説明

光モジュール装置及びその製造方法

【課題】受発光素子の光軸と光ファイバの光軸の軸合わせを容易にする。
【解決手段】受発光素子が設置される設置スペースと、光ファイバを位置決めする位置決め手段と、が一体的に形成される光モジュール装置である。設置スペースを利用して設置された受発光素子の光軸と、位置決め手段を利用して位置決めされた光ファイバの光軸は、光モジュール装置を介して軸合わせされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置に使用される光モジュール装置及び該光モジュール装置の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換装置の一例が特許第4022498号公報に開示されている。光電変換装置を用いれば、例えば、基板上の電気信号を光ファイバへ光信号として、逆に、光ファイバの光信号を基板上へ電気信号として、基板と光ファイバの間で通信を行うことができる。
【0003】
光と電気の間の変換を可能とするため、光電変換装置は基板上に受発光素子を含む。この受発光素子には、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emission Laser)やフォトダイオードが含まれる。ビクセルは、基板上の電気信号を光信号に変換して出射し、フォトダイオードは、光ファイバからの光信号を電気信号に変換する。光電変換装置では、基板に設けた受発光素子を、外部取り付け可能な光ファイバと調心させる。
【0004】
光電変換装置における、受発光素子と光ファイバの調心、換言すれば、受発光素子の光軸と光ファイバの光軸の軸合わせは、従来、高精度に行うことが必要不可欠と考えられてきた。このため、光ファイバと受発光素子はそれぞれ別個に位置決めされ、また、それらの位置関係を調整することに多くの時間と労力が割かれてきた。
【0005】
ところで、上記特許公報にも説明されているように、光ファイバには、10μm程度の径のシングルモードファイバと、50μm程度の比較的大きな径のマルチモードファイバが存在する。シングルモードファイバは、光の通り道が狭く、このため、受発光素子と光軸を高精度に軸合わせすることが必要である。従来は、このシングルモードファイバの軸合わせを考慮して、マルチモードファイバを含め、受発光素子と光ファイバの光軸は常に高精度に軸合わせされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4022498号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、マルチモードファイバは、シングルモードファイバに比して、光の通り道が広く、その分、軸合わせの誤差を許容できる。本願出願人は、この点に初めて着目し、受発光素子と光ファイバは必ず高精度に軸合わせされねばならない、といった従来の固定観念を改め、受発光素子の光軸と光ファイバの光軸の軸合わせ作業の容易化を図ることを考えた。尚、本発明をするに至った経緯は以上の通りであり、従って、本発明はマルチモードファイバへの適用が主であるが、必ずしもシングルモードファイバに適用できないわけではなく、適当な精度が確保できれば、マルチモードファイバのみならず、シングルモードファイバにも同様の構成を適用できる。故に、本発明は、マルチモードファイバ、シングルモードファイバに限らず、いずれにも適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、受発光素子が設置される設置スペースと、光ファイバを位置決めする位置決め手段と、が一体的に形成された光モジュール装置であって、前記設置スペースを利用して設置された前記受発光素子の光軸と、前記位置決め手段を利用して位置決めされた前記光ファイバの光軸が、前記光モジュール装置を介して軸合わせされる光モジュール装置を特徴としている。
【0009】
上記光モジュール装置において、前記光ファイバの端面と前記受発光素子の受発光面の間に、前記光モジュール装置と空気が実質的に介在してもよい。
また、上記光モジュール装置において、前記光モジュール装置と前記空気の間の、前記光モジュール装置側の境界面に、集光手段が設けられていてもよい。
【0010】
また、上記光モジュール装置において、前記光ファイバの端面と前記受発光素子の受発光面の間に、前記光モジュール装置だけが実質的に介在してもよい。
【0011】
更に、上記光モジュール装置において、前記光ファイバの端面と前記受発光素子の受発光面の間に、前記光モジュール装置と空気以外の埋材が実質的に介在してもよい。
上記光モジュール装置において、前記埋材は、前記光モジュール装置の屈折率に近似する屈折率を有するのが好ましい。
【0012】
