説明

停電情報発信システム

【課題】 停電が発生した場合に、停電の発生日時や復旧見込みなどの情報を、停電が発生した地域の需要家に迅速かつ的確に発信する。
【解決手段】 配電系統の監視、開閉器の制御などの機能を有する配電自動化設備2と、需要家Uの電話番号などを記憶する需要家データベース4と、この需要家データベース4を検索する検索手段5と、配電自動化設備2による監視、制御に基づいて停電情報を作成する停電情報作成手段6と、需要家Uの電話番号先などに停電情報を送信する通信装置7とを備える。配電自動化設備2によって停電が確認されると、検索手段5によって検索された所定の需要家Uの電話番号先などに対して、停電情報作成手段6によって作成された停電情報を通信装置7によって送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電が発生した場合に、停電の発生日時や復旧見込みなどの情報を、停電が発生した地域の需要家(電気を消費する住民、企業など)に迅速かつ的確に発信する停電情報発信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自然災害や人為的災害などに伴って停電が発生すると、電力会社では、停電の発生地域や発生日時などの情報をマスコミに提供したり、インターネット上で公開したりしている。一方、停電が発生している地域に所在する住民や企業などは、一刻も早く、停電に関する適正な情報、特に、復旧見込みに関する情報を知りたいと願っている。しかしながら、停電しているために、テレビなどを通じてマスコミからの情報を得ることや、パソコンなどによってインターネット上の情報を得ることが困難な場合がある。このため、停電が発生している地域の住民などは、電力会社に直接電話をし、配電(電力供給)の復旧見込みなどを問い合わせるのが、実情であった。
【0003】
一方、放射能漏れなどの緊急事態が発生した場合に、その情報を携帯情報端末に送信する緊急情報発信システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この緊急情報発信システムは、データ収集設備において放射線量や雨量などのデータを常時測定し、この測定データをセンタ設備に送信する。そして、センタ設備では、データを管理、監視して、緊急事態の発生が認識された場合には、携帯情報端末に緊急事態情報を送信するものである。
【特許文献1】特開2003−196771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、停電が発生している地域の住民などが電力会社に一斉に電話をすると、電話回線が限られているために、電話回線がパンク状態となり、電話がかからずに情報が得られない事態が多発してしまう。このため、住民などが電力会社に出向き、停電に関する情報を問い合わせる、という事も生じていた。さらに、電力会社に問い合わせをしない住民などへは情報の提供が行われない、また、電力会社は問い合わせに対する対応などに追われてしまう、という事態が生じていた。このような実情から、停電が発生した場合に、停電が発生している地域の住民などに対して、迅速かつ的確な情報提供ができないおそれがあった。
【0005】
また、上記の特許文献1に記載されているような緊急情報発信システムでは、停電が発生したとしても、その停電情報を携帯情報端末に送信することができない。すなわち、この緊急情報発信システムでは、データ収集設備において特定のデータを常時測定し、この測定データをセンタ設備へ送信してセンタ設備にて管理、監視するものであり、データ収集設備およびセンタ設備において電力が確保(供給)されていることを前提としている。このため、停電が発生すると、このシステム自体が機能しないおそれがある。また、この緊急情報発信システムは、放射線量や雨量などの測定量に基づいて緊急事態を認識するものであり、停電というシステム自体が機能しなくなる状態を認識できるものではない。従って、このような緊急情報発信システムを、停電が発生した場合の情報発信システムとして機能させることはできない。
【0006】
そこで本発明は、停電が発生した場合に、停電の発生日時や復旧見込みなどの情報を、停電が発生した地域の住民などに迅速かつ的確に発信することができる停電情報発信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、配電系統の監視、開閉器の制御などの機能を有し、停電が発生すると停電を引き起こした事故箇所を特定して事故区間以外の配電線への配電などを行う配電自動化設備と、需要家の連絡先情報を需要家の所在地情報と関連づけて記憶する需要家データベースと、この需要家データベースを検索する検索手段と、配電自動化設備による監視、制御に基づいて停電情報を作成する停電情報作成手段と、需要家の連絡先に停電情報を送信する送信手段とを備え、停電が発生し、配電自動化設備によって停電が確認されると、検索手段によって検索された所定の需要家の連絡先に対して、停電情報作成手段によって作成された停電情報を送信手段によって送信することを特徴とする停電情報発信システムである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