説明

光ディスク基板成膜装置、光ディスク基板成膜方法、基板ホルダーの製造方法、基板ホルダー、光ディスクおよび相変化記録型光ディスク

【課題】0.6mm以下のより薄い光ディスク基板を用いても光ディスク基板が変形せず、しかもスループットを低下させることがない光ディスク基板成膜装置および光ディスク基板成膜方法を提供すること。
【解決手段】基板の面上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜装置において、光ディスク基板1をホルダー部3で固定し、さらにホルダー部3に光ディスク基板1の被成膜領域Sの裏面の少なくとも一部と密着する密着支持面S'を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの製造技術に関し、より詳細には、光ディスク基板の表面にスパッタ法により記録層等の成膜を行う光ディスク基板成膜装置、これを用いる成膜方法、上記装置を構成する基板ホルダーの製造方法、上記装置を構成する基板ホルダー、上記装置で製造した光ディスクおよび反射放熱層にAg系合金を用いた相変化記録型光ディスクに関する。なお、これらの技術は、光ディスクメディア(CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM等)に応用される。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスクは、熱可塑性樹脂などの基板(光ディスク基板)上に誘電体層と記録層とを繰り返し積層して形成するのが一般的である。このような光ディスクの多くは、一度に複数の光ディスク基板に対して成膜ができる、いわゆる枚葉式の成膜装置によって作成されている。
【0003】
光ディスク基板を作成する枚葉式の成膜装置には、成膜が行われる成膜室を複数備え、この成膜室の各々が一つの基板搬送室でつながるように構成されたものがある。このような成膜装置では、いったん装置内に搬送された光ディスク基板を、基板搬送室を通じて各成膜室に順次搬送し、それぞれ種類の異なる誘電体層あるいは記録層を成膜して積層した後に装置外へ取り出している。こうした成膜装置の構成は、一度に複数の誘電体層や記録層が形成でき、成膜工程のスループットを高めることに有効である。
【0004】
成膜装置の成膜室と基板搬送室とは、成膜中の光ディスク基板を支持する基板ホルダーによって仕切られるよう構成される。図42に、このような基板ホルダーの断面を示して説明する。
【0005】
図示した基板ホルダー100は、光ディスク基板101が置かれる円形の支持板35と、支持板35を支持するアーム部37とを有している。支持板35には、光ディスク基板101を中心近くで固定する内周マスク38(固定部分Aとする)と、周縁部の近くで固定する外周マスク39(固定部分Bとする)とが備えられている。図示の如く、内周マスク38と外周マスク39とによって、光ディスク基板101を挟むようにして固定している。
【0006】
このとき、基板ホルダー100は、固定部分Aと固定部分Bとでだけ光ディスク基板101が支持板35と接触するようにし、その他の部分では支持板35との間に間隙aが空くように固定している。このため、光ディスク基板101が支持板35から取り外しやすくなり、取り外し時に光ディスク基板が損なわれることを防ぐことができる。
【0007】
ところで、近年、光ディスクの記録容量を650MBから4.7GBへ大容量化する要請がある。この要請に応えるため、光ディスクを2枚貼り合わせて光ディスクの両面にデータを記録する技術がある。このような貼り合わせ式の光ディスクでは、使用される光ディスク基板の厚さを従来の1.2mmから0.6mmと半分にすることが必要である。光ディスク基板の厚さが薄くなると、当然のことながら、その機械的および熱的な強度が低下する。このため、成膜中に光ディスク基板が変形し、製品としての規格を満たすことができないものが増えることが考えられる。この点は、特に、成膜工程のスループットを従来通りに維持しようとした場合に深刻になる。
【0008】
また、光ディスク(光記録ディスク)では、成形基板上に光学的に記録・再生が可能な情報記録部が設けられ、文書やデータ等のファイル用ディスクとして用いられている。この光ディスクを使用するに際しては、これを高速で回転させながら、1μm程度に絞り込んだレーザ光を照射し、焦点調整および位置検出を行いながら、記録層からデータを読み出し、または記録層にデータを記録する。
【0009】
各種光ディスクメディアにおいては反射層、記録層、誘電体層あるいは保護層をスパッタにより成膜する工程が不可欠となっている。スパッタ成膜は、真空中でArプラズマ等を発生させ、このプラズマ中のイオンによってターゲット表面をたたき、対向する基板に膜を堆積させる方法であるため、スパッタ成膜時の熱の発生は避けることができない。一般的に光ディスクにおいては、ディスク基板にポリカーボネート等の高分子材料が用いられているため、成膜室内の温度上昇はディスク基板の変形を引き起こす要因となる。特に、連続高速成膜を行う場合、厚肉成膜を行う場合、あるいは同一基板に2層以上の成膜を繰り返し行う場合等においては顕著な問題となり、また、DVDメディアに用いられる0.6mmの薄肉基板を用いる場合には、更に重大な問題となる。
【0010】
この問題を解決するため、例えば、光記録媒体用スパッタホルダおよび光記録媒体の製造方法には、光記録媒体製造用のスパッタ装置において、被成膜基板を保持するスパッタホルダ(基板ホルダー)として、基板に接触する外周部と内周部とで高さが異なるものを設け、この基板ホルダー上に基板を保持し、スパッタ成膜によって基板が反る方向と逆方向に基板を歪ませた状態でスパッタ成膜を行うことにより、基板変形を低減させるようにしたスパッタ装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0011】
さらに、従来、光ディスクを製造する際において、平面基板を真空成膜装置(光ディスク基板成膜装置)の基板ホルダーに装着して成膜処理をする場合、基板裏面と基板ホルダーとの間隙部分のガスが真空排気時になかなか排気されず、設定圧力に至るまでの排気時間が長引くことがある。一方で、成膜を行った基板を成膜装置から取り出す際に、基板が基板ホルダーに真空吸着した状態で開放されないために、基板取り出し搬送上障害となることがある。
【0012】
上記のごとくの問題に対し、例えば、記録媒体基板押さえにガス抜き孔を設けた構造のホルダが開示され(特許文献2参照)、また、記録媒体基板押さえと基板ホルダー(反記録面側)にガス抜き孔を設けた構造のホルダが開示されている(特許文献3参照)。これら従来の技術では、基板ホルダーにガス抜き孔を設けることで基板裏面のガスの排気および基板吸着の防止を図っている。
【0013】
一方、近年、書き換え型光ディスクとして、相変化を利用したものが盛んに用いられるようになった。相変化記録型光ディスクは、一般に任意のピッチで凹凸を形成した透明プラスチック基板、誘電体材料としてZnS−SiO2を用いた下部誘電体保護層、GeSbTeやInSbTe、AgInSbTe等のカルコゲン系記録材料を用いた相変化記録層、前記下部誘電体保護層と同様、ZnS−SiO2からなる上部誘電体保護層、主としてAl系の合金やAu、Ag等を用いた反射放熱層から構成され、これら各層もまたスパッタ法により成膜されるのが一般的である。
【0014】
【特許文献1】特開平10−81964号公報
【特許文献2】特開平2−273345号公報
【特許文献3】実開平4−137526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記特許文献1によれば、基板の半径方向の反りに関しては考慮されているものの、基板の円周方向についての基板機械特性に関しては何ら対策がなされているものではなく、総合的に見ると、スパッタ成膜による基板変形に関わる対策としては必ずしも十分でないという問題点があった。
【0016】
例えば、DVDメディアの生産においては、一般的に0.6mmの基板にスパッタ成膜後、0.6mmのブランク基板を貼り合わせる方法が採られる。貼り合わせ工程においては、円周方向の反りを矯正することが困難であることから、スパッタ成膜において極力円周方向の反りを低く抑えておくことが重要な課題であるが、上記従来の方法ではこの問題を解決することができない。
【0017】
また、上記特許文献2や、特許文献3によれば、基板ホルダーから基板を取り出す際の真空吸着を防ぐことができるものの、プラスチック材料製の基板の場合、成膜時に飛着した粒子からの入射エネルギの蓄積が生じると、プラスチック材料基板の蓄熱のため基板温度の上昇が発生し易く、この際、基板裏面に密着するホルダー側の面に、真空吸着を防ぐための溝を形成することは、密着部と溝部とに温度差が生じてしまい、基板の熱変形という新たな課題を抱えることとなる。
【0018】
上述したごとくに、プラスチック材料製基板の場合では、入射する熱エネルギが基板の機械精度に悪影響を与える場合がある。特に、光ディスクのように、その表面に微細なピットが形成されるものでは、歪みによる機械的精度の低下が記録情報の記録・読み出しや消去上の大きな障害となる。さらに各種の光ディスクの製造においては、反射層、記録層、誘電体層、あるいは保護層をスパッタ装置により順次連続的に高速成膜する工程が不可欠となっており、したがって、入射する熱エネルギの蓄積が生じ易い。特にDVDメディア基板のように0.6mmの薄肉基板を用いる場合には、熱変形が起こり易く、機械精度維持の上では更に重大な問題となってくる。
【0019】
さらに、基板の熱変形等によって搬送上のトラブルが発生すると、装置故障の原因となるばかりでなく、生産面においては、設備の稼動率を極端に低下させることにつながり、コストアップおよび生産率低下等の弊害を引き起こす原因となる。更に、基板ホルダーからの基板取り出しの際に、上記の真空吸着が生じると、搬送系側で仮に引き剥がすことができたとしても、基板裏面への傷等の問題につながって、生産の歩留まりを低下させることになり、また、基板搬送プロセスの高速化を図る上でも重大な障害となる。
【0020】
また、相変化記録型光ディスクにおいても、生産を高速化しようとして、膜形成時のスパッタ電力を上げようとすると、基板の温度が著しく上昇し、基板が反ってしまい、記録再生を行えなくなるという問題が生じている。特に、基板の厚さを薄くしたDVD系の記録ディスクはさらに熱に弱い。
【0021】
なお、相変化記録型光ディスクの反射層に関連する公報として、特開平10−162435号公報には反射層としてMg中にAg等を添加して用い、繰り返し特性の向上を図ることが記載されている。
【0022】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、0.6mm以下のより薄い光ディスク基板を用いても光ディスク基板が変形せず、しかもスループットを低下させることがない光ディスク基板成膜装置および光ディスク基板成膜方法を提供することを目的とする。
【0023】
また、本発明は上記に鑑みてなされたものであって、スパッタ成膜中に光ディスク基板の薄膜成膜部分の裏面の少なくとも一部分を、基板ホルダーと密着させて成膜する装置において、スパッタ成膜後の成膜済み基板の取り出し・搬送を効率良く、且つ高速に行えるようにすることを目的とする。
【0024】
また、本発明は上記に鑑みてなされたものであって、スパッタ成膜時の基板変形を低減させ、かつ安定な基板搬送を実現させることを目的とする。
【0025】
また、本発明は上記に鑑みてなされたものであって、基板の変形を抑制し、かつスパッタ成膜後に基板ホルダーから基板を取り出す際の基板と基板ホルダーとの真空吸着を回避し、安定した基板取り出し動作を実行できる光ディスク基板成膜装置と該装置が備える基板ホルダーとを提供することを目的とする。
【0026】
また、本発明は上記に鑑みてなされたものであって、光ディスク基板成膜装置において、高速成膜、厚肉成膜、薄肉ディスクへの成膜、同一基板への2層以上の繰り返し成膜等を行なう場合においても、良好な基板機械特性およびメディア信号特性を確保した光ディスクを歩留まりよく、安定して生産し、かつ基板搬送上のトラブルもなく、高い稼動率での生産を実現できるようにすることを目的とする。
【0027】
また、本発明は上記に鑑みてなされたものであって、スパッタ成膜によって生じる基板変形を低減させ、かつ安定な基板搬送を行うことができ、さらに基板と基板ホルダーを密着させることに起因する基板表面の傷の発生を防ぐことを目的とする。
【0028】
さらに、本発明は上記に鑑みてなされたものであって、CD−RWやDVD−RWのような相変化記録膜を高速でスパッタ成膜しても基板の反りが小さく、またAg系反射放熱層の劣化が抑制された相変化記録型光ディスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る光ディスク基板成膜装置は、基板の面上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜装置であって、成膜中に基板を固定する基板ホルダーを備え、前記基板ホルダーは、基板のうち、成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部と密着する密着支持面を有し、前記密着支持面に基板を吸着固定する真空チャック部を有する一方、前記密着支持面は、溝部を有することを特徴とするものである。このように構成することにより、基板が基板ホルダーに支持される領域が増し、熱、あるいは塑性変形によって成膜中に基板が損なわれることが少なくなる。また、基板の被成膜領域の裏面を基板ホルダーに真空チャックによって吸着することができるようになる。また、密着支持面の一部が基板と密着されなくなり、密着支持面と基板との密着力をこの面積によって調整することができる。
【0030】
また、請求項2に係る光ディスク基板成膜装置は、基板の面上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜装置であって、成膜中に基板を固定する基板ホルダーを備え、前記基板ホルダーは、基板のうち、成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部と密着する密着支持面を有し、密着支持面に基板を吸着固定する真空チャック部を有する一方、吸着された基板を取り外すための取外し用爪を有することを特徴とするものである。このように構成することにより、基板が基板ホルダーに支持される領域が増し、熱、あるいは塑性変形によって成膜中に基板が損なわれることが少なくなる。また、基板の被成膜領域の裏面を基板ホルダーに真空チャックによって吸着することができるようになる。また、真空チャックで密着支持面に吸引された基板を取り外しやすくすることができる。
【0031】
また、請求項3に係る光ディスク基板成膜装置は、基板の面上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜装置であって、成膜中に基板を固定する基板ホルダーを備え、前記基板ホルダーは、基板のうち、成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部と密着する密着支持面を有し、基板に対して成膜を行う成膜室と、成膜室よりも低圧力に保たれる基板搬送室との間に配置され、密着支持面は、基板搬送室と成膜室とに通じる貫通孔を有することを特徴とするものである。このように構成することにより、基板が基板ホルダーに支持される領域が増し、熱、あるいは塑性変形によって成膜中に基板が損なわれることが少なくなる。また、基板の被成膜領域の裏面を基板ホルダーに真空チャックによって吸着することができるようになる。また、成膜室を基板搬送室との圧力差によって基板ホルダーと基板とを吸着することができ、基板ホルダーと基板とを吸着するための専用の構成を設ける必要が無くなる。
【0032】
また、請求項4に係る光ディスク基板成膜装置は、基板裏面を基板ホルダーに密着させることにより光ディスク基板を前記基板ホルダーで保持して基板表面にスパッタ成膜を行う光ディスク基板成膜装置であって、前記基板ホルダーは、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部が粗面となっていることを特徴とする。このように基板ホルダーの基板保持面を粗面化することにより、基板の半径方向および円周方向の反りを抑えることできるうえ、基板が基板ホルダーに密着することがなくなり、基板ホルダーからの基板の剥離性が向上する。
【0033】
また、請求項5に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項4に記載の光ディスク基板成膜装置において、前記基板ホルダーが、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部の表面粗さRmax(最大高さ)が10μm以上、500μm以下であることを特徴とする。このように基板保持面の少なくとも一部の表面粗さRmaxを10μm以上、500μm以下とすることで、さらに基板ホルダーからの基板の剥離性が向上する。この場合、基板保持面の全面にわたって上記数値範囲内で粗面化することが好ましい。基板保持面のRmaxが10μm未満では、上記剥離性向上効果が不十分となり、Rmaxが500μmを超えると、粗面に沿う形で基板が変形しやすくなる。
【0034】
また、請求項6に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項5に記載の光ディスク基板成膜装置において、前記基板ホルダーが、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部に潤滑処理が施され、かつ該潤滑処理部分の表面粗さRmaxが10μm以上、500μm以下となっていることを特徴とする。このような基板ホルダーを作製するには、あらかじめ基板保持面の粗面化の程度を上記範囲より高い値にシフトさせておき、所定の潤滑処理を施した後(該処理により表面粗さが低下する)の表面粗さRmaxが上記範囲内となるようにする。潤滑性のある粗面とすることで、基板保持面の転写に起因する基板裏面の傷発生が抑えられる。なお、本発明において上記潤滑処理は、基板保持面のうち上記粗面化部分および平坦面部分に施してもよいし、平坦面部分にのみ施してもよい。
【0035】