また、上記光モジュール装置において、前記光ファイバの端面と前記受発光素子の受発光面の間に、前記光ファイバの光軸及び前記受発光素子の光軸の双方と交差し得る前記光モジュール装置の一部によって形成された反射手段が設けられており、前記光ファイバ)の端面若しくは前記受発光素子の受発光面からの出射光を前記反射手段によって反射させることにより前記光軸同士が軸合わせされてもよい。
【0013】
また、上記光モジュール装置において、前記反射手段は集光機能を有していてもよい。
【0014】
更に、上記光モジュール装置において、前記位置決め手段は、前記光ファイバを案内し得る挿入孔を含んでいてもよい。
【0015】
更にまた、上記光モジュール装置において、前記位置決め手段は、前記光ファイバを案内し得る、前記光モジュール装置の上面に開放して設けられたV溝を含んでいてもよい。
【0016】
また、上記光モジュール装置において、前記位置決め手段は、前記光ファイバを前記基板に対して水平に位置決めしてもよい。
【0017】
また、上記光モジュール装置において、前記位置決め手段は、前記光ファイバを前記基板に対して垂直に位置決めしてもよい。
【0018】
更に、上記光モジュール装置において、前記光ファイバを複数並列に配して多芯としてもよい。
上記光モジュール装置において、前記受発光素子とともに基板に実装されてもよい。
また、前記光ファイバは、マルチモードファイバであるのが好ましい。
更に、前記光モジュール装置は、前記光ファイバの屈折率と同じか或いはそれに近似する屈折率を有するのが好ましい。
尚、上記光モジュール装置は光電気変換コネクタに搭載することができ、また、この光電気変換コネクタを他のコネクタと対にして光電気変換装置を構成してもよい。
【0019】
また、本発明は、基板に受発光素子を実装するステップと、受発光素子が設置される設置スペースと、光ファイバを位置決めする位置決め手段と、が一体的に形成される光モジュール装置を、前記基板に実装された前記受発光素子を前記設置スペースに設置するような方法で前記基板に実装するステップと、前記光ファイバを前記位置決め手段を利用して位置決めするステップと、を含み、前記設置スペースを利用して設置された前記受発光素子の光軸と、前記位置決め手段を利用して位置決めされた前記光ファイバの光軸が、前記光モジュール装置を介して軸合わせされる光モジュール装置の製造方法を特徴としている。
【0020】
上記光モジュール装置において、前記光モジュール装置を前記基板に実装するステップは、前記基板に実装された前記受発光素子の上部に、予め成形された光モジュール装置を実装するステップを含んでいてもよい。
また、上記光モジュール装置において、前記光モジュール装置を前記基板に実装するステップは、金型を用いて前記光モジュール装置を前記基板上で直接成形するステップを含んでいてもよい。
【0021】
更に、上記光モジュール装置において、前記位置決め手段は、前記光ファイバを案内し得る挿入孔を含み、前記光ファイバを位置決めするステップは、前記挿入孔に前記光ファイバを挿入するステップであってもよい。
【0022】
上記光モジュール装置において、前記位置決め手段は、前記光ファイバを案内し得る、前記光モジュール装置の上面に開放して設けられたV溝を含み、前記光ファイバを位置決めするステップは、前記V溝の窪みに前記光ファイバを配置するステップであって、該ステップの後に、前記V溝の上部を押さえ部材で閉じるステップを更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、受発光素子の光軸と光ファイバの光軸を容易に軸合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一実施形態による光モジュール装置の斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態による光モジュール装置の斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態による光モジュール装置の一使用例を示す横面図である。
【図4】屈折率の問題を解決する方法を示す図である。
【図5】本発明の第二実施形態による光モジュール装置の斜視図である。
【図6】本発明の第二実施形態による光モジュール装置の斜視図である。
【図7】本発明の第二実施形態による光モジュール装置の製造方法を示す図である。
【図8】本発明の第二実施形態による光モジュール装置の他の製造方法を示す図である。
【図9】本発明の第三実施形態による光モジュール装置の斜視図である。
【図10】本発明の第三実施形態による光モジュール装置の一使用例を示す横面図である。
【図11】屈折率の問題を解決する方法を示す図である。
【図12】本発明の第三実施形態による光モジュール装置の製造方法を示す図である。