の停電情報発信システムにおいて、需要家データベースに、需要家ごとに停電情報の受信希望の有無が記憶され、停電が発生した場合に、検索手段によって停電地域内に所在しかつ受信を希望する需要家の連絡先情報を検索して、その連絡先に停電情報を送信することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の停電情報発信システムにおいて、音声発生手段を備え、需要家データベースには需要家の連絡先情報として電話番号が含まれ、停電が発生した場合に、停電情報を音声発生手段からの音声によって電話番号先に送信することを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の停電情報発信システムにおいて、需要家データベースには需要家の連絡先情報として携帯情報端末の電子メールアドレスが含まれ、停電が発生した場合に、停電情報を電子メールとして電子メールアドレス先に送信することを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の停電情報発信システムにおいて、通信網からの着信に対して自動応答し、停電情報を音声によって送信する自動音声応答装置を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の停電情報発信システムにおいて、配電自動化設備によって停電の発生日時と停電地域とが特定された際に、この発生日時と停電地域とを含む停電情報を送信することを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の停電情報発信システムにおいて、配電自動化設備による監視、制御に基づいて配電の復旧見込み日時が予測算出された際に、この復旧見込み日時を含む停電情報を送信することを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の停電情報発信システムにおいて、配電自動化設備による監視、制御に基づいて停電の原因が割り出された際に、この停電の原因を含む停電情報を送信することを特徴としている。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれかに記載の停電情報発信システムにおいて、配電自動化設備による監視、制御に基づく配電系統の状態変化に応じて、順次停電情報を送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、配電自動化設備によって停電が確認されると、需要家からの問い合わせの有無に係わらず、所定の需要家に対して停電情報が送信される。このため、当該需要家は、電力会社に問い合わせをしなくても、停電に関する情報を入手することができ、この情報に基づいて停電に対する適切な対応をとることが可能となる。また、当該需要家が電力会社に直接問い合わせる必要がなくなるため、電話回線の混雑(パンク状態)が回避され、他の需要家からの問い合わせなどを円滑に受けることができる。しかも、電力会社への問い合わせが減ることによって、配電復旧へのさらなる迅速化などが可能となる。そして、これらの結果として、停電が発生した場合に、停電が発生している地域の需要家に対して、迅速かつ的確な情報提供ができ、サービスが向上される。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、停電地域内に所在しかつ情報の受信を希望する需要家に対して停電情報が送信され、その他の需要家に対しては送信されないため、停電状況および需要家の希望に合った適切なサービスが提供される。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、停電情報を音声によって電話番号先に送信する、すなわち、需要家の固定電話や携帯電話に停電情報を送信するため、停電であっても停電地域内の需要家が情報を受信することが可能であり、情報提供が確保される。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、停電情報を電子メールとして需要家の携帯情報端末に送信するため、需要家が登録された所在地にいない場合であっても、需要家は停電情報を受信でき、情報提供が確保される。また、電子メール内に、例えば詳細情報などを含むリンク先を載せることで、需要家は詳細情報などを容易に入手することができ、情報提供のサービス向上が図れる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、自動音声応答装置を備えているため、停電情報の受信希望を申し出ていない需要家などからの問い合わせに対して、迅速かつ的確に情報を提供することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、停電情報として、停電の発生日時と停電地域とが含まれているため、需要家は停電が発生した事実、すなわち、電気が通じないのは停電によるためであることを理解でき、原因がわからないことによる不安から開放される。