説明

健康増進剤製造のための、ベタインおよび/またはコリンと組み合わせたグアニジノ酢酸(塩)の使用

ここに記載するのは、脳機能、骨の成長、および骨のミネラル化を改善するための、軟骨成長の改善のための、老化プロセスの緩和ための、免疫を強化するための、抗酸化性がある神経保護作用物質としての、コレステロール値とトリグリセリド値を低下させるための、炎症プロセスの予防のための、およびヒトもしくは脊椎動物の血中糖度を低下させるための薬剤を製造するための、コリンおよび/またはベタインと組み合わせた、グアニジノ酢酸および/またはグアニジノ酢酸塩の使用である。この際意外なことに、この新規の薬剤は明らかにより高い生体適合性を有し、かつこのため、従来クレアチンの使用において公知だった薬剤よりも、よりよく細胞に取り入れられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康増進剤製造のためのグアニジノ酢酸、またはグアニジノ酢酸塩の使用に関する。
【0002】
グアニジノ酢酸は、1934年にC.J.Weberにより初めて犬やヒトの尿から単離された。Weberがすでに予見しているように、これはクレアチンの代謝前駆体である(Weber,C.J.,Proc.Sot.Exp.Biol.and Med.,33,172(1934))。
【0003】
この後すぐに、グアニジノ酢酸が実際に動物に、そしてヒトにも存在する生体特有の物質であることを示すことができ、この物質はクレアチンの生体合成において重要な役割を果たす。クレアチンは食物により摂取することも、また体内で形成することもできる。生体合成はグリシンとL−アルギニンから出発する。哺乳類においてはとりわけ腎臓、また肝臓および膵臓で、アミノトランスフェラーゼ酵素によってL−アルギニンのグアニジノ基を切り離し、そしてN−C−N基をグリシンに移す。L−アルギニンはこの際、L−オルニチンへと反応する。こうして形成されたグアニジノ酢酸は次の工程で、脊椎動物の場合これはもっぱら肝臓で起こるのだが、トランスメチラーゼ酵素によってクレアチンへと反応する。この際S−アデノシルメチオニンがメチル基供与体として用いられる。クレアチンは引き続き血液循環を介して目的器官へと運ばれる。この際、細胞膜を通じた細胞への輸送は、NaClに依存した特定のクレアチントランスポータにより行われる(Speer O,Neukomm LJ,Murphy RM,Zanolla E,Schlattner U,Henry H,Snow RJ,Wallimann T.Creatine transporters:a reappraisal.Mol Cell Biochem.2004 Jan−Feb;256〜257(1〜2):407−24)。
【0004】
クレアチンは、細胞のエネルギー代謝において重要な役割を果たし、この際クレアチンは高エネルギーのクレアチンリン酸として、アデノシン三リン酸(ATP)に次いで筋肉の基本的なエネルギー貯蔵庫である。筋肉の静止状態においてATPはクレアチンにリン酸基を移すことができ、この際クレアチンリン酸が形成され、該クレアチンリン酸はその後ATPと直接的に平衡状態で存在する。筋肉稼働の際決定的に重要なのは、ATPストックを可能な限り速く再充填することである。このために最大筋肉負荷の最初の数秒でクレアチンリン酸が利用される。クレアチンリン酸は、非常に速い反応でクレアチンキナーゼ酵素によってリン酸基をアデノシン二リン酸に移すことができ、こうしてATPを再形成することができる。これはLohmann反応とも呼ばれる。
【0005】
クレアチンはさらに、細胞内でのエネルギー転移においても重要な機能を有する。いわゆるクレアチンシャトルシステムは、ミトコンドリアから細胞内でエネルギーを必要としている箇所にエネルギーを運ぶ。
【0006】
激しい、および比較的長時間にわたる持続的な筋肉稼働においては、もともと体内に存在するクレアチンストックは急速に消費されている。この理由から、適切なクレアチン投与はとりわけ運動選手において持久力、および運動能力に対して肯定的に作用し、この際、体内での望ましくない蓄積過程、または不利な分解生成物は知られていない。この理由は、クレアチンが過剰供給の際に、腎臓を介して体から排出されることに見られる。さらにクレアチンは、一定の速度で環状の分解生成物クレアチニンに反応し、この生成物は同様に腎臓を介して排出され、従ってこれは第二の代謝分解経路である。
【0007】
1970年代の終わりから、クレアチンの仕事量増加作用が体系的に調査されている。今日まで、スポーツ分野で300以上の研究が行われており、この際これらの研究の約80%が、筋肉量、筋力、脂肪のない体質、および様々な種類のスポーツでの瞬間的な最大筋肉負荷における能力に対するクレアチンの著しい肯定的作用が判明した。今日クレアチン一水和物は、スポーツの分野で最も重要な栄養補完剤である。
【0008】
