説明

光ピックアップ装置及び光ディスク装置

【課題】光源からの光束を分割せず、しかも大型化及び高コスト化を招くことなく、対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く検出する。
【解決手段】記録面で反射された戻り光束の光路上に配置され、戻り光束を複数の光束に分割するとともに、分割された複数の分割光束を戻り光束の光路上から分岐する複数の分割領域を有する分岐光学素子57を含む光学系と、複数の分割光束のうち少なくとも1つの分割光束を受光する第1の受光素子と、トラッキング方向とは異なる方向の分割線によって分割され、残りの分割光束のうち少なくとも1つの分割光束を分割線上で受光する第2の受光素子59dとを備えることにより、分岐光学素子が対物レンズと連動して駆動されても対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く求めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ピックアップ装置及び光ディスク装置に係り、さらに詳しくは、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行うのに好適な光ピックアップ装置及び該光ピックアップ装置を備えた光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置では、例えばCD(compact disc)、DVD(digital versatile disc)などの光記録媒体のスパイラル状又は同心円状のトラックが形成された記録面にレーザ光の微小スポットを照射することにより情報の記録を行い、記録面からの反射光に基づいて情報の再生などを行っている。そして、光ディスク装置には、光記録媒体の記録面にレーザ光を照射するとともに、記録面からの反射光を受光するために、光ピックアップ装置が設けられている。
【0003】
通常、光ピックアップ装置は、光源と、対物レンズを含み、光源から出射される光束を光記録媒体の記録面に導くとともに、記録面で反射された戻り光束を所定の受光位置まで導く光学系及び、受光位置に配置された受光素子などを備えている。この受光素子からは、記録面に記録されているデータの再生情報だけでなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御などに必要な情報を含む信号が出力される。そして例えば、微小スポットを記録面の所定位置に正確に照射するために対物レンズをトラックの接線方向に直交する方向(トラッキング方向)に駆動する、いわゆるトラッキング制御では、受光素子の出力信号からトラックの溝に起因して発生する2つの回折パターン(トラックパターン)の強度差をトラックエラー信号(トラックサーボ信号)として検出し、対物レンズのトラッキング方向に関する位置制御にフィードバックさせている。
【0004】
この場合に、トラックの接線方向に対応する方向の分割線によって2分割された受光素子の第1の受光領域からの信号と第2の受光領域からの信号との差信号からトラックエラー信号を検出する方法は、一般的にプッシュプル法と呼ばれている。
【0005】
通常、受光素子は、対物レンズがトラッキング方向に関する所定の基準位置(以下、「基準位置」と略述する)にあるときにその受光面の中央部で戻り光束が受光されるように配置されている。ここで、トラックエラー信号に基づいて微小スポットが記録面の所定位置からずれていると判断されると、そのずれを補正するために対物レンズがトラッキング方向に駆動される。これによって対物レンズがトラッキング方向にシフトするとそれに応じて受光素子の受光面における戻り光束の受光位置もシフトする。戻り光束の受光位置がシフトすると、上述のプッシュプル法によって検出されるトラックエラー信号にオフセット成分が含まれるため、誤ったトラッキング制御が行われるという不具合があった。
【0006】
そこで、この不具合を改善すべく、例えば特許文献1には、プッシュプル法を改良した、いわゆる差動プッシュプル法によるトラッキング誤差検出方式が開示されている。
【0007】
この差動プッシュプル法では、光源から出射される光束は1つの主ビームと2つの副ビームとに3分割され、記録面において主ビームと各副ビームとがトラッキング方向に関しトラックピッチ(トラッキング方向に隣接するトラック間の距離)の1/2だけずれるように照射される。記録面で反射された主ビーム及び2つの副ビームの戻り光束は3つの2分割受光素子でそれぞれ受光されるとともに、2分割受光素子毎にそれぞれの出力信号に基づいてプッシュプル信号が求められる。そして、2つの副ビームに関するプッシュプル信号の和信号と主ビームに関するプッシュプル信号との差を求めることにより、対物レンズのトラッキング方向に関するシフト(以下、適宜「対物レンズのシフト」と略述する)に起因するオフセット成分が除去されたトラックエラー信号が検出される。また、差動プッシュプル法では、主ビームに関するプッシュプル信号と2つの副ビームに関するプッシュプル信号とを加算することによりオフセット成分だけを抽出することができる。このオフセット成分は対物レンズのシフト量に比例するため、抽出されたオフセット成分に基づいて対物レンズのトラッキング方向に関する位置を検出することが可能である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているトラッキング誤差検出方式では、光源から出射される光束を複数の光束に分割しているために、記録及び再生に利用できる光量が減少し、記録速度の高速化に対応できないという不都合があった。またプッシュプル信号を検出するための2分割受光素子が3個も必要となり、光ピックアップ装置の小型化及び低コスト化が阻害されるという不都合があった。
【0009】
そこで、これら不具合を改善すべく、例えば特許文献2には、記録面からの戻り光束を回折し受光素子に導くためのホログラム素子と対物レンズとが一体的に駆動される光ピックアップ装置が開示されている。これによれば、対物レンズがトラッキング方向にシフトしても、検出されるトラックエラー信号にオフセット成分が含まれることはなく、しかも光源からの出射光束が分割されることなくそのまま光記録媒体の記録面に集光されるため、記録速度の高速化に対応できる。また、受光素子数の低減が可能となり、光ピックアップ装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。しかしながら、この光ピックアップ装置では、受光素子の出力信号から対物レンズのトラッキング方向に関する位置が検出できないという不都合があった。
【0010】
【特許文献1】特許第1756739号公報
【特許文献2】特許第2675555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、光源からの出射光束を分割せず、しかも大型化及び高コスト化を招くことなく、対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く求めることができる光ピックアップ装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、光ディスクへのアクセスを精度良くしかも安定して行うことができる光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1の観点からすると、ピックアップハウジングに固定された光源からの光束を前記ピックアップハウジングに対してトラッキング方向へ移動可能な対物レンズにより光ディスクに集光し、前記光ディスクで反射し前記対物レンズを介した光束を、前記対物レンズと一体に固定されている分岐光学素子により複数の光束へ分割すると共に偏向し、前記光源から前記対物レンズへ向かう光路から分離して前記ピックアップハウジングに固定されている受光素子へ入射させる光ピックアップ装置において、前記受光素子は、前記分岐光学素子により分割された複数の光束のうち少なくとも一つの光束を受光してフォーカスエラー信号を検出するフォーカスエラー検出用の受光領域を有するとともに、トラッキング方向と異なる方向に延びる分割線により2分割された2つの部分受光領域からなる分割受光領域組を少なくとも一組有し、前記分岐光学素子により分割された複数の光束のうちフォーカスエラー検出用の光束とは別の光束が前記分割受光領域組の分割線上に入射し、前記分割受光領域組の作動出力に基づいて前記対物レンズと前記ピックアップハウジングとの相対位置に関する制御を行う制御装置を備えることを特徴とする光ピックアップ装置である。
【0014】
