説明

光フィルター、光フィルターモジュール、および分析機器

【課題】一対の基板の対向する面に設けられた電極の配線を確実に基板の外部に引き出し、接続信頼性を向上させることが可能な光フィルター、光フィルターモジュール、および分析機器を提供すること。
【解決手段】エタロン5は、平面正方形状の板状の光学部材であり、第1基板51および第2基板52を備えている。第1基板51は、第2基板52に対向しない第1突出部513を有しており、この第1突出部513に第1電極パッド541Bが形成されている。また、第2基板52は、第1基板51に対向しない第2突出部524を有しており、この第2突出部524に第2電極パッド542Bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から所望の目的波長の光を選択して射出する光フィルター、この光フィルターを備えた光フィルターモジュール、およびこの光フィルターモジュールを備えた分析機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の互いに対向する面にそれぞれ高反射ミラーを対向配置し、この一対のミラー間で光を反射させ、特定波長の光のみを透過させる光フィルターが知られている。特定波長の光のみを透過させるには、ミラー間のギャップを変更すればよく、具体的には、一方の基板に可動部を形成し、この可動部と他方の基板の可動部に対向する面にそれぞれミラーを形成する。そして、各基板にそれぞれ電極を形成し、電極間に電圧を印加することで、静電引力により可動部を引っ張り、ミラー間ギャップを変更している。
【0003】
各基板に形成された電極には、各基板の半径方向外方に延設された配線が接続され、この配線は、各基板の外周縁に沿って設けられた電極パッドに接続している。電極パッドは、対向する一対の基板間に位置しているため、電極パッドに対向する基板との間の小さな隙間に導電性のペーストを流し込み、導電性のペーストに外部配線を接続させることで導通させている。
【0004】
また、対向する一対の基板間に形成された電極に接続する方法として、対向する基板にそれぞれ設けられた電極を各基板に形成された引出電極にそれぞれ接続させ、これら2つの引出電極を一方の基板に形成した2つの開口部(孔)からそれぞれ取り出す構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−134028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電極パッドと対向する基板との間の隙間に導電性のペーストを流し込む方法では、対向する基板間の隙間は非常に小さく形成されるものである(例えば0.5μm〜1μm)ため、導電性ペーストを流し込むことが困難な場合があり、接続の信頼性が低下するという課題がある。
【0007】
また、特許文献1の方法では、一対の基板間に引出電極が設けられているため、引出電極の厚みと接合膜の厚みとを合わせないと、配線不良が起こるおそれがある。例えば、接合膜の厚みが引出電極の厚みより厚くなってしまうと、一方の基板に2つの開口部が形成されているため、一方の基板に形成された引出電極はこの開口部において浮いた状態となる。このような浮いた状態で引出電極の接合面側から外部配線を接続させるため、接続が不安定となり、接続信頼性に課題がある。
【0008】
本発明は、一対の基板の対向する面に設けられた電極の配線を確実に基板の外部に引き出し、接続の信頼性を向上させることが可能な光フィルター、光フィルターモジュール、および分析機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光フィルターは、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜に対向する第2反射膜と、前記第1基板に設けられた第1電極と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極に対向する第2電極と、前記第1基板に設けられ、前記第1電極に接続された第1引出配線と、前記第1基板に設けられ、前記第1引出配線に接続された第1電極パッドと、前記第2基板に設けられ、前記第2電極に接続された第2引出配線と、前記第2基板に設けられ、前記第2引出配線に接続された第2電極パッドと、を備え、厚み方向から見た平面視において、前記第1電極パッドの少なくとも一部は前記第2基板と重なっておらず、前記平面視において、前記第2電極パッドの少なくとも一部は前記第1基板とは重なっていないことを特徴とする。
【0010】
この発明では、対向配置された第1基板と第2基板において、第1基板に設けられた第1電極パッドの少なくとも一部は、平面視において第2基板とは重なっていない。すなわち、第1基板には、第2基板と対向しない領域があり、この領域に第1電極パッドが設けられている。同様に、第2基板に設けられた第2電極パッドの少なくとも一部は、平面視において第1基板とは重なっていない。すなわち、第2基板には、第1基板と対向しない領域があり、この領域に第2電極パッドが設けられている。
このため、第1電極パッドは、第2基板に邪魔されずに露出するので、例えば、光フィルターの第2基板側から第1基板の第1電極パッドに接続端子を接触させることで、確実に外部配線を接続させることができる。同様に、第2電極パッドは、第1基板に邪魔されずに露出するので、例えば、光フィルターの第1基板側から第2基板の第2電極パッドに接続端子を接触させることで、確実に外部の導線を接続させることができる。したがって、配線の接続の信頼性を向上させることができる。
また、光フィルターの製造時、第1電極パッドおよび第2電極パッドに配線を接続する配線作業の作業効率を向上させることができる。
【0011】
また、この発明では、第1基板に設けられた第1電極パッドには、対向配置された第2基板側から外部配線が接続され、第2基板に設けられた第2電極パッドには、対向配置された第2基板側から外部配線が接続されることになる。すなわち、第1電極パッド全体が第1基板に支持された状態で外部配線に接続され、第2電極パッド全体が第2基板に支持された状態で外部配線に接続される。このため、接続時に第1電極パッドおよび第2電極パッドに余計な力が加わることがないので、第1電極パッドおよび第2電極パッドが破壊されるおそれがない。例えば、第1電極パッドに対して第2基板側から接続端子を押しつけた場合でも、第1電極パッドが第1基板に支持されているため破損しない。すなわち、品質の安定した光フィルターを提供することができる。
