説明

充電装置

【課題】車載機器に接続された携帯端末のバッテリの寿命をできるだけ損なうことなく、効率的に当該バッテリの充電が可能な「充電装置」を提供することである。
【解決手段】前記携帯端末のバッテリを充電する充電手段(21、22)と、充電手段が前記バッテリを所定の充電能力にて充電した際の基準蓄電量に達するまでの予測充電時間を取得する予測充電時間取得手段(S14、S15)と、自車両が現在地から目的地まで走行する際の予測走行時間を取得する予測走行時間取得手段(S16)と、前記予測充電時間と前記予測走行時間とを比較する時間比較手段(S17)と、該時間比較手段での比較結果に応じて、前記充電手段の前記バッテリに対する充電能力を制御する充電制御手段(S18、S19)とを有する構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AV・ナビゲーション機器等の車載機器に有線または無線にて接続可能なスマートフォン等の携帯端末のバッテリに対する充電を行う充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるバッテリを該車両のエンジンが停止する前に確実に充電を行うバッテリ管理装置が提案されている。このバッテリ管理装置では、現在地から目的地までの走行予測距離または走行予測時間をカーナビゲーション装置により検出し、その走行予測距離または走行予測時間が所定の基準距離及び基準時間未満になった時点でバッテリに対する急速充電を開始するようになっている(特許文献1参照)。このようなバッテリ管理装置によれば、車両が目的地に到着してエンジンが停止する時までにバッテリを確実に満充電(フル充電)の状態にすることができ、その後に暗電流等によりバッテリの出力電圧がエンジン始動に必要な電圧より低下することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−354761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1または複数のアプリケーションを備えた携帯端末を車載機器に接続し、車載機器にて携帯端末の種々のアプリケーションを利用することが考えられる。このように車載機器に携帯端末が接続されている状態において、携帯端末のバッテリを充電することができれば便利である。
【0005】
しかしながら、上述したような車載バッテリの充電方法のように、目的地に近付く毎に携帯端末のバッテリに対してより多くの発熱を伴う急速充電を行うのでは、携帯端末のバッテリの寿命を損ねてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、車載機器に接続された携帯端末のバッテリの寿命をできるだけ損なうことなく、効率的に当該バッテリの充電が可能な充電装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る充電装置は、車載機器に通信可能な状態で接続可能であって1または複数のアプリケーションを備えてバッテリ駆動により各アプリケーションの実行が可能な携帯端末の前記バッテリに対する充電を行う充電装置であって、前記携帯端末のバッテリを充電する充電手段と、前記充電手段が前記バッテリを所定の充電能力にて充電した際の基準蓄電量に達するまでの予測充電時間を取得する予測充電時間取得手段と、自車両が現在地から目的地まで走行する際の予測走行時間を取得する予測走行時間取得手段と、前記予測充電時間と前記予測走行時間とを比較する時間比較手段と、該時間比較手段での比較結果に応じて、前記充電手段の前記バッテリに対する充電能力を制御する充電制御手段とを有する構成となる。
【0008】
このような構成により、車両の予測走行時間と携帯端末のバッテリを所定の充電能力にて充電した際の予測充電時間との比較結果に応じて当該携帯端末のバッテリに対する充電能力が制御されるので、車両の予測走行時間と携帯端末におけるバッテリの予測充電時間との大小関係(比較結果)に基づいて車両の走行期間中における当該バッテリの充電状況を推定して、その推定結果に応じてより高い充電能力あるいはより低い充電能力にて当該バッテリの充電を行うことができるようになる。
【0009】
なお、充電能力は、ある充電量を得るための時間で表すことができ、より高い充電能力は、ある充電量を得るための時間がより短く、より低い充電能力は、ある充電量を得るための時間がより長い。また、予測充電時間を演算するための基準となる基準蓄電量は、携帯端末のバッテリの最大蓄電量(満充電状態)、あるいは、最大蓄電量の所定割合の蓄電量等、任意に決めることができる。また、その基準蓄電量は可変にすることもできる。