これによれば、光ディスクで反射し対物レンズを介した光束は、分岐光学素子により複数の光束へ分割され、偏向され、光源から対物レンズへ向かう光路から分離されて、ピックアップハウジングに固定されている受光素子に入射する。この受光素子は、分岐光学素子により分割された複数の光束のうち少なくとも一つの光束を受光してフォーカスエラー信号を検出するフォーカスエラー検出用の受光領域を有するとともに、トラッキング方向と異なる方向に延びる分割線により2分割された2つの部分受光領域からなる分割受光領域組を少なくとも一組有し、分岐光学素子により分割された複数の光束のうちフォーカスエラー検出用の光束とは別の光束が分割受光領域組の分割線上に入射するように構成されている。従って、光源からの出射光束を分割せず、しかも大型化及び高コスト化を招くことなく、制御装置により対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く求めることが可能となる。
【0015】
本発明は、第2の観点からすると、光ディスクに対して、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう光ディスク装置であって、本発明の光ピックアップ装置と;前記光ピックアップ装置の受光素子の出力信号を用いて、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう処理装置と;を備える光ディスク装置である。
【0016】
これによれば、本発明の光ピックアップ装置を備えているため、結果として、大型化及び高コスト化を招くことなく、光ディスクへのアクセスを精度良くしかも安定して行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0018】
図1には、本発明に係る光ピックアップ装置を備える一実施形態に係る光ディスク装置20の概略構成が示されている。
【0019】
この図1に示される光ディスク装置20は、光記録媒体としての光ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、レーザコントロール回路24、エンコーダ25、モータドライバ27、再生信号処理回路28、サーボコントローラ33、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、ROM39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0020】
前記光ピックアップ装置23は、光ディスク15のスパイラル状又は同心円状のトラックが形成された記録面にレーザ光を照射するとともに、記録面からの反射光を受光するための装置である。なお、この光ピックアップ装置23の構成等については後に詳述する。
【0021】
前記再生信号処理回路28では、光ピックアップ装置23の出力信号である電流信号を電圧信号に変換し、該電圧信号に基づいてウォブル信号、再生情報を含むRF信号及びサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号、レンズ位置信号)などを検出する。そして、再生信号処理回路28では、ウォブル信号からアドレス情報及び同期信号などを抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号はエンコーダ25に出力される。さらに、再生信号処理回路28では、RF信号に対して誤り訂正処理等を行なった後、バッファマネージャ37を介してバッファRAM34に格納する。なお、フォーカスエラー信号及びトラックエラー信号は再生信号処理回路28からサーボコントローラ33に出力され、レンズ位置信号はCPU40及びサーボコントローラ33に出力される。
【0022】
前記サーボコントローラ33では、サーボ信号に基づいて光ピックアップ装置23を制御する制御信号を生成し、モータドライバ27に出力する。モータドライバ27では、サーボコントローラ33からの制御信号及びCPU40の指示に基づいて光ピックアップ装置23及びスピンドルモータ22を制御する。
【0023】
前記バッファマネージャ37では、バッファRAM34へのデータの入出力を管理し、蓄積されたデータ量が所定の値になるとCPU40に通知する。
【0024】
前記エンコーダ25では、CPU40の指示に基づいてバッファRAM34に蓄積されているデータをバッファマネージャ37を介して取り出し、エラー訂正コードの付加などを行ない、光ディスク15への書き込みデータを作成する。そして、エンコーダ25では、CPU40からの指示に基づいて、再生信号処理回路28からの同期信号に同期して書き込みデータをレーザコントロール回路24に出力する。レーザコントロール回路24では、エンコーダ25からの書き込みデータに基づいて光ピックアップ装置23からのレーザ光出力を制御する。
【0025】
前記インターフェース38は、ホスト(例えば、パーソナルコンピュータ)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)及びSCSI(Small Computer System Interface)等の標準インターフェースに準拠している。
【0026】
前記ROM39には、CPU40にて解読可能なコードで記述されたプログラムが格納されている。CPU40は、ROM39に格納されている前記プログラムに従って上記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータ等を一時的にRAM41に保存する。
【0027】
次に、前記光ピックアップ装置23の構成等について図2に基づいて説明する。
【0028】
光ピックアップ装置23は、図2に示されるように、ピックアップハウジング53、受発光モジュール61、対物レンズアクチュエータ62、カップリングレンズ52、立ち上げミラー54及びシークモータ69などを備えている。
【0029】
受発光モジュール61は、光源としての半導体レーザ51と第1の受光器59とを含んで構成されている。
【0030】
ピックアップハウジング53は、シャーシ(図示省略)に固定されたシークシャフト58により光ディスク15の半径方向(Z軸方向)へ移動自在に支持され、シークモータ69により駆動される。
【0031】
対物レンズアクチュエータ62は、対物レンズ60、λ/4板55及び第1の偏光ホログラム素子57(分岐光学素子)を含んで構成されている。対物レンズアクチュエータ62は、ピックアップハウジング53に固定された固定部65と支持ワイヤー67を介して連結されている。対物レンズアクチュエータ62は、支持ワイヤー67が撓むことによってピックアップハウジング53に対してトラッキング方向(Z軸方向)と光ディスク15の記録面に対して垂直方向(Y軸方向、以下、適宜「フォーカス方向」ともいう)に移動可能となっている。
【0032】
第1の偏光ホログラム素子57は、図3(A)に示されるように、対物レンズ60のトラッキング方向の分割線DY1によって2つの回折領域(分割領域)に分割され、さらに分割線DY1の+X側の回折領域がトラッキング方向に直交するX方向の2本の分割線によって3つの回折領域に分割されている。すなわち、第1の偏光ホログラム素子57は、分割線DY1の−X側の回折領域57aと分割線DY1の+X側の3つの回折領域57b、57c、57dとから構成されている。従って、第1の偏光ホログラム素子57では、入射される光束は4つの光束に分割される。4つの分割光束それぞれの回折方向(分岐方向)は互いに異なり、例えば回折領域57aからの分割光束は、図4(A)に示されるように、YZ平面内において−Z方向に回折される。なお、ここでは便宜上、図4(B)において矢印Daで示されるように、第1の偏光ホログラム素子57の受光面、すなわちXZ平面上に分割光束を写像した際の分割光束の方向を用いて、回折領域57aからの分割光束の回折方向を示すものとする。同様にして回折領域57bからの分割光束の回折方向をDb、回折領域57cからの分割光束の回折方向をDc、回折領域57dからの分割光束の回折方向をDdで示す。また図6〜図8においても、偏光ホログラム素子の各回折領域内の矢印は、分割光束の回折方向を示すものとする。そして、回折領域57dは分割光束(回折光)の発散の度合いを変更するレンズ作用を有している。また、第1の偏光ホログラム素子57は、図3(B)に示されるように、光ディスク15の記録面にて反射された光束(戻り光束)が、その受光面のほぼ中央部で受光されるように配置されている。なお、本第1の実施形態では、第1の偏光ホログラム素子57はS偏光の光束に対しては低い回折効率を有し、P偏光の光束に対しては高い回折効率を有するものとする。
【0033】
