光ピックアップ装置および光ディスク装置
【課題】2波長マルチレーザ光源を用いたDVD/CD互換光ピックアップ装置を含む光ピックアップ装置において、簡素な1ビーム光学系構成で部品コストを低減し、安定なサーボ信号およびRF信号を生成する。
【解決手段】光ピックアップ装置は、レーザ光源と、対物レンズと、光ディスクの情報層を反射した光束を分割する光分割素子と、情報層で反射した光束を受光する複数の受光素子を備えた光検出器とを備え、光分割素子は、少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分割するとともに、±1次回折光に共役なデフォーカス収差を与え、光検出器は、0次光を受光する第1の受光面と、±1次回折光のうちどちらか一方の光束を受光する第2の受光面の、少なくとも2つの光束を受光する受光面を配置し、第1および第2の受光面でスポットサイズディテクション方式によってフォーカス誤差信号を検出し、第1の受光面でトラッキング誤差信号を検出する。
【解決手段】光ピックアップ装置は、レーザ光源と、対物レンズと、光ディスクの情報層を反射した光束を分割する光分割素子と、情報層で反射した光束を受光する複数の受光素子を備えた光検出器とを備え、光分割素子は、少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分割するとともに、±1次回折光に共役なデフォーカス収差を与え、光検出器は、0次光を受光する第1の受光面と、±1次回折光のうちどちらか一方の光束を受光する第2の受光面の、少なくとも2つの光束を受光する受光面を配置し、第1および第2の受光面でスポットサイズディテクション方式によってフォーカス誤差信号を検出し、第1の受光面でトラッキング誤差信号を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置およびそれを搭載した光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術に関する背景技術として、例えば特開2003−272218号公報(特許文献1)、または特開2003−187469号公報(特許文献2)がある。
【0003】
特許文献1には、「保護層の厚さおよび情報の記録密度が異なり且つ記録再生に用いるレーザ光の波長が異なる2種類の光記録媒体(例えばCDとDVD)に記録された信号を、2つのレーザ光発光部を1つのパッケージに組み込んだ2波長光源および対物レンズを含めて各波長で共通の光学系を用いて、安定かつ良好に再生できるようにする。」とあり、解決手段として「2波長レーザ光源11から放射されたレーザ光を光記録媒体1a,1bの情報記録面に集光して読み取りスポットを形成する対物レンズ16は、正のパワーを有するレンズと同心円輪帯状のホログラムとを有しており、各光記録媒体1a,1bの保護層の厚みで生ずる球面収差を補正する。センサレンズ17によって光検出器18の各受光部18a,18bに各ディスク1a,1bからの読み出し光の合焦するように共役調整をするとともに、読み出し光に非点収差を付与する。焦点誤差検出には非点収差法を用いる。」と記載されている。
また、特許文献2には、「SSD方式でフォーカスエラー信号を得る光ピックアップ装置において、対称性の良いS字信号を検出できるようにし、動作の安定化を図る。」とあり、解決手段として「光記録媒体にレーザ光を照射すると共に、少なくとも光記録媒体からの反射光を回折素子を介して受光素子部に導き、上記回折素子によって発生した回折光を用いたスポットサイズディテクション法によってフォーカスエラー信号検出を行う光ピックアップ装置において、上記受光素子部の位置が、上記回折素子を透過した0次光の焦点位置から、上記回折素子側へオフセットさせた位置に設定されているようにする。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−272218号公報
【特許文献2】特開2003−187469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、例えばCDとDVDのような互いに波長の異なる規格の光学的情報記録媒体(以下、光ディスクと記す。)を記録再生するとき、光ディスク装置に搭載された光ピックアップ装置は、CD用半導体レーザとDVD用半導体レーザを共通の筐体に格納した2波長マルチレーザ光源をレーザ光源に用いている。2波長マルチレーザ光源を用いると、レーザ光源の配置スペースを半分にできる、2波長合成用のプリズムを削除できる、レンズや光検出器などの光学部品を共用化できるなど、小型化や低コスト化の面で有利となる。
【0006】
従来、2波長マルチレーザ光源を用いたDVD/CD互換光ピックアップ装置は、例えば特許文献1のように3ビーム光学系を用いるのが一般的である。3ビーム光学系では、レーザ光源を出射した光束を往路回折格子で3つの光束に分離して光ディスクの情報層上に集光し、情報層を反射した3つの光束を非点収差方式で検出することにより、サーボ信号であるフォーカス誤差信号(FES:Focusing Error Signal)やトラッキング誤差信号(TES:Tracking Error Signal)、または再生信号であるRF信号(RF:Radio Frequency)を生成する。
【0007】
しかしながら、3ビーム光学系は光ディスクの情報層に集光する3つの光束の配置方向を光ディスクのトラック方向に対して非常に高い精度で取り付ける必要がある。2波長マルチレーザ光源を使用する場合、2つレーザが単一の筐体に格納されているために各光束で調整を行うことは困難である。また、非点収差方式は光ディスクの情報層に集光した光束に対してトラックピッチの大きい光ディスクに対して、位置ずれなどの外乱が生じたときにフォーカス誤差信号にプッシュプルが漏れ込み、制御が不安定になるという課題がある。
【0008】
この問題を解決する方法として、光ディスクの情報層上に1つの光束を集光し、その反射光束を用いてサーボ信号やRF信号を生成する、いわゆる1ビーム光学系がある。1ビーム光学系であれば、光ディスクの情報層に集光する光束は1つであるため、光ディスクのトラック方向に対する取り付け精度は不要となり、調整が容易である。また、1ビーム光学系でフォーカス誤差信号を検出する方式として、例えば特許文献2のようにスポットサイズディテクション方式(以下、SSD方式と略す。)がある。SSD方式であれば、位置ずれなどの外乱に対しても、フォーカス誤差信号へのプッシュプルの漏れ込みをキャンセルすることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2のようなSSD方式の場合、復路の回折素子で回折した3つの光束を受光面で受光する必要がある。光検出器上の光束サイズが異なり、かつサイズの大きい光束を受光するため、光検出器が大きくなることが懸念される。DVD/CD互換光ピックアップ装置をさらに低コスト化するためには、現行よりも部品点数を低減することだけでなく、光学部品サイズを小型化すること必要であるが、非点収差方式よりも部品コストが高くなってしまうことが課題となる。
【0010】
このような状況に鑑み、本発明は2波長マルチレーザ光源を用いたDVD/CD互換光ピックアップ装置を含む光ピックアップ装置において、簡素な1ビーム光学系構成で部品コストを低減するとともに、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することが可能な光ピックアップ装置およびそれを搭載した光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、その一例として特許請求の範囲に記載する構成により達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2波長マルチレーザ光源を用いたDVD/CD互換光ピックアップ装置を含む光ピックアップ装置において、簡素な1ビーム光学系構成で部品コストを低減するとともに、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することが可能な光ピックアップ装置およびそれを搭載した光ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における光ピックアップ装置の光学系を示した図である。
【図2】実施例1におけるホログラフィック回折格子の光束の斜視図である。
【図3】実施例1におけるホログラフィック回折格子を、光束入射方向から見た概略平面図である。
【図4】実施例1におけるホログラフィック回折格子を回折した光束が光検出器に入射する様子を、Tan方向から見た概略平面図である。
【図5】実施例1におけるホログラフィック回折格子を、Rad方向から見た概略平面図である。
【図6】実施例1における光検出器の受光面構成を示した図である。
【図7】実施例1における光検出器の受光面に入射する光束を示した図である。
【図8】実施例1におけるホログラフィック回折格子を回折した光束が光検出器に入射する別の構成を、Tan方向から見た概略平面図である。
【図9】実施例1におけるホログラフィック回折格子の別の構成を、Rad方向から見た概略平面図である。
【図10】実施例1における光検出器の別の受光面構成を示した図である。
【図11】実施例2における光ピックアップ装置の光学系を示した図である。
【図12】実施例2におけるホログラフィック回折格子の光束の斜視図である。
【図13】実施例2におけるホログラフィック回折格子を、光束入射方向から見た概略平面図である。
【図14】実施例2における光ホログラフィック回折格子を回折した光束が光検出器に入射する様子を、Tan方向から見た概略平面図である。
【図15】実施例2におけるホログラフィック回折格子を、Rad方向から見た概略平面図である。
【図16】実施例2における光検出器の受光面構成を示した図である。
【図17】実施例2における光検出器の受光面に入射するDVD光束を示した図である。
【図18】実施例2における光検出器の受光面に入射するCD光束を示した図である。
【図19】実施例2における光ホログラフィック回折格子を回折した光束が光検出器に入射する別の構成を、Tan方向から見た概略平面図である。
【図20】実施例2におけるホログラフィック回折格子の別の構成を、Rad方向から見た概略平面図である。
【図21】実施例2における光検出器の別の受光面構成を示した図である。
【図22】実施例3における光ピックアップ装置を搭載した光学的情報再生装置または光学的情報記録再生装置の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を適用した光ピックアップ装置および光ディスク装置の実施形態の一例について、以下図面を用いて説明する。なお、各図において、同じ作用を示す構成要素には同じ符号を用いている。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る光ピックアップ装置の光学系を示している。
【0016】
レーザ光源10は、所定の波長の光束100を発散光で出射する。光束100は実線で記す。半導体レーザは直線偏光の光束を出射するのが一般的であり、レーザ光源10からも直線偏光の光束を出射することを想定する。
【0017】
レーザ光源10から出射された光束100は、ビームスプリッタミラー(以下、BSミラーと略す。)11を反射する。BSミラーとは、所定の方向の直線偏光を透過し、その方向と直交する方向の直線偏光を反射するように偏光を制御することが可能なミラーである。
【0018】
一部の光束はBSミラー11を反射し、残りの光束はBSミラー11を透過し、フロントモニタ12に入射する。一般的に光ディスクの記録再生動作の精度を良くするためには、光ディスクに照射される光束の光量を所望の値に制御することが必須となる。フロントモニタ12はレーザ光源10からの光量変化を制御回路にフィードバックすることにより、光束の光量を制御することを可能とする。なお、簡略化のために図1にはフロントモニタ12に入射する光束を図示していない。
【0019】
BSミラー11を反射した光束は、コリメートレンズ13に入射し光軸と略平行な光束となる。コリメートレンズ13を透過した光束は、1/4波長板14を透過、立ち上げミラー15を反射後、アクチュエータ(図示せず)に搭載された対物レンズ16を透過して、光ディスク17の情報層上に集光される。往路光路中に光を分割する素子はないため、情報層に入射する光束は1つ、すなわち1ビームである。
【0020】
光ディスクの情報層上より反射した光束は、対物レンズ16、立ち上げミラー15、1/4波長板14、コリメートレンズ13を透過し、BSミラー11に入射する。このとき、光束は1/4波長板14を2回通過したために、往路のときと直交する方向の直線偏光となっている。従って、光束の一部はBSミラー11を透過する。BSミラー11を透過した光束は、ホログラフィック回折格子18を通り、光検出器19上に集光する。
【0021】
ホログラフィック回折格子18は、光束を複数に分割する素子である。詳細は図2以降にて述べる。
【0022】
光検出器19は、光束を受光できるような受光面構成となっており、受光面に照射された光量に従ってフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号、RF信号などが生成される。詳細は図6以降にて述べる。
【0023】
図2は、本発明のホログラフィック回折格子18の斜視図を示したものである。光束100は、図中の矢印のようにホログラフィック回折格子18に入射する。ホログラフィック回折格子18の入射面20はホログラフィック面となっており、所定のパターンを持つ不等間隔曲線状の格子溝が形成されている。また、出射面21はシリンドリカル面となっており、光束の所定の方向のみ屈折力を与える。このように、ホログラフィック回折格子18は、ホログラフィック面20とシリンドリカル面21の2面を、それぞれ入射面、出射面に備えている。
【0024】
図3は、本発明のホログラフィック回折格子18を、光束入射方向から見た概略平面図を示したものである。実線の円は光束100の外形を示している。ホログラフィック面20は複数の領域には分割されておらず、入射した光束を少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分岐するとともに±1次回折光に共役なデフォーカス収差を与える。
【0025】
図4は、本発明のホログラフィック回折格子18を回折した光束が光検出器19に入射する様子について、光ディスクのトラック方向に相当する方向、つまり光ディスク接線方向(以下、Tan方向と略す。)から見た概略平面図を示したものである。本発明のホログラフィック面20によって、入射光束はそのまま透過する0次光100と、回折しながら0次光よりも奥に集光するようなデフォーカスを与えられた+1次回折光101と、回折しながら0次光よりも手前に集光するようなデフォーカスを与えられた−1次回折光102とに分割される。
【0026】
また、ホログラフィック回折格子18の回折効率は、レーザ光源10の所定の波長に対して、例えば0次光:+1次回折光:−1次回折光=7:1:1〜11:1:1となるような格子溝深さとなっている。
【0027】
また、光検出器19は、0次光100と+1次回折光101の光検出器19上でのスポット径が略同じとなるように、0次光100が集光した後の位置に配置される。これは、0次光100と+1次回折光101を用いて、フォーカス誤差信号の生成にスポットサイズディテクション方式(以下、SSD方式と略す。)を使用するためである。SSD方式とは、デフォーカスに対する受光面上のスポットの大きさを制御することで、フォーカス誤差信号を生成する方式である。SSD方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。本実施例では、このSSD方式を用いることで、光検出器19の受光面サイズを小さくし、光検出器コストを低減することを特徴としている。詳細については後述する。
【0028】
