信頼性中継関連送信方式および日和見的協調送信方式のための方法およびシステム
基地局(BS)が中継局(RS)のグループを介して移動局(MS)と通信するための協調通信方式が提供される。RSは、同じ目標MSを扱って、BSとRSとの間に信頼できる送信が存在するようにし、BSは最初に情報をグループ内の全てのRSへ送る。その後、RSは、情報の信頼性値をメッセージの状態でBSへフィードバックする。信頼性指標が閾値以上である場合には、RSが信頼できると見なされる。信頼できるRSは、協調マルチキャスト送信モードを使用して、それらの情報をMSへ送信する。一方、中継グループ内の信頼できないRSは、信頼できるRSと目標MSとの間の送信を傍受する。傍受されたパケットを正しく受信する信頼できないRSは、より高い協調ダイバーシティ利得を目標MSへ与えるために協調送信に参加できる。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、(a)2007年6月29日に出願された「Method and System for Reliable Relay−Associated Transmission Scheme」と題される米国仮特許出願第60/947,183号;(b)2007年7月24日に出願された「Method and System for Opportunistic Cooperative Transmission Scheme」と題される米国仮特許出願第60/951,532号;および(c)2008年5月30日に出願された「Method and System for Reliable Relay−Associated and Opportunistic Cooperative Transmission Schemes」と題される米国非仮特許出願第12/130,807号に関連しており、これらの出願の優先権を主張する。米国表記のため、本出願は、前述した米国特許出願第12/130,807号の継続出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は無線通信に関する。特に、本発明は、1つ以上の中継局(RS)を介した移動局(MS)と無線ネットワークの要素との間の通信に関する。
【背景技術】
【0003】
仮想アンテナシステムを使用して協調ダイバーシティを達成するために様々な協調送信方式が知られている。しかしながら、そのような協調送信システムの大部分は、単一の中継に焦点を合わせており、あるいは、基地局(BS)とRSとの間の信頼性の欠如によって引き起こされる待ち時間を無視する。
【0004】
1つの協調送信方式は、「Distributed space−time−coded protocols for exploiting cooperative diversity in wireless networks」(J.N.Laneman and G.W.Wornell、IEEE Trans.Inf.Theory、vol.49、no.10、pp2415−2425、Oct.2003)(「Laneman I」)に開示されている。Laneman Iにおいて、時空間符号化協調ダイバーシティプロトコルは、通信ネットワークにおける複数のプロトコル層にわたるマルチパスフェーディングに対処するために開発されている。この論文において、著者は、時空間符号化協調ダイバーシティ方式が完全空間ダイバーシティを与えることができることを理論的に証明している。しかしながら、この論文は、プロトコルを実際にどのように実施できるのかを明確に示していない。
【0005】
他の協調送信方式は、「Cooperative diversity in wireless networks:Efficient protocols and outage behavior」(J.N.Laneman、D.N.C.Tse and G.W.Wornell、IEEE Trans.Inf.Theory、vol.51、no.12、pp3062−3080、Dec.2004)(「Laneman II」)に開示されている。Laneman IIにおいて、著者は、協調ダイバーシティを達成するための効率的なプロトコルを開示する。ここでは、所定の中継方式(例えば、amplify−and−forward方式およびdecode−and−forward方式、協調する端末間でのチャンネル測定に基づいて適応する中継選択方式、および、宛先端末からの限られたフィードバックに基づいて適応する増分中継方式)などの、協調無線通信によって使用される幾つかの方法が概説されている。スペクトル効率を高めるために、BSとMSとの間にハイブリッド自動再送要求(HARQ)が導入される。しかしながら、Laneman IIは、RSで受信されるデータが信頼できないときに起こり得る長い遅延の可能性を扱わない。
【0006】
異なる手法は、「Practical relay networks:A generalization of hybrid−ARQ、」(B.Zhao and M.C.Valenti、IEEE J.Sel.Areas Commun.、vol.23、no.1、pp.7−18、Jan.2005)(「Zhao」)において論じられている。Zhaoは、HARQの一般化に基づいて、直交するタイプスロットにわたって動作する複数の中継を開示する。従来のHARQとは異なり、再送信されたパケットはオリジナルソースから発生する必要はなく、むしろ、再送信パケットは、送信を傍受するRSによって送られてもよい。同様に、他のHARQに基づく方式は、(a)「Achievable diversity−multipleeing−delay tradeoff in half−duplex ARQ relay channels」(T.Tabet、S.Dusad and R.Knopp、Proc.IEEE Int.Sym.On Inf.Theory、pp.1828−1832、Sep.2005)(「Tabet」)、および、(b)に発表されているによる論文「Hybrid−ARQ in multihop networks with opportunistic relay selection」(C.K.Lo、R.W.Heath、Jr and S.Vishwanath、Proc.IEEE Int.Conf.on Acoustics、Speech、and Signal Proc.、pp.617−620、April、2007)(「Lo」)において論じられている。TabetおよびLoはいずれも、単一の中継チャンネルを遅延制限フェーディングするためのHARQに基づく方式について論じている。しかしながら、Zhao、TabetおよびLoは全て、単一のRSに制限される。幾つかのRS間の協調が有効に使われていない。
【0007】
「Method of providing cooperative diversity in a MIMO wireless network」(S.Kim and H.Kim)(「Kim」)と題された米国特許出願公開2006/0239222 A1は、多入力多出力(MIMO)無線ネットワークにおいて協調ダイバーシティを与えるための方法を開示する。Kimにおいて、RSは、エラーをチェックして、検証されたストリーム(すなわち、「正しい」ストリーム)を中継し、BSからのエラーストリームの再送信を要求する。しかしながら、Kimの方法は、単一のRSだけを調べており、協調ダイバーシティを考慮していない。
【0008】
三つの協調中継方式は、(a) 「Cooperative relay approaches in IEEE 802.16j」(W.Ni、L.Cai、G.Shen and S.Jin、IEEE C80216j−07/258、Mar.2007)(「Ni」)、および、(b) 「Clarifications on cooperative relaying」(J.Chui、A.Chindapol、K.Lee、Y.Kim、C.Kim、B.Kwak、S.Chang、D.H.Ahm、Y.Kim、C.Lee、B.Yoo、P.Wang、A.Boariu、S.Maheshwari and Y.Saifullah、IEEE C80216j−07/242r2、Mar.2007)(「Chui」)において論じられている。協調中継方式は、(i)協調ソースダイバーシティ、(ii)協調送信ダイバーシティ、および、(iii)協調ハイブリッドダイバーシティである。しかしながら、上記の協調中継方式はいずれもBSとRSとの間のチャンネルの信頼性を考慮していない。RSによって再生される情報が信頼できないと、協調ダイバーシティの効果が低下する場合があり、それにより、MSにおける性能全体が低下する。
【0009】
「An ARQ in 802.16j」(S.Jin、C.Yoon、Y.Kim、B.Kwak、K.Lee、A.Chindapol and Y.Saifullah、IEEE C802.16j−07/250r4、Mar.2007)(「Jin」)は、ARQがソースデータの高速リカバリを行なう協調方式を開示する。Jinにおいて、BSは、任意のRSがBSからブロックを受信し損なうときにソース情報を再送信する。Jinの方式は、RSとBSとの間だけで再送信することにより待ち時間を減らす。しかしながら、複数のRSが存在すると、全てのRSがソースブロックをうまく受信するまでBSが再送信しなければならない場合に、かなりの遅延が起こる場合がある。また、再送信は、スペクトル効率も低下させる。Jinのモデルは、全てのRSが正しいソースブロックを受信する必要がないため、それを改良することができる。かなりの数のRSがソースブロックを確実に受信する限り、他の信頼できないRSは、信頼できるRSとMSとの間の送信を傍受することによって正しいソースブロックを得ることができる。
【0010】
殆どの協調方式(例えば、Zhao、TabetおよびLo)は、1つのRSだけが各ホップで再送信に関与することを前提としているが、そのような方式は、複数のRSが更に高い協調ダイバーシティを与えることができることを実現できない。また、BSとRSとの間のチャンネルの信頼性は、Lanemen I・II、NiおよびChuiなどの幾つかの強調方式で考慮されていない。RSにおける信頼できない情報は、MS性能を低下させる場合があり、また、大きな遅延を引き起こす場合がある。
【0011】
また、BSによる再送信は、システムのスペクトル効率も低下させる。Jinにおいて論じられるように、BSは、1つのRSだけが信頼できるデータを得ない場合であってもデータを再送信しなければならない。そのような方式は、待ち時間をもたらし、RSの数が増大するときにBSとRSとの間にデッドロックを生み出す場合がある。
【0012】
Zhaoを除き、前述した全ての方式は、RS間の無線リソースを無視する(すなわち、BSから信頼できる情報を受信しないRSは、信頼できるRSとMSとの間の送信を傍受できる場合がある)。しかしながら、Zhaoは、各ホップで1つのRSを選択することに焦点を合わせる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、「信頼性中継関連送信方式」は、高速リカバリを行なうとともに、BSの負担を減少させる。そのような方式において、BSは、同じ目標MSを扱うRSの中継関連グループ(「R-グループ」)へデータを送信する。RSは、例えば、全てのMSとRSとの間のチャンネル状態にしたがって行なわれるMSの最初の測距中および定期的な測距中にグループ化される。本発明に係る送信方式は、BSとR-グループとの間で信頼できる送信を確保する。BSは、最初に、マルチキャストモードまたはユニキャストモードのいずれかを使用して、R-グループ内の全てのRSへ情報を送る。R-グループ内の各RSは、BSから情報を受信した後、BSとRSとの間のチャンネル状態、RSとMSとの間のチャンネル状態、RSでの負荷状態、RSでの待ち行列長さなどの1つ以上のパラメータを含む信頼性関数にしたがって信頼性値を計算する。その後、RSは、それらの信頼性値を、中継関連肯定応答メッセージ(R-ACK)の状態でフィードバックする。
【0014】
