説明

光ケーブルおよびこれを使用した光干渉画像診断装置

【課題】外的ストレスが加えられても内部の光ファイバーへの影響を回避する
【解決手段】シース20の中空内に空隙20aを有するように挿着された光ファイバー30と、光ファイバーの一部をシース内面に固定する充填部材40とで構成する。光ファイバーの他部は開放する。シース側に曲げ、伸縮などのストレスが加わっても、内部の光ファイバーまでにはそのストレスが伝わることがない。仮に、シースが伸縮して僅かに伸びたとしても光ファイバーの一端は解放されているので、シースの伸縮に伴って光ファイバーも伸縮することはない。したがって印加ストレスによる影響が光ファイバーに伝わることを回避できるので、光ファイバーの長さを常に一定に保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブルおよびこれを使用した光干渉画像診断装置に関する。詳しくは、光ケーブルを光ファイバー本体とその保護用シースで構成するとき、保護用のシースに曲げ、伸縮などの外的ストレスが加えられても、光ファイバー本体にはこの外的ストレスが加わらず、光ファイバー本体の伸縮に影響を与えにくい光ケーブル等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、動脈硬化の診断や、バルーンカテーテル、ステント等の高機能カテーテルによる血管内治療時の術前診断、あるいは術後の結果確認のためにカテーテル型の画像診断装置が広く使用されている。
【0003】
画像診断装置の一例として、血管内超音波診断装置(IVUS:Intra Vascular Ultra Sound)が挙げられる。一般に血管内超音波診断装置は、血管内において超音波振動子を内蔵するプローブをラジアル走査させ、血管内の生体組織で反射された反射波(超音波エコー)を同じ超音波振動子で受信した後、増幅、検波等の処理を施すことで生成された超音波エコーの強度に基づいて、血管の断面画像を取得するものである。
【0004】
さらに最近では、より高解像度の断面画像を取得すべく、光の可干渉性を利用して画像診断を行う光干渉画像診断装置(OCT:Optical Coherent Tomography)の開発が進められている。
【0005】
光干渉画像診断装置は、血管内の生体組織に低コヒーレンス光(信号光)を入射したときの生体組織表面及び内部からの反射光と、これとは別に低コヒーレンス光を分光し光路長を合わせた参照光とを重ね合わせることで、生体組織の深さ方向の特定の点からの反射光を抽出し、これを電気信号に変換した後、画像情報に変換することで血管の断面画像を取得するものである。
【0006】
さらに最近では、光干渉画像診断装置の改良型である、波長掃引利用の光干渉画像診断装置(OFDI)の開発も進められている。波長掃引利用の光干渉画像診断装置(OFDI)は、血管内の生体組織に入射するコヒーレンス光の波長を連続的に変化させることで、生体組織の深さ方向の各点からの反射光を周波数成分の違いに基づいて抽出し、これを用いて血管の断面画像を取得するものである。波長掃引利用の光干渉画像診断装置(OFDI)の場合、光干渉画像診断装置(OCT)と比較して、参照光の光路長を連続的に可変させるための可動部をなくすことができるという利点がある。
【0007】
このようなOCTやOFDI等のいわゆる光干渉画像診断装置においては、周知のようにコヒーレンス光を伝送するために光ファイバーを使用している。光ファイバーは、超音波画像診断装置でいう電気伝送線であり、回転駆動力を伝達する駆動シャフト内に挿入されており、一部が駆動シャフトに固定されている。
【0008】
この光干渉画像診断装置において、超音波画像診断装置でいう超音波振動子に相当する部分は、光ファイバー先端部に形成されているスペーサ、ロッドレンズおよびプリズム等の光学部品であり、当該光学部品により光ファイバーから発散された光が集束され、さらに駆動シャフトに対してほぼ直角方向に曲げられた状態で生体に出射される。
【0009】
ところで、このような光干渉画像診断装置などにあっては、特許文献1や特許文献2にも開示されているように、上述したように信号光を被測定物である生体に照射して得られた戻り光(反射光)と、参照光とを干渉させることで光干渉画像を得るようにしている。
【0010】
この光路系を簡単に説明すると、図20のように光源から出射した低コヒーレンス光Laはこの光Laを分岐するための分岐部(ビームスプリッタ)BSによってサンプル光Loと参照光Lrとに分岐される。分岐されたサンプル光Loは被測定物である生体組織に照射される。生体組織より反射した戻りのサンプル光(戻り光)Loは再びビームスプリッタBSに入射する。
【0011】
一方、ビームスプリッタBSによって分岐された参照光Lrは参照用のミラーRMによって反射されて再び同一光路を経てビームスプリッタBSに入射する。ここで、ビームスプリッタBSから生体組織(表面)までの光路長Loと、ビームスプリッタBSから参照ミラーRMまでの光路長Lrとが略等しくなるように設計されている。
【0012】
ビームスプリッタBSに入射した参照光Lrと戻りのサンプル光Loとが光干渉し、光干渉した光が、光検出器PDに入射する。光検出器PDに入射した光干渉した光が検波され、復調されることで、生体組織の組織断面の画像を取得できる。
【0013】
なお、光ファイバーを可撓管の中空内に配置する構成は、特許文献3および特許文献4に開示されている。
【0014】
【特許文献1】特開2001−272332号公報
【特許文献2】特開2003−35660号公報
【特許文献3】特開2000−321472号公報
【特許文献4】特開平8−262287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、特許文献1の図8および特許文献2の図4には、詳しく説明されていないが、光干渉画像診断装置にあっては、上述した光干渉画像を得るために光路系は何れも光ファイバーで結ばれる。そのうち、光源、光源からビームスプリッタBSまでの光路となる光ファイバー、ビームスプリッタBSから参照用ミラーまでの光路となる光ファイバーおよび参照用ミラーは、何れも装置の内部に収納される。
【0016】
これに対して、生体組織を観察するための信号光を扱う光ファイバーは、その一部を必ず光干渉画像診断装置(以下装置本体という)の外に導出しなければならない。また、上述したように生体組織をラジアル走査するためには、生体組織内に進入させたカテーテルシースの先端部まで到達する駆動シャフトを、光ファイバーと共にカテーテルシース内に挿着する必要がある。
【0017】
