説明

偏心光学系、偏心光学系を用いた画像表示装置及び撮像装置

【課題】広画角でかつ大きな射出瞳を有し、高解像を実現できる偏心光学系を実現することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る偏心光学系は、記画像表示素子5に対向して配置され、少なくとも3面の光学面が相互に偏心し、そのうちの少なくとも2面が回転非対称な形状であって、内部が屈折率1以上の媒質で満たされた偏心プリズム40と、観察者眼球2と偏心プリズム40の間に配備され、相互に偏心した2面で構成され、内部が屈折率1以上の媒質で満たされ、画像表示素子5の中心から射出瞳中心21に入射する軸上主光線22より画像表示素子5側は正のパワーを有する部分が存在し、その反対側では負のパワーを有する部分が存在する偏心レンズ30と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心レンズと回転非対称面を用いた偏心プリズムとを備えた偏心光学系とそれを用いた画像表示装置、および撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小型画像表示素子を用い、これらの表示素子の原画像を観察光学系によって拡大して観察者に呈示する頭部装着型の画像表示装置が知られている。この頭部装着型の画像表示装置は、装置を頭部に装着するため、装置全体の小型化、軽量化が要望されている。また呈示する画像に高い臨場感を持たせるには、表示素子の原画像を出来るだけ広画角に呈示すると共に、高解像度で表現できる光学系が求められる。
【0003】
このような要求を満たすための手段として、表示素子からの光束を観察者眼球に導く光学系は、表示素子と観察者眼球の間のプリズム光学系と共に2面の屈折面で構成した光学素子いわゆるレンズを配備することが、広画角な観察をする場合にはとくに有効となる。例えば、特許文献1〜特許文献7には、偏心プリズムと屈折光学素子(レンズ等)の組合せの光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−221688号公報
【特許文献2】特開2002−244075号公報
【特許文献3】特開2002−311378号公報
【特許文献4】特開2002−318366号公報
【特許文献5】特開2003−15041号公報
【特許文献6】特開昭2010−92061号公報
【特許文献7】特開平9−146037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、1個の偏心プリズムと1個の偏心レンズを組合せることによって、コンパクトでありながら広画角でかつ大きな射出瞳を有し、高い解像力を有する偏心光学系を提供するところにある。さらに、画像表示素子とこの偏心光学系を用いることで、小型軽量、低コスト化が可能でかつ、観察した人に違和感の少ない画像表示装置を提供するところにある。
【0006】
画像表示素子の画像を中間像を形成せずにダイレクトに観察者眼球に投影する画像表示装置は、リレー光学系を用いて1次像を形成し、接眼光学系でその1次像を眼球に導く偏心光学系を備えた画像表示装置に比べると、リレー光学系が無いので、画像表示素子まわりに光学系を集約できるため、装置は小型、軽量になり、頭部に装置を装着する観察者への負担を低減することができる。そして、小型軽量であることは、手持ちで観察する場合においても、利用者への負担低減の意味で重要である。
【0007】
また、本発明の画像表示装置によれば、小さな表示素子であっても広い観察画角を得ることが可能となる。リレー光学系を用いずに、接眼光学系だけで画像表示装置を構成した場合、広い観察画角を達成するためには接眼光学系の焦点距離を短くして倍率を上げる必要があるが、プリズム光学系のパワーを強くしすぎと収差を補正することが困難となる。本発明では、偏心レンズを用いることで、プリズム光学系で発生する収差を補正すること
としている。
【0008】
特許文献1に開示される従来の発明では、観察像を表示する2次元画像表示素子と、2次元画像表示素子の実像を空中に投影するリレー光学系と、その実像を空中に拡大投影すると共に光軸を反射屈曲させる接眼鏡とを具備した視覚表示装置であるが、この光学系では、プリズム光学系と射出瞳の間に配備されたレンズは、正のパワーの屈折作用を有するものであり、かつ、その入射側の面が観察者眼球あるいはスクリーン側に凸面を向けているものである。そのため、観察者に対して凸面を向けているため、装置化する上で十分なアイリリーフを確保するためには、画角を狭くする必要がある。逆に、広画角にすると光学系と観察者顔面が実現できないほど接近する恐れがある。
【0009】
特許文献2では、前記正レンズの少なくとも1面に、回折型の光学的ローパスフィルターが設けられていることを特徴とする画像表示装置であるが、この光学系では、光路中に回折型ローパスフィルターを介在しているため、高い周波数成分が眼球に到達しないために、この光学系によるHMD装置では解像感が低い呈示画像となり、高い臨場感を得ることが困難となる。
【0010】
特許文献3では、画像表示素子を観察者眼球に投影する少なくとも3面で形成された偏心プリズムを備えた観察光学系において、偏心プリズム10の射出面11と観察光学系の射出瞳1の間に正パワーの光学素子20が配置され、偏心プリズム10と画像表示素子3との間に色収差を補正するための回折光学素子7を有する画像表示装置であるが、この光学系では、プリズムと画像表示素子の間に回折光学系を配備しており、画像表示素子から偏心プリズムまでの距離が長くなりため、光路長が長くなり、結局焦点距離も長くなるため、広画角な光学系を実現することは難しい。
【0011】
特許文献4〜特許文献6では、ホログラム素子を利用した方法が提案されている。これによると、ホログラム素子による回折を利用して光学系を薄型にしたレイアウトが可能である。しかしながら、ホログラム素子は製造が非常に困難であり、コストも高い。さらに、波長選択性が高いため、波長の非常に狭いレーザー光線のような光源を用いるか、またはLEDの一部の波長のみを利用するといった方法が取られる。レーザー光源はまだまだ3原色の小型化されたチップは開発途上であり高コストで、消費電力も高く、眼鏡に組み込めるものではない。また、LED光源を利用したものは狭帯域のバンドパスフィルターを通過させるため光の利用効率が低い。
【0012】
さらにホログラム素子の課題として、低消費電力であり、自発光タイプで照明系もいらず、小型化に有利な有機ELパネルが使用できない。有機ELパネルはLEDよりも波長帯が比較的広く、ホログラム素子との組み合わせは効率が悪く、不要光も多くなり画質を確保できない。
【0013】
本発明は従来技術のこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、画像表示素子の像を形成する偏心光学系を備えた画像表示装置において、偏心光学系に偏心プリズムを用いて光路を折り曲げることでコンパクト化を図ると共に、接眼光学系に偏心レンズを採用することで特に非対称な像面湾曲を補正し、偏心プリズムの収差補正の負担を軽減し、光学系全体の小型化が図られている。また、この画像表示装置にて利用される偏心光学系、さらには、偏心光学系を用いた撮像装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのため本発明に係る偏心光学系は、
画像表示素子の原画像を観察者眼球に虚像として投影する偏心光学系において、
前記画像表示素子に対向して配置され、少なくとも3面の光学面が相互に偏心し、その
うちの少なくとも2面が回転非対称な形状であって、内部が屈折率1以上の媒質で満たされた偏心プリズムと、
前記観察者眼球と前記偏心プリズムの間に配備され、相互に偏心した2面で構成され、内部が屈折率1以上の媒質で満たされ、前記画像表示素子の中心から射出瞳中心に入射する軸上主光線より前記画像表示素子側は正のパワーを有する部分が存在し、その反対側では負のパワーを有する部分が存在する偏心レンズと、を備えることを特徴とする。
