光ヘッド装置、光ディスク装置および光ディスク
【課題】回折限界以下の小さな記録マークを含む超解像光ディスクの再生時における低周波ノイズを低減でき、再生信号の品質を向上できる光ヘッド装置を提供する。
【解決手段】光ヘッド装置10の受光素子27は、戻り光ビームの周辺部を受光する複数の受光エレメントからなる第1の受光面と、前記戻り光ビームの中央部を受光する受光エレメントからなる第2の受光面とで構成される受光面を有する。第1の受光面の複数の受光エレメントは、対物レンズ5を焦点制御するための非点収差法で使用する4分割受光面において互いに直交する2つの分割線またはそれに相当する分割線の交点に対して非対称な位置に配置されるとともに、戻り光ビームの中心が前記分割線の交点に調整されている。
【解決手段】光ヘッド装置10の受光素子27は、戻り光ビームの周辺部を受光する複数の受光エレメントからなる第1の受光面と、前記戻り光ビームの中央部を受光する受光エレメントからなる第2の受光面とで構成される受光面を有する。第1の受光面の複数の受光エレメントは、対物レンズ5を焦点制御するための非点収差法で使用する4分割受光面において互いに直交する2つの分割線またはそれに相当する分割線の交点に対して非対称な位置に配置されるとともに、戻り光ビームの中心が前記分割線の交点に調整されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ヘッド装置と、超解像方式を採用した光記録再生媒体に対して情報の記録または再生を行なう光ディスク装置と、この光ディスク装置により記録または再生される光ディスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、各種光ディスクの大容量化は、ディスクのトラック上に書かれる情報の記録マークの大きさを小さくするとともに、記録や再生に用いるレーザ光の短波長化および開口数が大きい対物レンズの採用により、焦点面での集光スポットサイズを小さくすることによって達成してきた。
【0003】
例えば、CD(コンパクトディスク)では、光透過層(情報記録層の上に設けられる透明保護層およびスペース層。透明基板とも言う)となるディスク基板の厚さが約1.2mm、レーザ光波長が約780nm、対物レンズの開口数(NA)が0.45であり、650MBの記録容量であった。
【0004】
DVD(デジタル多用途ディスク)では、光透過層の厚さが約0.6mm、レーザ光波長が約650nm、NAが0.6であり、4.7GBの記録容量となっている。
【0005】
さらに高密度のBD(ブルーレイディスク)では、光透過層の厚さを0.1mmにした光ディスクを用いて、レーザ光波長を約405nm、NAを0.85とすることで1層あたり25GBの大容量化を実現している。
【0006】
このほか、光透過層の厚さをDVDと同じ0.6mmとした光ディスクを用いて、レーザ光波長を約405nm、NAを0.65とすることで18GB以上の大容量化を実現するHD DVD(高精細デジタル多用途ディスク)などがある。
【0007】
近年、光記録の分野においては、光の強度によって屈折率が変化する非線形光吸収特性または非線形光透過特性を有する超解像マスク層が成膜された超解像光ディスクを用いた高密度記録方式が研究されている。この方式では、光ディスクに集光スポット内の光強度が大きい、または温度が高い局所的な部分に屈折率変化をもたらすことで、光ディスク装置の光学要素である集光レンズの開口数NAと光の波長λから決まる回折限界λ/4NAよりも小さなマークを再生することができる。(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、このような超解像光ディスクでは、マスク層で光が吸収されるため、従来の光ディスクにおける再生パワーに比べて大きな再生パワーが必要となる。その結果、再生信号に含まれる低周波ノイズ(またはディスクノイズ)が増大することが知られている。(例えば、非特許文献2参照)。
【0009】
非特許文献1及び非特許文献2は、代表的な超解像光ディスクであるSuper−RENS(Super REsolution Nearfield Structure)方式に関するものである。これ以外に、情報の記録マークが光の強度によって屈折率が変化する非線形光吸収特性または非線形光透過特性を有する材料により形成された光超解像光ディスクも提案されている。(例えば、非特許文献3参照)。以降ではこれらを総称して超解像光ディスクと呼ぶ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“Observation of Eye Pattern on Super−Resolution Near−Field Structure Disk with Write−Strategy Technique”,Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.43,No.7A,pp.4212−4215(2004)
【非特許文献2】“Low Frequency Noise Reduction of Super−Resolution Near−Field Structure Disc with Platinum−Oxide Layer”,ODS Technical Digest,ThC3(2005)
【非特許文献3】“Sub−Terabyte−Data−Capacity Optical Discs Realized by Three−Dimensional Pit Selection”,Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.45,No.4A,pp.2593−2597(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の光ヘッドやこれを搭載した光ディスク装置によって再生または記録される超解像光ディスクにおいては、上記のように光ディスクを再生する際に大きな低周波ノイズが存在するので、光ディスクの再生信号を2値化データに復調する際に、この低周波ノイズがデータ復調エラーの発生要因になるという問題があった。
【0012】
この発明は上述の問題を解決するためになされたもので、低周波ノイズの影響を抑制し、読み出しデータの復調エラーの少ない再生信号を得ることができる光ヘッド装置と、この光ヘッド装置を備え、低周波ノイズを抑制する光ディスク装置、および、この光ディスク装置で使用する光ディスクを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る光ヘッド装置は、半導体レーザと、半導体レーザから放射される光ビームを集光して光ディスクの情報記録層に集光スポットを形成する対物レンズと、集光スポットが情報記録層で反射した戻り光ビームの光量を電気信号に変換し、前記光ディスクの再生信号を検出する受光素子とを備えた光ヘッド装置であって、この受光素子は、戻り光ビームの周辺部を受光する複数の受光エレメントからなる第1の受光面と戻り光ビームの中央部を受光する受光エレメントからなる第2の受光面とで構成される受光面を有し、対物レンズを焦点制御するための非点収差法で使用する4分割受光面において互いに直交する2つの分割線またはそれに相当する分割線の交点に対して、第1の受光面の複数の受光エレメントが非対称な位置に配置されるとともに前記戻り光ビームの中心が前記分割線の交点に調整されているものである。
【0014】
この発明に係る光ディスク装置は、上記の光ヘッド装置を備えたものである。
【0015】
また、この発明に係る他の光ディスク装置は、上記の光ヘッド装置を備え、第1の受光面の複数の受光エレメントの受光量レベルを検出する受光量レベル検出手段、または第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号レベルを検出する再生信号レベル検出手段を備えたものである。
【0016】
この発明に係る光ディスクは、超解像マスク層が成膜された超解像光ディスクであって、ゲイン調整手段によってゲイン調整を行なうための領域、および/または光ヘッド装置の少なくとも1つの光学要素を移動して戻り光ビームを受光面上の所定の位置に調整するための領域が設けられているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、再生信号に含まれている低周波ノイズを低減して再生信号の揺れを抑制し、正確なデータ再生を行うことができる。さらに、受光面と戻り光ビームとの位置ずれや戻り光ビームの非対称な強度分布が存在した場合に、低周波ノイズを抑制することができるため、光ディスクの再生特性を安定化し、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1の光ディスク装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1における低周波ノイズを含む超解像光ディスクの再生信号波形の図である。
【図3】本発明の実施の形態1における超解像光ディスクの再生信号の周波数スペクトルを説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の戻り光ビームの中央部から周辺までのCN比の実測結果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の光学構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の他の光学構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の他の光学構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の他の受光面を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係わる光ヘッド装置の他の光学構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係わる光ヘッド装置の非点収差法で使用する4分割の受光面を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2の光ヘッド装置の受光面と再生信号の演算を説明する図である。
【図13】本発明の実施の形態2の光ヘッド装置の他の受光面と再生信号の演算を説明する図である。
【図14】本発明の実施の形態2の光ヘッド装置の他の受光面と再生信号の演算を説明する図である。
【図15】本発明の実施の形態2の光ヘッド装置の他の受光面と再生信号の演算方法を説明する図である。
【図16】本発明の実施の形態3の光ディスク装置の全体構成を示す構成図である。
【図17】本発明の実施の形態3の光ディスク装置の主要部の構成を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態3における光ヘッド装置の受光素子の受光面と戻り光ビームの相対位置ずれを示す図である。
【図19】本発明の実施の形態3における光ヘッド装置で検出された戻り光ビームの周辺光による出力信号の周波数スペクトルを示す図である。
【図20】本発明の実施の形態3における光ディスク装置の低周波ノイズ量検出部と再生信号検出部の構成例を示すブロック図である。
【図21】本発明の実施の形態3の光ディスク装置の主要部の他の構成を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態3の光ディスク装置の主要部の他の構成を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態4の光ディスクを示す図である。
【図24】本発明の実施の形態4の光ディスクを記録または再生するときの動作シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における光ディスク装置の全体構成を示す図である。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、光ディスク装置50を構成する各ブロックの接続関係のすべてを表すものではない。
【0020】
図1において、光ディスク装置50は、光ディスク6を回転駆動するためのスピンドルモータ51、光ディスク6にレーザ光を照射し、光ディスク6の情報記録層で反射された戻り光を受光して信号を出力する光ヘッド装置52、光ヘッド装置52を光ディスク6の半径方向に駆動するためのスレッドモータ53、レーザ制御回路54、サーボ制御回路55、再生信号処理回路56、変調回路64、RAM(Random Access Memory)80、MPU(Micro Processing Unit)81を備えている。
【0021】
サーボ制御回路55には、スピンドルモータ51をコントロールするスピンドルモータ制御回路63、スレッドモータ53をコントロールするスレッドモータ制御回路62、光ヘッド装置52をコントロールする光ヘッド制御回路61があり、それぞれMPU81から発せられる命令により動作を行なう。
【0022】
また、再生信号処理回路56には、光ヘッド装置52で検出され、伝送路L3を介して送られた信号にもとづいて、サーボ信号を生成するサーボ信号検出回路59、再生信号RFを検出して伝送路L1に出力信号として出力するRF信号検出回路58、および光ディスク6の蛇行した案内トラック溝からの反射光で得られるウォブル信号を検出するウォブル信号検出回路57がある。
【0023】
MPU81は、RF信号検出回路58で検出された信号振幅値データや状態信号などの伝送路L1の出力信号、あるいは他の各部からの出力信号にもとづいて光ディスク装置全体の動作を決定し、各部へ制御データ(例えば、MPU81からRF信号検出回路58への伝送路L2の信号)を送って、それらの制御を行う。
【0024】
なお、再生信号処理回路56の構成要素のうち一部分がMPU81の内部で処理される構成であってもよい。
【0025】
RAM80は、プログラム領域およびデータ領域で構成されている。MPU81は、RAM80に記録されているプログラムに従って、各部の動作を制御するとともに、各部から送られてくる信号から制御の判断を行なう。
【0026】
光ヘッド制御回路61は、サーボ信号検出回路59から送られるサーボエラー信号やMPU81からの動作命令を元に、制御信号を伝送路L4経由で光ヘッド装置52に出力し、光ヘッド装置52から光ディスク6上へ照射される光の制御を行なう。
【0027】
スレッドモータ制御回路62およびスピンドルモータ制御回路63は、サーボエラー信号やMPU81からの動作命令を元に、スレッドモータ53およびスピンドルモータ51の制御を行なう。
【0028】
ウォブル信号検出回路57とRF信号検出回路58の出力信号は復調回路60で情報データに復調される。
【0029】
MPU81から出力されたデータの一部は、変調回路64で光ディスク6への記録に適した記録信号に変換され、レーザ制御回路54へ送られる。この記録信号に基づいてレーザ制御回路54から伝送路L5を介して光ヘッド装置52に制御信号が送られ、光ヘッド装置52に搭載されている半導体レーザの発光パワーが制御される。
【0030】
この実施の形態1における光ディスク6は、非線形光吸収特性または非線形光透過特性を有する超解像マスク層が成膜された超解像光ディスクである。
【0031】
光ヘッド装置52は、CD、DVD、BDやHD DVD等の非超解像の光ディスクのみならず、超解像光ディスクにも対応するものである。光ヘッド装置52は、光ディスク6に半導体レーザによる光ビームを集光するとともに、光ディスク6の情報記録層で反射した戻り光ビームを受光し、再生信号やサーボ信号を生成するための信号を検出する。
【0032】
次に、光ディスク6の再生信号に含まれる信号成分と低周波ノイズ成分との関係、および、これらの成分と読み出しエラーとの関係について述べる。
【0033】
光ディスク6の再生原理は、光ディスク6の情報記録層における凹凸または屈折率差によるマークで回折された戻り光を受光素子が検出し、その戻り光の強度に対応した再生信号を得ることである。この再生信号には、ディスク自身がもつランダムなノイズ成分が空間周波数の低域側に含まれる。このランダムノイズを低周波数ノイズと呼ぶ。
【0034】
図2は、低周波ノイズが発生しているときの再生信号波形の例である。横軸は時間、縦軸は再生信号の電圧を示している。図2に示すように、目的の再生信号Scよりも大きいノイズ成分Ncが再生信号Scに重畳することにより、再生信号波形はその振幅よりも大きな波形の揺れを生じる。このような波形の揺れは、データを復調する際に読み出しエラーを起こす原因となる。
【0035】
図3は、超解像光ディスクの再生信号の時間領域に関する周波数スペクトルを説明する図であり、横軸は周波数、縦軸は信号成分の電力値(対数表示)である。
【0036】
再生信号のスペクトル分析を行なうと、図3に示すような4種類の空間周波数に対応したそれぞれ記録マーク列M1、M2、M3、M4に対応する再生信号成分と、低域側に光ディスクの低周波ノイズ(ディスクノイズ)成分がある。低周波ノイズ成分は、空間周波数が小さくなるほど増加する傾向を示す。ここでは、再生データパターンはランダムパターンデータではなく、例えば4種類の空間周波数F1〜F4(F1<F2<F3<F4)の固定マーク列が交互に続くパターンの場合を示している。図3のFcは、対物レンズの開口数NAと波長λとで決まる回折限界λ/(4NA)に対応する分解能のカットオフ周波数である(F1<F2<Fc<F3<F4)。
【0037】
図3では、回折限界周波数Fcよりも高域側に位置するマーク列M3およびマーク列M4に対応する信号は、超解像効果を利用して再生される超解像再生信号である。一方、回折限界周波数Fcよりも低域側に位置するマーク列M1およびマーク列M2に対応する信号は、回折現象を利用した非超解像再生信号である。回折限界周波数Fcよりも低域側であって非超解像再生信号であるマーク列M1およびマーク列M2に対応する信号に、比較的大きな低周波ノイズが重畳している。以下、図3の空間周波数F1よりも低域側の空間周波数FLにおける低周波ノイズレベルNLをノイズレベルの代表とする。低周波ノイズレベルNLが小さい再生信号ほど再生信号成分の振幅に対するランダムな変動が小さい。
【0038】
再生信号の品質を定量的に比較する際、再生信号成分レベルCL(Carrier Level)の低周波ノイズレベルNL(Noise Level)に対する比、すなわちCL/NLの値(以下、CN比と称する)が重要な指標となる。このCN比が大きいほど、再生信号成分に対するノイズ成分は小さいので、信号の品質は良いことになる。
【0039】
図3では、縦軸の電力値は対数表示としているので、例えば、CN_3はマーク列M3に対応する超解像再生信号のCN比、CN_4はマーク列M4に対応する超解像再生信号のCN比を示している。以下ではこのCN比を使って説明する。
【0040】
図4は、本発明の光ヘッド装置の構成例を示す図である。図4において、外部から伝送路L5を介して入力される制御信号にもとづいて半導体レーザ2から放射された波長λの光ビーム1は、コリメータレンズ3によって略平行光ビームに変換されてビームスプリッタ4を透過し、対物レンズ5によって光ディスク6に集光される。光ディスク6で反射した戻り光ビームQは対物レンズ5によって再び略平行光ビームになり、前記のビームスプリッタ4で反射し、集光レンズ7で収束光ビームになる。この収束光ビームを受光素子27が受光して受光パワー量に応じた電気信号を伝送路L3に出力する。
