説明

保護装置

【課題】 USBコネクタと被保護部品間の信号ラインに接続されるESD破壊の保護装置として、双方向pn接合ダイオードが用いられるが、従来の構造では製造工程が複雑、煩雑で保護装置の低コスト化や耐圧の汎用性に限界があった。
【解決手段】 p半導体基板上にp型半導体層を積層し、その表面に互いに離間する第1n+型不純物領域および第2n+型不純物領域を設け、これらの直下にこれらの底面より小さい第1p++型不純物領域と第2p++型不純物領域を設け、第1n+型不純物領域とコンタクトし、入力端子に電気的に接続する第1電極と、第2n+型不純物領域にコンタクトし、接地端子に電気的に接続する第2電極とを設ける。第1n+型不純物領域および第2n+型不純物領域は140μm以上離間され、それぞれ角丸四角形状でp+型半導体基板の対角線に沿って配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気破壊保護用途の保護装置に係り、特に高い静電気破壊耐量と低容量を兼ね備えた保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータなどのホストと各種の周辺機器とを接続するインターフェイスとして、いわゆるホットスワップ(活線挿抜)の機能を有するものが多様されているが、その代表的なものに、USB(Universal Serial Bus)規格の接続端子(以下、USBコネクタと称する。)がある。USBコネクタは外部に露出している機会が多く、例えば利用者の接触放電など、外部からUSBコネクタを介してデータの信号ラインに静電気が印加されると、信号ラインに接続する部品(例えばUSBコネクタを制御するIC)が破壊するおそれがある。これを防止するために、USBコネクタと被保護部品間の信号ラインには、静電気放電(ESD:Electrostatic Discharge)破壊を防ぐ保護装置が接続されている。保護装置は例えば、pn接合ダイオードであり、これを信号ラインと接地間に接続することによって静電気を吸収させることができる(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
図6は、従来の双方向pn接合ダイオードを用いた保護装置の一例を示す断面概要図である。
【0004】
図6(A)は、2つのpn接合を基板の厚み方向に複数形成した、いわゆる縦型の双方向pn接合ダイオードによる保護装置100である。
【0005】
詳細には、p+型半導体基板101上にp型半導体層102を積層し、p型半導体層102表面に、下方からp+型半導体領域103、n+型半導体領域104を設け、表面に再びp+型半導体領域105を設けた構成である。基板表面を覆う絶縁膜111を開口して最表面のp+型半導体領域105を露出させ、これとコンタクトする第1電極106を形成し、裏面には金属の蒸着などによって第2電極107を設ける。
【0006】
第1電極106は、導電部材(例えばリードフレームのリード)109aに金属細線108などによって固着され、第2電極107は他の導電部材(例えばリードフレームのアイランド)109bに固着される。これらは樹脂層110で一体的に被覆、支持され、保護装置100が構成される。
【0007】
保護装置100は、p+型半導体領域105とn型半導体領域104からなる第1ダイオードD11と、n型半導体領域104とp+型半導体領域103からなる第2ダイオードD12の互いのn型領域同士が直列に接続され、導電部材109a、109bの一端は、樹脂層110から外部に導出してそれぞれ入力端子IN、接地端子GNDとなり、例えばUSBコネクタ(不図示)からの信号ライン(不図示)と接地間に接続される。
【0008】
図6(B)は、2つのpn接合ダイオードのチップを、組み立て工程にて接続した双方向pn接合ダイオードである。
【0009】
詳細には、p+型半導体基板201a表面にn+型半導体領域202aを設け、基板表面を覆う絶縁膜203aを開口してn+型半導体領域202aを露出させ、これとコンタクトする第1電極206aを形成し、裏面には第2電極207aを設け、第1ダイオードD21のチップを形成する。また、これと同様の構成のp+型半導体基板201b、n+型半導体領域202b、絶縁膜203b、第1電極206b、第2電極207bによって第2ダイオードD22のチップを形成し、これらの第2電極207a、207bをそれぞれ異なる導電部材(例えばリードフレームのアイランド)209a、209b上に固着する。第1電極206a、206bは互いに金属細線208などによって電気的に接続され、これらが樹脂層210で一体的に被覆、支持され、保護装置200が構成される。
【0010】
保護装置200は第1ダイオードD21と、第2ダイオードD22は互いのn型領域が直列に接続され、導電部材209a、209bの一端は、樹脂層210から外部に導出してそれぞれ入力端子IN、接地端子GNDとなり、例えばUSBコネクタ(不図示)からの信号ライン(不図示)と接地間に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−112891号公報 (第11頁 第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ESD破壊対策の保護装置100を、信号ラインに接続して使用する場合、所定のESD破壊耐量を保持し、且つ保護装置100の全体としての合計容量(以下、部品容量と称する。)が小さいことが望まれる。
【0013】
これは、例えば、USB規格のインターフェイスなど、差動信号を用いるインターフェイスの場合、保護装置100の部品容量などのデータの信号ラインに存在する寄生容量が大きいと、差動信号の信号波形であるアイパターンが違反ゾーンにかかる、いわゆる波形のなまり(歪み)が生じるためである。このため、信号ラインに存在する寄生容量を許容値まで低減しなくてはならないのであるが、データ転送速度を高速化するほど、その許容値は小さな値となる。
【0014】
具体的な一例として、データ転送速度の速いUSB2.0規格のハイスピードモード(最大データ転送速度:480Mbps)の場合、部品容量は最大でも5pF、好適には3pF程度以下にしなければならない。
【0015】
一方で、USB規格のインターフェイスに採用する場合のESD破壊耐量としては、IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)の規格に基づき、接触放電では8kVの耐性を有することが必要とされている。
【0016】
この様な制約がある中で、1つのpn接合ダイオード(例えば、図6(A)の第1ダイオードD11)のみで保護装置を構成し、部品容量を3pF程度まで低減しようとすると、ESD破壊耐量としては4kV〜5kV程度にしかならず、必要なESD破壊耐量を得ることができない。
