説明

光ピックアップ装置、光ディスク装置、光検出方法

【課題】2ビーム光学系の戻り光を共通の受光部で受光するとともに受光のための適切な光束分割を行う。
【解決手段】半導体レーザダイオードによる複数の光源からの光束の光ディスクで反射された光束を共通の受光部で受光する。この場合に、光学系は、複数の光源のそれぞれから出射され、光ディスクで反射された光束を、スポット径が略同一となる状態で受光部の光束分割面に導くようにする。そして活性層に垂直なファーフィールドパターンとしてのθ⊥が、光束分割面上で互いに異なる角度となっている場合に、光束分割面では、光束分割面上で光ディスクのラジアル方向に相当する方向に光束を分割する分割線が、複数の光源からの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されているようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は光ピックアップ装置、光ディスク装置、光検出方法に関し、特に複数の光源を有する光ピックアップ装置における光検出のための技術に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2007−265595号公報
【特許文献2】特開2010−146607号公報
【背景技術】
【0003】
映像データ、音声データ、コンピュータデータ等の各種データを記録する記録媒体として、BD(ブルーレイディスク(Blu-ray Disc:登録商標))、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)等の光ディスクが知られている。
これらBD、DVDなどの光ディスクに対して記録又は再生を行う光ディスク装置においては、記録系のメディアに対してはほとんどの場合、トラッキングサーボ方式としてプッシュプル信号を利用する。
【0004】
但し公知のとおり、プッシュプル方式は対物レンズの視野振り(レンズシフト)時に信号がDC的にオフセットをするという問題がある。その対処法として、光ビームを3つにわけ、メインビームのプッシュプル信号に対して、半トラック分ずらしたサブビームによってオフセット分を検出し、これを差し引く、DPP(ディファレンシャルプッシュプル)方式が一般的である。
しかし、DPP方式はサイドスポットを用いるため、信号光量が落ちるということと、多層ディスクにおける迷光の影響を受けやすいという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、まずサブビームを用いるDPP方式の欠点を克服するために、一つの光ビームを用いてプッシュプル信号とレンズシフト信号を検出し、プッシュプル信号からレンズシフトによるオフセット分を差し引くことを考える。
ここで、BD,DVDなど、方式の異なる複数種類の記録媒体に対応して、複数系統のレーザ光学系を有する光ピックアップ装置の場合には、ファーフィールドパターン(Far Field Pattern)の向きやプッシュプル信号の領域が異なるという事情がある。このため、複数系統のレーザ光学系を有する光ピックアップ装置の場合、1ビーム方式を同じ受光系で用いることは難しく、3ビームとの併用となるのが一般的で、コストアップの問題や、光学素子の増加やそれによるスペース的に不利となるという問題が生ずる。
そこで本開示では、複数種類の記録媒体に対応して、複数系統のレーザ光学系を有する光ピックアップ装置において、より簡易な構成で的確に光検出を行うことのできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光ピックアップ装置は、半導体レーザダイオードによる複数の光源と、複数の上記光源にそれぞれ対応して、上記光源から出射された光束を、タンジェンシャル方向に沿って記録トラックが形成された光ディスクに集光する複数の対物レンズと、複数の上記光源からの光束に共通に対応する受光部であって、光束分割面を有し、光ディスクから反射された光束を上記光束分割面で分割して受光する受光部と、複数の上記光源のそれぞれから出射され、上記光ディスクで反射された光束を、スポット径が略同一となる状態で上記光束分割面に導く光学系とを備える。そして複数の上記光源からの光束の、活性層に垂直なファーフィールドパターンとしてのθ⊥(シータパーペンディキュラー)が、上記光束分割面上で互いに異なる角度となっているとともに、上記光束分割面では、上記光束分割面上で光ディスクのラジアル方向に相当する方向に光束を分割する分割線が、複数の上記光源からの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されている。
本開示の光ディスク装置は、上記光ピックアップ装置の構成に加え、上記受光部で得られる信号を演算してエラー信号を生成する演算部と、複数の上記対物レンズのサーボ駆動を行うサーボ駆動部と、上記エラー信号に基づいて生成したサーボ駆動信号により上記サーボ駆動部によるサーボ駆動を実行させるサーボ制御部とを備えるものである。
【0007】
本開示の光検出方法は、半導体レーザダイオードによる複数の光源と、複数の上記光源にそれぞれ対応して、上記光源から出射された光束を、タンジェンシャル方向に沿って記録トラックが形成された光ディスクに集光する複数の対物レンズと、光束分割面を有し、光ディスクから反射された光束を上記光束分割面で分割して受光する受光部と、複数の上記光源のそれぞれから出射され、上記光ディスクで反射された光束を、スポット径が略同一となる状態で上記光束分割面に導く光学系とを備えた光ピックアップ装置の光検出方法である。そして上記受光部では、複数の上記光源からの光束の、活性層に垂直なファーフィールドパターンとしてのθ⊥が、上記光束分割面上で互いに異なる角度となっていることに応じて、上記光束分割面の、上記光束分割面上で光ディスクのラジアル方向に相当する方向に光束を分割する分割線を、複数の上記光源からの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成し、複数の上記光源から出射され上記光ディスクで反射された光束について、共通に対応して上記光束分割面で分割して受光する。
【0008】
このような本開示の技術は、まず半導体レーザダイオードによる複数の光源と、複数の光源にそれぞれ対応する対物レンズと、複数の光源からの光束(光ディスクからの反射光束)を共通に受光する受光部を備える。そして各光源からの光束を受光部に導く光学系は、スポット径が略同一となる状態で受光部の光束分割面に導くように形成されている。
その上で、光束分割面は、複数の光源からの各光束のファーフィールドパターンのずれに対応すべく、光ディスクのラジアル方向に相当する方向に光束を分割する分割線が、複数の光源からの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されるようにする。
これによって光束分割面上のスポットのタンジェンシャル方向のずれによるオフセットを、各光源からの光束において分かち合うようにし、オフセットを緩和する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、例えばBD,DVDなど、複数の記録方式の記録媒体に対応する光ピックアップ装置において、共通の受光部を用いて適切な光検出を行うことができ、部材のコストダウンや省スペース化を実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の実施の形態の光ディスク装置のブロック図である。
【図2】実施の形態の光ピックアップの光学系の構成の説明図である。
【図3】回折格子とフォトディテクタの説明図である。
【図4】回折格子の光束分割面でのスポットサイズ違いによる影響の説明図である。
【図5】光束分割面でのスポットサイズの差の許容範囲の説明図である。
【図6】実施の形態において光束分割面でのスポットサイズを略同一にするための手法の説明図である。
【図7】2系統のビームについての光束分割面でのファーフィールドパターンのずれの説明図である。
【図8】第1の実施の形態の光束分割面の説明図である。
【図9】第2の実施の形態の光束分割面の説明図である。
【図10】プッシュプル信号とレンズシフト信号の両方を得る場合の光束分割面の説明図である。
【図11】第3の実施の形態の光束分割面の説明図である。
【図12】プッシュプル信号とレンズシフト信号とフォーカスエラー信号を得る場合の光束分割面の説明図である。
【図13】第4の実施の形態の光ピックアップ装置の構成の説明図である。
【図14】第4の実施の形態の光束分割面の説明図である。
【図15】第4の実施の形態の光束分割面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。実施の形態では、複数種類の光ディスクに対して記録再生を行う光ディスク装置及びそれに搭載される光ピックアップとしての例を挙げる。
説明は次の順序で行う。
<1.光ディスク装置の構成>
<2.第1の実施の形態>
