説明

光ピックアップ用紫外線硬化型オルガノポリシロキサンゲル組成物および該組成物の硬化物からなる光ピックアップ用ダンピング材

【課題】幅広い紫外線領域で硬化性、深部硬化性が良好な紫外線硬化型オルガノポリシロキサンゲル組成物及び光ピックアップ用ダンピング材を提供。
【解決手段】(A)(A-1)式(I):
【化1】


〔ここで、Rは水素原子またはメチル基、R〜Rは水素原子または非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、aは1−3の整数、bは1または2の整数である〕
の基を有するオルガノポリシロキサン、または該オルガノポリシロキサンと(A-2)式(I)の基を有しないオルガノポリシロキサンとの混合物からなり、(A)成分のオルガノポリシロキサン1分子当りの式(I)の基の平均数が0.3〜1.6個であるオルガノポリシロキサン 100質量部、および
(B) 光開始剤 0.01〜10質量部
を含有してなることを特徴とする紫外線硬化型ゲル組成物、及びその硬化物からなる光ピックアップ用ダンピング材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ピックアップ用紫外線硬化型オルガノポリシロキサンゲル組成物および該組成物を紫外線硬化してなる光ピックアップ用ダンピング材に関するものである。詳しくは、光記録再生装置等に具備される光ピックアップ装置のダンピング材に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサンゲルは低い弾性率、強い接着力を有することからハイブリットICのポッティングをはじめ、各種電気・電子部品のポッティング材、シール材、コーティング材、粘着剤、光ピックアップ装置に代表されるダンピング材など広い分野で使用されている。
【0003】
しかし、このオルガノポリシロキサンゲルは、通常、ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和基(例えばアルケニル基)とケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)とを白金系触媒の存在下で反応させる、いわゆる付加反応硬化型のオルガノポリシロキサン組成物から得られるものである。この硬化反応は通常80〜150℃の加熱下で行なわれているが、電子部品によってはこの温度は高すぎるためこのようなオルガノポリシロキサン組成物を適用できないことがある。また、リン、窒素、硫黄原子などを含有する化合物、またSn、Sb、Hg、Biなどの重金属のイオン性化合物などが存在すると白金系触媒が被毒を受けてシリコーン組成物が硬化不良を起こす。例えば、オルガノポリシロキサン組成物が電子部品の組立ての際に必須とされるハンダフラックスに触れると硬化しなくなる。
【0004】
また、この種の付加反応硬化型のオルガノポリシロキサン組成物は加熱硬化後の体積収縮がやや大きく、ポッティングする形状が大きい場合には内部歪によりクラックや亀裂が発生し易いという欠点もあるために、電子部品のコンパウンド化が進んでいるエレクトロニクス業界では、このような欠点がなく、更に瞬時に硬化反応が終了する硬化性オルガノポリシロキサンゲル組成物の出現が強く望まれていた。
【0005】
そのため、本出願人はこの種のオルガノポリシロキサンについて研究し、式(1):
【0006】
【化1】

【0007】
(ここで、Rは水素原子またはメチル基、R、R、およびRは同一または異種の非置換または置換の一価炭化水素基、a、bは独立に1、2または3の整数)で示される基を有するオルガノポリシロキサンを創製し、これと光開始剤とを含む組成物が紫外線照射で硬化してゴム状弾性体となること、またこの組成物は触媒毒で硬化不良を起こさないので各種電気・電子部品用材料として有用であることを見出し、先に開示した(特許文献1)。しかし、この組成物から得られたゴム状弾性体は接着性も粘着性もないため、電気・電子部品用のポッティング材、シール材、コーティング材としては適しないという欠点があった。
【0008】
従って、これらの問題点を解決するためには、式(2):
【0009】
【化2】