最近になって、クレアチンのさらなる興味深い特性が知られるようになった。このため2つの研究において脳機能への、および集中力へのクレアチン経口補給の非常に肯定的な作用が実証された。(Rae,Caroline et al.:Oral creatine monohydrate supplimentation improves brain performance:a double−blind,placebo−controlled,cross−over trial.Proceedings of the Royal Society of London,Series B:Biological Sciences(2003),270(1529),2147−2150;Watanabe,Airi et al.:Effects of creatine on mental fatigue and cerebral hemoglobin oxygenation.Neuroscience Research(Oxford,United Kingdom)(2002),42(4),279−285).
さらに、クレアチンは抗酸化特性と神経保護特性とを有し、ひいては周囲環境の影響による細胞のダメージを予防するために使用できることを示すことができた(Sestili,Piero et al.:Creatine supplementation affords cytoprotection in oxidatively injured cultured mammalian cells via direct antioxidant activity.Free Radical Biology&Medicine(2006),40(5),837−849;P.Klivenyi et al.:Neuroprotective effects of creatine in a transgenic animal model of amyotrophic lateral sclerosis.Nature Medicine 5,347−350(1999)).
容易に測定可能な、人体における酸化性ストレスに対する指標として、血漿中のシステイン対シスチンの比が用いられる(Hack et al.:BLOOD 92(1998)59〜67)。この際、これらの成分の比は、酸化還元状態を直接反映しており、この際酸化性のストレスはシスチン値の上昇により明らかになる。人体において酸化性のストレスを、クレアチンの補給により避けることができることは公知である。シスチン値はまた、比較的高齢の被験者において一日に僅かなグラム量のクレアチン補給によって明らかに低下させることができ、健康な若者に見られるような値になった(US6,927,231)。クレアチンは酸化性ストレスの明らかな減少につながり、ひいては変性老化プロセスに対して予防的に作用する。従ってクレアチンとクレアチン誘導体は将来、老化防止の分野において重要な意味を得るだろう。
【0009】
クレアチンの肯定的な作用は現在、医療的な領域で熱心に研究されており、この際クレアチンはパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療では臨床フェーズ3で、およびハンチントン病の治療においては臨床フェーズ2で見られる(EP804183B1)。喘息に対する治療法としてのクレアチンの効果的な使用は、すでに報告されている(EP911026B1)。骨の形成においてもクレアチンは、生体外でも生体内でも肯定的な効果を示す。骨の強化のための、および変性した骨の病気、および軟骨の病気、例えば骨粗鬆症の治療と予防のための使用が試験されており、かつ非常に肯定的な結果が得られている(EP1100488B1);Gerber,I et.al.:Stimulatory effects of creatine on metabolic activity, differentiation and mineralization of primary osteoblast−like cells in monolayer and micromass cell cultures.European Cells and Materials(2005),10,8−22;Chilibeck,P.D.et al.:Creatine monohydrate and resistance training increase bone mineral content and density in older men.Journal of Nutrition,Health&Aging(2005),9(5),352−355)。
【0010】
さらに、クレアチンの補給が体質の向上につながることは公知である。これは当初、筋肉中への水の摂取量が増加することに起因する。しかしながら長期的には、クレアチンは間接的にタンパク質合成の増加、または筋原繊維におけるタンパク質異化の減少により、筋肉量の増加につながる(Int J Sports Med 21(2000),139〜145)。従ってこの結果、脂肪のない体質が増加する。
【0011】