[2−1 光ピックアップの構成]
[2−2 光束分割面でのスポットサイズ]
[2−3 ファーフィールドパターンを考慮した光束分割面]
<3.第2の実施の形態>
<4.第3の実施の形態>
<5.第4の実施の形態>
<6.変形例>
【0012】
<1.光ディスク装置の構成>

本実施の形態の光ディスク装置の構成を図1により説明する。
本実施の形態の光ディスク装置は、例えばDVD、BDとしての再生専用ディスクや記録可能型ディスク(ライトワンスディスクやリライタブルディスク)に対応して再生や記録を行うことができるものとする。
【0013】
BDやDVD等の光ディスク90は、光ディスク装置に装填されると図示しないターンテーブルに積載され、記録/再生動作時においてスピンドルモータ2によって一定線速度(CLV)又は一定角速度(CAV)で回転駆動される。
そして再生時には光ピックアップ1によって光ディスク90上のトラックに記録されたマーク情報の読出が行われる。
また光ディスク90に対してのデータ記録時には、光ピックアップ1によって光ディスク90上のトラックに、ユーザーデータがフェイズチェンジマークもしくは色素変化マークとして記録される。
【0014】
なお、光ディスク90の内周エリア91等には、再生専用の管理情報として例えばディスクの物理情報等がエンボスピット又はウォブリンググルーブによって記録されるが、これらの情報の読出も光ピックアップ1により行われる。
さらに光ディスク90に対しては、光ピックアップ1によってディスク90上のグルーブトラックのウォブリングとして埋め込まれたADIP情報の読み出しもおこなわれる。
【0015】
光ピックアップ1内には、レーザ光源となるレーザダイオードや、反射光を検出するためのフォトディテクタ、レーザ光の出力端となる対物レンズ、対物レンズを介してディスク記録面にレーザ光を照射し、またその反射光をフォトディテクタに導く光学系等が形成される。
BDの場合、照射するレーザ光の波長は405nmであり、対物レンズのNAが0.85とされる。一方、DVDの場合は、照射するレーザ光の波長は650nmであり、対物レンズのNAが0.6とされる。
そのため光ピックアップ1では図2で後述するようにレーザ波長の異なる2つの光源(レーザダイオード34a,34b)を備えると共に、図1,図2のように2つの対物レンズ30a,30bを備え、2系統のレーザ光路が構成される。
【0016】
光ピックアップ1内において対物レンズ30a,30bは、例えば共通のレンズホルダ38によって保持された状態で、二軸アクチュエータ37によりトラッキング方向及びフォーカス方向に移動可能に保持されている。
なお対物レンズ30a,30bを、個別の二軸アクチュエータによってそれぞれ移動可能とする構成も可能である。
また光ピックアップ1全体はスレッド機構3によりディスク半径方向(ラジアル方向)に移動可能とされている。
また光ピックアップ1におけるレーザダイオード(後述の図2のレーザダイオード34a,34b)はレーザドライバ13によって駆動電流が流されることでレーザ発光駆動される。
【0017】
光ディスク90からの反射光情報はフォトディテクタ(後述の図2のフォトディテクタ36)によって検出され、受光光量に応じた電気信号とされてマトリクス回路4に供給される。
マトリクス回路4には、フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
例えば再生データに相当する再生情報信号(RF信号)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号などを生成する。
例えばトラッキングエラー信号は、フォトディテクからの信号を演算して得られるプッシュプル信号とレンズシフト信号(対物レンズ30a,30bの視野振り信号)を用いて生成する。
さらにマトリクス回路4は、グルーブのウォブリングに係る信号、即ちウォブリングを検出する信号としてのプッシュプル信号を生成する。
マトリクス回路4から出力される再生情報信号はデータ検出処理部5へ、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号はサーボプロセッサ11へ、プッシュプル信号はウォブル信号処理回路6へ、それぞれ供給される。
【0018】
データ検出処理部5は、再生情報信号の2値化処理を行う。
例えばデータ検出処理部5では、RF信号のA/D変換処理、PLLによる再生クロック生成処理、PR(Partial Response)等化処理、ビタビ復号(最尤復号)等を行い、パーシャルレスポンス最尤復号処理(PRML検出方式:Partial Response Maximum Likelihood検出方式)により、2値データ列を得る。
そしてデータ検出処理部5は、光ディスク90から読み出した情報としての2値データ列を、後段のエンコード/デコード部7に供給する。
【0019】
エンコード/デコード部7は、再生時おける再生データの復調と、記録時における記録データの変調処理を行う。即ち、再生時にはデータ復調、デインターリーブ、ECCデコード、アドレスデコード等を行い、また記録時にはECCエンコード、インターリーブ、データ変調等を行う。
再生時においては、上記データ検出処理部5で復号された2値データ列がエンコード/デコード部7に供給される。エンコード/デコード部7では上記2値データ列に対する復調処理を行い、光ディスク90からの再生データを得る。
エンコード/デコード部7で再生データにまでデコードされたデータは、ホストインターフェース8に転送され、システムコントローラ10の指示に基づいてホスト機器100に転送される。ホスト機器100とは、例えばコンピュータ装置やAV(Audio-Visual)システム機器などである。
【0020】
光ディスク90に対する記録/再生時にはADIP情報の処理が行われる。
即ちグルーブのウォブリングに係る信号としてマトリクス回路4から出力されるプッシュプル信号は、ウォブル信号処理回路6においてデジタル化されたウォブルデータとされる。またPLL処理によりプッシュプル信号に同期したクロックが生成される。
ウォブルデータはADIP復調回路16で、ADIPアドレスを構成するデータストリームに復調されてアドレスデコーダ9に供給される。
アドレスデコーダ9は、供給されるデータについてのデコードを行い、アドレス値を得て、システムコントローラ10に供給する。
【0021】
記録時には、ホスト機器100から記録データが転送されてくるが、その記録データはホストインターフェース8を介してエンコード/デコード部7に供給される。
この場合エンコード/デコード部7は、記録データのエンコード処理として、エラー訂正コード付加(ECCエンコード)やインターリーブ、サブコードの付加等を行う。またこれらの処理を施したデータに対してランレングスリミテッドコード変調を施す。
【0022】
エンコード/デコード部7で処理された記録データは、ライトストラテジ部14に供給される。ライトストラテジ部では、記録補償処理として、記録層の特性、レーザ光のスポット形状、記録線速度等に対するレーザ駆動パルス波形調整を行う。そして、レーザ駆動パルスをレーザドライバ13に出力する。
【0023】
レーザドライバ13は、記録補償処理したレーザ駆動パルスに基づいて、光ピックアップ1内のレーザダイオードに電流を流し、レーザ発光駆動を実行させる。これにより光ディスク90に、記録データに応じたマークが形成されることになる。
なお、上述のように光ピックアップ1には、2つのレーザダイオードが搭載されており、レーザドライバ13は、システムコントローラ10の指示により、一方のレーザダイオードを駆動する。システムコントローラ10は、装填された光ディスク90がBDであるかDVDであるかの判別結果に応じて、レーザドライバ13に、駆動するレーザダイオードを指示する。
また、レーザドライバ13は、いわゆるAPC回路(Auto Power Control)を備え、光ピックアップ1内に設けられたレーザパワーのモニタ用ディテクタの出力によりレーザ出力パワーをモニタしながらレーザの出力が温度などによらず一定になるように制御する。
記録時及び再生時のレーザ出力の目標値はシステムコントローラ10から与えられ、記録時及び再生時にはそれぞれレーザ出力レベルが、その目標値になるように制御する。
【0024】
サーボプロセッサ11は、フォーカスサーボ処理部11a、トラッキングサーボ処理部11b、スレッドサーボ処理部11cを有する。
サーボプロセッサ11は、これらの処理部のサーボ制御によって、マトリクス回路4からのフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号から、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボドライブ信号を生成しサーボ動作を実行させる。
【0025】
フォーカスサーボ処理部11aは、フォーカスエラー信号に応じてフォーカスドライブ信号を生成し、二軸ドライバ18によりピックアップ1内の二軸アクチュエータ37のフォーカスコイルを駆動する。