第1の受光器59は、一例として図3(C)に示されるように、回折領域57aからの回折光を受光する受光素子59a、回折領域57bからの回折光を受光する受光素子59b、回折領域57cからの回折光を受光する受光素子59c及び回折領域57dからの回折光を受光する受光素子59dを含んで構成されている。ここで受光素子59aは、トラッキング方向に対応する方向(第2の方向)の分割線によって2分割された2分割受光素子(部分受光素子59a、部分受光素子59a)である。また受光素子59d(第2の受光素子)は、その受光面の中心を含みトラッキング方向に対応する方向とは異なる方向(第3の方向)の分割線によって2分割された2分割受光素子(部分受光素子59d、部分受光素子59d)である。受光素子59b、59cそれぞれは分割されていない受光素子である。なお、回折領域57aでは、回折光の分岐方向が受光素子59aの分割線の方向に対応する方向とほぼ一致するように設定されている。同様に回折領域57dでは、回折光の分岐方向が受光素子59dの分割線の方向に対応する方向とほぼ一致するように設定されている。さらに、回折領域57dでは、対物レンズ60がトラッキング方向にシフトした際に、そのシフトが所定の移動可能範囲内であれば、受光素子59dの受光面における光スポットが常に分割線に掛かるように戻り光束の発散の度合いを変更する。すなわち、回折領域57dからの回折光はデフォーカス状態で受光される。なお、各受光素子は、対物レンズ60が基準位置にあり、さらに対物レンズ60の焦点位置に光ディスク15の記録面がある場合に、その受光面の中央部で回折光が受光されるように配置されている。
【0034】
次に、前述のようにして構成された光ディスク装置20を用いて光ディスク15をアクセスする際の対物レンズ60の位置制御について説明する。
【0035】
半導体レーザ51から出射された直線偏光(S偏光)の光束は、カップリングレンズ52で略平行光となり、立ち上げミラー54にてその光軸が+Y方向に折り曲げられ、第1の偏光ホログラム素子57に入射される。第1の偏光ホログラム素子57ではS偏光の光束に対する回折効率が低いので、その入射光束の殆どは透過される。第1の偏光ホログラム素子57を透過した光束は、さらにλ/4板55にて円偏光とされた後、対物レンズ60を介して光ディスク15の記録面に微小スポットとして集光される。
【0036】
光ディスク15の記録面にて反射された光束(戻り光束)は、往路とは反対回りの円偏光となり、対物レンズ60で再び略平行光とされ、λ/4板55にて円偏光から直線偏光(P偏光)に変換された後、第1の偏光ホログラム素子57に入射される。第1の偏光ホログラム素子57ではP偏光の光束に対する回折効率が高いので、戻り光束は高効率で回折される。各回折領域からの回折光は、それぞれ立ち上げミラー54にてその光軸が+X方向に折り曲げられ、カップリングレンズ52を介して第1の受光器59に入射される。第1の受光器59を構成する各受光素子では、光電変換による光電変換信号として、受光量に応じた電流(電流信号)をそれぞれ再生信号処理回路28に出力する。
【0037】
再生信号処理回路28では、各受光素子からの電流信号を電圧信号に変換し、次の(1)式に基づいてフォーカスエラー信号FEを検出する。すなわち、いわゆるナイフエッジ法によりフォーカスエラー信号FEを検出する。ここでSaは部分受光素子59aの出力信号であり、Saは部分受光素子59aの出力信号である。
【0038】
FE=Sa1-Sa2 ……(1)
【0039】
そして、再生信号処理回路28では、そのフォーカスエラー信号FEをサーボコントローラ33に出力する。サーボコントローラ33では、再生信号処理回路28からのフォーカスエラー信号FEに基づいて、モータドライバ27を介して光ピックアップ装置23の対物レンズアクチュエータ62をフォーカス方向に駆動し、フォーカスずれを補正する。すなわち、フォーカス制御が行われる。
【0040】
さらに、再生信号処理回路28では、次の(2)式に基づいてトラックエラー信号TEを検出する。ここでSbは受光素子59bの出力信号であり、Scは受光素子59cの出力信号である。
【0041】
TE=Sb-Sc ……(2)
【0042】
そして、再生信号処理回路28では、そのトラックエラー信号TEをサーボコントローラ33に出力する。サーボコントローラ33では、再生信号処理回路28からのトラックエラー信号TEに基づいて、モータドライバ27を介して光ピックアップ装置23の対物レンズアクチュエータ62をトラッキング方向に駆動し、トラックずれを補正する。すなわち、トラッキング制御が行われる。
【0043】
また、再生信号処理回路28では、次の(3)式に基づいて対物レンズ60のレンズ位置信号LPを検出する。このレンズ位置信号LPは、再生信号処理回路28からCPU40及びサーボコントローラ33に出力される。ここでSdは部分受光素子59dの出力信号であり、Sdは部分受光素子59dの出力信号である。
【0044】
LP=Sd1-Sd2 ……(3)
【0045】
次に、前述の光ディスク装置20を用いて、光ディスク15にデータを記録する場合の処理動作について簡単に説明する。
【0046】
CPU40では、ホストから記録要求を受信すると、記録速度に基づいてスピンドルモータ22の回転を制御するための制御信号をモータドライバ27に出力するとともに、ホストから記録要求を受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。そして光ディスク15の回転が所定の線速度に達すると、再生信号処理回路28では光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいてアドレス情報、フォーカスエラー信号FE、トラックエラー信号TE及びレンズ位置信号LPを検出する。アドレス情報は再生信号処理回路28からCPU40に出力される。フォーカスエラー信号FE及びトラックエラー信号TEはサーボコントローラ33に出力され、上述の如くトラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。また、レンズ位置信号LPは、再生信号処理回路28からCPU40及びサーボコントローラ33に出力される。
【0047】
CPU40では、ホストからデータを受信すると、バッファマネージャ37を介してバッファRAM34にその受信データを蓄積する。バッファRAM34に蓄積されたデータ量が所定の値を超えると、バッファマネージャ37はCPU40に通知する。
【0048】
CPU40では、バッファマネージャ37からの通知を受け取ると、エンコーダ25に書き込みデータの作成を指示する。そして、CPU40では、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて所定の書き込み開始地点に光ピックアップ装置23が位置するように光ピックアップ装置23のシーク動作を指示する信号をモータドライバ27に出力する。なお、サーボコントローラ33では、再生信号処理回路28からのレンズ位置信号LPに基づいて、シーク動作中に対物レンズ60が基準位置にホールドされるように、モータドライバ27を介して対物レンズアクチュエータ62を制御する。
【0049】
CPU40では、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて、光ピックアップ装置23の位置が書き込み開始地点であると判断すると、エンコーダ25に通知する。そして、エンコーダ25では、レーザコントロール回路24及び光ピックアップ装置23を介して書き込みデータを光ディスク15に記録する。
【0050】
なお、記録処理が終了するまで、トラッキング制御及びフォーカス制御が随時行われる。また、CPU40では随時、再生信号処理回路28からのレンズ位置信号LPを参照し、対物レンズ60のシフト量が所定の値よりも大きくなると、シークモータ69を駆動するとともに対物レンズ60を基準位置に戻すようにサーボコントローラ33に指示する。
【0051】
次に、前述した光ディスク装置20を用いて、光ディスク15に記録されているデータを再生する場合の処理動作について簡単に説明する。
【0052】
CPU40では、ホストから再生要求を受信すると、再生速度に基づいてスピンドルモータ22の回転を制御するための制御信号をモータドライバ27に出力するとともに、ホストから再生要求を受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。そして、光ディスク15の回転が所定の線速度に達すると、再生信号処理回路28では、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいてアドレス情報、フォーカスエラー信号FE、トラックエラー信号TE及びレンズ位置信号LPを検出する。アドレス情報は再生信号処理回路28からCPU40に通知される。また、フォーカスエラー信号FE及びトラックエラー信号TEはサーボコントローラ33に出力され、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。レンズ位置信号LPは、再生信号処理回路28からCPU40及びサーボコントローラ33に出力される。
【0053】
CPU40では、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて所定の読み込み開始地点に光ピックアップ装置23が位置するようにシーク動作を指示する信号をモータドライバ27に出力する。なお、サーボコントローラ33では、再生信号処理回路28からのレンズ位置信号LPに基づいて、シーク動作中に対物レンズ60が基準位置にホールドされるように、モータドライバ27を介して対物レンズアクチュエータ62を制御する。