図5は、本発明のホログラフィック回折格子18について、光ディスクのトラック方向に略垂直な方向、つまり光ディスク半径方向(以下、Rad方向と略す。)から見た概略平面図を示したものである。図のようにシリンドリカル面21は、Tan方向に沿った方向の光束についてのみ、屈折力を与えて発散するような形状となっている。これは、BSミラー11を通ることによって発生した非点収差を、コストアップしないで効果的に除去するためである。光束を往路と復路で分割するビームスプリッタは、図1に示した平板のBSミラー11以外にも、例えば偏光ビームスプリッタプリズム(以下、PBSと略す。)といった四角形プリズムを使用することも可能である。しかし、PBSは非点収差などの波面収差を発生しないメリットがある一方で、BSミラーよりも部品コストが高いために、低コスト化のためにはプリズムではなく平板のBSミラーを用いることが必要となる。
【0029】
ところが、BSミラーを用いて、非点収差を除去する素子を別に設けると、部品点数が1つ増えるので、増えた部品のコストがかかる、部品搭載の時間がかかる、といった別の課題が発生する。
【0030】
本実施例は、復路に配置したホログラフィック回折格子18にシリンドリカル面21を設けることで、1つの部品で回折格子と非点収差除去の2つの機能を備えていることが特徴である。このため、部品コストが高くなることもなく、また部品搭載時間が増加することもなく、所望の光束を光検出器19に入射させることが可能である。
【0031】
図6は、図1における光検出器19の受光面構成の一例である。光検出器19は、ホログラフィック回折格子18によって回折した光束を受光する複数の受光面を形成している。受光面はD1、D2、D3、D4、D5、D6、D13、D14、D15、まで、計9面ある。図中の左右方向がRad方向、上下方向がTan方向である。
【0032】
図7は、光束が光検出器19に入射するときの受光位置を示す。光検出器19上に入射する0次光100、+1次回折光101、−1次回折光102については、それぞれ斜線でハッチングし実線で囲んだ領域で示す。
【0033】
0次光100は光検出器19の手前で集光し、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D1〜D6に入射する。
【0034】
+1次回折光101は光検出器19の奥で集光するため、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D13〜D15に入射する。
【0035】
−1次回折光102は光検出器19上で大きくデフォーカスして入射する。このため、受光する場合受光面のサイズが大きくなり信号ノイズが大きくなる問題が発生する。また、光検出器サイズの増加となって、部品コストの観点からも不利となる。よって、光束入射位置に受光面を配置せず、不要光として扱う。
【0036】
光検出器19の受光面D1、D2、D3、D4、D5、D6、D13、D14、D15でそれぞれ検出される信号を、順に、信号S1、S2、S3、S4、S5、S6、S13、S14、S15とする、これら各受光面に入射した信号光を用いて、サーボ信号や再生信号等を生成することができる。
【0037】
フォーカス誤差信号の検出には、前述したようにSSD方式を使用する。本実施例の場合、0次光100は光検出器19の手前に集光するように、そして+1次回折光101は光検出器19の奥で集光するように、デフォーカスおよび光検出器位置を調整する。そして、光検出器19上において、2つの光束は略同じスポットサイズとなるように調整する。これにより、ある方向にデフォーカスすると、0次光100はより小さなスポットに、+1次回折光101はより大きなスポットになり、反対方向にデフォーカスすると、0次光100はより大きなスポットに、+1次回折光101はより小さなスポットになる。これを利用して、信号S1からS6とS13からS15より数1に示す演算式でフォーカス誤差信号(FES)を生成する。
【0038】
(数1)
FES=(S1+S4+S3+S6+S14)−(S2+S5+S13+S15)
本実施例の光検出器19は、1つの入射光束をRad方向に略平行な分割線によって少なくとも3分割される。この構成により、安定なSSD方式によるFESを検出することが可能となっている。数1のFES演算より、FESの光量ずれはRad方向に略平行な分割線に依存する。そのため、光検出器19がRad方向に位置ずれした場合、FESのアンバランスは生じない。よって、光検出器19のRad方向ずれに強い構成である。また、光検出器19がRad方向に位置ずれした場合も、光量ずれがFESの差動をとる両方の信号で同じだけ生じるため、光検出器19のTan方向ずれにも強い構成である。また、波長変動した場合、+1次回折光は回折方向に光束は変位するという特性があるが、本実施例は、図4に示すように回折光の回折方向はRad方向である。そのため光束はRad方向に略平行に変位するので、分割線の影響を受けずFESも安定する。また、プッシュプル成分は図7の入射光束の左右方向に発生するため、FESへのプッシュプル成分の漏れ込みもキャンセルすることができる構成となっている。
【0039】
トラッキング誤差信号の検出には、例えば1ビームディファレンシャルプッシュプル方式(以下、DPP方式と略す。)を使用する。
【0040】
DPP方式とは、レンズシフトをしたときにオフセットが発生しないようにプッシュプル信号を生成する方法である。プッシュプル成分を含んだ信号のみでは、対物レンズがRad方向に対物レンズ変位、すなわちレンズシフトしたときに、光量アンバランスが生じて直流成分のオフセットが発生し、不安定なトラッキング誤差信号となってしまう。そこで、オフセット成分含んだ信号を用いて、オフセットをキャンセルする演算を行うことにより、安定なトラッキング誤差信号を得ることができる。DPP方式を1ビームで行うことを1ビームDPP方式と呼ぶ。なお、1ビームDPP方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0041】
本発明では、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光を用いて、1ビームDPP方式にてトラッキング誤差信号を検出する。+1次回折光を用いた場合、回折した光束のために波長変動やホログラフィック回折格子18の位置ずれによって受光面上のスポットが変位する。これにより、安定なトラッキング誤差信号を検出することができなくなる。一方、0次光はホログラフィック回折格子18を透過した光束なので、レーザ光源の熱による波長変動やホログラフィック回折格子18の位置ずれによる影響が小さい。従って、安定したトラッキング誤差信号を検出することができる。
【0042】
以上より、0次光から得た信号S1からS6より、数2に示す演算式でトラッキング誤差信号(TES)を生成する。なお、プッシュプル成分を含んだ信号をメインプッシュプル(以下、MPPと略す。)信号とし、MPP信号のオフセット成分をキャンセルする信号をオフセットキャンセル(以下、OCと略す。)信号とする。
【0043】
(数2)
MPP=(S1+S2+S3)−(S4+S5+S6)
OC=(S1+S3)−(S4+S6)
TES=MPP−k1・OC
数2のk1は、対物レンズがレンズシフトした際に、TESの式中第1項の信号に含まれるオフセット成分と、式中第2項の信号に含まれるオフセット成分とを補正するための係数である。このような演算を行うことによって、対物レンズがレンズシフトした際であってもオフセットのない安定したトラッキング誤差信号を生成することが可能である。
【0044】
また、別のトラッキング誤差信号検出方式として、ディファレンシャルフェイズディテクション方式(以下、DPD方式と略す。)を使用することも可能である。DPD方式とは、ピット通過時に生じる位相差を利用してトラッキング誤差信号を生成する方式である。光ディスクのピット列上で光束が、ピット列の中心より右側を通過するときと、ピット列の中心より左側を通過するときでは、反射光の対角成分の強度分布変化は時間的にずれが生じる。この変化を利用し、反射光の対角成分から得られる信号の位相を比較して、位相ずれを検出することでトラッキング誤差信号を検出する。DPD方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0045】
本実施例では、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光が入射した受光面から得た信号のうち、S1、S3、S4、S6を用いて数3に示す演算式でDPD方式によってトラッキング誤差信号(TES)を生成する。
【0046】
(数3)
TES=φ[S1、S4、S3、S6]
ここでφ[Sa、Sb、Sc、Sd]とは、例えば、SaとSbの位相差信号と、ScとSdの位相差信号との差動を求めて得た信号である。
【0047】
また、数4に示す演算式のように0次光で得られた信号でRF信号を生成する。
【0048】
(数4)
RF=S1+S2+S3+S4+S5+S6
このように、本実施例の光検出器19の受光面構成は、0次光と+1次回折光の合計2つの光束のみを用いて、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することができる。
【0049】
さて、本実施例の構成は、所定の波長の光束に対して、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光と、回折した+1次回折光の2つ光束を光検出器の受光面に受光して、0次光と+1次回折光を用いてSSD方式によってフォーカス誤差信号を生成し、0次光を用いてトラッキング誤差信号を生成することを特徴としている。
【0050】
従来のSSD方式は、ホログラフィック回折格子を用いる場合、例えば特許文献2のように、ホログラフィック回折格子を回折した+1次回折光と−1次回折光がデフォーカスした位置に受光面を配置し、+1次回折光と−1次回折光にてフォーカス誤差信号を生成する構成が一般的である。
【0051】
このとき、+1次回折光または−1次回折光でトラッキング誤差信号を生成する場合、SSDを生成する分割線とは略垂直方向の分割線が必要となるが、波長変動によって光束の位置ずれが生じてしまい、トラッキング誤差信号の性能が劣化する課題がある。0次光をデフォーカスした状態で受光面を配置して、0次光でトラッキング誤差信号を生成する場合も、0次光と+1次回折光と−1次回折光の3つの光束を受光する受光面が必要となり、光束のサイズが大きくなるほど、光検出器が大きくなってしまう。その結果、部品コストが高くなる課題がある。
【0052】
本構成は0次光と+1次回折光でSSD方式によってフォーカス誤差信号を生成しているので、従来と同様の性能のフォーカス誤差信号を得られるとともに、0次光を用いてトラッキング誤差信号を生成するので、波長変動による光束の位置ずれという課題も生じない。さらに、−1次回折光を必要としない構成であるため、光検出器の小型化に有利であり、部品コストも安くすることが可能である。
【0053】
また、例えば特許文献1に記載しているような非点収差方式を用いた3ビーム光学系では、0次光と±1次回折光の合計3つの光束を用いている。そのため、3つの光束を受光するような受光面構成が必要となる。一方、本実施例の光検出器19は2つの光束を受光するような受光面構成となっており、3つの場合と比べて光検出器サイズを小さくすることができる。従って、本実施例の光検出器19の受光面構成は光検出器19の小型化を実現できる構成ため、部品コストを低減することが可能である。
また、本実施例の光学系構成は、3ビーム光学系に対して部品点数を減らすことができ、かつ回折格子の調整精度を緩和することができるという特徴をもつ。3ビーム光学系は、光ディスクの情報層に集光する3つの光束の配置方向を光ディスクのトラック方向に対して非常に高い精度で取り付ける必要があるため、往路回折格子の回転調整を精密に行うことが求められる。また、往路回折格子が複数に分割している場合、分割線ずれに対して信号性能の劣化が見られるため、面内調整も精密に行うことが求められる。さらに、フォーカス誤差信号検出に非点収差方式を用いているため、復路に所望の方向の非点収差を与える、例えば検出レンズを配置する必要がある。
【0054】
一方、本光学系構成は、往路中に光束を分割する素子を持たないため、光ディスク上での精密調整は不要となる。また、復路のホログラフィック回折格子18が位置ずれした場合も、光検出器を調整することによって信号劣化を改善できる。つまり、ホログラフィック回折格子18の搭載精度は、往路回折格子と比較して緩和することが可能である。
【0055】
さらに、3ビーム光学系では往路回折格子と復路検出レンズの2つ以上の光学素子が必要であるが、本光学系は往路に回折格子がないため、復路にホログラフィック面20とシリンドリカル面21を設けたホログラフィック回折格子1つを配置することで性能を確保できるため、部品点数も1つに低減することが可能である。
【0056】
以上のように、図1のような光学系で、図2から図5のようなホログラフィック回折格子18を備え、図6から図7のような光検出器19を設けることで、光ピックアップ装置において、簡素な1ビーム光学系構成で部品コストを低減するとともに、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することができる。
【0057】
なお、ホログラフィック回折格子18を回折した光束と光検出器19の位置の関係は、図4に限定されないことは言うまでもない。例えば図8のように、+1次回折光101に0次光よりも手前に集光するようなデフォーカスを与えて、光検出器19は0次光100が集光する前の位置に配置してもよい。安定したSSD方式によるフォーカス誤差信号を生成できる構成であれば構わない。
【0058】
また、ホログラフィック回折格子18の回折効率は、例えば0次光:+1次回折光:−1次回折光=7:1:1〜11:1:1となると記載したが、これには限定されないことは言うまでもない。例えば、0次光:+1次回折光:−1次回折光=1:1:0のように格子溝を制御し、不要光として扱う−1次回折光の光量を小さくして、受光面で受光する0次光と+1次回折光の光量を大きくしても何ら構わない。
【0059】
また、ホログラフィック回折格子18のホログラフィック面20とシリンドリカル面21は、図5に限定されないことは言うまでもない。図9のように、入射面をシリンドリカル面21に、出射面をホログラフィック面20にしてもよい。非点収差の除去とデフォーカス収差を与えた回折を実現できれば何ら構わない。
【0060】
また、光検出器19の受光面構成は、図10のように0次光受光面を6分割ではなく8分割にしても構わない。このとき、DPD方式によるトラッキング誤差信号は、信号S1からS6および受光面D19、D20で検出される信号S19、S20を用いて、数5に示す演算式で生成する。
【0061】
(数5)
TES=φ[(S1+S2)、(S4+S5)、(S3+S19)、(S6+S21)]
数5のような演算式にすることで、入射全光束を4分割した信号でDPD信号を生成できるため、安定したDPD信号を実現することが可能である。
【実施例2】
【0062】
本実施例では、CDとDVDについて説明するが、実施例に記載の記録方式には限定されず、他の記録方式であっても何ら構わない。
【0063】
図11は、本発明の実施例1に係る光ピックアップ装置の光学系を示している。
【0064】
2波長マルチレーザ光源30は、例えば波長略660nmの光束を出射するDVD用半導体レーザ光源30aと、波長略785nmの光束を出射するCD用半導体レーザ光源30bを備える。
【0065】
DVDを記録再生する場合は、DVD用半導体レーザ光源30aからDVD光束300aを発散光で出射し、CDを記録再生する場合は、CD用半導体レーザ光源30bからCD光束300bを発散光で出射する。
なお、DVD光束300aを実線で、CD光束300bを点線で、それぞれ記す。
半導体レーザは直線偏光の光束を出射するのが一般的であり、2波長マルチレーザ光源30からも直線偏光の光束を出射することを想定する。
【0066】
また、DVD用半導体レーザ光源30aとCD用半導体レーザ光源30bは、図11に示すように発光点間隔がTaだけ離れた位置にそれぞれ配置されているとする。
【0067】
2波長マルチレーザ光源30から出射された光束300aもしくは300bは、ビームスプリッタミラー(以下、BSミラーと略す。)11を反射する。BSミラーとは、所定の方向の直線偏光を透過し、その方向と直交する方向の直線偏光を反射するように偏光を制御することが可能なミラーである。
【0068】