またトラッキングサーボ処理部11bは、トラッキングエラー信号に応じてトラッキングドライブ信号を生成し、二軸ドライバ18によりピックアップ1内の二軸アクチュエータ37のトラッキングコイルを駆動する。
以上により、ピックアップ1、マトリクス回路4、サーボプロセッサ11、二軸ドライバ18、二軸アクチュエータ37によるフォーカスサーボループ及びトラッキングサーボループが形成される。
【0026】
またトラッキングサーボ処理部11b、フォーカスサーボ処理部11aは、システムコントローラ10からの指示に応じて、トラックジャンプ動作やフォーカスジャンプ(多層ディスクの層間ジャンプ)等を実行させる処理も行う。
【0027】
スレッドサーボ処理部11cは、トラッキングエラー信号の低域成分として得られるスレッドエラー信号や、システムコントローラ10からのアクセス実行制御などに基づいてスレッドドライブ信号を生成し、スレッドドライバ15によりスレッド機構3を駆動する。スレッド機構3には、図示しないが、光ピックアップ1を保持するメインシャフト、スレッドモータ、伝達ギア等による機構を有し、スレッドドライブ信号に応じてスレッドモータを駆動することで、光ピックアップ1の所要のスライド移動が行なわれる。
【0028】
スピンドルサーボ回路12はスピンドルモータ2を例えばCLV回転させる制御を行う。
スピンドルサーボ回路12は、ウォブル信号に対するPLL処理で生成されるクロックを、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報として得、これを所定のCLV基準速度情報と比較することで、スピンドルエラー信号を生成する。
またデータ再生時においては、データ信号処理回路5内のPLLによって生成される再生クロックが、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報となるため、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。
そしてスピンドルサーボ回路12は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルドライバ17によりスピンドルモータ2のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路12は、システムコントローラ10からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモータ2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
なおスピンドルモータ2には、例えばFG(Freqency Generator)やPG(Pulse Generator)が設けられ、その出力がシステムコントローラ10に供給される。これによりシステムコントローラ10はスピンドルモータ2の回転情報(回転速度、回転角度位置)を認識できる。
【0029】
以上のようなサーボ系及び記録再生系の各種動作はマイクロコンピュータによって形成されたシステムコントローラ10により制御される。
システムコントローラ10は、ホストインターフェース8を介して与えられるホスト機器100からのコマンドに応じて各種処理を実行する。
例えばホスト機器100から書込命令(ライトコマンド)が出されると、システムコントローラ10は、まず書き込むべきアドレスに光ピックアップ1を移動させる。そしてエンコード/デコード部7により、ホスト機器100から転送されてきたデータ(例えばビデオデータやオーディオデータ等)について上述したようにエンコード処理を実行させる。そしてエンコードされたデータに応じてレーザドライバ13がレーザ発光駆動することで記録が実行される。
【0030】
また例えばホスト機器100から、光ディスク90に記録されている或るデータの転送を求めるリードコマンドが供給された場合は、システムコントローラ10はまず指示されたアドレスを目的としてシーク動作制御を行う。即ちサーボプロセッサ11に指令を出し、シークコマンドにより指定されたアドレスをターゲットとする光ピックアップ1のアクセス動作を実行させる。
その後、その指示されたデータ区間のデータをホスト機器100に転送するために必要な動作制御を行う。即ち光ディスク90からのデータ読出を行い、データ検出処理部5、エンコード/デコード部7における再生処理を実行させ、要求されたデータを転送する。
【0031】
またシステムコントローラ10は、装填された光ディスク90がBD、DVDのいずれであるかにより、そのディスク種別に対応するよう各部を制御する。例えば上述のようにレーザドライバ13に、駆動するレーザダイオードを指示したり、マトリクス回路4に、各種信号を生成するための演算処理の切換指示を行う。またエンコード/デコード部7に復調又は変調処理の切換指示を行う。
【0032】
なお図1の例は、ホスト機器100に接続される光ディスク装置として説明したが、光ディスク装置としては他の機器に接続されない形態もあり得る。その場合は、操作部や表示部が設けられたり、データ入出力のインターフェース部位の構成が、図1とは異なるものとなる。つまり、ユーザーの操作に応じて記録や再生が行われるとともに、各種データの入出力のための端子部が形成されればよい。もちろん光ディスク装置の構成例としては他にも多様に考えられる。例えばパーソナルコンピュータ等に内蔵される構成も考えられる。
【0033】
<2.第1の実施の形態>
[2−1 光ピックアップの構成]

光ピックアップ1の光学系の構成例を図2に示す。上述のように光ピックアップ1には複数種類の光ディスク90に対応して2系統の光路が構成される。2系統のそれぞれの光路に対応する光ディスク90を、図2では光ディスク90a,90bとして示している。
【0034】
半導体レーザ光源としてレーザダイオード34a,34bが設けられる。レーザダイオード34a,34bは、例えば一方が波長405nm、他方が波長650nmのレーザ光を出力するものとされる。
【0035】
光ディスク装置に光ディスク90aが装填されている場合は、レーザダイオード34aが用いられる。
レーザダイオード34aから出射される発散光としてのレーザ光は、プリズム33を透過してコリメータレンズ32aで平行光とされる。そして1/4波長板(QWP)31aで円偏光にされたレーザ光は、対物レンズ30aによって光ディスク90aに照射される。
光ディスク90aの記録トラック(エンボスピット列、又はマーク列(もしくは未だマーク列が形成されていないウォブリンググルーブ)によって形成される記録トラック)で反射された戻り光は、対物レンズ30a、1/4波長板31a、コリメータレンズ32aを介してプリズム33に入射される。1/4波長板31aにより往路と復路で偏光面が90度回転された戻り光は、プリズム33で反射されて受光部40に導かれる。
【0036】
この図2の例では、受光部40として回折格子35とフォトディテクタ36を備える。詳しくは後述するが、回折格子35は光束分割面を備え、回折角度の際により戻り光の光束を分割してフォトディテクタ36に照射する。
フォトディテクタ36では、所定の分割受光面が形成され、各受光面で受光光量に応じた電気信号を出力する。
各受光面で検出され光電変換された信号は、マトリクス回路4において演算処理され、トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号等、必要な信号が生成される。
【0037】
一方、光ディスク装置に光ディスク90bが装填されている場合は、レーザダイオード34bが用いられる。
レーザダイオード34bから出射される発散光としてのレーザ光は、プリズム33を透過してコリメータレンズ32bで平行光とされる。そして1/4波長板31bで円偏光にされたレーザ光は、対物レンズ30bによって光ディスク90bに照射される。
光ディスク90bの記録トラックで反射された戻り光は、対物レンズ30b、1/4波長板31b、コリメータレンズ32bを介してプリズム33に入射される。1/4波長板31bにより往路と復路で偏光面が90度回転された戻り光は、プリズム33で反射されて受光部40(回折格子35、フォトディテクタ36)に導かれる。
【0038】
この光ピックアップ1では、2系統の光路が形成されるが、受光部40については、2系統の光路に共通に用いられることとなる。
【0039】
図3により、回折格子35とフォトディテクタ36について説明する。なお、本実施の形態では、回折格子35に形成される光束分割面に特徴があるが、説明の都合上、この図3ではその点は示さず、分割線が従前と同様に形成された光束分割面の状態で示している。
また実際には光ピックアップ1のフォトディテクタ36としては、トラッキングエラー信号の生成に用いるプッシュプル信号、レンズシフト信号や、フォーカスエラー信号、RF信号等を生成するための受光面が形成されるが、説明の簡略化のため、以下では、レンズシフト信号の生成のための構成部分について図示及び説明を行う。