クレアチン自体、すなわちクレアチン一水和物の他にも、その間に数多くのクレアチン塩、例えばクレアチンのアスコルビン酸塩、クエン酸塩、ピルビン酸塩など、同様に適切な栄養補完剤が指摘されている。この代わりに従来技術として挙げられるのは、欧州特許EP894083、およびドイツ公開公報DE19707694A1だろう。
【0012】
すでに1950年代に臨床研究において複数の成果により、ベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸の投与が心臓病患者において病状の経過に対して肯定的な影響をもたらすことを示すことができた。患者には一般的な所見について明らかな改善が報告された。さらには、肉体的負荷における持続時間の改善、および処置時間から短時間で筋力の向上が確認された。患者はまた、性衝動の改善を報告した。200人の患者に30mg/kgの服用量を毎日一年にわたって投与した。副作用は観察できなかった(Borsook H.,Borsook M.E.,The biochemical basis of betaine−glycocyamine therapy.In:Annals of western medicine and surgery 5(10),825,1951)。
【0013】
国際特許出願WO91/07954は、筋肉中のクレアチン濃度の上昇のための、メチオニンまたはS−アデノシルメチオニンと組み合わせたグアニジノ酢酸の使用を開示している。使用領域としては、筋肉中に比較的高いクレアチン濃度を要求する状態が挙げられる。この際、医学的適用、ならびにスポーツ栄養学の領域も権利主張されている。
【0014】
この際、クレアチンの投与がクレアチン濃度の上昇のために効果的ではないことが主張されている。この主張は一方、多くの研究によって否定することができた(例えばPersky,A.M.,Brazeau、G.A.,Clinical Pharmacology of the Dietary Supplement Creatine Monohydrate.In:Pharmacol Rev,2001,53,161〜176)。
【0015】
国際特許出願WO2004/000297は、栄養補給のための、または医薬目的のための混合物を記載しており、この混合物は哺乳類に使用される。この混合物は、L−セリンを含み、かつさらなる成分としてグアニジノ酢酸を含む、タンパク質フラクションから成る。この混合物はこの際、グリシンを含んでいないか、または混合物の加水分解後、2.7:1より大きいL−セリン対グリシンの比を含んでいなければならない。可能な製造形態としては、溶液、エマルション、懸濁液、ゲル、スティック状食品、菓子、および好適には粉末が挙げられている。
【0016】
2.7:1より大きいL−セリン対グリシンの比は、栄養食品、および飼料には通常見られない。動物性原料、例えば動物性粉末は、明らかにセリンよりグリシンを多く含む(Amino acids of meals of animal origin,de Vuyst,A.Univ.Louvain,ベルギー,Agricultura(Heverlee,ベルギー)(1964),12(1),141−51)。植物性原料においては、グリシン対セリンの比は、ほぼ均一化されている。
【0017】
筋肉組織へのクレアチンの摂取は、NaClに依存するクレアチントランスポーターにより制御され、そして同時に炭水化物またはタンパク質を大量に摂取することが、肯定的に作用しうる。この際、クレアチンと炭水化物との組み合わせは、クレアチンのみでの摂取と比較して、筋肉中で約60%のクレアチン含分の向上につながり得る(Green AL,Hultman E,Macdonald IA,Sewell DA,Greenhaff PL.Carbohydrate ingestion augments skeletal muscle creatine accumulation during creatine supplementation in humans.Am J Physiol.1996 Nov;271 (5 Pt 1):E821−6)。
【0018】
疑う余地のない肯定的な生理学的特性に加えて、クレアチンにはまた、相応する水溶液中ではっきりとした安定性を有さないという欠点もある。この際クレアチンは水の脱離により環化してクレアチニンになる。環化速度は溶液のpH値、および温度に依存し、この際濃度は全く重要ではない。中性の、および酸性のpH範囲においては特に、クレアチニンへの反応は非常に速く進行する。この環境でのクレアチンの素早い分解が原因で、ヒト用の、および動物用の栄養補完のための、水性または湿性調製物における使用は、実質的に排除されている。胃のpH値1〜2はすでに、滞留時間に従ってクレアチンからクレアチニンへの明らかな分解につながり得る(Greenhaff,P.L.Factors Modifying Creatine Accumulation in Human Skeletal Muscle.In:Creatine.From Basic Science to Clinical Application.Medical Science Symposia Series Volume 14,2000,75〜82)。