一部の光束はBSミラー11を反射し、残りの光束はBSミラー11を透過し、フロントモニタ12に入射する。一般的に光ディスクの記録再生動作の精度を良くするためには、光ディスクに照射される光束の光量を所望の値に制御することが必須となる。フロントモニタ12は2波長マルチレーザ光源30からの光量変化を制御回路にフィードバックすることにより、光束の光量を制御することを可能とする。なお、簡略化のために図11にはフロントモニタ12に入射する光束を図示していない。
【0069】
BSミラー11を反射した光束は、コリメートレンズ13に入射し光軸と略平行な光束となる。コリメートレンズ13を透過した光束は、1/4波長板14を透過、立ち上げミラー15を反射後、アクチュエータ(図示せず)に搭載された対物レンズ16を透過して、光ディスク17の情報層上に集光される。往路光路中に光を分割する素子はないため、情報層に入射する光束は1つ、すなわち1ビームである。
【0070】
光ディスクの情報層上より反射した光束は、対物レンズ16、立ち上げミラー15、1/4波長板14、コリメートレンズ13を透過し、BSミラー11に入射する。このとき、光束は1/4波長板14を2回通過したために、往路のときと直交する方向の直線偏光となっている。従って、光束の一部はBSミラー11を透過する。BSミラー11を透過した光束は、ホログラフィック回折格子18を通り、光検出器19上に集光する。
【0071】
ホログラフィック回折格子18は、光束を複数に分割する素子である。詳細は図12以降にて述べる。
【0072】
光検出器19は、光束を受光できるような受光面構成となっており、受光面に照射された光量に従ってフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号、RF信号などが生成される。詳細は図16以降にて述べる。
【0073】
なお、DVD用半導体レーザ光源30aからのDVD光束300aの光束中心が光学部品の中心を通るように描かれているが、これに限定されるものではない。CD光束300bの光束中心が光学部品の中心を通ってもよく、またDVD光束300aの光束中心とCD光束300bの光束中心の間に光学部品の中心があっても何ら構わない。
【0074】
図12は、本発明のホログラフィック回折格子18の斜視図を示したものである。DVD光束300aまたはCD光束300bは、図中の矢印のようにホログラフィック回折格子18に入射する。ホログラフィック回折格子18の入射面20はホログラフィック面となっており、所定のパターンを持つ不等間隔曲線状の格子溝が形成されている。また、出射面21はシリンドリカル面となっており、光束の所定の方向のみ屈折力を与える。このように、ホログラフィック回折格子18は、ホログラフィック面20とシリンドリカル面21の2面を、それぞれ入射面、出射面に備えている。
【0075】
図13は、本発明のホログラフィック回折格子18を、光束入射方向から見た概略平面図を示したものである。実線の円はDVD光束300aの外形を示しており、点線の円はCD光束300bの外形を示している。ホログラフィック面20は複数の領域には分割されておらず、入射した光束を少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分岐するとともに±1次回折光に共役なデフォーカス収差を与える。本実施例において、DVD用半導体レーザ光源30aとCD用半導体レーザ光源30bは、光ディスクのトラック方向に略垂直な方向、つまり光ディスク半径方向(以下、Rad方向と略す。)にTaだけ離れているため、ホログラフィック回折格子18上でも、DVD光束300aの光束中心とCD光束300bの光束中心は、Rad方向に沿った方向に所定の距離乖離している。光ディスクのトラック方向に相当する方向、つまり光ディスク接線方向(以下、Tan方向と略す。)の乖離はない。
【0076】
図14は、本発明のホログラフィック回折格子18を回折した光束が光検出器19に入射する様子について、Tan方向から見た概略平面図を示したものである。ここでは、DVD光束300aが入射したときの様子を説明する。本発明のホログラフィック面20によって、入射光束はそのまま透過する0次光300aと、回折しながら0次光よりも奥に集光するようなデフォーカスを与えられた+1次回折光301aと、回折しながら0次光よりも手前に集光するようなデフォーカスを与えられた−1次回折光302aとに分割される。
【0077】
また、ホログラフィック回折格子18の回折効率は、例えば660nmのDVD波長に対して、0次光:+1次回折光:−1次回折光=7:1:1〜11:1:1となるような格子溝深さとなっている。
【0078】
また、光検出器19は、0次光300aと+1次回折光301aの光検出器19上でのスポット径が略同じとなるように、0次光300aが集光した後の位置に配置される。これは、0次光300aと+1次回折光301aを用いて、フォーカス誤差信号の生成にスポットサイズディテクション方式(以下、SSD方式と略す。)を使用するためである。SSD方式とは、デフォーカスに対する受光面上のスポットの大きさを制御することで、フォーカス誤差信号を生成する方式である。SSD方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。本実施例では、このSSD方式を用いることで、光検出器19の受光面サイズを小さくし、光検出器コストを低減することを特徴としている。詳細については後述する。
【0079】
なお、CD光束300bが入射したときもDVD光束300aが入射したときと同様の現象となることは言うまでもない。
【0080】
図15は、本発明のホログラフィック回折格子18について、Rad方向から見た概略平面図を示したものである。図のようにシリンドリカル面21は、Tan方向に沿った方向の光束についてのみ、屈折力を与えて発散するような形状となっている。これは、BSミラー11を通ることによって発生した非点収差を、コストアップしないで効果的に除去するためである。光束を往路と復路で分割するビームスプリッタは、図11に示した平板のBSミラー11以外にも、例えば偏光ビームスプリッタプリズム(以下、PBSと略す。)といった四角形プリズムを使用することも可能である。しかし、PBSは非点収差などの波面収差を発生しないメリットがある一方で、BSミラーよりも部品コストが高いために、低コスト化のためにはプリズムではなく平板のBSミラーを用いることが必要となる。
【0081】
ところが、BSミラーを用いて、非点収差を除去する素子を別に設けると、部品点数が1つ増えるので、増えた部品のコストがかかる、部品搭載の時間がかかる、といった別の課題が発生する。
【0082】
本実施例は、復路に配置したホログラフィック回折格子18にシリンドリカル面21を設けることで、1つの部品で回折格子と非点収差除去の2つの機能を備えていることが特徴である。このため、部品コストが高くなることもなく、また部品搭載時間が増加することもなく、所望の光束を光検出器19に入射させることが可能である。
【0083】
図16は、図11における光検出器19の受光面構成の一例である。光検出器19は、ホログラフィック回折格子18によって回折した光束を受光する複数の受光面を形成している。受光面はD1からD18まで、計18面ある。図中の左右方向がRad方向、上下方向がTan方向である。
【0084】
図17は、DVD光束が光検出器19に入射するときの受光位置を示す。光検出器19上に入射する0次光300a、+1次回折光301a、−1次回折光302aについては、それぞれ斜線でハッチングし実線で囲んだ領域で示す。
【0085】
0次光300aは光検出器19の手前で集光し、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D1〜D6に入射する。
【0086】
+1次回折光301aは光検出器19の奥で集光するため、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D13〜D15に入射する。
【0087】
−1次回折光302aは光検出器19上で大きくデフォーカスして入射する。このため、受光する場合受光面のサイズが大きくなり信号ノイズが大きくなる問題が発生する。また、光検出器サイズの増加となって、部品コストの観点からも不利となる。よって、光束入射位置に受光面を配置せず、不要光として扱う。
【0088】
図18は、CD光束が光検出器19に入射するときの受光位置を示す。光検出器19上に入射するCD0次光300b、CD+1次回折光301b、−1次回折光302bについては、それぞれ斜線でハッチングし点線で囲んだ領域で示す。
【0089】
0次光300bは光検出器19の手前で集光し、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D7〜D12に入射する。
【0090】
+1次回折光301bは光検出器19の奥で集光するため、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D16〜D18に入射する。
【0091】
−1次回折光302bは光検出器19上で大きくデフォーカスして入射する。このため、受光する場合受光面のサイズが大きくなり信号ノイズが大きくなる問題が発生する。また、光検出器サイズの増加となって、部品コストの観点からも不利となる。よって、光束入射位置に受光面を配置せず、不要光として扱う。
【0092】
光検出器19の受光面D1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、D9、D10、D11、D12、D13、D14、D15、D16、D17、D18でそれぞれ検出される信号を、順に、信号S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、S16、S17、S18とする、これら各受光面に入射した信号光を用いて、サーボ信号や再生信号等を生成することができる。
【0093】
フォーカス誤差信号の検出には、前述したようにSSD方式を使用する。本実施例の場合、0次光300aは光検出器19の手前に集光するように、そして+1次回折光301aは光検出器19の奥で集光するように、デフォーカスおよび光検出器位置を調整する。そして、光検出器19上において、2つの光束は略同じスポットサイズとなるように調整する。これにより、ある方向にデフォーカスすると、0次光300aはより小さなスポットに、+1次回折光301aはより大きなスポットになり、反対方向にデフォーカスすると、0次光300aはより大きなスポットに、+1次回折光301aはより小さなスポットになる。これを利用して、信号S1からS18より数6に示す演算式でフォーカス誤差信号(FES)を生成する。
【0094】
(数6)
DVD_FES=(S1+S4+S3+S6+S14)−(S2+S5+S13+S15)
CD_FES=(S7+S10+S9+S12+S17)−(S8+S11+S16+S18)
本実施例の光検出器19は、1つの入射光束をRad方向に略平行な分割線によって少なくとも3分割される。この構成により、安定なSSD方式によるFESを検出することが可能となっている。数6のFES演算より、FESの光量ずれはRad方向に略平行な分割線に依存する。そのため、光検出器19がRad方向に位置ずれした場合、FESのアンバランスは生じない。よって、光検出器19のRad方向ずれに強い構成である。また、光検出器19がRad方向に位置ずれした場合も、光量ずれがFESの差動をとる両方の信号で同じだけ生じるため、光検出器19のTan方向ずれにも強い構成である。また、波長変動した場合、+1次回折光は回折方向に光束は変位するという特性があるが、本実施例は、図14に示すように回折光の回折方向はRad方向である。そのため光束はRad方向に略平行に変位するので、分割線の影響を受けずFESも安定する。また、プッシュプル成分は図17および図18中の入射光束の左右方向に発生するため、FESへのプッシュプル成分の漏れ込みもキャンセルすることができる構成となっている。
【0095】
トラッキング誤差信号の検出には、例えば1ビームディファレンシャルプッシュプル方式(以下、DPP方式と略す。)を使用する。
【0096】
DPP方式とは、レンズシフトをしたときにオフセットが発生しないようにプッシュプル信号を生成する方法である。プッシュプル成分を含んだ信号のみでは、対物レンズがRad方向に対物レンズ変位、すなわちレンズシフトしたときに、光量アンバランスが生じて直流成分のオフセットが発生し、不安定なトラッキング誤差信号となってしまう。そこで、オフセット成分含んだ信号を用いて、オフセットをキャンセルする演算を行うことにより、安定なトラッキング誤差信号を得ることができる。DPP方式を1ビームで行うことを1ビームDPP方式と呼ぶ。なお、1ビームDPP方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0097】
本発明では、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光を用いて、1ビームDPP方式にてトラッキング誤差信号を検出する。+1次回折光を用いた場合、回折した光束のために波長変動やホログラフィック回折格子18の位置ずれによって受光面上のスポットが変位する。これにより、安定なトラッキング誤差信号を検出することができなくなる。一方、0次光はホログラフィック回折格子18を透過した光束なので、レーザ光源の熱による波長変動やホログラフィック回折格子18の位置ずれによる影響が小さい。従って、安定したトラッキング誤差信号を検出することができる。
【0098】
以上より、0次光から得た信号S1からS12より、数7に示す演算式でDVDとCDのトラッキング誤差信号(TES)を生成する。なお、プッシュプル成分を含んだ信号をメインプッシュプル(以下、MPPと略す。)信号とし、MPP信号のオフセット成分をキャンセルする信号をオフセットキャンセル(以下、OCと略す。)信号とする。
【0099】
(数7)
DVD_MPP=(S1+S2+S3)−(S4+S5+S6)
CD_MPP=(S7+S8+S9)−(S10+S11+S12)
DVD_OC=(S1+S3)−(S4+S6)
CD_OC=(S7+S9)−(S10+S12)
DVD_TES=DVD_MPP−k1・DVD_OC
CD_TES=CD_MPP−k2・CD_OC
数7のk1およびk2は、対物レンズがレンズシフトした際に、TESの式中第1項の信号に含まれるオフセット成分と、式中第2項の信号に含まれるオフセット成分とを補正するための係数である。このような演算を行うことによって、対物レンズがレンズシフトした際であってもオフセットのない安定したトラッキング誤差信号を生成することが可能である。
【0100】
また、別のトラッキング誤差信号検出方式として、ディファレンシャルフェイズディテクション方式(以下、DPD方式と略す。)を使用することも可能である。DPD方式とは、ピット通過時に生じる位相差を利用してトラッキング誤差信号を生成する方式である。光ディスクのピット列上で光束が、ピット列の中心より右側を通過するときと、ピット列の中心より左側を通過するときでは、反射光の対角成分の強度分布変化は時間的にずれが生じる。この変化を利用し、反射光の対角成分から得られる信号の位相を比較して、位相ずれを検出することでトラッキング誤差信号を検出する。DPD方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0101】
本実施例では、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光が入射した受光面から得た信号のうち、DVDのときはS1、S3、S4、S6を用いて、CDのときはS7、S9、S10、S12を用いて、それぞれ数8に示す演算式でDPD方式によってDVDとCDのトラッキング誤差信号(TES)を生成する。
【0102】
(数8)
DVD_TES=φ[S1、S4、S3、S6]
CD_TES=φ[S7、S10、S9、S12]
ここでφ[Sa、Sb、Sc、Sd]とは、例えば、SaとSbの位相差信号と、ScとSdの位相差信号との差動を求めて得た信号である。
【0103】
また、数9に示す演算式のように0次光で得られた信号でRF信号を生成する。
【0104】
(数9)
DVD_RF=S1+S2+S3+S4+S5+S6
CD_RF=S7+S8+S9+S10+S11+S12
このように、本実施例の光検出器19の受光面構成は、DVDとCDでそれぞれ0次光と+1次回折光の合計4つの光束を用いて、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することができる。