【0012】
本発明の光フィルターにおいて、前記第1基板は、前記平面視において、前記第2基板と重なる第1重畳領域とこの第1重畳領域から前記第1基板の面方向に向かって突出する第1突出部とを有し、前記第2基板は、前記平面視において、前記第1基板と重なる第2重畳領域とこの第2重畳領域から前記第2基板の面方向に向かって突出する第2突出部とを有し、前記第1突出部に前記第1電極パッドが設けられ、前記第2突出部に前記第2電極パッドが設けられていることが好ましい。
【0013】
この発明では、対向配置された第1基板および第2基板が互いに重なる領域をそれぞれの基板の第1重畳領域および第2重畳領域とすると、第1基板は第1重畳領域から面方向に沿って突出する第1突出部を有し、第2基板は第2重畳領域から面方向に沿って突出する第2突出部を有している。このような構成では、第1突出部は第2基板に対向せず、第2突出部は第2基板に対向しない。したがって、第1突出部に設けられた第1電極パッドは、平面視において第2基板と重ならず、第2突出部に設けられた第2電極パッドは平面視において第1基板と重ならない。
このため、上述したように、第1電極パッドは、第2基板に邪魔されずに露出するので、例えば、光フィルターの第2基板側から第1基板の第1電極パッドに接続端子を接触させることで、確実に外部配線を接続させることができる。同様に、第2電極パッドは、第1基板に邪魔されずに露出するので、例えば、光フィルターの第1基板側から第2基板の第2電極パッドに接続端子を接触させることで、確実に外部の導線を接続させることができる。したがって、配線の接続の信頼性を向上させることができる。
また、光フィルターの製造時、第1電極パッドおよび第2電極パッドに配線を接続する配線作業の作業効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の光フィルターにおいて、前記第1基板は、第1辺と前記第1辺に平行な第2辺とを有し、前記第2基板は、第3辺と前記第3辺に平行な第4辺とを有し、前記第1辺から前記第2辺に向かう方向と前記第3辺から前記第4辺に向かう方向とは同一の方向であり、前記第1基板は、前記第2基板に対して、前記第1辺から前記第2辺に向かう方向にオフセットして配置され、前記第1突出部は、前記平面視において、前記第2辺と前記第4辺との間に位置する前記第1基板の領域を有し、前記第2突出部は、前記平面視において、前記第1辺と前記第3辺との間に位置する前記第2基板の領域を有していることが好ましい。
【0015】
この発明では、第1辺および第2辺が平行に配置された第1基板と第3辺および第4辺が平行に配置された第2基板とが対向配置される。第1基板の第1辺から第2辺に向かう方向と、第2基板の第3辺から第4辺に向かう方向とは同一の方向となっており、第1基板は、この方向にオフセットして配置されている。すなわち、平面視において、第3辺、第1辺、第4辺、第2辺の順に各辺が対向配置されることになる。第1基板において、第2辺から第2基板の第4辺と重なる位置までの領域は第1突出部に設けられ、第2基板と対向していない。同様に、第2基板において、第3辺から第1基板の第2辺と重なる位置までの領域は第2突出部に設けられ、第1基板と対向していない。そして、第1基板では、上述のような第2辺を含み第2基板と対向しない領域に第1電極パッドが設けられ、第2基板では、上述のような第3辺を含み第1基板と対向しない領域に第2電極パッドが設けられる。
これによれば、各基板の端部に設けられた各電極パッドに対して、対向する基板に邪魔されることなく、より簡単かつ確実に外部配線を接続させることができる。すなわち、接続の信頼性を向上させることができる。
特に、第1電極パッドおよび第2電極パッドの接続面側に空間(以降、電極取出空間ということもある。)が形成されるため、配線作業が容易となり、確実に配線を接続させることができる。
【0016】
本発明の光フィルターモジュールは、上述した光フィルターと、前記光フィルターにより取り出された検査対象光を受光する受光手段と、を備えることを特徴とする
ここで、光フィルターモジュールとしては、例えば、光フィルターにより取り出された光を受光し、その受光量を電気信号として出力する光フィルターモジュールなどが例示できる。
【0017】
上述したように、光フィルターは、第1基板に設けられる第1電極パッドが第2基板に対向していないため、第2基板に邪魔されることなく第1電極パッドと外部配線との接続を確実に行うことができる。同様に、第2基板に設けられる第2電極パッドが第1基板に対向していないため、第1基板に邪魔されることなく第2電極パッドと外部配線との接続を確実に行うことができる。すなわち、配線の接続の信頼性を向上させることができる。このため、光フィルターの製造時、第1電極パッドおよび第2電極パッドに導線を接続する配線作業の作業効率を向上させることができる。
したがって、光フィルターを備えた光フィルターモジュールにおいても、同様に、配線の接続の信頼性を向上させることができるとともに、配線作業の作業効率を向上させることができる。
【0018】
本発明の分析機器は、上述した光フィルターモジュールを具備したことを特徴とする。
ここで、分析機器としては、上記のような光フィルターモジュールから出力される電気信号に基づいて、光フィルターモジュールに入射した光の色度や明るさなどを分析する光測定器、ガスの吸収波長を検出してガスの種類を検査するガス検出装置、受光した光からその波長の光に含まれるデータを取得する光通信装置などを例示することができる。
【0019】
この発明では、上述したように、光フィルターモジュールにより、配線の接続信頼性の向上を図ることができるため、このような光フィルターモジュールを備えた分析機器においても、接続の信頼性を向上させることができ、安定した品質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る第1実施形態の分析機器の概略構成を示す図である。
【図2】前記第1実施形態の光フィルターを構成するエタロンの概略構成を示す平面図である。
【図3】前記第1実施形態のエタロンの概略構成を示す斜視図である。
【図4】前記第1実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図である。
【図5】前記一実施形態のエタロンを構成する第1基板の製造工程を示す断面図である。