駆動シャフトに駆動力を伝達するため、装置本体外にはモータ駆動装置を有するスキャナ(場合によってはプルバック付きのスキャナ)が取り付けられる。このスキャナを設置する関係から装置本体側に導出された光ファイバーは一旦このスキャナの入力端側に連結される。そして、このスキャナを介してカテーテル装置に連結される。
【0018】
スキャナは通常装置本体とは別体構成であり、またスキャナと装置本体との間に配される光ファイバーは、その一端がスキャナ側に連結されているため、この光ファイバーの他端に設けられた光コネクタを、装置本体側に設けられた光コネクタに連結することで低コヒーレンス光La、サンプル光Loの光路を形成するようにしている。
【0019】
スキャナがない光干渉画像診断装置においても、使い捨てか、その都度消毒が必要なカテーテル装置と信号光用の光ファイバーとは、それぞれ着脱自在であるのが望ましく、それらの連結を装置本体の外部で行う必要があり、そのためには装置本体外に導出される光ファイバーも光コネクタ付きの光ファイバーを使用する必要がある。
【0020】
この光干渉画像診断装置のように光ファイバーを使用して画像診断を行う場合には、装置本体とカテーテル装置との間、あるいは装置本体とスキャナとの間を、光ファイバーで連結する作業を行う必要がある。
【0021】
ここで、光ファイバーとしては、後述のようにコアとクラッドおよび保護チューブからなる光ファイバー本体(光ファイバー芯線)か、クラッドと保護チューブとの間にさらに緩衝層(シリコーン樹脂などを使用)を介在させた光ファイバー本体(光ファイバー芯線)を使用するか、これらの光ファイバー本体にテンションメンバーとしての抗張力繊維と保護用のチューブをさらに被覆した抗張力型光ファイバー本体(抗張力型光ファイバー芯線)が使用される。
【0022】
光ファイバー本体そのものは張力が弱く、抗張力型光ファイバー本体の場合でも充分な張力が得られないので、ファイバーの曲げや伸縮に弱い。特に、光ファイバー本体に伸縮力が加わると、光ファイバー本体(特に、その芯線(コア))が僅かに伸縮するおそれがある。このような伸び縮みが起きると、サンプル光として取り扱う光路長が変化してしまう。この光路長に僅かな変化が発生した場合、目的とした干渉を得られないことになり、最悪の場合は最早光干渉後の光から光干渉画像を取得することは不可能になる。
【0023】
それは次のような理由による。上述した光源として使用されるのは、低干渉性光源(超高輝度発光ダイオード等)である。低干渉性光源はその波長が1310nm程度で、その可干渉距離(コヒーレント長)が数μm〜10数μm程度であるような短い距離範囲でのみ干渉性を示す低コヒーレンス光を出力する。
【0024】
このため、この光を2つに分岐した後、再び重ね合わせた場合には分岐した点から重ね合わせる点までの2つの光路長の差が17μm程度の短い距離範囲内の場合に干渉光として検出されるが、それよりも光路長の差が大きくなってしまうと、最早干渉光として検出されないからである。
【0025】
したがって、装置本体の外側で配線された光ファイバーについては、その取り扱いは相当慎重でなければならない。しかし、実際問題として、サンプル光を取り扱う光ファイバーに全くストレス(曲げ、伸縮等を含む。以下外的ストレスという)を掛けずに、光干渉画像診断装置に対する連結作業(取り付け、取り外し作業)や保管作業を行ったり、さらには実際の診断行為などを遂行することは殆ど不可能に近い。
【0026】
知らず知らずのうちに、何らかの外的ストレスが必ずかかり、それに伴って光ファイバーの伸びが発生してしまう。このような外的ストレスがかかると、光干渉画像が乱れてしまう。したがって、光ファイバー自体に外的ストレスが加わらないように工夫する必要がある。
【0027】
なお、特許文献3や特許文献4には可撓管の空洞の中に光ファイバーを設置する構成が開示されている。光干渉画像診断装置に用いる光ファイバーは、装置の構成上光コネクタ部を設ける必要があるが、特許文献3や特許文献4では光コネクタ部を設けるのに望ましい構造にはなっていない。
【0028】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、特に挿着された光ファイバー本体に対する外的ストレスによる影響を回避できる光ケーブルおよびこれを使用した光干渉画像診断装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載したこの発明に係る光ケーブルは、中空をなすシースと、
上記中空内に介挿された光ファイバーと、
上記シースの内面と上記光ファイバーとの間の一部に充填された充填部材とからなり、
上記充填部材によって上記光ファイバーが空隙を保持した状態で上記シース内に固定されたことを特徴とする。
【0030】
また、請求項8に記載したこの発明に係る光干渉画像診断装置では、光干渉画像診断装置本体内で生成された光干渉用として使用されるサンプル光と参照光のうち、上記サンプル光を入出力する外部入出力用光コネクタと、
上記外部入出力用光コネクタを介して上記サンプル光を被測定物側に伝送すると共に、上記被測定物よりの反射光を伝送して上記外部入出力用光コネクタに導く光ケーブルとからなり、上記光ケーブルは、
中空をなすシースと、
上記中空内に空隙を保持した状態で介挿された光ファイバーと、
上記シースの内面と上記光ファイバーとの間の一部に充填された光ファイバー固定用の充填部材と、
上記充填部材側に設けられた、上記外部入出力用光コネクタに連結される光コネクタとで構成されることを特徴とする。
【0031】
この発明では、中空シース内に空隙を持たせた状態で光ファイバーが挿着され、光ファイバーの一部が中空シース内に充填部材を介して固定されているので、仮にシース側に曲げ、伸縮などの外的ストレスが加わっても、内部の光ファイバーまでにはそのストレスが伝わることがない。仮に、保護用のシースが伸縮して僅かに伸びたとしても光ファイバーの一端が開放されているので、シースの伸縮に伴って光ファイバーも伸縮することはない。したがって外的ストレスによる影響が光ファイバーに伝わることを回避できるので、光ファイバーの長さを常に一定に保持できる特徴を有する。
【0032】
また、このような光ケーブルを光干渉画像診断装置に適用する場合には、この光ケーブルを装置に取り付けたり、取り外したりする作業時にこの光ケーブルに外的ストレスが加わっても、シース内の光ファイバーには影響を与えることがない。そのため、予め設定された光干渉用の光路長を保持できるから、常に正確な光干渉画像を取得できる。
【発明の効果】
【0033】
この発明に係る光ケーブルでは、中空のシース内に光ファイバーを挿着すると共に、光ファイバーの一部のみを充填部材を介してシース内面に固定したものである。