【0019】
前述の従来技術の欠点より本発明に対して、体細胞により効率的にクレアチンを供給し、ひいては公知のクレアチン補給の肯定的生理作用を人体、および動物の体においてさらに高い基準で達成する、健康増進剤を提供するという課題が設定される。クレアチンの否定的特性、例えば水性環境、および酸性の環境における安定性の低さを、避けるのが望ましい。この際にまたとりわけ、比較的高い水含分を有する栄養調製物におけるクレアチンの安定性の低さも挙げることができ、このことが工業的に製造される栄養食品におけるクレアチンの使用可能性を明らかに限定している。さらに、胃への摂取後の非安定性は大きな問題である。従って、肉体にクレアチンを、クレアチンの直接投与により起こり得るものよりも効率的に供給することが、目標であった。
【0020】
クレアチン含分を体細胞内で最適に上昇させるためには、これまで同時に大量の炭水化物またはタンパク質を摂取することが必要であった。このこともまた、可能な限り回避することが望ましい。と言うのも、このことにより大量のインスリンが分泌され、これが長期的には健康上の問題につながり得るからである。
【0021】
この課題は、脳機能、骨の成長、および骨のミネラル化を改善するための、軟骨成長の改善のための、老化プロセスの緩和のための、抗酸化性がある神経保護作用物質としての、コレステロール値とトリグリセリド値を低下させるための、炎症プロセスの予防のための、およびヒトもしくは脊椎動物の血中糖度を低下させるための薬剤を製造するための、コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩の使用により解決された。
【0022】
コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸の使用により、体細胞への最適なクレアチンの供給という課題設定を完全に満たせることを、示すことができた。この際、ヒトと脊椎動物においてクレアチンに公知の肯定的な作用が、さらに高い効果で達成された。意外なことに、新規の薬剤は明らかにより高い生体適合性を有し、従ってクレアチンの使用において従来公知のものよりも、よく細胞に摂取される。
【0023】
クレアチンまたはクレアチン一水和物とは異なり、グアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩は、例えば胃の中のような酸性溶液において、明らかにより高い安定性を有する。意外なことに特に有利には、本発明との関連において記載するグアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩はクレアチンとは異なり、従って実際にまず吸収後、とりわけ肝臓での吸収の後、クレアチンに反応する。従って使用する化合物のほとんどの部分量は、公知のクレアチンとは異なり、非安定性による反応によって前段階ですでに分解して沈殿することなく、実際に生理学的適用領域に利用することができる。コリンおよび/またはベタインと組み合わせた本発明によるグアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩は、従ってクレアチンおよびクレアチン誘導体とは異なり、目的器官において明らかにより高いクレアチン含分につながる。糖またはタンパク質を同時に大量に摂取することは、本発明によりもはや必要でなくなり、かつ栄養生理学的な観点から非常に有利である。と言うのも、体内において非生理学的な量のインスリンの分泌が避けられるからである。
【0024】
さらに、コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩は、栄養食品および飼料の工業的製造で現れる条件において非常に高い安定性を有し、そしてさらに実質的にあらゆる投与形態において貯蔵安定性であることが判明した。コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸はこの際、クレアチンに対して明確な利点を示す。本発明により権利主張する使用の利点は、その総体において予見することはできなかった。
【0025】
ヒトと脊椎動物における適用領域として本発明が権利主張するのは、コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩の経口補給による脳機能改善のための、コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸の使用である。この際、長期記憶にも、また短期記憶にも、肯定的な影響がもたらされた。また被験者は、明らかにより長く集中することができた。
【0026】
