説明

信号強度による位置探索システムの自己補正方法

データ通信システム内のモバイルユニットの位置をモバイルユニットの送信信号強度に基づいて決定するシステムを、アクセスポイントからモバイルユニットまでの距離を往復時間距離を用いて決定することによって、モバイルユニットトランスミッタ電力の変化に対して較正する。時間距離を信号強度に基づく距離の値と比較し、モバイルユニットに対する補正値を時間距離と信号強度に基づく距離との差に基づいて更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物体位置測定システムに関し、特に複数のアクセスポイントを有するシステムであって、モバイルユニットがIEEE規格802.11のような無線データ通信プロトコルを用いてこれらのアクセスポイントと通信するシステムに関する。本発明は特に、アクセスポイントで受信されるモバイルユニットの送信の信号強度を測定してアクセスポイントからモバイルユニットの距離を概算することによってモバイルユニットの位置を決定するシステムに関する。
本願明細書で使用する用語「アクセスポイント」は、コンピュータや有線ネットワークを無線媒体にインターフェースする規格802.11又は他の規格で検討されているアクセスポイントに相当し、また2000年5月17日に出願された同時継続出願第09/528/697号に記載されているRFポートやこれに接続されたセルコントローラに相当する。この特許出願明細書は参考のためにここに示したものである。
【発明の背景】
【0002】
アクセスポイントからモバイルユニットまでの距離決定における主要な変数はモバイルユニットの信号強度である。異なる製造業者からのトランスミッタカード(NICカード)の送信信号強度には大きな偏差が存在し得るとともに、同一製造業者の異なる製造ランからのカードにも大きな偏差が存在し得る。更にトランスミッタ信号強度はモバイルユニットの寿命及びその再充電可能な電池の寿命の経過とともに変化し得る。
【0003】
システム内のモバイルユニットのトランスミッタ電力の相違は、既知の距離から受信される信号の強さを測定し、補正係数を特定のモバイルユニットに付与することによって較正することができる。このような較正方法は各モバイルユニットがサービス状態になるたびに特別な較正手順を必要とし、モバイルユニットが再較正されない限り、モバイルユニットやそのバッテリーのエージングに伴うトランスミッタ電力の変化を考慮することはできない。
【0004】
従って、本発明の目的は、信号強度による位置決定システムにおいてモバイルユニットの送信電力を周期的に測定してこれらのモバイルユニットと関連する補正値を更新する改良された新しい方法を提供することにある。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、エリア内に分布されているアクセスポイントにより受信されるモバイルユニットにより送信された信号の受信信号強度を測定することによって送信中のモバイルユニットの位置を決定する物体位置決定システムを較正する方法を提供する。データメッセージを少なくとも1つのアクセスポイントから較正すべきモバイルユニットへ送信する。このデータメッセージに応答してモバイルユニットから返送される肯定応答信号を少なくとも1つのアクセスポイントにより受信する。アクセスポイントからモバイルユニットまでの第1の距離値をデータメッセージの送信と肯定応答信号との間の時間遅延に基づいて決定する。アクセスポイントで受信されるモバイルユニットからの肯定応答信号の信号強度を測定し補正値で補正された第2の距離値を決定する。第1の距離値を用いて前記補正値を更新する。
【0006】
一実施例では、前記補正値は、複数の送信データメッセージと複数の受信肯定応答信号に対して第1の距離値と第2の距離値を決定することにより更新する。第1の距離値と第2の距離値の差を前記複数の送信データメッセージと前記複数の受信肯定応答信号の各々について決定する。これらの差を平均化し、これらの差の平均値を前記補正値の更新に使用する。前記複数のデータメッセージと前記複数の肯定応答信号は同じアクセスポイントで送信し、受信することができる。また、前記複数のデータメッセージを2以上のアクセスポイントで送信し、前記複数の肯定応答信号をそれぞれ対応するメッセージを送信するアクセスポイントで受信するようにしてもよい。補正値は、送信データメッセージと受信肯定応答信号に対して第1の距離値と第2の距離値を決定し、第1の距離値と第2の距離値との差を決定し、その差の選択部分を用いて更新する。
【0007】
本発明のより良い理解のためには、本発明の他の目的と一緒に、図面につき以下に記載する本発明の説明を参照されたい。