また、請求項7に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項5に記載の光ディスク基板成膜装置において、前記基板ホルダーが、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部が自己潤滑性のプラスチック材料で形成され、かつ該部分の表面粗さRmaxが10μm以上、500μm以下となっていることを特徴とする。この基板ホルダーによれば、請求項3の基板ホルダーと同じく基板裏面の傷発生を抑えることできる。上記自己潤滑性プラスチック材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、POM(ポリアセタール)などが挙げられる。なお、本発明において上記自己潤滑性プラスチック材料で形成されている領域は、基板保持面のうち上記粗面化部分およびそれ以外の部分であってもよいし、粗面化部分以外の部分のみであってもよい。
【0036】
また、請求項8に係る光ディスク基板成膜装置は、成膜対象とする基板を装着して該基板を保持する基板ホルダーを有する光ディスク基板成膜装置であって、前記基板ホルダーが、該基板ホルダーに前記基板を装着したときに、前記基板ホルダーと前記基板とが接触する領域内から接触しない領域内に延伸する溝部を有し、該溝部に通気性を有する多孔性部材が配設されていることを特徴としたものである。
【0037】
また、請求項9に係る光ディスク基板成膜装置は、成膜対象とする基板を装着して該基板を保持する基板ホルダーを有する光ディスク基板成膜装置であって、前記基板ホルダーが、該基板ホルダーに前記基板を装着したときに、前記基板ホルダーが前記基板と接触する領域内に溝部を有し、該溝部に通気性を有する多孔性部材が配設され、さらに前記溝部から前記基板ホルダーと前記基板との非接触領域に連通する貫通孔が設けられていることを特徴としたものである。
【0038】
また、請求項10に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項8または9に記載の光ディスク基板成膜装置において、前記多孔性部材が、熱伝導性の良い材料により形成されていることを特徴としたものである。
【0039】
また、請求項11に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項8または9に記載の光ディスク基板成膜装置において、前記多孔性部材が、高分子材料により、または表面に高分子材料を被覆した材料により形成されていることを特徴としたものである。
【0040】
また、請求項12に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項8または9に記載の光ディスク基板成膜装置において、前記多孔性部材が、弾性体材料で形成されていることを特徴としたものである。
【0041】
また、請求項13に係る光ディスク基板成膜装置は、光ディスク基板を装着して保持する基板ホルダーと、前記光ディスクの内周側の所定領域をマスクする内周マスクと、前記光ディスクの外周側の所定領域をマスクする外周マスクとを有し、前記内周マスクおよび外周マスクを用いて前記光ディスク基板の表面に薄膜を成膜する光ディスク基板成膜装置において、前記基板ホルダーは、前記薄膜の成膜領域内で前記光ディスク基板に裏面側から接触する基板支持部を有し、該基板支持部は、前記内周マスクの外周側エッジから2ないし10mm外側のラインと、前記外側マスクの内周側エッジから0.5mmないし5mm内側のラインとの間の領域で、前記光ディスク基板に接触することを特徴としたものである。
【0042】
また、請求項14に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項13に記載の光ディスク基板成膜装置において、0.3mm〜0.8mm厚みの前記光ディスク基板を薄膜の成膜対象とすることを特徴としたものである。
【0043】
また、請求項15に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項13に記載の光ディスク基板成膜装置において、前記基板支持部のエッジ部がテーパ形状を有することを特徴としたものである。
【0044】
また、請求項16に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項15に記載の光ディスク基板成膜装置において、前記テーパ形状におけるテーパ面と前記基板支持部の光ディスク基板接触面とのなす角として定義されるテーパ角は、1.0〜2.0degreeであることを特徴とする。
【0045】
また、請求項17に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項13に記載の光ディスク基板成膜装置において、前記基板支持部のエッジ部が、前記光ディスク基板の硬度よりも低い硬度の低硬度材料で構成されていることを特徴としたものである。
【0046】
また、請求項18に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項17に記載の光ディスク基板成膜装置において、前記低硬度材料は、光ディスクの半径方向の幅が0.1〜0.5mmであることを特徴としたものである。
【0047】
また、請求項19に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項17に記載の光ディスク基板成膜装置において、前記低硬度材料は、シリコンゴムであることを特徴としたものである。
【0048】
また、請求項20に係る光ディスク基板成膜装置は、光ディスク製造工程の中で、ディスク基板上に反射層、記録層、保護層、または誘電体層等のいずれか、或いは前記の2層以上の層構成を組み合わせて積層成膜するスパッタ成膜に用いる光ディスク基板成膜装置において、基板ホルダーの基板設置面と被成膜基板の間に限定した部分、および同範囲内の少なくとも、基板と基板ホルダーの接触によって基板ホルダー側に形成される閉空間部分にガスを導入できるように該基板ホルダー側に給気部を備えたことを特徴とするものである。この機構を具備することにより、被成膜基板裏面を基板ホルダーに密着させて成膜を行なった場合においても、スパッタ成膜終了後に基板を取り出す際に該給気部からガスを供給することにより、真空中でのスパッタ成膜過程を経て、基板ホルダーに真空吸着した基板を取り外すことが可能となる。また、ガスによる真空解放現象を利用しているため、基板取り出し時の基板裏面への傷等の問題をなくすことができる。
【0049】
また、請求項21に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項20に記載の光ディスク基板成膜装置において、スパッタ成膜終了後から基板搬出までの間に、該給気部からガスを供給することを特徴とするものである。
【0050】
また、請求項22に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項21に記載の光ディスク基板成膜装置において、該給気部から供給するガスにより、光ディスク基板成膜装置の基板挿入・搬出用の大気と真空の間の中間室(以下、ロードロック室と称する)のベントガスを兼ねることを特徴とするものである。
【0051】
また、請求項23に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項20に記載の光ディスク基板成膜装置において、光ディスク基板成膜装置筺体のロードロック室の閉空間を形成する内壁部に光ディスク基板成膜装置外部からのガス導入口を具備させ、また、該基板ホルダーに該給気部と通じるガス供給口を具備させ、ロードロック室の所定の位置に該基板ホルダーが移動した際に限り、光ディスク基板成膜装置筺体の該ガス導入口と該基板ホルダーの該ガス供給口が連結されるようにしたことを特徴とするものである。
【0052】
また、請求項24に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項23に記載の光ディスク基板成膜装置において、該光ディスク基板成膜装置筺体の該ガス導入口と該基板ホルダーの該ガス供給口をOリングを介して連結させることを特徴とするものである。
【0053】
また、請求項25に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項23に記載の光ディスク基板成膜装置において、該光ディスク基板成膜装置筺体の該ガス導入口と該基板ホルダーの該ガス供給口の連結部がお互いに重なり合うテーパーを持った構造であることを特徴とするものである。
【0054】
また、請求項26に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項23〜25のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置において、該光ディスク基板成膜装置筺体の該ガス導入口と該基板ホルダーの該ガス供給口の連結によって形成されるガス導入路において、該光ディスク基板成膜装置筺体のガス導入口とロードロック室をつなげるバイパス弁を具備させ、ロードロック室の真空排気時に限り該バイパス弁を開くことを特徴とするものである。
【0055】
また、請求項27に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項23〜25のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置において、該光ディスク基板成膜装置筺体の該ガス導入口と該基板ホルダーの該ガス供給口の連結によって形成されるガス導入路において、該光ディスク基板成膜装置筺体のガス導入路に、単独に真空排気できる排気路を付設し、ロードロック室の真空排気時に限り該排気路から真空排気することを特徴とするものである。
【0056】
また、請求項28に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項20に記載の光ディスク基板成膜装置において、該基板ホルダーに基板を配置した際に、基板裏面と該基板ホルダーの接触部と非接触部の境界を形成する基板ホルダー側のエッジ部、少なくとも該給気部の孔端エッジ部をR加工しておくことを特徴とするものである。
【0057】
また、請求項29に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項20に記載の光ディスク基板成膜装置において、該基板ホルダー表面に潤滑処理を施したことを特徴とするものである。
【0058】
また、請求項30に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項29に記載の光ディスク基板成膜装置において、該潤滑処理として、フッ化黒鉛(CF)nやフッ素樹脂(PTFE、PFA、FEP)の撥水性粉末を用いた複合メッキ、或いはフルオロアルキル基を有するクロロシラン系化学吸着剤を用いた処理等の撥水処理を行なうことを特徴とするものである。
【0059】
また、請求項31に係る光ディスク基板成膜装置は、反射層、記録層、保護層、または誘電体層等のいずれか、或いは前記の2層以上の層構成を組み合わせて積層成膜を行なうスパッタ成膜に用いる光ディスク基板成膜装置において、ディスク基板の成膜領域に対応した基板ホルダー表面の領域内に、ディスク基板設置中心を中心に周方向に1周させた溝部で、「該溝部を構成する稜線の任意位置での接線」と、「同位置における、該ディスク基板設置中心を中心にした円周の接線」とのなす鋭角がすべての位置で30度以下となる構造の溝部を少なくとも1本形成し、かつ、ディスク基板設置時に、該溝部以外の部分が少なくとも該ディスク基板の成膜領域裏面を密着保持する構造としたことを特徴とするものである。
【0060】
また、請求項32に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項31に記載の光ディスク基板成膜装置において、該溝部の稜線が、該ディスク基板設置中心を中心に同心円状となるようにしたことを特徴とするものである。
【0061】
また、請求項33に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項31または32に記載の光ディスク基板成膜装置において、該溝部の稜線を形成するエッジ部にテーパーを設けたことを特徴とするものである。
【0062】
また、請求項34に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項31または32に記載の光ディスク基板成膜装置において、該溝部の稜線を形成するエッジ部にR加工を施したことを特徴とするものである。
【0063】
また、請求項35に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項31〜34のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置において、該基板ホルダーの少なくとも該ディスク基板と接触する面に潤滑処理を施したことを特徴とするものである。
【0064】
また、請求項36に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項35に記載の光ディスク基板成膜装置において、該潤滑処理として、フッ化黒鉛(CF)nやフッ素樹脂(PTFE、PFA、FEP)の撥水性粉末を用いた複合メッキ、或いはフルオロアルキル基を有するクロロシラン系化学吸着剤を用いた処理等の撥水処理を行なうことを特徴とするものである。
【0065】
また、請求項37に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項31〜36のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置において、該基板ホルダーの少なくとも該ディスク基板と接触する面をPTFE、ポリアセタールに代表される潤滑性をもつ材料で構成することを特徴とするものである。
【0066】
また、請求項38に係る光ディスク基板成膜装置は、請求項31〜37のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置において、該基板ホルダーのディスク基板設置面以外の部分で、かつ該ディスク基板の光ディスク基板成膜装置への搬入・搬出時に真空排気およびベントされる部分から、該溝部内に通じる流路を形成したことを特徴とするものである。
【0067】
また、請求項39に係る光ディスク基板成膜方法は、基板ホルダーに固定された基板上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜方法であって、基板ホルダーは、基板を固定する際に、基板が固定される面の少なくとも一部と、基板のうちの成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部とを密着して基板を支持することを特徴とするものである。このように構成することにより、基板が基板ホルダーに支持される領域が増し、熱、あるいは塑性変形によって成膜中に基板が損なわれることが少なくなる。また、基板の被成膜領域の裏面を基板ホルダーに真空チャックによって吸着することができるようになる。
【0068】
また、請求項40に係る光ディスク基板成膜方法は、基板ホルダーに固定された基板上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜方法であって、基板ホルダーは、0.6mm以下の厚さを有する基板を固定する際に、基板が固定される面の少なくとも一部と、基板のうちの成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部とを密着して基板を支持することを特徴とするものである。このように構成することにより、基板が基板ホルダーに支持される領域が増し、厚さが0.6mm以下の基板についても、熱、あるいは塑性変形によって成膜中に基板が損なわれることが少なくなる。また、基板の被成膜領域の裏面を基板ホルダーに真空チャックによって吸着することができるようになる。
【0069】
また、請求項41に係る光ディスク基板成膜方法は、基板に対して成膜を行う成膜室と、前記成膜室に基板を搬送する基板搬送室と、前記基板搬送室と前記成膜室との間に配置され、前記基板搬送室と前記成膜室とに通じる貫通孔を有する基板ホルダーを有する光ディスク基板成膜装置によって行われる光ディスク基板成膜方法であって、前記基板搬送室よりも前記成膜室を高い圧力に保つことにより、前記基板ホルダー上に基板を固定して成膜を行う成膜工程を含むことを特徴とするものである。このように構成することにより、基板ホルダーに基板を吸着するための専用の構成を設けることなく、成膜の間中、基板ホルダーに基板を吸着することができる。
【0070】
また、請求項42に係る光ディスク基板成膜方法は、基板に対して成膜を行う成膜室と、成膜室に基板を搬送する基板搬送室と、基板搬送室と成膜室との間に配置され、基板搬送室と前記成膜室とに通じる貫通孔を有する基板ホルダーを有する光ディスク基板成膜装置によって行われる光ディスク基板成膜方法であって、基板ホルダーは、0.6mm以下の厚さを有する基板を固定する際、基板搬送室よりも成膜室を高い圧力に保つことによって基板ホルダー上に基板を固定して成膜を行う成膜工程を含むことを特徴とするものである。このように構成することにより、0.6mm以下の厚さを有する基板についても、基板ホルダーと基板とを吸着するための専用の構成を設けることなく、成膜の間中、基板ホルダーに基板を吸着することができる。
【0071】
また、請求項43に係る光ディスク基板成膜方法は、請求項41または42に記載の光ディスク基板成膜方法において、成膜工程では、基板上の成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部を基板ホルダーと密着させることを特徴とするものである。このように構成することにより、成膜中に基板が基板ホルダーに支持される領域が増し、成膜時の熱によって基板が変形することが少なくなる。
【0072】
また、請求項44に係る光ディスク基板成膜方法は、請求項40〜42のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜方法において、成膜工程が、成膜工程の以前に基板ホルダーと密着する基板の裏面に裏面を保護するための膜である保護膜を形成する裏面保護膜形成工程をさらに含むことを特徴とするものである。このように構成することにより、成膜時に裏面となる光ディスクの光入射面に傷が付くことを防ぐことができる。
【0073】
また、請求項45に係る光ディスク基板成膜方法は、請求項44に記載の光ディスク基板成膜方法において、裏面保護膜形成工程では、紫外線を照射することによって硬化する樹脂であるUV硬化樹脂をスピンコートすることによって保護膜を形成することを特徴とするものである。このように構成することにより、基板に熱を加えることなく保護膜を形成することができる。
【0074】
また、請求項46に係る光ディスク基板成膜方法は、請求項44に記載の光ディスク基板成膜方法において、裏面保護膜形成工程では、スパッタリングによって保護膜を形成することを特徴とするものである。このように構成することにより、コーターなどの装置が無い場合にも保護膜を形成することができる。
