説明

信号処理支援装置、通信ノード装置および通信端末装置

【課題】本発明は、端末に複数の通信相手との通信サービスを提供する通信系において、これらの端末と複数の通信相手との間で引き渡されるべき伝送情報を生成する信号処理支援装置と、このような引き渡しを連係して実現する通信ノード装置と通信端末装置とに関し、応答性や伝送品質に大幅な制約が課されることなく、処理量の大幅な削減が図られるを提供することを目的とする。
【解決手段】複数Nの情報源から時系列iの順に並行して引き渡された情報V1i〜VNiの総和Siを求める加算手段と、前記総和Siと、前記情報V1i〜VNiのそれぞれとの差(Si−V1i)〜(Si−VNi)を前記時系列i毎に求める減算手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末に複数の通信相手との通信サービスを並行して提供する通信系において、これらの端末と複数の通信相手との間で引き渡されるべき伝送情報を生成する信号処理支援装置と、このような引き渡しおよび生成を連係して実現する通信ノード装置と通信端末装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANが無線伝送路として用いられ、かつ音声等の伝送情報が無線パケットとして伝送されるIPトランシーバは、従来のトランシーバに比べて、無線局の免許を取得していない者であっても所望の通信手段として利用することができ、しかも、一斉通話やグループ内通話(会議通話)が可能であって、通話可能なエリアをインタネットやイントラネットを介して拡張可能であるために、多様な分野で採用されつつある。
【0003】
図4は、IPトランシーバによる会議通話に供される通信系の構成例を示す図である。
図において、無線ゾーン41-1、41-2を個別に形成するアクセスポイント(AP)42-1、42-2は、サーバ43と共に、インタネット等のIP網44に接続される。無線ゾーン41-1にはIPトランシーバ(IPT)45-1,45-2が位置し、かつ無線ゾーン41-2にはIPトランシーバ(IPT)45-3が位置する。
【0004】
このような構成の通信系では、IPトランシーバ45-1がIPトランシーバ45-2、45-3と会議通話を行う期間には、これらのIPトランシーバ45-1〜45-3は、それぞれの操作者が発した音声の瞬時値を示すパケット(以下、「上りパケット」という。)UP1、UP2、UP3を時系列の順に送信する。
【0005】
サーバ43は、以下の処理を時系列の順に反復して行う。
(1) アクセスポイント42-1、42-2およびIP網44を介してこれらの上りパケットUP1、UP2、UP3を受信する。
【0006】
(2) 以下に列記するように、IPトランシーバ45-1〜45-3の何れについても、「送信元のIPトランシーバから送信された上りパケット以外の上りパケットのペイロードに配置された瞬時値の和」を示すパケット(以下、「下りパケット」という。)を生成する。
【0007】
(2-1) IPトランシーバ45-1宛に送出されるべき下りパケットDP1のペイロードには、上りパケットUP2、UP3のペイロードからそれぞれ抽出された瞬時値u2、u3の和S1が配置される。
【0008】
(2-2) IPトランシーバ45-2宛に送出されるべき下りパケットDP2のペイロードには、上りパケットUP3、UP1のペイロードからそれぞれ抽出された瞬時値u3、u1の和S2が配置される。
【0009】
(2-3) IPトランシーバ45-3宛に送出されるべき下りパケットDP3のペイロードには、上りパケットUP1、UP2のペイロードからそれぞれ抽出された瞬時値u1、u2の和S3が配置される。
【0010】
(3) IP網44およびアクセスポイント42-1を介してIPトランシーバ45-1宛に、上記下りパケットDP1を送出する。
(4) IP網44およびアクセスポイント42-1を介してIPトランシーバ45-2宛に、上記下りパケットDP2を送出する。
【0011】
(5) IP網44およびアクセスポイント42-2を介してIPトランシーバ45-3宛に、上記下りパケットDP3を送出する。
したがって、IPトランシーバ45-1〜45-3の使用者は、これらのIPトランシーバ45-1〜45-3から構成されたグループ内で会議通話を行うことができる。
【0012】
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列記する特許文献1〜6がある。