【発明の好ましい実施の形態】
【0008】
図1の簡略図を参照すると、無線ローカルエリアネットワークシステム10が図式的に示され、このシステムは例えばIEEE規格の802.11のプロトコルに準拠するものとし得る。図1のシステム10はコンピュータ12を含み、このコンピューターはサーバーとして働き、有線ネットワークを介して、学校や工業施設や病院などのエリア内の固定位置に配置されたアクセスポイント14、18及び20に接続されている。本システム10は、サーバーコンピュータ12と1つ以上のモバイルユニット16との間にモバイルユニット16が関連するアクセスポイント14、18、20を経由する無線通信を提供するのに加え、システム10はそのエリア内におけるモバイルユニットの位置を決定する機能を提供する。
【0009】
本システム10では、モバイルユニットの位置は、該モバイルユニットから信号を複数のアクセスポイントで受信し、例えば規格802.11レシーバのRSSI機能により、受信された信号強度を測定することで決定される。本システムは最初に較正して、信号強度をエリア内位置に関連付けるデータベースを形成し、複数、例えば3以上のアクセスポイント14,18及び20からの受信信号強度をサーバーコンピュータ12に供給し、このコンピュータ12が信号強度をデータベースと比較し、モバイルユニット16のエリア内位置を導出することができる。或いは又、モバイルユニット16とアクセスポイント14,18,20との間の距離R1,R2とR3は距離方程式によって受信信号電力レベルから決定することもできる。但し、このシステム10の較正又はこの距離方程式の使用は、全てのモバイルユニットが同一のトランスミッタ電力レベルを有するものと仮定している。また、前記距離方程式は、モバイルユニットの距離は信号強度が距離の2乗で変化するという仮定に基づいて決定することができるものと仮定している。
【0010】
モバイルユニットで使用されるトランスミッタの電力レベルは最初から相違し得るとともに、モバイルユニットまたはバッテリーのエージングにつれて変化し得るため、各モバイルユニットと関連する補正値を付与して該モバイルユニットの公称トランスミッタ電力からの偏差を補償することができる。この補正値は、前記受信信号強度測定又は前記距離決定に、加算値、減算値、乗算値として提供することができる。例えば、補正値をデシベル単位の信号強度値に適用する場合、この補正値は信号強度値に加算する又はそれから減算するデシベル単位の値とする。
【0011】
しかし、モバイルユニットはシステムの初期較正後にシステムに加えられることがあるため、いくつかの用途においては個々のモバイルユニットに適用すべき補正値を決定するために測定を行うのは不都合である。加えて、モバイルユニットのトランスミッタ電力は時間の経過とともに変化し得る。
【0012】
図2を参照すると、本発明の方法の一実施例が示されており、本例では、モバイルユニットと関連する補正値を該モバイルユニットの現在の送信特性に依存して連続的にまたは周期的に更新する。本発明の方法では、モバイルユニットと1以上のアクセスポイントとの間の第1の距離を、前記アクセスポイントと前記モバイルユニットとの間における信号の往復伝送時間を用いて決定するとともに、前記モバイルユニットと前記1以上のアクセスポイント間の第2の距離を、前記モバイルユニットから前記1以上のアクセスポイントへの送信の受信信号強度を用い且つ当該モバイルユニットに対する現在の補正値を適用して決定する。第1の距離値と第2の距離値が同じである場合には、前記補正値は当該モバイルユニットに対して正しいものとみなせる。第1の距離値と第2の距離値が相違する場合には、前記補正値を、信号伝送時間による距離値が正しいものと仮定して、前記測定距離を用いて更新する。
【0013】
補正値の更新は、厳密な計算では、補正値が適用される値に依存する。例えば、補正値がデシベル単位の信号強度であり、且つ第1の距離値が10メートルの距離を示し、第2の距離の値が20メートルの距離を示す場合には、この補正値は2対1の距離差に相当する6デシベルの補正を必要とする。
【0014】
本発明においては、補正値の更新は2回以上の測定に基づいて行うのが好ましい。モバイルユニットからアクセスポイントまでの距離の値の決定は、それぞれのアンテナの方向ずれ、介在する設備や壁や人、あるいはマルチパスのようなさまざまな物理的要因によってエラーを発生し得る。従って、距離の測定を繰り返し行い、平均値を用いて補正値を更新するのが望ましい。例えば、1つの配置方法において、本発明方法の一構成例では、測定を一致期間に亘って複数回を繰り返し、距離の平均値を補正値の更新に使用する。第1の距離値と第2の距離値との間に過大な差を示す距離の測定値は平均値の計算において捨てることができる。別の構成例では、移動補正を使用することができ、本例では補正値を各組の測定に対して所要の更新の選択値のみだけ補正して、一定期間の間に補正値が決定された補正値に近づき、エラーが平均化されるようにする。この方法でも第1及び第2の距離値間に過大な差を示す測定値は捨てることができる。