【0075】
また、請求項47に係る光ディスク基板成膜方法は、請求項46に記載の光ディスク基板成膜方法において、スパッタリングによって形成される保護膜は、シリコン窒化膜と、シリコン酸化膜と、チタン窒化膜と、インジウム、チタン、酸素の化合物とのうちのいずれか一つ、あるいは複数の積層膜であることを特徴とするものである。このように構成することにより、成膜条件が良く知られていて、しかも保護膜に適した材質の膜を選択することができる。
【0076】
また、請求項48に記載の光ディスク基板成膜方法は、基板裏面を基板ホルダーに密着させることにより光ディスク基板を前記基板ホルダーで保持して基板表面にスパッタ成膜を行う方法において、請求項4〜7のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置を用いることを特徴とする。この成膜方法によれば、基板の半径方向および円周方向の反りを抑えることできるうえ、基板を基板ホルダーから簡便・円滑に剥離させることができる。
【0077】
また、請求項49に記載の基板ホルダーの製造方法は、請求項6に記載の基板ホルダーを作製するに際し、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部に粗面化処理を施した後、該粗面部分に、フッ化黒鉛(CF)nまたはフッ素樹脂の微粉末(これらは潤滑性と撥水性とを兼ね備えた微粉末である)を用いる複合メッキによる潤滑処理を施すことにより、該潤滑処理部分の表面粗さRmaxを10μm以上、500μm以下とすることを特徴とする。上記複合メッキによれば上記粗面部分に、フッ化黒鉛(CF)nまたはフッ素樹脂からなる皮膜が形成される。上記フッ素樹脂しては、例えばPTFE、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)が挙げられる。
【0078】
また、請求項50に記載の基板ホルダーの製造方法は、請求項6に記載の基板ホルダーを作製するに際し、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部に粗面化処理を施した後、該粗面部分に、フルオロアルキル基を有するクロロシラン系化学吸着剤を用いる潤滑処理を施すことにより、該潤滑処理部分の表面粗さRmaxを10μm以上、500μm以下とすることを特徴とする。
【0079】
また、請求項51に記載の基板ホルダーの製造方法は、請求項6に記載の基板ホルダーを作製するに際し、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部に粗面化処理を施した後、該粗面部分に、トリアジンチオールを用いる有機メッキを施すことにより、該潤滑処理部分の表面粗さRmaxを10μm以上、500μm以下とすることを特徴とする。上記有機メッキの結果、上記粗面部分にトリアジンチオールからなる有機性薄膜が形成される。
【0080】
また、請求項52に係る基板ホルダーは、請求項8〜12のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置が有する基板ホルダーであることを特徴とする。
【0081】
また、請求項53に係る光ディスクは、請求項31〜38のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置で作製することを特徴とする。
【0082】
また、請求項54に係る相変化記録型光ディスクは、基板上に硫化亜鉛と酸化ケイ素の混合体からなる下部誘電体保護層、相変化記録層、硫化亜鉛と酸化ケイ素の混合体からなる上部誘電体保護層および反射放熱層を少なくとも構成層とする相変化記録型光ディスクにおいて、反射放熱層がAgを主成分とし、かつ上部誘電体保護層と反射放熱層との間に耐硫化性導電体層を設けることを特徴とするものである。
【0083】
また、請求項55に係る相変化記録型光ディスクは、請求項54に記載の相変化記録型光ディスクにおいて、耐硫化性導電体層の厚さが反射放熱層の厚さよりも薄いことを特徴とするものである。
【0084】
また、請求項56に係る相変化記録型光ディスクは、請求項54または55に記載の相変化記録型光ディスクにおいて、耐硫化性導電体層がAlまたはAlCux、AlSix、AlSixCuy、AlScX、AlTix、もしくはAlSixTiyからなるAlを含む合金膜であることを特徴とするものである。
【0085】
また、請求項57に係る相変化記録型光ディスクは、請求項54または55記載の相変化記録型光ディスクにおいて、耐硫化性導電体層がTi膜、Zr膜、もしくはHf膜からなる高融点金属膜またはTixy、TixSiy、Zrxy、ZrxSiy、Hfxy、もしくはHfxSiyからなる高融点金属を含む合金膜であることを特徴とするものである。
【0086】
また、請求項58に係る相変化記録型光ディスクは、請求項54または55に記載の相変化記録型光ディスクにおいて、耐硫化性導電体層がTaまたはTaxy、もしくはTaxSiyからなるTaを含む合金膜であることを特徴とするものである。
【0087】
また、請求項59に係る相変化記録型光ディスクは、請求項54または55に記載の相変化記録型光ディスクにおいて、耐硫化性導電体層がW膜またはWxy、もしくはWxSiyからなるWを含む合金膜であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0088】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、成膜中に基板が変形することを少なくできる。このため、より薄い基板を用いた場合にも、従来の基板と同様に取り扱うことができ、成膜工程のスループット低下を防ぐことができる。また、光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりを高めることができる。また、基板を基板ホルダーに真空チャックによって吸着でき、より薄い基板を用いた場合にも、基板の変形を防ぐことができる。このため、光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりを高めることができる。以上のことから、請求項1記載の発明によれば、より薄い光ディスク基板を用いても、光ディスク基板が変形せず、しかもスループットを低下させることがない光ディスク基板成膜装置を提供することができる。また、密着支持面と基板との密着力を調整することにより、基板を密着支持面から取り外しやすくする。このため、基板を真空チャックした場合にも基板を比較的小さな力で取り外すことができ、取り外しの際に基板が損なわれることを防ぐことができる。
【0089】
また、請求項2記載の発明によれば、成膜中に基板が変形することを少なくできる。このため、より薄い基板を用いた場合にも、従来の基板と同様に取り扱うことができ、成膜工程のスループット低下を防ぐことができる。また、光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりを高めることができる。また、基板を基板ホルダーに真空チャックによって吸着でき、より薄い基板を用いた場合にも、基板の変形を防ぐことができる。このため、光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりを高めることができる。以上のことから、請求項2記載の発明によれば、より薄い光ディスク基板を用いても、光ディスク基板が変形せず、しかもスループットを低下させることがない光ディスク基板成膜装置を提供することができる。また、基板が密着支持面から剥がれやすくしている。このため、真空チャックされた基板でも比較的小さな力で取り外すことができ、取り外しの際に基板が損なわれることを防ぐことができる。
【0090】
また、請求項3記載の発明によれば、成膜中に基板が変形することを少なくできる。このため、より薄い基板を用いた場合にも、従来の基板と同様に取り扱うことができ、成膜工程のスループット低下を防ぐことができる。また、光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりを高めることができる。また、基板を基板ホルダーに真空チャックによって吸着でき、より薄い基板を用いた場合にも、基板の変形を防ぐことができる。このため、光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりを高めることができる。以上のことから、請求項3記載の発明によれば、より薄い光ディスク基板を用いても、光ディスク基板が変形せず、しかもスループットを低下させることがない光ディスク基板成膜装置を提供することができる。また、成膜室と基板搬送室との間に圧力差をつけることによって基板ホルダーと基板とを吸着することができる。このため、本発明の光ディスク基板成膜装置の構成を簡易化するとともに、自動的に光ディスク基板の吸着を解除し、取り外しの際に基板が損なわれることを防ぐことができる。
【0091】
また、請求項4記載の発明によれば、基板ホルダーの基板保持面を粗面化することにより、基板の半径方向および円周方向の反りを抑えることできるうえ、基板が基板ホルダーに密着することがなくなり、基板ホルダーからの基板の剥離性が向上する。
【0092】
また、請求項5記載の発明によれば、基板保持面の少なくとも一部の表面粗さRmaxを10μm以上、500μm以下とすることで、上記請求項4の発明による効果が著しく高まる。
【0093】
また、請求項6または7記載の発明によれば、基板の反りが抑えられるうえ、スパッタ成膜後の基板ホルダーからの基板取出しの容易さが更に向上する。また、基板裏面に傷が発生しにくくなるという効果も得られる。
【0094】
また、請求項8記載の発明によれば、多孔性の部材をプラスチック製平面基板の非成膜面が接触する部分と接触する部分からはずれた部分に連なるように配置することにより、基板ホルダーの機械的強度を減じることなくプラスチック平面基板の熱変形防止効果と気密密着防止効果を維持できる。
【0095】
また、請求項9記載の発明によれば、平面基板の非成膜面と接触する領域内に多孔性部材を配置し、多孔性の部材の裏面側に、基板ホルダーを貫通する貫通孔を設けることにより、成膜時の飛着物が付着しないので多孔性部材を交換する必要が無く、基板の熱変形防止効果と気密密着防止効果を維持できる。
【0096】
また、請求項10記載の発明によれば、多孔性部材が熱伝導性の良い材料で構成されているので、基板ホルダー表面での熱分布の不連続が発生せず、最も安定して基板の熱変形防止効果と気密密着防止効果を維持できる。
【0097】
また、請求項11記載の発明によれば、多孔性部材が高分子材料または表面に高分子材料を被覆した材料で構成されているので、基板の表面に傷を付けることなく基板の熱変形防止効果と気密密着防止効果を維持できる。
【0098】
また、請求項12記載の発明によれば、多孔性部材が弾性体で構成されているので、基板の表面に傷を付けることなく平面基板の熱変形防止効果と気密密着防止効果を維持できる。
【0099】
また、請求項13記載の発明によれば、成膜時の基板変形を防ぐことができ、また基板裏面の全体が基板ホルダーに接触することがないので、真空吸着により基板取りだし動作が不安定になることを抑えることができる。また、基板変形が少なく、かつ安定な基板搬送を行うことができる光ディスク成膜装置を提供できる。
【0100】
また、請求項14記載の発明によれば、基板変形を防ぎかつ安定して取り出し動作を実行できる光ディスク基板の厚さが与えられる。
【0101】
また、請求項15記載の発明によれば、基板ホルダーの基板支持部のエッジにテーパ形状を付与することにより、基板支持部のエッジにおいて、基板に対し集中的にメカニカルな負荷がかかる事を防ぐことができ、基板の局所的な変形や基板表面が傷つくことを防ぐ事ができる。
【0102】
また、請求項16記載の発明によれば、基板支持部のエッジに付与するテーパ形状の最適テーパ角が与えられる。
【0103】
また、請求項17記載の発明によれば、基板支持部のエッジを基板の硬度より低い硬度の材料で構成することによって、基板表面が傷つくことを防ぐことができる。
【0104】
また、請求項18記載の発明によれば、基板ホルダーのエッジ部に付与する低硬度の材料の最適な寸法が与えられる。
【0105】
また、請求項19記載の発明によれば、基板ホルダーのエッジ部に付与する低硬度の材料の具体的な材料が与えられ、この材料を用いることにより基板表面の傷つきを防止する効果を高めることができる。
【0106】
また、請求項20〜30記載の発明によれば、基板ホルダーの基板設置面と被成膜基板の間に限定した部分、及び同範囲内の少なくとも基板と基板ホルダーの接触によって基板ホルダー側に形成される閉空間部分に、該基板ホルダー表面に設けた該給気部からガスを導入できるようになる。このため、スパッタ成膜後の成膜済み基板の取り出し・搬送を効率良く、且つ高速に行うことができる。また、光ディスク基板成膜装置筐体の該ガス導入口と該基板ホルダーの該ガス供給口が、機密性を持って連結した場合においても、光ディスク基板成膜装置筐体のガス導入路から該基板ホルダーの給気部にかけての流路内を真空排気することが可能となる。また、基板が基板ホルダーに密着して配置された場合においても、基板裏面の傷を防止することができるという極めて優れた効果を奏する。
【0107】
また、請求項31記載の発明によれば、該成膜領域の少なくとも一部を基板ホルダーと密着する構造により、該基板ホルダー表面に溝部を有しつつも、スパッタ成膜した際に、良好な基板機械特性及びメディア信号特性を得ることのできる基板ホルダーを実現することができた。すなわち、光ディスク基板成膜装置において、高速成膜、厚肉成膜、薄肉ディスクへの成膜、同一基板への2層以上の繰り返し成膜等を行なった場合でも、良好な基板機械特性及びメディア信号特性を確保した光情報記録媒体を安定して提供することが可能となった。また、連続成膜時の基板搬送トラブルをなくし、光ディスク基板成膜装置の稼動率を飛躍的に向上させることにより、生産の効率化、及び生産コストの低減を図ることができるという極めて優れた効果を奏する。
【0108】
また、請求項32記載の発明によれば、該溝部の稜線が該ディスク基板設置中心を中心に同心円状となるようにしたことにより、該基板ホルダー表面に形成した溝部が基板機械特性及びメディア信号特性に与える影響を飛躍的に低減させることが可能となった。
【0109】
また、請求項33または34記載の発明によれば、該溝部の稜線を形成するエッジ部にテーパーを設けたり、R加工を施したりすることにより、該基板ホルダー表面に形成した溝部の稜線部が該ディスク基板と接触することによる傷を低減することができた。
【0110】
また、請求項35または36記載の発明によれば、該基板ホルダーのディスク基板と接触する面に、フッ化黒鉛(CF)nやフッ素樹脂(PTFE、PFA、FEP)の撥水性粉末を用いた複合メッキ、或いはフルオロアルキル基を有するクロロシラン系化学吸着剤を用いた処理等の撥水処理を用いる潤滑処理を施すことにより、ディスク基板が基板ホルダーと接触することによる傷を飛躍的に低減することができた。
【0111】
また、請求項37記載の発明によれば、基板ホルダーのディスク基板と接触する面をPTFE、ポリアセタール等の潤滑性をもった材料で構成することにより、ディスク基板が基板ホルダーと密着保持することによる傷を飛躍的に低減することができた。
【0112】
また、請求項38記載の発明によれば、該溝部に通じる流路を形成することにより、光ディスク基板成膜装置からのディスク基板の搬出時において、この非接触空間からベントガスを導入することが可能となり、該ディスク基板を該基板ホルダーに密着させた場合に生じる真空吸着を未然に防ぎ、安定した基板搬送を行なうことができるようになった。
【0113】
また、請求項39記載の発明によれば、成膜中に基板が変形することを少なくできる。このため、より薄い基板を用いた場合にも、従来の基板と同様に取り扱うことができ、成膜工程のスループット低下を防ぐことができる。また、光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりを高めることができる。また、基板を基板ホルダーに真空チャックによって吸着でき、より薄い基板を用いた場合にも、基板の変形を防ぐことができる。このため、光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりを高めることができる。以上のことから、請求項39記載の発明によれば、より薄い光ディスク基板を用いても、光ディスク基板が変形せず、しかもスループットを低下させることがない光ディスク基板成膜方法を提供することができる。
【0114】
また、請求項40記載の発明によれば、基板を基板ホルダーに真空チャックによって吸着でき、0.6mm厚の基板を用いた場合にも、基板の変形を防ぐことができる。このため、貼り合わせ式の光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりを高めることができる。
【0115】
また、請求項41記載の発明によれば、基板ホルダーと基板とを吸着するための専用の構成を設けることなく、成膜の間中、基板ホルダーと基板とを吸着することができる。このため、本発明の光ディスク基板成膜装置の構成を簡易化すると共に、自動的に光ディスク基板の吸着を解除し、取り外しの際に基板が損なわれることを防ぐことができる。
【0116】
また、請求項42記載の発明によれば、基板ホルダーと基板とを吸着するための専用の構成を設けることなく、成膜の間中、基板ホルダーと基板とを吸着することができる。このため、本発明の光ディスク基板成膜装置の構成を簡易化すると共に、自動的に光ディスク基板の吸着を解除し、0.6mm以下の厚さの基板に対しても取り外しの際に基板が損なわれることを防ぐことができる。
【0117】
また、請求項43記載の発明によれば、成膜中に基板が変形することを少なくできる。このため、より薄い基板を用いた場合にも、従来の基板と同様に成膜することができ、成膜工程のスループット低下を防ぐことができる。また、光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりを高めることができる。また、基板を基板ホルダーに真空チャックによって吸着でき、より薄い基板を用いた場合にも、基板の変形を防ぐことができる。このため、光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりをいっそう高めることができる。以上のことから、請求項43記載の発明によれば、より薄い光ディスク基板を用いても、光ディスク基板が変形せず、しかもスループットを低下させることがない光ディスク基板成膜方法を提供することができる。