骨の成長、および骨のミネラル化、ならびに軟骨成長もまた、コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩により改善することができた。この際、本発明による薬剤はクレアチンと比較して、骨へのさらに改善されたカルシウムの沈積につながることが判明した。さらには、抗酸化作用、および神経保護作用が観察された。
【0027】
コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸はまた、老化プロセスの緩和にも適しており、この際筋肉組織、組織中の水の量、細胞中のカルシウム値、および細胞老化に肯定的に作用した。
【0028】
コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸のさらなる適用領域は、炎症プロセスの予防、および免疫系の強化である。ある実験においては、ラットにグアニジノ酢酸と塩化コリン、クレアチン一水和物、またはプラセボを餌として与え、そして6週間後、細菌感染(黄色ブドウ球菌)させた。グアニジノ酢酸と塩化コリンによる補給は、クレアチンのグループ、およびまた対照群と比較して明らかに高い生存率につながった。さらに、グアニジノ酢酸グループでの感染は、明らかな炎症プロセスの緩和を引き起こした。これらの効果は、ラット血清中のCRPタンパク質の測定によって確かめることができた。
【0029】
コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩はまた、コレステロール値とトリグリセリド値の低下、ならびに血糖値の低下のために優れて適しており、この際に観察される効果は、すべての場合においてクレアチンの作用を上回る。
【0030】
本発明による使用目的に含まれるグアニジノ酢酸塩のうち、とりわけ有用であると実証されている塩は、アスパラギン酸、アスコルビン酸、焦性ブドウ酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸、α−ケトグルタル酸、シュウ酸、ピログルタミン酸、3−ニコチン酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、硫酸、酢酸、ギ酸、塩酸、およびリン酸、2−ヒドロキシコハク酸、L−カルニチン、アセチル−L−カルニチン、タウリン、ベタイン、コリン、メチオニン、およびリポ酸により得られる塩であり、この際グアニジノ酢酸カリウム、グアニジノ酢酸カルシウム、またはグアニジノ酢酸ナトリウムが、特に適している。また、グアニジノ酢酸と、上記塩の1またはそれ以上の塩との混合物、または上記塩から成る混合物も使用することができる。
【0031】
好ましい実施態様によれば本発明による薬剤を、ジメチルグリシン、サルコシン、葉酸、およびメチオニンから選択されたさらなるメチル基供与体、またはこれらの成分の混合物と組み合わせて使用する。
【0032】
本発明による使用のさらなる利点として際立っているのは、グアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩が比較的広い投与範囲で使用できることである。この際、各回服用量も、一日の服用量も、限定されることはない。栄養補完剤、医療用調製物、機能性栄養食品、および飼料としての使用の観点から、好ましくは0.001〜0.3g/kgの各回服用量が考慮され、この際0.05〜0.15g/kgの各回服用量が特に好ましいと評価することができる。
【0033】
メチル基供与体であるコリンとベタインもまた、比較的広い服用量範囲で使用することができる。栄養補完剤、医療用調製物、機能性栄養食品、および飼料としての使用の観点から、好ましくは0.001〜0.4g/kgの各回服用量が考慮され、この際0.03〜0.25g/kgの各回服用量が特に好ましいと評価することができる。
【0034】
グアニジノ酢酸対コリンおよび/またはベタインの使用量のモル比は、1:5〜5:1の範囲であり、この際1:3〜2:1の比、およびとりわけ1:1の比が特に好ましいと評価することができる。
【0035】
本発明に必要不可欠なのは、権利主張するコリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩の使用を、ヒトまたは脊椎動物に対して、好適には家畜、飼育動物、肥育動物に対して行うことである。投与形態として考慮されるのはとりわけ、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、ペレット、溶液、液体、またはゼリー製品である。
【0036】
さらなる適用領域として、本発明は飼料としての使用を意図しており、この際とりわけ缶詰飼料、ペレット、ビスケット、コロッケ、ナゲット、フレーク、およびスナックの形での乾燥飼料、半湿性飼料、および湿性飼料が適している。
【0037】