【0010】
前記充電手段、予測充電時間取得手段、予測走行時間取得手段、時間比較手段及び充電制御手段は、前記車載機器側に設けることができ、あるいは、その一部を携帯端末側に設けることができる。
【0011】
本発明に係る充電装置において、前記充電制御手段は、前記比較手段にて前記予測充電時間が前記予測走行時間以下であるという比較結果が得られたときに、前記バッテリが前記所定の充電能力以下の第1の充電能力で充電されるように構成することができる。
【0012】
このような構成により、予測充電時間が予測走行時間以下であって、車両の走行期間中に前記所定の充電能力で基準蓄電量まで充電することが可能であると推定できる場合には、所定の充電能力以下、即ち、当該所定の充電能力と同じまたはそれより低い充電能力(第1の充電能力)にて携帯端末のバッテリの充電を行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る充電装置において、前記充電制御手段は、前記比較手段にて前記予測充電時間が前記予測走行時間より大きいという比較結果が得られたときに、前記バッテリが前記所定の充電能力より高い第2の充電能力で充電されるように前記充電手段を制御する構成とすることができる。
【0014】
このような構成により、予測充電時間が予測走行時間より大きく、車両の走行期間中に前記所定の充電能力で基準蓄電量まで充電することが難しいと推定できる場合には、所定の充電能力より高い充電能力(第2の充電能力)にて携帯端末のバッテリの充電を行うことができる。
【0015】
前記第1の充電能力は、前記所定の充電能力と同じに設定することができる。
【0016】
この場合、携帯端末のバッテリを所定の充電能力にて充電した際の基準蓄電量に達するまでの予測充電時間が予測走行時間以下であるという比較結果が得られたときに、前記バッテリが前記所定の充電能力(第1の充電能力)で充電されるので、予測走行時間を超えることなく前記バッテリの蓄電量が前記基準蓄電量に達するものと見込むことができる。
【0017】
更に、本発明に係る充電装置において、前記予測充電時間取得手段は、前記携帯端末との通信により前記バッテリの容量及び現在の残量に関する情報を含むバッテリ情報を取得する手段と、前記取得されたバッテリ情報に基づいて前記予測充電時間を演算する演算手段とを有する構成とすることができる。
【0018】
このような構成により、携帯端末との通信により得られたバッテリ情報に基づいて予測充電時間が演算されるので、携帯端末のバッテリの現時点におけるより的確な予測充電時間を取得することができる。
【0019】
また、本発明に係る充電装置において、前記車載機器は、ナビゲーションユニットを有し、前記予測走行時間取得手段は、自車両の経路誘導処理を行う前記ナビゲーションユニットが演算する現在地から目的地までの予測走行時間を取得する構成とすることができる。
【0020】
このような構成により、車載機器におけるナビゲーションユニットが演算する現在地から目的地までの予測走行時間が取得されるので、車両の現時点におけるより的確な予測走行時間を取得することができる。
【0021】
また、本発明に係る充電装置において、前記携帯端末が搭載するナビゲーションアプリケーションを実行させて自車両の経路誘導処理をさせ、前記予測走行時間取得手段は、自車両の経路誘導処理を行う前記ナビゲーションアプリケーションにより演算される現在地から目的地までの予測走行時間を前記携帯端末との通信により取得する構成とすることができる。
【0022】
このような構成により、携帯端末におけるナビゲーションアプリケーションの実行により演算される現在地から目的地までの予測走行時間が取得されるので、車載機器が車両ナビゲーションの機能を備えていなくても、車両の現時点におけるより的確な予測走行時間を取得することができる。
【0023】
更に、本発明に係る充電装置において、車両の走行時間帯を含む走行パターン情報を格納する手段を有し、前記予測走行時間取得手段は、前記走行パターン情報に基づいて前記予測走行時間を取得する構成とすることができる。
【0024】
このような構成により、走行パターン情報における車両の走行時間帯に基づいて現時点での当該車両の予測走行時間を取得することができるので、車両ナビゲーションの機能を利用することなく、車両の現時点におけるより的確な予測走行時間を取得することができる。
【0025】