【0118】
また、請求項44記載の発明によれば、成膜時に裏面となる光ディスクの光入射面に傷が付くことを防ぎ、光ディスクの品質を高めると共に、光ディスク製品の歩留まりをいっそう高めることができる。
【0119】
また、請求項45記載の発明によれば、基板に熱を加えることなく保護膜を形成し、基板の熱による変形をいっそう低減することができる。
【0120】
また、請求項46記載の発明によれば、コーターなどの装置が無い場合にも保護膜を形成し、保護膜の形成方法を多様化することができる。
【0121】
また、請求項47記載の発明によれば、成膜条件が良く知られていて、しかも保護膜に適した材質の膜を選択することができる。このため、裏面の保護に好適な保護膜を形成することができる。
【0122】
請求項48記載の発明によれば、反りのない基板を歩留りよく製造することができる。
【0123】
また、請求項49、50または51記載の発明によれば、請求項6の基板ホルダーを簡便・安価に製造することができる。基板保持面の表面処理では、上記トリアジン処理が特に好ましく、比較的安価で高い表面潤滑効果を得ることができる。
【0124】
また、請求項52記載の発明によれば、請求項8〜12記載の発明の効果を得ることができる基板ホルダーが提供される。
【0125】
また、請求項53記載の発明によれば、生産の効率化、及び生産コストの低減を図った光ディスクを得ることができる。
【0126】
また、請求項54〜59記載の発明によれば、反射放熱層にAg系合金膜を用い、かつ硫化亜鉛と酸化ケイ素の混合体からなる上部誘電体保護層と反射放熱層との間に耐硫化性導電体層を設けた本発明の相変化記録型光ディスクによれば、反射放熱層にAlを用いた場合に比べて、より速くディスクをスパッタ成膜でき、温度上昇が小さいため反りも小さい。また耐硫化性導電体層の存在によりAgの劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0127】
以下、本発明の光ディスク基板成膜装置、光ディスク基板成膜方法、基板ホルダーの製造方法、基板ホルダー、光ディスクおよび相変化記録型光ディスクの最適な実施の形態について、添付の図面を参照して、実施の形態1〜17の順で詳細に説明する。
【0128】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の光ディスク基板成膜装置の基板搬送室と成膜室との上面を示す図であり、この基本的な構成は実施の形態1〜3で共通のものである。実施の形態1の光ディスク基板成膜装置は、光ディスク基板の面上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜装置である。実施の形態1〜3では、いずれも、この光ディスク基板に0.6mmの厚さを有するものを用いるものとする。なお、0.6mmの標記成形基板の厚みは、公差±50μmを含むものである。
【0129】
このうち、図示した構成は、基板搬送室10と、基板搬送室10の外周面に設けられた5つの成膜室2a〜2eと、各成膜室2a〜2eに向けて光ディスク基板1(図2)を固定するための基板ホルダー6a〜6fとを有している。また、基板搬送室10は、真空に保持されていて、この真空状態をブレークすること無しに光ディスク基板1を各成膜室に搬送する。搬出・搬入口20は、真空と大気圧との間のロードロック機構を有し、光ディスク基板1を基板ホルダーfにロード、アンロードする機能を持っている。なお、この基板ホルダー6a〜6fの構成については、後述するものとする。
【0130】
また、基板ホルダー6a〜6fには、基板搬送アーム4a〜4fが接続されていて、基板搬送アーム4a〜4fは、中心部30に固定されている。中心部30は、図示しない駆動部によって回転するよう構成されている。この回転に伴って基板ホルダー6a〜6fは、一つの光ディスク基板1を順次成膜室2a〜2eに設定することができる。
【0131】
実施の形態1では、以上のように構成された光ディスク基板成膜装置を、AgInSbTe、ZnS.SiO2、Alの3種類の膜を周知のスパッタリング技術によって生成するものとしている。このために実施の形態1では、成膜室2aおよび成膜室2bをZnS.SiO2膜(誘電体層)の成膜専用とし、成膜室2cをAgInSbTe膜(記憶層)の成膜専用とし、成膜室2dをZnS.SiO2膜(上層誘電体層)の成膜専用とし、さらに成膜室2eをAl膜(反射層)の成膜専用としている。そして、一つの光ディスク基板1が順次成膜室2a〜2eに設定されることにより、以上の各膜が連続的に成膜され、光ディスクが形成される。
【0132】
なお、実施の形態1〜3では、いずれの場合も、このようにして成膜される膜のトータル膜厚を370nmとした。また、スパッタ工程のタクトタイムは、25secである。
【0133】
図2は、図1に示した基板ホルダー6aの横断面図である。なお、他の基板ホルダー6b〜6fについては、図2に示した基板ホルダーと同様に構成されたものであるから、説明および図示を略すものとする。基板ホルダー6aは、光ディスク基板1を固定する円板であるホルダー部3と、ホルダー部3をその中心で支持するアーム部4aとを有している。このホルダー部3は、成膜室2aに向けて光ディスク基板1を固定する。
【0134】
光ディスク基板1は、内周マスク11と外周マスク12とによってホルダー部3上に固定され、内周マスク11、外周マスク12から露出している光ディスク基板1の領域S(被成膜領域)にのみ膜が生成される。なお、実施の形態1では、アーム部4aに真空チャック用の貫通孔7a(一点鎖線で示す)を設け、ホルダー部3に真空チャック部を設けている。このような真空チャック部により、光ディスク基板1は、ホルダー部3上へいっそう強固に固定されることになる。
【0135】
図3は、このようなホルダー部3の基本的な構成を説明する図であって、上方の図はホルダー部3の断面図であり、また、下方の図はホルダー部3の上面図である。なお、図3の断面図は、上面図中の破線A−A'に沿うものである。図3のように、ホルダー部3は、光ディスク基板1を光ディスク基板1の中心点に近い位置で固定する内周マスク11と、周縁部に近い位置で固定する外周マスク12とを有している。内周マスク11、外周マスク12は、いずれも光ディスク基板1の一部を覆い、ホルダー部3の上面との間に光ディスク基板1を挟み込むようにして光ディスク基板1を固定している。このため、光ディスク基板1表面のうち、内周マスク11、外周マスク12に固定されていない部分だけが被成膜領域Sとなる。なお、実施の形態1では、このような内周マスク11の半径を20mm、外周マスクの半径を59mmとした。
【0136】
このとき、実施の形態1では、被成膜領域Sの裏面全体と、被成膜領域S下のホルダー部3の上面とを密着させ、このホルダー部3の上面を密着支持面S'としている。なお、被成膜領域Sおよび密着支持面S'の範囲をそれぞれの近傍に矢印で示す。このような密着支持面S'には、光ディスク基板1の領域Sの裏面よりも硬度の小さい部材(保護部材)が設けられ、密着して固定することで光ディスク基板1の裏面に傷が付くことを防いでいる。成膜時に裏面となる面は、光ディスク読取時の光入射面となる面である。このことから、実施の形態1は、光ディスクの光入射面に傷が付くことを防ぎ、その品質を高めることができる。
【0137】
この保護部材としては、現在、光ディスク基板1としてポリカーボネイト基板が多く用いられていることから、ポリカーボネイドよりも硬度の小さいシリコンゴム部材が考えられる。図4は、ホルダー部3の密着支持面S'にシリコンゴム部材15を設けた状態を示す図である。
【0138】
以上のように構成された実施の形態1の光ディスク基板成膜装置では、以下の方法によって光ディスクを形成する。先ず、光ディスク基板1が、基板ホルダー6fの内周マスク11、外周マスク12および真空チャックによってホルダー部3の上面に固定される。固定された光ディスク基板1は、図1に示した搬出・搬入口20から光ディスク基板成膜装置内に搬入される。このとき、光ディスク基板1の裏面は、図3のように、密着支持面S'と密着している。
【0139】
続いて、成膜室2a〜成膜室2eに向けて基板ホルダー6fを順次設定し、基板ホルダー6fに固定された光ディスク基板1に連続的に誘電体層、記憶層などとなる各膜を成膜する。この成膜条件は、以下の通りである。
1.ZnS.SiO2膜(誘電体層)
投入電力:3KW,
成膜室気圧(Arガス圧力):0.27Pa(2×10-3Torr)
2.AgInSbTe膜(記憶層)
投入電力:0.4KW,
成膜室気圧(Arガス圧力):0.27Pa(2×10-3Torr)
3.ZnS.SiO2膜(上層誘電体層)
投入電力:0.4KW,
成膜室気圧(Arガス圧力):0.27Pa(2×10-3Torr)
4.Al膜(反射層)
投入電力:9KW,
成膜室気圧(Arガス圧力):0.27Pa(2×10-3Torr)
なお、このとき、基板搬送室10の圧力は、0.013Pa(1×10-4Torr)である。
【0140】
成膜が完了すると、実施の形態1の光ディスク基板成膜装置では、内周マスク11、外周マスク12を取り外すマグネット部材(図示せず)を光ディスク基板1の上方に近づける。内周マスク11、外周マスク12は、マグネット部材との間に発生する磁力によってマグネット部材側に引かれ、ホルダー部3から取り外される。このとき、光ディスク基板1は、真空チャックによって密着支持部S'に密着している。続いて、内周マスク11、外周マスク12が外された光ディスク基板1の中央部分に光ディスク基板吸引用のロボット(図示せず)が接近し、光ディスク基板1を吸引して取り外す。以上の処理により、光ディスク基板成膜装置で行われる工程が完了する。
【0141】
このような実施の形態1の光ディスク基板成膜装置および光ディスク基板成膜方法では、光ディスク基板1が密着支持面S'に密着しているから、成膜中に光ディスク基板1の変形が起こり難くなる。このため、実施の形態1は、光ディスク基板1を薄くした場合にも光ディスク基板1の変形を抑えることができる。
【0142】
なお、本発明は、このような実施の形態1に限定されるものではない。例えば、実施の形態1では、密着支持面S'に光ディスク基板1よりも硬度の小さい保護部材を設けるようにしている。しかし、このような構成に代えて、例えば、成膜工程の以前に光ディスク基板1の裏面に保護膜を形成する工程(裏面保護膜形成工程)を入れるようにしても良い。このような裏面保護膜形成工程としては、光ディスク基板1の裏面にUV硬化樹脂をスピンコートするものが考えられる。
【0143】
また、光ディスク基板1の裏面に予めスパッタリングによって保護膜を形成するものも考えられる。なお、この方法によって保護膜を形成する場合、形成される保護膜は、シリコン窒化膜と、シリコン酸化膜と、チタン窒化膜と、インジウム、チタン、酸素の化合物とのうちのいずれか一つ、あるいはこの複数の積層膜とすることが考えられる。以上のように、光ディスク基板1の裏面に保護膜を形成する場合、ホルダー部3の密着支持面S'には、特に保護部材を設ける必要が無く、母材(ステンレスなど)の状態であっても良い。
【0144】
さらに、実施の形態1では、例えば、図5のように、内周マスク11、外周マスク12が取り外された光ディスク基板1を密着支持面S'から剥がす爪部40を設けても良い。なお、図5は、爪部40以外は前述した図3と同様の図面であるから、同一の部材については同一の符号を付し、説明を一部略すものとする。爪部40は、図中の光ディスク基板中心に向かって移動するよう構成されている。この移動範囲は、例えば、図5上方の断面図中の位置から光ディスク基板1の周縁部よりも2mm内側(直径60mmの光ディスク基板であれば、直径58mmの位置)とする。
【0145】
このような爪部40は、内周マスク11、外周マスク12が取り外された光ディスク基板1に向かってその2mm内側まで移動する。この移動によって、爪部40の傾斜部40aは、光ディスク基板1の裏面とホルダー部3の上面との間に入り込み、光ディスク基板1を密着支持面S'から機械的に剥がすよう作用する。このため、光ディスク基板取り外し用のロボットは、比較的弱い吸引力で光ディスク基板1を吸引することができるようになる。
【0146】
このような構成は、成膜中に光ディスク基板1を充分に吸着しながら、取り外しの際の吸引力を弱めることができ、より薄い光ディスク基板1を用いた場合にも、取り外し時に光ディスク基板が損なわれることを防ぐことができる。
【0147】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2は、先に述べたホルダー部3の密着支持面S'に溝部を設けたものである。図6は、実施の形態2の溝部を有するホルダー部23の断面図(図中、上方)および上面図(図中、下方)である。なお、図6の断面図は、上面図中の破線A−A'に沿うものである。なお、図6では、説明の便宜上、断面図には光ディスク基板1が固定された状態を示し、上面図では光ディスク基板1を図示せず、ホルダー部23の上面を示すものとする。
【0148】
図6のように、ホルダー部23は、ホルダー部3と同様に内周マスク21と、外周マスク22とを有している。そして、このホルダー部23の密着支持面S'には、溝部23aが設けられている。実施の形態2の溝部23aは、上面図に示したように、ホルダー部23の中心で直交する2本の直線と、ホルダー部23と中心が一致した2つの同心円とを組み合わせた形状を有している。
【0149】
このように構成することにより、実施の形態2は、密着支持面S'と光ディスク基板1とが部分的に密着することになり、真空チャックされた光ディスク基板1を比較的弱い力で取り外すことができる。このため、光ディスク基板取り外し用のロボットの吸引力を弱く設定することができ、光ディスク基板1を薄くした場合にも、取り外しの際に光ディスク基板が損なわれることを防ぐことができる。
【0150】
なお、本発明は、このような実施の形態2に限定されるものではない。例えば、ホルダー部23に設けられる溝部23aの形状は、光ディスク基板1が密着支持面S'と密着する部分と離れる部分との割合が適切になるものであればどのようなものであっても良い。
【0151】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1で説明した光ディスク基板成膜装置のように、基板搬送室10と、少なくとも成膜室2aとを備え、基板搬送室10、成膜室2aの間に基板ホルダーを配置するよう構成されたものにおいてなされるものである。そして、この基板ホルダーに、基板搬送室10と成膜室2a〜2e(実施の形態3では、光ディスク基板成膜装置が成膜室2a〜2eを備え、このすべての基板ホルダーに貫通孔を設けたものとして以降の説明を行う)とに通じる貫通孔を設けている。さらに、成膜中、成膜が行われている成膜室2a〜2eを基板搬送室よりも高い圧力に保つようにしたものである。
【0152】
以下、このような実施の形態3について説明する。図7は、実施の形態3の貫通孔33aを有するホルダー部33の断面図(図中、上方)および上面図(図中、下方)である。なお、図7の断面図は、上面図中の破線A−A'に沿うものである。なお、図7では、説明の便宜上、断面図には光ディスク基板1が固定された状態を示し、上面図では光ディスク基板1を図示せず、ホルダー部33の上面を示すものとする。
【0153】
図7のように、ホルダー部33は、内周マスク31と、外周マスク32とを有している。そして、ホルダー部33の密着支持面S'には、貫通孔33aが設けられている。実施の形態3の貫通孔33aは、上面図に示したように、ホルダー部33の中心から放射状に配置されていて、その一方の端部が成膜室2a〜2eと通じていて、他方の端部が基板搬送室10に通じている。
【0154】
以上のように構成された実施の形態3の光ディスク基板成膜装置では、以下の方法によって光ディスクを形成する。先ず、光ディスク基板1が、基板ホルダー6fの内周マスク31、外周マスク32によってホルダー部33の上面に固定される。そして、図1に示した搬出・搬入口20から光ディスク基板成膜装置内に搬入される。このとき、光ディスク基板1は、図7の断面図のように、貫通孔33aを除く部分がホルダー部33の密着支持面S'と密着している。
【0155】
続いて、成膜室2a〜成膜室2eに向けて基板ホルダー6fを順次設定し、基板ホルダー6fに固定された光ディスク基板1に実施の形態1で述べた成膜条件で各膜を成膜する。このとき、実施の形態1で述べた成膜条件によれば、成膜室2a〜2eの気圧はいずれも0.27Pa(2×10-3Torr)である。これに対して、基板搬送室10の気圧は、0.013Pa(1×10-4Torr)である。したがって、光ディスク基板1は、この圧力差により貫通孔33aを除く密着支持面S'と成膜の間中密着することになる。
【0156】
このように構成することにより、実施の形態3は、真空チャックを用いることなく光ディスク基板1を成膜の間中ホルダー部33に密着しておくことができる。このため真空チャックの設備が無い環境でも本発明の光ディスク基板成膜装置が使用でき、装置の使い勝手を高めることができる。また、専用の真空チャックの機構を設ける必要がないことから、光ディスク基板成膜装置の構成を簡易にすることができる。
【0157】
さらに、実施の形態3では、このため、真空チャック解除のタイミングを制御することなく成膜の終了と同時に光ディスク基板1の真空チャックがなくなる。このため、光ディスク基板1を薄くした場合にも、光ディスク基板が取り外しの際に損なわれることを自動的に防ぐことができる。
【0158】
なお、本発明は、このような実施の形態3に限定されるものではない。例えば、ホルダー部33に設けられる貫通孔33aの配置および形状は、光ディスク基板1が密着支持面S'と密着する部分と離れる部分との割合が適切になるものであればどのようなものであっても良い。
【0159】
(実施の形態1〜実施の形態3の効果の検証)
本発明の発明者らは、実施の形態1〜実施の形態3で説明した光ディスク基板成膜装置および光ディスク基板成膜方法を用いて成膜を行った。そして、このときの光ディスク基板の最大反り量を測定し、実施の形態で得られる効果を検証した。以下にこの結果を示す。なお、最大反り量とは、成膜後の光ディスク基板のうち、最も反りが大きかった部位の反り量である。また、反り量は、光ディスク基板の理想的な面に対し、実際の光ディスク基板面の接線がなす角度で定義した(以降、最大反り角度という)例と、光ディスク基板の理想的な面と実際の光ディスク基板面との位置の相違を長さで表した(以降、最大反り量という)例との二つについて示す。
【0160】
1.最大反り角度の例
従来の光ディスク基板成膜装置および方法で成膜された光ディスク基板
…4度
実施の形態1の光ディスク基板成膜装置および方法で成膜された光ディスク基板…0.6度(密着支持面:シリコンゴム、裏面の保護膜なし)
…0.5度(密着支持面:ステンレス、裏面の保護膜:UV硬化樹脂)