【0034】
これによれば、光ファイバーの一部を充填部材を介してシース内面に固定した構造とすることにより、光ファイバーと光コネクタの接続及び固定が容易な構造になる。また中空のシース内に光ファイバーを挿設することにより、シースに曲げ、伸縮などの外的ストレスが加わっても、その影響が内部の光ファイバーまで伝達するおそれがない。仮に外的ストレスが光ファイバーに伝達されたとしても、光ファイバーの一端側はシースに対して解放されているので、外的ストレスがそのまま光ファイバーに伝わることはない。
【0035】
この発明に係る光干渉画像診断装置によれば、上述した光ケーブルを使用しているので、光ケーブルの取り付け、取り外しなどの作業中にシースに外的ストレスが加えられたとしてもその外的ストレスによる光ファイバーへの影響をほぼ確実に回避できるから、光ファイバーの光路長を予め規定された光路長に保持できる特徴を有する。その結果、良好な光干渉画像を取得できる特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
続いて、この発明に係る光ケーブルおよびこれを使用した光干渉画像診断装置の好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明する。光干渉画像診断装置としては、(OCT)に適用した場合について説明するが、波長掃引利用の光干渉画像診断装置(OFDI)にも適用できることはいうまでもない。
【実施例1】
【0037】
図1は本発明を適用したカテーテル装置を備える光干渉画像診断装置(OCT)100の外観構成を示す図である。
【0038】
この光干渉画像診断装置100は、カテーテル装置101と、スキャナ/プルバック部102と、操作制御装置103とを備え、スキャナ/プルバック部102と操作制御装置103とは、信号線10により接続されている。信号線10は後述するようにこの発明にかかる光ケーブルを適用できる。
【0039】
ここで光ケーブルは、後述するように中空シースと、この中空シースに内挿された光ファイバーと、光ファイバーの一端を中空シースに固定する充填部材とで構成されたものである。光ファイバーを中空シースに充填部材を介して固定するのは、この光ケーブルを光コネクタなどに接続及び固定できるようにするためである。
【0040】
光ファイバーは、後述のようにコアとクラッドおよび保護チューブからなる光ファイバー本体(光ファイバー芯線)か、クラッドと保護チューブとの間にさらに緩衝層(シリコーン樹脂などを使用)を介在させた光ファイバー本体(光ファイバー芯線)を使用する場合と、これらの光ファイバー本体に抗張力型繊維としての抗張力用繊維と保護用のチューブをさらに被覆した抗張力型光ファイバー本体(抗張力型光ファイバー芯線)を使用する場合が考えられる。
【0041】
カテーテル装置101は、直接血管内に挿入され、光学部品(図示せず)を介して出射されるコヒーレンス光の反射光を用いて血管内の状態を観察する。スキャナ/プルバック部102はカテーテル装置101に一端に設けられたハブ106に連結される。
【0042】
そして、後述するようにハブ106内の駆動シャフト端部に設置された光コネクタ部と、スキャナ/プルバック102内に備えられた光アダプタとが互いに接続される。スキャナ/プルバック部102内の駆動機構を駆動することによってカテーテル装置101内の駆動シャフトをラジアル走査させる。
【0043】
操作制御装置103は、CPUを備えた制御部で構成され、血管内の光干渉画像診断を行うにあたり、各種設定値を入力するための機能や、測定により得られたデータを処理し、断面画像として表示するため機能を有する。
【0044】
図2は、図1に示した光干渉画像診断装置100の機能構成を示す図である。
【0045】
超高輝度発光ダイオード等の低干渉性光源209は、その波長が1310nm程度で、その可干渉距離(コヒーレント長)が数μm〜10数μm程度であるような短い距離範囲でのみ干渉性を示す低コヒーレンス光を出力する。
【0046】
このため、この光を光カプラー部(ビームスプリッタBS)で2つに分岐した後、再び重ね合わせた場合には、分岐した点から重ね合わせた点までの2つの光路長の差が17μm程度の短い距離範囲内の場合には干渉光として検出されるが、それよりも光路長の差が大きい場合には干渉光として検出されない。
【0047】
ここで、血管などの被測定物からの反射光をうるコヒーレンス光をサンプル光とし、他方基準の測定物(被測定物である参照物)からの反射光を得るコヒーレンス光を参照光として説明する。分岐点でのサンプル光の光路長Loと、参照光の光路長Lrとがコヒーレント長以上にずれた場合には、最早光干渉による画像は得られずノイズとなる。
【0048】
低干渉性光源209の光は、第1のシングルモードファイバー(光ファイバー)228の一端に入射され、その先端面側に伝送される。第1のシングルモードフアイバー228は、途中の光カプラー部208で第2のシングルモードファイバー(光ファイバー)229と光学的に結合されている。従って、この光カプラー部208はビームスプリッタとして機能し、光は2つに分岐されて伝送される。
【0049】
第1のシングルモードファイバー228の光カプラー部208より先端側の第1のシングルモードファイバー228aの先端部の光コネクタ230はアダプタ240に連結される。またアダプタ240には光ケーブル10に設けられた光コネクタ70が連結される。光ケーブル10は診断装置103と、装置外に設けられたスキャナ/プルバック部102とを連結するためのケーブルである。
【0050】
この光ケーブル10としては、サンプル光のみを伝送するための光ファイバーで構成したケーブルが使用される場合の他に、スキャナ/プルバック部102内の回転機構を駆動したりするときに使用する電気ケーブル(信号線)や、カテーテル装置101を制御するための制御信号を伝達する制御信号線などを光ファイバーと一体化した複合光ケーブルが使用される場合がある。
【0051】
スキャナ/プルバック部102には、図2に示すように非回転部(診断装置側)と回転部(カテーテル装置101側)との間を結合しながら光を伝送するための光ロータリージョイント203が設けられている。
【0052】
光ロータリージョイント203内の先端側(回転部側)には、カテーテル装置101に設けられた図示しない光コネクタが着脱自在に連結される。この連結によって、カテーテル装置101の先端部に設けられた光学部品201と接続され、回転駆動可能な第3のシングルモードファイバー(光ファイバー)231に対して、光ケーブル10を介して低干渉性光源209からのサンプル光を伝送することができる。
【0053】