(1) 「ハイウエイインタフェース部で下り,上りのハイウエイへの入出力の切り替えを行ない、コーデックでハイウエイインタフェース部との間でディジタル信号とアナログ信号との相互の変換を行なって任意数の加入者をディジタルハイウエイに接続するディジタル電話システムの加入者装置において、会議電話用トランクを設けて、複数の切り替え部で、加入者の選択に応じてディジタルハイウエイに対する接続を行ない、複数のコーデックで、切り替え部との間でディジタル信号とアナログ信号との相互の変換を行ない、音声処理部で、各コーデックのアナログ出力をミキシングして再び送り返して、加入者装置に接続された複数の加入者間で会議電話機能を達成する」ことによって、「アナログ的にミキシングを行なう特別のトランクによって会議電話機能を実現する」点に特徴がある会議電話用のトランク装置…特許文献1
【0013】
(2) 「複数の場所に設置された会議端末と、前記会議端末からの圧縮音声符号を復号するデコーダと、前記デコーダの出力した復号音声のレベルを調整する減衰回路と、前記減衰回路の出力音声信号を加算合成する合成回路と、前記合成回路の出力した音声信号を圧縮するエンコーダと、圧縮音声符号を前記会議端末に分配する分配回路とを有する会議端末を相互に接続させる会議端末制御装置において、前記各会議端末から送られてくる音声情報を圧縮音声符号と有声/無声符号とにそれぞれ分離するデマルチプレクサと、前記有声/無声符号に基づき圧縮音声符号が有声か無声かを検出するとともに有声の会議端末の数を計測する話者検出回路と、前記話者検出回路からの有声の会議端末の計測数が所定数より大きい場合は、検出された有声の前記各会議端末からの圧縮音声符号を前記デコーダに供給し、前記計測数が所定数以下の場合は、検出された有声の前記各会議端末からの圧縮音声符号を第二のセレクタに供給する第一のセレクタと、計測数が所定数より大きい場合は前記エンコーダを選択し、前記計測数が所定数以下の場合は前記第一のセレクタを選択し、選択したいずれかからの圧縮音声符号を前記分配回路に出力する第二のセレクタとを備える」ことによって、「多地点接続会議システムにおける多地点制御装置(MCU)の低消費電力化と音質の向上とを図る」点に特徴がある会議端末制御装置…特許文献2
【0014】
(3) 「無線通信回線を介してサーバと接続された複数の通信端末でグループ通信を行うものであって、サーバは、受信した複数の通信データを合成する通信データ合成手段と、グループ通信に参加する通信端末の数に応じて無線通信回線の帯域幅を確保する帯域幅管理手段と、上記合成された通信データを上記帯域幅でグループ通信に参加する各通信端末に送信するサーバ側送信手段とを備え、通信端末は、上記通信データを上記サーバに送信する通信端末側送信手段と、上記サーバから上記合成された通信データを受信する通信端末側受信手段と、上記合成された通信データを再生する再生手段とを備える」ことによって、「参加人数の増減にフレキシブルであり、音質劣化等の通信データの品質劣化を生じることなく、また帯域を有効に利用可能である」点に特徴がある通信システムおよび通信方法…特許文献3
【0015】
(4) 「サーバが、いずれか1つの通信端末からのグループ通話開催要求を受け取り、さらに、グループ通話に参加するすべての通信端末を管理する参加端末管理部と、グループ通話に参加する各通信端末からの通話データを合成し、その合成データを各通信端末に配信する通話データ合成部と、通話データを通話履歴として記録する通話履歴管理部と、を備える構成とし、たとえば、いずれかの通信端末が、グループ通話の開催中にグループ通話終了要求を送信し、その後、通話履歴記録手段が、グループ通話に関する終了履歴を記録した段階で、前記回線を切断する」ことによって、「無線通信によるグループ通話を実現し、さらに、グループ通話への参加および退会の容易化を実現可能な無線通信システムを得る」点に特徴がある通信システム…特許文献4
【0016】
(5) 「複数の端末装置と、前記複数の端末装置の各々に関し、当該端末装置との間で音声信号の入出力を行う第1の通話装置および第2の通話装置と、前記複数の端末装置の各々から受け取った音声信号をミキシングして前記複数の端末装置の各々に出力する全体ミキサと、前記複数の端末装置に含まれる2以上の特定の端末装置の各々から受け取った音声信号をミキシングして前記2以上の特定の端末装置の各々に出力する1以上のグループミキサとを備える音声会議システムであり、前記第1の通話装置は、入力された音声信号を音声に変換し発音する第1の発音手段と、話者の音声を集音して音声信号に変換し出力する第1の集音手段とを備え、前記第2の通話装置は、入力された音声信号を音声に変換し発音する第2の発音手段と、話者の音声を集音して音声信号に変換し出力する第2の集音手段とを同じ筐体内に備え、前記第2の発音手段および前記第2の集音手段が各々話者の口元および耳元に位置するように前記筐体内において配置されている送受話器型の通話装置であり、前記複数の端末装置の各々は、通常モードとホットラインモードのいずれかの選択を行う選択手段と、前記選択手段により通常モードが選択されている場合、前記全体ミキサから出力される音声信号を前記第1の発音手段に入力するとともに前記第1の集音手段から出力される音声信号を前記全体ミキサに入力するように前記第1の通話装置と前記全体ミキサとの間の接続を構成し、前記選択手段によりホットラインモードが選択されている場合、前記グループミキサから出力される音声信号を前記第2の発音手段に入力し前記第2の集音手段から出力される音声信号を前記グループミキサに入力するように前記第2の通話装置と前記グループミキサとの間の接続を構成するとともに前記第1の集音手段および前記第2の集音手段から出力される音声信号が前記全体ミキサに出力されることがないように前記第1の通話装置および前記第2の通話装置の各々と前記全体ミキサとの間の接続を構成する切替手段とを備える」ことによって、「複数話者の音声を合成して発音するシステムにおいて、特定の話者間だけの会話を容易に実現可能とする」点に特徴がある複数話者の音声信号を処理するシステム…特許文献5
【0017】
(6) 「ネットワーク中のグループ通話を制御すると共に、固定端末からのグループ通話の音声データのモニタリングを実現するグループ通話制御サーバであって、グループ通話における音声データの転送を行うグループ通話手段と、音声データのコーデック変換を行うコーデック変換手段と、前記グループ通話手段から転送された音声データを固定端末に出力するモニタリング手段とを備え、前記モニタリング手段が、固定端末から1又は複数のグループ通話のモニタリングの要求があると、前記固定端末において用いられるコーデックの情報を付して前記グループ通話手段に前記各グループ通話からの音声データの転送を要求し、前記グループ通話手段が、前記モニタリング手段からの要求に含まれる前記固定端末のコーデックの情報を前記コーデック変換手段に出力し、前記各グループ通話における音声データを受信すると、前記コーデック変換手段に転送し、前記コーデック変換手段が、前記グループ通話手段から転送された音声データを前記グループ通話手段から出力された固定端末のコーデックの情報に基づいてコーデック変換して前記グループ通話手段に転送し、前記グループ通話手段が、前記コーデック変換された音声データを前記モニタリング手段に転送し、前記モニタリング手段が、前記グループ通話手段から複数のグループ通話の音声データが転送された場合には、前記音声データを合成して前記固定端末に出力する」ことによって、「
コーデック変換やミキシングの手段を備えていない固定端末でも、複数のグループ通話をモニタリングすることができ、利便性を向上させることができる」点に特徴があるグループ通話制御サーバ…特許文献6
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平6−121059号公報
【特許文献2】特開2000−174909号公報
【特許文献3】特開2001−160858号公報
【特許文献4】特開2001−197562号公報
【特許文献5】特開2006−246239号公報
【特許文献6】特開2010−68087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、上述した従来例では、サーバ43は、以下の手順に基づいて既述の瞬時値u1、u2、u3から和S1、S2、S3を算出していた。
(1) IPトランシーバ45-1〜45-3にそれぞれ対応したレジスタR11、R12、R13に、瞬時値u1をコピーする(図5(1))。
(2) IPトランシーバ45-1〜45-3にそれぞれ対応したレジスタR21、R22、R23に、瞬時値u2をコピーする(図5(2))。
【0020】
(3) IPトランシーバ45-1〜45-3にそれぞれ対応したレジスタR31、R32、R33に、瞬時値u3をコピーする(図5(3))。
(4) レジスタR11、R21、R31の内、IPトランシーバ45-1に対応しないレジスタR21、R31にそれぞれ格納されている瞬時値u2、u3を加算する(図5(4))ことにより和S1を求める。
【0021】
(5) レジスタR12、R22、R32の内、IPトランシーバ45-2に対応しないレジスタR12、R32にそれぞれ格納されている瞬時値u1、u3を加算する(図5(5))ことにより和S2を求める。
(6) レジスタR13、R23、R33の内、IPトランシーバ45-3に対応しないレジスタR13、R23にそれぞれ格納されている瞬時値u1、u2を加算する(図5(6))ことにより和S3を求める。
【0022】
すなわち、瞬時値u1、u2、…、uNがコピーされるべき回数は、同一グループ内で既述の会議通話を行うIPトランシーバの台数Nが多いほど、増加し、例えば、このようなIPトランシーバの台数Nが「20」である場合には、「380(=N・(N−1))」と大きな値となる。
