説明

充電回路およびそれを用いた電子機器

【課題】過電圧保護機能を備えた充電回路を提供する。
【解決手段】外部電源210からの電源電圧Vddにもとづいて電池220を充電する充電回路200aにおいて、充電トランジスタTr1は、外部電源210から電池220への経路上に設けられる。充電制御回路100aは、半導体基板上に集積化され、充電トランジスタTr1のオン状態を調節して、電池220に供給する充電電流Ichgを調節する。電圧調節回路110は、外部電源210から充電制御回路100aの電源端子104への電力供給の経路上に設けられ、必要な電圧降下を生成する。電流調節回路20は、電池220の電圧が、所定の電圧値に近づくように、充電トランジスタTr1のオン状態を調節する。クランプ回路10は、充電制御回路100aの電源端子104の電圧を、所定のクランプ電圧以下にクランプする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部からの電源電圧にもとづいて、2次電池を充電する充電回路に関し、特にその過電圧保護技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型パーソナルコンピュータなどのさまざまな電子機器には、デジタル信号処理を行うCPU(Central Processing Unit)や、DSP(Digital Signal Processor)、あるいは、液晶パネル、その他のアナログ、デジタル回路など、多くの電子回路が搭載される。電源として電池が搭載される電池駆動型の電子機器においては、機器内部の各電子回路は、電池からの電池電圧によって動作する。
【0003】
電池がリチウムイオン電池などの2次電池である場合、電子機器には充電回路が内蔵されることになる。この充電回路は、外部からのACアダプタなどから供給される電圧供給を受け、電池に充電電流を供給する。たとえば、特許文献1には、関連技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−219935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、充電回路に外部から与えられる電圧は、常に一定であるとは限らず、電子機器に非対応のACアダプタや、その他の電源回路から、非常に高い電圧が供給される場合がある。外部から供給される電圧が、充電回路の耐圧を超える電圧である場合、充電動作に支障を来すばかりでなく、充電回路や電池、電子機器の信頼性に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、過電圧保護機能を備えた充電回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、外部電源からの電源電圧にもとづいて電池を充電する充電回路に関する。この充電回路は、外部電源から電池への充電経路上に設けられた充電トランジスタと、充電トランジスタのオン状態を調節して、電池に供給する充電電流を調節する充電制御回路と、外部電源から充電制御回路の電源端子への電力供給の経路上に設けられ、電圧降下を生成する電圧調節回路と、を備える。充電制御回路は、当該充電制御回路の電源端子の電圧を、所定のクランプ電圧以下にクランプするクランプ回路と、電池の電圧が、所定の電圧値に近づくように、充電トランジスタのオン状態を調節する電流調節回路と、を含む。
【0008】
この態様によると、充電制御回路の耐圧に応じてクランプ電圧を設定し、充電制御回路の内部にクランプ回路を内蔵することにより、電源電圧として過電圧が印加されても、電圧調節回路によって電圧降下が発生するため、電源端子に、クランプ電圧を超える電圧が印加されるのを防止することができる。
【0009】
ある態様において、電圧調節回路は、抵抗であってもよい。この場合、充電制御回路の外部に、電圧調節回路として1素子を追加すればよいため、回路規模を大きくすることなく、過電圧保護を実現することができる。
【0010】
ある態様において、電圧調節回路は、外部電源から充電制御回路の電源端子へ至る電力供給の経路上に設けられた保護トランジスタと、保護トランジスタの外部電源に接続される端子および保護トランジスタの制御端子間に設けられた抵抗と、を含んでもよい。クランプ回路は、保護トランジスタの制御端子の電圧を、所定のしきい値電圧以下にクランプすることにより、充電制御回路の電源端子の電圧を、クランプ電圧以下にクランプしてもよい。
この場合、外部電源から電源端子に流れる電流の大部分は、保護トランジスタに流れるため、抵抗での電力消費を小さく抑えることができ、定格電力の小さな、安価な抵抗素子を利用することが可能となる。