【0017】
そこで、保護装置100では、同じpn接合容量の第1ダイオードD11、第2ダイオードD12を直列接続し、双方向pn接合ダイオードを形成している。これにより、例えば1つのpn接合ダイオード(第1ダイオードD11)のみを用いた保護装置と比較して、ESD破壊耐量は同等を維持しつつ、第1ダイオードD11および第2ダイオードD12の接合容量の直列接続によって部品容量を半減することができ、低い容量と高いESD破壊耐量を実現できる。これは、図6(B)の保護装置200についても、同様である。
【0018】
しかし、従来の保護装置100、200はいずれも、製造工数が多かったり、製造工程上の管理が煩雑であることから保護装置の低コスト化が進まず、また耐圧(逆方向降伏電圧)の制御が困難、あるいは耐圧制御の汎用性に限界が有るなどの問題があった。
【0019】
具体的に説明すると、図6(A)の保護装置100は、縦型(深さ方向)の2つのpn接合を実現するために、不純物濃度が低いn+型半導体領域104の上下を、不純物濃度が高いp+型半導体領域103、105で挟む構造としている。つまりこの構造では、特に、n+型半導体領域104とp+型半導体領域103を不純物の拡散にて形成するのが困難である。すなわち、第1の拡散領域(n+型半導体領域104)を形成する場合の下地となる第2の拡散領域(p+型半導体領域103)は、形成される第1の拡散領域(n+型半導体領域104)より不純物濃度を低くする必要があり、p+型半導体領域103の不純物濃度を高めるかあるいは、n+型半導体領域104の不純物濃度を低下させるにも限界がある。
【0020】
n+型半導体領域104の不純物濃度は、保護装置100の耐圧を決定する要因となるため、構造的にpn接合が形成されるだけではなく、所望の耐圧が得られるようにしなければならず、耐圧の制御が困難となる。
【0021】
また、p+型半導体領域103を埋め込みによって形成した場合には、p型半導体層102表面にp+型不純物をイオン注入し、更にn+型半導体層(エピタキシャル層)104を積層する必要があり、コストがかかる。
【0022】
更に、エピタキシャル層であるp型半導体層102上にp+型半導体領域103、n+型半導体領域104、p+型半導体領域105を順次形成するので、工数およびマスク枚数が増えるなどしてコストかかる。
【0023】
また、図6(B)の保護装置200は、個別の2つのpn接合ダイオード(第1ダイオードD21と第2ダイオードD22)のチップが必要であり、1本の金属細線208の両端をこれらの表面に設けられた第1電極206a、206bにそれぞれワイヤーボンディングする必要がある。このため、表面電極同士の接続についてワイヤーボンドの精度やボンディング強度について特別な管理が必要であり、製造工程が煩雑となる。更にこの構造では、それぞれの耐圧に応じたp+型半導体基板201a、201bを準備しなければならず、シリーズ化した複数の耐圧の製品を揃える場合に汎用的でない問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明はかかる課題に鑑みてなされ、一導電型半導体基板と、該一導電型半導体基板の一主面上に設けられた一導電型半導体層と、該一導電型半導体層の表面に互いに離間して設けられた第1逆導電型不純物領域および第2逆導電型不純物領域と、該第1逆導電型不純物領域および第2逆導電型不純物領域の底面より小さく、それぞれの該底面に接して設けられた、高濃度の第1一導電型不純物領域および高濃度の第2一導電型不純物領域と、前記第1逆導電型不純物領域とコンタクトし、入力端子に電気的に接続する第1電極と、前記第2逆導電型不純物領域にコンタクトし、接地端子に電気的に接続する第2電極と、を具備することにより解決するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0026】
第1に、所定のESD破壊耐量を維持しつつ部品容量を低減できる双方向pn接合ダイオードを用いた保護装置を、少ない製造工程によって1つのチップで実現でき、保護装置のコストを低減できる。
【0027】
すなわち、保護装置はp+型半導体基板上にp型半導体層を積層し、p型半導体層の表面に高濃度の第1p++型不純物領域、第2p++型不純物領域を横並びで離間して配置し、それぞれの上に高濃度の第1n+型不純物領域、第2n+型不純物領域を横並びで離間して配置して、主な電流経路が基板水平方向に形成される横型の双方向pn接合ダイオードとする。つまり、2枚のマスクで2つのpn接合を形成できるので、複数のpn接合を基板の厚み方向に積層する縦型の双方向pn接合ダイオードの製造工程と比較して、マスク枚数を削減できる。また、2つのダイオードのチップを組立工程における表面電極同士の接続によって双方向pn接合ダイオードとする構成と比較して、ワイヤーボンドの精度やボンディング強度等についての特別な管理が不要となる。
【0028】
このときp+型半導体基板上に第1、第2p++型不純物領域より低濃度のp型半導体層を設けることにより、耐圧(逆方向降伏電圧)の制御が容易となる。本発明の保護装置の耐圧は、第1、第2p++型不純物領域の不純物濃度により決定されるが、これを低濃度のp型半導体層へのイオン注入で形成することにより、耐圧に応じて、第1、第2p++型不純物領域の不純物濃度が適宜選択可能となる。
【0029】
これにより、耐圧設計の自由度が広がる。またp+型半導体基板とp型半導体層の基板を共通として、第1、第2p++型不純物領域、および第1、第2n+型不純物領域の不純物濃度を変更させることにより、シリーズ化した複数の耐圧の製品を低コストで揃えることができるので、汎用性が向上する。
【0030】
また、第1、第2n+型不純物領域の形状、すなわちpn接合面の面積及び形状によって、保護装置の部品容量およびESD破壊耐量を決定でき、特に、第1、第2n+型不純物領域の距離と面積を適切に選択することで、所望のESD破壊耐量を得ることができる。具体的には、n+型不純物領域の面積を例えば約5000μmとし、且つ第1、第2n+型不純物領域の対向面間の距離を140μm以上離間する。これにより保護装置は3pF以下の部品容量と、10kV以上のESD破壊耐量を実現できる。そして、第1、第2n+型不純物領域および第1、第2p++型不純物領域の形状はそれぞれのマスクのパターンを変更するだけで、変更できる利点を有する。
【0031】
更に、第1n+型不純物領域と第2n+型不純物領域の直下にそれぞれ、高濃度の第1p++型不純物領域および第2p++型不純物領域を設けることにより、このpn接合における空乏層の広がりを抑えることができるので、低耐圧(例えば5V以下)で且つ、高濃度のpn接合によって、ESD破壊耐量の向上を図ることができる