上述の図2では、回折格子35及びフォトディテクタ36による受光部40のみを示しているが、実際には、例えばプッシュプル信号やフォーカスエラー信号を得るために、プリズム33と回折格子35の間にビームスプリッタを配し、回折格子を経ないで図示しないフォトディテクタをさらに設ける構成等も想定される。
【0040】
図3Aは回折格子35の光束分割面のパターンの例を示している。図では、回折格子35上で形成される戻り光のスポットSPも示している。
図示するラジアル方向とは、光ディスク90のラジアル方向に相当する回折格子35上の方向であり、タンジェンシャル方向とは、光ディスク90のタンジェンシャル方向に相当する回折格子35上の方向である。
なお円形のスポットSP内において、両側の斜線を付した領域MODは、光ディスク90の記録面(記録トラック)で反射したレーザ光の0次光と±1次回折光が重なり合う領域である(以下「変調領域MOD」という)。
【0041】
ここでプッシュプル信号及びレンズシフト信号について説明しておく。
プッシュプル信号は、スポットSPにおける2つの変調領域MODの光強度の差分信号として得られる。スポットSPの変調領域MODにおいては、±1次回折光と0次光との位相差が変化し、光振幅の変調が生じる。そのため各変調領域MODの光強度に対応した電気信号の差分は、そのフォトディテクタの受光面でのラジアル方向の光強度が変調されることで生じるAC成分が含まれることになる。このAC成分は、光ディスク90のトラック構造により生じる回折光の位相が、スポット位置により変動することで生じるものであり、光ディスク90のトラックピッチを1周期とする振幅変調の信号である。即ちプッシュプル信号である。
【0042】
このプッシュプル信号に基づいてトラッキングエラー信号が生成される。具体的には
トラッキングエラー信号TEは、プッシュプル信号PP、レンズシフト信号LSを用いて、
TE=PP−α・LS
として生成される。αは係数である。
プッシュプル信号PPには、例えば対物レンズ30の移動に伴って発生するレンズシフトにより、DCオフセットが含まれることがある。そのため、この式では、プッシュプル信号PPにおけるDCオフセット成分をキャンセルするため、プッシュプル信号PPから(レンズシフト信号LS)×α、つまりDCオフセット成分を減算することでトラッキングエラー信号TEを得るというものである。
【0043】
レンズシフトは、例えば光ディスク90が回転するとき、回転中心とディスクのトラック中心との偏心に応じて、対物レンズが追従することにより発生する。そのため光ディスク90で反射した戻り光のスポット位置のラジアル方向へ移動を検出すればレンズシフト信号LSを生成することが可能となる。
【0044】
以上を踏まえて、図3A、図3Bでレンズシフト信号の検出を説明する。
図3Aの回折格子35では、光束分割面を形成するために、領域AR1、AR2、AR3が形成されている。
領域AR1の左上部分を切り取るように領域AR2が形成され、また領域AR1の右下部分を切り取るように領域AR3が設けられている。
なお、領域AR1と領域AR2を分割する分割線を、分割線DLt1,DLr1としている。また、領域AR1と領域AR3を分割する分割線を、分割線DLt2,DLr2としている。
分割線DLr1,DLr2は、領域をラジアル方向に分割するためにタンジェンシャル方向に伸びた分割線としている。分割線DLt1,DLt2は、領域をタンジェンシャル方向に分割するためにラジアル方向に伸びた分割線としている。
【0045】
回折格子パターンを波形のハッチングで模式的に示しているが、領域AR1と、領域AR2,AR3は、回折格子ピッチが異なるものとされている。このため、スポットSPを形成する光束のうち、領域AR1に入射した部分と、領域AR2,AR3に入射した部分は、異なる回折角度をもって、フォトディテクタ36に照射される。つまりスポットSPとしての光束が、部分毎に異なる回折角度を与えられることで分割される。
また、回折格子35は、シリンドリカルレンズと同様の効果が得られる構成とされており、自身を通過した戻り光のスポットは、タンジェンシャル方向に引き伸ばされるようになされている。
【0046】
これに対応してフォトディテクタ36は、一例として図3Bのような受光面パターンとされる。
ここでは、回折格子35によって回折される+一次回折光を受光する受光面と、−一次回折光を受光する受光面を示している。
+一次回折光を受光する受光面は、受光面K1,K2,L1,L2に4分割されている。
−一次回折光を受光する受光面は、受光面N1,N2,M1,M2に4分割されている。
【0047】
受光面K1,K2,L1,L2側で説明する。
回折格子35の領域AR1で回折された+一次回折光は、タンジェンシャル方向に引き伸ばされた図示のようなスポット形状で受光面K1,L1で受光される。
また回折格子35の領域AR2,AR3で回折された+一次回折光は、領域AR1とは異なる回折角度が与えられることで、同じくタンジェンシャル方向に引き伸ばされた図示のようなスポット形状で受光面L2,L2で受光される。
【0048】
ここで、受光面K1,K2,L1,L2で光電変換されて得られる電気信号を、そのままK1,K2,L1,L2の符号を用いて示すとすると、レンズシフト信号LSは、
LS=(K1+K2)−(L1+L2)
で求められる。

即ちこの例では、回折格子35による光束分割面(分割線DLt1,DLr1,DLt2,DLr2により分割される領域AR1,AR2,AR3)と、フォトディテクタ36での分割受光面(特に領域AR1を通過する光束を受光する受光面K1,L1の分割線DLt0)により、戻り光の光束を分割受光する。
これは戻り光のスポットをラジアル方向及びタンジェンシャル方向にともに非対称な形状として受光することとなる。
この場合に、レンズシフトが発生すると、受光面K1,K2に形成されるスポット面積と、受光面L1,L2に形成されるスポット面積が異なるものとなるため、上記の(K1+K2)−(L1+L2)の演算でレンズシフト信号LSが得られるものとなる。
【0049】
従って、このように得られるレンズシフト信号LSと、公知の別の方法で得たプッシュプル信号PPを用いた上述のTE=PP−α・LSの演算で、DCオフセット成分をキャンセルしたトラッキングエラー信号TEを得ることができる。
【0050】
なお、上記では受光面K1,K2,L1,L2(+一次回折光側)のみで説明したが、受光面N1,N2,M1,M2(−一次回折光側)を同様に用いてもよいし、それぞれから求められるレンズシフト信号の平均値を、求めるレンズシフト信号LSとするなども考えられる。
【0051】
[2−2 光束分割面でのスポットサイズ]

以上のようにレンズシフト信号LSを検出するが、本例の場合、先に述べたように2系統の光路を設けつつ、受光部40を共用化している。
即ちレーザダイオード34a,34bから出射された光束はそれぞれ別の光路で光ディスク90a,90bに入射するが、復路では、共通の回折格子35によって分割され、フォトディテクタ36で検出される。
本例では、この場合において、各光束について、回折格子35上のスポット径がほぼ一致するようにしている。
ここでは、複数の光源(レーザダイオード34a,34b)のそれぞれから出射され、光ディスク90a,90bで反射された光束を、スポット径が略同一となる状態で回折格子35の光束分割面に導くようにすることについて説明する。
【0052】
図4A、図4Bは、先に図3で説明した回折格子35の光束分割面を示している。この図4では、フォトディテクタ36の受光面K1,K2,L1,L2の符号、及び破線で示す分割線DLt0を重ねて示している。
先の図3の説明からわかるように、領域AR2は、受光面L2に対応する。領域AR3は受光面K2に対応する。
領域AR1は、受光面K1,L1に対応するが、破線で示すフォトディテクタ36側の分割線DLt0によって、領域AR1を通過した光束は受光時に分割受光される。つまり領域AR1の分割線DLt0より上側は受光面K1に対応し、下側は受光面L1に対応することとなる。
【0053】
そしてこの図4A、図4Bでは、レーザダイオード34aを元とする戻り光のスポットSP1を実線で示し、レーザダイオード34bを元とする戻り光のスポットSP2を点線で示している。図4Aは、スポットSP1,SP2のサイズ(スポット径)がほぼ同等の場合とし、図4Bは、スポットSP1のスポットサイズが大きくされ、スポットSP1,SP2のサイズ(スポット径)の違いが比較的大きくなっている場合としている。
【0054】
上述のようにレンズシフト信号LS=(K1+K2)−(L1+L2)で求めるとする。
ここで、小さい方のスポットSP2について見てみると、変調領域MODの部分は領域AR2,AR3には殆ど入っていない。
これに対して、大きい方のスポットSP1では、図4Aに比べ図4Bの場合、変調領域MODの部分が領域AR2,AR3に多く入り込んでいる。
レンズシフト信号LSは、プッシュプル信号PPからレンズシフトによるオフセットをキャンセルするための信号である。