【0054】
CPU40では、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて読み込み開始地点であるか否かをチェックし、光ピックアップ装置23の位置が読み込み開始地点であると判断すると、再生信号処理回路28に通知する。そして、再生信号処理回路28では、光ピックアップ装置23の出力信号に基づいてRF信号を検出し、誤り訂正処理等を行った後、バッファRAM34に蓄積する。
【0055】
バッファマネージャ37では、バッファRAM34に蓄積されたデータがセクタデータとして揃ったときに、インターフェース38を介してホストに転送する。
【0056】
なお、再生処理が終了するまで、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。また、CPU40では、随時再生信号処理回路28からのレンズ位置信号LPを参照し、対物レンズ60のシフト量が所定の値よりも大きくなると、シークモータ69を駆動するとともに対物レンズ60を基準位置に戻すようにサーボコントローラ33に指示する。
【0057】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光ディスク装置では、CPU40と再生信号処理回路28とから処理装置が構成されている。
【0058】
以上説明したように、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、半導体レーザ51から出射される光束は、分割されずに対物レンズ60を介して光ディスク15の記録面に集光される。従って、半導体レーザ51から出射される光束は、その光量が殆ど低下することなく光ディスク15の記録面に照射されることとなり高速記録に必要な照射光量を確保することができる。また、記録面で反射された戻り光束は対物レンズ60を介して第1の偏光ホログラム素子57に入射され、各回折領域で回折される。第1の偏光ホログラム素子57からの複数の回折光は第1の受光器59で受光される。ここで、受光素子59aはトラッキング方向に対応する方向の分割線によって2分割されているために、対物レンズ60が基準位置からトラッキング方向にシフトしても、一例として図5(A)に示されるように、受光素子59aの受光面では回折光による光スポットは分割線に沿って移動する。すなわち、部分受光素子59a,59aそれぞれからの出力信号に対物レンズ60のシフトに起因するオフセット成分(以下、適宜「レンズシフトによるオフセット成分」という)は含まれないため、フォーカスエラーに関する情報を精度良く求めることができる。また、第1の偏光ホログラム素子57は対物レンズ60と連動してシフトするため、常に戻り光束の同一部分が回折領域57b及び回折領域57cに入射されることとなり、受光素子59b、59cそれぞれにおける受光量には対物レンズ60のシフトに依存する成分は含まれない。すなわち、受光素子59b、59cそれぞれからの出力信号にレンズシフトによるオフセット成分は含まれないため、トラックエラーに関する情報を精度良く求めることができる。さらに、受光素子59dはトラッキング方向に対応する方向と異なる方向の分割線によって分割されているために、対物レンズ60と第1の偏光ホログラム素子57とが連動してトラッキング方向に移動しても、対物レンズ60のトラッキング方向の位置に関する情報を含む信号を精度良く求めることができる。従って、光源からの光束を分割せず、しかも大型化及び高コスト化を招くことなく、対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く求めることが可能となる。
【0059】
また、本第1の実施形態によると、回折領域57dでは、一例として図5(A)に示されるように、対物レンズ60がトラッキング方向にシフトした際に、そのシフトが所定の移動可能範囲内であれば、受光素子59dの受光面における光スポットが常に分割線に掛かるように戻り光束の発散の度合いを変更しているために、対物レンズ60のシフト量が大きくても対物レンズ60のトラッキング方向の位置に関する情報を求めることが可能となる。
【0060】
さらに、半導体レーザ51は温度変化等に起因して出力波長が変動する場合がある。前述の如く第1の偏光ホログラム素子57では、入射される戻り光束の波長が変動すると回折方向が変化し、それによって、第1の受光器59における各回折光の受光位置も変化する。しかしながら、本第1の実施形態によると、図5(B)に矢印で示されるように、受光素子59a、59dでは、光スポットはそれぞれ分割線に沿って移動するために、受光素子59a、59dからの出力信号には戻り光束の波長変動によるオフセット成分は含まれない。また、受光素子59b及び受光素子59cでは、戻り光束の波長変動があっても光スポットは受光面内を移動するだけなので、受光素子59b、59cからの出力信号にもオフセット成分は含まれない。従って、対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く安定して求めることが可能となる。
【0061】
また、本第1の実施形態に係る光ディスク装置によると、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE及びレンズ位置信号LPを精度良く安定して求めることができるため、正確な情報の記録及び再生を安定して行うことが可能となる。また、光源から出射される光束を分割することなく光ディスク15の記録面に照射することが可能なため、光ディスク15への高速アクセスを安定して行うことができる。さらに、光ピックアップ装置23の小型化によって、光ディスク装置自体の小型化及び消費電力の低減も促進することができ、例えば、携帯用として用いられる場合には、持ち運びが容易となり、さらに長時間の使用が可能となる。
【0062】
さらに、CPU40では、記録及び再生中に再生信号処理回路28からのレンズ位置信号LPを随時参照し、対物レンズ60のシフト量が所定の値よりも大きくなると、シークモータ69を駆動してピックアップハウジング53自体を移動させるとともに、対物レンズ60を基準位置に戻すようにサーボコントローラ33に指示している。一般的に、ピックアップハウジング53に対する対物レンズ60の可動範囲は狭く、光ディスク15の半径全域をカバーできないため、トラッキング制御においてピックアップハウジング53自体を移動させる場合がある。ピックアップハウジング53自体を移動させるタイミングを求める方法の一つとして、対物レンズアクチュエータ62をトラッキング方向に駆動するための電流(駆動電流)又は電圧(駆動電圧)の低周波成分を監視する方法がある。例えば駆動電圧の中心を0Vに設定し、駆動電圧の低周波成分が所定の閾値を超えたときにピックアップハウジング53自体を移動させる方法では、光ディスク装置20の設置方向によって対物レンズ60の自重の影響が異なり、駆動電圧が0Vの位置が必ずしも対物レンズ60の基準位置とはならない場合がある。しかしながら、本第1の実施形態では光学的に対物レンズ60のトラッキング方向に関する位置を検出しているため、光ディスク装置20の設置方向に関わらず、ピックアップハウジング53自体を移動させるタイミングを精度良く求めることができる。
【0063】
また、光ピックアップ装置23のシーク動作時には、トラックエラー信号TEに基づいてトラックの横断本数をカウントし、ピックアップハウジング53の移動量を制御している。この際にピックアップハウジング53に対する対物レンズ60のトラッキング方向に関する位置が定まっていないとトラック横断本数のカウント値に誤差が生じる。また、対物レンズ60はピックアップハウジング53に対して弾性的に支持されているので、ピックアップハウジング53の移動が終了しても、しばらくは対物レンズ60は振動しており、この振動が整定されないとトラックへの追従が開始できない。本第1の実施形態では、光学的に対物レンズ60のトラッキング方向に関する位置を検出しているので、ピックアップハウジング53の移動中に対物レンズ60の位置を正確にホールドすることができ、トラック横断本数を正確にカウントすることが可能となる。また、ピックアップハウジング53の移動中に対物レンズ60の位置を正確にホールドしているために、ピックアップハウジング53の移動が停止した後の対物レンズ60の整定時間を短縮することが可能となり、短時間でトラック追従動作へ移行することができる。
【0064】
なお、上記第1の実施形態では、上記(1)〜(3)式の演算処理が再生信号処理回路28にて行われる場合について説明しているが、これに限らず、光ピックアップ装置23に、上記(1)〜(3)式のうちの少なくとも1つの演算処理を行なう演算回路などを付加しても良い。これにより、再生信号処理回路28を簡略化することができるとともに、組み付け時の配線作業などが容易となり、作業性の向上及び作業コストの低減を図ることができる。