【図6】前記一実施形態の第1基板の製造工程を示す断面図である。
【図7】前記一実施形態のエタロンを構成する第2基板の製造工程を示す断面図である。
【図8】前記一実施形態の第2基板の製造工程を示す断面図である。
【図9】前記一実施形態のエタロンの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る第1実施形態の分析機器について、図面を参照して説明する。
〔1.分析機器の全体構成〕
分析機器1は、図1に示すように、被検査対象Aに光を射出する光源装置2と、本発明の光フィルターモジュール3と、分析機器1の全体動作を制御する制御装置4とを備えている。そして、この分析機器1は、光源装置2から射出される光を被検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を光フィルターモジュール3にて受光し、光フィルターモジュール3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち被検査対象Aの色を分析して測定する。
【0022】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、被検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれており、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから被検査対象Aに向かって射出する。
【0023】
〔3.光フィルターモジュールの構成〕
光フィルターモジュール3は、本発明の光フィルターを構成するエタロン5と、エタロン5を透過する光を受光する受光手段としての受光素子31と、エタロン5で透過させる光の波長を可変する電圧制御手段6と、を備えている。また、光フィルターモジュール3は、エタロン5に対向する位置に、被検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この光フィルターモジュール3は、エタロン5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光し、分光した光を受光素子31にて受光する。
受光素子31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光素子31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0024】
(3−1.エタロンの構成)
以下、エタロン5の構成を図2から図4に基づいて説明する。なお、図1では、エタロン5に検査対象光が図中下側から入射しているが、図3および図4では、検査対象光が図中上側から入射するものとする。
エタロン5は、図2に示すように、平面視正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、第1基板51、および第2基板52を備えている。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。
そして、第1基板51および第2基板52は、後述の接合面514,525が接合されることで、一体的に構成されている。なお、図2に示すようなエタロン5を厚み方向から見た平面視(以降、エタロン平面視と称す)において、第1基板51が第2基板52と重なる領域、すなわち第1辺51Aと第2基板の第4辺52Bとの間の第1基板の領域を第1重畳領域FAとし、第2基板52が第1基板51と重なる領域、すなわち第1基板51の第1辺51Aと第4辺52Bとの第2基板の間の領域を第2重畳領域FBとする。
【0025】
また、図3、図4に示すように、第1基板51と、第2基板52との間には、固定ミラー56および可動ミラー57が設けられる。ここで、固定ミラー56は、第1基板51の第2基板52に対向する面に固定され、可動ミラー57は、第2基板52の第1基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定ミラー56および可動ミラー57は、ミラー間ギャップGを介して対向配置されている。
さらに、第1基板51と第2基板52との間には、固定ミラー56および可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター54が設けられている。
【0026】
(3−1−1.第1基板の構成)
第1基板51は、エタロン平面視において、対向する第1辺51Aおよび第2辺51Bと、これらの辺に直交して互いに対向する他の2辺により平面視略正方形状に形成されている。第1基板51は、厚みが例えば500μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。具体的には、図3、図4に示すように、第1基板51には、エッチングにより電極形成溝511、ミラー固定部512および第1突出部513が形成される。
電極形成溝511は、エタロン平面視において、平面中心点を中心とした円形に形成されている。ミラー固定部512は、前記平面視において、電極形成溝511の中心部から第2基板52側に突出して形成される。
【0027】
電極形成溝511は、ミラー固定部512の外周縁から、当該電極形成溝511の内周壁面までの間に、リング状の電極固定面511Aが形成され、この電極固定面511Aに第1電極541が形成される。この第1電極541は、導電性を有し、後述する第2基板52の第2電極542との間で電圧を印加することで、第1電極541および第2電極542間に静電引力を発生させることが可能なものであれば、特に限定されないが、本実施形態では、ITO膜を用いる。
また、第1電極541の上には、絶縁膜543が形成されている。絶縁膜543としては、TEOS(TetraEthoxySilane)が用いられる。
【0028】
ミラー固定部512は、上述したように、電極形成溝511と同軸上で、電極形成溝511よりも小さい径寸法となる円柱状に形成されている。なお、本実施形態では、図4に示すように、ミラー固定部512の第2基板52に対向するミラー固定面512Aが、電極固定面511Aよりも第2基板52に近接して形成される例を示すが、これに限らない。電極固定面511Aおよびミラー固定面512Aの高さ位置は、ミラー固定面512Aに固定される固定ミラー56、および第2基板52に形成される可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの寸法、第1電極541および第2基板52に形成される後述の第2電極542の間の寸法、固定ミラー56や可動ミラー57の厚み寸法により適宜設定されるものであり、上記のような構成に限られない。例えばミラー56,57として、誘電体多層膜ミラーを用い、その厚み寸法が増大する場合、電極固定面511Aとミラー固定面512Aとが同一面に形成される構成や、電極固定面511Aの中心部に、円柱凹溝上のミラー固定溝が形成され、このミラー固定溝の底面にミラー固定面512Aが形成される構成などとしてもよい。