【0011】
ある態様において、保護トランジスタは、エミッタが充電制御回路の電源端子側に接続され、コレクタが外部電源側に接続されたNPN型バイポーラトランジスタであって、抵抗は、コレクタおよび保護トランジスタの制御端子であるベース間に設けられてもよい。
【0012】
ある態様において、充電回路は、保護トランジスタの制御端子および固定電圧端子間に設けられたキャパシタをさらに備えてもよい。この場合、キャパシタと抵抗が時定数回路を構成するため、外部電源からの電源電圧が急激に上昇した場合でも、充電制御回路に印加される電圧の上昇の速度を緩和することができ、より安全な回路保護が実現できる。
【0013】
ある態様において、クランプ回路は、充電制御回路の電源端子の電圧をクランプした状態において、外部電源から電池に供給される充電電流を遮断してもよい。この場合、過電圧状態において、充電機能を停止することにより、より安全な回路保護が実現できる。
【0014】
ある態様において、充電回路は、外部電源から電池への充電電流の経路上に設けられた充電停止スイッチをさらに備えてもよい。クランプ回路は、充電制御回路の電源端子の電圧をクランプした状態において、充電停止スイッチをオフしてもよい。
【0015】
本発明の別の態様は、電子機器である。この電子機器は、電池と、外部電源からの電源電圧にもとづいて電池を充電する上述のいずれかの態様の充電回路と、を備える。
【0016】
この態様によると、外部電源からの電源電圧が過電圧である場合にも、電池や充電回路を安定に動作させることができる。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る充電回路によれば、過電圧保護機能を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る充電回路およびクランプ回路について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、以下の説明において、電圧信号、電流信号あるいは抵抗、容量などに付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値あるいは抵抗値、容量値を表すものとして用いることとする。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る充電回路200aおよび電子機器1000全体の構成を示す回路図である。
電子機器1000は、たとえば携帯電話端末や、PDA、ノート型PCなどの電池駆動型の情報端末機器である。電子機器1000は、充電回路200a、電池220を備える。電子機器1000は、その他に、図示しない電源回路や、DSP、液晶パネルをはじめ、その他のアナログ、デジタルを備える。
【0021】
電池220は、リチウムイオンやNiCd(ニッケルカドミウム)電池などの2次電池であり、その電池電圧Vbatが、電子機器1000のその他の回路ブロックへと供給される。
【0022】
外部電源210は、電子機器1000に接続され、商用交流電圧を直流電圧に変換するACアダプタや、車載バッテリ等の電圧を、降圧するDC/DCコンバータなどであり、電子機器1000に接続される。外部電源210は、充電回路200aに対して、直流の電源電圧Vdcを供給する。
【0023】
充電回路200aは、外部電源210からの電源電圧Vdcにもとづいて電池220を充電する。充電回路200aは、充電トランジスタTr1、充電制御回路100a、電圧調節回路110およびその他の回路素子を備える。
【0024】
充電トランジスタTr1は、外部電源210から電池220への充電経路上に設けられる。本実施の形態において、充電経路は、充電トランジスタTr1、充電制御回路100aの第2電流制御端子108、電池端子102を介して電池220に至る経路である。充電トランジスタTr1は、PNP型バイポーラトランジスタであって、エミッタが外部電源210に接続されている。充電トランジスタTr1のエミッタおよびベース間には、第2抵抗R2が接続される。また、充電トランジスタTr1のベースおよび固定電圧端子である接地端子間には、充電制御トランジスタTr2が接続される。充電制御トランジスタTr2は、NPN型バイポーラトランジスタであって、コレクタが充電トランジスタTr1のベースに、エミッタが接地端子に接続される。
【0025】
充電制御回路100aは、半導体基板上に集積化され、充電トランジスタTr1のオン状態を調節して、電池220に供給する充電電流Ichgを調節する。充電制御回路100aは、入出力用の端子として、電池端子102、電源端子104、第1電流制御端子106、第2電流制御端子108を備える。
