説明

信号処理回路

【課題】 既存のハードウェア構成を極力変更せず、ON抵抗の切替後の変動を迅速に収束させることが可能な信号処理回路を提供する。
【解決手段】 本発明の代表的な構成は、波形発生器または波形測定器に適用される信号処理回路100であって、信号経路の切替を行う半導体リレー120a〜120lと、信号経路上の半導体リレー120a〜120lに、波形発生時または波形測定時に流れる電流よりも大きな電流をその直前に一時的に流す制御部142と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形発生器または波形測定器に適用される信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
被試験デバイス(DUT:Device under test)の試験等に利用される波形発生器や波形測定器には、多くの機能が凝縮されている。各機能を切り替える(実行する)ために、これらの内部には信号経路の切替を行うリレーが数多く搭載されている。昨今、1)高い直流(DC: Direct Current)の精度、2)高い信頼性、3)小型化、高密度実装による多機能化、4)高速化、が要求されているため、リレーとしては一般に半導体リレーが用いられている。
【0003】
半導体リレーは、メカニカルリレーに対し、消費電力が小さく、寿命が長く、小型化が可能であり、高速に切替が可能であるという利点がある。しかし、半導体リレーの場合には、その通電時に数Ω〜数十Ωという比較的大きな直列抵抗(以下、「ON抵抗」と称する)が発生する問題がある。特に、特許文献1の段落0012〜0015、図4等に記載されているように、ON抵抗は半導体リレーの温度に基づき変動し、切替後すぐには安定(収束)しない。
【0004】
特許文献1の技術では、ON抵抗の変動を防ぐために、第1の発光素子が封入されたパッケージと同じパッケージに、第1の発光素子と相対的に動作し同程度に発熱する第2の発光素子を封入する。半導体リレーのOFF時において第2の発光素子にて電力が消費され(第2の発光素子が自己発熱し)パッケージの温度が一定に保たれるので、半導体リレーON時におけるON抵抗の変動を防止できると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−200141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術のように、半導体リレーのON抵抗が一定であれば、発生する電圧降下を補正することで、その影響を排除することができる。しかし、上記特許文献1の技術では、半導体リレーのON時、OFF時どちらでも電力を消費し続ける構成のため、電力を無駄にする。また、素子(第2の発光素子等)が追加されるため、小型化に逆行することになりかねない。加えて、ハードウェア数が増加するため、信頼性の低下にもつながるおそれがある。
【0007】
一方、波形発生器または波形測定器において、半導体リレーのON抵抗が一定でなければ、電圧降下を補正することができずその精度に影響を与える。特に、近年の機器の高機能化により内部の信号経路の分岐は増える一方であり、1つの信号経路上に複数(例えば10個以上)の半導体リレーが存在する。ON抵抗の変動は信号経路上の半導体リレーの個数に比例することになるため、到底無視することができない。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、既存のハードウェア構成を極力変更せず、ON抵抗の切替後の変動を解消し、被試験デバイスの試験を高精度且つ短時間で実行可能な信号処理回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の代表的な構成は、波形発生器または波形測定器に適用される信号処理回路であって、信号経路の切替を行う半導体リレーと、信号経路上の半導体リレーに、波形発生時または波形測定時に流れる電流よりも大きな電流をその直前に一時的に流す制御部と、を含むことを特徴とする。
【0010】
かかる構成では、一時的に流す大きな電流によって、事前に半導体リレーを瞬間的に自己発熱させることができる。これにより、既存のハードウェア構成を極力変更せずに、信号経路切替後のON抵抗の変動を極めて迅速に収束させることができる。そのため、電力の無駄、小型化への逆行、信頼性の低下のおそれといった不具合を生じることなく、被試験デバイスの試験を高精度且つ短時間で実行することができる。
【0011】
当該信号処理回路は、外部回路に対する入出力を開閉する入出力リレーと、グランドに対して開閉するグランド開閉リレーとをさらに含み、制御部は、信号経路の切替を行う半導体リレーに大きな電流を流す際には入出力リレーをOFFに、グランド開閉リレーをONにし、波形発生時または波形測定時には入出力リレーをONに、グランド開閉リレーをOFFにすると好ましい。