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、停電情報として、配電の復旧見込み日時が含まれているため、需要家はいつまで停電が続くかわからない不安から開放され、また、復旧見込みに応じた適切な停電に対する対応をとることができる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、停電情報として、停電の原因が含まれているため、需要家は停電原因を知得できるとともに、将来、その原因と同様な事象などが発生した場合には、停電の発生を予測し、停電に備えることも可能となる。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、配電系統の状態変化に応じて、順次停電情報が送信されるため、需要家は停電の発生、復旧見込みなどの最新情報を順次知ることができ、情報提供が充実される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る停電情報発信システム1の概略構成図である。この停電情報発信システム1は、主として配電自動化設備2と情報提供設備3とから構成されている。
【0027】
配電自動化設備2は、電力会社などに広く導入されている配電自動化システムと同等の構成であり、ここでは詳細な説明を省略するが、一例としては、概略次のような構成となっている。すなわち、配電自動化設備2は、配電自動化サーバ、配電遠制装置(遠方監視制御装置)および、監視制御卓、系統計画卓(ワークステーション)などを備え、それぞれがLANで接続されている。また、電柱Pに取り付けられた開閉器Vと配電遠制装置とが伝送線路D(通信ケーブルなど)によって接続され、さらに、総合制御所Cを介して配電用変電所Hと配電遠制装置とが伝送線路Dによって接続されている。そして、配電線の運用状態を常時監視し、例えば、配電線事故による停電が発生すると、開閉器Vを制御しながら停電を引き起こした事故箇所を特定し、事故区間以外の配電線への配電(自動逆送)を行う。また、変電所事故(特高事故、瞬時電圧低下など)による停電が発生すると、停電が発生した地域に対して周辺の配電線からの配電(自動逆送)を行ったりするものである。
【0028】
情報提供設備3は、需要家Uの連絡先情報などを需要家Uの所在地情報と関連づけて記憶する需要家データベース4、この需要家データベース4を検索する検索手段5、配電自動化設備2による監視、制御に基づいて停電情報を作成する停電情報作成手段6、需要家Uの連絡先に停電情報を送信する通信装置7(送信手段)、音声発生装置8(音声発生手段)および、これらを管理、制御する主制御部9を備えている。また、この情報提供設備3は、配電自動化設備2とLANで接続され、さらに、電話回線網およびインターネットの通信網Nに接続されている。
【0029】
需要家データベース4は、図2に示すようなデータ構成となっており、需要家名42毎にID41(識別記号)が付され、所在地43と関連づけて、電話番号44、電子メールアドレス45、受信希望46および、その他の情報47が記憶されている。所在地43には、需要家Uの住所および、その需要家Uへの配電線の最終端の電柱番号(電柱Pに付された識別記号)が記憶され、電話番号44には、需要家Uからの申し出による需要家Uの固定電話または携帯電話、あるいは双方の電話番号が記憶されている。電子メールアドレス45には、需要家Uからの申し出による需要家Uの携帯情報端末(携帯電話、ノート型パソコンなど)の電子メールアドレスが記憶され、受信希望46には、停電情報の受信を希望するか否か、および、希望する場合の連絡先が記憶されている。すなわち、希望しない場合には「0」値、電話(音声)のみの受信を希望する場合には「1」値、電子メールのみの受信を希望する場合には「2」値、双方による受信を希望する場合には「3」値が記憶されている。
【0030】
検索手段5は、後述するように、停電情報を送信する際に主制御部9によって起動され、需要家データベース4から所定の需要家Uの連絡先情報を検索、取得するものであり、図3に示すフローチャートに基づいて処理を行う。まず、主制御部9からの停電地域情報に基づいて、停電地域内に所在する需要家UのIDを取得する(ステップS1)。すなわち、所在地43が停電地域内に該当するIDの範囲などを取得する。次に、最初のIDの需要家Uが停電情報の受信を希望するか否かを検索し(ステップS2)、希望しない場合(受信希望46の値が「0」の場合)には、ステップS8に進む。一方、希望する場合には、電話による受信を希望するか否かを検索し(ステップS3)、希望する場合(受信希望46の値が「1」または「3」の場合)には、電話番号44から電話番号を取得する(ステップS4)。さらに、電子メールによる受信も希望するか否かを検索し(ステップS5)、希望する場合(受信希望46の値が「3」の場合)には、電子メールアドレス45から電子メールアドレスを取得する(ステップS6)。一方、ステップS3において、電話による受信を希望しない場合(受信希望46の値が「2」の場合)には、ステップS6に進み、電子メールアドレス45から電子メールアドレスを取得する。続いて、取得した電話番号および電子メールアドレスをバッファメモリーに記憶し(ステップS7)、すべてのIDに対する処理が終了したか否かを検索する(ステップS8)。そして、終了していない場合には、次のIDに進み(ステップS9)、上述したステップS2からステップS7までの処理を繰り返す。このようにして、すべての該当するIDに対する処理を終了するものである。