【0026】
電池端子102には、電池220が接続され、第2電流制御端子108には、充電トランジスタTr1のコレクタが接続される。第1電流制御端子106からは、充電トランジスタTr1のオンの程度を制御する制御電圧Vcntが出力される。この制御電圧Vcntは、充電制御トランジスタTr2のベースに入力される。電源端子104は、充電制御回路100a自体の電源端子であって、電源電圧Vddが供給される。以下、説明の混乱を避けるため、必要に応じて外部電源210からの電源電圧を外部電源電圧Vdc、第1電流制御端子106に供給される電源電圧を、内部電源電圧Vddとして区別する。
【0027】
本実施の形態において、電圧調節回路110は、電圧制御抵抗R1を含み、外部電源210から充電制御回路100aの電源端子104への電力供給の経路上に設けられる。電圧調節回路110には、動作に応じて必要な電圧降下が発生し、外部電源電圧Vdcが、内部電源電圧Vddに降圧される。電圧制御抵抗R1の抵抗値は、たとえば100Ω程度に設計する。
【0028】
充電制御回路100aは、クランプ回路10、電流調節回路20、その他の回路素子を備える。電流調節回路20をはじめとする充電制御回路100aの内部の回路は、内部電源電圧Vddを電源として動作する。
【0029】
たとえば、充電制御回路100aは、外部電源210から外部電源電圧Vdcとして5V程度の電圧を供給された状態において、電池220を安定に充電するように構成される。ところが、外部電源210として、本来予期しないデバイスが接続され、外部電源電圧Vdcとして5Vを大きく超える、たとえば30V程度の過電圧が印加される状況も想定される。充電制御回路100aは、こうした過電圧から回路素子を保護するための過電圧保護回路を内蔵している。
【0030】
クランプ回路10は、充電制御回路100aの電源端子104の電圧Vddを、所定のクランプ電圧Vclmp以下にクランプする過電圧保護回路として機能する。クランプ電圧Vclmpは、充電制御回路100aの半導体製造プロセスによって決まる耐圧に応じて設定すればよい。一般に高耐圧プロセスは、集積化の観点で不利であるため、信頼性を満たした上で、なるべく耐圧の低いプロセスを選択することが望ましい。この点から、通常動作時に想定される外部電源電圧Vdc=5Vよりも、若干高い電圧値に設定するのが望ましい。たとえば、充電制御回路100aは、外部電源電圧Vdc=5Vに対して、2V高い、7V耐圧のプロセスで設計してもよい。クランプ回路10のクランプ電圧Vclmpは、充電制御回路100aの耐圧に応じて設定すればよく、たとえば、7Vよりも低い6.8V程度に設定する。
【0031】
電流調節回路20は、電池220の電圧Vbatが、所定の電圧値に近づくように、充電トランジスタTr1のオン状態を調節し、充電電流Ichgを制御する。電流調節回路20は、誤差増幅器22、第3抵抗R3、第4抵抗R4を含む。第3抵抗R3、第4抵抗R4は、電池端子102に現れる電池電圧Vbatを分圧し、Vbat×R4/(R3+R4)で与えられる帰還電圧Vfbを、誤差増幅器22の反転入力端子へと出力する。誤差増幅器22の非反転入力端子には、所定の基準電圧Vrefが印加される。誤差増幅器22の出力端子は、第1電流制御端子106を介して充電制御トランジスタTr2のベースに接続され、充電制御電圧Vcntを出力する。充電制御電圧Vcntによって、充電制御トランジスタTr2のオンの程度が制御されると、充電制御トランジスタTr2のコレクタ電流が変化して、第2抵抗R2における電圧降下が変化する。その結果、充電トランジスタTr1のベースエミッタ間電圧が変化し、充電トランジスタTr1のオンの程度が調節される。
【0032】
充電制御回路100aの第2電流制御端子108、電池端子102の間には、充電停止スイッチM3、第5抵抗R5が直列に設けられる。充電トランジスタTr1に流れる充電電流Ichgは、充電停止スイッチM3および第5抵抗R5を介して、電池220へと供給される。
【0033】
本実施の形態において、クランプ回路10は、充電制御回路100aの電源端子104の内部電源電圧Vddをクランプしている状態において、すなわち、外部電源210から供給される外部電源電圧Vdcが上昇した状態において、外部電源210から電池220に供給される充電電流Ichgを遮断する。具体的には、外部電源210から電池220への充電電流Ichgの経路上に設けられた充電停止スイッチM3をオフすることにより、充電電流Ichgを遮断する。
【0034】