【0029】
また、ミラー固定部512のミラー固定面512Aは、エタロン5を透過させる波長域をも考慮して、溝深さが設計されることが好ましい。例えば、本実施形態では、固定ミラー56および可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの初期値(第1電極541および第2電極542間に電圧が印加されていない状態のミラー間ギャップGの寸法)が450nmに設定され、第1電極541および第2電極542間に電圧を印加することにより、ミラー間ギャップGが例えば250nmになるまで可動ミラー57を変位させることが可能となっており、これにより、第1電極541および第2電極542間の電圧を可変することで、可視光全域の波長の光を選択的に分光させて透過させることが可能となる。この場合、固定ミラー56および可動ミラー57の膜厚およびミラー固定面512Aや電極固定面511Aの高さ寸法は、ミラー間ギャップGを250nm〜450nmの間で変位可能な値に設定されていればよい。
【0030】
そして、ミラー固定面512Aには、直径が約3mmの円形状に形成される固定ミラー56が固定されている。この固定ミラー56は、Ag合金単層により形成されるミラーであり、スパッタリングなどの手法によりミラー固定面512Aに形成される。
なお、本実施形態では、固定ミラー56として、エタロン5で分光可能な波長域として可視光全域をカバーできるAg合金単層のミラーを用いる例を示すが、これに限定されず、例えば、エタロン5で分光可能な波長域が狭いが、AgC単層ミラーよりも、分光された光の透過率が大きく、透過率の半値幅も狭く分解能が良好な、例えばTiO−SiO系誘電体多層膜ミラーを用いる構成としてもよい。ただし、この場合、上述したように、第1基板51のミラー固定面512Aや電極固定面511Aの高さ位置を、固定ミラー56や可動ミラー57、分光させる光の波長選択域などにより、適宜設定する必要がある。
【0031】
第1突出部513は、第1基板51の第1重畳領域FAから面方向に突出して形成され、第1基板51の第2辺51Bおよび第1基板51の隣接する2つの頂点を含んで形成されている。また、第1突出部513は、電極固定面511Aと同一平面となる第1パッド固定面513Aを有している。第1基板51と第2基板52とが重ね合わされると、第1突出部513には第2基板52が対向しないため、第1パッド固定面513Aの第2基板52側には空間が形成される。
そして、第1パッド固定面513Aにおける第1基板51の一方の頂点付近には、第1電極パッド541Bが形成されている。なお、第1電極パッド541Bは、全体が第1パッド固定面513Aに露出された状態であってもよいし、一部が第1パッド固定面513Aに露出された状態であってもよい。
また、第1基板51には、第1パッド固定面513Aにおける第1基板51の一方の頂点付近から電極固定面511Aに亘って、これら電極固定面511Aおよび第1パッド固定面513Aと同一平面となる底面を有する第1電極導入溝511Cが形成されている。
そして、これらの第1電極導入溝511Cの底面には、第1電極541の外周縁の一部から延出し、第1電極パッド541Bに接続する第1電極引出部541Aが形成される。これにより、第1電極541、第1電極引出部541A、および第1電極パッド541Bは導通され、第1電極541に所定の電圧を印加することができる。これらの第1電極541、第1電極引出部541A、および第1電極パッド541Bは、ITO膜により一体形成される電極であり、第1基板51上にスパッタリングなどの手法により膜状に形成される。
【0032】
ここで、第1基板51において、溝および第1突出部513が形成されていない部分が第1基板51の接合面514となる。接合面514は、第1突出部513の第2辺51Bに対向する辺、平面視において第1辺51Aおよび第2辺51Bに直交する他の2辺のうちいずれか1辺、および電極固定面511Aにより囲われる領域である。
そして、接合面514には、それぞれ、図3、図4に示すように、接合用の第1接合膜581が膜状に形成されている。この第1接合膜581には、主材料としてポリオルガノシロキサンが用いられる。
【0033】
さらに、第1基板51は、第2基板52に対向する上面とは反対側の下面において、固定ミラー56に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成され、第1基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0034】
(3−1−2.第2基板の構成)
第2基板52は、対向する第3辺52Aおよび第4辺52Bと、これらの辺に直交して互いに対向する他の2辺により平面視長方形状に形成されている。なお、第1基板51と第2基板52とが貼り合わされたエタロン5が、平面視略正方形状となるように、各基板の大きさが調整される。第2基板52は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
具体的には、第2基板52には、図2に示すようなエタロン平面視において、平面中心点を中心とした円形の変位部521が形成される。この変位部521は、円柱状の可動部522と、可動部522と同軸であり可動部522を保持する連結保持部523と、を備えている。
このような変位部521は、図3および図4に示すように、第2基板52の形成素材である平板状のガラス基材に対してエッチングを施すことにより溝を形成することで形成される。すなわち、変位部521は、第2基板52の第1基板51に対向しない入射側面に、連結保持部523を形成するための円環状の凹溝をエッチング形成することで、形成されている。
【0035】
可動部522は、連結保持部523よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、第2基板52の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。また、可動部522は、ミラー固定部512に平行な可動面522Aを備え、この可動面522Aに可動ミラー57が固定されている。