また、第1p++型不純物領域および第2p++型不純物領域を、第1、第2n+型不純物領域の底面積より小さくすることにより、pn接合が高濃度接合となる領域(面積)を低減し、低耐圧であってもリーク電流の発生を押さえることができる。この保護装置の実装において、所定の電流の範囲で双方向ダイオードが定電圧にならないと、実装後に動作しない等の問題が発生する。本発明ではリーク電流を低減し、すなわち逆方向の電流IR−電圧VR特性をハード波形にすることができ、定電圧特性を維持することができる。
【0032】
第2に、第1、第2n+型不純物領域を、チップの対角線に沿って配置することで、両者の離間距離を140μm離間した場合であっても、チップサイズの増大を抑制できる。
【0033】
第3に、第1、第2n+型不純物領域の平面視における形状を、角部に曲率を有する四角形状(角丸四角形状)とすることにより、pn接合面積を確保しつつ、角部に電界が集中することを防止し、ESD破壊耐量の向上に寄与できる。角部の電界集中を回避するには、一般的には、平面視において円形状が最も有効であるが、横型の双方向pn接合ダイオードを保護装置として用いる場合、第1、第2n+型不純物領域の面積(p+型不純物層とのpn接合面積)だけでなく、第1、第2n+型不純物領域の対向面の面積も大きく確保することが望ましいことが判った。第1、第2n+型不純物領域の平面視における形状を、角丸四角形状として一つの辺同士を対向配置させることで、n+型不純物領域を円形にした場合と比較して、対向面の面積を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態の保護装置を説明する(A)断面図、(B)等価回路図である。
【図2】本発明の実施形態の保護装置を説明する平面図である。
【図3】本発明の実施形態の保護装置を説明するための(A)特性図、(B)比較例の断面図、(C)本実施形態の断面図である。
【図4】本発明の実施形態の保護装置の接続例を示す回路概要図である。
【図5】本発明の実施形態の保護装置の接続例を示す回路概要図である。
【図6】従来技術を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施の形態について、図1から図5を参照して説明する。
【0036】
図1は、保護装置10の構造を説明するための図であり、図1(A)が断面図であり、図1(B)が保護装置10の等価回路図である。
【0037】
保護装置10は、p+型半導体基板1と、p型半導体層2と、第1n+型不純物領域4と、第2n+型不純物領域5と、第1電極6と、第2電極7と、第1p++型不純物領域14と、第2p++型不純物領域15と、を具備する。
【0038】
図1(A)を参照して、p+型半導体基板1は、双方向pn接合ダイオードDiのチップを構成し、例えば不純物濃度が4E18cm−3〜5E18cm−3程度、厚みが100μm〜200μm程度のシリコン半導体基板である。
【0039】
p型半導体層2は、p+型半導体基板1の一主面上に積層され、一例として不純物濃度が1E16cm−3〜2E16cm−3、厚みが5μm〜10μm程度のエピタキシャル層である。
【0040】
第1n+型不純物領域4および第2n+型不純物領域5は、p型半導体層2の表面に互いに距離L(例えば140μm以上)で離間して設けられる。いずれも、一例として不純物濃度が7E19cm-〜8E19cm-3の高濃度のn型不純物のイオン注入及び拡散によって形成される。尚、チップ端部となるp型半導体層2の外周端にも、高濃度のn+型不純物領域9が設けられる。
【0041】
第1p++型不純物領域14および第2p++型不純物領域15は、それぞれ第1n+型不純物領域4および第2n+型不純物領域5の直下に設けられる。詳細には、第1p++型不純物領域14は第1n+型不純物領域4の底面と接して、当該底面より小さい面積で設けられ、底面付近の角部および側面には設けられない。同様に第2p++型不純物領域15は第2n+型不純物領域5の底面と接して、当該底面より小さい面積で設けられ、底面付近の角部および側面には設けられない。第1p++型不純物領域14および第2p++型不純物領域15の不純物濃度はそれぞれp型半導体層2より高く、一例として、1E19cm−3〜1E20cm−3である。
【0042】
第1p++型不純物領域14および第2p++型不純物領域15は、不純物イオン注入領域であり、不純物濃度は、双方向pn接合ダイオードの耐圧(逆方向降伏電圧)、およびESD(Electrostatic Discharge)破壊耐量、保護装置10全体の合計容量(部品容量)を決定する要因となる。本実施形態では、低濃度のp型半導体層2を設けることにより、第1p++型不純物領域14および第2p++型不純物領域15の不純物濃度を適宜選択できるので、耐圧、ESD破壊耐量および部品容量の制御が容易となる。
【0043】
p型半導体層2の表面には絶縁膜(例えば酸化膜など)11が設けられ、第1n+型不純物領域4および第2n+型不純物領域5上が開口される。第1型不純物領域4および第2n+型不純物領域5上に、例えばアルミニウム(Al)またはこれを主成分とする金属層による第1電極6および第2電極7が設けられる。第1電極6は、第1n+型不純物領域4とほぼ重畳する大きさと形状に設けられ、第1n+型不純物領域4とコンタクトする。第2電極7は、第2n+型不純物領域5とほぼ重畳する大きさと形状に設けられ、第2n+型不純物領域5とコンタクトする。
【0044】
最表面には他の絶縁膜(例えば窒化膜など)12が設けられ、第1電極6および第2電極7上が開口される。
【0045】
第1n+型不純物領域4は底面において、第1p++型不純物領域14と高濃度のpn接合J11を形成し、底面付近の角部および側面はp型半導体層2と接して高濃度のpn接合J11より低濃度のpn接合J12を形成して、第1ダイオードD1となる。以下、高濃度のpn接合J11と低濃度のpn接合J12を第1pn接合J1と総称する。
【0046】
また第2n+型不純物領域5は底面において、第2p++型不純物領域15と高濃度のpn接合J12を形成し、底面付近の角部および側面はp型半導体層2と接して高濃度のpn接合J12より低濃度のpn接合J22を形成して、第2ダイオードD2となる。以下、高濃度のpn接合J12と低濃度のpn接合J22を第2pn接合J2と総称する。
【0047】
これによって、互いのp型領域同士を直接に接続し、第1n+型不純物領域4から第2n+型不純物領域5までの、主にp型半導体層2の主面に水平方向に電流経路が形成される、横型の双方向pn接合ダイオードDiのチップが構成される。