したがって、サーバ43には、上記台数Nの最大値に対して十分な余裕度が確保可能な処理量が確保されなければならなかった。
【0023】
本発明は、応答性や伝送品質に大幅な制約が課されることなく、処理量の大幅な削減が図られる信号処理支援装置、通信ノード装置および通信端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
請求項1に記載の発明では、加算手段は、複数Nの情報源から時系列iの順に並行して引き渡された情報V1i〜VNiの総和Siを求める。減算手段は、前記総和Siと、前記情報V1i〜VNiのそれぞれとの差(Si−V1i)〜(Si−VNi)を前記時系列i毎に求める。
【0025】
すなわち、差(Si−V1i)〜(Si−VNi)がそれぞれ算出される過程において上記情報V1i〜VNiが参照される回数は、加算手段と減算手段とによってそれぞれ参照される1回ずつに抑えられる。
【0026】
請求項2に記載の発明では、加算手段は、複数Nの端末から時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜VNiの総和Siを前記時系列i毎に求める。配信手段は、前記複数Nの端末に、前記総和Siを配信する。
【0027】
すなわち、複数Nの端末の何れにも、これらの端末から時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜VNiの総和Siが配信される。
【0028】
請求項3に記載の発明では、加算手段は、複数Nの端末から時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜VNiの総和Siを前記時系列i毎に求める。配信手段は、前記複数Nの端末に、前記総和Siと前記時系列iとを配信する。
【0029】
すなわち、複数Nの端末の何れにも、これらの端末から時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜VNiの総和Siに併せて、上記時系列iが配信される。
【0030】
請求項4に記載の発明では、加算手段は、複数Nの端末から時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜VNiの総和Siを前記時系列i毎に求める。配信手段は、前記複数Nの端末に、それぞれ伝送情報V1i〜VNiに併せて、前記総和Siを配信する。
【0031】
すなわち、複数Nの端末の何れにも、これらの端末から時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜VNiに併せて、これらの伝送情報V1i〜VNiの総和Siが配信される。
【0032】
請求項5に記載の発明では、網を介して複数p(=n−1)の通信端末との通信を並行して行う通信端末装置において、蓄積手段は、時系列iの順に前記網に送信され、かつ前記複数pの通信端末に並行して引き渡されるべき伝送情報viを前記時系列iの順に蓄積する。総和取得手段は、前記複数pの通信端末および前記通信端末装置から前記網に前記時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜Vniの総和Siを前記網から取得する。伝送情報取得手段は、前記通信端末装置による前記伝送情報viの送信に応じて、前記網から前記総和Siが引き渡され、あるいは前記取得されるために所要する前記時系列i上の時間τ先行して前記蓄積手段に蓄積された伝送情報の前記総和Siに対する差の列を下りの伝送情報として得る。
【0033】
すなわち、本発明に係る通信端末装置では、複数pの通信端末から網に送信された伝送情報の和の列を上記差の列として得ることができる。
【0034】
請求項6に記載の発明では、網を介して複数p(=n−1)の通信端末との通信を並行して行う通信端末装置において、蓄積手段は、時系列iの順に前記網に送信され、かつ前記複数pの通信端末に並行して引き渡されるべき伝送情報viを前記時系列iの順に蓄積する。総和取得手段は、前記複数pの通信端末および前記通信端末装置から前記網に前記時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜Vniの総和Siに併せて、前記時系列iを前記網から取得する。伝送情報取得手段は、前記網から取得された総和Siと、前記総和Siと共に前記網から取得された時系列iの時点で前記蓄積手段に蓄積された伝送情報との差の列を下りの伝送情報として得る。
【0035】
すなわち、本発明に係る通信端末装置では、複数pの通信端末から網に送信された伝送情報の和の列を上記差の列として得ることができる。
【0036】