ここで、この可動ミラー57は、上述した固定ミラー56と同一の構成のミラーが用いられ、本実施形態では、Ag合金単層ミラーが用いられる。また、Ag合金単層ミラーの膜厚寸法は、例えば0.03μmに形成されている。
【0036】
また、可動部522には、可動面522Aとは反対側の上面において、可動ミラー57に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、第1基板51に形成される反射防止膜と同様の構成を有し、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成される。
【0037】
連結保持部523は、可動部522の周囲を囲うダイヤフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成されている。この連結保持部523の第1基板51に対向する第2電極固定面523Aには、第1電極541に約1μmの電磁ギャップを介して対向する、リング状の第2電極542が形成されている。ここで、この第2電極542および前述した第1電極541により、静電アクチュエーター54が構成される。この第2電極542は、第1基板51に形成される各電極や接合膜と同様に、ITO膜により形成される。
【0038】
また、第2基板52は、第2基板52の第2重畳領域FBから面方向に突出して形成され、第3辺52Aおよび第2基板52の隣接する2つの頂点を含んで形成された第2突出部524を有している。第2突出部524は、第2電極固定面523Aと同一平面となる第2パッド固定面524Aを有している。第1基板51と第2基板52とが重ね合わされると、第2突出部524には第1基板51が対向しないため、第2パッド固定面524Aの第1基板51側には電極取出空間が形成される。
そして、第2パッド固定面524Aにおける第2基板52の一方の頂点付近には、第2電極パッド542Bが形成されている。
また、第2電極542の外周縁の一部から延出し、第2電極パッド542Bに接続する第2電極引出部542Aが形成される。これにより、第2電極542、第2電極引出部542A、および第2電極パッド542Bは導通され、第2電極542に所定の電圧を印加することができる。これらの第2電極542、第2電極引出部542A、および第2電極パッド542Bは、ITO膜により一体形成される電極であり、第2基板52上にスパッタリングなどの手法により膜状に形成される。
【0039】
また、第2基板52では、第1基板51に対向する面において、第1基板51の接合面514と対向する領域が、第2基板52における接合面525となる。この接合面525には、第1基板51の接合面514と同様に、主材料としてポリオルガノシロキサンを用いた第2接合膜582が設けられている。
【0040】
(3−1−3.第1基板および第2基板の接合構成)
エタロン5では、上述したような第1基板51の接合面514および第2基板52の接合面525を接合することにより一体的に形成される。このようなエタロン5は、第1重畳領域FAと第2重畳領域FBとが対向して接合され、第1突出部513および第2突出部524がこれらの重畳領域から面方向に突出している。この構成を言い換えると、第1基板51の第1辺51Aと第2基板52の第3辺52A、および第1基板51の第2辺51Bと第2基板52の第4辺52Bが重なる状態から、第1基板51を、第2基板52に対して第1辺51Aから第2辺52Bに向かう方向(図2中、矢印の方向)にオフセットした状態で接合された構成である。
したがって、図2に示すように、第1基板51において、第2基板52の第4辺52Bと第1基板51の第2辺51Bとで囲われた部分が上述の第1突出部513となり、第2基板52の第4辺52Bと第1基板51の第1辺51Aとで囲われた領域のうち溝の形成されない領域が第1接合面514となる。また、第2基板52において、第1基板51の第1辺51Aと第2基板52の第3辺52Aとで囲われた部分が上述の第2突出部524となり、第1基板51の第1辺51Aと第2基板の第4辺52Bとで囲われた領域のうち第1基板51の第1接合面514と対向する領域が第2接合面525となる。
【0041】
ここで、第1電極541は、第1電極引出部541Aを介して第1電極パッド541Bと導通される。また、第2電極542は、第2電極引出部542Aを介して第2電極パッド542Bと導通される。
このため、第1電極パッド541Bおよび第2電極パッド542Bに、それぞれ電圧制御手段6に接続される導線を接続することで、静電アクチュエーター54を制御することが可能となる。
なお、本実施形態では、1つの第1電極パッド541Bおよび1つの第2電極パッド542Bが設けられるが、2つの第1電極パッド541Bおよび2つの第2電極パッド542Bを設けた構成としてもよい。この場合は、静電アクチュエーター54の駆動時には、2つの第1電極パッド541Bのうちいずれか一方、および2つの第2電極パッド542Bのうちのいずれか一方にのみに電圧が印加される。そして、他方の第1電極パッド541Bおよび第2電極パッド542Bは、第1電極541および第2電極542の電荷保持量を検出するための検出端子として用いられる。
【0042】
(3−1−4.エタロンと電圧制御手段との接続)
上述のようなエタロン5と電圧制御手段6との接続では、第1電極パッド541Bおよび第2電極パッド542Bに、それぞれ、電圧制御手段6に接続された導線をフレキシブル基板などにより接続する。
ここで、エタロン5の第1基板51の第1突出部513には第2基板52が対向しておらず、第2基板52の第2突出部524には第1基板51が対向していない。このため、エタロン5に導線を接続する際には、第1突出部513の第1パッド固定面513Aに形成された第1電極パッド541Bおよび第2突出部524の第2パッド固定面524Aに形成された第2電極パッド542Bにフレキシブル基板を重ねて接続させるだけでよい。すなわち、対向する基板間に導電性のペーストを流し込むなどの煩雑な作業が不要となり、第1電極パッド541Bや第2電極パッド542Bに直接接続することが可能となる。また、第1突出部513および第2突出部524には、対向する基板がないため作業スペースを大きく取ることができ、エタロン5への配線作業を容易に実施することができる。