【0105】
さて、本実施例の構成は、所定の波長の光束に対して、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光と、回折した+1次回折光の2つ光束を光検出器の受光面に受光して、0次光と+1次回折光を用いてSSD方式によってフォーカス誤差信号を生成し、0次光を用いてトラッキング誤差信号を生成することを特徴としている。
【0106】
従来のSSD方式は、ホログラフィック回折格子を用いる場合、例えば特許文献2のように、ホログラフィック回折格子を回折した+1次回折光と−1次回折光がデフォーカスした位置に受光面を配置し、+1次回折光と−1次回折光にてフォーカス誤差信号を生成する構成が一般的である。
【0107】
このとき、+1次回折光または−1次回折光でトラッキング誤差信号を生成する場合、SSDを生成する分割線とは略垂直方向の分割線が必要となるが、波長変動によって光束の位置ずれが生じてしまい、トラッキング誤差信号の性能が劣化する課題がある。0次光をデフォーカスした状態で受光面を配置して、0次光でトラッキング誤差信号を生成する場合も、0次光と+1次回折光と−1次回折光の3つの光束を受光する受光面が必要となり、光束のサイズが大きくなるほど、光検出器が大きくなってしまう。その結果、部品コストが高くなる課題がある。
【0108】
本構成は0次光と+1次回折光でSSD方式によってフォーカス誤差信号を生成しているので、従来と同様の性能のフォーカス誤差信号を得られるとともに、0次光を用いてトラッキング誤差信号を生成するので、波長変動による光束の位置ずれという課題も生じない。さらに、−1次回折光を必要としない構成であるため、光検出器の小型化に有利であり、部品コストも安くすることが可能である。
【0109】
また、例えば特許文献1に記載しているような非点収差方式を用いた3ビーム光学系では、DVDとCDでそれぞれ0次光と±1次回折光の合計6つの光束を用いている。そのため、6つの光束を受光するような受光面構成が必要となる。一方、本実施例の光検出器19は4つの光束を受光するような受光面構成となっており、6つの場合と比べて光検出器サイズを小さくすることができる。従って、本実施例の光検出器19の受光面構成は光検出器19の小型化を実現できる構成ため、部品コストを低減することが可能である。
【0110】
また、本実施例の光学系構成は、3ビーム光学系に対して部品点数を減らすことができ、かつ回折格子の調整精度を緩和することができるという特徴をもつ。3ビーム光学系は、光ディスクの情報層に集光する3つの光束の配置方向を光ディスクのトラック方向に対して非常に高い精度で取り付ける必要があるため、往路回折格子の回転調整を精密に行うことが求められる。また、往路回折格子が複数に分割している場合、分割線ずれに対して信号性能の劣化が見られるため、面内調整も精密に行うことが求められる。さらに、フォーカス誤差信号検出に非点収差方式を用いているため、復路に所望の方向の非点収差を与える、例えば検出レンズを配置する必要がある。
【0111】
一方、本光学系構成は、往路中に光束を分割する素子を持たないため、光ディスク上での精密調整は不要となる。また、復路のホログラフィック回折格子18が位置ずれした場合も、光検出器を調整することによって信号劣化を改善できる。つまり、ホログラフィック回折格子18の搭載精度は、往路回折格子と比較して緩和することが可能である。
【0112】
さらに、3ビーム光学系では往路回折格子と復路検出レンズの2つ以上の光学素子が必要であるが、本光学系は往路に回折格子がないため、復路にホログラフィック面20とシリンドリカル面21を設けたホログラフィック回折格子1つを配置することで性能を確保できるため、部品点数も1つに低減することが可能である。
【0113】
以上のように、図11のような光学系で、図12から図15のようなホログラフィック回折格子18を備え、図16から図18のような光検出器19を設けることで、2波長マルチレーザ光源を用いたDVD/CD互換光ピックアップ装置において、簡素な1ビーム光学系構成で部品コストを低減するとともに、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することができる。
【0114】
なお、ホログラフィック回折格子18を回折した光束と光検出器19の位置の関係は、図14に限定されないことは言うまでもない。例えば図19のように、+1次回折光301aに0次光よりも手前に集光するようなデフォーカスを与えて、光検出器19は0次光300aが集光する前の位置に配置してもよい。安定したSSD方式によるフォーカス誤差信号を生成できる構成であれば構わない。
【0115】
また、ホログラフィック回折格子18の回折効率は、例えば、0次光:+1次回折光:−1次回折光=7:1:1〜11:1:1となると記載したが、これには限定されないことは言うまでもない。例えば、0次光:+1次回折光:−1次回折光=1:1:0のように格子溝を制御し、不要光として扱う−1次回折光の光量を小さくして、受光面で受光する0次光と+1次回折光の光量を大きくしても何ら構わない。
【0116】
また、ホログラフィック回折格子18のホログラフィック面20とシリンドリカル面21は、図15に限定されないことは言うまでもない。図20のように、入射面をシリンドリカル面21に、出射面をホログラフィック面20にしてもよい。非点収差の除去とデフォーカス収差を与えた回折を実現できれば何ら構わない。
【0117】
また、光検出器19の受光面構成は、図21のように0次光受光面を6分割ではなく8分割にしても構わない。このとき、DPD方式によるトラッキング誤差信号は、信号S1からS12および受光面D19からD22で検出される信号S19からS22を用いて、数10に示す演算式で生成する。
【0118】
(数10)
DVD_TES=φ[(S1+S2)、(S4+S5)、(S3+S19)、(S6+S21)]
CD_TES=φ[(S7+S8)、(S10+S11)、(S9+S21、(S12+S22)]
数10のような演算式にすることで、入射全光束を4分割した信号でDPD信号を生成できるため、安定したDPD信号を実現することが可能である。
【実施例3】
【0119】
実施例3では、実施例1または実施例2で説明した光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置(光学的情報再生装置または光学的情報記録再生装置)について、図22を用いて説明する。
【0120】
図22は、光ディスク17に記録および再生を行う光ディスク装置の概略ブロック図を示している。光ディスク装置は、光ピックアップ装置200、サーボ信号生成回路201、情報信号再生回路202、アクチュエータ駆動回路203、コントロール回路204、レーザ点灯回路205、スピンドルモータ駆動回路206、アクセス制御回路207、スピンドルモータ208、情報信号記録回路209を備えて構成される。
【0121】
光ディスク再生動作について説明する。光ピックアップ装置200内の光検出器から検出された信号は、サーボ信号生成回路201および情報信号再生回路202に送られる。
【0122】
サーボ信号生成回路201では、光ピックアップ装置200より検出された信号に基づいて光ディスク17に適したフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号が生成され、これらの信号を基にアクチュエータ駆動回路203を経て光ピックアップ装置200内の対物レンズアクチュエータを駆動して、対物レンズ16の位置制御が行われる。
【0123】
情報信号再生回路202では、光ピックアップ装置200より検出された信号から光ディスク17に記録された情報信号が再生される。
【0124】
また、サーボ信号生成回路201および情報信号再生回路202にて得られた信号の一部は、コントロール回路204に送られる。コントロール回路204からはレーザ駆動用信号が送られ、レーザ点灯回路205を駆動して光ピックアップ装置200内の半導体レーザに適切なレーザ駆動電流を供給する。なお、レーザ点灯回路205は光ピックアップ装置200内に組み込むことも可能である。
【0125】
コントロール回路204には、サーボ信号生成回路201、レーザ点灯回路205の他にスピンドルモータ駆動回路206、アクセス制御回路207が接続されており、それぞれ光ディスク17を回転させるスピンドルモータ208の回転制御、光ピックアップ装置200のアクセス方向位置制御が行われる。
【0126】
光ディスク記録時は、コントロール回路204とレーザ点灯回路205の間に設けられている情報信号記録回路209からの記録制御信号に基づいて、レーザ点灯回路205を駆動させて光ディスク17に情報を記録する。
【0127】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0128】
10…レーザ光源、11…BSミラー、12…フロントモニタ、13…コリメートレンズ、14…1/4波長板、15…立ち上げミラー、16…対物レンズ、17…光ディスク、18…ホログラフィック回折格子、19…光検出器、30…2波長マルチレーザ光源、200…光ピックアップ装置、201…サーボ信号生成回路、202…情報信号再生回路、203…アクチュエータ駆動回路、204…コントロール回路、205…レーザ点灯回路、206…スピンドルモータ駆動回路、207…アクセス制御回路、208…スピンドルモータ、209…情報信号記録回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置およびそれを搭載した光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術に関する背景技術として、例えば特開2003−272218号公報(特許文献1)、または特開2003−187469号公報(特許文献2)がある。
【0003】
特許文献1には、「保護層の厚さおよび情報の記録密度が異なり且つ記録再生に用いるレーザ光の波長が異なる2種類の光記録媒体(例えばCDとDVD)に記録された信号を、2つのレーザ光発光部を1つのパッケージに組み込んだ2波長光源および対物レンズを含めて各波長で共通の光学系を用いて、安定かつ良好に再生できるようにする。」とあり、解決手段として「2波長レーザ光源11から放射されたレーザ光を光記録媒体1a,1bの情報記録面に集光して読み取りスポットを形成する対物レンズ16は、正のパワーを有するレンズと同心円輪帯状のホログラムとを有しており、各光記録媒体1a,1bの保護層の厚みで生ずる球面収差を補正する。センサレンズ17によって光検出器18の各受光部18a,18bに各ディスク1a,1bからの読み出し光の合焦するように共役調整をするとともに、読み出し光に非点収差を付与する。焦点誤差検出には非点収差法を用いる。」と記載されている。
また、特許文献2には、「SSD方式でフォーカスエラー信号を得る光ピックアップ装置において、対称性の良いS字信号を検出できるようにし、動作の安定化を図る。」とあり、解決手段として「光記録媒体にレーザ光を照射すると共に、少なくとも光記録媒体からの反射光を回折素子を介して受光素子部に導き、上記回折素子によって発生した回折光を用いたスポットサイズディテクション法によってフォーカスエラー信号検出を行う光ピックアップ装置において、上記受光素子部の位置が、上記回折素子を透過した0次光の焦点位置から、上記回折素子側へオフセットさせた位置に設定されているようにする。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−272218号公報
【特許文献2】特開2003−187469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、例えばCDとDVDのような互いに波長の異なる規格の光学的情報記録媒体(以下、光ディスクと記す。)を記録再生するとき、光ディスク装置に搭載された光ピックアップ装置は、CD用半導体レーザとDVD用半導体レーザを共通の筐体に格納した2波長マルチレーザ光源をレーザ光源に用いている。2波長マルチレーザ光源を用いると、レーザ光源の配置スペースを半分にできる、2波長合成用のプリズムを削除できる、レンズや光検出器などの光学部品を共用化できるなど、小型化や低コスト化の面で有利となる。
【0006】
従来、2波長マルチレーザ光源を用いたDVD/CD互換光ピックアップ装置は、例えば特許文献1のように3ビーム光学系を用いるのが一般的である。3ビーム光学系では、レーザ光源を出射した光束を往路回折格子で3つの光束に分離して光ディスクの情報層上に集光し、情報層を反射した3つの光束を非点収差方式で検出することにより、サーボ信号であるフォーカス誤差信号(FES:Focusing Error Signal)やトラッキング誤差信号(TES:Tracking Error Signal)、または再生信号であるRF信号(RF:Radio Frequency)を生成する。
【0007】
しかしながら、3ビーム光学系は光ディスクの情報層に集光する3つの光束の配置方向を光ディスクのトラック方向に対して非常に高い精度で取り付ける必要がある。2波長マルチレーザ光源を使用する場合、2つレーザが単一の筐体に格納されているために各光束で調整を行うことは困難である。また、非点収差方式は光ディスクの情報層に集光した光束に対してトラックピッチの大きい光ディスクに対して、位置ずれなどの外乱が生じたときにフォーカス誤差信号にプッシュプルが漏れ込み、制御が不安定になるという課題がある。
【0008】
この問題を解決する方法として、光ディスクの情報層上に1つの光束を集光し、その反射光束を用いてサーボ信号やRF信号を生成する、いわゆる1ビーム光学系がある。1ビーム光学系であれば、光ディスクの情報層に集光する光束は1つであるため、光ディスクのトラック方向に対する取り付け精度は不要となり、調整が容易である。また、1ビーム光学系でフォーカス誤差信号を検出する方式として、例えば特許文献2のようにスポットサイズディテクション方式(以下、SSD方式と略す。)がある。SSD方式であれば、位置ずれなどの外乱に対しても、フォーカス誤差信号へのプッシュプルの漏れ込みをキャンセルすることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2のようなSSD方式の場合、復路の回折素子で回折した3つの光束を受光面で受光する必要がある。光検出器上の光束サイズが異なり、かつサイズの大きい光束を受光するため、光検出器が大きくなることが懸念される。DVD/CD互換光ピックアップ装置をさらに低コスト化するためには、現行よりも部品点数を低減することだけでなく、光学部品サイズを小型化すること必要であるが、非点収差方式よりも部品コストが高くなってしまうことが課題となる。
【0010】
このような状況に鑑み、本発明は2波長マルチレーザ光源を用いたDVD/CD互換光ピックアップ装置を含む光ピックアップ装置において、簡素な1ビーム光学系構成で部品コストを低減するとともに、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することが可能な光ピックアップ装置およびそれを搭載した光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、その一例として特許請求の範囲に記載する構成により達成できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2波長マルチレーザ光源を用いたDVD/CD互換光ピックアップ装置を含む光ピックアップ装置において、簡素な1ビーム光学系構成で部品コストを低減するとともに、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することが可能な光ピックアップ装置およびそれを搭載した光ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における光ピックアップ装置の光学系を示した図である。
【図2】実施例1におけるホログラフィック回折格子の光束の斜視図である。
【図3】実施例1におけるホログラフィック回折格子を、光束入射方向から見た概略平面図である。
【図4】実施例1におけるホログラフィック回折格子を回折した光束が光検出器に入射する様子を、Tan方向から見た概略平面図である。