【0015】
補正値の更新を実施する頻度は、個々のシステムとその操作上の要求に依存する。一般に再較正は、大きな負担をシステムの全トラフィックに加えてしまうほど頻繁にすべきでない。モバイルユニットのトランスミッタ電力の変化が急速又は頻繁である可能性はない。更に、全てのモバイルユニットの補正値は同時に更新する必要がないため、更新処理は一定期間に分散させることができる。従って、各モバイルユニットは、例えば1ヵ月以上のサイクルスケジュールで更新することができる。
【0016】
以上、本発明の実施例として好ましいと考えられるものを説明したが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく他の多くの変形や変更を加えることができ、これらの変形や変更も本発明の範囲に含まれるものと認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の方法を実施することができる模範システムを示す簡略ブロック図である。
【図2】本発明の方法の一実施例を説明するフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア内に分布されているアクセスポイントにより受信されるモバイルユニットにより送信された信号の受信信号強度を測定することによって送信しているモバイルユニットの位置を決定する物体位置決定システムを較正する方法であって、
データメッセージを前記アクセスポイントの少なくとも1つから較正すべき各モバイルユニットへ送信するステップと、
前記データメッセージに対応するモバイルユニットからの肯定応答信号を受信するステップと、
前記少なくとも1つのアクセスポイントからモバイルユニットまでの第1の距離値を前記データメッセージと前記肯定応答信号との間の時間遅延に基づいて決定するステップと、
前記少なくとも1つのアクセスポイントから前記モバイルユニットまでの第2の距離値を、前記アクセスポイントで受信される前記モバイルユニットからの肯定応答信号の信号強度を測定し前記モバイルユニットのトランスミッタ電力に対応する補正値で補正することによって決定するステップと、
前記第1の距離値を用いて前記補正値を更新するステップと、
を具えることを特徴とする較正方法。
【請求項2】
前記補正値を更新する前記ステップは、前記第1の距離値と前記第2の距離値を複数の送信データメッセージおよび複数の受信肯定応答信号に対して決定し、前記複数の送信データメッセージおよび複数の受信肯定応答信号の各々に対して前記第1の距離値と前記第2の距離値との差を決定し、前記差を平均化し、前記差の平均値を用いて前記補正値を更新することを特徴とする請求項1記載の更新方法。
【請求項3】
前記第1の距離値と前記第2の距離値との差の大きな値は捨てることを特徴とする請求項2記載の更新方法。
【請求項4】
前記複数のデータメッセージを同じアクセスポイントで送信し、前記複数の肯定応答信号を同じアクセスポイントで受信することを特徴とする請求項2記載の更新方法。
【請求項5】
前記複数のデータメッセージを2以上のアクセスポイントで送信し、前記複数の肯定応答信号の各々を対応するデータメッセージを送信するアクセスポイントで受信することを特徴とする請求項2記載の更新方法。
【請求項6】
前記補正値を更新する前記ステップは、前記送信データメッセージおよび前記受信肯定応答信号に対して前記第1の距離値と前記第2の距離値を決定し、前記第1の距離値と前記第2の距離値との差を決定し、前記差の選択部分を用いて前記補正値を更新することを特徴とする請求項1記載の更新方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−500491(P2007−500491A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533324(P2006−533324)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/016161
【国際公開番号】WO2004/106964
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(599101597)シンボル テクノロジーズ インコーポレイテッド (68)
【Fターム(参考)】