【図13】本発明の第三実施形態による光モジュール装置の他の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。図1、図2は、本発明の第一実施形態による光モジュール装置10の斜視図である。これらの図は、同じ光モジュール装置10を異なる角度で表わしたものである。
【0026】
光モジュール装置10は全体として略矩形である。但し、前側底部の一部は、略矩形に切り欠かれている。この切欠部は、設置スペース、例えば、受発光素子12が設置される設置(収容)空間42として利用される。受発光素子12は、受発光素子12より大きく形成された設置空間42の適当な位置において、光モジュール10に対して位置決めされる。
また、背面側側面から設置空間42の側に、所定長さの直線状の丸孔22が複数並列に設けられている。光ファイバ15を位置決めする際、これらの各丸孔22に各光ファイバ15を挿入することにより、複数の光ファイバ15を一定の方向に案内し、容易に位置決めできる。尚、既に説明したように、本願でいう光ファイバ15には、マルチモードファイバとシングルモードファイバの双方が含まれる。丸孔22に挿入されることにより、光ファイバ15は光モジュール装置10に対して(また、装置10を実装する基板(図3等中の11)に対しても)水平に位置決めされる。更に、複数の丸孔22を設けることにより、多芯構造とすることができる。尚、任意であるが、挿入を容易するため、丸孔22の入り口付近に、光ファイバ15の誘い込み23が設けられていてもよい。
【0027】
光モジュール装置10は、樹脂等の成形材料を用いて一体成形される。この結果、光モジュール装置10に含まれる全ての部分が一体的に形成され得る。光モジュール装置10の少なくとも一部は、光を透過させる部分として使用されることから、その全体を透明若しくは半透明材料で形成するのが好ましい。また、その材質は、光ファイバ15から出射される光の屈折率を考慮して、光ファイバ15の材質と同じ屈折率、或いは、それに近似する屈折率とするのが好ましい。以上の要件を満たす材料として、例えば、PEI樹脂やPMMA樹脂がある。
【0028】
図3に、図1、図2に類似する光モジュール装置10’の一使用例を横面図で示す。図3の光モジュール装置10’は、先端側32が閉じた状態とされている点で、図1、図2に示した光モジュール装置10と異なるが、この点を除けば、図1等に示した光モジュール装置10と全く同じものである。
【0029】
光モジュール装置10’は、基板11に予め実装された受発光素子12を比較的大きな設置空間42によって内包させるような方法で基板11に実装される。実装された光モジュール装置10’には、その後、光ファイバ15が後付けされる。尚、基板11に実装された受発光素子12は、基板11との間で電気信号を送受信するとともに、基板11を通じて電力の供給を受けることができる。
【0030】
光ファイバ15において、光信号は、丸孔22の先端側の端面16にて外部と送受信される。尚、光ファイバ15における光信号の送受信は、ファイバの軸方向19に沿って行われるため、光ファイバ15の端面16を45°等にカットする必要はない。光信号の送受信が可能な程度に、通常要求される程度の精度で、軸方向19に対して略直角の切断面を設けてやれば十分である。
【0031】
受発光素子12において、光信号は、上面に露出した受発光面13にて外部と送受信される。光モジュール装置10’において、端面16から出射され或いは端面16に入射される光の光軸19と、受発光面13から出射され或いは受発光面13に入射される光の光軸20は、光モジュール装置10’を介して、換言すれば、光モジュール装置10’の一部31を透過した後に、互いに軸合わせされる。本装置10’によれば、光ファイバ15を単に丸孔22に(手動で若しくは機械を用いて)挿入するだけで、光軸19と光軸20を容易に軸合わせすることができる。故に、従来のような調心作業は不要となる。
【0032】
図3に示す例(図1等も同様である)において、光ファイバ15の端面16と受発光素子12の受発光面13は、互いに直交関係にある点に注意していただきたい。この結果、光軸19と光軸20を軸合わせするために、端面16と受発光面13の間で、光の向きを略90度曲げてやる必要がある。例えば、端面16と受発光面13の間に設けた、光軸19、20の双方と略直角に交差し得る反射手段26を利用して、光の向きを変えることもできる。この反射手段26も、他の部分と同様に、モジュール装置の一部として一体成形され得る。尚、図3等において反射手段26の上方に垂直に延びる縦穴28は、一体成形を行う際の金型を抜くための穴である。縦穴28を別材料で覆うと、反射手段26の表面に異物が付着して反射特性が劣化することを容易に防ぐことができる。
【0033】