本発明のさらなる態様として、コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩を食用マトリックスの形で使用する。この際特に有利には、グアニジノ酢酸またはグアニジノ酢酸塩は、食用マトリックス中にその都度、結晶状の、または粉末状の固体として存在する。この関連では、食用マトリックスの物理特性が成分の分離を遅らせるか、好適には妨げれば、好ましいと評価できる。食用マトリックスのこれらの好ましい特性は、粘度を向上させる物質、例えばアルギン酸塩、キサンタン、グアール粉末、またはイナゴマメ粉末の添加により支持することができる。従って食用マトリックスとしては、固体の、半液体状の、および液体状の栄養食品が適している。味を改善するために、グアニジノ酢酸、またはグアニジノ酢酸塩をこれらの使用目的のために粉砕することも、有利であり得る。好ましくは、加えるべき物質を食用マトリックス中に均一に分散させ、この際この分散を手動で(例えば最終消費者によって)、および/または機械的に行うことができる。ここでは例えば、乳製品、例えばヨーグルト、ホエー、チーズ、および牛乳を挙げることができる。さらにグアニジノ酢酸は、工業的に製造される完成製品と半完成製品、例えば麺、ミューズリー、シリアル、焼き菓子、調理済み食品、スティック状食品、パン、ソーセージ、および飲料への添加に適しており、これらの製品にグアニジノ酢酸(塩)を製造工程の間に加えた。この際に意外にも、この添加によりグアニジノ酢酸の、またはグアニジノ酢酸塩の安定性を、さらに高めることができることが判明し、この際食用マトリックスのpH値は、安定性に対して基本的に影響をもたらさない。従って、本発明による方法においては実際すべての栄養食品が使用可能であり、この際マトリックスのpH値は2〜11が特に適している。提案する栄養食品製品はさらに、コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸、おびグアニジノ酢酸塩を毎日摂取するための、便利かつ適切な形態である。
【0038】
本発明による調製物は、常温で90日間貯蔵後なお、使用された当初のグアニジノ酢酸、およびグアニジノ酢酸塩を少なくとも90%含む。たいていのマトリックスでは、90日後であってもその存在量が95%超であり、とりわけ99%超である。この高い安定性は、比較可能な条件でクレアチンに対してこれまで達成されておらず、このことについてはとりわけ、印刷文献EP1180944で指摘されている。
【0039】
好ましい実施態様においては、コリンもベタインもグアニジノ酢酸と同時に食用マトリックスに加え、かつ食用マトリックスの製造条件下でも貯蔵条件下でも完全に安定的である。
【0040】
その都度具体的な使用事例次第で絶対的に推奨できるのは、本発明により提案する薬剤を、以下の他の生理活性栄養物質、炭水化物、脂肪、アミノ酸、タンパク質、ビタミン、無機物質、微量元素、カフェイン、タウリン、およびこれらの誘導体、およびこれらの混合物と組み合わせて使用することである。
【0041】
総体的に本発明は、コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸のための新規の使用領域によって、公知のクレアチン化合物に対する単なる新規の代替物以上の物を提供する。と言うのも本発明による組成物は、クレアチンの欠点を克服しており、かつそのよりよい生体適合性とより高い効果によって非常に明らかな改善を示すからである。
【0042】
以下の実施例により、本発明の範囲を明確にする。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による薬剤、および他の薬剤を四週間投与した後の、筋肉中のクレアチン含分を示す図である。
【0044】
実施例
実施例1
栄養補完剤、および医療用調製物
以下では、味のよい調製物の典型的な組成が実施されており、該調製物の成分は室温で乾燥混合されている。粉末状の調製物を経口摂取前に200mlのフルーツジュース、および/または水に溶かすことが推奨される。
1.1
1,500mg グルコサミン
750mg グアニジノ酢酸
720mg マグネシウム−L−ヒドローゲンアスパラート
500mg アスコルビン酸
720mg クエン酸コリン
1.2
400mg 硫酸コンドロイチン
500mg グアニジノ酢酸ピルビン酸塩
2,000mg リン酸二カルシウム
400mg (MgCO34・Mg(OH)2・5H2O=約100Mg
500mg ビタミンC
800mg ベタイン
1.3
1,000mg グルコサミン
300mg 塩化コリン
2,800mg グアニジノ酢酸
3,100mg クレアチノール−O−ホスファート
【0045】
実施例2
飼料添加剤
2.1
グアニジノ酢酸5,000mg、塩化コリン3,000mg、およびイヌリン5,000mgから成る調製物を、犬の栄養補完飼料のための飼料ペレットのための典型的な処方に入れた。
【0046】
2.2
グアニジノ酢酸リポ酸塩7,000mg、塩化コリン5,000mg、カルチニン酒石酸塩750mg、ステアリン酸スクロース100mg、タルク160mg、およびフラクトース1,090mgを犬用ビスケットのための基本材料に入れた。