第3のシングルモードファイバー231に伝送された光は、光学部品201の先端側から体腔内の生体組織側にラジアル走査しながら照射される。そのため、光ロータリージョイント203の回転部側は回転駆動装置204のラジアル走査モータ205により回転駆動される。また信号処理部214によってモータ制御回路225が制御され、ラジアル走査モータ205の回転駆動が制御される。
【0054】
生体組織側の表面あるいは内部で散乱した反射光の一部は光学部品201により取り込まれ、逆の光路を経て光ケーブル10および第1のシングルモードファイバー228a側に戻り、光カプラー部208によりその一部が第2のシングルモードファイバー229側に分岐し、第2のシングルモードファイバー229の一端から光検出器(例えばフオトダイオード)210に入射される。ラジアル走査モータ205の回転角度は、エンコーダ部206により検出される。
【0055】
スキャナ/プルバック部102はプルバック用の直線駆動装置207を備え、信号処理部214からの指示に基づいて、カテーテル装置101の挿入方向(体腔内の末梢方向およびその反対方向)の動作(駆動軸方向への移動)を規定している。駆動軸方向への移動は、信号処理部214からの制御信号に基づいて、直線駆動モータ207が動作することにより実現される。
【0056】
第2のシングルモードファイバー229の光カプラー部208より先端側のファイバー(先端側光ファイバーという)229aには、参照光の光路長を可変するための光路長可変機構216が設けられる。
【0057】
光路長可変機構216は生体組織の深さ方向の検査範囲に相当する光路長を高速に変化させる第1の光路長変化手段と、装置の個体差による光路長のばらつきを吸収するための第2の光路長変化手段とを備えている。
【0058】
先端側光ファイバー229aの先端に対向して、この先端とともに1軸ステージ220上に取り付けられ、矢印223に示す方向に移動自在のコリメートレンズ221を介して、グレーティング(回折格子)219が配置されている。また、このグレーティング219と対向するレンズ218を介して微小角度に亘り回動可能なガルバノメータミラー217が、第1の光路長変化手段として取り付けられている。このガルバノメータミラー217はガルバノメータコントローラ224により、矢印222方向に高速に回転駆動される。
【0059】
ガルバノメータミラー217はガルバノメータのミラーにより光を反射させるものであり、参照ミラーとして機能する。ガルバノメータに交流の駆動信号を印加することによりその可動部分に取り付けたガルバノメータミラー217を高速に回転(回動)できるように構成されている。
【0060】
つまり、ガルバノメータコントローラ224より、ガルバノメータミラー217に対して駆動信号が印加され、該駆動信号により矢印222方向に高速に回転することで、参照光(基準光)の光路長が、生体組織の深さ方向の検査範囲に相当する光路長だけ高速に変化することとなる。
【0061】
一方、1軸ステージ220は第2の光路長変化手段を形成する。この1軸ステージ220はオフセットを調整する調整手段としての機能も備えている。
【0062】
光路長の可変機構216で光路長が変えられた光(参照光)は、第2のシングルモードファイバー229の途中に設けた光カプラー部208で、第1のシングルモードファイバー228a側から漏れた光(サンプル光)と重ね合わされ、その干渉光がフオトダイオード210にて受光される。
【0063】
フオトダイオード210にて受光された光(干渉光)は光電変換され、アンプ211により増幅された後、復調器212に入力される。この復調器212では干渉した光の信号部分のみを抽出する復調処理を行い、その出力はA/D変換器213に入力される。
【0064】
A/D変換器213では、干渉光信号を200ポイント分サンプリングして1ラインのデジタルデータ(干渉光データ)を生成する。サンプリング周波数は、光路長の1走査の時間を200で除した値である。
【0065】
A/D変換器213で生成されたライン単位の干渉光データは、信号処理部214に入力される。この信号処理部214では深度方向の干渉光データを画像信号に変換することにより、血管内の各位置での断面画像を形成し、所定のフレームレートでLCDモニタ226に出力する。
【0066】
信号処理部214は、ガルバノメータミラー(参照ミラー)217の光路長の走査を制御するガルバノメータコントローラ224と接続され、ガルバノメータコントローラ224は信号処理部214へ駆動信号を出力し、モータ制御回路225はこの駆動信号に基づいてガルバノミラー217と同期を取りながら、ラジアル走査が行われるように制御している。
【0067】
図3は、カテーテル装置101の先端部の駆動シャフト105の先端部分を横方向から見た場合の断面図である。図3に示すように、カテーテル装置101の先端部は、駆動シャフト105がカテーテルシース301の内部に挿入された構成となっている。
【0068】
駆動シャフト105は、多層密巻きコイル構造であるコイルシャフト302を有し、コイルシャフト302の先端側にはハウジング303が固定されている。コイルシャフト302の内部には第3のシングルモードファイバー231(以下、「光ファイバー304」と称す)が挿入されており、光ファイバー304の先端部分には、光ビームを発散、集束し、直角方向(略直角方向を含む)に曲げる第1の光学部品305が取り付けられている。第1の光学部品305は、スペーサ306、セルフオックレンズ307、プリズム308から構成される。
【0069】
駆動シャフト105の先端部には、X線透視下において駆動シャフト105の先端部の位置が確認できるようにするための造影マーカ309が備えられている。
【0070】
第1の光学部品305の取り付けは、紫外線硬化型接着剤などのハンドリング性の高い接着剤による接着、もしくは光ファイバー溶融接続機による溶融接続手法により行うことができる。
【0071】
図4は、図3において、光ビームが光ファイバー304内を伝送された場合の光線軌跡を模式的に示した説明図である。
【0072】
光ファイバー304は、屈折率の高い中心部分であるコアと、コアの周りにあって、コアよりも1%前後だけ屈折率が低いクラッドと、このクラッドを覆う保護チューブからなり、光ビーム400はコアとクラッド部との境界面を全反射しながら伝わっていく。
【0073】
光ファイバー304の先端部に到達した光ビームは、隣接して接続されたスペーサ306内で発散される。スペーサ306内で発散された光ビーム400は、スペーサ306に隣接して接続されたセルフオックレンズ307内で屈折され、集束された光ビームとなる。
【0074】