【0041】
図4の構成以外に、例えば、ビームスプリッタ4に代えて、偏光ビームスプリッタを配置し、且つその偏光ビームスプリッタと対物レンズ5の間に1/4波長板を挿入してもよい。これにより、光の利用効率を向上させることができる。
【0042】
また、光ディスク6が回転するときに、対物レンズ5の光軸方向およびその光軸方向に垂直な方向の光ディスク6の位置変動によって生じる対物レンズ5の焦点距離の誤差を補正するように、対物レンズ5を光軸方向およびその光軸方向に垂直な方向に駆動させる対物レンズ駆動アクチュエータを備えてもよい。
【0043】
また、光ディスクの再生信号の検出光学系以外に、光ディスク6の情報記録層に対する対物レンズ5の焦点誤差量やトラッキング誤差量を検出するためのセンサー光学系を備えていてもよい。
【0044】
センサー光学系は、集光レンズ7と受光素子27の間に焦点誤差またはトラッキング誤差などの検出対象に応じて配置されたセンサー素子と、センサー素子によって非点収差が付加された光ビームや分割された光ビームを受光し、電気信号に変換できる複数の受光エレメントを有した受光素子27で構成される。
【0045】
図5は、戻り光ビームQの中の低周波ノイズについて、戻り光ビームQの半径方向の分布を測定した結果である。図5(a)と図5(b)は、光ディスク6のタンジェンシャル方向(すなわち、データトラック方向に対応した方向)および、ラジアル方向(すなわち、光ディスクの半径方向に対応した方向)の光ビーム9のCN比(CL/NL比)の分布を示したものである。横軸は、戻り光ビームQの中央から周辺までの距離であり、戻り光ビームQの半径を100として正規化した値である。すなわち、半径位置が0の位置は戻り光ビームQの中央、100の位置は戻り光ビームQの周辺である。図5(a)については、戻り光ビームQの中心からプラス側と、その逆向きのマイナス側におけるCN比を示している。
【0046】
図5の結果から、タンジェンシャル、ラジアルのいずれの方向についても、戻り光ビームQの周辺部へ向かうにしたがってCN比が増大している。
【0047】
そのため、戻り光ビームQ全体のうち周辺部を強調して検出する、または周辺部のみを検出することができれば、CN比が大きい再生信号を得ることができる。
【0048】
図5のCN比分布から、戻り光ビームQの中央(または中心)から半径の約60%の位置よりも外側(図中破線より右側の領域)はCN比の増加が顕著であり、CN比が大きい再生信号の検出に特に有効な範囲である。
【0049】
また、図5(a)の結果から、タンジェンシャル方向のCN比は、戻り光ビームQの中心からプラス側半径方向に比べて、マイナス側半径方向のCN比が小さい傾向にある。
【0050】
以下、戻り光ビームQの全体のうち周辺部を強調して検出、または周辺部のみを検出するヘッド装置の構成について述べる。
【0051】
図6(a)〜(c)は、戻り光ビームQの中央部に対して周辺部を強調して再生信号を検出できる構成である。
【0052】
図6(a)は集光レンズ7と受光面8a、図6(b)は受光面8aを含む受光素子27の構成を示す図である。図6(b)において、受光素子27は、戻り光ビームQの周辺部を検出できる受光エレメントAおよびBと、戻り光ビームQの中央部を検出できる受光エレメントCの3つに分割された受光面8aと、受光エレメントからの信号に対して増幅や加算・減算の合成を行なう信号演算部109とで構成される。受光面8aと信号演算部109は、一体になっていても分離されていてもよい。
【0053】
図6(b)の構成により、分割された受光面8aの第1の受光面である受光エレメントAと受光エレメントBそれぞれの出力信号Saと出力信号SbをゲインK1で増幅して加算した信号と、第2の受光面である受光エレメントCの出力信号ScをゲインK2で増幅した信号とを合成した信号を再生信号とする。すなわち、再生信号RFは、RF=K1×(Sa+Sb)+K2×Scで生成される。なお、各ゲイン値は正の場合もあり、負の場合もある。また、その大きさは1より大きい場合も、小さい場合もある。これは、以下で述べるすべてのゲインについても同様である。
【0054】
再生信号のCN比が大きくなるように受光エレメントAと受光エレメントBを配置するには、受光面8aを図6(a)のD1の方向に移動させて、再生信号のCN比が最も大きくなるように受光面8aに対する戻り光ビームQの位置を最適に調整する。
【0055】
また、図6(a)の集光レンズ7をD1の方向に移動させることで、上述と同様に受光面上の戻り光ビームQの相対位置を移動させることができる。
【0056】
また、集光レンズ7あるいは受光面8aを図6(a)のD2の方向に移動させて、集光レンズ7と受光面8aとの距離を変えることで受光面上の戻り光ビームQの径の大きさを変化させ、戻り光ビームQの周辺部が受光エレメントAおよび受光エレメントBで受光される量を再生信号のCN比が最も大きくなるように最適に調整することも可能である。
【0057】
さらに、図6(c)に示すように、受光面8aの第2の受光面である受光エレメントCを受光エレメントC1および受光エレメントC2に2分割した受光面8bにより、各受光エレメントの出力信号Sa、出力信号Sb、出力信号Sc1、出力信号Sc2を得て、これらの出力信号から演算値RES=(Sa+Sc1)−(Sb+Sc2)を算出し、これをもとにCN比が最適となる位置に受光面8bを配置することもできる。これは、CN比が大きくなる周辺部が戻り光ビームQの光軸中心に対して非対称に分布する場合に有効であり、この非対称な分布を補正するように前記のRESをCN比が最も大きくなる所定の目標値に合わせる。
【0058】
以下に、図7(a)および(b)にもとづいて、戻り光ビームQの中央部を遮光し、周辺部だけで再生信号を検出する構成について説明する。
【0059】
図7(a)(8dの平面図を示す図7(a’)と、10の平面を示す図7(a”)とを含めて図7(a)として説明する。)は、集光レンズ7と、戻り光ビームQの中央部を遮光または減衰させて周辺部のみを透過させる遮光素子10と、遮光素子10を透過してきた戻り光ビームQの周辺部を検出する受光面8dにより構成したものであり、遮光素子10の黒い部分が戻り光ビームQを遮光または減衰する部分である。受光面8d上には、分割された戻り光ビームQのスポットが形成される。
【0060】
図7(a)においては、1つの受光エレメントからなる受光面8dで受光しているが、図6(b)または図6(c)で示したように周辺部と中央部とを個別に検出できる受光面エレメントを有する受光面で受光してもよく、図6の場合と同様な再生信号RFの検出を行なってもよい。
【0061】
図6の構成の場合と同様に、図7(a)の構成においても、受光面8d、集光レンズ7または遮光素子10を図7(a)のD1の方向に移動させて、再生信号のCN比が最も大きくなるように、受光面8dに対する戻り光ビームQの位置を最適に調整することができる。
【0062】
また、集光レンズ7に対して遮光素子10をD3の方向に移動させる、もしくは集光レンズ7をD3の方向に移動させることによって、遮光素子10を透過させる戻り光ビームQの周辺部の範囲を再生信号のCN比が最も大きくなるように調整することができる。
【0063】
また、図7(b)(8e_C、8e_A1、8e_A2、8e_B1、8e_B2の平面図を示す図7(b’)と、11の平面を示す図7(b”)とを含めて図7(b)として説明する。)に示すように、戻り光ビームQの中央部の光量を減少させる遮光素子10の代わりに、回折素子11とすることができる。回折素子11は、戻り光ビームQの周辺部を回折させる領域Gaおよび領域Gb、中央部を回折させる領域Gcはそれぞれ異なる回折パターンが形成されていて、異なる方向に回折させ分離するものである。これにより、受光面8e_C、8e_A1、8e_A2、8e_B1、8e_B2に、それぞれ図7(b)に示すような戻り光ビームQのスポットが形成される。
【0064】
回折素子11で回折され分離された戻り光ビームQの周辺部と中央部を個別に受光する受光面8e_C、8e_A1、8e_A2、8e_B1、8e_B2により検出した出力信号をSc、Sa1、Sa2、Sb1、Sb2とすると、再生信号RFはRF=K1×(Sa1+Sa2)+K2×(Sb1+Sb2)なる演算により生成される。ここで、K1、K2は、ゲインである。
【0065】
図7(b)においては、各受光面は1つの受光エレメントからなる受光面で受光しているが、図6(a)または図6(b)で示したように周辺部と中央部とを個別に検出できる受光面パターンを有する受光素子で受光してもよく、図6の場合と同様な再生信号RFの検出が行える。
【0066】
図7(b)の構成の場合にも、受光面8e、集光レンズ7または回折素子11を図7(b)に示すD1の方向に移動させること、さらに集光レンズ7をD2の方向、もしくは回折素子11をD3の方向にそれぞれ移動させることによって、再生信号のCN比が最も大きくなるように、受光面に対する戻り光ビームQの位置を最適に調整することができる。
【0067】
次に、図8(a)〜(e)にもとづいて、戻り光ビームQの中央部に対して強調して周辺部を検出して再生信号を生成する構成について説明する。
【0068】
図8(a)(12の平面を示す図8(a’)を含めて図8(a)として説明する。)は、集光レンズ7と戻り光ビームQを複数の光ビームに分光または分割する回折素子12と、この回折素子12によって分光または分割された複数の光ビームを受光する複数の受光面8f_1、8f_2、8f_0により構成したものである。
【0069】
図8(b)はこれらの受光面を含む受光素子27の構成を示す図である。受光素子27は、受光エレメント8f_A1、8f_B1、8f_C1に分割された8f_1と、受光エレメント8f_A2、8f_B2、8f_C2に分割された8f_2と、受光エレメント8f_0と信号演算部109を有している。3つの受光面と信号演算部109は、一体になっていても分離されていてもよい。回折素子12で回折された+1次回折光Q1は受光面8f_1で、−1次回折光Q2は受光面8f_2で、0次回折光Q0は受光エレメント8f_0で受光する。
【0070】
受光エレメント8f_A1と8f_B1、および受光エレメント8f_A2と8f_B2は戻り光ビームQの周辺部を、受光エレメント8f_C1、および受光エレメント8f_C2は戻り光ビームQの中央部を検出する。
【0071】
図8(b)のように戻り光ビームQが回折して分離される方向に略直行した分割線により受光面が分割されている場合、回折素子12を図8(a)のD4の方向(戻り光ビームQの光軸を中心とする回転方向)に回転させることで、0次回折光Q0を中心にして+1次回折光Q1および−1次回折光Q2だけをD4の方向に移動させることができる。そのため、受光面の分割線J1と分割線J2をそれぞれ戻り光ビームQが回折して分離される方向から傾けて非平行としておくことで、回折素子12の回転に伴って受光エレメント8f_A1と8f_B1、および受光エレメント8f_A2と8f_B2により検出される戻り光ビームQの周辺部の領域を、CN比が最も大きくなるように最適に調整することができ、戻り光ビームQの径のばらつきになどによる配置誤差の影響を小さくできる。
【0072】
また、回折素子12をD3の方向に移動させると、受光面上の戻り光ビームQの各回折光はD3の方向に変位する。これにより、前記戻り光ビームQの+1次回折光Q1および−1次回折光Q2の配置誤差の影響を小さくできる。
【0073】
また、図6および図7の構成の場合と同様に、集光レンズ7をD1の方向とD2の方向に移動させることで、受光面上の戻り光ビームQの各回折光の位置および光束径を変化させることができるので、戻り光ビームQのCN比が大きい周辺部を抽出し検出することができる。
【0074】
図8(b)に示した受光面の代わりに、図8(c)〜(e)に図示する受光面パターンとしてもよい。図8(c)は、図8(b)での分割線の方向が略90°回転したもの、すなわち、戻り光ビームQが回折して分離される方向に略平行する分割線により受光面が分割されているものである。ただし、図8(b)と同様に、中央部と周辺部の検出領域を分割する2つの分割線が非平行となっている。
【0075】
図8(d)と8(e)の受光面は、中央部と周辺部の検出領域を分割する2つの分割線が略平行であるが、戻り光ビームQが回折して分離される方向に対して非直角かつ非平行な分割線により受光面が分割されているものである。
【0076】
図8(b)〜(e)において、2つの分割線と戻り光ビームQが回折して分離される方向またはその直角方向との角度は、1°〜5°が望ましい。
【0077】
図6〜図8で示した受光素子の受光面は、戻り光ビームQの周辺部を検出するために受光面の分割方向が光ディスク6のタンジェンシャル方向に対応する方向であるのか、ラジアル方向に対応する方向かについては言及していなかったが、図5で説明したように、タンジェンシャルおよびラジアルのいずれの場合も戻り光ビームQの中央から周辺部に向かってCN比の増大が観測されていることから、いずれの方向に分割されていても同様のCN比増大の効果が得られる。
【0078】
図6〜図8では、戻り光ビームQの集光位置に受光面を配置している図であるが、集光位置以外に配置されていてもよい。
【0079】
図9に示すような、タンジェンシャル方向あるいはラジアル方向に限定せずに全方向の周辺部を受光する受光面gであっても同様のCN比の増大効果が得られる。タンジェンシャル方向もしくはラジアル方向のいずれかの周辺部を受光する場合に比べて、周辺部の光量を多く受光することができるので、C/N比の点で有利である。ここで、中央部を受光する受光エレメントCの一部が受光面の外形に接するように中央部とその外側での幅が異なる形状とすることで、できる限り全方向の周辺部を受光しつつ、中央部を受光する受光エレメントCからの電気信号を取り出しやすくできる。
【0080】
上記の通り、幾種類かの構成があるが、これに限るものではなく、これらと本質的に同様の構成、もしくは、図6〜図9の構成の組み合わせからなる構成であってもよい。
【0081】
ところで、一般に光ヘッド装置において、受光素子は、光学部品が固定される光学ハウジングにUV接着やネジ固定されること多いが、温度や湿度など使用環境の変化によってこれらの部分の寸法等が変わることに起因して、戻り光ビームQと受光面との相対位置が経時変化する場合がある。
【0082】
この相対位置の変化の最大値は、現状でおよそ4μmである。一方、再生信号の品質を保つには、CN比は6dB以下の変動に抑えるのが望ましい。
【0083】
また、図5で示したCN比の実測結果から、CN比の変化が6dB以下であるためには、戻り光ビームQ半径のおよそ約13%以内に位置ずれを抑えておく必要がある。
【0084】
したがって、戻り光ビームQの半径をおよそ4μm÷(13%)=30μm以上、すなわち、戻り光ビームQの直径を約60μm以上にしておくことによって、再生信号の品質について信頼性を確保できる光ヘッド装置を提供することができる。
【0085】
図6〜図9では、本発明の光ヘッド装置の再生信号RFの検出系を説明した。次に、この再生信号RFの検出光学系と、焦点誤差検出やトラッキング誤差検出を行なうセンサー光学系との光路が共通である場合について説明する。ただし、再生信号RFの検出方法は、基本的に図6〜図9と同じである。
【0086】
図10は、センサー光学系も示した光ヘッド装置の一例である。図10において、半導体レーザ2から放射された波長λの光ビーム1は複数の光ビームに分光する回折素子21を通過し、コリメータレンズ3で略平行光ビームに変換される。コリメータレンズ3を透過した光ビーム1は、偏光プリズム22、リレーレンズ23aおよびリレーレンズ23b、光ビームの偏光を略偏光に変換する1/4波長板24、前記1/4波長板24を透過して、対物レンズ5で光ディスク6に集光される。光ディスク6で反射した光ビームは、戻り光ビームQとして再び対物レンズ5を透過して略平行光ビームに変化し、リレーレンズ23bおよびリレーレンズ23aを透過して偏光プリズム22で反射する。偏光プリズム22で反射された戻り光ビームQは、集光レンズ7で収束光ビームに変換され、センサー素子26で再生信号およびサーボ制御用信号を生成できる光ビームに変換される。センサー素子26を経由した戻り光ビームQは受光素子27で受光される。
【0087】
また、駆動系として、対物レンズ5をその光軸方向と光ディスク6の略半径方向に駆動するための対物レンズ駆動アクチュエータ25、対物レンズ5で集光される光ビームの球面収差を変化させるためにリレーレンズ23bを光軸方向に駆動するリレーレンズ駆動アクチュエータ28を備える。
【0088】
受光素子27で戻り光ビームQが検出する出力信号は伝送路L3を介して図1の再生信号処理回路56に伝送され、再生信号処理回路56のサーボ信号検出回路59で、対物レンズ5と光ディスク6との焦点ずれ量に相当する焦点誤差信号や、対物レンズ5で生成された集光スポットの光ディスク6上のデータトラックからのオフトラック量に相当するトラッキング誤差信号、集光スポットの残留球面収差量に相当する球面収差誤差信号などが生成され、光ヘッド制御回路61から伝送路L4を介して、図10に示すように光ヘッド装置52の対物レンズ駆動アクチュエータ25およびリレーレンズ駆動アクチュエータ28を制御する。
【0089】
対物レンズ駆動アクチュエータ25は、対物レンズ5を光軸方向に駆動して光ディスク6への焦点制御、および光ディスク6の半径方向に駆動して光ディスク6に形成されているデータトラックへのトラッキング制御に用いられる。
【0090】
回折素子21で分光された光ビームは、トラッキング誤差検出に用いられる。ただし、分光された光ビームが不要なトラッキング誤差検出方法の場合には、回折素子21を除去してよい。
【0091】
受光素子27は、センサー素子26の機能と組み合わせて対物レンズ5またはその他への制御信号と再生信号などを生成するため、複数に分割された受光エレメントから成る受光面を有し、電圧に変換されて電気信号が出力される。
【0092】
焦点誤差検出方式に非点収差法を用いる、つまり、対物レンズ5の焦点制御に非点収差法を使用する場合であれば、センサー素子26は、例えば非点収差を付加できるシリンドリカルレンズあるいはホログラム素子とすればよい。非点収差法では、田の字の4分割受光面で戻り光ビームQを受光するのが一般的である。例えば非点収差法で得られた焦点誤差検出信号は、光ディスク6の情報記録層に対して対物レンズ5の焦点距離の誤差を補正するように焦点制御するための制御信号として利用する。
【0093】
図11の受光面は、非点収差法で使用する4分割の受光面と、戻り光ビームQの周辺部と中央部を個別に受光し検出可能な受光面を複合した構成となっている。このような光学系の共通化、および受光面の複合化は、光ヘッド装置の小型化とコスト低減が図れるという利点がある。
【0094】
図11(a)は、タンジェンシャルまたはラジアルの一方向に分割受光面を有した図6(c)で示した受光面を基本とするものである。図11(b)は、図9に示した受光面を基本とするものである。
【0095】
図11(a)および図11(b)の場合、受光エレメントA1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2からの信号をSa1、Sa2、Sb1、Sb2、Sc1、Sc2、Sd1、Sd2とすると、再生信号RFはRF=K1×(Sa1+Sa2+Sb1+Sb2)+K2×(Sc1+Sc2+Sd1+Sd2)、焦点誤差信号FESはFES=(Sa1+Sc1+Sb2+Sd2)−(Sa2+Sc2+Sb1+Sd1)なる演算によって生成できる。