【0047】
2.3
マスターバッチとして、市販の猫用缶詰飼料混合物に均質に以下の調製物を入れた:グアニジノ酢酸ピルビン酸塩3,000mg、塩化コリン4,000mg、クレアチン3,000mg、ステアリン酸マグネシウム40mg、カルボキシメチルセルロース25mg、およびラクトース135mg。
【0048】
実施例3
機能性栄養食品
3.1
グアニジノ酢酸5kg、および塩化コリン8kgから成る混合物を、パンミックス900kgに均質に加える。
【0049】
3.2
ベタイン5kg、およびグアニジノ酢酸リポ酸塩7kgから成る混合物を、均質にスプレッドチーズ調製物に加える。
【0050】
3.3
ヨーグルト用の果物調製物に、ベタイン20kg、葉酸10g、およびグアニジノ酢酸14kgを、滅菌前に均質に加える。
【0051】
3.4
ミューズリースティックにグアニジノ酢酸3g、およびベタイン3gを均質に加える。
【0052】
3.5
トウモロコシ、ムギ抽出物、塩、グアニジノ酢酸30kg、およびコリン二酒石酸塩40kgからコーンフレークを製造する。
【0053】
実施例4
生体への適合性と作用
4.1
それぞれ20人の被験者群を4グループ編成し、すべてのグループにおいて、筋肉乾燥質量でクレアチンの平均初期値はほぼ同じであった。
【0054】
4週間にわたり1つのグループに、グアニジノ酢酸3gと、ベタイン3gとを含む実施例3.4に記載の本発明による機能性栄養食品(ミューズリースティック)を、毎日投与した(1グループ)。第二のグループにはマルトデキストリン6gを有するミューズリースティック(2グループ)を、そして第三のグループには、クレアチン一水和物3.75g(グアニジノ酢酸3gと等モル)とベタイン3gとを含むミューズリースティックを与えた(3グループ)第四のグループには、グアニジノ酢酸3gを有するミューズリースティックを与えた(4グループ)。実験の直前、および摂取の4週間後に、筋肉中のクレアチン含分を筋生検で測定した。これらの結果は、図1に記載されている。
【0055】
4週間の間、すべての被験者は毎日、標準化された60分のフィットネスプログラムを行った。肉体的能力と、知的能力、ならびに一連の血液パラメータを四週間にわたる摂取前と摂取後に測定した。これらの結果は表1にまとめられている。
【表1】

【0056】
表1は、その都度の初期値と、4週間の補給後の測定値との差異を示す。
(1)BDS(Backward Digit Span):被験者に対して数字の列を読み上げ、被験者にこの数列を逆向きに繰り返させた。栄養補強前に正しく繰り返せた数字の数は、補給後に正しく繰り返せた数字の数よりも少なかった。
(2)RAPM(Raven’s Advanced Progressive Matrices):被験者に、標準化された知能テストを実施した。補給前に獲得した点数は、補給後の点数よりも少なかった。
【0057】
4.2
それぞれF344ラット(Sulzfeld在、Charles River Wiga GmbH社製)25匹から成る3つのグループを6週間にわたって
(1グループ)グアニジノ酢酸(0.5%)と、塩化コリン(0.5%)、
(2グループ)クレアチン一水和物(0.63%)と、塩化コリン(0.5%)、そして
(3グループ)マルトデキストリン(1%)
を加えた、標準的な飼料で飼育した。
【0058】
すべてのラットに6週間後、黄色ブドウ球菌懸濁液1.0ml(1molあたり3×106の細菌)を静脈注射した。
【0059】
生存率と、生存ラットのCRP血清濃度を3日後に評価した(表2)。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳機能、骨の成長、および骨のミネラル化を改善するための、軟骨成長の改善のための、老化プロセスの緩和のための、抗酸化性がある神経保護作用物質としての、コレステロール値とトリグリセリド値を低下させるための、炎症プロセスの予防のための、およびヒトもしくは脊椎動物の血糖値を低下させるための薬剤を製造するための、コリンおよび/またはベタインと組み合わせた、グアニジノ酢酸、および/またはグアニジノ酢酸塩の使用。
【請求項2】
前記脊椎動物が、家畜、飼育動物、および/または肥育動物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記薬剤が粉末、顆粒、錠剤、カプセル、ペレット、溶液、ジュース、またはゼリー製品を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記薬剤が、コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸、および/またはグアニジノ酢酸塩を加えた食用マトリックスを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