請求項7に記載の発明では、網を介して複数p(=n−1)の通信端末との通信を並行して行う通信端末装置において、総和取得手段は、前記複数pの通信端末および前記通信端末装置から前記時系列iの順に前記網に並行して引き渡された伝送情報V1i〜Vniの総和Siと、前記伝送情報V1i〜Vniの内、前記通信端末装置によって前記網に引き渡された特定の伝送情報viとを前記網から取得する。伝送情報取得手段は、前記網から取得された総和Siと伝送情報viとの差の列を下りの伝送情報として得る。
【0037】
すなわち、本発明に係る通信端末装置では、複数pの通信端末から網に送信された伝送情報の和の列を上記差の列として得ることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明では、既述の差(Si−V1i)〜(Si−VNi)を算出する処理は、情報V1i〜VNiの内、これらの差(Si−V1i)〜(Si−VNi)に個別に和として含まれる(N−1)個ずつの情報が適宜参照される場合に比べて、大幅に簡略化される。
【0039】
また、本発明に係る通信ノード装置は、複数Nの端末との機能分散および負荷分散の下で、これらの複数Nの端末との間における双方向の伝送情報の伝送を実現することができる。
【0040】
さらに、本発明に係る通信端末装置は、網との機能分散および負荷分散連係の下で、複数pの通信端末と双方向による伝送情報の伝送を実現することができる。
【0041】
したがって、本発明が適用された通信系では、伝送品質の向上に併せて、低廉化と、ノード装置と端末装置との双方または何れか一方の処理量や負荷の軽減と、会議通話やグループ通信の多様な形態による実現と、最繁時における輻輳状態の軽減と、その輻輳状態からの速やかな脱却とが図られる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本実施形態における各部の連係を説明する図である。
【図3】本実施形態におけるサーバの動作フローチャートである。
【図4】IPトランシーバによる会議通話に供される通信系の構成例を示す図である。
【図5】会議通話の通話者が発した音声の合成を実現する処理の手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
【0044】
図において、図4に示すものと機能および構成が同じ要素については、同じ符号を付与し、ここではその説明を省略する。
本実施形態と図4に示す従来例との構成の相違点は、以下の点にある。
【0045】
(1) 無線ゾーン41-1には、IPトランシーバ45-1、45-2に代えてIPトランシーバ11-1、11-2が位置する。
(2) 無線ゾーン41-2には、IPトランシーバ45-3に代えて、IPトランシーバ11-3〜11-5が位置する。
(3) サーバ43に代えてサーバ12が備えられる。
【0046】
図2は、本実施形態における各部の連係を説明する図である。
図3は、本実施形態におけるサーバの動作フローチャートである。
以下、図1〜図3を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0047】
本発明の特徴は、本実施形態では、後述するようにサーバ12によって行われ、かつIPトランシーバ11-1〜11-5の全てが参加して行う会議通話のために、これらのIPトランシーバ11-1〜11-5の間における音声信号(通話信号)の合成と分配とを実現する処理の手順にある。
【0048】
IPトランシーバ11-1〜11-5は、それぞれの操作者が発した音声の瞬時値を示す上りパケットUP1、UP2、UP3、UP4、UP5を時系列の順に反復して送信する(図2(1))。
【0049】
サーバ43は、以下の処理を時系列の順に反復して行う。
(1) アクセスポイント42-1、42-2およびIP網44を介してこれらの上りパケットUP1、UP2、UP3、UP4、UP5を収集する(図2(2),図3ステップS1)。
(2) これらの上りパケットUP1〜UP5のペイロードにそれぞれ配置された音声の瞬時値u1〜u5を取得する(図2(3),図3ステップS2)。
【0050】
(3) これらの瞬時値u1〜u5の総和U(=u1+u2+u3+u4+u5)を求める(図2(4),図3ステップS3)。
(4) IPトランシーバ11-1〜11-5宛に個別に送出されるべき音声の瞬時値S1〜S5を以下の手順で生成する(図2(5))。
【0051】
(4-1) IPトランシーバ11-1から受信された瞬時値u1を上記総和Uから減算することにより、そのIPトランシーバ11-1以外のIPトランシーバ11-2〜11-5から受信された瞬時値u2〜u5の総和S1を求める(図3ステップS4)。
【0052】