【0010】
(ここで、Rは水素原子またはメチル基、R、R、R、およびRは同一または異種の非置換または置換一価炭化水素基、aは1、2または3、bは1または2)で示される基を1分子中に平均0.5〜1.8個有するオルガノポリシロキサンを創製し、これを主要成分として含む硬化性シリコーン組成物を特許文献2に開示した。この組成物は第1成分として含まれる前記オルガノポリシロキサンが光重合性の(メタ)アクリロイルオキシオルガノシリル基を含有しているので紫外線照射をすると1〜20秒という短時間で容易に硬化してシリコーンエラストマー(即ち、シリコーンゴム弾性体)となる。このシリコーンゴムは非腐食性で無臭であり、接着性あるいは粘着性を有しているのでラインで製造される各種電気・電子部品用のポッティング材、シール材、コーティング材、光ピックアップダンパー材のような防振剤として特に有用とされた。しかし、紫外線照射照度(被照射面における光強度)が高まるになるにつれ、該組成物は硬化性が低下し、得られる硬化物の物理特性が低下すること、また深部硬化性が悪いため、硬化に供される組成物が材料として厚いと、表面から深部に到るまで均一に硬化しない欠点があった。
【0011】
【特許文献1】特開昭63−183911号公報
【特許文献2】特開平1−14226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は幅広い紫外線照度において硬化性が良好で、かつ深部硬化性が良好な、光ピックアップ用紫外線硬化型オルガノポリシロキサンゲル組成物および該組成物を硬化させてなる光ピックアップ用ダンピング材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは従来の紫外線硬化型オルガノポリシロキサン組成物の改質を種々検討した結果、下記の一般式(I)で表される有機基を有するオルガノポリシロキサンを光開始剤と組み合わせることにより、上記の目的を達成することができることを見出した。
【0014】
即ち、
(A)(A-1)一般式(I):
【0015】
【化3】

【0016】
〔ここで、Rは水素原子またはメチル基、R、R、R、R、R及びRは水素原子または同一もしくは異種の非置換もしくは置換された一価炭化水素基であり、aは1、2または3の整数、bは1または2の整数である〕
で示される基を有するオルガノポリシロキサン、または該オルガノポリシロキサンと(A-2)一般式(I)で表される基を有しないオルガノポリシロキサンとの混合物からなり、本(A)成分のオルガノポリシロキサン1分子当りの前記一般式(I)で表される基の相加平均数が0.3〜1.6個であり、かつ23℃における粘度が0.01〜100Pa・sであるオルガノポリシロキサン 100質量部、および
(B) 光開始剤 0.01〜10質量部
を含有してなることを特徴とする光ピックアップ用紫外線硬化型オルガノポリシロキサンゲル組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、該組成物を紫外線照射下で硬化させて得られる硬化物からなる光ピックアップ用ダンピング材を提供する。
【発明の効果】
【0018】
上記の組成物は非腐食性、無臭であり、紫外線照射下で瞬時に硬化して粘着性を有するゲル状物を与える。しかもこのゲル状物は硬化時に体積収縮が起らず、また歪によってクラックを発生することもない。更にこの組成物は触媒毒によって硬化不良を起こすこともない。さらに、この組成物は、紫外線の照度が高くても硬化性は低下せず、かつ硬化厚みが厚くなった場合においても深部硬化性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施の様々な形態に即して詳細に説明する。
【0020】
[紫外線硬化型オルガノポリシロキサンゲル組成物]
−(A)オルガノポリシロキサン−
本発明の組成物を構成する(A)成分のオルガノポリシロキサンは分子中に上記一般式(I)で示される、非置換又は置換の(メタ)アクリロキシアルキルオキシ基とトリオルガノシロキシ基とを有するシリルエチル基(以下、「特定オルガノシリルエチル基」という)を有する。該特定オルガノシリルエチル基は、特に、オルガノポリシロキサンの主鎖を構成する2官能性シロキサン単位(RSiO2/2)、3官能性シロキサン単位(RSiO3/2)及び/又は分子鎖末端を構成する1官能性シロキシ単位(RSiO1/2)〔ここで、Rは一般的に有機基を示す。〕のケイ素原子に、Rの少なくとも一部として、該特定オルガノシリルエチル基のエチル基の炭素原子が、ポリシロキサン鎖を構成するケイ素原子に直接結合すると同時に、該特定オルガノシリルエチル基中の(メタ)アクリロキシアルキル基が、シリルエチル基のケイ素原子とSi−O−C結合により結合している点に特徴を有する。該特定オルガノシリルエチル基は、通常、直鎖状ジオルガノポリシロキサンの末端の1官能性シロキシ単位及び/又は非末端の2官能性シロキサン単位に、特には末端の1官能性シロキシ単位に結合していることが好ましい。
【0021】
式(I)において、Rは水素原子またはメチル基であり、R、R、R、R、RおよびRは独立に水素原子または置換もしくは非置換の、好ましくは、脂肪族不飽和基を含まない、通常、炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8程度の、1価炭化水素基である。ここで、非置換の1価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニルエチル、フェニルプロピル基等のアラルキル基があげられ、置換1価炭化水素基としては、例えば上述した非置換炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部もしくは全部をハロゲン原子で置換したクロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、およびシアノ基で置換した例えばシアノエチル基等のハロゲン置換炭化水素基およびシアノ置換炭化水素基などが挙げられる。R、R、R、R、RおよびRとして特に好ましい基は、水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基であり、更に特に水素原子又はメチル基が好ましい。
aは1、2または3の整数であり、bは1または2の整数である。
【0022】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、このような一般式(I)で表される特定オルガノシリルエチル基を有するオルガノポリシロキサン〔即ち、オルガノポリシロキサン(A-1)〕のみからなる場合と、該オルガノポリシロキサンと一般式(I)で表される特定オルガノシリルエチル基を有しないオルガノポリシロキサン〔即ち、オルガノポリシロキサン(A-2)〕〔例えば、分子内のケイ素原子に結合する有機基が、前記R〜Rとして例示した置換又は非置換の1価炭化水素基だけ、又は、そのような置換又は非置換の1価炭化水素基と後述する式(VI)のトリオルガノシラノールに由来する1〜3個のトリオルガノシロキシ基で置換されたシリルエチル基(即ち、下記式で示されるトリオルガノシロキシシリルエチル基)