【0043】
(3−2.電圧制御手段の構成)
電圧制御手段6は、上記エタロン5とともに、本発明の光フィルターを構成する。この電圧制御手段6は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター54の第1電極541および第2電極542に印加する電圧を制御する。
【0044】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、分析機器1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、光フィルターモジュール制御部42、および光処理部43などを備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
光フィルターモジュール制御部42は、光フィルターモジュール3に接続されている。そして、光フィルターモジュール制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光フィルターモジュール3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を光フィルターモジュール3に出力する。これにより、光フィルターモジュール3の電圧制御手段6は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
【0045】
〔5.エタロンの製造方法〕
次に、上記エタロン5の製造方法について、図面に基づいて説明する。
エタロン5を製造するためには、第1基板51および第2基板52をそれぞれ形成し、形成された第1基板51と第2基板52とを貼り合わせる。
(5−1.第1基板形成工程)
図5(A)に示す第1基板51の製造素材である石英ガラス基板50(表面粗さRa=1nm以下、厚み500μm)の両面を鏡面研磨し、石英ガラス基板50の両面にレジストを形成する(図示しない)。
【0046】
まず、第2基板52と対向する側の面50Aの接合面514およびミラー固定部512以外の部分を、フッ酸水溶液を用いてエッチングすることで、図5(B)に示すように、深さ1μmの電極形成溝511および第1突出部513を形成する。ここで、電極形成溝511の電極固定面511Aと第1突出部513の第1パッド固定面513Aとは同一面内に位置している。そして、第2基板52と対向する側の面に残ったレジストを剥離する。
次に、同じく第2基板52と対向する側の面50Aに、ミラー固定部512のパターンのレジストを形成し(図示しない)、フッ酸水溶液を用いてエッチングを実施する。これにより、図5(C)に示すように、電極固定面511Aより高い位置にあるミラー固定面512Aを有するミラー固定部512が形成される。そして、第2基板52と対向する側の面50Aに残ったレジストを剥離する。
【0047】
そして、第2基板52と対向する側とは反対側の面50Bには、電極取出空間を形成するためのパターンのレジストが形成されており(図示しない)、フッ酸水溶液を用いて約450nmエッチングする。これにより、図5(D)に示すように、第1薄片50Cが形成される。なお、第1薄片50Cは、第2基板52の第2突出部524の第2パッド固定面524Aに対向する薄片であり、製造工程においてスパッタリングやレジストの塗布等による影響を避けるために一時的に設けているものである。したがって、第2基板52と接合された際には除去される。そして、第2基板52と対向する側とは反対側の面50Bに残ったレジストを剥離する。
【0048】
次に、石英ガラス基板50の第2基板52と対向する側の面50Aに、電極を形成するためのITO膜(厚み0.1μm)をスパッタリングにより成膜する(図示しない)。そして、ITO膜の上に、所望の電極パターンとなるレジストを形成し、硝酸と塩酸の混合液を用いてITO膜のエッチングを行う。これにより、図6(A)に示すにように、第1電極541が形成される。そして、第2基板52と対向する側の面50Aに残ったレジストを剥離する。
そして、同じく第2基板52と対向する側の面50Aに、第1電極541だけが露出するパターンのレジストを形成し(図示しない)、厚み0.1μmのTEOS(TetraEthOxySilane)膜をプラズマCVD法により成膜する。そして、レジストを剥離することで、図6(B)に示すように、第1電極541の上に絶縁膜543が形成される。
【0049】
次に、同じく第2基板52と対向する側の面50Aに、ミラー固定面512Aの固定ミラー56が形成される領域のみが露出するパターンのレジストを形成し(図示しない)、ミラー材料をスパッタリングまたは蒸着法により成膜する。例えば、ミラー固定面512A側から順に、厚み50nmのSiO、厚み50nmのTiO、厚み50nmのAgを積層する。そして、レジストを剥離することで、図6(C)に示すように、ミラー固定面512Aの上に固定ミラー56が形成される。
【0050】
次に、同じく第2基板52と対向する側の面50Aに、第1接合膜581が形成される領域だけが露出するパターンのレジストを形成し(図示しない)、厚み30nmのプラズマ重合膜をプラズマCVD法により成膜する。プラズマ重合膜としては、主材料にポリオルガノシロキサンを用いることが好ましい。そして、レジストを剥離することで、図6(D)に示すように、接合面514の上に第1接合膜581が形成される。
このようにして、第1基板51に第1薄片50Cが形成された基板が完成する。
【0051】
(5−2.第2基板製造工程)
図7(A)に示すように、第2基板52の製造素材である石英ガラス基板(表面粗さRa=1nm以下)の両面を鏡面研磨して、厚み200μmの石英ガラス基板60を作製する。
次に、図7(B)に示すように、石英ガラス基板60の両面60A、60Bに、Cr/Au膜61および62をスパッタリングにより成膜する。このときの各膜の厚みは、Cr膜50nm、Au膜500nmである。
【0052】
次に、図7(C)に示すように、ダイヤフラムを形成する側の面60AのCr/Au膜61に対して、連結保持部523(ダイヤフラム)および第1基板51の電極取出空間を形成するためのパターンを形成し、これらに対応する領域のCr/Au膜を除去する。このとき、Au膜をヨウ素とヨウ化カリウムとの混合液によりエッチングし、Cr膜を硝酸セリウムアンモニウム水溶液でエッチングする。
次に、石英ガラス基板60をフッ酸水溶液に浸すことで、150μmエッチングする。これにより、図7(D)に示すように、厚さ50μmの連結保持部523および第2薄片60Cが形成される。