【0015】
以下、上記配置をとる理由と作用について説明する。以下は、設計上の利便性から、観察者瞳位置から画像表示素子へ向けて光線を追跡する逆追跡の光路に沿って説明する。
【0016】
本発明について、図1〜図3に示される実施例1〜3の構成を例にとって説明する。観察者眼球2側から画像表示素子5に向かう光線を定義する逆光線追跡によって示した図である。この図において、観察者眼球を2、射出瞳を21、偏心光学系を3、偏心レンズを30、偏心プリズムを40、画像表示素子を5、画像表示素子5の中心から射出瞳21中心に入射する軸上主光線(観察者視軸)を22で示す。
【0017】
本発明の光学系は、屈折率が1よりも大きい媒質を挟んだ第1面41、第2面42及び第3面43の少なくとも3つの面で構成されているプリズム光学系40を用いている。第3面43が画像表示素子5から射出された光束を前記媒質内に入射させる入射面にて構成され、第2面42が主な正のパワーを有する内部反射面とし、第1面41がプリズム光学系40から射出する屈折面、かつ、第3面43から入射した光を内部反射する2つの作用を有するものである。このように配置されているプリズム光学系40は、観察光学系をよりコンパクト化することができると共に収差補正をより確実に行うことができる。
【0018】
ここで、このような偏心光学系3、特に、内部反射の偏心プリズム40で構成することのメリットについて説明する。レンズのような屈折光学素子は、その境界面に曲率を付けることにより始めてパワーを持たせることができる。そのため、レンズの境界面で光線が屈折する際に、屈折光学素子の色分散特性による色収差の発生が避けられない。その結果、色収差を補正する目的で別の屈折光学素子が付加されるのが一般的である。
【0019】
一方、ミラーやプリズム等のような反射光学素子は、その反射面にパワーを持たせても原理的に色収差の発生はなく、色収差を補正する目的だけのために別の光学素子を付加する必要はない。そのため、反射光学素子を用いた光学系は、屈折光学素子を用いた光学系に比べて、色収差補正の観点から光学素子の構成枚数の削減が可能である。
【0020】
同時に、反射光学素子を用いた反射光学系は、光路を折り畳むことになるために、屈折光学系に比べて光学系自身を小さくすることが可能である。また、反射面は屈折面に比して偏心誤差感度が高いため、組み立て調整に高い精度を要求される。
【0021】
しかし、反射光学素子の中でも、プリズムはそれぞれの面の相対的な位置関係が固定されているので、プリズム単体として偏心を制御すればよく、必要以上の組み立て精度、調整工数が不要である。さらに、プリズムは、屈折面である入射面と射出面、それと反射面を有しており、反射面しかもたないミラーに比べて、収差補正の自由度が大きい。特に、反射面に所望のパワーの大部分を分担させ、屈折面である入射面と射出面のパワーを小さくすることで、ミラーに比べて収差補正の自由度を大きく保ったまま、レンズ等のような屈折光学素子に比べて、色収差の発生を非常に小さくすることが可能である。また、プリズム内部は空気よりも屈折率の高い透明体で満たされているために、空気に比べ光路長を長くとることができ、空気中に配置されるレンズやミラー等よりは、光学系の薄型化、小型化が可能である。また、観察光学系は、中心性能はもちろんのこと周辺まで良好な結像性能を要求される。
【0022】
そこで、本発明では、上記のように、観察光学系を構成する偏心光学系3に1個の偏心プリズム40を用いて、少なくとも、画像表示素子5から射出された像光を偏心プリズム40内に入射させる第3面43と、その第3面43から入射した光束を反射させる第2面42と射出させる第1面41で構成し、第1面41は、第3面43から入射した光を内部反射させる作用を兼ね備えている。このような構成の偏心プリズム40では、第2面42、第3面43の2つの反射面に光学的パワーを与えかつ偏心収差を補正する回転非対称な曲面形状に構成して、中心ばかりでなく軸外収差も良好に補正することを可能にしている。このような基本構成をとることで、屈折光学系あるいは回転対称なリレー光学系を用いた光学系に比べて光学素子の構成枚数が少なく、中心から周辺まで性能の良好な、小型の画像表示装置を得ることが可能となる。
【0023】
ここで、逆光線追跡で、射出瞳21の中心を通過して画像表示素子5の表示面の中心に到達する光線を軸上主光線22としたとき、偏心プリズム40の少なくとも1つの反射面が軸上主光線22に対して偏心していないと、軸上主光線22の入射光線と反射光線が同一の光路をとることとなり、軸上主光線が光学系中で遮断されてしまう。その結果、中心部が遮光された光束のみで像を形成することになり、中心が暗くなったり、中心では全く像を結ばなくなったりしてしまう。また、パワーを付けた反射面を軸上主光線に対し偏心させることも当然可能である。
【0024】
上記したように、本発明においては、偏心プリズム40を構成する反射面の面形状として、光束に光学的パワーを与えかつ偏心収差を補正する回転非対称な曲面形状に構成している。このような面形状は偏心収差を補正する上で好ましい。その理由を以下に詳述する。
【0025】
まず、用いる座標系、回転非対称な面について説明する。軸上主光線22が、偏心光学系の第1面31に交差するまでの直線によって定義される光軸をZ軸とし、そのZ軸と直交し、かつ、光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記光軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸とする。光線の追跡方向は、射出瞳21から画像表示素子5に向かう逆光線追跡で説明する。
【0026】
一般に、球面レンズでのみ構成されたレンズ系では、球面により発生する球面収差と、コマ収差、像面湾曲等の収差をいくつかの面でお互いに補正しあい、全体として収差を少なくする構成になっている。一方、少ない面数で収差を良好に補正するためには、回転対称非球面等が用いられる。これは、球面単体で発生する各種収差自体を少なくするためである。しかし、偏心した光学系においては、光学面の偏心により発生する回転非対称な収差(偏心収差)を回転対称光学系で補正することは不可能である。この偏心収差には、非対称な歪曲収差や像面湾曲、さらに、軸上でも発生する非点収差、コマ収差がある。
【0027】
まず、回転非対称な像面湾曲について説明する。例えば、無限遠の物点から偏心した凹面鏡に入射した光線は、凹面鏡に当たって反射結像されるが、光線が凹面鏡に当たって以降、像面までの後側焦点距離は、像界側が空気の場合、光線が当たった部分の曲率半径の半分になる。偏心した凹面で反射した光は、図14に示すように、軸上主光線に対して傾いた像面を形成する。このように、回転非対称な像面湾曲を補正するには回転対称な光学系では不可能である。
【0028】
この傾いた像面湾曲をその発生源である凹面鏡自身で補正するには、凹面鏡を回転非対称な面で構成する必要がある。この例ではY軸正の方向に対して曲率を強く(屈折力を強く)し、Y軸負の方向に対して曲率を弱く(屈折力を弱く)すれば、補正することができる。また、上記構成と同様な効果を持つ回転非対称な面を、凹面鏡とは別に光学系中に配
置することにより、少ない構成枚数でフラットの像面を得ることが可能となる。また、回転非対称な面は、その面内及び面外共に回転対称軸を有しない回転非対称面形状の面とすることが、自由度が増え収差補正上は好ましい。
【0029】
次に、回転非対称な非点収差について説明する。上記説明と同様に、偏心して配置された凹面鏡では、軸上光線に対しても図15に示すような非点収差が発生する。この非点収差を補正するためには、上記説明と同様に、回転非対称面のX軸方向の屈折力とY軸方向の屈折力を適切に変えることによって可能となる。
【0030】