ここで、小さい方のスポットSP2にタンジェンシャル方向の分割をあわせて設定しようとすると、大きい方のスポットSP1のレンズシフト信号LSに対し、プッシュプル信号が大きく漏れこんできてしまい、プッシュプル信号PPからレンズシフト信号LSを減算してトラッキングエラー信号TEを得る場合に、トラッキングエラー信号TEの振幅を小さくする原因となる。
したがって、2系統の各スポットSP1,SP2の光束分割面におけるスポット径をなるべく一致させることが重要であることがわかる。
【0055】
具体的には、小さい方のスポットSP2についてのレンズシフト信号LSへのプッシュプル信号PPの漏れ込み量が0%となるように調整した場合に、大きい方のスポットSP1についてのレンズシフト信号LSへのプッシュプル信号PPの漏れ込みを20%以内としたい。大きい方のスポットSP1についてのトラッキングエラー信号TEの品質を低下させないためである。
【0056】
図5は、横軸を、レンズシフト信号LSのプッシュプル信号振幅0%の場合を「1」としたときのスポット径とし、縦軸をレンズシフト信号LSのプッシュプル信号振幅割合、つまり漏れ込み量としている。
例えば小さい方のスポットSP2のスポット径を「1」とした場合、大きい方のスポットSP1のスポット径が、1.15となると、漏れ込み量が20%に達する。
このことから、2系統のレーザの光束分割面におけるスポット径は、大きい方が小さい方に比べて15%アップ以内に抑えることが適切である。
つまり理想的にはスポットSP1,SP2のスポット径は同一とすることであるが、大きい方が小さい方に比べて15%アップ以内の略同一であればよい。
【0057】
スポットSP1,SP2のスポット径を一致させるための、光学系の例について説明する。
図6は、図2で説明した光ピックアップ1の光学系に、以下の各部の距離や開口数を加えて示したものである。
LD1:レーザダイオード34a(「LD1」とする)による光路の、レーザダイオード側の焦点距離
LD2:レーザダイオード34b(「LD2」とする)による光路の、レーザダイオード側の焦点距離
OL1:LD1による光路の、対物レンズ30a(「OL1」とする)側の焦点距離
OL2:LD2による光路の、対物レンズ30b(「OL2」とする)側の焦点距離
D:回折格子35とフォトディテクタ36の距離
NALD1:LD1による光路の、レーザダイオード側の開口数
NALD2:LD2による光路の、レーザダイオード側の開口数
NAOL1:LD1による光路の、対物レンズ30a(OL1)側の開口数
NAOL2:LD2による光路の、対物レンズ30b(OL2)側の開口数
【0058】
2つの光路のビームがフォトディテクタ36でフォーカスしているとすると、回折格子35上のスポット径Φは、レーザダイオード側のNAによって、
Φ=2・D・NA
と表される。
従って、LD1光路とLD2光路でスポット径Φをそろえるためには、NALD1とNALD2を一致させればよい。
【0059】
レーザダイオード側のNAは、LD1,LD2の光路についてそれぞれ、
NALD1=Φ1/(2・fLD1
NALD2=Φ2/(2・fLD2
となる。Φ1はLD1光路での平行光のビーム径、Φ2はLD1光路での平行光のビーム径である。
【0060】
従ってNALD1とNALD2を一致させるには、
Φ1/(2・fLD1)=Φ2/(2・fLD2
を満たしていればよい。つまり、この式を満たすように、コリメータレンズ32a、32bの配置により、焦点距離fLD1とfLD2を決定すればよい。
【0061】
もしくは、例えば焦点距離fLD1とfLD2が光学系で制限され、自由に変えられない場合は、ビーム径Φ1とΦ2を調整する必要がある。ビーム径Φ1,Φ2は、
Φ1=2・fOL1・NAOL1
Φ2=2・fOL2・NAOL2
と表される。ここで開口数NAOL1.NAOL2は、記録メディアの種類によって、BD=0.85,DVD=0.6等と、すでに決められていることが多いので、対物レンズの焦点距離fOL1, fOL2により、ビーム径Φ1,Φ2を調整すればよい。
【0062】
以上をまとめると、
(fOL1・fLD2)/(fOL2・fLD1)=NAOL2/NAOL1
を満たすように、コリメータレンズ32a,32b及び対物レンズ30a,30bの各焦点距離fLD1、fLD2、fOL1、fOL2を決定すれば、回折格子35の光束分割面上のスポット径を一致させることができる。
【0063】
[2−3 ファーフィールドパターンを考慮した光束分割面]

また、本例のように光源が半導体レーザダイオード34a,34bである場合、ファーフィールドパターンが光ディスク90のタンジェンシャル方向、ラジアル方向から傾斜していると、光束分割面において光束(スポットSP1,SP2)がタンジェンシャル方向にずれた場合、レンズシフト信号LSが変化し、トラッキングエラー信号TEがオフセットしてしまう。
結果として、製造工程でのタンジェンシャル方向のスポットばらつきにより、トラッキングエラー信号規格の歩留まりの悪化が生じてしまう。
【0064】
一方、光源が複数の場合、それぞれのファーフィールドパターンは、光ディスク90上での記録・再生に最適な方向にあわせる必要があるため、光束分割面上で方向が異なることが発生する。
【0065】
図7に、活性層に垂直なファーフィールドパターンとしてのθ⊥(シータパーペンディキュラー)が、回折格子35の光束分割面上で互いに異なる角度となっている状態を示している。この場合、スポットSP1側は、θ⊥がタンジェンシャル方向に平行で、もう一方のスポットSP2側は、θ⊥がタンジェンシャル方向から傾斜している場合の例を示している。
この場合、θ⊥がタンジェンシャル方向に平行なスポットSP1側では、スポットSP1がタンジェンシャル方向にずれたとしても、レンズシフト信号LSのオフセットは生じない。しかしθ⊥がタンジェンシャル方向から傾斜しているスポットSP2側は、スポットSP2がタンジェンシャル方向にずれると、レンズシフト信号LSにオフセットが生じる。
【0066】
そこで本実施の形態では、回折格子35の光束分割面を図8Aのように構成する。図7で示した場合と同じく、実線で示すスポットSP1のθ⊥はタンジェンシャル方向に平行で、点線で示すスポットSP2のθ⊥は傾いているとしている。
この場合に、回折格子35の光束分割面において、ラジアル方向に光束を分割する分割線DLr1、DLr2が、両光束(スポットSP1,SP2)の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成する。
より具体的には、分割線DLr1、DLr2が、各スポットSP1,SP2についてのθ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されるように、分割線角度が、光ディスク90のタンジェンシャル方向に相当する方向から傾斜した状態に形成する。
【0067】
図8Bに、スポットSP1側についてのθ⊥(SP1)と、スポットSP2側についてのθ⊥(SP2)を破線で示しているが、両θ⊥の角度の範囲内となる領域とは、斜線部として示した領域である。
つまり分割線DLr1は、分割線DLt1から連続して、斜線部内に傾いて形成され、この分割線DLt1,DLr1により領域AR1とAR2が分割される。
また同様に分割線DLr2は、分割線DLt2から連続して、斜線部内に傾いて形成され、この分割線DLt2,DLr2により領域AR1とAR3が分割される。
【0068】
領域をラジアル方向に分割するためにタンジェンシャル方向に形成する分割線DLr1、DLr2を、このように傾けて、2つのファーフィールドパターンの間になるようにすることで、それぞれの光束で、レンズシフト信号LSにおけるオフセットの影響を分け合い、緩和することができる。
これにより、2系統の光束について、一方ではタンジェンシャル方向でのスポット位置ずれの際に、レンズシフト信号LSの品質が大きく悪化し、一方の系でトラッキングエラー信号TEの品質が規定外となってしまう事態を低減できる。つまり、製造工程上のスポット位置のばらつきが多少生じたとしても、2系統の光路について、いずれもトラッキングエラー信号TEを実用上問題のない品質とできる可能性が高くなり、歩留まりを向上させることができる。
【0069】
以上のように本実施の形態では、2つの光源(レーザダイオード34a,34b)についての2系統の光路を備えて、BD、DVDという複数種類の光ディスク90に対応する。
そして、光ピックアップ1では、2系統の光路について受光部40としての回折格子35とフォトディテクタ36を共用する。
この場合に、回折格子35の光束分割面上で、2つの系のスポットSP1,SP2のサイズが同一又は比が15%以内の略同一となるようにしている。これによってどちらの光路の場合についても、レンズシフト信号LSにプッシュプル振幅成分が大きく漏れ込むことがないようにし、トラッキングエラー信号TEの振幅低下を防止している。
その上でさらに、各光路のレーザ光についてのファーフィールドパターンのθ⊥が光束分割面上で一致していないことに対応して、回折格子35の分割線DLr1、DLr2が、各レーザダイオード34a,34bからの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されるようにし、どちらの場合もレンズシフト信号LSに大きなオフセットが発生しないようにしている。これによってもトラッキングエラー信号TEの品質を安定化できる。