だけからなるオルガノポリシロキサン〕との混合物からなる場合がある。尚、この場合、該特定のオルガノシリルエチル基の導入工程は、後述の(A)成分の製造方法で説明する様に、式(II)の官能基を有するオルガノポリシロキサン成分を単一出発材料として、式(V)の置換アルコール及び式(VI)のトリオルガノシラノールとの2段階での脱塩酸反応を行うものであるから、上記((A-1)のオルガノポリシロキサンと(A-2)のオルガノポリシロキサンとは、該特定オルガノシリルエチル基の有無だけを除いて、それぞれの平均重合度や、重合度分布、その他の分子構造等は、互いに同一のものであることが一般的である。(A-1)のオルガノポリシロキサンと(A-2)のオルガノポリシロキサンとの混合物の場合には、オルガノポリシロキサン(A-1)は、1分子中に該特定オルガノシリルエチル基を1個もしくは2個有するオルガノポリシロキサン、または該特定オルガノシリルエチル基1個を有するオルガノポリシロキサンと該特定オルガノシリルエチル基2個を有するオルガノポリシロキサンとの組み合わせであるのが好ましい。いずれの場合でも、(A)成分としてのオルガノポリシロキサン1分子当りの一般式(I)で表される特定オルガノシリルエチル基の相加平均数(即ち、数平均値)が0.3〜1.6個である必要があり、好ましくは0.35〜1.3個、さらに好ましくは0.4〜1.0個である。
【0023】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、23℃における粘度が0.01〜100Pa・sであり、好ましくは0.1〜10Pa・sである。0.01Pa・s未満では、硬化物の自己保形性に問題があり不適当である。また100Pa・sを越えると、組成物の取り扱いが困難になり作業性が劣ってしまうと共に、高粘稠物であることからラインで製造される光ピックアップ装置のダンピング材の製造に適さない場合がある。
【0024】
(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、一般式(I)で示される特定オルガノシリルエチル基を分子鎖の片末端及び/又は両末端あるいは分子鎖途中(即ち、非末端)のシロキサン単位中に有し、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましく、具体的には、下記のものが例示される。
【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