【0048】
双方向pn接合ダイオードDiのチップは、例えば、支持基板26を用いたチップサイズパッケージとして実装される。
【0049】
支持基板26は例えばセラミック基板などの絶縁性基板であり、その一主面に例えば導電ペーストの印刷、焼結した金メッキ層などによって第1導電パターン21、第2導電パターン22、第3導電パターン23が設けられる。たとえば、厚膜印刷を使用してメッキパターンを形成することにより、スタンピングによる打ち抜きフレーム(リードフレーム)にチップを実装する場合と比較して、パッケージの小型化に寄与できる。第3導電パターン23上に双方向pn接合ダイオードDiが固着材(不図示)にて固着され、第1電極6が、金属細線24aなどの接続手段によって、第1導電パターン21と接続され、第2電極7は、金属細線24bなどの接続手段によって、第2導電パターン22と接続される。
【0050】
支持基板26には、第1導電パターン21、第2導電パターン22に対応した位置にスルーホールTHが設けられている。スルーホールTHは支持基板26を貫通し、内部はタングステンなどの導電材料によって埋設されている。
【0051】
支持基板26の他の主面には、第1導電パターン21、第2導電パターン22と同様の方法によって、これらに対応する外部接続電極27、28が設けられる。
【0052】
外部接続電極27、28はそれぞれ、入力端子IN、接地端子GNDとなり、第1導電パターン21と外部接続電極27はスルーホールTHを介して接続され、第2導電パターン22と接地端子GNDはスルーホールTHを介して接続される。
【0053】
また、双方向pn接合ダイオードDi(p+型半導体基板)1の裏面は、第3導電パターン23と固着材にて固着されるが、チップの裏面は電極として機能しないため固着材は導電性固着材であっても絶縁性固着材のいずれであってもよい。
【0054】
双方向pn接合ダイオードDiのチップ、金属細線24a、24bおよび支持基板26は、樹脂層25により一体で被覆、支持されて保護装置10が構成される。樹脂層25はパッケージ外形を構成する。樹脂層25の材料としては、トランスファーモールドにより形成される熱硬化性樹脂や、インジェクションモールドにより形成される熱可塑性樹脂を採用することができる。また、樹脂層25は放熱性を向上させるために粒子状または繊維状のフィラーが混入されても良い。パッケージの周囲4側面は、樹脂層25と支持基板26の切断面で形成され、パッケージの上面は平坦化した樹脂層25の表面で形成され、パッケージの下面は支持基板26の裏面側で形成される。
【0055】
なおパッケージ表面側は全面樹脂層25であり、裏面側の支持基板26の外部接続電極27、28、左右(上下)対称となるパターンで配置されており、電極の極性判別が困難になるので、樹脂層25の表面側に凹部を形成するか印刷するなどして、極性を表示するマークを刻印するのが好ましい。
【0056】
このように保護装置10は、いずれも同条件で形成された、第1ダイオードD1と第2ダイオードD2とを直列接続した横方向の双方向pn接合ダイオードDiにより構成される(図1(B))。
【0057】
本実施形態では、例えば第1ダイオードD1と同じ形成条件の1つのpn接合ダイオードのみを用いた保護装置と比較して、保護装置10の部品容量を半減することができる。すなわち、部品容量は保護装置10全体の容量(合計容量)であり、第1ダイオードD1の接合容量(第1pn接合J1の接合容量)C1、および第2ダイオードD2の接合容量(第2pn接合J2の接合容量)C2の直列接続によって、合計容量はC1×C2/(C1+C2)となる。つまりそれぞれの接合容量C1、C2が同等な場合には、合計容量を接合容量C1(C2)の2分の1の値にすることができ、第1ダイオードD1(第2ダイオードD2)の接合面積と比較して合計容量を小さくすることができる。
【0058】
一方で、ESD破壊耐量はpn接合面積が大きく影響するが、保護装置10が第1ダイオードD1の第1pn接合J1、および第2ダイオードD2の第2pn接合J2を有している場合であっても、これらの接合面積が同等であればESD破壊耐量は半減することはなく、それぞれのpn接合が有するESD破壊耐量と同等を維持できる。従って、保護装置10は、第1ダイオードD1と同じ条件で形成された1つのpn接合ダイオードのみを用いた保護装置と比較して、ESD破壊耐量を同等に維持しつつ、部品容量を半減できる。
【0059】
図2は、本実施形態の保護装置10の一例を説明するための平面図であり、図2(A)が全体の平面図、図2(B)が保護装置10を構成する双方向pn接合ダイオードDiの平面図である。尚、図1(A)は図2(A)のa−a線の断面に相当する。
【0060】
図2(A)を参照して、双方向pn接合ダイオードDiのp型半導体層2は、ここでは不図示のp+型半導体基板の上に設けられる。一例としてp型半導体層2は、エピタキシャル層である。
【0061】
第1n+型不純物領域4および第2n+型不純物領域5は、p型半導体層2の表面に互いに離間して設けられる。いずれも、一例としてドーズ量が1E16cm−2〜2E16cm−2程度の高濃度のn型不純物(例えばリン(P))のイオン注入及び拡散によって形成され、第1n+型不純物領域4および第2n+型不純物領域5の対向する側面(対向面)間の距離Lは、140μm以上離間される。尚、チップ端部となるp型半導体層2の外周端にも、高濃度のn+型不純物領域9が設けられる。
【0062】
p型半導体層2の表面にはここでは不図示の絶縁膜が設けられ、第1n+型不純物領域4および第2n+型不純物領域5上が破線の如く開口される。第1型不純物領域4および第2n+型不純物領域5上に、これと略重畳する大きさの第1電極6および第2電極7が設けられる。第1電極6および第2電極7はそれぞれ、第1n+型不純物領域4および第2n+型不純物領域5とコンタクトする。
【0063】
双方向pn接合ダイオードDiは例えば支持基板26の中央部分に設けた第3導電パターン23上に実装される。双方向pn接合ダイオードDiを挟んで支持基板26の例えば短辺側の両端には、短辺に沿って、矩形状の第1導電パターン21、第2導電パターン22が設けられる。第1導電パターン21、第2導電パターン22はそれぞれ、近接する第1電極6、第2電極7と金属細線24a、24aなどの接続手段によって電気的に接続される。
【0064】
樹脂層25は、双方向pn接合ダイオードDi、接続手段24a、24b、支持基板26を一括して被覆してパッケージ外形を構成する。平面視における樹脂層25の4側面は、支持基板26の4側面と一致する。
【0065】