以上のように構成された充電回路200の動作について説明する。外部電源210から通常の外部電源電圧Vdc=5V程度が供給されると、クランプ回路10のクランプ機能は働かず、充電制御回路100aは通常の充電機能を実行する。誤差増幅器22は、その反転入力端子と非反転入力端子の電圧が等しくなるように、すなわちVfb=Vrefが成り立つように、充電トランジスタTr1のベース電圧、すなわちオン状態を調節し、電池220に適切な充電電流Ichgを供給する。
【0035】
いま、外部電源210から、外部電源電圧Vdcとして30V程度の過電圧が印加されたとする。このとき、電源端子104の内部電源電圧Vddは、外部電源電圧Vdcの上昇にともなって上昇しようとするが、クランプ回路10は、内部電源電圧Vddをクランプし、クランプ電圧Vclmp以上に上昇しないように機能する。電圧調節回路110である電圧制御抵抗R1には、外部電源電圧Vdc=30Vと、内部電源電圧Vdd=Vclmpの差に相当する電圧降下が発生する。
【0036】
本実施の形態に係る充電回路200aによれば、充電制御回路100aの耐圧に応じてクランプ電圧Vclmpを設定し、充電制御回路100aの内部にクランプ回路10を内蔵することにより、電源電圧Vdcとして過電圧が印加されても、電圧調節回路110によって電圧降下が発生するため、電源端子104に、クランプ電圧Vdcを超える電圧が印加されるのを防止することができる。
【0037】
また、クランプ回路10は、内部電源電圧Vddをクランプした状態で、充電停止スイッチM3をオフして、充電電流Ichgを遮断する。過電圧状態において、充電機能を停止することにより、より安全な回路保護が実現できる。
【0038】
また、回路構成としても、充電制御回路100aにクランプ回路10を内蔵し、電圧制御抵抗R1を追加するのみで実現できるため、回路部品点数の増大を招くことなく、好適に過電圧保護を実現することができる。
【0039】
(第2の実施の形態)
図2は、第2の実施の形態に係る充電回路200bの構成を示す回路図である。以下、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0040】
図1の充電回路200aは、電圧調節回路110として、抵抗素子を用いていた。その結果、過電圧印加時の、電圧制御抵抗R1における消費電力が大きくなる場合があった。たとえば、外部電源電圧Vdc=30V、クランプ電圧Vclmp=7の場合、23Vの電圧降下が発生するため、抵抗値を100Ωとした場合、23/100≒5W程度の消費電力が発生する。したがって、電圧制御抵抗R1として、定格電力が5W以上の素子を選ぶ必要がある。定格電力の大きな抵抗素子は、部品の大きさやコストの観点から、使用を避けたい場合もある。以下で説明する第2の実施の形態に係る充電回路200bは、定格電力の大きな抵抗素子の使用を望まない場合に有効である。
【0041】
本実施の形態において、電圧調節回路110は、保護トランジスタTr3、第6抵抗R6を含む。保護トランジスタTr3は、外部電源210から充電制御回路100bの電源端子104aへ至る電力供給の経路上に設けられる。保護トランジスタTr3は、NPN型バイポーラトランジスタであり、エミッタが充電制御回路100bの電源端子104a側に接続され、コレクタが外部電源210側に接続される。第6抵抗R6は、保護トランジスタTr3の制御端子であるベースと、保護トランジスタTr3の外部電源210に接続される端子であるコレクタとの間に設けられる。
【0042】
保護トランジスタTr3のベースは、充電制御回路100bの電源端子104bに接続される。本実施の形態において、クランプ回路10は、保護トランジスタTr3のベース電圧を、所定のしきい値電圧Vth以下にクランプすることにより、充電制御回路100bの電源端子104aの電圧Vddを、クランプ電圧Vclmp以下にクランプする。本実施の形態では、しきい値電圧Vthと、クランプ電圧Vclmpの間には、Vclmp=Vth−Vfが成り立つ。ここでVfは、保護トランジスタTr3のベースエミッタ間ダイオードの順方向電圧である。
【0043】
また、保護トランジスタTr3のベースと、接地端子間には、キャパシタC1が設けられる。
【0044】
以上のように構成された充電回路200bの動作を説明する。外部電源210により、外部電源電圧Vdcとして、過電圧が印加されると、電圧調節回路110のコレクタ電圧が上昇し、これにともない、ベース電圧、すなわち電源端子104bの電圧も上昇する。クランプ回路10は、電源端子104bの電圧が、しきい値電圧Vthを超えないようにクランプするため、内部電源電圧Vddは、Vclmp(=Vth−Vf)以下にクランプされる。