集束された光ビーム400aはプリズム308でほぼ直角方向に曲げられる。プリズム308と媒質(空気)境界面で屈折して光ビーム400bとなり、ハウジング303の開口部402を通過する。
【0075】
開口部402を通過した光ビーム400bは、媒質(空気)401とカテーテルシース301との境界面で屈折し、光ビーム400cとなる。光ビーム400cは、カテーテルシース301と媒質(血液を置換した生理食塩水)404との境界面で屈折し、光ビーム400dとなり、媒質(血液を置換した生理食塩水)404を通過後、血管などの生体組織403に照射される。
【0076】
生体組織403で反射した光は、上述したように同じ光路を辿りながらハブ106内の光コネクタおよび光ロータリージョイント203を介して光ケーブル10側に戻り、さらに光コネクタ70,230および第1のシングルモードファイバー228aを介して光カプラー部208に信号光として到達する。
【0077】
さて、このような光干渉を利用して画像の診断を行う診断装置にあっては、上述したように特にサンプル光Loと参照光Lrの光路長が一致していないと正しい干渉光から画像を生成することができない。参照光Lrは診断装置103内に収納された第2のシングルモードファイバー229から得られるのに対して、サンプル光Loは診断装置103の外部に接続された光ケーブル10(又は複合光ケーブル)およびカテーテル装置101を介して得られるため、光ケーブル10およびカテーテル装置101における光ファイバーの僅かな伸び縮みが問題となる。
【0078】
カテーテル装置101内の光ファイバー304はコイルシャフト302に保護されているため光ファイバーの伸縮はあまり問題とはならない。これに対して、診断装置本体103とスキャナ/プルバック部102は光ケーブル10で連結され、スキャナ/プルバック部102は診断装置本体103から離れた場所でも使用できるようになっているから、ケーブル使用時にこの光ケーブル10には曲げや、伸縮などの外部ストレスが加わりやすい環境下にある。
【0079】
前述した光ファイバー本体、抗張力型光ファイバー本体の何れの構造の光ファイバーを使用しても外的ストレスが加わると、比較的簡単に伸びたり、縮んだりしてしまう。光ケーブル10の取り付け作業中や、使用中(光干渉画像取得中)に、光ケーブルの伸縮が起きると光干渉距離が変動する。光干渉距離が変動すると、最悪の場合には、最早光路長可変機構216ではその伸びなどを吸収できなくなり、干渉画像を得ることができなくなってしまう。そのため、外的ストレスが加えられても光ファイバーへの影響を回避できる光ケーブル10を使用しなければならない。
【0080】
光ファイバーを外的ストレスから保護できるようにしたのが、この発明に係る光ケーブル10である。外的ストレスを回避できる光ケーブル10の一例を以下に示す。
【0081】
図5は、その用途が限定されないこの発明に係る光ケーブル10の基本構成を示す概念図である。まず、基本概念図から説明する。
【0082】
図5において、この発明に係る光ケーブル10は中空の保護用シース20と、その中空内に挿着された光ファイバー30と、光ファイバー30の一部をシース20の内側に固定する充填部材40とで構成される。
【0083】
シース20は、簡単には変形しない程度の柔軟さを持った樹脂チューブが用いられる。この中空のシース20の内腔に所定の空隙を保持しながら光ファイバー30が挿着される。
【0084】
光ファイバー30としては、上述したようにコアとクラッドからなるファイバー素線及び緩衝層に対してその外周面が保護チューブで覆われた光ファイバー本体30aか、この光ファイバー本体30aの外側に抗張力繊維(テンションメンバー)と保護チューブで被覆された抗張力型光ファイバー本体(光ファイバーコード)の何れかを使用することができる。
【0085】
図5に示す例は、図6および図7の各断面図からも明らかなように、抗張力繊維等を有しない光ファイバー本体30aが、光ファイバー30として使用されている。
【0086】
光ファイバー30の外径はシース20の内径よりも小さく、充分な空洞が生ずる大きさに選定される。一例として、光ファイバー30の外径が0.8mm程度のものを使用したときには、シース20の内径は3.0mm程度のチューブが使用される。
【0087】
光ファイバー30の一部は充填部材40によってシース20内に固定される(図5および図6参照)。光ファイバー30をシース20に挿着固定する必要があるためである。また、光ファイバーを光コネクタなどに接続できるようにするためである。
【0088】
この例では、シース20の右端部側に充填部材40が充填されて、光ファイバー30がシース20に固定される。光ファイバー30の他方は充填部材がなく、開放されている(図7参照)。充填部材40としては樹脂や接着剤、さらには抗張力繊維などを使用できる。
【0089】
このようにシース20の中空20a内に光ファイバー(光ファイバー本体)30を挿着し、光ファイバー30の一部を充填部材40を介してシース20に固定すると共に、他方を空隙内に開放した光ケーブル10とすることで、シース20に外的ストレスが加わっても内部の光ファイバー30にはその影響が及ばないようにしている。
【0090】
例えば、図8に示すようにシース20が波打つような外的ストレスがシース20に加えられたときでも、光ファイバー30にはその外的ストレスが伝達されにくくなる。また、シース20を延ばすような外的ストレスが加えられると、僅かにシース20も伸びることになるが、シース20がたとえ伸びたとしても、それにつれて光ファイバー30が伸びるようなことはない。
【0091】
光ファイバーとして、抗張力型の光ファイバーを使用した場合を図9に示す。抗張力型では光ファイバー本体30aの外側が、さらに抗張力繊維(テンションメンバー)32と保護チューブ34によって被覆された線状体が、抗張力型光ファイバー50となる。
【0092】
図9に示すように、抗張力型の光ファイバー50を使用する場合、抗張力型光ファイバー50の外径よりも大きな内径を有するシース20が使用されると共に、このシース20と光ファイバー50とシース20との間の一部に充填された充填部材40とで、光ケーブル10が構成される。この充填部材40によって光ファイバー50がシース20の内面に固定される。
【0093】
充填部材40は図示するようにあくまでもシース20の内面の一部のみに充填され、したがってその他の部分は空隙となるから、図9のA−A断面は図10のようになり、B−B断面は図11のようになる。
【0094】
充填部材40としては、上述したように接着剤などが使用される。
【0095】