BSがユニキャストモードを使用してデータをRSへ送る場合には、R-ACKの実施が簡単である。しかしながら、ユニキャストモードは、BSとRSとの間にかなりの量のデータ送信源を必要とする。BSがマルチキャストモードを使用してデータをRSへ送る場合、R-ACKは、コリジョンを避けるために、異なる時間、周波数または空間でフィードバックしなければならない。BSがR-ACKの全てを受信した後或いは一部を受信した後であっても、信頼性指標が生成されて所定の閾値と比較される。信頼性指標が所定の閾値以上である場合には、R-グループが「信頼できるR-グループ」になり、R-グループと目標MSとの間の送信を開始できる。それ以外の場合には、信頼性指標が所定の閾値を上回るまで或いは再送信の数が所定の限度を超えるまで、BSとR-グループとの間の再送信が続く。
【0015】
本発明の1つの利点は、RSにおける信頼性関数とBSにおける信頼性指標とによってBSとRSとの間に信頼できる送信を与える。RSは、(a)BSとRSとの間のチャンネル状態、(b)RSと目標MSとの間のチャンネル状態、および、(c)RSでの負荷状況にしたがって、それらの信頼性値をBSへフィードバックする。BSは、BSでの信頼性指標が所定の閾値以上となるまで、全てのRSに対してパケットを再送信する。
【0016】
本発明の一実施形態は、BSとRSとの間のチャンネル状態およびRSと目標MSとの間のリンク品質の両方に基づいて目標MSへパケットを協調して送信するためにRSの一部をBSが日和見的に選択できる日和見的協調送信方式を提供する。BSとR-グループとの間の信頼できる送信が開始された後、待ち時間を減らすとともにBSを解放して他の機能を果たすため、BSはソース情報を再送信しない。再送信はR-グループによって制御される。信頼できるRSと目標MSとの間の送信を傍受する信頼できないRSは、より高い協調ダイバーシティを与えることができる。
【0017】
特に、BSは、BSとR-グループとの間の信頼できる送信が実現された後にパケットをR-グループへ再送信しないため、本発明は、BSの作業負荷およびパケットの待ち時間の両方を従来技術の解決策と比べて減少させる。この場合、順方向送信はR-グループとMSとの間でのみ起こる。
【0018】
本発明の1つの利点は、RS間で無線源を利用する。信頼できないRSが信頼できるRSまたは接続RSと目標MSとの間の送信を傍受すると、信頼できないRSは、傍受された情報を通じて協調ダイバーシティを与えるために再送信に参加する。
【0019】
本発明は、添付図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すると更に良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る、RSのグループを用いたBSとMSとの間の通信を示している。
【図2】本発明の一実施形態に係る、R-グループがどのように構成されるのかを大まかに示している。
【図3】本発明の一実施形態に係る、信頼性中継関連送信方式のフローチャート300を示している。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る、信頼性中継関連送信方式のフローチャート400を示している。
【図5】図3または図4に示される方法下でのR-グループを構成するプロセス中のBSの動作を示すフローチャートである。
【図6】日和見的協調送信方式下での、BSと、信頼できるRSと、信頼できないRSと、MSとの間の関係をまとめている。
【図7】(a)は本発明の一実施形態に係る、RSの分類間の関係を示している。(b)は本発明の一実施形態に係る、RSの役割がパケット送信の過程でどのように変化し得るのかを示す状態図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る、RSの動作を示すフローチャートを示している。
【図9】本発明の一実施形態に係る、MSの動作を示すフローチャートを示している。
【図10】信頼できるRSが信頼できないRSによって傍受される目標MSへパケットを送る一例のステップ1)を示している。
【図11】信頼できるRSが信頼できないRSによって傍受される目標MSへパケットを送る一例のステップ2)を示している。
【図12】信頼できるRSが信頼できないRSによって傍受される目標MSへパケットを送る一例のステップ3)を示している。
【図13】信頼できるRSが信頼できないRSによって傍受される目標MSへパケットを送る一例のステップ4)を示している。
【図14】本発明の一実施形態に係る、BSからの最初の送信後に信頼できるRSになる2-RSシステムの両方のRSを示している。
【図15】本発明の一実施形態に係る、BSからのデータパケットの最初の送信後に不正確に復号化する2-RSシステムの両方のRSを示している。
【図16】本発明の一実施形態に係る、他のRSがデータパケットを正しく復号化し損なっている間に、BSからの最初の送信後にデータパケットを正しく復号化する2-RSシステムのRSのうちの一方を示している。
【図17】図16の初期状態を示しており、更に、本発明の一実施形態に係る、RS1がMSへのRS2の送信を正しく傍受しているにもかかわらず、MSがデータメッセージを正しく受信していない状態を示している。
【図18】2つのRSを介したBSとMSとの間の直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)に基づく一実施形態を示している。
【図19】実施形態で用いるのに適したフレーム構造を示している。図18は、3つの連続するフレームのうちの第1のフレーム(「フレームj」)を示している。
【図20】実施形態で用いるのに適したフレーム構造を示している。図18は、3つの連続するフレームのうちの第2のフレーム(「フレーム(j+1)」)を示している。
【図21】実施形態で用いるのに適したフレーム構造を示している。図18は、3つの連続するフレームのうちの第3のフレーム(「フレーム(j+2)」)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る、RSのグループを用いたBSとMSとの間の通信を示している。中継を伴わないBSとMSとの間のダイレクト通信では、BSは、無線アクセスシステムによって指定される所定のフレーム構造内でシンボルをMSへ送信する。しかしながら、多くの場合、マルチパス伝搬効果(例えば、パスロス、フェーディング、および、シャドウイング)およびBSの限られた範囲に起因して、BSとMSとの間のダイレクト通信が不可能な場合がある。1つの可能な解決策は、BSとMSとの間で中継要素(すなわち、RS)を使用する。図1は、例えば最初の測距プロセスまたは定期的な測距プロセス中にその構成員が決定されるRSのグループを示している。通常、RSは、目標MSに対するそれらのそれぞれのチャンネル状態指標が所定の閾値を越えるときにグループの状態で含まれる。RSのこのグループ(すなわち、RS1、RS2、....、RSN)は、目標MSのための「中継関連グループ」(「R-グループ」)と称される。逆に、MSは、RS1、RS2、....、RSNの「サービスリスト」内にあると言われる。RSとMSとの関連性はBSへ定期的に報告される。他のRS(すなわち、目標MSに対するそのチャンネル状態指標が所定の閾値を下回っているRS)は、RSの「非中継関連グループ」(「非R−グループ」)に属する。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態に係る、R-グループがどのように構成されるのかを大まかに示している。図4に示されるように、目標MSは、最初の測距プロセスまたは定期的な測距プロセス中にプリアンブルを送る(ステップ201)。RSがプリアンブルを検出すると、RSは、それとMSとの間のチャンネル状態にしたがって、MSがその所定のカバレッジエリア内にあるか否かを決定する(ステップ202)。その後、RSは、MSがRSのカバレッジエリア内にあるか否かをBSへ報告する(ステップ203)。これらの報告から、BSがR-グループを構成する(ステップ204)。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、信頼性中継関連送信方式は、高速リカバリを行なうとともに、BSの負担を減少させる。図3は、信頼性中継関連送信方式をまとめるフローチャート300を示している。図3に示されるように、BSは、カウンタを初期化する(ステップ301)とともに、マルチキャストモードまたはユニキャストモードを使用してR-グループの全てのRSに対してデータパケットを送る(ステップ302)。これらのデータパケットは、RSの信頼性を識別するデータまたは単にプローブを含んでもよい。ユニキャストモードまたはマルチキャストモードのいずれにおいても、目標MSの識別表示はデータパケット内に含められる。各RSは、BSからデータパケットを受信した後、それ自体の信頼性値を計算する(ステップ303−1〜303−N)。この信頼性値は、(a)BSとこの特定のRSとの間のチャンネル状態、(b)この特定のRSと目標MSとの間のチャンネル状態、および、(c)RSでの現在の負荷の関数である信頼性関数を使用して得られる。
【0024】
R-グループ内のRSは、その後、R-ACKを使用して、RSの信頼性値をBSへ送り返す(ステップ304−1〜304−N)。信頼性関数に応じて、R-ACKは、チャンネル状態インジケータまたは従来の肯定応答(ACK)メッセージに類似していてもよい。BSがR-グループ内のRSからR-ACKの全て或いは一部を受信した後、BSは、R-グループのための信頼性指標を計算して、後に所定の閾値と比較されるカウンタ値を1単位だけ増大し(ステップ305)、カウンタ値を所定の再送信限度に関してチェックする(ステップ306)。計算された指標が所定の閾値に等しい或いは所定の閾値を超える場合、BSは、R-グループを信頼できるR-グループと見なし、R-グループに対して通知メッセージを送り(ステップ307)、それにより、通知を送られたR-グループは、協調方式を使用して、受信したパケットを目標MSへ送信することができる。しかしながら、計算された指標が所定の閾値を下回っている場合、BSは、R-グループを信頼できないR-グループと見なし、信頼性指標が所定の閾値以上になるまで或いは再送信数が所定の再送信限度を超えるまでパケットをR-グループへ再送信する(すなわち、ステップ302へ戻る)。
【0025】
再送信の数は、BSとRSとの間の再送信を所定の限度に制限するためにカウンタによって記録される。信頼できるR-グループ内の全てのRSが信頼できる必要はない。したがって、一部のRSが、RSのそれぞれの信頼性値にしたがって、信頼できるRSと称される。次に、RSにおける信頼性関数、BSにおける信頼性指標、および、信頼できるRSを決定するためのプロセスの例について説明する。
【0026】
hBS-RSnおよびhRSn-MSが、BSとRSnとの間のチャンネル状態、RSnと目標MSとの間のチャンネル状態をそれぞれ示すものとする。一般に、チャンネル状態hBS-RSnおよびhRSn-MSは、チャンネル電力利得と称されてもよい。hBS-RSnは、RSnで受信された各パケット毎に更新されてもよく、一方、hRSn-MSは、定期的な測距プロセス中に更新されてもよい。RSnにおける信頼性関数および負荷係数はそれぞれgnおよびlnとして示される。rがBSにおける信頼性指標を示すものとする。RSnにおける負荷係数lnは、RSnのサービスリスト中に現在あるMSの数である。LnがRSnにおける最大負荷係数を示すものとする。幾つかの信頼性関数およびそれらの対応する信頼性値および信頼できるRSは以下のように規定される。
【0027】
1)最弱リンクおよび負荷係数に基づく1つの信頼性関数は、
【数1】
であり、また、対応する信頼性指標は、
【数2】
である。R-グループ内のRSnは、gn>0の場合に信頼できると見なされ、それ以外の場合に信頼できないと見なされる。
【0028】
2)1リンク当たりのスループット1の調和平均および負荷係数に基づく他の信頼性関数は、
【数3】
であり、また、対応する信頼性指標は、
【数4】
である。R-グループ内のRSnは、gn>0の場合に信頼できると見なされ、それ以外の場合に信頼できないと見なされる。