さらに、回転非対称なコマ収差について説明する。上記説明と同様に、偏心して配置された凹面鏡では、軸上光線に対しても図16に示すようなコマ収差が発生する。このコマ収差を補正するためには、回転非対称面のX軸の原点から離れるに従って面の傾きを変えると共に、Y軸の正負によって面の傾きを適切に変えることによって可能となる。また、本発明の結像光学系では、前述の反射作用を有する少なくとも1つの面が軸上主光線に対し偏心し、回転非対称な面形状でパワーを有する構成も可能である。このような構成をとれば、その反射面にパワーを持たせることで発生する偏心収差をその面自体で補正することが可能となり、プリズムの屈折面のパワーを緩めることで、色収差の発生自体を小さくすることができる。
【0031】
また、本発明で用いる上記の回転非対称面は、対称面を1面のみ有する面対称自由曲面であることが好ましい。ここで、本発明で使用する自由曲面とは、以下の式(a)で定義されるものである。なお、その定義式のZ軸が自由曲面の軸となる。
Z=(r2/R)/[1+√{1−(1+k)(r/R)2 }]
66
+Σ Cj Xmn
j=1
・・・(a)
ここで、(a)式の第1項は球面項、第2項は自由曲面項である。
球面項中、
R:頂点の曲率半径
k:コーニック定数(円錐定数)
r=√(X2 +Y2
である。
自由曲面項は、
66
Σ Cj Xmn
j=1
=C1
+C2 X+C3 Y
+C4 X2 +C5 XY+C6 Y2
+C7 X3 +C8 X2 Y+C9 XY2 +C10Y3
+C11X4 +C12X3 Y+C13X22 +C14XY3 +C15Y4
+C16X5 +C17X4 Y+C18X32 +C19X23 +C20XY4
+C21Y5
+C22X6 +C23X5 Y+C24X42 +C25X33 +C26X24
+C27XY5 +C28Y6
+C29X7 +C30X6 Y+C31X52 +C32X43 +C33X34
+C34X25 +C35XY6 +C36Y7
・・・・・・
ただし、Cj (jは1以上の整数)は係数である。
【0032】
上記自由曲面は、一般的には、X−Z面、Y−Z面共に対称面を持つことはないが、本発明ではXの奇数次項を全て0にすることによって、Y−Z面と平行な対称面が1つだけ存在する自由曲面となる。例えば、上記定義式(a)においては、C2 、C5 、C7 、C9 、C12、C14、C16、C18、C20、C23、C25、C27、C29、C31、C33、C35・・・の各項の係数を0にすることによって可能である。また、Yの奇数次項を全て0にすることによって、X−Z面と平行な対称面が1つだけ存在する自由曲面となる。例えば、上記定義式においては、C3 、C5、C8 、C10、C12、C14、C17、C19、C21、C23、C25、C27、C30、C32、C34、C36・・・の各項の係数を0にすることによって可能であ
る。
【0033】
また上記対称面の方向の何れか一方を対称面とし、それに対応する方向の偏心、例えば、Y−Z面と平行な対称面に対して光学系の偏心方向はY軸方向に、X−Z面と平行な対称面に対しては光学系の偏心方向はX軸方向にすることで、偏心により発生する回転非対称な収差を効果的に補正しながら同時に製作性をも向上させることが可能となる。
【0034】
また、上記自由曲面の定義式(a)は、前述のように1つの例として示したものであり、他のいかなる定義式に対しても同じ効果が得られることは言うまでもない。
【0035】
また、偏心プリズム40部分を、画像表示素子5から射出された光の経路の順に、偏心プリズム40内に光を入射させる第3面43、その第3面43から入射した光束を反射させる第1面41、第1面41で内部反射した光は第2面42に入射し、第2面42で反射された光は再び第1面41に向かい、第1面41の光束が射出される部分では全反射するように、第1面41に入射する角度を臨界角以上に設定されていることが望ましいのだが、第1面41の射出領域ではない部分では臨界角以下にすることもできる。その場合、第1面41の全反射条件を満たさない反射領域には反射コーティングが施されることで、画面全体を観察することが可能となる。
【0036】
以上、説明した偏心プリズム40に加えて、相互に偏心した2面で構成され、2面の間を屈折率1以上の媒質で満たされた偏心レンズ30が、観察者眼球2と偏心プリズム40の間に配備されることにより、その2面による偏心収差を含めた収差補正を行うことができる。したがって、観察光学系として、より広画角で解像力が高く、かつ歪曲収差が良く補正された偏心光学系3を構成することができる。
【0037】
その場合の偏心レンズ30は、軸上主光線22より画像表示素子5側(図1の上側:Y正側)では正のパワーを有する部分が存在し、その反対側(図1の下側:Y負側)では負のパワーを有する部分が存在することが広画角における偏心収差補正を行うために重要なファクターとなる。
【0038】
偏心プリズム40だけを考えた場合、Yの正側では負のパワーを持つ第1面41に早く入射し、第2面42までの距離が長い。逆に、Yの負側では、負のパワーを持つ第1面41までは長く、第1面41と正パワーの第2面42の距離は短く、第2面42から第3面43までの距離は長い。
【0039】
このようなパワー配置の偏心プリズム40だけの場合にはY正側はY負側よりも像面から遠くに主点が存在する。したがって、Y正側の方の倍率が小さいため、偏心ディストーションが発生することになる。
【0040】
そこで、眼球2と偏心プリズム40の間に位置する偏心レンズ30において、Y正側(図1で上側)では正のパワーを有する部分が存在し、その反対のY負側(図1で下側)で
は負のパワーを有する部分を存在させることにより、上記した偏心ディストーションの補正が可能になる。
【0041】
さらに本発明に係る偏心光学系において、
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
前記偏心レンズにおけるY方向のパワー分布は、Y方向画角が大から小さくなるにしたがって小さくなることを特徴とする。
【0042】
上述したように、眼球2と偏心プリズム40の間に位置する偏心レンズ30において、Y正側(図1で上側)では正のパワーを有する部分が存在し、その反対のY負側(図1で下側)では負のパワーを有する部分が存在することにより、上記した偏心ディストーションの補正が可能になるが、ディストーション補正において、Y正側からY負になるにしたがって徐々に正から負にパワーが変化することによって滑らかな偏心収差補正を行うことが可能となる。
【0043】
図4、図5、図6に実施例1、2、3の偏心レンズ30に平行光を、Y方向画角(右下から)−20、−10、0、10、20度で入射した場合の光線のふるまいを示している。これらの図から明らかに、Y正側(図において右上の光線)は正のパワーを有し、Y方向の画角が小さくなるにしたがって、焦点距離が長くなり、Yの負側(図において右下)では発散光となることがわかる。
【0044】
さらに本発明に係る偏心光学系は、
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
下記条件式(1)を満足することを特徴とする。
0.0005≦(φlenx−φlenm)/φy≦0.015 ・・・(1)
ただし、
φlenxは、偏心レンズのパワーの最大値、
φlenmは、偏心レンズのパワーの最小値、
φyは、光学系全系のY方向のパワーである。
【0045】
この条件式(1)は、偏心レンズ30の位置によるパワーの差を制限する条件となる。上限0.015を超えるとレンズの上下でパワーの差が大きくなるため、光学系全体のパワーの差が大きくなり、像面の倒れが大きくなる。一方、下限0.0005を下回る偏心レンズ30におけるパワーの差が小さくなり、偏心レンズ30による上下の焦点距離の差が適正に与えられず画角マイナス側の焦点距離が短くなりすぎ、偏心プリズム40から画像表示素子5までの距離が確保できなくなる。
【0046】
さらに本発明に係る偏心光学系は、
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
下記条件式(1’)を満足することを特徴とする。
0.0008≦(φlenx−φlenm)/φy≦0.01 ・・・(1’)