以上により、レーザダイオード34a,34bを光源とする2つの光路について、受光部40を共用しても、両者について適切なトラッキングエラー信号TEの生成を実現し、光ディスク90a,90bのいずれについても安定したトラッキングサーボを実現できる。
従って、受光部40の共用を実現でき、これによって光ピックアップ1の構成の簡易化、光ピックアップ1のサイズの縮小(省スペース化)、コストダウンを促進できる。
【0070】
<3.第2の実施の形態>

第2の実施の形態を図9で説明する。光ピックアップ1の構成は上記第1の実施の形態と同様とし、図9では第2の実施の形態として、回折格子35の光束分割面のパターンを示している。
図9Aでは、図8Aで示した場合と同じく、実線で示すスポットSP1のθ⊥はタンジェンシャル方向に平行で、点線で示すスポットSP2のθ⊥は傾いている。
この場合に、回折格子35の光束分割面において、ラジアル方向に光束を分割する分割線DLr1、DLr2が、両光束(スポットSP1,SP2)の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成する。
この第2の実施の形態では、分割線DLr1、DLr2が、各スポットSP1,SP2についてのθ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されるように、光束分割面の中央位置からラジアル方向に移動した状態に形成されているものである。
つまり分割線DLr1は、タンジェンシャル方向に形成されて傾いてはいないが、光束分割面のラジアル方向の中央よりも、図中右側にシフトした位置に形成されている。
また分割線DLr2も、タンジェンシャル方向に形成されて傾いてはいないが、光束分割面のラジアル方向の中央よりも、図中左側にシフトした位置に形成されている。
【0071】
この場合も、図9Bに、スポットSP1側についてのθ⊥(SP1)と、スポットSP2側についてのθ⊥(SP2)を破線で示しているが、両θ⊥の角度の範囲内となる領域とは、斜線部として示した領域である。
そして分割線DLr1、DLr2は、それぞれシフトすることで、斜線部として示す、2つのファーフィールドパターンの間の領域に形成されるようにしている。
これによって、第1の実施の形態の場合と同様、それぞれの光束で、レンズシフト信号LSにおけるオフセットの影響を分け合い、緩和することができる。
【0072】
なお、第1の実施の形態で分割線DLr1、DLr2を傾けた例、第2の実施の形態で分割線DLr1、DLr2をラジアル方向にシフトさせた例を示したが、これらを合成して、分割線DLr1、DLr2をシフトさせた上で傾けて形成するような例も考えられる。
いずれにしても、図8Bや図9Bで斜線部として示した2つのファーフィールドパターンの間の領域に、ラジアル方向に光束を分割する分割線が形成されればよい。
【0073】
<4.第3の実施の形態>

第3の実施の形態について図10、図11、図12で説明する。
第3の実施の形態は、回折格子35とフォトディテクタ36による受光部40において、レンズシフト信号LSに加えてプッシュプル信号PPも検出できるようにする例である。
特に、上述したようにスポットSP2がタンジェンシャル方向にずれた場合の、レンズシフト信号LSにオフセットが生じ、トラッキングエラー信号TEの品質が低下することへの対策を、プッシュプル信号PPを利用して行うものである。
【0074】
まず図10A、図10Bは、レンズシフト信号LSとプッシュプル信号PPを得るための回折格子35の光束分割面のパターンと、フォトディテクタ36の受光面のパターンを示している。
図10Aの回折格子35では、ラジアル方向の中央位置にタンジェンシャル方向に伸びた分割線(DLr1,DLr2,DLr3)が形成されている。
この場合、領域AR1a、AR1b、AR2、AR3が形成される。上述の図4と比較した場合、分割線DLr3が追加され、領域AR1が、回折角度の異なる領域AR1a、AR1bに分割されたものと考えればよい。領域AR2、AR3は同じ回折角度の領域である。従って、第1の回折角度を与える領域AR1aと、第2の回折角度を与える領域AR1bと、第3の回折角度を与える領域AR2及びAR3というように、回折角度の異なる領域が3つ形成されたパターンとなっている。
【0075】
これに応じてフォトディテクタ36は、図10Bに例えば+一次回折光を受光する受光面として示しているが、受光面K1、K1’、K2、L1、L1’、L2に6分割されている。
受光面L2は、回折格子35の領域AR2で回折された光を受光する。
受光面K2は、回折格子35の領域AR3で回折された光を受光する。
受光面K1、L1’は、回折格子35の領域AR1aで回折された光を受光する。
受光面K1’、L1は、回折格子35の領域AR1bで回折された光を受光する。
回折格子35を通過した光は、タンジェンシャル方向に引き延ばされて図のようなパターンで各受光面に受光される。
【0076】
受光部40をこのように構成した場合、マトリクス回路4では、以下のようにレンズシフト信号LS及びプッシュプル信号PPを演算する。なお、受光面K1、K1’、K2、L1、L1’、L2での光電変換で得られる電気信号を、そのままK1、K1’、K2、L1、L1’、L2と表記する。
なお、第1,第2の実施の形態と同様、スポットSPのθ⊥はタンジェンシャル方向に平行で、スポットSP2のθ⊥はタンジェンシャル方向から傾いている場合としている。
【0077】
レンズシフト信号LSについては、スポットSP1、SP2のいずれの場合も、
LS=(K1+K1’+K2)−(L1+L1’+L2)
として求める。
なお、この場合、K1+K1’かつ、L1+L1’でプッシュプル信号PP成分は打ち消せることとなる。
一方、プッシュプル信号PPについては、スポットSP1の場合は、
PP=(K1+L1’+K2)−(L1+K1’+L2)
として求め、スポットSP2の場合は、
PP=(K1+L1’)−(L1+K1’)
として求める。
つまりマトリクス回路4では、複数のレーザダイオード34a,34bからの光束のそれぞれについて、プッシュプル信号PPを求める演算として異なる演算を行うようにする。システムコントローラ10は、記録再生をいずれのレーザダイオード34a,34bで行うかにより、プッシュプル信号PPの演算の切換をマトリクス回路4に指示することとなる。
【0078】
この場合、まずスポットS1については、レンズシフト信号LSもプッシュプル信号PPもタンジェンシャル方向に光束がずれたとしても、オフセットは生じないため、TE=PP−α・LSの演算で、トラッキングエラー信号TEにタンジェンシャル方向の光束のずれに起因するオフセットは生じない。
一方、θ⊥が傾いているスポットSP2は、タンジェンシャル方向の光束のずれで、レンズシフト信号LSとプッシュプル信号PPの両方にオフセットが生じることとなる。従ってTE=PP−α・LSの演算において、レンズシフト信号LSとプッシュプル信号PPに生じたオフセットがキャンセルされ、トラッキングエラー信号TEにはタンジェンシャル方向の光束のずれに起因するオフセットを解消又は低減できることとなる。つまり、プッシュプル信号PPに故意にオフセットを生じさせ、これによってレンズシフト信号LSに生じるオフセットをキャンセルするものである。
なお、この方法は、異なる分割面でプッシュプル信号PPを取得する場合にも適用できる。
【0079】
ここで、上述の第1,第2の実施の形態では、光束分割面で領域をラジアル方向に分割するためにタンジェンシャル方向に形成する分割線DLr1、DLr2を、2つのファーフィールドパターンの間になるよう傾けたり、シフトすることで、それぞれの光束(SP1,SP2)で、レンズシフト信号LSにおけるオフセットの影響を緩和した。
これを図10の構成に適用すると、回折格子35の光束分割面は図11A又は図11Bのようになる。
即ち図11Aは、分割線DLr1、DLr2を、第1の実施の形態のように2つのファーフィールドパターンの間になるよう傾けた例であり、図11Bは分割線DLr1、DLr2を、第2の実施の形態のように2つのファーフィールドパターンの間になるようシフトさせた例である。
【0080】
複数のスポットSP1,SP2についてのファーフィールドパターンのθ⊥の傾きの違いによっては、スポット位置のタンジェンシャル方向のずれに起因するオフセットは、必ずしも最適な状態でキャンセルできないことがある。
そこで、図10の構成を基本とする場合に、図11A、図11Bのように分割線DLr1、DLr2を調整する。これによりトラッキングエラー信号TEにおけるオフセット成分が両スポットについて振り分け、いずれかのスポットについてトラッキングエラー信号TEの品質の大幅な悪化が生じないようにすることができる。
【0081】
