説明

光ファイバケーブルの分岐方法及びそれに用いる光ファイバケーブル

【課題】 外被の剥ぎ取り作業が容易になるとともに、接続対象外の心線の養生作業が不要となる光ファイバケーブルの分岐方法を得、光ファイバケーブルの分岐作業性を向上させる。
【解決手段】 軸線直交方向の断面に複数の隔壁21,23,25,27を有する長尺のスロット11と、複数の隔壁21,23,25,27で区切られてスロット11の長手方向に形成された光ファイバ収納部13と、光ファイバ収納部13に収納された複数の光ファイバ15と、を外被19で覆った光ファイバケーブル100の中間部で光ファイバ15を分岐する光ファイバケーブル100の分岐方法であって、外被19の円周方向の一部分を剥ぎ取り、光ファイバ15の少なくとも一本を取り出し、取り出した光ファイバ15とドロップケーブルを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットの光ファイバ収納部に複数の光ファイバを収納した光ファイバケーブルの中間部で、光ファイバを分岐する光ファイバケーブルの分岐方法及びそれに用いる光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速広帯域情報を送受できるようにするため、電話局から敷設した光ファイバケーブルを一般住宅などの加入者宅へ接続する引き落としが行われている。この引き落としでは、光ファイバケーブル中の光ファイバ使用効率を高めるため、光ファイバケーブルの中間から光ファイバを後分岐接続して使用することが好ましく、そのためには光ファイバを中間位置で取り出す必要がある。
【0003】
光ファイバを中間位置で取り出し可能とする光ファイバケーブルには、図8に示すスロット501に設けた光ファイバ心線503を収納するための複数の螺旋状溝(光ファイバ収納部505)の回転方向が一定であるS撚り又はZ撚りケーブル(一方向撚り光ファイバケーブル)507や、図9に示す光ファイバ収納部505の回転方向が一定周期で反転するSZ撚りケーブル509がある。なお、図中、511は抗張力体、513はスロット501の外周面に巻回され光ファイバ心線503の飛び出しを防ぐテープ、514は外被を示す。
【0004】
一方向撚り光ファイバケーブル507の場合には、例えば特許文献1に開示されるように、余長引き寄せを行いながら、外被514を剥ぎ取る方式にて分岐が行われる。すなわち、光ファイバ接続に必要な余長を確保するため、図10(a)に示すように、光ファイバケーブル507を予め引き寄せて弛み515を形成し、その後に外被514を剥ぎ取る。図10(b)に示すように、光ファイバ心線503とドロップケーブル518との接続後は、残りの全ての心線503も含めた余長を束ねて養生した上で、接続箱(クロージャ)517で光ファイバケーブル507の接続部全体を固定・養生する。図中、519は心線接続部を示す。
【0005】
また、SZ撚りケーブル509の場合は、例えば特許文献2に開示されるように、接続に必要な余長分の外被514を剥ぎ取る方式にて分岐が行われる。その後、図11に示すように、分岐対象の光ファイバ心線503を取り出して切断、ドロップケーブル518と接続する。光ファイバ接続後は、残りの光ファイバ心線503を養生した上で、接続箱523で光ファイバケーブル509の接続部全体を固定・養生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−332951号公報
【特許文献2】特開2000−19333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一方向撚り光ファイバケーブル507を用いた光ファイバケーブルの分岐方法は、作業が繁雑、クロージャ構造が複雑、心線養生が煩雑である問題があった。すなわち、敷設後の光ファイバケーブル507を引き寄せた上で接続部近傍のケーブル外被514を円周方向に全て剥ぎ取る多くの作業が必要であった。接続対象外の心線に大きな余長が発生するため、これを束ねて収容する煩わしい心線養生作業及び複雑な構造のクロージャ517が必要となった。また、接続後に光ファイバケーブル507の外被514及びテンションメンバ511の固定が必要となった。