ただし、
φlenxは、偏心レンズのパワーの最大値、
φlenmは、偏心レンズのパワーの最小値、
φyは、光学系全系のY方向のパワーである。
【0047】
上記条件を満足することがさらに好ましい。
【0048】
さらに本発明に係る偏心光学系は、
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
下記条件式(2)を満足することを特徴とする。
−4 ≦ φylen/φy ≦ 3 ・・・(2)
ただし、
φylenは、偏心レンズのY方向のパワー、
φyは、光学系全系のY方向のパワーである。
【0049】
この条件式(2)は、偏心レンズ30のYZ面内のパワーを制限する条件となる。下限−4を下回るレンズの下側のYZ面内の負のパワーが大きくなりすぎ、像面の倒れが大きくなる。上限3を超えるとレンズの上側のYZ面内の正のパワーが大きくなり、焦点距離が短くなるため、プリズムから表示素子までの距離が確保できなくなる。図7には、各実施例(実施例1〜実施例3)について、条件式(2)の値がグラフで示されている。
【0050】
さらに本発明に係る偏心光学系は、
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
下記条件式(2’)を満足することを特徴とする。
−3 ≦ φylen/φy ≦ 2 ・・・(2’)
ただし、
φylenは、偏心レンズのY方向のパワー、
φyは、光学系全系のY方向のパワーである。
【0051】
上記条件を満足することがさらに好ましい。
【0052】
さらに本発明に係る偏心光学系は、
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
下記条件式(3)を満足することを特徴とする。
−80 ≦ flex・fy/fley・fx ≦ 40 ・・・(3)
ただし、
flexは、偏心レンズのX方向の焦点距離、
fleyは、偏心レンズのY方向の焦点距離、
fyは、光学系全系のY方向の焦点距離である。
【0053】
偏心光学系3全系のX方向の焦点距離に対する偏心レンズ30のX方向の焦点距離と、偏心光学系全系のY方向の焦点距離に対する偏心レンズ30のY方向の焦点距離の比を制限する条件となる。つまり、この絶対値が大きいと、X方向の焦点距離が長く、Y方向の焦点距離が短い、絶対値が小さいとY方向の焦点距離が長く、X方向の焦点距離は短い。符号がマイナスの場合には、X方向とY方向で正と負のパワーを有することになる。
【0054】
下限−80を超えると偏心レンズ30のYZ面内の負のパワーが大きくなりすぎ、ディ
ストーションの補正が過剰になる。上限40を超えると偏心レンズ30の上側のXZ面内に比べてYZ面内の正のパワーが大きくなり、他の面で補正できないレベルの非点隔差が発生する。図8には、各実施例(実施例1〜実施例3)について、条件式(3)の値がグラフで示されている。
【0055】
さらに本発明に係る偏心光学系は、
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
下記条件式(3’)を満足することを特徴とする。
−70 ≦ flex・fy/fley・fx ≦ 30 ・・・(3’)
ただし、
flexは、偏心レンズのX方向の焦点距離、
fleyは、偏心レンズのY方向の焦点距離、
fyは、光学系全系のY方向の焦点距離である。
【0056】
上記条件を満足することがさらに好ましい。
【0057】
さらに本発明に係る偏心光学系は、
前記偏心プリズムの入射面である第3面の有効面内において、パワーが正から負、または負から正に変化する変曲点が少なくとも2箇所あることを特徴とする。
【0058】
偏心プリズム40の第3面43は、画像表示装置の逆追跡における像面に近接する面であり、像面の直前にあるため、その面のパワーによって射出光線の傾角が制御できる。さらに、軸外収差であるディストーション補正に有効に作用する。偏心レンズ30、偏心プリズム40の第1、2面までに、光学系の球面収差、コマ収差等の光学系の明るさに起因する収差補正を行い、像面直前の第3面43で像面湾曲、ディストーションなどの軸外収差を補正する効果を有する。特に、軸外のパワーを負とすることで像面湾曲に対して有効に補正することが可能となるが、軸上付近は正のパワーとして近軸焦点距離を短くし、広い画角を確保することに寄与している。そのため、中心付近は凸形状であり、周辺は凹形状になっている。さらに、この面の凹凸により軸外のパワーの制御をすることで、周辺の軸外の微妙なディストーションの補正を行っている。図1には、実施例1について、変曲点を2箇所有する第3面43の形状がみてとれる。また、図13には、図3に示す実施例3について面形状が示されている。
【0059】
また本発明に係る画像表示装置は、
前述した何れかの偏心光学系と、
前記偏心光学系の逆光線追跡における像面に配備された画像表示素子を備え、
前記偏心光学系の入射瞳位置に観察者の眼を配備することを特徴とする。
【0060】
本発明の偏心光学系は、画像表示素子の光束を観察者眼球に導くために観察光学系を観察者頭部に保持できるように形成された支持部材を有するように構成するのが画像表示装置として利用するために必要である。画像表示素子から発した光は、プリズム及びレンズによって光は略平行光となり、射出瞳位置に配備された観察者眼球の瞳孔に全画角の光束が入射される。
【0061】
このような構成の画像表示装置によれば、小さい画像表示素子を用いた小型の画像表示装置を実現することができ、観察者は画像表示素子に表示された像を拡大された虚像として観察することができる。
【0062】
また、本発明に係る撮像装置は、
物体からの光を開口絞りと偏心光学系を介して撮像素子に結像させる撮像装置において、
前記偏心光学系は、
前記撮像素子に対向して配置され、少なくとも3面の光学面が相互に偏心し、そのうちの少なくとも2面が回転非対称な形状であって、内部が屈折率1以上の媒質で満たされた偏心プリズムと、
前記開口絞りと前記偏心プリズムの間に配備され、相互に偏心した2面で構成され、内部が屈折率1以上の媒質で満たされ、前記開口絞り中心から前記撮像素子の中心に入射する軸上主光線より前記画像表示素子側は正のパワーを有する部分が存在し、その反対側では負のパワーを有する部分が存在する偏心レンズと、を備えることを特徴とする。
【0063】
図1に示される実施例1の場合、画像表示素子5に代えてCCD等の撮像素子を配備するとともに、偏心レンズ30の第1面31前方に円形、長方形またはそれに準じた形状の開口を持つ開口絞りを配備することで、撮像装置を構成することができる。開口絞りを通過し、偏心レンズ30の第1面31から入射し、第2面32を通過して偏心プリズムの第1面から入射した光は、第2面、第1面で2回の内部反射をして第3面から射出して撮像素子に到達し光は集光することで、外界の画像を撮像素子に撮像することが可能となる。
【0064】
このような構成によれば、小型軽量化された撮像装置を実現することができる。なお、この撮像装置についても前述の画像表示装置で用いた偏心光学系の構成を付加することが可能である。
【発明の効果】
【0065】
本発明によると、構成する光学素子が2個でありながら、広画角でかつ大きな射出瞳を有し、高解像を実現できる偏心光学系を実現することができ、画像表示素子の画像を虚像として観察者眼球に投影することが可能な画像表示装置、あるいは、撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係る画像表示装置の構成を示す図(実施例1)
【図2】本発明の他の実施形態に係る画像表示装置の構成を示す図(実施例2)
【図3】本発明の他の実施形態に係る画像表示装置の構成を示す図(実施例3)
【図4】本発明の実施形態に係る偏心レンズ(実施例1)に平行光を入射したときのふるまいを示す図
【図5】本発明の実施形態に係る偏心レンズ(実施例2)に平行光を入射したときのふるまいを示す図