前記食用マトリックスが、コリンおよび/またはベタインと組み合せたグアニジノ酢酸、および/またはグアニジノ酢酸塩を製造工程において混合または溶解により加えた、完成製品もしくは半製品、飲料、または飼料の形の工業的に製造される食料品であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記薬剤が、炭水化物、脂肪、アミノ酸、タンパク質、ビタミン、無機物質、微量元素、カフェイン、タウリン、およびこれらの誘導体、およびこれらの混合物から選択されているさらなる生理活性栄養物質を含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記グアニジノ酢酸塩が、リンゴ酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、コハク酸、焦性ブドウ酸、フマル酸、グルコン酸、α−ケトグルタル酸、シュウ酸、ピログルタミン酸、3−ニコチン酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、硫酸、酢酸、ギ酸、塩酸、リン酸、2−ヒドロキシコハク酸、L−カルニチン、アセチル−L−カルニチン、タウリン、ベタイン、コリン、メチオニン、および/またはリポ酸との、ならびにナトリウム、カリウム、またはカルシウムとの塩であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記グアニジノ酢酸(塩)を、ジメチルグリシン、サルコシン、葉酸、およびメチオニン、またはこれらの成分の混合物の群の、さらなるメチル基供与体と組み合わせることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記グアニジノ酢酸、および/またはグアニジノ酢酸塩を、体重1kgあたり0.001〜0.3gの各回服用量で投与することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
グアニジノ酢酸対コリンおよび/またはベタインの使用量のモル比が、1:5〜5:1の範囲、好ましくは1:3〜2:1の範囲、およびとりわけ1:1であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記グアニジノ酢酸が液体状の、半固体状の、または固体の食用マトリックスに固体として分散されている、コリンおよび/またはベタインと組み合わせたグアニジノ酢酸を含む、ヒトの栄養補給のための組成物。
【請求項12】
乳製品、例えばヨーグルト、ホエー、チーズ、および牛乳、ならびに工業的に製造される完成製品と半完成製品、例えば麺、ミューズリー、シリアル、焼き菓子、調理済み食品、スティック状食品、パン、ソーセージ、および飲料であることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記マトリックスのpH値が、2〜11であることを特徴とする、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
常温で90日間貯蔵の後でもなお、グアニジノ酢酸、および/またはグアニジノ酢酸塩の当初の使用量の少なくとも90%を含むことを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記食用マトリックスが、粘度を上昇させる物質、例えばアルギン酸塩、キサンタン、グアール粉、またはイナゴマメ粉を含むことを特徴とする、請求項11から14までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
グアニジノ酢酸対コリンおよび/またはベタインのモル比が、1:5〜5:1、好ましくは1:3〜2:1、およびとりわけ約1:1であることを特徴とする、請求項11から15までのいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2010−521420(P2010−521420A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547579(P2009−547579)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000501
【国際公開番号】WO2008/092591
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(506390292)アルツケム トロストベルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (9)
【氏名又は名称原語表記】AlzChem Trostberg GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Str. 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】