【0096】
また、図5(a)に示されたタンジェンシャル方向のCN比の実測結果によれば、戻り光ビームQの中心に対してプラス側(外側)半径方向とその反対方向のマイナス側(内側)半径方向のCN比には数dBの差が生じており、タンジェンシャル方向にアンバランスなCN比特性を示している。よって、マイナス側半径方向の周辺部を検出する受光エレメントと中央部を検出する受光エレメントとの分割線から戻り光ビームQの中心までの距離を、プラス側半径方向の周辺部を検出する受光エレメントと中央部を検出する受光エレメントとの分割線から戻り光ビームQの中心までの距離よりも大きく設定して、再生信号のCN比を向上させることができる。
【0097】
図11(c)は、図11(a)の受光面を基本としたものであり、図11(d)は、図11(b)の受光面を基本としたものである。また、再生信号RFと焦点誤差信号FESの演算式は、上記で述べた図11(a)および図11(b)でのものと同じである。
【0098】
図11(c)および図11(d)の受光エレメントC1および受光エレメントC2の幅W1と受光エレメントD1および受光エレメントD2の幅W2はW1<W2の関係にしており、プラス側半径方向の周辺部を受光エレメントA1および受光エレメントA2で受光し、マイナス側半径方向の周辺部を受光エレメントB1および受光エレメントB2で受光する。
【0099】
一方、非点収差法による焦点誤差検出を行なう場合、田の字4分割受光面の分割線、またはそれに相当する分割線の交点と、戻り光ビームQの光軸中心を合わせることによって、最も精度が高い焦点誤差信号が得られる。
【0100】
したがって、図11(c)および図11(d)の受光面により、最大のCN比と最も精度が高い焦点誤差信号を得るための最適な戻り光ビームQと受光面の位置合わせを行なうことができる。
【0101】
また、図6〜図9と同様に集光レンズ7またはセンサー素子26またはリレーレンズ23a、24bまたは受光素子27をD2〜D4の方向に移動させることによって、CN比が最大となるように調整できる。
【0102】
上記のように、図6〜図11で説明した構成において、集光レンズ7、遮光素子10、回折素子11、回折素子12、センサー素子26、受光素子27のうち少なくとも1つを移動させる駆動手段を設けて、CN比が最大となるように戻り光ビームQと受光素子の受光面パターンとの相対位置を制御することができる。
【0103】
また、図4および図10の光ヘッド装置が複数の異なる光ディスク規格に対応している場合、光ディスク規格に対応して対物レンズ5の開口数NAが変わることによって生じる戻り光ビームQの径の変化を、この構成で補正してもよい。また、戻り光ビームQは必ずしも集光させて受光素子に入射させる必要はなく、略平行光束であってもよい。
【0104】
以上のように、実施の形態1における光ヘッド装置は、戻り光ビームQの周辺部を受光する第1の受光エレメントと戻り光ビームQの中央部を受光する第2の受光エレメントを有する分割受光面によって戻り光ビームQを検出し、第1の受光エレメントからの出力信号と第2の受光エレメントからの出力信号とを合成するようにしたので、低周波ノイズの少ない再生信号を生成することができる。
【0105】
実施の形態2.
以下、実施の形態2を図12〜図15に基づいて説明する。
【0106】
実施の形態2の光ヘッド装置は、戻り光ビームQのうち、戻り光ビームQの中央部に比較してCN比が高い戻り光ビームQの周辺部を強調して検出する光ヘッド装置において、複数の受光エレメントで検出される出力信号の振幅ゲインを調整して中央部光と周辺部光を検出する各受光エレメントからの出力信号の合成である再生信号RFのCN比を改善する光ヘッド装置である。
【0107】
図12〜図15は、受光素子27の受光面8、戻り光ビームQ、および信号演算部109における再生信号RFの演算回路を示す模式図である。受光面8は、本発明の実施の形態1で示した図6〜9と図11に含まれるものであり、これら以外の図6〜図9および図11の受光面であってもよい。
【0108】
図12の受光面パターンは光ディスク6のタンジェンシャル方向DTに対応する方向に受光エレメントがA〜Cの3つ分割され、戻り光ビームQの周辺部を受光する第1の受光面である受光エレメントAおよび受光エレメントBと、第2の受光面である中央部を受光する受光エレメントCから成る。
【0109】
受光エレメントAおよび受光エレメントBからの出力信号SaとSbをそれぞれゲインKaとゲインKbで増幅して加算した合成信号Ka×Sa+Kb×Sbと、受光エレメントCからの出力信号ScをゲインKcで増幅した信号Kc×Scとを加算し、この加算された信号をさらにゲイン値Krfで増幅して再生信号RF=Krf×(Ka×Sa+Kb×Sb+Kc×Sc)を生成する。ここで、ゲイン値Krfは、信号振幅がある一定値となるようにAGC(Auto Gain Control)回路によるゲイン値であってもよい。
【0110】
図12の光ヘッド装置は、各受光エレメントからの出力信号に対して個別にゲイン調整できるようにしたことが特徴である。これにより、戻り光ビームQと受光面との相対ずれ、または戻り光ビームQの強度分布の非対称性が存在したときにも、各ゲインを個別に調整することによって再生信号RFのCN比を大きくすることができる。
【0111】
さらに、図13に示すように光ディスク6のラジアル方向(DTに対して垂直)に対応する方向に分割された受光面パターンを用いてもよい。戻り光ビームQの周辺部と中央部を個別に取り出した後に、戻り光ビームQの周辺部の光量割合を大きくするようなゲインKa、KbおよびKcを設定しておくことでCN比が大きい再生信号RFを得ることができる。
【0112】
また、図14のような受光面であっても、図12の場合と同様の信号処理によってCN比が大きい再生信号RFを得ることができる。
【0113】
図15は、戻り光ビームQの周辺部を受光する受光エレメントAおよび受光エレメントBをさらに3つに分割させた受光面である。受光エレメントA1〜A3および受光エレメントB1〜B3からの出力信号Sa1〜Sa3および出力信号Sb1〜Sb3のそれぞれについてゲインKa1〜Ka3およびKb1〜Kb3で増幅した各信号を合成し、さらに受光エレメントCからの出力信号ScをゲインKcで増幅した信号Kc×Scを加算し、この加算された信号をゲイン値Krfで増幅して再生信号RF=Krf×(Ka1×Sa1+Ka2×Sa2+Ka3×Sa3+Kb1×Sb1+Kb2×Sb2+Kb3×Sb3+Sb+Kc×Sc)とすることができる。ここで、ゲイン値Krfは、信号振幅がある一定値となるようにAGC(Auto Gain Control)回路によるゲイン値であってもよい。
【0114】
図15のような受光面であれば、受光エレメントの分割方向(分割線に直交する方向)に戻り光ビームQが相対的に位置ずれしても、CN比が比較的大きい(低周波ノイズ成分が比較的小さい)戻り光ビームQの周辺部が受光エレメントA3および受光エレメントB1で検出されたとき、それらを選択的に使用する、あるいは出力信号Sa3および出力信号Sb1の割合を他の出力信号に比べて大きくする、具体的にはゲインKa3およびKb1を他のゲインKa1、Ka2、Kb2,Kb3に対して大きく設定して演算することにより、CN比が大きく変動が小さい再生信号を得ることができる。
【0115】
また、図15に示す受光面の分割方向はタンジェンシャル方向DTとしているが、分割方向はラジアル方向としてもよい。
【0116】
以上のように、実施の形態2の光ヘッド装置は、戻り光ビームQの周辺部と中央部を個別に受光して個々に検出した信号を出力できる受光素子27により、周辺部の出力信号に対して異なるゲインを設定できるとともに、周辺部と中央部の出力信号に対しても異なるゲインを設定できるようにしたものである。
【0117】
この構成により、複数の受光エレメントで検出される前記周辺部の出力信号について異なったゲインを与えることができるので、戻り光ビームQと受光面の位置ずれが生じる、または前記戻り光ビームQの強度に非対称な分布が存在する場合に、中央部光と周辺部光を検出する各受光エレメントからの出力信号の合成である再生信号RFのCN比を大きくすることができる。
【0118】
実施の形態3.
以下、本発明の実施の形態3を図16〜図22に基づいて説明する。
【0119】
図16は、実施の形態3におる光ディスク装置の全体構成を示す構成図である。
【0120】
図1と異なる点は、RF信号検出回路58からの伝送路L6の信号により光ヘッド装置52の演算回路部分を制御している点である。
【0121】
図17は本発明の光ディスク装置であるが、受光素子27とRF信号検出回路58の構成だけを示しており、半導体レーザから受光面に至る光学系は省略している。図17の受光面は実施の形態1の図6および図12の分割受光エレメントであるが、本発明で説明するすべての受光面に適用することができる。
【0122】
受光素子27は、受光エレメントA〜Cの3つに分割された受光面を有し、これらの受光面で戻り光ビームQを受光し、出力信号Sa、出力信号Sbおよび出力信号Scを出力している。
【0123】
出力信号Sa、SbおよびScは、それぞれ信号レベル変換部101、102および103に入力され、ゲイン調整部104の出力に従って設定されるゲイン値Ka、KbおよびKcによって信号を増幅された後に加算され、さらにゲイン値Krfで増幅されて再生信号RFとなる。すなわち、再生信号RFは、RF=Krf×(Ka×Sa+Kb×Sb+Kc×Sc)の演算で得られる。
【0124】
RF検出回路58の再生信号RFを高域透過回路108に通過させて、ディスクノイズに起因する低周波ノイズ以外の再生信号帯域に比べて十分低いサーボ制御の周波数帯域をカットする。
【0125】
以下に、低周波ノイズを低減し、CN比を向上させる構成と方法について説明する。
【0126】
受光素子27の受光面8と戻り光ビームQの位置が図18に示すようにずれている場合、出力信号Saおよび出力信号Sbのスペクトルはそれぞれ図19(a)と図19(b)のようになり、低周波ノイズNaおよび低周波ノイズNbはNa>Nbの関係となる。
【0127】
出力信号Saと出力信号Sbを加算して再生信号RF=Sa+Sb+Kc×Scとする場合、すなわちは信号レベル変換部101および信号レベル変換部102の無い場合、あるいはゲインKa=1、ゲインKb=1に設定した場合、受光エレメントAに入射する戻り光ビームQの中央部の量は受光エレメントCへ入射する戻り光ビームQと比較して大きく、且つ受光エレメントAへ入射される全体の光量が増えるので、再生信号RFに低周波ノイズを多く含む出力信号Saの割合が増大し、読み出しエラーが増大する。
【0128】
図17に示す光ディスク装置では、出力信号Saおよび出力信号Sbをノイズ検出手段71に入力し、その出力をゲイン調整部104へ入力する。
【0129】
ノイズ検出手段71では、出力信号Saおよび出力信号Sbがそれぞれ低周波ノイズ量検出部105および106に入力され、そこで検出された周波数FL近傍の低周波ノイズ量が比較器107へ出力される。比較器107は、低周波ノイズ量の差分を演算しゲイン調整部104へ出力する。
【0130】
ゲイン調整部104は、比較器107から出力される差分信号に基づいて、低周波ノイズNaと低周波ノイズNbが略同レベルになるように、すなわち低周波ノイズの差分信号が略ゼロに近づくように信号レベル変換部101および102のゲイン値KaおよびKbを調整する。
【0131】
さらに、再生信号RFにおける光ディスク記録マーク長の大きい信号の振幅レベルと小さい信号の振幅レベルとの比率、すなわち信号変調比Rが読み出しエラーを充分抑制できる値以上になるように、ゲイン調整部104は信号レベル変換部103のゲイン値Kcと信号レベル変換部101および102のゲイン値KaおよびKbを調整する。
【0132】
また、再生信号のジッター値または再生信号の復調処理後の読み出しエラー率(エラーレート)が目標値以下になるように信号レベル変換部103のゲイン値Kcを調整することもできる。
【0133】
図20(a)は、図17の低周波ノイズ検出部の構成例を示したブロック図である。図20(a)は、受光エレメントからの出力信号の周波数FL近傍の成分を抽出するバンドパスフィルタ回路133(LPF)とそのレベルを検出するレベル検出回路134で構成され、低周波ノイズNLを得る。ここで、バンドパスフィルタ回路133の一例として、ノッチフィルタ回路を用いることで、周波数FLでの低周波ノイズだけを抽出することが可能となり、ゲイン調整部104の調整精度を上げることができる。
【0134】
図17の低周波ノイズ検出部105および106はCN比検出部に置き換えてもよい。CN比検出部は、図3で説明したCN比を抽出し出力するものである。
【0135】
図20(b)は、そのCN比検出部の具体的な構成の一例であり、CN比検出部に入力される信号からバンドパスフィルタBPF_Lにより周波数FL近傍の低周波ノイズ成分を抽出して、続くレベル検出回路134でレベル値LV_Lを得る。また、バンドパスフィルタBPF_Hによりマーク列M3またはマーク列M4の再生信号の周波数F3または周波数F4近傍の信号成分を抽出して、続くレベル検出器136でレベル値LV_Hを得る。次いで、除算器137により、レベル値LV_Lとレベル値LV_Hの比を求める。
【0136】
以上のように、低周波ノイズ量の検出手段と低周波ノイズ量の検出手段からの低周波ノイズレベルの比較手段とゲイン調整手段によって、受光素子27と戻り光ビームQの位置ずれがある場合の低周波ノイズを最適に抑制することができる。また、低周波ノイズ量の検出手段は、上記のようにCN比の検出手段と置き換えることが可能である。
【0137】
また、光ディスク装置の記録および再生特性の信頼性をより向上させるために、図17の構成では信号消滅防止手段70を設けている。以下に、信号消滅防止手段70による信頼性向上について述べる。
【0138】
ゲイン調整部104においては、受光エレメントの出力信号に含まれる低周波ノイズが小さく検出されるほど再生信号RF全体に対する出力信号の割合を大きくするため、出力信号に設定されるゲイン値は大きく設定されることになる。
【0139】
しかしながら、図17の受光エレメントAまたは受光エレメントBに戻り光ビームQが入射していないような場合には、戻り光ビームQが入射していない受光エレメントからの信号は信号成分も低周波ノイズ成分も検出されない。そのため、戻り光ビームQが入射していない受光エレメント側のゲインは大きく、且つ戻り光ビームQが入射している受光エレメント側のゲインが小さく設定され、結果として信号成分が消滅してしまう。
【0140】
この問題を防ぐために、信号消滅防止手段70では、戻り光ビームQの周辺部を検出する受光エレメントAおよび受光エレメントBからの出力信号SaおよびSbをそれぞれ受光量レベル検出部113および114に入力させて受光量を検出し、レベル判定部112にていずれかの受光量がある閾値以下となるときに、その受光エレメントでは受光量ゼロと判定する。そして、受光量がゼロと判断された受光エレメント側のゲイン値は、ゲイン調整部104で一定値Gc以上には設定しないように制限を与えるとともに、他の受光エレメントのゲイン値をある一定値Go以下には設定しないように制限を与える。なお、受光量に変動成分が含まれる場合に、検出する受光量に対する変動成分の影響を軽減させるため、変動成分の影響が無視できる程度の時間における平均受光量を受光量レベル検出部113および114の受光レベルとすることもできる。
【0141】
このようにゲイン調整部104を調整することで、再生信号が消滅するという問題を避けることができ、信頼性の高い光ディスク装置を実現することができる。
【0142】
図21は本発明の別の形態の光ディスク装置である。図21には受光素子27とRF信号検出回路58の構成だけを示しており、半導体レーザから受光面に至る光学系は省略している。図17と同様に、図21の受光面は実施の形態1の図6および図12の分割受光エレメントであるが、本発明で説明するすべての受光面に適用することができる。
【0143】
図17との違いは、信号消滅防止手段70の受光量レベル検出部113および114をそれぞれ再生信号レベル検出部110および111に置き換えている点であり、その他の構成については同じである。再生信号レベル検出部110および111とレベル判定部112は、出力信号SaとSbそれぞれに含まれる再生信号成分のレベルを検出するものである。
【0144】
ここで、再生信号は、図3で例として述べたマーク列M1およびマーク列M2の非超解像の再生信号でもよいが、マーク列M3またはマーク列M4の超解像の再生信号はさらに利点がある。これは、超解像の再生信号の場合、実際に超解像再生の条件下で再生信号成分が含まれるか否かを直接に検出できる点で、より正確な判定が可能となるためである。
【0145】
再生信号レベル検出部110および111は、図20(a)と同様な回路構成とすることができる。バンドパスフィルタ回路133の透過周波数帯域は、記録されているマーク列M1〜M4の再生信号周波数であるF1〜F4のいずれかを含む周波数帯域に合わせる。
【0146】
もし、出力信号のうち再生信号成分が含まれていない出力信号が検出された場合、それ以外の出力信号のみを合成して再生信号が生成できるように、ゲイン調整部104が信号レベル変換部101、102および103のゲイン値を個別に調整する。
【0147】
これにより、再生信号が消滅するという問題を避けることができ、信頼性の高い光ディスク装置を実現することができる。
【0148】
図22は本発明のさらに別の形態の光ディスク装置である。図22には受光面8とRF信号検出回路58の構成だけを示しており、半導体レーザから受光面に至る光学系は省略している。受光エレメントからの出力信号のレベルを変換する信号レベル変換部を含む信号演算部109に相当する部分は光ディスク装置に搭載されるRF検出回路58に含まれ、低周波ノイズ量検出部105および106および正規化回路116および117をノイズ検出手段71とする。
【0149】
低周波ノイズ量検出部105および106は、受光エレメントAおよびBの出力信号SaおよびSbから低周波ノイズ量を検出し、これらの低周波ノイズ量でそれぞれの出力信号SaおよびSbを正規化して、出力信号SaとSbを加算する。このような構成によって低周波ノイズ量の大きい出力信号の割合を減らす効果がある。
【0150】
また、再生信号レベル検出部110および111とレベル判定部112から成る信号消滅防止手段70により、出力信号のうち再生信号成分が含まれていない場合に、再生信号成分の含まれていない出力信号を使用せず、それ以外の出力信号のみを利用するようにスイッチ回路118およびスイッチ回路119を制御して、再生信号が消滅するという問題を避け、信頼性の高い光ディスク装置を実現することができる。
【0151】
さらに、図22の再生信号レベル検出部110および111は、図17で説明した受光量レベル検出部113および114であってもよく、同様の処理により出力信号のうち再生信号成分が含まれていない場合に、それ以外の出力信号を利用するようにスイッチ回路118および119を制御して、再生信号が消滅するという問題を避け、信頼性の高い光ディスク装置を実現することができる。
【0152】
以上のように、複数の受光エレメントからの出力信号に含まれる低周波ノイズ量に応じて出力信号のゲインを調整する手段を設けることにより、経時的な位置ずれが起こった場合にも低周波ノイズを低減することができる。
【0153】
実施の形態4.