また、SZ撚りケーブル509を用いた光ファイバケーブルの分岐方法は、作業がやや煩雑であり、心線養生が煩雑であった。すなわち、接続部近傍のケーブル外被514を円周方向に全て剥ぎ取る作業が必要であった。接続対象外の心線も全て露出するため、これらを束ねて収容する心線養生作業が必要となった。また、接続後に光ファイバケーブルの外被514の固定が必要となった。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その第一の目的は、外被の剥ぎ取り作業が容易になるとともに、接続対象外の心線養生作業が不要となる光ファイバケーブルの分岐方法を提供し、光ファイバケーブルの分岐作業性の向上を図ることにある。また、その第二の目的は、外被及びテンションメンバの固定が不要になるとともに、クロージャ構造を簡素にできる光ファイバケーブルを提供し、光ファイバケーブルの分岐作業性の向上、クロージャコストの低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 軸線直交方向の断面に複数の隔壁を有する長尺のスロットと、前記複数の隔壁で区切られて前記スロットの長手方向に形成された光ファイバ収納部と、該光ファイバ収納部に収納された複数の光ファイバと、を外被で覆った光ファイバケーブルの中間部で前記光ファイバを分岐する光ファイバケーブルの分岐方法であって、
前記外被の円周方向の一部分を剥ぎ取り、
前記光ファイバの少なくとも一本を取り出し、
該取り出した光ファイバとドロップケーブルを接続することを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【0009】
この光ファイバケーブルの分岐方法によれば、ケーブル円周方向の外被を全て剥ぎ取る従来方法に比べ、剥ぎ取り箇所が円周方向の一部分でよいので、剥ぎ取り作業が容易になる。接続対象外の心線は、外被に覆われたままとなるので、養生作業が不要となる。
【0010】
(2) (1)の光ファイバケーブルの分岐方法であって、
第一の隔壁先端部近傍の外被と、隣接する第二の隔壁先端部近傍の外被を長手方向に切り取り、
第一の隔壁と第二の隔壁で挟まれた部分の外被を剥ぎ取ることを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【0011】
この光ファイバケーブルの分岐方法によれば、隣接する第一の隔壁先端部近傍の外被と、第二の隔壁先端部近傍の外被が切り取られると、円周方向に連続していた外被が、第一の隔壁と第二の隔壁の間で分断される。したがって、隔壁との接着力のさほど大きくない外被は、第一の隔壁と第二の隔壁で挟まれた部分で半径方向外側へ剥ぎ取り(抜き取り)可能となる。これにより、第一の隔壁と第二の隔壁で挟まれた光ファイバ収納部内が開口され、内部に収納された光ファイバが露出される。
【0012】
(3) (2)の光ファイバケーブルの分岐方法であって、
前記隔壁先端部近傍の外被を、前記隔壁の先端部の位置に対応させて該外被外面に設けた隔壁認識手段を目安に切り取ることを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【0013】
この光ファイバケーブルの分岐方法によれば、外被の表層が円周方向に連続している場合、すなわち、隔壁の先端が不透明な外被に埋入されて、外側から認識不能な場合、外被外面に設けられた隔壁認識手段を目標に外被を切り取ることで、隔壁先端部近傍の外被を容易且つ確実に切り取ることができる。
【0014】
(4) (1)〜(3)のいずれか1つの光ファイバケーブルの分岐方法であって、
前記光ファイバと前記ドロップケーブルを接続した後、円周方向の一部分を剥ぎ取った外被部分の周囲と、光ファイバケーブル及びドロップケーブルの接続部と、を保護材で覆い、且つ該保護材を前記光ファイバケーブルに固定することを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【0015】
この光ファイバケーブルの分岐方法によれば、円周方向の一部分が剥ぎ取られた外被は、他の部分が切り取られずにそのまま残るので、円周方向の全周を剥ぎ取る場合のような大幅な強度の低下や、露出した接続対象外の光ファイバの養生が発生しない。これにより、外被が剥ぎ取られて開口した一部分の光ファイバ収納部と接続部のみを簡素な保護材で養生できるようになる。
【0016】
(5) (1)〜(4)のいずれか1つの光ファイバケーブルの分岐方法であって、
前記光ファイバと前記ドロップケーブルを、メカニカルスプライスで接続することを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【0017】
この光ファイバケーブルの分岐方法によれば、メカニカルスプライスにより光ファイバとドロップケーブルが容易に軸合わせされて、永久接続が可能となる。
【0018】
(6) 軸線直交方向の断面に複数の隔壁を有する長尺のスロットと、
前記複数の隔壁で区切られて前記スロットの長手方向に形成された光ファイバ収納部と、
該光ファイバ収納部に収納された複数の光ファイバと、