【図5】実施例1におけるホログラフィック回折格子を、Rad方向から見た概略平面図である。
【図6】実施例1における光検出器の受光面構成を示した図である。
【図7】実施例1における光検出器の受光面に入射する光束を示した図である。
【図8】実施例1におけるホログラフィック回折格子を回折した光束が光検出器に入射する別の構成を、Tan方向から見た概略平面図である。
【図9】実施例1におけるホログラフィック回折格子の別の構成を、Rad方向から見た概略平面図である。
【図10】実施例1における光検出器の別の受光面構成を示した図である。
【図11】実施例2における光ピックアップ装置の光学系を示した図である。
【図12】実施例2におけるホログラフィック回折格子の光束の斜視図である。
【図13】実施例2におけるホログラフィック回折格子を、光束入射方向から見た概略平面図である。
【図14】実施例2における光ホログラフィック回折格子を回折した光束が光検出器に入射する様子を、Tan方向から見た概略平面図である。
【図15】実施例2におけるホログラフィック回折格子を、Rad方向から見た概略平面図である。
【図16】実施例2における光検出器の受光面構成を示した図である。
【図17】実施例2における光検出器の受光面に入射するDVD光束を示した図である。
【図18】実施例2における光検出器の受光面に入射するCD光束を示した図である。
【図19】実施例2における光ホログラフィック回折格子を回折した光束が光検出器に入射する別の構成を、Tan方向から見た概略平面図である。
【図20】実施例2におけるホログラフィック回折格子の別の構成を、Rad方向から見た概略平面図である。
【図21】実施例2における光検出器の別の受光面構成を示した図である。
【図22】実施例3における光ピックアップ装置を搭載した光学的情報再生装置または光学的情報記録再生装置の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を適用した光ピックアップ装置および光ディスク装置の実施形態の一例について、以下図面を用いて説明する。なお、各図において、同じ作用を示す構成要素には同じ符号を用いている。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る光ピックアップ装置の光学系を示している。
【0016】
レーザ光源10は、所定の波長の光束100を発散光で出射する。光束100は実線で記す。半導体レーザは直線偏光の光束を出射するのが一般的であり、レーザ光源10からも直線偏光の光束を出射することを想定する。
【0017】
レーザ光源10から出射された光束100は、ビームスプリッタミラー(以下、BSミラーと略す。)11を反射する。BSミラーとは、所定の方向の直線偏光を透過し、その方向と直交する方向の直線偏光を反射するように偏光を制御することが可能なミラーである。
【0018】
一部の光束はBSミラー11を反射し、残りの光束はBSミラー11を透過し、フロントモニタ12に入射する。一般的に光ディスクの記録再生動作の精度を良くするためには、光ディスクに照射される光束の光量を所望の値に制御することが必須となる。フロントモニタ12はレーザ光源10からの光量変化を制御回路にフィードバックすることにより、光束の光量を制御することを可能とする。なお、簡略化のために図1にはフロントモニタ12に入射する光束を図示していない。
【0019】
BSミラー11を反射した光束は、コリメートレンズ13に入射し光軸と略平行な光束となる。コリメートレンズ13を透過した光束は、1/4波長板14を透過、立ち上げミラー15を反射後、アクチュエータ(図示せず)に搭載された対物レンズ16を透過して、光ディスク17の情報層上に集光される。往路光路中に光を分割する素子はないため、情報層に入射する光束は1つ、すなわち1ビームである。
【0020】
光ディスクの情報層上より反射した光束は、対物レンズ16、立ち上げミラー15、1/4波長板14、コリメートレンズ13を透過し、BSミラー11に入射する。このとき、光束は1/4波長板14を2回通過したために、往路のときと直交する方向の直線偏光となっている。従って、光束の一部はBSミラー11を透過する。BSミラー11を透過した光束は、ホログラフィック回折格子18を通り、光検出器19上に集光する。
【0021】
ホログラフィック回折格子18は、光束を複数に分割する素子である。詳細は図2以降にて述べる。
【0022】
光検出器19は、光束を受光できるような受光面構成となっており、受光面に照射された光量に従ってフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号、RF信号などが生成される。詳細は図6以降にて述べる。
【0023】
図2は、本発明のホログラフィック回折格子18の斜視図を示したものである。光束100は、図中の矢印のようにホログラフィック回折格子18に入射する。ホログラフィック回折格子18の入射面20はホログラフィック面となっており、所定のパターンを持つ不等間隔曲線状の格子溝が形成されている。また、出射面21はシリンドリカル面となっており、光束の所定の方向のみ屈折力を与える。このように、ホログラフィック回折格子18は、ホログラフィック面20とシリンドリカル面21の2面を、それぞれ入射面、出射面に備えている。
【0024】
図3は、本発明のホログラフィック回折格子18を、光束入射方向から見た概略平面図を示したものである。実線の円は光束100の外形を示している。ホログラフィック面20は複数の領域には分割されておらず、入射した光束を少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分岐するとともに±1次回折光に共役なデフォーカス収差を与える。
【0025】
図4は、本発明のホログラフィック回折格子18を回折した光束が光検出器19に入射する様子について、光ディスクのトラック方向に相当する方向、つまり光ディスク接線方向(以下、Tan方向と略す。)から見た概略平面図を示したものである。本発明のホログラフィック面20によって、入射光束はそのまま透過する0次光100と、回折しながら0次光よりも奥に集光するようなデフォーカスを与えられた+1次回折光101と、回折しながら0次光よりも手前に集光するようなデフォーカスを与えられた−1次回折光102とに分割される。
【0026】
また、ホログラフィック回折格子18の回折効率は、レーザ光源10の所定の波長に対して、例えば0次光:+1次回折光:−1次回折光=7:1:1〜11:1:1となるような格子溝深さとなっている。
【0027】
また、光検出器19は、0次光100と+1次回折光101の光検出器19上でのスポット径が略同じとなるように、0次光100が集光した後の位置に配置される。これは、0次光100と+1次回折光101を用いて、フォーカス誤差信号の生成にスポットサイズディテクション方式(以下、SSD方式と略す。)を使用するためである。SSD方式とは、デフォーカスに対する受光面上のスポットの大きさを制御することで、フォーカス誤差信号を生成する方式である。SSD方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。本実施例では、このSSD方式を用いることで、光検出器19の受光面サイズを小さくし、光検出器コストを低減することを特徴としている。詳細については後述する。
【0028】
図5は、本発明のホログラフィック回折格子18について、光ディスクのトラック方向に略垂直な方向、つまり光ディスク半径方向(以下、Rad方向と略す。)から見た概略平面図を示したものである。図のようにシリンドリカル面21は、Tan方向に沿った方向の光束についてのみ、屈折力を与えて発散するような形状となっている。これは、BSミラー11を通ることによって発生した非点収差を、コストアップしないで効果的に除去するためである。光束を往路と復路で分割するビームスプリッタは、図1に示した平板のBSミラー11以外にも、例えば偏光ビームスプリッタプリズム(以下、PBSと略す。)といった四角形プリズムを使用することも可能である。しかし、PBSは非点収差などの波面収差を発生しないメリットがある一方で、BSミラーよりも部品コストが高いために、低コスト化のためにはプリズムではなく平板のBSミラーを用いることが必要となる。
【0029】
ところが、BSミラーを用いて、非点収差を除去する素子を別に設けると、部品点数が1つ増えるので、増えた部品のコストがかかる、部品搭載の時間がかかる、といった別の課題が発生する。
【0030】
本実施例は、復路に配置したホログラフィック回折格子18にシリンドリカル面21を設けることで、1つの部品で回折格子と非点収差除去の2つの機能を備えていることが特徴である。このため、部品コストが高くなることもなく、また部品搭載時間が増加することもなく、所望の光束を光検出器19に入射させることが可能である。
【0031】
図6は、図1における光検出器19の受光面構成の一例である。光検出器19は、ホログラフィック回折格子18によって回折した光束を受光する複数の受光面を形成している。受光面はD1、D2、D3、D4、D5、D6、D13、D14、D15、まで、計9面ある。図中の左右方向がRad方向、上下方向がTan方向である。
【0032】
図7は、光束が光検出器19に入射するときの受光位置を示す。光検出器19上に入射する0次光100、+1次回折光101、−1次回折光102については、それぞれ斜線でハッチングし実線で囲んだ領域で示す。
【0033】
0次光100は光検出器19の手前で集光し、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D1〜D6に入射する。
【0034】
+1次回折光101は光検出器19の奥で集光するため、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D13〜D15に入射する。
【0035】
−1次回折光102は光検出器19上で大きくデフォーカスして入射する。このため、受光する場合受光面のサイズが大きくなり信号ノイズが大きくなる問題が発生する。また、光検出器サイズの増加となって、部品コストの観点からも不利となる。よって、光束入射位置に受光面を配置せず、不要光として扱う。
【0036】
光検出器19の受光面D1、D2、D3、D4、D5、D6、D13、D14、D15でそれぞれ検出される信号を、順に、信号S1、S2、S3、S4、S5、S6、S13、S14、S15とする、これら各受光面に入射した信号光を用いて、サーボ信号や再生信号等を生成することができる。
【0037】
フォーカス誤差信号の検出には、前述したようにSSD方式を使用する。本実施例の場合、0次光100は光検出器19の手前に集光するように、そして+1次回折光101は光検出器19の奥で集光するように、デフォーカスおよび光検出器位置を調整する。そして、光検出器19上において、2つの光束は略同じスポットサイズとなるように調整する。これにより、ある方向にデフォーカスすると、0次光100はより小さなスポットに、+1次回折光101はより大きなスポットになり、反対方向にデフォーカスすると、0次光100はより大きなスポットに、+1次回折光101はより小さなスポットになる。これを利用して、信号S1からS6とS13からS15より数1に示す演算式でフォーカス誤差信号(FES)を生成する。
【0038】
(数1)
FES=(S1+S4+S3+S6+S14)−(S2+S5+S13+S15)
本実施例の光検出器19は、1つの入射光束をRad方向に略平行な分割線によって少なくとも3分割される。この構成により、安定なSSD方式によるFESを検出することが可能となっている。数1のFES演算より、FESの光量ずれはRad方向に略平行な分割線に依存する。そのため、光検出器19がRad方向に位置ずれした場合、FESのアンバランスは生じない。よって、光検出器19のRad方向ずれに強い構成である。また、光検出器19がRad方向に位置ずれした場合も、光量ずれがFESの差動をとる両方の信号で同じだけ生じるため、光検出器19のTan方向ずれにも強い構成である。また、波長変動した場合、+1次回折光は回折方向に光束は変位するという特性があるが、本実施例は、図4に示すように回折光の回折方向はRad方向である。そのため光束はRad方向に略平行に変位するので、分割線の影響を受けずFESも安定する。また、プッシュプル成分は図7の入射光束の左右方向に発生するため、FESへのプッシュプル成分の漏れ込みもキャンセルすることができる構成となっている。
【0039】
トラッキング誤差信号の検出には、例えば1ビームディファレンシャルプッシュプル方式(以下、DPP方式と略す。)を使用する。
【0040】
DPP方式とは、レンズシフトをしたときにオフセットが発生しないようにプッシュプル信号を生成する方法である。プッシュプル成分を含んだ信号のみでは、対物レンズがRad方向に対物レンズ変位、すなわちレンズシフトしたときに、光量アンバランスが生じて直流成分のオフセットが発生し、不安定なトラッキング誤差信号となってしまう。そこで、オフセット成分含んだ信号を用いて、オフセットをキャンセルする演算を行うことにより、安定なトラッキング誤差信号を得ることができる。DPP方式を1ビームで行うことを1ビームDPP方式と呼ぶ。なお、1ビームDPP方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0041】
本発明では、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光を用いて、1ビームDPP方式にてトラッキング誤差信号を検出する。+1次回折光を用いた場合、回折した光束のために波長変動やホログラフィック回折格子18の位置ずれによって受光面上のスポットが変位する。これにより、安定なトラッキング誤差信号を検出することができなくなる。一方、0次光はホログラフィック回折格子18を透過した光束なので、レーザ光源の熱による波長変動やホログラフィック回折格子18の位置ずれによる影響が小さい。従って、安定したトラッキング誤差信号を検出することができる。
【0042】
以上より、0次光から得た信号S1からS6より、数2に示す演算式でトラッキング誤差信号(TES)を生成する。なお、プッシュプル成分を含んだ信号をメインプッシュプル(以下、MPPと略す。)信号とし、MPP信号のオフセット成分をキャンセルする信号をオフセットキャンセル(以下、OCと略す。)信号とする。
【0043】
(数2)
MPP=(S1+S2+S3)−(S4+S5+S6)
OC=(S1+S3)−(S4+S6)
TES=MPP−k1・OC
数2のk1は、対物レンズがレンズシフトした際に、TESの式中第1項の信号に含まれるオフセット成分と、式中第2項の信号に含まれるオフセット成分とを補正するための係数である。このような演算を行うことによって、対物レンズがレンズシフトした際であってもオフセットのない安定したトラッキング誤差信号を生成することが可能である。
【0044】
また、別のトラッキング誤差信号検出方式として、ディファレンシャルフェイズディテクション方式(以下、DPD方式と略す。)を使用することも可能である。DPD方式とは、ピット通過時に生じる位相差を利用してトラッキング誤差信号を生成する方式である。光ディスクのピット列上で光束が、ピット列の中心より右側を通過するときと、ピット列の中心より左側を通過するときでは、反射光の対角成分の強度分布変化は時間的にずれが生じる。この変化を利用し、反射光の対角成分から得られる信号の位相を比較して、位相ずれを検出することでトラッキング誤差信号を検出する。DPD方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0045】
本実施例では、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光が入射した受光面から得た信号のうち、S1、S3、S4、S6を用いて数3に示す演算式でDPD方式によってトラッキング誤差信号(TES)を生成する。
【0046】
(数3)
TES=φ[S1、S4、S3、S6]
ここでφ[Sa、Sb、Sc、Sd]とは、例えば、SaとSbの位相差信号と、ScとSdの位相差信号との差動を求めて得た信号である。
【0047】
また、数4に示す演算式のように0次光で得られた信号でRF信号を生成する。
【0048】
(数4)
RF=S1+S2+S3+S4+S5+S6
