説明

光ピックアップ装置用の対物レンズ及び光ピックアップ装置

【課題】ガラス転移点温度が低くL1/L2値が大きいガラスを用いて形成したにもかかわらず、トラッキングやフォーカシング時の応答性を高め、アクチュエータの負担を減少させ、省エネを図ることができる対物レンズ及びそれを用いた光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】(1)式を満たすことで、比較的小径で軸上厚の薄い対物レンズを形成できるため、対物レンズの質量を減少させることにより、トラッキングやフォーカシング時の応答性を高め、アクチュエータの負担を減少させ、省エネを図ることができる。
1.10≦d/f≦1.29 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ピックアップ装置用の対物レンズ及び光ピックアップ装置に関し、より詳細には、中屈折率且つ低分散の光学定数を有し、プレス成形に適した光学ガラスから成形された光ピックアップ装置用の対物レンズ及びそれを用いた光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、波長400nm程度の青紫色半導体レーザを用いて、情報の記録及び/又は再生(以下、「記録及び/又は再生」を「記録/再生」と記載する)を行える高密度光ディスクシステムの研究・開発が急速に進んでいる。一例として、NA0.85、光源波長405nmの仕様で情報記録/再生を行う光ディスク、いわゆるBlu−ray Disc(以下、BDという)では、DVD(NA0.6、光源波長650nm、記憶容量4、7GB)と同じ大きさである直径12cmの光ディスクに対して、1層あたり23〜27GBの情報の記録が可能である。このような光ディスクを高密度光ディスクと呼ぶ。
【0003】
このような高密度光ディスクシステムにおいて、レーザの短波長化や対物レンズの高NA化が図られてくると、CDやDVDのごとき従来の光ディスクに対して情報の記録又は再生を行うような比較的長波長のレーザと低NAの対物レンズとの組み合わせからなる光ピックアップ装置ではほとんど無視できる問題でもより顕在化されることが予想される。レーザの短波長化と対物レンズの高NA化の組み合わせにおいて顕在化する別な問題は、温度・湿度変化による光学系の球面収差の変動である。すなわち、一般的に使用されているプラスチックは温度や湿度変化を受けて変形しやすく、また屈折率が大きく変化しやすいという特性を有するが、従来のCDやDVD用の光ピックアップ装置においては、レーザ光の波長が比較的長く、開口数NAも小さいため、プラスチック製の対物レンズであっても、屈折率変化による球面収差の変動は特に問題とならなかった。これに対し、BD用の光ピックアップ装置においては、レーザ光の波長が400nm前後と短波長であり、開口数NAも0.8以上と高NAとなるため、従来の光ピックアップ装置では問題にならなかったプラスチック製の対物レンズにおける屈折率変化による球面収差の変動も、無視できない量となる。
【0004】
これに対し特許文献1には、温度変化や湿度変化に対する屈折率変化が少ないガラス素材を用いて対物レンズを形成することで、かかる問題を解消する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-324673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、ガラスを用いて対物レンズを形成する際の問題点としては、樹脂に対してガラスのガラス転移温度が大幅に高いため、金型の寿命を短くするということがある。又、従前より用いられていたガラス材料は、ビッカース圧子を押し込むことにより得られる圧痕の対角線長さL1を、当該圧痕の四隅から伸びるき裂の長さL2で除した値(L1/L2)が、樹脂に比べると小さく、従って脆いという問題もある。これに対し、ガラス転移温度を低くし、且つL1/L2値を大きく確保したガラスも開発されつつある。
【0007】
しかしながら、そのようなガラスは比重が高い傾向があり、特にBD用の対物レンズは軸上厚が厚いこともあり、かかるガラスを用いて形成した対物レンズの質量が増大するために、トラッキングやフォーカシング時の応答性が低下することに加え、対物レンズ駆動用のアクチュエータの負担が増大し、省エネが図れないという問題を招く。一方、光ピックアップ装置の構成上、ある程度のワーキングディスタンスを確保したいという要請もある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ガラス転移点温度が低くL1/L2値が大きいガラスを用いて形成したにもかかわらず、トラッキングやフォーカシング時の応答性を高め、アクチュエータの負担を減少させ、省エネを図ることができ、さらにワーキングディスタンスも長めに確保することが可能となる対物レンズ及びそれを用いた光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、
波長λ1(380nm<λ1<420nm)の光束を出射する光源と、前記光束を光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物レンズと、前記光ディスクの情報記録面上で反射した光を受光する受光素子とを有し、前記光束を前記光ディスクの情報記録面上に集光することによって情報の記録及び/または再生を行う光ピックアップ装置用の対物レンズであって、
前記対物レンズの像側開口数(NA)は0.8以上であり、