【0154】
以下、本発明の実施の形態4を図23、図24に基づいて説明する。実施の形態4は、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3で述べた構成において特に有効となる光ディスクに関するものである。
【0155】
実施の形態4における光ディスクは、光ヘッド装置からの出力信号により得られる再生信号に含まれる低周波ノイズを低減し、光ヘッド装置の受光面と戻り光ビームQとの経時的な位置ずれが生じた場合、または戻り光ビームQが非対称な強度分布である場合に低周波ノイズを低減するとともに、位置ずれが大きくなるときであっても再生信号の消滅を防いで信頼性が高く読み出しエラーを抑制するために有効なものである。
【0156】
実施の形態1〜3で説明したようにゲイン調整部104がゲイン値を調整して低周波ノイズを低減する際、図17および図21および図22で示した再生信号レベル検出部110および111での再生信号レベルの検出は、光ディスク6のデータ記録済領域またはコンテンツデータ領域、すなわちユーザ領域UAの記録マーク列を使う。
【0157】
また、ユーザ領域UAの記録マーク列を利用して、再生動作中に低周波ノイズの検出および再生信号の検出を行なってゲイン値を調整することもできる。
【0158】
しかしながら、ユーザ領域が無記録の光ディスクを使用しようとした場合、上記のような回路のゲイン値を調整するために必要となる記録マーク列がないので、最適なゲイン調整が行なえないという問題が生じる。実施の形態4に係わる光ディスクは、このような問題を解消するためのものである。
【0159】
図23は、実施の形態4に係わる光ディスクの図である。光ディスクの内周領域200は、ゲイン調整部104がゲイン調整を行なうために使用できる記録マーク列が予め設けられた最適化領域GAであって、図中吹き出し内に示した部分が最適化領域GAの拡大図であり、最適化領域GAにおける記録マーク列の一例を示している。拡大図の黒色で表示している部分が記録マーク、記録マーク間はスペースであり、マーク長ML、マーク幅Wのマークが等間隔で配置された場合を示している。100は光ディスク上の集光スポットであり、光ディスクの回転により記録マークは相対的に図23のタンジェンシャル方向に移動する。
【0160】
再生または記録を開始する前に、まず最適化領域GAの記録マーク列を読み込み、最適なゲイン値を調整する。この動作により、ユーザが無記録状態の光ディスクを使用する場合にもゲイン値の調整が可能となり、再生信号の低周波ノイズを低減することができる。
【0161】
図23では、最適化領域GAは光ディスクの内周領域200に設置しているが、中周部または外周部に設置されていてもよい。
【0162】
また、光ディスク6が超解像光ディスクである場合、最適化領域GAにも超解像マスク層を成膜しておくことで、実際の超解像再生を行なう際の集光スポットの光パワー状態と同等条件でゲイン調整を行なうことができ、超解像再生に適した低周波ノイズの低減を行なえる。
【0163】
このとき、最適化領域GAの記録マーク列には少なくとも回折限界よりも小さいマーク列を含めておけば、ゲイン調整時に超解像マークの信号成分を再生信号レベル検出部110および検出部111で検出するので、信号成分消滅状態をより確実に検出できる。
【0164】
また、マーク長MLが回折限界よりも長い非超解像のマーク列としてもよい。これにより、記録マーク列が形成しやく低コスト化できる。このとき、最適化領域GAに超解像マスク層が成膜されていてもよく、成膜されていなくてもよい。
【0165】
図23の最適化領域GAの記録マーク列は、凸凹のピット列であってもよく、さらにトラッキングサーボを動作させる場合に必要となるトラック案内溝の構造が同時に形成されていてもよい。
【0166】
実施の形態4に係わる光ディスクを用いてゲイン調整部104が信号レベル変換部やRF信号検出回路のゲイン値を調整する動作手順を図24に示すフローチャートに基づいて説明する。図24に示すフローチャートの動作手順は、光ディスクの種類、すなわち透明層の厚みや記録密度や記録層数やレーザ波長や超解像光ディスクか否かなど、については判別が完了しているものとし、フォーカスサーボの引き込みステップから記録または再生の動作状態になるステップまでを示している。
【0167】
光ディスク6が光ディスク装置に挿入され、光ディスク6にフォーカスサーボが動作する(ステップS1)。このとき、再生・記録に必要な情報が記載されるリードイン領域(図示なし)を再生して記録・再生の必要パラメータを検出し、MPU81に送出して光ディスクを再生または記録する準備を行なう(ステップS2)。
【0168】
次に、内周領域200に設けられる最適化領域GAに集光スポットがくるように、スレッドモータ制御回路62でスレッドモータ53を制御して光ヘッド装置を移動させて最適化領域GAの信号再生を開始し(ステップS3)、戻り光ビームQの周辺部を受光する受光エレメントからの各出力信号に含まれる低周波ノイズ量を低周波ノイズ量検出部105および106で検出する(ステップS4)。
【0169】
ステップS4で得られた低周波ノイズ量にもとづいてゲイン調整部104がゲイン値を設定し(ステップS5)、ユーザコンテンツデータの再生または記録の動作を開始する(ステップ6)。
【0170】
ステップS3とステップS4の間にトラッキングサーボが必要であれば、その動作が追加されてもよい。ただし、図23に示すゲイン最適化用マーク列のマーク幅が集光スポット径に比べて大きく、且つマーク幅を光ディスク6の偏芯などによる光ディスク6の回転時のラジアル方向の変動幅よりも広くしておくことにより、トラッキングサーボを動作させなくても再生信号成分を検出することができる。マーク幅Wの制限は特にないが、100μm〜1000μm程度に設定すればよい。
【0171】
マーク幅Wは、図23では集光スポットサイズよりも大きく表示しているが、これに限らず、集光スポットサイズより小さくてもよい。ただし、この場合には、トラッキング制御が必要である。
【0172】
以上のように、実施の形態4の光ディスクによれば、光ヘッド装置の受光素子の受光面と戻り光ビームQとの位置ずれがあり、またそれが経時的に変化した場合でも、光ディスクの製造ばらつきによる大小の低周波ノイズも含めて低周波ノイズをより低減することが可能となる。
【0173】
また、実施の形態1で説明したように戻り光ビームQと受光素子の受光面パターンとの相対位置を制御する構成とする場合、実施の形態4の光ディスクのゲイン調整領域GAを用いてこの相対位置の制御を行なうことができる。さらに、焦点制御またはトラッキング制御に使用してもよい。
【0174】
実施の形態4に係わる光ディスクによれば、再生信号のCN比を向上させるために光ヘッド装置に設けられたゲイン調整手段あるいは光学部品の駆動手段などの調整を行なうことでき、データ読み出しエラーを低減することができる。
【符号の説明】
【0175】
1 光ビーム
2 半導体レーザ
5 対物レンズ
6 光ディスク
8 受光面
27 受光素子
50 光ディスク装置
52 光ヘッド装置
100 集光スポット
101、102 信号レベル変換部
103 信号レベル変換部
105、106 低周波ノイズ量検出部
110 、111 再生信号レベル検出部
113 受光量レベル検出部領域
Q 戻り光ビーム
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ヘッド装置と、超解像方式を採用した光記録再生媒体に対して情報の記録または再生を行なう光ディスク装置と、この光ディスク装置により記録または再生される光ディスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、各種光ディスクの大容量化は、ディスクのトラック上に書かれる情報の記録マークの大きさを小さくするとともに、記録や再生に用いるレーザ光の短波長化および開口数が大きい対物レンズの採用により、焦点面での集光スポットサイズを小さくすることによって達成してきた。
【0003】
例えば、CD(コンパクトディスク)では、光透過層(情報記録層の上に設けられる透明保護層およびスペース層。透明基板とも言う)となるディスク基板の厚さが約1.2mm、レーザ光波長が約780nm、対物レンズの開口数(NA)が0.45であり、650MBの記録容量であった。
【0004】
DVD(デジタル多用途ディスク)では、光透過層の厚さが約0.6mm、レーザ光波長が約650nm、NAが0.6であり、4.7GBの記録容量となっている。
【0005】
さらに高密度のBD(ブルーレイディスク)では、光透過層の厚さを0.1mmにした光ディスクを用いて、レーザ光波長を約405nm、NAを0.85とすることで1層あたり25GBの大容量化を実現している。
【0006】
このほか、光透過層の厚さをDVDと同じ0.6mmとした光ディスクを用いて、レーザ光波長を約405nm、NAを0.65とすることで18GB以上の大容量化を実現するHD DVD(高精細デジタル多用途ディスク)などがある。
【0007】
近年、光記録の分野においては、光の強度によって屈折率が変化する非線形光吸収特性または非線形光透過特性を有する超解像マスク層が成膜された超解像光ディスクを用いた高密度記録方式が研究されている。この方式では、光ディスクに集光スポット内の光強度が大きい、または温度が高い局所的な部分に屈折率変化をもたらすことで、光ディスク装置の光学要素である集光レンズの開口数NAと光の波長λから決まる回折限界λ/4NAよりも小さなマークを再生することができる。(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、このような超解像光ディスクでは、マスク層で光が吸収されるため、従来の光ディスクにおける再生パワーに比べて大きな再生パワーが必要となる。その結果、再生信号に含まれる低周波ノイズ(またはディスクノイズ)が増大することが知られている。(例えば、非特許文献2参照)。
【0009】
非特許文献1及び非特許文献2は、代表的な超解像光ディスクであるSuper−RENS(Super REsolution Nearfield Structure)方式に関するものである。これ以外に、情報の記録マークが光の強度によって屈折率が変化する非線形光吸収特性または非線形光透過特性を有する材料により形成された光超解像光ディスクも提案されている。(例えば、非特許文献3参照)。以降ではこれらを総称して超解像光ディスクと呼ぶ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“Observation of Eye Pattern on Super−Resolution Near−Field Structure Disk with Write−Strategy Technique”,Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.43,No.7A,pp.4212−4215(2004)
【非特許文献2】“Low Frequency Noise Reduction of Super−Resolution Near−Field Structure Disc with Platinum−Oxide Layer”,ODS Technical Digest,ThC3(2005)
【非特許文献3】“Sub−Terabyte−Data−Capacity Optical Discs Realized by Three−Dimensional Pit Selection”,Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.45,No.4A,pp.2593−2597(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の光ヘッドやこれを搭載した光ディスク装置によって再生または記録される超解像光ディスクにおいては、上記のように光ディスクを再生する際に大きな低周波ノイズが存在するので、光ディスクの再生信号を2値化データに復調する際に、この低周波ノイズがデータ復調エラーの発生要因になるという問題があった。
【0012】
この発明は上述の問題を解決するためになされたもので、低周波ノイズの影響を抑制し、読み出しデータの復調エラーの少ない再生信号を得ることができる光ヘッド装置と、この光ヘッド装置を備え、低周波ノイズを抑制する光ディスク装置、および、この光ディスク装置で使用する光ディスクを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る光ヘッド装置は、半導体レーザと、半導体レーザから放射される光ビームを集光して光ディスクの情報記録層に集光スポットを形成する対物レンズと、集光スポットが情報記録層で反射した戻り光ビームの光量を電気信号に変換し、前記光ディスクの再生信号を検出する受光素子とを備えた光ヘッド装置であって、この受光素子は、戻り光ビームの周辺部を受光する複数の受光エレメントからなる第1の受光面と戻り光ビームの中央部を受光する受光エレメントからなる第2の受光面とで構成される受光面を有し、対物レンズを焦点制御するための非点収差法で使用する4分割受光面において互いに直交する2つの分割線またはそれに相当する分割線の交点に対して、第1の受光面の複数の受光エレメントが非対称な位置に配置されるとともに前記戻り光ビームの中心が前記分割線の交点に調整されているものである。
【0014】
この発明に係る光ディスク装置は、上記の光ヘッド装置を備えたものである。
【0015】
また、この発明に係る他の光ディスク装置は、上記の光ヘッド装置を備え、第1の受光面の複数の受光エレメントの受光量レベルを検出する受光量レベル検出手段、または第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号レベルを検出する再生信号レベル検出手段を備えたものである。
【0016】
この発明に係る光ディスクは、超解像マスク層が成膜された超解像光ディスクであって、ゲイン調整手段によってゲイン調整を行なうための領域、および/または光ヘッド装置の少なくとも1つの光学要素を移動して戻り光ビームを受光面上の所定の位置に調整するための領域が設けられているものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、再生信号に含まれている低周波ノイズを低減して再生信号の揺れを抑制し、正確なデータ再生を行うことができる。さらに、受光面と戻り光ビームとの位置ずれや戻り光ビームの非対称な強度分布が存在した場合に、低周波ノイズを抑制することができるため、光ディスクの再生特性を安定化し、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1の光ディスク装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1における低周波ノイズを含む超解像光ディスクの再生信号波形の図である。
【図3】本発明の実施の形態1における超解像光ディスクの再生信号の周波数スペクトルを説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の戻り光ビームの中央部から周辺までのCN比の実測結果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の光学構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の他の光学構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の他の光学構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1の光ヘッド装置の他の受光面を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係わる光ヘッド装置の他の光学構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係わる光ヘッド装置の非点収差法で使用する4分割の受光面を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2の光ヘッド装置の受光面と再生信号の演算を説明する図である。