【0065】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を図6に基づいて説明する。
【0066】
この第2の実施形態は、図6に示されるように、前述した第1の偏光ホログラム素子57の代わりに、第2の偏光ホログラム素子71を用いる点に特徴を有する。その他、光ピックアップ装置、光ディスク装置の構成などは、前述した第1の実施形態と同様である。従って、以下においては、第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
【0067】
第2の偏光ホログラム素子71は、図6(A)に示されるように、対物レンズ60のトラッキング方向(Y方向)の分割線DY2によって2つの回折領域に分割され、さらに分割線DY2の+X側の回折領域がX方向の分割線によって2つの回折領域に分割されている。すなわち、第2の偏光ホログラム素子71は、分割線DY2の−X側の回折領域71a(第1の分割領域)と分割線DY2の+X側の2つの回折領域71b(第2の分割領域)、回折領域71c(第3の分割領域)とから構成されている。従って、第2の偏光ホログラム素子71では、入射される光束は3つの光束に分割される。各回折領域ではそれぞれの回折方向が異なるように設定されている。なお、回折領域71b、71cは、前述した第1の実施形態における回折領域57dと同様にそれぞれレンズ作用を有している。また、第2の偏光ホログラム素子71は、戻り光束が、その受光面のほぼ中央部で受光されるように配置されている。さらに、第2の偏光ホログラム素子71は、本第2の実施形態では、S偏光の光束に対しては低い回折効率を有し、P偏光の光束に対しては高い回折効率を有するものとする。
【0068】
これに伴い、第1の受光器59の代わりに、一例として図6(B)に示される第2の受光器72が用いられる。第2の受光器72は、回折領域71aからの回折光を受光する受光素子72a(第1の受光素子)、回折領域71bからの回折光を受光する受光素子72b(第2の受光素子)、回折領域71cからの回折光を受光する受光素子72c(第3の受光素子)を含んで構成されている。ここで受光素子72aは、トラッキング方向に対応する方向(第2の方向)の分割線によって2分割された2分割受光素子(部分受光素子69a、部分受光素子69a)である。また受光素子72bは、その受光面の中心を含みトラッキング方向に対応する方向とは異なる方向(第3の方向)の分割線によって2分割された2分割受光素子(部分受光素子72b、部分受光素子72b)である。同様に受光素子72cは、その受光面の中心を含みトラッキング方向に対応する方向とは異なる方向(第4の方向)の分割線によって2分割された2分割受光素子(部分受光素子72c、部分受光素子72c)である。そして、回折領域71bでは、回折光の分岐方向が受光素子72bの分割線の方向に対応する方向とほぼ一致するように設定されている。同様に回折領域71cでは、回折光の分岐方向が受光素子72cの分割線の方向に対応する方向とほぼ一致するように設定されている。なお、回折領域71bでは、対物レンズ60がトラッキング方向にシフトした際に、そのシフトが所定の移動可能範囲内であれば、受光素子72bの受光面における光スポットが常に分割線に掛かるように戻り光束の発散の度合いを変更する。同様に回折領域71cでは、対物レンズ60がトラッキング方向にシフトした際に、そのシフトが所定の移動可能範囲内であれば、受光素子72cの受光面における光スポットが常に分割線に掛かるように戻り光束の発散の度合いを変更する。すなわち、受光素子72b及び受光素子72cにはデフォーカス状態の回折光がそれぞれ受光される。また、各受光素子は、対物レンズ60がトラッキング方向に関して基準位置にあり、さらに対物レンズ60の焦点位置に光ディスク15の記録面がある場合に、その受光面の中央部で光スポットが受光されるように配置されている。
【0069】
次に、前述のようにして構成された光ディスク装置20を用いて光ディスク15をアクセスする際の対物レンズ60の位置制御について説明する。
【0070】
半導体レーザ51から出射された直線偏光(S偏光)の光束は、カップリングレンズ52で略平行光となり、立ち上げミラー54にてその光軸が+Y方向に折り曲げられ、第2の偏光ホログラム素子71に入射される。第2の偏光ホログラム素子71では、S偏光の光束に対する回折効率が低いので、その入射光束の殆どは透過される。第2の偏光ホログラム素子71を透過した光束は、さらにλ/4板55にて円偏光とされた後、対物レンズ60を介して光ディスク15の記録面に微小スポットとして集光される。
【0071】
光ディスク15の記録面にて反射した反射光束は、往路とは反対回りの円偏光となり、対物レンズ60で再び略平行光とされ、λ/4板55にて円偏光から直線偏光(P偏光)に変換された後、第2の偏光ホログラム素子71に入射される。第2の偏光ホログラム素子71ではP偏光の光束に対する回折効率が高いので、反射光束は高効率で回折される。各回折領域からの回折光は、それぞれ立ち上げミラー54にてその光軸が+X方向に折り曲げられ、カップリングレンズ52を介して第2の受光器72に入射される。第2の受光器72を構成する各受光素子では、光電変換による光電変換信号として、受光量に応じた電流信号をそれぞれ再生信号処理回路28に出力する。
【0072】
再生信号処理回路28では、各受光素子からの電流信号を電圧信号に変換し、次の(4)式に基づいてフォーカスエラー信号FEを検出する。ここでS72aは部分受光素子72aの出力信号であり、S72aは部分受光素子72aの出力信号である。
【0073】
FE=S72a1-S72a2 ……(4)
【0074】
そして、再生信号処理回路28では、そのフォーカスエラー信号FEをサーボコントローラ33に出力する。サーボコントローラ33は、再生信号処理回路28からのフォーカスエラー信号FEに基づいて、モータドライバ27を介して光ピックアップ装置23の対物レンズアクチュエータ62をフォーカス方向に駆動し、フォーカスずれを補正する。
【0075】
さらに、再生信号処理回路28では、次の(5)式に基づいてトラックエラー信号TEを検出する。ここでS72bは部分受光素子72bの出力信号であり、S72bは部分受光素子72bの出力信号であり、S72cは部分受光素子72cの出力信号であり、S72cは部分受光素子72cの出力信号である。すなわち、受光素子72bの受光量と受光素子72cの受光量との差に基づいてトラックエラー信号TEを検出する。
【0076】
TE=(S72b1+S72b2)-(S72c1+S72c2) ……(5)
【0077】
そして、再生信号処理回路28では、そのトラックエラー信号TEをサーボコントローラ33に出力する。サーボコントローラ33は、再生信号処理回路28からのトラックエラー信号TEに基づいて、モータドライバ27を介して光ピックアップ装置23の対物レンズアクチュエータ62をトラッキング方向に駆動し、トラックずれを補正する。
【0078】
また、再生信号処理回路28では、次の(6)式に基づいて対物レンズのレンズ位置信号LPを検出する。
【0079】
LP=(S72b1+S72c1)-(S72b2+S72c2) ……(6)
【0080】
また、本第2の実施形態に係る光ディスク装置20を用いて、前述した第1の実施形態と同様にして、光ディスク15に対する記録処理及び再生処理を行うことができる。
【0081】
以上説明したように、本第2の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、第2の偏光ホログラム素子71は、対物レンズ60のトラッキング方向(Y方向)の分割線DY2によって2つの回折領域に分割され、さらに分割線DY2の+X側の回折領域がX方向の分割線によって2つの回折領域71b、71cに分割されている。そして、第2の受光器72は、トラッキング方向とは異なる方向の分割線によって分割された受光素子72b、72cを備え、回折領域71bにて回折された光束が受光素子72bで受光され、回折領域71cにて回折された光束が受光素子72cで受光される。これによって、対物レンズ60のトラッキング方向の位置に関する情報を求めるための回折光をトラックエラーに関する情報を求めるための回折光と兼用するとともに、対物レンズ60のトラッキング方向の位置に関する情報を求めるための受光素子をトラックエラーに関する情報を求めるための受光素子と兼用しているため、光利用効率が向上し、受光素子72b、72cからの出力信号におけるS/N比を向上させることができる。また、受光素子の数も削減することができるために、光ピックアップ装置23の小型化及び低コスト化を促進することが可能となる。
【0082】