更に、本発明に係る充電装置において、前記予測充電時間取得手段及び前記予測走行時間取得手段の少なくとも一方は、所定の時間間隔にて前記予測充電時間または及び前記予測走行時間を取得する構成とすることができる。
【0026】
このような構成により、所定時間間隔で予測充電時間または及び予想走行時間が更新されるようになるので、走行状況の変化やバッテリの性能変化が生じても、予測充電時間と予測走行時間との比較結果に基づいたバッテリの充電能力の制御がより的確なものとなり得る。
【0027】
また、本発明に係る充電装置において、前記携帯端末が実行するアプリケーションの数に増減があったか否かを判定する判定手段と、該判定手段により前記携帯端末が実行するアプリケーションの数に増減があったとの判定がなされたときに、前記予測充電時間取得手段は、前記予測充電時間を取得する構成とすることができる。
【0028】
このような構成により、携帯端末で実行されるアプリケーションの数に増減がある毎に、予測充電時間が更新されるので、実行されるアプリケーションの数の増減に応じて携帯端末での消費電力が変化しても、予測充電時間と予測走行時間との比較結果に基づいたバッテリの充電能力の制御がより的確なものとなり得る。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る充電装置によれば、車両の予測走行時間と携帯端末におけるバッテリの予測充電時間との大小関係(比較結果)に基づいて車両の走行期間中における当該バッテリの充電状況を推定して、その推定結果に応じてより高い充電能力あるいはより低い充電能力にて当該バッテリの充電を行うことができるようになるので、より多い発熱をともなうより高い充電能力での充電をできるだけ抑えて携帯端末のバッテリの寿命をできるだけ損なうことなく、当該バッテリを効率的に充電することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態にかかる充電装置を含む車載機器及び携帯端末を示すブロック図である。
【図2】図1に示す車載機器の処理ユニットによる携帯端末のバッテリを充電する処理手順の第1の例を示すフローチャートである。
【図3】ホーム画面の一例を示す図である。
【図4】図1に示す車載機器の処理ユニットによる携帯端末のバッテリを充電する処理手順の第2の例を示すフローチャートである。
【図5】図1に示す車載機器のナビゲーションユニットによって取得された走行履歴の一例を示す図である。
【図6】図1に示す車載機器の処理ユニットによる携帯端末のバッテリを充電する処理手順の第3の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0032】
本発明の実施の一形態に係る充電装置を含む車載機器は、図1に示すように構成される。
【0033】
図1において、車載機器100は外部機器接続用のコネクタ19を有し、コネクタ19にはケーブルによってスマートフォン20(携帯端末)が接続可能になっている。車載機器100は、コンピュータユニット(CPUを含む)にて構成される処理ユニット11を有しており、処理ユニット11には、CDやDVD等のディスク媒体から音楽や映像を再生するAVユニット17及び車両ナビゲーションに係る処理を行うナビゲーションユニット18が接続されている。更に、処理ユニット11には、AVユニット17にて利用される情報やその他各種情報を記憶するための記憶部14(例えば、ハードディスク)、車室内に設けられ、LCD等により構成される表示部13、操作ボタンや表示部13内に構成されるタッチパネル等からなる操作部12、及び車室内に設けられたスピーカ16に音声信号を供給する出力回路15が接続されている。
【0034】
また、この車載機器100は、コネクタ19にケーブルによって接続されるスマートフォン20のバッテリ(図示略)を充電するための手段としての電源回路21及び電流調整回路22を有している。処理ユニット11は、電源回路21のオン・オフ制御等を行うとともに、電流調整回路22の出力電流量を制御する。前記充電手段としての電源回路21及び電流調整回路22と、それらを制御する処理ユニット11とによってスマートフォン20のバッテリを充電する充電装置が構成される。
【0035】