実施の形態2の光ディスク基板成膜装置および方法で成膜された光ディスク基板…0.5度(密着支持面:ステンレス、裏面の保護膜:UV硬化樹脂)
実施の形態3の光ディスク基板成膜装置および方法で成膜された光ディスク基板…0.5度(密着支持面:ステンレス、裏面の保護膜:UV硬化樹脂)
【0161】
2.最大反り量の例
図8は、1.2mm、0.7mm、0.6mm、0.3mmの光ディスク基板を用い、この各々に対して先に述べた本発明の実施の形態1ないし3の装置および方法で成膜を行い、この最大反り量と、同じ厚さを持った光ディスクに対して従来技術を用いて成膜を行った際の最大反り量とを比較した図である。この際の標記成形基板の厚みは、公差±50μmを含むものである。また、図9は、図8に示した最大反り量と光ディスク基板厚との関係をグラフ化して示す図である。なお、実施の形態3の1(実施の形態3−1)、2(実施の形態3−2)の別は、ホルダーの形状が相違することによるもので、実施の形態3−1が図6に示したホルダー部23を用いた例、実施の形態3−2が、図7に示したホルダー部33を用いた例を示すものである。
【0162】
図8、図9によれば、貼り合わせの光ディスクに使用される0.6mm厚基板の最大反り量は、従来技術で成膜した場合には550μm、本願発明を用いて成膜した場合には290〜300μmと約半分程度に低減していることが明らかである。なお、貼り合わせ式の光ディスクの製造工程において、成膜後の基板は、この後工程で貼り合わされて反りを矯正される。しかし、最大反り量が550μmある基板では、この矯正によっても貼り合わされた基板の反り量を製品としての規格を満たす程度に小さくすることは難しい。これに対して本願発明で得られた最大反り量290〜300μmの基板では、貼り合わせの工程によって基板の反り量を規格の許容範囲内に収めることが充分可能である。
【0163】
さらに本願発明の実施の形態1〜3によれば、0.6mm厚以下の厚さを持つ基板に対しても、最大反り量を300μm台とすることができる。このような本願発明は、0.6mm以下の厚さを持つ基板を用いて貼り合わせ式の光ディスク形成を実現し得る。
【0164】
(実施の形態4)
図10は基板ホルダー201の断面図であって、光ディスク基板221を保持した状態を示すものである。図11は図10の平面図であって、基板を保持する前の状態を示すものである。この図10、11において符号202は外周マスク、符号203は内周マスクである。この基板ホルダー201では、基板221裏面と接する基板保持面の全面にサンドブラスト加工による粗面化処理が施されており、この粗面化処理部(粗面部)204の表面粗さRmaxは40μm以上、50μm以下の範囲内にある。
【0165】
光ディスク基板221として、射出成形により得られた厚さ0.6mmのポリカーボネート基板を上記基板ホルダー201で保持し、このホルダーをスパッタ成膜装置にセットし、誘電体層としてZnS.SiO2 、記録層としてAglnSbTe、反射層としてAlをそれぞれ成膜した。
【0166】
すなわち成膜に際しては、基板221を基板ホルダー201に載せ、基板221の中心部を内周マスク203で、外周部を外周マスク202でそれぞれ固定し、スパッタリングにより所望の薄膜を成膜した。この場合、成膜のトータル膜厚を350〜400nmの範囲にして実験を行った。
【0167】
(比較例1、2)
比較用の基板ホルダーとして、(1)図12に示す従来の基板ホルダー211と、(2)基板保持面の全面が平坦に仕上げられ(粗面化処理が施されていない)、したがって基板221裏面の全面に密着した状態で基板を保持する形態の基板ホルダー(図略)とを用意し、実施の形態4と同一条件でスパッタリングにより所望の薄膜を成膜した。実施の形態4および比較例1、2の結果を表1に示す。なお、図12において、212は外周マスク、213は内周マスク、214は溝、221は光ディスク基板を示す。
【0168】
【表1】

【0169】
表1で明らかなように、本発明を適用することで基板の変形が抑えられ、しかも基板ホルダーからの基板取出しも容易に行うことができた。この結果、本発明により、品質の良い(基板反りのない)成膜基板を生産性良く(取出し性良好)製造することができるようになった。これに対し、比較例1、2に係る基板ホルダーでは基板が大きく変形するか、または基板ホルダーからの基板取出しが難しくなる問題があった。図12の基板ホルダーでは、基板取出し性が良好であるものの基板の反りが大きくなったのは、円環状の溝214を設けたからである。
【0170】
(実施の形態5)
基板保持面の一部または全面にサンドブラスト加工による粗面化処理を施した後、この粗面部分にトリアジンチオールを用いる有機メッキを施すことにより、表面粗さRmaxが40μm以上、50μm以下の範囲内にある基板ホルダーを用意した。上記有機メッキは、一般的な金属メッキと同様にトリアジンチオールの電解液中でメッキを行うことにより、金属皮膜ではなくトリアジンチオールの有機皮膜が形成されるものである。このトリアジン処理では、皮膜の厚さのみを容易に高精度に制御することができるうえ、金属メッキにはない潤滑性と撥水性を得ることができる。したがって、金属メッキと同様な設備があれば、簡単にトリアジンチオールの有機皮膜を作製することが可能である。また、この有機皮膜は、比較的安価に形成できるだけでなく、高温環境下でも剥離しにくいという長所がある。
【0171】
したがって、実施の形態5の基板ホルダーでは上記粗面化処理と、トリアジンチオールの有機皮膜による表面潤滑処理とを行ったので、基板の反り防止効果に加えて、粗面化処理のみを行ったホルダーに比較して、(1)基板取出し性(取出しの安定性:取出しの容易さ)が更に向上するとともに、(2)取り出した基板裏面の傷が低減するという効果も得られた。上記(1)(2)の効果は、基板ホルダーの基板保持面に潤滑性を付与したことによるものであると考えられる。
【0172】
(実施の形態6)
実施の形態4と同様であるが基板ホルダーの基板保持面の一部をPTFEとした。そのため、あらかじめサンドブラスト加工により片面を粗面化したPTFE板を作製し、これを基板ホルダーの所定部分に接着した。スパッタ装置で用いられる基板ホルダーおよびマスクは一般的に金属材料で構成されるが、本実施の形態では基板と接する部分のみを自己潤滑性に富むプラスチックで構成することで、基板の傷を防ぐことが可能となる。その結果、実施の形態5と同様に基板の反り防止・取出し性向上・基板の傷低減に関して大きな改善効果が得られた。なお、PTFEの代わりに、POM(ポリアセタール)樹脂などを用いることもできる。また、自己潤滑性プラスチックを基板ホルダーの一部に使用することで、基板ホルダーの構造・仕様を大幅に変更することなく、所期の効果が得られる。すなわち、基板ホルダーの必要な部分にのみ高価な材料を用い、その他の部分には従来どおりの金属材料を用いることにより、コスト的にも大きな負担にならないで、本発明のホルダーを実現することができた。
【0173】
以上、本発明を実施の形態4〜5をもとに説明したが、表面粗さなどは基板変形に影響のない範囲で大きくしても何ら問題はない。また、本発明は光ディスク基板のスパッタ装置用の基板ホルダーに限られるものではなく、薄肉で変形しやすい各種基板にスパッタ処理を施すための基板ホルダーに有効に適用することができるものである。
【0174】
(実施の形態7、8)
図13は、本発明の実施の形態7を示す要部平面概略図で、図中、301は基板ホルダー、302は光記録媒体の基板、303はセンターホール部、304は多孔性部材、305は溝部である。図14は、実施の形態7における基板ホルダー301と、当該基板ホルダー301に装着した光記録媒体の基板302とを示す部分断面概略図である。図15は、本発明の基板ホルダーに用いる多孔性部材304の形状の一例を説明するための図で、図中、304pは平面部である。
【0175】
実施の形態7は、基板ホルダー301に溝部305が設けられ、その溝部305に気体の通過が可能な多孔性部材304が配されている。溝部305は、基板302に接触する領域内から非接触領域内に延伸するように配され、多孔性部材304が基板302に接触する領域を、真空槽内の空間で露出する領域とを有するように設定される。このとき、多孔性部材304の表面は、基板ホルダー301の表面と同一の高さとなるように配される。
【0176】
図16は、本発明の実施の形態8を示す要部平面概略図である。図17は、本発明の実施の形態8における基板ホルダー301と、当該基板ホルダー301に装着した光記録媒体の基板302とを示す部分断面概略図である。
【0177】
実施の形態8は、基板ホルダー301における、プラスチック製の基板302の非成膜面に接触する領域内に溝部305が設けられ、その溝部305に多孔性部材304が配される。そして、多孔性部材304の裏面側に多孔性部材304より小面積の貫通孔306を備える。貫通孔306の面積を多孔性部材304の面積より小さくするのは、多孔性部材304を安定して保持する面を確保するためである。
【0178】
実施の形態7、8において、多孔性部材304の表面は、基板ホルダー301の基板接触面と同一の高さを有しており、プラスチック製の基板302の変形を阻止するとともに、多孔性であるがために気体の通過が容易となるため、基板取り出し時における基板ホルダー301と基板302との気密密着(真空吸着)による搬送障害(例ば移送ロボットによる基板302の取り損ないや、それに伴うロボットアームの変形等)を避けることができる。
【0179】
多孔性部材304は、基板ホルダー301が受ける熱エネルギによる基板ホルダー301内部の温度分布が生じないように、熱伝導性の良い材料で構成することが好適である。また、基板表面に微少な傷などを生じさせないようにするために、高分子材料または表面に高分子材料を被覆した材料や、弾性体材料で構成するとよい。
【0180】
多孔性部材304は、粒子材料を加熱成形法や常温のプレス成形法等によって一体化成形することにより得られ、粒子間の連続空隙により通気性を得る。この多孔性部材304に用いる熱伝導性の良い粒子材料としては、小径のAg、Au、Cu、Al、Mg、黄銅などの良熱伝導性で比較的柔かい材質の金属ボールが好適である。このとき、単なるボール形状のままでは、各金属ボールにおける基板302との接触が点接触となるため安定しない。したがって、金属ボールをプレス(常温)やホットプレスにより成形し、図15に示すごとくに、ボールの一部に平面部304pを持たせたものなどがを用いるのが良い。あるいは、基板302との接触面のみに平面部を有していれば良いので、多孔性部材304を切削して平面性を持たせるようにしてもよい。
【0181】
また、多孔性部材304に用いる高分子材料および弾性体としては、基板ホルダー301の温度分布の均一性が保てる場合(例えば±5℃以内)は単体の材料でもよいが、均一性が保てない場合は、導電性または良熱伝導性の物質との混合物とした方が良い。導電性または良熱伝導性で混合に適した材料としてはAgの微粒子、黒鉛の粉末などの無機導電材やテトラフルオロほう酸テトラn−ブチルアンモニウムなどの有機導電材を用いることができる。
【0182】
実施の形態7および実施の形態8の基板ホルダーを具体化した実施例を以下に説明する。
【0183】
(実施例1)
基板ホルダー301のプラスチック平面基板セット面上に形成した深さ2.0mm、幅10mm、長さ30mmの長穴形状の溝部305にちょうど入るように、直径が約0.5〜1mm程度の球状の銅粒を原材料として10〜40体積%の空隙が残るよう成形型により加圧成形し、多孔性部材304を製作した。この多孔性部材304を、その表面が基板ホルダー301の基板セット面と同一平面となるように溝部305の内部に配置した。得られた基板ホルダー301に、ポリカーボネート性の120φサイズで厚さ0.6mmの光ディスク用の基板302をセットした。長穴形状の溝部305は、基板302の裏面に接触する領域の長さが約20mm、基板302から外れた領域の長さが約10mmとなるように配されている。また、基板302から外れた領域にある多孔性部材304の前面側には、成膜物質が直接付着しないようにステンレス製マスクを配置した。
【0184】
上記の基板ホルダー301を用いて、約150nm厚みの第一誘電体層、約30nm厚みの記録層、約20nm厚みの第二誘電体層、および約60nm厚みの反射層をトータル90秒かけて真空雰囲気で順次成膜した。光ディスク用の基板302の温度は、成膜面で110〜125℃まで上昇したが、基板ホルダー301の内部の温度分布は、1000枚成膜後で±2〜3℃の範囲であり、基板302の機械的な変形も生じなかった。また真空装置内での基板搬送上の脱着トラブルも起きなかった。さらに、光ディスクとしての特性評価を行ったところ、ラジアル方向またはタンジェンシャル方向のチルトはそれぞれ±0.40°、±0.15°の範囲であり、記録消去上の信号異常は見られなかった。
【0185】
(実施例2)
基板ホルダー301のプラスチック平面基板セット面上に形成した深さ1.5mm、幅10mm、長さ20mmの長穴形状の溝部305にちょうど入るように、直径が約0.5〜1mm程度の球状の銅粒を原材料として10〜40体積%の空隙が残るように成形型により加圧成形し、多孔性部材304を作製した。この多孔性部材304を、その表面が基板ホルダー301の基板セット面に同一平面となるように溝部305の内部に配置した。長穴形状の溝部305は、光ディスク用の基板302を基板ホルダー301に装着したときに、その基板302に全て覆われるように設定されている。また基板ホルダー301には、溝部305の中央の位置に幅5mm、長さ10mmの長穴形状の貫通孔306を形成してある。上記の基板ホルダーを用いて、実施例1と全く同じ手順で光ディスク用基板に各材料を真空成膜したところ、実施例1と同じ良好な評価結果を得た。
【0186】
(実施例3)
多孔性部材304として、直径が約0.5〜1mm程度の銅粒またはプラスチック粒の表層に、黒鉛微粉を混合した接着性高分子材料(たとえば、カーボンフィラー入りアクリル系コート剤;藤倉化成製ドータイトXC12)を微量コートした後、実施例1および2の寸法に固化したものを用い、実施例1および2と同様にテストした。熱変形および光ディスクとしての評価結果は、実施例1と同じ良好な評価結果であった。
【0187】
(比較例3)
基板ホルダーとして、大きさ10φの貫通孔が4個設けられたホルダを使用し、その他成膜条件等を上記実施例と同じにして、光ディスク用の基板に各材料を真空成膜した。基板の温度は、同様に110〜125℃まで上昇した。このとき、基板の機械的な変形が見られた。ただし、この場合は貫通孔があるため、成膜後の基板取り損ないは発生しなかった。さらに、光ディスクとしての特性評価を行ったところ、ラジアル方向またはタンジェンシャル方向のチルトはそれぞれ±1.20〜2.50°以上、±0.70〜2.50°以上の範囲となり、記録消去上の異常が認められた。
【0188】
(比較例4)
基板ホルダーとして、貫通孔および溝部等を有していない平面ホルダを使用し、その他成膜条件等を上記実施例と同じにして、光ディスク用の基板に各材料を真空成膜した。基板温度の上昇は、比較例3と同様であったが、このとき、基板の機械的な変形は見られなかった。光ディスクとしての特性評価においても、実施例1と同等の評価結果が得られた。しかし、約10%程度の確率で基板の気密吸着が発生したため成膜後の基板取り損ないが発生した。
【0189】
(実施の形態9)
図18は、実施の形態9の光ディスク基板成膜装置の要部概略構成を示し、図において、401は基板ホルダー、401aは成膜領域の基板裏面において基板ホルダーが基板に接触する部分である基板支持部、402は内周マスク、403は外周マスク、404は基板、Winは内周マスク402の外周側エッジから基板支持部401aの内周側エッジまでの幅、Woutは外周マスク403の内周側エッジから基板支持部401aの外周側エッジまでの幅である。ここでは、内周マスク402として、直径41mmのものを用いた。また、外周マスク403は基板404の最外周から0.5mm内側までをマスクするものを用いた。基板404の裏面が基板ホルダー401に接する範囲Cは、内周マスク402の外周側エッジから4mm外側の位置から、外周マスクの内周側エッジから1mm内側の位置(すなわち、Win=4mm、Wout=1mm)とした。
【0190】
上記のごとくの構造を用いて図21に示すような構成による光ディスクを作製した。作製方法はいずれもRFマグネトロンスパッタ法を用い、装置としてはいわゆる枚葉型スパッタ装置を用いた。比較のために、図19および図20に示すような構造を有する基板ホルダーを用いて同様な条件で光ディスクを作製した。なお、図20の基板ホルダーは、従来より使用されている構成で、前述したごとくに基板ホルダー401が基板404の裏面の全面に接触するので、基板の反りに対しては影響は小さいが、基板搬送上の不具合が生じ易いものである。
【0191】
これらのディスクの反り量を比較した結果を図22に示す。反り量はディスクの半径58mmの位置における成膜前後の差として示す。この結果から本発明の構成は、図20の構成のものと同程度の反り量のディスクが得られた。
【0192】
(実施の形態10)
図18に示した基板ホルダーの形状で、図23に示すように、WinおよびWoutの寸法を変えてNo.1〜No.14のサンプルを作製し、実施の形態9と同様に成膜を行って(No.1は実施の形態9と同じ構成)、基板の反り量と100枚連続成膜した際に基板脱着が失敗した枚数とを評価した。図23に示す結果から、基板の反り量を100μm程度に小さく抑え、かつ基板脱着をスムーズに行うためには、Winが2〜10mm、Woutが0.5〜5mmの範囲で基板ホルダーの基板支持部を基板に接触させるようにするとよいことが解る。
【0193】
(実施の形態11)
図25は、本発明による実施の形態11の構成を示す部分概略構成図である。本実施の形態は、上記の実施の形態9で用いた図18の基板ホルダーの基板支持部1aにおけるエッジ部401eに、テーパ面tによるテーパ形状を付与したものである。このようなテーパ形状を有する基板ホルダーのサンプルであって、図24に示すごとくのサンプルNo.15〜No.21を作製し、それぞれについて実施の形態9と同様に成膜を行って評価した。さらにこのとき基板404とエッジ部401eとが接する部分の基板表面を顕微鏡で観察した。なお、テーパ部のテーパ角θは図25に示す様に基板ホルダー401の基板接触面と、テーパ部のテーパ面tとのなす角として定義される。
【0194】
図24の結果からも分かるように、エッジ部のテーパ角θが0および0.5°の場合に成膜した基板の一部分に傷が生じているのが観察され、1.0°以上では基板には傷は生じなかった。また、基板変形量(反り量)は、テーパ角θが0.5〜2.0°の範囲では、テーパ形状を設けない場合(テーパ角=0°)と同等で100μmであったが、テーパ角θが2.5°では150μmに増大し、3.0°ではさらに増大して200μmであった。したがって、エッジ部401eに1.0〜2.0°の範囲でテーパ角θを付与することにより、基板の反り量を小さくでき、かつ基板ホルダーのエッジ部401eによる基板の傷などを防ぐことができる。