また、受光素子72aはトラッキング方向に対応する方向の分割線によって2分割されているために、対物レンズ60が基準位置からトラッキング方向にシフトしていても、受光素子72aの受光面では光スポットは分割線に沿って移動する。すなわち、部分受光素子72a、72aの出力信号にレンズシフトによるオフセット成分は含まれないために、フォーカスエラーに関する情報を精度良く求めることができる。さらに、第2の偏光ホログラム素子71は対物レンズ60と連動してシフトするため、常に戻り光束の同一部分が回折領域71b及び回折領域71cに入射されることとなり、受光素子72bでの受光量(部分受光素子72bでの受光量と部分受光素子72bでの受光量との和)及び受光素子72cでの受光量(部分受光素子72cでの受光量と部分受光素子72cでの受光量との和)には対物レンズ60のシフトに依存する成分は含まれない。それによりトラックエラーに関する情報を精度良く求めることができる。そして、受光素子72b、72cはトラッキング方向に対応する方向と異なる方向の分割線によって分割されているために、対物レンズ60と第2の偏光ホログラム素子71とが連動してトラッキング方向に移動しても、対物レンズ60のトラッキング方向の位置に関する情報を含む信号を精度良く求めることができる。従って、光源からの光束を分割せず、しかも大型化及び高コスト化を招くことなく、対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く求めることが可能となる。
【0083】
さらに、本第2の実施形態によると、回折領域71b、71cでは、対物レンズ60がトラッキング方向にシフトした際に、そのシフトが所定の移動可能範囲内であれば、受光素子72b、72cの受光面における光スポットが常に分割線に掛かるように戻り光束の発散の度合いを変更しているために、対物レンズ60のシフト量が大きくても対物レンズ60のトラッキング方向の位置に関する情報を求めることが可能となる。
【0084】
そして、半導体レーザ51の出力波長が変動しても、各受光素子では、光スポットはそれぞれ分割線に沿って移動するために、各受光素子からの出力信号には戻り光束の波長変動によるオフセット成分は含まれない。従って、対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く安定して求めることが可能となる。
【0085】
また、本第2の実施形態に係る光ディスク装置によると、光源から出射される光束を分割することなく光ディスク15の記録面に照射することができるとともに、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいてフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE及びレンズ位置信号LPを精度良く安定して求めることができるため、前述の第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0086】
なお、上記第2の実施形態では、上記(4)〜(6)式の演算処理が再生信号処理回路28にて行われる場合について説明しているが、これに限らず、光ピックアップ装置23に、上記(4)〜(6)式のうちの少なくとも1つの演算処理を行なう演算回路などを付加しても良い。これにより、再生信号処理回路28を簡略化することができるとともに、組み付け時の配線作業などが容易となり、作業性の向上及び作業コストの低減を図ることができる。
【0087】
また、上記第2の実施形態では、フォーカスエラー信号FEをナイフエッジ法に基づいて検出する場合について説明しているが、例えば第2の偏光ホログラム素子71に代えて、図7(A)に示されるように、第2の偏光ホログラム素子71の回折領域71aをレンズ作用を有する回折領域71dとした第3の偏光ホログラム素子71’を用いることにより、いわゆるダブルビームサイズ法によって、フォーカスエラー信号を検出することができる。なお、この場合には、第2の受光器72に代えて、一例として図7(B)に示されるような第3の受光器73が用いられることとなる。
【0088】
第3の受光器73は、回折領域71dからの+1次回折光を受光する受光素子73aと、回折領域71dからの−1次回折光を受光する受光素子73bと、回折領域71bからの回折光を受光する受光素子73b、回折領域71cからの回折光を受光する受光素子73cを含んで構成されている。ここで受光素子73aは、トラッキング方向に対応する方向の2本の分割線により3分割された3分割受光素子(部分受光素子73a、部分受光素子73a、部分受光素子73a)である。同様に受光素子73dは、トラッキング方向に対応する方向の2本の分割線により3分割された3分割受光素子(部分受光素子73d、部分受光素子73d、部分受光素子73d)である。また受光素子73bは、第2の受光器72の受光素子72bと同様に、トラッキング方向に対応する方向と異なる方向(第3の方向)の分割線によって2分割された2分割受光素子(部分受光素子73b、部分受光素子73b)である。さらに受光素子73cは、第2の受光器72の受光素子72cと同様に、トラッキング方向に対応する方向と異なる方向(第4の方向)の分割線によって2分割された2分割受光素子(部分受光素子73c、部分受光素子73c)である。
【0089】
また、回折領域71dからの+1次回折光は、受光素子73aの受光面の手前で焦点を結び、−1次回折光は、受光素子73dの受光面の後方で焦点を結ぶように設定されている。すなわち、受光素子73a、73dでは回折光はそれぞれデフォーカス状態で受光される。
【0090】
この場合には、再生信号処理回路28では、次の(7)式に基づいてフォーカスエラー信号FEが求められる。ここでS73aは部分受光素子73aの出力信号であり、S73aは部分受光素子73aの出力信号であり、S73aは部分受光素子73aの出力信号である。また、S73dは部分受光素子73dの出力信号であり、S73dは部分受光素子73dの出力信号であり、S73dは部分受光素子73dの出力信号である。
【0091】
FE=(S73a1+S73d2+S73a3)-(S73d1+S73a2+S73d3) ……(7)
【0092】
なお、光ピックアップ装置23に上記(7)の演算処理を行なう演算回路を付加しても良い。また、トラックエラー信号TE及びレンズ位置信号LPは、上記第2の実施形態と同様に、受光素子73b及び受光素子73cの出力信号に基づいて検出される。
【0093】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態を図8に基づいて説明する。
【0094】
この第3の実施形態は、図8(A)に示されるように、前述した第1の偏光ホログラム素子57の代わりに、第4の偏光ホログラム素子74を用いる点に特徴を有する。その他、光ピックアップ装置、光ディスク装置の構成などは、前述した第1の実施形態と同様である。従って、以下においては、第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
【0095】
第4の偏光ホログラム素子74は、図8(A)に示されるように、Y方向の分割線とX方向の分割線によって分割された4つの回折領域74a、74b、74c、74dから構成されている。従って、第4の偏光ホログラム素子74では、入射される光束は4つの光束に分割される。各回折領域ではそれぞれの回折方向が異なるように設定されている。なお、回折領域74b、74cはそれぞれレンズ作用を有している。そして、第4の偏光ホログラム素子74は、一例として図8(B)に示されるように、戻り光束が、その受光面のほぼ中央部で受光されるように配置されている。また、第4の偏光ホログラム素子74は、本第3の実施形態では、S偏光の光束に対しては低い回折効率を有し、P偏光の光束に対しては高い回折効率を有するものとする。
【0096】
これに伴い、第1の受光器59の代わりに、一例として図8(C)に示されるような第4の受光器75が用いられる。第4の受光器75は、回折領域74aからの回折光を受光する受光素子75a(第1の受光素子)、回折領域74bからの回折光を受光する受光素子75b(第2の受光素子)、回折領域74cからの回折光を受光する受光素子75c(第3の受光素子)、回折領域74dからの回折光を受光する受光素子75d(第4の受光素子)を含んで構成されている。ここで受光素子75aはトラッキング方向に対応する方向(第2の方向)の分割線によって2分割された2分割受光素子(部分受光素子75a、部分受光素子75a)であり、受光素子75dはトラッキング方向に対応する方向の分割線によって2分割された2分割受光素子(部分受光素子75d、部分受光素子75d)である。また受光素子75bは、その受光面の中心を含みトラッキング方向に対応する方向とは異なる方向(第3の方向)の分割線によって2分割された2分割受光素子(部分受光素子75b、部分受光素子75b)である。同様に受光素子75cは、その受光面の中心を含みトラッキング方向に対応する方向とは異なる方向(第4の方向)の分割線によって2分割された2分割受光素子(部分受光素子75c、部分受光素子75c)である。そして、回折領域74bでは、回折光の分岐方向が受光素子75bの分割線の方向に対応する方向とほぼ一致するように設定されている。同様に回折領域74cでは、回折光の分岐方向が受光素子75cの分割線の方向に対応する方向とほぼ一致するように設定されている。なお、回折領域74bでは、対物レンズ60がトラッキング方向にシフトした際に、そのシフトが所定の移動可能範囲内であれば、受光素子75bの受光面における光スポットが常に分割線に掛かるように戻り光束の発散の度合いを変更する。同様に回折領域74cでは、対物レンズ60がトラッキング方向にシフトした際に、そのシフトが所定の移動可能範囲内であれば、受光素子75cの受光面における光スポットが常に分割線に掛かるように戻り光束の発散の度合いを変更する。すなわち、受光素子75c及び受光素子75dにはデフォーカス状態で回折光がそれぞれ受光される。また、各受光素子は、対物レンズ60がトラッキング方向に関して基準位置にあり、さらに対物レンズ60の焦点位置に光ディスク15の記録面がある場合に、その受光面の中央部で各光スポットが受光されるように配置されている。