反射手段26に集光機能を付加することもできる。端面16若しくは受発光面13からの出射光は発散し易いが、これらの間に設けた反射手段26に集光機能を付加することによって発散を防止することもできる。集光機能を付加するため、例えば、反射手段26を、出射光の衝突側を窪ませた凹球面状のミラー(プリズム)として形成してもよい。凹球面形状とすることで、端面16若しくは受発光面13からの出射光を所望とする位置に焦合させることができる。焦合位置を適当に調整すれば、受発光素子12の実装ズレをある程度許容することもできる。
【0034】
何らの処理も施さなければ、端面16と受発光面13の間31には、光モジュール装置10’の他、空気が介在し得る。例えば、端面16と反射手段26の間31aでは、端面16と丸孔22の先端部の隙間に空気が介在し、同様に、受発光面13と反射手段26の間31bでは、受発光面13と光モジュール装置10’の隙間に設置空間42の空気が介在し得る。空気の屈折率(屈折率≒1)と樹脂のそれ(屈折率>1)は大きく異なることから、空気が介在することによって空気の境界面における屈折率差は大となり、反射損失の問題が生じ得る。
【0035】
上記の問題を解決するため、端面16と丸孔22の先端部の隙間に介在する空気については、例えば、丸孔22に光ファイバ15を挿入する際に、光ファイバ15の端面16に屈折率整合剤を塗布し、或いは、光ファイバ15の端面16と丸孔22の先端部の隙間を屈折率が整合しているジェルで封止することで、屈折率の調節を図ることができる。
【0036】
また、受発光面13と光モジュール装置10’の隙間に介在する空気については、例えば、光モジュール装置10と空気の間の、光モジュール装置10側の境界面に、光モジュール装置を変形することによって形成された集光手段44を設けることで、光の結合効率の向上を図ることができる。このような集光手段44として、図3の例では、特に、設置空間側を隆起させた凸球面形状のミラーを用いている。
【0037】
図4に示す構成を用いて、上記の問題を解決することもできる。図4は、図3と同様の方法で図1、図2に類似する光モジュール装置10”の一使用例を示した横面図である。端面16と丸孔22の先端部の隙間については、図3に示した構成と同様に、丸孔22に光ファイバ15を挿入する際に、光ファイバ15の端面16に屈折率整合剤を塗布し、或いは、端面16と丸孔22の先端部の隙間をジェルで封止することで、屈折率の調節を図っている。これに対し、受発光面13と光モジュール装置10”の隙間については、端面16と丸孔22の先端部との隙間と同様に、それらの間を屈折率整合剤やジェルで封止することで、つまり、光モジュール装置の屈折率に近似する屈折率を有する埋材で埋めることによって、屈折率の調節を図っている。結果的に、図4に示す例では、端面16と受発光面13の間31に、光モジュール装置だけが実質的に介在するものとなっている。
【0038】
上記のように、屈折率整合剤やジェルを付与することなく、当初から隙間に空気を介在させない方法がある。例えば、基板11上に配置した金型を用いて、光モジュール装置を受発光素子12の上部で直接成形するといった方法が考えられる。この方法によって得られる装置は、図4に示した装置10”と実質的に同様の構成となる。この製造方法については後述する。
【0039】
図5、図6に、本発明の第二実施形態による光モジュール装置10Aを示す。これらの図は、第一実施形態の図1、図2にそれぞれ対応している。図5、図6において、図1、図2の部材と同様の部材には、図1、図2の参照番号と同じ参照番号を付している。第二実施形態では、光ファイバを位置決めするために、図1等に示した丸孔22に代えて、V溝24を使用しているが、V溝24及びこれに関連する構成を除けば、図1等に示した構成と全く同じものと考えてよい。光モジュール装置10Aの上面には段部34が設けられており、下段のアクセス可能に開放された表面には、光ファイバ15を案内し得るV溝24が形成されている。これらのV溝24に沿って光ファイバ15を案内する方法で、光ファイバ15を容易に位置決めすることができるようになっている。
【0040】
図7を参照して、図5、図6に示した第二実施形態による光モジュール装置10Aの製造方法の一例を説明する。ステップ(a)において、受発光素子12を基板11に実装する。次いで、ステップ(b)において、基板11に実装された受発光素子12の上部に、予め成形された光モジュール装置10Aを実装する。このとき、光モジュール装置10Aは、基板11に実装された受発光素子12を、光モジュール装置10Aの設置空間42に内包させるような方法で実装する。その後、ステップ(c)、(d)において、基板11に実装された光モジュール装置10AのV溝24に、光ファイバ15を上方から位置決めする。光ファイバ15は、V溝24の窪みに沿って最適な位置に位置決めされる。この処理により、端面16における光の光軸(19)と受発光面13における光軸(20)は、光モジュール装置10Aを介して容易に軸合わせされる。最後に、ステップ(e)において、開放された上部を、押さえ部材(蓋)18で閉じると同時に、V溝24によって位置決めされた光ファイバ15を固定する。尚、押さえ部材18を固定する際、受発光素子12と光ファイバ15の境界部分は、整合剤やジェルによって封止するのが好ましい。これにより、屈折率整合を行って、受発光素子12への戻り光による誤動作を防止することができる。尚、特に図示しないが、V溝24ではなく、図1、図2に示した丸孔22を位置決め手段として使用した場合は、ステップ(c)、(d)において、光ファイバ15は丸孔22に挿入されることになる。