【0029】
3)他の信頼性関数は、最弱リンクおよび負荷係数に基づくバイナリ関数、すなわち、
【数5】
であり、また、対応する信頼性指標は、
【数6】
である。ここで、hは所定の閾値である。R-グループ内のRSnは、gn=1の場合に信頼できると見なされ、それ以外の場合に信頼できないと見なされる。
【0030】
4)パケット損失に基づく他の信頼性関数は、
【数7】
であり、また、対応する信頼性指標は、
【数8】
である。R-グループ内のRSnは、gn>0の場合に信頼できると見なされ、それ以外の場合に信頼できないと見なされる。
【0031】
信頼性関数がhBS-RSnおよびhRSn-MSの陽関数ではないと思われるかもしれない。しかしながら、パケットの正しい受信はチャンネル状態hBS-RSnによって決定されるため、また、hRSn-MSが所定の閾値を超えるときだけRSnがR-グループ内に含められるため、信頼性関数はhBS-RSnおよびhRSn-MSの両方の陰関数である。R-グループ内のRSnは、gn=1の場合に信頼できると見なされ、それ以外の場合に信頼できないと見なされる。
【0032】
図4は、例4)に基づく本発明の第2の実施形態に係る、信頼性中継関連送信方式のフローチャート400を示している。図4に示されるように、BSは、カウンタを初期化する(ステップ401)とともに、マルチキャストモードまたはユニキャストモードを使用してR-グループ内の全てのRSに対してデータパケットを送る(ステップ402)。図3の実施形態の場合と同様に、送信されるデータパケットは、RSの信頼性を識別するデータまたは単にプローブを含んでもよい。ユニキャストモードまたはマルチキャストモードのいずれにおいても、目標MSの識別表示はデータパケット内に含められる。各RSは、BSからデータパケットを受信した後、受信されたデータパケットがこれまでに正しく受信されたことがあるか否かを決定する(ステップ403−1〜403−N)。
【0033】
R-グループ内のRSは、その後、R-ACKを使用して、データパケットがこれまでに正しく受信されたことがあるか否かについてのそれらの決定をBSへ送り返す(ステップ404−1〜404−N)。それらのそれぞれの決定に応じて、R-ACKは、それが信頼できるRS(「1」)または信頼できないRS(「0」)であることを指定してもよい。BSがR-グループ内のRSからR-ACKの全て或いは一部を受信した後、BSは、R-グループのための信頼性指標を計算して、後に所定の閾値と比較されるカウンタ値を1単位だけ増大し(ステップ405)、カウンタ値を所定の再送信限度に関してチェックする(ステップ406)。計算された指標が所定の閾値に等しい或いは所定の閾値を超える場合、BSは、R-グループを信頼できるR-グループと見なして、R-グループに対して通知メッセージを送り(ステップ407)、それにより、通知メッセージを送られたR-グループは、協調方式を使用して、受信したパケットを目標MSへ送信することができる。しかしながら、計算された指標が所定の閾値を下回っている場合、BSは、R-グループを信頼できないR-グループと見なし、信頼性指標が所定の閾値以上になるまで或いは再送信数が所定の再送信限度を超えるまでパケットをR-グループへ再送信する(すなわち、ステップ402へ戻る)。
【0034】
図5は、図3または図4に示される方法下でのR-グループを構成するプロセス中のBSの動作を示すフローチャートである。図5は、ステップ507において、信頼できるRSを構成しようとする試行の数が所定の再送信数によって制限されることを更に示している。
【0035】
上記方法のうちの任意の1つを使用して信頼できるR-グループを構成した後、R-グループと目標MSとの間でデータを送信するために日和見的協調送信方式が使用されてもよい。パケット送信のための日和見的協調送信方式は以下のように実施することができる。
【0036】
ステップ1):R-グループ内の信頼できるRSは、協調して、分散時空間符号化方式2または繰り返し符号化方式の下で「協調マルチキャスト送信モード」を使用してパケットをMSへ送信する。協調マルチキャスト送信により、R-グループ内の信頼できないRSは、信頼できるRSとMSとの間の送信を傍受することができる。これらの信頼できないRSは、傍受されたパケットが正しく受信されたか否かに応じて、「信頼できる傍受RS」または「信頼できない傍受RS」になる。ここでは、協調マルチキャスト送信モードは、マルチキャストグループがR-グループおよび目標MSの両方で構成される協調送信モードである。図6は、日和見的協調送信方式下での、BSと、信頼できるRSと、信頼できないRSと、MSとの間の関係を要約している。
【0037】
ステップ2):信頼できるRSのうちの1つ以上からMSがデータパケットを受信すると、データパケットが正しく受信されたか否かに基づいて、「協調肯定応答メッセージ」(「C-ACK」)または「協調否定応答メッセージ」(「C-NACK」)がR-グループへ送り返される。従来のACKまたはNACKメッセージとは異なり、C-ACKまたはC-NACKメッセージであるから、C-ACKまたはC-NACKメッセージは、マルチキャストモードまたはブロードキャストモードを使用してR-グループへ送信される。MSがC-ACKメッセージをフィードバックする場合には、データパケットのための送信が完了する。それ以外の場合(すなわち、MSが信頼できるRSから信頼できる情報を受信できないことをC-NACKメッセージによって示す場合)には、以下のステップ3)が行なわれる。
【0038】
ステップ3)C-NACKメッセージを正しく受信した信頼できるRSおよび信頼できる傍受RSはいずれも「接続RS」となる。接続RSは、協調マルチキャスト送信モード下で、傍受された情報を目標MSへ協調して送信する。信頼できない傍受RSも、接続RSとMSとの間の送信を傍受しており、それらが傍受されたパケットを正しく受信する場合には、信頼できる傍受RSになってもよい。MSが接続RSからデータパケットを受信した後、MSは、MSがデータパケットを正しく受信したか否かに応じて、C-ACKまたはC-NACKメッセージをマルチキャストし或いはブロードキャストする。MSがC-ACKパケットを与える場合には、送信がうまく完了する。それ以外の場合には、目標MSがC-ACKメッセージを与えるまで或いはR-グループと目標MSとの間の再送信数が所定の限度に達するまでステップ3)が繰り返される。
【0039】
非接続RSは、C-NACKを目標MSから不正確に受信する信頼できるRSまたは信頼できる傍受RSである。RSは、その時々において、信頼できる傍受RSおよび接続RSとなり得る。それは、これらのラベルが動的に変化しているからである。例えば、信頼できないRSは、MSと接続RS(信頼できる傍受RSであってもよい)との間の送信も傍受できる。RSのこれらの全てのカテゴリー間の関係が図7(a)および(b)に要約されている。図7(a)は、全てのRSで構成されるグループ(701)がR-グループ(703)とR-グループ以外のRSのグループ(「非R-グループ」;702)とを含むことを示している。R-グループ内において、RSは、信頼できるRS(705)のグループおよび信頼できないRS(704)のグループに属していてもよく、信頼できないRS(704)のグループは、信頼できない傍受RS(706)のグループと信頼できる傍受RS(707)のグループとに更に分けられる。
【0040】
図7(b)は、本発明の一実施形態に係る、RSの役割がパケット送信の過程でどのように変化し得るのかを示す状態図である。図7(b)に示されるように、RSは、RSとBSとの間のチャンネル状態に応じて、信頼できるRS(705)または信頼できないRS(704)になってもよい。信頼できるRSは、信頼できるRSとMSとの間のチャンネル状態に応じて、接続RS(708)または非接続RS(709)になってもよい。同様に、信頼できないRSは、信頼できないRSとMSとの間および信頼できないRSと信頼できるRSとの間のチャンネル状態に応じて、信頼できる傍受RS(706)または信頼できない傍受RS(707)になってもよい。接続RSが非接続RSになってもよい。信頼できる傍受RSは、接続RS、非接続RS、または、信頼できない傍受RSになってもよい。信頼できない傍受RSが信頼できる傍受RSになってもよい。
【0041】
協調送信に適した方式(例えば、分散時空間符号化)を使用すると、協調に関与するRSの数をMSに知らせる必要もなく、傍受されたパケットが正しく受信されたか否かについてのACK/NACKメッセージを他のRSへ送るように信頼できないRSが求められることもない。
【0042】
図8は、本発明の一実施形態に係る、RSの動作を示すフローチャートを示している。図8に示されるように、最初に、RSは、それがデータパケットをBSから正しく受信したかどうかを決定する(801)。データパケットが正しく受信されていると決定される場合、RSは、ユニキャストモードによって肯定的なメッセージを伴うR-ACK(802)を送信する。それ以外の場合には、否定的なメッセージを伴うR-ACKがユニキャストモードによって送られる(811)。その後、RSは、BSからの通知メッセージを待つ(803、812)。BSからのメッセージは、RSが信頼できるRSと見なされているか(804)或いは信頼できないBSと見なされているか(813)どうかを示している。所定の時間間隔後にBSから通知が受信されない場合には、RSが801へ戻る。RSが信頼できるRSである場合、RSは、協調マルチキャスト方式を使用してデータパケットをMSへ送る(805)。その後、C-ACKメッセージがMSから受信される場合には(806)、MSへのデータ送信が完了したと見なされる。それ以外の場合には、RSは、信頼できるRSがデータパケットを所定の回数を超えて再送信したかどうかを決定する(807)。RSがデータパケットを所定の回数を超えて再送信した場合には、RSは、データパケットの送信が完了されたと見なす。それ以外の場合、RSは、C-NACKメッセージが受信されるかどうかを決定する(808)。RSがC-NACKメッセージを正しく受信した場合、RSは、非接続RSになり(809)、C-ACKメッセージが受信される(806)まで非接続RSのままである。それ以外の場合、RSは、接続RSになり、元に戻ってデータパケットをBSから受信する(801)。
【0043】
信頼できないRSの場合(813)、RSは、信頼できないRSが信頼できるRSまたは接続RSからのデータパケットの協調マルチキャストデータ送信を正しく傍受できるかどうかを決定する(814)。正しい送信が傍受されるかどうかに応じて、RSは、信頼できる傍受RS(815)または信頼できない傍受RS(819)になる。信頼できない傍受RSにおいては、正しい送信が所定の最大再送信数内で傍受されない場合(820)、データパケットのためのデータ送信が完了する。信頼できる傍受RSの場合、RSは、信頼できる傍受RSがC-ACKメッセージをMSから受信したかどうかを決定する。受信した場合には、データパケットのためのデータ送信が完了したと見なされる。それ以外の場合、RSは、信頼できる傍受RSがC-NACKメッセージをMSから受信したかどうかを決定する(817)。受信した場合、RSは、接続RSになり(818)、805において協調マルチキャスト送信に参加する。それ以外の場合、RSは、非接続RSになって、816においてC-ACKメッセージを待つ。
【0044】
図9は、本発明の一実施形態に係る、MSの動作を示すフローチャートを示している。図9に示されるように、最初に、MSは、それが任意のR-グループの一員からデータパケットを正しく受信したかどうかを決定する(901)。受信した場合には、MSがマルチキャストモードまたはブロードキャストモードを使用してC-ACKメッセージをR-グループに送り(902)、データパケット送信が完了したと見なされる。それ以外の場合には、MSは、マルチキャストモードまたはブロードキャストモードを使用してC-NACKメッセージをR-グループに送り(903)、901においてデータパケットの次の送信を待つ。
【0045】