前記収納部に充填された抗張力繊維と、
前記スロットの外周を覆う外被と、
を具備したことを特徴とする光ファイバケーブル。
【0019】
この光ファイバケーブルによれば、従来、スロットと外被の間で、スロットに巻回されていたテープが不要となり、各光ファイバ収納部に充填された抗張力繊維がテンションメンバの役割を果たす。光ファイバ収納部内の光ファイバを取り出す際には、抗張力繊維を掻き分けて行い、抗張力繊維は切断されない。つまり、抗張力繊維は、従来ケーブルのテンションメンバとテープ双方の役割を果たす。テープが不要なので、外被円周方向の一部分のみの剥ぎ取りが実現する。また、剥ぎ取り後においても、分岐部における光ファイバケーブル両側の固定は必要なくなる。
【0020】
(7) (6)の光ファイバケーブルであって、
前記隔壁の先端部が、前記断面内において、前記外被の内接円よりも半径方向外側に突出していることを特徴とする光ファイバケーブル。
【0021】
この光ファイバケーブルによれば、隔壁の先端部が外被に埋入されることとなり、外被の肉厚全てを切り取らなくても隔壁の先端部に切り取り工具の刃が到達可能となる。これにより、光ファイバ収納部に切り取り工具の刃を進入させることなく、隣接する隔壁の間に挟まれた部分の外被が剥ぎ取り可能となる。
【0022】
(8) (6)又は(7)の光ファイバケーブルであって、
前記断面内において、前記隔壁先端部が、前記光ファイバ収納部の数の二倍と同数若しくはそれ以上の数に分岐されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【0023】
この光ファイバケーブルによれば、隣接するそれぞれの隔壁の先端部が例えば二つに分岐されることで、Y字状となって外被に埋入されることとなる。これにより、隣接する隔壁のY字状先端部の近接する分岐片同士を円周の二点を通る直線(すなわち、弦)にて切り取ることにより、ワンカットで隣接する隔壁で挟まれた部分の外被を剥ぎ取ることができる。
【0024】
(9) (6)〜(8)のいずれか1つの光ファイバケーブルであって、
前記隔壁の先端部の位置に対応する前記外被外面に隔壁認識手段が設けられたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【0025】
この光ファイバケーブルによれば、外被外面に設けられた隔壁認識手段を目標に外被を切り取ることで、先端が不透明の外被に埋入されて外側から認識不能となった隔壁先端部近傍の外被を容易且つ確実に切り取ることができる。
【0026】
(10) (9)の光ファイバケーブルであって、
前記複数の隔壁ごとに異なる前記隔壁認識手段が設けられたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【0027】
この光ファイバケーブルによれば、光ファイバケーブルに捩れが生じている場合であっても、長尺方向の任意の位置で、他とは異なる特定の隔壁認識手段を目安に外被を剥ぎ取ることで、所望位置の光ファイバ収納部を開口させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る光ファイバケーブルの分岐方法によれば、外被の円周方向の一部分を剥ぎ取り、光ファイバの少なくとも一本を取り出し、取り出した光ファイバとドロップケーブルを接続するので、ケーブル円周方向の外被を全て剥ぎ取る従来方法に比べ、剥ぎ取り作業が容易になるとともに、接続対象外の心線の養生作業が不要となる。この結果、光ファイバケーブルの分岐作業性を大幅に向上させることができる。
【0029】
本発明に係る光ファイバケーブルによれば、隔壁で区切られてスロットの長手方向に形成された光ファイバ収納部と、光ファイバ収納部に収納された複数の光ファイバと、収納部に充填された抗張力繊維と、スロットの外周を覆う外被とを備えるので、外被及びテンションメンバの固定が不要になるとともに、クロージャ構造を簡素にできる。この結果、光ファイバケーブルの分岐作業を容易にでき、しかも、クロージャコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る光ファイバケーブルの軸線直交方向の断面図である。
【図2】第一の隔壁と第二の隔壁で挟まれた部分の外被切り取り状況を、切り取り前(a)、切り取り後(b)で表した断面図である。
【図3】部分的に外被の剥ぎ取られた図1に示した光ファイバケーブルの側面図である。
【図4】保護材の斜視図である。
【図5】図4の保護材を用いた分岐部保護構造の側面図である。
【図6】図5に示した保護材の接続部固定溝部の拡大側面図である。