(4-2) IPトランシーバ11-2から受信された瞬時値u2を上記総和Uから減算することにより、そのIPトランシーバ11-2以外のIPトランシーバ11-1,11-3〜11-5から受信された瞬時値u1,u3〜u5の総和S2を求める(図3ステップS4)。
【0053】
(4-3) IPトランシーバ11-3から受信された瞬時値u3を上記総和Uから減算することにより、そのIPトランシーバ11-3以外のIPトランシーバ11-1,11-2,11-4,11-5から受信された瞬時値u1,u2,u4,u5の総和S3を求める(図3ステップS4)。
【0054】
(4-4) IPトランシーバ11-4から受信された瞬時値u4を上記総和Uから減算することにより、そのIPトランシーバ11-4以外のIPトランシーバ11-1〜11-3,11-5から受信された瞬時値u1〜u3,u5の総和S4を求める(図3ステップS4)。
【0055】
(4-5) IPトランシーバ11-5から受信された瞬時値u5を上記総和Uから減算することにより、そのIPトランシーバ11-5以外のIPトランシーバ11-1〜11-4から受信された瞬時値u1〜u4の総和S5を求める(図3ステップS4)。
【0056】
(5) ペイロードに上記総和S1〜S5が個別に配置された下りパケットDP1〜DP5を生成し(図3ステップS5)、IP網44およびアクセスポイント42-1、42-2を介してIPトランシーバ11-1〜11-5宛に、これらの下りパケットDP1〜DP5をそれぞれ送出する(図2(6),図3ステップS6)。
【0057】
IPトランシーバ11-1〜11-5では、それぞれ上記下りパケットDP1〜DP5のペイロードに配置された総和S1〜S5を復号化することによって音声(通話信号)を復元する(図2(7))ので、使用者は、会議通話の相手である他の全てのIPトランシーバから受信された音声(通話信号)を並行して聴取することができる。
【0058】
すなわち、下りパケットDP1〜DP5のペイロードにそれぞれ配置される総和S1〜S5が求められる処理の過程では、IPトランシーバ11-1〜11-5から上りパケットUP1〜UP5としてそれぞれ受信された瞬時値u1〜u5は、何れも、総和Uの算出(図3ステップS3)の過程と、これらのIPトランシーバ11-1〜11-5にそれぞれ対応した減算(図3ステップS4)の過程とでそれぞれ1回のみ参照される。
なお、このような回数は、例えば、同一グループ内で会議通話を行うIPトランシーバの台数が「20」である場合には、「40(=20×2)」と、従来例における同様の回数「380」に比べて大幅に少なくなる。
【0059】
このように本実施形態によれば、「既述の総和S1、S2、…の算出の過程で、瞬時値u1、u2、…が全てのIPトランシーバに個別に対応するレジスタにコピーされていた従来例」に比べて、下りパケットDP1〜DP5の生成が効率化され、しかも、その生成に要する記憶領域等の資源が削減される。
【0060】
したがって、サーバ12は、配下において並行して会議通話を行うIPトランシーバの台数と、このような会議通話のグループとの何れが多数となる可能性があっても、これらの会議通話の実現のために予め確保されるべき処理量の大幅な削減が図られ、かつ通話品質やサービス品質が高く安定に維持される。
【0061】
さらに、本実施形態によれば、従来例に比べて、サーバ12の配下で会議通話を行うIPトランシーバの台数を多く確保し、あるいはそのサーバ12の余剰の処理量や資源の削減によるコストダウンを図ることが可能となる。
【0062】
なお、本実施形態では、アクセスポインタ42-1、42-2に併せて、IPトランシーバ11-1〜11-5と、これらのIPトランシーバ11-1〜11-5による会議通話を実現するサーバ12とが備えられたIP網44に、本発明が適用されている。
【0063】
しかし、本発明は、このようなIP網44に限定されず、各端末から送信された上りの通話信号(音声信号や画像信号)の瞬時値の加減算により下りの通話信号の瞬時値が算出され、これらの下りの通話信号が所望の伝送品質により伝送可能であるならば、有線伝送系(光伝送系を含む。)と無線伝送系との何れにも適用可能である。
【0064】
また、本実施形態では、上記加減算は、サーバ12によって行われるアプリケーションレイヤの処理として実現されている。
【0065】
しかし、このような加減算が行われるレイヤは、上位レイヤにおける処理に支障を与えることがないならば、アプリケーションレイヤより下位の所望のレイヤで行われてもよい。
【0066】
さらに、本発明では、上記下位のレイヤにおいて行われる通信制御は、如何なるものであってもよい。
【0067】
また、本実施形態では、上記加減算の何れもがサーバ12によって行われている。