図10〜13は、信頼できるRSが信頼できないRSによって傍受される目標MSへパケットを送るステップ1〜4をそれぞれ含む例を示している。図10〜13において、全てのRSは、最初の測距プロセスまたは定期的な測距プロセス中にR-グループと非R-グループとに分けられる。図10に示されるように、RS1、RS2、RS3、RS4、RS5はR-グループに属する。R-グループを構成するための任意の方法を使用すると、RS1およびRS2が信頼できるRSと見なされ、一方、RS3、RS4およびRS5が信頼できないRSと見なされる。
【0046】
図10〜13では、以下のステップが例示される。
【0047】
ステップ1)図10に示されるように、信頼できるRS(すなわち、RS1およびRS2)は、分散時空間符号化(例えば、Papadopoulosで説明される分散時空間符号化)を使用して、協調マルチキャスト送信モードによってパケットをMSへ送る。協調マルチキャスト送信モード下でMSがデータパケットを受信し、一方、信頼できないRS(すなわち、RS3、RS4およびRS5)によって送信が傍受される。しかしながら、前述したように、RS3およびRS4だけが傍受されたパケットを正しく復号化するため、RS3およびRS4が信頼できる傍受RSとなり、RS5が信頼できない傍受RSとなる。
【0048】
ステップ2)図11に示されるように、MSは、マルチキャストモードまたはブロードキャストモードを使用してC-NACKメッセージをR-グループに送り返す。これは、MSがステップ1)から受信されたパケットを正しく復号化しないからである。RS2およびRS3はC-NACKメッセージを正しく受信するため、RS2およびRS3は接続RSになる。しかしながら、RS1およびRS4はC-NACKメッセージを正しく受信しない。したがって、RS1およびRS4は、MSとの接続が一時的に失われたと見なされる。RS5に関しては、RS5がパケットを有していない(接続RSからの送信を傍受しなかった)ため、RS5は、(図11に示されるように)それがC-NACKメッセージを正しく受信する場合であっても何ら行動をとらない。
【0049】
ステップ3)図12に示されるように、接続RS(すなわち、RS2およびRS3)が協調マルチキャスト送信モードによってパケットをMSへ送り、信頼できる傍受RSによって送信が正しく傍受される。
【0050】
ステップ4)図13に示されるように、MSは、それがステップ3)から受信されたパケットを正しく復号化するため、C-ACKメッセージをR-グループへ送り返す。
【0051】
図14〜17は、2つのRS(すなわち、2つのRSで構成されるR-グループ)によって示される上記の例4)の信頼性指標を使用する本発明の例を与えている。この例では、信頼性指標のための閾値が「1」として設定される(すなわち、パケットを正しく復号化する1つのRSが存在する限り、BSはデータパケットをR-グループへ再送信しない)。
【0052】
図14は、両方のRSがBSからの最初の送信後に信頼できるRSになり、それにより、両方のRSがMSへ協調して送信する状態を示している。図14に示されるように、両方のRSは、BSからのパケットを正しく復号化して、肯定的なメッセージを伴うR-ACKをBSへフィードバックする。その結果、BSは、信頼できるR-グループを示唆する両方のRSに対して通知メッセージを送る。したがって、両方のRSは、所定の時空間符号化(例えば、Papadopoulosで開示された時空間符号化)を使用して、受信したパケットをMSへ協調して送信する。MSで受信されたパケットが正しく復号化されない場合には、図14に示されるように、MSはC-NACKメッセージを両方のRSへ送る。その後、BSからパケットを再送信する代わりに、R-グループとMSとの間でのみ再送信が行われる(すなわち、RSがMSへ協調して再送信する)。このようにすると、待ち時間が減少され、BSがパケットを再送信する必要がなくなる。
【0053】
図15は、両方のRSが最初の再送信でBSからのデータパケットを不正確に復号化し、それにより、BSがパケットを再送信しなければならない状態を示している。再送信時、両方のRSがパケットを受信して正しく復号化する。その結果、両方のRSが協調的態様でデータパケットをMSへ送る。
【0054】
図16は、RSのうちの一方(RS2)がBSから受信されたパケットを正しく復号化し、一方、他方のRS(RS1)が受信されたパケットを正しく復号化しないことを示している。したがって、RS2だけが、従来のユニキャストまたはマルチキャスト送信モードとは異なりR-グループの一員だけ(すなわち、RS1および対象とするMS)による受信を許容する協調マルチキャスト送信を使用してMSへパケットを送信する信頼できるRSとなる。RS2がパケットをMSへ送信すると、信頼できないRS(すなわち、RS1)がこの送信を傍受する。その結果、MSは、RSがデータパケットを正しく復号化するか否かにしたがって、C-ACKメッセージまたはC-NACKメッセージをR-グループへ送り返す。MSがMSへの最初の送信時に信頼できるRS(すなわち、RS2)からデータパケットを受信し損ない或いは復号化できない場合、図16に示されるように、RS1は、傍受された情報を使用して更なる協調ダイバーシティを与える。このようにして、RS1およびRS2の両方の無線源が利用される。
【0055】
図17は図16の初期状態を示しており、更に、本発明の一実施形態にしたがって、RS1がMSへのRS2の送信を正しく傍受しているにもかかわらず、MSがデータメッセージを正しく受信していない状態を示している。RS1で受信された傍受情報が信頼できる(例えば、図17によって示される状態)か否かにかかわらず、RS2は、RS1とは無関係にパケットをMSへ再送信する。この場合も先と同様、MSがRS2から受信されたパケットを正しく復号化しない場合、および、RS1が情報を正しく傍受する場合には、RS1が依然としてRS2と協調して協調ダイバーシティをMSへ与えてもよい。ここで、我々は「日和見的」であること(すなわち、RSとBSとの間のチャンネル状態をうまく利用すること)に気づくことができ、すなわち、BSとの良好な接続(または、チャンネル)を有するRSが信頼できるRSとなり、一方、信頼できないRSは、当初信頼できるRSとの良好な接続を確立できる場合に日和見的に信頼できる傍受RSとなる。
【0056】
図14〜17は、信頼性指標が上記したような特定の閾値を上回るとBSがR-グループへの再送信から解放されることを示している。図14〜17に示される方法の下では、より多くのRSがパケットをMSへ協調して送信できるようにし、それにより、協調ダイバーシティを与えてBSのカバレッジを延長するため、正しいパケットをBSから受信しない信頼できないRSが、信頼できるRSまたは接続RSからの再送信を傍受してもよい。
【0057】
本発明の方法を実施する様々な方法が存在する。例えば、図18は、BSと2つのMSとの間の2つのRSを介した直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)に基づく一実施形態を示している。図18に示されるように、(RS1、RS2およびMS1)および(RS1、RS2およびMS2)は、それぞれが前述した日和見的協調送信モードを使用する2つのR-グループである。図18において、各R-グループには、OFDMA方式による通信のための重なり合わない周波数の組が割り当てられる。
【0058】
図19〜21は、実施形態で用いるのに適したフレーム構造を示している。このフレーム構造は、当業者に知られるIEEE802.16j規格で使用されるフレーム構造に類似している。図19〜21は、ラベル、すなわち、フレームj、フレーム(j+1)、フレーム(j+2)がそれぞれ付けられた3つの連続するフレームを示している。各フレームはアップリンク(UL)サブフレームとダウンリンク(DL)サブフレームとを含み、各サブフレームはアクセス域と中継域とを含む。アクセス域では、BSのダイレクトカバレッジ内でBSがMSと通信し、RSのカバレッジ内にあり且つBSによるダイレクトカバレッジの外側にあるMSとRSが通信する。BSは、再送信が不必要となるように計算された信頼性指標が所定の閾値よりも大きいことを示す単一ビット(例えば「0」)によって表わされてもよい「協調方式」メッセージによる再送信が存在するか否かをR-グループに知らせる。逆に、「1」の値を有する協調方式メッセージが、R-グループへのBSによる再送信を示す。アクセス域では、信頼できないRSが信頼できるRSまたは接続RSとMSとの間の送信を傍受する。一方、中継域では、BSがRSと通信する。R-ACK、C-ACKおよびC-NACKメッセージをULの制御メッセージ中に組み込むことができる。
【0059】
非直交分散時空間符号化の下では、信頼できるRSおよび信頼できないRS間でACKまたはNACKメッセージをやりとりする必要がある場合がある。その場合、ACKメッセージまたはNACKメッセージが異なるRSのための異なるサブキャリアによって送信されてもよい。前述したように、OFDMAに基づくシステムにおいて、異なるユーザにはそれぞれ、RSが同時に送受信できるように、通信で用いる重なり合わないサブキャリアの組(すなわち、周波数)が割り当てられる。非OFDMAシステムでは、RSは、送信および受信の両方を同時に行なうことができない。その状況下では、一部のRSが信頼できないRSの送信を傍受できない。しかしながら、信頼できないRSは、信頼できないRSが任意の他のユーザへ送信するためのデータを何ら有していない場合には、信頼できるRSまたは接続RSと目標MSとの間の送信を依然として傍受できる。
【0060】
前述した詳細な説明は、本発明の特定の実施形態を例示するために与えられており、限定しようとするものではない。本発明の範囲内で多数の変形および改良が可能である。本発明は以下の請求項に示される。
【0061】
注釈
1 例えば「End−to−end throughput metrics for QoS management in 802.16j MR systems」(O.Oyman、S.Sandhu and N.Himayat、IEEE C802.16j−06/202、Nov、2006、Dallas、Texas)を参照
2 分散時空間符号化の一例は、既に出願された「Method and Apparatus for Distributed Space−time Coding for the Downlink of Wireless Radio Networks、」(H.Papadopoulos)と題される米国特許出願(代理人整理番号PA−551(「Papadopoulos」))に開示されている。
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、(a)2007年6月29日に出願された「Method and System for Reliable Relay−Associated Transmission Scheme」と題される米国仮特許出願第60/947,183号;(b)2007年7月24日に出願された「Method and System for Opportunistic Cooperative Transmission Scheme」と題される米国仮特許出願第60/951,532号;および(c)2008年5月30日に出願された「Method and System for Reliable Relay−Associated and Opportunistic Cooperative Transmission Schemes」と題される米国非仮特許出願第12/130,807号に関連しており、これらの出願の優先権を主張する。米国表記のため、本出願は、前述した米国特許出願第12/130,807号の継続出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は無線通信に関する。特に、本発明は、1つ以上の中継局(RS)を介した移動局(MS)と無線ネットワークの要素との間の通信に関する。
【背景技術】
【0003】
仮想アンテナシステムを使用して協調ダイバーシティを達成するために様々な協調送信方式が知られている。しかしながら、そのような協調送信システムの大部分は、単一の中継に焦点を合わせており、あるいは、基地局(BS)とRSとの間の信頼性の欠如によって引き起こされる待ち時間を無視する。