【0195】
(実施の形態12)
図27は、本発明による実施の形態12の構成を示す部分概略構成図である。本実施の形態は、上記の実施の形態9で用いた図18の構成のエッジ部401eに、幅Hのサイズのシリコンゴム5が設けられている。上記の幅Hは、図27に示す様に基板404の半径方向のシリコンゴム5の長さとして定義される。図27に示す構成で、図26に示すごとくの基板ホルダーのサンプルNo.22〜No.27を作製し、それぞれについて実施の形態11と同様に成膜を行い評価した。図26に示すように、本実施の形態の構成により、基板の反り量を100μm程度に小さく抑えることができ、かつ基板ホルダーのエッジ部401eによる基板の傷などを防ぐことができた。このとき、シリコンゴムの幅Hが0.1mm未満では基板変形によるエッジ部401eへのメカニカルな負荷を回避できず、また、0.5mmを越えると基板変形の抑制が期待できない。なお、本実施の形態ではエッジ部401eにシリコンゴムを用いたが、本実施の形態で得られた効果はシリコンゴムに限定されるものではなく、樹脂成形体等、基板の硬度より低い硬度をもつ材料であれば、適用することができる。
【0196】
(実施の形態13)
図28に、一般的な光ディスク基板成膜装置のロードロック室の概略断面図を示す。図において、501は基板、502はスタックリング、503は内周マスク、504は外周マスク、505は電磁石、506は光ディスク基板成膜装置外部搬送用基板ホルダー(以下、外部搬送用基板ホルダーと記載する)、507は光ディスク基板成膜装置内部搬送用基板ホルダー(以下、内部搬送用基板ホルダーと記載する)、508は光ディスク基板成膜装置内部搬送用アーム、509は磁石、510はOリング、511は光ディスク基板成膜装置筐体、512はスタックリングよけ溝、513はロードロック室である。本実施の形態13では、図に示す構成の光ディスク基板成膜装置を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0197】
本発明の光ディスク基板成膜装置について、本発明を適用した基板ホルダー部を図29に示す。522は光ディスク基板成膜装置筐体側給気口(筐体側給気口と記載する)、523は光ディスク基板成膜装置筐体側給気路(以下、筐体側給気路と記載する)、524は基板ホルダー側給気口、525は基板ホルダー側給気路である。
【0198】
先ず、図28に基づいて光ディスク基板成膜装置の基板搬入・搬出過程を説明する。基板501は、外部搬送用基板ホルダー506のオンした電磁石505に磁気的に取り付けられた内周マスク503および外周マスク504上に設置され、ロードロック室513に搬送される。この際、外部搬送用基板ホルダー506と内部搬送用基板ホルダー507および光ディスク基板成膜装置筐体511とによってロードロック室513の閉空間が形成される。次に、外部搬送用基板ホルダー506の電磁石505をオフし、内周マスク503、外周マスク504および基板501は内部搬送用基板ホルダー507に設置された磁石509により磁気的に固定される。
【0199】
また、図28においては省略し、明記してないが、ロードロック室513は真空排気ポンプにより排気され、所定の真空度に達した時点で内部搬送用基板ホルダー507がスパッタ成膜室に移動し、所望の成膜を行なう。スパッタ構成層が多層ある場合は、内部搬送用基板ホルダー507は順次任意数のスパッタ室を経由する。内部搬送用基板ホルダー507は、スパッタ成膜終了後にロードロック室513の所定の位置に戻ってくる。
【0200】
また、図28においては省略し、明記してないが、ロードロック室513にはベント用のガス、一般的には窒素ガスが導入され、該ロードロック室内は大気圧に解放される。基板を基板ホルダーに密着させる構造においては、この時点で基板と基板ホルダーが真空吸着し、基板ホルダーからの基板の脱離が困難となる。
大気解放後は、外部搬送用基板ホルダー506の電磁石505をオンして外部搬入用基板ホルダー506に内周マスク503、外周マスク504および基板501が固定され、光ディスク基板成膜装置外に搬送される。
【0201】
基板ホルダーを図29に示す構造とすることにより、光ディスク基板成膜装置からの基板搬出時の基板と基板ホルダーの真空吸着の問題を解決することができた。以下に説明する。
【0202】
図29において、内部搬送用基板ホルダー507がロードロック室513の所定の位置に設置されている状態において、筐体側給気路523が基板ホルダー側給気路525と連結される構造とした。この連結においては、筐体側給気路523と基板ホルダー側給気路525がOリング510等によって機密性を持った結合状態とする方法と、連結部に機密性を持たせない方法がある。機密性を持たせる方法としては、上記の他に双方の連結時にテーパーを持たせる等の様々な方法があるがこれに限るものではない。機密性を持たせた場合と持たせない場合の動作の差異については後述する。
【0203】
図29は機密性を持たせない場合の例であり、以下、この構成に関して説明する。基板ホルダー側給気口524は、基板ホルダーの円周を4分割した放射状の位置にφ2mm穴で各3個配置し、その内の一つはスタックリングよけ溝512内に設けた。また、該基板ホルダー側給気口524は、基板が基板ホルダーを覆う範囲内に限定した。ここにおいて、基板ホルダー側給気口524の形、配置、サイズ、個数、また、基板ホルダー側給気路525の形状については、これに限るものではない。また、基板ホルダー側給気口524のエッジ部には0.5mmのRをつけた。このRの値については、これに限るものではなく、該基板ホルダー側給気口524の大きさ、位置等により種々の適正値が存在する。このRを付けることにより、該基板ホルダー側給気口524と、基板裏面が接触することによる基板裏面の傷つきをなくすことができた。また、これと併用或いは単独で基板ホルダー表面に潤滑処理を施すことにより飛躍的に基板裏面の傷つきをなくすことができることを見い出した。
【0204】
実施の形態13では、該潤滑処理としてトリアジン処理を用いたが、これに限るものではなく、フッ化黒鉛(CF)nやフッ素樹脂(PTFE、PFA、FEP)の撥水性粉末を用いた複合メッキ、或いはフルオロアルキル基を有するクロロシラ系化学吸着剤を用いた処理等の撥水処理等も有効であった。
【0205】
上記構成において、スパッタ成膜が終了して、内部搬送用基板ホルダー507がロードロック室513の所定の位置に戻ってくると、筐体側給気路523と基板ホルダー側給気路525が連結する。その後、ロードロック室513内をベントした後に、基板は基板ホルダーに真空吸着した状態となったが、筐体側給気路523から基板ホルダー側給気路525を経て基板ホルダー側給気口524に窒素ガスを供給することにより基板は容易に基板ホルダーから脱離し、外部搬送用基板ホルダー506により光ディスク基板成膜装置外に搬送することができた。この際の供給ガス圧は1.1×105 Pa(1.1bar)としたが、大気圧を越える圧力であれば何ら問題はない。供給ガスについては窒素ガスに限るものではなく、一般的に危険性のないガスであれば何ら問題はない。
【0206】
また、筐体側給気路523から基板ホルダー側給気路525を経て基板ホルダー側給気口524に流すガスによりロードロック室513内のベントガスを兼ねる方法も試みたが、基板は基板ホルダーに真空吸着することなく、外部搬送用基板ホルダー506により光ディスク基板成膜装置外に搬送することができた。この際の供給ガス圧は初期に0.1×105 Pa(0.1bar)、0.5sec後に1.1×105 Pa(1.1bar)としたが、これに限るものではない。ベントガスを兼ねない方法と比較して低圧の供給ガスでも十分な基板脱離効果が得られることが特徴である。
【0207】
次に、筐体側給気口522と基板ホルダー側給気路525の連結を機密性を持った結合状態とする場合と機密性を持たせない場合の差異について説明する。
先ず、機密性を持たせた場合においては、ロードロック室513排気時に筐体側給気路523および基板ホルダー側給気路525がロードロック室排気用のポンプでは効率的な排気ができないため、別途給気路を単独に排気する機構を設けた。その一例が図30であり、図29のC部にあたる部分について限定して示してある。530はバイパス弁である。
【0208】
ロードロック室排気時に筐体側給気路523とロードロック室513の間に設けたバイパス弁530を開けることにより、ロードロック室513排気と同時に筐体側給気路523および基板ホルダー側給気路525も排気される。排気後、該バイパス弁530は閉じ、スパッタ成膜が終了した基板がロードロック室513に搬送されたときには、筐体側給気路523および基板ホルダー側給気路525を連結して密閉した流路を介して基板の基板ホルダーへの真空吸着を解除するためのガスが供給される。
【0209】
また、もう一つの方法として、図31に示すように筐体側給気路523に別途排気路を設置する方法がある。この図は図29のC部にあたる部分について限定して示してある。531は給気路排気用バルブ、532は真空ポンプである。この給気路排気用バルブ531の動作も前記のバイパス弁530と同様であり、また真空ポンプ532はロードロック室513排気用のポンプと併用することも可能である。上記構成は装置機構が複雑になる反面、筐体側給気路523および基板ホルダー側給気路525を基板裏面に通じる密閉した流路とすることができ、基板の基板ホルダーへの真空吸着現象の絶大な解放効果を得ることができる。
【0210】
これに対し、機密性を持たせない場合については、ロードロック室排気時に、筐体側給気口522および基板ホルダー側給気路525の連結部から十分に排気できるため、前述したような筐体側給気路523および基板ホルダー側給気路525を別途排気する手段を講じる必要がなく、装置構成を簡素化することができる。この反面、基板の基板ホルダーからの脱離にあたって、供給ガスの圧力を高めにする必要性が生じてくるが、容易に解決できる問題であり、本発明の効果を奏するにあたっては何ら問題とはならない。
【0211】
また、図中には示していないが、機密性を持たせる、持たせないに関わらず、筐体側給気路523の上流にはロードロック室排気時に閉じるバルブが必要であることは言うまでもない。ロードロック室の排気速度を考慮すると、該バルブの位置は筐体側給気路523に極力近い位置にあることが望ましい。
【0212】
(実施の形態14)
次に、実施の形態14の光ディスク基板成膜装置に用いる基板ホルダー部の構成を図32に示す。なお、514は溝部である。図29においては、基板ホルダー側給気口524から流出させるガスの流路が基板と基板ホルダーで形成された閉空間で終端された構成となっていたが、図32においては、基板と基板ホルダーの間の解放空間に基板ホルダー側給気口524が配置された構成の場合を取り上げた。基本的な構成動作は図29と同様であり、詳細な説明は省略し、本例特有の動作に関して説明する。
【0213】
図32の例においても、図29と同様に、スパッタ成膜が終了して、内部搬送用基板ホルダー507がロードロック室513の所定の位置に戻ってくると、筐体側給気路523と基板ホルダー側給気路525が連結する。その後、ロードロック室513内をベントした後に基板は基板ホルダーに真空吸着した状態となったが、筐体側給気路523から基板ホルダー側給気路525経て基板ホルダー側給気口524に窒素ガスを供給することにより基板は基板ホルダーから脱離し、外部搬送用基板ホルダー506により光ディスク基板成膜装置外に搬送することができた。
【0214】
図32は図29と比較して筐体側給気口522と基板ホルダー側給気路525を機密性を持たせて連結した際にもロードロック室排気時に筐体側給気路523および基板ホルダー側給気路525内の排気のための図30、図31で説明した機構が必要なくなり、装置構成を簡素化できる。なお、図32では基板ホルダー側給気口524をスタックリングよけ溝512部に形成したが、これに限るものではなく、溝部514に配置することも可能であり、また、該基板ホルダー側給気口524の形、配置、個数等、および溝部の幅、形状等についてもこれに限るものではない。
【0215】
また、基板ホルダー表面の溝部については、基板裏面に接するエッジ部にRをつけておくことが、基板裏面の傷対策上有効であることはいうまでもない。また、基板ホルダー表面の潤滑処理についての効果も図29と同様である。
【0216】
(実施の形態15)
次に、実施の形態15の光ディスク基板成膜装置に用いる基板ホルダー部の構成を図33に示す。溝部514は基板配置時に該基板で覆われる基板ホルダーの範囲内に設けた。本例は図29と同様の構成動作であり、詳細な説明は割愛する。なお、図33においては、基板ホルダー側給気口524をスタックリングよけ溝512部に形成したが、これに限るものではなく、溝部514に配置することも可能であり、また、該基板ホルダー側給気口524の形、配置、個数等、および溝部の幅、形状等についてもこれに限るものではない。
【0217】
また、基板ホルダー表面の溝部については、基板裏面に接するエッジ部にRをつけておくことが、基板裏面の傷対策上有効であることはいうまでもない。また、基板ホルダー表面の潤滑処理についての効果も図29と同様である。
【0218】
(実施の形態16)
図34に、一般的な多層成膜用枚葉光ディスク基板成膜装置の概要上面図を示す。なお、図において、610は基板搬入・搬出室、611〜617は成膜室、620は基板ホルダー、621はアーム、622は回転軸である。
【0219】
図35に、従来の基板ホルダーの断面構造を、該基板ホルダーが基板搬入・搬出室に位置する場合について示す。図中の631はディスク基板、632はスタックリング、633は内周マスク、634は外周マスク、635は電磁石、636は外部搬送用基板ホルダー、637は内部搬送用基板ホルダー、638は内部搬送用アーム、639は磁石、640はOリング、641は光ディスク基板成膜装置筐体、642はスタックリングよけ溝、643はロードロック室、644は肉盗部である。
【0220】
上記の内部搬送用基板ホルダーに、本発明を適用した一例を図36に示す。650は基板ホルダー、651は溝部、652は流路、653は溝内部−排気・ベント口である。本態様例では、基板ホルダー表面に、ディスク基板設置中心を中心に内径28mm、外径38mmの溝部651を形成した。また、該溝部の深さは0.5mmとした。また、該溝部以外の部分は該ディスク基板と密着する構造とした。
【0221】
この基板ホルダーを用いて、成膜室611、成膜室612、成膜室613で誘電体層、成膜室614で記録層、成膜室615で誘電体層、成膜室616、成膜室617で反射層の順に積層成膜を行なった。なお、成膜材料は誘電体層としてZnS・SiO2、記録層としてAgInSbTe、反射層としてAlを用いた。トータルの膜厚は400nmとなるようにした。また、ディスク基板としては、DVDメディア用の0.6mm厚のポリカーボネート基板を用いた。なお、成膜室の構成、成膜材料、成膜膜厚およびディスク基板はこれに限るものではない。
【0222】
また、比較のため、従来の基板ホルダーの一例として、図38に示す基板ホルダーを用いて同様の成膜実験を行なった。この基板ホルダー表面には、ディスク基板設置中心から半径33mmの位置に、φ15mmの円形の溝部651bを円周方向を3分割する位置に3つ形成し、該溝部の深さは0.5mmとした。また、該溝部以外の部分は該ディスク基板を密着する構造とした。
【0223】
ディスク基板には、基板搬入・搬出室からの基板投入、成膜室1〜7での成膜、基板搬入・搬出室からの基板搬出の一連の工程を経て、上記多層膜を形成した。双方の基板ホルダーともディスク基板搬出の際には、基板ホルダー表面に形成した溝部がディスク基板/基板ホルダー間へのベントガス導入口として機能し、安定した基板搬送を実現することができ、同様の効果を奏した。
【0224】
しかしながら、従来の基板ホルダーにおいては、ディスク基板を基板ホルダーに密着保持したにも関わらず、基板機械特性およびメディア信号特性に不良が発生し、この要因は基板ホルダー表面の溝部であるものと特定された。これに対し、本発明の基板ホルダーによれば、良好な基板機械特性およびメディア信号特性が得られた。この結果を図39および図40に示す。
【0225】
図39は基板機械特性の代表・T−Tiltの33mm位置における結果で、660は本発明のホルダー使用時、661は従来のホルダー使用時のものである。図40はメディア信号特性の代表・反射率変動についての33mm位置における結果で、662は本発明のホルダー使用時、663は従来のホルダー使用時のものである。ここでは、特性の変化が顕著な代表特性について示したが、他の特性についても少なからず同様の結果となっている。
【0226】
従来の基板ホルダーにおいては、基板ホルダー表面に形成した溝部の影響により、T−Tiltが大きく乱れ、また反射率変動についても溝部に対応した明確な信号変動664が観察されている。これらの特性の乱れは溝部位置33mm以外にも及んでいた。これに対し、本発明の基板ホルダーにおいては、T−Tiltは成膜前の特性からほとんど変化せず、良好な基板機械特性を示し、反射率変動についても全く乱れのない特性が得られている。ここでは溝部中心位置に当たる33mm位置での結果を挙げたが、溝部を形成する稜線位置28mm、38mmおよびこれ以外の内外周すべての位置で同様の結果が得られている。
【0227】
上記説明したように、ディスク基板を基板ホルダーに密着させる構成において、本発明の基板ホルダーの構成のみがディスク基板の安定搬送と、基板機械特性およびメディア信号特性の確保を実現する唯一の手段であり、双方の要求に対して絶大な効果を奏するものである。一方、ディスク基板を基板ホルダーに密着させる場合の課題として、ディスク基板裏面の傷の問題があるが、本態様例において、本発明の1つである「溝部の稜線を形成するエッジ部にテーパーを設ける」方法を採用したところ、溝部の稜線がディスク基板と接触することによる傷不良を低減することができた。ここにおいて、テーパーとしてはC0.3mmの面取り加工とした。ただし、テーパー形状はこれに限るものではない。
【0228】
また、該エッジ部にR加工を施すことによって、より効果的に傷不良の低減を図ることができた。ここにおいては、溝深さを1.5mmに変更し、R1.0mmの加工を施した。ただし、R加工形状はこれに限るものではない。また、本発明において、基板ホルダーのディスク基板と接触する面にPTFEの撥水性粉末を用いた複合メッキを施したところ、ディスク基板が基板ホルダーと面で接触する部分に生じる傷不良を低減させることができた。この処理の代わりに基板ホルダー自体をPTFEで作製した場合にも同様の効果が得られた。