図2(B)を参照して、双方向pn接合ダイオードDiについて更に説明する。尚、図2(B)では第1電極6、第2電極7を省略している。
【0066】
第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5は、平面視において矩形状のp型半導体層2(p+型半導体基板に同じ)の一の対角線に沿って配置され、140μm以上の距離Lで離間される。より詳細には、第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5は、平面視において、正四角形の4つの角部rをそれぞれ同じ曲率で湾曲した形状(以下角丸四角形状と称する)であり、互いに角丸四角形状の一の辺(直線部e)が略平行で対向するように、p型半導体層2の対角線に沿って配置される。そして、対向する一の辺間の距離Lが140μm以上離間される。
【0067】
第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15はそれぞれ、ここでは一点鎖線で示すが、実際の平面視においては、第1n+型不純物領域4、第2n+型不純物領域5下方に完全に隠れている。
【0068】
このように保護装置10は、p型半導体層2表面に、第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15のパターンが形成されたマスクを介してp型不純物をイオン注入し、第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5のパターンが形成されたマスクを介してn型不純物をイオン注入することによって、2つのpn接合を形成できる。従って、pn接合を基板の厚み方向に積層する縦型の双方向pn接合ダイオード(図6(A))の製造工程と比較してマスク枚数を削減でき、製造工程の短縮化が図れる。また、2つのダイオードのチップを組立工程における表面電極同士の接続によって双方向pn接合ダイオード(図6(B))とする構成と比較して、ワイヤーボンドの精度やボンディング強度等についての特別な管理が不要となる。そしてこれらによって、保護装置10の製品コストを削減することができる。
【0069】
更に本実施形態では、第1n+型不純物領域4、第2n+型不純物領域5と第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15のそれぞれの不純物濃度や形状を適宜選択することにより、低い部品容量と高いESD破壊耐量が得られ、さらに耐圧の制御も容易となる。この点について図1(A)および図2(B)を参照して、以下に説明する。
【0070】
保護装置10の部品容量は、第1ダイオードD1と第2ダイオードD2の接合容量であるので、これらを直接接続した合計容量が特性を満足する所望の値となるように、第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5の不純物濃度、およびこれらの面積と深さ(第1pn接合J1と第2pn接合J2のpn接合面積)、更に第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15の不純物濃度が適宜選択される。
【0071】
まず、第1p++型不純物領域14は第1n+型不純物領域4のイオン注入以前に、ドーズ量が例えば1E19cm−2〜1E20cm−2のp型不純物(例えばボロン(B))をイオン注入し、一例として平面視における面積を例えば1500μm〜2500μm程度、p型半導体層2の表面から3μm〜4μm程度の深さ(第1n+型不純物領域4底面と接する深さ)に拡散して形成する。尚、第2p++型不純物領域15の形成条件(平面視における形状を含む)は、第1p++型不純物領域14と同様であり、ここでの記載は省略する。
【0072】
そして第1n+型不純物領域4は、ドーズ量が1E16cm−2〜2E16cm−2のn型不純物(例えばリン(P))をイオン注入及び拡散して、平面視における面積を例えば5000μm程度、深さを2μm〜3μm程度に形成する。尚、第2n+型不純物領域5の形成条件(平面視における形状を含む)は、第1n+型不純物領域4と同様であり、記載は省略する。
【0073】
これにより、第1ダイオードD1と第2ダイオードD2の合計容量、すなわち保護装置10の部品容量は、2pF〜3pF程度となる。
【0074】
次にESD破壊耐量と、第1pn接合J1および第2pn接合J2との関係を説明する。第1pn接合J1および第2pn接合J2のpn接合面積、およびそれぞれの不純物濃度は、ESD破壊耐量を決定する要因ともなり、これらの値は上述の通りである。
【0075】
本実施形態ではこれに加えて、第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5の平面視における形状、および離間して配置されるこれらの距離Lを適切に選択することにより、高いESD破壊耐量を実現できる。
【0076】
図2(B)を参照して具体的に説明すると、第1n+型不純物領域4(第2n+型不純物領域5)は、例えば角部rの曲率が5μm〜15μm程度、四辺(直線部e)の長さがそれぞれ60μm〜80μm程度の角丸四角形状であり、平面視において1つ辺(直線部e)が平行するように対向配置される。第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5の対向する辺(対向面)間の距離Lは140μm以上である。距離Lを140μm以上離間することにより、浅いpn接合の横方向の双方向pn接合ダイオードDiであっても十分なESD破壊耐量を得られる。具体的には上記の通り部品容量が2pF〜3pF程度と低い保護装置10でありながら、約11kV〜13kVのESD破壊耐量を実現できる。
【0077】
尚、実験によると、第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5の距離Lが140μmを越えると、ESD破壊耐量はほぼ一定となることが判った。第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5の距離Lの拡大は、チップサイズの拡大に直結する。従って、ESD破壊耐量が変わらないのであれば、その距離Lは最小値である140μm程度で十分である。
【0078】
更に本実施形態では、第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5を、平面視においてチップの一の対角線に沿って配置する。より詳細には、第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5の各辺(直線部e)がチップの対角線と略平行になるように配置する。これにより、所定の距離Lを確保した場合であっても、チップサイズの増大を回避できる。