このように、本実施例の光検出器19の受光面構成は、0次光と+1次回折光の合計2つの光束のみを用いて、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することができる。
【0049】
さて、本実施例の構成は、所定の波長の光束に対して、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光と、回折した+1次回折光の2つ光束を光検出器の受光面に受光して、0次光と+1次回折光を用いてSSD方式によってフォーカス誤差信号を生成し、0次光を用いてトラッキング誤差信号を生成することを特徴としている。
【0050】
従来のSSD方式は、ホログラフィック回折格子を用いる場合、例えば特許文献2のように、ホログラフィック回折格子を回折した+1次回折光と−1次回折光がデフォーカスした位置に受光面を配置し、+1次回折光と−1次回折光にてフォーカス誤差信号を生成する構成が一般的である。
【0051】
このとき、+1次回折光または−1次回折光でトラッキング誤差信号を生成する場合、SSDを生成する分割線とは略垂直方向の分割線が必要となるが、波長変動によって光束の位置ずれが生じてしまい、トラッキング誤差信号の性能が劣化する課題がある。0次光をデフォーカスした状態で受光面を配置して、0次光でトラッキング誤差信号を生成する場合も、0次光と+1次回折光と−1次回折光の3つの光束を受光する受光面が必要となり、光束のサイズが大きくなるほど、光検出器が大きくなってしまう。その結果、部品コストが高くなる課題がある。
【0052】
本構成は0次光と+1次回折光でSSD方式によってフォーカス誤差信号を生成しているので、従来と同様の性能のフォーカス誤差信号を得られるとともに、0次光を用いてトラッキング誤差信号を生成するので、波長変動による光束の位置ずれという課題も生じない。さらに、−1次回折光を必要としない構成であるため、光検出器の小型化に有利であり、部品コストも安くすることが可能である。
【0053】
また、例えば特許文献1に記載しているような非点収差方式を用いた3ビーム光学系では、0次光と±1次回折光の合計3つの光束を用いている。そのため、3つの光束を受光するような受光面構成が必要となる。一方、本実施例の光検出器19は2つの光束を受光するような受光面構成となっており、3つの場合と比べて光検出器サイズを小さくすることができる。従って、本実施例の光検出器19の受光面構成は光検出器19の小型化を実現できる構成ため、部品コストを低減することが可能である。
また、本実施例の光学系構成は、3ビーム光学系に対して部品点数を減らすことができ、かつ回折格子の調整精度を緩和することができるという特徴をもつ。3ビーム光学系は、光ディスクの情報層に集光する3つの光束の配置方向を光ディスクのトラック方向に対して非常に高い精度で取り付ける必要があるため、往路回折格子の回転調整を精密に行うことが求められる。また、往路回折格子が複数に分割している場合、分割線ずれに対して信号性能の劣化が見られるため、面内調整も精密に行うことが求められる。さらに、フォーカス誤差信号検出に非点収差方式を用いているため、復路に所望の方向の非点収差を与える、例えば検出レンズを配置する必要がある。
【0054】
一方、本光学系構成は、往路中に光束を分割する素子を持たないため、光ディスク上での精密調整は不要となる。また、復路のホログラフィック回折格子18が位置ずれした場合も、光検出器を調整することによって信号劣化を改善できる。つまり、ホログラフィック回折格子18の搭載精度は、往路回折格子と比較して緩和することが可能である。
【0055】
さらに、3ビーム光学系では往路回折格子と復路検出レンズの2つ以上の光学素子が必要であるが、本光学系は往路に回折格子がないため、復路にホログラフィック面20とシリンドリカル面21を設けたホログラフィック回折格子1つを配置することで性能を確保できるため、部品点数も1つに低減することが可能である。
【0056】
以上のように、図1のような光学系で、図2から図5のようなホログラフィック回折格子18を備え、図6から図7のような光検出器19を設けることで、光ピックアップ装置において、簡素な1ビーム光学系構成で部品コストを低減するとともに、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することができる。
【0057】
なお、ホログラフィック回折格子18を回折した光束と光検出器19の位置の関係は、図4に限定されないことは言うまでもない。例えば図8のように、+1次回折光101に0次光よりも手前に集光するようなデフォーカスを与えて、光検出器19は0次光100が集光する前の位置に配置してもよい。安定したSSD方式によるフォーカス誤差信号を生成できる構成であれば構わない。
【0058】
また、ホログラフィック回折格子18の回折効率は、例えば0次光:+1次回折光:−1次回折光=7:1:1〜11:1:1となると記載したが、これには限定されないことは言うまでもない。例えば、0次光:+1次回折光:−1次回折光=1:1:0のように格子溝を制御し、不要光として扱う−1次回折光の光量を小さくして、受光面で受光する0次光と+1次回折光の光量を大きくしても何ら構わない。
【0059】
また、ホログラフィック回折格子18のホログラフィック面20とシリンドリカル面21は、図5に限定されないことは言うまでもない。図9のように、入射面をシリンドリカル面21に、出射面をホログラフィック面20にしてもよい。非点収差の除去とデフォーカス収差を与えた回折を実現できれば何ら構わない。
【0060】
また、光検出器19の受光面構成は、図10のように0次光受光面を6分割ではなく8分割にしても構わない。このとき、DPD方式によるトラッキング誤差信号は、信号S1からS6および受光面D19、D20で検出される信号S19、S20を用いて、数5に示す演算式で生成する。
【0061】
(数5)
TES=φ[(S1+S2)、(S4+S5)、(S3+S19)、(S6+S21)]
数5のような演算式にすることで、入射全光束を4分割した信号でDPD信号を生成できるため、安定したDPD信号を実現することが可能である。
【実施例2】
【0062】
本実施例では、CDとDVDについて説明するが、実施例に記載の記録方式には限定されず、他の記録方式であっても何ら構わない。
【0063】
図11は、本発明の実施例1に係る光ピックアップ装置の光学系を示している。
【0064】
2波長マルチレーザ光源30は、例えば波長略660nmの光束を出射するDVD用半導体レーザ光源30aと、波長略785nmの光束を出射するCD用半導体レーザ光源30bを備える。
【0065】
DVDを記録再生する場合は、DVD用半導体レーザ光源30aからDVD光束300aを発散光で出射し、CDを記録再生する場合は、CD用半導体レーザ光源30bからCD光束300bを発散光で出射する。
なお、DVD光束300aを実線で、CD光束300bを点線で、それぞれ記す。
半導体レーザは直線偏光の光束を出射するのが一般的であり、2波長マルチレーザ光源30からも直線偏光の光束を出射することを想定する。
【0066】
また、DVD用半導体レーザ光源30aとCD用半導体レーザ光源30bは、図11に示すように発光点間隔がTaだけ離れた位置にそれぞれ配置されているとする。
【0067】
2波長マルチレーザ光源30から出射された光束300aもしくは300bは、ビームスプリッタミラー(以下、BSミラーと略す。)11を反射する。BSミラーとは、所定の方向の直線偏光を透過し、その方向と直交する方向の直線偏光を反射するように偏光を制御することが可能なミラーである。
【0068】
一部の光束はBSミラー11を反射し、残りの光束はBSミラー11を透過し、フロントモニタ12に入射する。一般的に光ディスクの記録再生動作の精度を良くするためには、光ディスクに照射される光束の光量を所望の値に制御することが必須となる。フロントモニタ12は2波長マルチレーザ光源30からの光量変化を制御回路にフィードバックすることにより、光束の光量を制御することを可能とする。なお、簡略化のために図11にはフロントモニタ12に入射する光束を図示していない。
【0069】
BSミラー11を反射した光束は、コリメートレンズ13に入射し光軸と略平行な光束となる。コリメートレンズ13を透過した光束は、1/4波長板14を透過、立ち上げミラー15を反射後、アクチュエータ(図示せず)に搭載された対物レンズ16を透過して、光ディスク17の情報層上に集光される。往路光路中に光を分割する素子はないため、情報層に入射する光束は1つ、すなわち1ビームである。
【0070】
光ディスクの情報層上より反射した光束は、対物レンズ16、立ち上げミラー15、1/4波長板14、コリメートレンズ13を透過し、BSミラー11に入射する。このとき、光束は1/4波長板14を2回通過したために、往路のときと直交する方向の直線偏光となっている。従って、光束の一部はBSミラー11を透過する。BSミラー11を透過した光束は、ホログラフィック回折格子18を通り、光検出器19上に集光する。
【0071】
ホログラフィック回折格子18は、光束を複数に分割する素子である。詳細は図12以降にて述べる。
【0072】
光検出器19は、光束を受光できるような受光面構成となっており、受光面に照射された光量に従ってフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号、RF信号などが生成される。詳細は図16以降にて述べる。
【0073】
なお、DVD用半導体レーザ光源30aからのDVD光束300aの光束中心が光学部品の中心を通るように描かれているが、これに限定されるものではない。CD光束300bの光束中心が光学部品の中心を通ってもよく、またDVD光束300aの光束中心とCD光束300bの光束中心の間に光学部品の中心があっても何ら構わない。
【0074】
図12は、本発明のホログラフィック回折格子18の斜視図を示したものである。DVD光束300aまたはCD光束300bは、図中の矢印のようにホログラフィック回折格子18に入射する。ホログラフィック回折格子18の入射面20はホログラフィック面となっており、所定のパターンを持つ不等間隔曲線状の格子溝が形成されている。また、出射面21はシリンドリカル面となっており、光束の所定の方向のみ屈折力を与える。このように、ホログラフィック回折格子18は、ホログラフィック面20とシリンドリカル面21の2面を、それぞれ入射面、出射面に備えている。
【0075】
図13は、本発明のホログラフィック回折格子18を、光束入射方向から見た概略平面図を示したものである。実線の円はDVD光束300aの外形を示しており、点線の円はCD光束300bの外形を示している。ホログラフィック面20は複数の領域には分割されておらず、入射した光束を少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分岐するとともに±1次回折光に共役なデフォーカス収差を与える。本実施例において、DVD用半導体レーザ光源30aとCD用半導体レーザ光源30bは、光ディスクのトラック方向に略垂直な方向、つまり光ディスク半径方向(以下、Rad方向と略す。)にTaだけ離れているため、ホログラフィック回折格子18上でも、DVD光束300aの光束中心とCD光束300bの光束中心は、Rad方向に沿った方向に所定の距離乖離している。光ディスクのトラック方向に相当する方向、つまり光ディスク接線方向(以下、Tan方向と略す。)の乖離はない。
【0076】
図14は、本発明のホログラフィック回折格子18を回折した光束が光検出器19に入射する様子について、Tan方向から見た概略平面図を示したものである。ここでは、DVD光束300aが入射したときの様子を説明する。本発明のホログラフィック面20によって、入射光束はそのまま透過する0次光300aと、回折しながら0次光よりも奥に集光するようなデフォーカスを与えられた+1次回折光301aと、回折しながら0次光よりも手前に集光するようなデフォーカスを与えられた−1次回折光302aとに分割される。
【0077】
また、ホログラフィック回折格子18の回折効率は、例えば660nmのDVD波長に対して、0次光:+1次回折光:−1次回折光=7:1:1〜11:1:1となるような格子溝深さとなっている。
【0078】
また、光検出器19は、0次光300aと+1次回折光301aの光検出器19上でのスポット径が略同じとなるように、0次光300aが集光した後の位置に配置される。これは、0次光300aと+1次回折光301aを用いて、フォーカス誤差信号の生成にスポットサイズディテクション方式(以下、SSD方式と略す。)を使用するためである。SSD方式とは、デフォーカスに対する受光面上のスポットの大きさを制御することで、フォーカス誤差信号を生成する方式である。SSD方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。本実施例では、このSSD方式を用いることで、光検出器19の受光面サイズを小さくし、光検出器コストを低減することを特徴としている。詳細については後述する。
【0079】
なお、CD光束300bが入射したときもDVD光束300aが入射したときと同様の現象となることは言うまでもない。
【0080】
図15は、本発明のホログラフィック回折格子18について、Rad方向から見た概略平面図を示したものである。図のようにシリンドリカル面21は、Tan方向に沿った方向の光束についてのみ、屈折力を与えて発散するような形状となっている。これは、BSミラー11を通ることによって発生した非点収差を、コストアップしないで効果的に除去するためである。光束を往路と復路で分割するビームスプリッタは、図11に示した平板のBSミラー11以外にも、例えば偏光ビームスプリッタプリズム(以下、PBSと略す。)といった四角形プリズムを使用することも可能である。しかし、PBSは非点収差などの波面収差を発生しないメリットがある一方で、BSミラーよりも部品コストが高いために、低コスト化のためにはプリズムではなく平板のBSミラーを用いることが必要となる。
【0081】
ところが、BSミラーを用いて、非点収差を除去する素子を別に設けると、部品点数が1つ増えるので、増えた部品のコストがかかる、部品搭載の時間がかかる、といった別の課題が発生する。
【0082】
本実施例は、復路に配置したホログラフィック回折格子18にシリンドリカル面21を設けることで、1つの部品で回折格子と非点収差除去の2つの機能を備えていることが特徴である。このため、部品コストが高くなることもなく、また部品搭載時間が増加することもなく、所望の光束を光検出器19に入射させることが可能である。
【0083】
図16は、図11における光検出器19の受光面構成の一例である。光検出器19は、ホログラフィック回折格子18によって回折した光束を受光する複数の受光面を形成している。受光面はD1からD18まで、計18面ある。図中の左右方向がRad方向、上下方向がTan方向である。
【0084】
図17は、DVD光束が光検出器19に入射するときの受光位置を示す。光検出器19上に入射する0次光300a、+1次回折光301a、−1次回折光302aについては、それぞれ斜線でハッチングし実線で囲んだ領域で示す。
【0085】
0次光300aは光検出器19の手前で集光し、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D1〜D6に入射する。
【0086】
+1次回折光301aは光検出器19の奥で集光するため、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D13〜D15に入射する。
【0087】
−1次回折光302aは光検出器19上で大きくデフォーカスして入射する。このため、受光する場合受光面のサイズが大きくなり信号ノイズが大きくなる問題が発生する。また、光検出器サイズの増加となって、部品コストの観点からも不利となる。よって、光束入射位置に受光面を配置せず、不要光として扱う。
【0088】
図18は、CD光束が光検出器19に入射するときの受光位置を示す。光検出器19上に入射するCD0次光300b、CD+1次回折光301b、−1次回折光302bについては、それぞれ斜線でハッチングし点線で囲んだ領域で示す。
【0089】
0次光300bは光検出器19の手前で集光し、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D7〜D12に入射する。
【0090】