続いて、レンズシフト信号LS、プッシュプル信号PPに加えてフォーカスエラー信号FEも得られるようにした回折格子35及びフォトディテクタ36の例を図12に示す。
図12Aの回折格子35の光束分割面は、上記図10Aと同様である。
フォトディテクタ36については、図12Bに、+一次回折光を受光する受光面及び−一次回折光を受光する受光面を示している。+一次回折光を受光する受光面は、受光面K1、K1’、K2、L1、L1’、L2、W1、W2、W3に9分割されている。−一次回折光を受光する受光面は、受光面N1、N1’、N2、M1、M1’、M2、Z1、Z2、Z3に9分割されている。
【0082】
受光面L2(及びN2)は、回折格子35の領域AR2で回折された光を受光する。
受光面K2(及びM2)は、回折格子35の領域AR3で回折された光を受光する。
受光面K1、W2、L1’(及びM1、Z2、N1’)は、回折格子35の領域AR1aで回折された光を受光する。
受光面K1’、W1、L1(及びM1’、Z1、N1)は、回折格子35の領域AR1bで回折された光を受光する。
回折格子35を通過した光は、タンジェンシャル方向に引き延ばされて図のようなパターンで各受光面に受光される。
なお、−1次回折光は、タンジェンシャル方向はニア側にデフォーカスされ、+1次回折光は、タンジェンシャル方向はFar側にデフォーカスされるように構成する。
【0083】
この場合、フォーカスエラー信号FEは、スポットサイズディテクション方式を用い、スポットSP1、SP2のいずれの場合も、
FE=(M1+M1’+M2+N1+N1’+N2+W1+W2+W3)−(K1+K1’+K2+L1+L1’+L2+Z1+Z2+Z3)
の演算で求める。
【0084】
レンズシフト信号LSについては、スポットSP1、SP2のいずれの場合も、
LS=(K1+K1’+K2+M1+M1’+M2)−(L1+L1’+L2+N1+N1’+N2)
として求める。
プッシュプル信号PPについては、スポットSP1の場合は、
PP=(K1+L1’+W2+K2+M1+N1’+Z2+M2)−(L1+K1’+W1+L2+N1+M1’+Z1+N2)
として求め、スポットSP2の場合は、
PP=(K1+L1’+W2+M1+N1’+Z2)−(L1+K1’+W1+N1+M1’+Z1)
として求める。
【0085】
この場合も、θ⊥が傾いているスポットSP2は、タンジェンシャル方向の光束のずれで、レンズシフト信号LSとプッシュプル信号PPの両方にオフセットが生じることとなる。従ってTE=PP−α・LSの演算において、レンズシフト信号LSとプッシュプル信号PPに生じたオフセットがキャンセルされ、トラッキングエラー信号TEにはタンジェンシャル方向の高速のずれに起因するオフセットを解消又は低減できる。
【0086】
さらに、これのみでは完全にオフセット成分をキャンセルできなくとも、回折格子35を図11A又は図11Bのように分割線DLr1、DLr2を、2つのファーフィールドパターンの間になるようにしてオフセット成分を調整するとよい。これによりトラッキングエラー信号TEにおけるオフセット成分を両スポットについて振り分け、いずれかのスポットについてトラッキングエラー信号TEの品質の大幅な悪化が生じないようにすることができる。
【0087】
<5.第4の実施の形態>

以上の第1〜第3の実施の形態では、受光部40として回折格子35とフォトディテクタ36を設けた例を述べたが、第4の実施の形態では受光部40に回折格子35を設けない例を述べる。
【0088】
図13は光ピックアップ1の光学系の構成を示しているが、図2と同一部分は同一符号を付し、説明を省略する。この場合、受光部40として回折格子35が設けられず、フォトディテクタ36のみとなっている点が図2と異なる。即ちフォトディテクタ36では、プリズム33によって導かれる2系統のそれぞれの光束を、ある程度のスポット系が得られる位置で受光する。
【0089】
この構成の場合、光束分割面は、フォトディテクタ36の分割受光面として形成されれば良い。
フォトディテクタ36の受光面パターンを図14,図15に示す。
図14Aは、第1の実施の形態での図8の回折格子35と図3Bのフォトディテクタ36による分割受光と同様の考え方の受光を、図13のフォトディテクタ36の分割受光面により実現するものである。
【0090】
フォトディテクタ36は、分割線DLt1、DLr1、DLt2、DLr2、DLt0によって受光面が分割され、4つの受光面K1,K2,L1,L2が形成される。
このフォトディテクタ36に対し、図のようにスポットSP1,SP2が照射される。
フォトディテクタ36の受光面におけるスポットSP1,SP2のスポット径は、同一又は大きい方が小さい方に比べて15%アップ以内の略同一となるように、図13の光学系が設計されている。
【0091】
この場合、第1の実施の形態と同様、受光面K1,K2,L1,L2で光電変換されて得られる電気信号を、そのままK1,K2,L1,L2の符号を用いて示すとすると、レンズシフト信号LSは、LS=(K1+K2)−(L1+L2)で求められる。
そして、受光面をラジアル方向に分割するためにタンジェンシャル方向に形成する分割線DLr1、DLr2は、各レーザダイオード34a,34bからの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に傾いた状態で形成されるようにしていることで、それぞれの光束で、レンズシフト信号LSにおけるオフセットの影響を分け合い、緩和する。
【0092】
図14Bは、第2の実施の形態での分割受光と同様の考え方の受光を、図13のフォトディテクタ36の分割受光面により実現するものである。
フォトディテクタ36は、分割線DLt1、DLr1、DLt2、DLr2、DLt0によって受光面が分割され、4つの受光面K1,K2,L1,L2が形成される。この場合もレンズシフト信号LSは、LS=(K1+K2)−(L1+L2)で求められる。
【0093】
そして、受光面をラジアル方向に分割するためにタンジェンシャル方向に形成する分割線DLr1、DLr2は、各レーザダイオード34a,34bからの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域にシフトした状態で形成されるようにしていることで、それぞれの光束で、レンズシフト信号LSにおけるオフセットの影響を分け合い、緩和する。
【0094】
図15A、図15Bは、第3の実施の形態での図11A、図11Bで説明した分割受光と同様の考え方の受光を、図13のフォトディテクタ36の分割受光面により実現するものである。
図15A、図15Bのいずれも、フォトディテクタ36は、分割線DLt1、DLr1、DLt2、DLr2、DLt0、DLr3によって受光面が分割され、6つの受光面K1、K1’、K2、L1、L1’、L2が形成される。
レンズシフト信号LSは、LS=(K1+K1’+K2)−(L1+L1’+L2)として求める。
またプッシュプル信号PPについては、スポットSP1の場合は、PP=(K1+L1’+K2)−(L1+K1’+L2)として求め、スポットSP2の場合は、PP=(K1+L1’)−(L1+K1’)として求める。
【0095】
そして、受光面をラジアル方向に分割するためにタンジェンシャル方向に形成する分割線DLr1、DLr2は、各レーザダイオード34a,34bからの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に傾けるか(図15Aの例)、又はシフトさせる(図15Bの例)ようにしている。これにより、それぞれの光束で、レンズシフト信号LSにおけるオフセットの影響を分け合い、いずれかのスポットについてトラッキングエラー信号TEの品質の大幅な悪化が生じないようにすることができる。
【0096】
<6.変形例>

以上、実施の形態について説明してきたが、本開示の技術は実施の形態で示したものに限らず、多様な変形例が想定される。
【0097】
本開示では複数の光源からのレーザ光についての光ディスク90からの戻り光を、共通の受光部40を共用して光検出するものである。複数の光路とは、BDとDVDに対応する光路としたが、もちろんBDとDVDに対応するものには限られない。例えばBDと次世代光ディスクに対応する2系統の光路も考えられる。
また3系統以上の光路を有する場合も適用できる。例えばBD、DVDと次世代光ディスクに対応する3系統の光路の場合も本開示は適用できる。
【0098】
なお本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)半導体レーザダイオードによる複数の光源と、
複数の上記光源にそれぞれ対応して、上記光源から出射された光束を、タンジェンシャル方向に沿って記録トラックが形成された光ディスクに集光する複数の対物レンズと、
複数の上記光源からの光束に共通に対応する受光部であって、光束分割面を有し、光ディスクから反射された光束を上記光束分割面で分割して受光する受光部と、
複数の上記光源のそれぞれから出射され、上記光ディスクで反射された光束を、スポット径が略同一となる状態で上記光束分割面に導く光学系と、
を備え、