【0004】
1つの協調送信方式は、「Distributed space−time−coded protocols for exploiting cooperative diversity in wireless networks」(J.N.Laneman and G.W.Wornell、IEEE Trans.Inf.Theory、vol.49、no.10、pp2415−2425、Oct.2003)(「Laneman I」)に開示されている。Laneman Iにおいて、時空間符号化協調ダイバーシティプロトコルは、通信ネットワークにおける複数のプロトコル層にわたるマルチパスフェーディングに対処するために開発されている。この論文において、著者は、時空間符号化協調ダイバーシティ方式が完全空間ダイバーシティを与えることができることを理論的に証明している。しかしながら、この論文は、プロトコルを実際にどのように実施できるのかを明確に示していない。
【0005】
他の協調送信方式は、「Cooperative diversity in wireless networks:Efficient protocols and outage behavior」(J.N.Laneman、D.N.C.Tse and G.W.Wornell、IEEE Trans.Inf.Theory、vol.51、no.12、pp3062−3080、Dec.2004)(「Laneman II」)に開示されている。Laneman IIにおいて、著者は、協調ダイバーシティを達成するための効率的なプロトコルを開示する。ここでは、所定の中継方式(例えば、amplify−and−forward方式およびdecode−and−forward方式、協調する端末間でのチャンネル測定に基づいて適応する中継選択方式、および、宛先端末からの限られたフィードバックに基づいて適応する増分中継方式)などの、協調無線通信によって使用される幾つかの方法が概説されている。スペクトル効率を高めるために、BSとMSとの間にハイブリッド自動再送要求(HARQ)が導入される。しかしながら、Laneman IIは、RSで受信されるデータが信頼できないときに起こり得る長い遅延の可能性を扱わない。
【0006】
異なる手法は、「Practical relay networks:A generalization of hybrid−ARQ、」(B.Zhao and M.C.Valenti、IEEE J.Sel.Areas Commun.、vol.23、no.1、pp.7−18、Jan.2005)(「Zhao」)において論じられている。Zhaoは、HARQの一般化に基づいて、直交するタイプスロットにわたって動作する複数の中継を開示する。従来のHARQとは異なり、再送信されたパケットはオリジナルソースから発生する必要はなく、むしろ、再送信パケットは、送信を傍受するRSによって送られてもよい。同様に、他のHARQに基づく方式は、(a)「Achievable diversity−multipleeing−delay tradeoff in half−duplex ARQ relay channels」(T.Tabet、S.Dusad and R.Knopp、Proc.IEEE Int.Sym.On Inf.Theory、pp.1828−1832、Sep.2005)(「Tabet」)、および、(b)に発表されているによる論文「Hybrid−ARQ in multihop networks with opportunistic relay selection」(C.K.Lo、R.W.Heath、Jr and S.Vishwanath、Proc.IEEE Int.Conf.on Acoustics、Speech、and Signal Proc.、pp.617−620、April、2007)(「Lo」)において論じられている。TabetおよびLoはいずれも、単一の中継チャンネルを遅延制限フェーディングするためのHARQに基づく方式について論じている。しかしながら、Zhao、TabetおよびLoは全て、単一のRSに制限される。幾つかのRS間の協調が有効に使われていない。
【0007】
「Method of providing cooperative diversity in a MIMO wireless network」(S.Kim and H.Kim)(「Kim」)と題された米国特許出願公開2006/0239222 A1は、多入力多出力(MIMO)無線ネットワークにおいて協調ダイバーシティを与えるための方法を開示する。Kimにおいて、RSは、エラーをチェックして、検証されたストリーム(すなわち、「正しい」ストリーム)を中継し、BSからのエラーストリームの再送信を要求する。しかしながら、Kimの方法は、単一のRSだけを調べており、協調ダイバーシティを考慮していない。
【0008】
三つの協調中継方式は、(a) 「Cooperative relay approaches in IEEE 802.16j」(W.Ni、L.Cai、G.Shen and S.Jin、IEEE C80216j−07/258、Mar.2007)(「Ni」)、および、(b) 「Clarifications on cooperative relaying」(J.Chui、A.Chindapol、K.Lee、Y.Kim、C.Kim、B.Kwak、S.Chang、D.H.Ahm、Y.Kim、C.Lee、B.Yoo、P.Wang、A.Boariu、S.Maheshwari and Y.Saifullah、IEEE C80216j−07/242r2、Mar.2007)(「Chui」)において論じられている。協調中継方式は、(i)協調ソースダイバーシティ、(ii)協調送信ダイバーシティ、および、(iii)協調ハイブリッドダイバーシティである。しかしながら、上記の協調中継方式はいずれもBSとRSとの間のチャンネルの信頼性を考慮していない。RSによって再生される情報が信頼できないと、協調ダイバーシティの効果が低下する場合があり、それにより、MSにおける性能全体が低下する。
【0009】
「An ARQ in 802.16j」(S.Jin、C.Yoon、Y.Kim、B.Kwak、K.Lee、A.Chindapol and Y.Saifullah、IEEE C802.16j−07/250r4、Mar.2007)(「Jin」)は、ARQがソースデータの高速リカバリを行なう協調方式を開示する。Jinにおいて、BSは、任意のRSがBSからブロックを受信し損なうときにソース情報を再送信する。Jinの方式は、RSとBSとの間だけで再送信することにより待ち時間を減らす。しかしながら、複数のRSが存在すると、全てのRSがソースブロックをうまく受信するまでBSが再送信しなければならない場合に、かなりの遅延が起こる場合がある。また、再送信は、スペクトル効率も低下させる。Jinのモデルは、全てのRSが正しいソースブロックを受信する必要がないため、それを改良することができる。かなりの数のRSがソースブロックを確実に受信する限り、他の信頼できないRSは、信頼できるRSとMSとの間の送信を傍受することによって正しいソースブロックを得ることができる。
【0010】
殆どの協調方式(例えば、Zhao、TabetおよびLo)は、1つのRSだけが各ホップで再送信に関与することを前提としているが、そのような方式は、複数のRSが更に高い協調ダイバーシティを与えることができることを実現できない。また、BSとRSとの間のチャンネルの信頼性は、Lanemen I・II、NiおよびChuiなどの幾つかの強調方式で考慮されていない。RSにおける信頼できない情報は、MS性能を低下させる場合があり、また、大きな遅延を引き起こす場合がある。
【0011】
また、BSによる再送信は、システムのスペクトル効率も低下させる。Jinにおいて論じられるように、BSは、1つのRSだけが信頼できるデータを得ない場合であってもデータを再送信しなければならない。そのような方式は、待ち時間をもたらし、RSの数が増大するときにBSとRSとの間にデッドロックを生み出す場合がある。
【0012】
Zhaoを除き、前述した全ての方式は、RS間の無線リソースを無視する(すなわち、BSから信頼できる情報を受信しないRSは、信頼できるRSとMSとの間の送信を傍受できる場合がある)。しかしながら、Zhaoは、各ホップで1つのRSを選択することに焦点を合わせる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、「信頼性中継関連送信方式」は、高速リカバリを行なうとともに、BSの負担を減少させる。そのような方式において、BSは、同じ目標MSを扱うRSの中継関連グループ(「R-グループ」)へデータを送信する。RSは、例えば、全てのMSとRSとの間のチャンネル状態にしたがって行なわれるMSの最初の測距中および定期的な測距中にグループ化される。本発明に係る送信方式は、BSとR-グループとの間で信頼できる送信を確保する。BSは、最初に、マルチキャストモードまたはユニキャストモードのいずれかを使用して、R-グループ内の全てのRSへ情報を送る。R-グループ内の各RSは、BSから情報を受信した後、BSとRSとの間のチャンネル状態、RSとMSとの間のチャンネル状態、RSでの負荷状態、RSでの待ち行列長さなどの1つ以上のパラメータを含む信頼性関数にしたがって信頼性値を計算する。その後、RSは、それらの信頼性値を、中継関連肯定応答メッセージ(R-ACK)の状態でフィードバックする。
【0014】
BSがユニキャストモードを使用してデータをRSへ送る場合には、R-ACKの実施が簡単である。しかしながら、ユニキャストモードは、BSとRSとの間にかなりの量のデータ送信源を必要とする。BSがマルチキャストモードを使用してデータをRSへ送る場合、R-ACKは、コリジョンを避けるために、異なる時間、周波数または空間でフィードバックしなければならない。BSがR-ACKの全てを受信した後或いは一部を受信した後であっても、信頼性指標が生成されて所定の閾値と比較される。信頼性指標が所定の閾値以上である場合には、R-グループが「信頼できるR-グループ」になり、R-グループと目標MSとの間の送信を開始できる。それ以外の場合には、信頼性指標が所定の閾値を上回るまで或いは再送信の数が所定の限度を超えるまで、BSとR-グループとの間の再送信が続く。
【0015】
本発明の1つの利点は、RSにおける信頼性関数とBSにおける信頼性指標とによってBSとRSとの間に信頼できる送信を与える。RSは、(a)BSとRSとの間のチャンネル状態、(b)RSと目標MSとの間のチャンネル状態、および、(c)RSでの負荷状況にしたがって、それらの信頼性値をBSへフィードバックする。BSは、BSでの信頼性指標が所定の閾値以上となるまで、全てのRSに対してパケットを再送信する。
【0016】
本発明の一実施形態は、BSとRSとの間のチャンネル状態およびRSと目標MSとの間のリンク品質の両方に基づいて目標MSへパケットを協調して送信するためにRSの一部をBSが日和見的に選択できる日和見的協調送信方式を提供する。BSとR-グループとの間の信頼できる送信が開始された後、待ち時間を減らすとともにBSを解放して他の機能を果たすため、BSはソース情報を再送信しない。再送信はR-グループによって制御される。信頼できるRSと目標MSとの間の送信を傍受する信頼できないRSは、より高い協調ダイバーシティを与えることができる。
【0017】
特に、BSは、BSとR-グループとの間の信頼できる送信が実現された後にパケットをR-グループへ再送信しないため、本発明は、BSの作業負荷およびパケットの待ち時間の両方を従来技術の解決策と比べて減少させる。この場合、順方向送信はR-グループとMSとの間でのみ起こる。
【0018】
本発明の1つの利点は、RS間で無線源を利用する。信頼できないRSが信頼できるRSまたは接続RSと目標MSとの間の送信を傍受すると、信頼できないRSは、傍受された情報を通じて協調ダイバーシティを与えるために再送信に参加する。
【0019】