前記対物レンズは単玉であって、ガラス素材から形成されており、
前記対物レンズの軸上厚をd(mm)とし、前記対物レンズの前記波長λ1における焦点距離をf(mm)としたときに、
1.00≦d/f≦1.29 (1)
を満たし、
更に前記対物レンズを形成するガラス素材が、ガラス成分全体に対する質量%で、
25:35〜45質量%(但し、45質量%を含まない)、
23:0.5〜10質量%(但し、10質量%を含まない)、
Al23:0〜16質量%、
SiO2:0〜2.5質量%、
BaO:0〜26質量%、
SrO:0〜20質量%、
ZnO:23〜50質量%、
CaO:6〜20質量%(但し、6質量%を含まない)、
MgO:0〜16質量%、
(但し、BaO、SrO、ZnO、CaO及びMgOの合計含有量は、29質量%以上、55質量%以下)
Li2O:0〜1質量%(但し、1%を含まない)、
Na2O:3〜19質量%、
2O:0〜20質量%、
(但し、Li2O、Na2O及びK2Oの合計含有量は、3質量%以上、24質量%以下)
の各ガラス成分を含有することを特徴とする。
【0010】
25系のガラスにおいて、ZnOを多く含有させることにより、所定の光学定数を維持し、かつ、靱性を大きく低下させることなく、ガラス転移温度Tgを下げることができる。更に、Li2Oの含有量を1質量%未満に抑制した上で、R'2O成分(R'=Li、Na、K)を合計量を限定することで、靱性を大きく向上できる。その上で、B23を所定量含有させることにより、ガラス転移温度Tgが低く、靱性が高くてクラック(き裂)が入りにくいガラスが得られる。加えて、耐候性を向上させるため、CaOを6質量%よりも多く含有させることができる。但し、製造時の作業環境に配慮し、PbO、As23、TeO2、Sb23及びフッ化物成分は、いずれも含有しないことが望ましい。しかるに、このようなP25系のガラスの一つの問題点は比重が高いということである。そこで、本発明においては、前記対物レンズの軸上厚をd(mm)とし、前記対物レンズの前記波長λ1における焦点距離をf(mm)としたときに、
1.00≦d/f≦1.29 (1)
を満たすようにすることで、例えば比較的質量の小さなBD用の対物レンズを形成し、それによりトラッキングやフォーカシング時の応答性を高め、アクチュエータの負担を減少させ、省エネを図ることができ、さらにワーキングディスタンスを長く確保することも可能となり、フォーカシング時に素早く対物レンズを動かしたとしても、BDと対物レンズとが衝突する危険性をより少なくすることが可能となる。また、NA0.8以上という高NA、波長が380nm以上、420nm以下という短波長の条件においては、非点収差、偏心コマ収差等が大きく発生しやすくなるが、d/fの値を上記の範囲にすることにより、非点収差や偏心コマ収差が大きく発生することを防止できる。
【0011】
請求項2に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1に記載の発明において、前記対物レンズを形成するガラス素材が、ガラス成分全体に対する質量%で、
TiO2:0〜5質量%(但し、5質量%を含まない)、
ZrO2:0〜10質量%、
Ta25:0〜10質量%、
のガラス成分のうち少なくとも1種類を更に含有することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、ビッカース圧子を押し込むことにより得られる圧痕の対角線長さL1を、当該圧痕の四隅から伸びるき裂の長さL2で除した値(L1/L2)が、0.38以上であることを特徴とする。
ここで、L1=(A1+A2)/2であり、
(但し、A1、A2:直交する2方向における前記圧痕の対角線長さ)
又、L2=(B1+B2)/2である。
(但し、B1:A1方向に伸びた2本の前記き裂の両端の長さ、B2:A2方向に伸びた2本の前記き裂の両端の長さ)
【0013】
請求項4に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記対物レンズを形成するガラス素材の比重が3以上、4以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記対物レンズを形成するガラス素材の屈折率ndが、1.550以上、1.588以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記対物レンズを形成するガラス素材のアッベ数νdが、59.8以上であることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記対物レンズを形成するガラス素材のガラス転移温度Tgが、450℃以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、以下の式を満たすことを特徴とする。
1.16≦d/f≦1.27 (1’)
【0018】
請求項9に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズは、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、前記対物レンズの有効径φが、1.7mm以上、2.6mm以下であることを特徴とする。好ましくは、前記対物レンズの有効径φが、2.0mm以上、2.4mm以下である。
【0019】