【0045】
このとき、第6抵抗R6に流れる電流は、保護トランジスタTr3のコレクタ電流の1/hfeとなる。ここでhfeは、保護トランジスタTr3の電流増幅率である。つまり、第2の実施の形態では、第6抵抗R6に流れる電流は、第1の実施の形態の電圧制御抵抗R1に流れる電流に比べて、非常に小さくなる。その結果、第6抵抗R6として、電圧制御抵抗R1の抵抗値の数十倍から100倍程度の抵抗値とすることができる。このとき、過電圧状態で第6抵抗R6で消費される電力は、第1の実施の形態の電圧制御抵抗R1で消費される電力の数十分の1〜100分の1程度まで減少する。
【0046】
その結果、第6抵抗R6の定格電力を低くすることができ、回路設計の自由度を上げることができる。
【0047】
また、本実施の形態に係る充電回路200bでは、第6抵抗R6とキャパシタC1がCR時定数回路を形成する。したがって、外部電源電圧Vdcが急激に上昇した場合においても、その上昇に対して、電源端子104a、104bの電圧の上昇が遅れるため、クランプ回路10の動作速度が遅い場合であっても、確実に充電制御回路100bに供給される内部電源電圧Vddがクランプ電圧を超えるのを防止することができる。
【0048】
次に、第1、第2の実施の形態に係る充電回路200a、200bにクランプ回路として利用される過電圧保護の構成について説明する。
【0049】
図3は、第1、第2の実施の形態においてクランプ回路10として使用される過電圧保護回路50の構成を示す回路図である。過電圧保護回路50は、半導体集積回路に内蔵され、本半導体集積回路の電源端子104aに供給される電源電圧Vddを、所定のクランプ電圧以下にクランプするクランプ回路である。
【0050】
過電圧保護回路50は、基準電圧源52、コンパレータ54、第1クランプ回路56、第2クランプ回路58、第1スイッチM1、第2スイッチM2、電流電圧変換回路60を含む。
【0051】
第1クランプ回路56、第1スイッチM1は、充電制御回路100bの電源端子104bと接地端子間に、直列に設けられる。第1クランプ回路56はアノードが電源端子104b側に、カソードが接地端子側に接続された複数のダイオードを含む。第1スイッチM1は、ソースが第1クランプ回路56に接続されたPチャンネルMOSFETである。
【0052】
基準電圧源52は、バンドギャップレギュレータなどであって、所定の基準電圧Vrefを生成し、コンパレータ54の非反転入力端子に印加する。第7抵抗R7、第8抵抗R8は、電源端子104bの電圧Vdd’を分圧し、コンパレータ54の反転入力端子に印加する。
【0053】
コンパレータ54は、反転入力端子に印加された電源端子104bの電源電圧Vdd’に応じた電圧Vdd’’を、基準電圧Vrefと比較し、比較結果に応じて、第1スイッチM1のオンオフを制御する。本実施の形態において、コンパレータ54は、Vdd’’>Vrefのときローレベルとなる比較信号Vcmpを出力する。第1スイッチM1は、比較信号Vcmpがローレベルのときオン、ハイレベルのときオフとなる。
【0054】
電流電圧変換回路60は、第1クランプ回路56および第1スイッチM1を含む経路に流れる電流Ixを、電圧Vxに変換する。電流電圧変換回路60は、変換して得られた電圧Vxが、所定のしきい値電圧を超えると、半導体集積回路の機能の一部を停止する。第1、第2の実施の形態では、充電機能を停止する場合について説明した。
【0055】
電流電圧変換回路60は、第1トランジスタQ1〜第4トランジスタQ4、第9抵抗R9を含む。第1トランジスタQ1は、第1クランプ回路56および第1スイッチM1と直列に、同一電流経路上に設けられる。第2〜第4トランジスタQ2〜Q4は、第1トランジスタQ1とカレントミラー接続される。第2〜第4トランジスタQ2〜Q4よって複製された電流Ix’は、一端の電位が固定された第9抵抗R9に流され、Vx=R9×Ix’の電圧が生成される。
【0056】
電圧Vxは、エミッタ接地された第5トランジスタQ5のベースに入力される。第10抵抗R10は、第5トランジスタQ5のコレクタと、電源端子104bの間に設けられる。電圧Vxが、しきい値電圧を超えて、第5トランジスタQ5がオンすると、インバータ62の出力はハイレベルとなる。インバータ62の出力信号は、半導体集積回路の機能の一部を停止するために利用される。第1、第2の実施の形態では、インバータ62の出力信号は、充電停止スイッチM3のゲートに供給される信号として利用された。
【0057】