本発明は、添付図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すると更に良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る、RSのグループを用いたBSとMSとの間の通信を示している。
【図2】本発明の一実施形態に係る、R-グループがどのように構成されるのかを大まかに示している。
【図3】本発明の一実施形態に係る、信頼性中継関連送信方式のフローチャート300を示している。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る、信頼性中継関連送信方式のフローチャート400を示している。
【図5】図3または図4に示される方法下でのR-グループを構成するプロセス中のBSの動作を示すフローチャートである。
【図6】日和見的協調送信方式下での、BSと、信頼できるRSと、信頼できないRSと、MSとの間の関係をまとめている。
【図7】(a)は本発明の一実施形態に係る、RSの分類間の関係を示している。(b)は本発明の一実施形態に係る、RSの役割がパケット送信の過程でどのように変化し得るのかを示す状態図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る、RSの動作を示すフローチャートを示している。
【図9】本発明の一実施形態に係る、MSの動作を示すフローチャートを示している。
【図10】信頼できるRSが信頼できないRSによって傍受される目標MSへパケットを送る一例のステップ1)を示している。
【図11】信頼できるRSが信頼できないRSによって傍受される目標MSへパケットを送る一例のステップ2)を示している。
【図12】信頼できるRSが信頼できないRSによって傍受される目標MSへパケットを送る一例のステップ3)を示している。
【図13】信頼できるRSが信頼できないRSによって傍受される目標MSへパケットを送る一例のステップ4)を示している。
【図14】本発明の一実施形態に係る、BSからの最初の送信後に信頼できるRSになる2-RSシステムの両方のRSを示している。
【図15】本発明の一実施形態に係る、BSからのデータパケットの最初の送信後に不正確に復号化する2-RSシステムの両方のRSを示している。
【図16】本発明の一実施形態に係る、他のRSがデータパケットを正しく復号化し損なっている間に、BSからの最初の送信後にデータパケットを正しく復号化する2-RSシステムのRSのうちの一方を示している。
【図17】図16の初期状態を示しており、更に、本発明の一実施形態に係る、RS1がMSへのRS2の送信を正しく傍受しているにもかかわらず、MSがデータメッセージを正しく受信していない状態を示している。
【図18】2つのRSを介したBSとMSとの間の直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)に基づく一実施形態を示している。
【図19】実施形態で用いるのに適したフレーム構造を示している。図18は、3つの連続するフレームのうちの第1のフレーム(「フレームj」)を示している。
【図20】実施形態で用いるのに適したフレーム構造を示している。図18は、3つの連続するフレームのうちの第2のフレーム(「フレーム(j+1)」)を示している。
【図21】実施形態で用いるのに適したフレーム構造を示している。図18は、3つの連続するフレームのうちの第3のフレーム(「フレーム(j+2)」)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る、RSのグループを用いたBSとMSとの間の通信を示している。中継を伴わないBSとMSとの間のダイレクト通信では、BSは、無線アクセスシステムによって指定される所定のフレーム構造内でシンボルをMSへ送信する。しかしながら、多くの場合、マルチパス伝搬効果(例えば、パスロス、フェーディング、および、シャドウイング)およびBSの限られた範囲に起因して、BSとMSとの間のダイレクト通信が不可能な場合がある。1つの可能な解決策は、BSとMSとの間で中継要素(すなわち、RS)を使用する。図1は、例えば最初の測距プロセスまたは定期的な測距プロセス中にその構成員が決定されるRSのグループを示している。通常、RSは、目標MSに対するそれらのそれぞれのチャンネル状態指標が所定の閾値を越えるときにグループの状態で含まれる。RSのこのグループ(すなわち、RS1、RS2、....、RSN)は、目標MSのための「中継関連グループ」(「R-グループ」)と称される。逆に、MSは、RS1、RS2、....、RSNの「サービスリスト」内にあると言われる。RSとMSとの関連性はBSへ定期的に報告される。他のRS(すなわち、目標MSに対するそのチャンネル状態指標が所定の閾値を下回っているRS)は、RSの「非中継関連グループ」(「非R−グループ」)に属する。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態に係る、R-グループがどのように構成されるのかを大まかに示している。図4に示されるように、目標MSは、最初の測距プロセスまたは定期的な測距プロセス中にプリアンブルを送る(ステップ201)。RSがプリアンブルを検出すると、RSは、それとMSとの間のチャンネル状態にしたがって、MSがその所定のカバレッジエリア内にあるか否かを決定する(ステップ202)。その後、RSは、MSがRSのカバレッジエリア内にあるか否かをBSへ報告する(ステップ203)。これらの報告から、BSがR-グループを構成する(ステップ204)。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、信頼性中継関連送信方式は、高速リカバリを行なうとともに、BSの負担を減少させる。図3は、信頼性中継関連送信方式をまとめるフローチャート300を示している。図3に示されるように、BSは、カウンタを初期化する(ステップ301)とともに、マルチキャストモードまたはユニキャストモードを使用してR-グループの全てのRSに対してデータパケットを送る(ステップ302)。これらのデータパケットは、RSの信頼性を識別するデータまたは単にプローブを含んでもよい。ユニキャストモードまたはマルチキャストモードのいずれにおいても、目標MSの識別表示はデータパケット内に含められる。各RSは、BSからデータパケットを受信した後、それ自体の信頼性値を計算する(ステップ303−1〜303−N)。この信頼性値は、(a)BSとこの特定のRSとの間のチャンネル状態、(b)この特定のRSと目標MSとの間のチャンネル状態、および、(c)RSでの現在の負荷の関数である信頼性関数を使用して得られる。
【0024】
R-グループ内のRSは、その後、R-ACKを使用して、RSの信頼性値をBSへ送り返す(ステップ304−1〜304−N)。信頼性関数に応じて、R-ACKは、チャンネル状態インジケータまたは従来の肯定応答(ACK)メッセージに類似していてもよい。BSがR-グループ内のRSからR-ACKの全て或いは一部を受信した後、BSは、R-グループのための信頼性指標を計算して、後に所定の閾値と比較されるカウンタ値を1単位だけ増大し(ステップ305)、カウンタ値を所定の再送信限度に関してチェックする(ステップ306)。計算された指標が所定の閾値に等しい或いは所定の閾値を超える場合、BSは、R-グループを信頼できるR-グループと見なし、R-グループに対して通知メッセージを送り(ステップ307)、それにより、通知を送られたR-グループは、協調方式を使用して、受信したパケットを目標MSへ送信することができる。しかしながら、計算された指標が所定の閾値を下回っている場合、BSは、R-グループを信頼できないR-グループと見なし、信頼性指標が所定の閾値以上になるまで或いは再送信数が所定の再送信限度を超えるまでパケットをR-グループへ再送信する(すなわち、ステップ302へ戻る)。
【0025】
再送信の数は、BSとRSとの間の再送信を所定の限度に制限するためにカウンタによって記録される。信頼できるR-グループ内の全てのRSが信頼できる必要はない。したがって、一部のRSが、RSのそれぞれの信頼性値にしたがって、信頼できるRSと称される。次に、RSにおける信頼性関数、BSにおける信頼性指標、および、信頼できるRSを決定するためのプロセスの例について説明する。
【0026】
hBS-RSnおよびhRSn-MSが、BSとRSnとの間のチャンネル状態、RSnと目標MSとの間のチャンネル状態をそれぞれ示すものとする。一般に、チャンネル状態hBS-RSnおよびhRSn-MSは、チャンネル電力利得と称されてもよい。hBS-RSnは、RSnで受信された各パケット毎に更新されてもよく、一方、hRSn-MSは、定期的な測距プロセス中に更新されてもよい。RSnにおける信頼性関数および負荷係数はそれぞれgnおよびlnとして示される。rがBSにおける信頼性指標を示すものとする。RSnにおける負荷係数lnは、RSnのサービスリスト中に現在あるMSの数である。LnがRSnにおける最大負荷係数を示すものとする。幾つかの信頼性関数およびそれらの対応する信頼性値および信頼できるRSは以下のように規定される。
【0027】
1)最弱リンクおよび負荷係数に基づく1つの信頼性関数は、
【数1】
であり、また、対応する信頼性指標は、
【数2】
である。R-グループ内のRSnは、gn>0の場合に信頼できると見なされ、それ以外の場合に信頼できないと見なされる。
【0028】
2)1リンク当たりのスループット1の調和平均および負荷係数に基づく他の信頼性関数は、
【数3】
であり、また、対応する信頼性指標は、
【数4】
である。R-グループ内のRSnは、gn>0の場合に信頼できると見なされ、それ以外の場合に信頼できないと見なされる。
【0029】
3)他の信頼性関数は、最弱リンクおよび負荷係数に基づくバイナリ関数、すなわち、
【数5】
であり、また、対応する信頼性指標は、
【数6】
である。ここで、hは所定の閾値である。R-グループ内のRSnは、gn=1の場合に信頼できると見なされ、それ以外の場合に信頼できないと見なされる。
【0030】
4)パケット損失に基づく他の信頼性関数は、
【数7】
であり、また、対応する信頼性指標は、
【数8】
である。R-グループ内のRSnは、gn>0の場合に信頼できると見なされ、それ以外の場合に信頼できないと見なされる。
【0031】
信頼性関数がhBS-RSnおよびhRSn-MSの陽関数ではないと思われるかもしれない。しかしながら、パケットの正しい受信はチャンネル状態hBS-RSnによって決定されるため、また、hRSn-MSが所定の閾値を超えるときだけRSnがR-グループ内に含められるため、信頼性関数はhBS-RSnおよびhRSn-MSの両方の陰関数である。R-グループ内のRSnは、gn=1の場合に信頼できると見なされ、それ以外の場合に信頼できないと見なされる。
【0032】
図4は、例4)に基づく本発明の第2の実施形態に係る、信頼性中継関連送信方式のフローチャート400を示している。図4に示されるように、BSは、カウンタを初期化する(ステップ401)とともに、マルチキャストモードまたはユニキャストモードを使用してR-グループ内の全てのRSに対してデータパケットを送る(ステップ402)。図3の実施形態の場合と同様に、送信されるデータパケットは、RSの信頼性を識別するデータまたは単にプローブを含んでもよい。ユニキャストモードまたはマルチキャストモードのいずれにおいても、目標MSの識別表示はデータパケット内に含められる。各RSは、BSからデータパケットを受信した後、受信されたデータパケットがこれまでに正しく受信されたことがあるか否かを決定する(ステップ403−1〜403−N)。
【0033】