【図6】本発明の実施形態に係る偏心レンズ(実施例3)に平行光を入射したときのふるまいを示す図
【図7】本発明の各実施例について条件式(2)の値を示した図
【図8】本発明の各実施例について条件式(3)の値を示した図
【図9】本発明の実施例3の収差図を示す図
【図10】本発明の実施例3の収差図を示す図
【図11】本発明の実施例3の収差図を示す図
【図12】本発明の実施例3の偏心光学系のディストーションマップを示す図
【図13】本発明の実施例3の第3面の形状を示す図
【図14】偏心配置の凹面鏡により発生する像面湾曲を説明するための図
【図15】偏心配置の凹面鏡により発生する非点収差を説明するための図
【図16】偏心配置の凹面鏡により発生する軸上コマ収差を説明するための図
【図17】本発明の実施形態に係る画像表示装置を片眼装着の構成にした場合の様子を示す図
【図18】本発明の実施形態に係る画像表示装置を両眼装着の構成にした場合の様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明の具体的な数値実施例1〜3について説明する。後述する各実施例の構成パラメータにおいては、図1に示すように、逆光線追跡で、軸上主光線22を、偏心光学系3の射出瞳21の中心を通り、像面(画像表示素子)5の中心に到る光線で定義する。
【0068】
実施例1〜3においては、偏心レンズ30と射出瞳22間の軸上主光線22の進行方向に沿った方向をZ軸正方向とし、このZ軸と偏心光学系を構成する各面の偏心面を含む平面をY−Z平面とし、Y−Z平面に直交し、紙面の手前から裏面側に向かう方向をX軸正方向とし、X軸、Z軸と右手直交座標系を構成する軸をY軸とする。図1〜図3に示す各実施例1〜3に座標系を図示してある。
【0069】
実施例1〜3では、このY−Z平面内で各面の偏心を行っており、また、各回転非対称自由曲面の唯一の対称面をY−Z面としている。偏心面については、対応する座標系の原点から、その面の面頂位置の偏心量(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向をそれぞれX、Y、Z)と、その面の中心軸(自由曲面については、前記(a)式のZ軸)のX軸、Y軸、Z軸それぞれを中心とする傾き角(それぞれα、β、γ(°))とが与えられている。なお、その場合、αとβの正はそれぞれの軸の正方向に対して反時計回りを、γの正はZ軸の正方向に対して時計回りを意味する。
【0070】
また、各実施例の光学系を構成する光学作用面の中、特定の面(仮想面を含む。)とそれに続く面が共軸光学系を構成する場合に、面間隔が与えられており、その他、媒質の屈折率、アッベ数が慣用法に従って与えられている。また、本発明で用いられる自由曲面の面の形状は前記(a)式により定義し、その定義式のZ軸が自由曲面の軸となる。
【0071】
なお、データの記載されていない自由曲面に関する項は0である。屈折率については、d線(波長587.56nm)に対するものを表記してある。長さの単位はmmである。
【0072】
実施例1〜3の光軸を含むY−Z断面図をそれぞれ図1〜図3に示す。
実施例1〜3は、画像表示素子5として、水平画角55°で0.8インチの液晶表示素子(LCD)を想定しており、また、画像表示素子5側に、第3面43と、第3面43から入射した光束を内部反射させる第1面41と、第1面41から反射された光束を反射させる第2面42と、第2面42から反射された光束を射出する第1面41を備え、第3面43から入射した光線は、第1面41から射出するまでの光線はプリズム内では交差しないような光路を有する偏心プリズム40を用いており、これら第1面41〜第3面43に面対称自由曲面を用いている。さらに、第1面41を射出した光線は、偏心レンズ30の第2面32から入射し、屈折して、第1面31から射出し、観察者眼球2の虹彩位置近傍に射出瞳21を形成する。
【0073】
実施例1の画像表示装置は、図1に示すように偏心プリズム40と偏心レンズ30とからなり、偏心プリズム40は3つの光学面41〜43からなり、その3つの面41〜43の間が屈折率が1より大きい透明媒質で埋められている。また、偏心レンズ30は、2つの光学面31、32からなり、その2つの面31、32の間が屈折率が1よりも大きい透明媒質で埋められている。
【0074】
逆光線追跡で、射出瞳21を通る軸上主光線は、偏心レンズ30の入射面である透過面31から入射し、透明媒質内を透過して透過面32から射出する。次に偏心プリズム40
の透過面である第1面41に入射して偏心プリズム40内に入り、主に正のパワーを有する内部反射面の第2面42で反射され、次に内部反射面として作用する第1面41で反射され、その反射光線は透過面の第3面41を透過して偏心プリズム40から射出して、画像表示素子のカバーガラスを介して像面の位置に配置された画像表示素子5の表示面に到達して結像する。ここで、第1面41は、第2面42から反射した光線に対しては、第1面41に対する入射角が臨界角以上の場合、その領域では全反射を起こして反射する。第1面41に対する入射角が臨界角より小さい場合には、その領域にはアルミニウムなどの反射膜をコーティングされる。また、この反射コーティングする領域は、画像表示素子5へ射出する領域と重ならないようにすることが肝要となる。
【0075】
実際には画像表示素子5から射出された表示光は上記の光路を逆に辿り、射出瞳21の位置に瞳が位置する観察者の眼球内に拡大投影される。実施例1の偏心レンズ30の透過面31及び透過面32は自由曲面形状であり、偏心プリズム40の第1面41(透過及び内部反射面)、第2面42(内部反射面)及び第3面43(透過面)は自由曲面形状であり、全光学系のX方向の近軸焦点距離は14.95mm、Y方向の近軸焦点距離は16.16mmであり、瞳径はφ4.0mmである。
【0076】
実施例2、3は実施例1と同様の光学系の構成で、同様の画像表示素子5を用いており、射出瞳21から画像表示素子5までの光線の経路も同様に定義される。
【0077】
実施例2における、全光学系のX方向の近軸焦点距離は11.43mm、Y方向の近軸焦点距離は16.16mmであり、瞳径はφ4.0mmである。
【0078】
実施例3における、全光学系のX方向の近軸焦点距離は14.77mm、Y方向の近軸焦点距離は15.72mmであり、瞳径はφ4.0mmである。
【0079】
図9〜図11には、それぞれ実施例3の中心及び、周辺の、X方向、Y方向における横収差図が示されている。各収差図の中央の括弧の中には、水平画角、垂直画角が示されている。この横収差図は、587.6nm(d線:実線)、435.8nm(g線:破線)、656.3nm(C線:点線)、486.1nm(F線:一点鎖線)、546.1nm(e線:二点鎖線)の各波長について示されている。また、図12には、実施例3の偏心光学系のディストーションマップが示されている。このディストーションマップ中、横方向は観察者の水平方向角度であり、縦方向は観察者の垂直方向角度であって、実線を偏心光学系に投影したときの観察像が破線にて示されている。全ての画角において、ディストーションの最大値(絶対値)は−1.87%であり、周辺まで良好に歪曲収差が補正されていることがわかる。
【0080】
以下に上記実施例についての数値実施例を示す。これら数値実施例において“FFS”は自由曲面を示す。なお、記号“e”は、それに続く数値が10を底にもつ、べき指数であることを示している。例えば「1.0e−005」は「1.0×10-5」であることを意味している。
【0081】
(実施例1)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ -1000.00
1 ∞(絞り面)
2 FFS[1] 偏心(1) 1.5254 56.2
3 FFS[2] 偏心(2)
4 FFS[3] 偏心(3) 1.5254 56.2
5 FFS[4] 偏心(4) 1.5254 56.2
6 FFS[3] 偏心(3) 1.5254 56.2
7 FFS[5] 偏心(5)
8 ∞ 0.74 偏心(6) 1.5163 64.1
像 面 ∞