【0079】
また、第1n+型不純物領域4の形状を角部rを湾曲させた角丸四角形状とすることで、角部rの電界集中を回避し、ESD破壊耐量を向上できる。角部rの電界集中を回避するには、一般的には平面視において円形状が最も有効であるが、本実施形態では実験により、pn接合面積だけでなく、第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5の対向面の面積も大きく確保することがESD破壊耐量の向上に有効であることが判った。第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5を角丸四角形状として1つの辺(直線部e)同士を対向配置させることで、両者を円形状にした場合と比較して、対向面の面積を確保できる。
【0080】
同様の理由から、第1p++型不純物領域14および第2p++型不純物領域15の形状も、角丸四角形状とし、平面視において1つ辺が平行するように第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域5の直下に対向配置する。
【0081】
再び図1(A)を参照して、第1n+型不純物領域4(第2n+型不純物領域5)は、表面の不純物濃度が最も高く、深さ方向に低くなる不純物濃度勾配を有しており、これによっても、ESD破壊耐量の向上に寄与できる。一例として第1n+型不純物領域4は、n型不純物をイオン注入した後、短い熱処理時間(例えば90分程度)で拡散して形成される。
【0082】
更に、保護装置10の耐圧(逆方向降伏電圧)は、第1n+型不純物領域4と第2n+型不純物領域4が第1pn接合J1、第2pn接合J2を形成するp型領域(p型半導体層2、第1p++型不純物領域14および第2p++型不純物領域15)の不純物濃度によって決定される。本実施形態では、p+型半導体基板1上に第1p++型不純物領域14および第2p++型不純物領域15より低濃度のp型半導体層2を設けることにより、耐圧の制御が容易となる。
【0083】
市販されている一般的なp+型半導体基板1は、そのままでは不純物濃度が高すぎるため、本実施形態では、p+型半導体基板1の上に、低濃度のp型半導体層2を設ける。そして、p型半導体層2に所望の不純物濃度のp型不純物を注入及び拡散して、第1p++型不純物領域14および第2p++型不純物領域15を設ける。
【0084】
第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15より十分に低濃度(例えば不純物濃度が1E16cm−3〜2E16cm−3程度)のp型半導体層2をp+型半導体基板1上に設けることにより、p型半導体層2以上の不純物濃度であれば自由に調節して第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15を形成できる。すなわち、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2を構成し、耐圧を決定する第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15の選択できる不純物濃度の許容範囲が広がる。特に、図6(A)の如く縦型に複数のpn接合を形成する場合と比較して、不純物濃度の制御が容易であり、耐圧設計の自由度も大きくなる。更に、p+型半導体基板1とp型半導体層2の基板を共通として、第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15、第1n+型不純物領域4および第2n+型不純物領域5の不純物濃度を変更させることにより、シリーズ化した複数の耐圧の製品を低コストで揃えることができるので、汎用性が向上する。
【0085】
尚、第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15の不純物濃度はESD破壊耐量にも影響するので、この制御についても、同様に容易であるといえる。
【0086】
特に、本実施形態では、双方向ダイオードDiの耐圧が5V以下のいわゆる低耐圧の保護装置10であっても、リーク電流を低減し、逆方向の電流IR−電圧VR特性における定電圧特性を維持でき、ESD破壊耐量を高めることができる。
【0087】
図3を参照して説明する。図3(A)は、逆方向の電流IR−電圧VR特性を示す図であり、破線がリーク電流が大きく、定電圧特性を有さない、いわゆるソフト波形の特性であり、実線が、リーク電流が小さく、定電圧特性を有する、いわゆるハード波形の特性である。図3(B)は、比較のための構造を示す図であり、全面にp+型不純物層3を設け、その表面に第1n+型不純物領域4および第2n+型不純物領域5を設けた場合の第1ダイオードD1’、第2ダイオードD2’付近の拡大断面図である。図3(C)は、本実施形態の拡大断面図である。
【0088】
図3(A)を参照して、双方向ダイオードDiの耐圧を決定するのは、第1n+型不純物領域4、第2n+型不純物領域5とpn接合を形成するp型領域の不純物濃度である。そして、保護装置をセットに実装する場合、セットで流れる所定の逆方向電流IRの範囲(たとえばIR1〜IR2)において、逆方向降伏電圧VR1において定電圧となる特性でないと、セットが動作しないなどの問題が発生する。従って、必要な耐圧(逆方向降伏電圧VR1)において、リーク電流が小さくなるように、すなわち逆方向の電流IR−電圧VR特性がいわゆるハード波形を維持するように、上記のp型領域の不純物濃度を選択する必要がある。
【0089】
図3(B)の如く、第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15に代えて全面にp+型不純物層3を設けた場合、双方向ダイオードDi’の耐圧を決定するのは、p+型不純物層3の不純物濃度である。一例として、p+型不純物層3の不純物濃度が、部品容量やESD破壊耐量も考慮して例えば5E18cm−3〜6E18cm−3程度の場合、リーク電流が小さく定電圧動作が可能な(ハード波形が維持できる)最小の耐圧は例えば、6Vとなる。
【0090】
この構造で、耐圧を例えば5V以下と低くする場合には、p+型不純物層3の不純物濃度を高めて、空乏層50の広がりを抑制する必要がある。しかし、p+型不純物層3の不純物濃度を高めると、pn接合J1’、J2’全体が高濃度接合となる。すなわち、高濃度のpn接合面積が増加するので、耐圧(VR1)が5Vで、図3(A)の実線の波形となるように不純物濃度を調整しても、実際にはリーク電流が増え、破線の如く、リーク電流の波形がいわゆるソフト波形となり、セットで流れる逆方向電流IRの範囲において定電圧動作できなくなる問題がある。