R-グループ内のRSは、その後、R-ACKを使用して、データパケットがこれまでに正しく受信されたことがあるか否かについてのそれらの決定をBSへ送り返す(ステップ404−1〜404−N)。それらのそれぞれの決定に応じて、R-ACKは、それが信頼できるRS(「1」)または信頼できないRS(「0」)であることを指定してもよい。BSがR-グループ内のRSからR-ACKの全て或いは一部を受信した後、BSは、R-グループのための信頼性指標を計算して、後に所定の閾値と比較されるカウンタ値を1単位だけ増大し(ステップ405)、カウンタ値を所定の再送信限度に関してチェックする(ステップ406)。計算された指標が所定の閾値に等しい或いは所定の閾値を超える場合、BSは、R-グループを信頼できるR-グループと見なして、R-グループに対して通知メッセージを送り(ステップ407)、それにより、通知メッセージを送られたR-グループは、協調方式を使用して、受信したパケットを目標MSへ送信することができる。しかしながら、計算された指標が所定の閾値を下回っている場合、BSは、R-グループを信頼できないR-グループと見なし、信頼性指標が所定の閾値以上になるまで或いは再送信数が所定の再送信限度を超えるまでパケットをR-グループへ再送信する(すなわち、ステップ402へ戻る)。
【0034】
図5は、図3または図4に示される方法下でのR-グループを構成するプロセス中のBSの動作を示すフローチャートである。図5は、ステップ507において、信頼できるRSを構成しようとする試行の数が所定の再送信数によって制限されることを更に示している。
【0035】
上記方法のうちの任意の1つを使用して信頼できるR-グループを構成した後、R-グループと目標MSとの間でデータを送信するために日和見的協調送信方式が使用されてもよい。パケット送信のための日和見的協調送信方式は以下のように実施することができる。
【0036】
ステップ1):R-グループ内の信頼できるRSは、協調して、分散時空間符号化方式2または繰り返し符号化方式の下で「協調マルチキャスト送信モード」を使用してパケットをMSへ送信する。協調マルチキャスト送信により、R-グループ内の信頼できないRSは、信頼できるRSとMSとの間の送信を傍受することができる。これらの信頼できないRSは、傍受されたパケットが正しく受信されたか否かに応じて、「信頼できる傍受RS」または「信頼できない傍受RS」になる。ここでは、協調マルチキャスト送信モードは、マルチキャストグループがR-グループおよび目標MSの両方で構成される協調送信モードである。図6は、日和見的協調送信方式下での、BSと、信頼できるRSと、信頼できないRSと、MSとの間の関係を要約している。
【0037】
ステップ2):信頼できるRSのうちの1つ以上からMSがデータパケットを受信すると、データパケットが正しく受信されたか否かに基づいて、「協調肯定応答メッセージ」(「C-ACK」)または「協調否定応答メッセージ」(「C-NACK」)がR-グループへ送り返される。従来のACKまたはNACKメッセージとは異なり、C-ACKまたはC-NACKメッセージであるから、C-ACKまたはC-NACKメッセージは、マルチキャストモードまたはブロードキャストモードを使用してR-グループへ送信される。MSがC-ACKメッセージをフィードバックする場合には、データパケットのための送信が完了する。それ以外の場合(すなわち、MSが信頼できるRSから信頼できる情報を受信できないことをC-NACKメッセージによって示す場合)には、以下のステップ3)が行なわれる。
【0038】
ステップ3)C-NACKメッセージを正しく受信した信頼できるRSおよび信頼できる傍受RSはいずれも「接続RS」となる。接続RSは、協調マルチキャスト送信モード下で、傍受された情報を目標MSへ協調して送信する。信頼できない傍受RSも、接続RSとMSとの間の送信を傍受しており、それらが傍受されたパケットを正しく受信する場合には、信頼できる傍受RSになってもよい。MSが接続RSからデータパケットを受信した後、MSは、MSがデータパケットを正しく受信したか否かに応じて、C-ACKまたはC-NACKメッセージをマルチキャストし或いはブロードキャストする。MSがC-ACKパケットを与える場合には、送信がうまく完了する。それ以外の場合には、目標MSがC-ACKメッセージを与えるまで或いはR-グループと目標MSとの間の再送信数が所定の限度に達するまでステップ3)が繰り返される。
【0039】
非接続RSは、C-NACKを目標MSから不正確に受信する信頼できるRSまたは信頼できる傍受RSである。RSは、その時々において、信頼できる傍受RSおよび接続RSとなり得る。それは、これらのラベルが動的に変化しているからである。例えば、信頼できないRSは、MSと接続RS(信頼できる傍受RSであってもよい)との間の送信も傍受できる。RSのこれらの全てのカテゴリー間の関係が図7(a)および(b)に要約されている。図7(a)は、全てのRSで構成されるグループ(701)がR-グループ(703)とR-グループ以外のRSのグループ(「非R-グループ」;702)とを含むことを示している。R-グループ内において、RSは、信頼できるRS(705)のグループおよび信頼できないRS(704)のグループに属していてもよく、信頼できないRS(704)のグループは、信頼できない傍受RS(706)のグループと信頼できる傍受RS(707)のグループとに更に分けられる。
【0040】
図7(b)は、本発明の一実施形態に係る、RSの役割がパケット送信の過程でどのように変化し得るのかを示す状態図である。図7(b)に示されるように、RSは、RSとBSとの間のチャンネル状態に応じて、信頼できるRS(705)または信頼できないRS(704)になってもよい。信頼できるRSは、信頼できるRSとMSとの間のチャンネル状態に応じて、接続RS(708)または非接続RS(709)になってもよい。同様に、信頼できないRSは、信頼できないRSとMSとの間および信頼できないRSと信頼できるRSとの間のチャンネル状態に応じて、信頼できる傍受RS(706)または信頼できない傍受RS(707)になってもよい。接続RSが非接続RSになってもよい。信頼できる傍受RSは、接続RS、非接続RS、または、信頼できない傍受RSになってもよい。信頼できない傍受RSが信頼できる傍受RSになってもよい。
【0041】
協調送信に適した方式(例えば、分散時空間符号化)を使用すると、協調に関与するRSの数をMSに知らせる必要もなく、傍受されたパケットが正しく受信されたか否かについてのACK/NACKメッセージを他のRSへ送るように信頼できないRSが求められることもない。
【0042】
図8は、本発明の一実施形態に係る、RSの動作を示すフローチャートを示している。図8に示されるように、最初に、RSは、それがデータパケットをBSから正しく受信したかどうかを決定する(801)。データパケットが正しく受信されていると決定される場合、RSは、ユニキャストモードによって肯定的なメッセージを伴うR-ACK(802)を送信する。それ以外の場合には、否定的なメッセージを伴うR-ACKがユニキャストモードによって送られる(811)。その後、RSは、BSからの通知メッセージを待つ(803、812)。BSからのメッセージは、RSが信頼できるRSと見なされているか(804)或いは信頼できないBSと見なされているか(813)どうかを示している。所定の時間間隔後にBSから通知が受信されない場合には、RSが801へ戻る。RSが信頼できるRSである場合、RSは、協調マルチキャスト方式を使用してデータパケットをMSへ送る(805)。その後、C-ACKメッセージがMSから受信される場合には(806)、MSへのデータ送信が完了したと見なされる。それ以外の場合には、RSは、信頼できるRSがデータパケットを所定の回数を超えて再送信したかどうかを決定する(807)。RSがデータパケットを所定の回数を超えて再送信した場合には、RSは、データパケットの送信が完了されたと見なす。それ以外の場合、RSは、C-NACKメッセージが受信されるかどうかを決定する(808)。RSがC-NACKメッセージを正しく受信した場合、RSは、非接続RSになり(809)、C-ACKメッセージが受信される(806)まで非接続RSのままである。それ以外の場合、RSは、接続RSになり、元に戻ってデータパケットをBSから受信する(801)。
【0043】
信頼できないRSの場合(813)、RSは、信頼できないRSが信頼できるRSまたは接続RSからのデータパケットの協調マルチキャストデータ送信を正しく傍受できるかどうかを決定する(814)。正しい送信が傍受されるかどうかに応じて、RSは、信頼できる傍受RS(815)または信頼できない傍受RS(819)になる。信頼できない傍受RSにおいては、正しい送信が所定の最大再送信数内で傍受されない場合(820)、データパケットのためのデータ送信が完了する。信頼できる傍受RSの場合、RSは、信頼できる傍受RSがC-ACKメッセージをMSから受信したかどうかを決定する。受信した場合には、データパケットのためのデータ送信が完了したと見なされる。それ以外の場合、RSは、信頼できる傍受RSがC-NACKメッセージをMSから受信したかどうかを決定する(817)。受信した場合、RSは、接続RSになり(818)、805において協調マルチキャスト送信に参加する。それ以外の場合、RSは、非接続RSになって、816においてC-ACKメッセージを待つ。
【0044】
図9は、本発明の一実施形態に係る、MSの動作を示すフローチャートを示している。図9に示されるように、最初に、MSは、それが任意のR-グループの一員からデータパケットを正しく受信したかどうかを決定する(901)。受信した場合には、MSがマルチキャストモードまたはブロードキャストモードを使用してC-ACKメッセージをR-グループに送り(902)、データパケット送信が完了したと見なされる。それ以外の場合には、MSは、マルチキャストモードまたはブロードキャストモードを使用してC-NACKメッセージをR-グループに送り(903)、901においてデータパケットの次の送信を待つ。
【0045】
図10〜13は、信頼できるRSが信頼できないRSによって傍受される目標MSへパケットを送るステップ1〜4をそれぞれ含む例を示している。図10〜13において、全てのRSは、最初の測距プロセスまたは定期的な測距プロセス中にR-グループと非R-グループとに分けられる。図10に示されるように、RS1、RS2、RS3、RS4、RS5はR-グループに属する。R-グループを構成するための任意の方法を使用すると、RS1およびRS2が信頼できるRSと見なされ、一方、RS3、RS4およびRS5が信頼できないRSと見なされる。
【0046】
図10〜13では、以下のステップが例示される。
【0047】
ステップ1)図10に示されるように、信頼できるRS(すなわち、RS1およびRS2)は、分散時空間符号化(例えば、Papadopoulosで説明される分散時空間符号化)を使用して、協調マルチキャスト送信モードによってパケットをMSへ送る。協調マルチキャスト送信モード下でMSがデータパケットを受信し、一方、信頼できないRS(すなわち、RS3、RS4およびRS5)によって送信が傍受される。しかしながら、前述したように、RS3およびRS4だけが傍受されたパケットを正しく復号化するため、RS3およびRS4が信頼できる傍受RSとなり、RS5が信頼できない傍受RSとなる。
【0048】
ステップ2)図11に示されるように、MSは、マルチキャストモードまたはブロードキャストモードを使用してC-NACKメッセージをR-グループに送り返す。これは、MSがステップ1)から受信されたパケットを正しく復号化しないからである。RS2およびRS3はC-NACKメッセージを正しく受信するため、RS2およびRS3は接続RSになる。しかしながら、RS1およびRS4はC-NACKメッセージを正しく受信しない。したがって、RS1およびRS4は、MSとの接続が一時的に失われたと見なされる。RS5に関しては、RS5がパケットを有していない(接続RSからの送信を傍受しなかった)ため、RS5は、(図11に示されるように)それがC-NACKメッセージを正しく受信する場合であっても何ら行動をとらない。
【0049】
ステップ3)図12に示されるように、接続RS(すなわち、RS2およびRS3)が協調マルチキャスト送信モードによってパケットをMSへ送り、信頼できる傍受RSによって送信が正しく傍受される。
【0050】
ステップ4)図13に示されるように、MSは、それがステップ3)から受信されたパケットを正しく復号化するため、C-ACKメッセージをR-グループへ送り返す。
【0051】