FFS[1]
C4 -2.7575e-003 C6 -1.9277e-002 C8 -2.4903e-004
C10 2.0434e-003 C11 -4.1901e-005 C13 -1.3727e-004
C15 -5.4831e-005

FFS[2]
C4 -8.6565e-003 C6 -7.9980e-003 C8 1.3864e-005
C10 2.8199e-004 C11 4.5270e-005 C13 -7.9576e-005
C15 7.9320e-006 C17 -3.7809e-006 C19 -5.2615e-006
C21 1.2706e-006 C22 -1.1061e-007 C24 -5.9560e-009
C26 9.1532e-009 C28 1.0253e-007

FFS[3]
C4 -2.3982e-003 C6 -5.5033e-003 C8 3.4282e-006
C10 2.6032e-004 C11 -6.3046e-005 C13 -2.6994e-005
C15 1.5362e-005 C17 -3.0038e-006 C19 6.9109e-008
C21 3.5736e-007 C22 8.9464e-008 C24 2.4096e-008
C26 2.0845e-008 C28 3.4638e-009

FFS[4]
C4 -1.1575e-002 C6 -1.4583e-002 C8 7.7041e-005
C10 1.9180e-004 C11 -1.5301e-005 C13 -1.2662e-005
C15 -5.7629e-006 C17 1.6140e-007 C19 6.1537e-007
C21 -1.3539e-007 C22 8.5383e-009 C24 -3.8873e-010
C26 -4.7835e-008 C28 -1.1279e-008

FFS[5]
C4 -3.9163e-002 C6 -3.9905e-002 C8 2.2968e-003
C10 -1.0478e-003 C11 4.0363e-004 C13 5.0626e-004
C15 4.7991e-004 C17 1.9249e-005 C19 -5.6313e-005

偏心[1]
X 0.00 Y 0.00 Z 12.00
α 12.16 β 0.00 γ 0.00

偏心[2]
X 0.00 Y 0.14 Z 14.30
α 25.00 β 0.00 γ 0.00

偏心[3]
X 0.00 Y 11.93 Z 10.68
α 27.55 β 0.00 γ 0.00

偏心[4]
X 0.00 Y 1.43 Z 23.70
α -11.27 β 0.00 γ 0.00

偏心[5]
X 0.00 Y 13.95 Z 16.56
α 75.15 β 0.00 γ 0.00

偏心[6]
X 0.00 Y 15.20 Z 17.00
α 68.62 β 0.00 γ 0.00
【0082】
(実施例2)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ -1000.00
1 ∞
2 ∞(絞り面)
3 FFS[1] 偏心(1) 1.5254 56.2
4 FFS[2] 偏心(2)
5 FFS[3] 偏心(3) 1.5254 56.2
6 FFS[4] 偏心(4) 1.5254 56.2
7 FFS[3] 偏心(3) 1.5254 56.2
8 FFS[5] 偏心(5)
9 ∞ 0.74 偏心(6) 1.5163 64.1
像 面 ∞