+1次回折光301bは光検出器19の奥で集光するため、光検出器19上ではデフォーカスして所定の光束径で受光面D16〜D18に入射する。
【0091】
−1次回折光302bは光検出器19上で大きくデフォーカスして入射する。このため、受光する場合受光面のサイズが大きくなり信号ノイズが大きくなる問題が発生する。また、光検出器サイズの増加となって、部品コストの観点からも不利となる。よって、光束入射位置に受光面を配置せず、不要光として扱う。
【0092】
光検出器19の受光面D1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8、D9、D10、D11、D12、D13、D14、D15、D16、D17、D18でそれぞれ検出される信号を、順に、信号S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13、S14、S15、S16、S17、S18とする、これら各受光面に入射した信号光を用いて、サーボ信号や再生信号等を生成することができる。
【0093】
フォーカス誤差信号の検出には、前述したようにSSD方式を使用する。本実施例の場合、0次光300aは光検出器19の手前に集光するように、そして+1次回折光301aは光検出器19の奥で集光するように、デフォーカスおよび光検出器位置を調整する。そして、光検出器19上において、2つの光束は略同じスポットサイズとなるように調整する。これにより、ある方向にデフォーカスすると、0次光300aはより小さなスポットに、+1次回折光301aはより大きなスポットになり、反対方向にデフォーカスすると、0次光300aはより大きなスポットに、+1次回折光301aはより小さなスポットになる。これを利用して、信号S1からS18より数6に示す演算式でフォーカス誤差信号(FES)を生成する。
【0094】
(数6)
DVD_FES=(S1+S4+S3+S6+S14)−(S2+S5+S13+S15)
CD_FES=(S7+S10+S9+S12+S17)−(S8+S11+S16+S18)
本実施例の光検出器19は、1つの入射光束をRad方向に略平行な分割線によって少なくとも3分割される。この構成により、安定なSSD方式によるFESを検出することが可能となっている。数6のFES演算より、FESの光量ずれはRad方向に略平行な分割線に依存する。そのため、光検出器19がRad方向に位置ずれした場合、FESのアンバランスは生じない。よって、光検出器19のRad方向ずれに強い構成である。また、光検出器19がRad方向に位置ずれした場合も、光量ずれがFESの差動をとる両方の信号で同じだけ生じるため、光検出器19のTan方向ずれにも強い構成である。また、波長変動した場合、+1次回折光は回折方向に光束は変位するという特性があるが、本実施例は、図14に示すように回折光の回折方向はRad方向である。そのため光束はRad方向に略平行に変位するので、分割線の影響を受けずFESも安定する。また、プッシュプル成分は図17および図18中の入射光束の左右方向に発生するため、FESへのプッシュプル成分の漏れ込みもキャンセルすることができる構成となっている。
【0095】
トラッキング誤差信号の検出には、例えば1ビームディファレンシャルプッシュプル方式(以下、DPP方式と略す。)を使用する。
【0096】
DPP方式とは、レンズシフトをしたときにオフセットが発生しないようにプッシュプル信号を生成する方法である。プッシュプル成分を含んだ信号のみでは、対物レンズがRad方向に対物レンズ変位、すなわちレンズシフトしたときに、光量アンバランスが生じて直流成分のオフセットが発生し、不安定なトラッキング誤差信号となってしまう。そこで、オフセット成分含んだ信号を用いて、オフセットをキャンセルする演算を行うことにより、安定なトラッキング誤差信号を得ることができる。DPP方式を1ビームで行うことを1ビームDPP方式と呼ぶ。なお、1ビームDPP方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0097】
本発明では、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光を用いて、1ビームDPP方式にてトラッキング誤差信号を検出する。+1次回折光を用いた場合、回折した光束のために波長変動やホログラフィック回折格子18の位置ずれによって受光面上のスポットが変位する。これにより、安定なトラッキング誤差信号を検出することができなくなる。一方、0次光はホログラフィック回折格子18を透過した光束なので、レーザ光源の熱による波長変動やホログラフィック回折格子18の位置ずれによる影響が小さい。従って、安定したトラッキング誤差信号を検出することができる。
【0098】
以上より、0次光から得た信号S1からS12より、数7に示す演算式でDVDとCDのトラッキング誤差信号(TES)を生成する。なお、プッシュプル成分を含んだ信号をメインプッシュプル(以下、MPPと略す。)信号とし、MPP信号のオフセット成分をキャンセルする信号をオフセットキャンセル(以下、OCと略す。)信号とする。
【0099】
(数7)
DVD_MPP=(S1+S2+S3)−(S4+S5+S6)
CD_MPP=(S7+S8+S9)−(S10+S11+S12)
DVD_OC=(S1+S3)−(S4+S6)
CD_OC=(S7+S9)−(S10+S12)
DVD_TES=DVD_MPP−k1・DVD_OC
CD_TES=CD_MPP−k2・CD_OC
数7のk1およびk2は、対物レンズがレンズシフトした際に、TESの式中第1項の信号に含まれるオフセット成分と、式中第2項の信号に含まれるオフセット成分とを補正するための係数である。このような演算を行うことによって、対物レンズがレンズシフトした際であってもオフセットのない安定したトラッキング誤差信号を生成することが可能である。
【0100】
また、別のトラッキング誤差信号検出方式として、ディファレンシャルフェイズディテクション方式(以下、DPD方式と略す。)を使用することも可能である。DPD方式とは、ピット通過時に生じる位相差を利用してトラッキング誤差信号を生成する方式である。光ディスクのピット列上で光束が、ピット列の中心より右側を通過するときと、ピット列の中心より左側を通過するときでは、反射光の対角成分の強度分布変化は時間的にずれが生じる。この変化を利用し、反射光の対角成分から得られる信号の位相を比較して、位相ずれを検出することでトラッキング誤差信号を検出する。DPD方式は公知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0101】
本実施例では、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光が入射した受光面から得た信号のうち、DVDのときはS1、S3、S4、S6を用いて、CDのときはS7、S9、S10、S12を用いて、それぞれ数8に示す演算式でDPD方式によってDVDとCDのトラッキング誤差信号(TES)を生成する。
【0102】
(数8)
DVD_TES=φ[S1、S4、S3、S6]
CD_TES=φ[S7、S10、S9、S12]
ここでφ[Sa、Sb、Sc、Sd]とは、例えば、SaとSbの位相差信号と、ScとSdの位相差信号との差動を求めて得た信号である。
【0103】
また、数9に示す演算式のように0次光で得られた信号でRF信号を生成する。
【0104】
(数9)
DVD_RF=S1+S2+S3+S4+S5+S6
CD_RF=S7+S8+S9+S10+S11+S12
このように、本実施例の光検出器19の受光面構成は、DVDとCDでそれぞれ0次光と+1次回折光の合計4つの光束を用いて、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することができる。
【0105】
さて、本実施例の構成は、所定の波長の光束に対して、ホログラフィック回折格子18を透過した0次光と、回折した+1次回折光の2つ光束を光検出器の受光面に受光して、0次光と+1次回折光を用いてSSD方式によってフォーカス誤差信号を生成し、0次光を用いてトラッキング誤差信号を生成することを特徴としている。
【0106】
従来のSSD方式は、ホログラフィック回折格子を用いる場合、例えば特許文献2のように、ホログラフィック回折格子を回折した+1次回折光と−1次回折光がデフォーカスした位置に受光面を配置し、+1次回折光と−1次回折光にてフォーカス誤差信号を生成する構成が一般的である。
【0107】
このとき、+1次回折光または−1次回折光でトラッキング誤差信号を生成する場合、SSDを生成する分割線とは略垂直方向の分割線が必要となるが、波長変動によって光束の位置ずれが生じてしまい、トラッキング誤差信号の性能が劣化する課題がある。0次光をデフォーカスした状態で受光面を配置して、0次光でトラッキング誤差信号を生成する場合も、0次光と+1次回折光と−1次回折光の3つの光束を受光する受光面が必要となり、光束のサイズが大きくなるほど、光検出器が大きくなってしまう。その結果、部品コストが高くなる課題がある。
【0108】
本構成は0次光と+1次回折光でSSD方式によってフォーカス誤差信号を生成しているので、従来と同様の性能のフォーカス誤差信号を得られるとともに、0次光を用いてトラッキング誤差信号を生成するので、波長変動による光束の位置ずれという課題も生じない。さらに、−1次回折光を必要としない構成であるため、光検出器の小型化に有利であり、部品コストも安くすることが可能である。
【0109】
また、例えば特許文献1に記載しているような非点収差方式を用いた3ビーム光学系では、DVDとCDでそれぞれ0次光と±1次回折光の合計6つの光束を用いている。そのため、6つの光束を受光するような受光面構成が必要となる。一方、本実施例の光検出器19は4つの光束を受光するような受光面構成となっており、6つの場合と比べて光検出器サイズを小さくすることができる。従って、本実施例の光検出器19の受光面構成は光検出器19の小型化を実現できる構成ため、部品コストを低減することが可能である。
【0110】
また、本実施例の光学系構成は、3ビーム光学系に対して部品点数を減らすことができ、かつ回折格子の調整精度を緩和することができるという特徴をもつ。3ビーム光学系は、光ディスクの情報層に集光する3つの光束の配置方向を光ディスクのトラック方向に対して非常に高い精度で取り付ける必要があるため、往路回折格子の回転調整を精密に行うことが求められる。また、往路回折格子が複数に分割している場合、分割線ずれに対して信号性能の劣化が見られるため、面内調整も精密に行うことが求められる。さらに、フォーカス誤差信号検出に非点収差方式を用いているため、復路に所望の方向の非点収差を与える、例えば検出レンズを配置する必要がある。
【0111】
一方、本光学系構成は、往路中に光束を分割する素子を持たないため、光ディスク上での精密調整は不要となる。また、復路のホログラフィック回折格子18が位置ずれした場合も、光検出器を調整することによって信号劣化を改善できる。つまり、ホログラフィック回折格子18の搭載精度は、往路回折格子と比較して緩和することが可能である。
【0112】
さらに、3ビーム光学系では往路回折格子と復路検出レンズの2つ以上の光学素子が必要であるが、本光学系は往路に回折格子がないため、復路にホログラフィック面20とシリンドリカル面21を設けたホログラフィック回折格子1つを配置することで性能を確保できるため、部品点数も1つに低減することが可能である。
【0113】
以上のように、図11のような光学系で、図12から図15のようなホログラフィック回折格子18を備え、図16から図18のような光検出器19を設けることで、2波長マルチレーザ光源を用いたDVD/CD互換光ピックアップ装置において、簡素な1ビーム光学系構成で部品コストを低減するとともに、安定なサーボ信号およびRF信号を生成することができる。
【0114】
なお、ホログラフィック回折格子18を回折した光束と光検出器19の位置の関係は、図14に限定されないことは言うまでもない。例えば図19のように、+1次回折光301aに0次光よりも手前に集光するようなデフォーカスを与えて、光検出器19は0次光300aが集光する前の位置に配置してもよい。安定したSSD方式によるフォーカス誤差信号を生成できる構成であれば構わない。
【0115】
また、ホログラフィック回折格子18の回折効率は、例えば、0次光:+1次回折光:−1次回折光=7:1:1〜11:1:1となると記載したが、これには限定されないことは言うまでもない。例えば、0次光:+1次回折光:−1次回折光=1:1:0のように格子溝を制御し、不要光として扱う−1次回折光の光量を小さくして、受光面で受光する0次光と+1次回折光の光量を大きくしても何ら構わない。
【0116】
また、ホログラフィック回折格子18のホログラフィック面20とシリンドリカル面21は、図15に限定されないことは言うまでもない。図20のように、入射面をシリンドリカル面21に、出射面をホログラフィック面20にしてもよい。非点収差の除去とデフォーカス収差を与えた回折を実現できれば何ら構わない。
【0117】
また、光検出器19の受光面構成は、図21のように0次光受光面を6分割ではなく8分割にしても構わない。このとき、DPD方式によるトラッキング誤差信号は、信号S1からS12および受光面D19からD22で検出される信号S19からS22を用いて、数10に示す演算式で生成する。
【0118】
(数10)
DVD_TES=φ[(S1+S2)、(S4+S5)、(S3+S19)、(S6+S21)]
CD_TES=φ[(S7+S8)、(S10+S11)、(S9+S21、(S12+S22)]
数10のような演算式にすることで、入射全光束を4分割した信号でDPD信号を生成できるため、安定したDPD信号を実現することが可能である。
【実施例3】
【0119】
実施例3では、実施例1または実施例2で説明した光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置(光学的情報再生装置または光学的情報記録再生装置)について、図22を用いて説明する。
【0120】
図22は、光ディスク17に記録および再生を行う光ディスク装置の概略ブロック図を示している。光ディスク装置は、光ピックアップ装置200、サーボ信号生成回路201、情報信号再生回路202、アクチュエータ駆動回路203、コントロール回路204、レーザ点灯回路205、スピンドルモータ駆動回路206、アクセス制御回路207、スピンドルモータ208、情報信号記録回路209を備えて構成される。
【0121】
光ディスク再生動作について説明する。光ピックアップ装置200内の光検出器から検出された信号は、サーボ信号生成回路201および情報信号再生回路202に送られる。
【0122】
サーボ信号生成回路201では、光ピックアップ装置200より検出された信号に基づいて光ディスク17に適したフォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号が生成され、これらの信号を基にアクチュエータ駆動回路203を経て光ピックアップ装置200内の対物レンズアクチュエータを駆動して、対物レンズ16の位置制御が行われる。
【0123】
情報信号再生回路202では、光ピックアップ装置200より検出された信号から光ディスク17に記録された情報信号が再生される。
【0124】
また、サーボ信号生成回路201および情報信号再生回路202にて得られた信号の一部は、コントロール回路204に送られる。コントロール回路204からはレーザ駆動用信号が送られ、レーザ点灯回路205を駆動して光ピックアップ装置200内の半導体レーザに適切なレーザ駆動電流を供給する。なお、レーザ点灯回路205は光ピックアップ装置200内に組み込むことも可能である。
【0125】
コントロール回路204には、サーボ信号生成回路201、レーザ点灯回路205の他にスピンドルモータ駆動回路206、アクセス制御回路207が接続されており、それぞれ光ディスク17を回転させるスピンドルモータ208の回転制御、光ピックアップ装置200のアクセス方向位置制御が行われる。
【0126】
光ディスク記録時は、コントロール回路204とレーザ点灯回路205の間に設けられている情報信号記録回路209からの記録制御信号に基づいて、レーザ点灯回路205を駆動させて光ディスク17に情報を記録する。