【0035】
(尚、上記の各式において主鎖を構成する繰り返し単位の配列はランダムである)
相加的平均として1分子中に0.3〜1.6個の該特定のオルガノシリルエチル基を含有する(A)成分のオルガノポリシロキサンは例えば次の方法で得ることができる。すなわち、まず一般式(II):
【0036】
【化14】

【0037】
〔式中、Rはアルキレン基等の二価炭化水素基、RおよびR10は独立にメチル基等のアルキル基またはフェニル基等のアリール基、cはそれぞれ独立に0または1である〕で示される基を分子鎖末端及び/又は分子鎖途中(非末端)に有するオルガノシロキサン、例えば、
【0038】
【化15】

【0039】
【化16】

【0040】
【化17】

【0041】
などを、一般式(III):
【0042】
【化18】

【0043】
〔式中、Rは一般式(I)で定義の通りであり、dは0又は1の整数である〕で示されるクロロシラン、例えば(CH)HSiCl、HSiClなどとを白金系触媒、例えば塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液などの存在下に50〜80℃で付加反応させて一般式(IV):
【0044】
【化19】

【0045】
〔式中、Rは、一般式(I)において定義の通りであり、c、R、RおよびR10は一般式(II)において、dは一般式(III)においてそれぞれ定義のとおりである〕
で示される基を有するオルガノポリシロキサン、例えば下記のものを合成する。
【0046】
【化20】