請求項10に記載の光ピックアップ装置は、請求項1〜9のいずれかに記載の対物レンズを有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る光ピックアップ装置は、波長λ1の光束を出射する光源(以下、第1の光源という)を有するが、第2の光源及び/又は第3の光源を有していてもよい。さらに、本発明の光ピックアップ装置は、第2の光源から出射された波長λ2の光束を、光ディスクのガイド層に集光すると同時に、第1の光源から出射された波長λ1の光束を、光ディスクの情報記録層のいずれかの層に集光するための集光光学系を有していても良い。また、本発明の光ピックアップ装置は、光ディスクの情報記録面及びガイド層からの反射光束を受光する受光素子を有していても良い。
【0021】
BDは、NA0.85の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.1mm程度である。尚、複数の情報記録面を有するBDであってもよい。その場合、保護基板の厚さは0.1mmでない場合もある。DVDとは、NA0.60〜0.67程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが0.6mm程度であるDVD系列光ディスクの総称であり、DVD−ROM、DVD−Video、DVD−Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等を含む。また、CDとは、NA0.45〜0.53程度の対物レンズにより情報の記録/再生が行われ、保護基板の厚さが1.2mm程度であるCD系列光ディスクの総称であり、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等を含む。尚、記録密度については、BDの記録密度が最も高く、次いでHD、DVD、CDの順に低くなる。
【0022】
本明細書において、第1の光源、第2の光源、第3の光源等の光源は、好ましくはレーザ光源である。レーザ光源としては、好ましくは半導体レーザ、シリコンレーザ等を用いることが出来る。第1の光源から出射される第1光束の第1波長λ1、第2の光源から出射される第2光束の第2波長λ2(λ2>λ1)、第3の光源から出射される第3光束の第3波長λ3(λ3>λ2)は以下の条件式を満たすことが好ましい。
【0023】
1.5×λ1<λ2<1.7×λ1
1.9×λ1<λ3<2.1×λ1
【0024】
また、第1の光源の第1波長λ1は、0.38μm以上、0.42μm以下である。また、第2の光源の第2波長λ2は好ましくは0.57μm以上、0.68μm以下、より好ましくは0.63μm以上、0.67μm以下であって、第3の光源を有する場合、第3光源の第3波長λ3は好ましくは、0.75μm以上、0.88μm以下、より好ましくは、0.76μm以上、0.82μm以下である。
【0025】
また、第1の光源、第2の光源、第3の光源のうち少なくとも2つの光源をユニット化してもよい。ユニット化とは、例えば第1光源と第2光源とが1パッケージに固定収納されているようなものをいうが、これに限られず、2つの光源が収差補正不能なように固定されている状態を広く含むものである。また、光源に加えて、後述する受光素子を1パッケージ化してもよい。
【0026】
光ピックアップ装置は、光ディスクから反射した光束を受光する受光素子を有していても良い。受光素子としては、フォトダイオードなどの光検出器が好ましく用いられる。光ディスクの情報記録面上で反射した光が受光素子へ入射し、その出力信号を用いて、各光ディスクに記録された情報の読み取り信号が得られる。さらに、受光素子上のスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行い、この検出に基づいて、合焦、トラッキングのために対物レンズを移動させることが出来る。受光素子は、複数の光検出器からなっていてもよい。受光素子は、メインの光検出器とサブの光検出器を有していてもよい。例えば、情報の記録再生に用いられるメイン光を受光する光検出器の両脇に2つのサブの光検出器を設け、当該2つのサブの光検出器によってトラッキング調整用のサブ光を受光するような受光素子としてもよい。また、受光素子は各光源に対応した複数の受光素子を有していてもよい。
【0027】
光ピックアップ装置に用いる集光光学系は、対物レンズを有する。集光光学系は、対物レンズのみを有していても良いが、対物レンズの他にコリメートレンズ等のカップリングレンズを有していてもよい。カップリングレンズとは、対物レンズと光源の間に配置され、光束の発散角を変える単レンズ又はレンズ群のことをいう。コリメートレンズは、カップリングレンズの一種で、コリメートレンズに入射した光を平行光にして出射するレンズである。更に集光光学系は、光源から射出された光束を、情報の記録再生に用いられるメイン光束と、トラッキング等に用いられる二つのサブ光束とに分割する回折光学素子などの光学素子を有していてもよい。本明細書において、対物レンズとは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系を指す。好ましくは、対物レンズとは、光ピックアップ装置において光ディスクに対向する位置に配置され、光源から射出された光束を光ディスクの情報記録面上に集光する機能を有する光学系であって、更に、アクチュエータにより少なくとも光軸方向に一体的に変位可能とされた光学系を指す。
【0028】
対物レンズは、単玉の対物レンズである。また、対物レンズは、屈折面が非球面であることが好ましいが、回折面を設けていても良い。
【0029】
対物レンズは後述するガラス素材から形成されている。
【0030】