【0012】
これにより、DUTなどの外部回路に想定外の大きな電流が流れることを防止し、外部回路に誤動作などを生じるおそれを防止することができる。ただし、外部回路側に、この波形発生器または波形測定器に対する入出力リレーが備えられている場合には、そちらを開閉させてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、既存のハードウェア構成を極力変更せず、ON抵抗の切替後の変動を迅速に収束させることが可能な信号処理回路を提供可能である。これにより、不具合を生じることなく、被試験デバイスの試験を高精度且つ短時間で実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる信号処理回路を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す半導体リレーの内部構造を例示する図である。
【図3】図1に示す半導体リレーのON抵抗について説明する図である。
【図4】図3のON抵抗の温度変動特性について説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施形態にかかる信号処理回路の制御方式を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態にかかる信号処理回路の効果を説明する図である。
【図7】本発明の第1の実施形態にかかる信号処理回路の応用例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態にかかる信号処理回路を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態にかかる信号処理回路100を模式的に示す図である。第1実施形態の信号処理回路100は所定の波形を発生する波形発生器に適用されている。図1(a)は指定された信号経路における波形発生時の状態を示す図であり、図1(b)は図1(a)の波形発生時の直前の状態を示す図である。
【0017】
図1(a)、(b)に示すように信号処理回路100は、コアにDAC(Digital Analog Converter)110を有し、試験信号を発生する。かかる試験信号は、ゲインアンプ112a〜112cで所望の信号振幅に調整され、ローパスフィルタ114a〜114cで不要な帯域を制限された後に、シングルエンド・差動変換部116を経て信号出力部118より外部回路に出力される。
【0018】
信号処理回路100には、信号経路の切替を行う半導体リレー120a〜120lが多数搭載される。また、信号処理回路100は、信号経路の切替を行う半導体リレー120a〜120lに加えて、外部回路に対する入出力を開閉する半導体リレーである入出力リレー122と、グランドに対して開閉する半導体リレーであるグランド開閉リレー124aとを有する。ここでは、グランド開閉リレー124aは、他チャンネルへの割込経路144を介してグランドへと接続するものとする。
【0019】
上記半導体リレー120a〜120lは、ユーザの操作入力等により指定された信号経路にしたがって、ON、OFF(通電、非通電)が切り替えられる。一般に、波形発生器(信号処理回路100)として多くの機能が搭載される程、かかる半導体リレー120a〜120lの搭載数は増大する。図中では、理解を容易にするためにこれらを簡略化して図示しているが、実際にはさらに多くの半導体リレー(半導体用テスタでは1台当たり1万個〜2万個)が搭載される。ゲインアンプ112a〜112cやローパスフィルタ114a〜114cもそれぞれ3つずつしか図示していないが、実際にはさらに多くが搭載される。
【0020】
図2は、図1に示す半導体リレー120aの内部構造を例示する図である。ここでは、代表して半導体リレー120aを挙げて説明するが、同様の説明が他の半導体リレー120b〜120lにも適用される。
【0021】
図2に示すように、半導体リレー120aは、例えば、PhotoMOSリレーである。かかるPhotoMOSリレーでは、アノード126、カソード128間に電流を流し発光素子130(LED)を発光させることで、光電変換素子のフォトダイオードアレイ132両端に光起電力を生じさせる。かかる光起電力により、MOS−FET134、136をONにして、ドレイン138、140間を通電状態へと移行する。
【0022】
上述した半導体リレー120aは、メカニカルリレーに対し、消費電力が小さく、有寿命でなく、小型化が可能であり、高速に切替が可能な利点がある。しかし、半導体リレー120aの場合には、その通電時に数Ω〜数十Ωという比較的大きなON抵抗が発生する問題がある。
【0023】