【0047】
【化21】

【0048】
【化22】

【0049】
【化23】

【0050】
次に、この一般式(IV)で表される基を有するオルガノポリシロキサンに、一般式(V):
【0051】
【化24】

【0052】
〔式中、R、R、R、R、R、およびaは一般式(I)において定義の通りである〕
で示される置換アルコール、例えば、
【0053】
【化25】

【0054】
【化26】

【0055】
【化27】

【0056】
【化28】

【0057】
を混合し、トリエチルアミンのような脱塩酸剤の存在下に室温で反応させたのち、さらに一般式(VI):
SiOH (VI)
〔式中、Rは一般式(I)において定義の通りである〕
で示されるトリオルガノシラノール、例えば、
CH(CSiOH、
(CHSiOH、
CH〔(CHSiO〕SiOH、
〔(CHSiO〕SiOH
(CH=CH−)(CHSiOH
などを脱塩酸剤の存在下に室温で反応させる。こうして、一般式(I)の特定オルガノシリルエチル基を有する(A)成分のオルガノポリシロキサンは容易に得ることができる。
【0058】
−(B)光開始剤−
本発明の組成物の(B)成分である光開始剤としては、従来この種の紫外線硬化性オルガノポリシロキサン組成物に使用されてきたものはいずれも使用することができる。具体的には、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−ジエトキシアセトフェノン、4−クロロ−4'−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、ジエチルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、シクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
【0059】
(B)成分の配合量は(A)成分のアクリル官能性オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜8質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。(B)成分の配合量が0.01質量部未満ではその添加効果がなく、10質量部を超えると得られるシリコーンゲルは(B)成分の分解残査の影響が大きいため得られる硬化物の物理特性が悪くなる。
【0060】
−その他の成分−
本発明の組成物には、上述した(A)、(B)の両必須成分のほかに必要に応じてその他の任意的の成分を本発明の効果を妨げない範囲で添加することができる。このような成分としては、例えば、紫外線硬化反応を阻害しないフュームドシリカ系の充填材、シリコーンゴムパウダー、中空ガラス質の充填材、炭酸カルシウム等の増量剤、接着性ないしは粘着性の向上に寄与するアルコキシオルガノシラン等の接着付与剤等が挙げられる。
【0061】
本発明の組成物は、(A)成分、(B)成分、およびその他の任意的な成分を所定量均一混合することによって得ることができる。
【0062】
[光ピックアップ用ダンピング材]
本発明の組成物は紫外線照射下で短時間で容易に硬化し硬化物を生成する。紫外線照射条件としては、照度条件、並びに雰囲気下温度は特に限定されないが、紫外線エネルギー量としては500mW/cm2以上が好ましく、より好ましくは1000mW/cm2以上である。紫外線エネルギー量として500mW/cm2未満の場合、特に低照度条件になる程未硬化になる為、硬化条件としては適さない場合がある。雰囲気温度は通常、室温程度(0〜35℃)でよい。
【0063】
こうして得られる硬化物は、光ピックアップダンピング材としては、JIS K2220で規定される1/4コーンによる針入度が20〜200の範囲を満たすことが必要であり、好ましくは30〜120、より好ましくは40〜100の範囲を満たすものである。この針入度が20より小さい場合には、低弾性率、低応力といったオルガノポリシロキサンゲル硬化物の特徴を発揮することが困難であり、200を超える場合には、オルガノポリシロキサンゲル硬化物としての形態を保持し難く、流動してしまう。針入度を所望の値とするには、一般式(I)記載の相加平均数、並びに針入度の範囲内において、相加平均数が小さい程針入度は大きく、逆に相加平均数が大きい程針入度は小さく調整することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例に即して具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例によって制限されるものではない。なお、以下の記載において部は質量部を示し、粘度は23℃での測定値を示す。
【0065】
(合成例1)
温度計、攪拌装置、滴下ロート、ジムロートを取付けた反応フラスコに式:
【0066】
【化29】

【0067】
で示されるビニル基量が0.010モル/100gであるオルガノポリシロキサン500gを入れ、窒素ガス気流下に120℃で2時間加熱して脱水した。フラスコ内容物を室温(25℃)まで冷却後、該フラスコ内に塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金量2重量%)0.1gとメチルジクロロシラン7.0gを加え、50℃で1時間、その後80℃で3時間反応させた後、同じ温度でこの液中に窒素ガスを通気して未反応のメチルジクロロシランを系外に除去した。
【0068】
次いで、該フラスコ内にトリエチルアミン20gと3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシトルエン0.1gを加えた後、2−ヒドロキシエチルアクリレート2.9g(0.025モル)を30分間滴下しながら、フラスコ内成分を60℃で2時間反応させた。その後、トリメチルシラノール33.8g(0.38モル)を2時間かけてフラスコ内に滴下しながら60℃で2時間反応させた。その後、生成した塩を濾別し、100℃/2mmHgの条件下でストリップして過剰のトリエチルアミンとトリメチルシラノールを減圧下に除去したところ、粘度が4,020mm/s、屈折率1.4502、比重1.026の物性をもつ次式:
【0069】
【化30】

【0070】
で示されるオルガノポリシロキサン(以下、ポリシロキサンAと略記する)495gが得られた。
【0071】
(合成例2)
温度計、攪拌装置、滴下ロート、ジムロートを取付けた反応フラスコに式:
【0072】
【化31】

【0073】
で示されるビニル基量が0.010モル/100gであるオルガノポリシロキサン500gを入れ、窒素ガス気流下に120℃で2時間加熱して脱水した。フラスコ内容物を室温(25℃)まで冷却後、該フラスコ内に塩化白金酸のイソプロピルアルコール溶液(白金量2重量%)0.1gとメチルジクロロシラン7.0gを加え、50℃で1時間、その後80℃で3時間反応させた後、同じ温度でこの液中に窒素ガスを通気して未反応のメチルジクロロシランを系外に除去した。
【0074】
次いで、該フラスコ内にトリエチルアミン20gと3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシトルエン0.1gを加えた後、α−アクリルオキシメチルジメチルシラノール5.1g(0.025モル)を30分間滴下しながらフラスコ内成分を60℃で2時間反応させた。その後、トリメチルシラノール33.8g(0.38モル)を2時間かけて滴下しながら60℃で2時間反応させた。その後、生成した塩を濾別し、100℃/2mmHgの条件下でストリップして過剰のトリエチルアミン、トリメチルシラノールを減圧下に除去したところ、粘度が4,240mm/s、屈折率1.4503、比重1.026の物性をもつ次式:
【0075】
【化32】