第2クランプ回路58および第2スイッチM2は直列に接続され、第1スイッチM1から接地端子に至る経路と並列の経路に配置される。より具体的には、第2クランプ回路58および第2スイッチM2は、第1スイッチM1のゲートと接地端子の間に、直列に接続される。また、第1スイッチM1のゲートソース間には、プルアップ抵抗R11が設けられる。第2スイッチM2は、NチャンネルMOSFETであり、ソースが接地され、ドレインが第2クランプ回路58に接続される。
【0058】
ここで、基準電圧源52は、電源端子104aに供給される電源電圧Vddによって動作するため、電源電圧Vddが低い場合には、所定の基準電圧Vrefが出力不能な状態となる場合がある。基準電圧源52は、このような場合に、ハイレベルとなる低電圧検出信号VLOWを出力するように構成される。低電圧検出信号VLOWは、第2スイッチM2のゲートに印加される。その結果、第2スイッチM2は、低電圧検出信号VLOWがハイレベルの期間、すなわち、所定の基準電圧Vrefが生成されない期間、オンとなる。
【0059】
以上のように構成された過電圧保護回路50の動作を説明する。
電源端子104aに印加される電源電圧Vddおよび電源端子104bに印加される電源電圧Vdd’が、通常の動作電圧の場合、Vdd’’<Vrefが成り立つため、第1スイッチM1はオフとなり、第1クランプ回路56および第1スイッチM1を含む経路には電流が流れず、クランプ機能は働かない。
【0060】
過電圧状態において、電源端子104aに印加される電源電圧Vddおよび電源端子104bに印加される電源電圧Vdd’が上昇すると、コンパレータ54から出力される比較信号Vcmpがローレベルとなり、第1スイッチM1がオン状態となる。このとき、第1スイッチM1および第1クランプ回路56を含む経路に電流Ixが流れ、第1クランプ回路56によって、電源端子104bの電圧Vdd’が所定のしきい値電圧Vth以下にクランプされる。このときのしきい値電圧Vthは、Vth≒Vf×2+VdsM1+VceQ1で与えられる。ここで、Vfは、第1クランプ回路56のダイオードの順方向電圧、VdsM1は、第1スイッチM1のドレインソース間電圧、VceQ1は、第1トランジスタQ1のコレクタエミッタ間電圧である。
【0061】
電源端子104bの電圧Vdd’がクランプされると、電源端子104aの電圧Vddは、クランプ電圧Vclmp=Vth−Vf以下にクランプされる。ここでVfは、保護トランジスタTr3のベースエミッタ間電圧である。その結果、コンパレータ54や基準電圧源52に印加される電源電圧Vddは、クランプ電圧以下に抑えられるため、回路保護が実現される。
【0062】
また、このとき、電流Ixが、電流電圧変換回路60によって電圧Vxに変換され、Vx>Vfとなると、第5トランジスタQ5がオンし、インバータ62の出力信号によって、過電圧保護回路50が内蔵される半導体集積回路の機能の一部が停止される。
【0063】
さらに、本実施の形態によれば、外部電源210からの外部電源電圧Vdcが、0V付近から急激に上昇した場合にも、好適に回路保護を実現することができる。外部電源電圧Vdcが、0V付近の場合、基準電圧源52は基準電圧Vrefを生成することができず、また、コンパレータ54自体も電圧比較を行うことができない。
【0064】
この状態において、基準電圧源52はハイレベルの低電圧検出信号VLOWを出力しているため、第2スイッチM2がオンとなる。その結果、第1クランプ回路56、プルアップ抵抗R11、第2クランプ回路58、第2スイッチM2を含む経路がアクティブとなり、クランプ回路として機能する。したがって、急激に外部電源電圧Vdcが上昇した場合においても、電源端子104bの電源電圧Vdd’ならびに電源端子104aの電源電圧Vddを確実にクランプすることができる。
【0065】
なお、外部電源電圧Vdcがある程度上昇して、基準電圧源52により所定の基準電圧Vrefが生成されるようになると、第2スイッチM2がオフし、第1クランプ回路56および第1スイッチM1を含む経路でのクランプ動作へと移行する。
【0066】
以上、実施の形態にもとづき、本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもなく、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を離脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能であることはいうまでもない。
【0067】
実施の形態でMOSFETとバイポーラトランジスタは、必要に応じて適宜置き換えることが可能である。また、MOSFETのNチャンネルとPチャンネル、あるいはバイポーラトランジスタのNPN型とPNP型も、適宜置換してもよい。