図3は、半導体リレー120aのON抵抗について説明する図である。図3(a)では、50Ω伝送路に半導体リレー120aを使用した場合を例示しており、図3(b)では図3(a)の等価回路を図示している。
【0024】
図3(a)、(b)に例示するように、半導体リレー120aは3.5Ω+温度係数(ここでは理解を容易にするために、0.03Ω/℃として説明する)のON抵抗を有する。0.03℃Ω/℃の場合、50Ωに対して0.06%/℃の誤差を生む。半導体リレー120aのON抵抗はその温度に基づき変動し、切替後すぐには安定(収束)しない。
【0025】
図4は、図3のON抵抗(3.5Ω+0.03Ω/℃)の温度変動特性について説明する図であり、図3の半導体リレー120aに10mAの電流を流したときのON抵抗の変動を図示している。図4に示すように、ここではON抵抗は、最初(OFF→ONに切替後)数百ミリ秒で急速(直線的)に上昇し、それから緩やかに上昇して約30秒で収束する。
【0026】
図4では、1つの半導体リレー120aのON抵抗の変動を図示したが、実際の1つの信号経路は複数の半導体リレー120a〜120lを切替えて(組み合わせて)形成される。ON抵抗の変動は信号経路上の半導体リレー120a〜120lの個数に比例して大きくなる。
【0027】
ON抵抗が仮に一定であれば、これにより発生する電圧降下が一定となるので補正してその影響を排除することが可能である。しかし、切替後から約30秒の間はON抵抗が時間とともに不規則に変動する(単純な変動ではない)ため、補正により除去することが困難である。波形発生器(波形測定器)では高精度な電圧精度が求められており、大きな電圧誤差は致命的となる。その一方で、波形発生器(波形測定器)といえどもON抵抗の変動が収束するのを待つために、約30秒の待ち時間を設定する事は現実的ではない。
【0028】
再び、図1を参照する。そこで、第1実施形態では、DAC110、半導体リレー120a〜120l、入出力リレー122、グランド開閉リレー124a等を制御する制御部142が、波形発生命令をトリガーとして、所定の制御方式を実行する。制御部142は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により構成される。
【0029】
図5は、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理回路100の制御方式を説明するフローチャートである。以下、図5のフローチャートに則り、かかる制御方式について説明する。制御部142は、ユーザの操作入力等により発せられる波形発生命令を検出する。波形発生命令が検出されない場合には(ステップS150No)、適宜その監視を続ける。
【0030】
波形発生命令を検出した場合には(ステップS150Yes)、制御部142は指定された信号経路の半導体リレー120b、120e、120i、120lをONにする。また、入出力リレー122をOFFに、グランド開閉リレー124aをONにする(ステップS152)。図1(b)に示されるこの波形発生時の直前の経路を「直前の経路Rou2」とする。
【0031】
続いて、制御部142は、DAC110を制御して、DAC110から一時的に(数ミリ秒〜数十ミリ秒の間)信号経路上の半導体リレー120b、120e、120i、120lに大きな電流を流す(ステップS154)。この大きな電流は、グランド開閉リレー124a、他チャンネルへの割込経路144を介してグランドへと流れる。この大きな電流が入出力リレー122を通過して外部回路に流れることはなく、外部回路に誤動作などを生じるおそれはない。
【0032】
その後、制御部142は、大きな電流を停止し、入出力リレー122をONに、グランド開閉リレー124aをOFFにする(ステップS156)。これにより、図1(a)に示される波形発生時の経路となる(この経路を「指定された信号経路Rou1」とする)。ステップS154の大きな電流の停止を先に行い、ステップS156の切替を後に行って電流が外部に漏れるのを防ぐ。
【0033】
上述した過程を経て、制御部142は、DAC110に試験信号を出力させ、これを信号出力部118から外部回路へと出力する。すなわち、ユーザの操作入力等により指定された波形を発生する(ステップS158)。
【0034】
図6は、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理回路100の効果を説明する図である。なお、図6において、時間tの0s(second)は、制御部142が波形発生命令を検出した時点とする。図6に示すように、上記制御方式によれば、波形発生時の直前に、予め指定された信号経路Rou1上の半導体リレー120b、120e、120i、120lを強制的に自己発熱させる(温度を上昇させる)。これにより、迅速にON抵抗の切替後の変動を収束させることが可能である。