また、対物レンズを構成する材料のアッベ数は、55以上であることが好ましい。より好ましくは、59.8以上であり、更に好ましくは、60以上である。
【0031】
また、光ピックアップ装置は、光軸方向に移動可能な単玉のカップリングレンズや、単玉のコリメータレンズや、少なくとも1つの正レンズと少なくとも1つの負レンズを有し、いずれかを光軸方向に可動する2群カップリングレンズや、少なくとも1つの正レンズと少なくとも1つの負レンズを有して良いが、いずれかを光軸方向に可動するビームエキスパンダー等が挙げられる。
【0032】
対物レンズの軸上厚をd(mm)とし、対物レンズの前記波長λ1における焦点距離をf(mm)としたときに、
1.10≦d/f≦1.29 (1)
を満たすと好ましい。より好ましくは、
1.16≦d/f≦1.27 (1’)
を満たすことである。
【0033】
対物レンズを形成するガラス素材の屈折率(n)が、波長405nmにおいて1.55〜1.62(好ましくは1.55〜1.60)であることが好ましい。また、対物レンズを形成するガラス素材の屈折率ndが1.550以上、1.588以下であることが好ましい。更に、ガラス転移温度(Tg)が450℃以下であると好ましい。300℃以上であることが好ましい。
【0034】
対物レンズを形成するガラス素材の比重が3以上、4以下であると好ましい。より好ましくは、3.1以上、3.5以下とすることである。更に好ましくは、3.1以上、3.3以下とすることである。
【0035】
また、以下の条件式を満たすことが好ましい。
1.7mm≦φ≦2.6mm (2)
尚、Φは、対物レンズの有効径を表す。より好ましくは、
2.0mm≦φ≦2.4mm (2’)
を満たすことである。
【0036】
また、f/νdの値を、0より大きく、0.05以下とすることが好ましい。NA0.8以上という高NA、波長が380nm以上、420nm以下という短波長の条件においては、軸上色収差が大きく発生しやすくなるが、f/νdの値を上記の範囲にすることにより、軸上色収差が大きく発生することを防止できる。より好ましくは、f/νdの値を、0.03以下とすることである。更に好ましくは、f/νdの値を、0.025以下とすることである。
【0037】
光情報記録再生装置は、上述の光ピックアップ装置を有する光ディスクドライブ装置を有すると好ましい。
【0038】
ここで、光情報記録再生装置に装備される光ディスクドライブ装置に関して説明すると、光ディスクドライブ装置には、光ピックアップ装置等を収納している光情報記録再生装置本体から光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイのみが外部に取り出される方式と、光ピックアップ装置等が収納されている光ディスクドライブ装置本体ごと、外部に取り出される方式とがある。
【0039】
上述した各方式を用いる光情報記録再生装置には、概ね、次の構成部材が装備されているがこれに限られるものではない。ハウジング等に収納された光ピックアップ装置、光ピックアップ装置をハウジングごと光ディスクの内周あるいは外周に向けて移動させるシークモータ等の光ピックアップ装置の駆動源、光ピックアップ装置のハウジングを光ディスクの内周あるいは外周に向けてガイドするガイドレールなどを有した光ピックアップ装置の移送手段及び、光ディスクの回転駆動を行うスピンドルモータ等である。
【0040】
前者の方式には、これら各構成部材の他に、光ディスクを搭載した状態で保持可能なトレイおよびトレイを摺動させるためのローディング機構等が設けられ、後者の方式にはトレイおよびローディング機構がなく、各構成部材が外部に引き出し可能なシャーシに相当するドロワーに設けられていることが好ましい。
【0041】
以下、本発明の対物レンズに用いられるガラス素材について説明する。
【0042】
(L1/L2)について:
本明細書では、ビッカース圧子を押し込むことにより得られる圧痕の対角線長さL1を、当該圧痕の四隅から伸びるき裂の長さL2で除した値(L1/L2)を、クラック(き裂)の入りにくさ(靱性の高さ)を表す指標として用いている。ここで、L1及びL2は、それぞれ下記の式によって求める。
【0043】
L1=(A1+A2)/2
A1、A2:直交する2方向における前記圧痕の対角線長さ
L2=(B1+B2)/2
B1:A1方向に伸びた2本の前記き裂の両端の長さ
B2:A2方向に伸びた2本の前記き裂の両端の長さ
【0044】
図1は、ガラスの表面にビッカース圧子を押し込むことにより得られる圧痕(ビッカース圧痕10)の模式図である。ビッカース圧痕10の四隅から、それぞれ、き裂11a〜11dが伸びている。図1に示すように、直交する2方向におけるビッカース圧痕10の対角線長さ(A1、A2)、A1方向に伸びた2本のき裂(11a、11b)の両端の長さ(B1)、A2方向に伸びた2本のき裂(11c、11d)の両端の長さ(B2)をそれぞれ測定し、上記の式によってL1とL2を求める。上記の式から分かるように、(L1/L2)は、0〜1までの値をとり、クラック(き裂)が入りにくいほど大きくなって1に近づく。
【0045】
(ガラス成分)
次に、本発明の光学ガラスの各成分の含有量を上記のように限定した理由について、詳細に説明する。なお、特に断らない限り、各成分の含有量は、ガラス成分全体に対する含有量を表す。
【0046】