スマートフォン20がケーブルにて接続されるコネクタ19は、処理ユニット11に接続されるとともに、電流調整回路22に接続されている。そして、処理ユニット11は、ケーブル及びコネクタ19を介してスマートフォン20と通信可能になり、また、電源回路21からの電力が電流調整回路22にて調整される電流量にてコネクタ19及びケーブルを介してスマートフォン20のバッテリに供給されるようになっている。スマートフォン20は、ナビゲーションアプリケーション、情報検索アプリケーション、ゲームアプリケーション等の複数のアプリケーションを備えており、スマートフォン20独自にて各アプリケーションの実行が可能になるとともに、処理ユニット11の制御のもと、各アプリケーションの実行が可能となる。
【0036】
スマートフォン20がケーブルによって車載機器100のコネクタ19に接続されると、処理ユニット11は、図2に示す手順に従ってスマートフォン20のバッテリに対する充電制御を行う。
【0037】
図2において、処理ユニット11は、スマートフォン20との接続を確認すると(S11)、スマートフォン20と通信を行って、スマートフォン20に備えられたアプリケーションに関する情報を取得し、実行可能なアプリケーションを特定する情報(例えば、アイコン)の一覧を表示部13に図3に示すようなホーム画面として表示させる。この表示部13に表示されるホーム画面において操作部12によってアプリケーションの指定操作がなされると、処理ユニット11は、スマートフォン20においてその指定されたアプリケーションを起動させ、そのアプリケーションの動作により生じた情報がスマートフォン20から処理ユニット11に送信される。そして、処理ユニット11は、スマートフォン20から送信される情報を取得し、その取得した情報の加工及び表示等の処理を行う。これにより、車載機器100では、スマートフォン20に備えられたアプリケーションの実行に基づいた情報出力、例えば、スマートフォン20に備えられたナビゲーションアプリケーションの実行に基づいた車両ナビゲーションに係る情報出力(画面表示、音声出力等)がなされる。
【0038】
処理ユニット11は、前述したようにスマートフォン20との接続を確認すると(S11)、電源回路21及び電流調整回路22を制御して、スマートフォン20のバッテリを所定の充電能力にて充電(以下、通常充電という)させる。処理ユニット11は、スマートフォン20におけるバッテリの通常充電が開始されると(S12)、そのバッテリの通常充電がなされている状況において、ナビゲーションユニット18による目的地までの経路案内がなされるか否か、または、スマートフォン20のナビゲーションアプリケーションの実行に基づいた目的地までの経回路案内がなされるか否かを監視する(S13)。その過程で、処理ユニット11は、ナビゲーションユニット18及びスマートフォン20のナビゲーションアプリケーションのいずれかにて目的地までの経路案内がなされていると判定すると(S13でYES)、処理ユニット11は、スマートフォン20からバッテリの容量(最大蓄電量)及び現在のバッテリ残量に関する情報を含むバッテリ情報を取得する(S14)。そして、処理ユニット11は、取得したバッテリ情報(バッテリの容量、バッテリ残量)、基準蓄電量(例えば、最大蓄電量)、通常充電(所定の充電能力)での供給電流量等に基づいて、スマートフォン20のバッテリを通常充電にて充電した際の基準蓄電量(例えば、最大蓄電量:フル電状態)に達するまでの予測充電時間Tcfを演算する(S15)。
【0039】
また、処理ユニット11は、目的地までの経路案内に係る処理(目的地までの予測走行時間の演算処理を含む)を行っているナビゲーションユニット18またはナビゲーションアプリケーションを実行しているスマートフォン20からその目的地までの予測走行時間Tnを取得する(S16)。そして、処理ユニット11は、前記予測走行時間Tnと前記予測充電時間Tcfとを比較して、前記予測走行時間Tnが前記予測充電時間Tcfより小さいか否かを判定する(S17)。
【0040】
前記予測充電時間Tcfが、予測走行時間Tn以下、即ち、予測走行時間Tnと同じまたはそれより小さい場合(S17でNO)、車両の走行期間中(予測走行時間Tn)に通常充電で基準蓄電量まで充電することが可能であると推定できるので、処理ユニット11は、スマートフォン20のバッテリに対する通常充電(第1の充電能力)を維持する(S19)。一方、前記予測走行時間Tnが前記予測充電時間Tcfより小さい場合(S57でYES)、車両の走行期間中(予測走行時間Tn)に通常充電により基準蓄電量まで充電することが難しいと推定できるので、処理ユニット11は、前記通常充電(第1の充電能力)から、前記通常充電での充電能力より高い充電能力(第2の充電能力)での急速充電に切り換えるよう電源回路21及び電流調整回路22を制御する(S18)。