【0035】
詳細には、上記制御方式を適用した場合には、信号経路上の半導体リレー120b、120e、120i、120lの温度が上昇しているため、大電流停止後ON抵抗が高い状態から遷移してきて、図6に実線にて示すようにわずか数秒(約7秒)で収束する。かかる制御方式を適用しない場合には、図6に破線にて示すように約30秒かかっていたため、はるかに短時間で収束することが理解される。
【0036】
最終的な収束値に対し+10ミリΩ〜−10ミリΩの誤差を許容するならば、上記制御方式を適用すれば、わずか50ミリ秒しかかからない。これに対して、かかる制御方式を適用しない場合には、1.6秒ほどの時間がかかる。なお、図6においてかかる制御方式を適用する場合と適用しない場合とで、最終的な収束値が約10ミリΩ異なっているが、これは評価に用いた半導体リレーの個体差によるものであり、その特性に関しては影響がないので無視してよい。
【0037】
波形発生時の直前および波形発生時に流れる電流はそのときの電圧に比例して増減する。上記では、ステップS154(波形発生時の直前)の際の電圧を4Vp−p、ステップS158(波形発生時)の際の電圧を1Vp−pとした。しかし、かかる値は例示であって、このように限定される訳ではない。
【0038】
なお、大きな電流(ステップS154の際の電圧)としてどの程度を設定すべきかは、回路構成に応じる(回路構成に応じて適宜設定される)。影響を与える要素としては、その素子の電流に対する発熱特性、温度変動特性、その素子のパッケージの熱容量、空冷による放熱特性、周辺回路への熱伝導性(放熱特性)などである。図6の例では使用時の4倍の電流を与えているが、要求される収束時間を考慮して実際の回路で「大きな電流」の値を測定して決定すべきである。特に、信号処理回路100が取り扱える電圧(許容電圧)の範囲内で最大の電圧を設定すると、短時間で半導体リレー120b、120e、120i、120lに大きな自己発熱を起こさせることができ、好適である。
【0039】
また、上記ではステップS154の際に数ミリ秒〜数十ミリ秒の短時間、大きな電流を流した(大きな電圧を印加した)。ON抵抗は、当初(大きな電流を流すと)数百ミリ秒で急速(直線的)に上昇し、やがて頭打ちとなる。これより、半導体リレー120b、120e、120i、120lの個体特性にもよるが(半導体リレーのON抵抗は2Ω〜20Ωものがある)、ステップS154の時間を数ミリ秒〜数十ミリ秒の短時間でなく、これよりも長い時間に設定しても大した意味をなさない(数ミリ秒〜数十ミリ秒の短時間で充分である)。
【0040】
信号処理回路100の特徴として重要なのは、制御部142がDAC110を制御して意図的に大きな電流を流すことである。少なくともステップS158の波形発生時の電流よりも信号経路上に予め大きな電流を流して(そのような電流を流す電圧を印加して)、ON抵抗を最終的な収束値よりも高い抵抗値を示す状態まで予め遷移させれば(そのような状態に遷移させるよう大きな電流を流す時間を設定すれば)一定の効果を奏する。
【0041】
図7は、本発明の第1の実施形態にかかる信号処理回路100の応用例を示す図である。図7に示すように、信号処理回路100において入出力リレー122の後段にグランドに対して開閉するグランド開閉リレー124bを設けて、ステップS152でこのグランド開閉リレー124bをONに、ステップS156でこのグランド開閉リレー124bをOFFにしてもよい。これにより、入出力リレー122も自己発熱させて、そのON抵抗を迅速に収束させることが可能となる。
【0042】
この場合には、ステップS154にて大きな電流を流す場合には、外部回路に備えられた入出力リレー(不図示)をOFFにすればよい。これにより、外部回路側に大きな電流が流れるのを防ぐことができる。なお、応用例では、グランド開閉リレー124bは他チャンネルへの割込経路144を介さず、直接この大きな電流をグランドへと落とす。グランド開閉リレー124a、124bは、ステップS154の大きな電流をグランドへと落とせればよく、その経路は都合に応じて設定してよい。
【0043】
[第2実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態にかかる信号処理回路200を模式的に示す図である。第2実施形態の信号処理回路200は所定の波形を測定する波形測定器に適用されている。図8(a)は指定された信号経路における波形測定時の状態を示す図であり、図8(b)は図8(a)の波形測定時の直前の状態を示す図である。
【0044】
図8(a)、(b)に示すように信号処理回路200は、信号入力部218より入力される外部からの試験信号(測定信号)を差動・シングルエンド変換部216を経て、ゲインアンプ212a〜212c、ローパスフィルタ214a〜214cを介しADC(Analog Digital Converter)210に入力する。ゲインアンプ212a〜212cで試験信号が所望の信号振幅に調整され、ローパスフィルタ214a〜214cで不要な帯域を制限され、ADC210で試験信号がディジタイズされる。