FFS[1]
C4 3.2764e-004 C6 -9.3389e-003 C8 1.5877e-003
C10 1.4204e-003 C11 -1.0643e-004 C13 -2.2510e-005
C15 4.4326e-005

FFS[2]
C4 9.6058e-004 C6 -8.7157e-003 C8 2.5263e-005
C11 -1.2350e-004 C13 -3.0760e-005 C15 2.8052e-005
C17 7.4414e-007 C19 6.2586e-006 C21 4.0980e-006

FFS[3]
C4 -4.8978e-003 C6 -8.1731e-003 C8 3.5777e-004
C10 2.9897e-004 C11 -5.3345e-005 C13 -9.3623e-006
C15 1.8969e-005 C17 -3.6434e-007 C19 5.7322e-007
C21 4.0879e-007 C22 1.9345e-008 C24 6.2983e-008
C26 2.5851e-008 C28 2.6386e-009

FFS[4]
C4 -1.4671e-002 C6 -1.4589e-002 C8 3.2361e-004
C10 2.1254e-004 C11 -9.6012e-006 C13 -1.1715e-005
C15 -4.7961e-006 C17 -3.2682e-008 C19 8.6240e-007
C21 4.6430e-008

FFS[5]
C4 -5.8796e-002 C6 -8.2019e-003 C8 -1.5847e-003
C10 -4.4478e-003 C11 7.5889e-004 C13 6.0326e-004
C15 5.0492e-004 C17 4.7264e-005 C19 1.8293e-005
C21 1.4899e-006 C22 -4.1199e-006 C24 -5.2249e-009
C26 -6.6421e-006 C28 -4.6625e-007

偏心[1]
X 0.00 Y 0.00 Z 12.00
α 6.45 β 0.00 γ 0.00

偏心[2]
X 0.00 Y 0.68 Z 14.07
α 10.10 β 3.00 γ 0.00

偏心[3]
X 0.00 Y 10.01 Z 12.69
α 20.24 β 0.00 γ 0.00

偏心[4]
X 0.00 Y 2.67 Z 22.42
α -12.01 β 0.00 γ 0.00

偏心[5]
X 0.00 Y 11.86 Z 19.71
α 67.20 β 0.00 γ 0.00

偏心[6]
X 0.00 Y 14.15 Z 18.16
α 62.98 β 0.00 γ 0.00
【0083】
(実施例3)
面番号 曲率半径 面間隔 偏心 屈折率 アッベ数
物体面 ∞ -1000.00
1 ∞(絞り面)
2 FFS[1] 偏心(1) 1.5254 56.2
3 FFS[2] 偏心(2)
4 FFS[3] 偏心(3) 1.5254 56.2
5 FFS[4] 偏心(4) 1.5254 56.2
6 FFS[3] 偏心(3) 1.5254 56.2
7 FFS[5] 偏心(5)
8 ∞ 0.74 偏心(6) 1.5163 64.1
像 面 ∞

FFS[1]
C4 1.0276e-002 C6 -7.8644e-003 C8 2.6894e-004
C10 1.9581e-003 C11 -2.1167e-004 C13 -1.9504e-005
C15 1.0745e-004

FFS[2]
C4 9.6017e-003 C6 7.4822e-003 C8 2.5826e-004
C11 -8.2212e-005 C13 -8.3341e-005 C15 1.1722e-004
C17 2.4678e-006 C19 -5.6760e-006 C21 6.9844e-006

FFS[3]
C4 -3.6213e-003 C6 -8.3483e-003 C8 4.1354e-004
C10 2.2575e-004 C11 -8.1506e-005 C13 -7.2705e-006
C15 2.0578e-005 C17 -9.3771e-006 C19 -1.5283e-006
C21 3.7919e-007 C22 2.1668e-008 C24 -3.3503e-007
C26 -2.4553e-008 C28 1.6465e-009

FFS[4]
C4 -1.3282e-002 C6 -1.4591e-002 C8 1.1102e-004
C10 1.6441e-004 C11 -2.1345e-005 C13 -4.3870e-006
C15 -3.6691e-006 C17 -1.8030e-007 C19 4.7596e-007
C21 1.5316e-007

FFS[5]
C4 -3.2963e-002 C6 -3.6739e-002 C8 2.3323e-003
C10 -1.4919e-003 C11 4.2887e-004 C13 5.5405e-004
C15 7.2332e-004 C17 2.2387e-006 C19 -2.1346e-005
C21 -3.4126e-005 C22 -2.4689e-007 C24 -1.6318e-006
C26 -1.5202e-006 C28 -8.0673e-007