【0091】
そこで、本実施形態では図3(C)の如く、第1n+型不純物領域4、第2n+型不純物領域5底面のみとそれぞれ接し、底面より小さい面積の、第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15を設ける。高濃度のpn接合J11、J12によって空乏層の広がりを抑制し、耐圧の低減が可能となる。そして、高濃度のpn接合J11、J12のpn接合面積を、第1n+型不純物領域4、第2n+型不純物領域5の底面より小さくすることで、高濃度のpn接合J11、J12の接合面積の増加を防ぎ、リーク電流の増加を抑制できる。
【0092】
特に、横方向に動作する双方向pn接合ダイオードDiであるので、第1n+型不純物領域4、第2n+型不純物領域5のそれぞれの側面は、第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15を設けず、p型半導体層2と低濃度のpn接合J12、J22を形成させることによって、第1n+型不純物領域4の側面から第2n+型不純物領域5の側面に流れる逆方向電流のリーク電流を低減できる。
【0093】
つまり、第1ダイオードD1と第2ダイオードD2のp型領域の不純物濃度を高めた低い耐圧の双方向pn接合ダイオードDiでありながら、図3(A)の実線の如く、ハード波形を維持できる。
【0094】
また、静電気はキャリアが多いほど分散するため、高濃度のpn接合J11、J12において、ESD破壊耐量を向上させることができる。
【0095】
尚、上記の本実施形態では支持基板を用いたチップサイズパッケージに実装した場合を例に説明した。しかし、双方向pn接合ダイオードの実装方法葉これに限らず、例えば、リードフレームを用いて実装してもよい。
【0096】
図示を省略して説明すると、銅などの導電材料の打ち抜き(スタンピング)によって、リードとアイランドが形成されたリードフレームを準備し、アイランドに双方向pn接合ダイオードを固着する。第1電極と第2電極を金属細線などによってそれぞれ、入力端子となるリードおよび接地端子となるリードを接続する。各リードの一部、アイランドおよびチップを樹脂層にて一体で被覆・支持する。リードの他端は、樹脂層より外部に導出する。これにより、保護装置が構成される。
【0097】
図4および図5は、保護装置10の接続例の一例を示す概要図であり、保護装置10をUSBコネクタ31の信号ラインに接続して用いる場合を示している。
【0098】
図4(A)(B)は、いずれもホスト端末35とクライアント端末36とがケーブル30とUSBコネクタ31を介して接続する場合であって、USBコネクタ31をホスト端末35側のUSBソケット32に接続する場合の保護装置10の接続例を示している。図4(A)は、ホスト端末35が例えばコンピュータであり、クライアント端末36が例えばプリンタやイメージスキャナ、外付型ハードディスクなどの周辺機器の場合である。また、図4(B)は、ホスト端末35に相当する機器が携帯電話などの携帯機器であり、クライアント端末36に相当する機器がその充電器の場合である。
【0099】
図4(A)(B)を参照して、USB規格のインターフェイスでは、ホスト端末35側に、USBコネクタ31を制御するためのIC(以下USBコントローラ33)を備えている。
【0100】
USBコネクタ31が挿抜されるUSBソケット32は、例えばホスト端末35のマザーボード(不図示)などに設けられる。マザーボードには信号ラインとなる配線38が設けられ、配線38はUSBコネクタ31を制御するUSBコントローラ33に接続する。
【0101】
そして、利用者がUSBコネクタ31に接触することによって利用者に帯電した静電気が配線38を介してUSBコントローラ33に印加されることを防止するため、USBコネクタ31とUSBコントローラ33間のデータ信号用の信号ライン(配線38)と接地間に保護装置10が接続される。
【0102】
詳細には、USBコネクタ31は例えば、電源供給のためのVbus信号用ピン、+データ(D+)信号用ピン、−データ(D−)信号用ピン、GND信号用ピンの4つを有しており、保護装置10は、USBソケット32とUSBコントローラ33の間のD+信号用ピンが接続する配線38と接地間、およびD−信号用ピンが接続する配線38と接地間にそれぞれ(またはいずれかに)接続される。
【0103】
尚、図クライアント端末36にも保護装置10を接続してもよい。例えば、図4(A)のように、クライアント端末36側となるケーブル30の他端にもUSBコネクタ31’が設けられ、クライアント端末36においてもUSBコントローラ33’を有する場合には、クライアント端末36のUSBソケット32’(USBコネクタ31’)とUSBコントローラ33’の間のD+信号用ピン、D−信号用ピンに接続する配線38’と接地間に保護装置10を接続する。
【0104】
更に、図5はUSBメモリ40に保護装置10を接続する場合を示している。USBメモリ40は、USBコネクタ31を有する外部補助記憶装置(フラッシュメモリ)であって、一般的にはUSBコネクタ31がケーブルを介さずに、フラッシュメモリチップが収納される筐体41に直接設けられているものをいう。
【0105】
詳細には、マザーボード42に、フラッシュメモリチップ43やUSBコントローラ33などが集積化され、筐体41内に収められる。筐体41の一端はUSBコネクタ31が設けられ、USBコネクタ31の4つのピン(Vbus信号用ピン、D+信号用ピン、D−信号用ピン、GND信号用ピン)が配線38を介して、USBコントローラ33に接続する。
【0106】
そして、保護装置10はD+信号用ピンが接続する配線38と接地間、およびD−信号用ピンが接続する配線38と接地間にそれぞれ(またはいずれかに)接続される。
【0107】
図4および図5に示したようなUSB規格のインターフェイスでは、対をなす2本の信号線に逆位相の信号(D+信号、D−信号)を送る差動伝送方式を用いている。そして、これらの信号波形であるアイパターンの形状(波形の振幅や周期)は、データ転送速度ごとに所定の許容範囲内に収まるパターンとなるよう規格で定められている。すなわち、データの信号ラインに付加される容量の増加などで、アイパターンの波形に歪み(なまり)が生じるとデータ転送エラーが生じるため、波形のなまりが許容範囲を超える違反ゾーンを定め、当該違反ゾーンにかからないアイパターンの波形にするよう規格されている。
【0108】
違反ゾーンは、データ転送速度が高くなるほど小さく(シビアに)なり、これに伴いデータの信号ライン上に許容される容量も上限が厳しくなっている。
【0109】