【0045】
信号処理回路200には、信号経路の切替を行う半導体リレー220a〜220lが多数搭載される。また、外部回路に対する入出力を開閉する半導体リレーである入出力リレー222と、グランドに対して開閉する半導体リレーであるグランド開閉リレー224aと、他チャンネルからの割込経路244に対して開閉する半導体リレーであるバイパスリレー246とを有する。ここでは、バイパスリレー246および他チャンネルからの割込経路244は、差動・シングルエンド変換部216の前段に設定されている。
【0046】
図8(b)に示すように、信号処理回路200では、制御部242がユーザの操作入力等により発せられる波形測定命令を検出すると、この波形測定命令をトリガーとして、第1実施形態と同様の所定の制御方式を遂行する。具体的には、指定された信号経路上の半導体リレー220b、220e、220i、220lをONにして、入出力リレー222をOFFに、グランド開閉リレー224aをONにする。
【0047】
そして、制御部242は、バイパスリレー246をONにし、他チャンネルからの割込経路244、バイパスリレー246を介して、電源248から一時的(数ミリ秒〜数十ミリ秒の間)に信号経路上の半導体リレー220b、220e、220i、220lに大きな電流を流す。図8(b)に示されるこの波形測定時の直前の経路を「直前の経路Rou4」とする。
【0048】
その後、制御部242は、入出力リレー222をONに、グランド開閉リレー224aをOFFに、バイパスリレー246をOFFにする。これにより、図8(a)に示される波形測定時の経路となる(この経路を「指定された信号経路Rou3」とする)。上述した過程を経て、信号入力部218より入力される外部からの試験信号が、ADC210にてディジタイズされる(試験信号の波形測定が実行される)。
【0049】
以上、上述した構成によれば、既存のハードウェア構成を極力変更せず、ON抵抗の切替後の変動を迅速に収束させることが可能である。これにより、不具合を生じることなく、被試験デバイスの試験を高精度且つ短時間で実行することができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、波形発生器または波形測定器に適用される信号処理回路に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
Rou1、Rou3…指定された信号経路、Rou2、Rou4…直前の経路、100、200…信号処理回路、110…DAC、112a〜112c、212a〜212c…ゲインアンプ、114a〜114c、214a〜214c…ローパスフィルタ、116…シングルエンド・差動変換部、118…信号出力部、120a〜120l、220a〜220l…半導体リレー、122、222…入出力リレー、124a、124b、224a…グランド開閉リレー、126…アノード、128…カソード、130…発光素子、132…フォトダイオードアレイ、134、136…MOS−FET、138、140…ドレイン、142、242…制御部、144…他チャンネルへの割込経路、210…ADC、216…差動・シングルエンド変換部、218…信号入力部、244…他チャンネルからの割込経路、246…バイパスリレー、248…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形発生器または波形測定器に適用される信号処理回路であって、
信号経路の切替を行う半導体リレーと、
信号経路上の前記半導体リレーに、波形発生時または波形測定時に流れる電流よりも大きな電流をその直前に一時的に流す制御部と、
を含むことを特徴とする信号処理回路。
【請求項2】
外部回路に対する入出力を開閉する入出力リレーと、
グランドに対して開閉するグランド開閉リレーと、をさらに含み、
前記制御部は、信号経路の切替を行う前記半導体リレーに前記大きな電流を流す際には前記入出力リレーをOFFに、前記グランド開閉リレーをONにし、
波形発生時または波形測定時には前記入出力リレーをONに、前記グランド開閉リレーをOFFにすることを特徴とする請求項1に記載の信号処理回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−134239(P2012−134239A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283367(P2010−283367)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】