【0229】
図37に、前記と同様の光ディスク基板成膜装置において、内部搬送用基板ホルダーに本発明を適用した他の一例を示す。本態様例では、基板ホルダー表面にディスク基板設置中心を中心に内径30mm、外径35mm、および内径45mm、外径50mmの溝部を形成した。また、該溝部の深さは0.5mmとした。また、該溝部以外の部分は該ディスク基板と密着する構造とした。この基板ホルダーを用いて、前記と同様のスパッタ成膜実験を行なったところ、ディスク基板のすべての位置において、前記と同様の良好な基板機械特性およびメディア信号特性が得られた。その他の結果についても、全く同様であった。
【0230】
(実施の形態17)
図41は実施の形態17の相変化記録型光ディスクの基本的な構成を示す断面図である。図に示すように、基板701上に順次形成された、下部誘電体保護層702、相変化記録層703、上部誘電体保護層704、耐硫化性導電体層705、Ag系反射放熱層706、樹脂接着層707、張り合わせ用ダミー基板708から構成されている。該下部及び上部誘電体保護層はZnS−SiO2からなる。図からも明らかなように本発明の特徴は、反射放熱層が多層化され、誘電体保護層側に耐硫化性導電体層705を設けたこと、反射放熱層706がAg系合金であることである。このため反射放熱層の成膜時間は従来のAl系合金単層の場合の3分の1程度となる。
【0231】
なお、前記積層体中の耐硫化性導電体層とは、硫黄との化合力がAgと比して小さく、保存信頼性において、ZnSと接触していても反射率変動が非常に小さい導電体の層をいう。
【0232】
各層の膜厚は光学的、熱的特性から最適化するが、635nmの光を用いるDVD系メディアの場合、下部誘電体保護層702はZnS−SiO2のような屈折率2付近の誘電体の場合、50〜250nm位の膜厚である、望ましくは50〜80nmまたは160〜220nm程度である。相変化記録層703は熱的な理由で、急冷構造の方がマーク形成がきれいにでき易いため、カルコゲン系であれば、AgInSbTe系、GeSbTe系などにかかわらず、8〜30nm、望ましくは13〜22nmである。上部誘電体保護層704は放熱層へ熱を導かねばならないので、余り厚くすることはできない。7〜60nm程度、望ましくは10〜30nmである。耐硫化性導電体層は、上層Agの硫化を防ぐということでは厚い方がよいが、放熱性をよくして繰り返し書き換えの信頼性を向上させるためには上層Ag系反射放熱層よりも薄いことが好ましい。反射放熱層は反射率が飽和するのは80nm以下でよいが、放熱性をよくして繰り返し書き換えの信頼性を向上させるために100〜200nmが好ましい。
【0233】
以下、実施例5、6によりさらに具体的に説明する。
【0234】
(実施例5)
プラスチック基板として、厚さが0.6mmのポリカーボネート基板とポリオレフィン基板の2種を用意した。これら各基板上にマグネトロンスパッタ装置を用いて表2、表3に示す記録媒体(光ディスク)を成膜した。この場合、反射放熱層は純Agとした。得られた相変化記録型光ディスクを80℃85%RHに1000時間保持した後、ビットエラーレート(BER)を測定した。BERが初期値の2倍以上となった場合を寿命終止と定義した。
【0235】
下記表2、表3において、
膜厚は固定。下部誘電体保護層150nm、相変化記録層20nm、上部誘電体保護層20nm、耐硫化性導電体層20nm、反射放熱層100nm。
寿命:ディスク全面のビットエラーレートが初期値の2倍となった時間が80℃85%相対湿度の保存にて1000時間以上を○、800時間程度もつものを△、800時間程度にも満たないものを×とした。
評価条件:635nm、NA0.60、線速3.5m/s、記録密度0.4μm/bit。
反射層成膜速度:Alのスパッタレートの2倍以上を○とした。
基板:「PC/PO」は、PCはポリカーボネート、POはポリオレフィンを表わし、これら基板2種を用いてそれぞれ評価したことを表わす。
記録層:「AgInSbTe/GeSbTe」は、AgInSbTe、GeSeTeの記録層2種についてそれぞれ評価したことを表わす。
【0236】
【表2】

【0237】
【表3】

【0238】
(実施例6)
プラスチック基板として、厚さが0.6mmのポリカーボネート基板とポリオレフィン基板の2種を用意した。これらの各基板上にマグネトロンスパッタ装置を用いて表4〜表6に示す記録媒体(光ディスク)を成膜した。この場合、耐硫化性導電体層をAlTi0.01とした。得られた相変化記録型光ディスクを80℃85%RHに1000時間保持した後、ビットエラーレート(BER)を測定した。BERが初期値の2倍以上となった場合を寿命終止と定義した。
【0239】
下記表4〜表6において、
膜厚は固定。下部誘電体保護層150nm、相変化記録層20nm、上部誘電体保護層20nm、耐硫化性導電体層20nm、反射放熱層100nm。
寿命:ディスク全面のビットエラーレートが初期値の2倍となった時間が80℃85%相対湿度の保存にて1000時間以上を○、800時間程度もつものを△、800時間程度にも満たないものを×とした。
評価条件:635nm、NA0.60、線速3.5m/s、記録密度0.4μm/bit。
反射層成膜速度:Alのスパッタレートの2倍以上を○、2倍未満を×とした。
基板:「PC/PO」は、PCはポリカーボネート、POはポリオレフィンを表わし、これら基板2種を用いてそれぞれ評価したことを表わす。
記録層:「AgInSbTe/GeSbTe」は、AgInSbTe、GeSeTeの記録層2種についてそれぞれ評価したことを表わす。
反射放熱層:例えば「Ag26%Cu2%Ni」は、Cuが26%、Niが2%、残り72%がAgであることを表わす。
【0240】
【表4】

【0241】
【表5】

【0242】
【表6】

【0243】
表4〜表6から分かるように、本発明による反射放熱層を多層化したディスク、すなわちAg系合金膜と、上部誘電体保護層との間に耐硫化性導電体層を用いたディスクは、反射放熱層がAg1層である場合に比べ、耐久性が増していることが分かる。なお、耐硫化性導電体層はTiNxなどの一般式で示しているが、成膜条件によっては必ずしも化学量論組成に一致するものではない。しかし、化学的に安定な化学量論組成組成近傍で良い結果が得られる。
【0244】
さらに表4〜表6からはAg反射層にPdやRh、Ru、Pt、Ni、Cuなどを添加するとさらに耐久性が向上することが分かる。基板の反りは、Ag系合金の反射放熱膜を用いた場合は小さいのに対し、Al系反射放熱膜を用いた場合は反りは大きくなっている。
【0245】
前述したように実施の形態17の相変化記録型光ディスクは、誘電体保護層がZnS−SiO2からなる相変化記録型光ディスクの反射放熱層をAg系合金/耐硫化性導電体膜の積層構造とするものである。すなわち、プラスチック基板上に、下部誘電体保護層、相変化記録層、上部誘電体保護層、耐硫化性導電体層、Ag系合金反射放熱層を順に積層した構成となる。
【0246】
なお、前記Ag系合金としては、例えばAgCuNi、AgW、AgPd、AgPdTi、AgPdCu、AgAl、AgIn、AgIr、AgZn、AgRu、AgCr、AgV、AgTi、AgY、AgCe、AgPr、AgNd、AgSm、AgEu、AgGd、AgPt、AgRh、AgTa等が例示される。Agは熱伝導がAlより優れているために、Alと同じ放熱効果を得るのにAlよりも薄くてよい。さらにAgは同一電力でのスパッタレートがAlの3倍速い。このため、少ない膜厚の放熱層を、より速く成膜でき、薄膜形成時の基板の温度上昇が抑えられる。一方、Agは硫黄と接触すると硫化して変化するため、Ag系反射放熱層とZnS−SiO2保護層との間に薄い耐硫化性導電体層を設け、Agと硫黄が直接触れない構成としたことによりAgの硫化を抑制することができた。
【0247】
耐硫化性導電体層の厚さは、放熱性をよくして繰り返し書き換えの信頼性を向上させるために反射放熱層の厚さよりも薄くすることが好ましい。用いる材料としては、Al膜またはAlCux、AlSix、AlSixCuy、AlScx、AlTix、もしくはAlSixTiyからなり、この場合のx、yは0.5以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下であるAlを含む合金膜、Ti膜、Zr膜、もしくはHf膜からなりる高融点金属膜またはTixy、TixSiy、Zrxy、ZrxSiy、HfxY、もしくはHfxSiyからなり、Tixy、Zrxy、HfxY、において、x+y=1で、0.1<x<0.7、好ましくは0.3<x<0.6、より好ましくは0.45<x<0.55、TixSiy、ZrxSiy、HfxSiyにおいて、x+y=1で、0.1<x<0.7、好ましくは0.2<x<0.6、より好ましくは0.33<x<0.53である高融点金属を含む合金膜、Ta膜またはTaxy、もしくはTaxSiyからなるTaを含む合金膜であり、Taxyにおいて、x+y=1で、0.1<x<0.7、好ましくは0.3<x<0.6、より好ましくは0.45<x<0.55、TaxSiyにおいて、x+y=1で、0.1<x<0.7、好ましくは0.2<x<0.6、より好ましくは0.33<x<0.53、W膜またはWxy、もしくはWxSiyからなるWを含む合金膜であり、Wxyにおいて、x+y=1で、0.1<x<0.7、好ましくは0.3<x<0.6、より好ましくは0.45<x<0.55、WxSiyにおいて、x+y=1で、0.1<x<0.7、好ましくは0.2<x<0.6、より好ましくは0.33<x<0.53とするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】本発明の実施の形態1〜3で共通の基板搬送室と成膜室との上面を示す図である。
【図2】実施の形態1の基板ホルダーの横断面図である。
【図3】実施の形態1のホルダー部の構成を説明する図であって、ホルダー部の上面図(下方)と、上面図中に記した破線A−A'に沿う断面図(上方)である。
【図4】実施の形態1のホルダー部の密着支持面S'にシリコンゴム部材を設けた状態を示す図である。
【図5】図2に示したホルダー部に爪を設けた構成を説明するための図である。
【図6】実施の形態2のホルダー部の上面図(下方)と、上面図中に記した破線A−A'に沿う断面図(上方)である。
【図7】実施の形態3のホルダー部の上面図(下方)と、上面図中に記した破線A−A'に沿う断面図(上方)である。
【図8】本発明の実施の形態1〜3の効果を説明するための図である。
【図9】図8に示した内容を、グラフ化して示す図である。
【図10】実施の形態4に係る基板ホルダーの断面図であって、基板を保持した状態を示すものである。
【図11】図10の平面図であって、基板を保持する前の状態を示すものである。
【図12】従来の基板ホルダーの断面図であって、基板を保持した状態を示すものである。
【図13】本発明の実施の形態7を示す要部平面概略図である。
【図14】本発明の実施の形態7における基板ホルダーと、当該基板ホルダーに装着した光記録媒体基板とを示す部分断面概略図である。
【図15】本発明の基板ホルダーに用いる多孔性部材の形状の一例を説明するための図である。
【図16】本発明の実施の形態8を示す要部平面概略図である。
【図17】本発明の実施の形態8における基板ホルダーと、当該基板ホルダーに装着した光記録媒体基板とを示す部分断面概略図である。
【図18】実施の形態9による光ディスク基板成膜装置の要部概略構成図である。
【図19】実施の形態9の光ディスク基板成膜装置との構造の違いによる成膜特性を比較するための比較例を示す要部概略構成図である。
【図20】実施の形態9の光ディスク基板成膜装置との構造の違いによる成膜特性を比較するための他の比較例を示す要部概略構成図である。
【図21】基板反り量と基板の搬送安定性とを評価する基板サンプルの構成を示す表である。
【図22】基板ホルダーの種類と基板反り量を示す表である。
【図23】実施の形態10の光ディスク基板成膜装置における基板ホルダーと基板との接触面積を変えて基板反り量と脱着安定性とを評価した結果を示す表である。
【図24】基板ホルダーの基板支持部におけるエッジ部のテーパ角を変えて基板反り量と基板の傷とを評価した結果を示す表である。
【図25】実施の形態11における基板ホルダーの基板支持部におけるエッジ部に設けるテーパ形状を説明するための部分概略図である。
【図26】基板ホルダーのエッジ部に配するシリコンゴムの幅を変えて基板反り量と搬送安定性とを評価した結果を示す表である。
【図27】実施の形態12における基板ホルダーのエッジ部に設けるシリコンゴムを説明するための部分概略構成図である。
【図28】光ディスク基板成膜装置の概略断面図である。
【図29】実施の形態13の光ディスク基板成膜装置に用いられる基板ホルダー部の一例を示した図である。
【図30】図29の筐体側給気路部分の拡大図である。
【図31】図29の筐体側給気路部分の他の拡大図である。
【図32】実施の形態14の光ディスク基板成膜装置に用いられる基板ホルダー部の構成を示す説明図である。
【図33】実施の形態15の光ディスク基板成膜装置に用いられる基板ホルダー部の構成を示す説明図である。
【図34】多層成膜用枚葉光ディスク基板成膜装置の概略上面図である。
【図35】従来の基板ホルダーの断面を示した図である。
【図36】本発明の装置に用いられる基板ホルダー部の一例を示した図である。
【図37】本発明の装置に用いられる基板ホルダー部の他の一例を示した図である。
【図38】従来の基板ホルダー部の一例を示した図である。
【図39】基板機械特性を測定した結果を示すグラフである。
【図40】メディア信号特性を測定した結果を示すグラフである。
【図41】実施の形態17の相変化記録型光ディスクの一例を示す概略構成図である。
【図42】従来の基板ホルダーの断面を例示する図である。
【符号の説明】
【0249】
1 光ディスク基板
2a〜2e 成膜室
3、23、33 ホルダー部
4a〜4f 基板搬送アーム
6a〜6f 基板ホルダー
7a 貫通孔(真空チャック用)
10 基板搬送室
11、21、31 内周マスク
12、22、32 外周マスク
15 シリコンゴム部材
20 搬出・搬入口
23a 溝部
33a 貫通孔
40 爪部
201 基板ホルダー
202 外周マスク
203 内周マスク
204 粗面部(粗面化処理部)
301 基板ホルダー
302 基板
303 センターホール部
304 多孔性部材
304p 平面部
305 溝部
306 貫通孔
401 基板ホルダー
401a 基板支持部
401e エッジ部
402 内周マスク
403 外周マスク
404 基板
405 シリコンゴム
501 基板
502 スタックリング
503 内周マスク
504 外周マスク
505 電磁石
506 外部搬送用基板ホルダー
507 内部搬送用基板ホルダー
508 光ディスク基板成膜装置内部搬送用アーム
509 磁石
510 Oリング
511 光ディスク基板成膜装置筐体
512 スタックリングよけ溝
513 ロードロック室
514 溝部
522 光ディスク基板成膜装置筐体側給気口
523 光ディスク基板成膜装置筐体側給気路
524 基板ホルダー側給気口
525 基板ホルダー側給気路
530 バイパス弁
531 給気路排気用バルブ
532 真空ポンプ
610 基板搬入・搬出室
611〜617 成膜室
620 基板ホルダー
621 アーム
622 回転軸
631 ディスク基板
632 スタックリング
633 内周マスク
634 外周マスク
635 電磁石
636 外部搬送用基板ホルダー
637 内部搬送用基板ホルダー
638 内部搬送用アーム
639 磁石
640 Oリング
641 光ディスク基板成膜装置筐体
642 スタックリングよけ溝
643 ロードロック室
644 肉盗部
650 基板ホルダー
651 溝部
651b 溝部
652 流路
653 溝内部−排気・ベント口
660 本発明のホルダー使用時の数値
661 従来のホルダー使用時の数値
662 本発明のホルダー使用時の数値
663 従来のホルダー使用時の数値
664 信号変動部分
701 基板
702 下部誘電体保護層
703 相変化記録層
704 上部誘電体保護層
705 耐硫化性導電体層
706 反射放熱層
707 樹脂接着層
708 貼り合わせ用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の面上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜装置であって、
成膜中に基板を固定する基板ホルダーを備え、前記基板ホルダーは、基板のうち、成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部と密着する密着支持面を有し、前記密着支持面に基板を吸着固定する真空チャック部を有する一方、前記密着支持面は、溝部を有することを特徴とする光ディスク基板成膜装置。
【請求項2】
基板の面上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜装置であって、
成膜中に基板を固定する基板ホルダーを備え、前記基板ホルダーは、基板のうち、成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部と密着する密着支持面を有し、前記密着支持面に基板を吸着固定する真空チャック部を有する一方、吸着された基板を取り外すための取外し用爪を有することを特徴とする光ディスク基板成膜装置。
【請求項3】
基板の面上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜装置であって、
成膜中に基板を固定する基板ホルダーを備え、前記基板ホルダーは、基板のうち、成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部と密着する密着支持面を有し、基板に対して成膜を行う成膜室と、前記成膜室よりも低圧力に保たれる基板搬送室との間に配置され、前記密着支持面は、前記基板搬送室と前記成膜室とに通じる貫通孔を有することを特徴とする光ディスク基板成膜装置。
【請求項4】
基板裏面を基板ホルダーに密着させることにより光ディスク基板を前記基板ホルダーで保持して基板表面にスパッタ成膜を行う光ディスク基板成膜装置であって、
前記基板ホルダーは、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部が粗面となっていることを特徴とする光ディスク基板成膜装置。
【請求項5】
前記基板ホルダーは、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部の表面粗さRmax(最大高さ)が10μm以上、500μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項6】