このようにシース20の端面側に充填部材40を用いて光ファイバー50を固定した光ケーブル10の場合には、図9に示すように充填部材40によって光ファイバー本体30aがシース20内面に固定された側の光ファイバー50に、光コネクタ70などを直接接続して使用することができる。
【0096】
図9ではシース20と光コネクタ70とは固定されていないが、シース20の端面を延長し、その延長端部を光コネクタ70に接続固定した構成とすることもできる。
【0097】
このような抗張力型の光ファイバー50を使用しても、シース20と抗張力型光ファイバー50との間には所定の空隙が生ずるので、図9に示すような断面構成となり、所定の空洞内に光ファイバー50を配置できる。そのため、シース20に加わる外的ストレスから光ファイバー50をほぼ確実に保護できる。
【0098】
図12は抗張力型光ケーブル10を図2に示す光干渉画像診断装置100用の信号線に適用した場合を示す。したがって、図12の左側にスキャナ/プルバック部102が位置し、図示はしないがその右側に診断装置100の本体103が位置することになる。光ケーブル10にはその右端側に光コネクタ70が設けられる。光ケーブル10としては抗張力型の光ファイバー50を使用した場合である。
【0099】
光ケーブル10の端部に光コネクタ70を接続する場合、光ケーブル10内の光ファイバー50が光コネクタ70側まで延在される。光ケーブル10内の光ファイバー50は抗張力型の光ファイバーが使用されるものの、シース20と光コネクタ70との間だけ、抗張力繊維32および保護チューブ34がそれぞれ被覆されている。
【0100】
保護チューブ34と光ファイバー本体30aとの間に抗張力繊維32が被覆されていることによって、光コネクタ70を取り付けるのに適した強度を有することになる。また、抗張力繊維32の一部を充填部材40として使用しているので、この充填部材40によって光ファイバー50と光コネクタ70との接続固定が可能になる。
【0101】
また、シース20の右端部の内部までが抗張力繊維32と保護チューブ34で被覆され、抗張力繊維32の遊端部32aが保護チューブ34の外面に折り返されている。この折り返された遊端部32aが充填部材40として機能する。シース20の右端部以外の中空内部は、抗張力繊維32や保護チューブ34が何れも剥離された光ファイバー本体30aのみが臨む。
【0102】
光ケーブル10の他端つまり左端部はスキャナ/プルバック部102に接続される。そのため、この例ではスキャナ/プルバック部102の筐体102aを構成する枠部110に穿設された挿通孔112に、光ケーブル10のシース20が固定部材114を介して挿着固定される。シース20内の光ファイバー本体30aの先端部30bは、枠部110内に固定された光ロータリージョイント203に、その冗長線部30cを持たせた状態で連結される。
【0103】
光ファイバー本体30aの冗長線部30cは、光ファイバー本体30に外的ストレス(例えば伸縮)が加わったようなときでも、その外的ストレスを吸収できるようにするための余剰線部である。そのため、冗長線部30cはフリーな状態で枠部110内に収納されている。
【0104】
このように光ケーブル10のうちシース20の端部をスキャナ/プルバック部102側に固定し、シース20の一方の端部(右端部)を光コネクタ70側に固定する。このとき、光ファイバー50はシース20の右端部側のみに固定され、光ファイバー50の先端部30bが光ロータリージョイント203に機械的および光学的に連結される。
【0105】
なお、光カプラー部208を基準にしてサンプル光Loが伝送する光路長(ファイバー長)と、参照光Lrが伝送する光路長(ファイバー長)とは、冗長線部30cと第2のシングルモードファイバー229aの冗長線部231を含めた状態で、互いに等しくなるように選定されるのは言うまでもない。
【0106】
このように構成した場合には、診断装置102への光ケーブル10の取り付け、取り外し作業中や、保管作業中、あるいは光ケーブル10の使用中(診断画像取得中)のとき、光ケーブル10を構成するシース20に外的ストレスが加わっても、シース20内の光ファイバー50には、殆どその外的ストレスが加わらない。
【0107】
特にシース20を引き延ばすような外的ストレスが加えられても、その外的ストレスは光ファイバー50には伝わらない。仮に光ファイバー50にその外的ストレスが伝達されたとしても、光ファイバー50の一端側は開放されているので、光ファイバー50が伸びた状態を保つことはない。その結果、光ケーブル10を含めてサンプル光の光路長を常に規定の長さに保持することができる。
【0108】
図13は図12の変形例を示す。
図13は、シース20と光ファイバー50との間に充填される充填部材40とシース20との固定手段の一例を示す。この例ではカシメによって光ファイバー50をシース20に固定する例が示されている。
【0109】
そのため、シース20の右端面に対向する保護チューブ34の周面に鍔付きの金属リング60が挿着される。この金属リング60を囲繞するように抗張力繊維32の遊端部32aが巻き付けられ、さらにこの遊端部32aを包囲するようにシース20の右端部が挿着され、その状態でシース20の右端部外周面より金属リング62を用いてカシメる。
【0110】
こうすることで、シース20の右端部に光ファイバー50の一端を充填部材40(32a)を介して確実に固定することができる。他の構成は図12と同様であるので、その説明は割愛する。
【0111】
なお、本実施形態では、光ケーブル10単体を使用した例を説明したが、この他に、本光ケーブルと、後述する制御信号やモータ等を駆動するための電力伝達用の電気ケーブルをより合わせて構成された複合光ケーブルを用いることもできることは容易に理解できる。
【実施例2】
【0112】
図14は、この発明に係る光ケーブル10の他の例を示す。
図14に示す光ケーブル10の例は、光ファイバー30,あるいは50とシース20との間にさらに樹脂チューブ72を介在させると共に、光コネクタ70を接続した例である。
【0113】
光ファイバーとしては、光ファイバー本体30aに抗張力繊維32と保護チューブ34が被覆された抗張力型の光ファイバー50を使用した場合である。光ファイバー50の一端側には、この光ファイバー50と樹脂チューブ72との間に充填部材40が充填される。
【0114】
樹脂チューブ72は、光ファイバー50とシース20との間に挿着される。樹脂チューブ72は光ファイバー50の外径よりも大きく、シース20の内径にほぼ等しいチューブが使用される。したがって、樹脂チューブ72はシース20の内面と接触した状態ではあるが、機械的には相互に分離した状態となっている。
【0115】