【図13】本発明の実施の形態2の光ヘッド装置の他の受光面と再生信号の演算を説明する図である。
【図14】本発明の実施の形態2の光ヘッド装置の他の受光面と再生信号の演算を説明する図である。
【図15】本発明の実施の形態2の光ヘッド装置の他の受光面と再生信号の演算方法を説明する図である。
【図16】本発明の実施の形態3の光ディスク装置の全体構成を示す構成図である。
【図17】本発明の実施の形態3の光ディスク装置の主要部の構成を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態3における光ヘッド装置の受光素子の受光面と戻り光ビームの相対位置ずれを示す図である。
【図19】本発明の実施の形態3における光ヘッド装置で検出された戻り光ビームの周辺光による出力信号の周波数スペクトルを示す図である。
【図20】本発明の実施の形態3における光ディスク装置の低周波ノイズ量検出部と再生信号検出部の構成例を示すブロック図である。
【図21】本発明の実施の形態3の光ディスク装置の主要部の他の構成を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態3の光ディスク装置の主要部の他の構成を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態4の光ディスクを示す図である。
【図24】本発明の実施の形態4の光ディスクを記録または再生するときの動作シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における光ディスク装置の全体構成を示す図である。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、光ディスク装置50を構成する各ブロックの接続関係のすべてを表すものではない。
【0020】
図1において、光ディスク装置50は、光ディスク6を回転駆動するためのスピンドルモータ51、光ディスク6にレーザ光を照射し、光ディスク6の情報記録層で反射された戻り光を受光して信号を出力する光ヘッド装置52、光ヘッド装置52を光ディスク6の半径方向に駆動するためのスレッドモータ53、レーザ制御回路54、サーボ制御回路55、再生信号処理回路56、変調回路64、RAM(Random Access Memory)80、MPU(Micro Processing Unit)81を備えている。
【0021】
サーボ制御回路55には、スピンドルモータ51をコントロールするスピンドルモータ制御回路63、スレッドモータ53をコントロールするスレッドモータ制御回路62、光ヘッド装置52をコントロールする光ヘッド制御回路61があり、それぞれMPU81から発せられる命令により動作を行なう。
【0022】
また、再生信号処理回路56には、光ヘッド装置52で検出され、伝送路L3を介して送られた信号にもとづいて、サーボ信号を生成するサーボ信号検出回路59、再生信号RFを検出して伝送路L1に出力信号として出力するRF信号検出回路58、および光ディスク6の蛇行した案内トラック溝からの反射光で得られるウォブル信号を検出するウォブル信号検出回路57がある。
【0023】
MPU81は、RF信号検出回路58で検出された信号振幅値データや状態信号などの伝送路L1の出力信号、あるいは他の各部からの出力信号にもとづいて光ディスク装置全体の動作を決定し、各部へ制御データ(例えば、MPU81からRF信号検出回路58への伝送路L2の信号)を送って、それらの制御を行う。
【0024】
なお、再生信号処理回路56の構成要素のうち一部分がMPU81の内部で処理される構成であってもよい。
【0025】
RAM80は、プログラム領域およびデータ領域で構成されている。MPU81は、RAM80に記録されているプログラムに従って、各部の動作を制御するとともに、各部から送られてくる信号から制御の判断を行なう。
【0026】
光ヘッド制御回路61は、サーボ信号検出回路59から送られるサーボエラー信号やMPU81からの動作命令を元に、制御信号を伝送路L4経由で光ヘッド装置52に出力し、光ヘッド装置52から光ディスク6上へ照射される光の制御を行なう。
【0027】
スレッドモータ制御回路62およびスピンドルモータ制御回路63は、サーボエラー信号やMPU81からの動作命令を元に、スレッドモータ53およびスピンドルモータ51の制御を行なう。
【0028】
ウォブル信号検出回路57とRF信号検出回路58の出力信号は復調回路60で情報データに復調される。
【0029】
MPU81から出力されたデータの一部は、変調回路64で光ディスク6への記録に適した記録信号に変換され、レーザ制御回路54へ送られる。この記録信号に基づいてレーザ制御回路54から伝送路L5を介して光ヘッド装置52に制御信号が送られ、光ヘッド装置52に搭載されている半導体レーザの発光パワーが制御される。
【0030】
この実施の形態1における光ディスク6は、非線形光吸収特性または非線形光透過特性を有する超解像マスク層が成膜された超解像光ディスクである。
【0031】
光ヘッド装置52は、CD、DVD、BDやHD DVD等の非超解像の光ディスクのみならず、超解像光ディスクにも対応するものである。光ヘッド装置52は、光ディスク6に半導体レーザによる光ビームを集光するとともに、光ディスク6の情報記録層で反射した戻り光ビームを受光し、再生信号やサーボ信号を生成するための信号を検出する。
【0032】
次に、光ディスク6の再生信号に含まれる信号成分と低周波ノイズ成分との関係、および、これらの成分と読み出しエラーとの関係について述べる。
【0033】
光ディスク6の再生原理は、光ディスク6の情報記録層における凹凸または屈折率差によるマークで回折された戻り光を受光素子が検出し、その戻り光の強度に対応した再生信号を得ることである。この再生信号には、ディスク自身がもつランダムなノイズ成分が空間周波数の低域側に含まれる。このランダムノイズを低周波数ノイズと呼ぶ。
【0034】
図2は、低周波ノイズが発生しているときの再生信号波形の例である。横軸は時間、縦軸は再生信号の電圧を示している。図2に示すように、目的の再生信号Scよりも大きいノイズ成分Ncが再生信号Scに重畳することにより、再生信号波形はその振幅よりも大きな波形の揺れを生じる。このような波形の揺れは、データを復調する際に読み出しエラーを起こす原因となる。
【0035】
図3は、超解像光ディスクの再生信号の時間領域に関する周波数スペクトルを説明する図であり、横軸は周波数、縦軸は信号成分の電力値(対数表示)である。
【0036】
再生信号のスペクトル分析を行なうと、図3に示すような4種類の空間周波数に対応したそれぞれ記録マーク列M1、M2、M3、M4に対応する再生信号成分と、低域側に光ディスクの低周波ノイズ(ディスクノイズ)成分がある。低周波ノイズ成分は、空間周波数が小さくなるほど増加する傾向を示す。ここでは、再生データパターンはランダムパターンデータではなく、例えば4種類の空間周波数F1〜F4(F1<F2<F3<F4)の固定マーク列が交互に続くパターンの場合を示している。図3のFcは、対物レンズの開口数NAと波長λとで決まる回折限界λ/(4NA)に対応する分解能のカットオフ周波数である(F1<F2<Fc<F3<F4)。
【0037】
図3では、回折限界周波数Fcよりも高域側に位置するマーク列M3およびマーク列M4に対応する信号は、超解像効果を利用して再生される超解像再生信号である。一方、回折限界周波数Fcよりも低域側に位置するマーク列M1およびマーク列M2に対応する信号は、回折現象を利用した非超解像再生信号である。回折限界周波数Fcよりも低域側であって非超解像再生信号であるマーク列M1およびマーク列M2に対応する信号に、比較的大きな低周波ノイズが重畳している。以下、図3の空間周波数F1よりも低域側の空間周波数FLにおける低周波ノイズレベルNLをノイズレベルの代表とする。低周波ノイズレベルNLが小さい再生信号ほど再生信号成分の振幅に対するランダムな変動が小さい。
【0038】
再生信号の品質を定量的に比較する際、再生信号成分レベルCL(Carrier Level)の低周波ノイズレベルNL(Noise Level)に対する比、すなわちCL/NLの値(以下、CN比と称する)が重要な指標となる。このCN比が大きいほど、再生信号成分に対するノイズ成分は小さいので、信号の品質は良いことになる。
【0039】
図3では、縦軸の電力値は対数表示としているので、例えば、CN_3はマーク列M3に対応する超解像再生信号のCN比、CN_4はマーク列M4に対応する超解像再生信号のCN比を示している。以下ではこのCN比を使って説明する。
【0040】
図4は、本発明の光ヘッド装置の構成例を示す図である。図4において、外部から伝送路L5を介して入力される制御信号にもとづいて半導体レーザ2から放射された波長λの光ビーム1は、コリメータレンズ3によって略平行光ビームに変換されてビームスプリッタ4を透過し、対物レンズ5によって光ディスク6に集光される。光ディスク6で反射した戻り光ビームQは対物レンズ5によって再び略平行光ビームになり、前記のビームスプリッタ4で反射し、集光レンズ7で収束光ビームになる。この収束光ビームを受光素子27が受光して受光パワー量に応じた電気信号を伝送路L3に出力する。
【0041】
図4の構成以外に、例えば、ビームスプリッタ4に代えて、偏光ビームスプリッタを配置し、且つその偏光ビームスプリッタと対物レンズ5の間に1/4波長板を挿入してもよい。これにより、光の利用効率を向上させることができる。
【0042】
また、光ディスク6が回転するときに、対物レンズ5の光軸方向およびその光軸方向に垂直な方向の光ディスク6の位置変動によって生じる対物レンズ5の焦点距離の誤差を補正するように、対物レンズ5を光軸方向およびその光軸方向に垂直な方向に駆動させる対物レンズ駆動アクチュエータを備えてもよい。
【0043】
また、光ディスクの再生信号の検出光学系以外に、光ディスク6の情報記録層に対する対物レンズ5の焦点誤差量やトラッキング誤差量を検出するためのセンサー光学系を備えていてもよい。
【0044】
センサー光学系は、集光レンズ7と受光素子27の間に焦点誤差またはトラッキング誤差などの検出対象に応じて配置されたセンサー素子と、センサー素子によって非点収差が付加された光ビームや分割された光ビームを受光し、電気信号に変換できる複数の受光エレメントを有した受光素子27で構成される。
【0045】
図5は、戻り光ビームQの中の低周波ノイズについて、戻り光ビームQの半径方向の分布を測定した結果である。図5(a)と図5(b)は、光ディスク6のタンジェンシャル方向(すなわち、データトラック方向に対応した方向)および、ラジアル方向(すなわち、光ディスクの半径方向に対応した方向)の光ビーム9のCN比(CL/NL比)の分布を示したものである。横軸は、戻り光ビームQの中央から周辺までの距離であり、戻り光ビームQの半径を100として正規化した値である。すなわち、半径位置が0の位置は戻り光ビームQの中央、100の位置は戻り光ビームQの周辺である。図5(a)については、戻り光ビームQの中心からプラス側と、その逆向きのマイナス側におけるCN比を示している。
【0046】
図5の結果から、タンジェンシャル、ラジアルのいずれの方向についても、戻り光ビームQの周辺部へ向かうにしたがってCN比が増大している。
【0047】
そのため、戻り光ビームQ全体のうち周辺部を強調して検出する、または周辺部のみを検出することができれば、CN比が大きい再生信号を得ることができる。
【0048】
図5のCN比分布から、戻り光ビームQの中央(または中心)から半径の約60%の位置よりも外側(図中破線より右側の領域)はCN比の増加が顕著であり、CN比が大きい再生信号の検出に特に有効な範囲である。
【0049】
また、図5(a)の結果から、タンジェンシャル方向のCN比は、戻り光ビームQの中心からプラス側半径方向に比べて、マイナス側半径方向のCN比が小さい傾向にある。
【0050】
以下、戻り光ビームQの全体のうち周辺部を強調して検出、または周辺部のみを検出するヘッド装置の構成について述べる。
【0051】
図6(a)〜(c)は、戻り光ビームQの中央部に対して周辺部を強調して再生信号を検出できる構成である。
【0052】
図6(a)は集光レンズ7と受光面8a、図6(b)は受光面8aを含む受光素子27の構成を示す図である。図6(b)において、受光素子27は、戻り光ビームQの周辺部を検出できる受光エレメントAおよびBと、戻り光ビームQの中央部を検出できる受光エレメントCの3つに分割された受光面8aと、受光エレメントからの信号に対して増幅や加算・減算の合成を行なう信号演算部109とで構成される。受光面8aと信号演算部109は、一体になっていても分離されていてもよい。
【0053】
図6(b)の構成により、分割された受光面8aの第1の受光面である受光エレメントAと受光エレメントBそれぞれの出力信号Saと出力信号SbをゲインK1で増幅して加算した信号と、第2の受光面である受光エレメントCの出力信号ScをゲインK2で増幅した信号とを合成した信号を再生信号とする。すなわち、再生信号RFは、RF=K1×(Sa+Sb)+K2×Scで生成される。なお、各ゲイン値は正の場合もあり、負の場合もある。また、その大きさは1より大きい場合も、小さい場合もある。これは、以下で述べるすべてのゲインについても同様である。
【0054】
再生信号のCN比が大きくなるように受光エレメントAと受光エレメントBを配置するには、受光面8aを図6(a)のD1の方向に移動させて、再生信号のCN比が最も大きくなるように受光面8aに対する戻り光ビームQの位置を最適に調整する。
【0055】
また、図6(a)の集光レンズ7をD1の方向に移動させることで、上述と同様に受光面上の戻り光ビームQの相対位置を移動させることができる。
【0056】
また、集光レンズ7あるいは受光面8aを図6(a)のD2の方向に移動させて、集光レンズ7と受光面8aとの距離を変えることで受光面上の戻り光ビームQの径の大きさを変化させ、戻り光ビームQの周辺部が受光エレメントAおよび受光エレメントBで受光される量を再生信号のCN比が最も大きくなるように最適に調整することも可能である。
【0057】
さらに、図6(c)に示すように、受光面8aの第2の受光面である受光エレメントCを受光エレメントC1および受光エレメントC2に2分割した受光面8bにより、各受光エレメントの出力信号Sa、出力信号Sb、出力信号Sc1、出力信号Sc2を得て、これらの出力信号から演算値RES=(Sa+Sc1)−(Sb+Sc2)を算出し、これをもとにCN比が最適となる位置に受光面8bを配置することもできる。これは、CN比が大きくなる周辺部が戻り光ビームQの光軸中心に対して非対称に分布する場合に有効であり、この非対称な分布を補正するように前記のRESをCN比が最も大きくなる所定の目標値に合わせる。
【0058】
以下に、図7(a)および(b)にもとづいて、戻り光ビームQの中央部を遮光し、周辺部だけで再生信号を検出する構成について説明する。
【0059】
図7(a)(8dの平面図を示す図7(a’)と、10の平面を示す図7(a”)とを含めて図7(a)として説明する。)は、集光レンズ7と、戻り光ビームQの中央部を遮光または減衰させて周辺部のみを透過させる遮光素子10と、遮光素子10を透過してきた戻り光ビームQの周辺部を検出する受光面8dにより構成したものであり、遮光素子10の黒い部分が戻り光ビームQを遮光または減衰する部分である。受光面8d上には、分割された戻り光ビームQのスポットが形成される。
【0060】
図7(a)においては、1つの受光エレメントからなる受光面8dで受光しているが、図6(b)または図6(c)で示したように周辺部と中央部とを個別に検出できる受光面エレメントを有する受光面で受光してもよく、図6の場合と同様な再生信号RFの検出を行なってもよい。
【0061】