【図7】他の実施の形態による光ファイバケーブルの断面図である。
【図8】(a)は従来の一方向撚り光ファイバケーブルの断面図、(b)はその一部分の外被全周を剥ぎ取った側面図である。
【図9】(a)は従来のSZ撚りケーブルの断面図、(b)はその一部分の外被全周を剥ぎ取った側面図である。
【図10】従来の一方向撚り光ファイバケーブルを用いた場合の引き寄せ状況を(a)、その分岐部における養生の状況を(b)で表した説明図である。
【図11】従来のSZ撚りケーブルを用いた分岐部における養生の状況を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る光ファイバケーブルの分岐方法及びそれに用いる光ファイバケーブルの好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る光ファイバケーブルの軸線直交方向の断面図である。
光ファイバケーブル100は、スロット11と、光ファイバ収納部13と、光ファイバ15と、抗張力繊維17と、外被19と、を主要構成として備えている。
【0032】
スロット11は、光ファイバケーブル100の(図1の紙面垂直方向の)軸線Gに直交方向の断面に、複数の隔壁21,23,25,27を有して長尺に形成される。隔壁21,23,25,27は、板状部材によって十字形状に形成され、四分割された光ファイバ収納部13を形成するが、これに限定されるものではなく、二分割、三分割、五分割、或いはそれ以上に分割される光ファイバ収納部13を形成するものであってもよい。さらに、後述するように、各隔壁21,23,25,27は、先端や途中部分に枝を持つ星形であってもよい。
【0033】
スロット11は、高密度ポリエチレン等を用い、断面十字形状に押し出し成形されてもよく、或いは一体の隔壁21,25と、一体の隔壁23,27との二枚の板片を組み合わせて十字形状に形成するものであってもよい。
【0034】
本実施の形態におけるスロット11は、複数の隔壁21,23,25,27が一体となって断面十字状に形成され、各隔壁21,23,25,27で区切られた光ファイバ収納部13がスロット11の長手方向(図1の紙面垂直方向)に連続して形成されている。
【0035】
それぞれの光ファイバ収納部13には複数の光ファイバ15が収納され、光ファイバ15は心線に紫外線硬化型樹脂等からなる被覆を施してなる。光ファイバ15は、複数本を並列に配し、紫外線硬化型樹脂によりテープ状に一体化したテープ心線であってもよい。
【0036】
隔壁21,23,25,27によって仕切られた各光ファイバ収納部13には抗張力繊維17が充填されている。抗張力繊維17としては、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド繊維などのアラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル系繊維、ナイロン繊維などが使用される。抗張力繊維17はこのような繊維を各光ファイバ収納部13の内部に縦添えすることにより充填される。充填は、光ファイバ15と混在さてもよく、或いは内方に配置した光ファイバ15を覆うように外側に縦添えしてもよい。この場合、外被19を剥ぎ取った後、抗張力繊維17を掻き分けるようにして内方の光ファイバ15を取り出す。
【0037】
光ファイバ15を光ファイバ収納部13に収納したスロット11は、外周が外被19によって覆われる。外被19は、例えば、高密度ポリエチレン樹脂をベース樹脂とするポリエチレン樹脂混合物中にタルクと赤リンを混練することで、高滑性(低摩擦性)及び耐摩耗性を向上させたものからなる。
【0038】
隔壁21,23,25,27は、先端部が、断面内において、外被19の内接円29よりも半径方向外側に突出している。隔壁21,23,25,27の先端部が外被19に埋入されることとなり、外被19の肉厚全てを切り取らなくても隔壁21,23,25,27の先端部に切り取り工具の刃が到達可能となっている。これにより、光ファイバ収納部13に切り取り工具の刃を進入させることなく、隣接する隔壁(例えば隔壁21,23)の間に挟まれた部分の外被19cが剥ぎ取り可能となる。
【0039】
光ファイバケーブル100は、隔壁21,23,25,27の先端部の位置に対応する外被19の外面に、隔壁認識手段31が設けられている。隔壁認識手段31は、本実施の形態のように例えば突条とすることができる。この他、隔壁認識手段31は、凹溝、印刷ライン、印刷マーク、或いは符号や数字を連続印刷したもの等とすることができる。光ファイバケーブル100では、外被外面に設けられた隔壁認識手段31を目標に外被19を切り取ることで、先端が不透明の外被19に埋入されて外側から認識不能となった隔壁先端部近傍の外被19を容易且つ確実に切り取ることができる。