前記基板ホルダーは、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部に潤滑処理が施され、かつ該潤滑処理部分の表面粗さRmaxが10μm以上、500μm以下となっていることを特徴とする請求項5に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項7】
前記基板ホルダーは、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部が自己潤滑性のプラスチック材料で形成され、かつ該部分の表面粗さRmaxが10μm以上、500μm以下となっていることを特徴とする請求項5に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項8】
成膜対象とする基板を装着して該基板を保持する基板ホルダーを有する光ディスク基板成膜装置であって、
前記基板ホルダーは、該基板ホルダーに前記基板を装着したときに、前記基板ホルダーと前記基板とが接触する領域内から接触しない領域内に延伸する溝部を有し、該溝部に通気性を有する多孔性部材が配設されていることを特徴とする光ディスク基板成膜装置。
【請求項9】
成膜対象とする基板を装着して該基板を保持する基板ホルダーを有する光ディスク基板成膜装置であって、
前記基板ホルダーは、該基板ホルダーに前記基板を装着したときに、前記基板ホルダーが前記基板と接触する領域内に溝部を有し、該溝部に通気性を有する多孔性部材が配設され、さらに前記溝部から前記基板ホルダーと前記基板との非接触領域に連通する貫通孔が設けられていることを特徴とする光ディスク基板成膜装置。
【請求項10】
前記多孔性部材は、熱伝導性の良い材料により形成されていることを特徴とする請求項8または9に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項11】
前記多孔性部材は、高分子材料により、または表面に高分子材料を被覆した材料により形成されていることを特徴とする請求項8または9に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項12】
前記多孔性部材は、弾性体材料で形成されていることを特徴とする請求項8または9に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項13】
光ディスク基板を装着して保持する基板ホルダーと、前記光ディスクの内周側の所定領域をマスクする内周マスクと、前記光ディスクの外周側の所定領域をマスクする外周マスクとを有し、前記内周マスクおよび外周マスクを用いて前記光ディスク基板の表面に薄膜を成膜する光ディスク基板成膜装置において、
前記基板ホルダーは、前記薄膜の成膜領域内で前記光ディスク基板に裏面側から接触する基板支持部を有し、該基板支持部は、前記内周マスクの外周側エッジから2〜10mm外側のラインと、前記外側マスクの内周側エッジから0.5mm〜5mm内側のラインとの間の領域で、前記光ディスク基板に接触することを特徴とする光ディスク基板成膜装置。
【請求項14】
0.3mm〜0.8mm厚みの前記光ディスク基板を薄膜の成膜対象とすることを特徴とする請求項13に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項15】
前記基板支持部のエッジ部がテーパ形状を有することを特徴とする請求項13に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項16】
前記テーパ形状におけるテーパ面と前記基板支持部の光ディスク基板接触面とのなす角として定義されるテーパ角は、1.0〜2.0度であることを特徴とする請求項15に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項17】
前記基板支持部のエッジ部が、前記光ディスク基板の硬度よりも低い硬度の低硬度材料で構成されていることを特徴とする請求項13に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項18】
前記低硬度材料は、光ディスクの半径方向の幅が0.1〜0.5mmであることを特徴とする請求項17に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項19】
前記低硬度材料は、シリコンゴムであることを特徴とする請求項17に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項20】
光ディスク製造工程の中で、ディスク基板上に反射層、記録層、保護層、または誘電体層等のいずれか、或いは前記の2層以上の層構成を組み合わせて積層成膜するスパッタ成膜に用いる光ディスク基板成膜装置において、
基板ホルダーの基板設置面と被成膜基板の間に限定した部分、および同範囲内の少なくとも、基板と基板ホルダーの接触によって基板ホルダー側に形成される閉空間部分にガスを導入できるように該基板ホルダー側に給気部を備えたことを特徴とする光ディスク基板成膜装置。
【請求項21】
スパッタ成膜終了後から基板搬出までの間に、該給気部からガスを供給することを特徴とする請求項20に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項22】
該給気部から供給するガスにより、光ディスク基板成膜装置の基板挿入・搬出用の大気と真空の間の中間室(以下、ロードロック室と称する)のベントガスを兼ねることを特徴とする請求項21に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項23】
光ディスク基板成膜装置筺体のロードロック室の閉空間を形成する内壁部に光ディスク基板成膜装置外部からのガス導入口を具備させ、また、該基板ホルダーに該給気部と通じるガス供給口を具備させ、ロードロック室の所定の位置に該基板ホルダーが移動した際に限り、光ディスク基板成膜装置筺体の該ガス導入口と該基板ホルダーの該ガス供給口が連結されるようにしたことを特徴とする請求項20に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項24】
該光ディスク基板成膜装置筺体の該ガス導入口と該基板ホルダーの該ガス供給口をOリングを介して連結させることを特徴とする請求項23に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項25】
該光ディスク基板成膜装置筺体の該ガス導入口と該基板ホルダーの該ガス供給口の連結部がお互いに重なり合うテーパーを持った構造であることを特徴とする請求項23に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項26】
該光ディスク基板成膜装置筺体の該ガス導入口と該基板ホルダーの該ガス供給口の連結によって形成されるガス導入路において、該光ディスク基板成膜装置筺体のガス導入口とロードロック室をつなげるバイパス弁を具備させ、ロードロック室の真空排気時に限り該バイパス弁を開くことを特徴とする請求項23〜25のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項27】
該光ディスク基板成膜装置筺体の該ガス導入口と該基板ホルダーの該ガス供給口の連結によって形成されるガス導入路において、該光ディスク基板成膜装置筺体のガス導入路に、単独に真空排気できる排気路を付設し、ロードロック室の真空排気時に限り該排気路から真空排気することを特徴とする請求項23〜25のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項28】
該基板ホルダーに基板を配置した際に、基板裏面と該基板ホルダーの接触部と非接触部の境界を形成する基板ホルダー側のエッジ部、少なくとも該給気部の孔端エッジ部をR加工しておくことを特徴とする請求項20に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項29】
該基板ホルダー表面に潤滑処理を施したことを特徴とする請求項20に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項30】
該潤滑処理として、フッ化黒鉛(CF)nやフッ素樹脂(PTFE、PFA、FEP)の撥水性粉末を用いた複合メッキ、或いはフルオロアルキル基を有するクロロシラン系化学吸着剤を用いた処理等の撥水処理を行なうことを特徴とする請求項29に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項31】
反射層、記録層、保護層、または誘電体層等のいずれか、或いは前記の2層以上の層構成を組み合わせて積層成膜を行なうスパッタ成膜に用いる光ディスク基板成膜装置において、
ディスク基板の成膜領域に対応した基板ホルダー表面の領域内に、ディスク基板設置中心を中心に周方向に1周させた溝部で、「該溝部を構成する稜線の任意位置での接線」と、「同位置における、該ディスク基板設置中心を中心にした円周の接線」とのなす鋭角がすべての位置で30度以下となる構造の溝部を少なくとも1本形成し、かつ、ディスク基板設置時に、該溝部以外の部分が少なくとも該ディスク基板の成膜領域裏面を密着保持する構造としたことを特徴とする光ディスク基板成膜装置。
【請求項32】
該溝部の稜線が、該ディスク基板設置中心を中心に同心円状となるようにしたことを特徴とする請求項31に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項33】
該溝部の稜線を形成するエッジ部にテーパーを設けたことを特徴とする請求項31または32に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項34】
該溝部の稜線を形成するエッジ部にR加工を施したことを特徴とする請求項31または32に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項35】
該基板ホルダーの少なくとも該ディスク基板と接触する面に潤滑処理を施したことを特徴とする請求項31〜34のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項36】
該潤滑処理として、フッ化黒鉛(CF)nやフッ素樹脂(PTFE、PFA、FEP)の撥水性粉末を用いた複合メッキ、或いはフルオロアルキル基を有するクロロシラン系化学吸着剤を用いた処理等の撥水処理を行なうことを特徴とする請求項35に記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項37】
該基板ホルダーの少なくとも該ディスク基板と接触する面をPTFE、ポリアセタールに代表される潤滑性をもつ材料で構成することを特徴とする請求項31〜36のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項38】
該基板ホルダーのディスク基板設置面以外の部分で、かつ該ディスク基板の光ディスク基板成膜装置への搬入・搬出時に真空排気およびベントされる部分から、該溝部内に通じる流路を形成したことを特徴とする請求項31〜37のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置。
【請求項39】
基板ホルダーに固定された基板上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜方法であって、
前記基板ホルダーは、基板を固定する際に、基板が固定される面の少なくとも一部と、基板のうちの成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部とを密着して基板を支持することを特徴とする光ディスク基板成膜方法。
【請求項40】
基板ホルダーに固定された基板上に薄膜を成膜して光ディスクを作成する光ディスク基板成膜方法であって、
前記基板ホルダーは、0.6mm以下の厚さを有する基板を固定する際に、基板が固定される面の少なくとも一部と、基板のうちの成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部とを密着して基板を支持することを特徴とする光ディスク基板成膜方法。
【請求項41】
基板に対して成膜を行う成膜室と、前記成膜室に基板を搬送する基板搬送室と、前記基板搬送室と前記成膜室との間に配置され、前記基板搬送室と前記成膜室とに通じる貫通孔を有する基板ホルダーを有する光ディスク基板成膜装置によって行われる光ディスク基板成膜方法であって、
前記基板搬送室よりも前記成膜室を高い圧力に保つことにより、前記基板ホルダー上に基板を固定して成膜を行う成膜工程を含むことを特徴とする光ディスク基板成膜方法。
【請求項42】
基板に対して成膜を行う成膜室と、前記成膜室に基板を搬送する基板搬送室と、前記基板搬送室と前記成膜室との間に配置され、前記基板搬送室と前記成膜室とに通じる貫通孔を有する基板ホルダーを有する光ディスク基板成膜装置によって行われる光ディスク基板成膜方法であって、
前記基板ホルダーは、0.6mm以下の厚さを有する基板を固定する際、前記基板搬送室よりも前記成膜室を高い圧力に保つことによって前記基板ホルダー上に基板を固定して成膜を行う成膜工程を含むことを特徴とする光ディスク基板成膜方法。
【請求項43】
前記成膜工程は、基板上の成膜される領域である被成膜領域の裏面の少なくとも一部を前記基板ホルダーと密着させることを特徴とする請求項41または42に記載の光ディスク基板成膜方法。
【請求項44】
前記成膜工程は、前記成膜工程の以前に前記基板ホルダーと密着する基板の裏面に前記裏面を保護するための膜である保護膜を形成する裏面保護膜形成工程をさらに含むことを特徴とする請求項40〜42のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜方法。
【請求項45】
前記裏面保護膜形成工程は、紫外線を照射することによって硬化する樹脂であるUV硬化樹脂をスピンコートすることによって保護膜を形成するものであることを特徴とする請求項44に記載の光ディスク基板成膜方法。
【請求項46】
前記裏面保護膜形成工程は、スパッタリングによって保護膜を形成するものであることを特徴とする請求項44に記載の光ディスク基板成膜方法。
【請求項47】
スパッタリングによって形成される前記保護膜は、シリコン窒化膜と、シリコン酸化膜と、チタン窒化膜と、インジウム、チタン、酸素の化合物とのうちのいずれか一つ、あるいは複数の積層膜であることを特徴とする請求項46に記載の光ディスク基板成膜方法。
【請求項48】
基板裏面を基板ホルダーに密着させることにより光ディスク基板を前記基板ホルダーで保持して基板表面にスパッタ成膜を行う光ディスク基板成膜方法において、
請求項4〜7のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置を用いることを特徴とする光ディスク基板成膜方法。
【請求項49】
請求項6に記載の基板ホルダーを作製するに際し、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部に粗面化処理を施した後、該粗面部分に、フッ化黒鉛(CF)nまたはフッ素樹脂の微粉末を用いる複合メッキによる潤滑処理を施すことにより、該潤滑処理部分の表面粗さRmaxを10μm以上、500μm以下とすることを特徴とする基板ホルダーの製造方法。
【請求項50】
請求項6に記載の基板ホルダーを作製するに際し、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部に粗面化処理を施した後、該粗面部分に、フルオロアルキル基を有するクロロシラン系化学吸着剤を用いる潤滑処理を施すことにより、該潤滑処理部分の表面粗さRmaxを10μm以上、500μm以下とすることを特徴とする基板ホルダーの製造方法。
【請求項51】
請求項6に記載の基板ホルダーを作製するに際し、基板裏面と接する基板保持面の少なくとも一部に粗面化処理を施した後、該粗面部分に、トリアジンチオールを用いる有機メッキを施すことにより、該潤滑処理部分の表面粗さRmaxを10μm以上、500μm以下とすることを特徴とする基板ホルダーの製造方法。
【請求項52】
請求項8〜12のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置が有する基板ホルダー。
【請求項53】
請求項31〜38のいずれか一つに記載の光ディスク基板成膜装置で作製することを特徴とする光ディスク。
【請求項54】
基板上に硫化亜鉛と酸化ケイ素の混合体からなる下部誘電体保護層、相変化記録層、硫化亜鉛と酸化ケイ素の混合体からなる上部誘電体保護層および反射放熱層を少なくとも構成層とする相変化記録型光ディスクにおいて、
反射放熱層がAgを主成分とし、かつ上部誘電体保護層と反射放熱層との間に耐硫化性導電体層を設けることを特徴とする相変化記録型光ディスク。
【請求項55】
耐硫化性導電体層の厚さが反射放熱層の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項54に記載の相変化記録型光ディスク。
【請求項56】
耐硫化性導電体層がAlまたはAlCux、AlSix、AlSixCuy、AlScX、AlTix、もしくはAlSixTiyからなるAlを含む合金膜であることを特徴とする請求項54または55に記載の相変化記録型光ディスク。
【請求項57】
耐硫化性導電体層がTi膜、Zr膜、もしくはHf膜からなる高融点金属膜またはTixy、TixSiy、Zrxy、ZrxSiy、Hfxy、もしくはHfxSiyからなる高融点金属を含む合金膜であることを特徴とする請求項54または55記載の相変化記録型光ディスク。
【請求項58】
耐硫化性導電体層がTaまたはTaxy、もしくはTaxSiyからなるTaを含む合金膜であることを特徴とする請求項54または55に記載の相変化記録型光ディスク。
【請求項59】
耐硫化性導電体層がW膜またはWxy、もしくはWxSiyからなるWを含む合金膜であることを特徴とする請求項54または55に記載の相変化記録型光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2006−313617(P2006−313617A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161454(P2006−161454)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【分割の表示】特願2000−2005(P2000−2005)の分割
【原出願日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】