図6の構成の場合と同様に、図7(a)の構成においても、受光面8d、集光レンズ7または遮光素子10を図7(a)のD1の方向に移動させて、再生信号のCN比が最も大きくなるように、受光面8dに対する戻り光ビームQの位置を最適に調整することができる。
【0062】
また、集光レンズ7に対して遮光素子10をD3の方向に移動させる、もしくは集光レンズ7をD3の方向に移動させることによって、遮光素子10を透過させる戻り光ビームQの周辺部の範囲を再生信号のCN比が最も大きくなるように調整することができる。
【0063】
また、図7(b)(8e_C、8e_A1、8e_A2、8e_B1、8e_B2の平面図を示す図7(b’)と、11の平面を示す図7(b”)とを含めて図7(b)として説明する。)に示すように、戻り光ビームQの中央部の光量を減少させる遮光素子10の代わりに、回折素子11とすることができる。回折素子11は、戻り光ビームQの周辺部を回折させる領域Gaおよび領域Gb、中央部を回折させる領域Gcはそれぞれ異なる回折パターンが形成されていて、異なる方向に回折させ分離するものである。これにより、受光面8e_C、8e_A1、8e_A2、8e_B1、8e_B2に、それぞれ図7(b)に示すような戻り光ビームQのスポットが形成される。
【0064】
回折素子11で回折され分離された戻り光ビームQの周辺部と中央部を個別に受光する受光面8e_C、8e_A1、8e_A2、8e_B1、8e_B2により検出した出力信号をSc、Sa1、Sa2、Sb1、Sb2とすると、再生信号RFはRF=K1×(Sa1+Sa2)+K2×(Sb1+Sb2)なる演算により生成される。ここで、K1、K2は、ゲインである。
【0065】
図7(b)においては、各受光面は1つの受光エレメントからなる受光面で受光しているが、図6(a)または図6(b)で示したように周辺部と中央部とを個別に検出できる受光面パターンを有する受光素子で受光してもよく、図6の場合と同様な再生信号RFの検出が行える。
【0066】
図7(b)の構成の場合にも、受光面8e、集光レンズ7または回折素子11を図7(b)に示すD1の方向に移動させること、さらに集光レンズ7をD2の方向、もしくは回折素子11をD3の方向にそれぞれ移動させることによって、再生信号のCN比が最も大きくなるように、受光面に対する戻り光ビームQの位置を最適に調整することができる。
【0067】
次に、図8(a)〜(e)にもとづいて、戻り光ビームQの中央部に対して強調して周辺部を検出して再生信号を生成する構成について説明する。
【0068】
図8(a)(12の平面を示す図8(a’)を含めて図8(a)として説明する。)は、集光レンズ7と戻り光ビームQを複数の光ビームに分光または分割する回折素子12と、この回折素子12によって分光または分割された複数の光ビームを受光する複数の受光面8f_1、8f_2、8f_0により構成したものである。
【0069】
図8(b)はこれらの受光面を含む受光素子27の構成を示す図である。受光素子27は、受光エレメント8f_A1、8f_B1、8f_C1に分割された8f_1と、受光エレメント8f_A2、8f_B2、8f_C2に分割された8f_2と、受光エレメント8f_0と信号演算部109を有している。3つの受光面と信号演算部109は、一体になっていても分離されていてもよい。回折素子12で回折された+1次回折光Q1は受光面8f_1で、−1次回折光Q2は受光面8f_2で、0次回折光Q0は受光エレメント8f_0で受光する。
【0070】
受光エレメント8f_A1と8f_B1、および受光エレメント8f_A2と8f_B2は戻り光ビームQの周辺部を、受光エレメント8f_C1、および受光エレメント8f_C2は戻り光ビームQの中央部を検出する。
【0071】
図8(b)のように戻り光ビームQが回折して分離される方向に略直行した分割線により受光面が分割されている場合、回折素子12を図8(a)のD4の方向(戻り光ビームQの光軸を中心とする回転方向)に回転させることで、0次回折光Q0を中心にして+1次回折光Q1および−1次回折光Q2だけをD4の方向に移動させることができる。そのため、受光面の分割線J1と分割線J2をそれぞれ戻り光ビームQが回折して分離される方向から傾けて非平行としておくことで、回折素子12の回転に伴って受光エレメント8f_A1と8f_B1、および受光エレメント8f_A2と8f_B2により検出される戻り光ビームQの周辺部の領域を、CN比が最も大きくなるように最適に調整することができ、戻り光ビームQの径のばらつきになどによる配置誤差の影響を小さくできる。
【0072】
また、回折素子12をD3の方向に移動させると、受光面上の戻り光ビームQの各回折光はD3の方向に変位する。これにより、前記戻り光ビームQの+1次回折光Q1および−1次回折光Q2の配置誤差の影響を小さくできる。
【0073】
また、図6および図7の構成の場合と同様に、集光レンズ7をD1の方向とD2の方向に移動させることで、受光面上の戻り光ビームQの各回折光の位置および光束径を変化させることができるので、戻り光ビームQのCN比が大きい周辺部を抽出し検出することができる。
【0074】
図8(b)に示した受光面の代わりに、図8(c)〜(e)に図示する受光面パターンとしてもよい。図8(c)は、図8(b)での分割線の方向が略90°回転したもの、すなわち、戻り光ビームQが回折して分離される方向に略平行する分割線により受光面が分割されているものである。ただし、図8(b)と同様に、中央部と周辺部の検出領域を分割する2つの分割線が非平行となっている。
【0075】
図8(d)と8(e)の受光面は、中央部と周辺部の検出領域を分割する2つの分割線が略平行であるが、戻り光ビームQが回折して分離される方向に対して非直角かつ非平行な分割線により受光面が分割されているものである。
【0076】
図8(b)〜(e)において、2つの分割線と戻り光ビームQが回折して分離される方向またはその直角方向との角度は、1°〜5°が望ましい。
【0077】
図6〜図8で示した受光素子の受光面は、戻り光ビームQの周辺部を検出するために受光面の分割方向が光ディスク6のタンジェンシャル方向に対応する方向であるのか、ラジアル方向に対応する方向かについては言及していなかったが、図5で説明したように、タンジェンシャルおよびラジアルのいずれの場合も戻り光ビームQの中央から周辺部に向かってCN比の増大が観測されていることから、いずれの方向に分割されていても同様のCN比増大の効果が得られる。
【0078】
図6〜図8では、戻り光ビームQの集光位置に受光面を配置している図であるが、集光位置以外に配置されていてもよい。
【0079】
図9に示すような、タンジェンシャル方向あるいはラジアル方向に限定せずに全方向の周辺部を受光する受光面gであっても同様のCN比の増大効果が得られる。タンジェンシャル方向もしくはラジアル方向のいずれかの周辺部を受光する場合に比べて、周辺部の光量を多く受光することができるので、C/N比の点で有利である。ここで、中央部を受光する受光エレメントCの一部が受光面の外形に接するように中央部とその外側での幅が異なる形状とすることで、できる限り全方向の周辺部を受光しつつ、中央部を受光する受光エレメントCからの電気信号を取り出しやすくできる。
【0080】
上記の通り、幾種類かの構成があるが、これに限るものではなく、これらと本質的に同様の構成、もしくは、図6〜図9の構成の組み合わせからなる構成であってもよい。
【0081】
ところで、一般に光ヘッド装置において、受光素子は、光学部品が固定される光学ハウジングにUV接着やネジ固定されること多いが、温度や湿度など使用環境の変化によってこれらの部分の寸法等が変わることに起因して、戻り光ビームQと受光面との相対位置が経時変化する場合がある。
【0082】
この相対位置の変化の最大値は、現状でおよそ4μmである。一方、再生信号の品質を保つには、CN比は6dB以下の変動に抑えるのが望ましい。
【0083】
また、図5で示したCN比の実測結果から、CN比の変化が6dB以下であるためには、戻り光ビームQ半径のおよそ約13%以内に位置ずれを抑えておく必要がある。
【0084】
したがって、戻り光ビームQの半径をおよそ4μm÷(13%)=30μm以上、すなわち、戻り光ビームQの直径を約60μm以上にしておくことによって、再生信号の品質について信頼性を確保できる光ヘッド装置を提供することができる。
【0085】
図6〜図9では、本発明の光ヘッド装置の再生信号RFの検出系を説明した。次に、この再生信号RFの検出光学系と、焦点誤差検出やトラッキング誤差検出を行なうセンサー光学系との光路が共通である場合について説明する。ただし、再生信号RFの検出方法は、基本的に図6〜図9と同じである。
【0086】
図10は、センサー光学系も示した光ヘッド装置の一例である。図10において、半導体レーザ2から放射された波長λの光ビーム1は複数の光ビームに分光する回折素子21を通過し、コリメータレンズ3で略平行光ビームに変換される。コリメータレンズ3を透過した光ビーム1は、偏光プリズム22、リレーレンズ23aおよびリレーレンズ23b、光ビームの偏光を略偏光に変換する1/4波長板24、前記1/4波長板24を透過して、対物レンズ5で光ディスク6に集光される。光ディスク6で反射した光ビームは、戻り光ビームQとして再び対物レンズ5を透過して略平行光ビームに変化し、リレーレンズ23bおよびリレーレンズ23aを透過して偏光プリズム22で反射する。偏光プリズム22で反射された戻り光ビームQは、集光レンズ7で収束光ビームに変換され、センサー素子26で再生信号およびサーボ制御用信号を生成できる光ビームに変換される。センサー素子26を経由した戻り光ビームQは受光素子27で受光される。
【0087】
また、駆動系として、対物レンズ5をその光軸方向と光ディスク6の略半径方向に駆動するための対物レンズ駆動アクチュエータ25、対物レンズ5で集光される光ビームの球面収差を変化させるためにリレーレンズ23bを光軸方向に駆動するリレーレンズ駆動アクチュエータ28を備える。
【0088】
受光素子27で戻り光ビームQが検出する出力信号は伝送路L3を介して図1の再生信号処理回路56に伝送され、再生信号処理回路56のサーボ信号検出回路59で、対物レンズ5と光ディスク6との焦点ずれ量に相当する焦点誤差信号や、対物レンズ5で生成された集光スポットの光ディスク6上のデータトラックからのオフトラック量に相当するトラッキング誤差信号、集光スポットの残留球面収差量に相当する球面収差誤差信号などが生成され、光ヘッド制御回路61から伝送路L4を介して、図10に示すように光ヘッド装置52の対物レンズ駆動アクチュエータ25およびリレーレンズ駆動アクチュエータ28を制御する。
【0089】
対物レンズ駆動アクチュエータ25は、対物レンズ5を光軸方向に駆動して光ディスク6への焦点制御、および光ディスク6の半径方向に駆動して光ディスク6に形成されているデータトラックへのトラッキング制御に用いられる。
【0090】
回折素子21で分光された光ビームは、トラッキング誤差検出に用いられる。ただし、分光された光ビームが不要なトラッキング誤差検出方法の場合には、回折素子21を除去してよい。
【0091】
受光素子27は、センサー素子26の機能と組み合わせて対物レンズ5またはその他への制御信号と再生信号などを生成するため、複数に分割された受光エレメントから成る受光面を有し、電圧に変換されて電気信号が出力される。
【0092】
焦点誤差検出方式に非点収差法を用いる、つまり、対物レンズ5の焦点制御に非点収差法を使用する場合であれば、センサー素子26は、例えば非点収差を付加できるシリンドリカルレンズあるいはホログラム素子とすればよい。非点収差法では、田の字の4分割受光面で戻り光ビームQを受光するのが一般的である。例えば非点収差法で得られた焦点誤差検出信号は、光ディスク6の情報記録層に対して対物レンズ5の焦点距離の誤差を補正するように焦点制御するための制御信号として利用する。
【0093】
図11の受光面は、非点収差法で使用する4分割の受光面と、戻り光ビームQの周辺部と中央部を個別に受光し検出可能な受光面を複合した構成となっている。このような光学系の共通化、および受光面の複合化は、光ヘッド装置の小型化とコスト低減が図れるという利点がある。
【0094】
図11(a)は、タンジェンシャルまたはラジアルの一方向に分割受光面を有した図6(c)で示した受光面を基本とするものである。図11(b)は、図9に示した受光面を基本とするものである。
【0095】
図11(a)および図11(b)の場合、受光エレメントA1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2からの信号をSa1、Sa2、Sb1、Sb2、Sc1、Sc2、Sd1、Sd2とすると、再生信号RFはRF=K1×(Sa1+Sa2+Sb1+Sb2)+K2×(Sc1+Sc2+Sd1+Sd2)、焦点誤差信号FESはFES=(Sa1+Sc1+Sb2+Sd2)−(Sa2+Sc2+Sb1+Sd1)なる演算によって生成できる。
【0096】
また、図5(a)に示されたタンジェンシャル方向のCN比の実測結果によれば、戻り光ビームQの中心に対してプラス側(外側)半径方向とその反対方向のマイナス側(内側)半径方向のCN比には数dBの差が生じており、タンジェンシャル方向にアンバランスなCN比特性を示している。よって、マイナス側半径方向の周辺部を検出する受光エレメントと中央部を検出する受光エレメントとの分割線から戻り光ビームQの中心までの距離を、プラス側半径方向の周辺部を検出する受光エレメントと中央部を検出する受光エレメントとの分割線から戻り光ビームQの中心までの距離よりも大きく設定して、再生信号のCN比を向上させることができる。
【0097】
図11(c)は、図11(a)の受光面を基本としたものであり、図11(d)は、図11(b)の受光面を基本としたものである。また、再生信号RFと焦点誤差信号FESの演算式は、上記で述べた図11(a)および図11(b)でのものと同じである。
【0098】
図11(c)および図11(d)の受光エレメントC1および受光エレメントC2の幅W1と受光エレメントD1および受光エレメントD2の幅W2はW1<W2の関係にしており、プラス側半径方向の周辺部を受光エレメントA1および受光エレメントA2で受光し、マイナス側半径方向の周辺部を受光エレメントB1および受光エレメントB2で受光する。
【0099】
一方、非点収差法による焦点誤差検出を行なう場合、田の字4分割受光面の分割線、またはそれに相当する分割線の交点と、戻り光ビームQの光軸中心を合わせることによって、最も精度が高い焦点誤差信号が得られる。
【0100】
したがって、図11(c)および図11(d)の受光面により、最大のCN比と最も精度が高い焦点誤差信号を得るための最適な戻り光ビームQと受光面の位置合わせを行なうことができる。
【0101】
また、図6〜図9と同様に集光レンズ7またはセンサー素子26またはリレーレンズ23a、24bまたは受光素子27をD2〜D4の方向に移動させることによって、CN比が最大となるように調整できる。
【0102】
上記のように、図6〜図11で説明した構成において、集光レンズ7、遮光素子10、回折素子11、回折素子12、センサー素子26、受光素子27のうち少なくとも1つを移動させる駆動手段を設けて、CN比が最大となるように戻り光ビームQと受光素子の受光面パターンとの相対位置を制御することができる。
【0103】
また、図4および図10の光ヘッド装置が複数の異なる光ディスク規格に対応している場合、光ディスク規格に対応して対物レンズ5の開口数NAが変わることによって生じる戻り光ビームQの径の変化を、この構成で補正してもよい。また、戻り光ビームQは必ずしも集光させて受光素子に入射させる必要はなく、略平行光束であってもよい。
【0104】
以上のように、実施の形態1における光ヘッド装置は、戻り光ビームQの周辺部を受光する第1の受光エレメントと戻り光ビームQの中央部を受光する第2の受光エレメントを有する分割受光面によって戻り光ビームQを検出し、第1の受光エレメントからの出力信号と第2の受光エレメントからの出力信号とを合成するようにしたので、低周波ノイズの少ない再生信号を生成することができる。
【0105】
実施の形態2.