25はガラス骨格を構成する成分(ガラスフォーマー)であり、含有量が35質量%未満であるとガラスが不安定となり失透傾向が強く見られる。他方、P25の含有量が45質量%以上になると所望の光学定数が得られず、また、耐候性が著しく悪化する。そのため、P25の含有量は35〜45質量%(但し、45質量%を含まない)の範囲とする必要がある。その中でも、40〜44.5質量%の範囲がより好ましい。
【0047】
23は、ガラスを安定化する効果と、靱性(L1/L2)を高めてクラック(き裂)が入りにくくする効果とを有しており、0.5質量%以上含有させる必要がある。また、線膨張係数を小さくする効果も有している。他方、B23の含有量が10質量%以上になるとガラス転移温度Tgが上昇し、耐失透性が低下する。そのため、B23の含有量は0.5〜10質量%(但し、10質量%を含まない)の範囲とする必要がある。その中でも、1〜5質量%の範囲がより好ましい。
【0048】
Al23は、線膨張係数を小さくする効果と共に、ガラスの耐候性を向上させる効果を有している。しかし、Al23の含有量が16質量%を超えると、ガラス転移温度Tgが高くなると共に、ガラスが不安定になり耐失透性が低下する。そのため、Al23の含有量は0〜16質量%の範囲(0を含む)とする必要がある。その中でも、1〜6質量%の範囲がより好ましい。
【0049】
SiO2は、屈折率ndを下げる効果と、耐候性を向上させる効果とを有している。しかし、SiO2の含有量が2.5質量%を超えると、ガラス中に未溶物が残りやすくなる。そのため、SiO2の含有量は0〜2.5質量%の範囲(0を含む)とする必要がある。
【0050】
BaOは、屈折率ndを高める効果と、ガラスの安定性を向上させる効果とを有している。しかし、BaOの含有量が26質量%を超えると、線膨張係数が大きくなりすぎる。そのため、BaOの含有量は0〜26質量%の範囲(0を含む)とする必要がある。その中でも、1〜15質量%の範囲がより好ましい。
【0051】
SrOは、ガラスの安定性を向上させる効果を有している。しかし、SrOの含有量が20質量%を超えると、ガラスが不安定となって失透傾向が大きくなる。そのため、SrOの含有量は0〜20質量%の範囲(0を含む)とする必要がある。その中でも、0〜10質量%の範囲(0を含む)がより好ましい。
【0052】
ZnOは、靱性(L1/L2)を大きく低下させることなく、ガラス転移温度Tgを低下させる効果を有している。また、線膨張係数を増大させることもない。ZnOの含有量が23質量%未満であると、ガラス転移温度Tgを低下させる効果が十分に得られない。他方、ZnOの含有量が49質量%を超えると、ガラスの安定性が低下し失透傾向が大きくなる。そのため、ZnOの含有量は23〜49質量%の範囲とする必要がある。その中でも、23.5〜38質量%の範囲がより好ましい。
【0053】
CaOは、線膨張係数を小さくし、ガラスの化学的耐久性や耐候性を向上させる効果を有している。CaOの含有量が6質量%以下では、これらの効果が十分に得られない。他方、CaOの含有量が20質量%を超えると、ガラス転移温度Tgが上昇し、ガラスが不安定となって失透傾向が大きくなり、更に、靱性(L1/L2)も低下する。そのため、CaOの含有量は6〜20質量%(但し、6質量%を含まない)の範囲とする必要がある。その中でも、6.5〜10質量%の範囲がより好ましい。
【0054】
MgOは、線膨張係数を小さくし、ガラスの耐候性を向上させる効果を有している。しかし、MgOの含有量が16質量%を超えると、ガラスが不安定となって失透傾向が大きくなり、更に、靱性(L1/L2)も低下する。そのため、MgOの含有量は0〜16質量%の範囲(0を含む)とする必要がある。その中でも、0〜7質量%の範囲(0を含む)がより好ましい。
【0055】
ここで、上記RO成分(BaO、SrO、ZnO、CaO及びMgO)の合計含有量が55質量%を超えると、ガラスが不安定となって失透傾向が大きくなる。そのため、上記RO成分の合計含有量は55質量%以下とする必要がある。その中でも、48質量%以下がより好ましい。下限は29%であることが好ましい。
【0056】
Li2Oは、ガラス転移温度Tgを低下させる効果が非常に高い。しかし、Li2Oの含有量が1質量%以上になると、靱性(L1/L2)が著しく低下する。また、線膨張係数が大きくなり、ガラスの耐候性も大きく低下する。そのため、Li2Oの含有量は0〜1質量%の範囲(0を含む。但し、1質量%を含まない。)とする必要がある。その中でも、0.2〜0.6質量%の範囲がより好ましい。
【0057】
Na2Oは、ガラス転移温度Tgを低下させる効果を有しており、3質量%以上含有させる必要がある。他方、Na2Oの含有量が19質量%を超えると、靱性(L1/L2)が低下すると共に、化学的耐久性が低下する。そのため、Na2Oの含有量は3〜19質量%の範囲とする必要がある。その中でも、3.5〜10質量%の範囲がより好ましい。
【0058】
2Oは、Na2Oと同様に、ガラス転移温度Tgを低下させる効果を有している。しかし、K2Oの含有量が20質量%を超えると、靱性(L1/L2)が低下すると共に、耐失透性が低下する。そのため、K2Oの含有量は0〜20質量%の範囲(0を含む)とする必要がある。その中でも、1〜10質量%の範囲がより好ましい。
【0059】
ここで、上記R'2O成分(Li2O、Na2O及びK2O)の合計含有量が24質量%を超えると、靱性(L1/L2)が低下すると共に、耐候性が悪化する。そのため、上記R'2O成分の合計含有量は24質量%以下とする必要がある。その中でも、12質量%以下がより好ましい。また、下限は3%とすることが好ましい。
【0060】