【0040】
さらに、この隔壁認識手段31は、複数の隔壁21,23,25,27ごとに、異なる形態とすることができる。異なる形態とは、例えばサイズ別、形状別、色別、符号や数字別を含む。これにより、光ファイバケーブル100に捩れが生じている場合であっても、長尺方向の任意の位置で、他とは異なる特定の隔壁認識手段31を目安に外被19を剥ぎ取ることで、所望区画の光ファイバ収納部13を開口させ、所定の光ファイバ15を露出することが容易に可能となる。
【0041】
このように、上記構成を有する光ファイバケーブル100では、従来スロット501(例えば図8参照)と外被514の間で、スロット501に巻回されていたテープ513が不要となり、各光ファイバ収納部13に充填された抗張力繊維17がケーブル形状を整えてテープ513及びテンションメンバ511の役割を果たす。光ファイバ収納部13内の光ファイバ15を取り出す際には、抗張力繊維17を掻き分けて行い、抗張力繊維17は切断されない。つまり、抗張力繊維17は、従来ケーブルのテンションメンバ511とテープ514双方の役割を果たす。テープ514が不要なので、外被円周方向の一部分のみの剥ぎ取りが実現する。また、剥ぎ取り後においても、分岐部における光ファイバケーブル両側の固定は必要なくなる。
【0042】
次に、本発明に係る光ファイバケーブルの分岐方法の実施の形態について説明する。
図2は第一の隔壁と第二の隔壁で挟まれた部分の外被切り取り状況を、切り取り前(a)、切り取り後(b)で表した断面図である。
本実施の形態に係る分岐方法は、軸線直交方向の断面に複数の隔壁21,23,25,27を有する長尺のスロット11と、複数の隔壁21,23,25,27で区切られてスロット11の長手方向に形成された光ファイバ収納部13と、光ファイバ収納部13に収納された複数の光ファイバ15と、を外被19で覆った光ファイバケーブル100の中間部で、光ファイバ15を分岐するものである。先ず、外被19の円周方向の一部分を剥ぎ取り、光ファイバ15の少なくとも一本を取り出し、取り出した光ファイバ15とドロップケーブル41(図5参照)を接続する。
【0043】
この実施の形態による光ファイバケーブルの分岐方法は、上記構成の光ファイバケーブル100を使用しなくとも、図8,図9に示した従来の光ファイバケーブル507や509を使用しても可能となる。但し、従来の光ファイバケーブル507や509を用いた場合には、切り取り工具の刃を少なくとも外被514の内接円まで切り込まなければならず、場合によってはテープ513や心線503に刃が接触する心配が生じる。すなわち、作業難度が高い。これに対し、上記隔壁21,23,25,27を有した光ファイバケーブル100によれば、極めて容易な作業での外被19の剥ぎ取りが実現する。
【0044】
以下、特に上記構成の光ファイバケーブル100を用いた場合の分岐方法について説明する。この光ファイバケーブル100の分岐方法では、第一の隔壁21先端部近傍の外被19aと、隣接する第二の隔壁23先端部近傍の外被19bを長手方向に切り取る。次いで、第一の隔壁21と第二の隔壁23で挟まれた部分の外被19cを剥ぎ取る。
【0045】
隣接する第一の隔壁21先端部近傍の外被19aと、第二の隔壁23先端部近傍の外被19bが切り取られると、円周方向に連続していた外被19が、第一の隔壁21と第二の隔壁23の間で分断される。したがって、隔壁21,23との接着力のさほど大きくない外被19は、第一の隔壁21と第二の隔壁23で挟まれた部分19cで半径方向外側へ剥ぎ取り(抜き取り)可能となる。これにより、図2(b)に示すように、第一の隔壁21と第二の隔壁23で挟まれた光ファイバ収納部13内が開口され、内部に収納された光ファイバ15が露出され、取り出しが可能となる。
【0046】
隔壁先端部近傍の外被19a,19bは、隔壁21,23の先端部の位置に対応させて外被外面に設けた隔壁認識手段31を目安に切り取る。外被19の表層が円周方向に連続している場合、すなわち、隔壁21,23の先端が不透明な外被19に埋入されて、外側から認識不能な場合、外被外面に設けられた隔壁認識手段31を目標に外被19a,19bを切り取ることで、隔壁21,23の先端部近傍の外被19a,19bを容易且つ確実に切り取ることができる。
【0047】
図3は部分的に外被の剥ぎ取られた図1に示した光ファイバケーブルの側面図である。