以下、実施の形態2を図12〜図15に基づいて説明する。
【0106】
実施の形態2の光ヘッド装置は、戻り光ビームQのうち、戻り光ビームQの中央部に比較してCN比が高い戻り光ビームQの周辺部を強調して検出する光ヘッド装置において、複数の受光エレメントで検出される出力信号の振幅ゲインを調整して中央部光と周辺部光を検出する各受光エレメントからの出力信号の合成である再生信号RFのCN比を改善する光ヘッド装置である。
【0107】
図12〜図15は、受光素子27の受光面8、戻り光ビームQ、および信号演算部109における再生信号RFの演算回路を示す模式図である。受光面8は、本発明の実施の形態1で示した図6〜9と図11に含まれるものであり、これら以外の図6〜図9および図11の受光面であってもよい。
【0108】
図12の受光面パターンは光ディスク6のタンジェンシャル方向DTに対応する方向に受光エレメントがA〜Cの3つ分割され、戻り光ビームQの周辺部を受光する第1の受光面である受光エレメントAおよび受光エレメントBと、第2の受光面である中央部を受光する受光エレメントCから成る。
【0109】
受光エレメントAおよび受光エレメントBからの出力信号SaとSbをそれぞれゲインKaとゲインKbで増幅して加算した合成信号Ka×Sa+Kb×Sbと、受光エレメントCからの出力信号ScをゲインKcで増幅した信号Kc×Scとを加算し、この加算された信号をさらにゲイン値Krfで増幅して再生信号RF=Krf×(Ka×Sa+Kb×Sb+Kc×Sc)を生成する。ここで、ゲイン値Krfは、信号振幅がある一定値となるようにAGC(Auto Gain Control)回路によるゲイン値であってもよい。
【0110】
図12の光ヘッド装置は、各受光エレメントからの出力信号に対して個別にゲイン調整できるようにしたことが特徴である。これにより、戻り光ビームQと受光面との相対ずれ、または戻り光ビームQの強度分布の非対称性が存在したときにも、各ゲインを個別に調整することによって再生信号RFのCN比を大きくすることができる。
【0111】
さらに、図13に示すように光ディスク6のラジアル方向(DTに対して垂直)に対応する方向に分割された受光面パターンを用いてもよい。戻り光ビームQの周辺部と中央部を個別に取り出した後に、戻り光ビームQの周辺部の光量割合を大きくするようなゲインKa、KbおよびKcを設定しておくことでCN比が大きい再生信号RFを得ることができる。
【0112】
また、図14のような受光面であっても、図12の場合と同様の信号処理によってCN比が大きい再生信号RFを得ることができる。
【0113】
図15は、戻り光ビームQの周辺部を受光する受光エレメントAおよび受光エレメントBをさらに3つに分割させた受光面である。受光エレメントA1〜A3および受光エレメントB1〜B3からの出力信号Sa1〜Sa3および出力信号Sb1〜Sb3のそれぞれについてゲインKa1〜Ka3およびKb1〜Kb3で増幅した各信号を合成し、さらに受光エレメントCからの出力信号ScをゲインKcで増幅した信号Kc×Scを加算し、この加算された信号をゲイン値Krfで増幅して再生信号RF=Krf×(Ka1×Sa1+Ka2×Sa2+Ka3×Sa3+Kb1×Sb1+Kb2×Sb2+Kb3×Sb3+Sb+Kc×Sc)とすることができる。ここで、ゲイン値Krfは、信号振幅がある一定値となるようにAGC(Auto Gain Control)回路によるゲイン値であってもよい。
【0114】
図15のような受光面であれば、受光エレメントの分割方向(分割線に直交する方向)に戻り光ビームQが相対的に位置ずれしても、CN比が比較的大きい(低周波ノイズ成分が比較的小さい)戻り光ビームQの周辺部が受光エレメントA3および受光エレメントB1で検出されたとき、それらを選択的に使用する、あるいは出力信号Sa3および出力信号Sb1の割合を他の出力信号に比べて大きくする、具体的にはゲインKa3およびKb1を他のゲインKa1、Ka2、Kb2,Kb3に対して大きく設定して演算することにより、CN比が大きく変動が小さい再生信号を得ることができる。
【0115】
また、図15に示す受光面の分割方向はタンジェンシャル方向DTとしているが、分割方向はラジアル方向としてもよい。
【0116】
以上のように、実施の形態2の光ヘッド装置は、戻り光ビームQの周辺部と中央部を個別に受光して個々に検出した信号を出力できる受光素子27により、周辺部の出力信号に対して異なるゲインを設定できるとともに、周辺部と中央部の出力信号に対しても異なるゲインを設定できるようにしたものである。
【0117】
この構成により、複数の受光エレメントで検出される前記周辺部の出力信号について異なったゲインを与えることができるので、戻り光ビームQと受光面の位置ずれが生じる、または前記戻り光ビームQの強度に非対称な分布が存在する場合に、中央部光と周辺部光を検出する各受光エレメントからの出力信号の合成である再生信号RFのCN比を大きくすることができる。
【0118】
実施の形態3.
以下、本発明の実施の形態3を図16〜図22に基づいて説明する。
【0119】
図16は、実施の形態3におる光ディスク装置の全体構成を示す構成図である。
【0120】
図1と異なる点は、RF信号検出回路58からの伝送路L6の信号により光ヘッド装置52の演算回路部分を制御している点である。
【0121】
図17は本発明の光ディスク装置であるが、受光素子27とRF信号検出回路58の構成だけを示しており、半導体レーザから受光面に至る光学系は省略している。図17の受光面は実施の形態1の図6および図12の分割受光エレメントであるが、本発明で説明するすべての受光面に適用することができる。
【0122】
受光素子27は、受光エレメントA〜Cの3つに分割された受光面を有し、これらの受光面で戻り光ビームQを受光し、出力信号Sa、出力信号Sbおよび出力信号Scを出力している。
【0123】
出力信号Sa、SbおよびScは、それぞれ信号レベル変換部101、102および103に入力され、ゲイン調整部104の出力に従って設定されるゲイン値Ka、KbおよびKcによって信号を増幅された後に加算され、さらにゲイン値Krfで増幅されて再生信号RFとなる。すなわち、再生信号RFは、RF=Krf×(Ka×Sa+Kb×Sb+Kc×Sc)の演算で得られる。
【0124】
RF検出回路58の再生信号RFを高域透過回路108に通過させて、ディスクノイズに起因する低周波ノイズ以外の再生信号帯域に比べて十分低いサーボ制御の周波数帯域をカットする。
【0125】
以下に、低周波ノイズを低減し、CN比を向上させる構成と方法について説明する。
【0126】
受光素子27の受光面8と戻り光ビームQの位置が図18に示すようにずれている場合、出力信号Saおよび出力信号Sbのスペクトルはそれぞれ図19(a)と図19(b)のようになり、低周波ノイズNaおよび低周波ノイズNbはNa>Nbの関係となる。
【0127】
出力信号Saと出力信号Sbを加算して再生信号RF=Sa+Sb+Kc×Scとする場合、すなわちは信号レベル変換部101および信号レベル変換部102の無い場合、あるいはゲインKa=1、ゲインKb=1に設定した場合、受光エレメントAに入射する戻り光ビームQの中央部の量は受光エレメントCへ入射する戻り光ビームQと比較して大きく、且つ受光エレメントAへ入射される全体の光量が増えるので、再生信号RFに低周波ノイズを多く含む出力信号Saの割合が増大し、読み出しエラーが増大する。
【0128】
図17に示す光ディスク装置では、出力信号Saおよび出力信号Sbをノイズ検出手段71に入力し、その出力をゲイン調整部104へ入力する。
【0129】
ノイズ検出手段71では、出力信号Saおよび出力信号Sbがそれぞれ低周波ノイズ量検出部105および106に入力され、そこで検出された周波数FL近傍の低周波ノイズ量が比較器107へ出力される。比較器107は、低周波ノイズ量の差分を演算しゲイン調整部104へ出力する。
【0130】
ゲイン調整部104は、比較器107から出力される差分信号に基づいて、低周波ノイズNaと低周波ノイズNbが略同レベルになるように、すなわち低周波ノイズの差分信号が略ゼロに近づくように信号レベル変換部101および102のゲイン値KaおよびKbを調整する。
【0131】
さらに、再生信号RFにおける光ディスク記録マーク長の大きい信号の振幅レベルと小さい信号の振幅レベルとの比率、すなわち信号変調比Rが読み出しエラーを充分抑制できる値以上になるように、ゲイン調整部104は信号レベル変換部103のゲイン値Kcと信号レベル変換部101および102のゲイン値KaおよびKbを調整する。
【0132】
また、再生信号のジッター値または再生信号の復調処理後の読み出しエラー率(エラーレート)が目標値以下になるように信号レベル変換部103のゲイン値Kcを調整することもできる。
【0133】
図20(a)は、図17の低周波ノイズ検出部の構成例を示したブロック図である。図20(a)は、受光エレメントからの出力信号の周波数FL近傍の成分を抽出するバンドパスフィルタ回路133(LPF)とそのレベルを検出するレベル検出回路134で構成され、低周波ノイズNLを得る。ここで、バンドパスフィルタ回路133の一例として、ノッチフィルタ回路を用いることで、周波数FLでの低周波ノイズだけを抽出することが可能となり、ゲイン調整部104の調整精度を上げることができる。
【0134】
図17の低周波ノイズ検出部105および106はCN比検出部に置き換えてもよい。CN比検出部は、図3で説明したCN比を抽出し出力するものである。
【0135】
図20(b)は、そのCN比検出部の具体的な構成の一例であり、CN比検出部に入力される信号からバンドパスフィルタBPF_Lにより周波数FL近傍の低周波ノイズ成分を抽出して、続くレベル検出回路134でレベル値LV_Lを得る。また、バンドパスフィルタBPF_Hによりマーク列M3またはマーク列M4の再生信号の周波数F3または周波数F4近傍の信号成分を抽出して、続くレベル検出器136でレベル値LV_Hを得る。次いで、除算器137により、レベル値LV_Lとレベル値LV_Hの比を求める。
【0136】
以上のように、低周波ノイズ量の検出手段と低周波ノイズ量の検出手段からの低周波ノイズレベルの比較手段とゲイン調整手段によって、受光素子27と戻り光ビームQの位置ずれがある場合の低周波ノイズを最適に抑制することができる。また、低周波ノイズ量の検出手段は、上記のようにCN比の検出手段と置き換えることが可能である。
【0137】
また、光ディスク装置の記録および再生特性の信頼性をより向上させるために、図17の構成では信号消滅防止手段70を設けている。以下に、信号消滅防止手段70による信頼性向上について述べる。
【0138】
ゲイン調整部104においては、受光エレメントの出力信号に含まれる低周波ノイズが小さく検出されるほど再生信号RF全体に対する出力信号の割合を大きくするため、出力信号に設定されるゲイン値は大きく設定されることになる。
【0139】
しかしながら、図17の受光エレメントAまたは受光エレメントBに戻り光ビームQが入射していないような場合には、戻り光ビームQが入射していない受光エレメントからの信号は信号成分も低周波ノイズ成分も検出されない。そのため、戻り光ビームQが入射していない受光エレメント側のゲインは大きく、且つ戻り光ビームQが入射している受光エレメント側のゲインが小さく設定され、結果として信号成分が消滅してしまう。
【0140】
この問題を防ぐために、信号消滅防止手段70では、戻り光ビームQの周辺部を検出する受光エレメントAおよび受光エレメントBからの出力信号SaおよびSbをそれぞれ受光量レベル検出部113および114に入力させて受光量を検出し、レベル判定部112にていずれかの受光量がある閾値以下となるときに、その受光エレメントでは受光量ゼロと判定する。そして、受光量がゼロと判断された受光エレメント側のゲイン値は、ゲイン調整部104で一定値Gc以上には設定しないように制限を与えるとともに、他の受光エレメントのゲイン値をある一定値Go以下には設定しないように制限を与える。なお、受光量に変動成分が含まれる場合に、検出する受光量に対する変動成分の影響を軽減させるため、変動成分の影響が無視できる程度の時間における平均受光量を受光量レベル検出部113および114の受光レベルとすることもできる。
【0141】
このようにゲイン調整部104を調整することで、再生信号が消滅するという問題を避けることができ、信頼性の高い光ディスク装置を実現することができる。
【0142】
図21は本発明の別の形態の光ディスク装置である。図21には受光素子27とRF信号検出回路58の構成だけを示しており、半導体レーザから受光面に至る光学系は省略している。図17と同様に、図21の受光面は実施の形態1の図6および図12の分割受光エレメントであるが、本発明で説明するすべての受光面に適用することができる。
【0143】
図17との違いは、信号消滅防止手段70の受光量レベル検出部113および114をそれぞれ再生信号レベル検出部110および111に置き換えている点であり、その他の構成については同じである。再生信号レベル検出部110および111とレベル判定部112は、出力信号SaとSbそれぞれに含まれる再生信号成分のレベルを検出するものである。
【0144】
ここで、再生信号は、図3で例として述べたマーク列M1およびマーク列M2の非超解像の再生信号でもよいが、マーク列M3またはマーク列M4の超解像の再生信号はさらに利点がある。これは、超解像の再生信号の場合、実際に超解像再生の条件下で再生信号成分が含まれるか否かを直接に検出できる点で、より正確な判定が可能となるためである。
【0145】
再生信号レベル検出部110および111は、図20(a)と同様な回路構成とすることができる。バンドパスフィルタ回路133の透過周波数帯域は、記録されているマーク列M1〜M4の再生信号周波数であるF1〜F4のいずれかを含む周波数帯域に合わせる。
【0146】
もし、出力信号のうち再生信号成分が含まれていない出力信号が検出された場合、それ以外の出力信号のみを合成して再生信号が生成できるように、ゲイン調整部104が信号レベル変換部101、102および103のゲイン値を個別に調整する。
【0147】
これにより、再生信号が消滅するという問題を避けることができ、信頼性の高い光ディスク装置を実現することができる。
【0148】
図22は本発明のさらに別の形態の光ディスク装置である。図22には受光面8とRF信号検出回路58の構成だけを示しており、半導体レーザから受光面に至る光学系は省略している。受光エレメントからの出力信号のレベルを変換する信号レベル変換部を含む信号演算部109に相当する部分は光ディスク装置に搭載されるRF検出回路58に含まれ、低周波ノイズ量検出部105および106および正規化回路116および117をノイズ検出手段71とする。
【0149】
低周波ノイズ量検出部105および106は、受光エレメントAおよびBの出力信号SaおよびSbから低周波ノイズ量を検出し、これらの低周波ノイズ量でそれぞれの出力信号SaおよびSbを正規化して、出力信号SaとSbを加算する。このような構成によって低周波ノイズ量の大きい出力信号の割合を減らす効果がある。
【0150】
また、再生信号レベル検出部110および111とレベル判定部112から成る信号消滅防止手段70により、出力信号のうち再生信号成分が含まれていない場合に、再生信号成分の含まれていない出力信号を使用せず、それ以外の出力信号のみを利用するようにスイッチ回路118およびスイッチ回路119を制御して、再生信号が消滅するという問題を避け、信頼性の高い光ディスク装置を実現することができる。
【0151】
さらに、図22の再生信号レベル検出部110および111は、図17で説明した受光量レベル検出部113および114であってもよく、同様の処理により出力信号のうち再生信号成分が含まれていない場合に、それ以外の出力信号を利用するようにスイッチ回路118および119を制御して、再生信号が消滅するという問題を避け、信頼性の高い光ディスク装置を実現することができる。
【0152】
以上のように、複数の受光エレメントからの出力信号に含まれる低周波ノイズ量に応じて出力信号のゲインを調整する手段を設けることにより、経時的な位置ずれが起こった場合にも低周波ノイズを低減することができる。
【0153】
実施の形態4.