【0031】
停電情報作成手段6は、配電自動化設備2によって得られた配電系統の状態変化に基づいて、停電情報を自動作成するものである。この停電情報作成手段6には、図4に示すように、予め想定された配電系統状態に対応した情報フォーマット61〜6Xが記憶され、配電自動化設備2による監視、制御に基づいて情報フォーマット61〜6Xを選択し、必要な情報を追加、加工して停電情報を作成するものである。例えば、情報フォーマット61には、停電が発生した時点で提供すべき初期情報としてのフォーマット(基本構成)が記憶され、配電自動化設備2によって特定された停電の発生日時と停電地域とが入力されることで、最終的な停電情報が作成される。また、情報フォーマット62には、配電の復旧見込み日時が予測された時点で提供すべき情報のフォーマットが記憶され、配電自動化設備2による監視、制御に基づいて予測算出された復旧見込み日時が入力されることで、最終的な停電情報が作成される。さらに、情報フォーマット63には、停電の原因が割り出された時点で提供すべき情報のフォーマットが記憶され、配電自動化設備2による監視、制御に基づいて割り出された原因が入力されることで、最終的な停電情報が作成されるものである。
【0032】
通信装置7は、需要家Uの固定電話、携帯電話、および携帯情報端末に、通信網Nを介して停電情報を送信するものであり、具体的には、電話回線を取得して自動発信(自動ダイヤル)を行う機能および、電子メールを送信するメールサーバとしての機能などを備えている。また、この通信装置7には音声発生装置8が接続され、この音声発生装置8は、テキスト音声合成方式の音声合成装置と音声録音再生LSIとを備えている。すなわち、音声合成装置によって日本語のテキストデータ(停電情報)を音声合成(音声変換)し、これによる音声情報を音声録音再生LSI内のバッファメモリーに記憶して、必要に応じて音声情報を再生するものである。そして、停電情報作成手段6によって作成された停電情報を音声として(電話回線網を通じて)送信する場合には、需要家Uの電話番号に発信し、音声録音再生LSI内のバッファメモリーに記憶された音声情報(停電情報)を再生、送信する。また、停電情報を電子メールとして(インターネットを通じて)送信する場合には、需要家Uの携帯情報端末の電子メールアドレスをあて先に含め、停電情報を例えばテキストデータなどとして、電子メールを送信するものである。さらに、この電子メール内には、詳細情報などを含むリンク先や電力会社のWebサイトなどが含まれている。
【0033】
次に、このような構成の停電情報発信システム1の動作を、図5に基づいて説明する。
【0034】
例えば、配電線事故による停電が発生すると、配電自動化設備2によって開閉器Vが制御され、停電を引き起こした事故箇所が特定されて、事故区間以外の配電線への配電が行われるとともに、停電が確認され(ステップS11)、情報提供設備3の主制御部9にその内容が通知される。続いて、配電自動化設備2から停電の発生日時と停電地域などの情報が取得され(ステップ12)、主制御部9によって停電情報作成手段6が起動されて、停電情報が作成される(ステップ13)。すなわち、停電情報作成手段6は上述したように、情報フォーマット61に停電の発生日時と停電地域とを入力して、最終的な停電情報を作成する。次に、上述した処理に従って、検索手段5によって所定の需要家Uの連絡先が検索、取得され(ステップ14)、停電情報の送信の要否が判定される(ステップS15)。そして、送信を要しない場合、すなわち、バッファメモリーに電話番号などが記憶されていない場合には処理が終了され、電話番号などが記憶されている場合には送信が行われる(ステップS16)。
【0035】
すなわち、図6に示すように、まず、電子メールによる送信を要するすべての電子メールアドレスがバッファメモリーから取得され(ステップS21)、これらすべての電子メールアドレスをあて先とし、停電情報をテキストデータなどとして、電子メールが送信される(ステップ22)。次に、バッファメモリーに記憶されている最初の電話番号が取得され(ステップ23)、その電話番号に対して発信されて、音声発生装置8の音声録音再生LSIから停電情報が音声として再生、送信される(ステップ24)。そして、すべての電話番号先への送信が終了したか否かが判定され(ステップS25)、終了していない場合には、次の電話番号が取得され(ステップS26)、すべての電話番号先への送信が終了するまで、ステップS24からステップS26までの処理が繰り返される。なお、本実施形態では、このような送信手順をとっているが、どのような送信手順であってもよい。例えば、各需要家Uに対して、電話による送信と電子メールによる送信とを同時に行ったり、電話による送信の後に電子メールによる送信を行ってもよく、また、電話による送信の際に、複数の電話回線を用いて同時に複数の需要家Uに送信してもよいことは勿論である。
【0036】