またUSB規格のインターフェイスについては、IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)の規格に基づき、ESD破壊耐量も定められている。
【0110】
このように、USB規格のインターフェイスのESD破壊対策の保護装置として例えばpn接合ダイオードを採用する場合、単にp+型半導体基板にn型不純物領域を設けてpn接合ダイオードを構成するだけではこの条件を満たす保護装置を得ることはできない。すなわち、例えば一般的に市販されているp+型半導体基板の不純物濃度は高く、これにn型不純物領域を設けて構造上pn接合ダイオードを形成しても、例えば部品容量を5pF以下にはできない。つまり、USBインターフェイスの保護装置となる(双方向)pn接合ダイオードには、そのために要求される所定の条件を満たすよう、適切な条件で形成されなければならない。
【0111】
本実施形態では、USB規格インターフェイスに代表される、いわゆるホットスワップの機能を有するインターフェイスを静電破壊から保護する保護装置において、所望のESD破壊耐量を確保しつつ、データ転送速度の高速化に伴って要求される低容量化を実現できるものである。
【0112】
すなわち、保護装置10(双方向pn接合ダイオードDi)を構成する第1n+型不純物領域4、第2n型不純物領域5の形状とこれらを離間する距離L、およびこれらの不純物濃度、更には第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15の不純物濃度を、上述の実施形態で説明した条件で形成することにより、当該インターフェイスの保護装置として許容される部品容量と十分なESD破壊耐量を得ることができる。
【0113】
具体的には、USB2.0規格のハイスピードモード(最大データ転送速度:480Mbps)に用いる保護装置では、部品容量が5pF(望ましくは3pF)以下、ESD破壊耐量が8kV以上と決まっているところ、本実施形態の保護装置10は、2pF〜3pFの部品容量と11kV〜13kV程度のESD破壊耐量を実現できる。
【0114】
更に、2つのpn接合を横方向に形成することで、製造工程の複雑化、煩雑化を回避し、低コスト化も実現でき、第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15の不純物濃度の制御が容易なので耐圧制御も容易となる。
【0115】
尚、双方向pn接合ダイオードDiの形成条件(第1n+型不純物領域4、第2n型不純物領域5の形状とこれらを離間する距離Lと不純物濃度、および、第1p++型不純物領域14、第2p++型不純物領域15の形状と不純物濃度)を適宜選択することにより、上記の例に限らず、ロースピードモード(最大データ転送速度:1.5Mbps)、フルスピードモード(最大データ転送速度:12Mbps)、USB3.0規格のスーパースピードモード(最大データ転送速度:5Gbps)などの保護装置10としても採用可能である。
【0116】
更に、USB規格のインターフェイスに採用する場合を例に説明したが、これに限らず、例えばHDMI(High Definition Multimedia Interface)規格など、他の規格のインターフェイスにも採用できる。
【符号の説明】
【0117】
1 p+型半導体基板
2 p型半導体層
3 p+型不純物層
4 第1n+型不純物領域
5 第2n+型不純物領域
6 第1電極
7 第2電極
10 保護装置
14 第1p++型不純物領域
15 第2p++型不純物領域
21 第1リード
22 第2リード
31 USBコネクタ
33 USBコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一導電型半導体基板と、
該一導電型半導体基板の一主面上に設けられた一導電型半導体層と、
該一導電型半導体層の表面に互いに離間して設けられた第1逆導電型不純物領域および第2逆導電型不純物領域と、
該第1逆導電型不純物領域および第2逆導電型不純物領域の底面より小さく、それぞれの該底面に接して設けられた、高濃度の第1一導電型不純物領域および高濃度の第2一導電型不純物領域と、
前記第1逆導電型不純物領域とコンタクトし、入力端子に電気的に接続する第1電極と、
前記第2逆導電型不純物領域にコンタクトし、接地端子に電気的に接続する第2電極と、
を具備することを特徴とする保護装置。
【請求項2】
該第1逆導電型不純物領域および第2逆導電型不純物領域の不純物濃度はそれぞれ前記一導電型半導体層より高濃度であることを特徴とする請求項1に記載の保護装置。
【請求項3】
該第1逆導電型不純物領域および第2逆導電型不純物領域の不純物濃度はそれぞれ1E19cm−3〜1E20cm−3であることを特徴とする請求項2に記載の保護装置。
【請求項4】
前記第1逆導電型不純物領域と前記第2逆導電型不純物領域は、前記一導電型半導体基板の一の対角線に沿って配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の保護装置。
【請求項5】
前記第1逆導電型不純物領域と前記第2逆導電型不純物領域は、140μm以上の距離で離間されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の保護装置。
【請求項6】
平面視において、前記第1逆導電型不純物領域と前記第2逆導電型不純物領域は、角部が湾曲した四角形状であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の保護装置。
【請求項7】
前記前記第1逆導電型不純物領域と前記第2逆導電型不純物領域は、互いに前記四角形状の一の辺が対向するように配置されることを特徴とする請求項6に記載の保護装置。
【請求項8】
前記第1逆導電型不純物領域と前記第2逆導電型不純物領域は、表面の不純物濃度が最も高く、深さ方向に沿って低くなる不純物濃度勾配を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の保護装置。
【請求項9】
前記第1電極が電気的に接続する第1の導電部材と、前記第2電極が電気的に接続する第2の導電部材と、これらを被覆して支持する樹脂層とを具備することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−59978(P2012−59978A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202646(P2010−202646)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】