【0154】
以下、本発明の実施の形態4を図23、図24に基づいて説明する。実施の形態4は、実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3で述べた構成において特に有効となる光ディスクに関するものである。
【0155】
実施の形態4における光ディスクは、光ヘッド装置からの出力信号により得られる再生信号に含まれる低周波ノイズを低減し、光ヘッド装置の受光面と戻り光ビームQとの経時的な位置ずれが生じた場合、または戻り光ビームQが非対称な強度分布である場合に低周波ノイズを低減するとともに、位置ずれが大きくなるときであっても再生信号の消滅を防いで信頼性が高く読み出しエラーを抑制するために有効なものである。
【0156】
実施の形態1〜3で説明したようにゲイン調整部104がゲイン値を調整して低周波ノイズを低減する際、図17および図21および図22で示した再生信号レベル検出部110および111での再生信号レベルの検出は、光ディスク6のデータ記録済領域またはコンテンツデータ領域、すなわちユーザ領域UAの記録マーク列を使う。
【0157】
また、ユーザ領域UAの記録マーク列を利用して、再生動作中に低周波ノイズの検出および再生信号の検出を行なってゲイン値を調整することもできる。
【0158】
しかしながら、ユーザ領域が無記録の光ディスクを使用しようとした場合、上記のような回路のゲイン値を調整するために必要となる記録マーク列がないので、最適なゲイン調整が行なえないという問題が生じる。実施の形態4に係わる光ディスクは、このような問題を解消するためのものである。
【0159】
図23は、実施の形態4に係わる光ディスクの図である。光ディスクの内周領域200は、ゲイン調整部104がゲイン調整を行なうために使用できる記録マーク列が予め設けられた最適化領域GAであって、図中吹き出し内に示した部分が最適化領域GAの拡大図であり、最適化領域GAにおける記録マーク列の一例を示している。拡大図の黒色で表示している部分が記録マーク、記録マーク間はスペースであり、マーク長ML、マーク幅Wのマークが等間隔で配置された場合を示している。100は光ディスク上の集光スポットであり、光ディスクの回転により記録マークは相対的に図23のタンジェンシャル方向に移動する。
【0160】
再生または記録を開始する前に、まず最適化領域GAの記録マーク列を読み込み、最適なゲイン値を調整する。この動作により、ユーザが無記録状態の光ディスクを使用する場合にもゲイン値の調整が可能となり、再生信号の低周波ノイズを低減することができる。
【0161】
図23では、最適化領域GAは光ディスクの内周領域200に設置しているが、中周部または外周部に設置されていてもよい。
【0162】
また、光ディスク6が超解像光ディスクである場合、最適化領域GAにも超解像マスク層を成膜しておくことで、実際の超解像再生を行なう際の集光スポットの光パワー状態と同等条件でゲイン調整を行なうことができ、超解像再生に適した低周波ノイズの低減を行なえる。
【0163】
このとき、最適化領域GAの記録マーク列には少なくとも回折限界よりも小さいマーク列を含めておけば、ゲイン調整時に超解像マークの信号成分を再生信号レベル検出部110および検出部111で検出するので、信号成分消滅状態をより確実に検出できる。
【0164】
また、マーク長MLが回折限界よりも長い非超解像のマーク列としてもよい。これにより、記録マーク列が形成しやく低コスト化できる。このとき、最適化領域GAに超解像マスク層が成膜されていてもよく、成膜されていなくてもよい。
【0165】
図23の最適化領域GAの記録マーク列は、凸凹のピット列であってもよく、さらにトラッキングサーボを動作させる場合に必要となるトラック案内溝の構造が同時に形成されていてもよい。
【0166】
実施の形態4に係わる光ディスクを用いてゲイン調整部104が信号レベル変換部やRF信号検出回路のゲイン値を調整する動作手順を図24に示すフローチャートに基づいて説明する。図24に示すフローチャートの動作手順は、光ディスクの種類、すなわち透明層の厚みや記録密度や記録層数やレーザ波長や超解像光ディスクか否かなど、については判別が完了しているものとし、フォーカスサーボの引き込みステップから記録または再生の動作状態になるステップまでを示している。
【0167】
光ディスク6が光ディスク装置に挿入され、光ディスク6にフォーカスサーボが動作する(ステップS1)。このとき、再生・記録に必要な情報が記載されるリードイン領域(図示なし)を再生して記録・再生の必要パラメータを検出し、MPU81に送出して光ディスクを再生または記録する準備を行なう(ステップS2)。
【0168】
次に、内周領域200に設けられる最適化領域GAに集光スポットがくるように、スレッドモータ制御回路62でスレッドモータ53を制御して光ヘッド装置を移動させて最適化領域GAの信号再生を開始し(ステップS3)、戻り光ビームQの周辺部を受光する受光エレメントからの各出力信号に含まれる低周波ノイズ量を低周波ノイズ量検出部105および106で検出する(ステップS4)。
【0169】
ステップS4で得られた低周波ノイズ量にもとづいてゲイン調整部104がゲイン値を設定し(ステップS5)、ユーザコンテンツデータの再生または記録の動作を開始する(ステップ6)。
【0170】
ステップS3とステップS4の間にトラッキングサーボが必要であれば、その動作が追加されてもよい。ただし、図23に示すゲイン最適化用マーク列のマーク幅が集光スポット径に比べて大きく、且つマーク幅を光ディスク6の偏芯などによる光ディスク6の回転時のラジアル方向の変動幅よりも広くしておくことにより、トラッキングサーボを動作させなくても再生信号成分を検出することができる。マーク幅Wの制限は特にないが、100μm〜1000μm程度に設定すればよい。
【0171】
マーク幅Wは、図23では集光スポットサイズよりも大きく表示しているが、これに限らず、集光スポットサイズより小さくてもよい。ただし、この場合には、トラッキング制御が必要である。
【0172】
以上のように、実施の形態4の光ディスクによれば、光ヘッド装置の受光素子の受光面と戻り光ビームQとの位置ずれがあり、またそれが経時的に変化した場合でも、光ディスクの製造ばらつきによる大小の低周波ノイズも含めて低周波ノイズをより低減することが可能となる。
【0173】
また、実施の形態1で説明したように戻り光ビームQと受光素子の受光面パターンとの相対位置を制御する構成とする場合、実施の形態4の光ディスクのゲイン調整領域GAを用いてこの相対位置の制御を行なうことができる。さらに、焦点制御またはトラッキング制御に使用してもよい。
【0174】
実施の形態4に係わる光ディスクによれば、再生信号のCN比を向上させるために光ヘッド装置に設けられたゲイン調整手段あるいは光学部品の駆動手段などの調整を行なうことでき、データ読み出しエラーを低減することができる。
【符号の説明】
【0175】
1 光ビーム
2 半導体レーザ
5 対物レンズ
6 光ディスク
8 受光面
27 受光素子
50 光ディスク装置
52 光ヘッド装置
100 集光スポット
101、102 信号レベル変換部
103 信号レベル変換部
105、106 低周波ノイズ量検出部
110 、111 再生信号レベル検出部
113 受光量レベル検出部領域
Q 戻り光ビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザと、
前記半導体レーザから放射される光ビームを集光して光ディスクの情報記録層に集光スポットを形成する対物レンズと、
前記集光スポットが前記情報記録層で反射した戻り光ビームの光量を電気信号に変換し、前記光ディスクの再生信号を検出する受光素子と
を備えた光ヘッド装置であって、
前記受光素子は、前記戻り光ビームの周辺部を受光する複数の受光エレメントからなる第1の受光面と前記戻り光ビームの中央部を受光する受光エレメントからなる第2の受光面とで構成される受光面を有し、
前記対物レンズを焦点制御するための非点収差法で使用する4分割受光面において互いに直交する2つの分割線またはそれに相当する分割線の交点に対して、前記第1の受光面の複数の受光エレメントが非対称な位置に配置されるとともに前記戻り光ビームの中心が前記分割線の交点に調整されている
ことを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項2】
前記受光素子は、前記第1の受光面の複数の受光エレメントと前記第2の受光面の受光エレメントからの電気信号のレベルを個別に調整する複数の信号レベル変換手段をさらに有し、
前記再生信号は、前記第1の受光面からの当該電気信号のレベルを前記複数の信号レベル変換手段の1つが調整することで得られる第1の電気信号と、前記第2の受光面からの当該電気信号を前記複数の信号レベル変換手段の他の1つが調整することで得られる第2の電気信号とを合成することにより生成される
ことを特徴とする請求項1に記載の光ヘッド装置。
【請求項3】
前記複数の信号レベル変換手段は、前記第1の受光面からの当該電気信号を第1のゲインで増幅することで前記第1の電気信号を生成するとともに、前記第2の受光面からの当該電気信号を第2のゲインで増幅することで前記第2の電気信号を生成し、
前記第1のゲインは、前記第2のゲインよりも大きい値に設定される
ことを特徴とする請求項2に記載の光ヘッド装置。
【請求項4】
前記第1の受光面の当該複数の受光エレメントは、前記戻り光ビームの中心からの距離が互いに異なる複数の受光エレメントを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光ヘッド装置。
【請求項5】
前記第1の受光面と前記第2の受光面は、前記集光スポットの光ディスク半径方向に直交する方向に対応する前記受光面上の方向に分割されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光ヘッド装置。
【請求項6】
前記光ディスクは、超解像光ディスクであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光ヘッド装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントの受光量レベルを検出する受光量レベル検出手段を備え、
前記受光量レベル検出手段は、所定時間の平均受光量を前記受光量レベルとすることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントの受光量レベルを検出する受光量レベル検出手段と、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントの受光量がそれぞれ閾値以下の受光量であるか否かを判定するレベル判定手段と
を備え、
前記受光素子は、前記第1の受光面の複数の受光エレメントのうち前記閾値以下の受光量レベルの受光エレメントを除いた受光エレメントからの電気信号と前記第2の受光面からの電気信号とを合成して前記再生信号を生成する信号演算部を含み、
前記再生信号から前記光ディスクの情報記録層のデータ読み出しが行われることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項9】
請求項3に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントの受光量レベルを検出する受光量レベル検出手段と、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号に含まれる低周波ノイズ量を検出する低周波ノイズ量検出手段と、
前記低周波ノイズ量および前記受光量レベルに基づいて前記光ヘッド装置の当該複数の信号レベル変換手段の前記第1のゲインおよび前記第2のゲインを個別に設定するゲイン調整手段と
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項10】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号レベルを検出する再生信号レベル検出手段を備え、
前記再生信号レベル検出手段は、前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号の特定周波数成分のレベルを検出することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項11】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号レベルを検出する再生信号レベル検出手段と、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号レベルまたはCN比がそれぞれ閾値以下の受光量であるか否かを判定するレベル判定手段と
を備え、
前記受光素子は、前記第1の受光面の複数の受光エレメントのうち前記閾値以下の再生信号レベルの受光エレメントを除いた受光エレメントからの電気信号と前記第2の受光面からの電気信号とを合成して前記再生信号を生成する信号演算部を含み、
前記再生信号から前記光ディスクの情報記録層のデータ読み出しが行われることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項12】
請求項3に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号レベルを検出する再生信号レベル検出手段と、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号に含まれる低周波ノイズ量を検出する低周波ノイズ量検出手段と、
前記低周波ノイズ量および前記再生信号レベルに基づいて前記光ヘッド装置の当該複数の信号レベル変換手段の前記第1のゲインおよび前記第2のゲインを個別に設定するゲイン調整手段と
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項13】
超解像光ディスクであって、
請求項9又は請求項12に記載のゲイン調整手段によってゲイン調整を行うための第1の領域、および/または前記光ヘッド装置の少なくとも1つの光学要素を移動して前記戻り光ビームを受光面上の所定の位置に調整するための第2の領域が設けられていることを特徴とする光ディスク。
【請求項14】
前記第1の領域および/または前記第2の領域は特定の空間周波数のマーク列が記録された領域であることを特徴とする請求項13に記載の光ディスク。
【請求項15】
前記光ディスクのユーザデータ領域と前記第1の領域および/または前記第2の領域とに超解像マスク層が成膜されていることを特徴とする請求項14に記載の光ディスク。
【請求項1】
半導体レーザと、
前記半導体レーザから放射される光ビームを集光して光ディスクの情報記録層に集光スポットを形成する対物レンズと、
前記集光スポットが前記情報記録層で反射した戻り光ビームの光量を電気信号に変換し、前記光ディスクの再生信号を検出する受光素子と
を備えた光ヘッド装置であって、
前記受光素子は、前記戻り光ビームの周辺部を受光する複数の受光エレメントからなる第1の受光面と前記戻り光ビームの中央部を受光する受光エレメントからなる第2の受光面とで構成される受光面を有し、
前記対物レンズを焦点制御するための非点収差法で使用する4分割受光面において互いに直交する2つの分割線またはそれに相当する分割線の交点に対して、前記第1の受光面の複数の受光エレメントが非対称な位置に配置されるとともに前記戻り光ビームの中心が前記分割線の交点に調整されている
ことを特徴とする光ヘッド装置。
【請求項2】
前記受光素子は、前記第1の受光面の複数の受光エレメントと前記第2の受光面の受光エレメントからの電気信号のレベルを個別に調整する複数の信号レベル変換手段をさらに有し、
前記再生信号は、前記第1の受光面からの当該電気信号のレベルを前記複数の信号レベル変換手段の1つが調整することで得られる第1の電気信号と、前記第2の受光面からの当該電気信号を前記複数の信号レベル変換手段の他の1つが調整することで得られる第2の電気信号とを合成することにより生成される
ことを特徴とする請求項1に記載の光ヘッド装置。
【請求項3】
前記複数の信号レベル変換手段は、前記第1の受光面からの当該電気信号を第1のゲインで増幅することで前記第1の電気信号を生成するとともに、前記第2の受光面からの当該電気信号を第2のゲインで増幅することで前記第2の電気信号を生成し、
前記第1のゲインは、前記第2のゲインよりも大きい値に設定される
ことを特徴とする請求項2に記載の光ヘッド装置。
【請求項4】
前記第1の受光面の当該複数の受光エレメントは、前記戻り光ビームの中心からの距離が互いに異なる複数の受光エレメントを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光ヘッド装置。
【請求項5】
前記第1の受光面と前記第2の受光面は、前記集光スポットの光ディスク半径方向に直交する方向に対応する前記受光面上の方向に分割されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光ヘッド装置。
【請求項6】
前記光ディスクは、超解像光ディスクであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光ヘッド装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントの受光量レベルを検出する受光量レベル検出手段を備え、
前記受光量レベル検出手段は、所定時間の平均受光量を前記受光量レベルとすることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントの受光量レベルを検出する受光量レベル検出手段と、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントの受光量がそれぞれ閾値以下の受光量であるか否かを判定するレベル判定手段と
を備え、
前記受光素子は、前記第1の受光面の複数の受光エレメントのうち前記閾値以下の受光量レベルの受光エレメントを除いた受光エレメントからの電気信号と前記第2の受光面からの電気信号とを合成して前記再生信号を生成する信号演算部を含み、
前記再生信号から前記光ディスクの情報記録層のデータ読み出しが行われることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項9】
請求項3に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントの受光量レベルを検出する受光量レベル検出手段と、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号に含まれる低周波ノイズ量を検出する低周波ノイズ量検出手段と、
前記低周波ノイズ量および前記受光量レベルに基づいて前記光ヘッド装置の当該複数の信号レベル変換手段の前記第1のゲインおよび前記第2のゲインを個別に設定するゲイン調整手段と
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項10】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号レベルを検出する再生信号レベル検出手段を備え、
前記再生信号レベル検出手段は、前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号の特定周波数成分のレベルを検出することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項11】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号レベルを検出する再生信号レベル検出手段と、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号レベルまたはCN比がそれぞれ閾値以下の受光量であるか否かを判定するレベル判定手段と
を備え、
前記受光素子は、前記第1の受光面の複数の受光エレメントのうち前記閾値以下の再生信号レベルの受光エレメントを除いた受光エレメントからの電気信号と前記第2の受光面からの電気信号とを合成して前記再生信号を生成する信号演算部を含み、
前記再生信号から前記光ディスクの情報記録層のデータ読み出しが行われることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項12】
請求項3に記載の光ヘッド装置を備えた光ディスク装置であって、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号レベルを検出する再生信号レベル検出手段と、
前記第1の受光面の複数の受光エレメントからの再生信号に含まれる低周波ノイズ量を検出する低周波ノイズ量検出手段と、
前記低周波ノイズ量および前記再生信号レベルに基づいて前記光ヘッド装置の当該複数の信号レベル変換手段の前記第1のゲインおよび前記第2のゲインを個別に設定するゲイン調整手段と
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項13】
超解像光ディスクであって、
請求項9又は請求項12に記載のゲイン調整手段によってゲイン調整を行うための第1の領域、および/または前記光ヘッド装置の少なくとも1つの光学要素を移動して前記戻り光ビームを受光面上の所定の位置に調整するための第2の領域が設けられていることを特徴とする光ディスク。
【請求項14】
前記第1の領域および/または前記第2の領域は特定の空間周波数のマーク列が記録された領域であることを特徴とする請求項13に記載の光ディスク。
【請求項15】
前記光ディスクのユーザデータ領域と前記第1の領域および/または前記第2の領域とに超解像マスク層が成膜されていることを特徴とする請求項14に記載の光ディスク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
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【図13】
【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−169036(P2012−169036A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133583(P2012−133583)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【分割の表示】特願2009−543694(P2009−543694)の分割
【原出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【分割の表示】特願2009−543694(P2009−543694)の分割
【原出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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