【0097】
次に、前述のようにして構成された光ディスク装置20を用いて光ディスク15をアクセスする際の対物レンズ60の位置制御について説明する。
【0098】
半導体レーザ51から出射された直線偏光(S偏光)の光束は、カップリングレンズ52で略平行光となり、立ち上げミラー56にてその光軸が+Y方向に折り曲げられ、第4の偏光ホログラム素子74に入射される。第4の偏光ホログラム素子74では、S偏光の光束に対する回折効率が低いので、その入射光束の殆どは透過される。第4の偏光ホログラム素子74を透過した光束は、さらにλ/4板55にて円偏光とされた後、対物レンズ60を介して光ディスク15の記録面に微小スポットとして集光される。
【0099】
光ディスク15の記録面にて反射した反射光束は、往路とは反対回りの円偏光となり、対物レンズ60で再び略平行光とされ、λ/4板55にて円偏光から直線偏光(P偏光)に変換された後、第4の偏光ホログラム素子74に入射される。反射光束はP偏光であるため、その殆どが第4の偏光ホログラム素子74の各回折領域で所定の方向に回折される。各回折光は、立ち上げミラー56にてその光軸が+X方向に折り曲げられ、カップリングレンズ52を介して第4の受光器75に照射される。第4の受光器75を構成する各受光素子では、光電変換による光電変換信号として、受光量に応じた電流信号を再生信号処理回路28に出力する。
【0100】
再生信号処理回路28では、各受光素子からの電流信号を電圧信号に変換し、次の(8)式に基づいてフォーカスエラー信号FEを検出する。ここでS75aは部分受光素子75aの出力信号であり、S75aは部分受光素子75aの出力信号である。また、S75dは部分受光素子75dの出力信号であり、S75dは部分受光素子75dの出力信号である。
【0101】
FE=(S75a1+S75d1)-(S75a2+S75d2) ……(8)
【0102】
そして、再生信号処理回路28では、そのフォーカスエラー信号FEをサーボコントローラ33に出力する。サーボコントローラ33は、再生信号処理回路28からのフォーカスエラー信号FEに基づいて、モータドライバ27を介して光ピックアップ装置23の対物レンズアクチュエータ64をフォーカス方向に駆動し、フォーカスずれを補正する。
【0103】
さらに、再生信号処理回路28では、次の(9)式に基づいてトラックエラー信号TEを検出する。ここでS75bは部分受光素子75bの出力信号であり、S75bは部分受光素子75bの出力信号であり、S75cは部分受光素子75cの出力信号であり、S75cは部分受光素子75cの出力信号である。
【0104】
TE=(S75a1+S75a2+S75b1+S75b2)-(S75d1+S75d2+S75c1+S75c2) ……(9)
【0105】
なお、上記トラックエラー信号TEは、いわゆるプッシュプル法によって算出されているが、いわゆる位相差法によって算出することができる。すなわち、受光素子75aの出力信号と受光素子75cの出力信号の和信号と、受光素子75bの出力信号と受光素子75dの出力信号の和信号との位相差に基づいてトラックエラー信号TEを算出しても良い。
【0106】
そして、再生信号処理回路28では、そのトラックエラー信号TEをサーボコントローラ33に出力する。サーボコントローラ33は、再生信号処理回路28からのトラックエラー信号TEに基づいて、モータドライバ27を介して光ピックアップ装置23の対物レンズアクチュエータ64をトラッキング方向に駆動し、トラックずれを補正する。
【0107】
また、再生信号処理回路28では、次の(10)式に基づいて対物レンズのレンズ位置信号LPを検出する。
【0108】
LP=(S75b1+S75c1)-(S75b2+S75c2) ……(10)
【0109】
また、本第3の実施形態に係る光ディスク装置20を用いて、前述した第1の実施形態と同様にして、光ディスク15に対する記録処理及び再生処理を行うことができる。
【0110】
以上説明したように、本第3の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、第4の偏光ホログラム素子74は、トラッキング方向及びトラックの接線方向の分割線によって4分割された4つの回折領域74a、74b、74c、74dを有し、第4の受光器75は、トラッキング方向に対応する方向とは異なる方向の分割線によって分割された受光素子75b、75cと、トラッキング方向に対応する方向の分割線によって分割された受光素子75a、75dとを備えている。そして、4つの回折領域のうちトラッキング方向に隣接する2つの回折領域74b、74cにて回折された光束が受光素子75b、75cでそれぞれ受光され、回折領域74a、74dにて回折された光束が受光素子75a、75dでそれぞれ受光される。ここで、受光素子75a、75dはトラッキング方向に対応する方向の分割線によって2分割されているために、対物レンズ60が基準位置からトラッキング方向にシフトしても、受光素子75a、75dの受光面では回折光による光スポットは分割線に沿って移動する。すなわち、受光素子75a、75dからの出力信号にレンズシフトによるオフセット成分は含まれないため、フォーカスエラーに関する情報を精度良く求めることができる。さらに、受光素子75b、75cはトラッキング方向に対応する方向と異なる方向の分割線によって分割されているために、対物レンズ60と第4の偏光ホログラム素子74とが連動してトラッキング方向に移動しても、対物レンズ60のトラッキング方向の位置に関する情報を含む信号を精度良く求めることができる。また、第4の偏光ホログラム素子74は対物レンズ60と連動してシフトするため、常に戻り光束の同一部分が各回折領域に入射されることとなり、受光素子75aでの受光量(部分受光素子75aでの受光量と部分受光素子75aでの受光量との和)、受光素子75bでの受光量(部分受光素子75bでの受光量と部分受光素子75bでの受光量との和)、受光素子75cでの受光量(部分受光素子75cでの受光量と部分受光素子75cでの受光量との和)及び、受光素子75dでの受光量(部分受光素子75dでの受光量と部分受光素子75dでの受光量との和)には対物レンズ60のシフトに依存する成分は含まれない。従って、光源からの光束を分割せず、しかも大型化及び高コスト化を招くことなく、対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く求めることが可能となる。
【0111】
また、本第3の実施形態によると、回折領域74bでは、対物レンズ60がトラッキング方向にシフトした際に、そのシフトが所定の移動可能範囲内であれば、受光素子75bの受光面における光スポットが常に分割線に掛かるように戻り光束の発散の度合いを変更し、回折領域74cでは、対物レンズ60がトラッキング方向にシフトした際に、そのシフトが所定の移動可能範囲内であれば、受光素子75cの受光面における光スポットが常に分割線に掛かるように戻り光束の発散の度合いを変更している。従って、対物レンズ60のシフト量が大きくても対物レンズ60のトラッキング方向の位置に関する情報を求めることが可能となる。
【0112】
さらに、半導体レーザ51の出力波長が変動しても、各受光素子では、光スポットはそれぞれ分割線に沿って移動するために、各受光素子からの出力信号には戻り光束の波長変動によるオフセット成分は含まれない。従って、対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く安定して求めることが可能となる。
【0113】
また、本第3の実施形態に係る光ディスク装置によると、光源から出射される光束を分割することなく光ディスク15の記録面に照射することができるとともに、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいてフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE及びレンズ位置信号LPを精度良く安定して求めることができるため、前述の第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0114】