樹脂チューブ72としては、ナイロンチューブのように、その表面が滑りやすく、可撓性に富む材質のものが使用される。この例では、図5と同じ径を有する光ファイバー50とシース20を使用した場合であるので、図15および図16の各断面図からも明らかなように、光ファイバー50と樹脂チューブ72との間隙(空隙)は比較的少ない。
【0116】
このように間隙が少ない場合でも樹脂チューブ72を介在させることで、シース20への外的ストレスを、このシース20自体の他に、樹脂チューブ72によっても阻止できるので、一層効果的に光ファイバー50に対する外的ストレスの影響を回避できる。
【0117】
充填部材40としては接着剤が使用される。接着剤を使用する場合には、この充填部材40が充填された側の光ファイバー50端面に図9に示すような光コネクタ70を接続することができる。
【0118】
図14の例は、光ファイバー50のみを光コネクタ70に連結された実施の形態である。この他に、例えば樹脂チューブ72とシース20の各端面をそれぞれ光コネクタ70側に延長し、その延長端縁をそれぞれ光コネクタ70に連結固定してもよい。例えば、各延長端縁を光コネクタ本体内に埋没するように一体成形してもよい。
【0119】
光ファイバーとしては、抗張力型ではない光ファイバー30を使用することもできる。充填部材40としては上述したように、接着剤と共にカシメ部材などを使用することができる。
【0120】
充填部材40として抗張力繊維32を利用することもできる。この場合には、抗張力繊維32の端面側を保護チューブ34の外周側に折り返し、折り返した遊端部を充填部材として使用することもできる。
【0121】
図17は、図14に示した光ケーブル10を光干渉画像診断装置100用の信号線(中継線)として使用するときの一例を示す断面図である。この断面図は図13に示す断面図を参照すれば明らかなように、樹脂チューブ72が介在されている以外は同じ構成である。そのためその詳細な説明は割愛するが、樹脂チューブ72の左端部は、シース20の左端部と同じく光コネクタ102の枠部110に固定される構成が採用されている。
【0122】
図18は光ケーブル10として複合光ケーブルを光干渉画像診断装置100の信号線として使用した場合である。上述したように、光干渉画像診断装置100にあって、カテーテル装置101としてラジアル走査を行わせながら生体組織の画像を取得する場合には、カテーテル装置101内の駆動シャフト105などを回転駆動しなければならないので、その場合には、光ケーブル10として電力線や制御信号線などを一体化した複合光ケーブルが使用される。
【0123】
図18はその断面例である。
図18に示す複合光ケーブル10Fは、充填部材40を除いた所の断面図であって、光ケーブル10と、この光ケーブル10、図では光ケーブル10の外周に被覆された内側シース20の外周に複数本の電気ケーブル90(90A,90B)を配置させたものである。光ケーブル10としては上述した幾つかの断面構成を有する光ケーブルのうちの何れでも使用できるが、この例では、抗張力型光ファイバー50と、樹脂チューブ72を内装した光ケーブル10を使用した場合である。
【0124】
この光ケーブル10と保護チューブ94との間隙内には、複数本のケーブル90が敷設される。ケーブル90としては上述したように制御信号や、モータ等を駆動するための電力あるいは制御信号伝達用の電気ケーブル90A,90Bが使用される。これら電気ケーブル90A、90Bの回りには固定用および絶縁用として機能する部材、この例では抗張力繊維91が敷き詰められており、その外周と樹脂チューブ94との間にはさらにシールド用の編み線92が敷設されて複合光ケーブル10Fが構成される。
【0125】
このように構成された複合光ケーブル10Fを、上述した光干渉画像診断装置100の信号線として使用する例を図19に示す。
複合光ケーブル10Fの右端部側が光コネクタ70側としたとき、この右端部側にケーブル分岐部80が設けられる。ケーブル分岐部80は複合光ケーブル10Fを取り付け固定するためのモールド体であって、分岐本体部80Aと複数の肢部(分岐肢部)81とで構成される。
【0126】
分岐本体部80Aは、複合光ケーブル10Fの右端部を挿通固定するための開口部となされる。そのため、複合光ケーブル10Fの芯部に設けられた光ケーブル10は、その光ファイバー50が肢部81側まで貫通させた状態で開口部側に挿着される。
【0127】
なお、分岐部80Aにおいて光ファイバー本体30aは充填部材40によって保護チューブ34内に固定されるが、固定されるその領域は、分岐部80Aから光コネクタ70までの領域若しくは、分岐部80Aの領域のみであって、それ以外の領域は空隙を有しており、光ファイバー50は外部からの衝撃を受けにくくなっている。
【0128】
分岐肢部81は複数に分岐される。この例では光ケーブル用、電気ケーブル用および信号ケーブル用の3つに分岐され、中心に位置する中心肢部81Aは光ケーブル用として使用するため、所定長だけ突出しており、この蛇腹構成の突出部83に光コネクタ70が直接接続された構成となされている。
【0129】
中心肢部81Aの両脇に位置する肢部81のうち、この例では上方に位置する肢部81Bが電気ケーブル90Aを導出するための導出肢部として使用される。
【0130】
導出肢部81Bは複数の電気ケーブル90Aを束ねた状態で導出することもできれば、電気ケーブル90Aごとに導出することもできる。この例では、複数の電気ケーブル90Aを束ねて導出した例であって、導出肢部81Bより所定の長さに亘って引き出された電気ケーブル90Aは1個のコネクタ74に接続される。
【0131】
同様に、下方に位置する肢部81Cは電気ケーブルとして特に制御信号系を扱う信号ケーブル90Bを導出するための導出肢部として使用される。導出肢部81Cは複数の信号ケーブル90Bを束ねた状態で導出することもできれば、信号ケーブル90Bごとに導出することもできる。この例では、複数の信号ケーブル90Bを束ねて導出した例であって、導出肢部81Cより所定の長さに亘って引き出された信号ケーブル90Bは1個のコネクタ76に接続される。
【0132】
このような構成をなす三叉状のケーブル分岐部80と、複合光ケーブル10Fの端部とはモールドによって一体化される。そのため、光ファイバー50および電気ケーブル90A、90Bは、それぞれ複合光ケーブル10Fの端部よりそれぞれ所定長だけ引き出しておき、そのうち少なくとも光コネクタ70は予め光ファイバー50に接続した状態で絶縁性の樹脂によりモールド成形される。
【0133】
