キーボードのQWERTY配列であり、
前記表示制御部は、前記QWERTY配列のキーボードイメージを前記画面表示部に表示し、指が近接しているキーを視覚的に特定表示する
ることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の情報機器。
【請求項9】
前記表示制御部は、動作しているアプリケーションに応じて、機能ポジションと機能イメージとの割り当てを変更することができることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の情報機器。
【請求項10】
前記表示制御部は、動作しているアプリケーションに応じて、利用されない機能ポジションを前記画面表示部に表示しないように制御することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の情報機器。
【請求項11】
縦型に把持されているか又は横型に把持されているかを検知する姿勢センサを更に有し、
前記表示制御部は、前記姿勢センサによって検知された保持の向きに応じて、機能ポジションと機能イメージとの割り当てを変更する
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の情報機器。
【請求項12】
前記情報機器は、折り畳み式であって、
前記画面表示部は、折り畳んだ際の内側又は外側に配置され、
前記押下型入力部は、折り畳んだ際の外側又は内側に配置される
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の情報機器。
【請求項13】
画面表示部と、前記画面表示部が目視されている際にその視界の中で目視されない面に配置された押下型入力部とを有する情報機器の入力方法であって、
前記画面表示部に、前記押下型入力部における押下面の各位置の機能イメージを表示する第1のステップと、
前記押下面の表面におけるセンサによって、指の位置の近接状態を検知する第2のステップと、
前記画面表示部に、前記機能イメージが対応付けられた機能ポジションに指が近接しているかを特定表示する第3のステップと、
前記押下面に対する指圧によって、該押下面の物理的押下を検出する第4のステップと、
指が近接している機能ポジションに対応付けられた機能イメージに基づく機能を実行する第5のステップと
を有することを特徴とする情報機器を用いた入力方法。
【請求項14】
画面表示部と、前記画面表示部が目視されている際にその視界の中で目視されない面に配置された押下型入力部とを有する情報機器に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記画面表示部に、前記押下型入力部における押下面の各位置の機能イメージを表示する第1のステップと、
前記押下面の表面におけるセンサによって、指の位置の近接状態を検知する第2のステップと、
前記画面表示部に、前記機能イメージが対応付けられた機能ポジションに指が近接しているかを特定表示する第3のステップと、
前記押下面に対する指圧によって、該押下面の物理的押下を検出する第4のステップと、
指が近接している機能ポジションに対応付けられた機能イメージに基づく機能を実行する第5のステップと
してコンピュータを実行させることを特徴とする情報機器用のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−272111(P2010−272111A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96665(P2010−96665)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】