【0127】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0128】
10…レーザ光源、11…BSミラー、12…フロントモニタ、13…コリメートレンズ、14…1/4波長板、15…立ち上げミラー、16…対物レンズ、17…光ディスク、18…ホログラフィック回折格子、19…光検出器、30…2波長マルチレーザ光源、200…光ピックアップ装置、201…サーボ信号生成回路、202…情報信号再生回路、203…アクチュエータ駆動回路、204…コントロール回路、205…レーザ点灯回路、206…スピンドルモータ駆動回路、207…アクセス制御回路、208…スピンドルモータ、209…情報信号記録回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源を出射した光束を光ディスクの情報層に集光する対物レンズと、
前記光ディスクの情報層を反射した光束が進行する復路光路中に配置される、光束を分割する光分割素子と、
前記光ディスクの情報層を反射した光束を受光する複数の受光面を備えた光検出器と、を備えた光ピックアップ装置において、
前記光分割素子は、少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分割するとともに、前記±1次回折光に互いに共役なデフォーカス収差を与え、
前記光検出器は、前記0次光を受光する第1の受光面と、前記±1次回折光うちどちらか一方の光束を受光する第2の受光面との、少なくとも2つの光束を受光する受光面を配置し、
第1および第2の受光面で、スポットサイズディテクション方式によってフォーカス誤差信号を検出し、
第1の受光面で、トラッキング誤差信号を検出することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1および第2の受光面は、前記0次光の光束径と、前記±1次回折光のうちどちらか一方の光束径とが略同じ大きさとなる位置に配置する
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1と第2の受光面は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向に略垂直な方向の分割線により少なくとも3分割される
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1の受光面は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向の分割線により少なくとも2分割される
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光分割素子は、所定のパターンを持つ不等間隔曲線状の格子溝が形成されたホログラフィック回折格子である
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光ピックアップ装置であって、
前記ホログラフィック回折格子で回折される回折光の回折方向は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向に略垂直な方向である
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光分割素子は、光束を少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分岐するとともに前記±1次回折光に互いに共役なデフォーカス収差を与えるホログラフィック面と、
光束の所定の方向のみ屈折力を与えるシリンドリカル面との、2つの面を備える
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項8】
少なくとも互いに独立した光束を出射する第1のレーザ光源および第2のレーザ光源を共通の筐体に格納したレーザ光源ユニットと、
前記第1のレーザ光源を出射した第1の光束および前記第2のレーザ光源を出射した第2の光束を光ディスクの情報層に集光する対物レンズと、
前記光ディスクの情報層を反射した光束が進行する復路光路中に配置される、光束を分割する光分割素子と、
前記光ディスクの情報層を反射した光束を受光する複数の受光面を備えた光検出器と、を備えた光ピックアップ装置において、
前記光分割素子は、少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分割するとともに、前記±1次回折光に互いに共役なデフォーカス収差を与え、
前記光検出器は、前記第1の光束の0次光を受光する第1の受光面と、前記第1の光束の±1次回折光のうちどちらか一方の光束を受光する第2の受光面と、前記第2の光束の0次光を受光する第3の受光面と、前記第2の光束の±1次回折光のうちどちらか一方の光束を受光する第4の受光面の、少なくとも4つの光束を受光する受光面を配置し、
第1および第2の受光面または第3および第4の受光面で、スポットサイズディテクション方式によってフォーカス誤差信号を検出し、
第1の受光面または第3の受光面で、トラッキング誤差信号を検出する
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1および第2の受光面または前記第3および第4の受光面は、前記0次光の光束径と、前記±1次回折光のうちどちらか一方の光束径とが略同じ大きさとなる位置に配置する
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項10】
請求項8に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1乃至第4の受光面は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向に略垂直な方向の分割線により少なくとも3分割される
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項11】
請求項8に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1と第3の受光面は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向の分割線により少なくとも2分割される
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項12】
請求項8に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光分割素子は、所定のパターンを持つ不等間隔曲線状の格子溝が形成されたホログラフィック回折格子である
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項13】
請求項12に記載の光ピックアップ装置であって、
前記ホログラフィック回折格子で回折される回折光の回折方向は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向に略垂直な方向である
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項14】
請求項8に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光分割素子は、光束を少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分岐するとともに前記±1次回折光に互いに共役なデフォーカス収差を与えるホログラフィック面と、
光束の所定の方向のみ屈折力を与えるシリンドリカル面との、2つの面を備える
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の光ピックアップ装置と、
前記光ピックアップ装置の前記レーザ光源を駆動するためのレーザ点灯回路と、
前記光ピックアップ装置の前記光検出器が生成した検出信号に基づき前記光学的情報記録媒体に対してサーボ信号を生成するためのサーボ信号生成回路と、
前記光ピックアップ装置の前記光検出器が生成した検出信号に基づき前記光学的情報記録媒体に記録された情報信号を再生するための情報信号再生回路と、
前記レーザ点灯回路、前記サーボ信号生成回路、前記情報信号再生回路を含む前記光ディスク装置の構成要素を制御するコントロール回路と、
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源を出射した光束を光ディスクの情報層に集光する対物レンズと、
前記光ディスクの情報層を反射した光束が進行する復路光路中に配置される、光束を分割する光分割素子と、
前記光ディスクの情報層を反射した光束を受光する複数の受光面を備えた光検出器と、を備えた光ピックアップ装置において、
前記光分割素子は、少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分割するとともに、前記±1次回折光に互いに共役なデフォーカス収差を与え、
前記光検出器は、前記0次光を受光する第1の受光面と、前記±1次回折光うちどちらか一方の光束を受光する第2の受光面との、少なくとも2つの光束を受光する受光面を配置し、
第1および第2の受光面で、スポットサイズディテクション方式によってフォーカス誤差信号を検出し、
第1の受光面で、トラッキング誤差信号を検出することを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1および第2の受光面は、前記0次光の光束径と、前記±1次回折光のうちどちらか一方の光束径とが略同じ大きさとなる位置に配置する
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1と第2の受光面は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向に略垂直な方向の分割線により少なくとも3分割される
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1の受光面は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向の分割線により少なくとも2分割される
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光分割素子は、所定のパターンを持つ不等間隔曲線状の格子溝が形成されたホログラフィック回折格子である
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光ピックアップ装置であって、
前記ホログラフィック回折格子で回折される回折光の回折方向は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向に略垂直な方向である
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光分割素子は、光束を少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分岐するとともに前記±1次回折光に互いに共役なデフォーカス収差を与えるホログラフィック面と、
光束の所定の方向のみ屈折力を与えるシリンドリカル面との、2つの面を備える
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項8】
少なくとも互いに独立した光束を出射する第1のレーザ光源および第2のレーザ光源を共通の筐体に格納したレーザ光源ユニットと、
前記第1のレーザ光源を出射した第1の光束および前記第2のレーザ光源を出射した第2の光束を光ディスクの情報層に集光する対物レンズと、
前記光ディスクの情報層を反射した光束が進行する復路光路中に配置される、光束を分割する光分割素子と、
前記光ディスクの情報層を反射した光束を受光する複数の受光面を備えた光検出器と、を備えた光ピックアップ装置において、
前記光分割素子は、少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分割するとともに、前記±1次回折光に互いに共役なデフォーカス収差を与え、
前記光検出器は、前記第1の光束の0次光を受光する第1の受光面と、前記第1の光束の±1次回折光のうちどちらか一方の光束を受光する第2の受光面と、前記第2の光束の0次光を受光する第3の受光面と、前記第2の光束の±1次回折光のうちどちらか一方の光束を受光する第4の受光面の、少なくとも4つの光束を受光する受光面を配置し、
第1および第2の受光面または第3および第4の受光面で、スポットサイズディテクション方式によってフォーカス誤差信号を検出し、
第1の受光面または第3の受光面で、トラッキング誤差信号を検出する
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1および第2の受光面または前記第3および第4の受光面は、前記0次光の光束径と、前記±1次回折光のうちどちらか一方の光束径とが略同じ大きさとなる位置に配置する
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項10】
請求項8に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1乃至第4の受光面は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向に略垂直な方向の分割線により少なくとも3分割される
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項11】
請求項8に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光検出器の前記第1と第3の受光面は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向の分割線により少なくとも2分割される
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項12】
請求項8に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光分割素子は、所定のパターンを持つ不等間隔曲線状の格子溝が形成されたホログラフィック回折格子である
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項13】
請求項12に記載の光ピックアップ装置であって、
前記ホログラフィック回折格子で回折される回折光の回折方向は、前記光ディスクのトラック方向に相当する方向に略垂直な方向である
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項14】
請求項8に記載の光ピックアップ装置であって、
前記光分割素子は、光束を少なくとも光束を0次光と±1次回折光に分岐するとともに前記±1次回折光に互いに共役なデフォーカス収差を与えるホログラフィック面と、
光束の所定の方向のみ屈折力を与えるシリンドリカル面との、2つの面を備える
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の光ピックアップ装置と、
前記光ピックアップ装置の前記レーザ光源を駆動するためのレーザ点灯回路と、
前記光ピックアップ装置の前記光検出器が生成した検出信号に基づき前記光学的情報記録媒体に対してサーボ信号を生成するためのサーボ信号生成回路と、
前記光ピックアップ装置の前記光検出器が生成した検出信号に基づき前記光学的情報記録媒体に記録された情報信号を再生するための情報信号再生回路と、
前記レーザ点灯回路、前記サーボ信号生成回路、前記情報信号再生回路を含む前記光ディスク装置の構成要素を制御するコントロール回路と、
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−4112(P2013−4112A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130814(P2011−130814)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
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