複合光ケーブル10Fの左端部側は、図19に示すようにスキャナ/プルバック部102の枠部110内に挿通された状態で固定される。この場合においても、枠部110側の光ファイバー50の外周は開放された状態で光コネクタ102に接続される。また、使用態様によっては電気ケーブル90Aあるいは電送ケーブル90Bをスキャナ/プルバック部102の手前で分離することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
この発明では、光干渉画像診断装置(OCT、OFDI)などの外部接続用光ケーブルとして使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】この発明に係る光ケーブルを適用できる光干渉画像診断装置の概念図である。
【図2】その光路系を含むブロック図である。
【図3】カテーテル装置の先端部の要部断面図である。
【図4】光路を考慮した図3と同様な断面図である。
【図5】この発明の光ケーブルを示す要部の断面図である。
【図6】図5のA−A線上断面図である。
【図7】図5のB−B線上断面図である。
【図8】光ケーブルの使用状態の断面図である。
【図9】この発明の光ケーブルの他の例を示す要部の断面図である。
【図10】図9のC−C線上断面図である。
【図11】図9のD−D線上断面図である。
【図12】図9の光ケーブルを光干渉画像診断装置に適用したときの要部断面図である。
【図13】この発明に係る光ケーブルを使用したときのコネクタ接続例を示す要部断面図である。
【図14】この発明に係る光ケーブルの他の例を示す断面図である。
【図15】図14のE−E線上断面図である。
【図16】図14のF−F線上断面図である。
【図17】図14の光ケーブルを使用したときのコネクタ接続例を示す要部の断面図である。
【図18】複合光ケーブルの一例を示す断面図である。
【図19】図18に示した複合光ケーブルを使用したときのコネクタ接続例を示す要部の断面図である。
【図20】光干渉を使用した画像診断例を説明する図である。
【符号の説明】
【0136】
10・・・光ケーブル
20・・・シース
30・・・光ファイバー
32・・・抗張力繊維(テンションメンバー)
34・・・保護チューブ
50・・・抗張力型光ファイバー本体
70・・・光コネクタ
72・・・樹脂チューブ
80・・・ケーブル分岐部
80A・・・分岐本体部
81(81A〜81C)・・・肢部
10F・・・複合光ケーブル
90A・・・電気ケーブル
90B・・・電送ケーブル
100・・・光干渉画像診断装置
101・・・カテーテル装置
102・・・スキャナ/プルバック部
103・・・診断装置
106・・・ハブ
203・・・光ロータリージョイント
209・・・低干渉性光源
210・・・光検出器
208・・・光カプラー部
228、228a、229,229a・・・シングルモードファイバー
216・・・光干渉可変機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空をなすシースと、
上記中空内に介挿された光ファイバーと、
上記シースの内面と上記光ファイバーとの間の一部に充填された充填部材とからなり、
上記充填部材によって上記光ファイバーが空隙を保持した状態で上記シース内に固定された
ことを特徴とする光ケーブル。
【請求項2】
上記シースは可撓性を有する部材が使用される
ことを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項3】
上記光ファイバーは、少なくともコア、クラッドおよび保護チューブからなる光ファイバー本体に、抗張力繊維を被覆した抗張力型の光ファイバーが使用される
ことを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項4】
上記抗張力繊維が上記充填部材として使用される
ことを特徴とする請求項3記載の光ケーブル。
【請求項5】
上記シース端部側に上記充填部材が充填されると共に、光コネクタが接続される
ことを特徴とする請求項1記載の光ケーブル。
【請求項6】
前記光ケーブルは、光ファイバーと電気ケーブルとが一体化された複合光ケーブルであり、前記シースの少なくとも一方の端部に光コネクタ及び電気コネクタを有する
ことを特徴とする請求項1の光ケーブル。
【請求項7】
前記シースの端部は光コネクタ側と電気コネクタ側に前記光ケーブルを分岐する分岐部を有し、前記充填部材は前記分岐部から前記光コネクタの間に充填され、それ以外の部分には充填されない
ことを特徴とする請求項6の光ケーブル。
【請求項8】
光干渉画像診断装置本体内で生成された光干渉用として使用されるサンプル光と参照光のうち、上記サンプル光を入出力する外部入出力用光コネクタと、
上記外部入出力用光コネクタを介して上記サンプル光を被測定物側に伝送すると共に、上記被測定物よりの反射光を伝送して上記外部入出力用光コネクタに導く光ケーブルとからなり、上記光ケーブルは、
中空をなすシースと、
上記中空内に空隙を保持した状態で介挿された光ファイバーと、
上記シースの内面と上記光ファイバーとの間の一部に充填された光ファイバー固定用の充填部材と、
上記充填部材側に設けられた、上記外部入出力用光コネクタに連結される光コネクタとで構成される
ことを特徴とする光干渉画像診断装置。
【請求項9】
上記外部入出力用光コネクタ内に導入される上記光ケーブルは、外部ストレスを吸収するための冗長部を有する
ことを特徴とする請求項8記載の光干渉画像診断装置。
【請求項10】
上記シースは可撓性を有する部材が使用される
ことを特徴とする請求項8記載の光干渉画像診断装置。
【請求項11】
上記光ファイバーは、光ファイバー本体に抗張力繊維が被覆された抗張力型光ファイバーが使用される
ことを特徴とする請求項8記載の光干渉画像診断装置。
【請求項12】
上記抗張力繊維が上記充填部材として使用される
ことを特徴とする請求項8記載の光干渉画像診断装置。
【請求項13】
上記光ケーブルとしては、光ファイバーと電気ケーブルとが一体化された複合光ケーブルが使用されると共に、
上記光コネクタには、上記光ファイバーと電気ケーブルとを分岐するためのケーブル分岐部が設けられた
ことを特徴とする請求項8記載の光干渉画像診断装置。
【請求項14】
前記充填部材は前記分岐部から前記光コネクタの間に充填され、それ以外の部分には充填されない
ことを特徴とする請求項8の光干渉画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−14751(P2009−14751A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172932(P2007−172932)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】