【0041】
そして、処理ユニット11は、スマートフォン20からのバッテリ情報に基づいてバッテリが最大蓄電量のフル充電状態になったか否かを判定する(S20)。スマートフォン20のバッテリがフル充電状態になっていなければ(S20でNO)、処理ユニット11は、所定時間(例えば、1分程度)待機し(S24)、以後、前述したのと同様の処理(S14〜S17及びS18またはS19)を行う。そして、それらの処理(S24、S14〜S17及びS18またはS19)がスマートフォン20のバッテリがフル充電状態になる(S20でYES)まで繰り返し実行される。これにより、所定時間間隔(S24参照)にて、予測充電時間Tcfと予測走行時間Tnが更新され、その都度判断される急速充電及び通常充電のいずれかの充電能力にてスマートフォン20おけるバッテリの充電がなされる。
【0042】
前述した処理の過程で、例えば、前記所定時間内に車両の走行経路が変更された等で、予測走行時間Tnが小さくなると、通常充電が急速充電に切換り得る、あるいは、急速充電が維持され得る。一方、予測走行時間Tnが大きくなると、急速充電が通常充電に切換り得る、あるいは、通常充電が維持され得る。
【0043】
また、例えば、前記所定時間内にスマートフォン20で実行されるアプリケーションの数が増加したことによりバッテリ残量の減少が早まって予測充電時間Tcfが大きくなると、通常充電が急速充電に切換り得る、あるいは急速充電が維持され得る。一方、スマートフォン20で実行されるアプリケーションの数が減少したことによりバッテリ残量の減少が遅くなって予測充電時間Tcfが小さくなると、急速充電が通常充電に切換り得る、あるいは通常充電が維持され得る。
【0044】
上述した処理の過程で、処理ユニット11は、スマートフォン20のバッテリがフル充電状態になったと判定すると(S20でYES)、前記バッテリに対する充電を停止させるように電源回路21及び電流調整回路22を制御する(S21)。そして、処理ユニット11は、スマートフォン20がコネクタ19から外されたか否か(S22)、及びスマートフォン20からのバッテリ情報に基づいてバッテリ残量が所定量Enを下回ったか否か(S23)を監視する。その過程で、バッテリ残量が所定量Enを下回ると(S23でYES)、処理ユニット11は、スマートフォン20のバッテリに通常充電がなされるよう電源回路21及び電流調整回路22を制御し(S21)、以下、前述したのと同様の手順に従って、スマートフォン20のバッテリに対する充電制御を再開させる。
【0045】
また、スマートフォン20がコネクタ19から外されると(S22でYES)、処理ユニット11は、スマートフォン20のバッテリに対する充電制御を終了する(END)。
【0046】
上述したような充電装置(車載機器100)では、スマートフォン20のバッテリが通常充電にて充電された際の予測充電時間Tcfと車両が目的地まで走行する際の予測走行時間Tnとを比較し、その比較結果から車両の走行期間中に通常充電にて基準蓄電量(例えば、最大蓄電量)までの充電が可能であると推定される場合(Tcf≦Tn:S17でNO)、スマートフォン20のバッテリが通常充電され、前記結果から車両の走行期間中に通常充電にて基準蓄電量(例えば、最大蓄電量)までの充電が難しいと推定される場合(Tcf>Tn:S127でYES))、スマートフォン20のバッテリが急速充電される。このため、より多い発熱をともなう急速充電をできるだけ抑えつつ通常充電を行ってスマートフォン20のバッテリの寿命をできるだけ損なうことなく、当該バッテリを効率的に充電することが可能になる。
【0047】
なお、バッテリを充電する際のより低い充電能力(S19参照)と、予測充電時間Tcfを演算するために用いられる所定の充電能力とを同じ(通常充電)にしたが、これらは異なっていてもよい。また、予測充電時間Tcfを演算するために用いられた基準蓄電量は、バッテリの最大蓄電量(フル充電状態)に限られず、最大蓄電量より小さい値の蓄電量であってもよい。
【0048】
処理ユニット11は、図4に示す手順に従ってスマートフォン20のバッテリに対する充電制御を行うことができる。この場合、予測走行時間Tnは、ナビゲーションユニット18またはナビゲーションアプリケーションを実行するスマートフォン20から取得されるのではなく、車両の走行履歴から取得される。この走行履歴は、例えば、図5に示すように、走行する頻度の高い走行時間帯を曜日毎に集計したものである。処理ユニット11は、車両が走行する曜日及びその車両の発進から停止までの時間帯を記録して、走行履歴として記憶部14に記憶させている。例えば、定時での通勤に車両が利用される場合、図5に示すように、その通勤時間帯が走行時間帯として走行履歴が記録される。