複数の上記光源からの光束の、活性層に垂直なファーフィールドパターンとしてのθ⊥が、上記光束分割面上で互いに異なる角度となっているとともに、上記光束分割面では、上記光束分割面上で光ディスクのラジアル方向に相当する方向に光束を分割する分割線が、複数の上記光源からの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されている光ピックアップ装置。
(2)上記光束分割面では、上記分割線が、上記各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されるように、分割線角度が、光ディスクのタンジェンシャル方向に相当する方向から傾斜した状態に形成されている上記(1)に記載の光ピックアップ装置。
(3)上記光束分割面では、上記分割線が、上記各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されるように、分割線が、上記光束分割面の中央位置から上記ラジアル方向に相当する方向に移動した状態に形成されている上記(1)に記載の光ピックアップ装置。
(4)上記受光部は、上記対物レンズのレンズシフト信号を演算するための受光信号が得られるように光束を分割して受光する上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
(5)上記受光部は、上記対物レンズのレンズシフト信号及びプッシュプル信号を演算するための受光信号が得られるように光束を分割して受光する上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
(6)上記受光部で得られる信号を演算して上記レンズシフト信号及び上記プッシュプル信号を生成する演算部をさらに備え、
上記演算部では、複数の上記光源からの光束のそれぞれについて、上記プッシュプル信号を求める演算として異なる演算を行う上記(5)に記載の光ピックアップ装置。
(7)上記受光部は、回折格子と、回折格子で回折された光束を受光して電気信号に変換する光検出器とを有し、
上記回折格子に上記光束分割面が形成されている上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
(8)上記受光部は、光ディスクから反射された光束を受光して電気信号に変換する光検出器を有し、
上記光検出器の受光面に上記光束分割面が形成されている上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【符号の説明】
【0099】
1 光ピックアップ、4 マトリクス回路、10 システムコントローラ、11 サーボプロセッサ、30a,30b 対物レンズ、34a,34b レーザダイオード、35 回折格子、36 フォトディテクタ、40 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザダイオードによる複数の光源と、
複数の上記光源にそれぞれ対応して、上記光源から出射された光束を、タンジェンシャル方向に沿って記録トラックが形成された光ディスクに集光する複数の対物レンズと、
複数の上記光源からの光束に共通に対応する受光部であって、光束分割面を有し、光ディスクから反射された光束を上記光束分割面で分割して受光する受光部と、
複数の上記光源のそれぞれから出射され、上記光ディスクで反射された光束を、スポット径が略同一となる状態で上記光束分割面に導く光学系と、
を備え、
複数の上記光源からの光束の、活性層に垂直なファーフィールドパターンとしてのθ⊥が、上記光束分割面上で互いに異なる角度となっているとともに、上記光束分割面では、上記光束分割面上で光ディスクのラジアル方向に相当する方向に光束を分割する分割線が、複数の上記光源からの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されている光ピックアップ装置。
【請求項2】
上記光束分割面では、上記分割線が、上記各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されるように、分割線角度が、光ディスクのタンジェンシャル方向に相当する方向から傾斜した状態に形成されている請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
上記光束分割面では、上記分割線が、上記各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されるように、分割線が、上記光束分割面の中央位置から上記ラジアル方向に相当する方向に移動した状態に形成されている請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
上記受光部は、上記対物レンズのレンズシフト信号を演算するための受光信号が得られるように光束を分割して受光する請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
上記受光部は、上記対物レンズのレンズシフト信号及びプッシュプル信号を演算するための受光信号が得られるように光束を分割して受光する請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
上記受光部で得られる信号を演算して上記レンズシフト信号及び上記プッシュプル信号を生成する演算部をさらに備え、
上記演算部では、複数の上記光源からの光束のそれぞれについて、上記プッシュプル信号を求める演算として異なる演算を行う請求項5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
上記受光部は、回折格子と、回折格子で回折された光束を受光して電気信号に変換する光検出器とを有し、
上記回折格子に上記光束分割面が形成されている請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
上記受光部は、光ディスクから反射された光束を受光して電気信号に変換する光検出器を有し、
上記光検出器の受光面に上記光束分割面が形成されている請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
半導体レーザダイオードによる複数の光源と、
複数の上記光源にそれぞれ対応して、上記光源から出射された光束を、タンジェンシャル方向に沿って記録トラックが形成された光ディスクに集光する複数の対物レンズと、
複数の上記光源からの光束に共通に対応する受光部であって、光束分割面を有し、光ディスクから反射された光束を上記光束分割面で分割して受光する受光部と、
複数の上記光源のそれぞれから出射され、上記光ディスクで反射された光束を、スポット径が略同一となる状態で上記光束分割面に導く光学系と、
上記受光部で得られる信号を演算してエラー信号を生成する演算部と、
複数の上記対物レンズのサーボ駆動を行うサーボ駆動部と、
上記エラー信号に基づいて生成したサーボ駆動信号により上記サーボ駆動部によるサーボ駆動を実行させるサーボ制御部と、
を備え、
複数の上記光源からの光束の、活性層に垂直なファーフィールドパターンとしてのθ⊥が、上記光束分割面上で互いに異なる角度となっているとともに、上記光束分割面では、上記光束分割面上で光ディスクのラジアル方向に相当する方向に光束を分割する分割線が、複数の上記光源からの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成されている光ディスク装置。
【請求項10】
半導体レーザダイオードによる複数の光源と、
複数の上記光源にそれぞれ対応して、上記光源から出射された光束を、タンジェンシャル方向に沿って記録トラックが形成された光ディスクに集光する複数の対物レンズと、
光束分割面を有し、光ディスクから反射された光束を上記光束分割面で分割して受光する受光部と、
複数の上記光源のそれぞれから出射され、上記光ディスクで反射された光束を、スポット径が略同一となる状態で上記光束分割面に導く光学系と、
を備えた光ピックアップ装置の光検出方法として、
上記受光部では、
複数の上記光源からの光束の、活性層に垂直なファーフィールドパターンとしてのθ⊥が、上記光束分割面上で互いに異なる角度となっていることに応じて、上記光束分割面の、上記光束分割面上で光ディスクのラジアル方向に相当する方向に光束を分割する分割線を、複数の上記光源からの光束の各θ⊥の角度の範囲内となる領域に形成し、複数の上記光源から出射され上記光ディスクで反射された光束について、共通に対応して上記光束分割面で分割して受光する光検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−45487(P2013−45487A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183310(P2011−183310)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】