さらに、各受光素子からの出力信号にはトラックエラーに関する情報が含まれることとなり、例えばDVD−ROMのようにプッシュプル信号ではトラックエラー信号が検出しにくい光ディスクに対しては位相差法でトラックエラー信号を検出し、記録可能な光ディスクの未記録領域のように位相差法ではトラッキングエラー信号が検出しにくい場合にはプッシュプル法でトラッキングエラー信号を検出することが可能となり、複数種類の光ディスクに対応することができる。
【0115】
なお、上記第3の実施形態では、上記(8)〜(10)式の演算処理が再生信号処理回路28にて行われる場合について説明しているが、これに限らず、光ピックアップ装置23に、上記(8)〜(10)式のうちの少なくとも1つの演算処理を行なう演算回路などを付加しても良い。これにより、再生信号処理回路28を簡略化することができるとともに、組み付け時の配線作業などが容易となり、作業性の向上及び作業コストの低減を図ることができる。
【0116】
また、上記各実施形態によると、分岐光学素子としてホログラム素子を用いているために、分岐光学素子を小さくすることができ、光ピックアップ装置の小型化を促進することが可能となる。
【0117】
さらに、ホログラムとして光源から出射される光束の偏光方向に対して低い回折効率を有する偏光ホログラム素子を用いているために、光源から出射された光束は偏光ホログラム素子を高効率で透過し、光ディスク15の記録面に照射される光の光量低下が極めて少なくなる。従って、記録速度の高速化に対応することが容易となる。さらに、偏光ホログラム素子は戻り光束の偏光方向に対して高い回折効率を有しているために、戻り光束の回折時における光量のロスが減少するため、各受光素子での受光量が増加し、結果として信号のS/N比を向上させることができる。従って、対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く求めることが可能となる。なお、上記各実施形態では、光源から出射される光束がS偏光であり、S偏光の光束に対しては低い回折効率を有し、P偏光の光束に対しては高い回折効率を有する偏光ホログラム素子を用いているが、本発明がこれに限定されるものではなく、光源から出射される光束がP偏光の場合には、勿論、P偏光の光束に対しては低い回折効率を有し、S偏光の光束に対しては高い回折効率を有する偏光ホログラム素子が用いられることとなる。
【0118】
一般に偏光ホログラム素子は複屈折性を有する材料を格子形状に加工することにより、あるいは波長よりピッチの小さい格子を加工することにより製造することができる。複屈折性を有する材料としてはLiNbO結晶や液晶があるが、薄い膜で複屈折性を有する透明な有機材料の延伸膜、例えばポリイミドやPETは、Δn=0.06〜0.1程度の複屈折性を有し、屈折率が1.6程度であるため、格子加工後のオーバーコート材料も安価なものを用いることができ、低コスト化が容易である。
【0119】
なお、上記各実施形態では、分岐光学素子として偏光方向によって回折効率が異なる偏光ホログラム素子を用いる場合について説明しているが、これに限らず無偏光のホログラム素子を用いても良い。但し、無偏光のホログラム素子を対物レンズ60の近くに配置すると、ホログラム素子で回折された光も光ディスク15の記録面に照射され、その反射光が受光素子に戻ってきて正規の戻り光束の検出に悪影響を与える場合がある。また、ホログラム素子以外の分岐光学素子を用いても良い。
【0120】
また、上記各実施形態における偏光ホログラム素子は、それらに限定されるものではなく、同様な効果が得られるものであれば良い。
【0121】
さらに、上記第2及び第3の実施形態では、第3の方向と第4の方向とが異なる場合について説明しているが、これに限らず、第3の方向と第4の方向とが同一であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上説明したように、本発明の光ピックアップ装置によれば、光源からの光束を分割せず、しかも大型化及び高コスト化を招くことなく、対物レンズの位置制御に関する情報を精度良く検出するのに適している。また、本発明の光ディスク装置によれば、大型化及び高コスト化を招くことなく、光ディスクへのアクセスを精度良くしかも安定して行うのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】光ピックアップ装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図3(A)及び図3(B)は、それぞれ第1の実施形態におけるホログラム素子の構成を説明するための図であり、図3(C)は第1の実施形態における受光器の構成を説明するための図である。
【図4】図4(A)及び図4(B)は、それぞれホログラム素子を構成する各回折領域での回折方向を説明するための図である。
【図5】図5(A)及び図5(B)は、それぞれ受光器を構成する各受光素子における光スポットの受光位置を説明するための図である。
【図6】図6(A)及び図6(B)は、それぞれ第2の実施形態におけるホログラム素子の構成を説明するための図であり、図6(C)は第2の実施形態における受光器の構成を説明するための図である。
【図7】図7(A)及び図7(B)は、それぞれ第2の実施形態の変形例を説明するための図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、それぞれ第3の実施形態におけるホログラム素子の構成を説明するための図であり、図8(C)は第3の実施形態における受光器の構成を説明するための図である。
【符号の説明】
【0124】
15…光ディスク(光記録媒体)、20…光ディスク装置、23…光ピックアップ装置、28…再生信号処理回路(処理装置の一部)、40…CPU(制御装置、処理装置の一部)、51…半導体レーザ(光源)、57…第1のホログラム素子(分岐光学素子)、59d…部分受光素子(受光素子の一部)、60…対物レンズ、71…第2のホログラム素子(分岐光学素子)、71’…第3のホログラム素子(分岐光学素子)、72a…部分受光素子(受光素子の一部)、72b…部分受光素子(受光素子の一部)、72c…部分受光素子(受光素子の一部)、74…第4のホログラム素子(分岐光学素子)、75a…部分受光素子(受光素子の一部)、75b…部分受光素子(受光素子の一部)、75c…部分受光素子(受光素子の一部)、75d…部分受光素子(受光素子の一部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピックアップハウジングに固定された光源からの光束を前記ピックアップハウジングに対してトラッキング方向へ移動可能な対物レンズにより光ディスクに集光し、前記光ディスクで反射し前記対物レンズを介した光束を、前記対物レンズと一体に固定されている分岐光学素子により複数の光束へ分割すると共に偏向し、前記光源から前記対物レンズへ向かう光路から分離して前記ピックアップハウジングに固定されている受光素子へ入射させる光ピックアップ装置において、
前記受光素子は、前記分岐光学素子により分割された複数の光束のうち少なくとも一つの光束を受光してフォーカスエラー信号を検出するフォーカスエラー検出用の受光領域を有するとともに、トラッキング方向と異なる方向に延びる分割線により2分割された2つの部分受光領域からなる分割受光領域組を少なくとも一組有し、
前記分岐光学素子により分割された複数の光束のうちフォーカスエラー検出用の光束とは別の光束が前記分割受光領域組の分割線上に入射し、
前記分割受光領域組の作動出力に基づいて前記対物レンズと前記ピックアップハウジングとの相対位置に関する制御を行う制御装置を備えることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
光ディスクに対して、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう光ディスク装置であって、
請求項1に記載の光ピックアップ装置と;
前記光ピックアップ装置の受光素子の出力信号を用いて、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう処理装置と;を備える光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−188639(P2007−188639A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110583(P2007−110583)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【分割の表示】特願2002−992(P2002−992)の分割
【原出願日】平成14年1月8日(2002.1.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】