【0041】
図8を参照して、図5、図6に示した第二実施形態による光モジュール装置10Aの他の製造方法を説明する。先ず、ステップ(a)において、受発光素子12を基板11に実装する。次いで、ステップ(b)において、基板11に実装された受発光素子12を上部から覆うように金型21を配し、この金型21に樹脂を流し込む。この結果、光モジュール装置10Aは基板11上に直接成形される。明らかなように、この場合は、光モジュール装置10Aと受発光素子12の間に実質的に空気は介在し得ず、従って、屈折率整合剤やジェルを用いることなく、光モジュール装置10Aと受発光素子12を容易に且つ完全に封止することができる。その後のステップ(c)乃至(e)における処理は、図7と同様である。
【0042】
図9、図10に、本発明の第三実施形態による光モジュール装置10Bを示す。これらの図は、第一実施形態の図2、図3にそれぞれ対応する。図9、図10において、図2、図3の部材と同様の部材には、図2、図3の参照番号と同じ参照番号を付している。この実施形態では、光ファイバ15は、丸孔22を利用して、基板11に対して垂直に位置決めされる。この場合、図10に示されるように、光軸19、20は、ともに垂直であるから、第一実施形態のように反射手段26を要せずに、端面16と受発光面13の位置を調整するだけで互いに軸合わせされる。その他の構成については、図1等に示した実施形態と同様である。
【0043】
図11は、第一実施形態における図4に対応する図であって、空気の介在による屈折率の影響を補償した光モジュール装置10B’の構成例を示す図である。詳細については、図4を参照して説明した通りである。
【0044】
図12、図13に、図9、図10に示した第三実施形態による光モジュール装置10Bの製造方法を例示する。図12は、第二実施形態における図7に対応する図、図13は、第二実施形態における図8に対応する図であり、その詳細は図7、図8で説明した通りである。図12に示す例では、特に、ステップ(b)に示されるように、基板11に実装された受発光素子12の上部に、予め成形された光モジュール装置10Bが実装されるのに対し、図13に示す例では、特に、ステップ(b)に示されるように、基板11に実装された受発光素子12の上部に金型21Bが配され、この金型21Bに樹脂を流し込むことによって光モジュール装置10Bが基板11上に直接成形される。尚、第三実施形態では、光ファイバ15は基板11に対して垂直に位置決めされるため、位置決め手段は、図7に示したようなV溝(24)ではなく、丸孔22が好ましい。各光ファイバ22は、丸孔22それぞれに対して、垂直に挿入され、位置決めされ得る。
【0045】
尚、特に図示しないが、本願発明の光モジュール装置10は、端子、レーザーダイオードドライバ或いはトランスインピーダンスアンプのような種々のICや、離れた端子への配線を可能にする信号中継用部品、その他の部品とともに、コネクタに搭載されることにより、光電気変換コネクタを構成し得る。更に、このような光電気変換コネクタをプラグコネクタとして、レセプタクルコネクタと対にして使用することにより、光電気変換装置を構成することもできる。当業者であればこのような応用的使用も容易であろう。
【産業上の利用可能性】
【0046】
光電変換装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 光モジュール装置
11 基板
12 受発光素子
13 受発光面
15 光ファイバ
16 端面
19 光軸
20 光軸
21 金型
22 挿入孔(丸孔)
24 V溝
26 反射手段
42 設置空間
44 集光手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受発光素子が設置される設置スペースと、光ファイバを位置決めする位置決め手段と、が一体的に形成された光モジュール装置であって、
前記設置スペースを利用して設置された前記受発光素子の光軸と、前記位置決め手段を利用して位置決めされた前記光ファイバの光軸が、前記光モジュール装置を介して軸合わせされることを特徴とする光モジュール装置。
【請求項2】
前記光ファイバの端面と前記受発光素子の受発光面の間に、前記光モジュール装置と空気が実質的に介在する請求項1に記載の光モジュール装置。