【0068】
また、実施の形態では、充電トランジスタTr1や充電制御トランジスタTr2が充電制御回路100の外部に設けられる場合について説明したが、これらを充電制御回路100の内部に設けてもよい。したがって、いずれの回路素子を半導体集積回路の内部に形成するかは、使用する半導体プロセスや、回路に要求される仕様などに応じて適宜変更可能である。
【0069】
また、本実施の形態において、ハイレベル、ローレベルの論理値の設定は一例であって、インバータなどによって適宜反転させることにより自由に変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施の形態に係る充電回路および電子機器全体の構成を示す回路図である。
【図2】第2の実施の形態に係る充電回路の構成を示す回路図である。
【図3】第1、第2の実施の形態においてクランプ回路として使用される過電圧保護回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0071】
10 クランプ回路、 20 電流調節回路、 100 充電制御回路、 104 電源端子、 110 電圧調節回路、 200 充電回路、 200a 充電回路、 200b 充電回路、 210 外部電源、 220 電池、 1000 電子機器、 Tr1 充電トランジスタ、 Tr3 保護トランジスタ、 M1 第1スイッチ、 M2 第2スイッチ、 M3 充電停止スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からの電源電圧にもとづいて電池を充電する充電回路であって、
前記外部電源から前記電池への充電経路上に設けられた充電トランジスタと、
前記充電トランジスタのオン状態を調節して、前記電池に供給する充電電流を調節する充電制御回路と、
前記外部電源から前記充電制御回路の電源端子への電力供給の経路上に設けられ、電圧降下を生成する電圧調節回路と、
を備え、
前記充電制御回路は、
当該充電制御回路の電源端子の電圧を、所定のクランプ電圧以下にクランプするクランプ回路と、
前記電池の電圧が、所定の電圧値に近づくように、前記充電トランジスタのオン状態を調節する電流調節回路と、
を含むことを特徴とする充電回路。
【請求項2】
前記電圧調節回路は、抵抗であることを特徴とする請求項1に記載の充電回路。
【請求項3】
前記電圧調節回路は、
前記外部電源から前記充電制御回路の電源端子へ至る電力供給の経路上に設けられた保護トランジスタと、
前記保護トランジスタの前記外部電源に接続される端子および前記保護トランジスタの制御端子間に設けられた抵抗と、
を含み、
前記クランプ回路は、前記保護トランジスタの制御端子の電圧を、所定のしきい値電圧以下にクランプすることにより、前記充電制御回路の電源端子の電圧を、前記クランプ電圧以下にクランプすることを特徴とする請求項1に記載の充電回路。
【請求項4】
前記保護トランジスタは、エミッタが前記充電制御回路の電源端子側に接続され、コレクタが前記外部電源側に接続されたNPN型バイポーラトランジスタであって、
前記抵抗は、前記保護トランジスタのコレクタおよび制御端子であるベース間に設けられることを特徴とする請求項3に記載の充電回路。
【請求項5】
前記保護トランジスタの制御端子および固定電圧端子間に設けられたキャパシタをさらに備えることを特徴とする請求項3または4に記載の充電回路。
【請求項6】
前記クランプ回路は、前記充電制御回路の電源端子の電圧をクランプした状態において、前記外部電源から前記電池に供給される充電電流を遮断することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の充電回路。
【請求項7】
前記外部電源から前記電池への充電電流の経路上に設けられた充電停止スイッチをさらに備え、
前記クランプ回路は、前記充電制御回路の電源端子の電圧をクランプした状態において、前記充電停止スイッチをオフすることを特徴とする請求項6に記載の充電回路。
【請求項8】
電池と、
外部電源からの電源電圧にもとづいて前記電池を充電する請求項1から7のいずれかに記載の充電回路と、
を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−306663(P2007−306663A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130453(P2006−130453)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】