TiO2は、屈折率ndを上昇させ、ガラスを安定化させる効果を有している。しかし、TiO2の含有量が5質量%以上になると、アッベ数νdが小さくなり所望の光学定数を得るのが難しくなる場合があり、また、ガラスが着色するおそれもある。そのため、TiO2の含有量は0〜5質量%の範囲(0を含む。但し、5質量%を含まない)が好ましい。
【0061】
ZrO2は、光学定数を調整する効果と、耐候性を向上させる効果とを有している。しかし、ZrO2の含有量が10質量%を超えると、所望のアッベ数νdを維持することが困難となる場合がある。そのため、ZrO2の含有量は0〜10質量%の範囲(0を含む)が好ましい。
【0062】
Ta25は、光学定数を調整する効果と、化学的耐久性を向上させる効果とを有している。しかし、Ta25の含有量が10質量%を超えると、ガラスが不安定となり失透傾向が増大する場合がある。そのため、Ta25の含有量は0〜10質量%の範囲(0を含む)が好ましい。
【0063】
本発明の光学ガラスにおいては、一般的に光学ガラスに使用されることのある成分のうち、上記以外の成分(例えば、La23、MnO、Nb23、Bi23、WO3など)は含有しないことが好ましい。但し、本発明の光学ガラスの特性に影響を与えない程度に含有することは許容される。この場合、P25、B23、Al23、SiO2、BaO、SrO、ZnO、CaO、MgO、Li2O、Na2O、K2O、TiO2、ZrO2、及びTa25の合計含有量は98質量%以上であることが好ましい。より好ましくは99質量%以上であり、さらに好ましくは99.9質量%以上である。
【0064】
PbO、As23、TeO2、及びフッ化物については、製造時の作業環境に配慮し、作業者の安全性を確保するという観点から、何れの成分も含有しないことが好ましい。
【0065】
上述したガラスは、ガラス転移温度Tgが低く、クラック(き裂)が入りにくい(L1/L2が大きい)というプレス成形法に適した特性を有しているため、プレス成形法によって生産性良く低コストで対物レンズを製造することができる。プレス成形の方法に特に制限はなく、公知の方法によって製造すればよい。プレス成形の方法は、再加熱方式でもダイレクトプレス方式でもよいが、ダイレクトプレス方式によれば、より高い生産性で光学素子を製造することができる。
【0066】
ダイレクトプレス方式では、成形金型は、光学素子に良好な光学面を転写できるように所定温度に加熱しておく必要がある。製造する光学素子の形状や大きさ等種々の条件によって異なるが、光学ガラスのガラス転移温度Tg近傍の温度に設定するのが一般的である。そのため、通常は、光学ガラスのガラス転移温度Tgが高いほど、成形金型の加熱温度を高くする必要があるため、成形金型の劣化が激しくなる。成形金型の劣化を抑える観点からは、光学ガラスのガラス転移温度Tgはできるだけ低いことが好ましい。本発明の光学ガラスは、ガラス転移温度Tgが非常に低いため、成形金型の劣化を効果的に抑制することができ、高い生産性で光学素子を製造することができるというメリットがある。
【0067】
また、ダイレクトプレス方式では、下型の上に滴下された溶融ガラス滴は、上下一対の成形金型でプレス成形される。成形金型による加圧の間、溶融ガラス滴は主に成形金型との接触面からの放熱によって急速に冷却・固化して光学素子となる。本発明の光学ガラスは、高い靱性(L1/L2)を有しているため、プレス成形の際の加圧による衝撃や、急激な温度変化を受けてもクラック(き裂)が入りにくいというメリットがある。
【発明の効果】
【0068】
本発明によれば、ガラス転移点温度が低くL1/L2値が大きいガラスを用いて形成したにもかかわらず、トラッキングやフォーカシング時の応答性を高め、アクチュエータの負担を減少させ、省エネを図ることができる対物レンズ及びそれを用いた光ピックアップ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図2は、光ディスク(光情報記録媒体ともいう)BDに対して適切に情報の記録/再生を行える本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。かかる光ピックアップ装置PU1は、各種の光情報再生装置や光情報記録再生装置等に搭載できる。光源としての半導体レーザLDと、ガラス製の単玉の対物レンズOBJとの間には、正のコリメートレンズを配置し、ている。尚、カップリング光学系は2群でも、3群以上であっても良いし、2群以上のカップリング光学系のうち1つ又は一部を取り出して、カップリングレンズと呼ぶことができる。
【0070】
半導体レーザLDから射出された発散光束は、偏光ビームスプリッタPBSを通過し、コリメートレンズCOLで平行光束とされた後、λ/4波長板QWP、絞りAPを通過し、対物レンズOBJにより、光ディスク(光情報記録媒体ともいう)BDの保護基板PL(厚さt1)を介してその情報記録面RLに集光され、ここに集光スポットを形成する。
【0071】
そして情報記録面RLで情報ピットにより変調された光束は、再び対物レンズOBJ、絞りAP、λ/4波長板QWP、コリメートレンズCOLを透過し、偏光ビームスプリッタPBSで反射され、センサレンズSENを介して光検出器PDの受光面に入射するので、その出力信号を用いて、光ディスクBDに情報記録された情報の読み取り信号が得られる。
【0072】
また、光検出器PD上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して、合焦検出やトラック検出を行う。この検出に基づいて、アクチュエータAC1が、半導体レーザLDからの光束を光ディスクBDの情報記録面上に結像するように対物レンズOBJを移動させ、フォーカシングやトラッキングを行うようになっている。