このようにして、停電が発生すると、停電地域内に所在しかつ停電情報の受信を希望する需要家Uに対して、停電の発生日時と停電地域とを含む停電情報が送信される。続いて、配電自動化設備2による監視、制御に基づく配電系統の状態変化に応じて、停電情報が順次送信される。すなわち、配電自動化設備2による監視、制御に基づいて復旧見込み日時が予測算出されると、情報フォーマット62に基づいて復旧見込み日時を含む停電情報が作成、送信される。また、配電自動化設備2による監視、制御に基づいて停電の原因が割り出されると、情報フォーマット63に基づいて停電の原因を含む停電情報が作成、送信される。このとき、上述したステップS12(図5参照)での取得情報(入力情報)のみが異なり、その他の処理は、上述した処理と同様である。
【0037】
以上のように、停電が発生し、配電自動化設備2によって停電が確認されると、需要家Uからの問い合わせの有無に係わらず、所定の需要家Uに対して停電情報が送信される。このため、当該需要家Uは、電力会社に問い合わせをしなくても、停電に関する正確な情報を迅速に入手することができ、この情報に基づいて停電に対する適切な対応をとることが可能となる。また、当該需要家Uが電力会社に直接電話などをかけて問い合わせる必要がなくなるため、電話回線の混雑が回避され、他の需要家Uからの問い合わせなどに対して円滑に対応することができる。しかも、電力会社への問い合わせが減ることによって、配電復旧へのさらなる迅速化などが可能となる。そして、これらの結果として、停電が発生した場合に、停電が発生している地域の需要家Uに対して、迅速かつ的確に情報を提供でき、サービスが向上される。
【0038】
さらに、停電の発生日時と停電地域とを含む停電情報を受信することで、需要家Uは停電が発生した事実、すなわち、電気が通じないのは停電によるためであることを理解でき、原因がわからないことによる不安から開放される。また、配電の復旧見込み日時を含む停電情報を受信することで、需要家Uはいつまで停電が続くかわからない不安から開放され、また、復旧見込みに応じた適切な停電に対する対応をとることができる。加えて、停電の原因を含む停電情報を受信することで、需要家Uは停電原因を知得できるとともに、将来、その原因と同様な事象などが発生した場合には、停電の発生を予測し、停電に備えることも可能となる。このように、配電系統の状態変化に応じて、順次停電情報が送信されるため、需要家Uは最新情報を順次、迅速に知ることができ、情報提供が充実される。しかも、停電情報作成手段6による停電情報パターン(情報フォーマット6Xとその作成処理)を増やすことで、上記のような内容の停電情報に限らず、需要家Uからの要望や停電状況などに応じた柔軟かつ多様な情報を提供することができる。
【0039】
また、上述したように、停電地域内に所在しかつ停電情報の受信を希望する需要家Uに対してのみ停電情報が送信され、その他の需要家に対しては送信されないため、停電状況(停電地域)および需要家Uの希望に合った適切なサービスが提供される。さらに、電話による受信を望む需要家Uに対しては、電話回線網を通じて音声による停電情報が送信されるため、停電であっても停電地域内の需要家Uが情報を受信することが可能であり、情報提供が確保される。一方、電子メールによる受信を望む需要家Uに対しては、需要家Uの携帯情報端末に停電情報が電子メールとして送信されるため、需要家Uが登録された所在地にいない場合であっても、需要家Uは停電情報を受信することができ、情報提供が確保される。また、電子メール内には、詳細情報などを含むリンク先や電力会社のWebサイトなどが含まれているため、需要家Uは詳細情報などを容易に入手することができ、情報の共有化、情報提供のさらなる向上が図れる。
【0040】
ところで、本実施形態では、停電地域内に所在しかつ停電情報の受信を希望する需要家Uに対してのみ停電情報を送信しているが、情報受信の希望が多い場合や、停電地域内のすべての需要家Uに対して情報提供の徹底を図る必要があるなどの場合には、需要家Uからの申し出の有無に係わらず、停電地域内に所在するすべての需要家Uに対して停電情報を送信するようにしてもよい。また、このような需要家Uのみならず、例えば、停電地域内には所在しないが、停電地域に隣接する地域に所在する需要家Uに対して、申し出や停電状況(停電の波及性がある場合など)に応じて、停電情報を送信するようにしてもよい。
【0041】
また、本停電情報発信システム1に、自動音声応答装置(IVR:Interactive Voice Response)を備えてもよい。この自動音声応答装置は、通信網Nからの着信に対して自動応答し、停電情報作成手段6によって作成された停電情報を音声によって送信(応答)するものである。これにより、停電情報の受信希望を申し出ていない需要家Uなどから、停電に関する問い合わせ(着信)があった場合に、自動的に応答し、迅速かつ的確に停電情報を提供することができるものである。この際、音声発生装置8内の音声録音再生LSIからの音声情報を自動音声応答装置を介して送信してもよく、自動音声応答装置によって停電情報を音声合成(音声変換)して送信するようにしてもよい。
【0042】