そして、図8(A)に示すように、石英ガラス基板60の両面に残ったCr/Au膜61、62を剥離する。
【0053】
次に、電極を形成する側の面60Bに、電極を形成するためのITO膜(厚み0.1μm)をスパッタリングにより成膜する(図示しない)。そして、ITO膜の上に、所望の電極パターンとなるレジストを形成し、硝酸と塩酸の混合液を用いてITO膜のエッチングを行う。これにより、図8(B)に示すにように、第2電極542が形成される。そして、電極を形成する側の面60Bに残ったレジストを剥離する。
【0054】
次に、同じく電極を形成した側の面60Bに、可動ミラー57が形成される領域のみが露出するパターンのレジストを形成し(図示しない)、ミラー材料をスパッタリングまたは蒸着法により成膜する。例えば、基板側から順に、厚み50nmのSiO、厚み50nmのTiO、厚み50nmのAgを積層する。そして、レジストを剥離することで、図8(C)に示すように、電極を形成する側の面60Bに可動ミラー57が形成される。
【0055】
次に、同じく電極を形成した側の面60Bに、第2接合膜582が形成される領域だけが露出するパターンのレジストを形成し(図示しない)、厚み30nmのプラズマ重合膜をプラズマCVD法により成膜する。プラズマ重合膜としては、主材料にポリオルガノシロキサンを用いることが好ましい。そして、レジストを剥離することで、図8(D)に示すように、接合面525の上に第2接合膜582が形成される。
このようにして、第2基板52に第2薄片60Cが形成された基板が完成する。
【0056】
(5−3.貼合工程)
次に、図9(A)に示すように、上述の第1基板形成工程および第2基板形成工程で形成された各基板を貼り合わせる。具体的には、各基板に形成された第1接合膜581および第2接合膜582を構成するプラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与するために、Oプラズマ処理またはUV処理を行う。Oプラズマ処理は、O流量30cc/分、圧力27Pa、RFパワー200Wの条件で30秒間実施する。また、UV処理は、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて3分間処理を行う。プラズマ重合膜に活性化エネルギーを付与した後、2つの基板のアライメントを行い、第1接合膜581および第2接合膜582を重ね合わせて荷重をかけることにより、基板同士を接合させる。
【0057】
次に、第1基板51に形成されている第1薄片50Cと、第2基板52に形成されている第2薄片60Cと、を除去する。除去方法としては、切断等の機械的処理でもエッチング等の化学的処理でもよい。これにより、エタロン5が製造される。
【0058】
〔6.本実施形態の作用効果〕
以上の実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
第1基板51の第1電極パッド541Bは、第2基板52に対向していない第1突出部513に設けられている。このため、エタロン平面視において、第1電極パッド541Bは第2基板52に重ならない。すなわち、第1電極パッド541Bが露出するとともに、第1電極パッド541Bの第2基板52側に電極取出空間が形成される。これによれば、第1電極パッド541Bが第2基板52に邪魔されることなく露出するので、第1電極パッド541Bに外部配線となるフレキシブル基板を簡単に接続させることができる。
同様に、第2基板52の第2電極パッド542Bは、第1基板51に対向していない第2突出部524に設けられている。このため、エタロン平面視において、第2電極パッド542Bは第1基板51に重ならない。すなわち、第2電極パッド542Bが露出するとともに、第2電極パッド542Bの第1基板51側に電極取出空間が形成される。これによれば、第2電極パッド542Bが第1基板51に邪魔されることなく露出するので、第2電極パッド542Bに外部配線となるフレキシブル基板を簡単に接続させることができる。
したがって、接続を確実にすることができ、接続の信頼性を向上させることができる。
【0059】
特に、第1突出部513は第1基板51の端縁(第2辺51B)に沿って形成されているため、この第1突出部513に設けられた第1電極パッド541Bに対する配線作業を容易に行うことができる。同様に、第2突出部524は第2基板52の端縁(第3辺52A)に沿って形成されているため、この第2突出部524に設けられた第2電極パッド542Bに対する配線作業を容易に行うことができる。
このように、対向する基板に邪魔されることなく配線作業を容易に行うことができるため、配線を確実に接続させることができ、接続の信頼性がより向上する。
【0060】
そして、第1基板51を製造する際には、第2基板52と貼り合わせた際に第2突出部524に対向する位置に第1薄片50Cを形成し、第2基板52を製造する際には、第1基板と貼り合わせた際に第1突出部513に対向する位置に第2薄片60Cを形成する。そして、第1基板51と第2基板52とを貼り合わせた後で、第1薄片50Cおよび第2薄片60Cを除去している。
これによれば、エタロン5の第1突出部513に設けられた第1電極パッド541Bおよび第2突出部524に設けられた第2電極パッド542Bは露出しているので、レジストのパターニングの処理が複雑になり作業性が低下するおそれがある。したがって、エタロン5が完成するまでは、第1薄片50Cおよび第2薄片60Cにより、露出している第1電極パッド541Bおよび第2電極パッド542Bを覆うことで、これらを考慮する必要がなく、容易に各処理を実施することができ、作業効率に優れる。
【0061】
〔7.変形例〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0062】
例えば、上記実施形態では、第1電極541、第1電極引出部541A、第1電極パッド541B、第2電極542、第2電極引出部542A、第2電極パッド542BをITO膜により形成する構成としたが、これに限られない。例えば、Au/Cr合金、Au/Sn合金等で形成するなど、他の素材により形成される構成としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態において、各基板の端縁を含んで構成された第1突出部513および第2突出部524を設ける構成を例示したが、これに限定されず、例えば、第1基板51の第1電極パッド541Bに対向する位置に、基板の厚み方向に沿って第2基板52を貫通する貫通孔が形成される構成などとしてもよい。同様に、第2基板52の第2電極パッド542Bに対向する位置に、基板の厚み方向に沿って第1基板51を貫通する貫通孔が形成される構成などとしてもよい。