【0073】
[対物レンズの実施例]
次に、上述の実施の形態に用いることができる対物レンズとしての実施例A〜Fについて説明する。実施例A〜Fの対物レンズは図2の光ピックアップ装置に好適である。尚、これ以降(表のレンズデータ含む)において、10のべき乗数(例えば、2.5×10-3)を、E(例えば、2.5E−03)を用いて表すものとする。本実施例の対物レンズは、後述するガラスを素材とする。
【0074】
対物レンズの光学面は、それぞれ数1式に、表に示す係数を代入した数式で規定される、光軸の周りに軸対称な非球面に形成されている。
【0075】
【数1】

【0076】
表1に実施例Aのレンズデータを示す。実施例Aは、表2に示すガラス素材(比重3.26,ガラス転移温度417℃、アッベ数59.8、屈折率nd=1.58609)を用いている。又、実施例Aのd/f=1.17,像側の有効径φ=2.4mmである。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
表3に実施例Bのレンズデータを示す。実施例Bも、表2に示すガラス素材(比重3.26,ガラス転移温度417℃、アッベ数59.8、屈折率nd=1.58609)を用いている。又、実施例Bのd/f=1.17,像側の有効径φ=2.4mmである。
【0080】
【表3】

【0081】
表4に実施例Cのレンズデータを示す。実施例Cも、表2に示すガラス素材(比重3.26,ガラス転移温度417℃、アッベ数59.8、屈折率nd=1.58609)を用いている。又、実施例Cのd/f=1.16,像側の有効径φ=2.0mmである。
【0082】
【表4】

【0083】
表5に実施例Dのレンズデータを示す。実施例Dも、表2に示すガラス素材(比重3.26,ガラス転移温度417℃、アッベ数59.8、屈折率nd=1.58609)を用いている。又、実施例Dのd/f=1.16,像側の有効径φ=2.0mmである。
【0084】
【表5】

【0085】
表6に実施例Eのレンズデータを示す。実施例Eも、表2に示すガラス素材(比重3.26,ガラス転移温度417℃、アッベ数59.8、屈折率nd=1.58609)を用いている。又、実施例Eのd/f=1.27,像側の有効径φ=1.7mmである。
【0086】
【表6】

【0087】
表7に実施例Fのレンズデータを示す。実施例Fも、表2に示すガラス素材(比重3.26,ガラス転移温度417℃、アッベ数59.8、屈折率nd=1.58609)を用いている。又、実施例Fのd/f=1.27,像側の有効径φ=1.7mmである。
【0088】
【表7】

【0089】
以上の実施例によれば、比較的小径で軸上厚の薄い対物レンズを用いることで、対物レンズの質量を減少させ、それによりトラッキングやフォーカシング時の応答性を高め、アクチュエータの負担を減少させ、省エネを図ることができ、さらにワーキングディスタンスも長めに確保することが可能となる。また、d/fを1.1以上、1.29以下とすることにより、軸上厚をある程度薄くしながらも、非点収差や偏心コマ収差を小さく抑えることが可能となる。実施例A〜Fについて、各値を表8にまとめて示す。
【0090】
【表8】

【0091】
[ガラスの実施例]
以下に、対物レンズに好適なガラスの実施例について、更に具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。上述した対物レンズA〜Fの製作には、以下の実施例9のガラスを用いたが、それ以外の実施例のガラスも用いることができる。
【0092】
下記の手順に従って、本発明の組成範囲内のガラス30種類(実施例1〜30)を作製した。実施例1〜30のガラス組成を表9〜表11に示す。
【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
【表11】

【0096】
先ず、酸化物原料、炭酸塩原料、硝酸塩原料、リン酸塩原料など、一般的なガラス原料を用いて、表9〜表11に示す目標組成となるようにガラスの原料を調合し、粉末状態で十分に混合して調合原料とした。これを、900℃〜1300℃に加熱された溶融炉に投入し、溶融・清澄の後、撹拌均質化して予め加熱された鉄製の鋳型に鋳込み、徐冷して各サンプルを製造した。
【0097】
次に、製造した各サンプルについて、屈折率nd、アッベ数νd、ガラス転移温度Tg及び靱性(L1/L2)を測定した。測定結果を表9〜表11に併せて示す。
【0098】
ここで、屈折率nd、アッベ数νd、ガラス転移温度Tgの測定は、日本光学硝子工業会規格(JOGIS)に規定された試験方法に準じて行った。屈折率ndとアッベ数νdは、上述のように鋳型に鋳込んだガラスを室温(25℃)まで−2.3℃/時間の冷却速度で徐冷したサンプルを、カルニュー光学工業社製の測定装置「KPR−200」を用いて測定した。ガラス転移温度Tgは、セイコーインスツルメンツ社製の熱機械的分析装置「TMA/SS6000」を用いて、毎分10℃の昇温条件で測定した。また、靱性(L1/L2)は、アカシ社製のマイクロビッカース硬度計「HM−112」を用いて、押し込み時間15秒、押し込み荷重100gの条件でビッカース圧痕を形成した後、圧痕の対角線長さと、圧痕の四隅から伸びたき裂の長さとを光学顕微鏡を用いて測定して求めた。
【0099】