【0076】
で示されるオルガノポリシロキサン(ポリシロキサンBと略記する)495gが得られた。
【0077】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
実施例1〜3、比較例1〜3では、前記合成例で得られたポリシロキサンAあるいはB100部に表1に示した量の光開始剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)を添加して紫外線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を作り、紫外線照射装置・ASE−20〔日本電池(株)製:商品名〕を用いて照射量4.5J/cmの紫外線を照射したところゲル化した。得られたゲルについて針入度、深部硬化性、紫外線照射照度変化時における硬化性を下記の方法で測定した。得られた結果を表1に示す。なお、表中の「部」は「質量部」である。
【0078】
〔針入度〕
ガラスシャーレ(40mmφ×20mmH)に表1記載の組成物を18.0g充填し、上記の紫外線硬化条件で紫外線を照射して硬化させ、この硬化により得られたオルガノポリシロキサンゲルを1/4インチミクロ稠度計(離合社製)で針入度を測定した。
【0079】
〔深部硬化性〕
表1記載の組成物を上記の紫外線硬化条件で厚さ20mmのシートを作成した。これを指蝕により深部硬化性を次の基準で評価した。
○:シート全体にわたり均一に硬化
×:シート深部が未硬化
【0080】
〔種々の紫外線硬化条件での硬化性〕
表1記載の組成物をアルミシャーレ上に0.2g垂らした直後、上記の紫外線硬化条件で硬化させ、硬化直後のゲルの形状と23℃で1日後のゲルの形状変化を目視で観察した。観察結果を次のようにランクした。
○:ゲルの形状変化無し
×:ゲルの形状変化有り
【0081】
【表1】

【0082】
上記の実施例により、本発明の組成物は紫外線照射により1〜20秒という短時間で容易に硬化してオルガノポリシロキサンゲルとなることが示された。また、この硬化により得られたオルガノポリシロキサンゲルは非腐食性で無臭であり、接着性ないしは粘着性を有するものであった。したがって、光ピックアップ装置のダンピング材として特に有用であることが判明した。更にこの組成物は、紫外線照射時における照度が高照度であっても硬化性が低下せず、かつ深部硬化性が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A-1)一般式(I):
【化1】


〔ここで、Rは水素原子またはメチル基、R、R、R、R、R及びRは水素原子または同一もしくは異種の非置換もしくは置換された一価炭化水素基であり、aは1、2または3の整数、bは1または2の整数である〕
で示される基を有するオルガノポリシロキサン、または該オルガノポリシロキサンと(A-2)一般式(I)で表される基を有しないオルガノポリシロキサンとの混合物からなり、本(A)成分のオルガノポリシロキサン1分子当りの前記一般式(I)で表される基の相加平均数が0.3〜1.6個であり、かつ23℃における粘度が0.01〜100Pa・sであるオルガノポリシロキサン 100質量部、および
(B) 光開始剤 0.01〜10質量部
を含有してなることを特徴とする光ピックアップ用紫外線硬化型オルガノポリシロキサンゲル組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物を紫外線照射下で硬化させて得られる硬化物からなる光ピックアップ用ダンピング材。
【請求項3】
前記の硬化物が、JIS K2220で規定される針入度が20〜200である、請求項2に係る光ピックアップ用ダンピング材。

【公開番号】特開2007−250167(P2007−250167A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36227(P2007−36227)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】