なお、本実施形態では、配電自動化設備2と情報提供設備3とが別体となっているが、配電自動化設備2に情報提供設備3の各構成要素4〜9の一部、またはすべてを設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る停電情報発信システムの概略構成図。
【図2】本発明の実施形態に係る停電情報発信システムにおける需要家データベースのデータ構成図。
【図3】本発明の実施形態に係る停電情報発信システムにおける検索手段の処理フローを示すフローチャート。
【図4】本発明の実施形態に係る停電情報発信システムにおける停電情報作成手段に記憶された情報フォーマットの概略構成図。
【図5】本発明の実施形態に係る停電情報発信システムの動作フローを示すフローチャート。
【図6】本発明の実施形態に係る停電情報発信システムの情報送信の処理フローを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0044】
1 停電情報発信システム
2 配電自動化設備
3 情報提供設備
4 需要家データベース
5 検索手段
6 停電情報作成手段
7 通信装置(送信手段)
8 音声発生装置(音声発生手段)
9 主制御部
P 電柱
V 開閉器
D 伝送線路
C 総合制御所
H 配電用変電所
U 需要家
N 通信網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統の監視、開閉器の制御などの機能を有し、停電が発生すると停電を引き起こした事故箇所を特定して事故区間以外の配電線への配電などを行う配電自動化設備と、
需要家の連絡先情報を需要家の所在地情報と関連づけて記憶する需要家データベースと、この需要家データベースを検索する検索手段と、前記配電自動化設備による監視、制御に基づいて停電情報を作成する停電情報作成手段と、前記需要家の連絡先に前記停電情報を送信する送信手段とを備え、
停電が発生し、前記配電自動化設備によって停電が確認されると、前記検索手段によって検索された所定の需要家の連絡先に対して、前記停電情報作成手段によって作成された停電情報を前記送信手段によって送信することを特徴とする停電情報発信システム。
【請求項2】
前記需要家データベースに、需要家ごとに前記停電情報の受信希望の有無が記憶され、停電が発生した場合に、前記検索手段によって停電地域内に所在しかつ前記受信を希望する需要家の連絡先情報を検索して、その連絡先に前記停電情報を送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の停電情報発信システム。
【請求項3】
音声発生手段を備え、前記需要家データベースには需要家の連絡先情報として電話番号が含まれ、停電が発生した場合に、前記停電情報を前記音声発生手段からの音声によって前記電話番号先に送信する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の停電情報発信システム。
【請求項4】
前記需要家データベースには需要家の連絡先情報として携帯情報端末の電子メールアドレスが含まれ、停電が発生した場合に、前記停電情報を電子メールとして前記電子メールアドレス先に送信する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の停電情報発信システム。
【請求項5】
通信網からの着信に対して自動応答し、前記停電情報を音声によって送信する自動音声応答装置を備えた、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の停電情報発信システム。
【請求項6】
前記配電自動化設備によって停電の発生日時と停電地域とが特定された際に、この発生日時と停電地域とを含む停電情報を送信する、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の停電情報発信システム。
【請求項7】
前記配電自動化設備による監視、制御に基づいて配電の復旧見込み日時が予測算出された際に、この復旧見込み日時を含む停電情報を送信する、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の停電情報発信システム。
【請求項8】
前記配電自動化設備による監視、制御に基づいて停電の原因が割り出された際に、この停電の原因を含む停電情報を送信する、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の停電情報発信システム。
【請求項9】
前記配電自動化設備による監視、制御に基づく配電系統の状態変化に応じて、順次停電情報を送信する、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の停電情報発信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−191281(P2006−191281A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−617(P2005−617)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】