表9〜表11に示した実施例1〜30の光学ガラスは、いずれも屈折率ndが1.55〜1.62、アッベ数νdが55以上の範囲の光学定数を有していた。また、いずれも、ガラス転移温度Tgが450℃以下、(L1/L2)が0.38以上という良好な特性を有していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】ビッカース圧痕の模式図である。
【図2】光ディスクBDに対して適切に情報の記録/再生を行える本実施の形態の光ピックアップ装置PU1の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0101】
10 ビッカース圧痕
11a、11b、11c、11d き裂
AC1 アクチュエータ
AP 絞り
BD 光ディスク
COL第2のレンズ
CUL第1のレンズ
LD 半導体レーザ
OBJ 対物レンズ
OD 光ディスク
PBS 偏光ビームスプリッタ
PD 光検出器
PL 保護基板
PU1 光ピックアップ装置
QWP λ/4波長板
RL 情報記録面
SEN センサレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λ1(380nm<λ1<420nm)の光束を出射する光源と、前記光束を光ディスクの情報記録面上に集光させるための対物レンズと、前記光ディスクの情報記録面上で反射した光を受光する受光素子とを有し、前記光束を前記光ディスクの情報記録面上に集光することによって情報の記録及び/または再生を行う光ピックアップ装置用の対物レンズであって、
前記対物レンズの像側開口数(NA)は0.8以上であり、
前記対物レンズは単玉であって、ガラス素材から形成されており、
前記対物レンズの軸上厚をd(mm)とし、前記対物レンズの前記波長λ1における焦点距離をf(mm)としたときに、
1.00≦d/f≦1.29 (1)
を満たし、
更に前記対物レンズを形成するガラス素材が、ガラス成分全体に対する質量%で、
25:35〜45質量%(但し、45質量%を含まない)、
23:0.5〜10質量%(但し、10質量%を含まない)、
Al23:0〜16質量%、
SiO2:0〜2.5質量%、
BaO:0〜26質量%、
SrO:0〜20質量%、
ZnO:23〜50質量%、
CaO:6〜20質量%(但し、6質量%を含まない)、
MgO:0〜16質量%、
(但し、BaO、SrO、ZnO、CaO及びMgOの合計含有量は、29質量%以上、55質量%以下)
Li2O:0〜1質量%(但し、1%を含まない)、
Na2O:3〜19質量%、
2O:0〜20質量%、
(但し、Li2O、Na2O及びK2Oの合計含有量は、3質量%以上、24質量%以下)
の各ガラス成分を含有することを特徴とする光ピックアップ装置用の対物レンズ。
【請求項2】
前記対物レンズを形成するガラス素材が、ガラス成分全体に対する質量%で、
TiO2:0〜5質量%(但し、5質量%を含まない)、
ZrO2:0〜10質量%、
Ta25:0〜10質量%、
のガラス成分のうち少なくとも1種類を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
【請求項3】
ビッカース圧子を押し込むことにより得られる圧痕の対角線長さL1を、当該圧痕の四隅から伸びるき裂の長さL2で除した値(L1/L2)が、0.38以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
ここで、L1=(A1+A2)/2であり、
(但し、A1、A2:直交する2方向における前記圧痕の対角線長さ)
又、L2=(B1+B2)/2である。
(但し、B1:A1方向に伸びた2本の前記き裂の両端の長さ、B2:A2方向に伸びた2本の前記き裂の両端の長さ)
【請求項4】
前記対物レンズを形成するガラス素材の比重が3以上、4以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
【請求項5】
前記対物レンズを形成するガラス素材の屈折率ndが、1.550以上、1.588以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
【請求項6】
前記対物レンズを形成するガラス素材のアッベ数νdが、59.8以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
【請求項7】
前記対物レンズを形成するガラス素材のガラス転移温度Tgが、450℃以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
【請求項8】
以下の式を満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
1.16≦d/f≦1.27 (1’)
【請求項9】
前記対物レンズの有効径φが、1.7mm以上、2.6mm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光ピックアップ装置用の対物レンズ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の対物レンズを有することを特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−215443(P2010−215443A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62506(P2009−62506)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】