しかし、このような加減算は、以下に列記する形態の何れかにより、サーバ12が行う加算と、そのサーバ12に連係するIPトランシーバ11-1〜11-5が行う減算とからなる分散処理として実現されてもよい。なお、以下では、IPトランシーバ11-1〜11-5に共通の事項については、添え番号「1」〜「5」に代えて、これらの添え番号「1」から「5」の何れにも該当し得ることを示す添え文字「c」を用いて記述する。
【0068】
(1) サーバ12は総和Uのみを下りパケットDPcのペイロードに配置し、IPトランシーバ11-cは、先行する上りパケットUPcのペイロードに配置した瞬時値ucをこのような総和Uから減算することによって、総和Scを算出する。
【0069】
(2) サーバ12は、総和Uに併せて、その総和Uが算出された時点における時系列iを下りパケットDPcのペイロードに配置し、IPトランシーバ11-cは、この時系列iに対応する時点で先行して送信した瞬時値uci(上りパケットUPcのペイロードに配置される。)をこのような総和Uから減算することによって、総和Scを算出する。
【0070】
(3) サーバ12は、総和Uに併せて、その総和Uに含まれる瞬時値の内、瞬時値ucを下りパケットDPcのペイロードに配置し、IPトランシーバ11-cは、この下りパケットDPcのペイロードに配置されている総和Uと瞬時値ucとの差をとることによって、総和Scを算出する。
【0071】
さらに、本実施形態では、既述の通りにサーバ12によって行われる処理は、IP網44に接続された他のサーバ、あるいはアクセスポイント(アクセスポイント42-1、42-2の何れであってもよい。)と如何なる機能分散や負荷分散の下で実現されてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、上りパケットUPcおよび下りパケットDPcのペイロードに配置されるべき瞬時値ucや総和Scの数は、必ずしも「1」でなくてもよく、所望の複数に設定されてもよい。
【0073】
さらに、本実施形態では、このようなペイロードに配置される情報の形式は、如何なるものであってもよく、例えば、仮想的な1つまたは複数の擬似的なパケットとしてカプセル化されて配置されてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、上りパケットUPcおよび下りパケットDPcは、(所定の通信レイヤにおいて行われる)順序制御や再送制御の下で確度高く安定に、かつ欠落することなく伝送されている。
【0075】
しかし、これらの上りパケットUPcおよび下りパケットDPcは、伝送情報が音声のように冗長性が高く、伝送品質が低下しても許容される限度内であるならば、欠落してもよく、かつ上記順序制御や再送制御の双方もしくは何れか一方が行われなくてもよい。
【0076】
さらに、本実施形態では、通話信号(音声)に施される符号化および復号化の方式は、既述の加減算の下で所望の品質による会議通話が実現されるならば、如何なるものであってもよい。
【0077】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0078】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」への記載の対象から除外した発明を「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄の記載に準じた様式により列記する。
【0079】
[請求項8] 請求項1に記載の信号処理支援装置において、
前記情報V1i〜VNiは、
前記複数Nの情報源から時系列iの順に並行して引き渡された音声信号または画像信号の瞬時値である
ことを特徴とする信号処理支援装置。
【0080】
このような構成の信号処理支援装置では、請求項1に記載の信号処理支援装置において、前記情報V1i〜VNiは、前記複数Nの情報源から時系列iの順に並行して引き渡された音声信号または画像信号の瞬時値である。
【0081】
すなわち、上記情報V1i〜VNiは、これらの何れもが線形領域にいて瞬時値の重畳が可能である音声信号や画像信号であるならば、既述の差(Si−V1i)〜(Si−VNi)がそれぞれ算出される過程では、請求項1に記載の信号処理支援装置と同様に、それぞれ2回ずつ参照される。
【0082】
したがって、本発明によれば、情報V1i〜VNiが音声信号や画像信号の瞬時値である場合であっても、上記差(Si−V1i)〜(Si−VNi)を算出する処理の大幅な簡略化が図られる。
【0083】
[請求項9] 請求項1に記載の信号処理支援装置と、
前記複数Nの情報源、または前記複数Nの情報源に個別に対応する端末、伝送路、通信経路の何れかに、前記信号処理支援装置によって前記時系列iの順に求められた差(Si−V1i)〜(Si−VNi)をそれぞれ分配する分配手段と
を備えたことを特徴とする通信装置。
【0084】