図14〜17は、2つのRS(すなわち、2つのRSで構成されるR-グループ)によって示される上記の例4)の信頼性指標を使用する本発明の例を与えている。この例では、信頼性指標のための閾値が「1」として設定される(すなわち、パケットを正しく復号化する1つのRSが存在する限り、BSはデータパケットをR-グループへ再送信しない)。
【0052】
図14は、両方のRSがBSからの最初の送信後に信頼できるRSになり、それにより、両方のRSがMSへ協調して送信する状態を示している。図14に示されるように、両方のRSは、BSからのパケットを正しく復号化して、肯定的なメッセージを伴うR-ACKをBSへフィードバックする。その結果、BSは、信頼できるR-グループを示唆する両方のRSに対して通知メッセージを送る。したがって、両方のRSは、所定の時空間符号化(例えば、Papadopoulosで開示された時空間符号化)を使用して、受信したパケットをMSへ協調して送信する。MSで受信されたパケットが正しく復号化されない場合には、図14に示されるように、MSはC-NACKメッセージを両方のRSへ送る。その後、BSからパケットを再送信する代わりに、R-グループとMSとの間でのみ再送信が行われる(すなわち、RSがMSへ協調して再送信する)。このようにすると、待ち時間が減少され、BSがパケットを再送信する必要がなくなる。
【0053】
図15は、両方のRSが最初の再送信でBSからのデータパケットを不正確に復号化し、それにより、BSがパケットを再送信しなければならない状態を示している。再送信時、両方のRSがパケットを受信して正しく復号化する。その結果、両方のRSが協調的態様でデータパケットをMSへ送る。
【0054】
図16は、RSのうちの一方(RS2)がBSから受信されたパケットを正しく復号化し、一方、他方のRS(RS1)が受信されたパケットを正しく復号化しないことを示している。したがって、RS2だけが、従来のユニキャストまたはマルチキャスト送信モードとは異なりR-グループの一員だけ(すなわち、RS1および対象とするMS)による受信を許容する協調マルチキャスト送信を使用してMSへパケットを送信する信頼できるRSとなる。RS2がパケットをMSへ送信すると、信頼できないRS(すなわち、RS1)がこの送信を傍受する。その結果、MSは、RSがデータパケットを正しく復号化するか否かにしたがって、C-ACKメッセージまたはC-NACKメッセージをR-グループへ送り返す。MSがMSへの最初の送信時に信頼できるRS(すなわち、RS2)からデータパケットを受信し損ない或いは復号化できない場合、図16に示されるように、RS1は、傍受された情報を使用して更なる協調ダイバーシティを与える。このようにして、RS1およびRS2の両方の無線源が利用される。
【0055】
図17は図16の初期状態を示しており、更に、本発明の一実施形態にしたがって、RS1がMSへのRS2の送信を正しく傍受しているにもかかわらず、MSがデータメッセージを正しく受信していない状態を示している。RS1で受信された傍受情報が信頼できる(例えば、図17によって示される状態)か否かにかかわらず、RS2は、RS1とは無関係にパケットをMSへ再送信する。この場合も先と同様、MSがRS2から受信されたパケットを正しく復号化しない場合、および、RS1が情報を正しく傍受する場合には、RS1が依然としてRS2と協調して協調ダイバーシティをMSへ与えてもよい。ここで、我々は「日和見的」であること(すなわち、RSとBSとの間のチャンネル状態をうまく利用すること)に気づくことができ、すなわち、BSとの良好な接続(または、チャンネル)を有するRSが信頼できるRSとなり、一方、信頼できないRSは、当初信頼できるRSとの良好な接続を確立できる場合に日和見的に信頼できる傍受RSとなる。
【0056】
図14〜17は、信頼性指標が上記したような特定の閾値を上回るとBSがR-グループへの再送信から解放されることを示している。図14〜17に示される方法の下では、より多くのRSがパケットをMSへ協調して送信できるようにし、それにより、協調ダイバーシティを与えてBSのカバレッジを延長するため、正しいパケットをBSから受信しない信頼できないRSが、信頼できるRSまたは接続RSからの再送信を傍受してもよい。
【0057】
本発明の方法を実施する様々な方法が存在する。例えば、図18は、BSと2つのMSとの間の2つのRSを介した直交周波数分割多重アクセス(OFDMA)に基づく一実施形態を示している。図18に示されるように、(RS1、RS2およびMS1)および(RS1、RS2およびMS2)は、それぞれが前述した日和見的協調送信モードを使用する2つのR-グループである。図18において、各R-グループには、OFDMA方式による通信のための重なり合わない周波数の組が割り当てられる。
【0058】
図19〜21は、実施形態で用いるのに適したフレーム構造を示している。このフレーム構造は、当業者に知られるIEEE802.16j規格で使用されるフレーム構造に類似している。図19〜21は、ラベル、すなわち、フレームj、フレーム(j+1)、フレーム(j+2)がそれぞれ付けられた3つの連続するフレームを示している。各フレームはアップリンク(UL)サブフレームとダウンリンク(DL)サブフレームとを含み、各サブフレームはアクセス域と中継域とを含む。アクセス域では、BSのダイレクトカバレッジ内でBSがMSと通信し、RSのカバレッジ内にあり且つBSによるダイレクトカバレッジの外側にあるMSとRSが通信する。BSは、再送信が不必要となるように計算された信頼性指標が所定の閾値よりも大きいことを示す単一ビット(例えば「0」)によって表わされてもよい「協調方式」メッセージによる再送信が存在するか否かをR-グループに知らせる。逆に、「1」の値を有する協調方式メッセージが、R-グループへのBSによる再送信を示す。アクセス域では、信頼できないRSが信頼できるRSまたは接続RSとMSとの間の送信を傍受する。一方、中継域では、BSがRSと通信する。R-ACK、C-ACKおよびC-NACKメッセージをULの制御メッセージ中に組み込むことができる。
【0059】
非直交分散時空間符号化の下では、信頼できるRSおよび信頼できないRS間でACKまたはNACKメッセージをやりとりする必要がある場合がある。その場合、ACKメッセージまたはNACKメッセージが異なるRSのための異なるサブキャリアによって送信されてもよい。前述したように、OFDMAに基づくシステムにおいて、異なるユーザにはそれぞれ、RSが同時に送受信できるように、通信で用いる重なり合わないサブキャリアの組(すなわち、周波数)が割り当てられる。非OFDMAシステムでは、RSは、送信および受信の両方を同時に行なうことができない。その状況下では、一部のRSが信頼できないRSの送信を傍受できない。しかしながら、信頼できないRSは、信頼できないRSが任意の他のユーザへ送信するためのデータを何ら有していない場合には、信頼できるRSまたは接続RSと目標MSとの間の送信を依然として傍受できる。
【0060】
前述した詳細な説明は、本発明の特定の実施形態を例示するために与えられており、限定しようとするものではない。本発明の範囲内で多数の変形および改良が可能である。本発明は以下の請求項に示される。
【0061】
注釈
1 例えば「End−to−end throughput metrics for QoS management in 802.16j MR systems」(O.Oyman、S.Sandhu and N.Himayat、IEEE C802.16j−06/202、Nov、2006、Dallas、Texas)を参照
2 分散時空間符号化の一例は、既に出願された「Method and Apparatus for Distributed Space−time Coding for the Downlink of Wireless Radio Networks、」(H.Papadopoulos)と題される米国特許出願(代理人整理番号PA−551(「Papadopoulos」))に開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局、複数の中継局、および、移動局の間でデータを送信するための方法であって、
前記基地局から複数の前記中継局へデータパケットを送るステップと、
前記中継局のうちの1つがデータパケットを正しく受信したことをそれぞれ示す肯定応答メッセージを前記中継局から受信するステップと、
肯定応答メッセージを前記基地局へ送信した中継局に対して通知を送るステップであって、前記通知が、前記通知を受信する中継局が前記移動局へデータパケットを転送することを許可する、ステップと、
を備える方法。
【請求項2】
基地局、複数の中継局、および、移動局の間でデータを送信するための方法であって、
前記基地局からデータパケットを受信するステップと、
データパケットが正しく受信されたことを示す肯定応答メッセージを前記基地局へ送るステップと、
前記移動局へのデータパケットの転送を許可する通知を前記基地局から受信するステップと、
を備える方法。
【請求項3】
移動局へデータを送信するためのシステムであって、
基地局と、
複数の中継局と、
を備え、前記中継局が、前記基地局からデータパケットを受信するとともに、前記基地局からのデータパケットに応じて、データパケットが正しく受信されたことを示す肯定応答メッセージを前記基地局へ送り、前記基地局が、前記移動局へのデータパケットの転送を許可する通知を前記中継局へ送る、システム。
【請求項4】
中継局の一部を、パケットをMSへ協調して送信するための信頼できるRSとして、および、信頼できるRSとMSとの間の送信を傍受する信頼できないRSとして日和見的に選択するための方法。
【請求項1】
基地局、複数の中継局、および、移動局の間でデータを送信するための方法であって、
前記基地局から複数の前記中継局へデータパケットを送るステップと、
前記中継局のうちの1つがデータパケットを正しく受信したことをそれぞれ示す肯定応答メッセージを前記中継局から受信するステップと、
肯定応答メッセージを前記基地局へ送信した中継局に対して通知を送るステップであって、前記通知が、前記通知を受信する中継局が前記移動局へデータパケットを転送することを許可する、ステップと、
を備える方法。
【請求項2】
基地局、複数の中継局、および、移動局の間でデータを送信するための方法であって、
前記基地局からデータパケットを受信するステップと、
データパケットが正しく受信されたことを示す肯定応答メッセージを前記基地局へ送るステップと、
前記移動局へのデータパケットの転送を許可する通知を前記基地局から受信するステップと、
を備える方法。
【請求項3】
移動局へデータを送信するためのシステムであって、
基地局と、
複数の中継局と、
を備え、前記中継局が、前記基地局からデータパケットを受信するとともに、前記基地局からのデータパケットに応じて、データパケットが正しく受信されたことを示す肯定応答メッセージを前記基地局へ送り、前記基地局が、前記移動局へのデータパケットの転送を許可する通知を前記中継局へ送る、システム。
【請求項4】
中継局の一部を、パケットをMSへ協調して送信するための信頼できるRSとして、および、信頼できるRSとMSとの間の送信を傍受する信頼できないRSとして日和見的に選択するための方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2010−532639(P2010−532639A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515026(P2010−515026)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/067990
【国際公開番号】WO2009/006092
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/067990
【国際公開番号】WO2009/006092
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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