この分岐方法では、外被19a、外被19bを切り取ることで、外被19cが剥ぎ取られる。それぞれの外被19a、外被19bは、りんご剥きの要領で表層のみを切り取ることができる。これにより、ケーブル円周方向の外被514を全て剥ぎ取る従来方法に比べ、剥ぎ取り箇所が円周方向の一部分でよいので、剥ぎ取り作業が容易になる。また、接続対象外の光ファイバ15は、外被19に覆われたままとなるので、養生作業が不要となる。
【0048】
図4は保護材の斜視図である。
光ファイバケーブル100では、従来の複雑な構造の接続箱517,523を使用せずに、簡単且つ小型な保護材43を用いて分岐部分を保護することができる。保護材43は、両端に底壁45,45を有した半割の筒体47,47をヒンジ49で連結した簡素な構造とできる。底壁45,45には光ファイバケーブル100を挿通する挿通穴51が穿設される。挿通穴51の内周、及び筒体47,47の接合面には防塵・防水材(ガスケット等)53が付設される。また、筒体47の内壁面47aにはメカニカルスプライス55(図6参照)を固定するための接続部固定溝57が形成されている。
【0049】
図5は図4の保護材を用いた分岐部保護構造の側面図である。
光ファイバ収納部13から取り出された光ファイバ15は、ドロップケーブル41を接続した後、円周方向の一部分を剥ぎ取った外被部分の周囲と、光ファイバケーブル100及びドロップケーブル41の接続部(メカニカルスプライス55)と、を保護材43で覆い、且つ保護材43を光ファイバケーブル100に結束バンド59等にて固定する。
【0050】
円周方向の一部分が剥ぎ取られた外被19は、他の部分が切り取られずにそのまま残るので、円周方向の全周を剥ぎ取る場合のような大幅な強度の低下や、露出した接続対象外の光ファイバ15の養生が発生しない。これにより、外被19が剥ぎ取られて開口した一部分の光ファイバ収納部13と接続部のみを簡素な構造の保護材43で養生することができる。
【0051】
図6は図5に示した保護材の接続部固定溝部の拡大側面図である。
光ファイバ15とドロップケーブル41を接続したメカニカルスプライス55は、筒体47の内壁面47aに設けられた接続部固定溝57に固定される。メカニカルスプライス55により光ファイバ15とドロップケーブル41が容易に軸合わせされて、永久接続が可能となる。また、接続部が保護材43に固定され、保護材43は光ファイバケーブル100に固定されるので、接続部が内部でガタツクことがない。これにより、摺動等が生じ難い高信頼性の接続が、簡素な構造の保護材43で且つ容易な分岐作業で実現する。
【0052】
なお、本実施の形態では、光ファイバ15がメカニカルスプライス55にてドロップケーブル41に接続される一例を説明したが、取り出された光ファイバ15は、光信号を分波・合波させる光カプラや光スプリッタ等の光デバイスを介して、一本が複数本のドロップケーブル41に分岐されてもよい。この場合においても、保護材43の内壁面47aにはこれら光デバイス専用の接続部固定溝57を設けることができる。
【0053】
したがって、本実施の形態による光ファイバケーブル100によれば、隔壁21,23,25,27で区切られてスロット11の長手方向に形成された光ファイバ収納部13と、光ファイバ収納部13に収納された複数の光ファイバ15と、光ファイバ収納部13に充填された抗張力繊維17と、スロット11の外周を覆う外被19とを備えるので、外被19及びテンションメンバの固定が不要になるとともに、クロージャ構造を簡素にできる。この結果、光ファイバケーブル100の分岐作業を容易にでき、しかも、クロージャコストを低減できる。
【0054】
また、本実施の形態による光ファイバケーブル100の分岐方法によれば、外被19の円周方向の一部分19cを剥ぎ取り、光ファイバ15の少なくとも一本を取り出し、取り出した光ファイバ15とドロップケーブル41を接続するので、ケーブル円周方向の外被19を全て剥ぎ取る従来方法に比べ、剥ぎ取り作業が容易になるとともに、接続対象外の心線の養生作業が不要となる。この結果、光ファイバケーブル100の分岐作業性を大幅に向上させることができる。
【0055】
次に、本発明に係る光ファイバケーブルの他の実施の形態を説明する。
図7は他の実施の形態による光ファイバケーブルの断面図である。
本発明に係る光ファイバケーブルは、断面内において、各隔壁21,23,25,27の先端部が、光ファイバ収納部13の数(本実施の形態では四つ)の二倍と同数若しくはそれ以上の数に分岐されてもよい。この実施の形態による光ファイバケーブル100Aでは、隣接するそれぞれの隔壁21,23,25,27の先端部が二つに分岐されることで、Y字状となって外被19に埋入される。
【0056】