このような構成の通信装置では、分配手段は、前記複数Nの情報源、または前記複数Nの情報源に個別に対応する端末、伝送路、通信経路の何れかに、請求項1に記載の信号処理支援装置によって前記時系列iの順に求められた差(Si−V1i)〜(Si−VNi)をそれぞれ分配する。
【0085】
すなわち、上記装置、通信系、伝送系の何れを介して分配されるべき伝送情報を生成する処理も、負荷の軽減や効率化が図られる。
【0086】
したがって、請求項1に記載の信号処理支援装置は、多様な装置、通信系、伝送系に対して柔軟に適用可能となる。
【符号の説明】
【0087】
11,45 IPトランシーバ(IPT)
12,43 サーバ
41 無線ゾーン
42 アクセスポイント(AP)
44 IP網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数Nの情報源から時系列iの順に並行して引き渡された情報V1i〜VNiの総和Siを求める加算手段と、
前記総和Siと、前記情報V1i〜VNiのそれぞれとの差(Si−V1i)〜(Si−VNi)を前記時系列i毎に求める減算手段と
を備えたことを特徴とする信号処理支援装置。
【請求項2】
複数Nの端末から時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜VNiの総和Siを前記時系列i毎に求める加算手段と、
前記複数Nの端末に、前記総和Siを配信する配信手段と
を備えたことを特徴とする通信ノード装置。
【請求項3】
複数Nの端末から時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜VNiの総和Siを前記時系列i毎に求める加算手段と、
前記複数Nの端末に、前記総和Siと前記時系列iとを配信する配信手段と
を備えたことを特徴とする通信ノード装置。
【請求項4】
複数Nの端末から時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜VNiの総和Siを前記時系列i毎に求める加算手段と、
前記複数Nの端末に、それぞれ伝送情報V1i〜VNiに併せて、前記総和Siを配信する配信手段と
を備えたことを特徴とする通信ノード装置。
【請求項5】
網を介して複数p(=n−1)の通信端末との通信を並行して行う通信端末装置であって、
時系列iの順に前記網に送信され、かつ前記複数pの通信端末に並行して引き渡されるべき伝送情報viを前記時系列iの順に蓄積する蓄積手段と、
前記複数pの通信端末および前記通信端末装置から前記網に前記時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜Vniの総和Siを前記網から取得する総和取得手段と、
前記通信端末装置による前記伝送情報viの送信に応じて、前記網から前記総和Siが引き渡され、あるいは前記取得されるために所要する前記時系列i上の時間τ先行して前記蓄積手段に蓄積された伝送情報の前記総和Siに対する差の列を下りの伝送情報として得る伝送情報取得手段と
を備えたことを特徴とする通信端末装置。
【請求項6】
網を介して複数p(=n−1)の通信端末との通信を並行して行う通信端末装置であって、
時系列iの順に前記網に送信され、かつ前記複数pの通信端末に並行して引き渡されるべき伝送情報viを前記時系列iの順に蓄積する蓄積手段と、
前記複数pの通信端末および前記通信端末装置から前記網に前記時系列iの順に並行して引き渡された伝送情報V1i〜Vniの総和Siに併せて、前記時系列iを前記網から取得する総和取得手段と、
前記網から取得された総和Siと、前記総和Siと共に前記網から取得された時系列iの時点で前記蓄積手段に蓄積された伝送情報との差の列を下りの伝送情報として得る伝送情報取得手段と
を備えたことを特徴とする通信端末装置。
【請求項7】
網を介して複数p(=n−1)の通信端末との通信を並行して行う通信端末装置であって、
前記複数pの通信端末および前記通信端末装置から前記時系列iの順に前記網に並行して引き渡された伝送情報V1i〜Vniの総和Siと、前記伝送情報V1i〜Vniの内、前記通信端末装置によって前記網に引き渡された特定の伝送情報viとを前記網から取得する総和取得手段と、
前記網から取得された総和Siと伝送情報viとの差の列を下りの伝送情報として得る伝送情報取得手段と
を備えたことを特徴とする通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−39311(P2012−39311A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176509(P2010−176509)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】