【0049】
図4において、前述した処理(図2参照)と同様に、処理ユニット11は、スマートフォン20のコネクタ19への接続を確認すると(S11)、スマートフォン20のバッテリに対する通常充電を開始する(S12)。その後、処理ユニット11は、現在の日時を取得し(S131)、その取得された日時で特定される曜日と時刻とが走行履歴(図5参照)に記録された走行時間帯に含まれるか否かによって、走行時間の予測が可能であるか否かを判定する(S132)。
【0050】
得られた曜日と時刻とが走行履歴に記録された走行時間帯に含まれていなければ、走行時間の予測ができない(S132でNO)として、処理ユニット11は、スマートフォン20のバッテリに対する通常充電を維持する(S19)。一方、得られた曜日と時刻とが走行履歴に記録された走行時間帯に含まれていれば、走行時間の予測が可能である(S132でYES)として、処理ユニット11は、前述したのと同様(図2参照)に予測充電時間Tcfを演算した(S14、S15)後、前記走行履歴に基づいて予測走行時間Tnを演算する(S161)。具体的には、得られた曜日と時刻とが含まれる走行時間帯における前記得られた時刻から当該走行時間帯の最終時刻との間の時間が予測走行時間Tnとして演算される。
【0051】
このようにして、予測充電時間Tcfと予測走行時間Tnが得られると、前述した例(図2参照)と同様に、予測充電時間Tcfと予測走行時間Tnとの比較結果(S17)に応じて、スマートフォン20のバッテリに対する通常充電(S19)と急速充電(S18)との切換えがなされる。そして、所定時間間隔にて(S24)、スマートフォン20のバッテリに対する前述したような充電制御(S131、S132、S14、S15、S161、S17、S18、S19)が、当該バッテリがフル充電状態になるまで(S20でYES)繰り返しなされる。
【0052】
スマートフォン20のバッテリがフル充電の状態になると(S20でYES)、前述した例(図2参照)と同様に、充電が停止され(S21)、バッテリ残量が所定量Enを下回ったときに(S23でYES)、前述した充電制御が再開される。そして、スマートフォン20がコネクタ19から外されると(S22でYES)、スマートフォン20のバッテリに対する充電制御が終了する(END)。
【0053】
図4に示す手順に従った充電制御によれば、特に、ナビゲーションユニット18やスマートフォン20のナビゲーションアプリケーションが起動されていなくても、車両の予測走行時間Tnを得ることができ、前述した例(図2参照)の場合と同様に、その予測走行時間Tnと別途演算される予測充電時間Tcfとの比較結果に基づいて、より多い発熱をともなう急速充電をできるだけ抑えてスマートフォン20のバッテリの寿命をできるだけ損なうことなく、当該バッテリを効率的に充電することができるようになる。
【0054】
更に、処理ユニット11は、図6に示す手順に従ってスマートフォン20のバッテリに対する充電制御を行うことができる。この場合、予測走行時間Tn及び予測充電時間Tcfの更新が所定時間間隔ではなく、スマートフォン20で実行されるアプリケーションの数の増減の有無に応じてなされる。
【0055】
図6において、処理ユニット11は、前述した処理(図2参照)と同様に、スマートフォン20のコネクタ19への接続を確認すると(S11)、スマートフォン20のバッテリに対する通常充電を開始する(S12)。スマートフォン20のバッテリが通常充電されている状況で、車両ナビゲーションにより目的地までの経路案内がなされていると(S13でYES)、処理ユニット11は、予測充電時間Tcf(S14、S15)及び予測走行時間Tnを取得し(S16)、それらの比較結果(S17)に応じて、スマートフォン20のバッテリに対する急速充電(S18)と通常充電(S19)とを切換える。
【0056】
そして、処理ユニット11は、スマートフォン20のバッテリがフル充電状態に達しなければ(S20でNO)、スマートフォン20と通信を行って、当該スマートフォン20で実行されるアプリケーションの数に増減があったか否かを判定する(S25)。その実行されるアプリケーションの数に増減がなければ(S25でNO)、処理ユニット11は、スマートフォン20のバッテリがフル充電状態になったか否かを監視しつつ(S20)、現在の充電能力(急速充電または通常充電)を維持して当該バッテリを充電するように電源回路21及び電流調整回路22を制御する。