偏心[1]
X 0.00 Y 0.00 Z 12.00
α 1.41 β 0.00 γ 0.00

偏心[2]
X 0.00 Y -0.02 Z 13.37
α 6.63 β 0.00 γ 0.00

偏心[3]
X 0.00 Y 11.57 Z 12.75
α 17.83 β 0.00 γ 0.00

偏心[4]
X 0.00 Y 2.86 Z 23.05
α -13.09 β 0.00 γ 0.00

偏心[5]
X 0.00 Y 13.60 Z 18.30
α 64.81 β 0.00 γ 0.00

偏心[6]
X 0.00 Y 15.49 Z 19.40
α 54.73 β 0.00 γ 0.00
【0084】
以上に説明したような画像表示装置を1組用意し、片眼装着用に構成しても、また、そのような組を左右一対用意し、それらを眼輻距離だけ離して支持することにより、両眼装
着用に構成してもよい。そのようにして、片眼あるいは両眼で観察できる据え付け型又はポータブル型の画像表示装置として構成することができる。
【0085】
片眼に装着する構成にした場合の様子を図17に(この場合は、左眼に装着)、両眼に装着する構成にした場合の様子を図18に示す。図17中、61は表示装置本体部を示し、観察者の左眼の前方に保持されるよう支持部材が頭部を介して固定している。その支持部材としては、一端を表示装置本体部61に接合し、観察者の側頭部を渡るように延在する前フレーム62、後フレーム63と、後フレーム63の他端に挟まれるように自らの両端を一方ずつ接合し、観察者の頭頂部を支持する頭頂フレーム64とから構成されている。一方、図18に示される両眼タイプのものは、両眼前方に保持される表示装置本体部61R、61Lをそれぞれ、前方フレーム62、後フレーム63を介して頭頂フレーム64にて支持することで、観察者に対して固定配置している。
【0086】
また、片目タイプ、両眼タイプどちらの構成においても以下の構成を採用することとしている。前フレーム62における上記の後フレーム63との接合近傍には、弾性体からなり例えば金属板バネ等で構成されたリヤプレート65が接合されている。このリヤプレート65は、上記支持部材の一翼を担うリヤカバー66が観察者の後頭部から首のつけねにかかる部分で耳の後方に位置して支持可能となるように接合されている。リヤプレート65又はリヤカバー66内に観察者の耳に対応する位置にスピーカー69が取り付けられている。
【0087】
映像・音声信号等を外部から送信するためのケーブル71が表示装置本体部61から、頭頂フレーム64、後フレーム63、前フレーム62、リヤプレート65の内部を介してリヤプレート65あるいはリヤカバー66の後端部より外部に突出している。そして、このケーブル41はビデオ再生装置70に接続されている。なお、図中、70aはビデオ再生装置70のスイッチやボリュウム調整部である。
【0088】
なお、ケーブル71は先端をジャックして、既存のビデオデッキ等に取り付け可能としてもよい。さらに、TV電波受信用チューナーに接続してTV鑑賞用としてもよいし、コンピュータに接続してコンピュータグラフィックスの映像や、コンピュータからのメッセージ映像等を受信するようにしてもよい。また、邪魔なコードを排斥するために、アンテナを接続して外部からの信号を電波によって受信するようにしても構わない。また、両眼タイプの場合には、左右の各画像表示装置に対して、それぞれ右眼用、左眼用として作成された映像を表示させることで、観察者に立体映像を提供することが可能となる。
【0089】
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0090】
2…観察者眼球
21…射出瞳
22…軸上主光線(観察者視軸)
3…偏心光学系
30…偏心レンズ
31…第1面
32…第2面
40…偏心プリズム
41…第1面
42…第2面
43…第3面
5…画像表示素子
61…本体
62…前フレーム
63…後フレーム
64…頭頂フレーム
65…リヤプレート
66…リヤカバー
70…ビデオ再生装置
71…ケーブル
101…観察者視軸
102…軸上主光線
103…中間像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子の原画像を観察者眼球に虚像として投影する偏心光学系において、
前記画像表示素子に対向して配置され、少なくとも3面の光学面が相互に偏心し、そのうちの少なくとも2面が回転非対称な形状であって、内部が屈折率1以上の媒質で満たされた偏心プリズムと、
前記観察者眼球と前記偏心プリズムの間に配備され、相互に偏心した2面で構成され、内部が屈折率1以上の媒質で満たされ、前記画像表示素子の中心から射出瞳中心に入射する軸上主光線より前記画像表示素子側は正のパワーを有する部分が存在し、その反対側では負のパワーを有する部分が存在する偏心レンズと、を備えることを特徴とする
偏心光学系。
【請求項2】
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
前記偏心レンズにおけるY方向のパワー分布は、Y方向画角が大から小さくなるにしたがって小さくなることを特徴とする
請求項1に記載の偏心光学系。
【請求項3】
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、

下記条件式(1)を満足することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の偏心光学系。
0.0005≦(φlenx−φlenm)/φy≦0.015 ・・・(1)
ただし、
φlenxは、偏心レンズのパワーの最大値、
φlenmは、偏心レンズのパワーの最小値、
φyは、光学系全系のY方向のパワーである。
【請求項4】
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
下記条件式(1’)を満足することを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の偏心光学系。
0.0008≦(φlenx−φlenm)/φy≦0.01 ・・・(1’)
ただし、
φlenxは、偏心レンズのパワーの最大値、
φlenmは、偏心レンズのパワーの最小値、
φyは、光学系全系のY方向のパワーである。
【請求項5】
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
下記条件式(2)を満足することを特徴とする
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の偏心光学系。
−4 ≦ φylen/φy ≦ 3 ・・・(2)
ただし、
φylenは、偏心レンズのY方向のパワー、
φyは、光学系全系のY方向のパワーである。
【請求項6】
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
下記条件式(2’)を満足することを特徴とする
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の偏心光学系。
−3 ≦ φylen/φy ≦ 2 ・・・(2’)
ただし、
φylenは、偏心レンズのY方向のパワー、
φyは、光学系全系のY方向のパワーである。
【請求項7】
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
下記条件式(3)を満足することを特徴とする
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の偏心光学系。
−80 ≦ flex・fy/fley・fx ≦ 40 ・・・(3)
ただし、
flexは、偏心レンズのX方向の焦点距離、
fleyは、偏心レンズのY方向の焦点距離、
fyは、光学系全系のY方向の焦点距離である。
【請求項8】
前記偏心光学系から射出された前記軸上主光線と前記射出瞳中心を結ぶ直線で定義される軸をZ軸とし、前記Z軸と直交し、かつ、前記偏心光学系を構成する各面の偏心面内の軸をY軸と定義し、前記Z軸と直交し、かつ、前記Y軸と直交する軸をX軸としたとき、
下記条件式(3’)を満足することを特徴とする
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の偏心光学系。
−70 ≦ flex・fy/fley・fx ≦ 30 ・・・(3’)
ただし、
flexは、偏心レンズのX方向の焦点距離、
fleyは、偏心レンズのY方向の焦点距離、
fyは、光学系全系のY方向の焦点距離である。
【請求項9】
前記偏心プリズムの入射面である第3面の有効面内において、パワーが正から負、または負から正に変化する変曲点が少なくとも2箇所あることを特徴とする。
請求項1から請求項8の何れか1項に記載の偏心光学系。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れか1項に記載の偏心光学系と、
前記偏心光学系の逆光線追跡における像面に配備された画像表示素子を備え、
前記偏心光学系の入射瞳位置に観察者の眼を配備することを特徴とする
画像表示装置。
【請求項11】
物体からの光を開口絞りと偏心光学系を介して撮像素子に結像させる撮像装置において、
前記偏心光学系は、
前記撮像素子に対向して配置され、少なくとも3面の光学面が相互に偏心し、そのうちの少なくとも2面が回転非対称な形状であって、内部が屈折率1以上の媒質で満たされた偏心プリズムと、
前記開口絞りと前記偏心プリズムの間に配備され、相互に偏心した2面で構成され、内
部が屈折率1以上の媒質で満たされ、前記開口絞り中心から前記撮像素子の中心に入射する軸上主光線より前記画像表示素子側は正のパワーを有する部分が存在し、その反対側では負のパワーを有する部分が存在する偏心レンズと、を備えることを特徴とする
撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−29704(P2013−29704A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166217(P2011−166217)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】