【請求項3】
前記光モジュール装置と前記空気の間の、前記光モジュール装置側の境界面に、集光手段が設けられている請求項2に記載の光モジュール装置。
【請求項4】
前記光ファイバの端面と前記受発光素子の受発光面の間に、前記光モジュール装置だけが実質的に介在する請求項1に記載の光モジュール装置。
【請求項5】
前記光ファイバの端面と前記受発光素子の受発光面の間に、前記光モジュール装置と空気以外の埋材が実質的に介在する請求項1に記載の光モジュール装置。
【請求項6】
前記埋材は、前記光モジュール装置の屈折率に近似する屈折率を有する請求項5に記載の光モジュール装置。
【請求項7】
前記光ファイバの端面と前記受発光素子の受発光面の間に、前記光ファイバの光軸及び前記受発光素子の光軸の双方と交差し得る前記光モジュール装置の一部によって形成された反射手段が設けられており、前記光ファイバの端面若しくは前記受発光素子の受発光面からの出射光を前記反射手段によって反射させることにより前記光軸同士が軸合わせされる、請求項1乃至6のいずれかに記載の光モジュール装置。
【請求項8】
前記反射手段は集光機能を有する請求項1乃至7のいずれかに記載の光モジュール装置。
【請求項9】
前記位置決め手段は、前記光ファイバを案内し得る挿入孔を含む請求項1乃至8のいずれかに記載の光モジュール装置。
【請求項10】
前記位置決め手段は、前記光ファイバを案内し得る、前記光モジュール装置の上面に開放して設けられたV溝を含む請求項1乃至8のいずれかに記載の光モジュール装置。
【請求項11】
前記位置決め手段は、前記光ファイバを前記基板に対して水平に位置決めする請求項1乃至10のいずれかに記載の光モジュール装置。
【請求項12】
前記位置決め手段は、前記光ファイバを前記基板に対して垂直に位置決めする請求項1乃至9のいずれかに記載の光モジュール装置。
【請求項13】
前記光ファイバを複数並列に配して多芯とした請求項1乃至12のいずれかに記載の光モジュール装置。
【請求項14】
前記受発光素子とともに基板に実装された請求項1乃至13のいずれかに記載の光モジュール装置。
【請求項15】
前記光ファイバは、マルチモードファイバである請求項1乃至14のいずれかに記載の光モジュール装置。
【請求項16】
前記光モジュール装置は、前記光ファイバの屈折率と同じか或いはそれに近似する屈折率を有する請求項1乃至15のいずれかに記載の光モジュール装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれかに記載の光モジュール装置を搭載した光電気変換コネクタ、或いは、該光電気変換コネクタを他のコネクタと対にして構成した光電気変換装置。
【請求項18】
基板に受発光素子を実装するステップと、
受発光素子が設置される設置スペースと、光ファイバを位置決めする位置決め手段と、が一体的に形成される光モジュール装置を、前記基板に実装された前記受発光素子を前記設置スペースに設置するような方法で前記基板に実装するステップと、
前記光ファイバを前記位置決め手段を利用して位置決めするステップと、
を含み、
前記設置スペースを利用して設置された前記受発光素子の光軸と、前記位置決め手段を利用して位置決めされた前記光ファイバの光軸が、前記光モジュール装置を介して軸合わせされることを特徴とする光モジュール装置の製造方法。
【請求項19】
前記光モジュール装置を前記基板に実装するステップは、前記基板に実装された前記受発光素子の上部に、予め成形された光モジュール装置を実装するステップを含む、請求項18に記載の光モジュール装置の製造方法。
【請求項20】
前記光モジュール装置を前記基板に実装するステップは、金型を用いて前記光モジュール装置を前記基板上で直接成形するステップを含む、請求項18に記載の光モジュール装置の製造方法。
【請求項21】
前記位置決め手段は、前記光ファイバを案内し得る挿入孔を含み、前記光ファイバを位置決めするステップは、前記挿入孔に前記光ファイバを挿入するステップである請求項18乃至20のいずれかに記載の製造方法。
【請求項22】
前記位置決め手段は、前記光ファイバを案内し得る、前記光モジュール装置の上面に開放して設けられたV溝を含み、前記光ファイバを位置決めするステップは、前記V溝の窪みに前記光ファイバを配置するステップであって、該ステップの後に、前記V溝の上部を押さえ部材で閉じるステップを更に備える請求項18乃至20のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−215269(P2011−215269A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81800(P2010−81800)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】