【0057】
一方、スマートフォン20で実行されるアプリケーションの数に増減があると(S25でYES)、処理ユニット11は、再び、予測充電時間Tcfと予測走行時間Tnとを取得し(S14〜S16)、それらの比較結果(S17)に応じて、急速充電(S18)及び通常充電(S19)のいずれかにてバッテリの充電がなされるように電源回路21及び電流調整回路22を制御する。
【0058】
例えば、スマートフォン20で実行されるアプリケーションの数が増加した際に再演算される予測充電時間Tcfは、バッテリ残量の減少が早まることにより、比較的大きくなり得る。この場合、通常充電から急速充電に切換り得る、あるいは、急速充電が維持され得る。一方、スマートフォン20で実行されるアプリケーションの数が減少した際に再演算される予測充電時間Tcfは、バッテリ残量の減少が遅くなることにより、比較的小さくなり得る。この場合、急速充電から通常充電に切換り得る、あるいは、通常充電が維持され得る。
【0059】
なお、スマートフォン20のバッテリがフル充電の状態になると(S20でYES)、前述した例(図2参照)と同様に、充電が停止され(S21)、その後、バッテリ残量が所定量Enを下回ったときに(S23でYES)、前述した充電制御が再開される。そして、スマートフォン20がコネクタ19から外されると(S22でYES)、スマートフォン20のバッテリに対する充電制御が終了する(END)。
【0060】
図6に示す手順に従った充電制御によれば、スマートフォン20で実行されるアプリケーションの数に増減がある毎に、予測走行時間Tnとともに予測充電時間Tcfが更新されるので、実行されるアプリケーションの数の増減に応じてスマートフォン20での消費電力が変化しても、より的確な予測充電時間Tcfを得ることができる。その結果、その予測充電時間Tcfと予測走行時間Tnとの比較結果に基づいたバッテリの急速充電と通常充電との切換え制御がより的確なものとなり得る。
【0061】
なお、図6に示す手順に従った処理において、予測充電時間Tcfだけをスマートフォン20で実行されるアプリケーションの数の増減に基づいて再演算し、予測走行時間Tnは、所定時間間隔にて再演算するようにすることもできる。
【0062】
また、前述した各例(図2、図4、図6参照)では、予測充電時間Tcfと予測走行時間Tnとの大小関係に基づいて、通常充電と急速充電とを切換えるようにしてスマートフォン20のバッテリの充電制御を行っているが、前記大小関係、特に、それらの時間差に基づいて、当該バッテリに対する充電能力を連続的に制御する(電流調整回路22からの出力電流量を連続的に制御する)ようにしてもよい。
【0063】
図2または図6に示す従った処理において、ナビゲーションユニット18及びスマートフォン20のナビゲーションアプリケーションのいずれも起動されていない場合(S13でNO)、走行履歴から予測走行時間Tnを演算する図4に示す処理に移行するようにしてもよい。
【0064】
車載機器100に接続される携帯端末は、スマートフォン20に限られず、情報処理機能を備えた携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、ハンディパソコン等であってもよい。
【0065】
スマートフォン20等の携帯端末が、有線ではなく、無線にて車載機器100に接続される構成とすることもできる。この場合、電磁誘導等を利用して携帯端末のバッテリに対する充電を行い得る。
【0066】
前述した各例では、充電装置(電源回路21、電流調整回路22及び処理ユニット11)は、車載機器100側に構成されるものであったが(図1参照)、これに限られず、少なくともその一部の機能をスマートフォン20側に設けることもできる。例えば、図2、図4及び図6に示す手順に従った処理の一部または全部をスマートフォン20側にて行うことができる。この場合、例えば、スマートフォン20は、ステップS12において、通常充電を開始するように車載機器100に要求することにより、処理湯ユニット11が電源回路21及び電流調整回路22を通常充電が開始されるように制御する。また、ステップS18、ステップS19においても、スマートフォン20は車載機器に急速充電及通常充電の要求を行い、その要求に応じて処理ユニット11が電源回路21及び電流調整回路22を制御する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る充電装置は、携帯端末のバッテリの寿命をできるだけ損なうことなく、効率的に当該バッテリの充電ができるという効果を有し、AV・ナビゲーション機器等の車載機器に接続されるスマートフォン等の携帯端末のバッテリに対する充電を行う充電装置として有用である。