【0064】
さらに、上記実施形態では、第1基板51を第2基板52に対してオフセットさせる方向は、第1辺51Aから第2辺51Bに向かう方向にオフセットして配置した構成を示したが、オフセットする方向はこれに限られない。第1基板51が第2基板52と重ならない領域を形成できればいずれの方向にオフセットして配置してもよい。この場合は、第1基板51と第2基板52とが重ならない領域に第1電極パッドまたは第2電極パッドが設けられる。
【0065】
また、上記実施形態の製造工程では、第1基板51の第2基板52の第2突出部524と対向する位置に第1薄片50Cを形成し、貼り合わせた後にこの第1薄片50Cを除去し、同様に、第2基板52の第1基板51の第1突出部513と対向する位置に第2薄片60Cを形成し、貼り合わせた後にこの第2薄片60Cを除去するようにしたが、本発明のエタロン5を製造する方法はこれに限られない。例えば、上記実施形態における第1薄片50Cが形成されていない第1基板51を予め作製し、第2薄片60Cが形成されていない第2基板52を予め作製し、これらの第1基板51および第2基板52をオフセットした状態で接合させる。これによれば、第1薄片50Cや第2薄片60C形成および除去する手間を省くことができ、製造効率に優れる。
【0066】
また、上記実施形態において、接合面514,525では、第1接合膜581および第2接合膜582により接合されるとしたが、これに限られない。例えば、第1接合膜581および第2接合膜582が形成されず、接合面514,525を活性化し、活性化された接合面514,525を重ね合わせて加圧することにより接合する、いわゆる常温活性化接合により接合させる構成などとしてもよく、いかなる接合方法を用いてもよい。
【0067】
また、エタロン5と電圧制御手段6との接続において、第1電極パッド541Bおよび第2電極パッド542Bにフレキシブル基板を接続する例を示したが、接続方法はこれに限られない。例えば、導線をワイヤボンディングにより接続する構成などとしてもよい。第1突出部513および第2突出部524が形成されることにより配線のための作業スペースを確保することができるため、どのような配線方法を用いたとしても、配線作業を効率よく実施することができる。
【0068】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0069】
1…分析機器、3…光フィルターモジュール、4…制御装置、5…光フィルターを構成するエタロン、6…光フィルターを構成する電圧制御手段、31…受光手段である受光素子、43…光処理部、51…第1基板、52…第2基板、54…可変手段である静電アクチュエーター、56…固定ミラー、57…可動ミラー、513…第1突出部、513A…第1パッド固定面、514…接合面、524…第2突出部、524A…第2パッド固定面、525…接合面、541…第1電極、541A…第1電極引出部、541B…第1電極パッド、542…第2電極、542A…第2電極引出部、542B…第2電極パッド、581…第1接合膜、582…第2接合膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜に対向する第2反射膜と、
前記第1基板に設けられた第1電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1基板に設けられ、前記第1電極に接続された第1引出配線と、
前記第1基板に設けられ、前記第1引出配線に接続された第1電極パッドと、
前記第2基板に設けられ、前記第2電極に接続された第2引出配線と、
前記第2基板に設けられ、前記第2引出配線に接続された第2電極パッドと、を備え、
厚み方向から見た平面視において、前記第1電極パッドの少なくとも一部は前記第2基板と重なっておらず、
前記平面視において、前記第2電極パッドの少なくとも一部は前記第1基板とは重なっていない
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の光フィルターにおいて、
前記第1基板は、前記平面視において、前記第2基板と重なる第1重畳領域とこの第1重畳領域から前記第1基板の面方向に向かって突出する第1突出部とを有し、
前記第2基板は、前記平面視において、前記第1基板と重なる第2重畳領域とこの第2重畳領域から前記第2基板の面方向に向かって突出する第2突出部とを有し、
前記第1突出部に前記第1電極パッドが設けられ、
前記第2突出部に前記第2電極パッドが設けられている
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の光フィルターにおいて、
前記第1基板は、第1辺と前記第1辺に平行な第2辺とを有し、
前記第2基板は、第3辺と前記第3辺に平行な第4辺とを有し、
前記第1辺から前記第2辺に向かう方向と前記第3辺から前記第4辺に向かう方向とは同一の方向であり、
前記第1基板は、前記第2基板に対して、前記第1辺から前記第2辺に向かう方向にオフセットして配置され、
前記第1突出部は、前記平面視において、前記第2辺と前記第4辺との間に位置する前記第1基板の領域を有し、
前記第2突出部は、前記平面視において、前記第1辺と前記第3辺との間に位置する前記第2基板の領域を有している
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の光フィルターと、
前記光フィルターにより取り出された検査対象光を受光する受光手段と、
を備えることを特徴とする光フィルターモジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の光フィルターモジュールを具備したことを特徴とする分析機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−232447(P2011−232447A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101092(P2010−101092)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】