この実施の形態による光ファイバケーブル100Aによれば、隣接する隔壁21,23のY字状先端部61,63,65,67の近接する分岐片同士61b,63aを円周の二点を通る直線(すなわち、弦)69にて切り取ることにより、ワンカットで隣接する隔壁21,23で挟まれた部分の外被19cを剥ぎ取ることができる。
【符号の説明】
【0057】
11 スロット
13 光ファイバ収納部
15 光ファイバ
17 抗張力繊維
19 外被
19a 第一の隔壁先端部近傍の外被
19b 第二の隔壁先端部近傍の外被
19c 第一の隔壁と第二の隔壁で挟まれた部分の外被
21,23,25,27 隔壁
29 外被の内接円
31 隔壁認識手段
41 ドロップケーブル
43 保護材
55 メカニカルスプライス
61,63,65,67 隔壁の先端部
100 光ファイバケーブル
G 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線直交方向の断面に複数の隔壁を有する長尺のスロットと、前記複数の隔壁で区切られて前記スロットの長手方向に形成された光ファイバ収納部と、該光ファイバ収納部に収納された複数の光ファイバと、を外被で覆った光ファイバケーブルの中間部で前記光ファイバを分岐する光ファイバケーブルの分岐方法であって、
前記外被の円周方向の一部分を剥ぎ取り、
前記光ファイバの少なくとも一本を取り出し、
該取り出した光ファイバとドロップケーブルを接続することを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバケーブルの分岐方法であって、
第一の隔壁先端部近傍の外被と、隣接する第二の隔壁先端部近傍の外被を長手方向に切り取り、
第一の隔壁と第二の隔壁で挟まれた部分の外被を剥ぎ取ることを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【請求項3】
請求項2記載の光ファイバケーブルの分岐方法であって、
前記隔壁先端部近傍の外被を、前記隔壁の先端部の位置に対応させて該外被外面に設けた隔壁認識手段を目安に切り取ることを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の光ファイバケーブルの分岐方法であって、
前記光ファイバと前記ドロップケーブルを接続した後、円周方向の一部分を剥ぎ取った外被部分の周囲と、光ファイバケーブル及びドロップケーブルの接続部と、を保護材で覆い、且つ該保護材を前記光ファイバケーブルに固定することを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の光ファイバケーブルの分岐方法であって、
前記光ファイバと前記ドロップケーブルを、メカニカルスプライスで接続することを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。
【請求項6】
軸線直交方向の断面に複数の隔壁を有する長尺のスロットと、
前記複数の隔壁で区切られて前記スロットの長手方向に形成された光ファイバ収納部と、
該光ファイバ収納部に収納された複数の光ファイバと、
前記収納部に充填された抗張力繊維と、
前記スロットの外周を覆う外被と、
を具備したことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項7】
請求項6記載の光ファイバケーブルであって、
前記隔壁の先端部が、前記断面内において、前記外被の内接円よりも半径方向外側に突出していることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の光ファイバケーブルであって、
前記断面内において、前記隔壁先端部が、前記光ファイバ収納部の数の二倍と同数若しくはそれ以上の数に分岐されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項9】
請求項6〜請求項8のいずれか1項記載の光ファイバケーブルであって、
前記隔壁の先端部の位置に対応する前記外被外面に隔壁認識手段が設けられたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項10】
請求項9記載の光ファイバケーブルであって、
前記複数の隔壁ごとに異なる前記隔壁認識手段が設けられたことを特徴とする光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−217693(P2010−217693A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66207(P2009−66207)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】