【符号の説明】
【0068】
11 処理ユニット
12 操作部
13 表示部
14 記憶部
15 出力回路
16 スピーカ
17 AVユニット
18 ナビゲーションユニット
20 スマートフォン
100 車載機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載機器に通信可能な状態で接続可能であって1または複数のアプリケーションを備えてバッテリ駆動により各アプリケーションの実行が可能な携帯端末の前記バッテリに対する充電を行う充電装置であって、
前記携帯端末のバッテリを充電する充電手段と、
前記充電手段が前記バッテリを所定の充電能力にて充電した際の基準蓄電量に達するまでの予測充電時間を取得する予測充電時間取得手段と、
自車両が現在地から目的地まで走行する際の予測走行時間を取得する予測走行時間取得手段と、
前記予測充電時間と前記予測走行時間とを比較する時間比較手段と、
該時間比較手段での比較結果に応じて、前記充電手段の前記バッテリに対する充電能力を制御する充電制御手段とを有する充電装置。
【請求項2】
前記充電手段、予測充電時間取得手段、予測走行時間取得手段、時間比較手段及び充電制御手段は、前記車載機器側に設けられた請求項1記載の充電装置。
【請求項3】
前記充電制御手段は、前記比較手段にて前記予測充電時間が前記予測走行時間以下であるという比較結果が得られたときに、前記バッテリが前記所定の充電能力以下の第1の充電能力で充電されるように前記充電手段を制御する請求項1または2記載の充電装置。
【請求項4】
前記充電制御手段は、前記比較手段にて前記予測充電時間が前記予測走行時間より大きいという比較結果が得られたときに、前記バッテリが前記所定の充電能力より高い第2の充電能力で充電されるように前記充電手段を制御する請求項1乃至3のいずれかに記載の充電装置。
【請求項5】
前記第1の充電能力は前記所定の充電能力と同じに設定される請求項3記載の充電装置。
【請求項6】
前記予測充電時間取得手段は、前記携帯端末との通信により前記バッテリの容量及び現在の残量に関する情報を含むバッテリ情報を取得する手段と、
前記取得されたバッテリ情報に基づいて前記予測充電時間を演算する演算手段とを有する請求項1乃至5のいずれかに記載の充電装置。
【請求項7】
前記車載機器は、ナビゲーションユニットを有し、
前記予測走行時間取得手段は、自車両の経路誘導処理を行う前記ナビゲーションユニットが演算する現在地から目的地までの予測走行時間を取得する請求項1乃至6のいずれかに記載の充電装置。
【請求項8】
前記携帯端末が搭載するナビゲーションアプリケーションを実行させて自車両の経路誘導処理をさせ、
前記予測走行時間取得手段は、自車両の経路誘導処理を行う前記ナビゲーションアプリケーションにより演算される現在地から目的地までの予測走行時間を前記携帯端末との通信により取得する請求項1乃至6のいずれかに記載の充電装置。
【請求項9】
車両の走行時間帯を含む走行パターン情報を格納する手段を有し、
前記予測走行時間取得手段は、前記走行パターン情報に基づいて前記予測走行時間を取得する請求項1乃至6のいずれかに記載の充電装置。
【請求項10】
前記予測充電時間取得手段及び前記予測走行時間取得手段の少なくとも一方は、所定の時間間隔にて前記予測充電時間または及び前記予測走行時間を取得する請求項1乃至9のいずれかに記載の充電装置。
【請求項11】
前記携帯端末が実行するアプリケーションの数に増減があったか否かを判定する判定手段と、
該判定手段により前記携帯端末が実行するアプリケーションの数に増減があったとの判定がなされたときに、前記予測充電時間取得手段及び前記予測走行時間取得手段の少なくとも一方は、前記予測充電時間または及び前記予測走行時間を取得する請求項1乃至9のいずれかに記載の充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−151946(P2012−151946A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7263(P2011−7263)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】